【多分】女「(株)魔王城営業部企画課!」#2【完結】 (1000)

あらすじ

ひょんなことから(株)魔王城に入社した女
そこに待っていたのはとても人間味に溢れた魔物たちであった

この物語は、女と女に宿る力をめぐる企業ファンタジーである

あとは前スレみてください

女「(株)魔王城営業部企画課!」
女「(株)魔王城営業部企画課!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1325582886/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1336836150(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

企業ファンタジー……?
企業ギャグファンタジーの間違いじゃ

主な登場人物(企画課)
(Lv8)
ちから:351
まもり:15
まりょく:そくていふのう
はやさ:7
しごと:1.25
おっぱい:98

◎スキル
????
どく耐性
ドラゴンキラー
対骨田×
自動フラグブレイク
おっぱいガード
食いしん坊


名前がないため案外地味だが本SS主人公
とにかくおっぱいが大きい。勇者の娘という生い立ちを持つが、本人は知らない。物語の鍵を握る不思議な力を持つ

犬崎(Lv82)
ちから:311
まもり:332
まりょく:455
はやさ:482
しごと:189
あいくるしさ:57689

◎スキル(資格)
魔王公認血統書
漢検2級
魔力検定1級
肉球
嗅覚検定1級

企画課の課長。柴犬。嫁持ち。スケベ。でもやたら強い元十傑集なお方。

鎧谷(Lv43)
ちから:158
まもり:210
まりょく:122
はやさ:58
しごと:92
かっこよさ:500

スキル(資格)
魔法剣(仮免)
基礎魔法検定1級
広域魔法検定2級
魔王軍式剣術2段
鎧マニア
普通自動車免許(AT)

暗黒騎士。当初モテ男路線だったが、今は完璧にギャグ担当に堕ちた。描写は無いが、仕事はできるもよう

>>1乙!

黒江(Lv45)
ちから:82
まもり:84
まりょく:230
はやさ:85
しごと:958
おっぱい:約70(推定)

スキル(資格)
貧乳
スタイル○
ガチレズ
魔法剣(優良資格者50年連続認定)
広域魔法検定1級
限定領域魔法検定1級
時空魔法検定1級
ワープロ検定
援護魔法資格
武器鑑定
教員免許(魔界の中学、高校に限る)
薬剤師免許
大型自動車免許(牽引可)
クレーン技師
スリーサイズを当てる(対女性戦のみ)
お茶ソムリエ

ダークエルフ。ガチレズの巨乳マニアのおっぱい星人。自身は貧乳企画課の大黒柱だったが、秘密を知ったために消される

岩村(Lv45)
ちから:251
まもり:223
まりょく:12
はやさ:15
しごと:150
こうせいぶっしつ:てつ

スキル(資格)
鉄壁
怪力
操作魔法×
寄代資格
ベジタリアン

ゴーレム(鉄)。寡黙で力持ち。酔うとキャラ崩壊する。ゴーレムなので、体を乗っ取られやすい

骨田(Lv13)
ちから:18
まもり:20
まりょく:5
はやさ:31
しごと:18
かわいさ:2
ほねみつど:12

スキル(資格)
カルシウム博士
骨折回避術
ドM

がいこつ兵。ギャグ担当。もはやツッコまれるとイッてしまうエロい体になってしまった。特に女からのツッコミは好物

>>1

前スレ黒江さんの話まだー?

前スレが埋めれないのは俺だけじゃ無いはずだ

おう同士よ

鎧谷さんがAT限定なのがなんか笑えるwwwwww

あんなこと書いて前スレが埋まるはずがない

登場人物((株)魔王城関係)

魔王(Lv99)
言わずと知れた社長。普段はただのスケベ親父だが、めちゃくちゃ強い。麻雀も強い。馬主だったりする

辰川(Lv94)
魔王とタメ張る強さの翼竜。子持ち。現在、子供にアヘ顔を見られたため、父親としての権威絶賛失墜中。十傑集の1人

金子(Lv85)
吸血鬼。社長秘書。秘書課長兼務。何か企んでいるらしいが詳細は不明。ショタホモ疑惑がある。元十傑集

姉川(Lv91)
大魔導師。オカマ。東京の立川で魔物向けのバーを経営。元十傑集

色倉(Lv88)
精霊。おもしろ半分で生きてる。そのわりには核心に迫る。裏の実力者。元十傑集

牛宮(Lv89)
ミノタウロス。真面目でキャラが薄い。元十傑集の苦労人。会社での役職は総務部長だったりする。

鳥谷(Lv92)
阪神の3番バッター、ではない。コカトリス。鳥頭なので物覚えは悪い。なのに経理部長。

武田(Lv85)
人間。かつて、魔王と戦った勇者軍の1人。現在はしがない武器職人として絶賛活動中。なにやら(株)魔王城と企んでいる

誰も触れてないが、婆と混浴する夢で朝立ちって少し悲しくならないか?

そんな俺は幼女とヤる夢を見るロリコンです

【人間サイド】
たけし(勇者)(Lv19)
むっつりスケベ。生真面目。アニオタ。ロリコン。勇者候補だが才能はない。

すぐる(僧侶)(Lv17)
ホモロリショタ。寺院きっての天才だったが、同期のトイレを覗いて破門された。

まさひこ(盗賊)(Lv18)
猪突猛進。くみことはつき合っているらしく、パーティーの雰囲気悪化の要因となっている

くみこ(遊び人)(Lv25)
真面目。献身的。家庭的。遊ばない遊び人。ある意味賢者。高いレベルは苦労の証



主人公の母親(Lv95)
絶対無敵☆ロリ巨乳怪力無双姫みこにゃん。ロボルーマの姫様だった。十傑集レベルに強い。
勇者をむりやり犯し…同意の上で結婚して主人公を産んだ



あとなんか登場人物いたっけ?

ちなみに

・企画課の序列(上から順にえらい)
犬崎(企画課長)
鎧谷(現場監督)
黒江(書類の作成・管理)
岩村(力仕事、機械整備)
骨田(鎧谷のアシスタント)
女(庶務・雑用)

※鎧谷の入社時期は黒江と岩村より遅いので、二人の後輩にあたる



・大戦時の魔王軍の序列(上から順に偉くて強い)
魔王(魔神は魔王と同等以上)
十傑集(営業部長と企画課長はここ)
側近クラス
近衛兵団長(担当レベル)
近衛兵(鎧谷レベル)
各軍団長(岩村・女レベル)
各隊長(黒江レベル)
一般兵(骨田レベル)
ザコ(たけしレベル)

新スレ乙んぽ!

【地方】
◎プーホ地方
・プーホ村

◎トイラ地方
・トイライハ城

◎バカワ地方
・バカワ高原
・ルーク村
・トンメラーパ火山

◎ロボルーマ地方
・ロボルーマ王国

◎タスンブセ地方
・タスンブセ洞窟
・クーラ灯台

新スレ乙です!
黒江さん資格の数すげぇwwどこ行っても通用しそうだな。

前スレに乙ったやつ、氏ね

前スレ乙


ふぅ

いや…黒江さんならやりかねない……
潮吹きながら復活とかもありえなくは……

>>1乙たけしレベルと骨田レベル逆じゃ……?

とりあえず前スレが、完結するまでまとめられないことを祈る

>>21
それはほら、あれだ、四対一だったからだ
個人の力量なら骨田のが上だったんだろ

◎魔界と人間界について
本SSは魔王城がある魔界と、主人公が暮らす人間界が舞台です

○魔界
魔法や魔物が存在する、いわゆるファンタジーの世界です
500年前に人間と魔族の間に戦争が勃発、300年前に人間側の勝利(引き分け?)で終結しています
勘違いされがちなのですが、魔界にも人間は存在します
現在、戦争は終結していますが、魔王討伐は伝統として残っているようです
通貨はG(ゴンス)1G=10円

○人間界
我々が住む世界と変わらない、人間が幅を利かせてる世界です
魔界とは特定の映画館を介してつながっています
ちなみに魔界との時間差は無く、両方とも一定の速度で時間が進みます

◎主人公の出生について
主人公は勇者とロボルーマ城のお姫様の娘です
300年前の大戦末期の魔界に生まれ、危機から逃れるために母とともに次元を超えて人間界に来ました
その際、当時の次元移動技術が未熟であったため、約277年の時も同時に超えてしまい、平成の世に存在します



ええ、ご都合主義ですとも

間違い発見

「姉川」とありますが、当初は「姉山」だったんですね

以後、「姉川」で通します

【新入社員は名探偵シリーズ・トスキラ温泉殺人事件~濡れたうなじは殺しの香り編】

タタン…タタン…タタン…

あたしは今、会社の温泉旅行でトイライハ地方のトスキラ温泉に向かっています

景色も魔界らしくていい感じ!

女「わぁ~。見てくださいよ!あの毒の沼地!大きい~」

鎧谷「あぁ、あれはバブルの時にウチの会社で作ったやつだよ。今は維持できないから埋め立て予定だっけな?」

女「…あ!あれって迷いの森ですよね?」

犬崎「わん(あれは予算不足で、途中までしか迷わない迷いの森ですね。あの型番は買わないように気をつけてください)」

女「…」

岩村「…どうした?」

女「たまにはファンタジーな世界に浸ろうと思ったのに…」プンスカ

骨田「新幹線に乗って駅弁食いながら何言ってんの」

迷わない迷いの森wwww


今気づいたんだが、魔界の土地名ってタバコなんだな

乙です!
やっぱり旅行先で殺人事件に巻き込まれるのはお約束だよなww

「トイライハ地方。トイライハ地方です。お出口は~右側~です」

辰川「みんなちゃんと降りたな?」

営業部一同「はーい」

辰川「ここからは宿の職員さんが連れてってくれるからはぐれないように!」

女「…毎度思うんですけど、次元移動する技術があるなら電車とかいらないくないですか?」

骨田「はぁ…コレだから最近の若者は」

犬崎「わふん(旅は過程を楽しむモノなのですよ。その土地々々の文化を噛み締めてね)」フフン

女「そういうものですか」

ブロロロロロ

辰川「よーし、宿のバスが来たぞ。順番に乗り込め~」

女「…魔界にマイクロバスがあるのが文化ねぇ」

とても平和な旅行に思えました

ブロロロロロ

犬崎「わん(えー、では聞いてください。「犬吠岬より」)」

「いいぞー!」

犬崎「わぉぉん(犬と生まれたからにゃ~♪惚れた女に尻尾は振らず♪)」

辰川「よ!女泣かせ!」

女「スケベ!」

鎧谷「ロリコン!」

骨田「大学生キラー!」

犬崎「わん!(うるせー!)」

誰もが皆、一様に幸せそうな笑みを浮かべていました

???「…」

しかし、その時は誰も気づいていなかったです

これから始まる事件のことを…

ひでぇ言われようwwwwww

【旅館:魔界の里】

女将「遠いところからおこしくださいまして誠にありがとうございます」

辰川「おせわになります」

犬崎「わん(部屋割りはもう決まってますから、各自で荷物持っていってくださいね)」

骨田「えーと、企画課部屋は210号室ですね」

鎧谷「ベッドがいいなぁ」

岩村「…旅館だから敷き布団だろう」

辰川「企画課のお嬢ちゃんは女部屋な、ウチの早乙女(サキュバス)に付いて行ってくれ」

早乙女「よろしくねぇん」フワフワ

女「…」ジー

辰川「…どうした?」

女(ドラゴン部長…この大きさでどうやってバスにのってたんだろうか)

辰川「そ、そんなに見つめるなよ。恥ずかしいなぁ///」

また中居くんが来るのか……?

SMAPの復活か

【女部屋】

部屋は畳の香りで満たされていた

早乙女「和風ねぇ」

女「落ち着いた感じでいいですね」

羽生「あたいはベッドが良かったなぁ」

魚沼「…私は水槽の方がいい」

こちらは営業2課の羽生さん(ハーピー)と魚沼さん(ラミア)
お二方ともかなり美しい

浮田「んー」ゴソゴソ

女「何してるんですか?」

浮田「ほら、古いホテルとかにはお札があって魔除けしてあるじゃない?」

女「はぁ」

浮田「そういうのあったら怖いじゃん?」

この方は部長補佐の浮田さん(ゴースト)

浮田「お化けとか出たらやだなぁって」

女(あんたが言うな…)

ちくしょう……
笑っちまった……

早乙女「夕飯まで時間があるわねぇ」

女「はい」

羽生「温泉行こう!」

浮田「おーいいねぇ。早風呂早風呂~」

女(幽霊って温泉入れるのか…)

早乙女「そうと決まればさっそく行きましょうかぁ」

魚沼「…」

女「魚沼さん?」

魚沼「水風呂…ある?」

早乙女「あるみたいよ」

魚沼「なら…行く」




???「…」

【廊下】

女「何読んでるんですか?」

羽生「ん?これ?人間界にもあるっしょ?」

女「こ、これは!?「地球の歩き方シリーズ」!?…魔界編!?」

浮田「歩き方シリーズは便利よね~♪魔界のメジャースポットから穴場まで書いてあるし」

女(ど、どうやって調べたんだろうか…)

魚沼「あ…」

早乙女「どうしたの?…あらぁ湯畑ねぇ」

女「わぁ…幻想的ですね」

魚沼「…きれい」

早乙女「そうねぇ…」

羽生「臭いけどな!」

浮田「台無し」



???「…こちらホーネット」

???「…こちらホーネット、イーグル送れ」

???『こちらイーグル。ホーネット送れ』ザザッ

ホーネット(コールサイン)「こちらホーネット。目標の進行先は温泉の模様」

イーグル(コールサイン)『イーグル了。ホーネット、他にあるか』ザザザッ

ホーネット「…こちらホーネット。目標は浴衣を着ている。繰り返す。浴衣を着ている」

イーグル『…!?こちらイーグル。ホーネット、再度送れ』ザザッ

ホーネット「こちらホーネット。目標は、浴衣を、着ている」

イーグル『…かわいいか!?』ザザザザザッ

ホーネット「…かわいい」

イーグル『………イーグル了解。ホーネット、他にあるか』ザザッ

ホーネット「なし。通信終わる」

イーグル『了』ザザッ

【男部屋】
イーグル「だそうです」

骨田「…了解した。…諸君!」

男性社員一同「!」

骨田「機は熟した!」

男性社員一同「おおおおおお!!」

骨田「おっとりお姉さん系爆乳、サキュバスの早乙女さん!」

男性社員一同「おお!」←歓喜の声

骨田「ハツラツ体育会系引き締まった巨乳(予想)のハーピー羽生!」

男性社員一同「あぁ…!」←熱い溜め息

骨田「普段は控え目で目立たない貧乳美少女(見た目)、ラミアの魚沼!隠れファンは多いだろう!」

男性社員一同「うんうん」←同意の頷き

骨田「大きさは並。しかし、形の良さは他の追随を許さない超美乳(医務室調べ)。ゴースト浮田部長補佐!」

男性社員一同「やっぱり形いいんだぁ…」←遠いまなざし

骨田「そして、我が企画課が誇る爆乳ニューフェイスの新入社員。23歳だが、そのロリ顔をチェック済みの社員は多いんじゃないか?」

男性社員一同「あ…うん…いやぁははは」←図星

インディペンデンス・デイの演説と、社員旅行をかけたやつ思い出した

骨田「この5人が集結する意味が、貴様等に分かるか!?」

男性社員一同「!?」ビクッ

骨田「この5人が一緒に服を脱ぎ、湯へ浸かる意味が貴様等に分かるか!」

男性社員一同「……かる」

骨田「すまない。私の耳が遠くなったようだ」

男性社員一同「分かる!」

骨田「Holy shit!!全然聞こえないぞ!答えにくいなら質問を変えよう!」

男性社員一同「…」

骨田「おっぱいは好きか!?」

男性社員一同「好きだ!!!!」

骨田「いい返事だ!ではこれよりMOON(みんなで おおきな おっぱい のぞく)作戦を決行する」

男性社員一同「ワァアァァァ!!!」

骨田「では、これより総司令犬崎閣下よりお言葉を頂く。閣下、どうぞ」

犬崎「…わふん(…まぁ頑張ってください)」

骨田「かっ、課長!旅行に行く前はあんなにノリノリだったじゃないですか」ヒソヒソ

犬崎「…わん(…だって、犬がいないじゃないですか)」

骨田「ええ~」

犬崎「…わぉん(辰川も牝ドラゴンがいないの分かってたから参加しなかったんでしょ)」

骨田「まぁ…でしょうねぇ」

犬崎「…くぅん(旅行シーズンだし、サークルで来てる大学生犬でもいるかと思ったんですけどねぇ)」ハァ

骨田「もー。その少ない可能性に賭けて参加したのは課長でしょ~」ヒソヒソ

犬崎「わん(とにかく私はなんもやりませんからね)」ヒソヒソ

骨田「まったく…。えー以上が閣下の言葉だ!よくかみしめろ!」

男性社員一同「おう!」




一方、鎧谷は…

鎧谷(この手のスケベ行事に骨田が関わると絶対失敗するから関わらんとこ…)

絶妙に危機回避していた

鎧谷(さりげなく岩村さん参加してるんだよなぁ…。ゴーレムなのになぁ)



岩村「ひゃっほー!」

どうやら、企画課は無意識的に地雷を踏むスキルがあるらしい

よろにゃん要領いいな
確かに仕事は出来そうだww


そういえばラミアって魚というよりは蛇な気が・・・

岩村wwwwww

>>46
へ、蛇だってお湯に浸かったら茹でて美味しくいただけるわ!

すみません
本当は当初人魚の予定でした
チョコボの不思議なダンジョンのイメージが強かった

>>49
チョコボの不思議なダンジョンでもラミアの下半身は蛇だったような…。
2しかやったことないからわからんけど。

ば か や ろ う !

今重要なのはおっぱいであって下半身の形なんざどーでもいーーーんだよ!!
>>1も動揺してないで堂々とおっぱいを語りやがれ!!
もう一度言う

お っ ぱ い を 語 れ ! !

うん、おっぱいはいいものだ。

OK!
おっぱい語れ!(Oppai Katare)

じゃあ私はそんな覗こうとする裸男の痴態を撮ってホモに売りさばくか

なんでホモがいるんですかね…?(歓喜)

骨とゴーレムなんて需要あるんですかね?(姉川さん的に)

骨が砕け散るな………

【女脱衣所】

早乙女「んふふ~」タユンタユン

羽生「…」ジー

魚沼「…」ジー

女「…」ジー

浮田「…」ジー

早乙女「な、なぁに?」

羽生「すげぇ…」

浮田「…バレーボール?いや、バスケットボールくらい?」

女「なにが入ってるんですか…これ」ムニュ

早乙女「ひゃ…ん///もう、だーめ☆」

魚沼「…ぐぬぅ」ペターン

女(…気にしてるのか?)


キャッキャッウフフ

……………………………………………………
【男脱衣所】
ファルコン「こちらファルコン。目標は脱衣所にて準備中」

イーグル『こちらイーグル。了解』

【女脱衣所裏の堀】
トムキャット「こちらトムキャット。ポイントαに到着。窓枠は固定されており開放は不可能」

イーグル『了解。音は採れるか?』

トムキャット「採れる。今聞かせる」

女「ちょっ、早乙女さんらめらって///!」

早乙女「たくさん揉めばもっと大きくなるのよぉ☆」モミュンモミュン

イーグル『…』

トムキャット「…」

イーグル『録音したデータは必ず持ち帰れ!』

トムキャット「トムキャット、了解!」

こいつらコードネームの意味あるのか・・・?

【男部屋】

イーグル「順調ですな」

骨田「あぁ、これも皆のおっぱいに対する熱意のおかげだ。しかし…」

イーグル「しかし?」

骨田「圧倒的熱意は時として暴走を生む…。ファントムからの定時連絡は?」

イーグル「今呼び出します。ファントム、ファントム送れ」

【女脱衣所天窓付近】

ファントム「こ、こちらファントム。…声がします。もう我慢できない!」

イーグル『よせ、ファントム。私的鑑賞は目標に気付かれる恐れがある』

ファントム「大丈夫です。ヤツら会話に夢中になってます!」

イーグル『ファントム、停止しろ。これ以上は危険だ』

ファントム「どれどれ…す、すご!へばぁぁあぁ!」ブシャァァ←鼻血

イーグル『ファントムー!!』

>>59
新キャラ出すのもめんどいし、かと言って男社員A,B,Cとか分けると見にくいじゃん

【男部屋】

イーグル「…ファントムロスト」

骨田「確かファントムは3課の童貞ゴブリンだったな」

イーグル「はい…。今日を楽しみしていたのに…」

骨田「若さ故の過ちか…。各員に伝えろ。「耐性無きものはおっぱいを直視するな」と」

イーグル「はい。各員に伝える…」

骨田(やはり犠牲は出てしまうか)

骨田「ルートの確保はまだか!」

イーグル「申し訳ありません。現在、女将がルート上で仕事をはじめまして…」

骨田「デコイを向かわせろ。何としても排除だ!」

イーグル「了解」



鎧谷「…なんか普段より仕事できてません?」

犬崎「わん(エロ目的じゃないと動かないんでしょ)」

>>61
失礼、苗字を英語にしただけかと思ったのです。

【女湯】
女「わぁ、広~い!」ペタペタ

早乙女「走ると危ないわよぉ」

魚沼「…水風呂は?」

浮田「そこにあるわよ」

女「さっそくつかりましょう!」

チャポン

羽生「あっつぅ…///」

早乙女「キクわぁ…///」

女「はぁ…ん///」

浮田「ヤバぁい…イッちゃいそう///」スゥゥ

羽生「…」

女「浮田さん、体の半分消えてますけど…」

浮田「…へ?…ぎゃぁぁ!逝くぅぅぅ」


※効能
血行促進
リュウマチ改善
美肌効果
軽濃度耐魔成分(アンデッド系の方は入浴をお控えください)


浮田「成仏するぅぅぅ…気持ちいいわぁ」フゥ

女「出ろよ」

【男部屋】
イーグル「目標が風呂場に侵入!」

骨田「来たか…。第一種鑑賞体制に移行!」

イーグル「了解!総員に告ぐ総員に告ぐ。第一種鑑賞体制発令。」

ビービービー←サイレン

骨田「撮影班は直ちに出撃準備!偵察隊には状況を逐次報告させろ!」

イーグル「了解!」

骨田「生鑑賞隊進行ルートは!」

ラプター『こちらラプター。ルートクリアー。ルートクリアー』

イーグル「すでに確保されています!」

骨田「よし行くぞ!生鑑賞隊は双眼鏡を忘れるな!」

生鑑賞隊「おぉう!」

岩村「おっしゃぁぁ!」



鎧谷「うわぁ」

犬崎「わん(いつになく元気ですねぇ)」

鎧谷「生鑑賞行かない人がいるのは何でですかね?」

犬崎「わん(むっつりスケベなんでしょ)」

初の本格的な作戦wwww

岩村酔ってるのか?wwwwww

戦闘機のペットネームか

黒江さんが居れば今頃…

名前が戦闘機な方々に混じってちゃっかりいる…と、いいのになぁ…。

ちなみに黒江さんはエルフらしく長身貧乳美女(貧乳)の設定です

死んでるけどねHAHAHA

黒江さんはきっと生きてるって信じてる・・・

【風呂(室内)】

女「はふぅ…」

早乙女「日頃の疲れが取れるわねぇ」

羽生「あれ?浮田さんと魚沼は?」

女「浮田さんはサウナに行ってます。魚沼さんはあっちです」


魚沼「~♪」


羽生「水風呂か…」

早乙女「ねぇ、企画課のお嬢さん」

女「はい?」

早乙女「あなた人間なんでしょう?」

女「はい」

羽生「ええっ?リビンクデッドかゾンビだと思ってた」

女「ち、違いますよ。まだ生きてます!」

早乙女「なんで(株)魔王城に入ったの?今は戦争してる訳じゃないけど、人間を裏切ってることにならない?」

女「えー?いやぁ、はじめはそういうのよくわからなかったんです。でも…」

早乙女「でも?」

女「働いているうちに魔物と人間が仲良くしている光景を目の当たりにしたんです」

早乙女「ふむふむ」

女「だからあたしが(株)魔王城で働くことは裏切る為じゃなくて、魔物と人間の橋渡し役っていうか…」

早乙女「…」ニヤリ

女「あはは、何が言いたいか分からなくなっちゃいました」

早乙女「資料通りの勇者的(いい子ちゃん)発言だわ」ボソッ

女「へ?」

早乙女「なんでもないわよぉ。露天風呂に行ってみましょう」ニコニコ

女「はぁ」

【ポイントX:露天風呂裏手】

ライトニング「お疲れさまです!」

骨田「うむ、お疲れ。首尾は?」

ライトニング「現在、露天風呂を取り囲むように撮影班が展開。現在機材点検中です」

骨田「試写は?」

ライトニング「…盗聴班より、お婆ちゃんトロルが入浴中とのことで試写は控えました」

骨田「うっわ…。それはやめた方がいいわ」

ライトニング「ですよね」

キャッキャッウフフ

骨田「ぬ?」

ライトニング「盗聴班より入電!『天気晴朗なれども風呂熱し』!」

骨田「来たか!撮影班撮影用意!」

撮影班「!!」カチャカチャッ!

骨田「号令待て!フラッシュ焚くなよ!」

【露天風呂】

カポン…

女「あれがトスキラ山ですかぁ…大きいなぁ」

羽生「標高4800mあるんだ。そりゃ大きいさ」

早乙女「空いてるわねぇ」

浮田「よし、こっちには耐魔成分無いな」

魚沼「…」

羽生「魚沼はやめとけよ~。茹だっちゃうからな」

魚沼「…ぬぅ」

早乙女「魔界名山を眺めながら温泉…お酒が欲しくなるわぁ」

浮田「せっかくの女子風呂会(平均年齢171歳)なんだからオシャレなやつ飲みたいなぁ」

女「あっ、雰囲気ぴったりなやつ持ってきてますよ。みんなで飲める…」

つ[大五郎(4L)]ゴトン…

魚沼「オヤジか」

女「!?」

羽生(魚沼が間髪入れずツッコんだ…)

大五郎wwwwwwww

しかも4Lボトルw

数分後

浮田「でさー!言ったわけよ!あんたのお供え物はショボいって」ヒック

羽生「うぅ…えっぐ。あたひは、よろにゃんのためを思ってたらけなのに…」ヒック

早乙女(うーむ)

羽生「ねぇ!なんれ?なんれよろにゃんはあたひのこと捨てだの?」ボロボロ

女「え?うわ、知らんす」

羽生「ふぇぇぇ…おぇぇえ」

女(は、羽生さんが鎧谷さんの元カノだったのか…)ゴクゴク

早乙女(さすが勇者の子…なのかしら?全然潰れないわ)

早乙女(酔わせて誘拐するつもりが…これでは金子様に会わす顔がないわ…)

早乙女(…男の気配を感じる?)




……………………………………………
【ポイントX】

ライトニング「目標は飲酒を始めたようです」

骨田「好機とみた!」

【露天風呂】
女「早乙女さんもイケるクチですね」トクトク

早乙女「あ、ありがと」

女「んっ…んっ」ゴクゴクゴクゴク

早乙女(ヤバいわ…酔わしてってのはムリね)フラフラ

コソコソ

早乙女(あら…木が動いてる。なるほど、男の気配はあれか)

早乙女(噂通りの変態部署ね)

早乙女(どれどれ…作戦変更。少し利用させて貰おうかしら)

女「早乙女さん?」

早乙女「うふふ」ニコニコ

早乙女(サキュバスらしく、男を誘惑しちゃうんだから)

フヮワァワワワァワァヮ

女「もージョッキ空いてますよ」トクトク

早乙女「…さすがのあなたも、数の力には勝てないでしょ?」

女「はい?」

………………………………………
【ポイントX】
骨田「今だ!総員こっそり鑑賞せよー!」

フヮワァワワワァワァヮ

男社員一同「うおぉお!…おぉぉ?」

骨田「ん?」

ライトニング「…ふにゃぁ…早乙女さんのおっぱい」フラフラ

骨田「おい、どうし…た。…ふにゃぁ…早乙女さんの爆乳…」フラフラ

ガサガサッ




オッパイのちからすげー

おっぱいに夢中になると
他のことってどうでもよくなるよね

まぁおっぱいだしな

ほんと、おっぱい星人多いな
貧乳こそ至高

貧乳もおっぱいなんだぜ・・・

結論:皆オッパイ星人

【露天風呂】

ガサガサ!

女「!?」

骨田「…ふにゃ」ガササッ

女「ってうわー!なにやってんだこのカルシウム野郎ぉぉぉ!」

早乙女(さぁ私のカラダが欲しければ、あの子を拘束しなさい)

男社員一同「ふにゃー」ガバッ

女「どわっ!いっぱいきた!」

早乙女(どれ、私は高みの見物といきますか。調査内容を見る限り、あの人数に勝てるLvじゃないしね)ゴクゴク

男社員一同「おっぱいぃぃ!」ドドドっ

女「きゃぁぁ!寄るんじゃねぇぇ!!」

バキッ!!ズババッ!!

早乙女(…あれぇ?強くない?)

女「なめるなぁ!」

きゅいぃん!!ズオッ!!

男社員一同「ぎゃぁぁ!!」

早乙女「…あれって、高位爆発魔法よねぇ。詠唱省略出来ないわよねぇ」

女「はりゃぁ!」

早乙女(おかしい…。調査内容と比べて能力が高すぎる。もしかしてあれが…)

女「名刺切り!」

シュパー!!

男社員一同「おっぱぎゃぁぁ!」

早乙女(勇者の力?)

女「ビクトリー!」

シュパー

早乙女「ん?…きゃぁ///」ハラリ

男社員一同「う、うおお!おっぱ…」ガクリ

骨田「ご、ご馳走さまでした…」ガクリ

女「す、すいません」

早乙女(ゆ、許すまじ…///)

女って怖い

酒が入っていつも以上に力が発揮できたとかどうだろう?酔拳的な。
ザルだから酔ってないかな?

大切なのは乳輪と乳首のバランスなんだぜ

おっぱい

そうだな。三位一体のバランスこそが至高

【男部屋】

男社員一同「…」

浮田「HDから去年行った海水浴の写真が出てきたわ」

羽生「このアングルはどう見ても意図的だよね?」

早乙女「…首謀者は?」

男社員一同「…」

骨田(ククク、おっぱい同盟のキズナは乳首よりも堅い。そう易々と口を割らな)

男社員一同「そいつです」

骨田「ホネー!?」

男社員一同「ほんとは嫌だったんですけど…(棒読み)」

骨田「き、貴様等ぁぁ!」

女「骨田さん…」ズゴゴ

骨田「はわわ」

早乙女「さて、どんなお仕置きがいいかしら…」

骨田(く、ククク!かかったな。これを待っていたのだ!)

早乙女「とりあえずロープは必要よね」

骨田(き、きた!これは言わば「保険」!バレた時にも美味しい思いができるように仕掛けた「保険」)

羽生「蝋燭は女将さんから借りれたよ」

骨田(ドMのみが可能な2段構え戦法。裏切り者どもよ、羨ましかろうな。美女5人にいたぶられるのは)

浮田「…鞭」

女「…なんで持ってるんですか」

骨田(そうだ。いいぞ!もはやこれは罰ではない!ご褒美だ!)ジュルリ

早乙女「三角木馬は…」

骨田(う、裏切られることも想定してて良かっ)

女「まぁまぁ、そんな罰与えたら可哀想ですよ。こんなに静かに反省してるんだからHD破壊でここは済ませましょう」

早乙女「…それもそうね。めんどくさいし」

骨田「なにー!?貴様ー!!!気でも狂ったかぁぁ!!」

女「!?」

骨田「頼むからいたぶってくれぇぇ!」

女(何言ってんだコイツ)

結局、営業部全員にドン引きされて終わりました

…一方

【男湯:露天風呂】

鎧谷「乾杯」

犬崎「わん(カンパイ)」チン

辰川「カンパイ」

鎧谷「どうやら骨田は失敗したようですね」

犬崎「わん(予想通り。ってとこですかね)」

鎧谷「しかし、デコイとしては十分でしたな」

辰川「うむ。こっそりトスキラ美竜と混浴を楽しめたからな」

犬崎「わん(ああ、お土産屋のねーちゃん(ポメラニアン)可愛かったなぁ…。今夜もう一発…)」

鎧谷「お二方とも上司としての威厳を保ちつつ女を楽しむ苦労…。察します」

犬崎「わん(よろにゃんも、ただ身を引いて見てた訳じゃないんでしょう?)」

鎧谷「さすが課長。気付いておいででしたか」

犬崎「わん(HDに細工したでしょ?)」

鎧谷「ええ。今頃、自宅PCに営業部の五大おっぱい動画像が送られていることでしょう」

辰川「末恐ろしいな…。敵に回したくないタイプだ」

鎧谷「はははご冗談を…」

辰川「ハーハッハッハッ」


露天風呂にスケベの笑いがこだまする
骨田とは年季の違うエリートスケベ
の笑いだ



辰川「つうか羽生ってよろにゃんの元カノじゃないの?」

鎧谷「そこは触れないでください」

犬崎(浮気見つかって体半分吹き飛ばされてるなんて言えないよなぁ)

それが鎧の理由かwwwwww

補足
前スレ>>442にて語られている鎧谷の当時の彼女が羽生です

巨乳に釣られて付き合ったが最後、超束縛のヤンデレハーピーに財布の緒を握られ、性を貪り尽くされたようです

ああそうさ!俺の願望さ!
束縛してくれる彼女とヤレヤレ言いながら付き合いたい!

第二の骨さんだったか

願望は願望のままにしておいたほうが良いと思うのですよ。
人の好みはそれぞれだけど、俺としてはあんまり束縛されるのはやだなー。

よろにゃんうpよろ

奇遇だな


俺もだ

まさか、よろにゃんがここまで切れ者だったとは。
初登場時の
>イケメンで将来幹部間違い無しな勝ち組優等生の鎧谷さん(暗黒騎士)
ってホントだったんだね…

割られたけどな

…これが、初日にあった出来事です。
後に骨田事件と名付けられることとなります。

この時は、いつも通り骨田さんがバカやってるとしか思っていませんでした

しかし、今思い返すとあれは…

これから始まる凄惨な事件の予兆だったのかもしれません…

【2日目:早朝】

早乙女「…くぁ」ムクリ

魚沼「…」スゥスゥ

羽生「んにゅ…よろにゃん…ぐぅごご」ゴロン

早乙女(2日目か…。時間が無いわ。予定日までに品物を「納入」しないと…。)

女「ぐぅ」Zzz

早乙女(それにしても昨日のアレは「勇者の力」だったのかしら…)

早乙女(あの圧倒的不利を押し返した事実。これは能力値が高いと言うだけでは説明できない)

早乙女(あれは、そういう何かを超越してる。まさに勇者的展開の典型)

早乙女(勝つべくして勝ったと言うことなのかしら…。そんな不思議パワーが相手じゃ誘拐なんてムリじゃない)

早乙女(いっそ…。殺して細胞だけでも…)チャキッ!

女「…」

ガチャ

浮田「ふんふー」

早乙女(!?)サッ

浮田「ん?早乙女ちゃん起きてたんだ」

早乙女「お、おはようございますぅ」

浮田「おはよー」

早乙女(どうすっかなぁ…)

【ロビー】

辰川「予定確認するぞー」

10:00 登山開始
12:30 BBQ
15:30 ぶどう狩り
17:00 下山

犬崎「わん(焼き肉食ってぶどうも食って…食ってばっかですなぁ)」

鎧谷「当初は班分けするつもりだったんですが…反対意見が出まして」

犬崎「わん(どんな?)」

鎧谷「肉もぶどうもお腹いっぱい食べたいと」

犬崎「くぅん(あぁ、どうせ営業1課のトロルが言ってるんでしょ?全く、企画課のお上品なプランを何と心得るか)」

岩村「…いや、その」チラッ


女「肉…ぶどう…肉…ぶどう…うふふ」ニヤニヤ


犬崎「…」

骨田「ちなみにトロルさんはわがまま言ってません」

犬崎「ぐぅぅ(トロル以上のいやしんぼか…)」

標高4800mのトスキラ山…

魔界の山らしく禍々しいオーラが漂っています

この山は中腹に中級ダンジョン、頂上付近には伝説の武器((株)魔王城製)が眠る上級ダンジョンを有する魔王城関連の土地だそうです

今回、私たち営業部が登るのは標高1000mのなだらかな裾野
途中まではロープウェイが走っていました(この旅行中は使いません)


女「毎度思うんですけど…」

鎧谷「なんぞ?」

女「魔王城の裏口エレベーターといい、ここのロープウェイといい、新幹線といい…」

女「勇者一行にバレかねないほど大きな施設ですよね?大丈夫なんですか?」

鎧谷「大丈夫でしょ。ちゃんと誘導員がいるし」

女「誘導員?」

鎧谷「アレアレ」

【ロープウェイ入口】

サイクロプス(警備服着用)「フハハ!ようこそトスキラ山へ!」

くみこ(大賢者:Lv52)「敵!?行くわよ!」

すぐる(プロレスラー:Lv48)「よっしゃぁ!転職したてのムチムチボディを魅せてやるぜ!」ムチッ

まさひこ(強盗:Lv45)「はぁぁ…ダル」

くみこ「おらっ!たけし!リーダーなんだからしっかりしろ!」

たけし(勇者:Lv38)「お、おう」

サイクロプス「くらえ!山の中腹には中級ダンジョン、頂上付近には伝説の武器が眠ってるよパーンチ!」

たけし「え?そうなんだ…ってぐぁぁ!」ズザァ

サイクロプス「敵の属性は火が多いから水系の装備で行った方がいいよキック!」

くみこ「へぇ…ってきゃぁぁ」ドカァン

まさひこ「くみこ!ちくしょう!くらえ!」ズバッ!

サイクロプス「ぐぉ!やるな!ここは逃げた方がいいな!」タタタッ

たけし「待て!」

サイクロプス「…」ピタッ…クルッ

すぐる「?」

サイクロプス「そっちの道は行き止まりだから、こっちの道から山道を登ってダンジョンに逃げようっと!」タタタッ

くみこ「まてぇ!みんな行くわよ!あいつの逃げる方にダンジョンがあるらしいわ!」

一同「おう!」タタタッ



女「…ばか?」

鎧谷「ばかなんだろうねぇ」



たけし成長してねぇwww


この作品が完結したら、前作の続きもお願いします。

たけし可愛過ぎワロタ

なんか遅筆ですみませんぬ

>>114
言われてみて久しぶりに読み返してみた
処女作であっただけあって思い入れ強かったなぁ
是非とも完結させたいと思う

前作のタイトル教えて

幼女「私の負けだ…殺せ」

だったはず

お、>>1じゃん

続き来る?

もうしわけない

夜勤中なので今日は書けない

はい。お仕事がんばって

問題ない

サイクロプス「はぁはぁ…」タッタッタ

女「あっ」

鎧谷「誘導お疲れ様です」

サイクロプス「ありがとうございます。いやぁ連中しつこい」

女「斬られてましたけど大丈夫なんですか?」

サイクロプス「ああコレ?うわっ、結構深いなぁ。労災降りるかな…」

女「て、手当てを!」

サイクロプス「あ、いーッス!ジブン体は丈夫なんで。それよりタバコ持ってません?」

鎧谷「セッタでいいですか?」

サイクロプス「大好物ッス!あざっす」

シュボッ…

サイクロプス「ぷはぁ…」

女「大変そうですねぇ」

サイクロプス「そうなんですよ。聞いてくれます?」

セッタwwwwwwww

この1タバコ大好きだなwww

禁煙でもしてるんだろうか

サイクロプス「あ、ジブン力石っていいます。本社の方?」

鎧谷「ええ。営業部の者です」

力石「へぇ…。エリートなんスね。トスキラ山へはどうして来たんですか?」

女「社員旅行です」

力石「いいっすね!トスキラの温泉は魔物にもいい効能がありますから。ゆっくりしてってください」

鎧谷「はい」

女「さっきのは勇者一行ですよね?何してたんですか?」

力石「ああ…誘導ッス。聞いて欲しいのはソコなんですよ!」

鎧谷「?」

力石「まぁ愚痴なんですけど…」

女「…はぁ」

力石「もうね。最近大変で大変で」

鎧谷「何かあったんですか?」

力石「さっきの勇者一行…どう思いました?」

鎧谷「…ここらへんにしてはレベルが高かったかな?」

力石「その通り!これもね、近くの街で闘技場が立っちゃったせいなんですよ」

女「はぁ」

力石「それも、そこのLv設定が間違ってるから勇者一行のLvが軒並み上がっちゃってね…」

鎧谷「そりゃヒドいなぁ。…闘技場…闘技場…あ!?」

女「どうしたんですか?」

力石「だいたいね。現場の苦労ってのを分かってないんですよ!確かに魔王城到達Lvが年々下がってるのは分かりますよ。でもね…」クドクド

鎧谷(そういや15年前に闘技場を企画したのウチだ…それも、案出したの俺だ)

女「?」

力石「調整ってのはもう少し全体を見て緻密にやって貰わないとね。現場は命かかってるんですよ」

鎧谷「は、はは」

女「ヒドい話ですね!」

闘技場でレベル上げと聞くとファイアーエムブレムを思い出す。
最近の作品ではフリーマップとかあるからレベリングも容易だけど。

サラリーマンは辛いよな

力石「お嬢ちゃん話が分かるね。営業部の…どこの部署だっけ?」

女「きか」

鎧谷「営業2課です!」キリッ

女「んが…」

鎧谷「おっと、そろそろ時間だ!ではお勤めご苦労様でした!」

力石「あ、ああ。ありがとうございます」




【ロープウェイ入口】
鎧谷「ふぅ」

女「いやぁ、現場の方も大変なんですね。闘技場なんて誰が作ったのやら」

鎧谷「…」

女「あんたかい」

鎧谷「…すんません」

なだらかな山道が時折魅せる秋の色彩
それを楽しみつつ、営業部一行はひたすら歩く


犬崎「うむ、目の保養になるな」

女「ええ。魔界にも紅葉ってあるんですねぇ」

骨田「あるとも。秋は月からの魔力の影響が最も大きいからね。魔界樹の体液が血の色に変わる」

女「た、体液とかグロい…っ。なんでそんなとこだけ魔界らしいのよ…」


業務中には見れない笑顔
それを見れば会話にも拍車がかかる

かくして、営業部一行はキャンプ場に着いたのであった…

あれ?課長普通にしゃべれるようになったの?

【キャンプ場】

辰川「おお、滝が見えるな」

浮田「マイナスイオンくるわぁ」スゥゥ

早乙女「う、浮田さん…消えてるわよぉ」

浮田「ひぎぃぃ!?」

女(もういっそ成仏した方がいいんじゃないのか…)

鎧谷「ほらほら、BBQの準備するよ」

岩村「…力仕事はまかせろ」

辰川「食材は飛んで買いに行ってくるからな」

羽生「料理はまかせろー」

骨田「え、えっと」

魚沼「…骨田には何も期待してない」

骨田「ふにゃぁ///」ビクン

女「そこは喜んじゃダメだろ」

>>136
いつかやるとは思ったが酢でミスった

>>138
「わん(ドンマイ)」

「がんばれ(ワン)」

>>141
クソッ……クソッ……!
こんなので

>>141
お前は俺を怒らせtwwwwwwww

BBQの準備は着々と進んだ


辰川「買ってきたぞ~」ばっさばっさ

女(ビニールにコストコのマーク…。魔界にも進出してたのか)


食材は安価な量販店で取り揃えられた
大型の魔物もいるので、質よりも量が優先されたのである


羽生「焼きそばお好み焼き炒飯~♪」トントントントン

鎧谷(また睡眠薬入れられたらどうしよう…)ガタガタ

女「ようしあたしも料理を…」

辰川「お前はダメだ」

犬崎「わん(山火事になったらどうすんの)」

女「ひでぇ」

岩村(学校全焼の前科があるからなぁ…)


そして、準備は整った


骨田「火をつけますよ」

シュボッ

ジュゥゥ

女「は、ハハハ!焼けろ!もっと焼けろ!」

岩村「…うわぁ」

骨田「あの子、企画課より地方の大ボスの方が向いてるんじゃ…」ヒソヒソ

鎧谷「…学校を焼いたのもドジのせいじゃ無いかもね。素質あるよ」ヒソヒソ


BBQは和やかなムードで行われた
日々の魔物らしい悪辣(?)な業務がウソのようであった


早乙女「…」ギラリ


しかし…


早乙女(肉片だけでも…。いや金子様の指令には「生きて捕らえよ」とあった)

早乙女(ならば、それを遂行しなきゃだめね)

早乙女(…強攻策に出るしかないようね)

その雰囲気に1つの悪意が含まれていることを誰も知らない

鎧谷さん完全にトラウマってるww

地方の大ボスってオロチくらい?

早乙女(殺しちゃダメなら冷凍…?)

早乙女(でも凍らせて持っていくには手間がかかるし)

早乙女(うーん。転送魔法講習受けとけば良かったなぁ)

早乙女(もー!殺してバラして持っていけたら楽なのに!)

早乙女(だいたい、かよわいサキュバス1人にこんな任務押し付けるなんて!)プンスカ

早乙女(男どもを操ってもいいけど…誘惑範囲が調整できない。この前みたいに大規模な誘惑は騒ぎが大きくなるし…)

早乙女(…)

早乙女(いや、むしろ騒ぎを大きくしてどさくさに紛れれば…)

早乙女(木を隠すのは森か…)

ジュゥゥ!

辰川「焼きそばできたよ!」

女「わーい!」ジュルリ

鎧谷(ドラゴンがエプロン付けて焼きそば作るってなかなかシュールだな…)

早乙女「…」

犬崎「わん(もうそろそろぶどう狩りに行きますよ~)」

早乙女「あら、もうそんな時間ですかぁ?」

女「もふふほしはべてかま」モグモグ

骨田「飲み込んでから喋りなよ…」

女「もう少し食べてから!…ゴクン…行きましょう!」

早乙女(ぶどう園で勝負を仕掛ける…見てらっしゃい)

部長、買い出し行ったりやきそば焼いたりマメだなあ
こんな旦那さん欲しい


今夜は仕事で更新無しかな

すまん
サカフロンティア2やり始めたら止まらなくなっただけだ

そうか、てっきり仕事かと。
ゲームの邪魔してスマンかった。
やり始めって事はギュスターブ編か?

いやもうリッチ編の最後だ

マルチウェイ全然覚えん

ここからは、>>1のプレイ報告スレwwww

辰川「生ゴミはここに捨ててねー!ペットボトルは水でゆすげよー!」

鎧谷(あれが大戦中に「獄竜」と呼ばれたとは信じられないな…)

所々で辰川の要領の良さが光る
そのおかげで、BBQの撤収は速やかに行われた

犬崎「わん(ぶどう園はすぐそこなんですよね?)」

女「はい。あそこに見える橋を渡ってすぐです」



ーそしてー


ー殺戮のぶどう狩りが始まるー


早乙女「…」


ー狩られるのは一体誰なのかー

【ぶどう園】

女「ぶどうー!」キラキラ

鎧谷「こらこら走らないの」

辰川「制限時間は1時間だからなー!あんまり奥まで行くなよー!」


ぶどう園は広大であった
それこそ、迷いかねない程に


魚沼「…ぶどう」

骨田(こりゃどさくさに紛れて様々な角度からおっぱいを拝むチャンス…か?)


参加メンバーの中には、下心を持つ者もいた


犬崎「わん(おお、ワインも飲み放題なんだな)」

辰川「どれ、老いぼれ2人はしこたま酔うか」

犬崎「わん(そうだな)」


また、紅葉を肴にして酒に酔う者もいた


早乙女「…」


そして、企む者もいた


早乙女「骨田くん、ちょっといいかしら」

骨田「はい?」

骨田「なんでしょうか?」

早乙女「あのね…話があるの」モジモジ

骨田「?」

早乙女「あなたがた昨日、お風呂覗いたじゃない?」

骨田「げ…。まさか提訴?」

早乙女「ううん!違うの!でもちょっとお願いがあって…」

骨田「?」

早乙女「…実は、覗かれた時からドキドキが、止まらないの///」ギュッ

骨田「!?」

早乙女「それを覗いた人たちみんなに、止めてもらいたいなぁって…///」キュンキュン

骨田「ほぁぁ!」

早乙女「みんなを呼んで、奥まで付いてきてくれる?」

骨田「か、かしこまりましたぁ!」

【ぶどう園:奥】

イーグル「集合終わり!」

骨田「…集まりました!」フーフー

早乙女「みんな集まってくれてありがとぉ」

ファントム「いやいや!早乙女さんの頼みだったら大丈夫です!」

ファルコン「ジブン、今まで180年間純潔を守り続けたのはこの日のためッス!」

ホーネット「…ひっぐ!うぇっ!」ボロボロ

骨田「バカやろぉ!泣く奴があるか!顔を上げろ!これからムフフな展開が待ってるんだぞ!」

ホーネット「あい!」

早乙女(そういう風に誘導したとはいえ、かなり誇大解釈したものね…)

早乙女「じゃあ今から…ワタシでたくさん幸せになってね///」

覗き隊一同「うおおおお!」


…ホワワヮァワアァワ


覗き隊一同「おお…おお?」クラリ

早乙女「言葉が足りなかったわ。「ワタシの魅せる夢の中で幸せになりなさい」。童貞くんたち」

覗き隊一同「…はにゃぁ、早乙女さん」

早乙女「じゃあ、まずは…」

早乙女「この、ブドウ園を破壊して回ってもらおうかしら」


くおお

ブドウ農家・・・可哀想に・・・

農家とばっちりwww

何故かぶどう園破壊された農家だけど質問ある?

