桃子「あつまれ!」莉緒「祭りだ!」千早「み、ミリオンライブ……!」 (57)

ネタ被っちゃったんですけど
グリマス夏祭りSSです。

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———事務所


育「うう〜……」

桃子「これで、8戦8勝、桃子の圧勝だね」

育「な、なんで勝てないのかなぁ……。桃子ちゃん! もう一回!」

桃子「……まだやるの? どうせまた桃子の勝ちだよ」

育「そんなことない、わたしだって勝つもん! いくよ!」


「じゃんけんぽん!」


育「あっち向いてほい!」


「じゃんけんぽん!」


桃子「あっち向いてほい!」


「じゃんけんぽん!」

「あいこでしょ!」


育「あっち向いて——」

P「おーい、桃子と育、ちょっといいかー?」

桃子「え?」

育「ほい!」

桃子「……あっ!」

育「やった! やったやった! わたしの勝ちー!」

桃子「ちょ、ちょっと待ってよ、今のはずるくない? だって桃子……」

育「だめだめ、勝ちは勝ちだよ、桃子ちゃん!」

桃子「う……」

P「お? なんだ、何か勝負してたのか?」

桃子「もう、お兄ちゃん! お兄ちゃんがいきなり話しかけたせいだよ!」

P「えっ」

桃子「桃子が負けた責任、とってよ!」プンスカ

P「ええっ……ご、ごめん……」


 ………………………… ◇ …………………………


P「みんないるかー? いるなー?」

莉緒「いるわよー。プロデューサーくん、話って何かな?」

千早「話があるから集まってくれ、とのことでしたが……」

育「もしかしてお仕事の話?」

律子「ええ、そうよ」

あずさ「今度は、どんなお仕事なんですか?」

P「そうだな、この時期ならではのイベントなんだけど……よし、クイズだ」

P「みんなは夏といえば何を思い浮かべる?」

環「カブトムシ!」

海美「私は海かな、やっぱり!」

響「自分も海が一番だぞ!」

桃子「そういう前置きはいいから、お兄ちゃん、話進めて」

P「桃子はつれないなぁ……。じゃあ言うか、今回の仕事では夏祭りに参加します」

育「お祭り!?」

環「お祭りかー!」

律子「そう、お祭り。盆踊りと花火大会も一緒にやる、大きなお祭りね」

未来「花火もやるんですか!? うわあ、楽しみ〜っ!」

海美「今回も楽しそうなお仕事だねっ、プロデューサー!」


千早「それで、内容の方は……」

P「おっけー、大まかに説明しよう」

P「まず一番の目的。先方の依頼は、夏祭りを盛り上げてほしいとのことだ」

P「そのために、今集まってもらってるみんなには、それぞれ担当する役割がある」

P「育、海美、あずさ」

育「はいっ」

海美「呼んだ?」

あずさ「まあ、何でしょう?」

P「三人には、盆踊り会場の矢倉のところで、踊り見本として踊ってもらう」

海美「おっ、責任重大だね! 練習しなくっちゃ」

育「わたし、踊り方、知らないけど……今からでも大丈夫かな?」

あずさ「大丈夫よ〜、みんなで教えてあげるから」

育「ありがとう、あずささん!」

P「それから、始まる前に、踊り方を知らない人のためにレクチャーをしてほしい。いいかな?」

海美「りょうかい!」


P「響には、矢倉の上で太鼓を叩いてもらう」

響「た、太鼓!? 自分が? 太鼓なんて触ったこともないぞ……」

P「練習すれば大丈夫だよ。それにこれは体力使うし、リズム感も必要だから、響が適任なんだ」

響「プロデューサーがそう言うなら……。まあ、自分は完璧だからなっ、任せてよ!」


P「環には、お面の屋台で売り手をやってもらう」

環「たまきが屋台のおじさんやるの? くふふ、面白そう!」

P「たぶん、環の好きな戦隊ヒーローのお面もあると思うぞ」

環「それたまきが買う! お面つけて屋台のおじさんやるぞ!」


P「未来には、今回の祭りのイメージガールになってもらう」

未来「私がイメージガールですか!? すごーい!」

P「まあ、未来の場合はポスターとかに出るだけだから、祭りの当日は空くよ」

未来「そうなんですか? じゃあ私、金魚すくいとか極めちゃおっかな〜」


P「それで……桃子、千早、莉緒には、会場でミニライブをやってもらう」

千早「ミニライブ……ですか」

P「盆踊りの始まる前だから、どうしても短くなるけどね。……やっぱり短いと不満か?」

千早「いえ、そんなことは。歌える場所を頂けるだけ、ありがたいです」

桃子「桃子は大きなライブの方がいいけど……最近はお兄ちゃんも頑張ってるから、やってあげる」

莉緒「桃子ちゃんと千早ちゃんと一緒かー……。これは私、気が抜けないわね」

P「内容はこんなものかな。質問があれば、俺か律子に聞いてくれ」

P「そのためのスケジュールは追って連絡する。あとは……」

律子「プロデューサー、浴衣」

P「あ、そうそう。みんなには浴衣を着て参加してもらうから、そのつもりで」

海美「みんな浴衣着るんだね。うーん、夏祭りっぽい!」

あずさ「まだ入るかしら……」

千早「あの、浴衣を持っていない人は、どうすれば?」

P「その場合はレンタルかな。言ってくれれば手配しておくよ」

P「連絡事項は以上。それじゃあみんな、今日の活動を始めてくれ」

「「「はーい」」」


未来「おっまつり♪ おっまつり♪ たっのしみだなー」

育「未来さん、楽しそうだね」

響「浮かれすぎてイベントの前に失敗するなよー、春香みたいに」

未来「しないですよ〜、私は春香さんとは違いますよ♪」

 「二人ともひどい!」

  「げっ、春香!?」

   「私だっていつも浮かれてるわけじゃ……」

     ガヤガヤ



千早「…………」

千早(夏祭り、ね……)

