ミカサ「私の赤ちゃん」 (34)

〔ジャンル〕
『進撃の巨人』SS 原作3巻までのネタばれ有り


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860年 エレンとミカサの新居

ミカサ (今日もエレンは早く帰って来てくれるかしら)

ミカサ (調査兵団に入って10年……エレンの帰りを待ちながらこうして編み物をするのも悪くない)

ミカサ (産休の手持ち無沙汰を紛らわす為にはじめたが、これが中々面白い)

ミカサ (もうじき家族が増える喜びを噛み締めながら愛する人の帰りを待つ)

ミカサ (そう、私のお腹の中には新しい命が宿っている)

ミカサ (天国のお父さん、お母さん)

ミカサ (グリシャおじさん、カルラおばさん)

ミカサ (あなた達の娘、ミカサ=イェーガーは今……)

ミカサ (世界一の幸せ者です)

ミカサ 「グッ!」

ミカサ (お腹が苦しい……!)

ミカサ 「グウウッ! グハッ!」

ミカサ (苦し……エレン……助け……て……)

バタリ

エレン 「ただいま」

エレン (返事が無い。ミカサの奴出かけてるのか? まあいいや。自分で鍵開けるか)

ガチャリ、キィィ

エレン 「ミカサ、居ないのか……! ミカサ!」

エレン (ミカサが倒れてる!)

エレン 「ミカサ、しっかりしろ、おい! ミカサッ!」

軍病院 廊下

エレン 「アルミン、ミカサの容態は!」

アルミン 「エレン、気持ちは分かるが落ち着いて聞いて欲しい」

アルミン 「……母子共に予断を許さない容態だ」

エレン 「そんな……何だって……そんなことに……」

エレン 「俺のせいなのか?」

エレン 「なあ、アルミン。正直に言ってくれ。俺のせいなのか?」

アルミン 「エレンは……悪くないよ」

エレン 「なあ、本当は俺が悪いんだろ? 俺が巨人だから、巨人の子供を身篭ったことで
    ミカサの体に悪影響が出たんだろ?」

アルミン 「エレンのせいじゃないよ」

エレン 「じゃあ何なんだよ!? ……家に帰ってきたら、人一倍丈夫なミカサが部屋で倒れてて……
    脂汗かいてて……ここに連れてくるまでの間もうわ言のように俺の名前呼んで……
    俺……このままじゃ……」

アルミン 「分かった。正直に言うよエレン。ミカサの容態だが……」

アルミン 「母体の腹筋が強すぎて胎児を圧迫している。このままでは流産の恐れもある」

エレン 「えっ!?」

アルミン 「帝王切開で胎児を取り出すしかない」

エレン 「マジかよ……。てことは帝王切開したらミカサもお腹の子も助かるのか!?」

アルミン 「駄目なんだ……」

エレン 「駄目って何が?」

アルミン 「帝王切開しようにも医療用のメスじゃ、頑丈なミカサの腹筋に弾かれてしまうんだ!」

エレン 「そんな……アルミン、お前軍医になったんだろ? 頼む。助けてくれ!」

アルミン 「僕だって力になりたいよ。でも……」

エレン 「アルミン、お前なら分かるだろ? 俺がどんな気持ちでミカサを抱えてここまで来たか……」

アルミン 「分かってるさ! 立体起動装置使って病院の待合室に飛び込むなんて無茶する位だから
     エレンがどんなに必死か……そうだ!」

エレン 「どうした、アルミン?」

アルミン 「今エレンがつけている立体起動装置の刃を貸して。それでミカサを開腹する」

エレン 「そうか! 巨人のうなじを切れる刃ならいくらミカサの腹筋でも!」

軍病院 手術室

ミカサ (頑張って……私の赤ちゃん……お母さんも頑張るから……)

アルミン 「待たせたね、ミカサ。具合はどう?」

ミカサ 「下半身に麻酔をかけてもらってから少し楽になった……ってその刃は?」

アルミン 「対巨人用の刃だよ。ミカサだって何年も使ってきただろ」

ミカサ 「私が聞いてるのは……それを何に……使うの?」

アルミン 「ヘアラインの直ぐ上、横10センチ……」

アルミン 「僕がココ(ミカサのお腹)からエレンの赤ちゃんを出す!」

アルミン 「大丈夫、胎児さえ避ければ死にはしない、ただほんの一寸……」

アルミン 「痛いだけだぁ!」

ミカサ 「アルミン! 無茶はやめて!」

ガキイィィィン!

