生徒「先生好きです」家庭教師「いやいやいや…」 (54)


生徒「好きなんです。付き合ってくれませんか」

家庭教師「いやいや無理でしょ……だめでしょ……」

生徒「先生、いま付き合ってる人いないって言ってたじゃないですか」

家庭教師「いないけど……いないけどね!?生徒と先生っていう立場上無理なんだって」

生徒「年の差とか立場とか関係ないじゃないですか!僕、初めて見た時から先生に一目ぼれしてたんです!」

家庭教師「うーん、あのね。年の差と立場もそうなんだけど、もうひとつ問題があるじゃない」

生徒「なんですか?」

家庭教師「俺、男だよ」

生徒「……え?」

家庭教師「うん」



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生徒「……いやいやいや。嘘ですよね?だってこんなにかわいいのに」

家庭教師「どっからどう見ても男なんだけどなー」

生徒「そんなっ!だって背も僕と同じくらいでっ!」

家庭教師「これから成長期なんだよ」

生徒「いやもう大学生で成長期は絶望的だと思いますっ!あと、目もクリクリしててそこらの女子より大きいし!肌もきれいだし!」

家庭教師「そうかな?普通だと思うけど」

生徒「大学生でノーメイクっていう垢ぬけないところも好きだったのに!騙された!」

家庭教師「騙してないよ。お前が勝手に勘違いしただけだろう」

生徒「ひどい!ひどい!僕の純情返してくださいよ!一応胸もませてもらっていいですか!?」

家庭教師「はい」

生徒「か かてぇ」

家庭教師「まあそりゃ」


生徒「うぐぅぅぅ、諦めない!先生は姉か妹いないんですか?」

家庭教師「弟なら」

生徒「意味ない!」

家庭教師「なんでそんなこと聞くの?」

生徒「僕、先生の顔が好きなんです。だから先生が男なら、姉か妹と付き合えたらって……」

家庭教師「うん。最低だねお前」

生徒「だってだってひどいですよこんなの」


生徒「もういいです。先生が男でも」

家庭教師「いやいやいや。なにを血迷ったことを言ってるんだ」

生徒「僕、いい大学入っていい会社入ってお金貯めて、先生に性転換手術を受けさせます」

家庭教師「おいこらやめろ。こわいこと言うな」

生徒「本気です」

家庭教師「目がこわいやめて」

生徒「僕のモチベ下げるようなこと言っていいんですか?今ここで先生が僕を否定したら僕の意気は消沈、受験も滑っちゃいますよ」

家庭教師「なにこの生徒こわい。どんな脅迫だ」

生徒「僕の成績下がったらクビですよ、先生。時給破格のこのバイト、クビになったら惜しいんじゃ…?」

家庭教師「く……」

生徒「決まりですね。にっこり」


家庭教師「こら、もっとちゃんと考えなさい。俺は本当に男なんだぞ、お前一度きりの青春を棒に振るつもりか」

家庭教師「ちゃんとかわいい彼女つくってイチャイチャしなさい」

生徒「だめです。先生の顔じゃないと」

家庭教師「顔かよ。どうでもいいけど殴りたいな」

生徒「暴力反対ですよ。とにかく僕が志望校合格したら付き合ってくださいね!」

家庭教師「ええ……俺は普通に女の子が好きなんだけど……」

生徒「僕もです」

家庭教師「……。じゃあ、今の志望校よりもっと偏差値高いこの大学に合格できたらいいよ」

生徒「そこに合格したら性転換してくれますか?」

家庭教師「なにちょっと条件変えてんだよ。さすがに性転換はNG。だけど付き合うだけならいいよ」

生徒「まあいいか。いいですよ先生!のりました!女に二言はありませんね!?」

家庭教師「だから俺は男だよ」


受験まで5カ月


生徒「こんにちは先生。今日も愛くるしいですね」

家庭教師「男に愛くるしいとかやめて きもい……こんにちは」

生徒「なんでこんなにかわいいのに男なんですか畜生。どうりでずっとスカートはいてくれないなって思ってたんですよ」

家庭教師「普通気づくだろ。まあ日本人男性の約1割が潜在的同性愛者らしいからね……」

生徒「へえーまあ僕には関係ないですね」

家庭教師「じゃあ俺のこと諦めてよ。俺も女の子とイチャイチャしたいよ」

生徒「百合は大好きですよ」

家庭教師「お前は、人の話を本当に聞かないね?」


生徒「今日の勉強終わりです!先生、僕けっこう今日よかったですよね」

家庭教師「うん、そうだね。苦手な物理もがんばってたし、練習問題も全部解けたね。えらいえらい」

生徒「やったー。じゃあご褒美に膝枕してください!」シュバッ

家庭教師「うおおお!?速ッ!?まだ了承してない!」

生徒「……」

家庭教師「……ど、どうしたの?」

生徒「固い……」

家庭教師「だろうね……」

生徒「うぅ……きっと先生の膝枕はふにふにでマシュマロみたいで気持ちいいだろうなって初対面から思ってたのにぃ」

家庭教師「初対面でそんなこと思われてたのか……」

生徒「先生……。先生のお母さんって何歳ですか?」