桃子「……千早さん?」

千早「え? 桃子、どうしたの?」

桃子「千早さんこそ、どうしたの」

千早「私はどうもしないわ」

桃子「ふうん……」


莉緒「(……プロデューサーくん)」ヒソ

P「(ん?)」

莉緒「(私と桃子ちゃんはいいとして、千早ちゃんを選んだのには、理由があるの?)」

P「(ああ)」

莉緒「(……そっか)」


莉緒「ま、それはそれとして」

莉緒「夏祭りの日は、プロデューサーくんも浴衣を着るのかしら?」

P「……は?」

莉緒「わ、冷たい返事」

P「あ、ああ、ごめん、予想外の質問だったから……」

莉緒「着ないの?」

P「着ません」

莉緒「絶対?」

P「絶対着ない。嫌だ」

莉緒(……うん? この反応……何かあるな)

莉緒「えー、着たらいいのに。桃子ちゃんもそう思うわよね?」

桃子「え? ……、……うん」

P「桃子、今ちょっとニヤッとしたな」

桃子「してないよ? なに言ってるの、お兄ちゃん。変な言いがかりつけないで」

莉緒「ほら、桃子ちゃんもこう言ってるんだから、着ましょうよ」

P「やだよ。おかしいだろこの歳で。なあ千早、俺が浴衣着たらおかしいよな」


千早「そうですね……ちょっと待ってください」

千早「律子、聞きたいことがあるのだけれど」

律子「何かしら?」

千早「律子も当日は浴衣を着るの?」

律子「着るわよ、もちろん」

千早「……だそうですから、同じプロデューサーとして、プロデューサーが着てもおかしくはないかと」

莉緒「ほーら」

P「ほーらじゃなくて! 俺は着ないぞ。恥ずかしいだろ!」

未来「ええーっ、プロデューサーさん、浴衣着ないんですか!? もったいなーい!」

育「わたしは見たいなあ、プロデューサーさんの浴衣姿」

P「いつの間に戻ってきた!?」

響「自分だけ着ないなんてずるいぞー」

P「いや、ずるいとかじゃなくて……」

莉緒「どうしてそんなに嫌がるのよ……別にいいじゃない、浴衣くらい」

桃子「桃子、お兄ちゃんが浴衣で来なかったら、お仕事しないよ」

P「やだって! 俺は着ないぞ! 絶対着ないからな!」

千早(子供みたい……)


 ………………………… ◇ …………………………


———夏祭り当日 会場入り口


律子「……で、結局着てきたんですか?」

P「…………だって着てこないとみんなでストライキするとか言うから」

海美「うわ、暗っ」

あずさ「げ、元気出してください、プロデューサーさん」

莉緒「そうよ、その柄だってなかなか、わ、悪くないと思うわよ」

P「声震えてんぞ莉緒」

莉緒「な、何のことか、かしら、……ふふっ」

海美「や、やめ、やめてよ莉緒さん、つ、つられちゃうよっ」

律子「二人とも、失礼よ。プロっ……プ、プロデューサーだってね……」プルプル

P「笑いたきゃ笑えよ」

響「あははははっ!」

環「あっはっはっは!」

育「プロデューサーさん、おもしろーい!」

千早「……っ、……!」プルプル

未来「もうみんな笑ってますよ♪」

P「…………」


桃子「……お兄ちゃん」ポン

P「桃子……」

桃子「これからお仕事なんだから、ちゃんとして」

P「……はい」


未来「私はかわいくていいと思いますよ? そのどんちゃんかっちゃんの浴衣」

P「ありがとう」

律子「というより、どこで手に入れたんですか、そんなもの……」

P「真美とやよいのゲームイベントの仕事の記念にな、もらったんだ」

莉緒「それしかないなら、新しいもの買えばよかったじゃない」

P「そう言われちゃ、そのとおりなんだけどさあ……滅多に着ないものだし……」

P「……うん、まあ、俺の浴衣のことはおいとこう。聞いてくれ、みんな」

P「前にも伝えたとおり、盆踊りは19時から花火大会の20時までだから、それ以外の時間は自由行動でいい」

P「環は盆踊りが始まる前まで、屋台な。始まったら交替の人が来てくれるはずだ」

環「わかった!」

P「ミニライブは18時からだ。機材の関係もあるから、早めに集まってくれ」

千早「わかりました」

P「以上。解散」

響「よーし、自分が一番乗りだぞー!」ダッ

環「あーっ、たまきも一番乗りする!」ダダッ

育「ま、待って! わたしもー!」タタタッ

律子「こらー! その格好で走らないの!」ダッダッ

海美「自分も走ってる……」

未来「私たちも行きましょうよ、あずささん」

あずさ「どんな屋台があるのかしらね〜」


桃子「……」

P「ん、桃子は急がなくていいのか?」

桃子「い、いいの。桃子は大人だから、お祭りではしゃいだりしないし」

P「おー、向こうは水鉄砲売ってるんだなー。あ、そっちはヨーヨー釣りだ、ほら、桃子」

桃子「お兄ちゃん、桃子のこと馬鹿にしてるの? そ、そんなの、どうだって……」

P「そっかー……俺はやりたいんだけどなー」

桃子「……」

P「でもいい大人がこんな浴衣で遊んでたら恥ずかしいし、桃子が一緒にいてくれると、助かるんだけどなー」

桃子「……!」

桃子「ま、まあ桃子は全然はしゃいでないけど、お兄ちゃんがどうしてもって言うなら、つきあってあげるよ」

P「お、そうかー、ありがとう桃子」

桃子「じゃあ、まずはあそこからね! 行こうっ、お兄ちゃん!」



千早「…………」

莉緒「……千早ちゃん? 行かないの?」

千早「いえ、行きます」

千早「行きますが……あの二人を見ていると、昔を思い出してしまって……」

莉緒(それって……もしかして弟さんの)

