苗木「どきどき修学旅行?」 (1000)

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苗木「どきどき修学旅行?」
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コトダマ


『モノクマファイル』
被害者は石丸清多夏。外傷は喉の刺し傷のみ、体内から薬物反応あり。

『苗木、舞園の証言』
停電前、二人は事務室に居たが潜んでいた何者かに舞園が襲われた。
苗木は彼女を抱きかかえる事で助けようとするが間に合わず、彼女はスタンガンで気絶させられてしまう。
その後、停電が発生し、苗木もすぐに為す術無く同じように気絶させられてしまった。
相手は暗闇の中でも正確に苗木を襲ってきたことから、現場に残されていた暗視スコープを持っていたと思われる。
白い布を被っていたらしく、顔と体型はハッキリしない。

『死体の様子』
刺された首からの出血はまったく乾いていなく、ほとんど時間が経っていない様子。
死斑もなく、体温も下がっていない。死後硬直もほとんど進行していない。
傷口は苗木が握りしめていたナイフとも合う。
全身をロープで縛られ身動きの取れない状態で、口にはガムテープが貼られている。

『鍵のつまみに付いたテープ』
トイレはつまみを捻って鍵をかけるタイプだが、そこにテープが付着していた。

『床に敷かれた布』
トイレには白い布が敷かれていた。モノミによると、元々そこにあったものではないらしい。
布の下にもまだ乾いていない血液が大量に広がっていた。

『乾いた血痕』
床と石丸の口元に、乾いた血痕が残っていた。

『暗視スコープ』
トイレに残されていたもの。暗闇の中でも良く見える。

『エアコンのタイマー』
大広間と事務室のエアコンのタイマーは同じ時間に設定されていた。
事件当時はタイマーが起動してから少ししてブレーカーが落ちたが、その後の実験では起動した瞬間に落ちた。

『三つのアイロン』
倉庫ではアイロンが三つコンセントに繋がっていた。

『消えたテーブルクロス』
事務室にあった丸テーブルに敷かれていたテーブルクロスが停電後には無くなっていた。
このテーブルクロスは防水性が高く、大量の水分も弾く。予備は二枚あり、どちらも倉庫に残っていた。

『台車の金具に挟まった髪の毛』
事務室にあった台車の金具に髪の毛が挟まっていた。髪質から石丸のものと思われる。
普通に手で押していたらありえない、低い位置の金具なのだが……。

『肉のドリップ』
厨房にて苗木と朝日奈で料理を作っている時に、苗木が肉のドリップをたくさん出してしまった。
いわゆる旨味成分であり、これが出てしまうと味が落ちる。その後苗木が処分した。

『ゲテモノジュース』
石丸が葉隠から受け取ったジュース。葉隠以外の掃除当番全員と共に大広間で休憩している時に口にした。
しかしそのマズさ故か、直後に取り落としてこぼしてしまう。そして気分が悪くなったようで、そのままソファーの上で休む事になる。

『ミステリーサークル騒動』
旧館の掃除中に、葉隠がミステリーサークルを見つけたと言って、旧館の裏手に石丸以外の掃除当番を呼び出した。
石丸はそのまま大広間のソファーに寝かしておき、苗木もトイレに行ってから向かったので他のみんなよりも遅れて行った。
朝日奈や桑田が最後に石丸を見たと思われるのはこの時らしい。

『葉隠、桑田の証言』
パーティー中に葉隠と桑田の二人は、倉庫へ何か遊べるものがないか探しに行った。
その時、三つのアイロンがコンセントに繋がっている事に気付いた葉隠は、電気がもったいないと全て引き抜いた。

『モノミの証言』
モノミは旧館の掃除中は外の入り口前、掃除が終わった後は外の入り口前と大広間の扉の前を二体で見張りをしていた。
耳が良いので、旧館の中に居ればどこの扉が開いたのか聞き取る事ができる。十神だけは一度も旧館に入ることがなかった。
最後に石丸を見たのは、葉隠から受け取ったジュースを持って旧館に入って行く時。

停電中の各部屋の扉の開閉については、事務室→トイレ→大広間→事務室の順番。
最後の事務室の扉以外は全て開いてすぐ閉まった。最後の事務室だけは開いたままで閉まる音はしなかった。

『白い粉』
とある人物のコテージのゴミ箱に透明な袋が捨てられており、中に白い粉が少量残っていた。

『商売文句を書いた紙』
とある人物の商売関係のもの。

『脅迫状』
石丸に出された脅迫状。ワープロで打ったと思われる綺麗な字で書かれている。
“今夜、殺人を起こす。超高校級の風紀委員ならば止めてみせろ。もしこれを他の者に話せば、無差別に殺す事になるだろう”

『何かの紙袋の切れ端』
苗木の部屋のベッドの下に落ちていた何かの紙袋の切れ端。本人は何の物か覚えていないらしい。

『モノクマの証言』
モノクマは手書きを推進していて、ワープロ関係のものを島に置いていない。
今行ける範囲で毒を手に入れる事はできない。他の薬同士を調合しても、毒にはならないように調整されている。

ホテル旧館図http://i.imgur.com/fsreX11.jpg

支援

苗木「……はぁ、ボクが石丸クンを刺したとなると……また初めからだよね」

舞園「だから何度言えばいいんですか!! 私達だって襲われたんですよ!!」

セレス「舞園さんも共犯……という可能性も挙がりましたが、それよりも戦刃さんが怪しいという話では?」

十神「確かに……な。トイレにあったテーブルクロス、エアコンのタイマーとアイロンを使った停電。
    これらは全て苗木の偽装工作と言う気か? その上で舞園が共犯だと?」

舞園「……まずは戦刃さんが犯人ではないという話からしましょうか」

桑田「けどよぉ、実際停電中に大広間から出て行ったのは戦刃だけだぜ?」

戦刃「それは……そうだけど……。で、でも私じゃないんだよ!! 苗木君でもない!!」

江ノ島「いやいや、そこは自分だけでいいじゃん。なんで苗木も庇うのよ。お姉ちゃん、苗木に追い詰められてたんだよ?」

腐川「そういう趣味でもあったんじゃないの汚らわしい!!」

戦刃「……私は苗木君の事をまだまだ知らないだけなんだよ。きっと彼には彼の考えがあるんだ」

葉隠「もはや健気ってより狂信の域だべ。舞園っちもセレスっちも」

苗木「……分かった、分かったよ霧切さん。ボクの言っている戦刃さんがクロだっていう推理は間違いだって言うんだね?」

霧切「えぇ、それもあなたはわざと間違えていると言っているわ」


苗木「いいよ……そこまで言うなら霧切さん、ボクと勝負だ」

苗木「ボクの推理をもう一度言うね」

苗木「戦刃さんはエアコンとアイロンのトリックを使って大広間に居ながらブレーカーを落として停電させて」

苗木「その後自分でブレーカーを上げると言って大広間を出て、事務室に居たボクと舞園さんを襲った」

苗木「それから気絶したボクをトイレに運び込み、石丸クンの喉にナイフを刺して殺した。その時に事務室から持ってきたテーブルクロスで返り血を防いだんだ」

苗木「戦刃さんは返り血を防いだテーブルクロスを床に置いて、トイレから出る時はテープを使って外から鍵を締めて密室を作り出す。
    それからブレーカーを上げて大広間に戻ったんだ。どう、何かおかしい所はあるかな?」

霧切「そうね、いくつかあるけど、まず一つ言うわ」

霧切「大広間から出た戦刃さんは、あなたと舞園さんを襲った。そう言ったわね?」

苗木「それのどこがおかしいのさ」

苗木「【停電中に】大広間を出て、ボク達を襲えたのは戦刃さんだけなんだから!」

「待たせてごめん」
    ↓
「それは違うよ!」
    ↓
  ぼこぼこ

『苗木、舞園の証言』


霧切「それは違うわ」キリッ


ガシャーン!!!!!


苗木「……違う?」

霧切「舞園さん、あなたが襲われた時、まだ停電は起きていなかったのよね?」

舞園「あ……は、はい……」

苗木「…………」

戦刃「えっ、ちょっと待ってよ! 苗木君の推理だと、私は停電中に大広間を出て行った時に事務室で苗木君達を襲ったんだよね?」

霧切「そうよ、だからそれは停電前に襲われたという舞園さんの意見と食い違う。モノミ、停電前は苗木君、舞園さん、十神君、石丸君以外はみんな大広間にいたのよね?」

モノミ「はい、間違いありまちぇん……そもそもパーティー中に事務室へ行ったのは苗木君と舞園さんだけでちゅし……」

山田「……むむっ? それでは戦刃むくろ殿は舞園さやか殿を襲っていない……と?」

朝日奈「えーとえーと、つまり…………戦刃ちゃんは犯人じゃない!?」

大神「……なるほどな。苗木がわざと間違えているというのはこういう事か。舞園を助けようとした苗木が、それが停電前に起きた事を忘れるはずがない」

大和田「んのやろぉぉ……!!!」ビキビキ

霧切「それにあのブレーカーを落とすトリックを使ったのであれば、アイロンをセットする為に戦刃さんは少なくとも一回は倉庫に入らなければいけなかった。
    でも、掃除当番ではない戦刃さんは掃除中は一度も旧館に入れなかったし、パーティー中も倉庫には行かなかった。そうよね、モノミ」

