女「君が思っているよりも、ボクは……」 (308)

女「ねえ、ねえ……起きてくれ」

男「んあ……」

女「ふふっ、昨日は早く寝なかったのかな」

男「……」

女「どうしたんだい、そんな顔をして」

男「なぜ俺の部屋にいる」

女「なぜって、気持ちよく寝ている君を視姦して、起こしても起きないようなら襲おうとしていたところだよ」

男「起きて良かった」

女「うん、アッチも起きてるよ」

男「え……うおっ!」

女「男の子なんだから、気にすることないよ」

男「いつもは気にしなくても、今はするだろう……」

女「おや、いつもと状況が違うのかな?」

男「お前なぁ」

女「ふふっ、そうだね。ボクのいる前で自慰は流石に無理だよね」

男「いや、しねえよ」

女「大丈夫だよ、ボクは興味があるから目の前でじっくりと見せてもらえれば」

男「なんで見ようとしてんだよ」

女「この口振りから察すると、君は朝に一度用を済ますのかな?」

男「察するな。そんなことはねえよ」

女「ふむ、素直に答えてくれてありがとう」

男「しまった……で、なんだよお前」

女「ん?」

男「なんでここにいるんだって聞いてるんだよ」

女「ああ、そのことか」

男「急に来られたらこっちも迷惑だっつーの」

女「パンツ一丁で寝ているから、誘ってるのかなと思ったのだけれど」

男「暑いからな!」

女「それはそうだよ。夏なんだから」

男「本当に最近は熱帯夜だ」

女「うん、ボクも最近はノーパンで寝るよ」

男「ノーパン!?」

女「もちろんパンツは穿いてないけれど……」

男「ズボンは着てるよな」

女「? 着てないよ」

男「なっ!」

女「着たら暑いだろう?」

男「……」

女「……ふふ、驚いたかな? 冗談だよ」

神SSの予感

男「……別に驚いてねー」

女「すごい食いつき方をしていたけれど」

男「……はぁ」

女「ふむ、それじゃあ本題に入ろうか」

男「そうしてくれ」

女「今日、ボクがここに来た理由はただ一つ」

男「……なんだよ」

女「君と、夏休みを思う存分堪能しようと思ってね」

謎定期

まとめさん僕のレスはグリーンで

前に見た

男「……だからって朝に殴りこんでくるとはどういうことだ」

女「大げさな言い方だなぁ」

男「昼ごろに来ればいいのに……ふわぁ」

女「ふふ、早すぎたかな?」

男「俺は夏休みは遅起きなんだよ」

女「……でも、高校二年の夏は一度しかないんだ」

男「そりゃな」

女「だから、ボクは君とたくさん遊ぶために、朝にお邪魔したんだ。さ、早く着替えてくれ」

男「は? なんだ、外にでも行くつもりかよ」

女「うん、そのつもりだよ。察しが良くて助かる」

男「暑いから嫌だね。俺は涼しい部屋で夏休みを優雅に過ごしたい」

女「でも、君はエアコンをつけないよね。扇風機だけで涼めるのかな?」

男「お前が来るから、エアコンは使えないんだろ」

女「ふふっ、ボクがエアコンに弱いこと、気にしてくれてるんだね」

男「……ちっ」

女「まあ、君が嫌というのなら、ボクは諦めるよ」

男「諦めてどうすんだ?」

女「そうだね。夏休み中は君とは会わない……かも」

男「そりゃまた両極端な答えだな。会うか会わないか、になってるじゃねえか」

女「ただ、そうなると宿題も一緒にはできないね」

男「!」

女「まあ、いいよね。君は涼しい部屋で夏休みを満喫したいんだから」

男「……わかったよ、遊ぶ。遊んでやるよ」

女「そう来なくっちゃ」

男「で、予定とかはもう決めてあるのか」

女「うん。今から海に行くよ」

男「海か……って、今日かよ。急だなおい」

女「ふふっ、いきり立ったが挿入だよ」

男「思い立ったが吉日だ。なんにも合ってねー」

女「合わせる気なんてさらさらない」

男「余計タチわりぃよ!」

女「素早いツッコミ、ありがとう」

男「お前と毎日いたら嫌でもこうなる」

女「いやあ、それほどでも」

男「誉めてないぞ」

女「それで、水着はあるのかな?」

男「多分押し入れのどこかにあるはずだ」

女「良かった。ボクは楽しみにし過ぎていたから……」

男「?」

なんのためらいもなく、ヤツは短いスカートをまくりあげ、

女「水着で来ちゃったんだ」

ヤツの下半身は、パンツではなく、水着であった。

……何故スクール水着なんだ。

あとなんだそのハニカミながら舌を出した顔は。

男「いきなりそういうことをするな」

女「おや、反応が悪いね」

どんな反応を期待してたんだ。

さらにヤツはヒラヒラとスカートをはためかせ、

女「スクール水着なのだけれど、どうかな」

どうかなと言われても。

仕方なく、質問してやる。

男「……なんでスクール水着なんだ」

半ば呆れ顔で聞く。

女「泳ぎやすいからね」

ニッコリと、返してきた。

男「そうかい。とりあえずスカートを元に戻せ」

まるでありがたみのない水着チラが気に食わない。

女「うん、了解」

まくしあげたスカートを戻して、クルリと一回転した。

意味は特にないだろう。

気にせず、俺は水着を探し始めた。

しかし、あると思っている押し入れではなく、タンスの中を覗いた。

女「へえ、ここにパンツがあるんだね」

男「見るな。お前は玄関で待ってろ」

男物のパンツをまじまじと見るな。

女「そこに水着が入っているのかい?」

男「多分……入ってない」

女「なるほど、着替えのパンツを持って行くんだね」

男「いちいち言わんでいい! ほら、さっさと玄関に行け」

女「ふふ、そうだね。うっかりエッチな本を見つけたら大変だし」

横目で押入れをチラリと見て。

女「ふふっ」

笑って、ヤツはゆっくりと部屋のドアに向かった。

女「じゃあ、玄関で待ってるね」

ニッコリと笑って、部屋をあとにした。

男「……」

本当に、食えないヤツだ。

そしてなぜエロ本の存在を示唆した。

押入れに向けられた視線は何を物語っていたのか。

……玄関にやって正解だった。

押入れには……いや、別にいいか。

言ってもしかたのないことだ。

なんでいきなり地の文出し始めたの?
くさいなあ

夏は毎年妹と必ず一度はプールに行くので、水着はある。

家にあるのは去年買った水着……だと思う。

押し入れには色々な荷物の後ろに少しばかりのエロ本がある。

さっきヤツが出たところを見たが、もう一度周りを確認する。

男「……ふう」

ヤツはもう部屋にいない。だから心おきなく水着を探せる。

エロ本の内容は……いや、言う必要はないか。

再放送なのかそれともやり直しなのか

男「……お、あったあった」

去年のまま変わらず、袋の中に入っていた。

トランクスっぽい水着。地味目だ。

男「俺も着替えていくか……」

一丁だったパンツに手をかけ、そのまま下におろした。

妹「お兄ちゃん、女さんとどこに行……」

男「あ」

妹「……きゃああああ!」

……部屋に入るときはノックをしてくれ、妹よ。

きもいなぁ…

妹の誤解を解くのに、数分を要した。

どうやら納得してくれたみたいだった。

もしも誤解されたままだと押入れの前でパンツを脱ぐ意味不明の兄になってしまうところだった。

そして、ヤツとプールに行く事を伝えると、とても不機嫌そうな顔をしていた。

多分、一緒に行きたいのだろう。

妹「私も行きたい!」

男「今度な」

妹の行きたい攻撃をすかさず避けて、ヤツの待つ玄関に向かった。

ヤツは俺を見るとニヤッと口の端をつり上げた。

女「ここから妹くんとの仲睦まじい会話が聞こえたよ」

どうやら会話は筒抜けだったらしい。

男「そうかい」

女「『私もイキたい!』って、どういうことかな?」

違う。

違わないが違うぞ、それは。

その間違え方はダメだ。

男「勘違いするな」

女「でも、妹くんは言っていただろう」

男「字を変えるな、ややこしい」

俺は軽くため息をついた。

いつもこんな具合で、話が逸れる。

さっさと本題に軌道修正だ。

男「で、海までどうやって行くんだ?」

ここから海は、歩いたら二時間以上はかかるぞ。

女「歩いて行こうかなと思っているのだけれど」

……歩くのか。

男「ここから二時間以上かかるんだぞ?」

女「いいじゃないか。時間はたくさんあるしそれに、」

君とたくさん話したいから。

ヤツは微笑んでそう言った。

まあ、別に。

コイツがそうしたいならそれで、いいんだが。

……暑いだろうなぁ、外。

女「君と自転車で二人乗り、というのもいいけれど、イケナイことだから」

お前の言い方だと、ちょっと危ないように聞こえるんだが。

まあ、二人乗りは危険だし、いいか。

男「じゃあ、行こうぜ。海までの道分かるか?」

俺はさっぱりわからないぞ。

女「うん」

迷いもなく、ヤツは頷いた。

このあたりなら、わかるんだよな、コイツは。

人間ナビみたいなやつだ。

女「それでは、行こうか」

男「おう」

玄関を開けると、空気が歪むような熱風が一気に体にぶち当たった。。

一週間の運命を表現してるかの如く、セミが力強く鳴いている。

陽射しは槍のようにグサリグサリと肌を突き刺し、快晴だ。

ああ、夏だ。どうしようもなく夏だ。

女「ふふ、真っ盛りだね」

ヤツは珍しく麦わら帽子をかぶりだした。

特に気にしていなかったが、一応補足。

今日のヤツは白いワンピースを着ている。

が、スカートは短い。

ミニスカートのワンピース。

くっさ

そういえば、コイツは制服も恐ろしく短い。

更に、ヤツ曰く『穿いてない』らしい。

まあ、さっきと同じで冗談だとは思うんだが。

そんなこんなで、今はヤツの提案通り、歩いて海に向かっている。

男「暑いな」

俺も帽子くらい持ってくればよかった、と後悔。

ジリジリと陽射しが突き刺さってくる。

女「そうだね。ボクはムラムラするよ」

男「は?」

女「スクール水着が汗で密着して、しめつけられているんだ」

大げさに息を荒くさせて、自分の体を抱きしめるヤツ。

女「新しい世界が見える!」

男「戻ってこい」

発情するな。

隣にいたくないぞ、今のお前。

変な世界を開くな。

男が女に見えてしまう主人公のウェブ漫画思い出した

女が化物語の神原みたい

女「そうだね」

ヤツはなにもなかったように元に戻った。

暑いのに元気だな、こいつは。

汗はかいてるけど、笑顔のままだ。

女「そういえば、水とかは持ってきたかな」

男「あっ」

妹の相手をしてて、用意をしっかりしてなかった。

女「どうやら、持っていないみたいだね。水分補給は大事だよ」

男「まあ、どっかで買えばいいだろ」

海に自販機があるだろうし。

女「いや、その必要はないよ」

今度は埋められないようにな

肩に掛けていた地味なバッグから、ペットボトルを取り出した。

中は透明。まあ、水だろう。

女「ちょっと、余分に持ってきたからさ」

そして、それを俺に差し出した。

おい……飲んだ形跡があるんだが。

男「……飲んだか?」

女「ふふっ、君の家に来る途中で、少しだけ飲んでしまった」

飲んだ、と言っても量はそれほど減っていない。

男「他にないのか?」

女「あとはボクの分だけだよ」

そっち口つけてないじゃないか。そっちをくれよ。

男「ちっ……」

まあ、しかたない。

こっちはもらう側だからな。

男「礼は言わないぞ」

女「それって、言ってるようなものだよね」

うるせえ。

女「この太陽の照りようだと、日焼けしてしまうね」

男「ああ、間違いなくな」

妹がとにかく焼ける体質で、毎回行く度に黒くなる。

でも、夏が終わるとだんだんと元に戻っていく。

不思議な体質だ。

女「際どい水着で、変な日焼け跡を残すのもいいね」

男「恥ずかしくて学校に行けなくなるぞ」

女「それを考えると、すっごく興奮するね」

こいつ、目がマジだ。

女「でも、残念ながら、ボクはあまり焼けない体質でね」

何が残念だ。

男「ふーん」

女「だからなにも塗らなくていいんだ」

確かに、コイツは白い。

妹は塗っても焼けるぞ。

人それぞれなのかもしれないな。

女「ふふっ、黒くなるのも、ちょっと元気があるように見えて素敵だけどね」

確かに、焼けた妹はいつもより活発に見える。

まあ、通常でもうるさいしやかましいけど。

女「白い液体を塗っている女の子達……か」

男「おい」

なにを考えている。

真面目な顔で。

女「いやあ、海の人気のないところでお盛んなカップルもいるだろうから」

その手の上下運動をやめろ。

あと壁に手をつけて腰を振るのもだ。

女「そんなに見つめないでくれよ」

ヤツの顔が暑さで若干赤くなってるのがまたムカつく。

男「やめろそういうのは」

人に見られたらどうする。

女「どういうのならいいのかな?」

男「どういうのでもダメだ」

どうであれ誤解されかねん。

女「ふむ、君はどうやら見られているプレイは恥ずかしいみたいだね」

みんなそうだろ。

女「ふふ、一つ勉強になった」

メモを取るフリをするな。

女「青姦はダメ……っと」

……はぁ。

            ∧  ∧
            |1/ |1/
          / ̄ ̄ ̄`ヽ、
         /        ヽ
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        | (●) (●)   |   青姦はダメ……っと
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      (          _ |

