ショタ「ねぇ、どうしてボクじゃ駄目なの?こんなに好きなのに…」 (50)

 
 
みたいなのはよ!

メンヘラ?はぁ?

ヤンデレにきまってんだろ!

おら!誰かはよかけ!

俺がまってるんやぞ!

「お前、何してんの?」
腹の上に重みを感じて目を覚ます。
頭がぼんやりして思考が追いつかない。いつのまにか寝てしまったのだろうか。
タカシはまともに動かない頭を振り動かし、なんとか思考を立て直そうとする。
「ショウタ?」
腹の上でショウタが不気味に笑って居た。
ショウタは隣の家の子供でタカシによく懐いて居た。
母子家庭育ちのショウタにはタカシのような大人の男が珍しいのだろうと
考えて居たが、どうもそれだけではないようだと気づいたのはいつのころだっただろう。
まず頻繁に家を訪れるようになった。
しかしこちらも社会人だ、いない日が多いと知ると、どこから手にいれたのか、
合鍵を使って勝手にタカシの部屋へ侵入するようになった。
そして今日も。

彼女を連れて来たのがまずかったのだろう。
タカシが付き合って半年の彼女を家にあげると、いうものように勝手に
侵入をしていたショウタは「お帰りなさい」も言わずに見る間に不機嫌になった。
怒るでもなく、泣き出すでもなく。
子供らしさを微塵も感じさせない態度を見せることはよくあったが、
今日のそれはいつもよりひどく、タカシが心配になるほどであった。
「ショウタ?」
「タカシお兄ちゃんに、僕言ったよね」
「え?」
何故だろう、タカシの体は指一本も動かなかった。
「好きって言ったでしょ?」
「ああ…」
確かに告白はされたが、タカシは笑ってなかったことにしたのだった。
「僕じゃダメなの?」
「ショウタは男の子だろ?」
舌がもつれて、呂律が回らない。
明らかにおかしな己の体の変化に、タカシは漸く気づいた。
何が起こった?
そうだ、ショウタの入れたコーヒーを飲んだのだと思い出したのは、
ショウタがタカシの部屋着のTシャツをめくりだした頃だった。

「ショウタ…?」
「あー嫌だ」
「ショウタ?」
ソファに座ったままのタカシの腹からショウタは退くと、これ見よがしにため息を吐いた。
「大人の男って、嘘ばかりつく」
「ショウ…、」
「パパもさぁ、いっつも誤魔化して結局僕とママのこと捨てたんだよね」
ショウタ。
そう声を掛けようとしたその時、ショウタの靴下に包まれた足まだ子供らしいふっくりとした足が
タカシの腹部めがけて飛んで来た。
思わず息を詰めるが、うめき声が漏れた。
「嬉しいよって言ったくせに」
もう一度ショウタの足がタカシの腹へと飛んだ。
「嘘つき」
ショウタの視線がタカシの目を見つめ、それからニコリと笑うと
視線を彷徨わせた。
視線は首筋を辿り、はだけさせられた腹にたどり着いた。
そして。
「ショウタ、誤解させたなら謝る、ショ、」
次の攻撃は、明確にそこを狙っていた。
男の急所であるそこだ。
やめてくれ、という言葉は届かなかった。
ショウタの幼い足が振り上られたかと思うと、思い切りそこを踏みつけたのだった。

すげえ、これおもしれえぞ!

「最悪。もう最悪。なにあの女。タカシお兄ちゃんに全っ然似合ってない」
タカシは声にならぬ呻き声を漏らしたままソファに倒れこんだ。
「もうエッチしたの?ねぇ、しちゃったの?」
ショウタの幼さがまるでない発言に言葉がない。
いったい何をされいるのだろう。
幼い嫉妬、などと言う生易しいものではない感情に戸惑いよりも恐怖を感じた。
ショウタの目は決して笑っておらず、そして冷たかった。
「いつから付き合ってんの?」
答えずに居ると、タカシの顎をクイッと持ちあげ、ショウタはもう一度、
「い・つ・か・ら、付き合ってんの?」と尋ねた。
「半年、前…」
「僕が告白したあとだね。ホント最悪」
「ショウタ…」
「本気じゃないって思ったんだ?僕の告白はなかったことにしたんだね」
ごめん、悪かった。
そう言わせぬ気迫でショウタはタカシを見ていた。
「いいよ、タカシお兄ちゃん、許してあげる」
まるで見抜いたかのように、ショウタは言った。
天使の微笑みと呼ぶに相応しい笑顔は、タカシもよく知っているショウタの顔でほっとする。
「よく聞いてね?僕はタカシお兄ちゃんが好きだよ?」