モノミ「その通りでちゅ! 戦刃さんは犯人なんかじゃありまちぇん!! もちろん他のみなさんも!!」

戦刃「え、えっと……苗木君……?」

桑田「おいコラなんとか言えよ、オメー全部知っててあんな事言ってやがったな!!」

苗木「……はは、いや、それは誤解だよ。そうそう、ボクが襲われたのは停電中だったから、その辺りが舞園さんとゴチャゴチャに混ざってただけなんだよ」ニコ

戦刃「そ、そっか!! うん、そうだよね、うっかりしてたんだよね!!」ホッ

舞園「えぇ、こんな緊迫した空間に居るんです、仕方ありませんよ」ニコ

葉隠「いやぜってーウソだべ……」

セレス「……ですが、それでは誰が苗木君と舞園さんを襲ったのでしょう?」

霧切「停電前に襲われた舞園さんの方を先に考えるべきね。あの時、石丸君はトイレの中、十神君は外、それ以外のみんなは大広間に居た」

腐川「何よ……全員無理じゃない……」

不二咲「も、もしかして誰も思いつかないような凄いトリックを使ったのかな……」

霧切「いえ、一人だけ居るじゃない。舞園さんを襲えた人が」

十神「……あぁ、そうだな」

朝日奈「えっ、ウソ!? 誰!?」

 

霧切「苗木君よ」


みんなの視線が一斉にボクに向く。

だけどやっぱり一番良い目をしているのは霧切さんだ。

時間が許せばいつまでも見ていたいくらいだよ。


舞園「……な、何を言っているんですか? 苗木君は私を助けてくれようとしたんですよ!!!」

霧切「あなたを抱きかかえるように……だったわね」

舞園「えぇ!! ふふ、霧切さんだって羨ましがってたじゃないですか!!」ドヤァァ

セレス「ふん、別にそのくらいどうって事ありませんわ。わたくし、寝ている苗木君にキスした事もありますので」

舞園「……は??」ゴゴゴゴゴゴ

山田「ぐぅぅぁぁああああ!!! リア充爆発しろ!!!!!」

桑田「ちくしょう……こんな頭おかしい奴のどこがいいんだよ……!!!」ガクッ

朝日奈「ちょ、ちょっと話がズレてるよ!!」

苗木「えーと……ボクが舞園さんを襲った? はは、冗談はやめてよ」

十神「ありえん話ではない。現に可能だったのはお前だけだ」

霧切「舞園さん、あなたは気絶するとき背中から衝撃が走ったって言っていたわね?」

舞園「え、えぇ……それが何か……」

霧切「苗木君はあなたを抱きかかえた時、腕を背中の方まで回していた。ここまで言えば分かるわね?」

不二咲「えっ……も、もしかして……!!」

大神「ふむ……なるほどな……」

舞園「な、にが言いたい……のですか……?」ブルブル

苗木「…………」

霧切「じゃあハッキリ言いましょうか」


霧切「苗木君はあなたを抱きかかえた時、そのままあなたの背中にスタンガンを当てたのよ」


舞園「ウソです!!!!!」


舞園さんの絶叫が響く。

なんだか盛り上がってきたね。

ナンテコッタイ

霧切「でも事実、あなたを襲えたのは苗木君だけよ」

舞園「そんなの……信じられません!! そうだ、石丸君はどうですか!? 実は彼は事務室にずっと隠れてて……」

十神「それはつまり掃除中からずっとという事か?」

葉隠「流石にバレるべ」

舞園「あ、じゃ、じゃあ……えっと……!!」

霧切「反論がないのであれば、次の話をするわよ。あの停電の事なんだけど……」

舞園「待ってくださいよ!! 私まだ納得してな」

苗木「舞園さん、しっかりした考えが浮かんでいないなら黙っていた方がいいよ」

舞園「え……?」

霧切「……それで、停電の事なのだけど、あの時本当にエアコンのタイマーを使ったトリックは使われたのかしらね?」

腐川「ど、どういう事よ……散々得意気に言っておいて……」

霧切「別に言ったのは私じゃないわ。元々私は別意見だったし」

桑田「じゃ、じゃあその時言えよな……」

霧切「少し観察したかったのよ。苗木君の目的をね。それに、もしかしたら私の方が間違っている可能性もあったし」

苗木「それで、何か分かったのかな?」

霧切「えぇ、あなたはクロを追っているわけではない。それが分かれば十分よ」キッ

苗木「……はは、そっか」

大神「それで、どういう事だ。あのブレーカーのトリックが本当に使われたのかというのは」

朝日奈「でも、あんなに証拠みたいなのあるし、やっぱり使われたんじゃないの?」

戦刃「う、うん……大広間でもエアコンがついた後に停電したし……」

十神「倉庫にあったアイロンも明らかに不自然だろう」

不二咲「え、えっと、それも使用電気量を増やすためのものだったんだよね……」

江ノ島「こんだけ仕込んでおいて使わないってのももったいないよねー」

山田「ふひひ、それでもいざという時の為に仕込んでおくのが男の努めですぞ」

葉隠「オメーは一生無駄になりそうだけどな」

霧切「……いえ、仕込んだトリックは使わなかったのではないわ」


霧切「使えなかったのよ」


セレス「使えなかった……?」

霧切「そう。元々苗木君は舞園さんの事を停電中に気絶させる予定だったのでしょうね。でも、アクシデントが起こった」

ダメだ眠い

気になるぜ…

苗木は一体何をしたのかorするつもりだったのか…
あぁ気になる

>>56

大和田「アクシデントだぁ? はっ、あんだけ仕掛けてやがったのに何か失敗したのかこいつ?」

大神「しかしあそこまでの下準備をする者がそうミスなどするものか……」

霧切「下準備が多いからこそミスが出てくるのよ。それだけ、どこかのピースが欠けると成り立たなくなるという事なのだから」

桑田「つーか、ブレーカーを落とすトリックってなんだっけ? 俺忘れちまったわ」

朝日奈「もー、何やってんのよー。だから…………あれ、なんだっけ?」

葉隠「あっはっは、朝日奈っちも人のこと言えないべ! 俺も忘れたけどよ!」

十神「お前達は鳥並の記憶力しかないのか。苗木、もう一度説明しろ」イライラ

苗木「ボ、ボク? 別にいいけど……」


なんだか雑用関係は全部押し付けられるよなぁ……。


苗木「まず、犯人はブレーカーを落とす為に、わざとある時間に旧館内で電気がたくさん使われるようにトリックを仕掛けたんだ。
    その証拠に大広間と事務室のエアコンのタイマーが同時刻に設定されていて、倉庫には三つのアイロンが置いてあった」

苗木「三つのアイロンは予め【コンセントに繋がっていて】、後は二つの部屋のエアコンのタイマーが起動すれば好きな時間に電気使用量を上げてブレーカーを落とせたって事さ」

『葉隠、桑田の証言』カシャ


霧切「それは違うわ」キリッ


ガシャーン!!!!!


苗木「……違う?」

霧切「えぇ、確かにアイロンは倉庫に置いてあった。でも、コンセントとは繋がっていなかったのよ。そうよね、葉隠君、桑田君」

葉隠「え、俺?」

桑田「いや、んな事言われてもな……」

霧切「思い出して、あなた達はパーティー中に一度倉庫へ行ったはずよ」

葉隠「あ、そうだべそうだべ。そんでツイスターゲームを持ってきて…………山田っちに潰される悪夢の始まりだべ……」ガクッ

山田「失敬な、僕は見た目ほど重くはありません! 君が大袈裟すぎるのですよ!!」

葉隠「んな事ねえっての!!! オメーちょっとは痩せろよな!!!」

江ノ島「それでそれで? ツイスターゲームが何か関係あんの?」

霧切「そっちじゃないわ……アイロンの方よ」

桑田「アイロン? …………あ!!!」

葉隠「ん、どうしたべ桑田っち」

桑田「どうしたじゃねえよ!! 葉隠オメー、あの時倉庫にあったアイロンをコンセントから抜いただろ!!」

葉隠「……あー、そういやそうだった…………ああああああああ!!!!!」


突然大声をあげる葉隠クン。気付くの遅いって……。


腐川「な、なによ、勝手に納得してないで教えなさいよ……」

葉隠「そうだ、パーティー中に俺、倉庫のアイロンが三つもコンセントに繋がってんのを見つけたんだべ!! んで、そいつを全部抜いた!!」

十神「なぜそれを早く言わない……っ!!」イライライライラ

葉隠「あはははは……うっかりしてたべ……」

桑田「ちょっと待てよ、それじゃそのブレーカーを落とすトリックは使えなかったっていうのか!?」

霧切「えぇ、あのアイロンがないとブレーカーは落ちない。それにパーティー中に倉庫に行ったのは葉隠君と桑田君だけよ。そうよね、モノミ」

モノミ「はい……その通りでちゅ……。あちしもアイロンの事なんて知らなかったでちゅし……」

戦刃「……待って。でも、それなら犯人はどうやってブレーカーを落としたの?」

霧切「それは決まっているじゃない」


霧切「手動で直接落としたのよ」

大和田「直接落としたって……おいそれじゃあ…………」

苗木「…………」

舞園「そんな……違いますよ!! 何かの間違いです!!!」

セレス「……ですが、苗木君の身長であの高さのブレーカーを落とせるのでしょうか?」

霧切「事務室には踏み台になるテーブルがあったし、物もたくさん置いてあって長い箒なんかもあったから、いくらでも方法はあったはずよ」

不二咲「た、確かに物を使えば僕でも何とかなるかも……」

大神「ふむ、苗木は確かにトリックを持ちいてブレーカーを落とすつもりではあった。だが、葉隠がアイロンをコンセントから抜いた事で、使えなくなってしまったのか」

朝日奈「葉隠もたまには役に立つんだね……」

葉隠「たまにってなんだ、たまにって!!」

霧切「苗木君、あなた私と一緒に倉庫で捜査している時に、『アイロンが三つもコンセントに繋がってたから、抜いてたんだ』って言ったわね?」

苗木「……うん」

霧切「でも、あの時アイロンは繋がっているはずがないのよ。
    パーティー中に葉隠君が抜いて、その後入ったのは停電後に苗木君を探す為に入った大和田君と不二咲君……よね?」

