エレン「今日から高校生だ!」(43)


ミカサ「エレン」

エレン「……んごぉ……がぁあ……」グーグー

ミカサ「エレン、いい加減起きないと遅刻する」

エレン「……んん、………あと…五分……」スースー

ミカサ「エレン、エレン、それさっきも言ってた」ユサユサ

エレン「…………」スースー

ミカサ「……」スゥ


ミカサ「エレン!」ゴッ

エレン「ぐぶぉぉぉッッ!!」ゴロゴロゴロゴロ

エレン「…げほっ、……げほっ…! ッ、な、な、何すんだミカサぁ!」ガバッ

ミカサ「やっと起きた。いつまでも起きないからどうしようかと思った」ハァ

ミカサ「おはようエレン」

エレン「………はよーございます」ボロッ


エレン「……あのさぁ、ミカサさん。毎朝わざわざ起こしに来てくれんのはありがてえが、その度に実力行使するのやめろよ。いつかオレ死ぬぞ」

ミカサ「エレンが起きないのが悪い。……昨日あれほど言ったのにまた夜更かしした?眼の下が隈になってる」ズイ

エレン「し、してねえよ。顔が近いんだよお前」フィ

ミカサ「耳が赤くなってる。嘘ついた証拠」

エレン「……ぅ、そ、それは嘘だけじゃないっていうか…」ブツブツ

ミカサ「まったく、起きれないってわかってるのにどうしていつも遅くまで起きてるの? 大体エレンは……」グチグチ

エレン「……」

ミカサ「この前だって折角アルミンと三人でピクニックに行けたのに……」クドクド

エレン「……」

ミカサ「そんなことだから……」

エレン「……だぁ! もう、いちいちうるっせえなお前は! 昔のことまで掘り返しやがってったく……起きなかったら置いてけってんだよ」ケッ


ミカサ「置いてくなんて出来ない。そしたらエレンは毎日遅刻して……ちこく……遅刻!」ハッ

ミカサ「そうだ、のんきに話してる場合じゃなかった、今は……ああもうこんな時間!」

ミカサ「早くしないと入学式に遅刻する。エレンのせいでぎりぎりだから」ジト

エレン「わ、悪かったな」

ミカサ「謝る暇があるんならさっさと着替えて、ほら早く」グイグイ

エレン「おいこら引っ張るなよ! 自分で着替えられるからお前は玄関で待ってろ」

ミカサ「二度寝したり…」

エレン「しねえよ」

ミカサ「分かった。なら私は下で待とう。……なるべく早くして」

エレン「へーへー」

バタン

………
……



エレン「待たせたな、行くか………ってあれ? アルミンはどうした。トイレか?」

ミカサ「アルミンならとっくの昔に出た。新入生代表挨拶の準備があるから」

エレン「ああ、そう言えばそうだったな。……しっかしあいつはすげえな。首席入学なんて……オレなんか合格出来たのが奇跡だぜ」

ミカサ「当然。アルミンは本来ならもっと上の高校に入れる所を、私たちと一緒がいいからとわざわざ下げてるのだから」


エレン「そんなことしなくったって、高校が離れてもオレたちの関係は変わらないのにな」


ミカサ「うん」



ミカサ「……でも、私はアルミンが志望校をここに変えると聞いた時、やっぱり嬉しかった」

ミカサ「もう三人一緒の学校にはいられないと思ってたから」



エレン「アルミンもだが、ミカサも大概寂しがり屋だな」

ミカサ「……そう、私は寂しがり。……なので、エレンとアルミンは私から絶対離れてはいけない」


エレン「おーおー、……言われなくても爺婆になるまで一緒にいてやるよ」



ミカサ「……!」



エレン「……」ポリポリ

ミカサ「え、……えれ…」ジーン

エレン「あーほら! さっさと行こうぜ。本気で遅刻するぞ」グィ

ミカサ「……」コクン

タタタ…



―入学式後、一年四組教室―

ワイワイガヤガヤ…

アルミン「二人は……」キョロキョロ

アルミン「いた!」


テテテ…

アルミン「エレン、ミカサ!」


エレミカ「「アルミン!」」


アルミン「まさか三人一緒のクラスだなんて思わなかった。嬉しいよ!」

エレン「な! 中学でもなかったのにまさか高校で同じクラスとは」

ミカサ「本当に。今日は予想外の嬉しいことが起きる日」

アルミン「他にも良いことあったの?」

ミカサ「後で話す」ボソッ