>>166
筆者がまだ壊したあとの展開を具体的に考えてないらしいんだけど、ノリで壊されたことについてどう思う?

>>167
訴訟も辞さないってとこか

責任とってもっと書けばいいと思うよ

散らばったブドウ集めてワイン作ろうぜ

女「はむ、はむ…」モキュモキュ

骨田「美味しそうに食べるねぇ」

鎧谷「いや、このぶどう旨いぞ」

ドワーフ「ふふふ、土が違うからね」

岩村「…あなたは?」

田村「このブドウ園の園長、ドワーフの田村です」

鎧谷「ああ、園長さんですか。先ほど土が違うと仰っていましたが…?」

田村「ふふふ、実はトスキラ山腹の土壌は栄養価が高いのです」

骨田「へぇ…」パクリ

田村「甘いでしょう?火山灰に含まれる魔力が苦味を抑えているのです」

鎧谷「なるほど…スゴいなぁ。ここまで作るのにかなり苦労なさったのではないですか?」

田村「はい。今は亡き妻と適地を探して世界中をさまよい歩いた年月…懐かしいなぁ」

田村「当時は戦後から幾年も経っていなくてね。職もない私と身体の弱い妻は途方に暮れていたんです」

田村「住処である森は朽ち果て、次の住処の目処も立たない」

骨田「…」

田村「そんな時でした。迷い込んだある森で、一房のぶどうを見つけたのです」

鎧谷「ほう」

田村「妻と夢中で食べました。あのとき食べたぶどう…。美味しかったなぁ」

骨田「…Zz」ウツラウツラ

田村「それが、きっかけでブドウ園を立ち上げたのです」

田村「ここを見つけてすぐ、妻はこの世を立ちました。しかし、妻の愛はぶどうに包まれて今も生きているのです」

鎧谷「…ええ話や」

骨田「…」Zzz

やめろ……やめてくれ……

園長の大事な 奥さんとの思い出の農園が破壊されたら、母子家庭育ちの女は鬼神とかしてしまわないか…。

これは大変な事になりそうな予感……

つうか骨田はここにいちゃだめじゃん
早乙女さんに操られてんだから

何やってんだ俺

まぁぶっちゃけ骨田居てもいなくても変わらないしww

操られてここに来たんじゃねーのかよwwww 

骨だけに亡霊さ!

上げて落とすのですか、鬼畜wwwwww

なんか見返して見たら、骨田ぶどう食って居眠りしてるだけでなんも喋って無かったw

いないテイで行きます

田村「ささっ!とにかく食べてください!私と妻が自信を持って推奨するぶどうです」

女「もう無いんですけど」

田村「え?」

女「見える範囲にぶどうが無い…」

田村「ええ?ってあー!!ぶどうが無い!?若い実も全部無くなってる!?」

女「緑のやつは苦かった…」

田村「それは時期をずらして収穫する予定のやつなのに…」ビキビキ

女「にゃぁ?」

鎧谷(か、カワイコぶってごまかそうとしてる…)

田村「は、はは。でも大丈夫!木があればこれからもぶどうは作れるからね!」

ヒュルルルルル


田村「?」


ドカァァン!!

田村「ほぎゃあぁぁ!!」

鎧谷「な、なんだ!!?」



イーグル「ほにゃぁ…」

やめてぇぇぇぇ!
田村さんかわいそうぅぅ

田村ああああ!!

やめてくれ……

田村さん…

よくわからんノリで壊されたぶどう園再生させた農家だけど質問ある?
1 名前:田村 [saga]:XXXX/XX/XX(X) 00:00:07.21 ID:dvTjc47f0
レベルあげたら修復イベ発生したはwwwwwwww

もうぶどう狩りはしない

イーグル「こわす…こわす…」

バキバキッ!

ファルコン「ふにゃぁ」

ボゥ!


鎧谷「あ、あれは…ウチの社員!?」


骨田「ふにゃぁふにゃぁ…」

バキバキッ!


岩村「…骨田もいる」

田村「…はっ!?あああ!ぶどう園が!妻のぶどうが!」

女「あたしのぶどうが!」

鎧谷「何やってるんだあいつら!止めなければ!」



早乙女(いいわ、その調子で騒ぎなさい。これならあの課長と部長の目を避けることもできる)

早乙女(「勇者の力」がある以上、力ずくでは適わない。それは昨日の温泉で証明されている)

早乙女(金子様もそれを分かっていたから、私を派遣したはず)

早乙女(「誘惑」のスキル。技をもって力を制する私の能力)

早乙女(異性さえもトリコにして隷属させるこの能力で、サンプルの確保を…)

早乙女(…任務を遂行する)




ドカァァン!!

女「うわぁ!」

早乙女「企画課のお嬢さん!コッチよ!」

女「!?」

aa...

異性さえもってことは百合はデフォルトか

百合展開(ゴクリ

ふどう園が……

おい

おい

【ぶどう園:最奥】

女「はぁはぁ!」

早乙女「ここまでくれば大丈夫そうね!」

女「い、一体何があったんです?」

早乙女「よく分からないけど、酔っぱらったんじゃない?(嘘)」

女「はぁ…。ぶどうが、あたしのぶどうが…」

早乙女「とにかく、よ」

女「?」

早乙女(辰川も犬崎も離れている今がチャンスなのよ)

早乙女「そう!1人でいる今がチャンスなの」バッ

ンチュゥ

女「はむ!?」

早乙女(接触催眠は強いのよ!)ュパ

女「んんん///」

早乙女(催眠因子注入…ちゅうにゅー)チュウチュウ

女「は、ん…む///」ジタバタ

早乙女(女同士でも、この量の催眠因子があれば十分でしょ)

女「んんん///」ガクガク

チュパン

早乙女「…ふぅ」

女「…ぷはぁ、何するんですか!!?」

早乙女「ふふふ、残念でした。あなたはもう私のト・リ・コ(はぁと)」

女「ひんっ///」ビクツ

早乙女「このまま一緒に研究所まで来てもらおうかしら!ホホホ!」

女「ひ、ひ、ひ///」

早乙女「いやぁひと仕事終わりね」

女「ひ…」

早乙女「?」

女「ひっくし」ブシュッ

早乙女「…へ?」

女「…もー。早乙女さんも酔ってるでしょう」ズズッ

早乙女「な、なぜ!?」

女「はい?」

早乙女(そんな…!?催眠因子は確実に体内に注入したはず…)

女「?」ケロリ

早乙女(同性だから?いや、そんなバカな!同性に対しても有効なのは学会で証明されているわ…)

女「どうしたんですか?」

早乙女(そう言えば聞いたことがあるわ。…催眠因子に対する抗体が出来る例があるということを)

女「さーおーとーめーさーん?」

早乙女(確か、レズの体液を体内に摂取した被験者。まさかこの子も?)

早乙女(でも、…この子はレズに見えないし)

早乙女(とにかく、催眠因子の効果がないということだけは確かだわ。誰だか知らないけれど、余計なことしやがって…)

女(なんか黒江さんにもちゅーされた記憶があるなぁ。魔界では普通なのかな?)

女「大丈夫ですかぁ?酔ってる?」

早乙女「あ、ははは大丈夫よ」

女「そうですか。…ヒック」

早乙女「?」

女「ほにゃぁららら!!」バビョーン

早乙女「!?」

女「ふにゃぁー!」ビリビリ

早乙女「きゃぁぁん///」スポーン

女「ふにゃううぅ」モミモミチュゥゥ

早乙女「や、らぁ///そんなに強く吸っちゃらめ!」

早乙女(な、なに!?何が起こったの!?)

女「ふぅふぅ」ハァハァ

早乙女(そう言えば、抗体保持者に起こった特異事例があった…。確かそれは)

女「おっぱい…」フラフラ

早乙女「アナフィラキシー反応」

女「おっぱいー!」

早乙女「抗体の過剰反応が彼女を混乱状態に陥れたと言うの…?」

おぉ、こんなところで黒江さんが絡んでくるとは。
俺はまだ黒江さんは生きてると信じてるぞ。
それと、1乙ね。

そうか俺はアナフィラキシー反応をしていたのか

おっぱい

あでもちっぱいも捨て難い

黒江さん・・・ここまで見越して・・・!

さすがの黒江!

続きが気になる!!

病院行ってたからしばし待たれい!

おう、大丈夫か? お大事に早く!

夏風邪かな?
お気をつけてー

はやくピチピチになって!

おいついた支援

ちくしょう…もう二度とパチスロ打つもんか
いいもん!手術で保険でるからいいんだもん!

書くよ
見てる人いるんかな?

みてますよ。でもバチンコはもうやめた方が良いですよ。

女「おっぱいー!」ジタバタ

早乙女(こ、困ったわ…。催眠して誘導するつもりが…)

女「…」ジー

早乙女(お、おっぱいを見ておられる)

女「ください」

早乙女「へ?」

女「おっぱいください」ウルウル

早乙女(こ、懇願してる!?…でもこれを利用すれば誘導出来るかも)

早乙女「ほ、ほーらおっぱいよ」フリフリ

女「…」プイッ

早乙女「…?」

女「見えない」ボソッ

早乙女(な、生で見せろと言うの!?)

女「おっぱいどこー?」キョロキョロ

早乙女(ぐぬぅ…。周りに気配はないし、やむを得ないか…)

ポロリ…プリン

早乙女「ほぉら、おっぱいよぉ」

女「わぁい!」トコトコ

早乙女「ほぉら、こっちこっち」

早乙女(…)

早乙女(私は一体、なにをやっているのかしら…)プリン

おっぱい!

【ぶどう園:中腹】

ドカァァン

田村「あぁ!私のぶどうが!妻のぶどうが!」

骨田「こわす…」バキバキ

岩村「…やめろ骨田!聞こえてないのか!?」

鎧谷「様子がおかしい…。まるで操られているようだ」

骨田「…おっぱいがいっぱい」

岩村「…!?」

鎧谷「今の聞きましたか?」

岩村「ああ、聞いた」

鎧谷「ぶどうをおっぱいと勘違いしている…」

岩村「…」

鎧谷「たわわなぶどうをおっぱいと勘違いしている!」

岩村(何言ってんだコイツ…)

鎧谷「骨田ー!やめろー!ぶどうはおっぱいじゃないぞー!」

岩村(コイツも操られてんのか…?)

んー、おっぱーい

おっぱい

【ぶどう園:最奥】

早乙女(…)プリンプリン

女「わぁい」トコトコ

早乙女(…とりあえず山を降りるまでは生おっぱいでいいけど、駅までどうしよう…)

女「ふにゃ?」

早乙女「あれ?」

女「おっぱいがいっぱい」

早乙女「え?おっぱいは二つしか無いわよ?こっちおいで」

女「いっぱいがおっぱい…」フラフラ

早乙女「え、ちょっと!そっちにあるのはぶどうよ!」

女「ぜんぶ、ぜんぶあたいのものだ!」タッタッタ

早乙女「あ、コラ!待ちなさぁい!」

成る程、つまり早乙女さんのおっぱいの先端はブドウのような色に色素沈着g

骨田「ふはは!おっぱいがこんなにたくさん!」

田村「や、やめてくれぇ!それは得意先に出荷する分なんだぞ!」

骨田「いただきまぁす」パクリ

田村「あああ!」

骨田「うぅん。甘酸っぱい。さすがおっぱい」

鎧谷「やっぱりおっぱいと勘違いしてますよ!俺の言ったとおりだ!」

岩村(…んなアホな)

骨田「もう一つ…」


「 ま て ぇ い !」


骨田「ナニヤツ!?」

あれ?岩村さんもゴーレムのくせに覗き隊一同に参加してなかったっけ?

乙ぱい

乙ぱむ

???「この世には年齢の割には、あまりにも大きなおっぱいを持つ者がいる」

骨田「!?」

???「人それを、「ロリ巨乳」と言う」

骨田「くっ!誰だ!?名を名乗れぃ!」

女「貴様に名乗る名はない!!」



鎧谷「いやいや」

岩村「…正体モロバレやん」



女「よくも私のおっぱいを食い散らかしてくれたな!」

骨田「ふはは!このおっぱいはすでに我々の物だ!」

女「悪の手先などに渡すものか!とうっ!」



田村「だから私と妻のぶどうだって言ってんだろぉおぉぉあ!!!」

鎧谷「なんかあの子も様子がおかしいですねぇ」

岩村「…混乱している?」

鎧谷「操られている可能性もありますね」



骨田「小癪な!かかれ者共!」

イーグル「イー!」

ホーネット「イー!」

女「甘い!『爆発呪文』!」キュイイィン

ピカッ

ザコ「!?」

ドカァァン!!

ザコ「ウギャァァア!!」



鎧谷「うわ、あれ高位呪文ですよ。詠唱無しとか高等資格持ちでも難しいのに」

岩村「…前の時と同じだ」

鎧谷「え?」

岩村「…俺が体を乗っ取られた時の話だ」

鎧谷「タスンブセの洞窟…魔神クラスのヤツが相手だった時のやつですよね?」

岩村「…ああ。あの時もあの子は意味不明な言動を口にし、圧倒的な力をもって魔神に乗っ取られた俺を相手にしていた」

鎧谷「圧倒的な力…」



女「せい!『空間圧縮魔法』!」グンッ

ズゴゴゴッ!

骨田「ぎゃあぁ!」ポキポキ

田村「ああ!ぶどう園が!ぶどう園が!」



岩村「お前もあれを見て何か気付いてるんじゃないのか?」

鎧谷「…勇者の力」

岩村「…」

鎧谷「あれは間違いなく先の大戦で猛威を振るった勇者のお家芸です」

岩村「…何者なんだろうな。あの子は…」

鎧谷「とりあえず言えることは」

岩村「?」

鎧谷「おっぱいがデカい」

岩村「…ああ」

鎧谷「すばらしい」

岩村「…ああ!」


タッタッタ

???「…はぁ、はぁ!」

鎧谷「ん?あれは…」

早乙女「誰かぁあの子を止めてぇ」

岩村「…早乙女?っておお!?」

早乙女「ちょっと!あの子を止めて!」

鎧谷「て、手ブラだと…」

早乙女「お願いあの子を止めて!事情は後で話すわ(モチロン嘘だけど)」

岩村「す、すごい破壊力だ。たわわに実ったおっぱいを最低限の面積で隠すことで倍以上の威力を発揮している…」

鎧谷「それも走ってきたせいか汗でテカテカ光っている…。それがエロさを3倍…いや3乗以上にしている」

岩村・鎧谷「すばらしい」

早乙女「ちょっと!聞いてるの?緊急事態でしょ!私じゃあの子を止められないのよ!」

岩村・鎧谷「へ?」

早乙女(企画課には変態しかいないってのは正解だったようね…)

おっぱい!

おっぱい!

乙ぱい!

岩村「…と言ってもなぁ」

鎧谷「あの子あんなに強かったんですか?」

岩村「測定した時よりも大分強くなってる」

早乙女(おかしい…。混乱はさせてしまったがそれで強くなるわけはない)

鎧谷「あれじゃ僕らでも手に負えないですよ」

岩村「課長クラスじゃないとなぁ」

早乙女(ちぃっ…!騒ぎを起こすつもりが、あの子自身が事の中心になるなんて…)

早乙女(でも、とにかくこれを止めないことには…)

早乙女「どうにもならないの…?」

鎧谷「そう言われましてもねぇ」チラチラ

早乙女(コイツラはさっきから乳しか見てないし…)

岩村「あ、なんか様子がおかしい」



骨田「く、くそう!動くな!このおっぱいがどうなってもいいのか!?」

女「私のおっぱいが!?」

田村「おぃいい!お前らのじゃねぇし!勝手に人質にすんなしぃぃ!!」



鎧谷「ぶどうを人質(?)にとってる…」

岩村「混乱してもやることがセコいな」

女「卑怯だぞ!」

骨田「ふはは!何とでも言うがいい!」

女「ぐぬぅ…!」

骨田「ほれペロペロしてやる」ペロペロ

女「や、やめろぉ!」

田村「それはこっちのセリフだ!お前らやめろぉ!」

骨田「くくく、手も足も出まい!おっぱいは大事だものなぁ」

女「くそう…」

骨田「はーはっはっは!」

女「…めん」

骨田「?」

女「ごめんね。おっぱい」

骨田「なに?」

女「あたし決めた。あんたに弄ばれるくらいなら、あたしの手でそのおっぱいを、ここにある全ておっぱいを…」

田村「…?」

女「最大火力でぶち壊す」

田村「何言ってんだコラァアァ!!!」



岩村「…なんか物騒なこと言ってるぞ」

鎧谷「あ、なんか唱え出しましたよ」

ねたらしぬぞ

エライ事にww

乙・・・ぱいッ!!

女『汝、豊乳の祝福賜らば、快をもって永久の眠りへ誘われるだろう』

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

女「永久なる福乳(エターナルボイン)」

骨田「!?」



岩村「…なにあれ?乳とか言ってたけど」

鎧谷「あ、あれは原始魔法『エターナルボイン』!」

岩村「…はい?」

鎧谷「創世記に起きたビッグバンのエネルギーを一部タイムスリップさせることで現代に召喚する魔法です」

岩村「…何で乳?」

鎧谷「あまりにも巨大なエネルギーなので、相手を包み込む様に抹消する…その光景がまるでおっぱいに包まれる様で、母性を感じるからだそうです」

岩村「…詳しいね」

鎧谷「ヒストリーチャンネルでやってました」

岩村「…どれくらいすごいの?」

鎧谷「ぶどう園一帯くらいは無に帰しますよ」エッヘン

岩村「…俺らもヤバいじゃん」

鎧谷「あ…」

女「くっ…召還転移がこれほどまでに魔力を食うなんて…!」ガクガク

???『力を貸そう』

女(誰?)

???『お前が正義を成すとき、常に側にいるものだ』

女(正義?)

???『そうだ、悪しき魔物どもを蹴散らせ。破壊しろ』

女(悪しき…魔物?)

???『そうだ』



骨田「お、おっぱいがどうなってもいいのかー!?」



女「悪しき…魔物。分かった。殺す」

???『それでいい』




『ほら、早くコピーくらい取ってきてなさい!』





女「!?」

女「黒江さん?」

女「だめ…魔物は殺さない」

???『!?』

女「みんな大事な先輩だもん…」



骨田「ほね?」



女「あのカルシウムも…一応」

???『その聖なる力を魔物のために使うとぬかすか』

女「そんな力…いらない」

???『利用されるとも知らずに…』

女「もういい…。帰って」

???『…』スゥゥ

女「…」

女「とにかくこの魔法を止めなきゃ」



鎧谷「またまた様子がおかしいです」

岩村「…に、逃げなくていいのか?」

早乙女(…今、確実に属性が変異した。勇者が得意だった聖属性に…)

乙ぱい

おつぱい

乙ぱい

ここってほっとくと落ちるっけか?

今夜書くお

一ヶ月程度は大丈夫なんじゃ?

今夜期待してる!

>>1の生存報告が一月だか二ヶ月ないと落ちたはず

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乙ぱま

南海難波か近鉄阿部野橋あたりから
直通の特急がありそうな気がする
あるいは京王新宿から準特急か

そろそろか……

骨田「あれ、ここは…?」


早乙女(誘惑が自然に解けかけてる?そんなバカな…)

早乙女(「勇者の力」とでも言うの?永久継続系の魔法に介入するなんでメチャクチャだわ…)



女「とにかく次元の扉を仮止めしてと…」

鎧谷「おーい、大丈夫か?」

岩村「もう混乱は収まったか?」

女「ええ、一応…」

鎧谷「エターナルボインの方は?」

女「仮止めしました」

鎧谷(仮止め…?維持するだけでもとんでもない量の魔力が必要なのに…)

女「すみません…。あたしも何がなにやら分からなくて」

岩村「とりあえず気にするな。まずは落ち着いて魔法を止めろ」



早乙女(…)

早乙女(あまりもあの子に都合のいい展開が続いている…)

早乙女(勇者…?なにかそれ以上のもので形容されるべきだわ)


女「ふんぬぅぅ」

グニニニニ

鎧谷「…力ずくで閉まるもんかね」

岩村「…もう魔力とかそういう問題じゃなく、スゴいな」

女「せいっ!」

ピシィン

女「しまりました」

鎧谷「お見事」

骨田「あいてて…。先輩!何があったんですか?」

岩村「お前も混乱が解けたか」

骨田「何がなにやら…」

鎧谷(ぶどうをおっぱいと勘違いしてたとは言えんな…。言ってる自分が恥ずかしい)

犬崎「わぉん(おい!お前らなにやってんだ!)」

辰川「帰るぞ」

女「夕飯やー!」

鎧谷(あれだけぶどう食っててまだ食べるか…)



早乙女(万事休す…ね。お手上げだわ)

早乙女(もう時間がない…)



魚沼(…)

田村ァ!




田村「は、ははは」

田村「妻のぶどう園が、妻のぶどう園が」

田村「はははははは」

田村「もう終わりだ!あははは」

『諦めないで』

田村「!?…お前なのか!?」

『ええ、諦めないで、あなた。ここに、良質な種があるわ。また始めましょう…』

田村「おお、おおお!…分かった!諦めるものか!」

田村「やるぞー!」


グニン!


田村「へ?」

ズオオオオオオ!!

カッ!

田村「あ」



~旅館~

ニュースキャスター『今日19時頃、トスキラ山のぶどう園で大規模な爆発があり、付近一帯が消滅しました…』

鎧谷「昼間にウチが行ったところじゃないですか」

岩村「…物騒だねぇ」

女「…」

骨田「どうしたの?」

女(魔法の止め方が分からないから力ずくで閉めただけってのは黙っておこう…)

うわああああ田村あああぁぁぁ!

田村ぁぁぁぁぁぁぁぁ!

たむーーーーーー!なむさん

始めて女に殺意がわいた

夜…

夕食を済ませると、当然のようにビールが運びこまれた



辰川『えー、マイクテス。マイクテス。犬崎は昨日浮気した。犬崎は昨日浮気した』

犬崎「わぉぉん!(ちょ!おぉおいぃ!!なに勝手にカミングアウトしてんのぉぉぉ)」

辰川『…よし、聞こえてるみたいだな』

骨田「…課長最低ッス」

岩村「…セクハラ課長」

犬崎「くぅん…(ヒドいや…ヒドいや…)」

辰川『みなさん、こんばんは。部長の辰川です』

犬崎「わぉぉん!(知ってるぞー!このセクハラドラゴンめぇぇ!!!)」

辰川『うるせぇぇ!!』

早乙女(やっぱこの部署には変態しかいないのね…)

辰川『まずは、日頃の業務お疲れさま。例年通りならば、これから年末にかけて忙しくなるだろう』

犬崎(例年通りならな…)

早乙女(まぁ、そうはいかないでしょうけど…)

辰川『しかし、諸君等の実力ならば乗り越えられるだろう。これから頑張っていこう』


…パチパチパチパチパチパチ



辰川『では、カンパイ』


  「カンパーイ」


鎧谷「現在の社内状況については触れず、か…」ヒソヒソ

岩村「でも、きな臭くなってきたのはみんなウスウスと気付いてるようだな」ヒソヒソ



女「んぐぅ…んぐぅ…」ゴキュゴキュ

骨田「…ふにゃん」zZz


鎧谷「一部を除く…か」

岩村「まぁアイツらは若いし」

乙です。
骨田さんも若い部類に入ってるのか~
みんな人間換算で何歳くらいなんだろ?

飲み会は盛り上がりに欠けた

平静を装う顔から時折漏れる不安と警戒心

それがその静寂の要因となっているのかもしれない

しばらくすると、次第に小グループに別れ、皆、秘め事を打ち明けるように声を潜めあうのであった

それはこの二頭も例外ではない


犬崎「くぅん(魔王城の動きは?)」ヒソヒソ

辰川「残っている部署の社員に第二種戦時体制を発令している。退役した連中も召集しているようだ」ヒソヒソ

犬崎「わん(数が集まるのは時間の問題か…しかし)」ヒソヒソ

辰川「うむ、「勇者の力」の研究の進捗は…分からない。社内秘の中でもトップクラスだ」

犬崎「わぉん(しかし…、社員のほとんどが何かしら感づいているようだが)」

辰川「うーむ、80年ぶりに社内旅行なんて企画したのが怪しかったかなぁ…」

犬崎「くぅん(鬼部長さまさまだな)」

そういや最初の頃「担当」って居たよな
あいつはどうなったんだろ

>>262
人間換算っていうか

辰川580才→48才
犬崎320才→35才
鎧谷315才→28才
岩村320才→35才
黒江280才→25才

種族バラバラで分からんので、精神年齢的な感じで解釈してちょ
実年齢は大雑把だからあんまり気にしないでね

早乙女(ふぅ…困ったなぁ。このままじゃボーナスの査定に響いちゃうよ)ハァ

魚沼「…早乙女さん」

早乙女「!?」ビクッ

魚沼「手伝ってあげる」

早乙女「…え?」



中居「失礼しまぁす!」

辰川「なんだなんだ?」

中居「ご注文の品でーす」

犬崎「わん(おぉ、酒か?芋焼酎だな)」ヒック

辰川「銘柄は…『地獄恋物語』?なんか物騒なラブストーリーだな…」ヒック

女「!?」ビクッ

犬崎「わぉん!(いいから開けろぃ!)」ヒック

女「ちょっとま」


キュポン…

  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

犬崎「わん?(ん?)」

女「じ、地獄シリーズ!?」

辰川「な、なんだ!?この膨大な魔力は!?」

犬崎「わん(空間が軋んでいる…。間違いない!魔神だ!)」

一同「きゃぁぁぁ」

一同「逃げろぉぉ!」

辰川「圧倒的…圧倒的すぎるぞ」

一同「う…」ガク

犬崎「くぅぅん(ダメだ…。魔力の低い奴らが魔力に中毒っている。私も…)」ガクガク

女「か、課長!部長!2人がダメだったらもう…!」



早乙女「う…。ど、どういうつもり!?あなたが用意したの?」ガクガク

魚沼「あなたは手緩いの。金子様も時間が無い」

早乙女「!?…あなたも金子様の?」

魚沼「「も」?違うわ。差し向けられたのは私だけ。あなたは贄よ」

早乙女「…え?」


地獄恋物語『カカカ!我ヲ呼ンダノハ誰ダ!?』

地獄恋物語『ヨモヤ現世ニ復活デキル日ガ来ヨウトハナ!』

地獄恋物語『カカカ!』

安定の地獄シリーズ

流石地獄シリーズ

あと忘れてはいけないのが
安定の中居くん

久々の地獄シリーズだな

魚沼「呼んだのは私」

辰川「魚沼!?どういうつもりだ!」

地獄恋物語『ホウ。矮小ナル者ヨ。封印ヲ解イタ褒美ダ。願イハ?』

魚沼「あれの転送。因子の影響で彼女の運命に介入できないの」スッ

鎧谷(因子?)

地獄恋物語『アレ…?』

女「あたし!?」

地獄恋物語『ナルホド。確カニ厄介。因果ノ中心ニイル存在ダ』

女「な、何を言って…」

地獄恋物語『…贄ガ必要ダ』

魚沼「ここに」

早乙女「え…?え…?」

地獄恋物語『さきゅばすカ…。良カロウ。彼ノ者ノ命運ヲ歪マセルニハ十分ナリ』

早乙女「あ…あああ…あああ…」ガクガク



  『待てぇい!』


地獄恋物語『ナニヤツ!?』

???1『中居さんの要請が無かったら今頃遅れていたよ』

???2『ああ、まったくだ』

???3『台湾のファンが待ってるんだ。早く終わらせよう』

???4『あれ?リーダーは?』

???5『ま、待ってぇな』ハァハァ

???1『おせぇよ。リーダー』

???5『長瀬が早いねん。俺はまだトイレにいたやん!』

地獄恋物語『エエィ!ナンダトイウノダ!』

???2『紹介が遅れたね』

???1「長瀬!」

???2「松岡!」

???3「国分!」

???4「山口!」

???5「城s

長瀬「5人合わせて!」

一同『 T O K I O !!!』

ズォォ!

地獄恋物語『グォ!』ビリビリ



女(嵐じゃないのか…)チッ

国分「嵐じゃなくて悪かったな!」

女「」ビクッ

SMAPどこ行ったwwwwww

リーダーwwwwwwwwww

ドリ○ンドから召喚されてるw

やはりトキ夫ww

ドリ○ンドじゃないですか

長瀬「魔神の封印は任せろ!『マイ★ボス マイ★ヒーロー』!!!」

地獄恋物語『グォォ!!!』

山口「『長男の嫁』!!!」

グッ!ドバァァァァ!!!

地獄恋物語『ガァ!』

国分「『ザ・シェフ』!!!」

松岡「『サイコメトラーEIJI』!!!」

地獄恋物語『ガ、ガハァ!!!!』

城島「『愛のエプr

地獄恋物語『それドラマじゃなくね?』

城島「あっ、すんません…」

女(魔神もテレビ見るんか…?)

地獄恋物語『スキアリィィ!!!』

TOKIO一同「しまった!」

城島「ぎゃあぁぁ!!」

国分「リーダー!!」

山口「大丈夫か!?」

城島「わ、わしのことは気にせんでええ…アイツを…」

長瀬「よし!気にするのはやめよう!リーダー抜きで行くぞ!」

城島(え?)

松岡「あれだね!」

山口「行こう!必殺!!」

ゴゴゴゴゴ…

TOKIO(城島除く)『鉄 腕 D A S H !!!!!』

  ピカッ

     ドグワァ!!!

地獄恋物語『!?』

ダメだww

毎回この流れでやられるwww

>>283
さてはお前魔神の類だな

はぐれ刑事ェ

女は嵐じゃなく関ジャニ派だと思ってたなあ

たむたむこと田村の再登場はまだか!

地獄恋物語『グワァァアァア!!!』

TOKIO(城島除く)「おりゃぁぁぁ!!!」

地獄恋物語『グヌヌヌヌゥウ!!』ググッ

長瀬「!?」

山口「く、くそっ!!押されてる!」

国分「リーダーがいない分、威力が足りていない!」

松岡「最大時の5割程度か…!こんな時に…!!」

女(リーダーすげぇな…)

地獄恋物語『ククク!この程度か!ならば!』

TOKIO(城島除く)「!?」

地獄恋物語『ハァ!!』

TOKIO(城島除く)「うわああぁ!!」キラッ

城島「みんなー!!」

地獄恋物語『フハハハハ!!』

城島「く、くそぅ…ワシさえしっかりしとれば!」

地獄恋物語『居ネィ!!』

城島「ぎゃあぁぁ!!」キラァッ



女(何しにきたんだか…)

魚沼「…邪魔がはいったけど、これで問題はないはず」

地獄恋物語『ウム。デハ、彼ノ者ヲ示サレタ地へ転移サセル。…贄ヲ』

早乙女「いや…いや…」

魚沼「ばいばい」

早乙女「ぁぁぁああぁあ!!」グチャリ


きぃいぃいん


女「うわっ…」フワリ

犬崎「わ、わん(待て!)」

女「課長…!」

魚沼「目的地は…王立魔法研究所!」

地獄恋物語『御意』

女「か

バシュウッ!!!

辰川「し、しまった!魚沼ぁ!どういうつもりだ!」

魚沼「これは必然。魔界が確実に動きはじめた」

辰川「なんだと?」

魚沼「運命さえもねじ曲げる力を魔王様は手に入れたの」

辰川「「勇者の力」か…!?」

魚沼「そんな陳腐な名前で呼ばないで」

辰川「なんだと?」

魚沼「その力の名は…」

辰川「?」

魚沼「…いけない、喋りすぎちゃった。金子様が怒ってる」

辰川「金子の手先だったか…!」

辰川「金子がなんと言おうと、ここで洗いざらい話してもらうぞ!」

魚沼「残念だけど、時間切れ。魔神さん」

地獄恋物語『力ヲ使イスギタ…贄ヲ』

犬崎「わん(TOKIOとか言う連中のダメージが効いているようだ!)」

辰川「魚沼どけ!魔神を放っておくわけにはいかない!」

魚沼「だめ。魔神さんには帰って貰うの」

地獄恋物語『帰ラナケレバ、シカシ、えねるぎーガ…贄ヲ』

魚沼「私の命を」

地獄恋物語『スマヌ…』

辰川「や、やめろ!魚沼ぁ!」

魚沼「ばいば グチャリ

地獄恋物語『コレデ、帰レル…』スゥゥゥ…

鎧谷「魔神が消える…」

犬崎「わん(貴重な情報源と一緒にな…)」

辰川「…くそがぁ!」

ええええ

このssで死者がでるとは…

ついにBパートか

>>292
黒江は?

やっぱtokioじゃダメだったか・・・

だから関ジャニにしとけとあれほど・・・



その後、一連の騒ぎで宴会どころではなくなってしまった営業部一行は
旅行を中止し、明日帰宅することを決定した



辰川「くそっ!まさか営業部内にスパイがいたとは…他のヤツもまさか」

犬崎「わん(疑心暗鬼になるな。いたとしても、何も変わらん)」

辰川「ぬ…」

犬崎「くぅん(目的のブツはしっかり魔王の手に渡ったらしいからな)」

辰川「あの娘…やはり「勇者の…」

犬崎「わん(どうやら、その呼び方も相応しくないようだ)」

辰川「くそ!そんなことはどうでもいい!問題なのはそんなもののために俺の部下が…死んだ!」

犬崎「わん(スパイだったんだぞ?)」

辰川「それでも…!俺の部下だ…。早乙女も、魚沼も、あの子も」

犬崎「わん(部下思いだな…)」

辰川「「部長」だからな」



辰川「とにかくこれからどうするか、だ」

犬崎「くぅん(ヒントならある)」

辰川「『王立魔法研究所』…」

犬崎「わぉん(…それ、なんだっけ?)」

辰川「先代魔王の時代からある、魔王直属の魔法研究機関だ。あそこから日々、新しい魔法が生まれている」

犬崎「くぅん(こ、高校行ってないから知らなくて当然だもん)」

辰川「常識だ。常識」

犬崎「わん!(どこにあるんだ?)」

辰川「場所は…魔王城城下町にあったはずだ」

犬崎「くぅん(なるほど、そこに連れて行かれたか)」

辰川「まぁ、言葉を鵜呑みにすればな」

犬崎「くぅん(じゃあ俺も課長らしいところを見せるかな)」

辰川「行くのか?」

犬崎「わぉん(ああ…。魔王のやってる研究も気になる)」

【帰路】

辰川「私は先に戻って魔王に直談判してみる」

犬崎「わん(分かった。営業部の連中は任せろ)」



鎧谷「…魔神まで出る騒ぎがあって、死人はスパイだった2人だけか…」

犬崎「わん(手ぬるいと?)」

鎧谷「そこまで言うつもりはないですが、やり方に甘さがありました。例えば…スパイ自身が生贄になったり」

犬崎「くぅん(ふむ。確かに。生贄なんて営業部の一般社員からムリヤリ出せば良いだけの話ですからね」

鎧谷「犠牲を最低限に抑えようとする意志みたいなものが感じられるんです」

犬崎「わん(魔王の意志…かも)」

鎧谷「魔王様の?」

犬崎「わぉん(どいつもこいつも甘ちゃんだってことですねぇ)」

鎧谷「僕もですか?」

犬崎「くぅん(君も、私もですよ)」

骨田「電車来ましたよ!」

犬崎「わん(行きますよ)」

鎧谷「はい!」

【???】

女「…」

女「ほにゃ?」

女「ここは…」

金子「おはよう」

女「誰?」

金子「秘書課長の金子です」

女「はわ!お偉いさん!?ふつつつかものですが…」

金子「緊張なさらないでください」

女「はぁ」

金子「あなたがなぜここにいるか分かります?」

女「?」

金子「分からないならよろしい。おい、催眠魔法を最大レベルで投射しろ」

研究員『了解』

フワワワワワァァ

女「ほにゃん…」ガクリ

金子「おやすみ。被験者さん」

【実験場?】

金子「では、抽出を開始する」

研究員A「第1、第2魔力バルブ解放」

研究員B「カプセル内に高魔力場発生。圧力40…50…」

金子「70で安定させろ」

研究員C「高魔力場の影響で、催眠魔法が遮断されます」

女『…?』

研究員D「被験者覚醒」

金子「麻酔投与。被験者が暴れたらカプセルがただではすまんぞ」

研究員E(おっぱいでかいな…)

金子「おい。早く麻酔を投与しろ」

研究員E「あっ、すみません」

女「…!?」グゥ

金子「麻酔効くの早っ」

研究員A「反物質α固定完了」

金子「よし、やれ」

女「…!!!」

  



【新入社員は名探偵シリーズ・トスキラ温泉殺人事件~濡れたうなじは殺しの香り編】…完

なんか中途半端だけど、一端ここできります

誰だ殺人事件なんて風呂敷広げたのは!金田一全巻読み返しちゃったじゃないか!
一つの話で300レスも潰しちゃったじゃないか!

さて、ゆるゆるやりますよ

乙です


なんで旅館にこんな物騒なもの置いてたりメニューに載ってるんだww

まさかシリーズ化するとは思わなかったよww
乙です

【新入社員の沈黙編】

「ある勇者の力に関する研究日誌」

○月×日
戦争終結から数ヶ月が経った今日、新たな魔王様から勇者の力の解明を命ぜられた。
まず、勇者の力?を持つ存在を探さねばなるまい。

□月×日
研究が芳しくない。そもそも、勇者の力?とは何なのか。非常に不明瞭かつ不可思議だ。
一節によると、運命めいたものを引き寄せる力があるとかないとか。
そんなモノを如何様にして研究すればよいのか。いや、探し出すことも無理なのではないか。

△月○日
数ヶ月経ったが進展はない。しかたないので、無作為にさらってきたサンプル(およそ命ある多種多様の生物)を檻に入れて観察することにした。
運命を引き寄せるのならば、運命的に向こうからこの研究に参加してくれるやもしれぬ。
などと期待はしつつも、半信半疑なのは否めない。

★月○日
個体ごとに檻へ入れて観察をはじめたが、何ら変化はない。
監理が面倒なので、全部を一カ所にまとめて観察することにした。
場所は魔王城城下、旧市街地。なるべく普段の生活環境に近づけることで変化を促してみる。

×月○日
ある個体(ドワーフ)からおかしな観察結果が得られた。しかし、何とも言えない結果だ。
自発的な行動から発生した結果ではない。個体の行動に付随するように偶発的な事象が立て続けに起きている。
昨日は、その個体が食パンを加えて曲がり角まで歩いた際に、曲がり角から美少女(エルフ)が飛び出して来てぶつかっていた。
さらに、車に轢かれそうになり、たまたま持っていた。
さらにさらに、学校に着くと生徒会長(人間♀)に絡まれていた。一緒に登校してきたエルフを見てヤキモチを焼いたらしい。
また、休み時間には保険医(天使♀)に保健室へ連れ込まれ、破廉恥な行為を強制されそうになっていた。
下校時には、一緒に旧市街地に監禁していた虎に襲われたが、投げたボールが偶然急所に当たり、事なきを得ていた。
おかしい。彼が望んだワケでもない。彼になんら能力があるわけでもないのに、彼の周囲で彼を中心に事が進む。
それに、やたらモテる。悔しいからコッソリ火炎魔法を撃ってやったら、バナナの皮で滑って川に落ちて回避された。
間違いなく彼の意志ではない。まるで運命が彼を味方しているようであった。
ただ、戦闘にあまり関係が無いように思われる。これが「勇者の力」なのだろうか?

【所長室】
営業部が温泉旅行に行っている最中


???「…むにゃぁ」

「…さい」

???「ほにゃ?」

「…起きてください!所長!」

所長「…んんん?」

助手「会議の時間ですよ」

所長「え?もうそんな時間!?」

助手「はい。何をなさってたのですか?」

所長「前任者の研究日誌を徹夜で見てたのよ」

助手「勤勉ですね」

所長「これも魔王様のタメよ」

助手「はぁ」

所長「行ってくるわ」

助手「はい。書類は整理しておきます」

ガチャリ



助手「記憶の操作は安定しているようだな」

「さて、新所長のおいでだ」ヒソヒソ

「本社の人間なんだろ?畑が違うんじゃないの?」ヒソヒソ

「かなりの才女らしいぜ。それも美人」ヒソヒソ

「人型の魔物なのか?」ヒソヒソ

「ダークエルフらしい」ヒソヒソ

ガチャリ

所長「お待たせしました。では、会議をはじめましょう」

司会「まずは、就任に当たり、新所長から一言お願いします」

所長「はい。…お初にお目にかかります。新しく所長に就任しました黒江です」

重役A「…」

黒江「大学時代は魔法学を専攻していたので、この研究所で働けることを心から嬉しく思います」

黒江「まだ分からないことが多く、ご迷惑をおかけしてしまうことがあると思いますが、どうかよろしくお願いします」

パチパチパチパチ

重役B(この時期に異動…。それも同系列とはいえわざわざ会社を跨いで、か…)

重役C(それにしても、あまりにも若く経験が浅い。前所長の経歴と比べれば一目瞭然)

重役D(この人事、本社さんの方で何らかの企みがあると考えるのが妥当か…それにしても)

重役一同「かわいいなぁ…」

黒江「は、はい?///」

重役一同「いやいや、こっちの話」

えー

なるほどこうきたか

重役B「質問があります」

黒江「はい?」

重役B「新所長の経歴、見させていただきました。…なるほど、異例の早さで4つの大学院を卒業。学力は申し分ない」

黒江「はぁ、ありがとうございます」

重役B「しかし、(株)魔王城では秘書課にて働かれてますな?主だった役職にも付いていない」

黒江「そんな私がいきなり所長という役職に就くのは不自然であると?」

重役B「そこまで言うつもりはありませんがね」

重役C(コイツも研究職から上がって来た人間だからなぁ。空気読めないと言うか、読まないというか)ニヤニヤ

黒江「そう思われるのは仕方のないことです。しかし、これは金子様、そして魔王様からの命令なのです」

重役D(なるほど、金子のシンパか。…あの人も野心家だからなぁ。大方、研究所を勢力下に置きたいんだろう)

重役B「なるほどなるほど。ならば私からはもう何も言いますまい。ただ1つを除いては」

黒江「?」

重役B「私たちは「駒」では無いことをお忘れなく」

黒江「…心得ておきます」

重役B「それともう1つ!!!」

黒江「は、はい?」

重役B「スリーサイズを教えて頂けませんか?」

重役A「それはワシも気になっていた」

重役D「私もだ」

重役C「お願いします」

司会(このスケベ親父ども…)

黒江「え?あっ?上から74・52・83…っておい」

重役B「なるほど…おっぱいが残念だな」

重役C「スタイルは良いが、やはりおっぱいがネックか…」

重役A「惜しまれるなぁ」

重役D「豊胸魔法ってなかったっけか…?」

黒江「う、うるさーい///!!!」

黒江「とにかく、会議すんの!」

重役D「会議ねぇ。話す事ある?」

司会「研究の進捗状況は逐次所長に報告してますしね」

重役B「所長はアレ知ってんの?金子くんの部下だったら知ってて来たんだよね?」

黒江「もちろんです。「勇者の力」…」

重役A「もう学会でもそういう呼び方してないよ」

黒江「はぁ」

重役B「まぁアレを知ってるなら話が早い」

黒江「一応報告書などには目を通しました。…どうやら滞っているようですが」

重役A「うむ。学問とは壁に当たるものだ。往々にして時間が解決してくれるがね」

重役B「しかし、今回は急を要するのだろう?」

黒江「はい。金子様が私を派遣したのもそのためです。一刻も早く、解明、そして実用化せよとのことです」

重役D「椅子に座るのが仕事な奴らがよく言うね」

重役C「まったく」

黒江「あら、それだけが仕事じゃないんですよ。極上の研究材料を用意します」

重役A「ほう…」

重役B「ウチの研究員はグルメだよ…?満足できるのかい?」

黒江「ご期待に添えるものであると、金子様は申しておりました。…資料を」

司会「はい」

ピッ

ヴォン

黒江「この子は被験者A、(株)魔王城営業部企画課所属…だそうです」

重役B「…人間か!?」

重役A「本社は人間を雇ったのか。経営体質が変わったのか?」

重役C「いや、人間にも魔族向きなのはいるさ。それよりもだ…」

重役D「身内から実験体を出すか。そうとう切羽詰まってるね」

黒江「…?」ジー

司会「どうかなさいましたか?」

黒江「えっ?いや」

司会「?」

黒江(私もはじめて見るけど…なんか既視感のある子だな。好みのタイプだわ)

重役D「にしてもだ!」

重役A「素晴らしいおっぱいだ!」

重役B「やはりおっぱいはこうでなくてはな!」

重役C「うむ!…」チラッ

黒江「」

重役C「…」ハァ

黒江「おいジジイ。今なんでため息ついたのか説明しろ」

司会「落ち着いてください」

黒江キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
記憶が消えてるんじゃなくて忘れてるだけならいつか思い出すよね!

魚沼や早乙女も操られてたのかね?
それであの死に方だとしたらなんか可哀想かも。

まさかの黒江再登場だと!?

乙ぱい

重役C「で、どこらへんが極上なの?」

重役B「ステータスじゃないか?力と魔力の値が高すぎる」

重役A「確かにレベルに比べて高いが…。過去に例が無かったわけではない」

重役C「まぁまぁ、ワシらがごちゃごちゃ言っても何も分からん。専門家を呼ぼう」ピッピッピ

黒江「?」

重役A「知らんのか?」

重役D「あの偏屈オヤジなんてその道のヤツしか知らんさ」

司会(あんたが言うか)


重役C「ワシだ。今どこにいるんだ?研究フロア?帰ってきたなら報告してよ」


重役A「人間界に出張してたんじゃないのかい?」

重役B「あの人も根無し草だからねぇ。人間界に飽きたから帰ってブラブラしてたんじゃないの?」


重役C「うん。とりあえず会議室来てよ。良いものあるからさ。新所長もいるし」ピッ


黒江「…」

重役C「来るってさ」

重役A「つってまともに来たためしが無いからなぁ」

黒江「だ、大丈夫なんですか?」

重役C「正直自信はない」

【2時間後…】

黒江「…」イライラ

重役C「…」ピコピコ

重役B「…」Zzz

重役A「王手」

重役D「うわちょっと待ってよ」

黒江「…ちょっと!」

司会「なんですか?」

黒江「来ないじゃないの!」

司会「そうですねぇ」

重役C「想定内、想定内。ヒドいときには3日待たされた時もある」

重役A「今回は同じ建物にいるんだからもうそろそろ来るだろ」


ヌルン


黒江「きゃ!?」

司会「?」

黒江「ど、どこさわってんのよ!」

司会「へ?私は何も…」

ヌリュリュリュ!

黒江「っきゃぁん///な、何なのぉぉ///」

重役B「おお、噂をすれば。来たか」

重役C「博士遅いよ~」

黒江「ひゃん!博士ぇ?」

重役A「スライムの水木博士だ」

水木「…」ニュルン

重役D「どうやら新所長を気に入ったようだ」

重役B「博士は貧乳好きだからな」ハハハ

黒江「良いから助けてぇ///」

水木「…」ニュルン

乙ぱい

おつ

これまた乙ぱい

乙ぱいすぐる

黒江「…と、とにかく!どうですか博士?」ハァハァ

水木「…」ニュルン

黒江「…」

重役B「へぇ!博士も気に入ったか!珍しい素材だ!」

黒江「…?」

水木「…」プルン

重役A「おお、行動記録ならあるよ。なんたって本社の社員らしいからね」

水木「…」ニュル

重役B「ははは!博士らしい!」

司会「ははは」

黒江「…ちょっと、なんでスライムの言葉が分かるのよ」

司会「はい?ちゃんと心の声を聞けば分かるでしょ」

黒江「…はぁ?」

水木「…」プルン

重役D「あっはっは!そのギャグは卑怯だって!」

重役B「はははは!本当に鉄板ネタだよな」

黒江(何?何て言ったの?)