大和田「おう、けど俺達はアイロンなんかに触れてないぜ!!」

不二咲「うん、あの時は苗木君を探すのに必死だったから……」

霧切「つまり、あの時苗木君は元々コンセントと繋がっていないアイロンをいじっているフリをして、『コンセントから抜いた』とウソをついたのよ」

苗木「……でもさ、停電は確かにエアコンが起動した後に起きたよね?」

戦刃「う、うん、そうだよ! それは霧切さんも確認してるよね!?」

霧切「……えぇ、そうね」

舞園「それならやっぱり犯人は何らかの方法を使って、電気の使いすぎでブレーカーを落としたんですよ!!」

セレス「ふふ、そうですわね。葉隠君ごときに失敗させられる犯人でしたらもう見つかっているはずですわ」

葉隠「ひ、ひでえ言われようだべ……」ガクッ

霧切「いいえ、あの停電は電気の使いすぎで起きたものではない。断言できるわ」

十神「ほう、そこまで言うなら何か理由があるんだろうな?」

霧切「十神君、あなたはその時旧館に居なかったから分からなかったのでしょうね。エアコンが起動してから停電するまで、少しの間があったのよ」

十神「間、だと……?」

苗木「…………」

霧切「ねぇ、戦刃さん、大神さん。エアコンのタイマーが作動する電子音は聞いたわよね? その後どのくらいで停電したかしら?」

戦刃「うーん……三十秒くらいかなぁ……?」

大神「我もそのくらいだと記憶している」

十神「……妙だな」

山田「ふむ……確かにあの状況でラッキースケベ的なイベントが起きなかったのは妙ですな。
    僕としては、電気がついた瞬間、誰かが卑猥なポーズで倒れているのを期待していたのですが……」

桑田「んなアホが居るわけねえだろ」

十神「お前達は少し黙れ。俺が言っているのはタイマー起動から停電までの間についてだ。
    電力使用量が増加してブレーカーが落ちたというなら、そのタイマーの起動音の瞬間に停電するんじゃないのか?」

霧切「えぇ、そうよ。実際にその後同じ方法でブレーカーを落としてみたけど、その時はタイマーの起動音とほぼ同時に停電したわ」

不二咲「た、確かにブレーカーが落ちるのって、何かの電源を付けた瞬間だよねぇ……」

大和田「じゃあその三十秒の間っていうのは……」

霧切「ねぇ舞園さん。あなたは襲われる前に電子音を聞いたと言っていたわね?」

舞園「……は、はい」

霧切「そして、苗木君はその直後にあなたの背後に不審者を見つけた」

舞園「そうですよ!! それが何か!?」

十神「……はっ、そういう事か」

苗木「あはは、何が言いたいのかな?」ニコ

霧切「つまりはこういう事よ。エアコンのタイマーが起動した瞬間、停電が起きなかった事にあなたは焦った。
    だからその場ですぐに舞園さんを気絶させて、その後自分の手で直接ブレーカーを落としたのよ」

苗木「…………」

舞園「ウソです……そんなの……絶対に…………」ブルブル

セレス「霧切さん、あなたはどうしても苗木君を犯人にしたいようですけど、まだハッキリしていない事はありますわよ」

霧切「何かしら?」

セレス「あの時石丸君は体調を崩していてトイレに居ました。それは偶然ではないですの?」

朝日奈「そ、そうだよね……葉隠の変なジュースで気分が悪くなっちゃったんだし……」

十神「いや、おそらく苗木は事前に石丸の意識を奪ってトイレに閉じ込めていたんだ」

江ノ島「あはは、苗木がそんなアグレッシブな事したわけ?」

霧切「石丸君の意識が無かったのは確かでしょうね。彼は縛られてはいたけど、それでも扉に体当たりくらいはできたはずだから」

腐川「で、でも、それっていつよ……誰にも気付かれずに石丸をトイレに閉じ込められる【チャンスなんてなかった】じゃない……」

今日から横浜3連敗か……

(*^O^*)「それは違うよ!」

『ミステリーサークル騒動』カシャ


霧切「それは違うわ」キリッ


ガシャーン!!!!!


腐川「なによ!! あんたはあたしの顔も言い分も存在も否定するのね!!!」

霧切「いえ、否定したのはあなたの言い分だけよ。石丸君を誰にも知られずにトイレに閉じ込めるチャンスはあった。それも苗木君だけに」

苗木「へぇ、でもそれはどうかな? だって掃除中は旧館に必ず何人か居たんだよ? 流石に誰にも気付かれずにそんな事するのは無理だよ」

霧切「いいえ、あったはずよ。旧館内にあなたと石丸君だけが残された時間が」

桑田「んな時あったっけか?」

朝日奈「んー、私は思い付かないけど……」

葉隠「…………あったべ」

十神「お前は黙っていろ」

戦刃「え、えっと……もう少し良く考えてみたらどうかな……?」

江ノ島「どーせまたバカみたいな事言うんでしょー」

葉隠「なんで俺はこんな扱いなんだべ!!!!!」

霧切「待って、葉隠君なら気付いてもおかしくないわ」

大神「なに? つまりは葉隠が関係している事だというのか?」

舞園「分かりました!! 葉隠君が犯人なんですよ!!!」ビシッ

不二咲「えっ、本当!?」

葉隠「ちっげえええええよ!!! ほら、あの時だ、俺がミステリーサークル見つけた時!!!」

朝日奈「……あー、あの馬鹿騒ぎね」ハァ

桑田「なんつーか思い出すだけでイライラしてくんな」

腐川「わざわざあんたがバカだっていう事を思い出させたいのかしら……そんな事しなくても分かっているわよ」

葉隠「バカバカうっせえええ!!! バカって言う方がバカなんだべ、このバカ!!!」

朝日奈「で、それが何? ていうかその時苗木も居たよね?」

桑田「……いや待てよ、確か苗木だけは遅れて来なかったか?」

腐川「そ、そういえば……そうだったかも……」

朝日奈「あっ……う、うん……トイレに寄ってから行くって…………」

苗木「…………」

霧切「その時はソファーで休んでいた石丸君も大広間に残っていたのよね?
    つまり、苗木君は他のみんなと合流するまで、石丸君と二人で旧館に居たという事になるわ」

山田「苗木誠殿と石丸清多夏殿が二人きり……何やら腐女子が喜びそうなシチュエーションですな」

セレス「少しは黙ってくださる? それと、時代は苗セレだと決まっていますわよ」

舞園「何言ってんですか、苗舞の方がメジャーに決まっています!!」

十神「いいからまとめて黙っていろ」イライラ

大和田「そんで……つまりは兄弟をトイレに閉じ込める事ができたのは苗木だけって話なのか?」

霧切「えぇ、そうよ。葉隠君のミステリーサークル騒動、この時しかないわ。
    桑田君や朝日奈さんも、その時までは石丸君が大広間に居たと言い切れる……という事だったわよね?」

朝日奈「あ、う、うん、そうだよ!」

桑田「逆にその後からあやふやなんだよな」

葉隠「つまり、苗木っちはあの時俺達と合流する前に石丸っちをトイレに閉じ込めたんか!!」

腐川「あの時は平然とした顔していたくせに……!!」

苗木「……でもさ、石丸君を運ぶっていったって、そんな簡単な事じゃないよ。ほら、ボクって力ないし」

大神「そうだな……苗木に人一人を楽に運べるとは思えん……」

江ノ島「あ、それじゃこれはどう? 苗木は石丸をトイレに行かせるように誘導して、そこで気絶させた!」

霧切「……それも考えられるけど、苗木君は意識のない石丸君をトイレに運んだのよ」

不二咲「どうしてそう言い切れるのぉ……?」

『台車の金具に挟まった髪の毛』カシャ


霧切「事務室に台車が置いてあったわ。そしてその金具に石丸君の髪の毛が挟まっていたの。それも低い位置にある金具にね」

十神「……なるほどな、苗木はそれで石丸をトイレに運んだ。その時に髪の毛が一部金具に挟まって抜けたのか」

苗木「…………」

霧切「鍵はあのテープのトリックでかけたのでしょうね。あれは両端に粘着部分を残してあった。
    外からテープを引っ張って鍵をかけた後にそのまま回収せずに、もう一端の粘着部分を外からトイレのドアの目立たない部分に貼っておいたのでしょう」