家庭教師「俺の母親を狙わないでくれないか?」


受験まで4カ月


家庭教師「信じられないな。たった2か月でこんなに偏差値を上げられるなんて」

生徒「愛の力って偉大ですよね。このままいけば第一志望合格も夢じゃないですよね」

家庭教師「くっ。絶対無理そうな大学を選んで言ったのに…こんな展開になるなんて」ボソ

生徒「え?何か言いました?僕のこと大好きって言いました?」

家庭教師「言ってない」

生徒「ところで提案があるのですが」

家庭教師「嫌な予感がするから却下」

生徒「僕が今度の模試で偏差値アップできたら女装してくれませんか」

家庭教師「いやだよ!!だから却下だって言ったんだよ!!」


生徒「先生は生徒の成績アップを素直に喜べないんですか!?」

家庭教師「嬉しいけど!嬉しいけどさ!女装がなけりゃもっと嬉しいよ!」

生徒「この条件をのんでくれなければ、今ここで叫び声を上げて母親が駈けつけたところで”先生に乱暴された”と涙ながらに訴えますよ」

家庭教師「お前は悪魔か?先生を脅すんじゃないよ」

生徒「別にいいじゃないですか、減るもんじゃあるまいし」

家庭教師「プライドが擦り減るわ。はぁ……分かったよ、ただし偏差値合計で5以上上げてね。そうじゃなきゃダメ」

生徒「いいですよ。言いましたね?グフフ……」

家庭教師「……やっぱ10以上アップで」

生徒「グフフ」


受験まで3カ月


家庭教師「う、うそだ」

生徒「えっへへ」

家庭教師「本当に10以上あげやがった」

生徒「僕やればできる子なんです。はい!というわけで先生にはこちらを着てもらいまーす!!」

家庭教師「いやだぁぁぁぁぁぁ!!!セーラー服なんて絶対着たくないぃぃぃぃ!!」

家庭教師「年齢的な意味でも性別的な意味でも!!ごめん許して!!ごめんなさい!!」

生徒「四の五の言わずに着てくださいよ。絶対似合いますから大丈夫ですよ」

家庭教師「それがほんと似合わないんだって。文化祭で女装したけどさ、ほんと似合わないんだよ俺」

生徒「ええっ文化祭で!?行きたかった……まあいいや、いま見れるから。はいあっちで着替えてきてください」

家庭教師「うぐぐ…」


家庭教師「……はあ。……着替えたよ」

生徒「いえーい!じゃあかわいく入室してきてくださーい!」

家庭教師「失礼しまーす……」

生徒「ヒューヒュー!先生かわ…………」

家庭教師「……」

生徒「……かわいくない……」

家庭教師「だからさ?言ったじゃん!?」

生徒「そんな……だって顔は女の子にしか見えないのに……スカートから伸びる足は筋張っててガニ股気味だからなんかミスマッチ……」

生徒「ってギャアアアアアアアアア!!なにすね毛生やしてんですかーーー!」

家庭教師「生えるよそりゃ」

生徒「ちゃんと処理してくださいよぉぉ!!マナーでしょ!?」

家庭教師「いや男だし……」


生徒「はっ。わかりました。ミニスカだから足の筋に違和感がでるんだ。こっちの長いスカートはいてみてください」

家庭教師「ていうかつっこんじゃだめかもしれないけど、なんでお前がこんなに女子の服を普通にもってるのかな」

生徒「まあ細かいことはいいじゃないですか。うん!やっぱりロングスカートだと完璧女の子にしか見えませんね。はぁ〜〜よかった」

家庭教師「いや、これでも十分男に見えるけどな」

生徒「主観的観測ですよそれは。あ〜かわいい!先生すごいかわいい!やっぱ性転換しよ!」

家庭教師「いやだよ馬鹿。もー馬鹿」

生徒「もったいない……」


受験まで2カ月


生徒「わーい ついに第一志望もB判定がとれるようになったぞ」

家庭教師「くそ……いや嬉しいんだけど……嬉しくないっ……」

生徒「先生。ところであれやりましょうよ」

家庭教師「なに?」

生徒「僕が問題間違えるごとに先生がキスするゲーム」

家庭教師「はじめて聞いたな、そんな意味のないゲーム」

生徒「ゲームに意味もなにもありませんよ。ただ僕のやる気が上がります」

家庭教師「もう十分すぎるほどあるでしょうに」

生徒「いいんですか?そんなこと言って」

家庭教師「こいつ、また先生を脅す気か。このくそガキャ……」

生徒「うわあ先生こわーい。普段温厚なくせにキレると怖いタイプなんですか?」

生徒「でも別にノープロブレムですね!はい、ゲームやりましょう」

家庭教師「待て やるとは言ってません」


生徒「先生、ひどい。先生は僕がこんな簡単な問題すら解けないと思ってるんですか?」

家庭教師「わざと間違えたりするんじゃないの」

生徒「僕は曲がりなりにも受験生ですよ?そんなことプライドが許しませんよ」

家庭教師「……分かったよ。じゃあやってみて、その問題。5分ね」

生徒「はい。……あっ!いっけね!足し算間違えた!はい先生キスしてください」

家庭教師「お前はいっそ清々しいほど前言撤回するなぁ」

生徒「隙ありぃ!」

家庭教師「あっ おい」


ギャンッ!!