千早「やはり、簡単には忘れられないですね……」

莉緒「千早ちゃん……」

千早「私も昔、仕事に駄々をこねるたび、あんな風にプロデューサーに上手いこと言いくるめられていました」

千早「思い出すだけで恥ずかしい……」

莉緒「……えっ? そっち?」




桃子「千早さん! 莉緒さん!」

莉緒「あれ、戻ってきた」

桃子「何してるの? 早く行こうよ、お兄ちゃんも待ってるよ」

千早「……それは?」

桃子「え……これ? このヨーヨーは、桃子のためにお兄ちゃんが取ってくれたんだよ。どう?」


 『お姉ちゃん、見て見て! どうかな?』


千早「…………」

莉緒「……」

千早「……ふふっ」

桃子「?」

千早「……そうね、浴衣とお揃いで、とても可愛い」

桃子「本当? 桃子に似合ってるかな?」

千早「桃子にぴったりの、桃色でしょう? よく似合っているわ」

桃子「そ、そう? 千早さんに褒められると、悪い気はしないかな。二人とも、行こうっ」

千早「ええ」

莉緒「うふふ。あー、可愛いなあ……」


———屋台通り


P「おお……」

莉緒「わあ……」

千早「すごい数ですね……」

桃子「ぜんぶ別の屋台なのかな?」

P「そうかもなあ、見たところだと」

千早「ペンライトに、風車に、……あれは紙風船でしょうか」

桃子「りんご飴も売ってる! 桃子、一度あれ食べてみたかったんだよね」

莉緒「射的に、輪投げに、金魚すくいねー。あっ、ちょっとうずうずしてきたかも……」

P「目移りしちゃうな……さすがだ」


桃子「お兄ちゃん」

P「うん?」

桃子「桃子はりんご飴を買ってくるから、ここにいてね?」

P「わかった、いってらっしゃい」

千早「待って桃子、私も行くわ」

 「子供扱いしなくたって、桃子は平気だよ」

  「わかってる。私もりんご飴を久しぶりに買ってみようかと思って」

   「それなら、半分こにする?」

    「そうしようかしら……」



莉緒「……自然」

P「だな」

莉緒「千早ちゃんもあれで結構、年少組の扱いが上手よね」

P「根っこはずっとお姉さんだもんなぁ、千早」


「わぁ、これが提灯ですか? ぶらぶらしてて面白いです♪」

「何食べよ……おお、ここ、お好み焼きも売ってんねんな〜」

「スーパーボールスクープ……ここは挑戦するのがベター……?」



莉緒「うちの事務所の子もちらちら見かけるわね……。あっ」

莉緒「見て見て、プロデューサーくん」

P「うん?」

莉緒「初々しいカップル発見」

P「…………」

莉緒「いいわねー、ああいうの。あの手の繋ぎ方なんて、私たちは初心ですってアピールしているようなものじゃない?」

P「…………」

莉緒「私にもあんな時期があったのかしらね」

P「……莉緒」

莉緒「んっ?」

P「人の恋愛に目敏い奴は、己の恋愛を疎かにするそうだ」

莉緒「う、うるさいなー……それは自分でもわかってるんだから……。あっ」

P「今度は何」

莉緒「生ビールの屋台発見」


莉緒「……」チラッ

P「ダメ」


莉緒「ね、ちょっとだけ」

P「ライブ前なのでお酒だけはダメです。終わってから」

莉緒「酔っ払うまでは飲まないから……」

P「ダメ」

莉緒「半分あげるから」

P「買収しようとしない」

莉緒「いいじゃない、お酒飲みながらライブするアイドルもいるんだし。ね?」

P「うちはうち、よそはよそだ」

莉緒「ちぇっ。……ケチ。プロデューサーくんのドケチー」

P「ダメなものはダメ」

莉緒「ドカター」

P「雪歩呼ぶか? あのな、莉緒……」



 「あ、いたいた。お〜い!」

 「あっ! いたいたはこっちの台詞ですよ早苗さ……酒臭ッ!? また飲み過ぎましたね!?」

 「飲んでないわよそんなには〜。せいぜい酒樽いっぱいぶーん!」

 「そんなに飲んだら死にます! この前の祭りだって出番の前に気持ち悪くなったくせに……!」

 「お? シメる? やってみる? 酔っててもあたしの方が強いわよー!」

 「わかってますよそんなことは……はい、しゃんとして! 小さい子もいるんだから、せめてあっちに!」

 「んー? あっちの茂みに連れこんで、どうするつもりかしら? お姉さんとよろしくやろうって!?」

 「この酔っ払い……!」



P「…………」

莉緒「…………」

P「……ああなりたくなかったら、やめとけ」

莉緒「……うん、そうするわ」


桃子「お待たせ、お兄ちゃん、莉緒さん……って」

千早「二人とも、どうしたんですか?」

P「ちょっと。酷い酔っ払いを見たんだ」

千早「酔っ払い……」

千早「……背が低いのに胸元がとんでもない人ですか?」

莉緒「あら、千早ちゃんも見たんだ?」

千早「……正直、あの着物の着方はどうかと思いました」

桃子「……何? なんの話、お兄ちゃん」

P「いや……桃子にはまだ早いかな……」

桃子「むっ」

莉緒「でも、浴衣は着崩してなんぼだと思うけどね。千早ちゃんはぴっちりしすぎなのよ」

千早「それが本来の着方だと思いま——ひゃっ!? やっ、ひ、引っ張らないでください!」

莉緒「こんなにきつくして、苦しくない?」

千早「で、ですから、それが本来の——ひゃうっ! ぷ、プロデューサー、助け……」

桃子「桃子にはまだ早いってどういうことなのよ!」

P「ご、ごめん……」

千早「くっ」



律子「……何してるのかしらあの人たち」

あずさ「さ、さあ……。桃子ちゃんに怒られているプロデューサーさんと……」

貴音「千早が莉緒嬢に襲われているように見えますね」


律子「ちょっとアンタたち、往来で騒ぐんじゃありません」

P「あ、律子……」

貴音「こんばんは、プロデューサー」

P「あずさと貴音もいるのか」

貴音「美味しそうな匂いに導かれたのです」

あずさ「なんだか、大変そうですね〜」

千早「あ、あの、誰か、たす……」

律子「?」バイーン

貴音「?」ボイーン

あずさ「?」ドタプーン

千早「…………」

あずさ「千早ちゃん、どうしたの?」

千早「……いえ、なんでも」

律子「どうしたのよ。何か言いたげね」

千早「なんでもないわ」

貴音「……」モグモグ

P「莉緒、千早で遊ぶな。放してやれ」

莉緒「はぁ〜い」

P「まったく……」

桃子「お に い ち ゃ ん!」

P「うっ」

桃子「そうやって桃子のこと適当にあしらおうとしたって、そうはいかないんだから!」

P「え、え〜っと……」

P「あっ! 桃子、あっちに綿アメ売ってるぞ!」

桃子「えっ、どこ!?」

P「あっちだあっち。買ってやるから行こう、なっ?」

桃子「うん!」


莉緒(あしらわれてるわよー、桃子ちゃん)

律子(……桃子ってあんなに単純な子だったっけ?)