重役A「さて、ギャグはそれくらいにして本題に戻ろうか」

黒江(き、気になる…)

黒江「どうやらかなりの好感を得たようですね」

水木「…」プルン

重役B「ああ、さっそく研究に取りかかりたいそうだ」

重役C「その被験者はもう研究所にいるんだろう?」

黒江「あ、いや、その」

司会「被験者は現在…確保中?どういうことですか?」

黒江「実は営業部長が渋っておりまして…」

重役B「で?確保ってのは?」

黒江「…」

重役A「…暴力的だねぇ」

重役C「社員を誘拐でもするのかい?」

黒江「…」

重役D「いよいよもって、戦争が現実味を帯びてきたってことかねぇ」

重役B「まぁ私らは本社の命令に従うけどさ」

重役A「…確保できるの?」

黒江「はい。秘書課から精鋭を差し向けています」

重役D「柴犬とドラゴンの目を欺けるかな?」

重役B「あいつらは「鼻」がキクからね」ニヤリ

黒江「金子様の選ばれた方々です!あなた方はそれを信じ…」

司会「新所長、熱くならないでください」

黒江「ぐぬ…」

司会「被験者に関しては、専門家である水木先生から研究するに足るとお言葉を頂きました。それで良いじゃないですか」

黒江「…分かったわ」

乙ん

おつ
やっぱり黒江さん生きてたじゃないですかー
早乙女さんと魚沼さんも味方になって再登場あるよきっと

貧乙ぱい

ヒント:黒江さんは忘れたふり

重役B「ほんじゃ会議はこれくらいでいいかな?」

重役D「私らも忙しいのでね」

黒江「お時間とらせて申し訳ありませんでした」

重役C「じゃあ素材が手に入ったら早急に報告よろしくね」

水木「…」プルン

黒江「はい」


ガチャ


火の玉らしき物体「所長」

黒江「あら、えーとあなたは…」

火の玉らしき物体「所長秘書の火野と申します。種族はウィルオーウィスプです」

黒江「あ、ああ、よろしく」

火野「では所長、この後はもう移動していただきます。」

黒江「大学で講演会…だったっけ?」

火野「いえ、それは明日。今日は人間界の企業の方と会食です。少し急いでください」

黒江「そう、分かったわ。でもちょっと待って」

火野「?」

黒江「すみません」

重役C「はい?」

黒江「さっき水木先生が言ったギャグを教えてください」

司会(気になってたんかい)

【移動中の時空エレベーター内】

黒江「…」

火野「…こちらが会食場所の日本料亭です。こちらの資料が…」

黒江「…」

火野「資料を読んで頂ければ分かるように、魔法研究に必要な養殖アマガエルは…」

黒江「…」

火野「こちらの魔法技術を提供することで、より安価に魔法素材を供給できるように…」

黒江「…」

火野「所長。聞いてます?」

黒江「ぶふっw」

火野「…?」

黒江「アハHAHAHA!キュウリを猫のこ、肛門に…あひゃひゃひゃ」ジタバタ

火野「…」

黒江「そ、それをライターで…あひゃひゃひゃ!!」

火野(…転職しようかなぁ)

HAHAHA!
流石博士!そのギャグはいつ聞いても面白い!
HAHAHA!

ゲラゲラ

                ,-、 nn
.r-、 _00           /::::'┴'r'
.|::::'´::::r┘  !「`L00、|.l└ク_;厂  /
.|::::「|:::|    l| |Ln:::r┘|.l _lニユ、 ./
. ̄└r''"´]_ l| | r゙=゙┐ |└ァ::/ /  /
、ヽ、 ,ゞ´_::::| l| |「二:::7 .|.l └′/  / /
. \\`´ |:::|. l| l 〈::/  、 !     '/
     \ ̄  l

          ∧  ∧
           |1/ |1/
         / ̄ ̄ ̄`ヽ、
        /        ヽ
       /  ⌒  ⌒    |
       | (●) (●)   |
       /          |
      /           |
     {            |

      ヽ、       ノ  |
       ``ー――‐''"   |


黒江「ふ、ふひぃ…ふひっ…」←笑いを堪えながら深呼吸してる

火野「大丈夫ですか?」

黒江「ら、らいじょうぶ」

火野「まったく」

黒江「…ごめん。ぶふっw」

火野(…)

黒江「あひゃひゃひゃ!!」



火野(…どうやら記憶の調整は上手くいっているようですね)

火野(あとは素体さえ届けば…。新所長、いいえ、プロトワン)

火野(あなたが魔族の…金子様の希望の光となる)


黒江「あひゃ!…ゲフンゲフン!!」←唾液がのどに絡んでる


火野(…今度はもっと大人しい性格に調整してくんないかな)

【会議室】


灯りの落ちた室内で話し声がきこえる…


重役C「新所長、どう思う」

重役A「貧乳」

重役D「色黒」

重役B「75点」

重役C「そういうことを聞いてるんじゃないんだ」

重役A「…ありゃ何かされてるな」

重役B「うん。外科的な手術に加えて、魔術が施されている」

重役C「それもかなり高度な、ね」

重役D「あの魔術痕は見覚えあるぜ。王立医大の専売特許だ」

重役A「ワシら専門家の目を欺けるとでも思ったのかね?」

重役B「あるいは、バレる前提か」

重役C「まさか」

重役D「あり得るぞ。あえて目立つ所長のポストを与えたのも、もはや隠すつもりすら無いからなのかも」

重役A「ふむ、本社が何を考えているか知らんが、研究所が迷惑を被ることにならなければいいが」

重役B「…」

重役D「どうした?」

重役B「いや、なんでおっぱいをおっきくする手術はしなかったのかな?って」

重役C「本当にそれが残念で仕方ない」

重役A「まったくだ」

重役D「ちくしょう」

重役B「本社許すまじ」

安定の重役達ww

重役許すまじwwww

安定しすぎワロタ

時を同じくして、トスキラ山ではぶどう園における一連の事件が一応の収束を見せていた

また一方で…

【(株)魔王城本社…魔王城秘書室】

金子「…」

ガチャリ

秘書(女堕天使)「金子様、報告します」

金子「聖谷(ひじたに)か。なんだ?」

聖谷「良い方と悪い方がありますが」

金子「…」

聖谷(あっ、やべ。怒らせたか?)

金子「あぁぁあ!!悩む!良い方と悪い方どっちにしよう!」ガタンッ

聖谷(うわぁ)

金子「どっちが良いと思う?」

聖谷「報告します。トスキラ山に派遣された早乙女は、被験者の奪取に失敗しました」

金子「あぁあ!まだ決めてないのに!それも悪い方から言いやがった!」

聖谷「また、プロトワンなのですが、火野から「記憶は安定しているが感情面に不安、というか不満あり」との定時報告がありました」

金子「それって良い報告なのか?」

聖谷「予想された、記憶の錯綜による精神不安等は現状において無いとの判断ができます」

金子「ふむ、営業部企画課時代の記憶に偽の秘書課時代の記憶を上書き…」

聖谷「部分消去は前後の記憶との不整合から精神不安になりやすいとの前例は杞憂だったようですね」

金子「そこはほら、私が催眠魔術で補助してるからね」

聖谷「とりあえず「器」としての適格性は維持されています」

金子「そうでなくては困る」

聖谷「被験者はどうしますか?」

金子「急がせろ。場合によっては、魚沼を使え」

聖谷「…死にますよ?」

金子「そう、必要な犠牲だ。私のために死ねれば本望だろう」

聖谷(私はごめんだけどね)

金子言うねえ

おっつー

金子「とにかくあの女は魔王軍の勝利の要なのだ」

聖谷「はい、早急に捕獲するよう伝えます」

金子「それとあの件はどうなっている?」

聖谷「人間界に対する「勇者の力」についてのリークは済ませました」

金子「よくやった。これで我が社の株価が上がれば、仲介料で人間界の貨幣が大量に手に入る」

聖谷「…何故、人間界の貨幣が必要なのですか?」

金子「貨幣というものは実に平和的なんだ。あんな紙切れや金属片でなんでも手に入る」

聖谷「…」

金子「物、土地、健康、信用…そして相手の命さえも。それは魔界も人間界も変わらない」

聖谷「…はぁ」

金子「貨幣、つまり経済は言わば共通言語なのだよ。戦争などという野蛮な行為とは対極にある」

聖谷「…」

金子「私は、魔界と人間界をカネで、理知的に的に支配するのだよ。スマートにね」

聖谷「…そうですか」

金子「さて、話はここまでだ。この後は魔王のやつと軍議だろう?人間を「暴力的」に根絶やしにするためのさ」

聖谷「は、はい。30分後、司令室で」

金子「分かった。制服に着替えてこよう」

ガチャ


聖谷(野心家…なのかしら?)

軍議が始まった…

大まかな戦線の形成、補給線の構築、そして…

「勇者の力」について着々と意見が交わされた



鳥谷「今までに我が社で「育成した」勇者たちからも「勇者の力」は抽出できたんだろう?」

金子「それは以前渡した資料に書いてあっただろう!「取り出せるものの、純度が大変低いため利用に難あり」だ!」

牛宮「そもそも「勇者の力」なんているのか?我々魔族の力を結集すれば、今の平和ボケした人間どもなど…」

色倉「それって前の戦争の時も言ってたよねぇ。結局、その平和ボケした人間の中から勇者一行が出てきてコテンパンにされたんだけど?」

魔王「色倉の言うとおりだ。勇者は突然、発生する。今回が例外であるかどうかは分からない」

金子「だから、我々も「勇者の力」を持つことで、万全の状態を…」



会議は熾烈を極めた

屈辱的な引き分け…

否、「敗戦」と呼ぶにふさわしいあの一戦を知る十傑集同士の話し合いが難航するのは当然のことだろう


そこに油を注ぐように急報が舞い降りる



バタンッ!

聖谷「金子様!」

金子「なんだ!?軍議中だぞ!」

聖谷「申し訳ありません!…研究所の方に被験者が転送されたとの報告が!」

金子「!」

魔王「ついに来たか…」

おつ?

おつっしゅ!

いつになくシリアスな展開

時を待たずして黒江に緊急召集がかけられた


【王立魔法研究所】

バタンッ!

重役B「遅かったじゃないか」

黒江「急いだんですけどね」

重役A「先に本社から来た金子が被験者と会ってるよ」

黒江「金子様が直々に!?」

重役D「ああ」

黒江「私も実験場に向かいます」

ガチャ

金子「その必要は無い」

黒江「!?」

重役C「これはこれは秘書課長。被験者の鑑定は終わりで?」

金子「ああ。十分な素材だった」

重役D「して、このあとは?」

金子「早速、抽出に取りかかる。準備してくれ」

水木「…」プルン

重役B「博士の準備も出来てるってさ」

金子「よし、水木博士、黒江、実験場に向かうぞ。あなたたちは残って頂く」

黒江「は、はい!」

水木「…」プルン

バタンッ



重役B「…研究所を勝手に使わせていいの?」

重役D「ダメって言っても使うだろう」

重役C「それに我々だって研究者の端くれだ。興味には勝てんさ」ニヤリ

重役A「問題はあの新所長さ。自分の立場が分かってるかどうか」

重役B「分かっていようが分かっていまいが、金子に従わざるを得ないだろう」

重役D「かわいそうな貧乳…」

重役C「で、どうする?」

重役A「そりゃあ暇を頂いたんだから、もちろん…」

重役一同「遊ばせてもらおうか…」ニヤリ

【実験場】

抽出作業が開始された

研究員「反物質α、固定完了!」

金子「よし、やれ!」

きゅいぃぃん

研究員「こ、高エネルギー反応!魔力場が保ちません!」

金子(が、概念の抽出にこれほどのエネルギーがかかるとは!!)

女「…!!!!?」



【排気ダクト】

重役A「押すなって」ヒソヒソ

重役B「お!始まっとる」ヒソヒソ

重役C「むう、難航してるようだの」

重役D「いや、そうでも無いらしい」



金子「しかし!想定内である!」ピッ

研究員「みこにゃんセル、投入確認」

研究員「高エネルギーが中和されます。魔力場安定!」

金子「「みこにゃんセル」は貴様の母親から採取した細胞を魔力で培養したものだ!」

金子「もはや魔力場の中は母親の懐と言っても過言ではない!!貴様から発せられる魔力に一番「馴染む」!」

研究員「「勇者の力」が抽出されます!」

金子「絶対無敵☆ロリ巨乳怪力無双姫みこにゃんよ!私を殴ったことが裏目に出たな!」

研究員「抽出完了!容器内に収容して固形化します!」

金子「ハハハハハ!!!」

金子の額に汗が伝う

よぎる焦燥と期待

その場にいる皆が、同様のことを考えていた

ただ1人を除いて



黒江「…」ガタガタ

黒江(こ、この言い知れない不安は何だというの?)

黒江(あの子が苦しむ度に胸が苦しい)

黒江(知っているとでも言うの…?)

黒江(そんなバカな…)

黒江(でも、何か大切なことを忘れてる気がする)


チラッ

金子「ハハハハハ!!!」


黒江(そ、そうよ。私は金子様を信じていればいいの)

黒江(今までも、これからもそう)


研究員「固形化しました。安定はしていますが、直接触れることはおやめください」

金子「よし、よくやった」


黒江(これからも…)


かくして、抽出作業は終わったのである



【実験場】

黒江「すごい…」

金子「極めて高純度、極めて高密度。いままでの勇者候補から採取したものがいかに下等なものか分かる」

黒江「こ、これをどうするのですか?」

金子「実験第二段階だ、黒江よ」

黒江「?」

金子「その体を差し出せ」

黒江「はい!?」

金子「聖谷」

ヒュン

聖谷「ここに」

金子「外科魔法手術を行う。補助しろ」

聖谷「御意に」

黒江「そ、そんなじゃあはじめからこの転属は…」

金子「そうだよ。プロトワン。「言うことをお聞き」」キィン

黒江「あ…う…」ガクリ

聖谷(えげつないな…。やるならはじめから意識を制御すればいいものを…)

金子「よし、では手術を始める」

聖谷「えっと…「勇者の力」でしたっけ?これをどうするんですか?」

金子「私の言うようにやればいい。それと、1つ訂正しよう」

聖谷「?」

金子「学会ではすでに「勇者の力」などとは呼ばれていないらしい」

聖谷「はあ?」

金子「我々もインテリに習って呼び方を変えよう。これからは…」

聖谷「…」

金子「『 主 人 公 補 正 』。こう呼称する」

聖谷「つまり」

金子「光栄に思え!黒江よ、貴様は『主人公』となるのだ!」



  【新入社員の沈黙編…完】

乙!
女ちゃんどうなっちゃったの??

おお、どうなるやら

まさか…

黒江たんの胸が進化する…?!

胸が主人公補正されるのか

黒江が主人公とか胸熱

黒江さん本人は胸薄だけどな

【新入社員インザダーク編】

【魔王城:玉座の間】

魔王「…」

手下「魔王様、辰川部長が参られました」

魔王「通せ」



ガチャリ

辰川「よう」

魔王「早いな」

辰川「社長室の椅子は飽きたのか?」

魔王「ああ…、あまりにも「柔らか過ぎた」」

辰川「そうか。…確かに、お前にはその玉座が似合っている。先代を思い出すよ」

魔王「…」

辰川「もう心は決まっているのか?」

魔王「心など、とうの昔に決まっている」

辰川「…うちの部下を返して欲しい」

魔王「断る。と言ったら?」

辰川「…」


辰川の翼が雄々しく広げられる…


辰川「昔から意見が分かれた時の解決法は決まってるだろう」

魔王「…避けられぬか」

辰川「…行くぞ!」




【研究所:所長室】

黒江「……」

黒江「……ん?」

ムクリ

黒江「あれ?ここは…」

黒江「私は…確か実験に立ち会っていたはず…」

黒江「勇者の力を抽出して……そこから記憶が無い……」

ガチャリ

火野「お目覚めですか?」

黒江「火野くん…。実験はどうなったの?」

火野「成功です。結晶化された主人公補正は本社に持ち込まれました」

黒江「そう…。安心したわ」

火野「お疲れのようですね。しばらくお休みください」

黒江「ありがとう」


火野(…「主人公化」したあとの記憶は安定しているようだな)

火野(しかし、一体何が変わったと言うのだろうか…)

火野(見た目、内面、能力値、存在感にも大きな変化は見られない)

火野(主人公補正なんて本当にアテになるのか…?)

…そこから少し時間が過ぎた頃

…小さな変化が見え始めた

【廊下】

火野「7時からの会議ですが…」

黒江「とりあえず資料は…」

ドンッ!

黒江「キャッ」

セイレーン「あっ、すみません…ってあなたは黒江さんですの!?」

黒江「あ!?…そういうあんたは観音寺!」

観音寺「こ、こんな所で何をやっているのかしら?」

黒江「こっ、こっちのセリフよ!」

火野(魔法技術主任と知り合いなのか?)

観音寺「なるほど、新所長ってのはあなただったんですのね」

黒江「そーよ」

観音寺「ふーん…あなたみたいな貧乳に勤まるかしら」ニヤリ

黒江「平社員に心配されるようじゃ私もまだまだね」

観音寺「あらあらうふふ」ビギィ

黒江「ほほほほ」グギギ

火野(な、なんだ…?ただならぬ雰囲気だが…)

ビギィ
グギギ

黒江「大学の頃からお変わりが無いようで安心したわ」ハンッ

観音寺「あらぁ、あなたが一度も勝てなかった魔法剣の腕だってあの頃から変わっていないのよ?「副部長」さん」

黒江「!?」プツン

観音寺「泣いて謝ったのはどなたでしたっけ?」

黒江「「部長」、抜きなよ」スッ

観音寺「魔法石の小刀…。私の言いつけ通りに持ち歩いているのね」スッ

黒江「決着はいつも…剣でつける」

観音寺「観音寺流魔法剣裏式の実力にひれ伏すがいいわ!」 

ゴ  ゴ ゴ  ゴ ゴ

    ゴ  ゴ ゴ ゴ  ゴ

火野(え?何これ?何が始まんの?)

ギィン!!

黒江「ぐっ!」

観音寺「ほらほら!遅いですわ!」

黒江「…」ブツブツ

観音寺(詠唱?高等呪文!?)

黒江「『時間魔法』を刀身へ!はぁあぁ!!」

観音寺「!?」サッ

ズシャァアァ!!

観音寺「空間を切り裂いた!?」

黒江「そして自然に閉じる!その分、間合いがぁ!」ガバッ

観音寺「ちぃっ!」

ザンッ!!

黒江『縮まる』

観音寺「かはっ」ブシュッ

黒江「峰打ちだよ、キャプテン。私のかち…」

観音寺「おばかさん」ニヤリ

スゥゥ…

黒江「なっ!?消える!?」

廊下に声だけが響き渡る…

観音寺『観音寺流魔法剣裏式二項、「陽炎」。あなたには見せてなかった技ですわ』

黒江「どこだ!姿を現せ!」

観音寺『落ち着いてくださいまし。ここは研究所内ですのよ。それに…』

黒江「…」キョロキョロ

観音寺『あの程度の次元斬では、到底私には適いませんわ』

黒江「…ぐぬ」

観音寺『勝負はお預け。せいぜい頑張ってくださいな。新所長さま』ホホホホ

黒江「く、くそぉ」ワナワナ



火野「あ、あのう」

黒江「…なに?」

火野「魔法技術主任とお知り合いで?」

黒江「…」

火野「あ、嫌ならお話にならなくてもいいのですよ。会議もありますし…」

黒江「あれは、私が大学二年の時…」

火野(うわなんか回想はじまった)


魔界に大学なんてあったのか

吉祥寺から通ってたんだよ

一応魔界にも大学あるという設定です…

黒江「あの時私はやさぐれていた…」

黒江「中学生の時に取得した魔法剣の資格を利用して悪虐の限りを尽くしていた」

黒江「そんなとき出会ったのが…観音寺」

黒江「あいつは私を魔法剣道部に入れるために勝負を仕掛けてきた」

火野「結果は…?」

黒江「負けたの。完敗だった。そして、約束を守るために私は剣道部に入部したのよ」

火野「…」

黒江「私が入った剣道部は最強だったわ。あの日まで…」

火野「あの日?」

黒江「観音寺が…」



プルルルルルル

火野「はい、所長秘書です」

火野「はい、はい。あっ、すみません。すぐ行きます」


黒江「そこで、私は観音寺の懐に刃を突きつけ…」

火野「所長」

黒江「なによ…。ここから良いところなのに」

火野「皆さんがもう待たれてます」

黒江「しまった。会議忘れてた」

【会議室】

黒江「遅れてすみません」

重役D「遅いよ~」

重役A「何やってたの?」

黒江「因縁の相手に会いまして」

重役C「?」

火野「魔法技術主任と旧知だそうです」

重役D「へぇ!あの巨乳と!」

重役A「所長の1.5倍盛りのあの主任と!」

重役C「「乳と魔翌力は比例する」の名言と乳で有名なあの人と!」

重役B「貧乳が!」

重役一同「知り合いなんだ!」

黒江「よぉーし!今からこの部屋を血で満たしてやる!カクゴしろ!」

火野「しょ、所長!落ち着いて~」

黒江「止めるなあぁぁぁあ!」



重役B「しかし、面白い偶然もあるもんだねぇ」

重役C「大学時代の魔法剣道のライバルと同じ職場で鉢合わせか」

黒江「あいつとはいつか決着をつけねば…」

重役A「まるでマンガの主人公だなぁ」ハハハ

火野(!?)

重役D「確かにストーリーが出来すぎている。作り話じゃないの?」

黒江「違います!」

火野(まさか、な。ただ、大学時代のライバルに偶然あっただけさ)

火野(「主人公補正」の影響なワケが…)


黒江「ぐっ!」ビクン

重役A「どうした?」

黒江「か、カラダが熱い!」

重役C「なんだなんだ?」

黒江「くっ!ヤツが、来る!」

重役D「ヤツぅ!?」

ドガァァァン!!!

重役C「なんだぁ!?」

黒江「クソ!まだ「ラグナロク」まで時間があるはずなのに…」

重役A「な、何言ってんの?」

黒江「逃げてください!ここは私が戦います!」

重役B「何がなにやら…」

黒江「早く……!?間に合わなかった!」

魔神?「フハハハ!見ツケタゾ!「黒二染マリシ者」ヨ」

重役D「ま、魔神!」

黒江「生きてたのね…『地獄ティラミス』!」

地獄ティラミス「フハハハ!蘇っタノダヨ!貴様ニ借リヲ返ス為ニナ!」

火野「…」

黒江「…あれは、私がダークエルフになる三日前のこと」

火野(き、聞いてもいないのに回想が始まったーッ!!)

黒江「故郷を追われた私は飢えかけていた」

黒江「眼前に広がる果てしない荒野。絶望が体中に染み付いていたわ」

黒江「そんな時、ある光が飛び込んだの…」

火野「光?」

黒江「数字の7を模したネオン…」

火野「まさか…」

黒江「そう、セブンイレブン…」

火野「…」

黒江「お腹の減った私は、廃棄前の30円引きされた「地獄ティラミス」を手に取り、レジへ向かったの…」

黒江「それが、ヤツと私の間に刻まれたスティグマの始まり…!」

地獄ティラミス「フハハハ!貴様ノ中ニ取リ残サレタ我ガ力「アポカリプス」ヲ回収スルマデハ、コノ命、尽キ果テヌ!」

火野(ダメだ…どこからつっこむべきか…)

黒江「封印された「アポカリプス」を使う!火野くんは下がりなさい」

火野「…はいはい下がりますよ」



『 ま て ぇ い ! 』



地獄ティラミス「ナニヤツ!?」

黒江「誰!?」

超展開の嵐wwwwwwwwww

これが主人公の力か…

黒江さんがどこぞの異能生存体とかどこぞの箱庭学園の元生徒会長レベルになっちゃうのか…
主人公補正を取られた主人公(新入社員)は出番がどんどん無くなりつつありますな…w

主人公補正の搾りカスになってるっぽいからな…………


乙!

主人公補正なんてどうでも良いよ
女にはおっぱいがあるから

つまり、主人公補正がおっぱいにより倍加されていると

主人公補正を持ってしても巨乳の運命に抗う貧乳だと・・・!?

???1「困るな…。仕事中だったのに」

???2「全くだ」

地獄ティラミス「何者ダ!?」

???1「堂本剛」

???2「堂本光一」

剛・光一「貴様を屠る者だ」

ゴ   ゴ ゴ  ゴ  ゴ …

地獄ティラミス(ナ、ナントイウ魔力ダ…)

黒江「『事務所』が動いたのね」

光一「ああ、久しぶりだね。黒江」

剛「相変わらずの貧乳やな」

黒江「ううううるさい!」

火野「…知り合いなのか?」

地獄ティラミス「エエイ!小賢シイ!マトメテ消シテクレルワ!」

剛「『滅びの力』を使うつもりだったやろ?」

黒江「!?」

光一「使わせないよ。黒江のためにも」

黒江「全部お見通しってわけね」

剛「当たり前やろ」

黒江「…バカ」

光一「行くぞ!」

地獄ティラミス「来イ!!」

光一「『銀狼怪奇ファイル』!!!」

ド  バァン!!!!

地獄ティラミス「グァァ!」

剛「『金田一少年の事件簿』!!!」

ズドドド!!!

地獄ティラミス「グウゥ!!」

黒江「『天使のような悪魔の笑顔』も『じっちゃんの名にかけて』も衰えてないようね」

光一・剛「だろ?」

地獄ティラミス「オ、オノレェ!!!」

光一「剛、アレやろう」

剛「ええで。ゲストは黒江や」

黒江「まっかせなさい!!!」

地獄「「地獄砲」!!!」キュイイン

光一「!?」

剛「マズい!急ぐで!」

地獄砲「ハァァ!!!」

ゴウン!!!

光一・剛「『日曜深夜は!!』」

光一・剛with黒江「 『 真 ・ 堂 本 兄 弟 』 !!!」

カッ!!

地獄ティラミス「!!?」

剛「いっけぇぇ!!!」

光一「くらえぇぇぇ!!」

黒江「消え去れぇぇ!!」

地獄ティラミス(コ、コノママデハ…!!)


黒江「」ドクンッ


地獄ティラミス「!?」

剛「どうした黒江!?」

光一「波長が乱れている!」

黒江「…く、くそぉ」ガクガク

地獄ティラミス(「アポカリプス」ノ胎動ガ聞コエル…)

地獄ティラミス「好機ナリ!!」

バッ!

光一「!?」

剛「しまった!」

地獄ティラミス「フハハハ!ココハ退コウ!マタ会オウ」

黒江「…ま、待ちなさい!!」

「フ ハ ハ ハ …」

声が遠のいていく…

光一「逃げられたか…」

黒江「うっ…」ガクリッ

剛「黒江!?」

火野「所長!」

光一「早く医務室へ!」

ついにKinKi Kidsまで……www

【医務室】

黒江「…ここは?」

火野「医務室ですよ」

黒江「…魔神は!?」

火野「逃げました。あの2人が追うそうです」

黒江「…そう」

火野(…何かが明らかに変わった)

火野(偶然にしては「出来すぎた」事態の連続…)

火野(これが「主人公補正」とでも言うのか…)

黒江「…会議は?」

火野「ここの会議なんてあっても内容なんて無いようなものですからね。中止です」

黒江「内容が無いよう…」

火野「寝てください」

火野(今日起こったことは人事資料に記されていないことばかりだった…)

火野(魔物の頭頂部からケツ穴まで、隅々まで調べ上げる(株)魔王城人事科のご自慢の資料…)

火野(黒江の資料は隅々まで目を通したはずだが)

火野(しかしそれに「見落とし」があったというのか…)

火野「…」スッ

黒江「どこか行くの?」

火野「「仕事」ですよ」

このシリーズって元々「なかい」の書き間違いから始まったんだよな
どこまで行くんだ



さっき>>1の方角にジャニーさんが飛んで行ったぞ

剛単体でもエンドリケリーで戦えるぜ!

リアルで「事務所」が動かないように祈ってるよww

次はだれがでてくるかな

【人事資料室】

火野「No.46108585を閲覧したい」

受付「火野様ですね。どうぞ」


案内された奥の部屋には、膨大な量の魔物調査書が保管されていた


火野「No.46108585はっと…あった」

本棚から、比較的新しい体裁の資料が引き抜かれる

火野「…」

それを机に広げると、丁寧にページが繰りはじめた

火野(…やはり、今日あったことに関する事実は記入されていないな)

火野(…私の見落としでないとすれば、人事科のミス?…まさかな)

幾度となく見返した文字列

以前見たときと変わりがない

そう確信しようとした矢先

変化が現れた

火野(…ん?)

火野(おかしいな。こんな記事あったっけな?)

穴があくほど見た資料から迸る違和感が胸を突く

火野(…魔王歴25325年、スタンドに目覚める。なんだこりゃ?)

火野(ここにも…。魔王歴25341年、美少女が乗ったロボットと遭遇。なし崩し的にパイロットに登録される)

火野(お、おかしい。こんな胡散臭い記事、見落とすはずないのに)

火野(他にもあるぞ…)

魔王歴25343年…高校の授業中に襲撃してきたテロリストを、校内に存在するあらゆる物品を使い撃退。

魔王歴25347年…突如上空から落下してきた大剣に体を貫かれる。その際、不可思議な力に目覚める。以後、似たような境遇の者と闘うハメに(未解決事案)。

魔王歴25352年…大学で複数の美少女と、一つ屋根の下で同居。複数のラッキースケベを発生させた。


火野「なんだこれは…」

火野の体がこみ上げる不安で揺れた

見落としたにしては、かなりの件数

もはや偶然では片づけられない

火野「まだ他にあるのでは…」

パラパラとページがせわしなく繰られる

火野「!?」

途端、手が止められた

魔王歴25381年…

火野「…あ」

火野の目に飛び込んできたのは滲むように浮かび上がる文字

まるで周りの文字を押しのけるように自分の場所を確保しようとしている

それは明らかに異常な存在であった

魔王歴25381…格闘技(流派不明)の師匠を兄弟子に殺される。以後、復讐を誓う(未解決事案)。

火野「せ、設定が追加されているというのか…!!?」

【水槽?】

薄い…

まるで存在に水を足されたような…

自分が拡散したような…

そんな気分…

私は…誰だっけ?

確か…

人間で…

大卒で…

(株)魔王城の…

営業部…

企画課の…

新入社員…

だったような…

気がする…

でも…

そんなことは…

もう…

意味が薄い…

価値が低い…

存在が…

世界に…

圧迫されたような…

そんな気がする…


課長…

先輩…

黒江さん…

【研究所:受付】

受付「ですから、アポが無いと所長には会えないんですよ」

犬崎「わん(申し訳ありません。緊急の要件なんですよ)」ペコペコ



鎧谷「正面突破って言ったからちょっと期待したけど…」

岩村「…恐ろしく礼儀正しいな」

骨田「「部下を救出に行く」って息巻いてた時は惚れるくらいかっこよかったんですけどねぇ」



犬崎「わぉぉん!(ム、ムキー!こっちは元十傑集だぞ!大先輩だぞコノヤロー!!)」

受付「そう言われましても…」

犬崎「わぉん!(こうなりゃ力ずくじゃぁ!!!)」キィィィン



鎧谷「うわあ、キレたよ」

岩村「…器ちっさいな」

骨田「…はじめから強行突破しとけば良かったんじゃないですかねぇ」



ドガァァァン!!!



受付「うわっ!何するんですか!?」

犬崎「わん(部下を返してもらうだけさ)」キリッ



岩村(…一応カッコつけてる)

骨田(ますます器がちっさく見える)


犬崎「わん!(よし、行くぞ!)」

鎧谷「…」

犬崎「くぅん?(どうした?)」

鎧谷「いや、何も。行きましょう!彼女が心配だ!」

犬崎「わん!(おう!)」



鎧谷(…なんだろう)

鎧谷(こんなことは言いたくないが、彼女の「重要性」が自分の中でかなり低くなったような…)

【人事資料室】

ドガァァァン!!!


火野「な、なんだ!?」

受付「侵入者です!」

火野「侵入者だとぉ!?」

受付「エントランスから侵入。現在、研究棟に向けて直進しています」


ドガァァァン!!!


火野「ぐぅ!?直進と言うと…」

受付「まんまです。壁をぶち抜いて、無理やり真っ直ぐ前進中!」

火野「野蛮な…!」

受付「警備のデーモンや魔界樹の方々が応戦していますが、手に負えないようです。所長の指示は!?」

火野「所長は今、医務室で休憩中だ!…ヤバい!」

受付「?」

火野「メインエントランスから研究棟までの直線上には医務室がある!」


ドガァァァン!!!


火野「プロトワンが危ない!」

【医務室周辺】


ドガァァァン!!!


犬崎「わぉぉん!(わはは!インテリどもめ!学歴厨め!実戦では負けんぞ!)」

岩村(…コンプレックス感じてたんか)

鎧谷「こっちにはいませんでした」

骨田「あっちの女子更衣室もです」

岩村「…おい」

骨田「て、テへ!」

鎧谷「後で戦利品は没収な」

骨田「!?」ガーン

犬崎「わぉぉん!(バカタレ!油売ってる場合か!鎧谷と骨田は研究棟に先回りしろ!)」

鎧谷「了解」

骨田「合点承知のすけ」

タッタッタ…



岩村「…俺は?」

犬崎「わん(この周辺で退路を確保しろ)」


ガララッ

「イテテ…」

岩村「…誰だ?」

犬崎「!?」


黒江「まったく、何事なの…」


岩村「く」

犬崎「わん!(黒江!?)」


黒江「ん?」

黒江「なんなのあんたたちは…」ポリポリ

犬崎「わん!(黒江か!?まさかこんなところで会うとは!)」

黒江「…よっこらしょ。この爆発はあんたたちのせい?」

岩村「…?」

犬崎「わん(ああ、あの子がこの研究所に誘拐されてしまって…。そういえばお前はここに転属したんだったな。何か知らんか?)」

岩村「待て課長。様子がおかしい」

黒江「なるほど。あんたたちが魔王様や金子様の崇高なお考えを邪魔する連中ね」

黒江「察するに、営業部」

犬崎「くぅん?(な、何を言って…)」

岩村「…気をつけろ。コイツは俺達の知ってるダークエルフじゃない」

黒江「所長の私が責任持って、断罪したるわ!」

犬崎「わ、わぉぉん(く、黒江ぇぇ!)」

岩村「課長!」

黒江「行くわよぉ!!!」

課長がんばれ!貧乳に負けるな!

【廊下】

火野(最も危惧しなければならない事態であるハズだった)

火野(営業部、特に企画課との接触だけは)

火野(安定したとはいえ、上書きされた記憶に影響を与えるかもしれない)

火野(まして、今のプロトワンは主人公補正のせいであまりにも未知数)

火野(先ほどの人事資料に発生した怪現象から見るに、まだ何が起こるか分からない)

火野(どんなに金子様が完璧な処置を施したとしても、「愛の不思議パワー」とかでなんとかされかねない)

火野(厄介なものを押し付けられたもんだよ!ホント!)

火野(労災降りないかな…)

火野(とにかく急がねば…!)



【医務室前】

火野「プロトワン!」

黒江「あら、火野くん。遅かったじゃない」

火野「…!?」



犬崎「わ、わふん(ぐはぁっ!)」ガクンッ

岩村「…」ガクリ


火野(き、企画課長!?とその部下か!?いったい何が…)

黒江「さあ、トドメよ」

黒江「どれがいい?」

黒江「今は亡き師匠から受け継いだ超必殺技『閃光昇竜烈斬拳』?」

黒江「私が搭乗するロボ、『ブラックナイト』の秘密兵器『ヴィットーリオ・エマヌエーレ砲』?」

黒江「古の血の盟約により手に入れたロストアビリティ『リバティバニッシュメント』?」

黒江「どれがいい?」


火野「な、なんという…圧倒的じゃないか」


犬崎「くぅん(な、なぜ)」

黒江「それが魔王様の願いだから」


火野(すごい…!これが主人公補正…!記憶も安定しているようだ)

火野(すべては杞憂だったか!)


 『 ま て ぇ い ! 』


黒江「?」

骨田「おのれ!よくも課長と岩村さんを!」

黒江「なんだ、ただのしかばねか」

骨田「ちょ!なんだとこのー!って黒江さんじゃん!」



鎧谷「課長!」

犬崎「ぐぅ(すまん…。このざまだ…。あの子は?)」

鎧谷「無事保護しました。今私が背負っています」

女「…」zzz

犬崎「わん?(え?気づかなかった…。そんなに存在感無かったっけ?)」

鎧谷「それについては資料を手に入れました。まずはここから逃げましょう」

犬崎「ばぅ…(しかし、黒江が…)」

鎧谷「黒江先輩についてもなんとなく分かりました」

火野(ちっ…。執筆中の成果報告を見られたか。そういえば研究棟に置いたままだった)

黒江「逃げられるとおもってるのかしら?」

鎧谷「ふふふ!通信講座で新たに覚えた転送魔法。っていうかどこに飛ぶか分かんないんだけど!」

鎧谷「それを使う!」

骨田「岩村さんは準備OKですよ」

鎧谷「『強制転送魔法』!」


キュイィィン!!

    バシュゥゥゥ!!!


黒江「…しまった!?」

火野(逃げた?いや、プロトワンの持つ運命が逃がしたのか…?)

火野(しかし、十傑集を圧倒した実力…)

火野(『主人公補正』恐るべし…か)

【???】


バシュゥゥゥ!!!

鎧谷「着いたか」

骨田「うまく逃げれたようですね」

犬崎「くぅん(くっ…!かなりのダメージだ)」

岩村「…うっく」ムクリ

鎧谷「そうとうやられたようですね」

岩村「…ああ」

犬崎「わん(黒江にあんな力があったとは…)」

岩村「はじめは押してたんだが…。ピンチになる度に、どんどん黒江の力が増していくのが感じられた」

鎧谷「それについては今から話します」


骨田「おーい、大丈夫?」

女「…骨田さん?」

骨田「おお、起きた」


鎧谷「丁度よく起きたね」

女「ここは…?」

鎧谷「多分魔界のどこか…」

犬崎「わん(それよりも、聞かせてくれるか?)」

鎧谷「はい。では話します」

鎧谷「『主人公補正』について…」



  【新入社員インザダーク編…完】


通信講座…よろにゃん、ちゃんと勉強してるんだ…

主人公補正よりおっぱい補正の方が強い事をわからせてやれ!

シロートパコパコ・・・黒江さん

主人公補正って取られると一般人以下の存在感になっちゃうのな…

今度はヒロイン補正がかかるな!
乙!言わずにはいられないッッ!!

読み返してみて思ったんだが、なんで火野くんは人事資料室にいるのに侵入者が企画課だってわかってんだろうな

うーん謎だ

【ロード・オブ・黒エルフ編】

【王立魔法研究所】


ガラガラ…

黒江「いやぁ、酷いなぁ」

火野「研究棟、本部棟は半壊、メインエントランスと中庭に至っては全壊です」

黒江「完璧に機能不全だよね…」

火野「復旧に必要な費用はざっと40億G(1ゴンス=10円)」

黒江「それって予算で賄えるの?」

火野「無理です。施設の再構築、実験器材の購入、魔物的損耗の補填。人も時間も金も足りないです」

黒江「就任から一週間経たずしてこれか…」

火野(ちなみに被害の半分以上はあんたのよくわからん不思議パワーで引き起こされたものなんだがな)

黒江「とりあえず、保険会社に連絡しようか。…テロによる被害って保険は支払われるっけ?」

火野「さぁ…?」

黒江「魔王様に追加予算を申請したほうがいいかもね…」

火野「あっちも火の車ですからね」

黒江「どこも大変なのねぇ」

火野(あっちは「主人公補正」の研究に多額の投資をしてるから、なんてことは言えんな)



ついに題名まで…

サブタイだと……………
おれらの女ちゃんを………返し……………グハッ

【???】

犬崎「くぅん(なるほど…。それが主人公補正か)」

岩村「…この子に起こった一連の現象はそれが原因か」

鎧谷「どうやら、本社はこの研究のために存在していたようですね」

骨田「元十傑集の課長には知らされてなかったんですか?」

犬崎「わん(私だけではありません。辰川も…いや、元十傑集のほとんどが知らなかったようです)」

女「…」

鎧谷「それほどまでに重要な研究であったってことでしょう」

犬崎「くぅん(それか、信用されていなかったか)」ボソ

岩村「?」

鎧谷「とにかく、彼女は補正を失ったわけです」

女「みたいですね」ボソ

骨田「影うっす」

鎧谷「これからどうしますか?」

犬崎「わん(立場上、我々は魔族側に属しています。そうなると魔王の目的は我々の目的と同義です)」

岩村「…やはり魔物は魔物らしく、か」

骨田「長いモノには大人しく巻かれるべきなんですかねぇ」

鎧谷「…」

犬崎「わん(気に食わない?)」

鎧谷「…いえ、人間打倒は魔族の本分です」

犬崎「くぅん(そう?私はそうは思わないが)」

鎧谷「え?」

犬崎「わん(私は、魔族の本質は「私利私欲の追求」だと考えています)」

岩村「…」

犬崎「わふん(まぁ、それは人間も一緒なんですがね。ようは立場の違いです)」

骨田「…課長」ニヤニヤ

鎧谷「ほんと、回りくどい言い方ですね」ニヤリ

犬崎「わん!(我々も私利私欲を追求しましょうか…。魔族らしくね…!)」

岩村「…黒江を取り返して」

骨田「主人公補正も取り返す!」

鎧谷「めちゃくちゃだ」

犬崎「わん(では企画会議を始めます)」


黒江奪還作戦か…胸熱だな

>>418
・・・胸無しだがな

会議が始められた同時刻…

魔王城の玉座の間では、闘いに終止符が打たれていた

【魔王城:玉座の間】

半壊した玉座の間…

崩れた壁から注ぎ込まれた赤い月明かりが、両雄を怪しく照らす

辰川「…」

魔王「…」

辰川「昔は…」

魔王「…」

辰川「俺がいつも勝って…」

ズシィン…

巨躯が、静かな、あまりにも静かな音を立てて大理石に沈む

魔王「…さよならだ」

魔王の圧倒的な勝利であった

色倉「…」

魔王「色倉か」

色倉「殺したの?」

魔王「いや、息はある。だが、もう…」

色倉「…なんで泣いているのさ」

魔王「…金子に伝えろ。明後日、全軍を動かす」

色倉「…分かった。辰川は?」

魔王「無力化して地下牢に入れろ。今日付けでクビだ」

色倉「了解」

ヒュン

魔王「…確かに命はある、だが」

魔王「私は友を失った」

魔王「…もう失うものなど」


競馬やってるようなシジイでも、やるときはやるんだな

>>422
ああ、そんなこともあったなw
イカサマやって自分の馬勝たすようなこともしてたっけ。

そういえば馬主だったな

馬主だったことすっかり忘れてたわ

…いつから…馬主だと…錯覚していた?

【地下へと続く螺旋階段】

色倉「…」

辰川「…」

床から一定の距離をおいて、辰川の身体が浮いている

どうやら色倉の魔法の力らしい。色倉に添うように、移動している

行き先は、地下牢だろう

色倉「辰川ちゃん。起きてるんだろう?」

辰川「…ああ」

色倉「負けるなんて珍しいね」

辰川「…油断した」

色倉「嘘つき。本気だっただろう?」

辰川「…」プイ

色倉「素直じゃないねぇ。しっかり平和ボケしてるんだから」

辰川「…ぐぬぅ」

色倉「とりあえず辰川ちゃんには暫くの間、例の地下牢に居てもらうよ」

辰川「例の?」

色倉「対魔神用捕縛魔法陣ってやつだよ」

辰川「好待遇だな」

色倉「VIPだからね。朝昼晩の三食くらいは期待してよ」

乙?

辰川「…色倉は、魔王のやろうとしていることが分かっているのか?」

色倉「うん」

辰川「ならばなおさら止めなければ。戦争など誰も求めていない」

辰川「今更、人間を滅ぼしてなんになると言うのだ」

色倉「…辰川ちゃんは何も分かってないみたいだね」

辰川「何?」

色倉「あの魔王ちゃんは戦争なんてものに興味は無いよ」

辰川「どういうことだ?」

色倉「言ったまんまだよ。辰川ちゃんなら分かると思ってたんだけど…」

辰川「…?」

色倉「着いたよ」

ヴォォォォン

引き連れられた部屋は暗かった

唯一の灯りは怪しく揺らめく緑の魔力光のみ

部屋の中央に怪しげな言語が散りばめられた円陣は色倉の言った魔法陣だろうか

辰川はゆっくりとその中に誘われた

色倉「さぁどうぞ。ご用の際はボーイさんにコールしてね。もちろんチップを忘れずに」

辰川「色倉、さっきの話は…」

色倉「どうやら、僕が一番理解してるようだね」

辰川「待て」

バシュン

光が円陣から迸り、辰川の周囲を魔力壁で囲った

辰川「色倉!」

色倉「まぁ大人しくしてよ」

辰川「…動物園の檻に入れられた気分だ」

色倉「似合ってるよw」ブフッ

辰川「…貴様」

色倉「久しぶりだし、少し話そうか」

辰川「…?」

色倉「辰川ちゃんは300年前の戦争、覚えてる?」

辰川「もちろんだ。凄惨な闘いだった。「魔族は悪の限りを」のスローガンにも限度があることを知ったよ」

色倉「そうだね。どんなに悪に染まろうとも生物である以上はモラルに限度がある」

辰川「あんな戦争はもうたくさんだ…」

色倉「「極竜」のセリフじゃないねw。弱気じゃないか」

辰川「あの先代魔王と勇者の最終決戦を見たら考えが変わったんだよ」

色倉「…そうかぁ。辰川ちゃんが魔王の気持ちを理解できない理由がわかったよ」

辰川「?」

色倉「鳥谷も牛宮も犬崎もバカだから分かってないね。姉川と金子は気付いてるけど」

辰川「どういう意味だ?」

色倉「…もう時間だ。行かないと」

辰川「待つんだ!」

色倉「あの最終決戦を見た僕の心を、何が支配したと思う?」

シュウゥン

色倉の身体が徐々に透けていく

テレポートの前兆だ

辰川「お前は何を思ったんだ!?」

色倉の身体が消え、声だけが部屋に響き渡る

色倉「……『嫉妬』だよ。もちろん、勇者に対してのね」

辰川「…!?」

色倉「ご用の際はボーイを呼んでね。チップを忘れずに…」

声は辰川に疑念を残して闇に消えていった


すっかりシリアスだな

なんだかギャグで始まって、気がついたらバトル物になってた漫画を見てるようだ
それもまたよし

wktk

きてたー!

>>435
おせーよw

辰川が収監されたころ…

【会議室】

魔王「これだけしか集まらんかったか」

牛宮「…はい。当時から現役でいる魔物はほとんどおらず、あとは皆死んでいるか、隠居したか…」

鳥谷「気合いが足りねぇな」

金子「そう言うな。300年はどの魔物にとっても長い」

魔王「若いのは?」

牛宮「徴兵制が無くなってからというものさっぱりです」

金子「幽魔師団8000、獣魔師団12000、空魔師団5000…ですか」

魔王「300年前の30分の1か」

牛宮「敵の戦力は?」

鳥谷「ロボルーマ施政下に20000、その他地方にちらほらといるようだ」

魔王「互角か…しかしこれは、くっくっく」

金子「規模は30分の1ですが、これは…」

魔王「…当時と似ているな。『おあつらえむき』だな」

牛宮「は?」

鳥谷「こっちはほとんど古参兵、不利ですぜ」

魔王「いや、シチュエーションがな。気に入った」

鳥谷「はぁ?」

金子(…勝つ気があるのか?何を考えている)

ピリリリリ

金子(火野?)