家庭教師「んんーーーー!?」

眠いのでここまでにしときます…

家庭教師「おいおい、なにしてくれてんのかな?とりあえず離れなさい」

生徒「……グスッ」

家庭教師「なんでお前が涙目なんだよ。泣きたいのは教え子に唇奪われた俺だよ全く」

生徒「甘酸っぱくない……レモンキャンディーの味じゃない……」

家庭教師「夢見すぎだ」

生徒「それどころか……トンコツラーメンの味がしました……」

家庭教師「バイトの前に友だちとトンコツラーメンとチャーハン食ってきたんだ」

生徒「うわーん!僕たちのファーストキスがトンコツ味なんてやだー!」

家庭教師「僕たち?」

生徒「えっ」

家庭教師「俺は初めてじゃないよー」

生徒「うわーん!」


家庭教師「何回か女の子と付き合ったことあるし。キスくらいしたことあるよ」

生徒「僕は初めてだったのに!先生の馬鹿!」

家庭教師「いやいやいやいや……」

生徒「ていうかキスしたのに反応が薄いところもやだ!もうやだ!不貞寝してやる!」

家庭教師「ちゃんと宿題やってからにしなよ。じゃあ俺はそろそろ帰ろうかな」

生徒「いや冗談ですよ。もうちょっとお話しましょうよ」

家庭教師「話って例えば?」

生徒「先生の好きなタイプが知りたいです」

家庭教師「タイプか……あえていうなら年上で普段クールだけど俺にだけ頼ってくれたりとかそんな感じの女の子がいい」

生徒「僕と全然違う。訂正を求めます」

家庭教師「えっ……俺が訂正するの」



家庭教師「じゃあお前のタイプはどんな女の子なの」

生徒「顔がかわいければ、なんでもいいです」

家庭教師「うん、そう言うかなって思ってた。聞いてごめんな」

生徒「料理上手で抱き心地がよければなおよいです。あ、やらしい意味でなく」

家庭教師「ふうん。なんか意外に普通だね」

生徒「はい。好きです先生」

家庭教師「あ、うん」

生徒「リアクションうっすい!でもちょっと面倒くさそうな顔も好きです先生」

家庭教師(育て方完全に間違えたな)


