エレン「殺すべし…キョジン殺すべし!!」(36)

※原作とは設定が違う部分あり



845年、ネオシガンシナ区。

この日も天気が良く、多くの子供達が屋外で遊びまわっている。

そしてここにも、ごっこ遊びに興じる子供が3人。


エレン「キョジンだぞー!キョジンだぞー!」

アルミン「グワーッ!ヤラレター!」

キョジンとは、約100年前に人類を滅亡の危機へと追いやった半神的存在である。

そのような実際コワイ存在でありながら、現在の人類はキョジンの事を軽視しつつある。

何故人類はキョジンを恐れないのか?それは、このような共通認識があるからだ。


――壁の中に居れば、安全が約束される――

実際この100年間でキョジンに壁を突破されることなど一度もなかった。

一般市民がキョジンの姿を見る機会など皆無で、もはやキョジンは架空の存在に近いのだ。


アルミン「あはは…エレン=サンはキョジンごっこが大好きだね」

ミカサ「どうしてキョジンが好きなの?」

エレン「別にキョジンが好きな訳じゃねえよ」

エレン「壁の外の世界が見てみたい…その一部にキョジンが含まれてるってだけだ」

ミカサ「エレンが壁の外に行くというのなら、わたしもそうする。でもキョジンは危険」

アルミン「キョジンから身を守る方法でもあればなあ…」

エレン「でもよ、色々言ったって所詮は壁一枚乗り越えられないような奴らだろ?」


おお、何たる事か!

『キョジンなど壁一枚で防げる程度の存在』と認識する者まで出始めているのだ。

人類が平和に酔った今の時代、この様な発言もチャメシ・インシデント(日常茶飯事)なのである。


アルミン「キョジン…か。いったいどんな奴らなんだろうね」


ALAS!まさに、その時だった。

エレン・イェーガーの運命が、完全に変わってしまったのは。

CABOOOOOM!!


エレン「なんだ!?今の音は…」


音の発生源を見やった3人は、今まで感じたことのない不吉な感情が湧きあがってきた。

人類に遺伝子レベルで刷り込まれている…キョジンへの恐怖という感情が。


超大型巨人「ドーモ、はじめまして皆さん。ベリートールです」ペコリ


アルミン「キョジン…ナンデ…?」

ミカサ「ア…」

「「「アイエエエエエエエ!!!」」」

ベリートールと名乗るそのキョジンの体長は200フィートもあろうか。

従来のキョジンは最大でも50フィート程とされていたのだから、いかに規格外な大きさかが分かる。

そしてベリートールは右足を大きく後ろへ振り上げ…


超大型巨人「ィィィイヤァーーッ!!」ゴゴゴゴ


CRA-TOOOOOM!!

渾身のケリ・キックによって開閉門が破壊されてしまったではないか!


エレン「壁!? 壁ナンデ!?」

アルミン「キョジンが壁を破壊したっていうのか!?テストに出ないよぉ…」

エレン「…ブッダ!家には母さんが!」

ミカサ「そんなっ…早く行かないと!」

アルミン「僕は助けを呼んでくる! 二人とも無茶はしないでよ!」

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エレンとミカサは家へと…家だった場所へとたどり着いた。

が、ナムサン!そこには瓦礫に挟まれ身動きが取れない母・カルラの姿があった。

そして…そう遠くない位置に、キョジン達の姿も。壁に空いた穴から侵入してきたのだろう。


エレン「アイエエエ!キョジン!?キョジンナンデ!?」

巨人「」ズシーン ズシーン

ミカサ「カルラ=オバサン!」

エレン「ミカサ、そっちを持て!柱をどかすぞ!」ガシッ

カルラ「エレン…ミカサを連れて逃げなさい。早く!」

エレン「逃げたいよ俺も!早く出てくれよ!!」グググ…

カルラ「…母さんの足は瓦礫に潰れて…ここから出られたとしても走れない」

エレン「成せば成る! 俺が担いで逃げるよ!!」

カルラ「どうしていつも母さんの言うことを聞かないの!!」

カルラ「最期くらい言うことを聞いてよ!!」

カルラ「ミカサ!」

ミカサ「やだ…いやだ!」グググ…

カルラ(…このままじゃ3人とも…)


