シン「俺が美希をキラキラさせてやる」 (122)

機動戦士ガンダムSEED DESTINY と アイドルマスターのクロスSSです。

前スレ

シン「俺は春香のプロデューサーだ」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1374243939

の続編になります。
世界観・時代設定などこちらから全て受け継いでいるので、出来ればこちらを閲覧お願いします。

前スレで続き希望して頂きありがとうございます。頑張って765プロ全員分+α書ききりたいと思います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1374283225

美希「Zzz……」

シン「おい、起きろ美希」

美希「うーん……嫌なの。美希を起こしたかったら、イチゴババロアを用意するのー。

 びた一文まけるつもりはないのー」Zzz

シン「元ザフト軍人に対して身代金要求か? 面白いじゃねぇか」

美希「何とでも言うのー、勝てばよかろうなのだなのー」Zzz

シン「はぁ……冷蔵庫の一番奥、用意してある」

美希「でも今は眠いから寝るのー」Zzz

シン「今なら俺が握ったオニギリもあるが」

美希「オニギリ食べるの!!」ガバッ!

シン「へいへい。ソレ食ったらレッスンスタジオ行くぞ」

美希「はいなのー♪」

 星井美希。彼女の事を目の当たりにして、元ザフト軍人。

 現765プロのプロデューサーである、シン・アスカはこう述べる。
 
 ——アイツは、本物の天才だ。

シン「今回の765プロオールスターライブには、新曲を用意した」

春香「自分REST@RT……」

千早「かなりハイテンポな曲ね……歌いながら踊るには、だいぶ骨が折れそう……」

雪歩「うう……私、皆についていけるかな……」

やよい「わたしも心配ですー……うー」

真「じゃあボクが雪歩に教えてあげるよ!」

貴音「ふふ、日々精進ですね」

真美「じゃあ真美とひびきんで、やよいっちを教えるYO!」

響「ふふん、自分完璧だからなー! やよいも完璧になれるようにレッスンしてやるさー!」

シン「はいはい! とりあえずこの曲を中心に、しばらくはレッスンスタジオと事務所を行き来する事になる」

シン「結局、このライブは竜宮小町を見に来るお客さんが大半だ。

 その人たちに何としてでも顔を覚えて貰えるようにしなくちゃならない」

シン「765プロオールスターズの、腕の見せ所だぞ」

シン「春香」

春香「うん、じゃあ行くよ皆! 765プローっ!」

春香「ファイトー!!」

全員『おーっ!!』

 コズミック・イラ74年。
 
 地球、プラント間の一年近い戦争の後に再び起きた戦乱。
 
 その戦乱を影から操っていた、地獄の商人である【ロゴス】や、

 元最高評議会議長であるギルバート・デュランダルの死により、世界は再び、安定した世界へと歩み寄っていた。
 
 そんな時代。プラントには、ナチュラルの女の子だけが集められた、芸能プロダクションが存在した。
 
 それが——765プロである。

シン「はい、ワンツースリーフォー、ワンツースリーフォー!」

シン「ほら春香、そこステップ遅れてる!」

シン「千早、笑顔固いぞ! あとそこの手首をもうちょい捻れ!」

シン「真、先走り過ぎだ! 周りと合わせろ!」

シン「響も同じだ! 早過ぎて皆がついて行けてない!」

シン「雪歩、やよい! 二人とも遅れて——あー、ストップ! 一旦ストップだ!」


シン「結論から言う。このままじゃ間に合わない」

春香「そ、そんな!」

シン「自分REST@RTの練習だけでもう一ヶ月、これ以上時間を食うわけにいかない」

シン「ソロ曲だけだったら普段から練習してるだろうが、

 今回は真のエージェント夜を往く、響のNext Life、美希のマリオネットの心まであるんだ」

シン「これらのダンサンブルな曲の練習もしておきたい。——正直、俺一人じゃ手が回らない」


シン「というわけで、今日は特別教師を二人、用意した」

シン「最高評議会議長直属の軍人である」

キラ「キラ・ヤマトです。皆、よろしくね」

シン「同じく議長直属の軍人である」

アスラン「アスラン・ザラだ。よろしく頼む」

雪歩「お、男の人が二人も——うぅうううう!!」

真「お、落ち着いて雪歩! あーほら! スタジオに穴掘っちゃだめだよ雪歩ぉおお!!」

春香「ていうか議長直属の軍人さんって……」

千早「そんな簡単に借りて来て良い人達なのかしら……」

シン「悪いな二人とも。急にこんな事お願いしちまって」

キラ「でも、ボクがそんな役立つかな」

アスラン「キラはアメを担当すればいい。俺がムチとして、ビシバシ鍛えてやるさ。——まあ、ダンス経験は同じくらいなのだがな」

シン「じゃあと言う事で、それぞれ分けるぞ」

シン「春香、千早、雪歩の三人にはキラさんが」

シン「真美、やよい、貴音の三人にはアスランが、それぞれついてくれ」

キラ「よろしくね、皆」

春香「よろしくお願いします!」

千早「お願いします。——あの、キラさんは、歌とかは」

キラ「うーん、ラクスなら得意だけど、ボクはあんまり得意じゃないかな。
 
 ボクはダンスを主に教えるよ。練習はしてきたから」

千早「……そう、ですか。分かりました」

雪歩「ううっ……よ、よろしくお願いしますぅ!!」

はるちは(既にヤケクソ気味……)


アスラン「アスラン・ザラだ。

 短時間でマスターする為には、一つ一つ丁寧に、しかし厳しくしていくしかないと思っている」

アスラン「大変だとは思うが、ついてきてくれ」

真美「シン兄ちゃんのお墨付き頂いてる兄ちゃんなんだから、大丈夫っしょ→! よろしくちゃーんっ」

やよい「よろしくお願いしまーす!」ガルーン

貴音「はて……あすらん殿、ですか。どこかでお会いしたことがある様な……」

アスラン「君もか……俺も君とはどこかであった気がしてな……」

貴音「……まあ、そのような些細な事は良いでしょう。レッスン、よろしくお願いいたします」

シン「——で。美希、真、響。三人に集まってもらったのは他でもない」

シン「美希のDay of the futureとマリオネットの心なんだが……

 この二曲のバッグダンサーを、二人に任せようと思ってる」

シン「理由としては、二人ならこのダンサンブルな曲でも、踊りきれると思っているからだが……」

シン「自分REST@RTの練習もあるし、正直時間はあまりない。——それでもやれるか?」

真響『はいっ!』

シン「よし、良い返事だ! じゃあ美希——美希?」

真「あー、美希なら……」

美希「Zzz……」

シン「起きやがれ美希ーっ!!」

美希「嫌なの……今日はもう疲れたの……イチゴババロアになりたいの……Zzz」

シン「お前って奴はあああ!!!」

シン「……まあ、いざダンスが始まってみれば」

美希「♪」スッタンスッタンッ

シン「……真、響に次いで、完璧に踊れてるのは美希だけなんだよな……」

シン(おまけに歌唱力も高い。ビジュアルは既に申し分ない。
 
 真面目にさえなってくれれば、これ以上ない才能があるんだが……)

