冬馬「失恋ドーナツ」 (26)


春香「ありがと、冬馬くん。いきなり呼び出したのに来てくれて」コトッ

冬馬「ったく……早く済ませてくれよ、こちとら疲れてんだ」

春香「うん」

冬馬「……うめぇ」

春香「そう? よかった」

冬馬「天海が作ったドーナツじゃねえだろ。まぁ、おごってもらって有難いけど」

春香「あはは……」


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冬馬「それで?」

春香「え?」

冬馬「いきなり俺を呼び出して『ドーナツ食べない?』で終わり、じゃないよな」

春香「あはは……鋭いなぁ」

冬馬「当たり前だ。何年765プロのライバルやってると思ってる」

春香「もう、いい加減に友達、って認めてくれてもいいのに」

冬馬「おっさんが面倒だからな、ライバルってことにしとけ」

春香「うん」


冬馬「で、どうしたんだよ」

春香「えーっと……」

冬馬「天海、食わないのか。ポンドリング」

春香「た、食べるよっ」

冬馬「食わないならもらおうと思ったんだけどな」

春香「それにしても冬馬くん、甘党だね」

冬馬「あまとうって言うな!」

春香「あだ名じゃないってば……」


冬馬「悪いな、茶化して」

春香「ううん、おかげで言う決心がついた」

冬馬「おう」

春香「……実はね、私」

冬馬「……」

春香「プロデューサーさんのこと、好きなの」

冬馬「…………」

春香「あのね、ずっと昔から」

冬馬「何を今更……」


春香「……えっ?」

冬馬「知ってるっつーの。そんなの」

春香「え……えええっ!? だ、だって私、誰にも」

冬馬「ずーっとアイツのこと見てんじゃねえかよ。嫌でも気づくわ」

春香「そ、そんな……」

冬馬「少なくとも俺は、2年前から知ってたけどな」

春香「2年前?」

冬馬「おう」ムシャムシャ


春香「……」モグモグ

冬馬「結構、ショックだった」

春香「うん……」

冬馬「『ごめんなさい』よりも、『好きな人がいるんだ』の台詞がな」

春香「……そんなこと言ったっけ」

冬馬「言ったろ」

春香「あんまり覚えてないなぁ、罪悪感で」

冬馬「なんか、悪ぃ」

春香「ううん、私こそごめんなさい」


冬馬「そんで、天海の好きな人って誰だーって夜通し考えた結果アイツになった」

春香「……その時にもうバレてたんだね」

冬馬「ああ」

春香「……」

冬馬「そんで、お前はどうしたいんだ?」

春香「え……?」

冬馬「好きで終わらせたくないんだろ」

春香「……告白したい」

冬馬「なら、頑張れ。俺はそれしか言えねぇよ」


春香「でも、美希もきっとプロデューサーさんのこと、好きだと」

冬馬「星井は関係ないだろ」

春香「……」

冬馬「天海がアイツのことを好きなら、他の奴なんか関係ねえ」

春香「……でも」

冬馬「星井に気を遣う方が、失礼だと思うぞ」

春香「失礼?」

冬馬「きっと星井なら、天海がアイツを好きだって分かってても告白すると思う、俺はな」


春香「……うん」

冬馬「なんでか分かるか?」

春香「…………分からない」

冬馬「星井は天海のことが大好きだからだ」

春香「私だって美希のこと……」

冬馬「本当に星井のことを考えてるなら、遠慮すんな」

春香「……」

冬馬「正々堂々と行かないのは相手にも失礼だ」

春香「……うん」


冬馬「……天海」

春香「……?」

冬馬「それ、食わないなら俺が」

春香「だから食べるって!」

冬馬「いつまでポンドリング食ってんだよ。ゴールドチョコレートを俺にくれ」

春香「あげないってば! 冬馬くんには抹茶ポンドリングがあるじゃん!」

冬馬「これは最後にとっとく。お楽しみだ」

春香「何言ってるのっ」


冬馬「ほーら」

春香「え?」

冬馬「その元気がお前の魅力、なんだろ?」

春香「……へ?」

冬馬「その勢いでアイツに言ってみろよ」

春香「冬馬くん…………」

冬馬「……さ、食おうぜ」

春香「……うんっ」


春香「今日はありがと。またお茶しようね」

冬馬「ああ。お前の方が忙しいんだから、俺様と話すならちゃんとスケジュール調整しとけよ」

春香「あはは……じゃあ、またね」ガタッ

冬馬「おう」

春香「冬馬くんはまだお店出ないの?」

冬馬「俺はこの後、別のドーナツを追加で頼む」

春香「もう……太らないようにね」

冬馬「分かってるよ」

春香「それじゃっ」

冬馬「じゃーな」


冬馬「……渋澤のおっさん」

渋澤「なっ!?」ガタッ

冬馬「これ、記事とかにしたら許さねえぞ。誰にも伝えんじゃねえ」

渋澤「俺がここにいるって知ってたのか、お前」

冬馬「気配で分かる」

渋澤「なんだそれ」

冬馬「あと、録音も消せよ」

渋澤「ちっ……」


冬馬「罰としてドーナツおごりな」

渋澤「なんだと!? こんな店にひとりで入った俺の気持ちもちょっとは考えろ!」

冬馬「うるせぇ。おっさんに言いつけるぞ、俺のことつけ回してるって」

渋澤「くそっ……」

冬馬「シュガーチュロスとグラタンパイな」

渋澤「……ところで、お前」

冬馬「ん?」


渋澤「いつの間に天海春香に告白してたんだ?」

冬馬「……言ったろ、2年前だよ」

渋澤「2年前、ねぇ」

冬馬「アイドルアルティメイトで俺らが、765プロに『僅差で』負けたあの時な」

渋澤「社長が激怒してたあれか。あと結構差がついてたぞ、票数」

冬馬「まあ、ダメだったけどな。喋った通りだ」

渋澤「……そうか、お前はロリコンじゃなかったんだな、安心した」

冬馬「うっせーな、勝手に安心してんじゃねえ!」

  おわり


 報われないあまとうは相当な乙女だと思います。
 お読みいただき、ありがとうございました。お疲れ様でした。

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