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         /        ヽ
        /  ⌒  ⌒    |
        |  へ  へ    |   ふふ、言ってみただけ♪
        /          |
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      (          _ |

      (ヽ、       /  )|

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       ゝ ノ       ヽ  ノ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

今度こそ完結してくれ

その後もヤツの行き過ぎた下ネタトーク(これがいつも通り)が続いた。

海が遠くで見える所までやってくると、様々な人の声が聞こえてきた。

盛況っぷりが窺える。

女「人がたくさんいるみたいだね」

男「ああ」

女「ナンパされたらどうしよう」

男「え」

なんだ、そんなこと気にしてるのか、コイツは。

自意識過剰なやつだ。

女「君が」

男「俺かよ!」

逆ナンの心配をするな。

海に着くと、たくさんの人で溢れていた。

なんというか、やはりみんな考えることは同じなんだな。

プールもあるけれど、やっぱり夏は海、なのか。

女「思っていたほどではなかったかな」

男「そうだな。これなら案外泳げそうだ」

女「そうだね。一つお願いがあるんだけれど」

男「なんだ?」

女「ローションを塗ってくれないかな」

なにも塗らないんじゃないのかよ。

そして、なぜローションを持っている。

この間のか 支援

男「誰が塗るかよ!」

塗る必要はまったくないだろ。

女「塗る……ヌルヌル……ニュルニュル……」

またおかしな方向に行こうとしてやがる。

男「とりあえず場所確保するぞ」

女「性行為できる場所を、だね」

無視。

小さなレジャーシートを置いて俺たちはそこに荷物を置くことにした。

最近は盗難もあるから気をつけないといけない。

女「さて」

ヤツは荷物を置くなり、帽子を取って、ワンピースをおもむろに脱ぎ始めた。

すかさず目をそらしたが、下に水着を着ていることを思い出して、やめた。

女「んー、いいね。素敵だよ」

太陽に手をかざして。気持ちよさそうに体を反らせ、準備運動を始めた。

男「……」

胸、小せえなぁ。

凹凸のない胸のあたりに名前と中学時のクラスが書いてあった。

……成長しなかったんだな。

女「む、どこを見ているのかな?」

準備運動を絶やさず行いながらも、ヤツは俺の顔をじろりと見た。

大丈夫だ、別にお前の体に見惚れている、ということはない。

男「自惚れるな」

女「そうだよね。君の好みは、巨乳の年上だものね」

男「おうおう、そうだな」

俺もゆっくりと服を脱ぎ始め……。

男「……は!?」

なぜ知っている!?

一瞬聞き流しそうになったぞ!

女「さて、準備完了だっ」

ピョンピョンと跳ねて、ワクワクを抑えられない様子だ。

何も揺れてないな。

って、そんなことよりも!

男「ちょ、ちょーいまて」

海に勇み足で向かおうとしているヤツを止める。

女「おや、ボクを精子させるなんてどういうこおかな?」

男「制止だ」

間違いにもほどがある。

お前、仮にも女の子なんだからやめとけよ……。

遅い

女「それで、どうしたんだい?」

体を伸ばしながら、俺の方へとやってくる。

男「なぜ俺の好みを知っているんだ」

女「ああ、本当に好きなんだね」

なっ!?

鎌かけられただと!?

女「君がよく目を奪われている女の子を見ればすぐにわかることさ」

ニコッと笑って、俺の心をグサリと貫いた。

音も立たぬ、大ダメージ。

サイレントキルだ。

恥ずかしい。

聞かなきゃよかった。

やっぱり、胸とか見てるのって、バレてんだな……。

第三者にバレてるのが一番キツい。

見られてる本人の場合、自意識過剰で済ませられるんだが……。

いや。

もうこういう考えが既にクズだな。

できるだけ、見るのをやめよう。

女「準備はできたかな?」

男「ああ、大丈夫だ」

心は折れていたが、その間に服を脱いでいた。

女「ふむ、トランクスか。モッコリしないね……」

本気でガッカリするな。

男「何を求めてやがる」

女「もちろん君のモッコリだよ」

正直だな。

女「あっ、準備貞操はした?」

体操だろ。

男「してない」

女「もとい、前戯」

男「もうツッコまないぞ」

女「ボクは君に突っ込んでもらわないとイキたくてもイケないよ!」

男「やめろ!」

大声で言うな!

男「準備体操は今からする! 泳ぎたいなら先に行ってこい!」

女「先にイってこい?」

なぜいつもそうなる!?

女「え、えっと、とりあえずイジればいいのかな?」

股のあたりを自分で見るな!

男「もういい! そこで立ってろ!」

女「勃たせるものがない」

ちげえ!

男「待ってろ!」

女「精子」

男「静止だあっ!」

ああ、もう!

気が狂いそうになる!!

海に入るまでにバカみたいな会話で汗をかいちまった。

さっきヤツからもらった水を飲む。

女「じゃあ、先にイって待ってるね」

結局字を変えないまま、ヤツは波打つ海に走っていった。

なんだか急に行ってしまったが、まあいいだろう。

男「……ん」

そういえば、間接だな、これ。

……まあ、気にしてないけどな。

準備体操を終え、俺も海に向かった。

女「あははっ」

波打ち際で一人できゃっきゃしていやがる。

寂しいヤツだ。

いや、むしろたくましいと言うべきか。

女「あ、来たね」

目立つように手を挙げて、俺を呼んでいる。

男「おう」

それに返事をすると、周りの他人が一斉にこちらを見てきた。

男「!?」

な、なんだ、この空気。

そんな中、ヤツは俺の方へ向かってくる。

ああ、なるほどな。

あいつの水着がスクール水着だからだ。

そりゃあ海に泳ぐのにスク水なんて場違いだからな。

女「ねえ……」

ぼそっと、耳の近くでヤツが呟いた。

流石のコイツも、驚いたか?

女「色んな人に見られて濡れそうだよ、ボク」

ベクトルが違った!

見られることに、喜びすら感じていやがる!

男「こんなことで濡れるな!!」

女「え、海水で濡れるってことだよ?」

『色んな人に見られて』必要ねえだろ!!

可愛い

男「お前、本当に強心臓だな……」

視線が強すぎて俺はちょっとクラっと来てるぞ。

女「そんなことないよ。だって……」

何か言うのかと思うと、そこで閃いたような顔をして、

女「さ、お兄ちゃん早く遊ぼっ。一人遊びに疲れちゃった!」

と、のたまったのだ。

男「はぁ!?」

無邪気な笑顔を見せて、ヤツは俺から走って離れた。

なるほど、中学生の妹と遊んでいると思えば周りも自然と……!!

ってなるわけないだろ!

もっと変な目で見られてるし!

スク水で海に来る妹がいるか!!

あと一人遊びとか言うなっ!

その後。

泳ぎが驚くほど上手いヤツに翻弄されつつ、遊んだ。

ヤツが持参したビーチボールはまともに空気を入れる気がないようなので使わなかった。

空気入れるところ舐めるなしゃぶるな。

あと吸うな。

遊んでいる途中、

女「残念ながらスクール水着だからポロリはないよ」

と、ドヤ顔で言っていた。

いや、それ以前の問題だろ。

ポロリできる胸なんかないだろ。

時を忘れて遊んでいると、腹が減り始めた。

時間もちょうど昼飯頃になっていた。

女「海の家でご飯を食べようよ」

目をキラキラと輝かせて、人だかりのできた海の家を指さした。

男「海の家? 高いし大して美味しくないし量も少ないだろ」

ちっちっち、とヤツは人差し指だけを横に振った。

女「ふふ、それがいいんじゃないか。お腹に残るものよりも、思い出に残るものだよ」

満面の笑みを俺に向けて、建物に向かうヤツ。

男「おい」

女「ん?」

俺の声に、首を傾げた。

男「財布取りに行くぞ」

金がなきゃ、思い出も残せないぞ。

レジャーシートをしまい、荷物を全部持っていくことにした。

大したものは持ってきてないので、荷物にならないしな。

海の家にできている人だかりに近づいてみると、圧倒的にオトコが多く、異様な風景だった。

女「男の人がたくさんいるね」

男「そうだな」

アロハシャツのサーファー風のオトコの店員が俺たちの席にヌルそうな水を置き、注文を聞きにきた。

水は思った通りヌルい。

ヤツが焼きそばを指差して、だんまりを決め込んでいたので、俺が仕方なく焼きそばを二つ頼んだ。

店員が余所に行くと、テーブルに膝を手をつきながら体を前傾させながらヤツは、

女「次の予定なんだけれど」

と、小さな声で言った。

男「顔が近い」

女「ごめん、わざとだ」

わざとかよ。

女「夏休みはまだたくさんあるけれど、間を置かずどんどん楽しみたいと思ってるんだ」

男「ふむ」

あっという間に夏休みってのは終わる。

次はあるだろう、と思っていると、本当に刹那だ。

女「だから、明日はカラオケにでも行こうかなと思って」

男「カラオケ!?」

夏関係あるのか!?

