女勇者「世界を滅ぼす」 (28)

グロ注意

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 ある街の住居などの建物が炎に包まれ、黒煙が立ち上り、辺りが暗いにも関わらず、周囲に紅蓮の光源を齎している。

 その街の住人には何が起きたか分からない。いつものように安穏たる生活を送っていたのだが、その直後、凄まじい爆発音が聞こえた。

 彼らは興味本意の野次馬根性丸出しで外に出る。

 そこで彼らは思わぬ現象を目の当たりにした。

 次々に彼らの住居が木っ端微塵に吹き飛ばされ、その瓦礫の残骸が吹き荒れる。

 その暴風の中を少女は悠々自適に歩いていた。

 彼女はボサボサの長髪に焦点の合わない瞳。その手には彼女の身の丈以上の大剣が握られていた。

 それを見た瞬間、ひとりの町人が後退りながら呟いた。

「あ、あれは女勇者……!」

 その呟きを聞いた他の町人たちは、口々に喚き始める。

「嘘だろ!」

「史上最悪の勇者がついに俺たちの街まで壊しに……っ!」

「うぁあああ! 嫌だ。俺はまだ死にたくない!」

「おい待て! お、俺だってまだ―――」

 まさに阿鼻叫喚の地獄絵図である。

 彼女の正体を知った瞬間、彼らは一斉に逃げ出した。

 その逃げる途中、転倒する者たちがいた。

 だけど彼らはそれを気にも止めず、邪魔だと言わんばかりに転倒した者たちの全身を踏み付け、そのまま走っていった。にも関わらず町民の行き着いた先には、もうすでに女勇者は立っていた。

 彼女は手をだらーんと怠そうに下げ、焦点の合わない視線が町民たちを捉える。

 ゴクリと誰かが喉を鳴らした。それを区切りに一方的なまでの虐殺が始まった。

 まずは町民たちの先頭に立っていた者が標的になった。

 先頭にいた者は、尋常ではないほどの汗をかいていた。

 直後、女勇者は動いた。身の丈ほどはある大剣を振るい、先頭にいた者の首を切り落としたのだ。

 すると、身体の切断面からは、まるで噴水のように赤黒い液体が吹き出していた。

 ボトッと地に落ちた生首は、一瞬ギョロリと女勇者に視線を向けた。その光景は不気味だったのだが、それはすぐに機能を停止した。

 それから数分後。辺りには血の海が広がっていた。

 大剣に付着した血液を振り払い、バラバラに解体された死体を袋に詰める。途中、死体の中から呻き声が聞こえたが、彼女は無視した。

「今晩は御馳走」

 袋いっぱいに詰めた死体を背負い、そのまま彼女は地を駆け抜ける。

「魔王ちゃんも喜んでくれるよね」

 そして―――暗雲が空を覆い隠した薄暗い魔王城に到着した。

 そのまま彼女は魔王の待っている地下室に降りた。

 その室内には筒型の巨大な容器が設置されており、その中には絶世の美女と呼んでも違和感のない女性が容れられていた。

「魔王ちゃん、ほら今日はこんなに狩ったんだよ?」

 返答はない。それは当然のことだろう。何故なら容器の中の人物はもうすでに死んでいるからだ。

「凄いでしょ、えへへ」

 今の彼女の様子は実に痛々しいだろう。死体の前で淡々と独り言を言っているようなものである。

今日は終わりです

 時を同じくして、とある王城。その城内にある大広間の一室に大きな円卓が置かれてあり、その円卓を囲うように各国の国王たちが座り、議論を交わしていた。

「だから私は言ったのだ、勇者は生かして利用すべきだと!」

「ふざけるな! 貴様とて勇者を危険視していたではないか!」

「そもそも勇者を暗殺しようとしたのが間違いなのだ!」

 そんな自らの失態を悔いるような言動ばかりを繰り返す他国の王たちに彼女は辟易していた。

(なんと愚かな方たちなのでしょう)