シン「——よし、いったん休憩。真と響は、キラチームとアスランチームの様子を見て来てくれ」

真「はーい! じゃあボクはキラさんのチームを見てくるよ!」

響「じゃあ自分は、アスランさんのチームだな! なんくるないさ—!」

シン「さて……美希」

美希「なんなのなの? 美希は休憩時間中は、お昼寝するって決めてるのー」

シン「いや、ちょっとな。美希はどうして、アイドル目指したんだ?」

美希「んー、目指したわけじゃないの。

 美希ね? 友達が可愛いって言うから、アイドルやってみようかなーって思ったの」

美希「美希も自分がチョー可愛いって思ってるし、

 丁度センソーばっか起きて、学校とか休校になってる事が多かったから」

美希「で、765プロに応募してみたの」

シン「じゃあ……別にアイドル自体に固執してるわけじゃないんだな」

美希「そうだよー。美希、頑張るのとか、疲れるのとか、あんまり好きじゃないの」

美希「だからノンビリ、ゆっくり、アイドルやっていけたらいいなーって思うな」

シン「じゃあ、アイドルやってて、楽しいと思った時とか、アイドルとしてやってみたい事とか、ないのか?」

美希「——竜宮小町、かな」

シン「竜宮小町?」

美希「うん。律子——さんの、竜宮小町が出てるテレビをね、なんとなーく見てたの。

 そしたら……みんな、キラキラしてて、輝いてて……」

美希「美希も、竜宮小町になれたらなーって思ったの」

美希「ねぇシン。美希も、竜宮小町に入れる?」

シン「それは無理だ。

 竜宮小町は、伊織と亜美とあずささんの三人が、そして律子さんがプロデュースして、初めて竜宮小町って言えるんだ」

シン「美希が加わる事は出来る。でもそれは、竜宮小町じゃない。全く新しいユニットだ」

美希「なーんだ。じゃあ、美希はキラキラ出来ないって事?」

シン「いや違う」

シン「美希。俺が昔オーブに住んでて、その後ザフト軍人になったって話は覚えてるか?」

美希「うん」

シン「俺は今でも、その道を歩んだ事は、間違いじゃなかったと思ってる。

 ——例えそれが、キラキラと輝ける場所じゃなかったとしても」

美希「? どーいう事?」

シン「美希は、765プロの事、嫌いか?」

美希「ううん! 大好きなの!

 シンも春香も千早さんも、真君や雪歩、やよいにデコちゃん、亜美真美、貴音に響

 あずさや律子——さんも、小鳥も! あ、あと社長も!」

シン「そうだろ? 俺は、ザフト軍でも、その前に居たオーブでも——どこか寂しかった。

 美希みたいに言うなら、キラキラは出来なかった」

シン「でも、俺はその場所が好きだった。守りたいって思った。

 だから、今でもそこに居た事は、その過去は、間違いじゃないって思える」

シン「美希も、今の765プロが大好きだろ?

 だったら、今はキラキラしてなくても——いつかこの場所を、キラキラと輝かせればいい」

シン「そしたら、今よりもっと、この場所を好きになれる」

美希「でも……竜宮小町じゃなかったら……」

シン「竜宮小町だけが、キラキラ出来る場所じゃない」

美希「ホント……?」

シン「俺が、美希をキラキラさせてやる。このライブで、出来るって証明してやる」

シン「だから、一緒に頑張ってみないか?」

美希「——じゃあ、ちょっとだけ。美希なりに頑張ってみよう、かな?」

シン「——よし! じゃあ練習再開するぞ! いっぱいキラキラする為に、な!」

美希「はいなのーっ!」


シン(それから美希は、今までとは比にならない位、急成長した)

シン(ダンスも真と並び、歌唱力も完璧を謳う響といい勝負となっている)

シン(正直——美希は天才だ。

 それも、アイドルとしての技能だけで言えば、どんなコーディネイターでさえ、上回る程の)

シン「……心配だな」

シン(俺は一人、そう呟いた)

シン「——全員のダンスも、まとまってきては居る。アスランとキラさんの奮闘もあって、皆技術は上がってる」

シン(だが、もう二日前。自分REST@RTは未だに通しで成功していない)

シン「これは、踊りを簡略化する必要もあるか……?」

やよい「うー……」

雪歩「ご、ごめんなさい……」

シン(ミスが多い雪歩は元々、それほど体が動く方じゃない。

 体力と体が追いついてないやよいに関しては、まだ成長途上だ。これ以上体に負担をかけるわけにはいかない)

シン「……しょうがない。ギリギリになるが、動きを簡略化して——」

美希「美希、それだけは絶対に反対なの!」

シン「美希——」

美希「だって、そうしたら全力のライブじゃなくなるってことでしょ?

 そしたら、キラキラできないかもしれないってことでしょ? 絶対、ぜーったい! 反対なの!!」

真「でも美希、失敗しちゃったら元も子も——」

美希「美希は出来るもん!!」

響「美希一人が出来ても、意味がないんだぞ! 自分REST@RTは、765プロ全員で——」

雪歩「わ、私が!! そ、その……」

雪歩「……私が、出るの辞めれば……それで……」

シン「な、何言ってんだ雪歩!」

雪歩「だ、だって私が! ……いっぱい迷惑かけてるから……そんな事になる位なら!!」

真「ゆ、雪歩落ち着いて! 美希も一回よく考えて——」

美希「……美希、間違ってないもん。美希、出来るもん……失敗、しないもん」

美希「……なんか、疲れちゃったの……」

シン「お、おい美希! どこ行くんだ!?」

美希「今日は、帰るの。どうせ今日はもう、時間終わりでしょ?」

シン「そうだけど……おい美希!! くそっ!」

シン(——炊き付け過ぎた。

 美希の圧倒的な才能は、元々自信がない雪歩を、そして周りを、さらに委縮させる結果となり)

シン(それがガンとなって広がり——765プロ全体に影響を及ぼした)

響「し、シン。どうするんだ? あのままだと美希……」

シン(ヘタに簡略化する事を選べば、美希のモチベーションは最低だ。

 かといってこのままだと、成功するかどうかは分からない)

シン(……何やってるんだ、俺。

 雪歩ずっと泣いてるぞ。美希の事ばっか考えてないで、雪歩を慰めないといけないのに……)

シン(なのに——)

シン「……皆、雪歩の事、お願いしていいか?」

真「し、シンはどうするのさ!」

シン「美希を追いかける。今のアイツを、放っておけない」

真「放っておけないって、美希は別にミスも何もして——あ、シン!!」

シン(俺は走り出した。美希はまだ、そう遠くへは行っていないはずだ)

シン(レッスンスタジオの近くの駅、コンビニ、それらを見て回っても……美希の姿はどこにもない)

シン(——だが、休憩を兼ねて立ち寄った公園の池に、アイツはいた)

シン「ハァ、ハァ……美希」

美希「あれ、シン? どうしたの、こんな所に」

シン「こっちの台詞だ。帰ったんじゃなかったのか?」

美希「ううん。先生に会いに来てたの」

シン「先生?」

美希「ほら、あそこ」

シン(美希の指差した先には、一匹のカルガモが泳いでいた。ゆっくりゆっくりと……流れに任せて)