金子「すみません。少し席を外します」

金子「どうした」

火野『お疲れさまです。昨日の襲撃の件です。戦闘後のプロトワンの諸々のデータがまとまりました』

金子「そうか。なにか特異な兆候は見られるか?」

火野『特異…。そもそも存在があまりにも特殊なので…』

金子「活動に支障は?」

火野『それは全く無いです。強いて言えば、新たに大量発生したフラグの対応に追われて仕事にならないです』

金子「…ふむ」

火野『まぁ主人公らしくなってますよ。スラムダンクで言えば、ミッチーがバスケ部に帰ってきたあたりの桜木花道ですね』

金子「分かりにくいわ」

火野『とりあえず、フラグが相当発生しています。週刊誌一冊分…、いやそれ以上』

金子「…」

火野『まさに主人公って感じです』

金子「…そうか」

火野『それと襲撃犯のことなのですが、行方はまだ掴めておりません』

金子「犬崎の方はこっちで対処する。火野と研究所は黒江に集中しろ。じきに使う」

火野『了解。では失礼しました…』ピッ

金子「…」

金子「性根の弱い犬とその部下、そして補正を失った娘…」

金子「取るに足らんか…」

そんなころ、こちらの会議も進んでいた

【???】

犬崎「わん(問題は、黒江をどうするかだ)」

鎧谷「まず『主人公補正』の取り出し方が分からない。研究所で手に入れた資料にも方法までは書いて無いですね」

岩村「分かったとしても…だ。あいつはあんなに強くなかったぞ」

犬崎「くぅん(取り押さえるにしても骨が折れるな)」

鎧谷「そこなんですよねぇ」

岩村・犬崎・鎧谷「うーん」

骨田「…主人公補正かぁ」

犬崎「わん(ほしいか?)」

骨田「欲しいっすね。巨乳の女の子たちと一つ屋根の下で暮らしたり…」

岩村「ほぅ」

骨田「気になるあの子と間違って混浴に入ってしまったり」

鎧谷「フム」

骨田「ハプニングスケベはまさに主人公補正の真骨頂」

犬崎「わん(ブラボー。ブラボーだよ。そのゲスっぷり)」

鎧谷「さすがだ」

岩村「企画課期待のエロホープ」

パチパチパチパチ

骨田「て、テヘヘっ///」

女「…ゴホンッ」ズ ゴ ゴ ゴ

岩村「!?」ビクン

犬崎「わん!(さぁ真面目に考えよう!)」

鎧谷(補正を失っても、ステータスは健在か…)

骨田「まぁ主人公も大変すよ」

鎧谷「と言うと?」

骨田「ほら、始めから強くてカッコいいまんまの主人公なんていないじゃないですか」

岩村「そうだな。物語のどこかで必ず落ち目がある」

犬崎「くぅん(そこを狙うと?)」

鎧谷「黒江さんが物語的にいつ落ち目なのかが分かりませんよ」

骨田「ですよねぇ」

女「あのぉ」

岩村「ん?」

女「分からないなら、演出っちゃえば良いんじゃないでしょうか?」

骨田「…?」

女「あたしたち、企画課でしょ?」

鎧谷「ほう」

犬崎「わん(言うようになったじゃないか。地味巨乳)」

女「「地味」は余計ですぅ」

ホントに地味になったなwwwwww

最近は地味なのを売りにしてるキャラもいないでもないからなぁw
アッカリーンとかアッカリーンとか…w

ぶっちゃけエロゲとかでも目立つメインヒロインよりも地味めなサブヒロインのほうが巨乳率多くね?と思うんだが

>>444
黒江「あ?誰が乳の話ししてんだコラ!?」

岩村「つまり黒江の落ち目を俺達で創ると?」

女「その通りです」

鎧谷「難しい話ですが…課長!やれますよ!」

犬崎「わん!(そうだな!じゃあ無限落ち目タイム中の骨田を参考にしよう)」

骨田「任せてください!」

女(無限落ち目だったら落ち目じゃないんじゃ…)

骨田「ズバリ!落ち目の基本は「悲劇」!それも、ただの悲劇じゃだめです」

鎧谷「ただの悲劇じゃだめ?」

骨田「そう、大事なのは「上がったところから落ちる」。つまり喜劇のちの悲劇です」

岩村「確かにギャップが大きいほど誇大に認識するな」

犬崎「わん(黒江にとっての喜劇、そして悲劇とはなんだ?)」

骨田「それはズバリ…万国共通老若男女種別不問で…」

鎧谷「…」ゴクリ

骨田「「恋愛」です」

女「んな単純な…」

骨田「例えるなら、巨乳だと思ったら実はパットを複数枚入れてた的な」

女「なんかちょっと違うような…」

犬崎「わぉん(いや、分かる)」

鎧谷「分かる」

岩村「…分かるぞ!」

女(なんなのこの男どもは…)

鎧谷「つまり黒江さんの失恋劇を我々で作り出せばいいんですね」

犬崎「くぅん(そういうことになる…のか?)」

骨田「そうです!上げるだけ上げて、ボッコボコに凹ませてやりましょう!」

鎧谷「そうだそうだ!」

岩村(コイツらもかなり黒江に打ちのめされてるからなぁ)

犬崎「わん(さて、シナリオだが)」

骨田「黒江さんがのめり込むような相手を立てることが重要ですね」

女「黒江さんがのめり込むような相手かぁ…。どんな男性なんだろうなぁ」

犬崎「わん(いや、相手は君だ)」

女「はいい!?」

鎧谷「ですね」

岩村「だな」

骨田「適任」

女「ななななんでやねん!!!」

岩村「それは黒江がガチレズだからだ」

鎧谷「ですね」

女「なんとぉーー!!?」

犬崎(この子も案外ニブいな)

鎧谷「とりあえず主演は決定だな。あとはストーリー考えて、脚本作って…」

犬崎「わん!(予算の方はまかせろ!)」

岩村「…セットや衣装も作らんとな!」

骨田「いやぁ!なんか活気湧いてきたなぁ!」

犬崎「わん!(おう!気合い入って来たな!)」

骨田「ところでここは何処なんですかね?」

犬崎「…」

鎧谷「…」

岩村「…」

女「…」

骨田「…」

鎧谷「お前ホント空気読まないよな…」

岩村「…「これから」って時にさ」

犬崎「わん(みんな黙ってたのに)」

骨田「えー」

女「骨田さんってそういうとこありますよね…」ハァ

骨田「そ、そんな冷たい目で見られたら僕は…ぼかぁ…」ビクンビクン

どこなんだよ?(切実)

>>448
>骨田「そ、そんな冷たい目で見られたら僕は…ぼかぁ…」ビクンビクン

感じてんじゃねーよカルシウムの塊がw
座布団座って茶でも飲みながらばよえ~んされてろw

いいじゃないかひんにゅー








黒江たんハアハア

夜書くからまだ落ちんといて

期待してます。

まだか

岩村「…まぁ、ホントにここは何処なんだろうな」

鎧谷「見渡す限り、荒野、荒野、荒野」

犬崎「わん(こういう時はまかせろ)」

女「さすが課長!魔法の力や魔犬の特性を活かした魔族的位置特定手段で…」ドキドキ

犬崎「わん(この前スマホに換えたから、グーグルマップを使ってみよう)」

女「チクショー!」

犬崎「わん(ありゃ、圏外だわ)」

岩村「むう、困ったな」

鎧谷「…」

犬崎「わん(…まるで、あの時の場所のようだな)」

鎧谷「課長もそう思いますか」

女「…?」



乙でした

こっちでもGoogleマップは健在かwwwwww

寝落ちしてもうた

骨田「心当たりがあるんですか?」

岩村「…戦争が終わった場所」

犬崎「わん(似ていますね)」

鎧谷「…あの時はまだ子供でしたが、鮮明に覚えていますよ」

女「…」

犬崎「わん(勇者と先代魔王の死闘、そして終戦…)」

女(勇者…)

鎧谷「その戦いが行われた一帯は草木も生えない荒野と化してしまったんだ」

女「すごい戦いだったんですね」

犬崎「わん(ああ、あの時の気持ちはあまり思い出したくない)」

骨田「かなり厳しい戦いだったんですね」

鎧谷(確かに厳しい戦いだった)

鎧谷(しかしあの時の、気持ちは…)

犬崎(嫉妬…。激しい嫉妬だ)

犬崎(勇者がうらやましかった)

鎧谷「…やはりここは」

犬崎「わん(うむ、魔界でこういった土地は二つとして無い)」

女「…?」ピクッ

骨田「どした?」

女「呼んでる」

岩村「…誰が?」

女「…お父さん」

犬崎「くぅん(何を言っている)」

骨田「何かと感応しているようで…」

女「あっち」タッタッタ

犬崎「わん!(ま、待ちなさい!)」

岩村「一体どうしたんだ?」

鎧谷「…?」

骨田「とにかく追いかけましょう…。鎧谷さん?」

鎧谷「あ、ああ」

鎧谷(彼女の存在感が増した?…気のせいか?)

【荒野:???】

タッタッタ

女の行き先には、大地が大きく抉られた様な窪地があった

女「…はぁ、はぁ!」

女「…」

女「ここは…」

犬崎「わん(戦争が終わった場所の、中心だ。…間違いないよ)」

骨田「この一帯だけ魔力が濃いっすね」

岩村「…あの時の残り香か」

女「ここで勇者と魔王が死んだの?…あれは?」

窪地の中心に鈍く光るものが1つ

鎧谷「…なんだ?」

女「あたしを呼んだのは…あれ?」

それは身の丈ほどある剣だった

この展開は……なんと主人公的なんだ

分厚く、平たい刀身

柄には過度な装飾など無く

ロボルーマ王家の家紋のみが彫られている

骨田「デカいっすね~」

鎧谷「これは…!?」

岩村「知っているのか?」

鎧谷「最後の戦いで勇者が使った伝説の剣ですよ!」

骨田「なんでそんなものがここに…」

鎧谷「なんでも、かなりの力を封印しているとかなんとかで、抜いた瞬間辺りを消滅させるとか…」

岩村「恐ろしいな」

犬崎「わん(その噂は定かで無いが、結果として、300年間動かされることなくここにあるのさ)」

骨田「へぇ」

女「…」ガシッ

骨田「これを目玉にして一大レジャー施設を…」ブツブツ

岩村「また邪なことを考えてんのか」

骨田「どうせ抜けないなら少しでも足しにするためにですねぇ」

鎧谷(何かしらの封印がなされているのか?それもかなりの強度。並大抵のことでは…)

犬崎「わん(あまり拘るな。とにかく位置が特定できたんだから急ぐぞ)」

女「…ふん!」

ズ…ルンッ

女「抜けました」

犬崎「…」

岩村「…」

骨田「…」

鎧谷「…」

女「…抜けました」

一同「いやあぁぁぁあぁー!!」

クソワロタwww

おかしいな…女が段々主人公っぽく…w

主人公補正は存在するのではなく女ちゃんから溢れ出すとでもいうのか……
おつ!

主役が力を失いそれを取り戻す
王道だろ?
これが生来の天然モノ主人公だ!
人工モノとは違うのだよ

誰のおっぱいが人工物だって?

>>470
そっちに黒いエルフが助走つけて全力疾走していったぞ

巨乳がジロンに見える気がしてきた

黒江「ジローン!行くだわさ!」

女「よぉーし!ウォーカーギャリアも男の子!」

!?

Σ(´∀`;)

女ちゃんは胸にICBMを2つもくっつけてるじゃないですかーヤダーw

ザブングルとか懐かしいなオイ

人工もいいがやはり天然物が一番さね

本編はよww

鎧谷「ひぃぃぃ!たたたた大変だ!」ビクンビクン

岩村「いや…いやぁ!ママァ!」ガタガタ

骨田「らめぇ!消滅しちゃう!」ジョバァァ

犬崎「…ひぁ、ひぁあ」ブクブク

女「…」

一同「…」

女「何も起こりませんね」

骨田「まぁ、だろうね」

鎧谷「なにせ300年前の代物だ」

岩村「…考えれば分かることだ」

犬崎「わん(だな)」

女「…」ジー

犬崎「きゃぅん!(やめて!そんな目で見ないで!)」

鎧谷「心が抉られる!」

岩村「トラウマになっちゃうよぉ!」

骨田「もっと///!」

女(まったく…)

女「にしても、なんだろうこの剣。すごくなつかしい」

犬崎「くぅん?(懐かしい?)」

女「はい。懐かしい「香り」がします」

まだか

なんかこのスレで終わらん気がしてきた…

次スレで1000まで書いてもいいのよ

次スレでもええやん

あくまでも多分完結だろ

女「これは…」スンスン

骨田「?」

女「やっぱり、お母さんが昔使ってた香水の匂いだぁ…」

鎧谷「どれどれ…」クンクン

岩村「…そんな匂いするか?」クンクン

骨田「うーん。鉄の香りしか…」

犬崎「わん(そういえば、ロボルーマには王家には代々王家にしか伝わっていない香水があると聞いたことがある)」

鎧谷「…」

犬崎「わん(それは王家の血族でなければ嗅ぎ分けることができないらしい)」

骨田「じゃあ別の臭いがしたら王家ってことですか?まさかぁ」

女「でも、明らかにお母さんの臭いが…」

鎧谷「…課長、まさか」

犬崎「わん(ああ、有り得る。彼女の主人公補正はもしかしたら…)」



???「そう、血統からくるものが大きい」


鎧谷「!?」

岩村「…誰だ!」

女「あ…」

犬崎「わぉぉん!(貴様は!?)」


みこにゃん「ひさしぶりね。ポチ」

女「お母さん…」

鎧谷(け、気配を感じられなかった)

岩村「課長!誰だこの人間は!」

犬崎「ぐるるる(な、なぜここにいるのだ。それもその若さ…)」

みこにゃん「変わらないわね。怯えると耳を寝かすのも…」

犬崎「!?」ビクッ

鎧谷「課長が圧倒されてる。…いや、それよりも!」

骨田「今、何て?」

女「お母さん…」

岩村「…なんだと!?」

犬崎「くぅん(そんな、バカな…)」

みこにゃん「あんた社員旅行に行ってたんじゃないの?」

女「それが、あたしにもよくわからないの。色んなことが起こって…」ウルウル

みこにゃん「…あなたの身の回りに様々なことが起こる理由。ちゃんと話さなきゃね」

犬崎「わん!(待て!)」

みこにゃん「ん?」

犬崎「わん!(その前に説明しろ!なぜここに…)」

みこにゃん「おすわり」

犬崎「わん」ペタン

企画課一同「ーっ!?」

みこにゃん「あなたたちにもちゃんと話すわ。娘の大事な上司ですものね」

みこにゃん(笑



女は愕然とした

自分の持つ力

それを付け狙う野心

そして、それらに気付かずただのうのうと流されていた自分

母がはじめて話す過去が彼女にとって非常に重い

理解はできた

しかし、受け入れたくはなかった

渦中にいながら何も知らなかった自分を…


女「…」

みこにゃん「つまり、あなたがロボルーマ王国の正当後継者なの」

犬崎「くぅん(なんと…)」

鎧谷「大戦末期、絶対無敵☆ロリ巨乳怪力無双姫みこにゃんが突如として行方不明になった理由が明らかになりましたね」

みこにゃん「」バキンッ

鎧谷「ひぃ」

みこにゃん「その名前はNGね(はあと)」

鎧谷「ひゃ、ひゃい」ガクガク

犬崎「わん(まさか、生きて子を産んでいるとは…。それもその子が我が社にいるなんて)」

みこにゃん「全てのことが偶然じゃないと思うわ。この子の持つ力が生み出した必然…」

岩村「何のために…?」

骨田「まさか魔族を滅ぼすため…?」

みこにゃん「分からない。ただ一つ言えることは…」

女「…」

みこにゃん「主人公補正は『ドラマ』を求めてる」

鎧谷「ドラマ…?」

みこにゃん「これは、あくまで私の考えだけどね。主人公補正はイベントを惹きつけるようなの」

犬崎「わん(…特に恣意的でもなく、ところかまわず事件に絡む)」

岩村「確かに、入社当初からそういう傾向はあった」

骨田「そういえばこの一年は色んなことが起こりましたね」

鎧谷「あれらが全て彼女の力であると?」

みこにゃん「そうよ。あなたたちが恐れた勇者も持っていた力。あの人も必要以上に巻き込まれる人だったわ」

犬崎「わん(しかし、それでは能力値以上の結果を出してきた説明にはならないのではないか?)」

みこにゃん「力とかすばやさだけがステータスじゃないのよ。応用力や決断力…基礎ステータス以外にも様々な要素があるの」

鎧谷「なるほど、言わば隠しステータス。主人公補正により惹きつけられた多くのイベントをこなして、確実に能力を伸ばしていたのか」

みこにゃん「以上が勇者の力と言われた『主人公補正』の概要。何か質問ある?」

骨田「おっぱいは何cupあるのでしょうか?」

岩村「ーッ!?」

鎧谷「す、すげぇ!聞きやがったコイツ!!」

みこにゃん「Hよ」

骨田「ほぐぅ!」ブシャァ←鼻血

岩村「すげぇ…すげぇよ」ガクガク

鎧谷「…」ビビクンビビクン←失神してる

女(…後輩の母親の乳のサイズを聞くこの人たちは何なんだろう)ジトー

犬崎(…とりあえず命知らずなんだろうなぁ)

骨田さんどこから血が出るんすか

>>492
骨からじゃね?

それ、髄液じゃ…

明日書くからまだ落ちんな

@30分か
たのしみ

大丈夫
スレ内最後のレスから1ヶ月経つか、>>1の最後のレスから2ヶ月経つかしない限り勝手に落ちることはない

1000越えるか>>1がhtml化の依頼出せば別だがな

鎧谷「僕も質問いいですか?」

みこにゃん「どうぞ」

鎧谷「課長とはどういったご関係なのでしょうか」

犬崎「」ギクリ

みこにゃん「ああ、この子は私がロボルーマ王国にいたころに飼ってた…」

犬崎「やめーい!この話やめー!!」

みこにゃん「えー。残念」

犬崎(危なかった…課長としての威厳が崩落するところだった)

岩村「…あやしい」

骨田「あやしいっすねぇ」

みこにゃん「…あなたは何も聞かないの?」

女「…」

みこにゃん「たくさん隠してきたわ。それこそ、あなた自身のことも」

女「私は、私は」

みこにゃん「…」

女「私が分からないの…」

課長どころか元十傑集としての威厳も失墜するところだったぞwwwwww

女「あたしは知らないの。あたしが主人公補正を持っていることとか、勇者の子供であることとか」

みこにゃん「…」

女「全部、知らないの。でも、あたしの周りで勝手に色々なことが起こるの」

鎧谷「…」

女「あたしの主人公補正のせいで、色んな人を巻き込んでる」

犬崎(黒江もその犠牲者…。いや、最早この子に関わる者すべてがその渦中に取り込まれている)

女「そんなこと知らなかった。知りたくなかった。だって、あたしが『そうなって欲しくない』と思うことばかりなの」

みこにゃん「うん…」

鎧谷(主人公補正は必ずしも良いイベントだけを引き寄せるわけではないのか)

岩村(自身にとって悪い結果になることもある…。あまりにも無秩序なスキル)

女「お母さん。あたし嫌だよ。主人公補正なんていらないよ。みんなと楽しくお仕事するだけでいいよ…」

みこにゃん「うん…うん…。あなたの気持ちはよく分かったわ」

女「…」

みこにゃん「でもね…。ダメなのよ」

女「…え?」

みこにゃん「暗黒騎士のあなたはもう気づいているでしょう?」

鎧谷「…彼女の存在感が増大している」

女「!?」

みこにゃん「その通り」

犬崎「わん!(主人公補正は黒江に受け渡されのではないのか!?)」

みこにゃん「確かに、この子の中に主人公補正は存在しない。しかし…」

岩村「…?」

みこにゃん「主人公補正を受け取った相手が紡ぎ出す物語の中心人物として選ばれた」

女「どういう意味?」

みこにゃん「あなたはどう足掻いても、運命から逃れられない」

女「…!?」

みこにゃん「ごめんなさい。誰にもどうすることもできない」

女「い、いや」

みこにゃん「最期まで運命に流されるしか…ないの」

女「あたしは…!そんなのはイヤ…!」ダッ

鎧谷「ま、待て!」

鎧谷「追いかけましょう!」


みこにゃん「本当に…何もしてあげられないの」

みこにゃん「主人公補正が決めたことには逆らえない」

みこにゃん「あの子も、あの人のように翻弄されるのね…」

みこにゃん「ごめんね…ごめんね…」

くっそU字工事が頭を過ぎりやがった

犬崎さんもあせると喋れるようになるんだなぁ

>>503は何者かによって存在を抹消されました。

女「もういや…」

女「子供の頃から変なことに巻き込まれてばかり…」

女「バスジャックに巻き込まれたり…」

女「弱小バスケ部をインターハイに連れて行くハメになったり…」

女「テロリストが設置した核爆弾の起爆コードを切ったこともあったし…」

女「もういや!普通に暮らしたいよ…」

女「運命って、なんなの…」


 ???『それは、逃れ得ぬもの』


女「!?」

 ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …


黒江「はじめまして、かしらね。被験者さん」

女「黒江さん…!?」

黒江「…」ピッピピッ

女「な…」

黒江「はい、はい、発見しました。では不穏分子は消します」

女「え…?」

黒江「聞いての通りよ。社長はあなたたち営業部を敵対勢力として認定したわ」

女「そんな!」

黒江「我々、魔王軍特設作戦班があなたたちを消去します」

女「どうしてこんなことに…」

黒江「申し遅れました。私、王立魔法研究所所長兼、魔王軍特設作戦班班長の黒江と申します」

女「なんで、なんでここに…いるの?」

黒江「我が社の衛星を使えば転移魔法の航跡なんて簡単に追えるわ」

女「そうじゃない!」

黒江「!?」

女「なんでこのタイミングで、都合よくあたしの前に現れるの!」

黒江「…それはあなたたちが」

女「これじゃあ本当にあたしたちは主人公補正に…」

黒江「何を言ってるの?」

女「嫌だよ…。黒江さんと戦いたくなんかないよ…」

黒江「あなたの事情は関係ないわ。私は魔王様のために仕事をするだけ」キュイィイン

黒江の手のひらに魔力が集中する…

犬崎「わん!(待たんか、黒江!)」

黒江「…あら、「元」企画課長殿」

鎧谷「なぜここに…!」

岩村「あまりにも対応が早すぎる」

黒江「それは我が社の技術力の高さが…」

犬崎(違う…。わざわざそんなことに黒江を使う必要は無い)

鎧谷(これはまさしく、主人公補正がもたらした…)

骨田「まさに運命…。運命的過ぎる!」

女「…っ!」

犬崎「わん!(言うな!)」

犬崎「わぉん!(今は主人公補正
なんて関係ない。黒江も(株)魔王城も敵であるという事実だけ認識しろ!)」

骨田「は、はい!」

鎧谷「やるしか無いか…!」

岩村「研究所の時のようには…行かない!」

女「みんな…」

犬崎「わん!(よし!行

黒江「0点よ」

ズンッ!

犬崎「キャイン!」ズザァ

鎧谷「ぐわぁ!」

岩村「重力系の魔法…!?しかし、威力が段違い…!」ガクン

女「た、立てない…」ガクガク

骨田「ぎにゃぁぁ」ポキポキ

黒江「意気や善し。でも、研究所での戦いで「ロスト・コード」を手に入れた私にあなたたちは最早適わない」

鎧谷「ま、また主人公補正が成長を促していたのか…」

犬崎「ぐぅ(圧倒的…)」

黒江「トドメだ!」

みこにゃん「させない!」

ギィン!

黒江「くっ!?」

女「お母さん!?」

いいとこで止まってる(/_;)

主人公補正でおっぱい大きくなってるといいね(´・ω・`)

>>510
いつから主人公のおっぱいが大きいなんて勘違いしていたんだ?

咲さんは関係ないだろ!

ふはは
書かんとトコトン落ちるのう

みこにゃん「大丈夫!?」

女「あ、ありがとう。お母さん」

犬崎「わん…(我々を…助けるのか?)」

みこにゃん「大事な娘の上司様だからね」

鎧谷(敵であった絶対無敵☆ロリ巨乳怪力無双姫みこにゃん…)

岩村(それが味方になるとは…)

骨田「なんという超展開…」

みこにゃん「それも、また主人公補正の影響なのでしょう」

女「!」

みこにゃん「聞きなさい。私は今から全力で戦います」

犬崎「くぅん?(なんだと?)」

みこにゃん「その結果、負けるかも知れません。命も…」

女「ダメ!」

みこにゃん「…」

女「ダメだよ…主人公補正なんて訳の分からないものに翻弄されて死ぬなんて…」

女「お母さん…。逃げようよ…」

みこにゃん「聞きなさい。確かに主人公補正は運命を決定付ける力を持つ強力な概念だわ」

鎧谷「…」

みこにゃん「でもそれは誰にとって有利なものかは分からない。そして誰にも結果が分からないわ」

犬崎(確かに当事者を運命の中心とするだけで、その者の幸福を確約するわけではない)

女「だから何だって言うの…?」

みこにゃん「主人公補正はあなたを決定付けるかもしれない。でも、あなたはその結果を予め知ることは出来ないわ」

女「…」

みこにゃん「知らない、知り得ないものに怯える愚は犯さないで…。運命に立ち向かいなさい」

女「た、立ち向かう…?」

みこにゃん「そうよ。ここは私が抑えるから、まずはロボルーマに帰って準備を整えなさい」

女「い、イヤよ。お母さんと一緒じゃなきゃ」

みこにゃん「ポチ」

犬崎「わん(分かった、任せろ。…夢犬(ムゲン)!)」

バシュン!

女「はにゃん…zzz」

みこにゃん「…ありがとう」

犬崎「わん(どう見ても、死ぬ人間の台詞まわしだったが?)」

みこにゃん「そんなつもりはないわ。あの子が帰る前に夕飯を作らないと…」

犬崎「わん(最後にいくつか聞かせてくれ)」

みこにゃん「何?」

犬崎「わん(なぜここに帰ってきたのだ?)」

みこにゃん「分からない…。買い物途中に次元が開いたところまでは覚えているわ」

鎧谷「主人公補正の影響だとでもいうのか!?」

みこにゃん「主人公補正はそこまであからさまに直接的ではないわ。間接的には関わっているだろうけどね」

犬崎「わん(何者かが手を下したのか…)」

みこにゃん「そういうことになるわね。それもかなりの魔力を持った存在。…他に聞きたいことは?」

犬崎「わん(我々を信用するのか?我々は魔族だぞ)」

みこにゃん「ふふふ」

犬崎「くぅん?(何かおかしい)」

みこにゃん「あなたは子犬の頃から意地っ張りね」

犬崎「わん!(なんだと!)」

みこにゃん「あなたは部下想いの優しい子よ。思うようになさい」

犬崎「ぐぅ…(ふんっ)」

みこにゃん「そろそろ行きなさい。あのエルフもいつまでも待ってはくれないわ」

黒江「その通りよ!」

犬崎「くぅん…(分かった。先にロボルーマに行く。…できればヤツを殺さないでくれ。…大事な部下なんだ)」

みこにゃん「うん」

犬崎「わん!(鎧谷、岩村、骨田!逃げるぞ!)」

企画男衆「おう!」

タッタッタ!

黒江「逃がさないわよ!」

みこにゃん「待ちなさい!」

黒江「…あなたに用はないわ」

みこにゃん「そうね、そうかもしれない。でもね…あなたの主人公補正は確実に私を捕らえたわ」

黒江「?」

みこにゃん「主人公補正は感情までコントロールするのかしら?久々に戦いたくてウズウズしてる…」スッ

彼女が挙げた手を中心に魔法陣が描かれ、光を放ち始めた…。

黒江(召喚?)

そして、その光が一瞬強くなった瞬間に「それ」は現れた。

スゥン

分厚い金属でできた大剣。
彼女の身長は間違いなく越えているだろう。
重く質素な体裁に彫られているのはロボルーマの紋章に見える。
彼女はそれを掴むと、軽々しく肩に担いでみせた。

黒江「それは!?」

みこにゃん「知っているようね。ロボルーマに伝わる伝説の大剣よ。あなた方魔族の間では…」

黒江「『サタンキラー』…。先代魔王様を倒した剣…!」

みこにゃん「そう呼ばれているのね。私があの人に託したこの剣は…」

黒江「何者…?」

みこにゃん「元お姫さま。今は役場勤務で我が子を育ててきた働くママさんよ!」

黒江「戯れ言を!」

みこにゃん「本当ですぅ!食らえ!『毎朝弁当作る苦労烈斬』!!」

黒江「ぐぁぁ!!!」

みこにゃん「兼業主婦を舐めんなよ!」


専業主婦だと思ってますた
ごめんなさい(´・ω・`)


こんな立派なお母さんがいながら
99社も面接落ちたのか

>>520
それも補正だとしたら……?

>>521
あっ(゜ロ゜;

なんでもかんでも「それも私だ」で済ませちゃうスパロボのとあるキャラクターを思い出したw

乙乙

>>523
ドッコイダーの主人公を思い出した

>>523
アルテウル「それも我だ」

【ロボルーマ近辺】

鎧谷「城が見えてきましたよ」

岩村「…案外近かったな」

犬崎「わん!(ほら!早くせんか!)」

骨田「はぁっ…はぁっ…」

女「zzz…」

骨田の背には女が担がれている
まだ催眠魔法は解けてないらしい

鎧谷「だらしないな」

岩村「鍛え方が足りないんじゃないか?」

骨田「…」チッ

鎧谷「あっ、舌打ちした」

岩村「…文句でもあるのか?」

犬崎「わん!(お前が背負いたいって言ったんだからな)」

骨田「ぐぬぬ…」

女「はにゃん…?」ムクリ

犬崎「くぅん(起きたか)」

女「ここは…」

鎧谷「ロボルーマのすぐ近くだ」

女「そうだ、お母さんが助けてくれたんだ」

犬崎「わん(今頃、黒江と戦っているはずだ)」

女「助けに行かなきゃ!」

鎧谷「それはダメだ」

女「そんな!」

鎧谷「まず、あの2人の戦いに首をつっこめるほど我々は強くない」

岩村「十傑集の課長さえも押さえ込んだ黒江に、旧大戦最強クラスのみこにゃん…」

犬崎「わん(間違いなく足手まといだな)」

女「行って見なきゃ分からないじゃないですか!」

ズゥゥン

女「!?」

空気が揺れた
濃い魔力の衝突が起こす振動だ

岩村「ここまで届くなんて、すごいな…」

犬崎「くぅん(…間違いなく魔界で十指に入る戦いになるだろう)」

女「…」

犬崎「わん(力の問題だけじゃないよ。君のお母さんと約束した)」

女「約束、ですか?」

犬崎「わん(そう。ロボルーマまで連れて行くとな。そこに行けば分かる、と)」

女「…お母さん」

女の視線がロボルーマ城に注がれる
懐かしさを孕んだ約束の地へ…



骨田「あのさぁ」

女「なんですか?」

骨田「降りてよ」

女「…すんません」

企画課一行がロボルーマに着いた頃…

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

黒江「…」

みこにゃん「…」

深い沈黙が両者を包む
先程までの激戦が嘘のような静けさだ

みこにゃん(おかしい。確実に有効打を入れているはずなのに…)

黒江「…」

みこにゃん(次よ。次で、決める)

汗が滴る

頬を伝わる

顎に水滴を作る

やがて水滴は大きくなり

重力に呼び込まれる

それは地を打ち音を鳴らすだろう

それが戦いの合図となる

タンッ…

みこにゃん(行くわよっ!……………!?)

そうなるはずであった

お母さん頑張って!

みこにゃん!頑張れ!!

黒江「もう…いいわ」

みこにゃん「!?」

踏み込まれるはずであった脚が宙空で静止した

黒江「私の中に流れる古の血統が、あなたを見極めた」

みこにゃん「何を言って…」

黒江の目に涙が浮かぶ

黒江「あなたは良い闘士だったわ。でも、だめなの」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

みこにゃん(この存在感…っ)

黒江「血があなたを断罪することを決めたから…!」

今まで感知したことのない量の魔力が辺りを軋ませた

  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

みこにゃん「これが、これが主人公補正なの…?」

黒江「好みのタイプ(巨乳)だもの。きっと好きになれたわ。でも…」

みこにゃん「あの人と、あの子の運命を歪ませた力…」

黒江「さよなら」

みこにゃん「あああ…」


魔力によって空間が捻れる

みこにゃんはこの光景に心当たりがあった

ある文献に書き記された禁忌の呪文

極限まで高められた魔力と魔力の反作用による超爆発

大陸すら消滅させる究極魔法

確か、選ばれた血族だけが使用可能なはずだった



みこにゃん「さすがに都合良すぎだろ…」


     ピカッ!


【ロード・オブ・黒エルフ編…完】

【黒エルフより愛を込めて編】

【ロボルーマ城】

ゴ   ゴ   ゴ ゴ ゴ…

鎧谷「かなり揺れましたね…」

犬崎「ぐるる…(この魔力震が決着となるだろうな)」

女(お母さん…)

???「お待ちしておりました」

岩田「…誰だ!?」

大臣「私はロボルーマ王国の大臣でございます」

犬崎「わん!(これはこれは、大臣自らお出迎えしていただけるとは恐縮です)」ペコペコ

骨田(腰低ッ!!)

鎧谷(課長はサラリーマン生活の方が長いからなぁ)

大臣「そう堅くならないでください。姫と、そのお供の方々よ」

女「姫?」

犬崎「わん?(お供?)」

大臣「はい。魔族を飼い慣らす器量。まさにロボルーマ王族の血統」

大臣「暗黒騎士にゴーレム、アンデッドまで揃えていらっしゃる」

女「いや、この方々は…」

大臣「おや?この柴犬はきび団子で手懐けたのではないですかな?」ハハハ

犬崎「わん(…こいつ殺していいか)」

鎧谷「落ち着いてください」

岩田って誰?岩村じゃなくて?

やべぇモバゲーのドカベンで岩田鉄五郎集めてたから間違えた

シブいなオイ

大臣「では、玉座の間へどうぞ」

女「玉座?」

大臣「王がお待ちですので」

鎧谷「課長」ヒソヒソ

犬崎「くぅん(うむ。話がスムーズだな)」

大臣「みこにゃん様からすでに大まかな話は聞いています」

岩村「根回しがいいな」

鎧谷「なら聞かせてください。なぜ、みこにゃんは僕らをここに?」

大臣「それは玉座の間に行けば分かります」

女「…」

骨田「あっ!?」

犬崎「くぅん?(どうした?)」

骨田「さっきの戦闘がインターネットの動画サイトに…」

鎧谷「何だと!?」

『ゴゴゴゴゴ』

『ドカァン』

岩村「…黒江強いな」

鎧谷「…」

骨田「どうしたんですか?」

鎧谷「…誰がこんな映像を?それにアップされるのがあまりにも早すぎる」

犬崎「わん(なるほど。黒江が単騎で来た理由が分かったな。…デモンストレーションだ)」

女「デモンストレーション…ですか?」

犬崎「わん(ああ、黒江の能力に懐疑的だった連中に対してのな)」

岩村「なるほど、都合良くカメラが回ってるわけだ」

鎧谷(もしくは、『主人公補正』が商品として既に成り立っている場合…)

鎧谷(このデモンストレーションは本社の頑固者共に対して作られたわけではなく)

鎧谷(顧客向けに作られたCMとも考えられる。…きな臭くなってきたなぁ)

大臣「もう進んでよろしいですかな?」

女「あっ、すみません」

大臣「お互いに、時間が余りないようですからな」ハハハ

【玉座の間】

衛兵「王女一行のおなーりー」

パッパラパッパッパー

一行が誘われたホールに、ラッパが鳴り響く

ステンドグラスからこぼれる陽光がホールの中を厳かに彩っている

大臣「お連れしました」

王冠を被った人間「おおお、よく来てくださった」

豪華な装飾が施された玉座から、それとは相対的に貧相な老人が声をあげた

女「え…と、あなたは…?」

ロボルーマ王「ロボルーマ王です」

犬崎「わん(…ひょろっひょろの爺さんだな)」

骨田「あんなんで大丈夫何ですかねぇ」

大臣「ロボルーマ王家は代々女性が強く逞しく、男性が理知的で貧弱なのです」

鎧谷「だから馬鹿力なのか」

女「どうせバカですよ!」

犬崎「わん(時間がない。なぜ、みこにゃんがここに呼んだか教えてくれ)」

ロボルーマ王「うむ、あなた方を呼んだのは他でもない…」

女「…」

ロボルーマ王「王位を継承するためだ」

女「ええええ!?あたしが王女様ぁ」

骨田「ですよね」

鎧谷「やはりか」

岩村「このあからさまなストーリィ展開…」

犬崎「わん(主人公補正の影響か…)」

女「え?なんでみんな冷めてんのさ…(´;ω;`)」

規定路線って奴か

女「ほら、王女様ですよ!王女様!ウフフ!」

鎧谷「品格がなぁ…」

岩村「…不相応」

骨田「柄じゃ無いですよね」

女「このクソ野郎ども…」

犬崎「わん(とにかく、主人公補正の影響である可能性を忘れるな。浮かれている場合じゃない)」

鎧谷「変な重要アイテムを掴まされたりしないでよね。「王の証」とかさ」

女「そう言われましても…」

ロボルーマ王「では、王女様…玉座へ」

女「は、はい」



鎧谷「大丈夫ですかね?」

犬崎「わん(…気をつけろと言ったところで、もはや逃げることなどかなわんのかもしれん)」

岩村「…」

女は王に引きつられ玉座の前に進んだ

近くで見ると思いの外大きく、前を進む老人がより小さく見える

ロボルーマ王「では、ここにお座りください」

女「そ、そんなに畏まらないでください」

ロボルーマ王「何を言います。家系からいくと、あなたは私の24代前の王位継承者に当たるのです」

女「ああ…そう言えば、王様はお母さんのお兄さんの孫の孫の孫の…」

ロボルーマ王「継承権を持ったまま失踪されてから300年。ようやく冠が正しい位置へと戻る」

女「…」ゴクリ

ロボルーマ王「冠は国の象徴。国の全てを王へ…」

王冠が女の頭にゆっくりと乗せられた

女「…!」

元ロボルーマ王「やはりお似合いだ。これで、あなたはロボルーマ王となる」

女「あ、あたしが王様…」

鎧谷「うーむ、スーツに王冠は似合わんなぁ」

岩村「…大丈夫か?その王冠呪われてないか?」

骨田「まぁ、家業を継いでも後輩は後輩だから調子のんなよ」

女「大臣さん」

大臣「はい?」

女「いますぐコイツ等を牢屋へ」

大臣「え、しかし」

女「はよせい!」

大臣「ひゃぁ!」ビクゥッ

犬崎(やっぱ向いてないな…)

元王「じゃあ私は隠居しますんで」

女「ちょっ、ちょっと待って!お母さんはなんで私に王位を継承させたの?」

元王「さぁ?」

女「例えば、王になると特別な力が使えるとか、王族しか使えない秘宝があるとか…」

元王「特にそういったものは御座いませんが…。なぁ大臣」

大臣「はい。代々伝わっている者と言えば、王冠くらいのものです」

岩村「みこにゃんの剣は?」

大臣「あれは常人が扱えないくらい重いだけの鉄塊です。魔法も呪いもありません」

犬崎「わん(なんと…。その王冠は?)」

元王「それはスゴいですぞ」

鎧谷「おお!」

元王「私がこの前かなりの値段で作らせたんです」

鎧谷「…特殊能力は?」

元王「そんなもんありません」

大臣「王冠自体は金で出来ており、ダイヤモンドで隙間無く装飾された高価な逸品です」

女「…いくら?」

犬崎「わん(コラコラ、食いつくな)」

鎧谷「これは僕が預かっておくから」

岩村「いや俺が」

骨田「僕も僕も」

女「あたしのだっちゅうの!」

女「ていうか、王冠は代々伝わっているものなんじゃないんですか!?」

元王「それが、代々伝わっていた方の王冠は錆がひどかったので…」

鎧谷「まさか…」

犬崎「わん(捨てたのか)」

元王「失礼な!教会の聖火で天へ送ったのです」

岩村「燃やしたのか…」

大臣「まぁ、アルミ製の安いものだったので…。作られた当時は高価なものだったんでしょうけどね」

元王「あれも特に魔法がかけてあったとは聞いていないのだ。それにダサかったし…汚いし…」

鎧谷「…課長。とりあえず分かったのは、ロボルーマ王がムカつく金持ちだってことです」

犬崎「わん(人間もしっかり平和ボケして、慣習とか伝統を蔑ろにしてたんだなぁ)」

元王「面目ない!」

女「それじゃあ、お母さんはあたしを王様にして何をさせたかったの…?」

元王「しかしだ、ロボルーマには潤沢な資金と資源がある!それは全てあなたのものだ!」

大臣「その通り!」

ゴゴンッ

大きな音とともに城が揺れる

衛兵「敵襲ー!」

元王「なんだと!?」

犬崎「くぅん(時間切れか…)」

見てるよー

テストで最近書けなかったが、もはや誰も見てねぇなぁ
しかし、書き上げるぜ

犬崎「わぉん…(間に合わなかったか)」

轟音と粉塵の中に人影が揺らめく

黒江「なるほどね」

女「…黒江さん」

黒江「人間の城に逃げ込むなんて、裏切り者らしいわ。でももう逃がさない」

骨田「はわわわ」

鎧谷「転移魔法で逃げるぞ!」

鎧谷の周囲に魔法陣が描かれた…が途端に消えた

鎧谷「なに!?」

犬崎「わん!(何をやっている!)」

黒江「…逃がさないって言ったでしょ」

岩村「対抗呪文…!?いつの間に!」

黒江「そんなチンケなものじゃないわ。これは『絶対制御領域』よ」

鎧谷「…?」

黒江「さっきの戦闘で、私は前世の記憶を思い出した…(略」

犬崎「わん(また主人公補正か…)」

見てるよ

女「そ、そうだ!お母さんは!?」

黒江「お母さん…?ああ、みこにゃんね」

女「まさか…」

黒江「死んだわ」

女「!?」

黒江「私の最大火力に耐えられはしない」

女「あ、ああ…」

女の目に涙が浮かぶ

声にもならない声が口からこぼれる

犬崎「くぅん(落ち着け、今は…)」

女「うわぁぁぁ!」

骨田「なっ」

ズンッ!

黒江「ー!?」

瞬間、黒江の体が後ろの壁に叩きつけられた

周囲の者達は、何が起こったか一切理解できない

女自身を除いて…

女「…こ、この力は」

黒江「ぐあっ…」

女「お母さん…」

いるよ

ガラッ…

がれきの中から出てきた黒江

どうやら不意の攻撃で手傷を負ったようだ

黒江「…痛っ!この力…まさに、みこにゃん!」

女「お母さんの力…!」

骨田「何でいきなり…」

元王「そう言えば先々代から聞いたことがある」

犬崎「?」

元王「『ロボルーマの宝は女である』と」

元王「『女に冠はいらぬ。力もいらぬ。ただ、座らせるために枷を与えよ』と」

岩村「どういう意味だ?」

元王「ロボルーマ王族は代々女が圧倒的に強いのだ。ご先祖様の誰かがそれに制約を与えた」

鎧谷「制約?」

元王「『王位を継いだ女のみ力を使える』」

女「じゃあ、今はあたしが…最強」

鎧谷(あっ…)

岩村(調子乗ってる…)

>>547
これは……「見てるよ」と言わせるための狡猾な罠だな!!

うん
寂しかった

>>554
見てるよ!

見てるけど、みこにゃんホントに死んじゃったの?

それはあんまペラペラ書き手が言うものじゃないような気がするから言わない

女「お母さん…あたし、頑張る!」

黒江「!」

魔力がこぶしに集中する!

女「せい!」

ズオッ!

衝撃波が跳ぶ
大理石で出来た床が剥がれ、宙に浮いた

黒江「ぐぅ!!」

黒江の身体を衝撃が駆け抜ける

しかし、どうにか耐えしのいだ

黒江(この力は、みこにゃん以上!?)

女「これが、あたしの力…!」

黒江「しかし、私だって!」

ゴ ゴゴ ゴゴ …

魔力の濃度が増している!




鎧谷「漫画が違う」

岩村「…俺らいらんな」

黒江「「超振動魔法」!」

ズ ガ ガ ガ ガ !

女「でやぁ!」

女は拳を突き出した
ただ、速く、音よりさらに速く

パッン!

骨田「相殺したぁ!?」

犬崎「わん…(魔力って腕力で消せるんだな…)」

女「…」ニヤリ

黒江「しかし!」

女が弾いた黒江の魔力が再び形を成していく
まるで、槍のようだ

ズンッ!ズンッ!ズガァァァン!

女「あっ、ぶねっ!!」

元王「あああ!城が!城がぁ!」

黒江「ちぃ!」

元王「この前建て替えたばかりなのにいぃぃぃ!!」

大臣(これって保険おりんのかなぁ…)

乙!!
待ってたよ!!

黒江「やるわね…」

女「…」

黒江「やっぱり好みのタイプだわ」

女「…黒江さん」

黒江「被験者として研究所に連れてこられたときからずっと気になってた」

女「…」

黒江「私に不思議な力をくれたあなたのことを…」

女「…あたしのこと、企画課のこと、忘れちゃったの?」

黒江「…?」

鎧谷「俺たちのこと忘れちゃったんですか!?」

岩村「…黒江!」

骨田「黒江さん!」

黒江「…あなたたちのことは書類の上でしか知らないわ。私は秘書課、そして研究所所長よ」

犬崎「…わん!(…そうか、記憶操作か!)」

女「記憶操作?」

犬崎「わん!(金子のやりそうなことだ!大方、企画課から移動する前から目を付けていたんだろう)」

黒江「金子様はそのようなことはしない!」

犬崎「わん(ほらな)」

女「…そんな!」

女「どうにかできないんですか?」

犬崎「わん(記憶操作は上書き保存だ…。まさかバックアップなど取っていないだろう)」

女「じゃあもう…」

鎧谷「くるぞ!」

周囲の空気が凍りついていく

黒江「話は終わり?あなたたちの妄想に付き合っている暇はないわ」

女「あ、足が!?」

いつの間にか、女たちの足は膝まで氷で固められていた

鎧谷「う、動けない!」

黒江「私がロストテクノロジーを使って開発した『多次元接続機関』の応用よ。周囲の熱を異次元に飛ばした」

犬崎「わん…!?(しまった!?)」

黒江「死になさい!」

氷結した空気が肉体を包んでいく…

女「あっ…」

女(…死ぬの?)

女(お母さん)

みこにゃん(あきらめないで)

???(そうだ、諦めるな)

女(お母さん…。と、誰?)

???(お前の…)

女(お父さん?)

勇者?(あの黒エルフの補正はお前を選んだ。あとはお前がロールをこなすだけだ)

女(?)

勇者?(流れに乗るのだ。物語の中で与えられた役割になりきれ)

女(どういう意味?)

勇者?(それが主人公だ)

女(お母さんは…)

女(そんなこと言わなかった)

みこにゃん(そうよ)

女(運命に抗えって…言ってた)

みこにゃん(立ち向かいなさい)

女「…!」

女の魔力が熱を帯びる!

じゅううう!!

黒江「!?」

犬崎「わん!(あっ、あっつ!)」

骨田「熱い!」

じゅううう!!

黒江「な、なんと…」

女「黒江さんの補正がどんな物語にしたいかあたしには分からない」

女「あたしに何をさせたいのかも分からない!…でも!」

女「お母さん…!あたし、黒江さんを取り戻したい!」

黒江「///!?」ドキッ

女「叩き直してやるからな…」

黒江(こ、この気持ちはなんなの?)

女「覚悟しろ!」

黒江(懐かしい気持ちは…)



鎧谷「課長」

犬崎「わん(彼女の存在感が、もとに戻った…)」

岩村「いや、以前以上…」

鎧谷「まさか…」

主人公に返り咲いた?


主人公はピンチを必ず経験する


主人公は二者択一を迫られるもの


主人公は愛する者を必ず護り抜く

乙主人公はどんな時でも諦めない

女「『最高位雷撃魔法』っ!」

ビッ

女が突き出した人差し指から青白い雷撃が走る

黒江「っ!」

バシンッ

黒江はすかさず装備していた退魔の首輪を投げつけてそれをいなした

黒江「甘いわ!…………!?」

女の姿が無い
辺りを見回しても見つからない

黒江(地中?上空?)

そう脳裏によぎったその瞬間、衝撃は後方から訪れた

グンッ!

黒江「きゃっ!?」

女「どんなに補正があっても、目に見えないくらい速ければ反応出来ないでしょ!」

黒江「く、くそ!」

完璧な羽交い締めが決まった

鎧谷「絶妙だ!」

岩村「…あいつの力なら逃げられまい」

犬崎「わん!(よし!そのまま記憶を取り戻してやれ!)」

女「…」

黒江「…や、やるならやれ!」

女「…か、課長!記憶ってどうやって戻すんですか!?」

犬崎「わん(…だからぁ、上書き保存されてるから普通は無理だって)」ハァ

鎧谷「何か良い方法を思いついたから行動したんじゃないのかよ」

骨田「期待させやがってさ…」

岩村「お前にはガッカリだよ」

女「うるせー!!」

女「どうしよう……」

万事休す
記憶を戻す方法がなければ、何も解決しない

黒江「お、おぱ」

漂う絶望感が辺りを包む
女の目に上司の強張った表情が映った

犬崎「…わん!(…くそ!金子がこの場にいれば殺してでも聞き出したものを!)」

鎧谷「俺が記憶復元魔法さえ使えれば…!」

黒江「おおお、おっぱ、おっぱ」

もはや、企画課に残された手はないのだろうか…

黒江「おっぱい…」ブシャア←鼻血

女「うわっ、きったね!?」ガバッ

周囲の緊張をよそに、羽交い締めで押し付けられたおっぱいに気を取られた黒江であった

が、それが功を奏して羽交い締めから解放された

黒江「くっ、やるな」ボタボタ

女(なんか前も鼻血だしてたなこの人)

黒江「色気で騙そうとしてもそうはいかない!」

岩村「まったく説得力がない…」

黒江「懐柔しようとしても無駄だぁ!」プルプル

鎧谷「うわめっちゃ動揺してる」

骨田「記憶が変わっても本質的には何も変わんないなぁ」

犬崎(しかし、これは使える。せめて無力化できれば手はある)

犬崎「わん!(おい!黒江にありのままの気持ちを伝えろ!)」

女「はいい!?」

鎧谷(なるほど…)

鎧谷「前々から好きだったんだろう!」

黒江「!!?」

女「いやいやいや…だって黒江さんは女ですし」

黒江「///」モジモジ

女「…!!?」

黒江「そ、その…あなたの気持ちは分かったわ。すごく嬉しい」

黒江「私も、研究所で一目見たときから、すごくかわいいなぁって思ってて」

黒江「裸でもんずほぐれつ…きゃ!私ったら///」

黒江「今のは間違い!ちゃんとプラトニックな関係を目指して…ね?」

骨田(うわぁ…)

鎧谷(すげえ…)

女(やべぇ超勘違いしてる…)

俺たちの黒江さんが帰ってきた

黒江「部屋の家具は…」ブツブツ


女「なんかおかしなことになりましたが」

犬崎「わん(うむ、よくやった)」

鎧谷「結果オーライだ」

岩村「むしろここまで効果があるとはな」

女「どうします?」

犬崎「わん(とりあえず、姉崎に診せる。ヤツほどの大魔導師ならなんとかしてくれるはずだ)」

鎧谷「なら急ぎましょ…」

ピルルルルル

ピルルルルル

女「着信?」

黒江「はい、黒江です」

骨田「…?」

キィン

黒江「…はい、早急に始末します」

女「!?」

鎧谷「なんだって!?」

女「黒江さん!」

黒江「『暗黒物質召喚魔法』」

球体にも見える黒い空間が部屋の中心に現れた

ズォォォォ!

それは唸りをあげて周囲の物質を飲み込み始めた!

女「な、なんで!?」

犬崎「わん!(おそらく今のは金子からの電話だ!)」

鎧谷「そうか!服従魔法…!」

犬崎「わんわん!(そうだ!ヤツめ、モニターしていて痺れをきらしたのだろう!)」

ズォォォォ!