女「ダメかな?」

カラオケ……。

男「イヤだ」

行きたくない。

女「おや、どうしてだい?」

コイツはわかっているくせに。

こんな言い方をする。

俺は歌が下手で、どうしようもない。

過去に一度、コイツと一緒に行ったことがある。

ヤツは歌が果てしなく上手い。

自分が恥ずかしくなるくらいに。

男「音痴だからだ」

女「そうかな」

なんだよ。

女「君は下手ではないと思うよ。ただ、ちょっと声が震えているだけで」

それに。

女「ボクは君の歌、大好きなのだけれど」

と、真剣な眼差しでヤツは言った。

嘘つけ。

女「まあ、君が嫌なら、強制するのはいけないよね」

前傾していた体をしょんぼりしながら元に戻して、さきほど置かれたぬるい水をちょこっと飲んだ。

急に静かになって、なんだか空気がどんよりとした。

だが、周りは俺たちと違って、活気づいている。

賑やかで暑苦しい店内だ。

遅い

雰囲気に耐え切れず、俺の方が折れた。

男「……わかった。行こう。その代わり俺の下手な歌に付き合ってもらうからな」

女「……本当かい?」

ここまで言って嘘なわけないだろ。

男「本当だ。……俺の歌を笑うなよ?」

女「もちろん。笑うわけがないよ」

ヤツは嬉しそうに笑った。

女「あ、笑ってしまった」

いや、今は別にいいけどな。

女「あ、あとね」

ヤツは持ってきたバッグからチラシのようなものを出した。

女「夏祭りがあるらしくて」

ちょいちょい、とチラシを指さしてアピールしている。

男「なるほど。これに行くと?」

女「うん。まだ先のことなんだけれど」

ふーん。

妹が行きたがりそうなイベントだな。

キモイなぁ
どんな顔して書いてるのか

男「花火もあるのか。盛大な祭だな」

女「花火は今年からみたいだよ」

ああ、道理で聞き覚えがないわけだ。

女「夏祭りの間、他にも色々なことをしようよ」

うむ。充実した夏休みになりそうだ。

男「いいんじゃないか」

コイツにしては、珍しく良い提案だった。

女「夏休み中に初体験するのもいいね」

男「おい」

一言で台無しだ。

SSスレにありがちなこと
>>1だけ読んで最後まできたら展開があまり進んでない

女「え? 君はしたことがあるのかな?」

男「何をだ」

女「これだよ、これ」

ヤツは自分の唇に指を当てて、離した。

男「……?」

女「キス、だよ」

急にわけのわからん話に発展した。

男「……」

女「その様子だと、したことはないみたいだね」

次こそ完結してくれよ

確かにしたことはない。

女「良かった。ボクもしたことがないんだ」

ニコッと笑って。

わざとらしく唇を舐めた。

女「じゃあ、二人で初体験といこうか」

男「なんでそうなる」

女「ふふ、一夏に初体験しておくのも、一興だと思うけれど」

バカ言うな。

女「そんな目で見ないでくれ。まるでバカと言わずして言われているようだ」

現に思ってるけどな。

女「まあ、とにかく」

ヌルい水をゆっくりと飲みきって。

女「とっても楽しみだね」

俺の目をじっと見て、ヤツは微笑んだ。

どうやらキスの話はお終いらしい。

ヤツに見つめられているのもなんだか変な気分なので、とりあえず周りを見渡した。

一人の店員が焼きそばを持ってこちらに向かっている。

さっきの店員ではない……ん……?

あれは、もしかして……。

?「はい、焼きそば二つお待たせしましたー! 心を込めて作ったんですよ~!」

元気よく声を出して焼きそばを置いたのは、さっきのサーファーみたいな店員ではなく。

?「あ、あれ……先輩!?」

高校の後輩であった。

男「よ、よう後輩」

別に中学の後輩というわけではない。

高校は帰宅部である俺の、唯一の後輩。

文化祭実行委員で知り合った後輩である。

夏休み前に文化祭がある高校も、珍しいよな。

後輩「わー先輩! こんなところで出会うなんて運命を通り越して偶然です!」

それは良い表現なのだろうか。

男「どうしたんだ、こんなところで」

まさかこんなところで出くわすとは。

後輩「実は、私のお友達のヘルプで来てるんです! だから、デリバリーヘルプです! デリヘルです!」

男「ちょっと声量を落とせ」

略すな危険。

後輩「ふふふ、嬉しすぎて私、胸がはちきれそうです!」

後輩は嬉しそうにピョンピョンと体を弾ませる。

さらに、彼女の胸もそれに乗じて弾む。

さっきのヤツと比べると、恐ろしい差だ。

ああ、なるほど。

オトコがたくさんいるのは後輩目当てのやつばかりだからか。

童顔で巨乳で、学校でも人気だからな、後輩は。

俺たちの席に長居し過ぎたためか、さっきのサーファー風の店員に呼ばれている。

後輩「あっ、ごめんなさい。先輩との蜜月の時は終わりみたいです」

ションボリとする後輩。

勝手なことを言うな。

後輩「また、夏休み中に連絡します! 遊びましょうねー!」

太陽のように明るい笑顔で、力強く手を振って、後輩は仕事に戻った。

男「さて、食うか」

なんだ、意外と美味しそうな焼きそばじゃないか。

女「ずいぶんと、胸を見ていたね」

男「え」

後輩のことか?

……思い返すと、確かに胸を見ていたかもしれない。

いや、あれはその、ほら。

無意識に見ちまうというか。

女「胸が好きだね、君は」

ニヤリといやらしい顔をしてやがる。

手を合わせて「いただきます」。

ヤツはしっかりとした声でそう言って、割り箸をわった。

俺も手を合わせて心の中でヤツと同じことを言って、割った。

女「うん、うん……!」

ずるずると美味しそうに頬張っている。

女「んー! 普通!」

親指を立てて、高らかに言った。

男「失礼だぞ」

声大きいし。

女「お世辞にも美味しいとは言えないからね」

正直者め。

普段はひねくれているくせに、こういう時だけ正直なやつだ。

女「ほら、君も食べなよ」

男「わかってるって」

女「あーんしてあげようか?」

男「いらん」

急かされるままに、俺もずるりと焼きそばを口に持っていった。

男「! こ、これは……!」

美味しく……ない。

不味くも……ない。

なんとも言えず、コイツの言葉を借りると、普通だ。

女「ね?」

火を見るよりも明らか、といったような顔である。

ああ、お前が正しかったよ。

量もそれほど多くなく、ただ金だけを無駄に支払った気がしつつ、俺たちはごちそうさまをした。

そして、また海に突撃した。

日が傾きはじめて、歩いて帰ることを思い出し、すこし憂鬱になった。

けれど、遊び疲れるってのは、なかなか良い感覚かもしれない。

いつもは時間を持て余しているうちに夏は終わり、宿題はできていないことが多かった。

ヤツと出会うまでは。

……まあ、この話は長くなるので言わないでおこう。

女「夕日、綺麗だね」

そっと、彼女はそう口にした。

俺も頷いて、しばらく夕日を眺めた。

……この状況、なんだかむず痒い。

帰りになってさらに俺のド肝を抜いたことといえば、ヤツの着替え方である。

あの、体を隠す小学生などが使う巻きタオルを持ってきていたのである。

女「スーパーマン」

と、一番上のボタンだけをつけて、仁王立ち。

ガキか。

男「じゃあ着替えてくるぞ」

女「それはズルいよ」

男「は?」

いきなりどうした。

女「ボクはここで着替えるんだ。だから、君もここで着替えないと」

その理屈はおかしいだろ。

男「俺はそんなタオル持ってないんだぞ」

女「タオルを巻けばいいじゃないか」

と言って、ヤツはタオルのボタンを全てつけた。

俺のはボタンはついてない。

あと、巻いたら拭けないだろ。

男「付き合ってられん。行ってくる」

女「ふふっ、やっぱりね」

男「って、ついてくるなよ!?」

何を平然とついてきてやがる!?

女「君の着衣を見ようと思って」

立派な犯罪だ。

男「着替えて待ってろ」

巻きタオルつけたままついてくるな。

女「今、この巻きタオルを取ると、大変なことになってしまうよ」

どういうことだ。

女「ほら、あそこを見てくれ」

顎で指示した方を見ると、荷物がある。

それがどうし……あれ。

なんだあの紺色の物体は。

あれは……。

男「!?」

スクール水着!?

男「お前……!」

女「全裸です。きゃっ☆」

きゃっ☆ じゃねええええ!

男「戻れ、早く!」

女「おや、どうしてかな?」

巻きタオルを内側からワサワサするな!

こうなったら力づくでも……。

女「その手はなんだい?」

男「ッ……!」

触れない……!!

コイツは今、全裸だ。

変にどこか触ったりできない。

女「ふふ、どうしたのかな?」

肩あたりなら平気だが、それでも、だ。

女「いいよ、君にならどこを触られても感じるから」

感じるな!

この言い草だと、どこを触っても声を出しそうだ。

さらに触りづらいじゃねえか。

くそっ。

……仕方ない。

男「俺が悪かった。頼むから戻ってくださいお願いします」

俺は、意地を捨てて、何も悪くないのに深々と頭を下げた。

女「ふふ、了解」

そういうと、ヤツは突然巻きタオルのボタンを外した。

男「は!?」

そして、巻かれたタオルを外したのである。

男「ッ……! ……?」

ヤツの姿は、既に衣服を着ていた。

女「もう、着替えているんだけどね」

ニッコリとして、俺はヤツにまんまと騙されたのであった。

はあ。

勘弁してくれ。

女「あの時の顔、すっごく引きつってたよ」

当たり前だ。

今は、海から家に帰っている途中だ。

ヤツは帰りと同じく、ミニスカのワンピース。

麦わら帽子は被っていない。

女「んーっ、ちょっと体が重いね」

男「そうだな」

帰りは海で遊んだ疲労と共に帰るので、行きより辛い。

女「ふふっ、君もお疲れみたいだね」

男「ああ」

遊んでいる時ってそんなに感じないものだが。

終わるとこう、どっと疲れがやってくるな。

まだまだ高校生だってのに、ちょっと体力ないな。

それにくらべてコイツは。

顔から疲れは見えない。

女「あっ」

男「どうした?」

女「わ、忘れてた」

男「は!?」

おい、もう海から相当離れちまったぞ!?

何を忘れたんだ!?

女「……人気のないところで、エッチ」

するか!!

男「ただいま」

怒濤の夏休み初日に学校以上に疲れた体で俺は帰宅した。

妹「……おかえり」

ひょこっと、妹が居間につながるドアから顔を出した。

男「ただいま」

ん、なんか機嫌が悪いな。

海に連れて行ってやらなかったのが、不満だったのだろうか。

男「ごめんな、今日は」

とりあえず謝っておこう。

妹「別に、大丈夫だよ」

ん?

妹に近寄ると、ゆっくりと距離を置かれる。

な、なんだ?

男「お、おい?」

妹「き、気にしないで」

俺が一歩近寄ると、妹も一歩離れる。

いや、気にするだろ。

なんで避けてるんだ。

男「ど、どうしたんだよ」

こんな反応されて気にしないなんて無理だぞ。

グッと妹に近づく。

すると、目を見開いて俺をまじまじと見て、

妹「な、なんでもないからー!!」

と言うや否やダッシュで二階の自分の部屋へ行ってしまった。

な、なぜだ……めちゃくちゃ引かれている。

やっぱり連れていってやればよかったか……くっ。

やりきれず髪の毛を触る。

海水のせいで、パサパサだ。

男「……うーむ」

疲れたからもう寝たいんだけれど。

風呂に入らないと、まずいかもな。

男「ん」

晩ご飯が、テーブルに置いてある。

なんだかんだで飯は作っててくれたみたいだ。

まあ、明日には妹も元に戻っているだろう。

そう信じながら、俺は晩ご飯に手を付けたのであった。

もちろん、風呂にも入るぞ。

次の日のことである。

男「おはよう」

妹「おはよー」

ん?

いつもの、妹だ。

昨日みたいに引かれないぞ。

妹「もう女さん来てるよ! 早くご飯食べてね!」

男「お、おう」

若干ホッとしつつ、俺は朝ご飯を食べた。

女「やあ」

玄関を開けるなりヤツはアクビをした。

女「ふふ、昨日の疲れがまだ残っているみたいだ」

男「ちゃんと寝たのか」

女「うーん、あまり」

そうか、と返事してヤツの顔を見る。

女「それとも、君を見て安心したのかな?」

なんだそれは。

何か不安でもあるような言い方だな。

多分、無いだろう。

コイツはそういうヤツだ。

それにしても。

本当に、日焼けしないんだな。

昨日と変わらず白い。

女「おや、ボクの顔に何かついているかな?」

男「白いな」

女「え、誰かの体液がかかったのかな」

取り違えるな。

女「濃くて、すっごく臭いのが……んっ、喉に絡みつく……」

舌を出すな。

男「そうじゃなくて、肌! 焼けてないんだな」

女「あ、そっちか」

そっちしかねーよ。

女「たくさんすれば少しくらいは黒くなると思うんだけど」

男「半日遊んで焼けないんじゃ無理じゃないか」

それ以上やっても結果は同じかもな。

女「そうかもね。君は少し焼けたね」

ああ、そうみたいだ。

妹にもさっき、『ちょっと黒くなった!』って言われた。

女「それじゃあ」

ニコッと笑って、背を向けながら、顔はこっちに向けて。

女「行こ?」

カラオケに行くのは久しぶりだ。

コイツと行ったのが俺にとって前回になるわけだが。

ああ、既に緊張している。

受付から部屋の番号の書いてある紙を渡される。そして、その番号の部屋に俺たちは入った。

ヤツは早速マイクを持って、

女「マイクを持つとついついやってしまうね」

男「擦るな」

あと股間に見立てるな。

入るなり何をしてるんだお前は。

そういうのは女子がやるもんじゃない。

女「それにしても、ドキドキするね」

男「何が?」

女「密室に二人きりだよ?」

と言って、ヤツはゆっくりと俺との距離を縮める。

女「変なことになるかもしれない」

どんどん近づき、体が触れ合いかける。

既に息はかかっている。

男「暑苦しい」

俺はヤツの頭にちょこんとチョップをかます。

女「んっ……もっとぉ」

男「変な声を出すな」

叩かれて喜ぶとはなんというやつだ。

女「急に手を出すなんて……」

服をズラして肩を見せるな。

男「お前が悪い」

女「『お前が悪い……そうやって誘惑するから!』」

男「妄想やめろ」

タチの悪い妄想だ。

女「ああ、襲われる! 服を脱がれ押し倒され……!」

男「やめろソファーで暴れるな!」

パンツ見えるぞ!