美希「……美希もね、あんな風にゆっくりゆっくり、生きていきたいな—って思ってたの」

美希「パパもママも、美希の生きたいように生きればいいって言うから、ゆっくり、ゆっくり。ね」

美希「でも、そんな美希でも頑張ってみようかな、って思ったの。シンが、キラキラ出来るって言ってくれたから」

美希「……でも、全力でライブできないなら、そこでキラキラ、できないんじゃないかって思ったら……

   何か、どうでもよくなっちゃった」

美希「だからもう良いの。

 また、カモ先生みたいに、ゆっくりゆっくり、ノーンビリ。アイドルやっていこうって思ったの」

美希「ねえシン。もういいよ。自分REST@RT、簡単にして、雪歩ややよいが踊れるようにしよう。

 そうすれば美希も楽できるし……」

シン「……美希」

シン「浮いてる気が、するんだろ?」

美希「……」

シン「俺もさ、オーブの学校でコーディネイターは俺一人だった」

シン「だから、何時もナチュラルのガキ達に虐められたりして、家族以外、心許せる人が居なかった」

シン「ザフトのアカデミーでも、周りの奴とウマが合わなかったから一人で居たら、周りと孤立しちまった」

シン「軍人になって、エースになってヒイキされるようになったら、今度は冷たい目線にさらされた」

シン「俺は自分の事を過剰評価するつもりはないけど、天才って、周りと一歩違う風景を見てるんだ」

シン「だからこそ、自分が立ってるのは周りの奴らと違うんじゃないかって……自分が浮いてる気がしてくるんだよな」

シン「——違うんだ。浮いてなんかないんだ」

シン「皆と同じ場所に立ってる。でも、見える範囲が、出来ることが、他人より人一倍多い、広いだけなんだよ」

シン「美希。雪歩はお前より見えている範囲が、出来ることが小さい。なら、お前が雪歩にしてやれることは、何だ?」

美希「……分かんない」

シン「お前が、雪歩を引っ張ってやるんだ。そしてお前が見える景色を、お前が見せてあげればいい。

 雪歩が出来ない事を、出来るように教えてあげればいい」

シン「人は、そうやって生きている。

 人は一人じゃ、キラキラ出来ない——これも俺が、軍人をやってて思い知らされた事だ」

シン「美希、俺はお前をキラキラさせてやるって言ったよな」

シン「撤回する。——俺達、765プロ全員で、キラキラしよう」

シン「俺が、お前達にその景色を見せてやる」

美希「……良いの? 間に合わないかもしれないんだよ? 雪歩も、やよいも、教えきれるか分かんないんだよ?」

シン「今さら泣き言言うんねぇよ。出来ないかもしれないじゃない。やるんだ」

シン「キラキラ、するんだろう?」

美希「……うんっ!!」

シン「よし。——じゃあ今日はスタジオに戻るぞ。練習は出来なくても、皆と打ち合わせは出来る」

美希「はいなの!」

美希「雪歩、さっきはごめんなさいなの!!」

雪歩「ううん。私こそ、ごめんね。泣き言言って」

雪歩「でも——私も、美希ちゃんと同じ気持ちだよ」

雪歩「私も、一生懸命頑張ってみたい。キラキラしてみたい」

雪歩「だから——私に、私達に、色んな事いっぱい、教えてほしいな」

やよい「うっうー! わたしも頑張りますーっ!」

真「シン! レッスンスタジオの使用延長許可、貰って来ちゃった♪」マッコマッコリーン

貴音「きちゃいました♪」タッカタッカネーン

シン「お前ら勝手に何やってんだよ!! 予算オーバーで律子さんに怒られるの俺なんだぞ!?」

千早「シン! 怒るのも怒られるのも後回しにして! 時間がないわ!」

春香「よーしっ! 皆集中して頑張るよー!」

『おーっ!!』

ライブ当日

シン(——自分REST@RTは、完璧な形で完成した。やる気を出した美希と、皆の奮闘のおかげだ)

シン(だが次々と問題は振ってきた)

シン(まず一つ。竜宮小町が、二日前に向かったL4宙域から、まだ帰ってきていないという事)

シン(既にリハーサル終盤。律子からの連絡は先ほど衛星通信で入ったメール一文だけ)

律子『セットリスト、竜宮小町は可能な限り遅れさせてください』

シン(L4コロニーで、テロ事件が発生したようだ。

 幸いにも無事だった竜宮小町の四人は、今は水瀬財閥の自家用シャトルで、こちらに向かってきてはいる)

シン(が、到着まで時間がかかる上に、港まで着いた後も問題だ)

シン(プラントでは、四季が設定されている他、晴れの日、雨の日、雲の日なども設定されている。今日は雨の日)

シン(これはコロニー内でも人間らしい生活を忘れない事で、

 宇宙空間でのストレス軽減を目的として、設定されている物なのだが——タイミングが悪い)

シン(エレカ通行量が、晴れの日と違って明らかに増えるのだ。渋滞が発生する事になる)

シン(言われた通り、セットリストの順番こそ終盤に入れ替えたが……間に合うか……)

春香「シンくん……」

シン「……竜宮小町は、開園開始には、間に合いそうにない」

シン「竜宮小町が来るまで、俺達が何とか時間を稼ぐしかない」

雪歩「えぇ!? で、でも、今日のお客さんって竜宮小町を見に来てる人の方が……」

シン「ああ。実質このライブを開催出来る理由として、竜宮小町の存在が大きい。

 だからこそ、難しい事だとは思う」

シン「だけど、ある意味これはチャンスとも言える。

 この機会に、765プロは竜宮小町だけじゃないって所を、みせてやろうじゃんか!」

真美「むっふっふ→、兄ちゃん燃えてますなー!」

シン「ああ、当然だ! 皆の元気で会場を盛り上げてくれ!」

やよい「うっうー! 会場を、うわーって、盛り上げちゃいましょう!!」

シン「セットリストはこの通りだ。

 最初のTHE iDOL M@STERの後からは、春香と千早の『思い出をありがとう』を先頭に、

 かなり忙しくなると思うが——頑張ってくれ!」

全員『はいっ!』

シン「よし! 行くぞお前ら!」

春香「はい! 765プローっ!!」

春香「ファイトー!」

『オーッ!!』

千早「春香、どうだった?」

春香「うーん……あんまり、盛り上げられなかったよ……」

千早「そう……お客さん、さすがに」

春香「怪しんでるっぽかったよ……そりゃ、もう四曲目なのに一人も竜宮メンバー居ないんだもん」

シン(……まあ、現実はそれほど甘くない。既にセットリストの四曲目を消費した。今はやよいの『キラメキラリ』だ)

シン(この後、貴音の『フラワーガール』に次いで、響の『NEXT LIFE』、そして真の『迷走MIND』

 ……それから『君はメロディ』を雪歩と真美が歌う)

シン(響と真を一旦おいて、そこから激しいダンサンブル・高演出な曲で固めた。

 これなら何とか、少しは観客を沸かせることが——)

シン(っ! しまった!!)

シン「美希、響、真!!」

真「美希のDay of the futureの後に、マリオネットの心が続いてる……!」

響「いくら美希でも、このダンサンブルな曲を二曲歌いながら続けるのは無理だぞ!」

シン「そうだよな……やらかした、俺としたことが」

シン(セットリストの再構築は、俺の仕事だった。

 皆の中にある竜宮小町が居ないプレッシャーを、少しでも離散させることが出来るなら、

 と必死に考えたつもりだったが——)

シン(竜宮小町が居ないプレッシャーは、アイドルだけじゃない。

 俺にも影響を与えてたって事だ……! 情けねぇ!)

シン「仕方ない……ここは曲を飛ばして……」

美希「ねえ、シン」

美希「美希、やってみても、いいかな?」

真「!? 美希、何言ってるの!?」

シン「……やれそうなのか?」

美希「わからない……でも、やってみたいの!」

シン「……そうか、分かった。美希、響、真。ちょっとマイク貸せ」

シン(俺は、三人から預かったマイクの耳にかける部分に——イヤホンを急遽取り付けた)

シン「急造品だが、これで何とか俺の指示が聞こえるはずだ。いざとなったら、俺が指示を送る」

シン「精一杯やってこい。——ステージで、キラキラするんだろ?」

美希「うんっ!!」

シン(美希が力強く頷くと——響と真も、覚悟を決めたように、頷いた)

美希『みんなー! 盛り上がってるー!?』

シン(その声に、観客は反応だけはする。——だが、その声は小さい)

美希『うーん、皆竜宮小町が出てこないからって、退屈してるって感じ?』

美希『竜宮小町はね。前のお仕事でテロに巻き込まれて、遅れてるんだー』

観客A「えぇ!? それって大丈夫なの!?」

観客B「俺のいおりん、もしかして怪我してたりとか!?」

観客C「ひょっとして、今日はこれないの!?」

美希『ぶっぶーっ! ちゃーんと来るし、誰も怪我してないのー』

美希『だから、竜宮小町が来るまで、美希達の事ちゃーんと』

美希『——見ててよね♪ アハ☆』

シン(っ!!)