貴音(たこ焼きが尽きてしまいました……。例の屋台は、どちらに……)


 ………………………… ◇ …………………………


育「がんばって、未来さん!」

ひなた「あたしも応援してるよぉ」

未来「う、うん。……いきます! それっ……」


 ボチャン


育「あー……」

ひなた「あちゃあ……」

未来「うう、またか……」

屋台のおじさん「残念だったなあお嬢ちゃん。どうする、もう一回挑戦するかい?」

未来「やります!」

育「フレー、フレー!」

ひなた「あたしには見てることしかできんけど、がんばってなー」

P「——金魚すくいか、今からやるのか?」

未来「あ、プロデューサーさん」

育「桃子ちゃんも」

ひなた「わ、おっきな綿アメだねぇ、どこに売っとったんだべか?」

桃子「向こうの、焼きとうもろこしの屋台の隣だよ。ちょっと食べる?」

育「桃子ちゃんのヨーヨー、可愛いね! あとでわたしにも屋台の場所教えて!」

桃子「うん、いいよ。……あと、桃子はそのお面も可愛いと思うよ」

育「ありがと! これ、環ちゃんにオススメを選んでもらったんだよ」


未来「むー、聞いてくださいよプロデューサーさん!」

P「どうした?」

未来「私、かれこれ5、6回は挑戦してるのに、1回もうまくいかないんです!」

P「なるほど。……桃子」

桃子「しょうがないなあ……お兄ちゃん、これ持ってて」

未来「えっ? ええ?」

育「桃子ちゃん?」

ひなた「なして桃子ちゃんを呼んだのさ?」

P「それはな、桃子が昔出たドラマに、金魚すくいをやるシーンがあったからさ」

P「桃子は上手いから見本になるぞ。まあ見てなって三人とも」

桃子「なんでお兄ちゃんが自慢気なのよ……。おじさん、桃子もやりたいな」

屋台のおじさん「おう、腕前のほどを見せてもらうよ」


桃子「…………」

桃子「……ふう」

未来「(プロデューサーさん、どうして桃子ちゃんはポイをじっと見てたんですか?)」ヒソ

P「(向きだよ。紙が貼ってある方を上にするんだ)」

未来「(ふんふん)」

育「(どうして?)」

ひなた「(そうしねっと、はじっこに水がたまっちゃうからでないの?)」

育「(あ、そっかぁ)」


桃子「……」

P「(次に、どの金魚を狙うか決める。聞いた話じゃ上にいる金魚の方が取りやすいらしい)」

未来「(下の方だと、すぐに上げられないからですか?)」

P「(かもね)」

桃子「……」スッ

P「(狙いをつけたら、静かに水につける)」

ひなた「(なぁんかあたしらまでドキドキするねぇ)」

P「(そうしたらあとは落ちついて……)」

桃子「……よっと」


 チャポン


育「わあ、桃子ちゃんすごい!」

ひなた「上手だわあ……」

桃子「まだまだ、桃子の実力はこんなものじゃないよ? ……えい」


 チャポン


育「2匹目だ!」

桃子「……それ」


 チャポン


屋台のおじさん「いいねえ、おみごと」

未来「はあ〜、慣れてるんですね、桃子ちゃん。……ところでプロデューサーさんは?」

P「うん?」

ひなた「プロデューサーも上手いのかい?」

P「ああいや、俺は下手だよ。1匹も取れないんだ」

育「…………」

桃子「お兄ちゃん、それは堂々と言ってもかっこ悪いと思うな」

未来「あ、あはは……。よし、私ももう一回!」


 ………………………… ◇ …………………………

「えー、まだ踊りじゃないの? 早く踊りたいヨー」

「カタヌキは、とても得意です。…………嘘です。見栄を張りました」

「おやおや? 皆さんとはぐれてしまいました〜」



P(育と桃子はヨーヨー釣りに、未来とひなたはまだ残るという)

P(…………)

P(一人で廻るのも寂しいな、誰かいないか……)

海美「あっ、プロデューサー!」

P「ん、海美か……って」

海美「なに?」

P「ちょっと、それ、浴衣はだけすぎじゃないか?」

海美「そうかな? そうでもなくない?」

P「そうでもある。帯緩めただろ」

海美「だって動きにくいんだもんよ〜。それに、響と環はもっとすごかったよ!」

P「あいつら……」

海美「そんなことより、プロデューサーは一人なの?」

P「まあ」

海美「……一人で寂しく焼きそば立ち食いしてるんだ」

P「うるせえやい」

海美「それならさっ、今から私と勝負しようよ〜! 射的で!」

P「射的?」


海美「こっちこっち!」

P「ひっぱるな……俺の浴衣まではだけるから」

のり子「あれ? プロデューサーだ」

恵美「珍しい組み合わせだね」

P「ああ、二人もいたのか。……お、そのお面」

恵美「ああ、これ? 環の屋台で買ったんだ」

のり子「あの子、ねじりはちまき似合うよね! 浴衣とも合ってたし!」

P「それを見こんでの仕事だからな。でも、二人は浴衣じゃないんだな」

恵美「仕事だったら着てきたけどね。アタシはどっちかっていうとキャラじゃないし」

のり子「アタシには浴衣みたいな落ちついた服、あんまり似合わないからね……」

P「ああ、そうかも」

のり子「おっとそこは嘘でも否定してほしかったなっ」サッ

P「銃口を向けるな危ない」

のり子「入ってないよ」

海美「プロデューサー、こっちだよ!」

P「わかった、わかったって」

屋台のおばさん「兄さんもやるのかい? 格好いいとこ見せとくれよ」

恵美「かっこいいとこ見せとくれよー」

のり子「期待してるよっ、プロデューサー!」

P「お、おう、見せてやろうじゃないか」

海美「それじゃ、勝負開始ー!」


海美「……」

 パンッ

屋台のおばさん「13番の当たり〜」


P「……」

 スカッ


海美「……」

 ペンッ

屋台のおばさん「2番の当たり〜」


P「……」

 スカッ


海美「……」

 ポンッ

屋台のおばさん「6番の当たり〜」


P「……」

 スカッ

屋台のおばさん「……惜しいねえ〜」



のり子「…………」

恵美「…………」

P「…………」

海美「…………」

のり子「……プロデューサー、ちゃんと目開けて撃ってる?」

P「開けてるよ!」

海美「プロデューサー、なんか……ごめんね」

P「謝るなよ! まだ終わってないだろ!」

恵美「やー、もうコールドじゃない?」

P「みんなして酷いな!」


P「くっ、こうなったら、本当に目を閉じて撃ってやる……!」

のり子「あーあー、自棄になっちゃって……」

恵美「プロデューサーの勝負だから、好きにさせてあげよう」


P「……」

 パンッ パン パ パ パ タン!