 彼女は女勇者の育った国を統べる女王の代理として、この会議に出席していた。

「女王代理は此度の勇者暴走をどう考える」

「私の母、女王陛下は勇者暗殺には反対していたはずです。それを貴方たちが…!」

 そこで彼女は自分の発言はただの責任転嫁でしかないことに気付き、ひとつ咳ばらいをした後、さらに言葉を続けた。

「失礼、彼女が狂人になった原因は、私たち王族です」

 その発言に怒り狂った各国の王たちは、口々に彼女を責め立てる。

「口を慎め、若造。大体、あのような者を勇者にするのがそもそもの間違いだったのだ!」

「そうだ、あれでは魔王よりもタチが悪い!!」

「この件、きちんと責任は取るんだろうな!!」

「大体、女王はどうしたのだ! このような若造をこの円卓に座らせるとは!」

 その時、室内に怒声が響き渡った。

「黙れ、貴様ら。それでも王か!!」

 その声は、円卓に座る王たちの中でも最も位の高い王だった。その怒声を浴びた者たちは一斉に黙り込んだ。

「大勢で若者ひとりに責任を押し付けるな。それにその若き姫君の言う通りだ。彼女が狂ったのは、我らの責任だ」

 その断言に各国の王たちはようやく自覚した。女勇者を狂わせたのは、紛れもなく自分たちなのだと。

 そこで最も位の高い王が、言葉を付け足した。

「だが、あの者のせいで無関係な民の命が奪われているのだ。それを見逃せるわけがない。女王代理、それは分かっているな」

 その問いに女王代理は「はい」と肯定した。

「分かっておるならいい。彼女には死を持って償ってもらう」

 その発言に室内がざわめいた。

「で、ですが、陛下! それはつまり」

 そして、彼は宣言した。

「ああ、戦争だ」

今日はここまでです

 その晩、女勇者は夢を見ていた。彼女が女勇者になった日のことだ。

その日は、天気も快晴で彼女たちの出立を見送るように太陽が燦々と輝いていた。

 その頃の彼女は、身嗜みにも気を使い、清潔感に溢れる身なりをしていた。

 綺麗なロングヘアーに触れたら壊れてしまいそうな華奢な身体。そして―――今とは違い天真爛漫で常に笑顔を絶やさない。それが当時の彼女だった。

女王「―――すみません、女勇者。女の身でありながらこのような重い使命を背負わせてしまって」

 その詫びるような言葉に女勇者は、首を横に振り、無邪気な笑みを浮かべた。

女勇者「とんでもないです、女王さま。わたしはこの使命を与えられたことを誉れに思います!」

女王「……強いのですね」

女勇者「いえ、わたしは弱いのです」

 その言葉を女王は否定する。

女王「いいえ、あなたは強いですよ」

女勇者「えぇー、まだまだ弱いですよー」

女勇者「だって、まだ魔物をバッタバッタと倒せませんもん」

女王「ふふふ、そういう意味ではないのですけどね」

女勇者「?」

女王「そうね、でもまだまだ弱いなら仲間も必要よね。どうする?」

女勇者「むぅ、弱いけど仲間は必要ないもん!」

女王「だけど、万が一のために護衛は」

女勇者「もう、女王さまは過保護すぎますよー」

女王「ふふふ、よく言われるわ」

女勇者「あっ、女王さま」

女王「?」

女勇者「姫ちゃんはどこに行ったの?」

女王「うーん、最後まで貴女が勇者になるのを反対してたから多分拗ねて部屋にいるんじゃないかしら」

女勇者「旅立ちの挨拶はしようと思ってたのにー、もう」

女王「そうね、何か言伝でも」

女勇者「ううん、大丈夫です。それじゃあわたしはこれで失礼します」

女王「はい、行ってらっしゃい」

女勇者「はい! 行ってまいります、女王様―――」

 そこで彼女は目を覚ました。不快な夢だ。女勇者の気分は最悪だった。

 周りに転がる骸の山に辺りに漂う腐敗臭。その中で唯一、女勇者の不快な気分を癒してくれるのは眼前の筒型の容器にある美女の姿だった。

女勇者「ふふ、ふふふ、魔王ちゃん。魔王ちゃん、ふふふ、あはははは―――!」

 彼女は筒型の容器に縋るように抱き着き、そこで狂ったように笑い、沈んだ気分を高揚させる。

女勇者「ねぇ、魔王ちゃん。うん……分かってるよぉ。すべて壊せばいいんだよね」

女勇者「すべて…全て全て全て全て全て! ヒトも物も世界も―――全部全部ぜぇーんぶ魔王ちゃんの為に壊してあげる」

 そして彼女は立ち上がり、そのままその部屋を後にした

今日はここまでです。急に台本書きにしてすいません。

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