シン(今の美希ウインクに、彼女の笑顔に——俺は心惹かれた)

シン(そうか、これが——本当のアイドルを見た時の、ファンの心境なのか)

シン(見る者の心を、キラキラとさせてくれる……そんな存在。それがアイドル)

シン(美希が——Day of the futureを、歌い始めた)


美希『——強く、あり続ける為ーっ!!』

シン(美希の熱唱が、ハコの奥まで届く)

シン(観客のボルテージは、好調。美希のビジュアルと、その歌声に、ファンになった者も多いだろう)

シン(だが、問題は——)

千早「……美希、苦しそうね」

春香「うん……」

シン(美希は既に肩で息をしている。汗がたっぷりと浮かび、その汗が肌にまとわりつく感覚は、気持ち悪いはずだ)

シン(だけど——それでも!)

美希『——ねぇ消えてしまっても、探してくれますか?』

シン(美希は、歌い続ける)

シン(真と響も、美希に続いて最高のダンスを届ける)

シン(時々ふらつきそうになる美希を、後ろに居る安心感で支えているのも、二人だった)

美希『何も出来ない、それが——マリオネット!!』

美希『彼方に気持ち届かない、Ah もどかしい——』

美希『ほらね、涙、一粒も出ない——』

シン(そこで——美希が、動きを、一瞬止めた。
 
 声を、あげようとしたのだろう。

 だが、動きも止まり、一瞬フリーズした頭は、次の歌詞を、踊りを、全て消し去ったはずだ。
 
 そんな美希に——俺はいつの間にか、耳元のインカムに、叫んでいた)




シン「キラキラするんだろ!? 美希っ!!」


美希『っ!』

美希『——心が、壊れそう、だよ——っ!!!』



シン(動きを止めていても、美希は歌い続けた。

 その身体を、全身を、全て震えあがらせながら)

シン(最後の最後、ターンをかけながら三人の〆を決めた美希は——最後のから元気を、観客に向けた。

 手を振り、笑顔を向けて、ステージ裏に戻ってきた。

 最後までコイツは——観客の心を揺さぶり続けたのだ。ステージ裏に戻る、最後の最後まで)

千早「——美希、凄かったわ」

美希「ハ、ハッ……千早、さん……」

千早「今度は私の番ね」

シン(千早が、何か目覚めたような表情で、ステージへ。次は彼女の『目が逢う瞬間』だ)

シン(今の彼女ならば、最高のステージに仕上げてくれるはずだ。だから俺は——彼女に駆け寄った)

シン「美希!」

美希「あ……シン……」

シン(俺は、そこでフラッと足をもつれさせた美希を抱きかかえた)

美希「ハァ、ハァ……ステージ……キラキラ、してたの……美希も、キラキラ……してた?」

シン「——してたさ。スゲェキラキラしてた」

美希「あは☆……でもね、それは、美希だけのキラキラじゃないんだよ……?」

美希「みんなが……真君や、響や……シンが、あの時声をかけてくれたから……」

美希「だから、キラキラ出来たの……!」

美希「シンは美希を——キラキラさせてくれる、特別な男の子なの……!」

シン(そして——竜宮小町を除いた765プロオールスターズ、最後の楽曲『自分REST@RT』が始まる)

シン「竜宮小町が来る、最後の最後まで、キラキラしたステージにするぞ、お前ら!!」

『はいっ!』

シン「よしっ! 行って来い!!」

シン(俺が春香の肩を押すと、全員がステージにかける。
 
 そして、皆踊りだす。
 
 今ここから始まる——新たな旅立ち。
 
 RE ST@RTを——)

シン(その後、竜宮小町が到着した事により、ライブは大成功。

 その収益は今までとは比べ物にならない)

シン(問屋からは、曲ディスクが品切れ続出という事で、既存曲の再プレス販売が決定した。

 竜宮小町以外の曲がこれ程売れたのは快挙とも言える)

シン(ライブディスクの先行予約を開始した所、既に許容数を大きく超え、

 先行予約権のオークションが発生している程だ)

シン(こうして765プロは、一躍有名に。

 前々からあった俺のネームバリューもあり、今では暇の無い日が続いている)

キラ「ボクも楽しかったよ、ダンスレッスン。事務とラクスの護衛より、息抜きできるしね」

アスラン「だが、コレ限りだぞ? 俺たちだって暇じゃあないんだ」

シン「ノリノリでレッスントレーナーやってた人が何言ってるんだが」

アスラン「あれは、お前に頼まれたからっ!」

キラ「ん、あれって美希ちゃんじゃない?」

シン「うん? あ、ホントだな」

シン(何時も俺が利用している喫茶店は、765プロビルの目の前にある。

 その喫茶店の近くで、美希がふらついている)

シン(美希に向かって手を振ると、こちらに気付いて、満面の笑みを浮かべて喫茶店の中に)

美希「ハニーっ! おはようなのーっ!」

シン「だから! そのハニーっての止めろって!」

美希「どうして? シンは、美希をキラキラさせてくれる、特別な男の子だから、ハニーなの!! アハ☆」

シン「どうしてこうなった……」

キラ「でも、シン嬉しそうだよ」

アスラン「鼻の舌、伸びてるぞ?」

シン「うるさいですよ!? ほら美希。今日は新曲のレコーディングだ。いくぞ」

美希「はーいなの♪」

美希「——これからも、いっぱいいーっぱい、美希をキラキラさせてよね?」

美希「ハニィ♪」


FIN

ごめん、思ったより、というか全然シン要素が無かった。
少しはあると思ってたんだけど。

あと種死SSでもあるのに、ほぼアニマスの焼き回しになってごめんなさい……

個人的にキラとかアスランとかバンバン出したお祭り作品にしたいのですが。

どうしよう。あんまり続き望んでる人いなさそうだし、次やる、やよいの話を書いてお終いにしようかな。
もしよかったら皆の意見、聞かせてください。

部屋の片づけがひと段落したら、HTML化依頼出してきます。

皆の温かい言葉、ありがとうございます。何とか挫折せずに頑張ってみます。

次のスレは今日の夜か明日立てるので、その時に見かけたら、是非合いの手とかお願いします!!

まてや、スレ立てしすぎだろ
続き書くならこのスレに書いていけ無駄に立てるな

>>55 そうですねー、確かに無駄に立つ事になるかも。じゃあスレタイ失敗したなー。
わかりました。じゃあ続きはここに書くので、またちょくちょく覗きに来ていただければ幸いです。

美希がシンをハニーとか違和感しかない
美希はシンを好きなのか?シンをハニー呼びはやめてほしかった
だって美希がこれじゃ単純なキャラってことになるしアイマス種タヒ両キャラ活かせてなくないか?

>>58 ゲームアイマスではプロデューサーに惚れてるような描写あるけど、アニマス惚れてる描写が薄いから、
あくまでもアニメ基準で「自分をキラキラさせてくれる特別な男の人(アニメではP、ここではシン)の事を、特別にハニーと呼んでる」という事にした。

彼方が満足できるものにならなかったのは、申し訳ない。

彼方ってもしかして二人称で使ってる?

「あなた」の変換で「彼方」も出るみたいだけど「貴方」「貴女」が普通じゃね?