「わ、わかった…」
「わかったってなに?どう言う意味?」
ショウタは微笑み、タカシの腹の上へ再び乗った。
「僕が誤解しないようにちゃんと言って?」
タカシは逡巡し、そして思い口を開いた。
「ショウタのことは、可愛いと思う」
ショウタの手は、タカシのTシャツをめくり、そしてその端を弄っている。
「そう、嬉しいなぁ」
「だけど」
「だけど?」
「ーーそう言う意味じゃない」
「ーーそれってどう言う意味?」
「だから、恋愛対象ではなくて、」
「酷い」
まるで情緒不安定な女だ。
ショウタの目には見る間に涙がうかび、さめざめと泣き出した。
「可愛いって言ってくれたのに!だから僕、だから…、」
「ショウタ…」
「ひどい、ひどい…」
顔を覆い泣く姿はまるで女だ。
いや、ショウタはもしかしたらずっと女だったのかもしれない。
思い返せば、体を押し付けてくることもあったし、タカシの腕を見て
男らしいと褒め妙に幾度も触りたがることもあった。
ショウタはずっとそうだった。
気づかぬフリをし、歪な関係を続けて来たのはタカシの方だ。
ショウタはずっと「そう」であったのだ。

気づくと罪悪感と恐怖が綯い交ぜになった、混沌とした感情で
頭がパニックを起こす。
ひどい、ひどいと尚も泣き続けるショウタに手を伸ばしかけ、
そしてタカシは彼に触れられぬままその手を元の場所に戻した。
ここでショウタに優しくしては元も子もない。
ひどい。なんてひどい。
そう泣く小さなてはまだ幼くて、確かに男親も必要に思えた。
それを勘違いしているだけだ。そのうち、成長をすればショウタもそのうち…。
そう考えて居ると、ふとショウタの小指になにか赤いものがついているのに気づいた。
なにか鮮やかな色。まるで血のような。
ハッとする。
「み、ミユキは…?」
一緒に家に来たはずの彼女は何処に行ったのだろう。
泣き声がピタリと止んだ。
「ああ、あの女、ミユキって言うんだ?」
「ショウタ…?」
「煩かったなぁ。ピーピーないてさぁ。ずーっとタカシお兄ちゃんを呼んでいて
耳障りでしょうがなかったよ」
ショウタは口元にうっすらと微笑みを浮かべて言った。
「大丈夫、タカシお兄ちゃんが寝ている間に片付けたから。
僕、お片づけ得意なんだよ?」
すごいでしょ、褒めて。
そう言いたそうな顔に、タカシはもう恐怖以外の感情は浮かばない。
「み、ミユキになにをした…?」
「だから、片付けたんだってば」

こんなクソスレたてちまって後悔したがこんなに良いもんが見れると立てた甲斐があったってもんだ!

