【咲-Saki-】穏乃「さよなら君の声」 (46)

ましろ色シンフォニーっぽい展開の咲-Saki-SSです
http://www.youtube.com/watch?v=fjSW7KrWDgI

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1377401688

憧「いたっ! ツチノコーっ!」

玄「うわわ」

和「はぁ、はぁ…謎の動物なんているわけがないじゃない、ですか…」ゼエハア

憧「あたしたちの前に現れたのが運の尽きよ! さあ大人しくお縄につきなさーい!」

穏乃「とうっ! 捕まえ…た!」グイッ

??「キュー!」

憧「でかしたしずっ! …ってなにこのブッサイクな生き物」

和「あ…!?」フルフル

穏乃「どしたの和? この生き物のこと知ってるの?」

和「そのつぶらな瞳…丸っこい身体…黄色い嘴…」フルフル

和「エトペンじゃないですか…!」

エトペン「キュ?」

憧「は?」

穏乃「エトペンって…確か和が好きな絵本のキャラクターだよね?」

和「はい。『エトピリカになりたかったペンギン』の主人公エトペンです」

玄「和ちゃんのランドセルのキーホルダーのやつだね」

エトペン「キュィ?」

和「まさかエトペンが実在しているなんて思ってもいませんでした。間近で見るとすごく可愛い…!」

穏乃「確かに私もこんな生き物始めて見た!」

玄「ビックリだね~」

和「エトペン!」ダキッ

エトペン「キュ!?」ポヨン

エトペン「キュゥ…///」

晴絵「…」

エトペン「キュ!」

和「見て下さい! エトペンです!」

晴絵「はぁ…」

穏乃「隣の山で見つけたんです。不思議な生き物ですよね」

玄「思わず捕まえちゃったんですけど和ちゃんに懐いたみたいなんで連れてきちゃいました」

憧「このエロペンギンは…」

エトペン「キュイ///」ポイン

晴絵「それで? 懐いちゃったこの子どうするつもりなの?」

玄「え? そういえばそうだね…」

和「赤土さん! この子には親がいないみたいなんですけど飼うことはできないでしょうか!」

晴絵「ええっ!?」

憧「ええええええっ!? ちょっとマジで言ってんの!?」

和「私は真剣です!」ズイッ

晴絵「い、いやそんなこと私に言われても…」

晴絵(一介の大学生にそんなこと分かるわけがないじゃん!)

玄「赤土さん?」

晴絵「ま、まあフツーはムリなんじゃない? ペンギン飼ってる子なんて知らないし」

憧「ほらね? 流石に飼うのは無理だって」

和「そう、ですか…」ショボーン

穏乃(和…)

穏乃「でも! そのムリを通すのがレジェンド…赤土さんじゃないですか!」

晴絵「!?」トクン

憧「し、しず!? しずまで何言ってんの!?」

穏乃「お願いです赤土さん! エトペンと和を一緒にいさせてあげて下さい!」

和「穏乃…!」

晴絵「え? ちょ…」

桜子「なになにー? 何の騒ぎー?」

凛「って何この丸い子! 可愛い…!」キラキラ

春奈「飼ってみたい…」

綾「赤土さんお願い!」

ひな「レージェーンド! レージェーンド!」

玄「レージェーンド! レージェーンド!」

晴絵「そんなキラキラした目でレジェンドコールしないでええええええ!」

晴絵(そんなことされたら…不可能を可能にする『伝説』の血が滾っちゃうじゃない!)