受験まで一カ月

生徒「はぁ…はぁ…はぁ…あと一カ月…ちょっとさすがに僕も緊張してきました」

家庭教師「成績的には十分合格の可能性はあるよ。大丈夫大丈夫」

生徒「先生……僕最近不安で眠れないんです……」

家庭教師「今まで頑張ってきた自分を思い出して。努力は裏切らないから」

生徒「あの、そういう使い古された御託はいいんで、とにかく添い寝してくれませんか?」

家庭教師「せ、せっかく先生らしく励ましてたのにひどい言われようだ!」

生徒「今日両親帰ってこないんで、先生泊まってけばいいじゃないですか」

家庭教師「そういうわけにはいかないだろう」

生徒「そんなぁ。僕は受験のストレスと一人ぼっちの夜の寂しさに押しつぶされそうなのに……身捨てるんですか?かわいい教え子を」

家庭教師「でも常識的に考えてそういうのはなぁ。ごめんね」

生徒「……」


生徒「先生お願いします。別に一緒の部屋がいいとか言いませんから。客間ありますから!母にも父にも電話して了承とります!」

家庭教師「やけに熱心だね。まさか夜這いとかしてこないよね」

生徒「しません。しませんとも。僕本当に不安なだけなんです」

生徒「自分で言うのもなんなんですけど、両親は結構僕に期待してるんですよ」

家庭教師「うん」

生徒「僕は昔から割と要領よかったんで……二人は手のかからない子って思ってるみたいで」

生徒「今回の受験だって、僕なら一人で難なく合格できるって思ってる節があって」

生徒「……それが逆にプレッシャーなんです。夜はなんか悪い想像ばっかりしちゃって」

家庭教師「……」


生徒「先生……」

家庭教師「……はぁ」

生徒「……」

家庭教師「分かったよ。でも今日だけだからね」

生徒「先生ありがとう!父と母に電話してきますね!やったー!」

家庭教師「こらこら、夜なんだから騒がないの」

生徒「計画通り…ッ」

家庭教師「うん せめて一人っきりになってから言おうね、そういう台詞はね」


生徒「先生ご飯なに食べます?出前取りますよ。お寿司?ピザ?ラーメン?」

生徒「あ、手料理つくって頂いても一向に構いませんけどね」

家庭教師「俺料理苦手だから、悪いけど出前で」

生徒「別に下手でも僕のために一生懸命作ってくれた、愛情たっぷりの料理ならまずくても構いませんけどね」

家庭教師「悪いけど、味噌汁の作り方さえも分かんない。出前とってくれないかな」

生徒「じゃあ…せめて…エプロン姿だけでも…」

家庭教師「なんで出前でエプロン必要なのかな。ほら、なににするか決めよう」

生徒「うぅ……」


生徒「お腹いっぱいになりましたね。あとはお風呂入ってイチャイチャして寝ましょうか」

家庭教師「不必要な過程がひとつまぎれていたね」

生徒「え?そうですか?まあ、とりあえず先生お先にお風呂どうぞ」

家庭教師「いいの?じゃあ遠慮なく」

生徒「あ、安心してくださいね。別に覗いたりしませんから」

家庭教師「そういう台詞が飛び出すこと自体なんか不安なんだけど」

生徒「なんで僕が、わざわざ先生が男であることを再確認しなくちゃいけないんですか。最悪です。男の裸なんて見たくもありません」

家庭教師「それもそうか。じゃあお先に」

生徒「ええ」