「片付けたって…、」
「始末したの」
ペロリと赤い舌を覗かせて、事もなげにショウタは言う。
「始末って!」
ショウタの肩を思わずつかむ。
大人の男の力で思い切り掴んだら
さぞ痛むだろ、可哀想に。
そんな気持ちは微塵も浮かばなかった。ショウタを突き飛ばし、まだ覚束ない足で部屋を歩き回る。
キッチン、寝室、ベランダ。
どこにもミユキはいなかった。
そして辿りついたのは、浴室。
恐る恐る開ける。
ーー浴室は、真っ赤に染まっていた。
何がどうなっているのか全くわからぬような惨状に、足元から崩れ落ちた。
千切れているのは手が足か。それすら判断できない。
ただの肉と化したミユキに悲鳴も出なかった。
「タカシお兄ちゃん」
しゃがみこんだタカシの耳元で、鈴の音のような声がし、それからベロリと耳の後ろを舐められる。
思わず飛び退くと、まだ生暖かい濡れた感触に指が触れ、
タカシは今度こそ情けない悲鳴を上げた。
「お兄ちゃんさ、ダルマさんとお人形さん、どっちが好き?」
「な、な、なに、な、」
「答えて?タカシお兄ちゃんのことは大好きたから、特別に選ばせてあげる」

お人形さん!

何の選択を迫られているのか、ぼんやりとだがわかった。
「タカシお兄ちゃんさ、最初の人によく似てるんだぁ」
「最初の人…?」
「僕が最初に好きになった人。その人には逃げられちゃったけどね」
逃げられた?
ふと、タカシは何かを思い出しかけていた。
逃げた?
この街にタカシが来たのはいつだっただろうか。
この子供と出会ったのは。
一年前。そう、ちょうどそのころだ。
ショウタはあとから越して来て。
『早く忘れなさいよ』
そう言ったのは?
『タカシ、お母さん心配なの。なにがそんなに不安なの?』
夏の湿度と暑さにやられそうになりながら、母と向き合って話した。
あれは、いつの、なんの話だ。
「あれー?思い出した、僕のこと」
タカシは大学生のころ、一人暮らしをしていた。
隣に住まうのは、看護師の母と医者の父、そして六歳の子供。
「タカシお兄ちゃーん?どうしたのー?」
全身から汗が吹き出る。
タカシは知っている。この不気味な子供を。
天使?冗談ではない。こいつは悪魔だ。
「大丈夫、お兄ちゃんには痛くしないよ?」

真っ赤な映像がフラッシュバックする。
大学時代、三年の時に付き合ったあの娘はどうなった?
何故今まで忘れていたのだろう。
「はーい、時間切れ」
ショウタは酷く冷たい声で言った。
「名前まで変えちゃってるからさ、探すの苦労したよー?」
首筋になにか鋭い痛みを感じた。
注射を打たれたのだと気づいたのは、すぐだった。
再び意識が朦朧とする。
きっと次に目覚めた時、タカシはまともな状態ではないだろう。
「ショウタ、」
「今度は逃がさないよ」
ショウタは嬉しそうにいいながら微笑み、それを重い瞼の隙間から見つめ、
タカシ体を横たえた。
「悪魔…」
言う言葉は誰の耳にも届かない。
ショウタは嬉しそうに「大好き」といい、そしてーー。
蝉が鳴いてる。
声に鳴らぬ悲鳴は誰にも届かない。
そう、誰にも。
<終>

駄文すまぬー

ええー!!言いところだったのにー!!


とりあえず乙!
続き書けるなら書いてもいいのよ?むしろ書けください

いやほら需要が>>1以外にはないじゃんwww
切りよく終わらせたつもりなんで続きはないよwww
夜中の変なテンションで書いた誤字脱字の目立つ文書でも喜んでもらって
良かったわww

今度はヤンデレやないの書いてクレー

>>23
いや、そんな事はない
少なくとも5人は静かにF5を連打していたに違いない

ちなみにその作品のショウタってショタからきてんの?

>>25
そうざます
適当な名前が思いつかなかったので

なるほどな、なるほど…
いやー…引き続き第二話が見たいなー!なんて…

つかエロパロ板でもこんなのなかなか見つからん
何故世の人々はヤンデレショタの素晴らしさにきづけないのか
え?姉ショタでヤンデレショタ?何それおいしいの?

つ・づ・き!ほら、つ・づき!

まぁ疲れてるならしかたない!
お疲れ、今日はいいもんがみれたでござる!
おぬしも良い夢みるでござるよー!では、にんにん!