十神「次に入る時はそのテープを鍵をかける時とは逆方向に引っ張れば、今度は外から開くことができるというわけか」

江ノ島「ぶはっ、なんか十神が霧切ちゃんの助手みたいでウケるんですけど!!!」

葉隠「超高校級の助手だべ」

十神「なんだと貴様ら……!!!」ギロ

舞園「ちょ、ちょっと待ってください!!! 他に何かあるはずですよ、私達が想像もつかないトリックが!!! 真犯人は苗木君に罪を被せようとしているんです!!!」

霧切「……苗木君が石丸君を刺したと思う根拠はこれだけではないわ」

セレス「まだ……あるのですか……?」

『モノミの証言』カシャ


霧切「モノミ、もう一度停電中にあなたが聞いた事を教えてもらえるかしら。どの扉がどの順番で開いたのか」

モノミ「はい……まず事務室が開いて、次にトイレ、その後大広間が開いて、次にまた事務室っていう順番でちゅ」

霧切「それぞれの扉の開いて閉まるまでの間隔はどうだったかしら?」

モノミ「最後の事務室以外は開いたらすぐ閉まりまちた。最後の事務室は開いた音だけで閉じた音はありませんでちたよ」

舞園「そ、それがどうかしたんですか?」

霧切「……まず、大広間と二回目の事務室の扉の音は戦刃さんね?」

戦刃「あ、うん、そうだと思う。事務室に入った時は舞園さんが倒れているのを見つけて、慌ててそのまま扉は締めなかったから……」

山田「美少女が寝ている部屋の扉を全開とは……なんと不用心な……」フヒヒ

戦刃「あ、ご、ごめんなさい、みんなを呼ぼうと必死だったから……!!」

霧切「そして最初の事務室の音とトイレの音は犯人……という事になるわ」

不二咲「あ、あれ、トイレの音は石丸君が出てきたんじゃないの……?」

桑田「あー、そういやモノミも石丸がどうとか言ってたよな」

モノミ「え、えぇ……あちしも石丸君が出てきたのだと思っていたのでちゅが……」

霧切「いいえ、停電中のトイレの音は石丸君が出てくる音ではなく、犯人がトイレの中に入る音よ」

十神「石丸は縛られて、意識もなかったんだ。自分で出てこられるはずがない」

舞園「で、でも、どうしてそれで苗木君が犯人だって言い切れるんですか……?」

セレス「犯人は気絶した苗木君を運んでトイレに入り、石丸君を殺した。そういう事ではないのですか?」

霧切「モノミの言葉を思い出して、トイレの扉は一度しか開いていないのよ」

セレス「っ……」

舞園「それが……どうかしたんですか?」

霧切「犯人はトイレに入って気絶した苗木君を寝かせ、そこで石丸君を刺した後、トイレから出て外から鍵をかけた。それだと扉は二回開くはずよ」

舞園「そ……それは……扉を開けっ放しにしたまま全部やって……!!!」

霧切「モノミは『トイレの扉は開いたらすぐ閉まった』と言っていたわよ。それに、扉を開けっ放しで石丸君を殺せば、廊下にも血が撒き散るわ。
    トイレの中では石丸君を刺す他に、苗木君を床に寝かせてナイフを握らせて、血を防ぐのに使ったテーブルクロスを床に置く必要もあったわ。そんな僅かな時間でできる事ではない」

舞園「あ……そ……それ、は…………!!」

セレス「…………」

霧切「扉は開く音は一度だけ。それも開閉の間隔は短い。その上でトイレの中で石丸君を刺す事ができた人物。それは」


霧切「苗木君しかいないのよ」


苗木「…………」

舞園さんもセレスさんも黙ってしまった。

舞園さんは何かを話そうと口をパクパクさせているけど、そこから声が出てくる事はない。

セレスさんは静かに目を閉じて、口も堅く閉ざしている。


みんなの視線が、ボクに集まる。


戦刃「え……な、苗木君……? 何か、その、言って……ほしいな……」

江ノ島「あはは、こんだけ色々話し合って、結局苗木かよ!」

桑田「じゃあ、あのテーブルクロスもオメーの偽装工作なのかよ……!!」

大和田「テメーが……テメーが兄弟を殺しやがったのか!?」

不二咲「そんな……な、苗木君が……本当に……?」

大神「…………我の目も鈍ったものだ」

朝日奈「苗木!!! 黙ってないで何か言ってよ!!!」

腐川「ほほほら言ったじゃない、苗木が犯人だって……」

葉隠「しっかし、危なかったべ……危うく戦刃っちをクロにしてみんな死ぬとこだったじゃねえか……」

山田「な、苗木誠殿……恐ろしいやつ……」

刺したのと死因は別、と思うんだが

十神「おい、どうした苗木。反論はないのか?」

霧切「いくらでも聞くわよ。言えるものならね」


苗木「…………」


あぁ、やっぱりだ。

そうだよね、こんなチェックポイントまでは当然来てくれるはずだ。

ううん、きっとキミ達なら最後まで来てくれるって信じているよ。


でも、仕方ないよね。

もう、我慢できないよ。

こんな気持ち……抑えられるはずがないよ!!


苗木「…………ははっ」


苗木「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

 

裁判中断

>>183
  バン
バン (∩`・ω・) バン
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/
  ̄ ̄\/___/

 
モノクマ「苗木クンはどうしてモテるのでしょう?」

モノミ「いきなりなんでちゅか!?」

モノクマ「確かに苗木クンは可愛いし、超高校級のスーパーメンタルも持ってるよ。だけどいくらなんでもモテすぎでしょう」

モノミ「そんな事ありまちぇんって……あ、さてはあんた、苗木君がモテるからって嫉妬していまちゅね!」

モノクマ「そんな事ないって。それに、ボクの性別だって分からないじゃないか。今時ボクっ子なんて珍しくないよ」

モノミ「あんた自分で兄だって言ったじゃないでちゅか!」

モノクマ「おおおお、モノミよ! ついにボクをお兄ちゃんだと認めてくれたか!」

モノミ「認めてまちぇん!!!」

モノクマ「さて、話を戻そうか。いくら何でも苗木クンがモテすぎだろうという事でボクは調べた…………そして驚愕の事実を知る事になったんだよ!!」

モノミ「な、何でちゅかそれは……」

モノクマ「ふふふ、実はね、苗木君は…………」


モノクマ「原作ではそんなにモテてないんだよ!!!」ドーン


モノミ「な、なんでちゅってー!!!!!」

モノクマ「うん、そうなんだ。ゲームだと苗木クンに好意を向けてるっぽい描写があるのって舞園さんと戦刃さんくらいなんだよ。
     あ、そうだ、通信簿進めれば朝日奈さんも苗木クンの事好きっぽい感じになるけど、彼女は十神クンにも微妙にフラグ立ってたような感じだね」

モノミ「えっ、霧切さんは!?」

モノクマ「霧切さんは通信簿進めるとちょっとだけデレるけど、好意を持っているとまでは言えないよ。
     同じくセレスさんもCランク認定するくらいには気に入ってもらえるけど、やっぱり好意があるとまでは言えないね」

モノミ「で、でも、苗木君は霧切さんやセレスさんにも好かれているイメージが……」

モノクマ「それはね、モノミよ……」


モノクマ「SSの読み過ぎなんだよ!!!」ドーン


モノミ「えええええええ!!!」

モノクマ「ああそうさ、苗木クンはモテモテでハーレム状態さ! SSの中ではね!!」

モノミ「つ、つまり、苗木君を巡って霧切さん、舞園さん、セレスさんで争ったりするのも……」

モノクマ「SSの中だけなんだよ!!! あと薄い本とか」

モノクマ「そしてボクは更に考えてみた。なぜ苗木君はSSではハーレム状態になるのか!」

モノミ「えーと、それはやっぱり苗木君がカッコイイから……」

モノクマ「違うんだモノミよ。ほら、ダンガンロンパには可愛い女の子がたくさん出てくるよね?」

モノミ「えぇ、そうでちゅね……」

モノクマ「でも、閉鎖空間でコロシアイっていうクローズドサークル物ゆえに、そんな女の子達のデレが少ない!! ていうか悲鳴とか泣き顔とか死に顔の方が多い!!」

モノミ「それはあんたのせいじゃないでちゅかー!!!!!」

モノクマ「そしてみんなは思うんだよ……『もっとあの子のデレが見たい』と。そしてデレるには相手が必要だ。
      他の作品では進撃の巨人とかAnotherのSSでも、似たような主人公ハーレム現象が見られるね」