家庭教師「ふう、いい湯だな」

生徒「先生、パジャマ脱衣所においておきますから」

家庭教師「あ、うん。悪いね」





家庭教師「……」

家庭教師「これって……」


家庭教師「あのさ」

生徒「あ。湯加減どうでした?」

家庭教師「うん、良かったよ。ごめん、パジャマのことなんだけどね」

生徒「ああ よくお似合いで。先生かわいいです」

家庭教師「着替えを貸してもらってる身でこんなこと言うのも心苦しいんだけどね。ほかの着替えないかな」

生徒「ないです。ごめんなさい。でも似合ってるしいいじゃないですか」

家庭教師「この年になって……真っピンクの着ぐるみパジャマはほんっときっつい……」

家庭教師「精神的に……きつい……」

生徒「でもその分僕、元気でてるんで大丈夫です!なんか合格できそうな気がしてきた!」

家庭教師「それはなによりだけど……ほんとに俺これで寝なきゃだめなの……?」


家庭教師「そろそろ寝よう。夜更かしはだめだよ」

生徒「ええーまだ10時じゃないですか。ゲームやりましょうよ、スマブラ」

家庭教師「だめだめ。明日はどうせだから早起きして受験勉強しよう。今が正念場なんだからね」

生徒「ちぇ、分かりましたよ。じゃあ寝る前に30分だけお話しましょう」

家庭教師「今まで散々話したでしょ」

生徒「まだ足りません!」

家庭教師「ああ、もう分かったから。そんなにじーっと見ないで。なるべく早く寝るんだよ?いい?」

生徒「はい。オッケーです」


生徒「先生の、そのなんだかんだでお願い聞いてくれる、ちょろ……いえ、優しいところが好きです」

家庭教師「ちょろいって言いかけなかった?このやろう」

生徒「空耳ですよ」

家庭教師「全く……。ていうかお前が好きなのは俺の顔なんだろ」

生徒「まあ顔が1番好きです。でも先生の優しいところが2番目に好きですよ」

家庭教師「はいはいどうも」

生徒「あとは先生が女の子だったらほんと完璧なんですけど。天は二物を与えませんよね……」

家庭教師「聞き捨てならないな」


家庭教師「なんか俺がすでにもう眠いや。もう寝ようか…おやすみ」

生徒「やっぱ客間行っちゃうんですか……残念」

家庭教師「当たり前でしょ」

生徒「お休みのチューは」

家庭教師「ないに決まってるでしょ。なに自然にリクエストしてるんだ」

生徒「知りませんよ。僕が受験失敗してから、『あのときおやすみのチューをしとけばよかった』って後悔することになっても、僕は知りませんよ」

家庭教師「ことあるごとに受験をネタにして脅迫するのやめようよ!先生の良心を攻撃しないでくれよ」

生徒「ことは一刻を要します!ハリーアップ!ハリーアップ!」

家庭教師「ええ?ええー……さすがにそれは俺もゲロ吐くレベルというか」

生徒「僕の精神に∞のダメージです!責任とってキスしてください!」

家庭教師「ええー…」


家庭教師「ああもうわかったよ。じゃあ目を閉じて」

生徒「うわあなんか緊張してきた!はい!」

家庭教師「はい」プニ

生徒「ぷにってした!ぷにってした!レモン味!」

家庭教師(口じゃなくて、指だけどね)

生徒「わーい!おやすみなさい先生!いい夢見れそうです!」

家庭教師(嬉しそうだからいっか…)