海美「えっ」

屋台のおばさん「こっ、これは……!?」

のり子「ええっ」

恵美「……嘘でしょ?」

P「……ん、なんだ? どうなった」

海美「すごい! すごいよ、プロデューサー!」

P「へっ?」

海美「今、プロデューサーの撃った弾が跳ね返って、ドミノみたいに全部倒したんだよ!」

屋台のおばさん「あ、あんた! あんたまさか伝説のシューター、射的屋潰しの弟子かい!?」

恵美(何それ)

P「え、何? 弟子?」

のり子「なーんだ、実は上手かったんだねっ!」

P「う、うーん……?」

屋台のおばさん「ふっ……あたしも長いことテキ屋をやってるけど、この目で見たのは初めてだよ。さ、持っていきな!」

のり子「初めてだって。やるじゃん!」

海美「見直しちゃった!」

のり子「よっ、日本一!」

P「……ま、まあな!」

恵美「……それはそうと、こんなにたくさんの景品、どうするの?」


 ………………………… ◇ …………………………


千早「…………」

千早(夏祭り……誰かと一緒に見て回るなら、まだいいけれど)

千早(何もせず歩くだけなら、ただの暇潰しと一緒ね……)

千早(……ライブまで、あと少——)


 ドン


千早「きゃっ……」

P「あ、ごめんなさい、大丈夫で……って千早か、ごめん」

千早「プロデューサー」

P「前が見づらかったんだ、ごめんな、大丈夫か?」

千早「平気です。それよりも、その大きな袋は……」

P「これか? ……はは、季節外れのサンタクロースみたいだよな。メリーサマー! なんちゃって」

千早「…………」

P「……そんな目で見るなよ……」

千早「その大きな袋は?」

P「これなあ、射的で取ったんだ」

千早「全部ですか」

P「うん」

千早「何回挑戦したんですか……」

P「そう思うだろ? そうじゃないんだこれが、自分でもびっくりだけど」

千早「?」


P「千早は何をしてたんだ?」

千早「何というわけでも……。ただ、歩いていただけですが」

P「ふーん。あ、景品の中で欲しいものあるか? 光るリストバンドとか、色々あるけど」

千早「特にありません」

P「そうか……。さっきからうちのアイドルを見かけるたびに配ってるんだけど、なかなか減らないんだよ」

P「本当にいらない? この、びよんびよん伸びるゴムボールとか」

千早「貰っても、どうしようもないので……」

P「食べものは? 何か食べた?」

千早「四条さんにたこ焼きを分けてもらいましたが、他には何も」

P「何も? なら一緒に買いに行こう、お腹空くだろ」

千早「いえ、結構です」

P「フランクフルトは?」

千早「いりません」

P「チョコバナナ」

千早「いりません」

P「かき氷」

千早「い……いりません」

P「よし、かき氷なら食べるのか。行こう千早」

千早「あ、あの、私はいらないと言っ……」

P「聞こえません」スタスタ

千早「聞こえ……!? ま、待ってください、プロデューサー!」


屋台のお兄さん「へいおまち。イチゴとメロンね」

P「どうも」

千早「…………」

P「千早、はい」

千早「……ありがとうございます」

P「あのさ、せっかくおめかししたのに、そんな顔することないだろう」

千早「これは仕事の格好では……」

P「桃子じゃないけど、楽しむのも仕事のうちだよ」

P「ほら、おいしいぞかき氷」

千早「はあ……」

千早「……プロデューサーは、真面目なのか適当なのか、わかりません」

P「そうか?」

千早「ライブの前ですよ?」

P「うーん、ライブの前だからこそだと思うけどなあ……今日の場合は」

P「それに、俺はいつも真面目だよ。超がつくほどにな!」

千早「…………」

P「あ、そういえばメロン味は舌が緑になるんだっけ。千早、俺の舌、緑になってる?」

千早「どこが真面目なんですか……」

P「え?」

千早「なんでもありません」


P「んー……」

P「なんだか、さっきと比べてやけに冷たいな?」

千早「私は、そんなつもりは」

P「かき氷だけに」

千早「…………」

P「……」

千早「……」

P「……」ジッ

千早「……」フイッ

P「千早、もしかして」

千早「……はい?」

P「一緒に回ってくれる人がいなくて……拗ねてたり、する?」

千早「違います」

P「そう?」

千早「…………」

千早「……そう見えますか?」

P「なんとなく……ボーカルレッスンがダンスに変更になったときと同じ顔してるから」

千早「…………」

千早「……プロデューサーがそう言うのなら、そうなのかもしれません」

P「……へえ」

千早「以前のメンバーなら、私からも話しかけることができたのですが……その」

千早「新しく人が入って、また、皆の輪に加わりにくくなったのではないかと、自分では……」

P「…………」

P(千早、変わったなあ……)


P「……まあ、千早と一緒にいたい子は少なからずいると思うけど」

千早「?」


可奈「あっ、千早さーん!」パタパタ

千早「矢吹さん」

可奈「ここにいたんですねっ千早さん、やっと見つけました!」

可奈「プロデューサーさんも。二人で何してたんですか?」

P「かき氷食べてたんだ」

可奈「かき氷かー。いいな〜、私も食べたいなー」

P「買ってやろうか?」

可奈「奢ってくれるんですか!?」

P「ああ」

可奈「やったっ、ありがとうございます! 嬉しくて歌っちゃう気分!」

可奈「イチゴにレモンにブルーハワイ〜♪ お好きなシロップ選びなさい〜♪」

千早「…………」

P「…………」

千早(メロディーの音が不自然にずれている……)

P(ボイスレッスンの量もっと増やすか……)