モノミ「そ、それで苗木君のハーレム現象が起こるんでちゅか……。でも、女の子のデレが見たいのでちたら、相手は苗木君じゃなくてもいいんじゃないでちゅか?」

モノクマ「分かってないなぁ。だって考えてみろよ、例えばSSでセレスさんが苗木クンのパンツを頭に被ってても笑えるけど、山田クンのパンツを被ってたら狂気を感じるよ」

モノミ「うっ……そ、それは……」

モノクマ「だいたいそういうのは主人公が相手じゃなきゃダメなんだよ。作中で一番プレイヤーが感情移入できるキャラだしね」

モノミ「なるほど……それなら、原作で主人公以外の人に好意を持っている女の子はどうなるんでちゅか?」

モノクマ「うーん、まぁ何だかんだいって原作の影響っていうのも強いからねぇ。そういう女の子はハーレム対象にはならない事が多いよ」

モノミ「なるほど、だから腐川さんが苗木君の事を好きだっていう設定のSSは見かけないんでちゅね」

モノクマ「いや腐川さんの場合はまず需要が」

モノミ「こらああああああああ!!!!! 何言おうとしてんでちゅか!!!!!」

モノクマ「まぁ、とにかくそんなわけでSSでは苗木クンがハーレム主人公みたいになっているんだよ。スーパー鈍感になったりね」

モノミ「なるほど……」

モノクマ「でも、そんなSS読者に朗報だよ!!」ビシッ

モノミ「えっ、いきなりなんでちゅか!?」

モノクマ「なんと、今度発売される『ダンガンロンパ1・2 Reload』では1のスクールモードが追加されるんだ!」

モノミ「スクールモードでちゅか?」

モノクマ「うん、簡単にいえば2のアイランドモードと同じようなものでね。要するに1の女の子達とデートができちゃうんだ! 学校の中だけど!!」

モノミ「おおおおおおおお!!!」

モノクマ「みんなはSSだけで満足できるのかな? もちろんゲームでも彼女達のデレを見たいだろう!! パンツハンター苗木クンを見たいだろう!!」

モノミ「最後はよく分からないでちゅけど、とっても楽しみでちゅ!」

モノクマ「発売日は十月十日! オマエラ、それまでお小遣い貯めておけよ!」

モノミ「…………結局ただの販促でちゅよねこれ?」


http://i.imgur.com/ex8f9cg.jpg http://i.imgur.com/harJKxf.jpg

裁判再開


苗木「ははは……あははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!」


ダメだ、どうしても止められないよ。

仕方ないじゃないか、ボクはそれだけ嬉しいんだから。

でも、そろそろ無理矢理にでも止めた方が良さそうな空気になってきたかも。


桑田「なんなんだよ……なんなんだよオメーはよおおおおおおお!!!!!」

大和田「ちっ、おいモノクマ、投票だ!!! このイカれたクソ野郎、ブッ殺してやる!!!」

舞園「やめて!!!!! お願いです、やめてください!!!!!」ポロポロ

朝日奈「も、もうダメだって舞園ちゃん……苗木はもう……おかしくなっちゃったんだよ!!!」ウルッ

大神「この極限状態だ。無理はないのかもしれん……」

セレス「お待ちください、苗木君はこの状態です。もしかしたら、彼の精神状態を利用した真のクロが居る可能性も……」

江ノ島「えーでも、もう苗木しか考えられなくない?」

戦刃「そんな事ないよ!! 苗木君はきっと本当の犯人を庇って……」

不二咲「そ、それでも……それって、その犯人以外を全員殺そうとしているっていう事……だよね……?」ブルブル

山田「ひ、ひぃぃぃぃ、どっちにしろヤバすぎますぞ!!」

腐川「あ、あたしは最初からそいつがヤバイ奴だって分かってたわよ……」

苗木「…………あー、一応言っておくけどさ、石丸クンを刺したのはボクだよ?」ニコ


ボクの言葉に、場が静まり返る。

ただ泣き続けていた舞園さんまでもが、ボクの言ったことが分からなかったかのように呆然とこちらを見ている。


葉隠「……じ、自白までしやがったべ」

十神「随分とあっさり認めるものだな」

苗木「え、そうかな? これでも足掻いた方だよ。あーあー、やってくれたよ葉隠クン、せっかくボクが仕掛けたトリックがキミのお陰で台無しだ」ハァ

霧切「……なぜ?」

苗木「え?」

霧切「あなたは『例え希望の為だとしても、死という絶望はダメだ』って言っていたじゃない。そんなあなたが、どうして石丸君を……」

苗木「…………」

桑田「もうそんな奴の言うことなんざ聞かなくていいだろうが!! こっちがおかしくなりそうだ!!」

朝日奈「うん……たぶん、ていうか絶対聞いても理解出来なさそうだし……」

苗木「誤解しないでほしいんだけどさ、ボクだって好きでこんな事したくなかったんだよ。
    だってみんなは学校で共に過ごしてきた大切なクラスメイトじゃないか」

大和田「どの口が言ってやがる!! ああ!?」

大神「では苗木よ、なぜお主は石丸を殺したのだ」

苗木「……別にさ、ボクが殺らなくてもいずれ誰かが殺ったんだよ」

不二咲「えっ!?」ビクッ

十神「どういう事だ。お前何か知っているのか?」

苗木「いや……ボクもコロシアイが起きるなんて思いたくなかったよ。
    でもさ、無条件で信じるだけっていうのは、良くないよね? そんなの本当の信頼じゃない。だからさ、ちょっと試してみたんだ」

腐川「た、試した? 他にも何かしたわけあんた……」

苗木「別に大した事じゃないよ。でも、その結果は残念だった。本当に残念だった。だって、本気で誰かを殺して自分だけ生き残ろうとしていた人が居たんだからね」

江ノ島「え、あんた以外にもって事? だれだれ? 冥土の土産に教えてよ!」

葉隠「それ逆だべ……」

苗木「はは、別に誰かなんていうのは問題じゃないでしょ。もしかしたら複数居るかもしれない。とにかく、コロシアイに乗ろうと思っていた人は居たんだ」

十神「ふん、それは俺の事か?」

山田「そ、そういえば十神白夜殿はそう表明していましたな……」

苗木「いや、十神クンはいいんだよ。確かにキミのやり方は許されるようなものではないのかもしれない。
    でも、キミはここから脱出するなんていう陳腐な希望の為にじゃない、モノクマを倒すっていう素晴らしい希望の為にその決意をした」

桑田「それが何だってんだ、結局は人殺しに変わんねえじゃねえか!!!」

腐川「ふふ、何よ……あんたみたいなのが生き残るよりは全然マシよ……」

桑田「ああ!?」

霧切「静かにして。それで苗木君、あなたはそれ相応の大きな希望の為の殺人であれば認めるというのね?」

苗木「本当は認めたくないよ、でも仕方ないじゃないか。例えば戦争を終わらせる為に、誰も死なない方法を考えるなんていうのは、ただ絶望から目を逸らしているだけだ。
    人は死ぬ。その絶望を受け止め、その中で最良の選択肢を探し出す。それが正しい希望としてのあり方だと思うんだよ」

大和田「くそっ、意味分かんねえんだよ!! それで何で兄弟を殺す事に繋がんだ!!!」

不二咲「石丸君はいつも僕達を引っ張ってくれる凄い人なのに……どうして……」

苗木「だからこそ、だよ」

大和田「……は?」

苗木「確かに石丸クンは素晴らしいよ!! こんな状態なのに毅然としていて、自分だけでなく常にみんなを導いてモノクマに立ち向かおうとしていた!!
    いいよね、彼は。彼みたいな人こそ、みんなの希望と呼ぶに相応しい、超高校級の生徒だと思うんだ。あ、もちろん他にも素晴らしいと思う人は居るよ」

桑田「だから何でそんな石丸を殺したって言ってんだよ!!!!!」


苗木「だってキミ達、石丸クンに頼りすぎなんだよ」

 
やはりみんなは理解していないみたいで、ただ呆然とボクを見ている。

どうして分かってくれないのかなぁ。


苗木「モノクマに勝って全員でここを脱出するためには、一人一人が石丸クンみたいな大きな希望を持っていなければいけないんだ。
    いつまでも彼や霧切さんみたいな人達に引っ張って行ってもらうだけじゃダメなんだよ。みんなで強くならなければいけないんだ」

苗木「それがダメなら十神クンみたいな一人の強力な希望に生き残ってもらった方がいい。彼がモノクマを止めればそれで絶望から救われる人はたくさん居るんだ。
    でもね、ボクはそんな方法とりたくなかった。だってみんなは大切なクラスメイトだ、できるだけ多くの人達に助かってもらいたいって思うのは当然じゃないか」

苗木「だからボクは考えた、コロシアイは止められない。その上でできるだけ大勢の人が助かる方法を。
    そして思い付いたんだ。キミ達は超高校級の生徒だ。例え今は小さな希望しか持っていなくても、いつかは石丸クンのような大きな希望を持ってくれるんじゃないかって」

苗木「ただ、その為には今の状況は良くなかった。とりあえず石丸クンや霧切さんについていけばどうにかなるだろうって、そうみんなが思い込んでいるこの状況はね。
    そんなんじゃ希望は育たない。本当の意味でモノクマに立ち向かう事なんてできない。だからボクはキミ達の成長の為に――――」


霧切「石丸君を殺した、というわけね」


あれ、霧切さんは理解してくれたのかな?

……いや、そうでもないみたいだ。

彼女から向けられる視線からは敵意しか感じられないや。


うん、それでいいんだよ霧切さん。

苗木「本当はね、キミでも良かったんだよ霧切さん」

霧切「…………」

苗木「でも相手がキミだと、どうしても成功率が下がる。だから今回は石丸クンに犠牲になってもらったんだ。とても悲しかったけどね。
    だけど、良かったよ。彼のような大きな希望が失われても、キミ達はこうしてきちんとボクを追い詰める事ができた。絶望に潰される事はなかった」

苗木「それに分かったでしょ? これだけ色々小細工しても、結局はバレちゃうんだ。だから、誰かを殺してここから抜け出そうだなんて思わない方がいいよ。
    みんな気持ちを強く持って、常に前を向いて、本当に戦わなくてはいけない相手に立ち向かわなければいけないよ。うん、大丈夫、キミ達ならきっとできるよ」ニコ

苗木「あはは、残念だったねモノクマ?」

モノクマ「んん、なにが?」

苗木「彼らはこの事件を通して、あるいはきっかけにして、大きく成長するよ! もうお前の思い通りにはならないよ!!」

モノクマ「……うぷぷぷぷ、それはどうかなぁ」

苗木「笑っていられるのも今の内だよ。お前は必ず負ける。それぞれが大きな希望を持ったみんなにね!!」


そう言ってみんなを見渡すけど、きちんとボクを見返してくれる人は少ない。

でも、大丈夫。ボクは分かっている。

この件は確実にみんなにとって大きな糧になった。ここからみんなの反撃が始まるんだ。


その為にはボクと石丸クンの犠牲は必要だったんだ!