家庭教師「……ん」

家庭教師「ん?どこだここ……あ、そうか。生徒くんの家に泊まったんだっけ」

家庭教師「起きなきゃな………。あれ?」

生徒「……」クークー

家庭教師「うおーーーーーーーーーい」


家庭教師「起きなさい。起きなさいこの野郎」

生徒「あー布団返してくださいよー」

家庭教師「なんで俺の布団の中にお前が潜り込んでるのかな。お前は自分の部屋で寝てたはずだよね」

生徒「夢遊病ってやつですね」

家庭教師「なるほど、なら仕方ない。って納得するとでも?」

生徒「うーん、相変わらず固い胸筋しかない……うぅ」

家庭教師「ひっつくな。話を聞きなさい」

生徒「先生朝ご飯は和食派ですか?パン派ですか?シリアルですか?」

家庭教師「あーもう、とりあえず離れなさい、むさ苦しい!」

生徒「退けない戦いがここにある…!」ギギギ

家庭教師「そのパワーは入試のために温存しとけ!」ギギギ



受験まであと一日


家庭教師「とうとう明日が入試だね。天気もよさそうだしよかったよ」

生徒「そうですね」

家庭教師「焦らず自分のできる問題から取り組むんだよ。悔いの残らないように、自分の全力をだしといで」

生徒「はい」

家庭教師「生徒くんなら、絶対合格できるよ。ずっとお前の勉強を見てきた俺が言うんだ、自信もってな」

生徒「先生。お言葉すごい嬉しいんですけど、約束覚えてますか?」

家庭教師「約束?なにそれ」

生徒「うわーひどい!!僕さすがに泣きますよ!!」

家庭教師「うそうそ冗談。合格できたらお前と付き合うって話だろう」

生徒「まあ、第一段階としては」


家庭教師「性転換は一生しないからな!それだけは無理だからな!」

生徒「それだけは……ってことは、付き合うのはいいんですか」

家庭教師「約束だしね。まもるよ。お前がまだそのつもりなら」

生徒「そのつもりですよ。ほ、本当にいいんですか」

家庭教師「まあ……俺は同性愛者じゃないけど、お前のことは嫌いじゃないし」

家庭教師「人生何があるかわからないしね。何事も経験だよ」

家庭教師「ただお前が、目が覚めてほかに好きな女の子ができたというならすぐに言ってくれよ。若いお前の時間を無駄にさせたくはないからね」

生徒「無駄だなんて、あり得ません。そんなこと絶対ないです。僕、先生が好きなんです」

生徒「ほんとは先生(♀)が理想ですけど。先生(♂)もそれなりに好きです」

家庭教師「それなりかよ」

生徒「うそです」



生徒「ほんとはかなり好きです。超好きです。ガチです。押し倒していいですか」

家庭教師「やめて」

生徒「先生のこと好きなんで、明日も絶対合格します。先生は結婚式場の予約して待っててください」

家庭教師「結婚!?」

生徒「式場の予約の後、一緒に入る墓石の見積もりまで済ませといてください」

家庭教師「墓!?」

生徒「てなわけで、明日頑張ってきますね」

家庭教師「う、うん。頑張ってきなさい」

生徒「はい」


―――――――


家庭教師「……」ソワソワ

家庭教師「今日が合格発表の日だっけな。まだ電話もメールもないか…」

家庭教師「……」

プルルルル

家庭教師「うおわっ!! ……もしもし」

生徒「あ、先生ですか?」


家庭教師「……どうだった?結果は」

生徒「……合格しました!」

家庭教師「! そ……そっか!よかった……!」

家庭教師「連絡が遅いから、心配したんだよ。あー……ほんとにおめでとう。ご両親も喜ばれてることだろう」

生徒「はい、すごい喜んでます。合格できたのも先生のおかげです」

家庭教師「俺はなにもしてないよ。頑張ったのはお前だし」

生徒「でも先生とイチャイチャしたり、あわよくば手術受けさせて女の子にしたい一心で勉強頑張ったんですもん」

家庭教師「もうちょっと言葉を選ぼうか」


生徒「ところで先生いまどこです?ざわざわした音が聞こえてきますが」

家庭教師「ああ、今日は大学に用があってね。いま帰ってるところ」