女「すごい魔力…!」

黒江「ぐぅ…」ガクガク

鎧谷「黒江さんの様子がおかしい…」

犬崎「わん!(あれだけ魔力を使ったんだ!…とっくに限界を越えている!)」

女「もう、やめてぇ!」


黒江「まだ…まだよ!」

黒江「まだ、何かあるはず…」ガクン

黒い空間が徐々に収縮していく

黒江「うっ…」

シュウゥン

そして、完全に消え去ってしまった

女「黒江さん!」

黒江「来るな!…まだ」

鎧谷「黒江さん…」

黒江「まだ『設定』があるはず!」ギラッ

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

犬崎「わん!(また補正が働いたか!?)」

黒江「そう!私は!」

女「!?」

黒江「わたしはぁぁぁ!!!」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ …

何か大きな力が働いているようだ
黒江の存在感が以上に増す

鎧谷「これ以上は手に負えません!」

犬崎「わん!(イヤ待て!)」

女「?」

犬崎が気付いたのは僅かな異常だった
それは徐々に顕著になり、他の者も気づきはじめた

骨田「なんか…」

岩村「様子がおかしい」

黒江「私は…!私は…!」

女「これは…」

黒江「一体誰なの…!」

女「補正の暴走…?」

黒江「あ…!」ガクン

ついには膝をついてしまった

鎧谷「依然として存在感は高いようですが…」

犬崎「わん(しかし、もはやここまでのようだ)」

骨田「どういうことですか?」

女「…多分、『設定の許容限界突破』」

鎧谷「キャリーオーバー?」

犬崎「わん(研究所で会ったときから違和感があった…)」

犬崎「わん(設定過多。ただ設定が多いだけで、まとまりがなく、主人公らしさがなかった)」

岩村「確かに、一つ一つの設定に深みがなかった」

鎧谷「主人公補正が迷走していた、とでも言えばいいんですかね…」

女「分かりません。でも、このままじゃ黒江さんの個性や存在そのものが崩壊してしまいます」

犬崎「わん(どうにかできるか?)」

女「多分」

女はゆっくりと黒江に近づいて行った

黒江「…」

女「…」

女はうつむく黒江の顔をのぞき込んだ
生気を感じさせない目、口は何かを呟くように震えている

黒江「…」

女「黒江さん…本当に…ごめんね」

ギュッ

女は黒江を力強く抱きしめた
瞬間、黒江の体が光を放ち始めた

黒江「私の力が…。帰っていくのね」

女「そう、主人公はあたしが引き受けます」

黒江「主人公は、大変ね…」

女「ですね」ニコッ

輝きは黒江から女に移動すると、次第に弱くなり、見えなくなった
「補正」が譲渡された瞬間であった

黒江「つっ…」

女「これでもう大丈夫です」

黒江「…」

女「どうしたんですか?」

黒江「おっぱい」ブシュッ

顔をうずめていたのが柔らかな乳房だと気づくと、すかさず谷間を鼻血で満たした

女「おおぅ…」

黒江「…んね」

女「…」

黒江「ごめんね…」

女「いいんですよ」

黒江「あなたのお母さんはあたしが…。それに企画課のみんなにもヒドいことを…」

女「だからいいんですよ」

黒江「だって…だって…」

黒江の目端から大粒の涙がこぼれる

犬崎「わん!?(記憶が戻ったのか!?)」

黒江「課長、みんな、ごめんね…」

鎧谷「今課長って…」

岩村「なんと…!」

骨田「上書き保存がどうとかはどうなったのさ!」

女「いいんですよ」

女「たまにはご都合主義的でも」

犬崎「わん(そうだな…。こんな適当な奇跡もたまにはいい)」

鎧谷「主人公補正もたまには役にたちますね」

さすが主人公!おれたちにできない事をry

ご都合主義…嫌いじゃないです

御都合主義も立派な主人公の必殺技だよな

何があろうとおっぱいなら……



【魔王城:秘書課】

聖谷「プロトワンの主人公補正が消失しました」

金子「そうか」

聖谷「はじめから返すつもりだったんですか?」

金子「「手に余るからな。「主人公補正」も「主人公補正を得た黒江」も扱いきれん」

聖谷「あれほどの主人公補正は手に入りませんよ」

金子「データは十分に手には入った擬似的に再現はできる。それに…」

聖谷「デモンストレーションはすんだ」

金子「その通り。今度の株主総会が楽しみだな」

聖谷(魔王軍勝利のために使う気なんてこれっぽっちもなさそうだな)

金子「なに?」

聖谷「いえなにも…」

金子「株価はどうなってる?」

聖谷「PVを流してからグンと値上がりしました」

金子「そうか…!」

聖谷「で、連中はこれからどうするんですかね?」

金子「『主人公』ならやることは決まっているさ」

聖谷「?」

金子「…フィナーレも近い」

【ロボルーマ城】

黒江「これからどうするの?」

鎧谷「もう決まってるんでしょ?」

犬崎「わん(とりあえず、当初の目的はすんだ。あとは、おまえ次第だ)」

骨田「そうですね…。僕は全ての女性に裸エプロンを義務化したいと考えています」

犬崎「わん(いや、お前は黙れ。彼女に聞いている)」

女「あたしは…主人公として…」

黒江「…」

女「…この物語を終わらせます」

黒江「…!」

鎧谷「…それが主人公補正を消滅させる唯一の方法か」

岩村「しかし、具体的にはどうやるんだ?」

女「あたしが勇者なら、やることは1つ」

鎧谷「まさか…」

犬崎「わん(魔王を討つのか)」

女「…」

魔王を討ったらみんなクビになってまうやん。適度にボコして脅して会社続けてもらわんとw

犬崎「わん(本気か?)」

鎧谷「魔族の我々の立場は分かってるよな?」

岩村「魔王に刃向かうなど…やれやれ」

骨田「半官半民、美味しい思いのできる企業だからなぁ」

女「…分かっています。これはあたし1人で」

黒江「せっ」

ビシッ

女「へばぁ!」

女の脳天に黒江の手刀が炸裂した。
悶える女を見下すように黒江が微笑む。

黒江「バカね。あんたは。私たちをなんだと思ってるの?」ニヤリ

女「?」

黒江「『企画課』よ?」

犬崎「わん(全く後輩の躾がなっとらんようだな…)」

骨田「へい、申し訳ねぇ」

女「???」

鎧谷「分かってないようだね。僕らは『企画課』なんだ」

岩村「…庶務課やら秘書課やら経理の連中にはできないことをやる」

女「それは…?」

黒江「無いところから生み出すことよ」

犬崎「わん(イベントならなんでもござれだ)」

女「でも、魔族のポリシーは…?」

鎧谷「勘違いするなよ。我々魔族のポリシーはな…」

黒江「『欲望に忠実に』」

骨田「楽しそうな方に付く」

犬崎「わん(『企画課』の欲望をなめるなよ…?新米)」

女「じゃあ…」

犬崎「わん(これより、企画会議をはじめる。テーマは…『魔王討伐』だ!)」



【魔王城】

魔王「…」

牛宮「魔王様。全軍の態勢が整いました」

魔王「そうか」

牛宮「出陣は?」

魔王「しばし待て」

牛宮「しかし…」

魔王「先に終わらせなければならんことがある」

牛宮「?」

色倉「魔王ちゃん」

魔王「色倉か。犬崎たちはどうだ?」

色倉「もう動くよ」

魔王「そうか。ならば勇者とも…」




【ロード・オブ・黒エルフ編…完】

らしくなってきたね

うん、ロード・オブ・黒エルフ編じゃないや
黒エルフより愛を込めて編だね

細かい話だがスマン

【レ・みこにゃん編】

鈍色の雲から地表へ稲妻が走る。
空も地面も一様に赤黒く、その境界は分からない。
見渡す限り生を感じさせないその世界は『地獄』。


みこにゃん「…」

黒江の放った大魔法は強烈なエネルギー。
みこにゃんはそれに押し出されるようにこの異次元へ追いやられたのであった。

みこにゃん(ダメね。どれだけ歩いても何も変わらないわ)

歩き始めてから何時間が経ったであろうか。
目に映る景色に変化は見られない。

ズキッ

みこにゃん「痛っ…」

左腕から血が滴り落ちる。
あの魔力の奔流の中で無傷で済むわけがなかった。
暫くは使い物にはならないだろう。
しかし、その様な状況にもかかわらず、みこにゃんの顔には笑みが浮かんだ。

みこにゃん(まだ、死んでないってことか)

みこにゃん(こんな深手を負ったのは、いつ以来かしら…)

みこにゃんの脳裏に懐かしい記憶が蘇る。
300年前。みこにゃんからすれば24年前。大戦の末期に起きたロボルーマ城防衛戦。
長きに渡る戦いによってロクな兵力も残っていないロボルーマで、みこにゃんはただ独り戦っていた。

みこにゃん(あの時はキツかったなぁ。相手は魔王だもんなぁ)

一向にロボルーマを攻略出来ないことに業を煮やした当時の魔王が自ら出向いて来たのである。
みこにゃんはかなうはずもなく、致命傷を負わされた。まさに絶体絶命。
そこに颯爽と現れ、助けてくれたのが勇者一行であった。

みこにゃん「///」

甘酸っぱい青春の思い出でもあった。

???「きゃぁぁぁ!!!」

みこにゃん「!?」

突然、岩陰から悲鳴が聞こえた。

みこにゃん「何!?」

???「助けてぇ!」

みこにゃん「…!」

みこにゃんは恐る恐る岩陰から顔を覗かせた。
すると、そこには…

???「いやぁ!もうやめてぇ!」

地獄ティラミス『カカカカカ!苦シカロウ!』

頭にヘッドホンを付けられたサキュバスと、手にiPodを持った魔神がいた。

???「いやぁ!」

どうやらヘッドホンから流れる音楽に苦しめられているようだ。

みこにゃん「助けとくか…」

地獄ティラミス「フハハ!次ハ『ペインキラー』だ!」

???「いやぁ!もうヘビィメタルはやめてぇ!もっとオシャレな音楽を聴かせてぇ!」

みこにゃん「…」

みこにゃんは助けるのをやめた。

やめるのかよw

おい!ヘビメタバカにするな!
かっこいいだろ!

???2「きゃぁぁぁ!!!」

みこにゃん「!?」

突然、岩陰から悲鳴が聞こえた。

みこにゃん「何!?」

???2「助けてぇ!」

みこにゃん「…!」

みこにゃんは恐る恐る岩陰から顔を覗かせた。
すると、そこには…

???2「いやぁ!もうやめてぇ!」

地獄ババロア『カカカカカ!苦シカロウ!』

手に薄い本を持った人魚と、手に薄い本の束を持った魔神がいた。

???2「いやぁ!」

どうやら薄い本の内容に苦しんでいるようだ。

みこにゃん「助けとくか…」

地獄ティラミス「フハハ!次ハ『ティエリア×ロックオン』だ!」

???2「いやぁ!なにこのカップリング!ティエリアは総ウケ!それ以外認め(ry」

みこにゃん「…」

みこにゃんは助けるのをやめた。

色んな意味で地獄wwwwww

見渡す限り生のない地獄…だよな……

俺地獄の住民かもしれんな・・・

みこにゃん「内容はともかく、ここは地獄のようね」

どの宗教にも悉く存在する「地獄」。
悪の流刑の地。最終地点。いずれも、良い話は聞かない。
しかし、自分がそこに存在していることに半ば納得していることに気が付いた。

みこにゃん「戦争とはいえ、今まで多くの魔物を殺してきたものね…」

罪悪感が身体を満たす。
先程の魔族を見捨てたことも拍車をかけた。

みこにゃん「…」

足が止まった。

みこにゃん「仕方ないなぁ…」

身体は既に来た道を辿っていた。

地獄ティラミス「カカカ!」

???1「ひぃぃ!」

???2「た、助けてぇ!」

地獄ババロア「サァ!コレヲ携帯ニ付ケルノダ!」

???1「いやぁ!そんなお土産屋でよく売ってるちっちゃい剣のキーホルダーなんて付けたくない!」

???2「そういうのは中学生で卒業したのに!」

地獄ティラミス「苦シカロウ!苦シカロウ!」

無理やり奪われた携帯に、ダサいキーホルダーが付けられた

???1「ひぃぃ!ダサすぎる!デザインが奇抜すぎて、携帯から浮いてる!」

???2「こんな物を親にせがんでいた厨二病時代のイタい記憶が蘇るぅぅ!」

地獄ティラミス「フハハ!」

みこにゃん「まてぃ!」

地獄シリーズ「!?」

みこにゃん「心の傷口に塩を塗るのはやめろ!」

???1「あ、あなたは?」

みこにゃん「名乗るほどの者じゃないわ」

地獄シリーズ「何者カハ知ラヌガ、地獄デ我ラニ逆ラウト、ドウナルカ教エテヤル!」

みこにゃん「みこにゃんパンチ!」

グ ワ ッ !

拳が目にも留まらぬ速さで繰り出された。
と、同時に地面が大きく抉れる。

地獄ババロア「ヌ…!?」

地獄ティラミス「!?」

立ち上る土煙は周囲の視界を奪った。

???1「す、スゴすぎる」

???2「あれは…!」

???1「知ってるの?」

???2「歴史の教科書に出てた…!大戦でロボルーマ攻略をたった独りで守り抜いた人…」

???1「まさか…」

???2「絶対無敵☆ロリ巨乳怪力無双姫みこにゃん…」

土煙の中から声が聞こえる。

みこにゃん「逃げなさい!」

???1「助けてくれるの…?」

地獄にみこニャン

???1「に、逃げるわよ!」

???2「で、でも、魔神2体を相手にしたら…」

???1「私たちじゃどうしようもできないでしょ!」

???2「…!」

???1「みこにゃんなら大丈夫よ!」

???2「……うん、分かった」

2体の魔物は逃げ出した。

土煙は徐々に晴れ、視界が開けてきた。

地獄ババロア「…」

地獄ティラミス「…」

みこにゃん「逃げれたみたいね」

地獄ティラミス「貴様…」

地獄ババロア「ヨクモ、我ラノ楽シミヲ…」

みこにゃん「…」

地獄ババロア「地獄ヲ見セテヤロウ…」

みこにゃん「ヤバい…。今度は本当に死ぬかも…」

名乗るほどの者ではないが技の名前が自己紹介

みこにゃんさすがやで

地獄ババロア「ヌン!」

魔神が手をかざすと、魔力球が現れた。
サイズはピンポン玉程度。魔神の手のひらの上では余りにも小さい。
頼りなさげに見えるそれを、魔神は指先で弾いた。
すると、それはみこにゃんに向かって飛んだ。およそ常人が感知し得ぬ速度で。

みこにゃん「!?」

ズァ!

かすった。
みこにゃんは身体を捻転し、受け流したのだ。
しかし、それこそが魔神の望んだ反応だった。

地獄ババロア「カカッタナ!」

みこにゃん「な!?」

地獄ティラミス「死ネィ!」

みこにゃん「ぐぇ」

傷口に爪が突き立てられた。
みこにゃんの顔に苦悶の表情が浮かんだ。

こいつら甘ったるい名前の癖に…

それこそ名前に騙されて甘く見てはいけないってことなんだろうw

ズザァ!

地面にみこにゃんの身体が叩きつけられた。
もはや立ち上がる力は無い。

みこにゃん(死ぬのかしら…)

地獄ティラミス「サテ…」

地獄ババロア「死ンデモラオウ」

みこにゃん(あの子の夕飯…作ってないのに…)

魔神はみこにゃんに向けてゆっくりと手を翳した。まさにとどめを刺さんと、指先に魔力が集中する。
それを感じたみこにゃんは半ば諦めた。
しかし次の瞬間

バチンっ!

青白い雷撃が魔神の横顔に炸裂した。

地獄ババロア「…?」

???1「ダメよ!全然効いてない!」

???2「でも、あのままだったらみこにゃんがやられていた」

みこにゃん「何故逃げなかったの…」

???1「逃げるわよ!でも…」

???2「恩人を置いていくほどゲスじゃない」

みこにゃん「…あなたたちは」

???2「目くらましは効いたから…!」

???1「魚沼!水出して!」

魚沼と呼ばれた人魚は身体を震わせると、幾分かの魔力を水分に変えた。

魚沼「早乙女さん…!準備できたよ」

早乙女と呼ばれたサキュバスの掌が赤く輝いた。そしてそれを水面に叩きつけた。
すると、辺りに霧がたちこめた。


魚沼「…逃げて!」

みこにゃん「…くぅぅ!」

地獄ババロア「ヌゥ…!」

地獄ティラミス「同ジ手ナド効カヌワ!」

2体の魔神が霧から飛び出した。

魚沼「…!?」

早乙女「…ダメか!?」

地獄ティラミス「ココマデダッ!」

地獄ババロア「フハハハ!」

魚沼と早乙女の頭に瞬間、死がよぎった。それは短い時間だが、諦めるには十分だった。

ズズンッ!

鈍い音が聞こえた。

魚沼「…?」

早乙女「…?」

おかしなことに痛みはなかった。
これが死ぬということなのだろう。
と、妙な納得を覚えつつ目を開けると、目の前に異様な光景が広がった。

地獄ティラミス「ガフッ」

地獄ババロア「ナ、ナント…」

2体の魔神の胸元から分厚い鉄塊が覗いていた。背後から魔神を貫いた大剣にはロボルーマの家紋が光っている。

みこにゃん「母親、なめんな…」

2体の魔神の身体が砂のように変質し、崩れ落ちた。

魔神の生贄になった人たちか



魚沼「…できる限りの処置は済んだ」

早乙女「回復魔法も可能な限りかけてみたわ」

みこにゃん「ありがとう」

魚沼「…本当にみこにゃんなの?」

みこにゃん「そうよ(その呼び方は好きじゃないけどね)」

早乙女「大戦中に死んだんじゃ…」

みこにゃん「だから地獄にいるのかもね」

魚沼「…笑えない」

早乙女「私達も地獄に堕ちて当然のことをしてきたしね…」

魚沼「…金子に操られてただけだもん」

みこにゃん「…さて!行こうか!…っとと!」フラッ

早乙女「まだ休んでいた方が良いわ。大体、この地獄で行くところなんて…」

みこにゃん「出口を探しましょう。魔界に帰りたいでしょう?」

早乙女「帰りたいけど…」

魚沼「あてがあるの?」

みこにゃん「無いわ」

早乙女「はぁ?」

魚沼「無謀」

早乙女と魚沼はあからさまに呆れた表情を浮かべた。

みこにゃん「それでも、行かなきゃならないの」

よう、久しぶりだな(誰だっけ?)

魚沼「なんで?」

みこにゃん「お夕飯を作らなきゃ」

みこにゃんは満面の笑みを浮かべた。
魚沼と早乙女は互いに顔を見合わせて、理解出来ないことを表情で伝えあった。

早乙女「…頭でも狂ったの?」

みこにゃん「そうかもしれないわ。…でも、「お母さん」としては正常よ」ムクリ

みこにゃんは突き立てた剣に体重をかけると、無理矢理立ち上がった。

早乙女「ほ、本当に行くの!?」

魚沼「…わ、私たちも行く!」

みこにゃん「…」

みこにゃんの前方には果てしない荒野が続く。

みこにゃんは目を閉じ、子を想った。
今、苦難の内にいるであろう愛娘のことを想った。

みこにゃん(ロボルーマの秘宝はあなたに託したわ)

みこにゃん(それはあなたを深く絶望させるかもしれない)

みこにゃん(でも、それに立ち向かい、利用しなさい)

みこにゃん(そして、終わったなら…)

みこにゃんは進み出した。
一歩踏み出すごとに砂塵が舞った。

みこにゃん(夕飯までに帰ってきなさい)




【レ・みこにゃん編…完】

みこにゃん……イケメンやで……

もうみこにゃんが主人公でええわ



魚沼さんは気を付けないと夕飯のおかずにされちゃうね

【魔王の終わり編】

【魔王城】

ピシャァァン!

稲光が玉座に座る魔王を照らす。
齢300を越えた顔には髭が蓄えられ、威容を保っている。

魔王「…………」

色倉「魔王ちゃん」

魔王「…色倉か」

魔王は光る球体から発せられる言葉に遅れて反応した。

色倉「何を考えていたんだい?」

魔王「いや、いかにして魔王軍を勝たせるべきか…とな」

色倉「嘘つき」

魔王「…妖精にはかなわんな」

魔王は溜め息をついた。

色倉「思い出していたんだろう?」

魔王「うむ…」

おつ


色倉さんってオカマだっけ? と思ったら違った>>11
つか妖精ちゃうやん、精霊やん
そういえば部長は無事なの?

およそ500年前…

人と魔族の間に大きな争いがあった。

始まりを覚えている者はいない。

理由も分からぬそれは実に200年間続いた。

魔王が生まれたのは終戦の50年前。

両軍共に疲弊し、戦争自体が膠着し始めたときのことであった。



戦争の最中に生まれた魔王がまず母に教えられたのが『欲望』であった

誰よりも強く、全てを手中に収めんとする

父である先代魔王が体現した精神性

強烈なまでの憧憬を父に対して持つのは必然であった


しかし、先代魔王は死んだー

全ての魔族の絶対的象徴であるはずの魔王

誰が負けることなど想像しようか

ましてや、息子が父の死を想像できようか

しかし、現実に『死んだ』のだ

勇者との激闘の末、ロボルーマの宝剣に貫かれて息絶えたのだ

魔族も、人間も、その瞬間を目の当たりにした途端、武器を置いた

それが、戦争の終わりたった


魔王「…」

色倉「300年か…長かったね」

魔王「ああ」

色倉「主人公補正さえあれば魔王軍勝利も確実!補正を量産できれば未来永劫安泰だね」

魔王「…」

色倉「株価も急上昇中だし?世界征服の磐石が整った感じ?…………かな?」

魔王「色倉…分かっているんだろう」

色倉「………ああ、お見通しさ」

魔王「…」

色倉「先代と勇者の死闘。あの場にいた君は何を感じたんだい?」

魔王「…強く、暗く、深い…『嫉妬』」

色倉「勇者の能力に対してじゃないよね?」

魔王「その運命。一挙手一投足が持つ強い有意味さ…にだ」

魔王「そのあまりにもドラマチックな存在。「魔王」すら、もはや引き立て役でしかなかった」

魔王「強く嫉妬し、絶望した!戦うことすら忘れていた!心が…羨望で満たされていたからだ!」

魔王「わしは勇者に、主人公に!…なりたいと心の底から思ってしまったのだ!」

魔王「このわしを責めるか!?魔王であるにもかかわらず、勇者に憧れたこのわしを!?」

色倉「……………奇遇だね。僕も同じことを考えていたんだ」

魔王「…?」

色倉「僕だけじゃないよ」

魔王「なに…?」

色倉「あの時、あの戦争に参加した者。それこそ敵味方問わない、全ての存在が同じことを感じた」

「なぜ俺は勇者では無いのだろう」

   「勇者みたいになりたい」

      「所詮、俺はモブでしかないんだ」

色倉「魔族も人間も、みんな同じことを考えていた」

色倉「そして、諦めた」

魔王「…」

色倉「僕もね」

魔王「……そして、私もだ」

色倉「プロトワンのデータを見たんだね」

魔王「主人公補正は、やはり主人公以外に定着しない」

色倉「擬似再現した主人公補正も数日で効果が無くなるそうだよ」

魔王「まるでスピンオフ作品の主人公だよ」

色倉「擬似主人公補正は商品にはなるだろうけど、使っても君はこの物語の主人公にはなれないだろうね」

魔王「うむ」

色倉「…どうすんの?」

魔王「与えられたロールをやりぬく」

色倉「魔王らしく…か。どういう意味か分かってんの?」

魔王「ああ」

ピピピ

内線から着信音が鳴り響いた

魔王「私だ」

受付『企画課の方々がお見えになりました』

魔王「通せ」

色倉「…ラストダンジョンにね」

乙でした

まだだ!ほのぼの会社経営路線で行けばやり直せる!

【秘書課オフィス】

金子「ヤツらはどうなっている?」

聖谷「今、牛宮と鳥谷(元十傑集)と戦っています」

ドゴォォ…ォン

魔王城が揺れた

強烈な魔力のぶつかり合いに魔王城が悲鳴をあげているのだ

金子「城の耐久性を上げたのは正解だったな」

聖谷「十傑集2人を相手にしたら、ヤツらもここで終わりですね」

金子「どうかな?」

聖谷「?」

金子「見ろ。はじめは圧されていた企画課の連中が徐々に盛り返してきた」

聖谷「…!」

金子「主人公補正はパーティーにまで影響を与えているようだ」

聖谷「のんきに実況してていいんですか…?総務部長と経理部長が倒されちゃいますよ?」

金子「いいさ」

聖谷「でも…」

金子「戦うだけが能の連中はここで退場してもらう」

聖谷「…」

牛宮「ぐぁぁ!!」

鳥谷「ぎゃああ!」

2体の巨大な魔物は断末魔を響かせ、その場に倒れこんだ。

鎧谷「…っ」

骨田「何とか…なりましたね」

犬崎(まぁ、主人公補正のおかげだろうがな)

岩村「死んだのか?」

犬崎「わん(そんなヤワな連中じゃないさ)」

女「…進みましょう」

黒江「ちょっと!…回復くらいしなさい!」

女「でも…」

女が振り向くと同時に肩口から血が滴った。

黒江「『回復魔法』!」

黒江の手のひらから放たれた優しい光が、女の身体を包んだ。

女「あ、ありがとうございます…」

乙乙
しかし主人公補正ってそんなにいいもんかね?下手すりゃボトムズのキリコみたいな数奇過ぎる地獄の日々を送るハメになるかもしれないというのに


探偵とか刑事とかだと行く先々で殺人起きるしな

>>642
このスレではボトムズで言うイプシロンやロッチナ、アマデウスで言うサリエリ先生みたいな人の話を書きたかったりするんだよね

女「いててっ…」

黒江「こんなに無茶して…」

女「…すみません」

黒江「せっかく一緒に選んだスーツがボロボロじゃない…」

回復魔法の光に俯く黒江の顔が照らされる。
涙で濡れた頬がキラリと輝いた。

女「泣いてるんですか?」

黒江「…」ズズッ

黒江は鼻水を吸いながら首を横に振った。

女「…」

黒江「…回復はしてあげるから、思う存分やりなさい」

女「…はい!」



鎧谷(あれぇ?)

岩村(いい雰囲気じゃね?)

黒江「約束しなさい」

女「?」

黒江「これが終わったら…。全部終わったらね」

女「はい」

黒江「わ、私と2人で温泉旅行に行くわよ」

女「はぁ?」

黒江「行くの!」

女「い、行きます…」

黒江「うふふ…だから死んじゃダメよ」

女「…はい」




骨田「ぼ、僕も行く!」

黒江「あんたはダメ」

骨田「ですよね」

一行は古い講堂に辿り着いた。
邪教神を祀る祭壇に備え付けられた蝋燭の火が妖しい光を放っている。
先を急ぐ女。これを犬崎が制した。

犬崎「わん(ここで待て)」

女「ここは?」

犬崎「わん(ここは魔神信仰の遺跡だ)」

黒江「新品のダンジョンの中にこんな骨董品があったなんてね」

岩村「…しかし、大分悪趣味だな」

鎧谷「そうですね。悪魔的であり品性を感じさせないデザイン…」

犬崎「わん(ここの管理人の趣味だろう)」

女「誰なんですか?」

犬崎「わん(そこにいる。出てこい)」

???「さすがに鼻が利きますね」

暗がりから人影が浮かび上がった。

黒江「ーっ!?」

鎧谷「あなたは…!!」

女「秘書課長…!」

金子「お久しぶりですね」

一行は古い講堂に辿り着いた。
邪教神を祀る祭壇に備え付けられた蝋燭の火が妖しい光を放っている。
先を急ぐ女。これを犬崎が制した。

犬崎「わん(ここで待て)」

女「ここは?」

犬崎「わん(ここは魔神信仰の遺跡だ)」

黒江「新品のダンジョンの中にこんな骨董品があったなんてね」

岩村「…しかし、大分悪趣味だな」

鎧谷「そうですね。悪魔的であり品性を感じさせないデザイン…」

犬崎「わん(ここの管理人の趣味だろう)」

女「誰なんですか?」

犬崎「わん(そこにいる。出てこい)」

???「さすがに鼻が利きますね」

暗がりから人影が浮かび上がった。

黒江「ーっ!?」

鎧谷「あなたは…!!」

女「秘書課長…!」

金子「お久しぶりですね」

黒江、女と行く温泉ツアーの申し込みはここですか?

今の黒江さんには死亡フラグにしか見えん…>2人で温泉旅行

>>649
巨乳にかぎります
([ピザ]は除く)

金子「お待ちしておりました」

黒江「…クソがっ!」

黒江の掌から火球が放たれた。
しかし、金子はこれを軽くいなした。

黒江「金子ぉ!」

金子「久しぶりだね。プロトワン」

黒江「貴様だ!貴様のせいで、私は!」

黒江を中心に空間が歪む。
大規模な魔法が詠唱されているのだ。

犬崎「わぉん!(待たんか!黒江!)」

黒江「断る!」

女「待って!」

黒江「…!?」

女「戦いに来たんじゃないんでしょう?」

金子「ええ」

犬崎「くぅん(こいつには私から連絡をつけといた)」

黒江「ふざけないで!」

金子「吼えるなよ。私は味方だ」

黒江「!?」

金子「例のものはこちらでも確認しました」

女「ありがとうございます。手続きは?」

金子「すんなりと」

女「じゃあ、魔王のところまで行きましょう」

金子「はい」

黒江「ちょっと待ちなさい!」

金子「はい?」

黒江「いきなり現れて味方だなんて、信じると思っているの?」

金子「信じる信じないは自由だ」

黒江「改心したとでも言うの?」

金子「改心?君はもしかして、私が罪悪感からこの場にいると考えているのか?」

犬崎「わん(金子、よせ)」

金子「私はこっちについた方が得だと判断したまでだ。貴様にやったことなどこれっぽっちも悪いと思っていない」

黒江「…!!」

黒江の口端が強く噛みしめられた

女「黒江さん、気にしないで」

黒江「でも、こいつさえいなければあなたのお母さんは…」

犬崎「わん(こいつは、用が済んだら私が直々に潰してやるから安心しろ)」

黒江「課長…」

金子(子犬がよく言う)

【魔王城・玉座】

魔王は玉座の前を忙しない足取りで往復していた。

色倉「落ち着かないね」

魔王「う、うむ」

色倉「緊張してるの?」

魔王「う、うむ」

色倉「ちゃんと台詞覚えた?」

魔王「『勇者の血統に導かれし者よ!300年前より続く因縁、ここでつけようぞ!』」

色倉「いいね。完璧だ」

魔王「…」ソワソワ

色倉「まだ気になることでもあるの?」

魔王「いや、落雷とBGMのタイミング調整が気になってきたのだ」

色倉「もう48回もやったでしょ」

魔王「ライトアップは?」

色倉「…」

魔王「す、すまん。それはもう100回近くやったか」

色倉「もう…」

魔王準備万端じゃないか!!

色倉「念願の魔王VS勇者だろ?しっかりしろよ」

魔王「まぁ、わしがなりたかったのは勇者の方だが…」

色倉「魔王になりきるんだろ!」

魔王「そうだとも!しかしなぁ、ここまで勇者が来るのはわしの代になって初めてだしなぁ」

色倉「頼りないなぁ」

魔王「そう言うな。年柄にもなくワクワクして地に足が着かんのだ」

色倉「きっと、勇者にとっても魔王にとってもラストバトルだ」

魔王「うむ」

色倉「魔王なら、その意味分かるよね?」

魔王「…」

色倉「『死』だ。物語の完結。魔王だけではない。登場人物全ての終わりだ」

色倉「メタ的な発言をしているわけじゃない。全ての物事には終わりがくる」

色倉「たとえ甲子園だろうと、戦争だろうと、農業だろうと…」

色倉「それらを終わりに導くキーマンの1人なんだよ、君は。いや」

魔王「『魔王』は」

色倉「後日談で語られるくらいすごい戦いにしちゃいなよ。悔いが残らないように」

魔王「もちろんだ」

ピリリリ

内線が鳴り響いた

色倉「来たようだよ」

門を開けると、中から重苦しい空気が流れてきた。
時折光る稲妻に照らされて、玉座が数瞬映し出される。
確実にいる。この中に魔王がいる。

女「…」

女は室内に一歩踏み出した。
すると、部屋中に設置された蝋燭に灯がともりはじめた。

それと同時にBGMが流れはじめ、あからさまに都合のいいタイミングで稲妻がはしった。

魔王「『フハハハ』」

女「…!?」

魔王「『儂は魔王。魔族を統べる王なり』」

女「…」

魔王「『勇者の血統に導かれし者よ。300年前より続く因縁、ここでつけようぞ!』」

部屋中が紫色の炎でライトアップされた。
見知った顔がそこにはあった。
思えば社長と平社員という身分差がありながらよく遊びに行ったものである。

魔王「…」

女「…」

魔王「…」

女「…おじいちゃん?」

魔王「…///」

色倉(あぁ…テンパってセリフ忘れやがったな)

魔王「く、くくく。取り繕うとしても、これでは無理じゃな」

魔王から笑みがこぼれた。

女「…」

魔王「息巻いて用意してみたが、これでは台無しじゃな」

女「おじいちゃん…」

魔王「これらのセットの構築、BGM作曲・編集、エンディングのスタッフロールまで私財を投げ打って作った」

女「…」

魔王「金だけではない。わし自身の全てをかけてこの環境、状況を作り上げた」

魔王「それも勇者との戦いのためだけに…」

女「ごめんなさい…」

魔王「いや、良いのだ。勘違いをしていた」

女「?」

魔王「格好付けるのではなく、自分らしく行けばよかったのだ」

魔王は指先から魔力を収束させて打ち出した。

女「!?」

女はすんでのところで避けた。
焦げた髪の臭いが鼻につくのが分かる。

女「そうするしかないの?」

魔王「ああ、わしは『魔王』だからな」

魔王「本音を言おう」

女「…」

魔王「わしは、300年前のあのときから勇者になりたかった」

魔王「物語の中における最重要人物になりたかった」

魔王「他人の人生の踏み台になるのも、スポットライトの当たらない生涯も、嫌だった」

魔王「皆が羨む運命。たとえそれが悲劇だとしても…。それを持つ者が羨ましかった」

魔王「貴様のことが、羨ましかったのだ!」

女「…」

魔王「しかし、それも叶わぬ夢だと知った。ならば、わしは魔王として死ぬ」

魔王「さぁ!戦おう!300年前の時のように!それが『持たぬ者』への手向けとなるのだ」

魔王は手を大きく振りかざし、構えを取った。
しかし、女は依然として立ち尽くしている。

女「戦わせないよ」

魔王「!?」

女は歩き出し、玉座の前に進んだ。
そして、まるで自分に合うかを確かめるように深々と座った。

魔王「どういうつもりだ?」

女「こういうこと」

女はポケットから取り出した紙を勢いよく玉座に張り付けた。

【差し押さえ】

紙にはそう記されていた。

魔王「ふざけているのか?」

女は椅子から跳ね上がると、部屋中にあるめぼしい物に【差し押さえ】を張り付けていった。

女「お母さんからロボルーマに伝わる秘宝を託されたの」

魔王「秘宝?」

女「そう。あたし、幻滅しちゃった」

魔王「…?」

女「人間も主人公補正を欲しがってたんだね」

魔王「なに…?」

女「課長が『魔族は欲望に一途』とか言ってたけど、人間も変わらないよね」

女「ロボルーマは会社設立に際して、かなりのお金を貸してたみたいだね」

魔王「…まさか!?」

女「利子込みで40兆G(1G=10円)」

女は古ぼけた資料を出した。
そこには確かに魔王とロボルーマ王(みこにゃんの兄にあたる)のサインが書いてあった。

魔王「こ、これが秘宝だというのか!」

女「そう、ロボルーマ、いえ、人間の負の歴史よ」

魔王「このタイミングでか!」

女「このタイミングだからだよ!」

乙でした



会社作るのに400兆円!?
日本列島でも買い占めるつもりかよw
それを貸す事ができる王国ってどんだけ超国家だよww

300年の利子込み

魔王城を「一企業を隠れ蓑とした主人公補正の研究施設」と見て考えるなら結構な金額貸すことになるとも思うけどね。
>>1氏の言う通り300年の利子もあるし。


差し押さえwwwwww

女「だから、おじいちゃんの資産の40兆G分はロボルーマ王であるあたしのモノになるの」

魔王「そ、そんなにあるわけないだろう」

女「じゃあ全部あたしのだね」

魔王「そ、そんな。では、わしは魔王の肩書きだけで…」

女「あ、魔王も貰うね」

魔王「は?」

女「ロボルーマ王家に伝わる秘宝その2」

女はまたもや紙束を差し出した。

魔王「これは…!」

女「(株)魔王城の株式だよ。全体の40%くらいかな?」

魔王(そ、そう言えば、売った!金の催促と合わせて少しずつ売った!)

女「昨日、おじいちゃんには内緒で臨時株主総会が開かれたの」

魔王「なんだと!」

女「議題は、現社長の解任要求と次の社長の擁立」

女「過半数以上の賛成票でおじいちゃんは更迭が決定されたわ」

女「(株)魔王城の私的流用。特に主人公補正の研究の成果を我がモノにしようとしたとして、ね」

魔王「…」

魔王の顔から血の気が失せた。

女「でね、次の魔王は私がやることになったから」

魔王「…!?」



女「 次の 『魔王』 は あたし 」

なんとまぁ…

確かに一応株式会社だもんな……

金の力には勝てんのですよ・・・

魔王「ふ…ふざけるな!」

女「ふざてないよ」

魔王「わしの魔王という地位は!代々脈々と受け継がれてきた血統によるものだ!」

女「じゃあ、一番はじめに魔王を名乗った魔物は?血統や歴史を持っていたの?」

魔王「…!!」

女「成り立ちなんてどうでもいいの」

女「とにかく言えることは、(株)魔王城の新社長はあたし。すなわち魔王もあたし」

魔王「…」

魔王は呆然と立ち尽くしている。
今まで300年に渡る治世、研究、功績…全てが小娘の策謀により消える。
その事実を飲み込めずに困惑しているようだ。

女「おじいちゃん…」

魔王「全て…失われるのか」

女「…」



ふと、魔王の目に玉座が飛び込んだ。
権威や歴史の象徴である存在。
今となっては【差し押さえ】に彩られて見る影もない。

しかし、魔王の心に喪失感とは違う何かが浮かんだ。

魔王(本当に全て…失った?)

魔王は両の掌を強く握りしめた。

魔王(わしのこの力、知性、覇運…全てわしの中に残ってるではないか)

魔王(そうだ!失ったのは所詮金よ!権力よ!また力でのし上がれば良いのだ!)

魔王の顔に生気が戻った。
身体中を渦巻く魔力が暴れんばかりだ。
ここ100年で最も晴れやかで、最も心地の良い気分。まさに解放感。

魔王(やってやろうではないか!)

心新たに振り返りーーーーー


女「ーーーみたいに考えてない?」

魔王「ー!!!」

図星であった。

女「ざーんねーん。そっちも対策済み」

魔王「!?」ガクンッ

魔王の身体は力を失い膝から床に落ちた。

魔王「な、何をしたぁ!」

女「主人公補正を取り出した時の応用で、対象のLvを吸い出す装置よ」

魔王「な、なんと…」

女「Lv2くらいまで落ちたかな」

魔王は必死に立とうとした。
しかし、身体に力が入らない。
魔法はどうだろう。
ダメだ。5才児が使える火炎魔法すら出そうにない。

魔王「本当に…全てを奪っていくのだな」

女「隠居しなよ」

魔王「…」

女「金子さん。連れてって」

金子「御意」

魔王「金子…貴様…」

金子「穴だらけだった我が社の法務処理。あなたの魅力だけでは埋まりませんでしたね」

魔王「くっ…」

金子に肩を担がれ、魔王はゆっくりと歩き始めた。

女「住む場所は心配しなくていいよ」

金子「空気の良い最果ての村に家を買いました。安普請ですがね」

魔王「そうか…」

魔王の顔からまたしても血の気が失せた。
大きく見えた背中も、今となってはただただ小さくみすぼらしく見える。

魔王はそのまま引きずられるように部屋を後にした。
そして、部屋には【差し押さえ】た数々の物品が遺った。

女は玉座に近づくと、座り心地を確かめた。
なるほど、堅くて座りにくい。
しかし、他に座る物もないので、仕方なくそれに座った。


コンコン
女が扉の方を向くと開け放した入口に黒江が立っていた。

黒江「これからどうするの?」

女「まずは……………世界征服!」




【魔王の終わり編…完】

財産や権力だけじゃなくレベルダウンさせて能力や再起する気持ちすら奪っていくとか新魔王様マジ魔王

乙でした

この先、世界制服まで早そうで怖い…

やりおる

辰川部長がかっこよく助けに来るかと思って待ってたのに

一応、まだ終わっていませんのでご了承くださいな

今日一気読みしたけどまだ終わってないのかwwww

【没落魔王ワンダーランド編】

ブラウン管テレビからノイズ混じりの音声が聞こえる。

『ロボルーマの無血開城から一夜…』

『人間は魔族に対する最大の反抗勢力を突然失うザザ…となりました』

『ロボルーマ王が魔王になったとの噂も飛び交う中…』ザザザッ

『真相は未だにはっきりザザッしていません』

『魔族との全面戦争が始まろうと言うのでしょうか…』

六畳一間の部屋がテレビの光に照らされた。
使い古された布団。長らくの間、敷かれたままなのだろう。
部屋の真ん中にはちゃぶ台が見える。その上ではノンブランドの発泡酒が結露を輝かせている。
窓は雨戸が閉じられ、日の光を遮っている。


ピピピピピっ!

目覚ましが鳴り響いた。
すると、闇の中で何かが蠢き、雨戸を押し開けた。

ガララッ!

優しい朝の光が部屋を満たした。

魔王(元)「くぉっ…まぶしっ」

よれよれのタンクトップにステテコ。
本来、体格は良いはずなのだが、何故かみすぼらしく見える。

魔王(元)「いい天気じゃな」

窓の外からは、緑に囲まれた山々が一望出来た。

魔王(元)「コーヒーでも飲むか…」

錆の目立つガスコンロに火がつけられ…

カチンッ

カチンッ

カチンッ

魔王(元)「あれ?」

るハズだったが着かない。

魔王(元)「ああ、ガスは工事中だったか…」

魔王(元)は仕方ないので、駅前の自販機まで歩くことにした。

先程の格好に短パンを着て、便所のスリッパを履いた。
魔王の部屋はアパートの二階。ドアを空けた先には小規模の住宅地と、小さな駅が見える。

魔王(元)の住んでいるのは、最果ての村『モシニアピ』。
200年ほど前に炭坑として栄えていた。その時の宿場町が今のモシニアピの前身である。
当時は観光地としても有名で、『西のロボルーマ、東のモシニアピ』と巷で有名であった。
その後、鉱山が閉山してから時代とともにその栄華は薄れ、小規模の集落が点在する町となったのだ。
現在の主要な産業は農業。鉱山時代に荒れ果てた山も、200年の時を経てすっかり肥沃さを取り戻していた。
なお、唯一存在する単線単車編成の鉄道は鉱山時代の名残である。
三時間に一本という数字が、この村の閉鎖性を物語っていた。

タタンッ…タタンッ…タタンッ


ガコンッ!

魔王(元)「…」

魔王(元)「賞味期限切れとる…」

魔王(元)「チヨ婆さん。これ賞味期限切れてるよ。」

チヨ婆「おお、すまんね、マー坊。変わりにアイス持っておいき」

魔王(元)(わしの方が年上なんだがなぁ)

チヨ婆「抹茶とチョコどっちがいい?」

魔王(元)「チョコ!」

チヨ婆「あいよ」

ザザザッ…
埃の積もったラジオが絞り出すような声を発している。

『ロボルーマ王国が事実上、魔王の手に渡ったことを受け…』

『近隣諸国では不安の声があがり、その矛先が各々の自治政府へと向けられています…』

魔王(元)(魔族と人間のトップが手を組んだようなもんだ。手の付けようがない)

ラジオに耳を傾けながら、魔王は他人事のようにそう考えた。
しかし、実際他人事なのかもしれない。
彼が魔王の座を奪われてから、すでに2ヶ月が経過しているのだ。

おつ

乙!
主人公がロボルーマ王兼魔王な状態なのになんで2ヶ月もかかっちゃったんだろ?
会社のゴタゴタを片付けててそっちは後回しにしてたと考えるのが妥当か?



ピアニッシモ!
懐かしいww
90年代カン違い女の定番タバコだよなw

……って今でもあるの?この銘柄

>>686
臨時取締役会とか臨時株主総会とかしてたんだろ

魔王が土地に慣れるまでの期間と魔王城の侵攻速度の兼ね合いから2ヶ月って数字をひりだしたのかもしれないだろ!


なんとなく万年床を書いたせいで首絞めたわ!
本当は超スピードで世界征服させるつもりだったわ!