「おい!大丈夫か!」キュイーン

カルラ「ハンネス=サン!子供達を連れて逃げて!」

ハンネス「見くびってもらっちゃ困るぜカルラ=サン」


実際彼はスゴイ級の兵士であり、そのワザマエはチュートン・チームの中でもトップクラスだ。


ハンネス「俺はキョジンをぶっ殺して、きっちり3人とも助ける!!」ダッ

カルラ「待って!戦ってはだめ!」

ハンネスはキョジンと対峙した。


ハンネス「ドーモ、はじめまして。ハンネスです」ペコリ

巨人「ドーモ、はじめましてハンネス=サン。モブマンです」ペコリ


人類もキョジンも、イクサの際にはお互いにアイサツを交わすのが礼儀である。

アイサツは神聖な儀式であり、それを行わないという事はスゴイ・シツレイにあたるのだ。

古事記にもそう書いてある。

ハンネス「イヤーッ!」ビュン


オジギが終了してからコンマ4秒。

ハンネスがスリケン(手裏剣)をモブマンの両目めがけて投擲!


モブマン「イヤーッ!」サッ


モブマンはそれをブリッジで回避!

が、次の瞬間…ハンネスはモブマンとの間合いをワン・インチ距離まで詰めていた。

スリケンの投擲と同時に立体起動装置のアンカーを射出していたのだ。タツジン!

ハンネス「イヤーッ!」グオッ

モブマン「イヤーッ!」ダンッ


すかさずハンネスが得物のカタナで斬りかかる!

モブマンはそれを側転で回避!

しかしハンネスは二刀流である。


モブマン「グワーッ!?」


もう片方のカタナがモブマンの左下腿を切断した!

モブマンは左膝を地面につく。

ハンネス「よし!これで奴は急な方向転換ができないはずだ!」パシュン

ハンネス「あとは後ろに回って…」ギュイーン


この時、ハンネスもまた重要な事実を忘れていた。

100年前、人類はキョジンに対して為す術が無かったこと…

キョジンは半神的存在であること…

故にスゴイ級の兵士が単騎で挑んだとしても…勝ち目などありはしないことを。

ハンネス「イヤーッ!」ギュイーン


ハンネスがモブマンのうなじに斬りかかろうとする!…が。


モブマン「イヤーッ!」サッ


先読みしたモブマンがブリッジ。無情にもカタナは空を切った。

そして起き上がりざまに…


モブマン「イヤーッ!」ガバッ

一瞬だった。

既にハンネスはモブマンの口内に閉じ込められていた。


ハンネス「はは…キョジンの強大さ…訓練兵時代に散々教え込まれたってのに」

ハンネス「兵士である俺が…平和ボケしちゃ、お終いだよなあ…」

ハンネス「すまねえ3人とも…だが、片足を切り落としてやったんだ。多少は時間を稼げたと思うぜ?」

ハンネス「生き延びてくれよ…サヨナラ!」

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程なく、モブマンの左足は再生した。そして無情にも再び歩を進め始めた。


モブマン「ドーモ、はじめまして皆さん。モブマンです」ペコリ

エレン・ミカサ「「アイエエエエ!!」」

カルラ「そんな…ハンネス=サンは!?」

モブマン「彼は私と戦い、そして私の餌となりました」

エレン「お前っ…!!」

カルラ「二人とも逃げて!!」

モブマン「逃がしませんよ」スッ

カルラ「…」

カルラ「私は一切抵抗しません…でも、代わりに子供達は見逃して下さい…お願いです…」

モブマン「仕方ありませんね。要件を飲みましょう」ガラッ ヒョイ


ナムアミダブツ!カルラは軽々とつまみ上げられてしまった。

キョジン筋力をもってすれば瓦礫をどかすことなどベイビー・サブミッションなのだ。

エレン「ザッケンナコラー!母さんを放せえええ!!」ガンガン

ミカサ「イヤーッ!イヤーッ!」ガシッ ガシッ


二人は必死にカラテを繰り出すが、モブマンは意に介さない。

カルラ「エレン、ミカサ…生き延びr」

モブマン「ィィイヤーッ!」ガブリ


言い終えぬうちに、モブマンによってカルラの首は…おマミしてしまった。

何たる無慈悲!