 
…………って言いたい所なんだけどなぁ。

どうしたのかな、大丈夫なのかな。

このまま終わりなのかな。それはそれで、少し心残りがあるんだけど……。


もう少しだけ頑張ってくれないかな、みんな。


舞園「……苗木君」

苗木「うん?」

舞園「私は……嫌です……。例えここから抜け出せたとしても……苗木君がいないなんて……!!」ポロポロ

苗木「……えーと、その、だから全員で脱出っていうのは無理なんだってば。
    ていうか、ボクは石丸クンを殺したんだよ? それでもボクに生き残って欲しいの?」

舞園「はい」


潤んだ瞳で、真っ直ぐ見つめられた。

これは少し予想外の反応だ。


舞園「私は、苗木君の事が大好きですから」

それは違うよぉ(ねっとり)

やっぱり超高校級のアイドルこそ正妻に相応しいですね!

>>339
あら、まいぞのまは枕のまの枕園さんが何を言ってるのかしら?

苗木「……あのさ、いくら何でもそれはないと思うよ。正直ボクも少し引くな」

舞園「どうしてですか?」

苗木「いや、だって、ボクはクラスメイトを殺したんだよ? そんな人が好きだって? どう考えても普通じゃないよ、おかしいって」

舞園「そう……ですね。私はおかしいのかもしれません」ニコ

苗木「ハッキリ言うよ、殺人鬼が好きな人なんてボクからお断りだ。例えアイドルでも流石にそれはないって」

舞園「……あはは、フラれちゃいました」

苗木「…………」

舞園「でも、想い続ける事は私の自由です。それは苗木君でも止められません」ニコ


眩しい程の明るい笑顔。

彼女が今どんな気持ちなのか、それは分からない。

でも、それは超高校級のアイドル会心の表情のように思えた。


苗木「ねぇ、舞園さん」

舞園「はい?」

苗木「どうしてボクなんだ。もっと周りを見なよ。どれだけ見る目ないのさ」

舞園「……私にとっての苗木君は、ですね」

苗木「え?」

舞園「普段はちょっと頼りなくても、いざという時はとってもカッコ良くて、ヒーローみたいに私は守ってくれる人なんです」ニコ

苗木「誰それ……」

舞園「ふふ、やっぱり自分では気付いていないんですね。まぁ、そこも苗木君らしいですけど」

苗木「えーと……それで、殺人鬼って所もキミの許容範囲内なの?」

舞園「それは流石にダメですよ。ちゃんと罪を償わなければいけませんし、苗木君には反省してもらわないといけません」

苗木「軽いなぁ……」

舞園「とにかく、私は苗木君の良い所を沢山知っているんです! 全部合わせてあなたが好きなんですよ」ニコ

苗木「…………」


ダメだこれ。

まさか生きてここを脱出しても、ずっとボクの墓に通い続ける気じゃないよね。

なんて絶望的なんだ。


苗木「はぁ……大和田クン。キミからも何か言ってあげてよ」

大和田「…………」

苗木「え、ちょっと待ってよ、なんでそんなにテンション下がってるの? さっきまで『ブッ殺してやる!!』って言ってたじゃないか」

大和田「うるせえよ……」

苗木「ほら、ボクはキミの兄弟を殺したんだよ? 彼の喉にナイフを刺してね。だからキミはもっと」

大和田「うるせえって言ってんだよおおおおお!!!!!」


聞き慣れた彼の怒鳴り声。

でも、なぜだろう。その声に何か違和感を覚えた。


大和田「オメーがイカれたクソ野郎だってのは分かってんだよ……だからムカつくんだ……それならそれで最初からクソ野郎で居ろよコノヤロウ……!!」

苗木「……え?」

大和田「学校でのオメーはただの演技だったんだろうがよ……それでも俺は、オメーの事を認めてたんだぜ……」


何だこれ。

もしかしてさっきの舞園さんの話にあてられたのかな?

まさかこんな反応が返ってくるなんて。

大和田「考えちまったんだ。もし殺されたのが俺で、ここに居るのが兄弟だったら、ってな。
     そしたらアイツは苗木を心から憎んで処刑して、それを見て満足するのか…………ってよ」

苗木「…………」

大和田「たぶんアイツはそんな事ねえんだ。人殺しのオメーの事よりも、このコロシアイ自体を仕掛けたモノクマを憎むんだろうよ」


確かに、そうだ。

でも、それを大和田クンの口から聞けるとは意外だ。


大和田「だからよ……俺の憎しみはモノクマに向ける事にした。それが兄弟の為に俺ができる事だ」

苗木「…………」

モノミ「苗木君」

苗木「なに?」

モノミ「苗木君は確かに許されない事をしまちた。ですが、思い出してくだちゃい」

苗木「思い出す? 何を?」


モノミ「あなたとみんなの希望のカケラは、確かに集まっていたのでちゅよ」


苗木「……はは、そういえばそんなものもあったね」

モノミ「ですから、こうしてみなさんが苗木君の事を心から憎めないのは絶対に……絶対におかしい事ではないのでちゅ」


みんなの事を見渡す。

するとそれぞれから、今までとは違ったやりきれない視線が返ってくる。


桑田「……ったく、なに舞園ちゃん泣かせてんだ、ふざけんなよテメー」

山田「いつも僕の話に付き合ってくれる苗木誠殿が居なくなるというのも、なんとも寂しいですな……」

朝日奈「私だってまだ信じられないよ……でも、一つだけ分かってる。一番悪いのはモノクマなんだ」

大神「戦うべき相手を見誤ってはいけない。ここに居ると見えづらくなってくる事だな」

戦刃「うん……モノクマさえ居なければ……こんな事に……」

不二咲「僕も怖くて何も考えられなかったけど……でも、やっと分かったよ。僕達は敵同士なんかじゃないんだ」

腐川「ふ、ふん、仲間とでも言いたいわけ……? ま、まぁ、殺されないならそれでいいけど……」


これは予想以上だ。

まさかこの件だけでここまでみんなが変わってくれるとは思わなかった。

これで、モノクマとも戦える。きっと、もうコロシアイなんて起きない。

……嬉しい。本当に嬉しいよ。

 
正直……もう満足したな。

みんなのこの姿を見られたなら、心残りはないよ。

このまま……終わっても……。


セレス「……少し、待ってくださる?」


あれ?


桑田「なんだよ……言っとくが投票をやめろってのはできねえぞ。そういう問題じゃねえんだこれは……」

セレス「いえ、わたくし先程から少し考えていたのですが……気になる点がありまして……」

朝日奈「そういえばセレスちゃんさっきから黙ったままだったけど……どうしたの?」

葉隠「もう事件の事は懲り懲りだべ……もうやめね?」ハァ


十神「……くくっ、俺はいつまでお前達の反吐が出る綺麗事を聞かせられるのかと思ってほっとしたぞ」フッ

霧切「セレスさん、その気になる点というものを教えてくれる? 私達は、まだ終われないはずよ」



……ははは、あははははははははははは!!!

大和田「なっ……ま、まだ何かあるってのか?」

セレス「えぇ、そして、もしかしたらそれは真のクロを導き出す手がかりになるかもしれません」

十神「はっ、もう終わらせてさっさとベッドに入りたいのかプランクトン」

大和田「んだとコラァァ!!!!!」

不二咲「で、でもぉ、真のクロって……これ以上何を……」

朝日奈「うん……正直私もそろそろキツイかも……」

霧切「……いいわ、選ぶのはみんなよ。議論をここで止めたいなら私はそれに従うわ」

十神「なっ……おいふざけるなよ!!!」

霧切「どちらにせよ、みんなに議論する気がないのであれば同じよ。クロを決めるのはみんなの投票なのだから」


霧切さんはいつもの強い瞳でみんなを見回す。

でも、こうしてみんなにそれぞれ自分で決めてもらうなんて。

もしかして、霧切さん…………。


大和田「……まぁ、やるならとことんやるべきだな。兄弟の為にもよ」チッ

桑田「まぁな……かったりーけど、こればっかは文句言ってらんねえか」

朝日奈「……わ、分かったよ。石丸の為にも……だよね」

大神「あぁ、よくぞ言った朝日奈よ」

山田「ふっふっふっ、もうかなり遅い時間ですが、ここからはオタクにとってはゴールデンタイムなんですぞ!」

戦刃「私も夜戦は得意だよ!」

舞園「えっ、苗木君は犯人じゃないんですか!? じゃあやっぱり葉隠君なんですよ!!!」

葉隠「舞園っちは俺に何か恨みでもあるんか!?」ガーン

腐川「も、もう、やるなら早くしなさいよ!! あたしは夜更かしするとすぐニキビできちゃうんだから!!!」

江ノ島「……うぷぷ」


霧切「ふふ、どう十神君。問題ないみたいよ」

十神「ふん、嫌だと言っても無理矢理俺が進めた。関係ない」


凄い……みんな本当に変わった!