>>63
あー、それは変換ミスです。(変換をしてしまったミス)
本当は「あなた」もしくは「アナタ」、「貴方」で入力するつもりだったのだけれど

あんまり気にしてなかったから見逃してました。以後気をつけますね。

では、22:30より、本編開始します。

次のタイトルは

シン「俺がやよいを守るから」

になります。

合いの手など歓迎。できれば適度に反応を頂けると、モチベーションが上がってやりやすくなるので、お願いいたします。

シン「やよい、今日の撮影凄く良かったぞ」

やよい「ホントですか!? うーっ、頑張った甲斐がありましたっ!」

やよい「シンプロデューサー! アレ、やりましょう!」

シン「お、アレか。よし、来い!」

やよい「ハイ、ターッチ!」

 パチンッ!
 
シン&やよい『イェイッ!!』

やよい「うっうーっ! 嬉しいですっ!」

シン(高槻やよい)

シン(765プロが誇る最高の癒し系アイドルだ)

シン(俺はその姿に、いつの間にか——ある人達の姿を、重ねていたようだ)

シン(765プロオールスターライブから、一ヶ月の時が過ぎた)

シン(竜宮小町以外のメンバーにも、かなりの人気出始めて、765プロは快進撃と言える活躍ぶりをしている)

シン「じゃあ、今日は春香と千早が午前中番組収録、

 その後ボイスレッスンに行かせるから、午前中の顔だしお願いして良いか?」

律子「ええ、そっちは私の方が顔馴染みだしね」

シン「竜宮小町は今日オフだったよな」

律子「久しぶりにゆっくりできる休日だからね。今日だけは家でゆっくりしているよう言ってあるわ」

シン「亜美はあそこで真美と遊んでるけどな」

亜美「ちょ! 真美そこで昇竜は卑怯っしょ→!?」

真美「勝てばよかろうなのだ→!!」

亜美「テメェの血は何色だ→!!」

真美「赤だ→!!」

亜美「亜美もだ→!!」

律子「まあ、休日くらいしか一緒に遊べる時間もないでしょうし、その位は勘弁しますが——真美の予定は?」

シン「午前中は仕事無しだが、午後はやよいとお料理さしすせその収録がある」

やよい「亜美、真美ー? ソファの下掃除するからどいてー」

亜美「あ、うん」

真美「うあうあー! 事務所のお掃除なんてアイドルのする事じゃないよやよいっち!」

シン「別に良いだろ……でもやよい、ホントに大丈夫だぞ? その辺は事務員の音無さんの仕事だし」

小鳥「ピヨ!? そ、そうだったの!?」

律子「そうですよ……今さら何驚いてるんですか……」

やよい「大丈夫ですっ! わたし、お掃除とかするの大好きなので、コレくらいへっちゃらですーっ!」

やよい「それに、事務所が綺麗になれば、みーんな嬉しくなって、

 その嬉しそうな顔を見るだけでわたしも嬉しくなるから」

やよい「好きな事やってみーんなハッピーって、凄い事じゃないかなーって!

  だからわたし、全然平気ですーっ」

小鳥(天使)

律子(天使)

シン「そうか? なら良いんだが。大切なアイドルなんだ。埃吸い込んで、体調壊さないようにな?」ナデナデ

やよい「えへへー、大丈夫ですよー」

真美「シン兄ちゃんさ→、やよいっちには凄くアマアマだよね→」

亜美「アマアマ天海ですっ! プロデューサーさん! 激甘ですよ、激甘!」

シン「良い子甘やかして何が悪い。お前らも甘やかされたかったら、ちゃんと良い子にするんだぞ」

亜美真美『遠まわしに良い子じゃない発言キタコレーッ!』

律子「全然遠まわしでもないけどね……」

やよい「あっ! シンプロデューサー! 午前中お時間空いてますか!?」

シン「俺のか? 俺は九時から十一時まで事務所で雑務こなす予定だったけど……さっき朝の朝礼前に終わらせちまった」

律子「早……」

シン「タイピングの速さだけが、コーディネイターの利点なものでね」

シン「で、午後からやよいと真美の収録があるから、それに引率するまでは、時間があるな」

やよい「ごめんなさい、一緒にスーパーに来てもらって良いですか?」

シン「スーパー?」

やよい「はいっ! 卵の特売があって……」

やよい「おひとり様2パックまでなんですけど、出来れば4パック欲しいなーって……

 だから、悪いんですけど、二つ代わりに買ってほしいなーって……」

シン「そんな事か。良いぞ、じゃあ今から行くか」

亜美「じゃあ亜美もお菓子買いにGO−っ!」

真美「真美も真美もーっ!」

シン「というわけで、ちょっと出てくる。春香と千早の番組、頼んだぞ」

律子「はーい。せいぜい年少組とのデート、楽しんで来てね」

シン「茶化すなよ……行ってきます」

やよい「いってきまーすっ!」

スーパー

シン「じゃあ、亜美真美。お菓子はそれぞれ200円ずつまで買ってよし。買い物手腕の見せ所だぞー」

亜美「むっふっふー、兄ちゃん亜美達を甘く見過ぎだねっ」

真美「200円あれば、この程度のスーパーのお菓子コーナーを占拠するなど朝飯前よ!」

シン「いや合計400円じゃ無理だろ」

亜美真美『ですよねー』

シン「じゃあ俺とやよいは卵な。——というかスーパーなんて来るの久しぶりだな」

やよい「そうなんですか?」

シン「ああ、オーブに居た頃、家族とよく来た位かな」

やよい「じゃあ普段、シンプロデューサーはどうやってお料理してるんですかー?」

シン「いや、してない……外食かコンビニ弁当で済ませてる……」

やよい「そ、そんなのダメですよー!

 栄養バランスも偏っちゃいますし、何よりお金がもったいないですー!」

シン「と言っても……料理の経験なんてないし、サプリメントも取ってるから問題は」

やよい「千早さんも同じこと言ってましたけど、プロデューサー、

 千早さんには『食事のバランスには気をつけろよ』って、何時も言ってます−!」

シン「そ、そこを突かれると痛いな……分かった。

 出来るだけ考慮してみるけど……俺野戦食の手加え位しか出来ないぞ……?」

やよい「うー、心配ですー。千早さんは、最近春香さんとお料理するって言うから大丈夫だと思うんですけど……」

やよい「——そうだ! わたしの家で一緒にご飯を食べましょーっ! そうすれば安心ですっ!」

シン「え!? ダメダメ! 華のアイドル宅へお邪魔するなんてパパラッチの良い的だ!」

やよい「シンプロデューサー、我がまま言っちゃ、メッ! ですよ!」

シン「我儘じゃなくて……その」

やよい「うー……」

シン「……そんな目で見るな。分かった、分かったから。卵、買うんだろ?」ナデナデ

やよい「えへへー、ハイッ!」

シン「よし、卵カゴに入れた。——じゃあやよい、お前もお菓子選んで来い。200円までだぞ?」

やよい「え!? 良いんですか!?」

シン「亜美真美はOKでやよいがダメなわけないだろ?」

やよい「……ハイッ! わかりましたー! ありがとうございますーっ」ガルーン

シン(やよいは元気に走っていき、俺の持ったカゴにほぼ丁度200円のお菓子を入れ、元気にお礼をした)

シン(気のせいか。そのお菓子はどれも、柔らかく、小さい子供でも食べれるものばかりだ)

シン(ちなみに、亜美真美はお子様用カゴ沢山にお菓子を入れまくり、

 ホントに200円以内なのか疑わしかったが、二つのカゴ合わせて400円丁度だった)

シン(コイツら、意外と買い物上手かもな)

やよい「では、本日のお料理さしすせそも、お別れの時間がやってきましたーっ」

亜美「楽しかったよやよいっちー」

真美「是非やよいっちの旦那さんになってみたいものですな→」

亜美「幸せそうだよねー」

真美「お財布のひもは握られそうだけど、毎日の晩御飯が楽しみになるもんね→」

やよい「も、もう亜美、真美! からかわないの!」

やよい「それじゃあ皆〜、バイバーイッ!」

シン(……暇な亜美もつれてテレビ局に行ったら、亜美も出てくれないか、という監督さんのお言葉が)

シン(休日返上だが、真美と一緒の仕事だから平気だと快諾してくれた亜美に、お礼しとかないとな)

シン(さて、これから事務所に帰って、貴音、響と軽いミーティングしたら、企画書まとめて……

 あとは明日の分の仕事もやっちまうか。これなら十時には帰れる)

シン「皆お疲れ! 亜美、休日なのに仕事してもらって悪かったな。その分ギャラは弾んでくれるそうだぜ」

亜美「ギャラ弾んでもらっても、亜美達パパ達にお金管理されてるんだけどね→」

真美「月五千円のお小遣いでやりくりするんだよ→偉くない?」

シン「偉い偉い。じゃ、帰るか」ナデナデ

シン「やよいも、お疲れ」

やよい「お疲れ様でーす!