可奈「はれっ? 二人とも、どうし……あれあれっ? なんで私の周りから人がいなくなってるんですかね?」

P「もはやテロだな」

可奈「急になんですか物騒な!?」

千早「大丈夫よ。春香だって上達したんだから、あなただってきっと」

可奈「えっ? ええっ? 意味がよくわからないですけど貶されているような気が……」


P「ところで可奈、千早のこと探してたのか?」

可奈「へっ? あ、そうでした! 千早さんに言いたいことがあって」

千早「私に?」

可奈「はい! あの、ライブ頑張ってください! 私、観に行きますから!」

千早「ライブ……」

可奈「今日は千早さんのライブが生で見られると思うと、もう、そればっかり考えちゃって!」

千早「ふふっ、ありがとう。頑張るわ」

可奈「あっ、も、もちろん私だけじゃなくて、春香さんとか、みんなも言ってましたよ!」

可奈「それで、えーと、そ、その……」

千早「?」

可奈「よかったら、私と一緒に屋台を廻ってもらえないかなー、な、なんて……」

千早「……」

P「……」

千早「ええ、喜んで」

可奈「ホントですか!? やったー! やったやった屋っ台〜♪」

千早「…………」

P「…………」

可奈「……なんですかその顔?」


 ………………………… ◇ …………………………

「うふふ、あっちにもこっちにも子豚ちゃん達がひしめいていますね〜♪」

「浴衣を着て、巾着を持ち歩く……これが大和撫子の風情、でしょうか?」

「縁日の飾りつけは、なんて豪華な……はっ、み、見とれてなどいませんわ!」



———盆踊り会場


P(しばらく時間を潰して、そろそろライブの準備が始まりそうな頃合い)

P(盆踊り会場に併設されたライブステージに向かってみると……)

育「あっ、プロデューサーさん!」

桃子「やっと来たの? お兄ちゃん」

P「ごめんごめん、二人は早いな」

桃子「お兄ちゃんは桃子のプロデューサーなんだから、桃子より先に着いてないとダメだと思うな」

育「そうだよ、プロデューサーさん。桃子ちゃん、さっきから『お兄ちゃんまだかなあ』って、そればっかり言って」

桃子「そ、そんなには言ってないよ!」

P「待たせてごめんな。あ、そうそう、二人にこれをあげよう」ガサゴソ

桃子「リストバンド?」

育「わ、光ってる! きれい〜! どこで買ったの?」

P「買ったというか、射的の景品だよ」

桃子「ふうん……お兄ちゃん、射的は上手いんだ?」

P「…………まあな!」


莉緒「ライブ会場はここだったかな? あ、いたいた」

海美「みんなおまたせ! 私の出番はまだだけどねっ!」

P「おう、海美は元気だな」

海美「夏祭りだもん、当然! あ〜っもう早く踊りたいなー!」

育「わたしも、早く踊りたい! この日のために、たっくさん練習したんだから!」

P「はは、もうちょっと待ってな」

莉緒「うーん、二人とも、エネルギッシュね……若いっていいなあ……」

P「……そんなことばかり言ってるから、男が寄りつかないんじゃないのか」

莉緒「うっ」

P「まあ、寄りつかれても困るけど……」

莉緒「…………」

莉緒「……ねえ、それって、プロデューサーとして? それとも、プロデューサーくん個人的に?」

P「ええ? それは——」

桃子「プロデューサーとして」

P「……桃子?」

桃子「プロデューサーとして!」

P「あ、ああ……そうだけど、どうしたんだ桃子?」

桃子「…………」

莉緒「ふふ、冗談よ桃子ちゃん。おませさんなんだから」

桃子「……」プイ

莉緒(かわいいなぁこの子……)

育「?」

海美「?」


あずさ「あら〜? ここは……」

千早「はあ……」

あずさ「盆踊り会場みたいね〜。みんなはもういるかしら?」

P「二人とも、こっちだぞー」

千早「プロデューサー……」

P「千早? 大丈夫か?」

育「千早さん、どうしたの? 疲れた顔してるよ?」

千早「大丈夫ですが……」

千早「その……あずささんと一緒に迷子になってしまって」

P「…………」

千早「入り口の方まで戻ってしまったときは、遅刻するかと……」

あずさ「ごめんなさい、千早ちゃん……私が近道をしようなんて言ったばっかりに」

千早「いえ、間に合ったんですから、気にしないでください」

莉緒(へえ……話には聞いていたけど、あずさの方向音痴って)

桃子(あの千早さんが一緒に迷っちゃうくらいなんだ……)