>>24
ショウタといる時はいつも緊張する。何故だかわからない。
そしていつも数を数えてしまう。
1.2.3…。
「ママがさぁ、再婚するんだって」
「ああそう」
タカシが素っ気なく言うと、ショウタは唇をへの字に曲げた。
「お兄ちゃん酷くない?ママのこと好きだったくせに」
「そりゃお前、安本さんが独身だと思っていたからで、」
そこまで言ったタカシは己の失言に気づき、はたと口を噤んだ。

俺続き書いていい?

「やっぱりさぁ、僕って邪魔かなぁ」
ションボリと言うくせに、ショウタは絶対に泣かないのだ。
「あーあーあー泣くなよ?泣くなよ?」
「泣かないよ!」
そう言いつつも、ショウタの目には涙が浮かんでいる。
突けば泣きやすくなるのがわかっていた。流石に懐かれて四年となると
ショウタの行動パターンの把握もそろそろ完璧になりもするだろう。
「別に邪魔じゃねーだろ」
「でもさぁ…」
鼻水を啜りながらショウタは体育座りした膝に顔を埋めた。

ショウタは隣の家の子で、タカシの住まう家の隣に越して来た。
越してきた当初は確か父親が居たが、一年経つころには彼が消え、
大きな屋敷はシンと静まり変えるようになった。
家だけを残して父親が出て行ったのだとショウタはいい、
彼はそれ以上のことは話たがらなかった。
「僕が私立落ちた所為かなぁ」
「はぁ?」
「だからパパは出て行っちゃったのかなぁ」
隣の家とは違う、小ぢんまりとしたこの家を、ショウタは
居心地がいいと言う。
大きな屋敷があっても、裕福でも、ショウタはあまり幸せな子供では
ないのかもしれない。

「馬ぁ鹿、そんなんじゃないだろ。だったら誕生日に自転車くれたりしないだろ」
「そうかなぁ…そうだったらいいいなぁ…」
公立校のランドセルなんて背負いたくないと言い、ショウタが
この家の庭に届いたばかりのランドセルを捨てに来たのはもう
四年も前のことだ。
「でっかくなってもまだまだガキだなぁ」
「ガキじゃないし!」
「ガキだろー」
「ガキじゃない!ママの再婚だって我慢するもん!宿題だってちゃんとやるし、
塾だってちゃんと行ってる!リレーだって一番だし……」
「ショ、ショウタ…?」

あ、まずい。そう思った時にはショウタはボロリと涙をこぼして居た。
「だ、だけどパパは帰ってこないんだ…!ぼ、僕の所為かなぁ?」
「…それは違うだろ」
タカシは知っている。
ショウタの父に既に別の家庭があることを。
見かけたのは偶然だった。
街を歩くショウタの父と、そしてショウタの母ではない女。それに小さな赤ん坊。
まだまだ「ガキ」であるショウタにはあまりにも厳しい現実であろう。

「ほら、泣くなよ。飴やるから」
「いらないよ…」
そう言いながらも、小さな手が飴に伸びるのがなんだかおかしい。
「心配するなよ、お前はいい子だ」
「ーーホント?」
「ああ、ホントだ」
「ホントにホント?」
ショウタはしつこく確かめ、タカシの膝に手つき顔を近づけた。
「お兄ちゃん、嘘つかない?ホントに僕っていい子?」
顔が近づくと、いつの間にやら開けられたピーチキャンディの匂いがした。
「いい子だよ?」
だから心配するな。
そう言いかけたショウタの唇が不意に、タカシの頬をかすめた。
「ショウタ?」
「お兄ちゃん、あのね、聞いて、僕ね…」
ショウタといる時はいつも数を数えてしまう。
1.2.3…。
何故だか今ならわかる。
少しでも長く一緒に居たい。
「あのね、」
「…うん」
つまりそう言うことなのだろう。
そしてタカシはまた数を数えるのだ。
<終>