 シンプロデューサー、プロデューサーのお仕事って、いつ終わりますかぁ?」

シン「へ?」

やよい「わたしの家でご飯食べるって約束ですよー!」

シン「あ、あれってマジだったのかよ!?」

やよい「大真面目です!

 プロデューサー、いつもわたし達の為に頑張ってるんだから、ちょっとでもお礼しないとなーって!」

シン「う、嬉しいけどさ……今日は残業が……」

真美「え→兄ちゃん昨日も残業してなかった?」

亜美「ピヨちゃんに『俺はタイピング早いから、この仕事はやりますよ!』って仕事奪って帰らせてたじゃ→ん」

シン「そりゃ女の人をあんま夜道歩かせるわけいかないし……」

シン(あと、あの人残業中テンション高くて、何か怖いし……)

やよい「じゃあ毎日何時に帰ってるんですか?」

シン「帰る時間はピン切りだよ。早ければ定時の六時には上がれるし、遅ければ日付をまたぐ時もある」

やよい「ちなみに今日は……」

シン「貴音・響、二人のミーティングと予算割り振りするだけだから、八時には帰れると思うけど。

 ただ明日やる分もやっちゃおうかと思って、今日は十時まで居るつもりだった」

亜美「明日出来る事は明日やればいーじゃん!」

真美「兄ちゃん〜、仕事にアッチューする人はモテないよ〜?」

シン「『熱中』な。——まあ、そうだけど。やよいは、いいのか? その、俺みたいな男を家に上げてさ」

やよい「大丈夫です! ウチ、兄妹がいっぱいますから、一人ぐらい増えてもへっちゃらかなーって!」

シン「…………兄妹」

やよい「? どうしたんですか?」

シン「——そう、だな。行こう、かな」

シン(帰りの車に乗り込んだ俺達。

 俺は、何だか妙な気持ちを抱えたまま、ただ車の運転をしていた)

亜美「兄ちゃん、いつものムッツリ顔じゃないよ?」

真美「どしたの、なんか遠い目してるよ?」

シン「え、そんなにか?」

亜美真美『うんうん』

シン「そうか。いや……懐かしくてさ。俺、妹いたから、兄妹で飯とか……なんか、そう言うのがさ」

真美「え!? 兄ちゃん妹居たの!?」

亜美「見たい! 亜美達、兄ちゃんの妹チョー見たい!」

やよい「わ、わたしも見たいかなーって」

シン「ああじゃあ——これだよ」

シン(俺が取りだしたのは——古い、ピンク色の携帯電話だ。

 待ち受け画面には、一人の女の子。地味ではあるが、どこか明るく、可愛らしい印象を受ける女の子——)

シン「妹の、マユだ」

亜美「へー、カワEネ→!」

真美「兄ちゃん! この子もアイドルにしちゃおうよ!