海美「んー……ストレッチでもして待ってようかなー……。あっ」


響「おーい、みんなー!」タッタッ

環「わーい! 速いぞ速いぞー!」

いぬ美「ばうっ!」ダッダッ

育「あーっ、いぬ美ちゃんだー!」

響「っとと……到着! あー、走った走った!」

千早「……我那覇さん、履き物が脱げているけれど……」

響「えっ? あ、ホントだ! 千早、ありがとな!」

響「それで、ライブはまだ始まってないのか? じゃ、間に合ったんだね!」

P「もう間もなくだよ。……どうだ、準備はできてるか?」

響「もちろん、ばっちりさー! 見てプロデューサー」

P「これは……割り箸? チョコバナナでも食べたのか」

響「この割り箸で、太鼓を叩くイメージトレーニングもしたし! 準備は万端!」

P「……それは心強いな」


環「おやぶん!」

P「うん?」

環「くふふ、おやぶんにこれあげるっ! つけてみて!」

P「何だこれ……何のお面だ」

環「いいから、つけてつけて!」

P「つければいいのか? わかったよ……」スチャ

桃子「……っ」

海美「ぶふっ!」

千早「くふっ」

育「っ!」

環「あはははは!」

P「……え、え?」

P「……もしかして俺はまた笑われてるのか? 何がおかしいんだ?」

あずさ「プロデューサーさん、その、お面の種類がですね〜……」

環「戦隊ヒーローの敵で出てくる、悪い顔のひょっとこだぞ! おやぶんに似合うと思って!」

千早「ふふっ、くっ、……! はっ……はっ、早く、そ、それを外し……ふふふふふっ」

莉緒「あらら、千早ちゃんがツボっちゃったわね」

P「なんなんだよ……」



律子「プロデューサー、ステージの最終設営が終わったそうです。私たちも入りましょう」

P「ああ、律子、ありがとう」

律子「…………」

P「……律子?」

律子「……それはウケ狙いですか? さすがに二度目は面白くないと思いますけど……」

P「違うぞ!?」


 ………………………… ◇ …………………………


———特設ステージ


P「……と、いうわけで」

莉緒「いよいよライブねぇ……うん、やっぱりこうじゃないと」

千早「全力を尽くします」

桃子「桃子の本領、みんなに思い知らせてあげる!」

育「みんな、がんばって!」

海美「う〜っ、私まで今すぐにでも飛び出しちゃいそうだよー!」

あずさ「私たちも、準備しておくわね〜」

P「天気よし、調子よし、お客さんの集まりも上々」

P「ベストコンディションだ。みんな、楽しんで歌っておいで」

桃子「うん!」

千早「はい!」

莉緒「わかった!」



『こんばんは、皆さん! お祭り、楽しんでますか!?』


『でも、楽しむのはまだまだこれから! 今年の夏祭りは一味違うよ!』


『私たちのライブで、もっともっと盛り上げちゃうから……みんな、ついてきてね!』



P「……はあー」

律子「? どうしました?」

P「ん、いや……つくづく、うちのアイドルは粒ぞろいだと思って」

律子「あー……、ですね、魅力的な子たちがこれでもかってくらい入ってきて……」

P「知名度じゃまだまだだけど、きっとあの子たちの魅力に気づいてくれるファンがいるはずだ」

律子「ええ」

P「俺たちも頑張らないとなー……」

律子「ねー……」

律子「みんなの花、きちんと咲かせてあげましょうね、プロデューサー殿」

P「ああ」


 ………………………… ◇ …………………………


『聴いてくれて、ありがとーっ!』


『765プロ特別ユニットによるライブ、楽しんでもらえたかな?』


『それでは、ここからはお待ちかね、盆踊りの時間です! 我那覇さん!』


『はいさーいっ!』

『みんな、自分がどこにいるかわかるかー?』


『——そう! ここだぞっ!』ドドン!


『太鼓は自分! 曲のスイッチはハム蔵! 盆踊りの演奏は自分たちに任せてね!』


『と、その前に……育!』ドンッ!

『はいっ!』


『あずさ!』ドンッ!

『は〜い』


『海美!』ドンッ!

『はーいっ!』


『皆さんこんにちは! わたしのことが見えますかー?』


『始まる前に、みんなで盆踊りの練習をしてみましょう〜』


『私たちがお手本を踊ってみせるから、がんばって覚えてね! いっくよー——』


千早「…………」

桃子「ハァ〜疲れた……」

莉緒「結構体力使ったわね……」

P「お疲れさま、三人とも。いい出来だったぞ」

千早「プロデューサー、お茶か何か、いただけますか?」

P「はいどうぞ」

千早「ありがとうございます」

桃子「桃子はラムネがいいな」

P「言うと思った。ほら」

桃子「桃子の気持ちがわかってるなんて、お兄ちゃん、さすがだね」

P「どういたしまして。莉緒はどうする?」

莉緒「うーん、そうねぇ」

莉緒「……さっきの生ビールが頭から離れないのよね、私」

P「…………っとに……今回だけだぞ」


『うんうん、その調子! よくできました!』


『それじゃ、だいたいみんなができたところで……響!』


『盆踊りの始まりさー!』ドンッドン!


  ♪〜

P「……お、始まったみたいだな」

莉緒「このメロディ……いいわね、これぞ夏祭りって感じ。さ、私たちも行ってきましょう」

桃子「みんな、踊ってるみたいだね。桃子も行こうっと」

千早「……」

P「行くぞ、千早」

千早「ま、待ってください。あの、私、踊れないのですが……」

P「気にするな」

千早「気に……!? いや、ですから……」

P「踊れるかどうかなんて気にするな。お祭りなんだし」

P「……それに、俺だって踊れないしな。でも適当に手を上に下にやってれば何とかなるよ」

P「さ、行くぞ」

千早「……ふふっ。やっぱり、適当じゃないですか」


  ♪〜
          ♪〜

海美「いよ〜っと! ……あー、盆踊りって気持ちいい! おっ、プロデューサーもなかなか上手だね〜」

P「……やめてくれ。下手なのはわかってるんだ」

海美「あははは! よし、一緒に踊ろ! ほーら、もっとくっついてっ!」

桃子「こうして、こう。同じことを繰りかえすだけだよ」

千早「え、ええと……こうして、こう……」

あずさ「そ〜れそれ♪ 千早ちゃん、その調子よ〜」

環「よいさっ、よいさっ♪」

いぬ美「わう」

育「環ちゃんも、いぬ美ちゃんも、上手だね!」

律子「え、犬……?」

未来「おっと、律子さん、手が止まってますよ〜?」

    ♪〜     
            ♪〜…………


 ………………………… ◇ …………………………


 ヒュ〜〜〜〜〜〜〜
            ドドォン……


育「!」

あずさ「あらあら〜」

環「花火だ!」

P「始まったかー……」

律子「片付けも終わりましたし、時間通りですね」

海美「よーし、近くまで行ってくる!」ダッ

響「自分も行くぞ!」ダッ

律子「あっ、また走って……! 待ちなさーい!」ダッ

P「さっきまで踊ってたってのに、元気余ってるなあ」

桃子「どこに行けば、一番よく見えるかな」

千早「打ち上げている場所は、向こうの川の中州だから……」

莉緒「川岸まで行ってみる?」

   ワイワイ ゾロゾロ



P(さて……みんな行ったかな? それじゃ、俺も……)

育(…………)