晴絵「OKもらえたぞ!」ビシッ

和「やりました! これで一緒ですよ、エトペン!」ダキッ

エトペン「キュー!」ポヨヨン

穏乃「えへへっ! 良かったね、和!」

和「はいっ! 穏乃…ありがとうございます」

穏乃「え? 私は何もしてないって!」

憧「…」

晴絵「ただし、私たちで飼うわけじゃなくてちゃんと設備の整った家の人に飼ってもらうことになった」

桜子「えー?」

晴絵「ただ、その家の人に頼めばいつでも会わせてくれるらしいから遊びに行くといいよ」

玄「そのお家ってどこなんですか?」

晴絵「ああ、それは――」

透華「おーっほっほっほ! 我が龍門渕家の別荘にようこそ、ですわ!」

一「こんにちは、阿知賀こども麻雀クラブのみなさん」

穏乃「こ、こんにちは…」

玄「うわわ…これが最近噂になってたとってもお金持ちの人のお家かあ」

憧「広っ…!」

エトペン「キュー?」

透華「あら、その子が件の生き物ですわね。…思った以上に不気味な生き物ですの」

一「…あまりにも珍妙過ぎて逆に衣が喜びそうだね」

透華「はぁ…。まあ飼うと約束してしまった以上仕方ありませんわ」

透華「そこのピンクの小学生! ペンギンをこちらに連れて来て下さいまし……!?」

和「は、はい!」ポヨン

透華「なっ…!?」

和「ほらエトペン、行きますよ」タユンタユンタユンタユン

エトペン「キュイー!」プルプル

透華「な、な…!」

一「透華?」

透華「なんて下品な乳ですの…! あれで小学生だと言いますの!?」ガーン

透華「しかも私好み…ではなくグチャグチャにしたくなる顔、身体…メイド服を着させてやりたいですの…!」

玄「なんか急に…?」

憧「そこはかとない狂気を感じるわ…」

和「すみません…エトペンをよろしくお願いします!」ボヨヨヨーン

透華「――ちょっとお待ちなさい」

透華「そのペンギンを引き取るのには条件がありますわ」ニヤリ

穏乃「条件ッ…!?」

和「条件…ですか」

透華「そうですわ。ペンギン一匹とはいえ育てるには莫大なお金が必要」

透華「加えてあなたたちはちょくちょく遊びに来ると言うのでしょう?」

透華「ペンギンの世話に小学生が散らかした後の片付けや対応…私たちにメリットがありませんの」

一「ちょっと透華…? お金持ちらしく快く無償で引き受けるって言ってたのに」

透華「一は黙ってなさい。…つまりペンギンの世話をする分余計な労力が生まれるのです」

和「は、はい…」

透華「ここまで言われれば分かるでしょう? 条件とは…その分の雑務や掃除をするメイドにあなたがなることです」

穏乃「和が!?」

和「私がですか!?」

透華「ええ、そうですわ」ニッコリ


透華「さぁ…メイドになるのとこのペンギンが保健所送りにされるの、どちらがいいですの?」

穏乃「…むぅ」プクー

和「どうして穏乃がそんなにむくれてるんですか…」

穏乃「だって…和があの人のメイドになるって言うから」

憧「仕方ないじゃない。ああ言わないとペンギンは保健所送りにされてたのよ?」

穏乃「でも…」

憧「しず?」

玄「確かにメイドのお仕事で遊ぶ時間が減るのは寂しいよね」

穏乃「そう! それ!」

和「え?」

穏乃「まったく! 和は阿知賀こども麻雀クラブの一員でもあるんだからサボっちゃダメなんだからな!」

憧「…」

穏乃「のーどか! 今日の放課後山に遊びに行かない?」

和「すみません…。今日は龍門渕さんの家に行かないといけないんです」

穏乃「え…」

憧「ああ、メイドの仕事してペンギンの様子を見に行くのね」

和「はい。まだ龍門渕家の設備に慣れてないようなので安心させてあげたいんです」

憧「そうなの? まああのペンギンあたしや龍門渕さんには懐いてないみたいだしね」

穏乃「…」

和「だからすみません。今日は遊べませんがまた誘って下さい」ペコリ

憧「和もメイドになってから大変ねえ…」

穏乃「和…」

和「エトペン!」

エトペン「キュ? キュー!」ピョインピョイン

エトペン「キュゥ…///」ポヨン

和「元気にしてましたか? エトペン」

透華「…コホン。原村和! あなたは何をしていますの!」

エトペン「キュ!?」ビクッ

和「透華さま!」