 てか、これ最近の写真じゃないっしょ? もっと最近のないの?」

シン「ないよ。——死んじまったからな」

真美「え」

亜美「えっと……その、もしかして」

シン「ああ、戦争でな。両親と一緒に流れ弾で——って悪い。こんなこと、女の子に聞かせる話しじゃなかったな」

亜美「そ、そんなことないよ! 亜美たちこそゴメンね? そんな事とは知らずに……」

真美「うん、ハンセーする……」

シン「怒ってないから大丈夫だ。——それより、二人がそうシュンとしてる方が気持ち悪いぜ?」

亜美「あー! 人がせっかくメズラC→コーケー見せてやったのに!!」

真美「兄ちゃんなんか知らない! ロリコン、えっち!」

シン「楽しそうだなお前ら……やよい?」

やよい「へ?」

シン「さっきから全然喋らないけど……

 やっぱり、聞いてて気持ち良いもんでもなかったよな? 戦争の話なんて」

やよい「そ、そうじゃなくて……その、うー……ウチの兄弟が……

 そうなったらって考えたら、ちょっと……悲しくて……うぅ……」

シン「ご、ごめんやよい!! 大丈夫だ、戦争はもう起きないし、起きたとしても!」

シン「——俺が、やよいを守るから!!」

やよい「っ!////」

亜美真美『プロポーズだ!! 兄ちゃんのプロポーズだ!!』

シン「バッ、違——お前ら全員、俺が守るって意味だ!」

シン「だから、やよいにも悲しい想いは、絶対にさせない。だから、な?」

シン「俺はやよいの笑ってる顔の方が好きだから、涙拭いて笑ってくれよ」

やよい「は……っ、はいっ!」ペカーッ

シン「よし……じゃあ、今日は残業サッと終わらせるから、それまで待ってもらっていいか?」

やよい「大丈夫です! わたし、事務所のお掃除しながら待ってます!」

シン「そっか。亜美と真美はどうする? やよいも、良いだろ?」

やよい「うんっ、亜美と真美も良かったらおいで?」

亜美「うーん、お誘いは嬉しいけどねーん?」

真美「ママが今日ビーフストロガノンドルフを作って待ってるって→」

シン「強そうだなそれ」

やよい「そっかー、じゃあ仕方ないね」

真美「そうだね、ちかたないね。今日はやよいっちが兄ちゃんを一人占めだね!」

亜美「精一杯兄ちゃんに甘えてやんな→」

やよい「ひ、一人占め……////」

シン「お前らやよいをあんまからかうなよ……ほら、着いた」

亜美「じゃあ、亜美達、リッちゃん達に挨拶して帰るね兄ちゃん!」

シン「ああ、お疲れお前ら。やよいも、事務所で待っててくれ。車置いて、仕事すぐ終わらせるから」

やよい「はーいっ!!」

会議室

シン「一週間後、長期ロケで動物探検の仕事があって、ゲストに貴音が入る。

 響、貴音のバックアップを頼むぞ」

シン「今回のロケは地球の【日本】だ。

 ついでにその二日後にある温泉特集にも、二人をねじ込んどいたから、こっちの収録も兼ねていく」

シン「結構長期的なロケになるから、着替えとか準備を怠らないように。大丈夫か?」

響「大丈夫さーっ! 自分完璧だからな! それに、故郷の国に行けるなんて夢みたいさー!」

シン「ああ、響は日本出身なのか……これでセールスポイントがあがるな」

響「ウチの事務所は、名前的に日本出身か、家族が日本に居たとか、そう言う子が多いんじゃないか?」

シン「そう言えばな……俺はオーブ基準の名前だけど、皆は漢字が使われてるし」


風呂入ってくるね

シン「貴音はどこ生まれなんだ?」

貴音「ふふ、そのようなぷらいべぇとの質問には、お答え致しかねます」

シン「とっぷしぃくれっと、か?」

貴音「ええ、とっぷしぃくれっとです」

シン「そっか、残念。じゃあミーティングはこれにて終了。この長期ロケは俺が付いて行くから」

シン「明日はとりあえず、響がラジオ収録、

 貴音は生すか用の新企画打ち合わせに行くから、朝十時に事務所に来るように」

貴音「かしこまりました」

響「分かったさー! じゃあシン、自分これで失礼するぞ!」

貴音「では、私もこれで」

シン「ああ、お疲れ二人とも」

貴音「シン、これかららぁめんなどいかがでしょう? お仕事の方は、もう終了したとお見受け致しますが」

シン「悪い、これからやよいにお呼ばれしてるんだ」

貴音「おや……そうですか、それでは致し方ありませんね」

貴音「——シン、やよいは非常に強い子です」

貴音「いくらまだ幼いとは言え、貴方もまだ十七。弱さを見せても良い、という事だけは、お伝えしておきます」

シン「? よくわかんないけど……とりあえず心に留めてはおくよ」

貴音「ふふっ、それがよいでしょう。では、お先に失礼いたします」

シン「ああ、気をつけて帰れよ二人とも」

響「じゃーねーっ」

貴音「それでは」

シン「……よし、じゃあやよいに声かけて帰るか」

シン「——ずいぶんと、年季の入った家だな……珍しく木造住宅だ」

やよい「日本式なんですよー。どうぞ上がってください」

シン「ああ、お邪魔します。——あ、靴は玄関で脱ぐんだよな。この辺はオーブの家と一緒か」

長介「やよい姉ちゃん、おかえり——って、お客さん?」

やよい「そうだよー、わたしのプロデューサーをしてくれてる人だよ」

シン「よろしくな、俺はシンだ」

長介「あ、弟の長介です。ゆっくりしてってください」

シン「ありがとう。——他に兄弟は居るのか?」

やよい「妹のかすみと、弟は長介以外にも浩太郎、浩司、浩三の三人がいますよー」

シン「だ、大家族だな……」

やよい「でもすっごく楽しいんですから!

 じゃあわたし、晩御飯の用意してくるので、プロデューサー、弟達の相手をお願いしてもいいですか?」

シン「ああ、ソレ位お安い御用さ」

やよい「じゃあ長介、プロデューサーをお願いね」

長介「うん、分かった!」

シン「行くぞヤキニクマン! デスティニーの力見せてやる!」

浩太郎「ヤキニクパーンチ!!」

シン「効かんわっ! 足掴んで宙ぶらりの刑だ!」

浩太郎「うわー! ヤキニクマン負けちゃったーっ!」

長介「姉ちゃん〜、浩三のオムツどこー?」

やよい「何時もの所に置いてあるよー?」

シン「はっはっは、手も足も出ないなヤキニクマンッ!」

浩二「ヤキニクマンをはなせーっ! コノ、コノッ!」

シン「効かんぞ、効かんぞー、ハハッ」

浩太郎「くそーっ! かすみ姉ちゃん、助けて—っ!」

かすみ「え!? そ、その……た、助けてください」

シン「はいはい。ほらよ、良いお姉さん持って幸せだな」パッ

浩太郎「解放された! これで安心して戦える! ヤキニクキーック!」

シン「しかしその足掴んで再び宙ぶらりの刑だ!」

浩太郎「くそー! 人は同じ過ちを繰り返すのかーっ!」

やよい「はーい浩三、ミルクだよー」

長介「シンさんごめんなさい、ちょっと棚上の替えオムツ取ってもらっていいですかー?」

シン「ああ、いいよ。ほらヤキニクマン。一時休戦だ」

やよい「それじゃあ皆で——」

『いただきまーすっ!』

シン「うま……こんな美味い料理食ったの久しぶりだ!」

やよい「よかったですー!」

かすみ「わ、わたしも手伝ったんだよ……?」

シン「偉いなかすみちゃんは。ちゃんとお姉ちゃんの手伝い出来て」ナデナデ

かすみ「えへへ……/////」

長介「シンさん、醤油居る?」

シン「ああ、貰うよ。長介くんも気が効くし、良い家族じゃないか」


浩太郎「ボクは、ボクは!?」

シン「ヤンチャ坊主」

浩二「ぼくは、ぼくは!?」

シン「同じくだ、ヤンチャ坊主ども」

やよい「えへへー、自慢の家族ですーっ」



シン「——うん、美味しかった。御馳走様」

やよい「あ、洗っちゃいますんで、置いたままでいいですよー」

シン「そこまで任せちゃっていいのか?」

やよい「プロデューサーはお客さんですから! 浩太郎、浩二、かすみー、お風呂入ってきなさいー」

浩太郎「シン兄ちゃん、一緒に入ろう!」

浩二「入ろ! 入ろ!」

シン「え、いや俺は——」

やよい「あの、プロデューサー」

シン「な、なんだ? どうした?」

やよい「浩太郎達、プロデューサーが来てすっごく喜んでるんです。もしよかったら、一緒に入ってあげてくれませんか?」

シン「……いいのか?」

やよい「はいっ! あ、もちろんプロデューサーがよかったら、ですけど……」

シン「……ならいいよ。良し、じゃあ入るかお前ら! 長介君はどうする?」

長介「お、俺は、いいです。風呂狭いし」

シン「遠慮すんな。つめれば大丈夫だろ」

浩太郎「そーそーっ! じゃあ行こう!」

浩二「おーっ」

長介「し、仕方ないな……」

浩二「シン兄ちゃん! 背中洗ったげる」

シン「いいのか? じゃあ宜しくな」

浩太郎「じゃあボクも洗うぞ!! エリャエリャっ!」

シン「ははっ、もうちょい強くやってくれよ」

浩太郎「? シン兄ちゃん、肩にデッカイ傷あるけど、どうしたのー?」

シン「ああ、これか。俺昔モビルスーツ乗ってたから、その時の怪我だよ」

浩二「パイロットだったの!?」

シン「ああ、と言っても、もう辞めちゃったけどな」

浩太郎「すげーっ! いっぱい敵倒したの!?」

長介「浩太郎!!」

シン「ああ、良いんだよ別に。そうだな、敵はいっぱい倒したよ」

浩太郎「俺も頑張れば、シン兄ちゃんみたいになれる!?」

シン「——ならなくていい。浩太郎は、MSのパイロットより、飛行機やシャトルのパイロットにでもなればいいよ」

シン「そっちの方が、かっこいいぜ?」

浩太郎「そっかー、もびるすーつパイロットが言うなら間違いないね!!」

シン「そうそう。年上の言う事は聞いておけよ」

長介「……」

浩太郎「すー、すー」

浩二「くぅ……」

シン「そして王子さまは、MS『フリーダム』で王女様をさらい、二人で幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし」