逆に見えないのが奇跡な角度だ!!

動きまくるヤツを止めようと近づくと、

女「本当に近づいてきた!」

近づいちゃ悪いかよ?!

女「ああ、ダメだよ……こんなところで淫らだよ……そんな大きいの、入らない……!」

男「ぐっ……もういい!」

俺はヤツを後目に曲を入れた。

女「おや」

ピタリと動きが止まる。

男「……時間がもったいねーから歌うぞ」

女「……うん、君の言う通りだ」

ヤツはしっかりと背筋を伸ばして。

俺のボロボロな歌を聴いていた。

……できれば恥ずかしいのでもうすこし姿勢を崩して聴いて欲しい。

俺まで背筋が伸びちまう。

一曲目終了。

ヤツはニコニコしながら拍手を送ってきた。

逆に嘲笑の方がマシな気がする。

女「やっぱり君の声は素敵だよ。来て良かった」

男「うるせー」

俺は酷く落ち込んだ。

下手だなぁ、俺。

女「次はボクの番かな?」

男「ああ、そうだ」

ああ、俺は更に落ち込むぞ。

こいつの歌唱力にひれ伏すのだ……。

歌い始めると、ヤツの雰囲気は一変して。

コイツは、コイツでなくなる。

いや、ヤツに変わりないんだが。

歌の旋律に身を投じたように、曲と一体化して。

それから、自由自在に自分の歌へと変貌させていく。

この時のヤツは。

思わず見惚れてしまう。

歌い終わると一息ついて、

女「ふう、恥ずかしかった」

舌を少し出して、照れたような顔をした。

男「言葉もない」

女「誉めてるのかな?」

男「ああ」

この上なくな。

金を払いたい気分だ。

なんで再放送してんの?

俺はヤツの歌を気にせず歌いまくった。

下手でもとにかく、だ。

美声と汚声が順々に聴こえる。

もちろん美声はヤツで、汚声が俺だ。

喉が嗄れようがお構いなく。

今日一日を楽しむことにした。

そんな俺を見て同調するようにヤツもノリノリになる。

だからといって。

尻を振るな。

腰も振るな。

振るなら左右に振れ。前後に振るな。

歌い続けていると、突然ルームの電話が鳴った。

もうそろそろおしまいか。

結構あっという間だな。

女「ちょうど歌い終わったし、ここでお開きにしようか」

男「ああ、そうだな」

女「くぱぁ」

男「なんだ」

急に変な擬音を発した。

女「お開き……」

くだらん。

カラオケ店に出ると、ヤツは喉をさすった。

女「いやあ、喉が痛いね。イラマチオされたらどうなるんだろ」

いきなりストレートに言うな。

女「試してみないかい?」

桃色のホテルを指さすな。

男「晩飯時だな、何か食うか?」

女「ボクを食べちゃう?」

男「……じゃあ帰るか」

女「冗談だ。でも、妹くんがご飯を作ってるんじゃないかい?」

あ。

多分作ってるな。

昨日だって作っててくれたし。

女「その様子だと、きっと作っているね」

男「ああ、多分な」

女「じゃあ、帰ろう。明日もあるんだから」

男「明日?」

明日も、どこか行くのか?

女「うん」

夏休みは始まったばかりだっていうのに。

こいつはどんどんと予定を入れていくな。

まあ無計画な俺も俺だが。

女「君は大丈夫かい?」

男「何が?」

女「三日間続けて遊ぶこと。疲れない?」

疲れてるには疲れてるが。

男「それはお互い様だろ」

そんなこと気にするな。

女「そうだね。明日も、楽しみだ」

そうかい。

女「こうやって、きつい穴のものもあれば」

男「……」

女「こんな、ゆるゆるで指がすぐに入ってしまうものもある」

男「おい、その言い方やめろ」

次の日のことである。

俺達はボーリングにやってきた。

女「穴があるとついつい、ね」

ボールの穴に指を入れたり出したりを繰り返すな。

女「あ、このボールは締まりがいいよ」

黙れ。

ヤツの言葉を遮るように、俺は二投目を放った。

……おっ、スペアだ。

男「ほら、お前の番だぞ」

女「おっと、つい穴の挿入に気を取られていた」

挿入とか言うな。

女「おや、スペアじゃないか。凄いなぁ」

ボールを持ちながらうんうんと頷くヤツ。

男「ほら、早く投げろよ」

女「うん。……だけど、その前に」

男「ん」

なんだ?

女「ゲームの合計のスコアが勝った人の言うことを聞くのって、どうかな」

と、こちらを向いて提案してきた。

男「……別に構わんが、下ネタは無しだぞ」

女「うん、も、も、もちろん」

男「なんでドモッた」

こいつ、何か企んでたな。

女「あはは。冗談さっ」

その言葉と同時に、ゆっくりとボールを放った。

それはしっかりとした軌道で真ん中を通り、全てのピンを倒した。

女「おや、これはハッサムかな?」

男「ストライクだ」

進化させるな。

そのあとの結果は、言いたくない。

三ゲームやって一度も勝てなかった。

こてんぱんにやられた。

俺がコイツに勝てるものって、あるのだろうか。

男「ほら、お前のスコアだ」

女「ありがとう」

……って、どうして俺はコイツと張り合っているんだ。

女「ふふっ、ボクの勝ちだね」

スコア表を見ながらムフフと笑った。

男「別に、勝ち負けとか無いだろ」

女「あるさ、さっき、約束しただろう」

男「……」

覚えてるけども。

勝ち目なんて最初からなかったというほどの差だ。

男「わかったよ、なんでもやってやる」

その言葉にフフッと微笑んで、口に人差し指を当てて、

女「そ・れ・じゃ・あ……」

ヤツは俺の方に近づいて、

女「今度、温泉にでも連れていってよ」

俺の予想とは遥かに違うものだった。

男「そんなんでいいのか?」

女「んーじゃあ、そこで一線を越えようか」

まさか。

男「わかった。ただし銭湯の方だけだからな」

一線越えるのは無しだ。

女「もちろん、混浴のある場所だからね」

なにがもちろんだ、なにが。

ボーリングはお昼ちょっと過ぎに終わった。

そのあと、俺達は宿題をすることにした。

場所は俺の家だ。

勉強はいつも俺の家でやる。

俺の家の前に着いた頃、ヤツはハッとした顔をして、

女「勉強道具持ってくるから、少し待っててくれ」

そう言って、ミニスカートをヒラヒラとはためかせ、ヤツは一度家に戻った。

それにしても、結構速い速度なのにまるで見えないな、パンツ。

後輩「うふふ、先輩エッチー♪」

男「!」

声の方を振り向くと、口を手で抑えてニコニコしている後輩だった。

男「お前、なんでこんなところに……」

後輩「先輩の匂いを頼りにここまで来ちゃいました!」

ビシっと敬礼する後輩。

見え透いた嘘だ。

男「……いつからつけてた?」

後輩「ついさっき見かけたので、尾行してたのです!」

尾行って……。

屈託なく笑って、彼女は手を合わせて、

後輩「あのですね、先輩、明日は空いてますか?」

男「明日? ……まあ」

空いてるけど。

後輩「よかった、じゃあ私と付き合ってください! ……あっ、つ、付き合うってそういうことじゃなくて……」

男「わかってる。どこに行くんだ?」

後輩「もうすぐ夏祭りじゃないですか?」

ギュッと手を握られ、

後輩「だから先輩と浴衣を買いに行こうと思ったんです♪」

なるほど。

浴衣、か。

そういえば、夏祭りには浴衣という醍醐味もあったな。

ん、でも待て……。

後輩「じゃあ、明日先輩の家に行きますね!」

男「おう」

夏祭りって、アイツと……。

男「ちょ、ちょっと待っ……」

後輩「それではー!」

一昨日と同じく、元気よく手を振って、後輩は走り去っていった。

……まずいぞ、これは。

支援

浴衣を買うってだけならいいが。

多分、後輩は俺と夏祭りに行くつもりなのだろう。

いや、それは考え過ぎか……?

女「はぁはぁ……お股セックス」

下品な言葉と共に、ヤツは戻ってきた。

脚を開くな。

女「……ふふっ、わざわざ外で待っていなくてもよかったのに」

男「別に、待ってたわけじゃねえ」

というか、早くないか。

まだそんなに経ってないと思うんだが。

女「じゃあ、後輩くんと喋っていたのかな」

男「!」

女「ずっと尾行していたからね、彼女」

気づいてたのか、コイツ。

女「それじゃあ、やろうか」

男「おう……」

所変わって俺の部屋。

ついに、夏休みの宿題大掃除が幕を開けた。

……が。

憂鬱でしかたない。

海に行って、カラオケ行って、ボーリングの後に宿題。

やりたくねー……。

男「だめだ、わからん」

女「まだ始めて数分だよ?」

男「とか言いつつ、お前は何をしてるんだ」

宿題やってるようには見えんのだが。

女「君のお部屋探索」

男「真面目にやれ!」

女「ボクはいたって真面目さ! パンツ発見!」

男「そっちに集中するな!」

あとまじまじと見るな! 触るな!

パンツは一昨日も見ただろ!

女「これ、君のニオイがするよ……!」

ニオイを嗅ぐなー!!

変態を家にあげるのは、本当に大変だ。

大変な変態だ。

ヤツが嗅いでいるパンツを取り返した。

女「あっ」

名残惜しそうな声を出すな!

女「まだ口に含んでないよ」

何を仰る変態さん!?

ヨダレ出てるぞ!?

男「誰がさせるかよ!」

同級生にパンツを口に含まれるってどんな状況だ!

何の魅力も感じねーよ!

女「わかった、じゃあ一しゃぶり!」

男「アホか!」

女「じゃあ一舐め!」

男「シャレにならねえ!」

宿題もやらずになんだこの展開は。

もうわけがわからん!

しかし、まあ。

普通に宿題をするのもつまらないし。

別にいいか。

……いや、宿題に手を出してないのはよくないがな。

あれ、俺のやる気が宿題にちょっと傾いた?

……多分、ヤツにはそんな気はないだろうけれど。

女「それじゃあ、始めようか」

男「なぜ脱ぐ」

宿題を始めるんじゃないのか。

ナニを始めようとしてるんだ。

女「暑いからね」

ちゃんと下に何か着ているんのなら、文句は言わない。

女「んっ……よいしょっ」

薄めのタンクトップだ。

こうやってみると、小柄な少年みたいだ。

胸が。

女「いやん」

自分で脱いだくせに恥じるな。

女「さて、と」

セミロングの髪を結び、小さいポニーテールにした。

……別に可愛いとは思ってない。

女「これで、よし。……わからないことがあったら、聞いてくれ」

男「既にわからん」

女「どれどれ」

と言って、俺のわからない問題を覗いた。

女「これ、一年生の時の問題だよ」

そうなのか?