 ………………………… ◇ …………………………


 ドォン……   ドドォン……


   ガサガサ

P「……お、予想通り。よく見えるなあ」


あずさ「プロデューサーさん」

P「あれ、あずさ、いたのか。一人か?」

あずさ「はい」

P「どうしてこんなところに……俺みたいに茂みを抜けないと来られないだろう、ここ」

あずさ「それが、自分でもよく分からなくて……」

あずさ「みんなのあとを追って川を目指していたら、いつの間にかこんな場所まで」

P「…………」

あずさ「でも、花火はよく見えますから、ここでもいいかな〜と思って……プロデューサーさんも、座ります?」

P「ああ、失礼します」

あずさ「はい、どうぞ〜」


 ドドォン……

あずさ「迫力がありますね、花火……」

P「ああ……」

 ドォン……

あずさ「こんなに大きいと、私たちの上に降ってきちゃいそうですね……」

P「そうだなー……」

 ボォン……

あずさ「……」

P「……」

P「……この大きさの花火をあげるのに、いくらかかるんだろう」

あずさ「え?」

P「数百は下らないかなぁ……さすがに事務所主催でやるには無理があるか。いいイベントなんだけどなぁ……」

あずさ「…………」

あずさ「……」プクー

P「……あれ? あずさ、ほっぺた腫れてるけど……もしかしておたふくに」

あずさ「違いますっ。……もう」

あずさ「いいですか? プロデューサーさん」

あずさ「プロデューサーさんがお仕事熱心なのは、プロデューサーさんのステキなところです」

P「は、はあ……」

あずさ「でも、今だけはステキじゃありません」

あずさ「せっかく二人っきりでいるんですから……」

P「……ごめんなさい、情緒がありませんでした」

あずさ「わかってくれたらいいです」


あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

P(やらかした。気まずい……どうしたもんだろう)チラッ

あずさ「……」

P「……あっ。なあ、あずさ」

あずさ「はい?」

P「その浴衣、今日のために新しく買ったものじゃないか?」

あずさ「えっ……わ、わかるんですか?」

P「わかるというか……」

あずさ「あ、あの、プロデューサーさん」

P「うん?」

あずさ「その〜、私の浴衣姿、どう思いますか? 一度、お聞きしたくって……」

P「よく似合ってると思うよ。そういう落ちついた柄の浴衣は、あずさが着るのが一番だな」

あずさ「あら、そうですか〜。うふふっ」

P(わかりやすい……)

あずさ「それにしても、よくこの浴衣が新品だっておわかりになりましたね? やっぱり、いつも衣装を扱うから……」

P「ああ、いや、そういうのじゃなくて」

あずさ「?」

P「ほら、ここに値札付いてるから」

あずさ「え、ええっ!?」


あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

あずさ「………………」

P「………………」

P(またやらかした。空気が重い……どうしよう)

P「あの……えーと、あずささん?」

あずさ「……はい?」

P「ま、まあ、相手は俺なんだし、まだよかったじゃないか。そんなに気に病むことは……」

あずさ「…………」

あずさ(逆です……プロデューサーさん)

P(うつむいちゃったよ……どうしよう本当に)

あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

P「……あずさ」

あずさ「……はい?」

P「立って」

あずさ「え?」

P「もう少し川の方、ギリギリまで行ってみよう。はい、立って」スッ

あずさ「は、はい……」


  ドドォン……
               ドン ドン ドォン……

あずさ「……」

P「……」

あずさ「…………」

P「…………」

あずさ「……真上、ですね」

P「まるでなあ」

あずさ「……」

P「さっきよりもずっと近くて……本当に降ってきそうだよな」

あずさ「プロデューサーさん?」

P「何でしょう?」

あずさ「見上げすぎて、首が痛くなってきませんか?」

P「なってきた」

あずさ「でも、見上げていないと見えないですよね〜」

P「そうだな……」

あずさ「ふふっ、綺麗ですね……」

P「ああ、本当に……」


桃子&育「「綺麗だねー」」


P「わっ!?」

あずさ「えっ!?」


P「も、桃子と育、いつの間にこんなところに……?」

桃子「お兄ちゃんこそ、こんなところで何してるの? ……あずささんと、二人で」

あずさ「あ、あらあら」

育「わたし、プロデューサーさんだけ来ないから、どうしたのかなってちょっと心配してたのに……」

育「……みんなに内緒で、あずささんとデートしようとしてたんだ。ふーん、そうなんだー」

P「ちょっ、結果的にそうなってるけど、それは誤解……」

桃子「それに、……別にいいけど、桃子の浴衣のことは特に褒めてくれなかったよね?」

育「わたしの浴衣も!」

あずさ「あらあらまぁ……」

P「いや、その、人数多いからさ……き、聞かれれば答えたって」


莉緒「あら、それなら、私の浴衣姿はどうかしら、プロデューサーくん?」


P「!?」


響「見て! 自分の浴衣は、沖縄風にしてあるんだ!」

未来「私の浴衣はどうですか? プロデューサーさん♪」

海美「ほらほら、私のも、これぞお祭りっ! って感じでしょ?」

環「おやぶーん! たまきたちも浴衣だぞっ!」

千早「わっ、ひ、引っ張らないで、私は別に……」

P「どこから出てきたんだみんな、って押すな、待ってくれ、一人ずつにしてくれ!」

 「プロデューサーさんっ! とびっきりの浴衣ですよ、浴衣!」

  「ボクも今日はお洒落してきました!」

   「プロデューサー、私のことも見てくださいっ!」



律子「……賑やかねぇ」

貴音「ええ、真に」

律子「育が『きんきゅうじたい!』って言うから、何かと思えば……」

貴音「……律子は行かなくともよいのですか?」

律子「い、行くわけないでしょ!? どうして私がわざわざプロデューサーに浴衣を褒めてもらいに」

貴音「ふふっ、伊織に似てきましたね、律子」

律子「なっ……」



   「プロデューサー!」

  「おやぶん!」

 「仕掛け人さま!」

P「ああ、もう! 好き勝手言ってくれるな!」

P「だいたいみんなだって、誰も俺の浴衣を褒めてくれなかっただろ!!」


 ——シーン……





育「……プロデューサーさん、褒めてほしかったの?」

P「そういうことでもないけど……」



桃子「お兄ちゃんの浴衣、かわいいよ」

千早「対象年齢は合っていないと思いますが、そう悪くはないかと」

莉緒「うん、かわいいかわいい♪」

P「だから、そうじゃなくって……!」

 ヤイノヤイノ



律子「今年も賑やかねぇ……」

あずさ「あらあらまぁまぁ……」


 ………………………… ◇ …………………………


———屋台通り


小鳥「うーん、こういうところで飲む一杯もなかなかだわ〜」

まつり「夏祭りに、まつりの出番がないなんて……あんびりーばぼーなのです……」

早苗「ぷっはァ〜っ! うるさい彼がいないうちに、もう一杯!」

屋台のお姉さん(なんだこの人たち……)



 おわり

読んでくれた人いるかいないかわかりませんが、お疲れさまでした。
それから画像、ありがとうございました。

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片桐早苗(28)

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四条貴音(18)

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音無小鳥(2X)

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徳川まつり(19)

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