アルミン 「ごめん、エレン……」

エレン 「ごめん……ってどういうことだよ!?」

アルミン 「道具は人を選ぶ……幾ら特殊鋼で造られた対巨人用の刃を持ってしても、僕の腕ではミカサの腹筋に
     傷一つ付けられなかった」

エレン 「そんな……」

アルミン 「落ち込んでいる暇は無いよエレン。作戦を考えた」

エレン 「人のお産を軍事行動みたいに言うなよ」

アルミン 「エレン、君が刃でミカサのお腹を切れ」

エレン 「オイ!」

アルミン 「僕より斬撃の巧いエレンならミカサの腹筋を斬れるかもしれない」

エレン 「ちょっと待てよアルミン。これって手術だよな? 素人が切っていいものなのか?」

アルミン 「エレン、君には名医と名高かったグリジャおじさんの血が流れている」

エレン 「そりゃ父さんは医者だったけど俺は唯の兵士だぞ」

アルミン 「エレン、僕たちはいつか外の世界を探検するんだろ? 壁の外のずっと遠くには
     炎の水や氷の大地、砂の雪原が広がっている。僕の父さんや母さんが行こうとした世界だ」

アルミン 「ねえ、エレン。どうしてエレンは外の世界に行きたいと思ったの?」

エレン 「どうしてだって……そんなの決まってんだろ」

エレン 「俺が、この世に生まれたからだッ!」

アルミン 「だったら何を迷ってるんだ!」

エレン 「!」

アルミン 「君の子供だって将来同じことを思う筈だ。外の世界を見たい、知りたいって」

エレン 「君はもう直ぐ父親になるんだろ? 胎をくくれよ、エレン」

エレン 「……」











エレン 「そうだな、アルミン……目が覚めたよ」

エレン 「俺はミカサの腹筋をぶった切って二人共きっちり助ける!」

アルミン 「それでこそいつものエレンだ。僕が指示を出す」

軍病院 手術室

エレン (ミカサ、俺の子、二人とも今助けてやるからな)

エレン 「行くぞッ!」

アルミン 「いっけええええええええ、エレーーーーーーーン!」

看護師 「先生お静かに」

今日はここまで

色々医学面で指摘あるかと思うが(腹筋が強い方が安産って知らなかった)面白く読んで貰えれば幸いです

読んで下さった皆さん有難うございました

>>15 間違えた

訂正前
エレン 「君はもう直ぐ父親になるんだろ? 胎をくくれよ、エレン」

訂正後
アルミン 「君はもう直ぐ父親になるんだろ? 胎をくくれよ、エレン」

が正しいです

それではお休みなさい

エレン 「何でだよ……何で斬れないんだよ……」

アルミン 「……」

エレン 「……」

アルミン 「……これ以上、もう無理だ……これ以上……」

エレン 「アルミンお前、そんなこと言うのか……」

アルミン 「今、調査兵団の主力は壁外調査中だ。調査兵団でここに居るのは産休のミカサと
     ミカサの産休に合わせて特別に内勤にして貰えた僕達、それから負傷兵だけだ」

アルミン 「今病院に残っている調査兵団、いや近隣の駐屯兵団を合わせても今のエレンを越える斬撃が
     可能な兵士は居ない。つまり現在ミカサの開腹は不可能なんだ」