透華「あなたは私のメイド…主人を忘れてペットと遊ぶとはいい度胸ですわね」

和「い、いえ…そんなつもりじゃ」

透華「ほうら原村和! 主人である私の部屋がこんなに散らかってますわよ!」

和「す、すぐに片付けます!」

透華「あなたのために散らかしてさし上げたのですわ! おーっほっほっほ!」

和「はぁ…」

穏乃「和…大丈夫? 疲れてない?」

和「大丈夫ですよ。…今日は麻雀クラブの日ですね」

憧「そうだけど…疲れてるなら別に休んでもいいのよ? あたしらだって毎回行ってたわけじゃないし」

和「いえ、行きます。玄さんたちも待ってるでしょうし」

穏乃「和…」

憧「…」

和「エトペンも元気ですし…みんなと遊べる日もあって…今の私は幸せですね」

玄「ロン! 三色ドラ6、16000!」

和「あ…」

穏乃「和が玄さんに振り込んだ…?」

憧「あんなモロバレの手に振り込んじゃうなんて…」

晴絵「…」

玄「えへへ…和ちゃんから始めて倍満和了っちゃった」

和「そうですね…。油断していました」

玄「それでは! サイコロふりまー…」

晴絵「ストップ」

玄「?」

晴絵「和、今日はもう帰って休みな」

和「え…?」

晴絵「いつもと比べて全然集中できてない。…やっぱり疲れてるんじゃないの?」

和「い、いえ…そんなことは」

玄「…やっぱり。いつもの和ちゃんなら私に振り込んだりしないもん」

穏乃「和…」

晴絵「今日は帰って休んで。そしたらまた今度もっと楽しく打とう?」

憧「そうよ和。頑張りすぎて身体壊したらシャレにならないわよ?」

和「はい…」

憧「そんじゃ帰ろうかしらね。和、私が送って…」

穏乃「私が送って行きます!」

晴絵「そう? それならよろしく、穏乃」

桜子「のどちゃんまたね~」

和「…すみません、穏乃」

穏乃「気にすることないって! 和の健康が一番だよ」

和「…」

穏乃「メイドの仕事ってそんなに大変なの?」

和「そうですね…。仕事自体は家事の延長みたいなものですが、完璧にこなさないといけないので…」

和「それに透華さま…龍門渕さんの期待に応えることができなくて。毎日叱られてばかりです」

穏乃「へぇ…」

和「けど、もっと頑張らないといけませんよね。エトペンを守ってくれているんですから」

穏乃「…!」トクン

穏乃「ねえ、和…」

穏乃「和はどうして、そこまでエトペンが好きなの…?」

穏乃「そんなに無理してまで頑張らなくたっていいじゃん」

穏乃「龍門渕さんだって鬼じゃないんだから…和がメイドをしなくたってきっと大事にしてくれるよ」

和「…」

和「いえ、それでもエトペンと一緒にいたいんです」

穏乃「っ…どうして!」

和「…穏乃。私はこれまで、沢山転校を繰り返してきました」

和「何度も出会いと別れを繰り返す私にはなかなか友達ができませんでした」

穏乃「…」

和「そんな私とずっと一緒にいてくれたのは…エトペンでした」

和「エトペンは私の最初の友達で…ずっと一緒にいてくれた大切な家族なんです」

穏乃「友達…」

和「だから今、こうしてエトペンと出会えて嬉しいんです。そして…」

和「大切な友達のために、色々してあげたいんです」

穏乃「和…!」

和「すみません、穏乃。こんな話をしてしまって…子供っぽい理由ですよね」

和「でも私にとっては大事なことなんです」

穏乃「う…」

和「…そろそろ家ですね。ここまで送ってくれてありがとうございます」ペコリ

穏乃「…待ってよ! 和!」

穏乃「私も…私たちも友達…だよね?」

和「…」

和「はい。もちろん穏乃たちとの時間もちゃんと作りますから、また誘って下さい」

穏乃「…」

穏乃「和…」

穏乃「私…和が喜ぶと思って赤土さんにお願いしたはずなのに」

穏乃「みんなで楽しく遊べると思ってたのに」

穏乃「…楽しくない」

穏乃「和がいないと、楽しくない」

穏乃「和があんなに辛そうにしてるのは…イヤだ」

穏乃「…」

憧「ほう」

穏乃「って!? 憧!?」

憧「あんたは本当に…いや、何でもないわ」

憧「ねえしず、一緒にお風呂入らない?」

穏乃「なんで私が憧ん家のお風呂に…」

憧「別にいいじゃない。それよりどう? あたしも前よりかなーり成長したでしょ?」