アルミン「?」キョトン



エレン「そうだ、アルミン! 挨拶恰好良かったぜ…別人みたいだった」

ミカサ「うん。さすがアルミン、校長先生よりずっと良い、心に響くすばらしいお話だった」

アルミン「い、いやそれはないと思うよ」

ミカサ「そんなことある……っ」ドンッ

ジャン「っと…」ヨロ…

ミカサ「……! ごめんなさい、思い切りぶつかってしまった」

ジャン「いや、こっちもよそ見してたからな、悪い」チラッ

ジャン「……!」ハッ

ミカサ「……」キラキラ


ジャン(……なんて、綺麗な子なんだ……!)リンゴーンリンゴーン



ジャン「あ、あの……!」

エレン「おい気をつけろよミカサ。お前に全力でぶつかられたら痛いじゃ済まねえぞ」ハハハ


アルミン「エレン!」

エレン「なんだよ」

アルミン「君はデリカシーをもう少し持った方がいいよ」

ミカサ「いい、アルミン。いつものこと。エレンにデリカシーなんて期待してない」フフ


ジャン「……」



キーンコーンカーンコーン

アルミン「チャイムだ。先生が来るから席に着こう」

エレン「おう。オレとアルミンは前後だな。ミカサは…」

ミカサ「私は少し離れてしまったけど、名前順ならしかたのないこと。また後で」


スッ


ジャン「……ぁ、行ってしまった……」

ジャン「オレも席に着くか……」ハァ

ジャン(……羨ましい)ギリ

……


キース「今から私は職員室に行ってくる」

キース「その間貴様らにはオリエンテーションの一環として自己紹介カードを書いてもらう」

キース「出身校、性格、特技、将来の夢、書くことはなんでもいい。自由に己をアピールしろ」

キース「が、後日後ろの掲示板に張り出すのでふざけたことを書いた輩は笑い者になるだろうから覚悟しておけ」

キース「では、始め!」



カリカリ


キース「今から私は職員室に行ってくる」

キース「その間貴様らにはオリエンテーションの一環として自己紹介カードを書いてもらう」

キース「出身校、性格、特技、将来の夢、書くことはなんでもいい。自由に己をアピールしろ」

キース「が、後日後ろの掲示板に張り出すのでふざけたことを書いた輩は笑い者になるだろうから覚悟しておけ」

キース「では、始め!」



カリカリ



アルミン(ええと…まずは名前と、性別。出身校はシガンシナ中学で…将来の夢は……)

アルミン(…普通は、職業とかを書くべき所……だろうけど……)



『世界には僕らの見たことのないものがまだまだいっぱいあるんだ!』



アルミン「……」

アルミン(『色んなことを勉強して、世界各国を見て回りたい』、と)

アルミン(でも僕の夢は昔からずっとこれなんだ。たかがプロフィールと言えど嘘なんか書けないよね)


アルミン(……、他の人はどんなことを書いてるんだろう?)キョロ


アルミン(隣のクールそうな女の子は色鉛筆使ってカラフルに仕上げてるみたいだ)

アルミン(すごい真剣……、真剣に『将来の夢 お嫁さん』って書いてる)

アルミン(紙を食い入るように見てハートや動物を書き散らして満足そうに……、うん。あんまり見るとまずいよね)フィ


アルミン(……恐そうな子だと思ってたけど、人は見掛けによらないんだなぁ)


アルミン(右隣の子は……、あれなんだろう。芋? え、これ自己紹介カードだよね。どういうこと? 芋が好きってアピール?)

アルミン(うーん、なんか変わった子なんだろうな……あ、寝た)



アルミン(そう言えばエレンは何て書いたんだろ)クルッ


ガタンッ

エレン「んだと!?」ガッ

ジャン「ああ? やんのかてめぇ!」ガッ


アルミン「!? え、エレン!?」


―少し前―

エレン(将来の夢か……、まずは『アルミンやミカサと冒険したい』)カリカリ

エレン(あとは…、あれだな)カリカリ

エレン「ッ」ヒラッ

ジャン「ん?」

エレン「わりい、手が滑っちまった。拾ってくれるか?」

ジャン(こいつ…さっきの……)

ジャン「……おう」ヒョイ …チラッ


『政治家になって悪い奴らをくちくする』


ジャン「……」ジッ

ジャン(は?)