へ、へえ……。

な、情けないな、俺……。

女「け、けどここは先生もしっかり教えてなかったからね」

男「でも、お前はわかるんだろ?」

女「うん。えーっと、ここなんだけど」

俺の隣にちょこんと座り、解説を始める。

教えてもらう時は、意図せず密着度が凄い。

女「……ってことなんだ。わかった? ……どこを見てるんだい?」

男「ああ、すまん」

ヤツ自身、密着していることに気づいていないみたいだ。

女「ちゃんと見てくれないと困るな」

ふくれっ面はとても近い。

どうやら解説しているのに見ていないことを怒っているようだ。

そりゃそうだよな。俺でも怒る。

女「……ボクを」

男「お前かよ!!」

解説じゃねーのかよ!!

ウィンクすんな!

女「こんなに露出しているんだから、見て欲しい!」

男「見るか!」

露出狂か!!

女「脚はいつも出しているけれど、腕は珍しいからね」

そうだよな。いつもミニスカだ。

男「そういや、どうしていつも短いスカートはいてるんだ」

気になっていることを聞いてみる。

女「スリルがあるから、かな」

男「は?」

女「ほら」

ヒラリヒラリとスカートをはためかせて、

女「見えるか見えないか、興奮するだろう?」

ああ、そうだった。

コイツはこういうやつだったな。

さっきも言ったじゃねーか。

変態なんだった。

超絶変態、絶望的に変態なんだった。

男「見えたらどうすんだ」

はためかせるのはそろそろやめろ。

女「今日は白です」

聞いてねーよ。

女「ノーパンでも良かったんだけどね」

男「できればいつも穿いててくれ」

嘘でも本当でも、とりあえず言っておこう。

見られる前に、な。

女「君がそう言うなら」

とヤツはニッコリと笑った。

女「じゃあ、明日はしまパンだね」

男「いらない情報をありがとよ」

女「水玉も捨てがたいね」

パンツの柄の話をおおっぴらにするな。

女「熊さんもいいかもね」

どこの子どもだ!

俺の妹か!!!

さるよけ

まあ、こんな具合で宿題が終わるはずもなく。

女「今度に持ち越しだね」

男「そうだな」

軽く伸びをすると、自然と欠伸が出ちまった。

男「ふわぁ……」

女「ふふ、お疲れ様」

そういうと、ヤツも欠伸をした。

女「ふわぁ……んっ、うつっちゃったね」

お前こそ、お疲れ。

女「じゃあ、また明日」

男「おう」

ヤツの投げキッス(もちろん避けた)をしながら帰る姿を見送った。

玄関には仁王立ちする妹。

妹「家まで送ってあげればいいのに」

と、妹に睨みつけられた。

男「そこまでする筋合はない」

妹「うわー、お兄ちゃんひどっ!」

プンプンと音が聞こえそうなくらい膨れた頬をしている。

男「そういえば、どうして昨日は慌ててたんだ?」

お兄ちゃん、めちゃくちゃヘコんだぞ。

妹「そ、それは……別にいーじゃんっ」

顔を赤くして、妹は台所に向かった。

歯切れが物凄く悪いんだが、まあいいか。

男「……あ」

そういえば、さっきヤツは『また明日』って言ってたな。

明日は後輩と浴衣を買いに行くんだ。

……すっかり忘れてたな。

あとで電話しておこう。

妹「はーい、今日は肉じゃがです」

男「おう」

妹の得意料理、肉じゃが。

今日のは出来がいいじゃないか。

男「美味い」

妹「でしょー?」

ニヒヒと笑う妹。

男「よし、俺の嫁になれ妹!」

と、冗談を言う。

妹「え……」

男「……?」

あ~りりー?

まさか、外したか?

妹「な、何言ってんの……バカ……」

……あれ、なんだこのオチ。

もっと笑い飛ばしてくれないと困るんだがな。

妹よ、そんな顔を隠すのはやめろ。

言ったこっちが恥ずかしい。

冗談だぞ? な?

男「……こほん」

一息置いて、俺はゆっくりと「ごちそうさま」と手を合わせた。

妹「お、お粗末さまっ」

さっさと皿を持って行ってしまった。

……悲しくはない。

男「電話するか」

ヤツに、電話しないと。

ヤツは携帯電話を携帯しない(もはや携帯電話ではない)ので、家にかける。

男「……」

数秒の静寂。そして……。

女『イフイフ』

男「……は?」

電話が繋がるやいなや、よくわからん言葉を言い放つ。

女『もしもしって、ことさ』

ああ、なるほど。

if if、か。

そんなことはどうでもいい。

男「明日のことなんだが」

女『ああ、言ってなかったね。明日は……』

男「いや、そうじゃなくて」

女『え?』

キョトンとした声。

男「明日はその、用事があるから遊べそうにない」

女『……』

少しの沈黙。

女『……君に用事?!』

なんだその驚きは。

俺に用事があることがそんなにビックリか。

女『失礼、まさか君に用事ができるなんて……』

これは明日雪が降るね。

とヤツは電話越しに笑った。

どれだけ俺をかわいそうなやつだと認識してるんだお前は。

男「ってことだ。だから明日は……」

女『遊べない、だね』

男「……そうだ」

急に口を挟んできやがった。

女『明日は何の用事があるんだい?』

う。

まさか聞いてくるとは。

男「別にいいだろ、そんなことは」

女『君のことは知っておきたいのさ。ホクロの場所までね』

ファンか。

男「……後輩と、ちょっとな」

女『ああ、なるほど』

納得したようだ。

女『君は本当に、後輩くんに好かれているね』

男「ああ、そうみたいだな」

文化祭実行委員ってだけの繋がりなんだがな。

女『君にはそういう力があるのかも』

男「んなわけあるか」

あったらどれだけいいか。

女『うん、わかった。明日は君に出会わない程度に行動するよ』

なんか行動範囲を制限させちまったようだ。

そこまでしなくてもいいんだがな。

女『では、そろそろ切るよ。まだご飯を食べていなくてね』

男「ん、そうなのか?」

女『ああ、言っていなかったかな、夏は……』

と、ここで。

ヤツの言葉は止まった。

女『……いや、なんでもない。それじゃあ』

えっ。

男「ちょ、ちょっと待……」

ガチャ。 ツーツーツー。

電話はあちらから、切られてしまった。

男「……なんだってんだ」

途中で言うのをやめ。

しかも、切ってきた。

男「……」

歯切れが、悪い。

言いかけたことは、言えよ。

なんというか、中途半端に電話が切れたせいか。

頭でヤツの言葉の先を考えている。

しかし。

聞いてないことはわかるわけもなく。

テレビの音だけが静かに流れた。

男「……よし」

風呂に入ろう。

俺は風呂が好きだ。

気分が悪くても風呂に入りたい。

シャワーでは物足りない。

というわけで今、風呂場に向かっている。

さっきのことなど忘れて、ウキウキして、

男「風呂ー!」

と、開口一番。

妹「へっ!?」

妹に遭遇。

妹「きゃ、きゃあああああああ!!」

なんでこうなるんだ……。

まさか、妹に土下座する日が来るとはな。

……もうこれ以上のことは言わない。

風呂から出てきた俺は、清々しい気持ちにはなれなかった。

さっきまでの忘れていた気持ちは、体を拭いている間にどんどんと戻ってきた。

いや、べつに妹の半裸を見たからとかじゃないからな。

アイツが言いかけた言葉は、なんだったのか。

男「……考えても答えは出ない、か」

さて、と。

明日に備えて寝るとするか。

ピンポーン。

そんな音が小さく聞こえた。

妹「お兄ちゃーん」

男「ん……」

妹「お兄ちゃんー!」

なんだ、妹よ。

朝っぱらから元気よく俺の名前を呼んで……。

妹「お兄ちゃん! 後輩さんが来たよ!」

男「!」

寝ぼけていた感覚は一気に覚め、俺はベッドから起き上がる。

時間を見ると、もう十時。

男「妹、なんで起こしてくれなかったんだ!」

と、少々投げやりに言ってみる。

もちろん本気で言ってないからな。

俺は妹に起こしてなどとは言ってないんだから。

嫌な兄だ。

妹「私に言わないでよ! それに……」

それに?

妹「無許可でお部屋に入るなって言ったのは、お兄ちゃんでしょ」

男「あ……」

そういえば前にそんなこと言ったな。

妹「私、八時くらいにドアの前で起きなよって言ったもん」

え、そうなのか。

いもぺろしえん

妹「お兄ちゃんが起きなかったのが悪いんだもん……」

シュンとした顔をする妹。

男「起こす時は全然部屋の中に入っていい。ごめんな」

妹「謝ることないよ。私の声が小さかったのかも」

妹……なんてイイヤツなんだ!

妹「お味噌汁とか温めるから、その間にお兄ちゃんは身だしなみを整える!」

男「えっ」

妹「髪の毛ハネちゃってるよ?」

触ってみると、重力に逆らうように毛先が真上を向いていた。

男「教えてくれてありがとな。直してくる」

妹「はいはいー」

あまりクシを入れたりはしないのだが。

ハネ方が尋常ではなく、このまま外に出たら確実に笑われるような感じであった。

俺が笑われてもいいんだが。

一緒にいる後輩が可哀想だ。

男「昨日は髪乾かして寝たはずなんだがなぁ」

しかし、一度入れただけですんなり直った。

ホッとして、次は顔を洗う。

ふう。

案外すぐに終わってしまった。

そして鏡を目線を移すと。

後輩「はわわわ……」

男「ぬおっ!?」

後輩「はっ、おはようございます、先輩っ♪」

男「な、なんでお前……」

後輩「あ、あの可愛い可愛い妹さんにあげさせてもらったんです」

だからってなぜここに来た。

後輩「先輩のパジャマ……というか、パンツ」

男「見るな」

指の隙間からめちゃくちゃ見てる。

後輩「そうですね! ヨダレが止まらないので見るのはやめておきます!」

ヨダレもやめろよ……。

まさか、夏休み中に妹以外の女子にパンツ姿を二回も見られるとは。

アイツもコイツも。

もっと恥じれよ。

なんでどっちも無反応なんだよ。

いや、反応はしてるけども。

俺の考える反応ではない。

そう考えると妹の反応が一番だな。

後輩「先輩、着替えますか? 見ててもいいですか?」

男「着替えは普通見ないもんだぞ」

後輩「えっ、見ちゃいけませんか!?」

当たり前だ。

妹「お兄ちゃん……ご飯できたよ」

妹が洗面所まで伝えにやってきた。

しかしパンツ姿の俺を見るとすかさず目をそらした。

これが普通の反応だぞ、後輩よ。

男「ん、了解」

そういうと、妹は早足で居間に行ってしまった。

後輩「もしかして、妹さんがご飯作るんですか?」

男「ん、まあな」

後輩「う、羨ましい! 私も先輩に毎日お味噌汁作りたいです!」

男「いつか作ってくれ。俺は着替えるから」

後輩「はーい♪」

……。

男「だから出てけよ! なんで見る気満々なんだよ!」

後輩「う、空気になってたつもりなのに、バレちゃいました」

なれるか! バレるに決まってるだろうが!