>>30
どうぞー

住み慣れた場所を離れるのは辛いものだ。
アヤカは重くなる一方の足を無理やり動かしながら、
何故あの生まれ育った村を出たのだろうと考えていた。
水も食料ももう余っていない。
仕方が無い、ものが無いのはどこへ行っても同じことだ。
世の中が壊れたのは、アヤカが生まれるよりずっと昔のこと。
戦争があったとか、カクバクハツがあったとか大人は言うが、
アヤカはその時代のことなどなにも知らない。
その咎を背負うのがアヤカたちのような後から生まれた若い世代だと言うのは
納得のいかないことだった。
大陸が地殻変動でひとつになり、争いが起きて、そして…。
とにかくアヤカは世界がどうなっているのかをよくは知らなかった。

「お姉ちゃん」
「なに?」
水分不足でカラカラのカサアサになった唇を無理やり動かし返事する。
「なに、どうしたのショウタ」
疲れたのか、と問うつもりは無い。
そうだと返事をされても、アヤカはおぶってやることも抱いてやることもできない。
いくらショウタが子供でも、今のアヤカにはその体力が残されていなかった。
ショウタはこうして旅を続ける途中で出会った子供だ。
どうやら親とはぐれてしまったらしい。仏心を出したのが運の尽き、
手放すこともできず、一人でも身軽とは言えない旅にこうして同行させる羽目になってしまった。

「水を生む人なんて本当に居るのかなぁ」
ショウタが尋ねた。
ショウタが言って居るのは水吐き属と言う伝説の第二人類のことだ。
水のない環境で水を生むと言う、信じられない特殊能力を備え持った
新人類だと言う。
アヤカも勿論、彼らを探していた。
「居るってアタシは信じてる」
ショウタの手を引きながら、アヤカは短く答えた。
「アヤカ姉ちゃんが言うならきっといるね」
ショウタは無邪気にいい、そして微笑んだ。
ああ重い。
母性を上乗せしても、ショウタの存在は重かった。
何故子供など拾ってしまったのだろう。
今更のしかかる後悔に、しかしアヤカは何よりも自分自身にうんざりしていた。

全く厄介なものを拾ってしまったものだ。
アヤカの内心に渦巻く黒い心模様など知らぬショウタは元気良く歩いている。
アヤカより元気そうなのは錯覚ではない。
アヤカの最後の水や食料をあげてやったのだから元気で自分の足で
歩いてくれなくては困るのだ。
ああ重い。そして辛い。
貧血と栄養不足に頭はクラクラする。
元より細かった体はさらに痩せたようだ。
そう気づくと目の前を歩くふっくらした子供の後ろ姿が憎くなる。
ああ憎い…。
足がもつれ、アヤカは砂に倒れこんだ。
「お姉ちゃん!?」
ああ憎い…。
そんなことを考えながら、アヤカは意識を手放したのだった。

冷たい感触に目を覚ます。
頭上は藁のようなもので覆われ、アヤカの上に影を作っていた。
「お姉ちゃん、起きた?」
ショウタの声だ。
「ショウタ…?」
「うん、そうだよ。大丈夫?」
「…ええと、ここって」
「集落だよ」
「集落?」
「そう、お姉ちゃんが倒れた場所の近くにあったの」
それはラッキーなことだった、とアヤカは体を起こす。
そして自分のおかれて居る環境を見回し、自分が木の床と柱の家に横たわって居ると把握した。
簡素な作りであったが、雨も降らないこの世界では、屋根さえあれば充分だろう。
壁もないその場所は清潔に掃除され、確かに誰かしらが住んでいる場所なのだとわかった。

「ねぇ、お姉ちゃん、お水飲む?」
「え?」
今、ショウタは水と言っただろうか。
「水?あるの?」
にわかには信じ難い話であったが、アヤカはかすれた声で確かめように尋ねた。
「あるよ。ちょっと待っててね」
「あ、うん」
素足のままショウタは飛び出すと、何処かへと消えて行ってしまった。
アヤカは周囲を見回した。
集落とショウタは言っていたが、他に家らしきものはなかった。
周囲には背丈のある木々と、それから砂だけ。
その中央にポツンとこの家が建って居るだけなのだ。
ショウタはどこに消えたのだろう。草を分け入って何処かへ行ってしまった。