エレン「……お、おい。拾ってくれたのは感謝するけどよ、あんまり見るんじゃねえよ。恥ずかしいだろうが」

ジャン「……」

エレン「聞いてんのか? 返してくれよ」スッ



ジャン「……あのさ、お前…これ冗談……には見えねえけど、本気で書いてるのか?」


エレン「……? 冗談なわけないだろ、何言ってんだ」キョトン

ジャン「いや…政治家になる、とか悪い奴らを倒す、とか今時小学生でも言わねえぜ」


エレン「あ?」イラッ


ジャン「あー、悪い」

ジャン「思ったことをつい口に出しちまうのはオレの悪い癖だ。すまん」


ジャン「だがお前のために言っといてやるけどよ、もう少し現実見た方が良いぞ。高校生にもなったんだからよ」


エレン「……そう言うお前は何て書いたんだよ」

ジャン「俺は堅実に地方公務員になりたいって書いたな」

ジャン「今のご時世安定した生活を求めるのが一番の成功と幸せへの近道ってわけだ」

エレン「……はッ、つまらねえな。現状に甘んじて何もしねえことの何が幸せへの近道だ」


ジャン「……」イラッ

エレン「……」イラッ



ジャンエレ((なんかこいつ、むかつく!))


――――――



アルミン「ちょ、ちょっと…やめなよ喧嘩は……」オロオロ

エレン「お前のその快適な脳内がオレは羨ましいぜ!」

ジャン「ああ!? オレは現実主義なんだよ。でっけえ理想論だけ掲げてる野郎にだけは言われたくないなぁ!」ガッ

エレン「離せよ! 服が破けちゃうだろうが!」


ミカサ「何をしているの?」バッ


アルミン「ミカサ! エレンが隣の人と喧嘩を…」

ミカサ「……」ハァ

ミカサ「エレン、やめなさい」


エレン「邪魔すんなミカサ!」グッ


ミカサ「エレン! 高校生にもなって教室で大声あげて喧嘩するなんてみっともない。皆の迷惑。やるなら外でしなさい」

エレン「……けどっ」

ミカサ「言いわけは聞かない。これ以上ここで続けるつもりならエレンもあなたも私が保健室送りにする」ギロ

ジャンエレ「「」」サアアアア

ジャンエレ「「すみませんでした!」」ズザアアア

ミカサ「わかればいい。早く座って大人しく続きを書きなさい」

エレン「……くそ…」スッ

ジャン「……ちっ」スッ


アルミン(さすがだなぁ……)


―帰り道―

エレン「だぁかぁらぁ! あれはあいつが悪かったんだよ! オレの夢を馬鹿にしたんだ」

ミカサ「馬鹿にされたなら受け流せばよかっただけ」

ミカサ「反論するにしてもアルミンみたいに冷静に言えばいいものをエレンはいちいち子供みたいに突っかかるから周りに迷惑がかかる。もう少し自分を抑えて…」


アルミン「ま、まあまあそこら辺にしといてあげてよミカサ」

ミカサ「……アルミン…」



アルミン「何も殴り合いの喧嘩になったわけじゃないんだ。エレンも反省してるし……」


エレン「ああ? してね…むぐぐぐう!」


アルミン「反省してるし!!」グググ


ミカサ「……、わかった。今回はここまでにしてあげる。……でも次同じようなことがあったらおばさんに報告するから」

エレン「……!」

エレン「気をつけるよ……」クッ

ミカサ「本当に気をつけて」

エレミカ「「……」」



アルミン「もう……ほら、二人とも! この話はここまで、いつまでも眉間にしわ寄せてないで!