これからが楽しみで仕方ないよ!!

不二咲「それでセレスさん、気になる点って?」

セレス「えぇ、みなさんこちらを見てください」スッ


『モノクマファイル』カシャ


桑田「モノクマファイル……だっけか? これがどうかしたのか?」

セレス「これには書いてある情報は少ないですが、一つ無視できない事が書かれていますわ」

朝日奈「無視できない情報…………あれ?」

大神「もしやこの、『体内から薬物反応あり』という所か!?」

山田「や、薬物って……まさか…………」


十神「毒、という事だろうな」


葉隠「なっ、ありえねえべ!!!」

十神「どうしてそう言い切れる? 死因はどこにも書いていないのだぞ」

セレス「むしろ重要な所だからこそあえて書かなかった……という事もあるのでは?」チラ


モノクマ「し、しーらなーい……」ダラダラ

霧切「この件に関与しているのは苗木君だけではない、もう一人居たのよ」

舞園「そ、そんな……それじゃあ苗木君を身代わりにして…………許せない……!!!」キッ

桑田「お、俺じゃねえよ!!」

葉隠「俺でもねえべ!!!」

大和田「俺でもねえよ! つか無差別に睨むな、結構すげえ目しやがるなこのアイドル!!」


確かにみんなを睨む舞園さんの目は凄まじい。怒った戦刃さんレベルだ。

……いや、こっち見た瞬間笑顔にならないでよ余計怖いから。


苗木「えーと、つまりボクは誰かに利用された……って言いたいのかな?」

霧切「えぇ、それもあなたが自分から利用された……とも考えられるわ」

苗木「あはは、面白い事言うね。それだとボクは初めから死ぬ為にこの事件を起こしたみたいじゃないか!」

霧切「そこまでして生き残らせたい誰かが居たのかもしれない……という事よ」

舞園「えっ、誰!? 誰ですか苗木君!!!」

セレス「それは聞き捨てなりませんわね……」

苗木「ね、ねぇ、もう少しシリアスになろうよ……」

戦刃「……そっか、誰かが毒で石丸クンを殺した後に、苗木君が彼を刺したのだとしたら!!」

江ノ島「うぷぷ、クロは苗木じゃなくて毒を使った奴だね」

葉隠「ちょ、ちょっと待つべ!! 確かにモノクマファイルには薬物って書いてあっけど、毒とは限らねえべ!! ほら、風邪薬とか!!!」

十神「確かにな……だが、風邪薬を飲んで血を吐く奴が居るか?」

不二咲「えっ……血を吐いた……? 石丸君が!?」

大神「しかし、毒を飲んで吐いた血など見分けられるのか? 部屋はあの惨状だったのだぞ」

セレス「苗木君も何も首を刺さなくてもよろしかったのに……」ハァ

苗木「そ、そういう問題なのかな……」

山田「霧切響子殿なら、血を舐めれば『ペロッ、これは毒による吐血だ!』などといった感じに分かるのでは?」

霧切「あなた少し勘違いしているようだから言っておくけど、私は探偵であってヴァンパイアではないわ」

舞園「でも……きっと石丸君は毒で血を吐いたんですよ! あっ、もしかして苗木君はそれを隠すためにわざと大量出血させたんですか!?
    うぅ……やっぱりそこまでして助けたい人がいるんですね……!! 誰ですか羨ましいですね!!!!!」キッ

朝日奈「ちょ、ちょっと私を見ないでよ!!!」

葉隠「だあああああ!! とにかく、石丸っちが【刺される前に血を吐いたなんてありえねえ】って!!!」

『乾いた血痕』カシャ


十神「それは違うぞ」ドヤァァ


ガシャーン!!!!!


葉隠「いっ!?」

十神「石丸が苗木に刺される前に血を吐いた証拠はある。石丸の口元と床に残された乾いた血痕だ」

セレス「乾いた血痕……なるほど、確かにそれは刺された時のものではありませんね」

腐川「ど、どうしてそうなるのよ……」

十神「首からの出血は少しも乾いていなかったんだぞ。あれは、刺されてからほとんど時間が経っていない証拠だ。つまり、乾いた血痕というのは、それよりも前からあったという事になる」

腐川「そうよ!! なに白夜様にそんな事わざわざ説明させてんのよあんた達!!!」

桑田「おい」

苗木「なるほど……ね。口元だけじゃなくて床にも残っているのは、石丸クンがトイレの中で吐血したからか」

戦刃「えっと、つまり本当の犯人は石丸君に毒を飲ませて殺した後、苗木君にナイフで刺させたっていう事?」

大和田「おいコラ苗木!! それならオメーは犯人知ってんじゃねえか!!!」

苗木「あはは、ちょっと待ってって。そうとも言い切れないじゃないか。ほら、ボクが石丸クンをトイレに閉じ込めている間に誰かが彼に気付いたのかもしれないしさ……」

霧切「いいえ、あなたとそのもう一人は協力関係にあったはずよ」

苗木「……はは、参ったな。霧切さんにはボクの事なんでも分かっちゃうんだ?」

霧切「えぇ、あなたの事くらいお見通しよ」ドヤァァ

舞園「なっ、私だって何でも知っています! 苗木君が小学五年生までおねしょしていた事も!!」

苗木「なんで知ってるの!? ていうか言わないでよ!!!」

セレス「ふん、その程度ですか? わたくしは苗木君の下着の種類と数を全て把握していますわよ」

苗木「うん……だからセレスさんは盗んだ下着戻しておいてね。ボクが死んだ後でもいいからさ……」ハァ

桑田「……モテるってのも考えものだな」

十神「いちいち脱線させるな愚民どもが。霧切、なぜお前は苗木と犯人が協力関係にあると思うんだ?」

霧切「……私は怪しいと思う人の目星がついているのよ」

朝日奈「えっ、ホント!?」

不二咲「さ、流石霧切さんだぁ……」

腐川「だ、誰よ、もったいぶらないで早く言いなさいよ」

苗木「でもさ、犯人の目星がついたからって、その人とボクが協力関係だなんて言えるのかな?」

霧切「えぇ、言えるわ。なぜならその人物は苗木君の犯行を助け、そして同時に挫く事もした。それはどういう意味を持つのか」

山田「なるほど、分からん!」

大神「助けるだけではなく挫いた……か」

朝日奈「うーん……その人も苗木と同じで上げて落とすのが好きな人?」

苗木「いや別にボクはそういう趣味があるわけじゃ……」

戦刃「い、いいよ、苗木君がそういうのが好きなら……私……///」

苗木「だから違うってば!!」

大和田「そこは否定すんだなオメーも」

十神「ある程度までは苗木の計画を手伝い、失敗する要素も用意した。つまり、苗木に罪を被せて自分は助かろうとしていたのだろう。
    そして、その方法はお互いが協力関係になければ考えられないものだった。そこまで分かれば当てはまる奴などすぐ分かるはずだぞ」イライラ

江ノ島「えー、あたしバカだから分かんなーい。ねぇねぇ教えてよ、苗木がそこまでして助けたい人なんでしょ!?」ニヤニヤ

舞園「えぇ、私も気になります!」

セレス「その方には処刑前にじっくりとお話を聞く必要がありますわね」

霧切「……私が最初にその人に疑問を持ったのは、停電後に戦刃さんが慌てて大広間に入ってきた時の会話よ」

戦刃「えっと、それって私が倒れている舞園さんを見つけてみんなを呼びに行った時?」

桑田「あん時の会話つってもなぁ……あんまし良く覚えてねーぞ」

霧切「大丈夫、私が覚えているから。あなた達には確認をしてほしいのよ」

戦刃『みんな!!! ちょっと来て!!!!!』

不二咲『ど、どうしたのぉ……?』ブルブル

戦刃『じ、事務室で…………とにかく来て!!』

葉隠『なっ、舞園っちに何かあったんか!?』

桑田『はぁ!? くっそ、行くぞ!!!』


不二咲「よ、よく覚えてるねぇ……確かにそう言ったかもぉ……」

戦刃「うん……霧切さんの言う通りだと思うよ!」

桑田「俺もたぶん……そんな感じの事言ったっけか」

葉隠「いやー、あの時はマジで焦ったべ! もしかして舞園っちが死んじまったんじゃねえかってな!」

舞園「私はアイドルの道を極めて苗木君と結婚するまで死にません」

苗木「なんかそれだとアイドルを極めた先にボクが居るみたいなんだけど……ボクってそんなに大層な人間じゃないよ……?」

霧切「……停電前は事務室には苗木君と舞園さんが居た。それに停電中にモノミが石丸君の事も呼んでいたわね」

朝日奈「確かにそうだったけど……それがどうかしたの?」


霧切「ねぇ葉隠君、あなたはなぜ舞園さんだけの名前を出したの?」

寝るべ

>>431


その瞬間、一斉にみんなの視線が葉隠クンへと向けられる。

いや、だから舞園さん目怖すぎだから。

そして、当の葉隠クンはというと、一瞬呆然とした後、ダラダラと大量の汗をかき始める。


葉隠「あっ……い、いや……それはだな……!!!」

霧切「結果的にはあなたの言っている事はおかしくなかった。本当に舞園さんが倒れていたのだから。
   でも、あなたはなぜあの時点で襲われたのが舞園さんだって分かったの? その時戦刃さんはまだそこまでは言っていなかったわよね?」