【中山競馬場】

1月の風が吹き荒ぶ船橋法典。
世界征服をはじめた(株)魔王城の新社長は馬主席にいた。

女「…」

『最終コーナー曲がって先頭は!マエカブマオウ!後方からラッキーゾーンがすごい脚!』

『ゲッターマシン、武豊も外々を回って来ている!』

『ラッキーゾーンはマエカブマオウまで2馬身!1馬身!四位が押す!並んだ並んだ!』

『マエカブマオウ食い下がる!残り50!』

『マオウか!?ラッキーか!?並んでゴールイン!時計は2:17.3!3ハロン36!』

『しかし、審議の青ランプが点灯しております!』

女「ふー」

黒江「負けた?」

女「多分」

黒江「じゃあ後は調教師に任せて帰るわよ」

女「ま、待ってくださいよぉ」

黒江「仕方ないわねぇ」

黒江「だいたいこんな忙しい時に指揮官が…」グチグチ

女「あ、審議終わったっぽい」

黒江「どれ?」

女「ああぁ、2着かぁ」

黒江「あらあら」

『ただいまのレース、11番マエカブマオウ号が第三コーナーで進路が狭くなったことについて審議いたしましたが、到達順位の通り確定しました』

女「お咎め無しか。あそこで入れ込まなきゃなぁ」

黒江「そんなに勝たせたかったの?」

女「賞金が足りないんです。2着でも賞金は出るんですけど…」

黒江「それでも足りないのね」

女「1600万下からオープンに上がれたのは良いんですけどね」

女「AJCC(アメリカン・ジョッキー・クラブ・カップ)以降のローテが狂うなぁ」

黒江「次勝てばいいじゃない」

女「次…日経賞?いや、今回みたいに滑り込めるとは限らないし…」ブツブツ

黒江「ほら、帰るわよ」

女「ダイヤモンドステークスで使う?いや、距離が合わないし…」ブツブツ

黒江「か・え・る・わ・よ!」

黒江は女の頬をつねった。

女「ひぃ、ふみまひぇん」

黒江「ほら!経費削減で電車よ!」

女「あぅぅ」

赤くなった頬をさすりながら、女は競馬場を後にした。

【京王線車内】

外の冷ややかな空気とは違い、車内は蒸し暑くなっていた。
暖房だけでは無く、鉄火場で銭を落とした男達の群が空気をそうさせるのだろう。

女「あちぃ」

黒江「コート脱げばいいじゃない」

女「いや混むのは一駅だから、そんな…」

黒江「そう」チッ

女(今、舌打ちしたよね…)

黒江(あああほのかに汗で濡れたシャツが胸元が…ちくしょう)

黒江「で?目的は果たせたの?」

女「はい。(株)魔王城と契約関係にある会社の役員、株主の理解を得ました」

黒江「ついに売り出すのね」

女「はい。擬似主人公補正、英雄の薬…商品名は」

黒江「『ヒロイックタイム』…」

【府中駅】

女「黒江さんは先に帰ってください」

黒江「あら、なんで?」

女「実家が近いからよって帰ります」

黒江「…あの家にはもう誰もいないでしょう」

女「お母さんは『待ってる』って言ってくれたんです。だから…」

黒江「…私も行くわ」

女「…無理しなくていいんですよ?」

黒江「私が…殺したんだもの。ちゃんと向き合うわ」

女「死んでないですよ!」

黒江「…そうね」

黒江の顔が苦々しく歪んだ。
黒江は女に見られまいと顔を背けた。

女「バスきましたよ」

黒江「……うん」

【東京都小平市某所】

実家に着いた。
既に暗くなっているにも関わらず、灯りもついていない。
郵便受けには女が家を空けた日数分の新聞が詰め込まれている。

ガチャ

扉の鍵は女の期待を裏切り、開いた。

女「ただいま」

黒江「…」

夕飯の匂いはしない。母の出迎える声も無い。
分かっていたことだが、その事実は女の心にのしかかる。
2人はリビングへ向かった。

女「いやぁ変化ナシか…。ココアでも飲んでから帰りましょう!」

黒江「…」

女「まぁ、そのうち帰ってきますよ」

女は黒江に微笑みを向けた。
しかし、黒江を傷つけないために見せたこの好意は、黒江にとって逆効果であった。

黒江「…なんで」

女「?」

黒江「なんで、私を責めないの?」

女「…」

黒江「私だけじゃないわ。金子のことも、それを指揮した魔王のことも…」

女「…黒江さん」

黒江「…なんで責めないのよ」

黒江の頬を涙が伝った

いや中山だったろ

久々にこっち戻ってきたな

>>696
やっべはじめ根岸ステークス出すつもりだったから酢で間違えた

京王線→武蔵野線
府中駅→南浦和

に訂正します。我ながら適当な訂正だなぁ

南浦和じゃねぇ新小平だ


俺たちの黒江さんが帰ってきた

黒江「…」

黒江の瞳から二粒三粒と涙の粒が零れる。

女「泣かないでください」

黒江「…だって!」

女「あたしはあの時、魔王になった時に、主人公補正って悪くないって思ったんです」

黒江「でも、主人公補正はあなたの望まない結果を…」

女「黒江さんに会えたじゃないですか」

黒江「…!」

女「課長や部長、鎧谷さんに岩村さん。カルシウムに…色んな方達とも」

黒江「……あんたって子は」

黒江は顔を伏せた。
しかし、赤くなった長い耳は組んだ腕の外で恥ずかしそうに震えてる。

女「ね?悪いもんじゃないでしょ?」

黒江「そうね。あなたが言うならそうなんでしょうね」

黒江は顔を伏せたまま、鼻水混じりに答えた。
その声は少し嬉しそうでもあった。

ぐぅぅぅぅ

腹の音がリビングに響いた。

黒江「…」

女「…黒江さん?」

黒江「おなか減った」

女「競馬場で何も食べなかったんですか?」

黒江「だって…」

女「…?」

黒江(楽しそうなあなたをみるのが久しぶりだったから)

女「何か作りますか?」

黒江「そんな、いいわよ」

女「遠慮しないでください」

黒江「じゃあお願い…」

女は棚からチェンソーを取り出した。
唸るエンジンがリビングをガソリンの香りで満たす。
まな板に無造作に置かれた生肉がてらてらと輝いて見えた。

黒江「ごめんお粥とかにして」

女「え?」

女「じゃあお粥を…」

女はすかさず棚から火炎放射器を取り出した。
軍から払い下げた物だろうか。擦れた星条旗が『rat killer』の文字とともにタンクに翻る。
女は発射口を米に向けると、躊躇いなく引き金を

黒江「引くな」

女「え?」

黒江「パエリアでも作るつもりなの?」

女「お粥ですけど?」

黒江「できんわ」

女「え?」

黒江「まったく…」

黒江は仕方無さそうに台所に立った。

黒江「あんたもどうせお腹減ってるんでしょ?ツナ缶とかうどんスープの素とかある?」

女「ありますよ」

黒江「あとは…野菜があれば」

女「漬け物と納豆ならあります」

黒江「それでいいわ。そこに座ってなさい」

女「あたしも手伝いますよ」

黒江「じゃあ納豆練って」

女「はい」

女と黒江は隣り合って調理を始めた。

黒江「…」

女「…」

黒江はふと思った。
こうやって隣り合えたことも主人公補正のおかげかもしれないと。

なんだ女料理出来るじゃないか

ずいぶんとオーバーキルな料理だなw

いいお嫁さんになれるな

魔物の

黒江は少量の米を電子炊飯器に入れ、早めに炊きあがるよう設定した。

黒江「さて、少し待つか」

女「…」

女は一心不乱に納豆を練っている。
まるで、取り憑かれたようだ。

黒江(かわええ…)

女「…」

黒江(一生懸命すぎてかわええ…)

黒江は女の後ろで束ねた髪と、さらけ出したうなじを舐め回すように鑑賞した。
少し幼さの残るしっとりとした白肌がとてもチャーミングだ。
耳にはピアスの跡がないことも黒江の嗜好を捉えている。
きっと学生時代はそういった身体を傷付けるお洒落に興味を感じなかったのだろう。

女「…」

黒江「…」ウットリ

触りたい。そんな情念が黒江をつついてやまない。
もはや我慢は限ピーーーーーーーーーーーー

黒江「うるさいな。いまいいとこ…」

米が炊き上がってしまった。
ゆうに15分も眺めていたようだ。

納豆まじぇまじぇしてるのか…
中から新しい生命が誕生しそうだね

地獄納豆か…

やめろ

黒江「そういえば…」

黒江は先程まで見入っていた対象を思い出した。
考えてみれば、彼女は約15分程も納豆を混ぜていたことになる。
いや、今現在もかき混ぜる動作は継続している。

黒江「まさかね…」

黒江は恐る恐る覗き込んだ。

黒江「…!?」

黒江は息をのんだ。
そこには最早、納豆と呼べる代物は無くなっていたからだ。

黒江「ちょっと」

女「え?」

黒江「いつまでやってんの?」

女「え?えーと…」

女が持っている器には、茶色いペースト状の物体が糸を引いていた。

女「かき混ぜてたら楽しくなっちゃって…」

黒江「とろろみたいになっとる…」

黒江「炊き上がったご飯に納豆(ペースト)と漬け物、ツナを載せます」

女「はい」

黒江「その上から、うどんスープをかけます」

女「はいはい」

黒江「即席三色お粥の出来上がり」

女「おおっ!」

黒江「お好みで鰹節をかけるのも良いかもね」

女「じゃああたしはマヨネーズを…」

女は戸惑うことなくお粥をマヨネーズで蓋した。

黒江「おおぅ…」

女「え?」

黒江「台無しすぎる…」

女「ええー」

黒江「あっさりしてるのが売りなのに…」

※マヨネーズは撤去されました

女「はふはふ」

黒江「急いで食べること無いのに」

女「おいしくて、つい…」

黒江「一人暮らしの知恵ね」

女「ほほう」

黒江「あんたも料理くらい覚えなさい」

女「それが魔王になったらメイドさんはいるわ執事はいるわでもう…なんもする事がなくて」

黒江(あかん。益々ダメ人間になってまう)

女「でも、いつかお嫁さんになったら大変だよな~」

黒江「その心配はしなくていい」

女「ヒドい…」

黒江「なぜなら…」

黒江(何故なら、あんたに近づく男は私が全力で潰すから…)

女「なぜなら?」

黒江「え?うふふ」

女「なんですかー。教えてくださいよー」

黒江「うふー」

骨田の扱いが正常

うふ~

乙でした

もしかして、2ch閉鎖した?

嫌儲は消えたっぽい

ううむ…
話を終わらせると言うのは難しい…

武蔵伝かよwwwwww>納豆ペースト

綺麗に洗われた食器が、棚に納められた。

女「ごちそうさまでした!」

黒江「お粗末様でした」

女「さて、帰りますか」

黒江「え?帰るの?」

女「?」

黒江「明日の予定は日本の官公庁でのプレゼンしかないわ。魔界に帰る必要無くない?」

女「…それもそうですねぇ」

黒江「泊まっていけば良いじゃない」

女「はぁ」

黒江「そうと決まれば、寝床の準備ね!あなたはお風呂沸かして」

女「え、ちょ…」

黒江「じゃあ部屋に行ってるわね!」

黒江は女に有無を言わすことなく、二階へ上がっていった。

女「ウチに泊まる気マンマンかい」

【風呂場】

女「自動っと」

スイッチを押すと、浴槽が湯で満たされ始めた。
それを確認すると、浴槽の淵に腰掛けてこれまでのことを考えてみた。

女(お母さんが遺したロボルーマの遺産…)

女(それは莫大な資産と、黒く彩られた欲望の歴史だったわ)

女(それを託された私は魔王になったよ)

女(お母さんは、今のあたしを見てどう思うかな…)

女(怒るかな?でもね…)

女(『物語』を終わらせるにはこうする以外思いつかなかったんだ…)

女「…」

女「黒江さん遅いな…」

女「だいたい、あたしんち来るの初めてなのになんであたしの部屋を知ってるんだろうか…」

女「ちょっと見てみるか」

【女の部屋】

ガチャ

女「…!?」

女の周囲の時間が一瞬、凍りついた。

黒江「…ここ?」

黒江「…いや、違うな。ティッシュの位置はここの方がいいはず」

そこには強引にツインベッドと化した女の寝床があった。

女「…?」

変な香りがする。
花の香り。いや、違う。何か別の香りだ。とにかくただただ甘ったるい。
よく見ると、部屋の四隅にお香らしきものが焚いてある。

黒江「あとは必殺のタイミングで、この通販で買ったローションを…」

黒江は、言葉を止めた。
視線の先に女を認めてしまったからだ。

女「…」

黒江「…」

女「黒江さ

黒江「見られたからにはしょうがないわ」

女「…」

黒江「抱いて」

女「」

女の周囲の時間が一瞬、凍りついた。

女「すいません聞き取れなかったんですけど、二度目は結構です」

黒江「抱いて」

女「て、丁重にお断りさせていただきます」

黒江「抱ーいーてー」

女は黒江の目を一瞥した。
ダメだ。本気だ。酔っぱらってるわけでもないらしい。

女「…!?」

女は突然の目眩に、膝を着いた。
意識ははっきりしているが、手足に力が入らない。

女「な、何を…」

黒江「催淫系の魔力場を形成する特性のお香よ。意識は混濁していないはず」

女「あう…」

黒江「魔力の高さが仇になったわね」

女「ぐぬぬ…」

黒江「力ずくでも無駄よ。観念なさい」

女「ぐぬぬぅ」

黒江「ふっふっふ」

黒江は不適な笑みを浮かべながら女に近付こうと一歩踏み出した。

と、次の瞬間、身体が宙に浮いた。

黒江「ーっ!?」

そして、そのまま机の角に頭をぶつけて気絶した。

女「…」

どうやら、部屋を物色していた時に床にバラまいた女の下着に足を滑らせたようだ。

女「た、助かった…の?」

女は、少しだけ主人公補正に感謝した。

ここで主人公補正だと…?

主人公なら甘んじて…々

主人公補正だ…と…

助かるなよ……

チュン…チュンチュン

ブロロロロー

黒江「ほぁ!?」

女「おはようございます」

黒江「ここは!?」

女「あたしの家です」

黒江「何時!?」

女「今、07:00です」

黒江「痛い…!?」

女「たんこぶできてますよ」

黒江「…事後!?」

女「いいえ」

黒江「チクショー!!」

女「そろそろ行きましょうか。まず防衛省でしたっけ?」

黒江「ぐぬぬ…」

【モシニアピ】

ピピピ ピピピ ピピピ

目覚まし時計がけたたましく鳴り響いた。
すると、使い古された布団の下から手が伸び、強めにそれを叩いた。

魔王(元)「ふぁ…」

魔王(元)「月曜か…」

魔王(元)「ニュースでも見るか」

魔王(元)はリモコンのスイッチを押した。
しかし、テレビに電源が入らない。

魔王(元)「あれ?」

主電源が落ちているのかもしれない。
いや、どうやらそう言うわけでもないらしい。

魔王(元)「まさか…」

魔王(元)は冷凍庫を開けた。
先日買った冷凍食品から水滴が滴っている。

魔王(元)「おいおい」

この生活が始まってから、すでに2ヶ月が過ぎた。
その間、当たり前のように使っていた電気、ガス、水…
それらの料金は、(株)魔王城から支払われているものだと思っていた。

魔王(元)は蛇口を捻った。
案の定、水は出ない。

魔王(元)「…」

かつて味わったことのない焦燥感が体中を駆け巡る。

魔王(元)(…ヤバい)

【駅前:チヨ婆の店】

魔王(元)「チヨ婆!」

チヨ婆「あん?」

魔王(元)「電気止まった」

チヨ婆「はぁ」

魔王(元)「ガスも、水も、全部止まった」

チヨ婆「そうかい」

魔王(元)「どうしよう」

チヨ婆「落ち着かんか、マー坊」

魔王(元)「しかし…」

チヨ婆「いいかい。落ち着いて。そして、よくお聞き」

魔王(元)「…?」

チヨ婆「実はね…」

魔王(元)「」ゴクリ

チヨ婆「あんた、家賃も滞納しとるよ」

魔王(元)「…マジ?」

チヨ婆「ちなみに大家はあたしじゃ」

魔王(元)(か、金子め!買ったんじゃなくて賃貸だったのか!)

魔王(元)「ちなみに幾ら?」

チヨ婆「先月分だけだから4000Gだよ」

魔王(元)「…!?」

チヨ婆「今払うかい?」

魔王(元)(…手持ちにも、銀行にも4000Gも無い)

チヨ婆「マー坊?」

魔王(元)「いや、今度、絶対払うよ」

チヨ婆「早めにね」

魔王(元)(ここまで堕ちたか…)

魔王(元)は家路を歩いた。
ただただ、ゆっくりとゆっくりと歩いた。

魔王(元)(銀行口座には、2400G…。財布には550Gか…)

魔王(元)は、今まで所持金を気にしたことは無かった。
有り余る資産。買えぬ物など無かった。
まさに、湯水のごとく湧いて出るものであるように錯覚していた。

魔王(元)(のど乾いた…)

魔王(元)は缶コーヒーを思い浮かべた。
250mlに詰め込まれた一時の幸福は一缶12G。

魔王(元)(残金で、245本買えるな…)

魔王(元)(家賃は333本分か)

魔王(元)はボロボロのアパートを仰ぎ見た。
そして、考えた。自分の価値を。

魔王(元)(もはや、缶コーヒー以下の存在かもしれんな)

12時。
幸い、「解凍」された冷凍食品のおかげで、腹は満たされた。

魔王(元)「これからどうするか…」

このままでは、資金は底に至るであろう。
そして、それはかなり近い未来だ。
当たり前である。減る一方なのだから。

ならば、如何にして増やすか?
魔王(元)は経験を元に考えた。
今まで、どうやってお金を増やしたか?
不動産、為替、株、競馬、麻雀、ギャンブル…

魔王(元)(どれも元金が必要だろうが)

ガクリと、頭を垂れた。

コンコン

誰かが来たようだ。
ドアを隔てて、幼く、力強い声が聞こえる。

???「マオちゃーん!」

階下に住む家族の娘さんだ。
確か名前は…

ゆき「ゆきが介護に来たよー!」

魔王(元)「介護…か」

苦笑いを浮かべながら、魔王(元)はドアを開けた。

ゆき「お母さんがね、「おそば」がたくさんあるから一緒に食べようって!」

魔王(元)「そんな…悪いよ」

ゆき「いっぱいあるからいいの!」

魔王(元)は腹具合を確かめた。
どうやら冷凍食品だけでは、物足りないらしい。

魔王(元)「じゃあ、おじいちゃんもお蕎麦食べようかな」

ゆき「しかたないなぁ!」

魔王(元)「…」

ゆき「ほら、おそばがのびちゃうよ!」

魔王(元)「へいへい」

魔王(元)はとりあえず、金の問題を脇に置いた。
今は、その蕎麦にわさびがあるかどうかの方が心配だった。

【アパート:1階】

ゆきちゃんに連れられて、1階の部屋に来た。

魔王(元)「お邪魔します」

???「いらっしゃい」

台所に立っているのは、奥さんの冬美(ふゆみ)さんだ。

ゆき「こっちこっち」

魔王(元)はテーブルに案内された。

冬美「もうすぐ出来ますからね」

魔王(元)は冬美の後ろ姿を眺めた。
儚げでありながらとてもセクシーだ。
歳はまだ30にも満たないと聞いたことがある。

魔王(元)(このような美人妻を置いて、旦那は何をやっているのだろうか)

魔王がムラムラと憤慨していると、袖を引っ張られた。
振り返るとそこには冬美をそのまま小さくしたような顔があった。

ゆき「あそぼ!」

魔王(元)「おお、いいとも」

冬美「すみませんねぇ」

ゆき「しかたないなぁ!」

魔王(元)「…」

冬美が働きに出掛けることが多いため、遊び相手がいないのだろう。

しかたないなぁ

魔王(元)「なにやるの?」

ゆき「勇者ごっこ!」

魔王(元)「…」

ゆき「あたしが勇者!マオちゃんは魔王!」

魔王(元)「…!」

ゆき「いや?」

魔王(元)「いや、魔王は『得意』だ!」

魔王(元)はゆきを捕まえようと立ち上がった。

ゆき「きゃはは!」

本物の魔王(元)がママゴトで魔王を演じる。
魔王(元)には、とても皮肉な事に思えた。

ゆき「とう!」

魔王(元)「ぐああ!」

ゆき「やったか!?」

魔王(元)「まだまだ!」

さらに、自信が魔王として望んだ結末さえ得られなかったのに、『得意』と言ったことも皮肉さに拍車をかけた。

魔王(元)(得意なものか)

ゆき「ひっさつ!じゅうもんじぎりー!」

魔王(元)「ぐあああああ!」

魔王は床に寝転がった。

ゆき「魔王!やぶれたり!」

魔王(元)(魔王としての本懐をママゴトで遂げることになるとは…)

権力、財力、腕力…それらと共に、精神まで底に堕ちた。そんな気がした。

冬美「出来ましたよ」

ゆき「おそばー!」

高く盛られた蕎麦にはわさびが添えられていた。

魔王(元)「うまい!」

冬美「そんな、茹でただけですよ」

魔王(元)「いやいや、この湯で加減は天性の才能が成せる技ですよ」

ゆき「からい!」

冬美「こらこら、わさびは食べちゃダメでしょ」

魔王(元)「山菜の天ぷらもおいしいですなぁ」

冬美「裏の山で採れたんですよ」

魔王(元)「へぇぇ、実家の周りは食べられない植物ばかりだったから、こういうの感動しますなぁ」

冬美「マオさんはどこのご出身なんですか?」

魔王(元)「魔王じょ…トイライハです」

冬美「トイライハ…行ったこと無いわぁ」

魔王(元)「温泉が有名なんですよ。街が硫黄臭くてね」

冬美「へぇ、そうなんですか」

魔王(元)(あぶないあぶない)

ここまで書いていまさらなんですけど、二点説明します。

・モシニアピは人間の街

じゃあなんで魔王(元)が問題なく住めるかというと

・魔王(元)は巨人族と人間の間に生まれた子

なんですね。一応前スレの話の中で語ってます。
なので、魔王(元)は限り無く人間に近いタイプの魔物なのです。

まあ東京だかの競馬場行って平気だったから特に気にしてなかった

まあ黒江が平気で武蔵野線乗れる世界だからな

それはそうと1Gって何円だったっけ?

自販機のジュースが12Gなんだから、1Gは10円だろ

冬美「マオさんはお一人で暮らしてるんですか?」

魔王(元)「ええ。ずっと仕事で忙しかったから、独り身なんです」

冬美「あら、そうなんですか」

魔王(元)「だからこういう「子を持つ楽しみ」というのも経験しないままですね」

冬美「大変ですよ。その分楽しいですけど」

ゆき「たのしいよー!」

魔王(元)「ははは」

冬美「ちなみに、お仕事は何をなさってたんですか?」

魔王(元)「えっ、あっ、公務員です」

冬美「警察?」

魔王(元)「いや、まぁ事務系の仕事を」

冬美「肉体系の仕事だと思ってましたわ」

魔王(元)「若いときはそうですけどね」

冬美「やっぱり。がっしりした体格ですものねぇ」

魔王(元)「ははは」

魔王(元)は仕事の話に触れたことで、金が残り少ない事を思い出した。

魔王(元)(…働く、か)

魔王(元)「冬美さんは何の仕事をされてるんですか?」

冬美「大家さんの伝手で、近くの畑の手伝いをさせてもらってるんです」

魔王(元)「そこの果樹園?」

冬美「ええ」

ゆき「くだものいっぱいもらえるんだよ」

魔王(元)「へぇぇ」

冬美「今は冬なので、ハウスで小松菜とかを…」

魔王(元)は興味をそそられた。
給料を貰えるうえ、果物や野菜が手に入るのはなかなかおいしい話だ。

魔王(元)「それって、わしにも出来ますかね?」

冬美「え?それはオーナーに聞かないと…」

魔王(元)「誰なんです?」

冬美「大家さんです」

魔王(元)「チヨ婆かい」

翌日、魔王(元)はチヨ婆に直談判した。

魔王(元)「…と、言うことで、働かせてくれんか?」

チヨ婆「いいよ」

魔王(元)「え?案外すんなりと…」

チヨ婆「男手が欲しい時期だしね。それに、家賃を払えるならその方がいい」

魔王(元)「恩に着るよ」

チヨ婆「なぁに、これからさ。使えるかどうか見定めなきゃ」

魔王(元)「ちなみに給料は?」

チヨ婆「13000Gかな。家賃を差し引いてね」

魔王(元)「十分だ」

チヨ婆「せっかく良いガタイしてるから、力仕事をしてもらおうかね」

魔王(元)「まかせろ」

チヨ婆「じゃあ、明日の07:00に果樹園で。詳しいことは冬美ちゃんに聞いとくれ」

魔王(元)「ああ、分かった」

こうして、魔王(元)の再就職先が決まったのである。
魔王(元)は少し苦笑いを浮かべながら、考えた。

魔王(元)(13000Gか。魔王やってたときの何百分の1かな)

魔王(元)(しかし、魔王に就任したときよりも嬉しいかも)

魔王が働き始めてから1ヶ月が過ぎた…

その間、魔族と人間の勢力図は大きく変わった。
まず、ロボルーマに次ぐ軍事力を保持していたタスンブセ公国が魔王軍の宣戦布告後即座に降伏。
これは、近隣諸国に大きな衝撃を与えた。

その後、なし崩し的に近隣の小国が降伏。
残った小国や貴族が治める自治領は結託し、対魔王軍連合を形成した。
しかし、力の差は歴然であったため、小競り合いすら起きることなく、魔王軍の版図は広がり続けた。

もはや、魔界の半分以上が魔族のものとなっていた。

そんな不安定な世で、不可解な点があった。
宣戦布告はすれども、一切の戦闘が起こることなく決着するのである。
状況を悲観した者の自殺などはあったが、戦死した者はいなかった。

それが、現魔王の意志なのかは不明であった。

ロボルーマ=魔族なのか

にゃーん!

>>750
さあ書くのだ

【モシニアピ:果樹園】

2月。
降り積もった雪が、陽光を受けて輝いている。
魔王(元)は、堆肥を倉庫に押し込むと、額の汗を拭いた。

チヨ婆「どれ、お昼にしようか」

魔王(元)「おお、もうそんな時間か」

事務所から美冬が呼ぶ声が聞こえる。

美冬「今日のお昼は野菜スープですよ~!」

魔王(元)「パンは?」

美冬「焼きたてで~す」

魔王(元)「いいねぇ」

魔王(元)は雪をかき分けながら、事務所へ急いだ。
白い吐息が、リズミカルに吐き出される。

チヨ婆「そんなに急ぐんじゃないよ」

チヨ婆は、魔王(元)が押しのけた雪の道を、ゆっくりと上っていった。

【事務所】

机の上には、大きな具が入った野菜スープが皿に盛られていた。

魔王(元)「ほう、こりゃうまそうだ」

チヨ婆「今朝採れたやつだからね。新鮮だよ」

魔王(元)「いただきます!」

チヨ婆「はい。いただきます」

冬美「おかわりたくさんありますからね」

暖かな食卓。
魔王(元)は心が芯まで温まるのを、じっくりと味わっていた。
思えば、このような食事は300年間、経験しなかった。

チヨ婆「ふむ、良い体つきになったじゃないか」

チヨ婆は魔王の腕を舐め回すように眺めた。

魔王(元)「そう言えば、筋肉ついたな」

Lvを奪われたあの日、歩くことすら覚束なかった。
それが、今では10kgの堆肥袋を軽々と持ち上げられるようになったのだ。

チヨ婆「見込みはあると思っていたが、なかなかいいじゃないか。とても腐ってたじじいだと思えん」

魔王(元)「どうせ腐ってましたよ」

冬美「まぁまぁ。マオさんおかわりは?」

魔王(元)「ください」

チヨ婆「じじいなのによく食うよ」

魔王(元)「うっさいわ」

チヨ婆「あっ、冬美ちゃん。テレビ、テレビ」

冬美「あらあら、連続テレビ小説の時間じゃない」

冬美はテレビの電源を付けた。
しかし、連続テレビ小説は時間になっても放送されなかった。
変わりに放送されたのは、慌ただしいスタジオの様子と「緊急放送」のテロップだった。

画面の中央にいるスーツを着た男性が、慌てつつしゃべり始めた。

キャスター『も、モシニアピ国営放送より、緊急放送をお送りします!』

チヨ婆「なんだなんだ」

キャスター「先ほど、隣国であるトッリピスンカリメア連邦が魔王軍に降伏しました」

キャスター「これにより、モシニアピの北部は魔王軍勢力と隣接することとなります」

キャスター「首相はこのことについて「軍事力を持たないわが国に残された道は少ない」とコメントしていることから」

キャスター「魔王軍に対して抵抗する意志がないとの見方が強まっています」

冬美「もうこんなところまで…」

魔王(元)「トッリピスンカリメア連邦って?」

チヨ婆「ばかたれ。そこの鉱山超えたらすぐだよ」

魔王(元)「なんてこったい」

チヨ婆「まぁ、弱虫モシニアピ政府が喧嘩売るとは思えないけどさ」

魔王(元)「しかし、いいのか?魔族に支配されるんだろう?」

チヨ婆「うーむ。それも時代の流れかのう。300年前みたいに軍事力が物言う時代じゃない」

冬美「…勇者」ボソッ

魔王(元)「勇者?」

冬美「いえ…なんでもありません」

チヨ婆「勇者待ちか。これは300年前と変わんないかもね」

魔王(元)「笑っとる場合か」

チヨ婆「まだ大丈夫じゃて」

魔王(元)「そう言えば、ゆきちゃんは?」

冬美「え?…遅いですね」

魔王(元)「いつもはお昼前に来るのに」

冬美「また、「願いの泉」に寄り道してるんでしょう」

魔王(元)「「願いの泉」?」

冬美「願いが叶うって伝説があるらしいですよ」

魔王(元)「かわいらしい話ですな」

冬美「あたし見てきます」

魔王(元)「わしも行こう」

チヨ婆「魔物に気をつけるんだよ」

チヨ婆は笑いながらそう言った。
魔王(元)はまだ茶化す余裕があるだけ300年前よりマシだと思った。

おつ
魔王軍が仕事してるってどういうことだ?

泉は鉱山の麓にあった。
なので、願いの泉までは、果樹園の裏の小径を通らなければならない。

魔王(元)「ゆきちゃんはいつもここに来るんですか?」

冬美「なにか良いこととか、辛いこととか、節目節目に寄ってるようです」

魔王(元)「何かお願いしているんですかね」

冬美「ええ、多分、お父さんに帰ってきて欲しいとお願いしているのでしょう」

魔王(元)「…」

冬美「いつも、明るく振る舞っていますが…本当は寂しいのでしょう」

魔王(元)の心に待たしてもムクムクと憤りが膨れた。

魔王(元)「旦那さんは今何を?」

冬美「実は…」


「きゃぁぁぁ!!!」

悲鳴が小径を貫いた。

冬美「!?」

魔王(元)「ゆきちゃん!?」

【願いの泉】

ゆき「や、やだぁぁ!」

魔王(元)「ゆきちゃん!」

冬美「…!?」

「ゴァァァ!!」

大きい!
魔王(元)の10倍はある人型の体躯を持つそれは、300年前に魔王軍が開発した魔導兵器「グラトニー(食いしん坊)」であった。
40mm連装魔導砲4門に203mm魔導砲が1門、81に及ぶマニピュレータ。
装甲は魔鋼鉄製で、表面には防御魔法が幾重にも張り巡らされている。
問答無用の殺戮兵器。問題があるとすれば、燃費が悪いこと。それと、生命体がエネルギー源であることだった。


魔王(元)「グラトニー!?なぜここに!?」

冬美「ゆき!」

ゆき「おかぁさーん!!」

グラトニーのエネルギー吸収口は各マニピュレータの先端にある。
まさに、ゆきが掴まれている部分であった。

魔王(元)「まずい!」

冬美「マオさん!」

魔王(元)はグラトニーの脚に取り付いた。

魔王(元)「ゆきちゃんを離さんか!」

グラトニー「…」

グラトニーのセンサーが魔王(元)を捉えた。
と、同時に、マニピュレータの一本が正確に振り下ろされた。

魔王(元)「!?」

ズンッ!

魔王(元)「がっ…」

魔王(元)は抵抗の甲斐なく、弾き飛ばされた。

冬美「大丈夫ですか!?」

魔王(元)「ええ、大丈夫…。ぐっ」

脇腹から血が滴る。

冬美「ど、どうしよう」

魔王(元)「とにかく、ゆきちゃんを引き離さなければ!」

魔王(元)は近くに転がっていた丸太を担いだ。

魔王(元)「離せ…っ!」

ガツン!

大きな金属音がした。
確かな手応えが魔王(元)の手を痺れさせた。

魔王(元)「やったか!?」

グラトニー「…」

冬美「危ない!」

魔王(元)「!?」

マニピュレータが脇腹に突き刺さった。

魔王(元)「ぐぅ…!」

ゆき「マオちゃん!」

魔王(元)「かはっ!」

吐き出された血が、グラトニーの金属装甲を滴った。
魔王(元)はその場にうずくまる様にしてしゃがみ込んだ。

冬美「マオさん!」

グラトニー「ピッピピ」

グラトニーのセンサーが冬美を捉えた。

魔王(元)「来ちゃダメだ!」

冬美「!?」

マニピュレータは冬美を掴み上げると、ゆきちゃんと一緒に抱きかかえた。
生命力を吸収する合図である。

魔王(元)「や、やめろぉ!」

マニピュレータが青く発光する。

冬美「あ、ああ」

ゆき「お、と…うさん」

冬美とゆきの目から生気が失われていく。

魔王(元)「やめんか!」

魔王(元)は吸収口に手をねじ込んだ。

グラトニー「!」

青白い電撃が走った。
すると、冬美とゆきを掴んでいたマニピュレータが弾けた。

グラトニー「!!?」

魔王(元)(腐っても魔王か…)

魔王の生命力に対するセーフティが作動したようだ。
そのおかげで、冬美とゆきは解放された。
しかし、その代償に魔王(元)は右手を失った。

投げ出されるようにして解放された冬美とゆきは、地面に打ちつけられた。

魔王(元)「つっ…」

右手から滴る血液が、地面に血の池を作る。

魔王(元)「わしの生命力は覚えとるようだな」

グラトニー「…????」

魔王(元)「しかし、外観や能力値が合致せんか」

グラトニー「ピッピピ」

グラトニーが再び攻撃姿勢に入った。

魔王(元)「くそっ、勝ち目なんか無いぞ…」

ズンッ…ズンッ…

グラトニーが一歩一歩、ゆっくりと近づいてくる。
魔王(元)は冬美とゆきを確認した。
依然として、その二人に動きはない。
死んではいないだろうが、それなりの生命力を奪われたのだ。

魔王(元)「万事休すか」

魔王(元)は冬美とゆきを抱えると、走って逃げようとした。

パ パ パ パ パ パ パ パ!

しかし、その目論見はグラトニーの連装魔導砲にすぐさま打ち砕かれた。
魔王(元)の進行方向に撃ち込まれた弾痕から煙が上がる。

魔王(元)「ちいっ!」

魔王(元)はグラトニーを見た。
連装魔導砲を撃ち込んだばかりだというのに、主砲にエネルギーが集中している。

魔王(元)「誰がこんな高性能な魔導兵器を作ったかな…」

魔王(元)は、若かった自分を恨んだ。
と、次の瞬間、主砲から濃縮された魔力が撃ち出された。

ドンッ

魔王(元)「!」

かろうじて直撃は免れたが、爆風は容赦なく魔王(元)、そして冬美とゆきを襲った。

魔王(元)「があっ!」

魔王(元)は冬美とゆきを庇うようにして吹き飛ばされた。

主人公交代したのね

バシャァァン

魔王(元)達は「願いの泉」に落ちた。

ゆき「う、ううん」

冬美「ここは…」

魔王(元)「気付いたか」

ゆき「マオちゃん!?」

冬美「右手が!」

魔王(元)「は、はは。無くなっちゃいましたな」

グラトニーは放熱に時間がかかっているようだ。

魔王(元)「今のうちに逃げ、…!?」

冬美「あぁ!」

ゆき「マオちゃんの足が…」

魔王(元)「無くなっとるな…」

膝から下が無くなっていた。
水面には大量の血が漂っている。

冬美「そんな…」

魔王(元)「逃げてください」

冬美「マオさんを置いて逃げるなんてできません!」

グラトニーの放熱が終わったようだ。
方向を魔王(元)達の方向に向けると、またもやゆっくりと近づいてきた。

ゆき「お父さんが…」

魔王(元)「?」

ゆき「お父さんが助けてくれるもん!」

冬美「ゆき…」

魔王(元)「お父さんはどこにいるんだい?」

ゆき「…」

魔王(元)「?」

冬美「仕事に行ったっきり行方不明なんです」

魔王(元)「…それは悪いことを聞いた」

ゆき「かえってくるもん!いつもお願いしてるもん!」

魔王(元)「ああ…きっと帰ってくるさ」

ゆき「たすけてくれるもん…」

少し目眩を感じた。
血を出しすぎたようだ。

魔王(元)「…お父さんの仕事は?」

冬美「…」

冬美は少し迷ってから、苦笑いを浮かべて答えた。

冬美「…勇者です」

魔王(元)「!?」

魔王(元)は耳を疑った。
思わず聞き返してしまった。

魔王(元)「今…なんと?」

ゆき「ゆうしゃだよ!」

 「ゆ う し ゃ だよ!」

魔王(元)は動揺した。
息がうまく出来ない。
動悸は速まるばかりだ。
見開かれた目には、ゆきの純粋な眼差しが写っている。

魔王(元)「…」

目を逸らそうにも逸らせなかった。
かつてないレベルの吐き気が襲う。
平常心が保てない。


それもそのはずである。


魔王(元)「まさか…」

魔王(元)「まさか、こんな因果があるとはな」

冬美「?」

冬美の夫、ゆきの父は、何期前かは分からないが、主人候補生の実験体であった。
真面目な青年で、妻と娘とより良い所で暮らすため、出稼ぎに出ていた。
その出稼ぎ先で、金になると拐かされ、勇者に志願した。


魔王(元)はそんな経緯は知らない。知る由もない。
知っているのは、研究のために、間違いなくその真面目な青年が死んだことであった。

魔王(元)「きっと…」

ゆき「?」

魔王(元)「きっと帰ってくる」

冬美「マオさん…」

魔王(元)の目つきが変わった。

魔王(元)「逃げろ!!!」

冬美「!」

ゆき「ま、マオちゃん…」

魔王(元)「早く!」

主人候補生ってなんやねん
主人公補正や

冬美とゆきはうまく逃げ切れたようであった。



主 人 公 に な り た い



我欲にまみれている。
魔族らしいと言えば魔族らしい。
しかし、平和ボケしたのだろうか。
子供の純粋な瞳が堪える。


魔王(元)「ゆきちゃんは…いつまでも待っているのだろうか」

グラトニーは目前に迫っていた。
意識が朦朧とする。
虚ろな瞳がなんとか魔導兵器を捉える。
しかし、抵抗する気力も、今は無い。
思えば、あの「魔王」を失った時、死んでいたのかもしれない。
もう、諦めつつあった。

ふと、体を包む水の感覚が気になった。

魔王(元)「願いの泉か…」

魔王(元)「わしは…」

グラトニーの主砲が魔王(元)に向けられた。

魔王(元)「わしは、勇者になりたい」

泉が光り輝いた。

おじいちゃんの勇者って美しくないと思うの

>>768
冬美さんの「ご主人候補生」ということなら間違いないでしょうw

>>770
メルビンに謝れ

ふはははは
よし、おじいちゃん勇者はやめよう

え!?
爺さんがカッコ良いって素敵じゃないですか!

某コンダクター・イルベルトさんみたいなのとか

まぁもともとおじいちゃんでいくつもりは無いです

次の瞬間。グラトニーの右肩が吹き飛んでいた。
その衝撃で、主砲はあらぬ方向に撃ち出された。

グラトニー「!?!?」

泉は依然として輝いている。

???「なるほど…。願いの泉とはよく言ったもんだ」

輝きの中から、手が伸びる。

グラトニー「!」

その手は、グラトニーのマニピュレータを掴むと、そのまま握りつぶした。

グラトニー「!!?」

少しずつ輝きが弱くなり、消えた。
そして、輝きを失った泉の水面には、1人の青年が悠然と立っていた。

グラトニー「…認識中」

???「その必要は無い」

その青年は水面から飛び上がると、拳を突き出してメインカメラを貫いた。

???「やわらかいのう」

その青年はメインカメラを引き抜くと、無造作に投げ捨てた。

グラトニー「メインカメラ損失。サブカメラ起動」

ブゥゥーン

グラトニーの「目」に、その青年が映し出された。
若々しく、力強く、純粋で、禍々しい。
グラトニーのメモリーには、確かに記録されている存在。

300年前の姿そのままの存在。


グラトニー「認識完了」

???「そうか」

グラトニー「プ」

青年の掌から凝縮された魔力が撃ち出された。
その魔力は、魔鋼鉄を一瞬で溶かし、グラトニーのメインコンピューターを露呈させた。

グラトニー「…り、んす様。」

???「プリンス?勘違いするな」

青年は、魔力を重力に変容させた。
グラトニーはその重力に吸い込まれてそのまま消滅した。

???「わしは勇者だ」

勇者「この物語を終わらせるための存在…」

勇者と名乗った青年は、泉の方を向いた。
先ほどまで清水で満たされていた泉は干上がっていた。

勇者「…」

干上がった泉の底には、魔力を失った魔法陣が見える。

勇者「…こんなものがあるとはな」

300年前。
かつて、ここはセーブポイントであった。
保存した対象が死なない限り、魔法陣の魔力が尽きない限り、当時の状態を保存し、必要に応じて出力する装置。
魔族も人間も使用できるため、戦争がいつまでも終結しない原因の一端となった。
そのため、双方が率先して破壊しあった。
こうして残っているのが、奇跡に近い存在。それがセーブポイント。

勇者「この頃の姿を取り戻すことになるとは…」

勇者のその姿は、300年前、終戦間際のプリンスそのものであった。

勇者「そういえば…」

思い返されたのは300年前。
終戦間際、十傑集の連中に無理矢理セーブポイントにぶち込まれた。

勇者「そんなこともあったな…」

勇者「これもまた運命…。いや」

勇者は天を仰いだ。
冬空は晴天をたたえている。

勇者「ヤツの主人公補正の影響か…」

幼い声がする。

ゆき「マオちゃぁーん」

冬美「マオさん!」

ゆき「マオちゃんは!?」

チヨ婆「おらぁ!魔族はどこだい!…いないじゃないか」

冬美「そんな…どこに…?」

ゆき「…誰?」

勇者「わしは…」

冬美「ここにいたおじいさんを知りませんか!?大ケガをしているんです!」

勇者「その方は…亡くなりました」

冬美「…そんな」

冬美は両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込んだ。

勇者「ワシはもう行きます」

チヨ婆「…どこに?」

勇者「魔王を倒しに」


勇者は翻ると、魔王城の方向に歩き出した。


ゆき「あれ、…マオちゃんだよ」

チヨ婆「マオ!」

勇者「…!」

冬美「…!?」

勇者は足を止めた。

チヨ婆「帰ってくるのかい?」

勇者「多分、もう帰れない」

チヨ婆「そうかい」

冬美「マオさん!」

ゆき「マオちゃん!」

勇者「さようなら」

勇者は再び歩き始めた。

行く手には、険しい道のりが、ほのかに見える。

【魔王城】

ズゥゥン!

魔王城が揺れた。

金子「な、何をなさるのですか?」

女「とぼけないで。おじいちゃんが住んでるモシニアピに魔導兵器を送り込んだでしょう」

壁に叩きつけられた金子が、絞り出すような声をあげた。

女「一切、戦闘行為はしないって約束したでしょう?」

金子「…」

女「分からないとでも思った?」

女は金子の喉元に指を立てた。

金子「ち、力を失ったとは言え、魔王(元)が不穏分子てあることに変わりはない!」

女「そんなことは関係ないわ」

女は指を離した。

金子「い、今、殺さなければ、必ず牙を剥くぞ!」

女「こちらにも考えがあるのよ」

金子「…!?」

女「だから、勝手なことをしないで」

黒江「おしおきは済んだ?」

女「おしおきってほどのものじゃないですけどね」

黒江「辰川部長は無事に研究所長に就任したわ」

女「じゃあ、そのまま計画通りに」

黒江「伝えておくわ」

女「新部長は?」

黒江「犬崎課長…いや、犬崎部長は営業部長として、主人公補正の売り込みに精を出してるわ」

女「そうですか」

女は玉座に深く腰を落とした。

黒江「疲れたの?」

女「ちょっと」

黒江「癒してあげましょうか」

黒江はリモコンバイブを取り出した。

女「結構です」

黒江「…………そう」

黒江は心底悔しそうな顔をして、それをポケットに収めた。

女「もう少しで…」

黒江「?」

女「もう少しで終わる」

黒江「……そうね」




【没落魔王ワンダーランド編…完】

やっと辰川部長キター!
って、名前だけじゃん。
チップがどうのって結局何だったんだ

辰川部長視点の話は次にやるつもりでごわす

ってもうスレが残り少ないやん…


次スレで完結でいいじゃない
スレタイも【多分】なんだし

乙でした

次スレタイは【きっと】だな

【辰川部長・ファイルズ編】

【王立魔法研究所】


辰川「…」

ジャスミンティーの薫りが朝を彩る。
今日は魔界にふさわしい暗雲日和。
翼竜は大きな体を革張りの椅子に乗せていた。

辰川「ふぅ」

コンコン
偉そうな扉が厳かな音を立てた。

辰川「どうぞ」

扉が開くと、火の玉がゆらりと侵入してきた。

火野「新所長」

辰川「ああ、火野君。なんか用かい?」

火野「重役の方々がお待ちです」

辰川「はいはい」

火野「資料はPCに送りましたよね?」

辰川「おじさんもう520歳だよ?デジタルなことは分からないよ」

火野の体が揺らめいた。
多分、イラついているのだろうな。と辰川は思った。

火野「ここに私の分のコピーがありますので使ってください」

辰川「すまんね」

【廊下】

ピルルルル

辰川「あっ、待って、電話だ」

火野「…」

火野(ホントに元十傑集かよ…。タラタラタラタラして…)

辰川「おお、新魔王様じゃないですか」

火野「!?」

辰川「ええ?何?仕事?やってるって。これから会議」

火野(魔王…!?タメ口…!?)

辰川「時間無いから切るねー。秘書君怒ってるし」

火野「え?ちょ…」

辰川「おし!行くか!」

火野「い、今のは?」

辰川「ああ、新しい魔王だよ。おじさんが仕事できるか心配なんだと」

火野(まじかよ…)

おじさま素敵

【会議室】

ガチャン

質素な作りの扉を巨体がくぐり抜けて来た。

辰川「どうも」

そこには四体の老けた魔物が安い業務用の椅子に座っていた。

重役A「これはこれは」

重役B「辰川新所長」

重役C「ご機嫌うるわしゅう」

重役D「お会いできて至極光栄です」

火野「…」

辰川は訝しがるように重役達の顔を見渡した。

辰川「なーに猫かぶってるんだよ、ご老体ども」

火野「!?」

火野はギョッとした。

辰川「戦中の元老院の面々そのままじゃないか」

重役A「あっーはっはっは!」

重役B「久しぶりだのう!辰ちゃん!」

重役C「老けたのう!」

重役D「おうおう、左遷されたのかい!」

辰川「相変わらず元気な爺さん達だよ」

火野「し、知り合いだったのですか?」

辰川「戦中からの腐れ縁さ」

重役C「いやぁ自己紹介する手間が省けた」

重役A「わしは綺麗な嬢ちゃんが良かったのう」

重役D「前のはベッピンさんだったな」

重役B「前のは綺麗だったが、乳が無かった」

辰川「巨乳の綺麗な嬢ちゃんじゃなくて悪かったな」

重役A「ほんとだよ」

重役D「がっかりした」

重役B「あーやる気でんわ」

重役C「有給使っていい?」

辰川「このクソジジイども…」

重役C「だいたい辰ちゃんは技術職じゃないでしょ?」

重役B「どうみても文系顔だもんね」

火野(どうみても体育会系ですが)

辰川「まぁそれには色々あるんだよね」

重役D「色々?」

辰川「火野君」

火野「はい?」

辰川「回想用のPowerPoint作っといたからプロジェクターで流して」

火野(デジタルは苦手なんじゃなかったのか…)

ー3ヶ月前ー

魔王の交代劇があったその日…

地下牢に閉じ込められていた辰川は突然解放された。

骨田「魔法陣への魔力供給をストップしました」

岩村「開くぞー」

鎧谷「部長!」

辰川「鎧谷…!?何があった!?」

犬崎「わん(それは私から説明する)」

辰川「犬崎…!?」

犬崎「ワン(正直言うと、私もよく分かってないのだが)」

辰川「おい、この低学歴じゃダメだ。大卒のお前が説明しろ」

鎧谷「え?あ、はい」

犬崎「わぉん!(なんだとぅ!)」プンスカ

課長、元十傑集なのに課長止まりだったのは低学歴だったからなのか

なんかいいね

鎧谷「簡単に申し上げると、魔王が交代しました」

辰川「…!?」

岩村「…今頃、魔王(元)はモシニアピに送還されているでしょう」

辰川「俺が収監されている間にそんなことが…」

犬崎「わん(新しい魔王は…)」

辰川「俺か!?」

犬崎「わん(いや違う。あの子だ)」

辰川「ま、まさか…。金子に連れ去られてから数日しか経ってないぞ」

鎧谷「部長は『主人公補正』についてご存知無いですよね?」

辰川「『主人公補正』…?」

犬崎「わん(この資料を見てくれ)」

辰川「…」

辰川は資料に見入った。
勇者に対するコンプレックスの塊の様なその計画は、辰川に強烈な共感と、後悔を与えた。

辰川「こんな…」

辰川は顔を上げると、強く目を瞑った。

辰川「こんなことを考えるほどヤツは悩んでいたのか…」

大戦中、最も魔王に近く、最も信頼し合っていた。
秘密なぞ、無いと思っていた。
しかし、現実には、大きな隔たりがあったようだ。

辰川「何も教えてくれなかったんだな」

犬崎「わん(辰川…)」

辰川「親友だと、一方的に思っていたわけか」

鎧谷「結果として、研究は頓挫しました」

辰川「そういう問題じゃないんだ…」

強い喪失感が辰川を襲った。

プルルルル

牢屋の入口に設けられた内線がけたたましく鳴り響いた。

骨田「はい。お疲れさまです。こちら地下牢…。黒江さん?」

犬崎「わん(終わったようだ)」

骨田「課長。部長を解放したら、一緒に上がってきて欲しいそうです」

犬崎「くぅん(行けるか?)」

辰川「ああ…。行けるよ」

【魔王城:玉座の間】

女「部長」

辰川「無事だったか。…いや、無事どころの騒ぎじゃないか」

女「あはは…。魔王になりました」

辰川「よく考えたもんだ。魔王城が無血開城なんて歴史上初じゃないのか?」

女「それでも、いろんな犠牲がありました…」

辰川「いや、何かが変わるっていうのはそういうもんだ。気にするな」

女「…ありがとうございます」

辰川「で、どうするんだ?前のような体制で行くわけじゃないんだろう?」

女「私の「主人公」と、主人公補正そのものを終わらせます」

辰川「主人公の終わり?それはつまり…」

女「物語の終わり…」

辰川「ふむ…。俺は何をすればいい?」

女「当面は、人事の整理。それと、魔王軍の精神的な支柱になって欲しいのです」

辰川「…確かにそれはお前には無理だな」

女「頼りにしてます」

辰川「まかせろ。…「当面」ってのは?」

女「ある程度体制が整ったら、『主人公補正』の研究、開発を進めてもらいます」

辰川「…研究、開発?本末転倒なんじゃないの?」

女「必要なんです」

辰川「いいよ。分かった。営業部長はどうすんの?」

女「それは犬崎課長にやってもらいます」

辰川「できるかなぁ?あいつバカだぜ?」

犬崎「わん(おい)」

辰川「うおっ、いたのかよ」

犬崎「わん(バカで悪かったな!)」

女「犬崎課長には主人公補正の売り込みをやってもらいます」

辰川「ほう…。何だか分からんが、面白そうな事をしようとしてるじゃないか」

女「できますよね?」

犬崎「わん(まかせろ!)」

女「じゃあ、明日からお願いします」


【会議室】

辰川「とまぁ、こんな感じ」

重役D「なるほどねぇ」

重役C「『主人公補正』の研究、開発か…」

重役A「具体的な方向性を示して欲しいね」

重役B「どういう結果が欲しいんだい?」

辰川「ズバリ、『補正のコントロール』。集中、拡散、思い通りにしたい」

重役A「また難しいこと言うね」

重役B「定着させるだけでも難しいんだよ?」

重役C「増やしたり、減らしたりなんて…」

重役D「とてもとても…」

辰川「で?もうほとんど出来てるんだろ?」

重役A「…」

重役Aは目をそらした。

重役D「辰ちゃんに隠し事はできんなぁ」

辰川「元老院時代の汚職っぷりを見てきてるんだぜ?また勝手に研究したりしてたんだろ?」

重役C「辰ちゃんには適わん」

重役D「もうほとんど理論は出来てるよ」

辰川「後足りないのは?」

重役A「情熱とやる気と時間と…これかな?」

重役Aは親指と人差し指で円を作った。

辰川「金で済むならいくらでも使えよ」

重役ズ「ひゃっほう!」

火野「大丈夫なのですか?訳の分からない実験器具でも買いかねないですよ?」ヒソヒソ

辰川「安心しろよ。この人たちは根っからのクソヤロウだけど、仕事はできる」

火野「はぁ」

やっぱり部長かっこいい
あ、所長か

>この人たちは根っからのクソヤロウだけど、仕事はできる

これはヒドイwwwwww

>この人たちは根っからのクソヤロウだけど、仕事はできる

フロムゲーに出てくる変態企業の技術者みたいな連中だなw
キサラギとかアクアビットとかの

こんな奴等が仕事してる(株)魔王ってかなり優良企業だよな

あああ!ジョジョ4部とか、刃牙とかとのクロスやりてえぇああう!