アルミン「だいたい今日は僕の家でお祝いのパーティするんだろ?」

アルミン「二人がいつまでもそうしてるんなら僕だけ先帰って二人の分のケーキ食べちゃうからね!」タタタ


エレミカ「「!」」


ミカサ「あ、待ってアルミン! それはずるい!」タタタ

エレン「……待てよ! オレも行くぞ!」タタタ


―翌日体力測定―

ハア…ハア…

エレン「アルミン! あとちょっとだ、頑張れ! もう少し……あと10メートル!」

パアン

アルミン「……はあ…はあ…はあ………ッ!」ゴホゴホ


エレン「お疲れ。よく頑張ったな。珍しくびりじゃねえぞ! ほらタオルだ」スイ

アルミン「後ろから…数えた……方が…早い……けどね…、ありがとう……」ハアハア



ライナー「おーい、皆ゴールしたみたいだな。次は砲丸投げだ。早く移動しろー!」

オー

エレン「オレ達も行くか。……大丈夫かアルミン」

アルミン「ああ。まだ喉は痛いけど…息は落ち着いてきた……」


ダズ「うおぇえええええええ」ゲロゲロ

エレアル「「!!??」」


トーマス「ぎゃあああ! ダズが吐いたあああ!」

サムエル「うわああああ!? 撒き散らしながら転げまわるなああ!」

ミリウス「どっどどどうすればいいんだああ!」


ライナー「どうした!」タタタ

ミリウス「だ、ダズがいきなり吐いて……っ!」ガクガク


ライナー「落ちつけ! おそらく無理な運動が祟ったんだろうな…」



ライナー「大丈夫か、ダズ! おい誰か先生呼んで来い。あとタオルとバケツと水を持ってきてくれ!」


エレン「オレが呼んでくる! キース先生が砲丸投げの所にいるはずだ」ダッ


アルミン「タオルと水なら持ってるよ、はい! 今エレンが先生を呼びに行った!」

ベルトルト「ライナー、こっちにバケツがあった!」

ライナー「二人とも助かった。ダズ、この中に吐け」サスサス


ダズ「う、おぐええええええ」ゲロゲロ



ライナー「こういう時は吐ききるのが一番だ。……にしてもお前顔中ゲロだらけじゃねえか」サスサス

ベルトルト「吐きながら転がってたからね…。じっとしてれば良かったんだけど…ある意味器用なもんだよね。今タオルで…」

アルミン「僕が拭くよ。……ああほらダズ泣かないで、男だろ」フキフキ

ダズ「おえ、……うぐ…す、すまねえ……俺……うぇえ」ポロ

ライナー「誰だって吐くことくらいある、次俺たちが吐いたらお前が助けてくれりゃあ良いだけの話だ」サスサス


エレン「おーい! 先生を呼んできたぞー!」



……



ライナー「…さっきは助かった」

アルミン「いや、僕はほとんど何もしてないよ。君のおかげだ」

エレン「そうだ。みんなお前に感謝してたぜ。えっと……」

ライナー「ライナー・ブラウンだ、こっちの大人しいのはベルトルト。よろしくな、二人とも」

アルミン「アルミン・アルレルト。よろしくライナー、ベルトルト」

エレン「エレン・イェーガーだ。よろしく頼むぜ」

ベルトルト「よ、よろしく……エレン、アルミン」


エレン「しっかしライナーみたいな奴がいると一年間頼もしいな。オレは明日の委員会決めでお前を室長に推薦するよ」

アルミン「僕も。ライナーにクラスを纏めてもらえばきっと良いクラスになると思うな」

ライナー「はは、よせやい」

ベルトルト「うん、ぴったりだよ、ライナーは。昔から皆に頼られてるし」

エレン「昔からってことは、お前らも幼馴染なのか?」

ベルトルト「も? もってことは君たちもそうなのかい?」

アルミン「うん。僕とエレンと、あともう一人同じクラスのミカサって女の子も幼馴染だ」

ライナー「そうなのか! なんだか奇遇だな。俺らも同じクラスに幼馴染の女がいる。アニってやつだ」

エレン「……おお…、すげえな。同じクラスに幼馴染が二組、男二人に女一人って所も似てるし…」

アルミン「なんか、僕らって仲良くなれそうな気がするね」フフ

ベルトルト「そうだね」フフ


キース「ライナー・ブラウン! 次だ!」

エレン「呼ばれてるぜライナー」

アルミン「頑張れライナー。僕の分までぶっ飛ばせ!」

ライナー「おお! 場外ホームランかましてやる!」ダダダ

ベルトルト「ライナー、砲丸投げだから! 場外ホームランはまずいよ! 聞いてる!?」


ウオオオーブウン!
ライナアアアアア

ホームランダ!

ワイワイ


ミカサ(男子とは別行動だから、一人になってしまった。さっきちらっと見たけど…エレンもアルミンも知らない男二人と楽しそうに話していた)シュン

メガネ「ミカサ・アッカーマン! 君の番だ」

ミカサ「はい」スッ

ミカサ(これからどんどん別行動が増えるかもしれない。私もそろそろ、二人以外の友達を作ったほうがいい)ブンブン

ミカサ(けれど……、どうやって作ればいいのだろう。二人といることが多かったから女の子の話題はよくわからないし…)ブォンッ

オオースゴイトンダゾー

ミカサ(別に一人でも問題ないかもしれない。無理して誰かと友達になるくらいなら…)フースタスタ

サシャ「うっわあああ! すごいですね、あなた今のどうやったんですか!? 私も頑張ったつもりなんですけど抜かされちゃいましたね。……これ男子の記録も抜かせるんじゃないですか」

ミカサ(ああでも一人でばかりいるとまたアルミンが心配するに違いない。……、どうすれば…)