穏乃「…」

憧「…はぁ。何か迷ってることがあるんじゃないの?」

穏乃「…うん」

憧「ぶっちゃけ和のことでしょ?」

穏乃「うん。最近忙しそうにしてるし…寂しい」

憧「そんでペンギンに嫉妬、か…こりゃビックリするほど重症だわ」

穏乃「?」

憧「友達のことが心配なら見に行ってみれば?」

穏乃「…」

穏乃「そう、だね…。明日行ってみようかな」

和「あ…穏乃?」

穏乃「遊びに来ちゃった。…元気そうで良かったよ」

和「エトペンに会いに来てくれたんですか? ありがとうございます」

穏乃「…む」

和「玄さんや綾ちゃんたちは時々遊びに来てくれるんですけど…。きっとエトペンも喜びますよ」

穏乃「うん…」

和「こっちです」


エトペン「キュ?」

穏乃「やあ、エトペン」

エトペン「キュ!」プイッ

穏乃「な!? そっぽ向かれた!?」

和「どうしてでしょうか…? 私や玄さんにはすぐ甘えるんですけど」

エトペン「キュ!」ボインボイン

和「こうして私のお腹のところに飛んでくるんです。可愛いですよね」

穏乃「…」

エトペン「キュー! キュイー!」ピョンピョン

和「ほらエトペン。私はお仕事があるので穏乃と遊んでいて下さい」

エトペン「キュゥ…」ショボーン

穏乃「なんだよ…私じゃ不満なの?」

和「何かあったら連絡して下さい。私は庭のお掃除をしてきます」ペコリ

穏乃「うん。頑張ってね…」

エトペン「…」

穏乃「…」

エトペン「…」

穏乃「エトペン…なんで私には懐かないんだ?」

エトペン「キュ」ビシッ

穏乃「…? よく分かんないけど和や玄さんみたいに身体が柔らかくなさそうだからかな」

穏乃「私だって意外と柔らかいんだぞ! ほら、足だってこんなに開くし…」

エトペン「キュ、キュキュキュ!?」

穏乃「ほらね? ズボンとかはいてないしすっごく足開くんだから」パカッ

エトペン「キュ…」ジ…

穏乃「あれ? なんでか知らないけど今度はこっちをじっと見てるぞ?」

穏乃「そんな丸っこい身体してたら足開いたりするの難しそうだもんね!」

エトペン「キュ///」

穏乃「…」

エトペン「…」

穏乃「けど結局、和ほどは懐いてくれないかぁ」

エトペン「キュキュ」コクコク

穏乃「和はエトペンのことあんなに抱きしめてるのになあ…」

穏乃「…」

穏乃「エトペン…私も抱きしめていいかな?」

エトペン「キュ?」

穏乃「和がエトペンを抱きしめてる時どんなこと感じてるか…私も知りたいんだ」

エトペン「キュ……キュイ」コクリ

穏乃「いいの!? それじゃあ…」ダキッ

穏乃「えへへ…」ギュムッ

穏乃「エトペン…結構柔らかいんだな」

エトペン「キュ」ペッタン

穏乃「…」

穏乃「なんだか和の感じがする。別に匂いがするとかそんなんじゃなくて、和がいるような」

穏乃「和ぁ…ちょっとひんやりしてるかな――」


透華「原村和! あなた一体何をしていますの!」


穏乃「わわっ!? 一体何!?」ビクッ

エトペン「キュ!?」

穏乃「庭の方からだ…行ってみよう!」

透華「その草は私が意味を持って残しておいたのにそれを抜くなんて…まったくあなたという子は!」

和「す、すみません透華さま!」

和「でも…これは国広先輩が抜いてもいいと言っていた雑草で…」

透華「そんなこと知りませんわ! たかが雑草でも私にかかれば花より高価になりますの!」

透華「これはお仕置きが必要ですわね!」ジュルリ

和「ひっ…!?」

透華「さて、何をしてやろうかしら…?」ウズウズ

透華「やはり靴を舐めさせるのがいいかしら…それとも縄で縛って…?」

和「う…」ブルブル

透華「さあ! こちらに来て私の靴を舐めるので――」

穏乃「和をいじめるなあああああああああああああああああああ!!」

和「しず、の…?」

穏乃「はあ、はあ…和、大丈夫?」

エトペン「キュ」

透華「な、なななななななななな」

透華「なんですのあなたは! それにペンギンも! 今いいとこでしたのよ!?」

穏乃「何がいいとこだ! 和をいじめて楽しいの!?」

エトペン「キュー!」

透華「楽しいですわ。こう…原村和が苦痛に顔を歪める姿を想像するととても楽しいですの」ジュルリ