そいつは楽しみだ

過去に無いくらい落ちとるw

一週間もしない内に、実に高価な実験器具が運び込まれた。
そこから、さらに2ヶ月ばかし、重役達は仕事をほったらかして『実験』に夢中になった。

【第一実験場】

重役A「そこにケージがあるじゃろ?」

重役D「中に、豚が20頭くらい入っとる」

辰川「ほう」

重役A「2ヶ月前、その内の1頭に疑似主人公補正薬『ヒロイック・タイム』を投与した」

辰川「通常なら、1ヶ月前には薬がきれているはずだな」

重役B「ああ、しかし、結果を見て欲しい」

辰川「…」

辰川は渡された資料に目を通した。
その資料から、つい先日までその豚に主人公補正の影響があったことが伺える。

辰川「ふむ、現在は主人公補正は無くなっているのか?」

重役C「ああ、あまり長期間主人公化させると、観察しているわしらも影響を受けかねんからな」

重役A「わしらの安全も考慮して、主人公補正を拡散させたよ」

辰川「それが正解かもな。…で、どういう原理なんだ?」

重役B「それは主人公というものから説明しなければならない」

辰川「?」

重役B「主人公は何故、主人公になると思う?」

辰川「はじめから決まっているんじゃないの?」

重役A「実は違う。ざっくばらんに結論を言うと、全ての存在は主人公になりうるのだ」

辰川「?」

重役B「誰もが主人公補正を持っているということだ」

重役A「その場所、その瞬間ごとの主人公補正の値の相対性が主人公を決定する」

辰川「…」

重役B「重要なのは、その相対性が適用される範囲だ」

重役C「スポットが小さければ小さいほど、主人公になりやすく、主人公が長持ちしやすい」

辰川「こういうケージの中とかか?」

重役D「そう、そして、薬が長持ちしない理由はそこから導き出される」

辰川「なるほど。そのスポットが拡大された場合、相対的に主人公値が下がって主人公でなくなるのか」

重役C「ああ、その主人公化した豚もケージの外に出したらすぐにモブ化したよ」

辰川「つまり、意図的にスポットの範囲を小さくしたり大きくしたりすれば、意のままに操れると?」

重役D「問題は、それだと主人公を変えたりできるだけなんだよね」

重役A「結局、主人公補正の値が高い奴が主人公になっちゃう」

辰川「うーん。多分それは魔王が求めてる結果と違うな」

重役B「魔王が欲しいのは、主人公補正のコントロールだからなぁ」

重役A「しかし、そこで1つの疑問が浮かび上がった」

辰川「疑問?」

重役D「より高い主人公補正値を持つ者が、そのスポットの中で主人公になると言っただろう?」

辰川「ああ」

重役B「ならば、主人公を取り巻く物語が終わったとき、主人公補正はどうなるのだろうか」

辰川「…どうなるのだ?」

重役A「面白い観測結果が出た。ある豚はドラマチックな恋愛の末、雌豚と結ばれた」

重役B「その瞬間、ケージ内の主人公補正が平均化されたのだ」

重役C「我々はこれを『物語の終わり』と呼称している」

辰川「それは興味深いな」

重役B「さらに面白い観測結果があるぞ」

重役A「物語が終わる直前、その主人公豚と雌豚の主人公補正が著しく上昇した」

辰川「『物語は佳境を迎えた』ってところか」

重役B「まさにその通り。我々は『クライマックス効果』と呼んでいる」

辰川「魔王が主人公補正をどうしたいか分からんが、この結果は参考になるかもしれんな」

重役C「ししし、新しい魔王様はええ乳をしとるらしいからの。今度謁見させてもらいたいの」

重役D「ご褒美に触らせてもらえるかも…」

辰川「ああ、いいんじゃないか?」

重役A「おお!」

辰川「死ぬと思うが」


慌ただしく火野が実験場へ入ってきた。

火野「所長!」

辰川「なんだい?」

火野「至急、所長室へ!」

辰川「?」

どうでもいいけど>>758のグラトニーの製造元が気になった

>>810
300年前の魔王軍って直前に書いてあるだろ

おつ
主人公補正おもしろい

にゃん

わん

【所長室】



辰川「おいおい」

火野「事実です。昨日、研究所南西部に駐留する部隊が壊滅しました」

辰川「あそこらへんに展開してたのは牛宮直轄の第105魔獣連隊だろ?」

火野「はい」

辰川「魔王軍でも筋金入りの戦闘集団だ」

火野「それが一夜にして…」

辰川「状況は?」

火野「負傷者450名、死者は…ありません」

辰川「そこまでやられて死者ゼロとかありえないでしょう」

火野「…事実です」

辰川「意図的か、偶然か…。敵の規模は?」

火野「それが、闇夜に乗じて襲われたために確認できなかったそうです」

辰川「ホント天下の魔獣連隊の名が泣くねぇ」

火野「大変危険な状況です。研究所防衛に大きな穴が空きました」

辰川「壊滅してから正確な時間は?」

火野「6時間58分です」

辰川「今回の一番の問題点はさ」

火野「?」


ド カ ァ ァ ァ ン !


火野「なっ!?」

辰川「キミのアンテナの低さだよね」

火野「敵襲!?」

辰川「事が起こってから時間が経ち過ぎだよ」

所長かっこいい

火野が無能ぶりを発揮しますた

【研究所エントランス】

火野「あああ!エントランスがまた壊されてる!」

辰川(この魔力痕は見覚えがあるぞ…)

火野「一体誰が…」

辰川「そんなの昨夜の敵に決まってるでしょう」

火野「そ、そうですよね」

辰川「…下がれっ!」

火野「!?」

突如壁が溶け、熱線がエントランスを横断した。

火野「『光線魔法』っ!」

辰川(それも戦略レベルの魔力!!)

壁が溶け落ちたところから人影が現れた。

辰川「…こういうことをする奴には心当たりがあるんだ」

火野「…?」



「久しぶりだな」

まさか…ね

辰川「おおお…」

勇者「辰川よ」

火野「…?」

重役A「辰ちゃん!」

重役C「一体何事じゃ!」

重役B「…!?」

重役D「あ、あんたは…」

勇者「これはこれは、親父のご友人の面々じゃないか」

重役D「お、王子…様…!?」

重役B「辰ちゃん!どういうことじゃ!」

辰川「分からん。分からんが、この姿、この魔力は…戦中の頃のヤツそのものだ」

重役A「クローン?」

勇者「正真正銘、本物だよ」

重役C「あわわわ」

勇者「違うのは…」

魔王は辰川に手のひらを向けた。
その手のひらに魔力が集中する。

辰川「!」

勇者「魔王では無く、勇者であるということだ」

勇者の手のひらに青白い炎が球形を成した。

辰川「待て!」

勇者「…」

ゴォォン
それは辰川に向けて発射され、着弾と共に、爆音と強い衝撃波を生み出した。

辰川「があっ!」

余りにも強力な衝撃。辰川の巨体は後方へ大きく弾かれ、壁に叩きつけられた。

火野「所長!」

辰川「…ぐ」

勇者「流石に翼竜族はしぶとい」

辰川はよろめきつつ、立ち上がった。

辰川「…………何をしに来たのだ」

勇者「全てを終わらせに来た。奪われたものも、奪ったものも全て無に帰す」

辰川「…」

勇者「物語を終わらせるのだ」

辰川「…それは、お前の役目ではない」

辰川は再度ふらついた。どうやらダメージは思ったよりも大きい。

辰川「今更、出てくるんじゃあない!貴様は…っ」

辰川は重役たちに目配せした。
重役たちも何かを察したようだ。

しかし、勇者の行動も早い。
すでに槍状に形作られた魔力が辰川に向けられている。

勇者「…まずはこの研究所を破壊する」

重役A「やらせるかい!」

重役C「辰ちゃんこれを!」

重役たちは液体の入ったボトルを辰川に投げ渡した。

辰川「よし!」

勇者「それは…!?」

そのボトルには、カタカナでこう書かれていた。
『ヒロイック・タイム』

勇者「主人公補正薬…!?」

辰川「主人公は苦手だろう?元魔王よ…!」

辰川は液体を一気に飲み干した。

辰川の存在感が増していく!

ゴ ゴゴ ゴ ゴ…

辰川「なるほど、この世界を押しのけるような感覚…」

勇者「…」

辰川「これが主人公…」

勇者「主人公補正薬、完成していたのか」

辰川「ああ、夢だっただろう?」

勇者「今は違う…」

辰川「…」

勇者「犠牲を払いすぎた。わしが求めた高潔な存在にはもうなれない」

辰川「ならもうやめよう」

勇者「いや、わしがこの若さと力を取り戻した意味を…」

辰川「…」

勇者「与えられた『勇者』を全うする」

辰川「…そうか」

勇者「まだ止めるか?」

辰川「いや、昔から意見が食い違う時の決着の付け方は決まってるだろう?」

勇者「そうだな」


辰川は雄々しく翼を広げた!
と、同時に勇者の魔力が異常に高まっていく!

辰川は飛び上がると、そのまま天井のステンドグラスを突き破った。

火野「あああ!総工費4億G、魔界でも歴史の深いタスンブセ精工のステンドグラスが!」

勇者は、球形に凝縮した魔力を数十個自らの周囲に展開した。
それらは、勇者が手を横一文字に振るのと同時に辰川を追尾するように飛び立った。

勇者「逃がさん」

辰川(1つ1つが高級魔法クラスの魔力弾…っ!?1つでも当たるわけには…!)

辰川はエントランスの外苑から正門まで飛翔し、門を突き破って再度内部に突入した。

火野「はわー!初代所長ヴィルヘイム郷から賜った由緒正しき魔界樹製の門がぁぁ!!!」

魔力弾は辰川よりやや速い。
それを察した辰川はすかさず転身して、後方に高熱の火炎を吐いた。

ズ ド ド ド ド ド !

熱せられた魔力弾が凄まじい音をたてて爆発した。
すべての魔力弾が誘爆したようだ。

勇者「…」

辰川「!?」

勇者は瞬時に辰川の後ろに回り込むと、硬い皮膚に魔力を帯びた長剣を突きたてた。

勇者「俺の勝ちだ」

辰川「甘いっ!」

辰川は体を捻転すると、尻尾を勇者に叩きつけた。

勇者「ぐぁっ!」

吹き飛んだ勇者は、大きく高級そうな時計に強く叩きつけられた。

火野「ふにゃあ!三億年経っても一秒もズレないと言われる魔導力時計がぁ!」

火野さんの解説がwwwwwwwwww

これは減給ですわ



火野さん、解説というより損害計上係w

音を立てて崩れる時計の中から、勇者が悠然と出てきた。

勇者「…やりおる」

辰川は、背中に刺さった長剣を引き抜くと床に突き立てた。

辰川「ナメてもらっちゃ困る。今現在、魔王軍最強は俺なんだ」

勇者「わしが抜けたからか?」

辰川「…」

辰川は否定しなかった。
その代わりに、魔法陣を描いた。

勇者(光魔法!)

辰川「『超高級光魔法』だ!」

魔法陣から極太の光が束となって照射された。

 ズ オ ッ !

勇者「……っ!」

勇者は圧倒的なエネルギーの奔流に飲み込まれた。

火野「す、スゴすぎる」

辰川「…」

依然として収まらぬエネルギーの奔流を目の前にして、辰川は主人公補正が高まっているのを感じた。

辰川「これが『クライマックス効果』か…?」

火野「主人公補正薬がここまでの威力を持つとは…」

辰川「いや…」

辰川(主人公補正薬で上乗せした分よりも格段に影響が出ている)

「終わったとでも思ったか?」

魔法陣が中央から裂け、そこから腕が飛び出した。
そして、それは辰川の喉元を鷲掴みにした。

辰川「…なっ!?」

火野(あの超高級光魔法を押しのけて来たのか…!?)

火野「所長!」

辰川「ぐっ…」

辰川の喉元に深々と勇者の指が食い込む。

辰川「がぁ…」

勇者「どうする!止めるか!」

辰川「…くない」

勇者「?」

辰川「…戦い方が、汚い。…勇者らしくないぞ」

辰川は苦し紛れに口端を上げた。

勇者「…」

勇者の表情は変わらない。
その代わり、より力強く首を絞めた。

辰川「…慣れないことをするなよ」

辰川は勇者を優しく、強く抱きしめた。

火野「あっ…」

火野には、それが親友の抱擁であり、強い友情の証の様に見えた。

辰川「これで最後にするよ」

勇者「!?」

辰川は勇者を抱き抱えたまま、強く羽ばたき、天井から見える空に向けて飛び立った。

辰川が屋外に出ると、辰川の周囲に幾重もの衝撃波が走った。

勇者「くっ!」

辰川「魔王よ…」

勇者「…!」

辰川「主人公補正が少し分かった気がする」

勇者「…!?」

辰川「これは悲しい能力だな」

勇者「辰ちゃん…?」

辰川「周りの存在も巻き込むし、望んだ結果も得られない」

辰川「なんもかんもしっちゃかめっちゃかにして、過ぎ去っていく」

辰川「まるで自然災害だ」

勇者「何を考えている!?」

辰川はある程度の高度に達すると、反転して地上に向けて急降下した。

辰川「物語の終わりとはなんだ?」

勇者「…それは」

辰川「主人公の死か?」

勇者「…」

勇者は言葉を切らした。

辰川「どちらが物語に必要か試してみようじゃないか」

垂直に堕ちる辰川の周囲に、またもや衝撃波が幾重にも、幾重にも走る。
音速を超えた2人の行く手に地表が見えてきた。

(借)災害損失 3,000,000 (貸)備  品 3,000,000

カッ!

ズ ド ド ド ド ド !

衝突の衝撃で周囲の地盤が浮いて割れた。
土煙が轟々と立ち上り、視界は確保できない。

火野「無茶苦茶だ…」

重役C「死んだかの?」

火野「あんたら今までどこに…」

重役A「地下に隠れとった」

火野「所長が戦ってる中で…!」

重役B「勘違いするな。研究結果を本社に送ってたんじゃ」

重役D「本来、お前の仕事だろう?」

火野「ぐぬ…」

重役A「辰ちゃんの気持ちを十分に理解しとらんようじゃの」

火野「…」

火野の体が揺らめいた。
図星をつかれてイラついているようだ。

重役A「まあ送っといて正解だったな」

火野「それはどういう…」

土煙が晴れてきた。
薄らいだ土煙の中に影が見える。

火野「そんな…」

重役B「主人公補正薬の力でも辰ちゃんは主人公になりきれんかったか」

重役D「やつは本当に主人公かもしれんな」

重役A「それに、やつの主人公補正は拡散されてない。むしろ、より高まった」

重役C「まだ物語が終わってないということか」

土煙が完全に晴れた。
衝撃の中心には傷だらけの翼竜が横たわっていた。
そして、そのすぐ横には目に涙を浮かべた勇者の姿があった。

【魔王城】

鎧谷「研究所から緊急連絡がありました」

犬崎「わん!(なんだと!?)」

鎧谷「10:20頃、勇者に襲撃されたようです」

犬崎「わん!(勇者?…しかし、調査結果では研究所防衛線を破れる者などいなかったではないか)」

鎧谷「それが…若き頃の魔王であると」

犬崎「わん(魔王…?しかし、やつはモシニアピで消息を絶ったはず)」

黒江「あのレベルまで弱体化されて、グラトニーに勝てるとは思えないわ」

女「いや、その人は多分おじいちゃん…先代魔王です」

犬崎「わん(何故そう言える)」

女「あたしの主人公補正が高まっているのを感じます。何故かは分からないけど…」

犬崎「わん(ドラマチックな展開に相応しい相手が来るとでも言うのか)」

鎧谷「誰が来るかは分かりませんが、そういう主人公補正の高まりは『クライマックス効果』というらしいです」

犬崎「わん(研究所の研究結果か?)」

鎧谷「はい」

岩村「『クライマックス効果』か…。まさにいよいよって感じか」

黒江「どうするの?間違いなくここに来るわよ?」

女「まず、全世界に研究所崩壊のニュースを流してください」

犬崎「わん(いいのか?ここが分水嶺になる。後戻りはできんぞ)」

女「いいです。おもっきし反旗の気勢を盛り上げちゃってください」

犬崎「わん(分かった。さぁ大詰めだ。企画課らしくやるぞ!)」

骨田「課長は今営業部長じゃないですか」

犬崎「わん(心は企画課なの!)」



黒江「いいの?」

女「はい」

黒江「魔界中の人間が敵に回るわ」

女「はい」

黒江「勇者が若い頃の魔王だと知れれば、魔王軍も翻るわよ」

女「大丈夫」

黒江「全世界が敵になるのよ」

女「…はい」

黒江「ねぇ、物語の終わりってなんなの?」

女「…多分」

黒江「…」

女「…魔王という、主人公と対局存在の死」

黒江「全ての物語に当てはまることじゃないでしょう」

女「そうですね…」

黒江「…」

女「そうあって欲しいです」




【辰川部長・ファイルズ編…完】

次で確実に終わらす


インチキしてまで自分の馬を勝たせていたおじいちゃんがなあ……

>>834
なんか必殺技でも出すみたいだなww

ボイドエクストリーム!

>>836
心の痛みを知らぬ者め!

次って次章だよな?次投下じゃないよな?
大穴で次スレ

おつ
女vsおじいちゃんか…
競馬場での出会いが懐かしい

4レスか…
ROM専の人が何人いるか分からんが減るに減ったな
もちろん悪いのは俺だが
さて書ききろう

いや俺もいるぞ

いや俺もいるぞ

連投スマン

挙手した方が良いのか?

いやせんでいいよ

最終回が近くなるとやっぱ寂しくなるね

【勇者と魔王の企画】

研究所崩壊のニュースは瞬く間に魔界を駆け巡り、大きな衝撃を与えた。

軍において魔王に次ぐ実力を持つ十傑集辰川の敗北。
魔王隷下機関中最大規模の魔法研究所の崩壊。

それをやり遂げたのが一人の人間の青年であるという報道も、事の重大さに拍車をかけた。

あるものは歓喜の声をあげ、またあるものは静かに喜びを噛み締めた。

まさに『 勇 者 』の到来であると。

魔王と対を為す存在。救世主。

かくして、抗戦の気運はたかまったのである。

この流れで書き込むと挙手したと同じに扱われちまうかもしれないけど、スレが立った頃からずっと読んでた。
完結楽しみにしてるよ。

せんでいいよと言いつつチラッチラッとこっちを見てたのがわかるから挙手してやれば?

自分が悪いとかいうなら黒江さんのチッパイをなんとかしてやれよ

>>849
え、これ以上削ったら穴があくよ

>>850
そっちに黒い影が駆けてったぞ

?「ちっぱい?美味しいですよ」

ニュースが大きく報道されてから2日後…

【魔王城】

黒江「報告書よ」

女「ありがとうございます」

黒江「人間達は各地で活発な抵抗運動を見せているわ」

女「予想通りですね」

黒江「あと魔族なんだけど、『勇者=魔王(元)説』を流したんだけど…」

女「みんな寝返っちゃった?」

黒江「ものの見事に」

女「まぁ…人間の小娘の求心力なんてそんなもんですよね」

黒江「一応、詳細なんだけどね」

黒江は女の隣に移動すると、報告書のページを繰り出した。

黒江「もともと旧魔王の影響力の強かったタスンブセ、バカワ地方は旧貴族を中心に離反」

黒江「スウビメ地方にある魔王軍補給処からは今後一切魔王城への補給を断つと連絡があったわ」

女「ひょーろー攻めですか」

黒江「笑い事じゃないわ。兵站まで潰されたら計画まで保たない」

女「…………ロボルーマは?」

黒江「あそこは、一番早く魔王軍の支配下になった人間の勢力だったわね」

女「はい」

黒江「支配する際、あなたは被支配層である人間に魔族と同様の地位を与えたわね?」

女「はい」

黒江「その結果、ロボルーマは魔族と人間の融和が著しく進んだ地域となったわ」

女「つまり…」

黒江「魔族と人間、力を合わせて仲良くあんたに反旗を翻しましたとさ」

女「ほほう」

黒江「他のちっさい地方も大概そんな感じ。みーんなあんたの敵」

女「…」

黒江「ビビった?」

女「いや、予想通りっす」

黒江「そうこなくっちゃ」

コンコン

犬崎「わん(入るぞ)」

女「かちょ…部長」

犬崎「わん(課長でいい。主人公補正薬は概ね市場に出回ったぞ)」

女「じゃあ敵さんもしっかり使ってくれますね」

犬崎「わん(ああ。あと、鎧谷が提出したダンジョン建設の報告書は読んだか?)」

女「はい。要望通りの出来でした」

犬崎「わん(褒めてやるなよ。後輩から褒められてもプライドが傷つくだけだ)」

女「そういうもんなんですかね」

犬崎「わん(そういうもんだ)」

女「あとはダンジョン内の配置ですね」

犬崎「わん(金子、牛宮、鳥谷を配置するんだろう?…難易度高すぎないか?)」

女「ラストダンジョンですよ?それぐらいしないと」

黒江(ノーセーブ、ノー回復で強ボス3体…下手な裏ダンジョンよりタチが悪いわ)

犬崎「わん(ラスボス戦の準備は………もう何遍もやったか)」

女「最終チェックまで済みましたよ」

犬崎「わん(そうか…そうだな)」

黒江「…」

おつ

このスレで終わるかな?

次スレに行ってもどうってことはないさ

女「入社試験を思い出すなぁ」

黒江「あら、どんな試験だったの?」

女「面接と『ダンジョン作り』」

犬崎「わん(『ダンジョン作り』?)」

女「はい。器だけ決められたダンジョンにイベントや宝箱、ボスを設置するんです」

黒江「私もやったわ。懐かしいなぁ」

犬崎「わん(私の頃は無かったぞ)」

女「黒江さんはどんなの作ったんですか?」

黒江「侵入する勇者の状況を聞いて、そのレベルに合った適切な調整をしたダンジョンよ」

女「へぇ」

黒江「面接官には『お利口さんなダンジョン』って言われたわ。今考えれば皮肉だったんでしょうね」

犬崎「わん(まぁそう悪く受け取ることもないだろうに。…お前は?)」

女「あたしは…」

女は去年の3月を思い出した。
徐々に春らしくなる陽気の中、就職が決まらずに焦燥する自分。
目の前の求人にすがって武蔵小金井まで出向いたことがまさかこのような結果になるとは思わなかった。

女「あたしは、今回のダンジョンみたいなのを作りました」

黒江「こんな厳しいダンジョンを?」

女「でも、面白そうでしょ?」

犬崎「わん(こんなときに面白いかどうかなんて…。いや、こんなときだからか)」

女「はい!楽しんで行きましょう!」

【魔王城ダンジョン】

カンカンカンカン!

ズガガガガ!

ダンジョン内に荒々しい音が鳴り響く。
勇者一行を迎え撃つための内装工事が行われているのだ。


鎧谷「そこの宝箱は二階の通路の途中に置いて。中身は邪神の槍。未識別状態でね」

ドカタ系魔物「あいよ」


粉塵の舞う現場で、黄色いヘルメットを被った鎧谷が大きな声をあげた。


鎧谷「ちょっと!バリアはまだなの!?」

岩村「…まぁそう急かすな」

鎧谷「岩村さん。…四階のトラップは?」

岩村「落とし穴が1階とうまく繋がらないらしい。俺は配線を見てくる」

鎧谷「お願いします」

骨田「鎧谷さぁん!」

鎧谷「どうした?」

骨田「宝箱用アイテムなんですけど、発注したやつと違います」

鎧谷「ええー、こんな時に面倒な…。HP回復系?」

骨田「いや、状態異常回復系です」

鎧谷「ならそれ入れちゃえ!」

骨田「はい!」

アルバイト系魔物「チーフさん。お弁当届きましたよ」

鎧谷「なら休憩!」

ダンジョン内はガヤガヤと魔物達の談笑の声で満たされていた。
鎧谷は幕の内弁当らしき物と紙コップに注がれたお茶のような物を受け取ると、転がっていた空の宝箱に腰かけた。

鎧谷「ふぅ…。進捗状況は?」

岩村「宝箱は配置完了。トラップは9割程」

骨田「ダンジョン内をうろついてもらう予定だった魔物さん達は研究所崩壊の件でほとんど契約解除」

鎧谷「ヤッパリみんな寝返っちゃったかぁ」

骨田「意思のない無機物系とバーサーカー系だけしか運用できないそうです」

鎧谷「このドカタやアルバイトの魔物は?」

岩村「ここが攻められる前に撤収するそうだ。貰った銭分は仕事するってよ」

鎧谷「ありがたいですね」

岩村「15時には金子さんと牛宮さんと鳥谷さんがくるんだろ?」

鎧谷「はい。控え室の準備は?」

骨田「一応ボス部屋のすぐそばに作りました」

鎧谷「来たらちゃんとお茶だしてよね」

骨田「はい」

岩村「…」

鎧谷「なんですか?」

岩村「…いや、お前ちゃんと仕事できるんだなぁって」

鎧谷「やるときゃやりますよ」

骨田(普段のスケベと大違い)

鎧谷「あん?」

骨田「なんでもないです」

ああ、鎧谷はエリートだったなそういえば

間違って届いた状態異常回復系アイテムが勇者の逆転勝利の鍵になっちゃったりするんだろうか?主人公補正的に考えて

ダンジョンが着々と築き上げられる。
禍々しさに彩られた城壁。内包された意思は敵意か。
その真意は魔王のみが知るだろう。


時は刻一刻と進む。
勇者はロボルーマの地に足を踏み入れた。

【ロボルーマ城下町】

勇者「これは…!?」

勇者が城門を潜ると、大勢の民衆と大勢の魔物が拍手で迎え入れた。

国民「勇者様が来たぞー!」

魔物「魔王様ぁー!」

津波のような出迎えに、勇者はたじろいだ。
すると、群集の中から、一体の魔物と一人の人間が進み出てきた。

老人「ようこそおいでくださいました」

魔物「お待ちしておりました」

勇者「あんたたちは?」

老人「私はロボルーマ城下町の町長兼、ロボルーマ統合反乱政府の長です」

勇者「統合反乱政府…?」

町長「あなたのおかげです」

勇者「意味が分からんのだが」

町長「魔王立研究所を破壊なさったでしょう。あれで徹底抗戦の機運が高まったのです」

勇者「…」

町長「魔王であり、人に近い存在。そんなあなたを我々は一つの象徴とした」

勇者「象徴…?」

町長「融和と反骨。我々人間と魔族は手を取り、巨悪に立ち向かわなければならない」

勇者(わけがわからん)

勇者「そっちのは?」

年老いたドワーフは一歩前に出ると勇者を真っ直ぐ見据えて話し出した。

魔物「お久しぶりです。魔王様」

勇者「…見覚えがある。確か」

魔物「魔王軍補給処長です」

勇者「久しいな。確か、貴族の出だろう」

補給処長「その身分は捨てました。今はその私財を平和のために使っています」

勇者「何がそうさせる?」

補給処長「あなたが施した300年の治世。争わず、待ちを命じたあなたのおかげです」

勇者「それは…」

勇者は言葉に詰まった。
勇者になるために主人公補正を手に入れようとした300年間。
そのために多くを利用し、罪もない人々や魔族を研究材料とした長い年月。
結局開き直り、魔王として死のうと決意した晩年。
今、それの後始末のため勇者として生き始めた自分。

彼らはそれをことごとく勘違いし、希望の目を向けている。
勇者はまた大きな過ちを犯しているような気持ちになった。

勇者「あまり買いかぶらないで欲しい」

補給処長「何をおっしゃいます!あなたの偉大な功績に皆一様に期待しておるのです」

勇者(そんな権利は…わしには無い)

補給処長「どうか、私達を率いて、あの魔王城にいる小娘を討ち倒して頂きたい!」

勇者(これもわしが300年で築き上げた「業」のようなものか)

勇者は半ば絶望し半ば納得すると、うなだれるように頷いた。

補給処長「魔王様…!いや、勇者様!」

町長「旗じゃ!旗を揚げよ!」

城門に高々と旗が掲げられた。
春風に翻るそれが大きくはためくと、民衆は大きな歓声をあげた。

国民「勇者様ー!」

魔物「いいぞー!」

勇者「良いことがあるものか…」

勇者は小声で呟いた。

勇者「余計なもん巻き込んじまった…」

町長「ついては勇者様、どうかこの者達を魔王討伐に役立たせて頂きたい」

勇者「?」

町長が手を挙げると、群集が割れ、奥から一体の魔物と2人の人間が前に出てきた。

勇者「こいつらは?」

補給処長「自己紹介をしなさい」

高そうな鎧に身を包んだ屈強なガルーダが甲高い声をあげた。

屈強なガルーダ「俺は羽田。元魔王軍有翼師団で最強の空挺遊撃部隊の隊長をやっていた」

勇者「おお、鳥谷の息子か」

羽田「親父の話はするなよ。権力に縋るようなクソ親父には反吐が出るぜ」

勇者「お前の戦闘力の高さは聞いてるよ。十傑集にも匹敵するとな」

羽田「よせよ。…元魔王でも、今は対等だ。タメ口でいかせてもらうぜ」

勇者「はぁ」

続けて、黒いマントに身を包んだ男性が前に出た。

勇者「ほう」

男性「はじめまして、私は黒澤と申します」

勇者「高い魔力だ。並みの魔導士ではあるまい」

黒澤「お見通しですか」

勇者「察するに…タスンブセの集落の者か」

黒澤「はい。古代より魔導研究を生業とする一族出身です」

勇者「300年前は手を焼かされたよ」

黒澤「今はそれ以上に手を焼かせる自信がありますよ」

勇者「…そうかい」

勇者は最後の一人を見た。
純白の修道着に聖書を持つ少女、一目で教会の神官である事が解る。

神官であろう少女「あ、あの…」

勇者「…」

神官であろう少女「わたしは、聖ロボルーマに仕える…」

少女の声はそこからどんどん小さくなり、聞こえなくなってしまった。
勇者は困り果てて、町長に助けを求めて視線を送った。

町長「彼女は14歳の若さで聖ロボルーマ寺院の大神官となった神谷です」

町長「洗礼を受ける前から強い加護を受けていましてな。神童として今まで修行に励んできました」

神谷「よろしくお願いします……」

勇者「え?あ、うん…」

補給処長「この者らを魔王討伐にお役立てください!」

勇者「え?いらん」

補給処長「なんと!」

町長「必ず役にたちましょう!」

勇者「ほう」

勇者は羽田の肩を触ると、一瞬で関節を外した。

羽田「ーーーー痛ッッ!」

そして、黒澤の頭を撫でると圧倒的な魔力で彼の意識を狂わせた。

黒澤「う、うわぎゃゃぁぁぁ!」

それを見ていた神谷の周りに自然と神の加護が形を成し、壁のようにそそり立って彼女を守った。

勇者「よっ」

しかし、勇者はそれを紙のように軽々しく破り捨てた。

神谷「ー!?!?」

神谷はガクガクと膝を震わせると、その場にへたり込み、失禁した。

勇者「これが役に立つって?」

町長「な、なんと…」

補給処長「圧倒的…」

勇者「余計なことをしなくていい」

補給処長「え?」

勇者「もう物語が終わるんだ」

勇者「中途半端な新キャラはいらない」

町長「そんな!」

勇者「わしにまかせろ」

勇者はそう言うと、剣を地面に突き立てた。

勇者「魔王の件はわしにまかせろ!おまえ等は最期まで見ていればいい!」

勇者の声はロボルーマにいる全ての存在まで深く響いた。

流石魔王

鳥谷さんとこの息子さん、名字が違うんだ
婿養子にでもいったのかな

つか辰川部長どうなった、生きてるよね?

おつ
ちょっと高田馬場まで行ってくる
神谷ちゃん手当てしなきゃ!!

年末忙しすぎワロタ

それは仕方ない

【東京都小平市某所】

誰もいないリビングには、うっすらと埃が積もっている。

ガスコンロにはいつから火がつけられていないのだろう。

抜けきらない生活感が、寂しさに拍車をかけている。

キシッ

ふと、何かが軋むような音が響いた。

リビングの概ね中央。

それなりな大きさのテーブルの上。

一見して、何もない空間。

そこに突如ひびが入った。

ぎしっ…

パキン…パキン!

ひびは次第に大きくなり、数分もしない内に大きく割れた。

パリンッ!

間もなく、割れ目から10本の華奢な指先が生えてきた。

そして、その指は割れ目の縁を掴むと、無理矢理それを広げた。

「ふんぬぅ!」

バリバリバリ!

直径1メートル程に口を開けた次元の穴から女性が顔を覗かせている。

みこにゃん「あら?ここは…?」

魚沼「…まだ地獄?」

早乙女「分からないわ」

みこにゃんは窓の外を見た。

見慣れた玉川上水のせせらぎが脳裏の確信を裏付ける。

みこにゃん「…ただいま」

魚沼「え?」

早乙女「まさかここは…」

みこにゃん「人間界よ。この家は私の家」

魚沼「都合が良すぎる」

早乙女「なんでもいいわよ。帰って来れたなら」

早乙女はガクリとうなだれると、そのままソファに突っ伏した。

早乙女「とにかく疲れた」

魚沼「…同じく」

みこにゃん「何か食べる物を用意するわ。それまでシャワーでも浴びてきたら?」

早乙女「そうさせてもらうわ」

早乙女と魚沼がシャワーを浴びている音が、廊下越しに聞こえる。

みこにゃん「日付は…」

既に、地獄へ弾き飛ばされてから約4ヶ月が経っていた。

みこにゃん「あら?」

流しに使った痕跡が見られる。
あの子専用の茶碗と箸が乾燥機の中にあった。

みこにゃん「…生きてるのね」

みこにゃんは無性に嬉しくなった。
と、同時に、不安も再燃した。

みこにゃん「『ロボルーマの秘宝』には上手く向き合えたかしら」

みこにゃんは、物思いに耽ろうと試みた。
しかし、すぐにやめた。

みこにゃん「お膳立てはしたわ。あとはやることやって帰ってきなさい」

ガチャ

早乙女「生き返ったわ」

魚沼「狭いお風呂だったけど」

みこにゃん「3日も食べてないからおなか減ったでしょ?何か食べる?」

みこにゃんはエプロンを着ると、棚から火炎放射機を引きずり出した。

早乙女・魚沼「ひぃっ」

みこにゃん「雑炊とかでいい?得意なの」

早乙女・魚沼「……かか、カップめんで」

みこにゃん「あら残念」

【魔王城:監視室】

黒江「どう?」

骨田「周囲を完全に包囲されました。地平線まで人・魔物・人・魔物…」

黒江「対空防御は?課長が魔力供給してバリア張ってるんでしょ?」

骨田「さすが十傑集ッスよ。ハーピーもドラゴンも跳ね返してます」

黒江「地上は?」

骨田「ダンジョンの入口で立ち往生してます」

黒江「中に入ってるの?」

骨田「入ってます。けど、全員返り討ち。難易度通りの結果です」

黒江「そうね。たくさん計算したんだもの…。ここまでこれる者は限られているわ」

骨田「……………黒江さん!包囲陣が割れています」

黒江「まるで魔王城まで続く道のようね」

骨田「『道』が伸びている先は…ロボルーマ方面」

黒江「おいでなすたっわね。……唯一の『攻略者』が」

【魔王城前:統合反乱政府CP】

魔物「報告します。未だ1階より奥に進行できません!」

人間「高度な罠も至る所に張り巡らされております」

魔物「なお、2階への階段へは強力な魔物が2体待ちかまえているそうです」

人間「報告おわり。失礼します」

補給処長「ダメだ…!牛宮と鳥谷が階段を抑えているとは!」

町長「衰えても十傑集か…凄まじいですな」

補給処長「他人事の様に言っている場合ですか!」

町長「……そうは言っても」

補給処長「今、隣の仮設兵舎では負傷兵でいっぱいだ…」

町長「異常な難易度のダンジョンですな…」

補給処長「死ななかったのが奇跡だ…」

CPの入口が静かに開いた。

補給処長「おお、お待ちしておりましたぞ」

町長「勇者様…!」

勇者「…苦戦しているようで」

勇者「一応、状況聴いてもいい?」

町長「魔王城包囲は完了しました。しかし、やつらの防御もかなり烈しく…」

勇者「空は?」

補給処長「魔力のバリアが張られています。おそらく供給源は十傑集」

勇者(犬崎か)

町長「勇者どのは空を飛べたりします?」

勇者「無茶言うな…。地上は?」

町長「バリアは張られていません。ダンジョンには入れます」

勇者「…くくっ」

勇者はニヤリと微笑んだ。

補給処長「?」

勇者(しっかり正規の手続きを踏んで登って来いって事か。『勇者』らしく…)

補給処長「しかし、1階の階段に牛宮と鳥谷がいます」

勇者「ほう。殺しにかかってるねぇ」

補給処長「それが幸いなことに1人も死んでおりません」

勇者「幸いなことに…か」

町長「?」

勇者「いや、わしが行こう。他の者は下がって見てろ」

補給処長「おお!」

町長「頼みますぞ!」

【ラストダンジョン1階】

鳥谷「弱え弱え!人間も魔物も腑抜けばかりだ!」

牛宮「…」

鳥谷「なんだ?牛よ!お前も腑抜けたか?」

牛宮「いや、鍛錬は300年間欠かしてない。昔のことを思い出していただけだ」

鳥谷「…こうして2人で肩を並べるのも久しぶりだな」

牛宮「いつも私が尻拭いさせられていた」

鳥谷「お前が牛みたいにすっトロかったからな」

牛宮「…」

鳥谷「おい!冗談だ!怒るなよ!」

牛宮「いや、怒っていない。………お前は最終決戦の時にどう思った?」

鳥谷「……それは」

牛宮「いや、言わなくていい。きっと考えていることは同じだったはずだ」

鳥谷「……牛宮」

牛宮「すまない。今までありがとう」

鳥谷「よせよ。……!」

強烈な魔力の奔流。
懐かしさと畏怖を孕んだ生命力の津波。

牛宮「さぁて」

鳥谷「中ボスらしく、お坊ちゃまの相手をしますか」

通路の門に手がかけられた。
見慣れた指先に2体の魔物は目頭が熱くなっていく。

勇者「…坊ちゃまはやめろと何度も言ってるだろうに」

【魔王城:3階控え室】

ゴ ゴ ゴ ………
揺れが収まった。

金子「終わったようですね」

女「みたいですね」

金子「どっちが勝ったと思います?」

女「…」

金子「聞くだけ無粋か。…ここにいたらマズいんじゃないんですか?」

女「そろそろ上に行きます」

金子「あの」

女「はい?」

金子「主人公ってどんな気分?」

女「…それは」

女は言葉に詰まった。

女「………主人公にならないと分からないと思います」

金子「ですよね」

女「じゃあ頼みます」

金子「最後に1つ」

女「はい?」

金子「私は『負け』ればいいんだろう?」

女「全力でやってください」

女はそう言うと控え室を出て行ってしまった。

金子「…聖谷」

聖谷「はぁい?」

金子「結局、我々は物語の中のピエロでしかなかったようだ」

聖谷「はぁ」

金子「ワインある?」

聖谷「はいはい。タスンブセ産48年物ですよ」

金子「いいね」

聖谷は鞄の中からワインのボトルとワイングラスを取り出した。

金子「ワイングラスは2つにしてくれ」

聖谷「へ?」

金子「ピエロの友人がもうすぐ1人来るんだ」

熱いな…

ところで聖谷をヒジリヤって読んじゃうの俺だけ?

続きが気になって[ピーーー]ない

みこにゃん!みこにゃん!

【魔王城:玉座】

鎧谷「ライト、BGM、カメラ最終点検!」

岩村がスイッチを押すと、妖しげな灯火が煌々と玉座を照らした。

岩村「ライトよーし」

程なくして、BGMが流れた。
骨田は鎧谷に顔を向けると、親指を立てた。

骨田「BGMよーし」

鎧谷はその声に頷くと、自らカメラを回した。

鎧谷「カメラよーし」

三人は顔を見合わせた。

鎧谷・岩村・骨田「最終点検よーし」

黒江「…準備完了ね」

玉座の間の偉そうな扉に寄りかかりながら、そう呟く黒江の姿があった。

鎧谷「主役は?」

黒江「どっち?」

鎧谷「魔王様の方です」

黒江「お色直し中」

鎧谷「…………そうですか」

黒江「何か言いたいことがありそうね」

鎧谷「……」

骨田「……」

岩村「黒江」

黒江「なによ」

岩村「本当にいいのか?」

黒江「………」

黒江「いいも何もないでしょ」

岩村「あれは死ぬ気だぞ。主人公を終わらせるために」

黒江「あの子はそれを望んでいるわ」

鎧谷「これは、いや、ここまでの全てが仕立て上げられたドラマ」

骨田「シナリオ通りに死ぬのが幸せなんですかね…」

黒江「………あの子の思い通りにやらせてあげましょう」

鎧谷「でも………」

鎧谷は言葉を切った。
黒江の頬を伝う涙が言葉を喉で押し留めたからだ。

岩村「黒江…」

黒江「そりゃ私だって死んで欲しくは無いわ」

骨田「…」

黒江「でも、私たちじゃ、あの子を主人公から助けてやれないじゃない」

黒江は顔をクシャクシャにして泣いている。
心にせき止められていた感情がゆっくりと溢れ出していた。

黒江「…あの子はずっと主人公補正に流されてきたわ。最期くらい自分で「決め」させてあげて」

骨田「…黒江さん」


玉座の間の扉が開いた。

女「すんません!遅れました!」

黒江「…!?」

黒江は慌てて目をこすると、涙目がバレないように顔をしかめた。

黒江「あんた。用意してた衣装は!?」

女「ああ、あの悪趣味な…」

黒江「あんたが魔王らしい衣装がいいって言うから45万G(1G=10円)もするやつを買ったのに…」

骨田「45万G…!」

岩村「…目眩がしてきた」

女が着ていたのは、初任給で買ったスーツと同型のものであった。

黒江「…新しく買ったの?」

女「黒江さんが選んでくれた時、2着目が10Gだったじゃないですか。それです」

黒江は、そんなこともあったかとなんとなく納得した。

女「大事な時用に2着目は残しておきました」

黒江「…魔王らしくないわ」

女「でも、黒江さんが選んでくれたから…」

黒江「…///」

女「似合ってます?」

黒江「わ、私が選んだんだから当然でしょ!スーツに負けないくらいビシッとしっかりやりなさいよ!」



岩村「魔王らしさとかの話がすり替わってる」ヒソヒソ

鎧谷「毎度うまーく誘導されてますよね」ヒソヒソ

骨田「尻に敷こうと思って敷かれてるタイプ」ヒソヒソ

黒江「うっさい!」

450万円もする魔王の衣装って、小林幸子みたいな?

100円のスーツってすぐ破けそう

>>889
何か問題でも?

このスーツ水かけると透けるらしいな

あなた方が何を勘違いされているか分かりませんが、ここで言うスーツとは核エネルギーで動くモノです

核エネルギーで動く
水に濡れると透ける100円のスーツか
どんなのだろうISか?

モビルスーツ?
100円でガンダム買えるんだ、魔界いいなあ

バッカお前ら、偉い人の着る『スーツ』と言ったらレッツパーリィなアメリカ大統領が着るあのスーツしかないだろw
あれの動力源は大統領魂だけどw

真面目な話、スーツの青山とかコナカとかで一度に2着のスーツ買ったら2着目は半額とかあるでしょ?
そういうつもりで書いてます

濡れたら透ける、すぐ破れるそんなスーツあったら石原さとみに着て欲しいわ

>>896
>>1の女の子が可愛く見える理由が分かった

すぐに破けたり透けるスーツって需要ありそうだな

【ラストダンジョン3階】

勇者は広いホールに出ると周りを見渡した。
ホールは辺り一面が魔法石で補強されている。
あからさまに戦闘を想定されていることが分かる。

勇者「……!」

どうやらホールの中央に円形のテーブルがあるようだ。
そのそばには人影が見える。

勇者「粋な計らいのつもりか?」

吸血鬼はテーブルに置かれた2つのグラスにワインを注いでいる。

金子「お気に召しませんでした?」

勇者はテーブルの側まで来ると、ワインの銘柄を確認した。

勇者「タスンブセの48年か」

金子「好きだったでしょう?」

勇者「ああ、いいね」

金子「座ってください」

勇者「…ああ」

金子は2つのグラスをワインで満たすと、片方を勇者の前に差し出した。

金子「乾杯」

勇者「……」

金子「どうかしました?」

勇者「いや、乾杯」

チンっという高い音がホールに少し響いて消えた。

金子「どうです?」

勇者「いい香りだ。味もスッキリしている」

金子「タスンブセワイン史上最高傑作と言われるだけある」

勇者「2人で飲むのは久しぶりじゃないか?」

金子「300年ぶりですね。戦争が終わる一週間前以来」

勇者「懐かしいな…」

勇者はワインに自分の顔を映した。
300年前の王子様がそこにいる。

金子「勇者になれた気分はどうです?」

勇者「………さぁ?」

金子「言い換えましょうか」

金子はグラスを置くと足を組み直した。

金子「『主人公』になれた気分は?」

勇者「…さぁ?」

金子「ほう」

勇者「多分、ワシらのコンプレックスを満たすものじゃないよ」

金子「……」

勇者「あの時、ワシよりも遥かに『主人公』に憧れたお前を満たすようなものじゃない」

金子「そうですか」

勇者「ワシも誰よりも憧れ、誰よりも絶望したつもりだったが…」

金子「…」

勇者「金子、色々とすまんかったな。お前をやっと理解できた気がするよ」

金子「…魔王様!」

勇者「『物語』が終わったら、また会おう」

金子は一瞬顔を歪ませた。目は赤く充血し涙目になっているように見える。
しかし、次の瞬間にはそれを悟らせまいとグラスのワインを飲み干した。

金子「…ふう」

勇者「あああ…、もったいない」

金子「さぁやりますか」

金子は立ち上がると膝を曲げて屈伸した。

勇者「まだ飲み終わってないんだけど…」

金子「早くいかないと上で待つ白雪姫が怒りますよ」

勇者「そういう芸のかかったキモい台詞も久しぶりだな」

金子「き、キモ…!?」

勇者「クソ真面目で、キザで、ナルシストで…」

金子「そ、そんな風に私を見ていたのですか!?」

勇者「ああ…。すまんな」

金子「ぐ、グヌヌ!」

金子の魔力が渦巻く!

勇者(しかし、辰川やワシと匹敵する実力を持っていた)

勇者(極上の喧嘩トモダチだったはずだ)

勇者(もともと、頭を使うタチじゃないだろうに)

金子の手から、大きな鎌が召還された。

金子「行きますよ!」

勇者「殴り合った方が早いタチだろう!」

さすが主人公だな

ちょっと年明け忙し過ぎワロタ

んん?

待ってるよ

【魔王城:玉座の間】

勇者と金子が戦い初めてから幾分もしないうちに音が消えた。

女「…」

勝ったのは確実に勇者だろう。

それらははじめから仕組まれた物語だから。

女「黒江さん」

女は隣に立っていたダークエルフに目配せした。

黒江「分かったわ」

黒江はLEDのペンライトをつけると、部屋の隅に向かって八の字に振った。

すると、部屋の隅の小窓から、LEDライトが三回点滅するのが見えた。

黒江「最終章?」

女「最終章ですよ」

玉座の間の扉が厳かな音をたてて開いた。

勇者「そう、これで終わりだ…」

勇者が玉座に向かって脚を進めると、部屋の所々に設置された燭台に紫色の火が灯った。

勇者「…」

しばらくすると、悪魔的でありながら、上品なBGMが流れ始めた。

女「…」

そして、対峙。

魔王と勇者の距離は2メートルも無い。

女「おじいちゃん」

勇者「嬢ちゃん」

女「…」

勇者「…」

二人の間に長い沈黙。

女「ベストなシチュエーションでしょ?」

勇者「あからさま過ぎるでしょ」

女「……そう?」

勇者「意識しすぎ」

勇者「何あの紫色の灯り」

女「いや、その、魔王っぽいかなって」

勇者「BGMも聞いたことある感じだし」

女「あ、あう」

勇者「センスがもう、枯渇してる」

女「ーっ!」ガビーン

勇者「魔王っぽいだけかなって」

女「…お、おじいちゃんだって同じような演出したでしょう!?」

勇者「あれは代々続く歴史。まさに様式美」

女「古くさいセンスは変わらないじゃん…」

勇者「口の減らん新社長だ」

女「…」

女は下をペロリと突きだすと、顔をしかめた。

勇者はそれを見ると、苦々しく笑ってみせた。

勇者「……助けに来たよ」

女「知ってる」

勇者「わしが勇者になったのも想定内?」

女「…」

女は小さく頷いた。

勇者「すべては主人公補正か」

女「…うん」

勇者「話が長くなった」

女「じゃあ、始めましょうか」

勇者「物語の終わりを」

いよいよか…

長かった

勇者は剣を抜いた。

装飾も無い、銘も碌も無い。
ただひたすら普通なだけの鋼の塊。
しかし、女にはそれが伝説に詠われるような名刀に見えた。

女「…きっと伝説の剣なんて、もともとは120Gぽっちの普通の剣だったんでしょうね」

勇者「大事なのは材料でも作り手でもない。それにまつわる「物語」だ」

勇者はそう言うと、剣を女に向かって投げた。

ズ ヌ ン ッ!!