生徒「僕も合格発表見て、いま外にいるんです。よかったら待ち合わせしませんか?」

家庭教師「うん、いいよ。じゃあ駅前で待ってるから」

生徒「はい、30分くらいで着きます」

家庭教師「俺も」


駅前

家庭教師「人が多いな。生徒くんはもう来てるかな」キョロキョロ

家庭教師「いないな。まだか」

「せんせーい!」

家庭教師「……ん?」




セーラー服を着た高校生「先生、お待たせしました」

家庭教師「……え?」

セーラー服を着た高校生「はい?」

家庭教師「え」


家庭教師「失礼ですけど、どなたでしょう」

生徒「やだな、先生。僕です、生徒ですよ」

家庭教師「え。なんで。え。セーラー服……え」

生徒「別に隠すつもりはなかったんですけどね。聞かれなかっただけで」

生徒「僕、女の子ですよ」

家庭教師「え」

家庭教師「ええええええええええええええええええええ?」



家庭教師「いやそんなわけない。僕って!僕って言ってただろう!?」

生徒「小さいときからの癖で」

家庭教師「お前が女なら、なんで俺を女にしたがったの。おかしいでしょ」

生徒「僕ガチレズなんで。女の子にしか興味ありません。女の子大好き」

家庭教師「……マジか」

生徒「マジなんです」


生徒「先生。私合格しましたよ」

家庭教師「あっ……ああ。そうだ。ショックで忘れてた。おめでとう」

生徒「えへへ。約束果たしてくれますか?」

家庭教師「うん」

生徒「僕が女の子でホッとしました?」

家庭教師「いや」

生徒「え?」

家庭教師「お前が男でも、女でも、なんかあんまり心情に変化はないな。そりゃびっくりしたけど」

家庭教師「顔はそのままだし。性格も性別関係なくひどいし……うん、よく考えればいつも通りだね」

生徒「サラッとひどいことを言われた気がしますが、まあいいでしょう」



生徒「僕もですね、最初は先生が女の子じゃないって知った時には、その場で股にぶら下がってるもんちょん切ってやろうかと思ったんですが」

家庭教師「そんなこと考えてたんだ!?怖いよほんとお前」

生徒「だんだん、なんかこう、先生は先生だなって思って。別に女の子じゃなくてもいいかなって」

家庭教師「よかった。ちょん切られなくて」

生徒「ていうわけで付き合いましょう。僕たち」

家庭教師「お互いがお互いの性別を勘違いしてたなんて、俺たちくらいのもんだろうね。まあ、よろしく」

生徒「よろしくお願いします」


生徒「ぐふふ」

家庭教師「男だと思ってスルーしてたけど、女の子の笑い方としてそれはどうなんだろう」

生徒「だって嬉しいんです。この春休みはまずデートして、結婚して、墓石を買いましょうね」

家庭教師「いろいろとすっ飛ばしすぎだよ。デートだけで勘弁してくれ」

生徒「先生、好きです」

家庭教師「……」

生徒「先生大好きです」

家庭教師「えっと、……俺も……好きです」


生徒「! ……かわいい先生が世界で一番、僕は大好きです!」ギュッ

家庭教師「おいっここ駅前だって、飛び付くな!ちょっと!」



おわり

読んでいただいた方ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年07月08日 (火) 08:34:21   ID: u_z1NjS6

なかなかだった

2 :  SS好きの774さん   2014年07月13日 (日) 02:51:03   ID: FSOtHMHE

いいな

3 :  SS好きの774さん   2014年09月30日 (火) 00:43:36   ID: VDEDuZ1i

ふふってなる

4 :  SS好きの774さん   2016年09月12日 (月) 14:10:59   ID: woyZBvxs

二人ともかわいい

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