和「えっ…!?」ブルブル

エトペン「キュキュイ…」カタカタ

穏乃「なっ…! なんて人なんだ…!」

穏乃「和には手を触れさせない…和は、私が守る!」

一「その必要はないよ」スッ

透華「あら一? ちょうどいいですわ! あの不届き者を捕えなさい!」

一「不届き者は透華の方でしょ」パシッ

透華「へ?」

穏乃「お?」

和「国広先輩!?」

一「メイドたるもの、主が間違った道に進もうとしている時は正しい道に戻す。和も覚えといて損は無いよ」

透華「は、はじめ…?」ズキズキ

一「…あの子たちの邪魔しちゃダメだよ」ボソッ

透華「!!」

一「ごめんね和。その草別に抜いてもいいから」

和「は、はい…」

穏乃「…」

和「穏乃…その、助けに来てくれてありがとうございます…」

穏乃「あ、ああ…別に気にしなくていいよ!」

和「とっても格好良かったです…///」カアアアア

穏乃「う、うん!? わ、わわ私も和が無事でよかったよ!」カアアアアア

和「///」

穏乃「~~///」

エトペン「キュ…」

和「エトペンも来てくれてありがとうございます」

穏乃「む…」

エトペン「キュ……」フラ…


エトペン「ュ…」パタリ

ハギヨシ「…これは」

和「ハギヨシさん! エトペンは…! エトペンは大丈夫なんですか!?」

ハギヨシ「…」

一「ハギヨシ? まさか…」

ハギヨシ「今のところ、命には別条はありません」

穏乃「今のところ…?」

ハギヨシ「エトペンは恐らくは本来の生息地である南極との違いでストレスを感じていたのではないかと思われます」

ハギヨシ「それが先の一件でストレスが急激に溜まり…倒れてしまったのではないかと」

透華「…私のせいですの?」

ハギヨシ「いえ、そういうわけでもないと思います。いずれはこうなっていたのですから」

透華「…」

和「エトペン…!」

一「じゃあエトペンはどうしてあげたらまた元気になるのかな?」

ハギヨシ「…」

和「…教えて、下さい」

ハギヨシ「…このペンギンのことを色々調べさせていただきました」

ハギヨシ「その結果、とある密漁業者が阿知賀に動物を連れ込みその内の一匹が逃げ出したことが判明しました」

穏乃「じゃあ、まさか…」

ハギヨシ「ええ。エトペンはその逃げ出した一匹なのです」

透華「…!」

ハギヨシ「そしてエトペンを救う方法はただ一つ…」


ハギヨシ「南極に返してあげることです」

和「!!」

透華「…はあ」

憧「あれ? もしかして龍門渕さん?」

透華「ああ…確か原村和の友人の」

憧「新子憧です。龍門渕さんはこんな公園の滑り台で何をしてるんですか?」

透華「…後悔、ですわ」

憧「そう…ですか」

憧「龍門渕さん、あたし…好きな人がいたんです」

透華「…?」

憧「その人のこと大好きで…最近一緒にお風呂入った時襲ってやろうかとも思いました」

憧「けど、そんなことできなかったんですよね」

憧「だって…しずには…もう好きな人がいるから…」ポロ…

透華「!」

憧「だから…あの子のこと襲ったら…きっと泣いちゃうだろうなって思って…」

憧「…やめちゃいました。あたしはあの子を泣かせることなんてできないんです」

透華「…」

透華「…私もですわ。私も…失恋してしまいましたの」

透華「初恋でしたの。一目惚れで彼女のことを好きになって…自分の手中に収めたと思ってましたの」

透華「けど、あの子の心までは自分のものにできませんでしたわ」

透華「私もまた、彼女を泣かせてしまうところでしたの。…あなたとは全然理由が違うのですけど」

憧「そうですか。…似た者同士ですね、あたしたち」

透華「…」

憧「…」

透華「…私、一生独身かもしれませんわね」

憧「あたしも同じこと考えてました。あの子より良い子なんて…一生見つかる気がしませんから」

和「…」

穏乃「…いいの? 和」

和「はい。…これがエトペンにとって一番幸せになれる方法ですから」

和「悲しくなんて、ありません…」

穏乃「…でも」

和「いいんです…! エトペンの命がかかってるのに…私の気持ちなんて…!」

穏乃「和…」

和「涙は…まだ流しません」