とよくわからんコントをやった後。服を着て、

男「ごちそうさまでした」

妹の美味しい朝ごはんを、

後輩「えへへ……」

後輩にガン見されながら食ったのであった。

男「諸々の準備をしたいから玄関で待っててくれ」

後輩「はい! 漏れ漏れの準備ですね!」

垂れ流しかよ。

晩飯食います。

地味にただの貼り直しではなく、変えていますのでよろしければ見てみてください。

食べたらすぐに戻ってきますので。

40びょうでな

この>>1は大きいか小さいかどうなんだろうな(ID的な意味で)

後輩と出かけるのは、実はこれで二回目だったりする。

一度は、文化祭実行委員の買い出し。

あの頃は大人しかったんだがなぁ……。

男「本性はアレだったとは」

俺の周りの女子は、何故変態ばっかりなんだ……。

男「うん、諸々オッケー」

……。

男「漏れ漏れ、オッケー……」

何を言ってるんだ、俺は。

男「おまたせ」

後輩「お股せ!?」

アイツと考えが同レベルだ。

聞き流そう。

男「とりあえず、浴衣っつっても色んな店があるが、どこに行くんだ?」

後輩「うふふ、見つけたんです、可愛い浴衣!」

男「ほほう」

後輩「それを買いに行こうと思ってます」

あ、でも、

後輩「先輩の好みがあったら言ってくださいね。私、そっちにしますから♪」

と、後輩は付け加えた。

男「え、いいのか」

お前が良いと思う浴衣の方がいいだろ。

後輩「いやあ、先輩に可愛いって言われるのが一番嬉しいですから……」

ごにょごにょ喋るな。

後輩「なんでもないです。えへへ……」

男「?」

よくわからんが、とりあえず後輩の目当ての浴衣がある店に行こう。

後輩「やっと私のターンですね!」

男「どういう意味だ」

後輩「先輩のお家では大人しくしてましたからね!」

あれで大人しい!?

嘘だろ!?

後輩はムフフと笑い、

後輩「私凄いですよー」

意味あり気な言葉。

……なにが凄いんだ。

男「まあ、とにかく早く行こうぜ。可愛い浴衣なら売れちまうかもしれないぞ」

後輩「そですね! じゃあ行っきましょー!」

勢いよく、腕を組まれた。

後輩「あっ」

すぐに離れて。

後輩「あはは、調子乗っちゃいました」

こういうとこはしっかりしてるな。

にしても胸が当たった……いや、なんでもない。

後輩「先輩と一緒にどこか行くのって、文化祭以来ですね」

男「そうだな」

後輩「あの頃の私はとっても静かでしたよね」

そうだったそうだった。

言葉数も少なくてこっちも困った。

会話が全然無くて、気まずかったことをよく覚えている。

ヤツと一緒にいると、こっちから話さなくても続くんだが。

柄にもなくこちらから話しまくった覚えがある。

俺のほうが年上だからな。

後輩「先輩会話続けようと必死で可愛かったですよっ♪」

そう思われてたのか……。

ニヤニヤと笑って、俺を見ている。

男「仕方ないだろ、お前だんまりきめこんでたし」

後輩「あの時は、まだ先輩のことよく知らなかったから」

だからなのか。

まあ、最後には仲良くなれたんだよな。

そして、その日を境に、後輩はこの下ネタキャラになったわけだが。

ムッツリからオープンになったのは良いことなんだろうか……?

後輩「じーっ」

男「ん」

ボーッと後輩を見ていたら、見つめ返された。

男「な、なんだ」

後輩「先輩、何考えてます?」

男「いや、お前も変わったなと思って」

後輩「あっ、気づきました?」

気づいたって、様変わりしたからな。

後輩「今日は思い切って勝負下着で来たんですよ!」

!?

いや、そっちじゃなくてだな。

後輩「やっぱり先輩はえっちぃですね♪」

男「ちょっと待て」

後輩は少し歩くスピードを上げた。

後輩「えへへ、捕まえてくださーい☆」

おい、走るな!

海のカップルか俺達は!

勝負下着のことを言ったわけじゃないんだぞ!

追いかけてみると、後輩のやつ、意外に速い。

でも。

追いつけないわけではない。

男「おいっ」

肩を掴む。

後輩「ひゃっ」

ビクっと体を縮ませて。

後輩「せ、先輩、速いですねー」

振り向いて、白い歯を見せた。

爽やかな笑顔だな。

男「俺が言ったのは、勝負下着のことじゃない」

後輩「へ?」

本当にわかってないんだな。

男「買い出しの時と今じゃ雰囲気が違うってことだ」

後輩「あーなるほど!」

ポンッと手を叩いて、納得した。

が、そのあと首を傾げて、

後輩「んー、先輩なら下着見抜けると思ったんですけどねー」

見抜けるかよ。

俺は超能力者か何かか。

後輩「色はなんだと思います?」

男「は?」

後輩「勝負下着のですよっ!」

いや、多分そのことだと思ったが。

後輩「えへへ、わかりますか?」

男「わかるかよ」

後輩「じゃあ、テキトーに答えちゃってください!」

勝負下着だろ……。

色は限られるはず。

個人的には赤か、黒か……。

って、本気で考えてどうする。

テキトーに、何も考えずに。

思った色を……。

男「えーっと薄ピンクとか」

後輩「えっ……」

うっ、テキトー過ぎたか。

後輩「せ……正解です!」

うぇっ!?

後輩「先輩もしかして、透視とかできちゃいます!?」

男「んなわけあるか!」

当てた自分が一番驚いてるんだから。

後輩「そういえば、どうして薄ピンク色、なんですか?」

男「えっ……」

何も考えずにテキトーに言ったから。

別に理由なんてものはないんだが。

男「な、なんか似合いそうだなと思っただけだ」

我ながら、苦し紛れな答えだ。

後輩「ほ、本当ですか?」

な、なんで目を輝かせてるんだ?

男「あ、ああ、そうだぞ」

後輩「……えへへへ」

その不気味な笑い声はなんだ。

男「……?」

後輩「つまり先輩は、私の下着姿を想像したってことですよね?」

男「!」

後輩「似合ってる……えへへへへ」

喜び過ぎだろ!

逆に想像されたことには嫌がれよ!

いや、想像してないけども!

後輩「あ、似合ってるかどうか、先輩の目で確かめますか?」

男「ノーサンキューだ!!」

脱ぐ体勢に入るな!

脱ぎそうになった後輩を止めつつ、進んでいくと俺達は目当ての店に辿り着いた。

『浴衣祭り!』という文字が大きく書かれており、人もたくさんいる。

後輩「はう! こんなに人がいるとは思いませんでした!」

確かに、凄いな。

これ全員浴衣買うために来てるわけじゃないだろうが、それでもだ。

男「お前の目当ても誰かが買っちまってるかもしれないぞ」

後輩「そ、そうですね! 早く行きましょー!」

それにしてもみんな、浴衣買うんだな。

俺も甚平でも買うかな。

人波、というほどではないが人口密度の高い店内を進む。

後輩「あー!!」

後輩が大きな声を上げた。

男「どうした?」

後輩「ううっ……先輩……」

俺の方を向くと目に涙を溜めて、

後輩「か、買われちゃったみたいですぅ……」

ありゃりゃ。

一足遅かったか。

後輩「やっぱり可愛いから買われちゃったんですよ」

鼻をすすりながら、後輩は視線を落とした。

見てないからわからんが、可愛かったのだろう。

男「まあ泣くなよ。まだたくさんあるんだから」

他にも色々あるじゃねえか。

後輩「そ、そうですよね! よーっし、探すぞー!」

というか、コイツなら。

色物じゃなければ、全部似合いそうだし、可愛いと思うんだけどな。

後輩「うーん……」

色んな浴衣を見ても、後輩は一向に首をひねったままだ。

後輩「んー……」

男「ダメか?」

後輩「なんだか、知らず知らずのうちに目当てだった浴衣と比較しちゃうみたいです……」

そんなに良かったのか、その浴衣。

男「……ん?」

この浴衣……。

ヤツに似合いそうな――。

後輩「先輩?」

男「!」

後輩「その浴衣が、いいんですか?」

男「えっ……あ、いや」

後輩「?」

男「な、なんでもない。気にするな」

何を考えてるんだ俺は。

後輩の浴衣を探してるんだぞ。

今ここにいないヤツのことを考えるなよ。

後輩「……?」

男「えーっと、後輩は明るいから、こういうピンクとかが似合うと思うぞ」

後輩「ピンクですか? えへへ、下着もピンクの淫乱だと思ってるんですか?」

何故そう持っていく。

後輩「大正解です!」

ビシっと人差し指をさされる。

正解かよ!

淫乱ピンク。

後輩「もー先輩の頭の中の私、ピンク色に染まっちゃってるんじゃないですかー?」

男「そんなことはない」

明るい色で可愛い、と考えるとピンクが真っ先に出るだけで。

男「ん、こういうのいいんじゃないか?」

後輩「それですか? でもピンクじゃないですよ?」

別に俺はピンクにこだわってないからな。

手にとって見る。

うん、結構可愛い模様でいいじゃないか。

男「あ、でも、俺の好みだからな、これは」

後輩「え……先輩の好みですか?」

男「え? うん」

そうだけど。

言うとその浴衣を手にとって、

後輩「ちょ、ちょっと着替えてきます!」

急いで更衣室に駆けて行った。

男「お、おう」

もういない後輩に、俺は遅れて声を出した。

気に入ってくれたのだろうか。

しかし急過ぎてちょっと焦っている。

男「そんな簡単に決めていいのかねえ」

値段を見てみると、案外安い。

男「ふーん」

これなら高校生でも安心の値段だな。

男物の浴衣や甚平を見ていること数十分。

後輩「せんぱーい!」

ん、後輩の声だ。

後輩「えへへ、着付けしてもらってたら遅くなりました。ごめんなさい」

男「そうか」

深々と頭を下げた後、後輩はもじもじと体を揺らして、

後輩「えーっと、どうですか?」

と聞いてきた。

水色の浴衣を身にまとった後輩。

凄い。

胸のあたりがめちゃくちゃ盛り上がっている。

男「可愛いと思うぞ」

後輩「……」

あれ、黙ったぞ?

なんか悪かったか?

後輩「どうしましょう……先輩」

男「あん?」

後輩「……嬉しすぎてニヤニヤしちゃいますよぉ!!」

顔を真赤にして喜んでいるようだ。

恥ずかしそうに顔を手で抑えて、数秒。

後輩「ふー……」

男「大丈夫か?」

後輩「えへへ、大丈夫です!」

クルリと一回転して、

後輩「これ、買います!」

男「え、いいのか?」

後輩「はい! だって、先輩、可愛いって言ってくれたじゃないですか」

確かにそうだけども。

後輩「だから、買います!」

そんな理由でか。

男「まあ、後輩が良いならいいんだけどな」

最後に決めるのは後輩だし。

別に、いいんだけどな。

それにしても。

胸、デカいなぁ。

後輩「ふふーん♪」

上機嫌で、鼻歌をする後輩。

着付けの仕方などを色々教えてもらうと、結構な時間になっていた。

男「浴衣、歩きづらくないか?」

後輩「大丈夫ですっ。ちょこっと、歩幅が制限されますけど」

オマケに下駄まで買って、もう夏祭りは万全って感じだな。

通り過ぎる人がみんな、「どこかで祭をやってたのかな?」と思いながら二度見する。

オマケに後輩は美人だから、オトコは尚更だ。

今、後輩を家に送り届けるところである。

後輩「今日は最高です!」

手を組んで、幸せそうな顔をした。

後輩「先輩に一緒に浴衣買いに行けたし、似合ってるーって言われるし!」

そんなに言われると照れるな。

後輩「しかも淫乱ピンクだと思われてたなんて♪」

おい。

それは嬉しくないだろ。

男「お前の嬉しいの基準がわからんぞ」

後輩「え? 先輩にナニかされたら嬉しいですよ!」

ナニって何だ。

後輩「先輩に叩かれても、殴られても、蹴られても嬉しいです!」

とんだプレイヤーだ!