サシャ「ねえ、聞いてます?」ズィ

ミカサ「!」ビク



サシャ「あ、やっとこっち向いてくれました。もう、ずっと話しかけてるのに一切反応しないから、無視されてるのかと思いましたよ」

ミカサ「……ごめんなさい。少し考え事をしていた。何か用だった?」

サシャ「とりたてて用があるってわけではないんですけど……、あなたの記録全部すごかったんでつい話しかけたくなっちゃいました」


サシャ「あと……一人でいたから話しかけやすかったのもあるんですけど…」チラ

キャーワイワイ


サシャ「……」ハア

ミカサ「?」


サシャ「何かスポーツやってるんですか?」

ミカサ「スポーツ? 特に何も」

サシャ「え、嘘。……じゃあ修行か何かしてたんですか? あんだけずば抜けて出来るのに何もしてないってのは…」

ミカサ「いえ。運動はわりと得意な方だと自負しているけど何もやっていない。強いて言うならエレンに付き合って筋トレしてる」

サシャ「……て、天賦の才能ってやつですか…」


サシャ「……悔しい」ボソッ

ミカサ「……?」



サシャ「なんか納得いきません。私負けるの初めてなんです。ずっと山では負けなしだったのに」

ミカサ「……ええと、山?」

サシャ「私と勝負してください! このままじゃ悔しい! 一個くらい勝ってみせます」

ミカサ「勝負? たぶん私は負けないから意味がないと思う」キョトン

サシャ「なんで余裕なんですか! もう、絶対勝ちますよ、ミカサ!」

ミカサ「どうして私の名前を……待って、引っ張らないで」

サシャ「先生に呼ばれてたのを覚えました。さあ早く次の所に移動しましょう。次は反復横とびですか」グイグイ


ミカサ「だから待って。まだやってる子もいるから早く行っても出来ない」


サシャ「あ、……そうでしたね」

ミカサ「そう。……あの…」

サシャ「はい」

ミカサ「あなたの名前は?」

サシャ「…サシャですよ」

ミカサ「……サシャ」

サシャ「はい」

ミカサ「……勝負するなら何か賭けたら面白いと思う」

サシャ「……! そ、そうですね! なら私が勝ったら明日のお弁当をいただきます」

ミカサ「なら私もそれにしよう」

サシャ「尚更負けられませんね。お弁当は私の命ですから! 特に肉は最高です。肉があれば私はなんだって出来ますよ! 一番好きなのはエルヴィン堂のお肉で……」ペラペラ

ミカサ「…肉…?」

ミカサ(…変わった子だけど…思ったより普通に話すことが出来て、よかった)

ミカサ(……一年、不安もあるけれど、それ以上に楽しみだ)



―帰り道―

ライナー「今日は楽しかったな」

ベルトルト「うん。新しい友達も出来たし……、だけどライナー、ホームランはやりすぎだよ」

ライナー「大目玉だったな。思った以上に飛んでって、本当に場外ホームランしちまった。あんなに怒られたのは久しぶりだ」ハハハ

ベルトルト「笑い事じゃないったら!」

アニ「あんた力強いんだから、加減しなよ。先生の怒鳴り声こっちまで聞こえてたけど」

ライナー「まじかよ。まいった、こりゃ俺も一躍有名人か?」

アニ「馬鹿力のゴリラとしてね」

ライナー「ひでえ言い方だなオイ」


ベルトルト「……アニはどうだった? 今日一日」

アニ「……別に」

ライナー「その様子だとまた友達できなかったのか。先行き不安だな」ガハハ


アニ「う、る、さ、い!」バンッ


ライナー「おうっ」ヨロ

ベルトルト「アニ、きっとすぐに出来るよ。アニは口下手なだけで悪い子じゃないんだし…」


アニ「フォローされなくても、気にしてない。新しい友達なんか出来なくても、私には……あんたらがいるでしょ」

ベルトルト「……アニ…!」



ライナー「そうだな、アニ!」グイッ

アニ「うわっ! 何すんのライナー!」

ベルトルト「ちょ、ちょっとライナー何で僕まで」


ライナー「……」ギュー

アニ「ライナー?」

ベルトルト「……?」


ライナー「お前ら二人は俺の大事な幼馴染だ。何人友達が増えても、変わらねえ」ギュー

アニベル「「!」」


ベルトルト「……うん」

アニ「……そうだね」

ライナー「ああ……」



ライナー「よし、今日はこのまま帰るか!」ハハハ

アニ「はあ? ふざけないでよ。歩きにくいって」ゲシ

ライナー「いって、アニいってえ! この野郎、背縮めさせるぞ!」グググ

アニ「いたたたっ、まだ蹴られ足りないみたいだね…」スッ

ベルトルト「……ははは、二人ともやめなよ」クスクス


ギャーギャー


ベルトルト(いつまでも、続くといいな…。こんな、日常が)


今日はここまで

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