和「エトペンのことが…大好きですから」

ハギヨシ「…それでは、出発します」

エトペン「キュ…」

玄「短い間だったけど…いつかまた会える日をきっと待ってる」

桜子「うわぁぁぁぁん」

ひな「さよなら…」

綾「エトペンのこと、絶対忘れないよー!」

憧「…結局あたしには懐いてくれなかったわね」

透華「仲間のもとで楽しく過ごすのですわ」

一「それじゃハギヨシ、よろしくね」


穏乃「和…」

和「…」

和「…さよなら、エトペン」

エトペン「キュー…」

和「ずっと…あなたの声を…温もりを…忘れたりなんてしません」

エトペン「キュゥ…キュ!」

穏乃「和…エトペン…」

和「…ま、まだ…泣いたりしません。エトペンが…安心して帰れないですもんね」

和「いつまでもエトペンに頼ってばかりではダメなんです…私も…成長しないと…!」

エトペン「キュー! キュィー!」バタバタ

ハギヨシ「…そろそろ時間です」

和「そうです…これは私にとっても…エトペンにとっても…大切なことなんです…!」

和「だからさよなら…元気でいて下さいね、エトペン…!」

エトペン「キューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ・・・…」

穏乃「…行っちゃった」

和「…」

和「穏乃…私は今、どんな顔をしていますか…?」

穏乃「…」

穏乃「…笑顔だよ。エトペンもきっと、ずっと笑顔の和を見ていられて幸せだったんじゃないかな」

和「そう…ですか…」

穏乃「…和はすごいや」

穏乃「そんなに辛いのに…苦しいのに…エトペンのために涙を我慢できるなんて」

和「私はそんなに強くなんてありませんよ…」

和「だって…」

穏乃「泣いてもいいよ…和」

和「…はい…!」

和「こんな…こんな想いをするなら…出会わなければ良かった…!」

穏乃「…」

和「お別れはイヤです…! 大好きな友達と…一緒にいた友達と…」

和「こんな悲しい気持ちは…もう…!」

穏乃「ねえ、和…」

和「はい…」

穏乃「エトペンと…色々遊んだよね。和が一番エトペンのこと好きだったよね」

和「はい…!」

穏乃「エトペンと出会えて…良かったよね」

和「…!」

和「はい…! どんなに悲しくても…エトペンとの思い出を…エトペンといられて楽しかったことを…」

和「忘れられるわけが…ありません…!」

穏乃「和はこれからずっとエトペンとの思い出を胸に生きていくんだ」

和「…」

穏乃「大丈夫だよ和。ちゃんと和とエトペンの絆は残ってる」

和「はい…この胸に、エトペンといた思い出は残っています」

和「ありがとう、穏乃。…もう私は大丈夫です」

穏乃「うん。それなら私も嬉しいよ」

和「穏乃は…優しいですね」

穏乃「まあね。多分、お別れしたくない人がいるからかな」

和「そう…なんですか?」

穏乃「うん。私…和とずっと別れたくない」

穏乃「和のこと、大好きだから」

和「え…?」

穏乃「友達としても好きだけど、今は本当に本当の意味で和のことが好き」

穏乃「私も和の胸の中のエトペンと同じように一緒に生きていきたい」

和「穏乃…!」

穏乃「…好きだよ、和」

穏乃「だから…もし和が良ければ今度は友達じゃなくて」


穏乃「恋人になろう――和!」



穏乃「うわっ…。さすがに寒いね、ここ」

和「それはそうですよ。南極は人が住むべき場所ではありませんからね」


穏乃(あれから10年、私たちはiPS細胞に関する研究で南極へと来ています)

穏乃(和はプロ雀士ではなく研究者となり、私もその助手として頑張っています)

穏乃(その過程で和の転校騒ぎや私の学力とかで一悶着あったんですけど…)


穏乃「ねえ和、基地に帰ったら一緒にあったまろうね? …布団の中で」

和「し、穏乃…! もう、こんな場所でまであなたは…」カアアアアア


穏乃(私たちの仲は良好です。そして…)


穏乃「あ…!」

和「ようやく、また会えました…!」


穏乃(私たちは今から、二人のキューピッドである『友達』に、結婚の報告をしようと思います―――)


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