男「お前、変な趣味持ってるんだな……」

後輩「ふふ、嘘です! ほんとーはあまーい言葉を言われたりするとキュンッってしちゃいます!」

にひひっ、と笑って、後輩は頭を掻いた。

さるよけ

甘い言葉ねえ。

後輩「でもでも」

両手を横に振って。

後輩「今はこうして、先輩の隣にいれるのが嬉しいです!」

男「……そうか」

なんというか、照れるな。

後輩「いつか一つになれたらいいですね!」

急にエロに持っていくな。

後輩「……あっ!」

目をハッと見開いて、後輩は深い溜息をついた。

男「ど、どうした?」

後輩「うう、夏祭りじゃないのに、先輩に浴衣をお披露目しちゃうなんて……」

口を震わせて、後輩は肩を落とした。

後輩「やっぱり、一人で買いに行けばよかったなぁ……」

がっくりと、うなだれた。

男「ま、まあまあ、そんなに落ち込むなって」

後輩「だって、やっぱり新鮮さに欠けるじゃないですか!」

そうだけども。

後輩「先輩に一目見ただけで『やべえ、犯したい!』って思われたいじゃないですか!」

男「いや、それはならないぞ」

別に浴衣姿を見て。

犯したいとはまったく思わないからな。

後輩「ええ! 浴衣姿でエッチしたくないんですか!?」

どこに衝撃を受けてるんだ。

支援

後輩「私はしたいです! 穴場だって調べたんですから!」

男「お前、祭の楽しみ方間違えてるぞ!」

後輩「わ、わかってますっ。人魚救いとか、ですよね!」

男「金魚掬いだ!」

人魚救ってどうすんだよ!

後輩「そして、物陰でエッチです!」

男「お前、夏祭り知らないだろ!?」

段階ふっ飛ばしすぎだ!

気持ち悪い

後輩「うう……わからないです」

男「……後輩は、夏祭り行ったことないのか?」

後輩「あるんですけど、男の人行ったことないんです」

え、ないのか?

男「後輩なら、何回か行ったことあると思ってたけど」

後輩「そんなこと、ないです」

ふーん。

後輩「……先輩以外の人、好きになったことないですから」

うーむ。

声が小さくて聞こえんぞ。

そんなこんなで、後輩の家に着いた。

後輩「あーあ。あっという間に素敵な時間はおしまいです……」

男「結構歩いたけどな」

後輩の家を見るのも、これで二回目だ。

文化祭の時も、家まで送ったからな。

後輩「えーっと、こほんっ!」

わざとらしく咳をする後輩。

真剣な目で、俺を見つめて。

後輩「先輩、私と、夏祭りに行ってください!」

男「……」

俺は、返事に困った。

ヤツと行くと約束したけれど。

後輩は俺と行きたがっている。

だからといって、三人なんてのはダメだ。

友達の友達なんて、一番イヤな状況だからな。

男「俺は……」

後輩「……」

後輩は、頭を下げたままだ。

男「……わかった、行こう」

けれど

後輩「……やっ……たぁぁっ!」

浴衣姿でピョコピョコと跳ねる後輩。

おうおう、また胸が揺れまくってるぞ。

後輩「先輩、嬉しいです!」

そして。

つまんねーしキモいのによく続けられるな
すごいメンタル

ギュッと、俺を抱きしめた。

男「!」

後輩「……あっ」

そして、すぐに離れた。

後輩「あの……嬉しくて、つい……私ったら」

男「あ、ああ……気にするんな」

後輩「……ありがとうございます、先輩」

ニコッと満面の笑みで。

彼女はまた、頭を下げた。

後輩「そ、それじゃあ、今日は送ってくれてありがとうございました!」

男「うん」

後輩「夏祭り、楽しみにしてます!」

男「俺もだ」

そして、手を振りながら彼女は家に入った。

男「……ふぅ」

さて、と。

男「そろそろ出てきたらどうだ?」

sssp://img.2ch.net/ico/anime_miruna_pc.gif
気持ち悪いわ

俺は曲がり角の方を見つめて、そう言った。

「ふふっ」

よく聞く、笑い声がした。

女「案外バレるもんだね」

男「最初からバレてるぞ」

ずーっとつけてたくせに。

変態ストーカーめ。

男「なんでつけてたんだ」

女「昨日、後輩くんもやっていたからね」

やれやれ。

本当の理由は、それじゃねえだろ。

女「夏祭り、OKしたんだね」

男「……ああ」

聞いてたか、やっぱり。

女「まあ、浴衣を一緒に買ったら、嫌でも一緒に行かないといけないよね」

男「別に、後輩と行くのは嫌じゃねーよ」

女「……そうか」

男「……わりぃけど、お前とは行けなくなった」

女「うん、わかっている」

彼女は今日も今日とて、ミニスカートだった。

女「奇遇だね。ボクも君とは行けなくなったんだ」

男「え?」

女「誘われてね、他の男の子に」

男「へえ」

良かったじゃねえか。

女「だから、ボクは君に断りを入れようと思ってきたんだよ」

男「そうかい」

女「……」

ヤツは黙ってこちらを見て。

女「まさか、君と彼女が、抱き合うところを見るなんて、思いも寄らなかったよ」

と、肩をすくめながら言った。

男「あれは後輩がだな」

女「言わなくてもわかるさ」

言葉を遮られた。

これはまずいおののきよつぎで再生される

女「ボクには、関係のないことだしね」

ヤツは変わらず笑顔で。

そう言った。

女「それじゃあ、ボクは帰るよ。それが言いたかっただけだから」

なんなんだコイツ。

この、バカにしたような態度。

こっちだって、反撃してやる。

男「じゃあ、夏祭りにはお前を誘った物好きにあわせろよな」

女「……」

帰ろうとしていたヤツは、こちらを振り返って。

鋭い目つきで俺を見た。

女「……うん、そうだね」

と、笑顔で言った。

でも、あれは。

いつもの笑顔とは、まったく違っていた。

男「……」

なんだってんだ、アイツは。

ぺろいもしえん

今更だけどIDがUSB

ヤツの行動の不可解さに俺は疑問を抱きつつ、家に帰った。

妹「 お そ い 」

お怒りの妹は、家のドアの前に立っていた。

男「い、妹……ずっとそこにいたのか?」

妹「蚊に刺されまくった!」

手で噛まれた箇所であろう場所を掻きむしっていた。

妹「全部、お兄ちゃんのせいだかんね!」

いや、待ってたのはお前が悪いんじゃ……。

妹「何か文句でも?」

男「……ありません」

妹は本当に心配症で。

俺の帰りをいつも待っていてくれる。

でも、ちょっと抜けていて。

やっぱり妹なのだなと思う。

男「待っててくれてありがとな」

妹「あ、あのさ、お兄ちゃん」

男「なんだ?」

妹「わ、私にキンカン塗って!」

そんなこと。

お安いご用だ!

というか、嫌と言われても塗ってやるぜ!

次の日。

女「だから、こうやってやると答えが導けるんだ」

男「……」

女「ん、どうしたのかな?」

何故お前がいる。

女「ふふっ、そんなにイヤらしい目でボクを見ないでくれ、興奮するだろう」

いや、そんなことはどうでもいい!!

男「なんでお前がここにいる!?」

エルフの騎士は出ますか?

女「え、宿題を一緒にやるためだろう?」

男「いや、そうだけど……」

なんていうか、その。

昨日あんなことがあったのに、なんで。

女「ボクに見惚れるのはいいけれど、もう少し宿題にしっかりと取り組んで欲しいなぁ」

誰がお前なんかに見惚れるかよ。

女「もしかして、昨日のこと、気にしていたりするのかな?」

ああ、そりゃ気にするだろう。

女「気にしなくてもいいんじゃないかな。お互いのことなんだから」

男「そうだけど」

女「相手に悪いって、思っているのかい?」

男「……」

ヤツはクスッと笑って、

女「君は、優しいね」

呆れるくらいに。

と、一言余計なことを言った。

うーん…
物書きとしてゆるせないんだが
何この幼稚な文章

男「……いいのか?」

女「うん」

ヤツはそう言って、宿題に視線を戻した。

男「でも――」

女「これ以上は、もう言わないよ」

男「……」

そうして、ヤツはおしゃべりな口を閉じた。

このハイペース更新とてもいい
支援

夏祭り前日にはついに宿題は全部済ませることができた。

結局、ヤツと俺は宿題以外の無駄話はなかった。


そして、夏祭り当日――。


ピンポーン。

夕方頃に、家のベルが鳴った。

妹「お兄ちゃーん、来たよ~」

男「はいはい」

階段を下りて、居間に行くと。

妹「じゃじゃーん!」

男「お、浴衣じゃないか」

妹「ふふん、どーお?」

男「可愛いな。よく似合ってる」

妹「えへへ、でしょでしょ?」

ん、でも浴衣ってことは……。

妹も夏祭りに行くのか?

誰と!?

男「な、なあ妹? もしかしてオトコができたのか!?」

だからそんな可愛い浴衣を……?!

お兄ちゃん認めないよマジで!

妹「なわけないでしょ! 友達と行くの! もちろん女の子の!」

……な、なーんだ。

寿命縮むかと思ったぞ。

妹「それよりも、いいの、待たせて」

男「ああ、そうだったな」

妹「……そういえばさ、お兄ちゃん」

男「ん?」

妹「なんで、後輩さんなの?」

男「……え?」

どういうことだ?

妹「う、ううん、なんでもないよ」

そ、そうか?

それならいいんだけど

妹「行ってらっしゃい」

男「おう、行ってきます」

何が言いたかったのかは気になるが、まあいいか。

玄関を開けると。

後輩「えへへ、こんばんは!」

浴衣姿の、後輩がいた。

男「おう」

後輩「えへへ、着付けが上手くいかなくて、時間かかっちゃいました」

男「自分でやったのか?」

後輩「結局、お母さんにやってもらいました……無念です」

着付けって難しいらしいから、後輩一人でできたら凄いよなぁ。

男「さて、今日は祭の回り方教えてやるよ」

後輩「はい、ご指南お願いします!」

俺は周りを見渡した。

ヤツの姿は、ない。

後輩「先輩?」

男「! な、なんでもない。行くぞ!」

後輩「ブ、ラジャー!」

五歳児か。

夏祭りというものは、本当に華やかで素敵だ。

祭囃しの音。

色んな所から聞こえてくる人々の声。

盛んな出店の立ち並ぶ通り。

男「あー、夏祭りだ!」

気持ちがスカッとする。

ベタベタとしているのに、なんてこう爽やかな気持ちになるんだ!

後輩「うひゃー凄い人だかりです!」

男「ああ、どこ見ても人、人、人、って感じだな!」

この、スムーズに前に進めないのも、夏祭りの醍醐味だ!

すいません、風呂に入ってきます。

すぐに戻ってきますので、少々お待ちを。

保守

保守
>>1の書くボクっ娘いつも楽しく読ませてもらってるよ

女「君が思っているよりも、ボクは……」

女「君が思っているよりも、ボクは……」 - SSまとめ速報
(http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1377316958/)

男「さーって、最初は何をやろうかな!」

後輩「先輩、ノリノリですねぇ♪」

当たり前だ。

賑やかなところが大好きだからな。

こういうところはガキなんだよな、俺。

男「お、射的! 行こう後輩!」

後輩「りょーかいです!」

人だかりは本当に凄まじく。

男「うおおお、すげえ……」

後輩は大丈夫か?

後輩「せ、先輩ー!」

浴衣のせいであまり進みがよくないみたいだ。

男「ほ、ほら、手、掴まれ!」

後輩「はいっ!」

手をギュッと持って、引っ張る。

後輩「きゃっ」

ググっと、後輩が近づいた。

後輩「あっ……」

唇と唇が、擦れ違いそうな距離。

男「すまん!」

だが、そんなことは言っていられない。

人波は、どんどん動いている。

後輩、悪いが先に進むぞ!

とにかく、射的場の前に行くんだ。

完結させろよ
クズ野郎

なんでまた書いてんの?
馬鹿なの?

男「はぁはぁ……」

後輩「はひぃ……夏祭りって、大変ですね……」

やけに人がいるな……。

今年は花火もあるからなのか?