やがて日が傾き始めたころ、漸くショウタは帰ってきた。
正直、置いてさっさと逃げてしまおうかと思ったが、
彼の言う水の誘惑に負けてしまったのだ。
ショウタを疎ましく思い始めて居るアヤカには、彼に対する情はもう殆ど残っていなかった。
「お姉ちゃん!お水だよ」
全身を汗だくにしたショウタは、粗末なプラスティックのカップに
並々と水をいれていた。
「水だ…」
思わずつぶやく。それも透明でとても綺麗な水だった。
アヤカの知っている水と言えば濁っていたり、何かが漂っていたり、そう言うものだった。
「貰って、いいの?」
「駄目だよ」
ショウタは言った。
「は?アタシにくれるんじゃないの?」
「そのつもりだったんだけど、条件があるって」
ショウタはまん丸い目を三日月型に微笑ませて言った。

「じょ、条件?」
コップは直ぐそこにある。たがショウタは意地悪をするように、コップを遠ざけた。
「ショウタ?」
「あのねぇ…ねぇ、来て!」
ショウタはもったいぶって言ったあと、森に向かって声をかけた。「な、なに?」
ガサガサと言う音がしたかと思うと、大男が現れた。
あまりにもその大男は巨大で、アヤカは息を飲んだ。
「あの人はタローさん。集落のエライ人なんだよ」
「はぁ…」
そんなことより、水を飲みたかった。集落のエライ人だかなんだか知らないが、
さっさと用事をすませたかった。
「あんたがアヤカか」
大男ことタローは低い声でアヤカに尋ねた。
アヤカは仕方なしに頷いた。
しかし視線はショウタの持った水を物欲しそうにチラチラと見ていると、自分でもわかっていた。

「あのね、僕を村に置きたいんだって」
ショウタは言った。
願ってもいないことだった。しかしどうぞご自由にと言うのも
憚られて、アヤカは一応は悩むそぶりを見せた。
「僕、集落を見てくるね」
ショウタは軽い足取りで掛けて行く。残された大男がアヤカに近づき、しゃがんだ。
「子供の肉が欲しいんだ」
男はなんでとないことのように言った。
「は?」
「うちの村は毎年子供を神に捧げて居る。だが今年は丁度いい頃合いの子供が居なくてね。
もしあの子供をくれるなら、この水をくれてやってもいい。
旅を続けるなら食料もやろう。勿論、このまま村にいると言うならそれも構わない 」
「あの…?」
話がよくわからない。
つまり食料や水と引き換えにショウタをよこせ、と言っているのだろうか。

「あの、ショウタは…」
「勿論命はない」
神への捧げ物だからな、と男は当たり前の事のように言った。
水と食糧が手に入る。
だが幼い命は絶たれるのだ。
「どうする?」
一緒に旅をした。何マイルも。
だが、彼は足手まといでしかなかったも事実だ。
ショウタをくれてやれば、手にはいるものは多い。
だがショウタは……?
「あの、あの…」
口を開いた拍子に、乾いた唇がプツンときれた。
その感触で、アヤカの気持ちは決まった。
「ショウタを差し上げます」

「残念だよ、お姉ちゃん」
ショウタの声がした。
「信じていたのに」
背中が突然の声にびくりとする。恐る恐る振り返ると、ショウタは
直ぐ後ろへと立っていた。
「お姉ちゃんなら僕を売るのようなことはしないと思ったのに」
「だから言っただろ」
男は呆れたように言い、ショウタをみた。
「あーあ、僕の天使だと思ったのに。助けてくれたのも後悔していたんだね」
「ショウタ……?」
「ホント残念」
小さな子供がアヤカを見下ろしていた。
子供は体温の高い手でアヤカの頬を包むと、しばらくそうやって
ニヤニヤとしていた。
それに飽きたのか、ピタリと微笑みを引っ込めると、今度は思い切りアヤカの鼻に噛み付いた。
「痛い!」
「なんで僕を売ったの。なんで僕を裏切ったの。信じらんない」

寝る
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