モブマン「」ゴックン

エレン「かあ…さん…」ガクリ


この世界の残酷さを思い知り、膝から崩れ落ちるエレン。


モブマン「さて、次はあなた達の番ですよ」ガシッ

ミカサ「アイエッ… は 放せ!」ジタバタ


ナムアミダブツ!

モブマンはミカサの体を握り、軽々と持ち上げた!

エレン「てめえ!俺達は見逃すって約束だろうが!」

モブマン「何のことです?私は何も覚えていませんが」


何たる外道!キョジンに心はないのか!?


モブマン「すぐにお母さんのもとへ送ってあげますよ」ギリギリッ…

ミカサ「ンア…エレン…助…け…」

エレン(ミカサ…母さん…ハンネス=サン…)


エレンは自分の無力さを呪っていた。

目の前にいるキョジンが憎い。たまらなく憎い。しかし何もできない。

ミカサも見殺しにするしかないのか。無力な自分が憎い。

憎い…憎い…!


???『キョジンが憎いかイェーガーよ…』

???『ならば儂の魂を使うがよい。仇を取らせてやろう』

FLAAAAASH!

エレンの体から閃光が発せられた!

そして次の瞬間、ミカサとモブマンの目に信じられない光景が飛び込んできた。

…ゴウランガ!

先ほどまでエレンがいた場所で見知らぬキョジンが腕組みし、直立しているではないか!15メートル級である。


15m級巨人「ドーモ、モブマン=サン。エレン・イェーガーです。改め…」



15m級巨人「キョジンスレイヤーです」ペコリ

ミカサ「エレン…なの…?」ガタガタ

モブマン「人間がキョジンに変身した!?まさか貴様…」

エレン「殺すべし…キョジン殺すべし!! イヤーッ!!」ゴッ

モブマン「グワーッ!!」


キョジンスレイヤーのポン・パンチが殺人的速度で繰り出された!

直撃を受けたモブマンは35メートル先まで吹き飛ばされる。

この人間離れした打撃は、彼のキョジン腕力とキョジン瞬発力の為せる業だ!

ミカサは気絶し地面に落ちそうになったが、キョジンスレイヤーがキャッチし、そっと地面へ降ろす。

キョジンスレイヤーはモブマンへと歩み寄った。

モブマンはもう立ち上がることもできない。

並のキョジンでしかないモブマンは、実際決断的なカラテを耐えられるほどのキョジン耐久力を持ち合わせていなかったのだ。


エレン「ハイクを詠め、モブマン=サン」

モブマン「…所詮はサンシタ…本物に勝てなかった…インガオホー」


今わの際に辞世の句を残すのは人類もキョジンも共通である。

エレン「そうか。ではカイシャクしてやる!!」

エレン「イヤーッ!」グシャ

モブマン「グワーッ!」


エレンは無防備なモブマンへ無慈悲にストンピングを浴びせる!


「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」


モブマン「アバーッ! …サヨナラ!」カブーム!


モブマンは急所を破壊され、しめやかに爆発四散した。

キョジンはうなじの肉を破壊されると、行き場を無くした膨大なエネルギーが暴走し爆発四散するのだ。

今の爆発音でミカサが目を覚ましたようだ。

キョジンスレイヤーが歩み寄り、声をかける。


エレン「怪我は無いか、ミカサ」ズシーン ズシーン


この時彼はいったいどんな返事を期待していたのだろうか。

『ありがとう、もうだめかと思った』ならば良かったか、
あるいは『わたしは平気…だけどカルラ=オバサンが…』だとしてもまだ救いはあったかもしれない。

…しかし。帰ってきた言葉は…全く予想外のものだった。



ミカサ「キョジン…キョジンナンデ…!?」

エレン「ミカサ…? 俺だ。エレンだ」ズシーン

ミカサ「アイエ… く 来るな!」

エレン「!!」

ミカサ「キョジン!来ないで!アイエエエエ!!」

エレン「・・・」

ミカサ「アイーアイエエエエエエー!!」

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第一部 『ウォールマリア炎上』 おしまい

BADエンドですまんな、本当にすまん。
ムシャクシャしてやった。
忍殺なら何でもよかった。

続編は未定です

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