と、いうわけで射的場にやってきたわけだが。

男「おーし、やるぞ~」

おっちゃんに金を払う。

もちろん、後輩の分も。

後輩「あ、あの、先輩」

男「ん?」

後輩「これ、どうすればいいんですか?」

男「まさか、やり方知らないのか?」

後輩「は、はい」

へえ。

でもまあ、女の子ってのはやらないだろうしなぁ。

男「もらった銃にコレを詰めて、狙いを定めて……」

ポコンッ。

見事命中。

後輩「うわー、凄いです! よーし、私もっ!」

彼女も、狙いを定めて撃つ。

しかし、カスリもしない。

後輩「あ、あれれ?」

男「もっと、こうするんだ」

ポコン。

また命中。

後輩「えいっ!」

頑張って撃ってみるが後輩は、まったく命中せず。

男「まあ、初めてだからな」

俺だって子どもの頃は上手くできなかったしな。

いや、後輩と俺の子ども時代を比較するのもなんだか違う気はするけど。

そして結局。

俺は五発中四発命中。もちろん、ちゃんと倒した。

後輩(女子はオマケで八発)は一つも当たらなかった。

後輩「先輩、凄いですね~。私なんて当たりもしませんでした……」

男「はは、俺なんてまだまだだ、アイツなんて――」



おい、何を口走ろうとしている。

男「――つ、次行こう次!」

頭によぎった誰かを振り払って、俺は後輩と連れ立って射的場を後にした。

男「さて、次はどこに行くか?」

手を繋ぐのがデフォになった人だかり移動。

とりあえず、後輩が気になった所にでも……って、あれ?

後輩の手、こんなに感じだったか。

男「……!」

そこには、見知らぬ女性の手だった。

男「わわ、ごめんなさい!」

間違えて、違う人の手をとってしまったみたいだ。

男「……!!」

まずい。

はぐれた。

人混みの中を逆戻りする。

男「後輩ー!」

携帯を繋いでみる。

ダメだ、人が多すぎて全然繋がらない。

男「どこか見晴らしのイイトコは……」

ん、あれは……。

妹か?

ちょうどいい。

妹にも一緒に探してもらおう。

一人より二人だ。

男「おーい、妹!」

妹「!」

男「一人でどうした? お前ももしかしてはぐれ……」

パシンと。

頬を思い切りぶっ叩かれた。

ちゃんと完結させろよ

妹「バカ!」

男「え」

妹は、怒りの頂点と言えるくらいに。

顔を真赤にしていた。

男「な、何が」

妹「お兄ちゃんのバカバカバカ!」

ま、待て妹。

全然意味がわからん。

いもにゃんきゃわわぺろぺろ

妹「さっき、女さんに会ったよ……」

妹の声には怒気が込められている。

男「……アイツに?」

妹「一人で祭、来てるみたいだった」

え……。

なんでだよ。

アイツは誘われたんじゃ……。

男「な、なんで一人で祭なんか……」

妹「気づかないの?」

そして、もう一度、妹は俺の頬をぶっ叩いた。

妹「バカ! ……女さんはね、お兄ちゃんと行きたかったのよ!」

男「!」

妹「それなのに何? お兄ちゃん断ったんでしょ?」

男「そ、そんなの俺の勝手だろ……それ、アイツが言ってたのか?」

妹「言ってないわよ! でも……わかるの、私には!」

勝手な憶測じゃねえか、それ。

妹「でも、女さん言ってたよ」

男「……なんて?」

妹「『行きたい人といけないなら、一人の方がマシだ』って」

男「……」

妹「バカ兄貴!!」

舌を出して、妹は走っていった。

男「……」

電話が鳴った。

誰からの着信かも見ずに、俺は応答した。

へったくそな文章

恥ずかしくないの?

男「もしもし」

後輩『も、もしもし!? 良かったぁ、やっと繋がりました!』

男「……後輩か!」

後輩『はい! 今どこにいますか?』

……はは、何考えてんだ。

俺は、今日後輩と来たんだぜ。

なんでアイツのことなんか、相手しないといけないんだよ。

男「ああ、俺は……」

アイツが一緒に行きたいヤツが誰かもわかんねーのに。

だから、俺は……。

男「悪い、後輩。俺、行かなきゃいけないところができた」

後輩『え?』

男「ごめん、それじゃあ」

なんでだ。

何やってる俺。

どうして、俺は。

アイツを、探してるんだ。

男「女!」

しらみつぶしに探していくしかない。

でも、あいつ小さいから見つかるだろうか……。

後輩のことを見捨てたんだ。

俺は最悪なことをしているのはわかってる。

でも。

どうやら俺は。

自分の気持ちに嘘はつけないみたいだ。

色んな場所を探してみても、まったく見つからない。

男「はぁはぁ……どこだ、女……」

もう、通りは全部探した。

男「あとは、どこだ……」

ふと。

目に留まったのは。

男「……神社?」

あそこはあんまり人気もない。

いるわけない。

でも。

それでも、見に行くんだ。

わずかな望みを賭けて。

男「はぁはぁ……」

神社内は祭の間は立ち入り禁止と書いてある。

でも、周りには人はいないので、とりあえず入ってみる。

こういうところ、アイツは好きだから。

明かり一つない場所へ進んでいく。

ちゃんと一歩ずつ確かめて、歩いていく。

男「女……」

だんだん、目が暗闇に慣れてきた。

どこにも、人影はない。

やっぱり、ここにもいないか。

くそっ、どこにいるんだ。

もしかして、もう帰っちまったのか?

男「……ん」

目の前の大きな石の上に。

体を小さくして体育座りをしているのは……。

男「お、女!!」

女「!」

男「こんなとこにいた……って、おい!」

なんで逃げる!

男「ま、待てよ!」

クソ、逃げ足が速い……!

男「この……やろう!」

更に全力を出して走る。

だが。

女「うわっ」

女が何かに転んで。

男「ちょ!?」

それを追いかけていた俺も、スピードを落とし切れずに、女の上に転んだ。

女「……!」

ヤツは俺をどかしてすぐさま逃げようとするが。

ガシッと、俺はヤツの腕を掴んでいた。

女「は、放してくれ!」

男「ダメだ、放さねえ」

絶対に、放さない。

進まない

女「……」

ポタリと、俺の腕に何かがこぼれた。

これは、涙か?

女「っ!」

暗くてよく見えないけれど。

男「……お前、泣いてるのか?」

女「……そ、そんなわけ、ないだろうっ」

と。

相当な鼻声で、ヤツは言った。

女「……」

男「なんで、泣いてるんだよ」

女「ボクは、泣いてなんか、ないっ」

いや、泣いてるだろ。

ほぼ何言ってるか聞き取れなかったぞ。

女「……ボクは、最低だ」

男「な、なんで?」

女「こうやって、泣いて、君を困らせてる」

いもちゅしえん

男「そ、そんなことねえよ」

女「優しくしないでくれ、勘違いするだろう!」

違う、そうじゃなくて。

男「こっちを見ろ!」

肩を掴んで、無理矢理こちらを見させる。

こんなこと、言うのはめちゃくちゃ照れるんだ。

だから、デカい声で言ってやる。

それで、照れ隠しのつもりだ。

男「いいか、俺はお前のことが好き――」

ドォーンっ

俺の声を遥かに凌駕するした、ドでかい音。

男「は、花火!?」

な、なんつータイミングで来るんだよ!?

鮮やかに描かれた一瞬のアートに。

俺の言葉はかき消された。

女「……綺麗だ」

男「あ、ああ……」

花火は、とても間近で撃たれているようだ。

そ、そんなことより。

男「とりあえず、聞け。俺は――」

女「待って」

顔をゆっくりと拭いて。

そっと、俺の唇にヤツは指を当てて。

女「あとで、ゆっくり聞かせて欲しいな」

と、ニコッと笑って言った。

暗いのに慣れていたからか、わからないけれど。

その笑顔だけは鮮明に見えた。

花火は数十分、空を描きつづけた。

それはもう綺麗で。

俺と彼女は、釘付けになった。

女「……ここ、穴場みたいだね」

男「そうだな」

ちょっとばかし音はデカいが、花火もデカい。

女「いいところ、見つけちゃったね」

男「……そうだな」

花火が終わった。

最後は一番大きく、とても儚く消えていった。

女「終わったね」

男「そうだな」

女「さて、と。それじゃあさ」

なんだ?

女「お祭、楽しもうよ」

と、俺の手を握って。

頬を染めながら、微笑んだ。

やっと明かりのある場所に着くと。

男「! お前、それ……!」

女「?」

俺が、似合うと思っていた浴衣だ。

想像以上に似合ってる。

だが、恥ずかしいので言わない。

言いたくても、絶対に無理だ。

このスレ昨日もあったろ
SS速報いけやクズ

そしてヤツは。

射的では、八発全部景品をゲットし。

金魚は俺の二倍以上取り。

ヨーヨーだって俺以上の数を取った。

はは、敵わない。

コイツには何も敵わないけれど。

それでもいいと思った。

男「なんでそんなに上手くできるんだ?」

女「んー、あげたい人がいるから、かな」

そう言って、俺に射的の景品、金魚、ヨーヨーを全部渡して。

女「だから、取れるのかもね」

……なるほどな。

祭はどんどん人がいなくなっていき。

女「そろそろ、帰ろうか」

男「ああ、そうだな」

俺達も帰ることにした。

余談だが。

後輩の相手は、妹がしてくれたらしい。

『先輩の妹さんと一緒に遊べるなんて!』と機嫌を良くしたようだ。

んー、俺をどういう対象で見ていたんだ、アイツは。

神原臭が…

そして、帰り道のこと。

女「それじゃあ、聞かせてもらおうかな」

男「あん?」

なんのことだ。

女「花火のせいで、言えなかっただろう?」

男「……言いたくない」

くそ、思い出すなよそんなこと。

女「言ってくれないと、抱きしめちゃうよ」

おーおー、それは困った困った。

男「……わかったよ」

俺はヤツの方をしっかりと向いて。

男「俺はお前が好きだ。好き過ぎていつもお前のことばっかり考えちまう」

女「胸が小さくても?」

男「好きだ」

女「同級生でも?」

男「好きだ」

女「……ふふっ」

そして、ヤツはギュッと抱きついてきた。

結局抱きしめるんじゃねえか。

こうなったら、俺も強く抱きしめてやる。

男「それにしても、なんであんな嘘ついたんだよ?」

女「なんのことだい?」

男「男子に誘われたって」

女「……そ、それはだね」

こほん、と一つ咳払いをして。

女「君が思っているよりも、ボクは……」

焼き餅やきなんだ。

と、下を向いて言った。

やれやれ。

女「だ、だから見えを張ってしまった……今ではとっても情けない」

はぁ。

男「まったく可愛いやつだ」

女「め、面と向かってそんなこと言わないでくれ!」

恥ずかしいだろう、と。

顔を真赤にした。

尚更可愛いじゃねえか、バカ。

男「あと、この前の電話はなんだ」

女「え?」

男「最後に言いかけた言葉だ」

女「……ああ、あれね」

さっきの真赤な顔とは打って変わって、ニヤリと企み顔。

女「夏休みの間、ずっと親がいなくてね」

男「……え?」

女「家にはボクしかいないんだ」

えーっと、つまりは……?

女「……一線、越えてみるかい?」

と、彼女が俺の腕を柔らかく掴んだ。

女「……ねえ?」

男「バカ言うなよ」

女「あう」

俺達はまだ付き合い始めたばっかりだろ。

そんなの、まだまだ先だ。

男「……そうだな」

女「?」

俺達は、まだこれで充分だ。

チュッ。

女「! ……ふふっ」

暗い夜。

俺達は二人手をギュッと握り合って帰った。


END

ちゃんと見てたよ
お疲れ

大層乙であった

つまんない
死んで

おしまいです。

序盤まで書き溜めていたのに、最後は即興でやったため、グチャグチャな文章になってしまいました。反省。
正直最後の展開は完全に巻きで書いてました。

次は、しっかりと書き溜めをしてからスレを立てたいと思います。

それでは。

( ^ω^)おっおっおっおつ

待ってた
乙でした

煽りが単発のみとかそんなならそっ閉じすればいいのにww


やっとスレタイの続きが読めた

わざわざ立て直してまでってほどではなかったな

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