かすみ「いいな、王女さま……」

シン「MSでさらわれたいのか?」

かすみ「そ、それより、王女さまが王子さまにさらってもらって、幸せになるっていうのが、羨ましいです……」

シン「はは、俺が王子様じゃなくて悪いな」

かすみ「////そ、それならそれでも……」

シン「かすみちゃん?」

かすみ「な、なんでもないですっ////」

シン「ん、ならそろそろ寝ろよ? じゃないと明日寝坊しちまうぞ」

かすみ「ん、それはダメ……おやすみなさい」

シン「うん、おやすみ」

シン「……疲れたなー、さすがにこの歳の子達の相手はキツイな」

やよい「ごめんなさい、お客さんなのに弟達押しつけちゃって」

シン「いや。大変だったけど、スゲェ楽しかったから、大丈夫だよ」

やよい「良かった—。あ、わたし戸締り確認してきますねー」

シン「ああ」

長介「あの……シンさん」

シン「? どうした、寝なくて大丈夫なのか?」

長介「あの……宿題で、どうしてもわからない所が……あんま、姉ちゃんには……」

シン「……そうか。いいぜ、教えてやるから。どれだ?」

長介「こ、これ!」

シン「ああ、これはこの分母を——」

長介「そっか、これで良いんだ! 凄いやシンさん!」

シン「凄くなんかないよ、ちゃんと勉強すりゃ、頭悪くても分かるさ」

長介「……ねぇ、シンさん」

シン「ん、どうした?」

長介「姉ちゃん、アイドルとして大丈夫ですか?」

シン「ああ、俺もやよいに助けてられっぱなしだ。——強いよ、お前の姉ちゃんは」

長介「……俺、大きくなったらMSパイロットになりたいんです。

 姉ちゃんを——皆を、守れる男になりたい。

 そんで、いっぱい金稼いで、皆を楽させてやるんだ!」

シン「そっか……長介は、ナチュラル、だよな」

長介「う、うん」

シン「実際問題、難しいだろうな。

 プラントじゃあMSパイロットはコーディネイターに席を奪われるだろうし、

 地球軍は——正直、もう存在自体が形骸化してる。辞めた方がいい」

長介「で、でも……でも!」

シン「長介、さっき俺が浩太郎に『いっぱい敵を倒したか』って聞かれて、君はそれを遮ろうとしたよな」

シン「どうしてそうしようとした?」

長介「……戦争に、参加したって事、なんでしょう? だとしたら、必ず良い話だとは、限らない、と思ったから……」

シン「よく考えてるじゃないか。そうだ、戦争に参加しちまえば、必ずいい事だけとは限らない」

シン「仲間が死ぬことだってある。俺自身死にかけた事だってある」

シン「もし、長介が死んだら——守るって決めた家族が、一番悲しむんだ」

シン「だから——やよいや家族が、長介のすぐ近くに居てくれるなら」

シン「軍人にだけは、絶対にならない方がいい」

長介「……そう、ですか」

シン「今日、やよいがいっぱいお菓子買ってきたの、知ってるか?」

長介「うん。皆で食べろって——」

シン「あれ、俺がやよいにって、買ってあげたお菓子だ」

シン「やよいは、自分よりも誰よりも、兄妹であるお前たちの事を想って、何時もアイドルをやってる」

長介「……姉ちゃん、いつもそうなんです。自分の事は後回しで……

 でも、それを悟られないようにって、笑顔でいつも……」

シン「長介、お前もそう言う大人になれ。——人に優しさを、そっと与えられる大人になってほしい」

シン「それだって、立派に家族を守る男の役目だ。わざわざ軍人になる理由なんてどこにもない」

長介「……分かりました! 俺、そう言う大人になります!」

長介「優しくて、強くて、そんでお金持ちになってやります!」

シン「ああ、男と男の約束だ」

長介「はいっ!」

シン「ほら、そろそろ寝ないと、明日の学校に遅刻しちまうぞ」

長介「いっけね! じゃあ、おやすみなさい、シンさん!」

シン「ああ、おやすみ」

やよい「あ、長介おやすみ〜」

長介「おやすみなさい!」

やよい「なんのお話してたんですかー?」

シン「男と男のお話だよ」

やよい「うわーっ! 何か、すっごく頼もしいですっ!!」

シン「ああ、長介は良い男になるぞ。楽しみにしとけよ」

やよい「——みーんな、すっかりプロデューサーに懐いちゃいましたね〜」

シン「ああ俺としてもスゲェ楽しかったよ。なんか、家族が——」


シン「増えた、みたいで……」


シン(——ああ、そうだ。忘れてた)

シン(俺にはもう、居ないんだ。家族なんて)

やよい「ぷ、プロデューサー……!?」

シン(涙が止まらなかった)

シン(もう十七なのに、子供のように、ただその場で泣き続けた)

シン(父さん、母さん、マユ……ステラ……レイ……!)

シン(皆、皆失った……守るって決めた、大切な人達)

シン(その人たちは、俺の、家族は、友達は——もう誰も居ないんだ)

シン(家族の温かさに触れ……その事を再び、実感した事が、酷く悲しかった)

シン(——泣きやむと、俺はやよいに抱きしめられていた)

やよい「よしよし……大丈夫、大丈夫ですよー」

シン(まるで赤子を泣きやませるかのように……やよいは、俺の頭を撫でて、落ち着かせようとしていた)

やよい「……泣きやみましたかー?」

シン「あ、ああ……ごめん。みっともない所見せちゃって」

やよい「そんなことないです。わたし、嬉しかったです! プロデューサーの、意外な所が見れて」

やよい「いつも、むすーっとしていても、いっつもわたしたちの事を、一番に考えてくれる、

 優しい、お兄ちゃんみたいなプロデューサーが、わたし、大好きです!」

やよい「だから、悲しい事あったら、わたし、いくらでもギューッとしてあげますから。遠慮なんてしないでください!」

やよい「だって——765プロのみんなみーんな、誰ひとり欠けちゃいけない『家族』だって、律子さん言ってました!」

シン「家族——俺が、皆と……」


シン(そうか……)

シン(居るじゃないか。——新しい家族が)

シン(本当の家族は、友達は、ステラは——もう居ないけど)


シン(俺の大切な居場所は、すぐ近くにあったんだ……こんな、手の届く所に)


シン(俺は、貴音の言葉を思い出し……やよいの言葉に甘え……もう一度だけ、涙を流す)

シン(でもそれは、悲しいからじゃない)

シン(嬉しいから。俺は笑いながら、涙を流した)

シン「じゃあ、お邪魔しました」

やよい「また来てくださいね! 約束ですっ!」

シン「ああ」

やよい「じゃあ——約束の、ハイッ!」

シン「ターッチ!」

 パチンッ!
 
やよい&シン『イェイッ!』

シン「——ありがとな、今日は色々、嬉しかった」

やよい「えへへーどういたしましてー。こっちこそ」

やよい「……お兄ちゃんが出来たみたいで、嬉しかった、です////」

シン「ああ、俺はお前らの兄ちゃんだ。どんどん、甘えてくれていいからな」

やよい「! は、はいっ!」

シン(やよいは嬉しそうに手を振りながら、俺を見送ってくれた。

 俺は、まだ胸に残るもどかしさを抑えて、帰路についた)

翌日

やよい「おはよーございますーっ!」

シン「お、おはようやよい。昨日はサンキュな。楽しかったよ」

やよい「あ、お兄ちゃん——ってあっ!!////」

やよい「ま、間違えました! わ、忘れてくださーいっ!/////」

シン「あー別にいいよ。俺も嬉しいしな、兄ちゃんって言われて」

亜美「おやおや→やよいっちがシン兄ちゃんの事を【お兄ちゃん(はぁと)】と呼びましたぜ真美さん!」

真美「聞きましたぜ亜美さん……【お兄ちゃん(はぁと)】ですぜ……」

亜美「シン兄ちゃん、昨日やよいっちの家で何があったか、洗いざらい吐くんでぃ!!」

真美「もうネタは上がってるんでぃ!!」

シン「上がってんなら吐かなくていいじゃねぇか。なんもないよ——ただ」


シン「皆が俺の守るべき、大切な家族だってわかっただけさ」

Fin

結論:やよいは可愛い。

読んでくれてありがとう。

音なく消えるつもりだったが、罪悪感酷かったので最後に。
ごめんなさい、先ほどHTML化依頼を出してきました。
皆の言い分ことが理解でき、どうも俺には力量不足だと感じた。

乙してくれた人や続きを見てみたいと思ってる人が、ほんの少しでもいるかもしれないが
もう限界だと思ったので、ここでやめときます。

また細々とSSは書くかもしれないけど、その時はまたよろしくお願いします。

ではノシ

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