生々しい音ともに、玉座は真っ二つに割れた。
そこに女の姿はない。

勇者「!?」

いつの間にか勇者の後ろに女がいた。

女「そう、その剣の様に、EDにも「物語」が必要だわ」

勇者「…そうだな」

女「主人公補正が納得するような、熱い物語」

勇者「必要なのは伝説級の超熱展開…!」

ゴ カ ッ…!
女はひのきのぼうで勇者の後頭部を思い切りひっぱたいた。
勇者はその衝撃で、壁に叩きつけられた。

女「本気の命の取り合いがね!!」

後にこのひのきのぼうも伝説の棒として奉られるんだろうなぁ

壁は音をたてて崩れている。
土煙はまだ晴れない 。

女「…」

「『超 高 級 火 炎 魔 法』!」

   ゴウッ!!

突如、煙の中から巨大な火炎が吹き出し、蛇の様にうねりながら女を囲んだ。

女「…っ!」

勇者「『超 高 級 氷 結 魔 法』!」

続けて、女の周囲の空気が一瞬で凍結し、厚い氷が四肢を絡めた。

女「…!!?」

勇者「二大魔法の同時詠唱だ!どちらか一方を相殺しても、一方が襲う!」

女「ぐっ…!」

勇者「さらに、2つの相反する魔法は相乗的に威力を高め合う!」

勇者の言っていることは本当だろう。
あからさまに勢いを増す2つの魔法を
身に受け、女はそう考えた。

勇者「それは新たな魔法を産む!」

明らかに魔法の性質が変容した。
2つの魔力がせめぎあう境目に大きなエネルギーが感じられる。

女「これは…!!」

勇者「名付けて『極 大 消 失 魔 法』!!」

女(ど、どこかで…)

   … カ ッ !

勇者「ふははははは!消えて無くなれい!」

その瞬間、辺りに光が満ちた。
と同時に、玉座の間にとてつもない衝撃波が走った。

女(聞いたことあるような…)


     ズオ オ  オ オ   オ !!

衝撃波は未だに鳴り止まない。
勇者は、自ら張ったバリアの中で笑みを浮かべていた。

勇者(ノリでやったわりにはすごい威力だ…)

勇者(ダイの大冒険を読んで思い付いたことは黙っておこう…)

【玉座の間:管制室】

ズ オ オ オ オオ オ !

鎧谷たちが控える管制室は急遽設けられたにしては丈夫にできていた。
鎧谷は耐魔ガラス越しに、衝撃波の凄さを目の当たりにしていた。
その手にはミルクと砂糖がたっぷり入ったコーヒーが握られている

鎧谷「うわぁ、すごいっすねぇ」

岩村「いやもうね、あの人完全に全盛期戻ってるよ。あ、それカン」

骨田「うわ、ドラ4じゃないですか」

鎧谷「心配ですか?」

黒江「別に。開始3分で終わるような試合はしないでしょ。それポン」

岩村「…は?」

骨田「黒江さん。何やってるんですか?」

黒江「…え?」

黒江が卓の端に寄せた牌は3つとも違う絵柄であった。

岩村「はい、チョンボ」

骨田「4000オール」

黒江「ちょっ…あああ!」

黒江は卓を思い切りひっくり返した。

岩村「あー!」

鎧谷(めっちゃ心配してるのね)

黒江「おら!マジメに応援するわよ!」

岩村「応援って…どっちの?」

黒江「それは…」

鎧谷「『魔王』として死ぬつもりの彼女ですか?」

黒江「…」

骨田「あの、話の途中にすみません。1~3までのサブカメラ全部壊れました」

黒江「えっ、早っ」

骨田「あと、耐魔ガラスってヒビ入るんですか?」

鎧谷「え?」

骨田「ほら」

パキッ!
骨田の指の先で耐魔ガラスが音をたてた。

鎧谷「…」

黒江「100%ダメでしょう」

骨田「ですよね」

鎧谷「逃げ…」

パリンっ!

鎧谷が指示する間もなく、ガラスは音をたてて割れた。

おつ



衝撃波が止んでから幾分の時間がたっただろうか 。
辺りは奇妙なまでに静寂に満ちている。

黒江「…?」

瓦礫の下から黒江が這い出して来た。

黒江「これは…」

数分前まで玉座の間と呼ばれていたものは跡形も無くなっていた。
天を仰ぐと、魔界の赤黒い夜が見える。

黒江「玉座の間だけで40億Gかけて補強したのよ…。超耐魔加工、ミスリルコーティング、壁は1000㎜のタングステン…」

黒江はふらりと立ち上がった。

黒江「高級魔法だって、ミサイルだって跳ね返す造りなのよ…」

理解を越えた破壊力。
黒江ができるのはただ呆然とすることだけだった。

黒江「物語の終わりにはどれだけエネルギーが必要なのよ…」

勇者「分からん」

黒江「…!?」

勇者「ただひとつ言えるのは…」

ガラリ…

瓦礫の山から立ち上がる影が1つ。

女「…よいしょ」

勇者「まだ足りないらしい」

黒江「あなた…」

女「黒江さん…。カメラは?」

黒江「えっ?」

黒江が辺りを見渡すと、すぐそばの瓦礫が崩れた。

岩村「…あるぞ」

鎧谷「カメラは無事だ」

骨田「機材も無事っす」

女「オンエアー頼みます」

鎧谷「黒江さん」

黒江「わ、分かったわ!任せなさい」

黒江は女に向けて親指を立てた。

勇者「どういうつもりだ?」

女「この戦いを全世界に放映するの」

勇者「…?」

女「世界中の全ての存在をこの物語に巻き込む…!」

勇者「ほう…!そいつは…!」

勇者は大きく笑みを浮かべた。

勇者「そいつは効きそうだ!」

メドローアさんぱねぇっす

骨田が送信用のアンテナを掲げると、鎧谷はカメラの電源を起こした。

鎧谷「全世界の電波をジャックするにあたって、なんかカッコいい決め台詞みたいなの言った方がいいですよね?」

岩村「……いらないんじゃないか?」

鎧谷「言いたいです」

鎧谷はいつになく真剣な眼差しを岩村に送っている。

岩村「えぇ~」

黒江「いいわ!言いなさい」

鎧谷「『ふははははは!よく聞け魔王様に歯向かう者共よ!貴様らには魔王様のお力を目に焼き付かせる必要があるようだ!』」ドヤァ

骨田「あ、まだアンテナにコード差してて無いですよ」

鎧谷「……」

黒江「……この詰めの甘さ」

岩村「……大事な時にダメだよな」

骨田はアンテナにハーネスを差し込むと、鎧谷に向かって親指を立てた。

骨田「どうぞ!」

鎧谷「……いや、もういいや。ごめん」

黒江「準備は良いわよ!」

女と勇者は向かい合ったまま、動かずにいた。

女「ありがとうございます!!」

おつ

復活!?

復活ぅ!?

スイッチが押されると、世界中の回線が一瞬停止した。

あまりにも静かな時間が魔界、人間界双方に訪れた。

まるで、リセットボタンを押したような静寂。

間もなく、テレビ画面が一斉に変わった。

禍々しい空。鈍色の雲。稲光。

そして、勇者と魔王。

幼き頃、誰もが夢見たラストバトル。

懐かしさを孕んだ運命の決着。

誰もが、無意識のうちに気付いた。

   「これで終わる」


物語は全てを取り込んだ。

【 魔王城近辺】

司令部の中はモニターで繰り広げられる戦いに熱中していた。

町長「こ、これは!?」

補給処長「上で行われている戦い!?」

町長「誰が流している!?」

人間「分かりません!何者かにジャックされています」

補給処長「ジャックって…これはスタンドアロンだろうが!?」

魔物「明らかに魔法によるものです!それも超広域!超強力!電源を抜いても消えません!」

補給処長「な、何が目的で…」

町長「見ろ!勇者様が圧されている!」

補給処長「なんだと!?」

町長「が、頑張れ!そこだ!」

補給処長「いいぞ!」

長「やれー!」

補処長「ん?」

Ω「どうした?」

補「いや、あんたそんなに影が薄かったか?」

Ω<補給処長こそ

Ω<え?

【立川】

立川のとあるバー。

駅前から異常な喧騒が聞こえてから数分。

喧騒はすでにグラスの氷の音よりも小さくなっていた。

姉川「魔王ちゃん…」

姉川「こんな最後を求めていたの?」

壁に備え付けられた液晶モニターには勇者と魔王の激闘が写し出されている。

ふと、耳を傾けると、外の喧騒が完全に消え失せた。

街頭モニターに釘付けになっていた人々はどこに行ってしまったのだろう。

姉川「…拒絶されたのね」

姉川はグラスにバーボンを注ぐと、一気に飲み干した。

姉川「物語に」

姉「いや、許容?」

Ω<どちらにしよ、これが主人公補正なのね

カランという音とともに姉崎の音が消えた。

【立川】

立川のとあるバー。

駅前から異常な喧騒が聞こえてから数分。

喧騒はすでにグラスの氷の音よりも小さくなっていた。

姉川「魔王ちゃん…」

姉川「こんな最後を求めていたの?」

壁に備え付けられた液晶モニターには勇者と魔王の激闘が写し出されている。

ふと、耳を傾けると、外の喧騒が完全に消え失せた。

街頭モニターに釘付けになっていた人々はどこに行ってしまったのだろう。

姉川「…拒絶されたのね」

姉川はグラスにバーボンを注ぐと、一気に飲み干した。

姉川「物語に」

姉「いや、許容?」

Ω<どちらにしよ、これが主人公補正なのね

カランという音とともに姉崎の音が消えた。

【小平市某所】

魚沼「これは…!?」

早乙女「みこにゃん!」

みこにゃんは箸を落とした。

魚沼「この人、教科書で見たことある。昔の魔王様だ」

早乙女「こっちの女の子はみこにゃんの娘さんでしょ?」

みこにゃん「…」

早乙女「様子がおかしいわ…。どっちが魔王でどっちが勇者か…」

みこにゃん「これが、あなたの求めた結果なの?」

魚沼「え?」

みこにゃん「それとも…これも主人公補正が決めた運命なの…」

早女「そんなこと言ってる場合!?」

魚「あれ?」

早「体が…」

みこ「存在が物語に圧迫されている」

Ω「声が」

Ω「…」

み「それでも、私はあなたを信じるわ…」

【王立魔法研究所】

辰川「な、何が起きている!」

重役C「分からん!」

重役A「今調べとる!」

辰川は液晶テレビを両手で鷲掴みにしていた。

重役B「主人公補正の相対的減少…。空間拡張率の上昇…」

重役D「これは間違いなく…」

重役A「「クライマックス効果」…!」

重役B「しかし、定説とは違うぞ!この反応は…!」

重役C「そ、そうか…分かったぞ」

辰川「ん?」

辰川は違和感を感じた。

その違和感は徐々に顕著となり、あからさまに現れた。

辰川「お、おい。お前ら…」

重役1人1人の違いが不明瞭になってきた。

重役「…クライマックス効果は主人公の補正値が上昇するのではない!一極化するのだ!」

重「ならば、この現象は…!」

Ω「我々の主人公補正が吸いとられているのだ!!」

Ω<こ、個性が、消失する!

辰「物語の一部にな

画面が暗転するように、光が消えた。

>>925いきなり新キャラ出てきてワロタ

ふはは
実は前スレに出てる元十傑集で犬崎課長と仲が良いんだぜ!

>>929
いやそれ姉川だろ?
俺が言ってんのは姉崎のほう

>>930
間違えた(*´ω`*)

【魔王城:最上部】

女「…」

勇者「…実に静かだ」

女「みんな居る。でも…」

勇者「これではいないも同然だ」

女「物語に押し潰されたのね」

勇者「もはや世界はここを残して存在を消した」

女「二人っきりってこと?」

勇者「ああ」

勇者はおもむろに剣を掲げると、魔法を詠唱した。

女「ラブストーリーじゃないのが残念だね」

勇者「同感だ」

魔法を付加された剣が輝いた。

勇者「せっ!」

それを降り下ろすと、稲妻が女に向かって弾けとんだ。

女「…っ!」

女がすかさずひのきの棒で振り払うと
、バシン!という音とともに稲妻がかき消えた。

勇者「やりおる…。今のは結構自信あったのに」

女「ここからは魔王戦、第2形態って感じ?」

勇者「そんな感じで」

女「てゃあぁ!」

勇者「がぁあ!」

間違いなく尽くされている全力。

物語を満足させるために必要なのは―

本気の死闘。

クライマックス効果の出現がまさにその効果を如実に現すものであった。

間違いなく、物語は終わりに近づいている。

しかし、その先に待つものは間違いなく『死』。

魔王などに…

勇者なんかに…

生まれなければ…

二人は己の運命を恨んだ。

魔王と勇者という絶つことの叶わぬ関係性を恨んだ。

出会う場所が違えば

生まれが違えば

勇者「変わっていたと思うかい?」

女「んー」

場面が変わった

穏やかな夕日の差し込む放課後の教室。

セーラー服を着た女と学ランを着た勇者がそこにいた。

女「例えばこんな感じ?」

勇者「悪くない」

女「青春しちゃってる的な?」

勇者「文化祭の話で盛り上がるのも良いかもしれん」

さらに場面が変わった。

荒野を走り抜けるバギー。
勇者はハンドルを握り、女は瓶コーラを一気飲みしている。
二人の後ろの座席には何万ドルかも分からない量の紙幣が袋に詰められている。

勇者「こういう風にワイルドなのも良いかもしれん」

女「ぷはぁ…飲む?」

勇者「えっ!?いや、その…」

女「間接キスぐらいで、ウブだよね」

勇者「…///」

場面が変わった

薄暗い部屋。
白いシーツ。
背中に感じる微かな温もり。

勇者は寝返りをうった。
するとそこには一糸纏わぬ女の裸体があった。

勇者「?!?!」

女「えっち」

勇者「ち、違う!わしはこんな展開や運命が良かったと思ってるわけではなく…!」

勇者はまた寝返りをうち、女に背を向けた。

女「ねぇおじいちゃん」

勇者「ん?」

女「もっと魔王城で働きたかったね」

勇者「うむ」

女「やっぱり運命は変わらないみたいだね」

勇者「…」

女「終わらせようか」


場面が変わった。

走る稲妻。暗雲立ち込める空。
魔界の中心である魔王城の最上部。


勇者「…」

女「…」

女の胸には深々と剣が刺さり、背中を突き抜けている。
滴る血が剣を伝い、池の様に丸く丸く広がっていった。

oh……

なんというクライマックス…

女「かはっ」

女の口から血が吐き出され、勇者の肩を赤く染めた。

勇者「…」

女「これで良かったと思うよ」

女の目が霞んでいく。

女「テンプレ通りの…」

景色は朦朧と歪み、混ざり合うようにうねる。

女「素敵なエンディング」

勇者「…」

勇者は無言のまま、剣を引き抜いた。

女「だから…」

勇者「う…」

女「泣かないで」

勇者「うぁ…」

勇者の目から涙が零れた。

同時に、世界が広がっていった。

集中していた主人公補正が拡散する。

物語の終焉が訪れたのだ。

黒江「…終わったのね」

ようやくクライマックス効果が落ち着くと、様々な存在が明確になっていった。

勇者「ああ」

黒江は女の亡骸を抱き抱えた。

鎧谷「スタッフロール、エンディングミュージック、開始します」

骨田「準備よし」

岩村「こっちもいいぞ」

音楽とともに、スタッフロールが世界中の画面に写し出された。

物語の終わりが、徐々に世界の端の方から押し寄せてくる。

岩村「課長は?」

犬崎「ここにいるぞ」

鎧谷「無事に終わりました」

勇者「こういう『エンディング』はお前が考えたのか?」

犬崎「いや、この子だ」

黒江は女の亡骸を優しく撫でると、勇者を見据えた。

黒江「これが、この子が企画した『魔王討伐』のプラン…」

勇者「自らが魔王となり、討たれることで物語を終わらせたか」

勇者「寂しい…寂しい話だ」

黒江「でも、この子が物語を自分で決められた」

犬崎「自分の物語を自分で選べたのだ」

勇者「運命に抗った証拠なのだな」

黒江「そうよ。この子はきっと…満足してるわ」

勇者「…」

黒江「あとは好きにするといいわ。スタッフロールが終わったら、この物語は終わる」

黒江は顔を伏せた。

犬崎「俺達は行くよ」

企画課一行は立ち上がると、鎧谷の周囲に集まった。

鎧谷「転移魔法いきます」

足下を囲うように円陣が描かれた。

勇者「黒江は、満足なのか?」

黒江「…!?」

勇者「いや、お前ら企画課はこれでいいのか?」

鎧谷は詠唱をやめた。

犬崎「…」

骨田「…彼女の一生に一度の決断をアシストできたんだ」

鎧谷「満足…してるさ」

岩村「しかし…」

勇者「黒江は?」

黒江は顔を上げた。
涙が溢れた顔はくしゃくしゃに歪んでいる。

黒江「良いわけないじゃない!」

課長が普通に喋ってる……だと?

黒江「こんな、こんなエンディングで良いわけない!」

黒江「何が運命に抗った、よ!」

黒江「都合よく納得して!みんなでこの子に主人公を押し付けて!」

黒江「ただのバットエンドじゃない!」

犬崎「黒江…」

黒江「こんな…」

勇者「奇遇だな…」

黒江「…?」

勇者「わしもそう思っていた」

黒江「…」

勇者「わしも…」

勇者は黒江から女の亡骸を取り、床に寝かせた。

勇者「こんなエンディングは!」

勇者の周囲に禍々しく圧倒的な魔力が集中する。

黒江「…魔王様」

勇者「断 固 として 否 定 する!!!」

犬崎「おおお…主人公補正が」

鎧谷「高まっていく…」

勇者「これより、わしは主人公になる…」

勇者「いや、もとよりこの物語の『主人公』はわしだったのだ!」

勇者「だから、より都合のいいエンディングを!!」

勇者「この子が幸せになれる終焉を…!!」


すぐそこまで来ていた物語の終焉が止まった。

そして、津波のような新たな終わりが勇者を中心に広がっていった。

【東京競馬場】

アナウンス『本日のメインレースは、秋の盾を巡って争われますG1天皇賞…』

券売所脇の喫煙所で、大柄な若者が新聞片手に煙草をふかしている。
ハンチング帽を目深にかぶり、スカジャンに安そうなジーンズを着ている。そして、便所サンダル。

「結局のところはさ」

「魔王の、主人公への盲目的な嫉妬の物語なんだよね」

「『才能』や『運命』を持つものへの妬みさ」

「モーツァルトに嫉妬したサリエリみたいにさ」

「結論?」

「ああ、魔王を倒した勇者は魔界の統治王となって平和な世界を作りましたとさ」

「え?そういう意味じゃない?」

プルルルル

スピーカーからけたたましくサイレンがなった。

「あ、ヤバい。メインレースの発売締め切っちゃう」

大柄な若者は煙草を煙缶に投げ捨てると、券売所へ走り出した。

大柄な若者はスタンドの真ん中らへんに立っていた。
どうやら席を確保出来なかったらしい。

「マエカブマオウ調子良さそうじゃない?」

「あの馬はさ、親がダービー馬で母親がオークス馬」

「鳴り物入りで入厩したのに成績はなかず飛ばず」

「なんか変な親近感湧いちゃってさ。こいつも主人公になれないタイプかなって」

「でもさ、マオウはマオウの生涯を生きてて、その自身の生涯の中でマオウは主人公で…」

「んでもって、ついにはこんな大きなレースに出れて…」

「…何が言いたいのか分かんなくなったわい。でも、それに今、気付けた」

「え?結論?」

ファンファーレ鳴る。
ゲートが開く。

大歓声の中で、隣り合った二人は声を聞き取るために顔を近づけた。

魔王「誰でも主人公になれるってことでいいんじゃないの?」

女「都合のいい話ね」

魔王「だめかな?」

女「いいと思うよ」

女は満面の笑みを浮かべた。

女「ご都合主義でも」




   【勇者と魔王の企画編…完】




黒江「近すぎじゃボケ!」

熱々のラーメンが魔王の顔面を直撃した。

魔王「ぎゃあ!」

女「あ、マエカブマオウ勝った!あたし写真撮影に行ってくるね!」

黒江「あんたの馬じゃないでしょ」

女「(株)魔王城の社員代表として、ね!」



     【女「(株)魔王城営業部企画課!」…完】

とまぁこんな感じで終わります。
言いたいことは最後に魔王が言ったこと。
たとえ隣の芝が青く見えても、自分は自分の人生の主人公なのだと。
長々と書かせて頂きありがとうございました。


>>941
素で忘れた。いつかはやると思っていた。後悔はしていない。

すげー乙

乙。マジで乙

競馬場で始まり競馬場で終わったね
黒幕「らしき」人物が次々に入れ替わる展開が面白かったよ。

このスレだけでほぼ2年。最初のスレ立てたのがいつ頃だっけ?
最後まで追い掛ける事ができて良かった。
本当にお疲れ様でした。

やっと終わったか。
なんかずっとみてたけど最初の方とかもう忘れちまったな。
長い間ご苦労さん

確か三鷹や吉祥寺あたりだっけか最初は
完結乙

乙乙
なんでじじいと女がいいかんじになってるんだ
若作りしてても中身じじいじゃん
黒江さんかわいそう

お疲れ様でした。最初の頃から見てたけど、凄く面白かったです!!

アニメ化しねーかな....。

完結乙でした

おつ!!

まだ1000まであるし、HTML化依頼が出てないってことは
なんか小ネタとか後日談があるってことだよね
辰川部長でよろしくー

そうですねぇ

・黒江の休日
・みこにゃんの若い頃(刃牙クロス)
・辰川部長の隠し子
・企画課の出張(ジョジョ4部クロス)

とかはなんとなくやりたいと思ってたサイドストーリーですなぁ

舞ってます

構わん
次に行ってもいい
やれ

バキクロスだとッ!

よし、最後だし誰も文句言うまい

刃牙クロスやります

【グラップラーみこにゃん編】

雨は止む気配が無さそうだ。

多摩川沿いの橋の下の暗がりから外を眺めると、彼女はそう考えた。

「…」

橋の下は陰気で暗い。

段ボールと、コンビニ袋と、拾った毛布。

粗末な材料で作られた、雨風を凌げるだけの最低限がそこにあった。

ふゃぁ!

ふいに声がした。

幼い泣き声。

「ごめんね。ご飯は無いの。雨が止んだら拾ってくるから」

彼女はそう言うと、再び外を眺めた。

そして、過去の栄華に思いを馳せた。

高くそびえるロボルーマ城。滑らかな生糸の絨毯。尽きることのない晩餐。

力強く優しい勇者。

全ては失われた。

「…」

時は平成元年。

みこにゃんが人間界に転移してから丸1年が経っていた。

みこにゃん「ほら、あめちゃんがあった」

女の子「わぁー」

女の子は笑顔を浮かべると、急いで飴玉を口に含んだ。

みこにゃん「噛んじゃだめよ」

転移してからの1年は散々であった。

まず、言葉が通じなかった。

魔法による日本語翻訳はみこにゃんがいた300年前の魔界では確立されていなかったから。

必然的に社会の端に追いやられたみこにゃんは、公園のトイレで女を産んだ。

誰にも祝福されない子。

みこにゃんは絶望に暮れた。

最早、義務感以外にその子を育てる気力は無かった。

幸いだったのは、日本という超消費社会に転移したことであった。

道を歩けば、ゴミ箱にまだ食べられる物が棄ててあった。

食に困らなかったことはみこにゃんにとって救いだった。

もちろん、日本円など持たないみこにゃんにとってはだが。

プライドという対価さえ払えば、いくらでも飯にはありつけた。

それがここまでの経緯。

みこにゃんが橋の下で暮らす経緯。

来てた!!

そんなみこにゃんに事件が起こったのは秋も終わりに差し掛かった頃。

みこにゃんはいつものようにスーパーの廃棄をくすねていた。

みこにゃん「このお寿司はまだいけるな…」

「誰かいるのか!?」

みこにゃん「!?」

懐中電灯の灯りがみこにゃんを幾重にも照らす。

「こらぁ!泥棒!」

みこにゃん「!?」

「そこを動くな!」

高く振りかぶられた警棒。

みこにゃん「…無礼者!」

咄嗟に手が出た。

安売りしたプライドも少しは残っていたらしい。

そして、母親譲りの馬鹿力。

それが仇となった。

相手は全治半年の大ケガ。

窃盗、暴行。住所どころか戸籍も国籍も分からない。

容疑をかけられるには十分すぎた。

警察も入国管理局も興味津々であった理由は他にもある。

若く端麗な容姿、厳かな物腰、巨乳。

汚れてはいたが、衣服からも高貴な身分が連想された。

そして、異常な戦闘力。

一度、取り調べの為に我が子を引き離された時に、鉄格子とコンクリート壁を素手で破壊した。

そんなみこにゃんの噂はある人の耳まで及んだ。

おつ

【拘置所】

警官「飯だ」

みこにゃん「ありがとう」

女の子「ごはん」

みこにゃん「おててあらおうね」

女の子「はぁい」

警官「大分日本語を喋れるようになったな」

みこにゃん「毎日取り調べを受けてたら、そりゃね」

警官「そりゃいい。あとは本当のことを喋ってくれれば良いんだけどね」

みこにゃん「…」

警官「その子のためにならんよ」

みこにゃん(本当のことを言ったところでなぁ)

みこにゃん(それにここなら雨露凌げるし…、ごはん出るし…)

女の子「…まずい」

みこにゃん(安心して育てられるわ…)

警官「ところで、えーと?『みこと・J・T・ロボルーマ2世』さんに面会来てるけど」

みこにゃん「え?」

警官「なんか偉い人がここに直接来るらしいよ」

みこにゃん「?」

「わはは!やはり臭いのう!」

「御老公、こちらです」

小さな老人が現れた。

それに続いて、2メートルに達するほどの大男が覗きこんできた。

「おおーこの子か!見た目はアジアン。コリアンか?フィリピーナか?チャイニーズか?」

「分からないそうですよ」

「まぁいい。大事なのは国籍じゃない」

「やりますか?」

「おう!」

牢の扉が開かれ、中に大男が侵入してきた。

みこにゃん「…何?」

女の子「…おかぁさん、こわいよ」

大男「日本語が分かるようだな」

みこにゃん「少しなら」

大男「御老公、ホントにやるんですか?」

老人「ああ、やれぃ!ちなみにその子を逮捕するのに1000人規模の機動隊が出たらしいぞ!」

大男「…!?」

老人「ビビってんの?」

大男「いや、まさか」

大男は姿勢を低くすると、獣のような眼光をみこにゃんに向けた。

老人「やれぃ!猪狩」

猪狩と呼ばれた男「だしゃぁぁッッッッ」

史上最強の雌だな

面白い

一瞬であった。

コンクリート壁に叩きつけられたみこにゃんが朦朧とする意識の中で見たものはまさに…

肉の津波ッッ

次に気が付くと、逆さまになった我が子が見えた。

みこにゃん「…?」

猪狩「おい、まだくたばっちゃいないだろう?」

違う。逆さまになっているのはみこにゃん自身だ。

猪狩「いくぜッ」

猪狩は振りかぶると、そのままコンクリートの地面にみこにゃんを叩きつけた。

大きな音が響いて消えた。

老人「あちゃあ。見事なパワーボムじゃ」

猪狩「気絶しましたよ。御老公がやれって言ったんですからね」

老人「期待はずれだったかいの?」

猪狩「普通の女の子ですよ」

猪狩はスーツの裾を直すと、子供の泣き声が響く牢を後にしようとした。

その時である。

みこにゃん「…いてて」

老人「…!?」

みこにゃんは立ち上がると女の子の頭を撫でた。

猪狩「…冗談だろう」

猪狩の顔から血の気が失せた。

みこにゃん「…」

老人「な、なんというタフネス…」

猪狩(手加減なんてしてねぇぜ)

みこにゃん「この子を泣かしたッッ」

みこにゃんは握りこぶしを作った。

猪狩「や、やんのかコラァッ」

大きさにして、直径15センチ程の小さな握りこぶし。

猪狩「シャァッッッッ!!」

老人(ナックルクローッ!)

それが消えた。

コカッ!

渇いた音が響いた。

老人「…?」

猪狩「…」

ズザァ!

のめり込むように猪狩はその場に倒れた。

老人「…い、猪狩~ッ!」

みこにゃん「この子を怖がらせるのはやめて」

老人「ひぃ!」

老人「ちょっ、ちょっと待て」

みこにゃん「どういうつもり?これがこの国で定められている罰なのかしら?」

老人「違うんじゃッ!」

みこにゃん「何が?」

老人「確かめにきたんじゃ」

みこにゃん「?」

老人「君の強さを」

みこにゃん「…?」

老人「わしは徳川と言う」

みこにゃん「はぁ」

徳川「今、強いものを探している」

みこにゃん「…」

徳川「ルールはバーリトゥード。柔道でも空手でも、国籍、経歴を問わずッッ!」

みこにゃん「なんで?」

徳川「最強を見たい」

みこにゃん「狂った道楽ね」

徳川「男なら誰でも憧れるものじゃ」

徳川はそう言うと、にんまりと笑った。

徳川「どうだろうか?君に相応しい仕事があるのだが」

みこにゃん「は?」

徳川「わし自慢の闘技場に招待したい」

みこにゃん「私は犯罪者よ?」

徳川「法律が弱き者のためにあるとするならば、強き者には障害にしかならない」

みこにゃん「はぁ」

徳川「君が日本の中で強いから犯罪者になってしまったのだ」

みこにゃん「じゃああたしはずっと犯罪者ね」

徳川「どうだろうか…。わしなら、君よりも強い者たちの世界。アウトローを提供できるが」

みこにゃん「この子をそんなところには連れていけないわ」

徳川「わしが君たち二人を面倒見る」

みこにゃん「でも」

徳川「この前の暴力事件は揉み消して、牢屋から出そう!」

みこにゃん「…え?」

徳川「住む家が無いならわしの家に住めばいいッ!そこなら…」

みこにゃん「…ほう」

徳川「3食飯付き!風呂もあるぞッ!」

みこにゃん「乗った!」

徳川「よくぞ言ったッ!」

女の子「?」

徳川「早速、わしの家に行こう!」

みこにゃん「え?でも…手続きとか」

徳川「そういう手回しは先に済ませておる」

みこにゃんが近くにいた警官に目配せすると、その警官は肩をすくめて手を降った。

みこにゃん「おじいちゃん、何者?」

徳川「なぁに。強いヤツが好きな老人じゃよ」

みこにゃん「まぁいいわ。ほらいくわよ」

女の子「うん」

徳川「ほら猪狩も!行くぞい!」

女の子「暫くは起きないわ」

徳川「え~?強いとはいえ、女の一撃でノックダウンとは情けないの~」

みこにゃん「一撃?」

徳川「…は?」

みこにゃんは猪狩を起こすと、顔に水を被せた。

猪狩「が、ガハッ!!」

吐き出された血が白いスーツを赤く染めた。
のたうち回る猪狩に徳川は驚きを隠せない。

徳川「ど、どうなっとるんじゃッ!」

みこにゃん「顎とお腹と、胸と…あとどこ殴ったっけ?」

徳川「なんだって…」

徳川は苦しそうに息づく猪狩の上着を脱がせた。

猪狩の上半身。顎から下腹部にかけて15センチ程の幅の『あざ』が一直線に貫いている。

徳川「これは…」

徳川は指を折り、あざから僅かに判別できるだけの手形を数えた。

徳川「34…?」

徳川の額から脂汗が吹き出る。

徳川(あの圧倒的な早さで、的確に正中線を叩いたと言うのか…?)

徳川「それも、最低34回も?」

みこにゃん「多分…。もっと殴った」

徳川「も、もしかして…」

徳川「とんでもない逸材…拾っちゃった?」

みこにゃん「早くお医者さんよんだほうがいいよ」

徳川「あっ!猪狩~ッッッッ!!」

乙でした

みこにゃん強すぎるワロリエンヌ

【徳川邸】

徳川「まぁゆっくりしてくれ」

みこにゃん「…」

徳川「ビビった?」

みこにゃん「え?」

徳川「都内にこれ程の規模を誇る庭園!日本家屋!」

みこにゃん「…」

徳川「見直した?」

みこにゃん(…ロボルーマ城の犬小屋レベルだと言うのはやめておこう)

徳川「これからはここに住むといい」

みこにゃん「そうさせてもらうわ」

徳川「拘置所の飯は不味かったろう」

みこにゃん「ええ」

徳川「ここにはなんでもある。好きなものを食べるといい」

みこにゃん「ほんと!?」

徳川「ああ、いいとも」

みこにゃん「良かったわね。今日はお腹いっぱい食べれるわよ」

女の子「やったぁ!」

徳川「待っとれ。今、神戸牛を用意させるからな」

みこにゃん「5頭分はほしいわ~」

女の子「あたしも!」

徳川「ははは」

致命的ッッッ

余りにも致命的なミスッッ

外見だけで判断するという慢心ッ

「好きなだけ」

徳川はこの言葉を後悔する事となる。

厚ッ

重さ二キロの肉塊ッ

その数、400皿。

これが20分で消滅したという事実。

徳川(な)

徳川(何が起こっているんだ?)

みこにゃん「おかわりッ」

女の子「おかわりッ」



徳川は後にこう語った。

『信じられるかい?』

『まだ高校も卒業してないくらいの嬢ちゃんと1才半の幼子がだ』

『約1㌧の神戸牛のステーキを食う。いや…』

『“飲みこむ”』

『驚いた。でも怖くは無かったよ』

『ああいう感情は久々だったのう』

『“尊敬”っていうんかの』

『え?代金?』

『なに、牧場を4つ潰してやっとお釣りがきたよ』




完食ッ!

みこにゃん、女の子、完食ッ!

みこにゃん「野菜は?」

徳川「ヒィッ」

よくその食欲を持ちながら今まで生きられたな

少ないなら少ないでいいんだろう
「好きなだけ」で、リミッター解除とw


この時、肉牛が足りなくて乳牛まで絞めて食べたんだろうな
1才半でホルスタインを貪り食ったからこそ、後に黒江さんが惚れ込むあの乳が形成されてしまったのだろうか

神戸牛1トン程度で牧場は潰れないから
他にもキャビアとかトン単位で食べたんだよね!?

よ・く・食・う・のぉ~

ここからのみこにゃんは凄まじかった。

毎日の日課。

女の子を近くの幼稚園に送ってからの地下闘技場。

猪狩「シャァッ!」

みこにゃん「~~ッ!?」

実況「決まったァッ!コブラツイストッ!」

徳川から特別に支給されるファイトマネーがあった。

母と子供の自立のため。

もちろん、本音であった。

しかし、最早、それも建前と成りつつあった。

実況「みこと選手がッ悠然と独歩選手にッ近付いて行きますッッ」

独歩「神心会空手をナメるんじゃぁねぇぜ、嬢ちゃん」

みこと「愚地先生。空手を、」

独歩「…?」

みこと「越えさせてください」

独歩「よく言ったッッ!」

パパパパパンッッッッ!

実況「せ、正中線五連突きィ!」

みこにゃん「~ッ!」

独歩「どうでい…ッ」

みこにゃん「…まだ、まだ“足りない”ッッ」

実況「た、耐えた~ッッッッ」

独歩「バケモンかい嬢ちゃんは…」
   
求められたのは、

『 苦 痛 』

   『  経 験 』

そして、

  『 闘 争 』
               ファイター
気付くと、3ヶ月が経ち、彼女は闘士となっていた。


その快進撃の影響は、遠く彼の地まで及んでいた。

【米国】

「ふむ…」

「報告は以上です」

「貴官はこの話を信じるかね?」

「は?」

「イガリを圧倒し、あのカラテマスタードッポと渡り合う実力」

「…」

「曰くメスゴリラ。曰くアイアンプリンセス。曰くMrs.バトル…」

「調査員は夢でも見たのではないかと」

「私は信じるよ」

「…え?」

「ベトナムでもっとスゴい化け物に会ってるからな」

「はぁ」

ドアが勢いよくあけられると、下士官であろう軍人が駆け込んできた。

「キャプテン・ストライダムッッ!」

ストライダム「何事だ?」

下士官「アリゾナから緊急要請ですッ!」

ストライダム「アリゾナ?」

下士官「ブラック・ペンタゴンから囚人が1人逃げ出しましたッ!」

ストライダム「まさか…」

下士官「アンチェインです!」

ストライダム「キャンプベンデルトンに出撃要請だッ!」

下士官「イエスッサーッ!」

ストライダム「マリーンに伝えろッッ!敵は1人だが、国家と相対すると思えとッ!」

【アリゾナ】

バララララララ…

チヌークがサーチライトを向ける。

その光の先に黒い塊が見える。

ダイヤモンドのように光輝くそれはシャツからはみ出た上腕部。

高密度にしてしなやかさを感じさせる筋肉。

まるでジュエリーが歩いているかのように錯覚してしまう。

ヘリパイロット「彼女にプレゼントするかい?」

海兵隊員「ハハ…あんなでっかいとエンゲージリングにもなりゃしねぇ」

歩く黒い筋肉は『アンチェイン』と呼ばれていた。

アリゾナ州立刑務所の影の首領。

刑務所から出るも入るも自由自在。

ならば今回の『外出』に制止が入ったのは何故か。

問題は、彼の目的にあった。

ストライダム「要求は?」

ー それは緊急要請から一時間遡る。

【アリゾナ州立刑務所】

事件が起きたのは平和なディナータイムだった。

「Mr.オリバ」

オリバ「なんだね?」

「食事の時間でございます」

オリバ「もうそんな時間か」

運び込まれた和洋中様々な料理。

豪華にして豪勢。

間違いなく常人が食べられる量ではない。

オリバ「ご苦労」

しかし、オリバはそれを当たり前であるかのように食べ始めた。

巨大な筋肉は繊細に動き、器用にナイフとフォークを動かす。

白身魚のムニエル。

エビのシュリンプ。

サラダ。

一皿、また一皿と食材がオリバに食されていく。

オリバ「…?」

途端、手が止まった。

それは厚さ5㎝にもなる牛肉のステーキにナイフを当てた時だった。

オリバ「シェフ」

「は、はい」

オリバ「これはいつもの肉じゃないな」

「そ、その、仕入れ先の牧場が牛を全て売り払ってしまって…」

カラン…ッ

ナイフとフォークが音をたてて落ちた。

見ると、跡形もないぐらいに曲げ折られている。

「ひぃ」

オリバ「今から日本に行く」

「ひ、非常事態ッ」

ビィービィービィー

オリバは立ち上がると、何層もあるコンクリート壁に向かって拳をぶち当てた。

オリバ「私は日本に行くッッ!!」

オリバ「私から“コウベビーフ”を奪ったヤツを倒しにッッ!!」

食べ物の恨みは恐い

かくしてオリバは『出所』したのだった。

【アリゾナ】

海兵隊員「オリバは西に進路をとっています」

ストライダム「ヤツめ…。泳いで日本に行くわけではあるまい」

海兵隊員「アリゾナ州知事から激励の電報が届いていますが読みますか?」

ストライダム「どうせ文句だ。捨てておけ」

海兵隊員「撃ちますか?」

ストライダム「市街地が近い。やめておけ」

海兵隊員「狙撃手はみんな腕利き揃いですよ!」

ストライダム「ショットガンを受けとめる人間にライフルが効けばいいがな」

海兵隊員「…」

ストライダム「今度からアリゾナには機甲大隊を配備せんとダメだな」

海兵隊員「はぁ」

ストライダム「要求は?」

海兵隊員「日本にコウベビーフを食べに行くと」

ストライダム「アホか」

海兵隊員「事実です」

ストライダム「デビスモンサン空軍基地にまだ動くB29があっただろう?」

海兵隊員「はい」

ストライダム「すぐに給油してこちらに向かわせろ」

海兵隊員「はい」

ストライダム「あと日本の防衛庁にも伝えろ」

海兵隊員「なんと?」

ストライダム「『アメリカから核弾頭をプレゼントするから最高級のもてなしをしてくれ』とな」

ストライダムの命令から僅か10時間後には、オリバは横田にいた。

横田基地指令「ご苦労。荷物は?」

B29機長「もう出て行っちゃいましたよ」

横田基地指令「そうか。あとは日本の方で監視するそうだ」

B29機長「皮肉なもんですな」

横田基地指令「?」

B29機長「このポンコツがまた東京の空を飛ぶことになるとは」

横田基地指令「本当に皮肉だ。空襲警報をだした方がよかったかもしれん」

B29機長「さながら焼夷弾ですか?」

横田基地指令「…焼夷弾の方がまだマシさ」

B29機長「?」

横田基地指令「アメリカは遂に東京へデカイ爆弾を落としたんだからな」

B29機長「…」

横田基地指令「ここから始まるのは戦争だよ」

B29機長「日米の?」

横田基地指令「世界大戦だよ」

その後のオリバの足取りは軽やかであった。

横田基地から立川駅に向かうと、JRの切符を買った。

そして、電車に乗り込むと、東京方面の各駅停車に乗り込んだ。

国分寺、三鷹、中野、新宿…そして、水道橋。

オリバが降りたのはそこだ。

その時点で日本時間午後6時。

まさにディナータイム。

ここでオリバは驚愕の事実に気付いた。

オリバ「…腹が減った(I get hungry.)」

思い返すと、昨晩は満足に食べていないッッッッ。

B29でも機内食は出なかったッッ。

そう、腹が減ったのだ。

自然とオリバの足は東京ドームに向かった。

そこには行き付けのステーキ屋があるのを知っていたから。

オリバ「飯の時間だッッッ!」

【ステーキ屋】

「やぁ!珍しいお客さんだ!」

小さな黒人がカウンター越しに大きな声をあげた。

オリバ「やぁ、マックス!」

マックス「もう刑期は終わったのかい?」

オリバ「まだ400年残ってるよ」

マックス「ハハハ、まぁゆっくりしていってくれよ」

オリバ「ディナーがまだなんだ。いつものやつを頼む」

マックス「…!?」

小柄な黒人は沈黙すると、俯いて背を向けた。

オリバ「どうしたんだ?コウベビーフのステーキだ。牛1頭分は覚悟してくれ」

マックス「…んだ」

オリバ「what?」

マックス「無いんだ、Mr.オリバ。品切なんだ」

オリバは驚愕を隠せない様子でワナワナと震えている。

マックス「すまない」

オリバ「す、ストックがあったはずだ!私専用のッッ!」

マックス「それも全部、売り払った」

オリバ「~ッッッ!?」

オリバが唯一信じていた牙城が脆くも崩れ去った瞬間である。

カウンターがカタカタと揺れている。

オリバ「…何故だ」

マックス「上客が出来たんだ」

オリバ「…私以上のか?」

マックス「ああ、俺のモットーは知っているな?」

オリバ「『食いっぷりのいいヤツにだけ売る』」

マックス「こっちに来てくれ」

オリバ「?」

マックス「会えば納得する」

マックスは『VIPルーム』の扉の鍵を取ると、手招きした。

【VIPルーム】

招かれた先には大きな鉄板が中央に置いてある部屋があった。

鉄板には今まさに神戸牛のステーキが焼かれようとしている。

その様は尋常ではない。

まず、鉄板がほとんど見えない。

かろうじて、肉の焼ける音で鉄板であることが分かる。

どちらかと言えば肉の板と言えば良いような気もする。

マックス「クレイジーだろ?」

オリバ「いや、ビューティフルだ」

マックス「全部その客と、その子供で食うんだ」

オリバ「二人で?」

マックス「ああ」

オリバはこの時、あからさまにデブな親子を想像してにやけていた。

オリバ「しかし、壮観だな。本当に素晴らしい光景だ。…ん?」

肉が1枚減ったような気がする。

オリバはあまりの馬鹿げた光景に頭がおかしくなったのだと思った。

マックス「君は今、肉が消えたと思わなかったかい?」

オリバ「…!?」

マックス「加えて言うなら、君はこの光景を『調理』や『配膳前』だと思っていないかい?」

図星。

オリバは恐る恐る鉄板を凝視した。

マックス「そう、『食事』はすでに始まっているッッ!!」

まただ、肉が消えた。

咀嚼の音もナイフとフォークの音すらも聞こえない。

圧倒的な超スピードで肉が消費されている。

マックス「とか思ってないか?」

オリバ「違うのか!?」

マックス「裏に回って机の脇を見ろ」

オリバ「?」

オリバは机を回り込んで脇を覗き込んだ。

女の子「?」

オリバ「…」

そこには、2、3歳くらいの女の子がいた。

サイズは並みか普通くらい。

どこにでもいそうな純朴な女の子。

しかし、これだけは間違いなく言えるとオリバは思った。

オリバ「狂ってる…(crazy)」

女の子が手に持った皿には明らかにその子の体積を越えた肉が積まれていた。

オリバは驚きのあまり、よろめいて椅子に座り込んだ。

マックス「そのままでいい。見ていろ」

オリバ「…」

女の子は視線を気にしていたが、思い直して肉にフォークを突き立てた。

そして、重さ2㎏の肉を軽々と持ち上げて、口を開いて一瞬で食べた。

オリバ「~飲み込んだッッ!?」

マックス「いや、ちゃんと咬んで味わって食べてるよ。超スピードでね」

オリバ「…すまない。思考が追い付かない」

そうこう会話している間に、皿の肉は無くなった。

オリバ「お腹一杯ってとこかな?」

マックス「ああ、君だったらそうだろうね」

オリバ「なんだと?」

女の子「ごはん!」

マックス「ライスだね。待ってて」

オリバ「ライス!?」

マックス「もちろんかわいいお茶碗に小指くらいのライスを乗っけて来るとは思ってないだろ?」

オリバ「炊飯器ごと持ってくるぐらいは覚悟するよ」

マックス「…」

マックスは調理場に戻った。

その間も、女の子は肉を平らげている。

オリバ(なるほど、アリゾナに肉が行き届かなくなるわけだ)

マックスが帰ってきた。

台車を押して、帰ってきた。

キレイな銀色をしたドラム缶が乗っている。

オリバ「~ッッ!?」

マックス「日本最高級のコシヒカリだ」

オリバ「200㎏ってところか…」

女の子「ごはん!」

オリバは項垂れるように椅子に座り、頭を抱え込んだ。

ショックを隠しきれない。

女の子「おやさい!」

オリバ「…サラダも食うのか」

マックス「偉いだろ?」

オリバ「ああ、実に健康的だ」

マックス「ちなみにショックを受けているところ悪いんだが」

オリバ「?」

マックス「母親は毎日、この子の4倍食べるよ」

オリバ「…アリゾナに帰るよ」

マックス「ああ、申し訳ない。しばらく他の客に肉は出せない」

まさかの不戦勝

かくして、世界大戦はすんでのところで回避されたのであった。

それはある女の子のおかけであったことは誰も知らない。

みこにゃん「マスター!来たよ」

オリバ「…」

オリバはすれ違うみこにゃんを気に止めることすらできずに店を去った。

マックス「やぁ遅かったね」

みこにゃん「いやぁ独歩先生がさ…。今の誰?」

マックス「知り合いさ」

みこにゃん「ふーん。お肉は?」

マックス「今焼いてるよ」





【米国】

ストライダム「なに!?帰ってきた!?それも一切問題を起こさずに!?」

海兵隊員「はい」

ストライダム「被害はアリゾナ州立刑務所のコンクリート壁だけ!?」

海兵隊員「はい。日本では旧知のステーキ屋に寄ってからすぐに横田基地に帰ったそうです」

ストライダム「意味がわからん」

海兵隊員「右に同じであります」






【徳川邸】
徳川「みことちゃん」

みこにゃん「はい?」

徳川「神戸牛業界からクレームがきてるんだけど」

みこにゃん「え?」

徳川「食べ過ぎ」

みこにゃん「腹八分目…」

徳川「やかましいッッ!!」

みこにゃん「~~~ッッ!?」

徳川「月の食事で一体いくら消えてると思ってるんじゃあ!」

みこにゃん「だっておじいちゃん好きなだけ食べていいって…」

徳川「やかましいッッ!!」

みこにゃん「~~~ッッ!?」

【アリゾナ】

後にオリバはこう語ったッッ!

「食事というものは、自己保存において最重要と言っても過言ではない」

「ありとあらゆる栄養素を取り込み、自己を修復、改善、補強する」

「そこには最適量というものが存在する」

「その最適量はまさに強さの指標と言ってもいい」

「強いヤツはより食うんだ」

「それは殴り合いの強さじゃない」

「まさに生命の強さなんだ」

「あの子は生命力そのものだった」

「私はまさに『 食 事 』で負けたのだよ」

「え?」

「もうコウベビーフのステーキにはありつけていないのかって?」

「いや、1週間でまた食べられるようになったよ」

「なんでも、今度はマグロに目覚めたそうだ」

「太平洋から鮪が絶滅する前に飽きるといいね」




【グラップラーみこにゃん編…完(;^ω^)】

ほんとは戦わせて「これぞ母親の力ッうんぬん」とか「巨乳の柔らかさで衝撃を吸収したッッうんぬん」とか
やりたかったけど、間に合わなそうなんでこんな終わりにしました。
でもまぁ不戦勝だけどこの終わりは結構気に入ってます

これでおしまい
次は究極の引きこもりの話か、ヘビメタ好きな修道女の話やりたいなぁ

誘導はよ


部長の話は次スレ?
もうHTML化依頼出しちゃったのか
誘導はよ

終わりかぁ、良い余韻に浸れたわ

おしまい(*´ω`*)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年02月27日 (木) 23:17:45   ID: TbWn8oja

まだ完結してないんよ
ss速報いつ復活するんかな

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