エレン 「アルミン、お前、これまで色々なお産に立ち会って来たんだろ? リコさんの子もサシャの子も
    お前が取り上げたんだろ。なのにミカサは諦めるのか?」

アルミン 「リコさんは安産だったし、サシャは難産だったけどここまで難しくはなかった」

エレン 「陣痛かと思ったら胎児が胎盤を齧ってたってやつか?」

アルミン 「うん。サシャの子は生まれた時に既に犬歯が1本生えてたんだ。ある意味サシャの子らしいね」

エレン 「ちょっとしたホラーだろ、それって」

エレン 「やっぱり感動するものなのか? 子供を取り上げるって」

アルミン 「仕事だし失敗は許されないから冷静ではあるけど、やはり嬉しいことに変わりないよ」

エレン 「これまでで一番、医者になって良かったと思った時は?」

アルミン 「クリスタのアソコを堂々と見ることが出来た時かな」

エレン 「……」

アルミン 「半分冗談だって。そんなに引かないでよ、エレン」

エレン 「半分かよ。じゃあ真面目に答えてくれ」

アルミン 「触診と称してクリスタに手マ○して、クリスタが帰った後、手を洗わずにオ○ニーした時かな」

エレン 「アルミンもう医者辞めろ」

アルミン 「非道いなエレン。僕だってその後、罰を受けたんだから」

エレン 「罰ってなんだよ? ユミル辺りにボコボコにされたのか?」

アルミン 「まだそっちの方が良かったかもね」

エレン 「どうしたんだ?」

アルミン 「クリスタの性病がうつったんだ」

エレン 「あいつ清純そうに見えてとんだビッチだな」

アルミン 「エレン、今の発言は許せないよ。クリスタがビッチな訳ないだろ」

エレン 「でも性病になるってそういうことだろ?」

アルミン 「エレン、性生活が乱れているから性病に罹るとは限らないんだ。特定の相手としか性交渉しなくても
     その相手がたまたま病気を持っていたらうつされることがあるんだ」

エレン 「そういうものなのか?」

アルミン 「うん。クリスタに病気をうつしたユミルがビッチなだけだよ」

エレン 「オイ!」

エレン 「あの二人って本当にそういう関係だったのか?」

アルミン 「愛の形は人それぞれだよ。病気の感染は悪いことだけど、人と人との交わりがある以上
     完全には避けられないんだ」

アルミン 「だからこそユミルの性病がクリスタにうつって……」

アルミン 「クリスタを治療中にその性病が僕にうつった」

エレン 「アルミンのは自業自得だろ」

ミカサ 「くだらない話をする暇があったらこっちを気にして欲しい」

ミカサ 「今は世間話をしてる場合ではない」

エレン 「悪い」

アルミン 「ごめん、ミカサ」

ミカサ 「要はエレン以上の斬撃の使い手がいればいいのね」

アルミン 「そうだよ。でも……」

ミカサ 「だったら、ここにいる」

ミカサ 「私の特技は肉を削ぐこと」

エレン 「何言ってんだよ……。手術を受けるのはお前なんだぞ!」

ミカサ 「麻酔は下半身のみ。上半身は動かせる」

アルミン 「無茶だ! いくらミカサでも自分で開腹するなんて。文字通り自殺行為だ!」

ミカサ 「私は東洋人の末裔」

ミカサ 「古来、東洋には『ハラキリ』といって刃物で自分のお腹を切るノウハウがある」

ミカサ 「私は死なない。お腹の赤ちゃんも死なせない」

アルミン 「分かった」

エレン 「アルミン……」

アルミン 「他に方法が無い。ミカサの『ハラキリ』に賭けよう」

1です
これから飯食うので1時間くらい空けます

エレン 「なあ、アルミン」

アルミン 「今はミカサを信じよう」

エレン 「ああ……。俺が言いたかったのは……その……男親ってこういう時無力だな」

アルミン 「僕も医者になって思い知らされたよ。『母は強し』さ」

ミカサ (さあ、出ておいで)

ミカサ (お母さんが、あなたに腹筋(かべ)の外の世界を見せてあげる)

ザシュッ









オギャア オギャア オギャア

アルミン 「……二人ともおめでとう、元気な男の子だ」

エレン 「ミカサ、よく頑張ったな」

ミカサ 「ミカサじゃない」

エレン 「え?」

ミカサ 「これから私のことは『お母さん』と呼んで。 いい? 『お父さん』」

エレン 「そうだったな、俺達今日から『お父さん』と『お母さん』になったんだもんな」

ミカサ 「この子、鼻筋はお父さん似かしら、フフッ」

エレン 「目元はお母さん似だな」

ミカサ (天国のお母さん、カルラおばさん)

ミカサ (私は二人のような母親になります)

ミカサ (天国のお父さん、グリシャおじさん)

ミカサ (エレンはきっと二人のような父親になるでしょう)

ミカサ (そして私達は世界一幸せな家族になります)





アルミン (どうしよう……こんな空気じゃとても言えないよ。胃が痛いなんてもんじゃない……)

アルミン (何故気づかなかったんだ……)

アルミン (今度は……ミカサの頑丈な腹筋を縫合出来る、丈夫な針と糸が無いんだ!)

おわり

短いですがこれでおわりです。
読んで下さった方有難う御座いました。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月04日 (火) 21:49:09   ID: 8v4efF5-

あ、 ミカサ逝ったの?

それだけでは死なないと思うけど……………………

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