戦刃「う、うん、そうだよ……おかしいよ葉隠君……!」

朝日奈「葉隠……あんたなの!?」

桑田「マ、マジかよ……俺達は葉隠に騙され続けてたのか……?」

大神「抜けた様子を見せていたのは我らを欺くためのものだったか」

腐川「はっ、あ、あたしはそいつの事ずっと胡散臭いって思っていたわよ……」

山田「た、確かに信用ならない人ではありましたが……まさかここまでの策略を巡らせる人だったとは……」

舞園「やっぱりあなたじゃないですか!!!」

セレス「葉隠君ごときに追い詰められていたとは……一生の不覚ですわ」

不二咲「そ、そっかぁ……あのまま苗木君をクロにしていたら僕達……」

江ノ島「あれ、ちょっと待ってよ。それじゃあ苗木がそこまでして助けたかった奴って…………葉隠?」

「「…………」」


なんだか嫌な感じの沈黙が流れる。

舞園さんとセレスさんからの視線が特に痛い。


山田「アッー!!」

苗木「それは違うよ! なんでそうなるのさ!!」

舞園「な、苗木君……? あの」

セレス「まさか真の敵は同性ではなく異性に居たとは。迂闊でしたわ」ギリッ

苗木「待って、誤解だよ! ボクは女の子が好きだ!」

十神「おい、苗木がホモかどうかなど今はどうでもいいだろう。それより葉隠、何か言い分はないのか?」

葉隠「あるに決まってるべ!! そんな一言だけで犯人にされたらたまんねえっての!!」

朝日奈「でも、あの言葉は明らかにおかしいって!!」

腐川「あんた知ってたんでしょ、苗木が何かやらかすって……」

葉隠「あ、あれはだな……そう、ほら、何かあるとすれば舞園っちが一番可能性が高いだろ! 可愛いしよ!」

舞園「あなたに可愛いと言われても何も嬉しくありません」

桑田「そりゃそうだ。こんな奴に言われてもな!」

舞園「あ、桑田君に言われても嬉しくないですよ? 苗木君だったら飛び上がるくらい喜びますけど♪」ニコ

苗木「いや、期待した目で見ないでよ……一応真面目な場面だってここ……」

桑田「」チーン

十神「だが葉隠、お前が起こしたミステリーサークル騒ぎとやらで苗木は石丸を運ぶチャンスを得た。
    そして、お前が倉庫にあったアイロンのコンセントを抜く事で苗木は停電のトリックを使えなくなり、追い詰められた。これは偶然か?」

葉隠「偶然だべ!!!」ドーン

不二咲「凄い……堂々と言い切ったよぉ……」

セレス「流石に苦しいですわよ葉隠君」

葉隠「そんなん知るか!! 偶然なもんは偶然なんだべ!!! だいたい、俺がいつ石丸っちに毒を飲ませられたんだっつの!」

大和田「おい、いい加減しろよテメー!!」ボキボキ

苗木「待ってよ、大和田クン。彼の話もちゃんと聞こうよ」

戦刃「え……ええ? ど、どうして苗木君が庇うの……?」

桑田「諦めろ、考えても分かんねーよ。なんか俺も慣れてきたぜコイツの壊れっぷりによ……」ハァ

セレス「あなたも適応してきたという事ですわね」ニコ

山田「元々Sだったのに叩かれ続けて、いつの間にかMになったようなものですな」

腐川「なんであんたはいちいちそんな気持ち悪い事しか言えないのよ……」

朝日奈「だから脱線しすぎ! なんの話してたのか分かんなくなっちゃったよ!」

大神「……葉隠はいつ石丸に毒を飲ませる事ができたのか、だったな」

不二咲「それは、苗木君が石丸君をトイレに閉じ込めた後こっそり……」

十神「……いや、まず苗木が石丸をトイレに運ぶ所から考えてみろ。
    苗木は台車を使って石丸を運んだようだが、例え気分が悪くて寝ていたとしても、流石に起きるんじゃないか? 台車の金具に挟まって髪の毛まで抜けているんだぞ」

江ノ島「ん、つまりどゆこと?」

戦刃「石丸君はただ自然に眠っていたわけじゃないっていう事だね。それか苗木君相手でも抵抗できない程弱りきっていた……っていう事かな」

舞園「少しも抵抗できない程弱りきっていたって……もしかして……」

十神「あぁ、石丸はその時点で毒が効いていた可能性がある」


十神クンの言葉に、みんな静まり返った。


朝日奈「そ、そんな……じゃあもしかしてあの時ソファーで寝ていた石丸は毒に苦しんでて……それなのに私、助けられなかったの……!?」ブルブル

大神「朝日奈よ、あまり自分を責めるな。お主の責任ではない」

桑田「ウソだろ……石丸は俺達の目の前で毒に苦しんでたってのか!?」

腐川「だ、誰か気付きなさいよね……」

苗木「仕方ないよ、みんなは毒を飲んだ人なんて見た事ないんだしさ。あ、霧切さんが居れば気付いたのかな?」

大和田「オメーは気付いてたんだろうがよぉ……!! ちっ、おい、それで葉隠はいつ兄弟に毒を飲ませたんだ!?」

葉隠「決めつけてんじゃねーよ!! 俺は石丸っちに【何も飲ませてねーべ!!!】」

犯人はヤス(ヒロ)

『ゲテモノジュース』カシャ


霧切「それは違うわ」キリッ


ガシャーン!!!


山田「高校生探偵キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」

葉隠「な……何が違うんだべ! ずっと黙ってたくせによ!!」

霧切「あなたは確かに石丸君に飲ませていたものがあったはずよ。掃除当番のみんななら知っていると思うけど」

桑田「……いや、流石に毒飲ませてる所見りゃ気付くっての」

朝日奈「うん、力尽くで止めたはずだよ!」

腐川「だいたい、あたし達の前で毒なんて飲ませるわけないじゃない……」

苗木「…………あのゲテモノジュース、だね?」


ボクの言葉に、掃除当番のみんなの血の気が引いた。

でも、一番変化が大きかったのは葉隠クンだ。

 
葉隠「……あ……な、苗木っち………?」

苗木「なに?」ニコ

葉隠「…………!!」パクパク


あはは、なんだろう葉隠クン。

ボクにはエスパーなんてないんだから、言いたい事があるならハッキリ言ってもらえないと分からないよ。


朝日奈「そっか……そうだよ!! あのジュースを飲んでから石丸はソファーで寝込んじゃったんだよ!」

桑田「確かウインナーソーセージ珈琲だっけか? そういやあれ……石丸は葉隠に貰ったとか言ってたよなぁ……しかも飲みかけをよぉ!!」

大和田「つーかオメーら最初から怪しいって思えよ!!」

腐川「仕方ないじゃない、だってアイツが最後に発した言葉って『マズイ……』とかよ。毒飲まされただなんて思わないわよ……」

苗木「うん……それに血を吐いたりもしなかったし…………あれ、それだと少しおかしくない?」

葉隠「そ、そうだべ! 毒飲んだならその場で血を吐くはずだろ!」

十神「毒にはじわじわ効いてくるものなどいくらでもある。見苦しい悪あがきをするな」

戦刃「うん……十神君の言う通りだよ。毒の事なら私も少し分かるもん」

葉隠「ぐっ!!」

江ノ島「うぷぷ、毒に詳しい高校生ってのもおかしいよねー」

不二咲「え、えっと、つまり葉隠君が毒で弱らせた石丸君を、苗木君がトイレに運んで……」

大神「石丸はその後毒が完全に回り、トイレの中で血を吐いて死んだ。そして死んだ石丸を苗木がナイフで刺した、というわけか」

山田「ややこし過ぎますぞ!!」

セレス「……これらの事を全て葉隠君が考えられるとは思えませんわ。計画自体を企てたのは苗木君……あなたですね?」

苗木「はは……買いかぶりすぎだって……」

舞園「そ、それでも直接石丸君を殺害したのは葉隠君です! それなら苗木君はクロではありませんよね!?」

モノクマ「うん、その場合は実行犯である葉隠君がクロだね」

モノミ「ど、どちらにせよ、苗木君もクロと変わらないでちゅよ……先生は悲しいでちゅ……」グスッ

葉隠「おいちょっと待てって! 俺を犯人だってことで話を進めんな!!」

霧切「……葉隠君。あなたが事件に関与している証拠はまだあるのよ」

葉隠「うがああああああ聞きたくねーべええええええ!!!」


葉隠クンはついに両耳を押さえてしまった。

あれが何の解決になるんだろう……。


十神「それなら今すぐ投票を始めるぞ。対象はもちろん葉隠だ」

葉隠「やめろおおおおお!!!」

朝日奈「聞こえてんじゃん……」

大和田「往生際がわりーぞ葉隠!! 最期くらい漢らしく堂々としたらどうだ、あぁ!?
     オメーみてえのに兄弟が殺されたって考えると、やりきれねえんだよチクショウが!!!」

葉隠「ぐぅぅ……!!」チラ

苗木「…………なに?」シラッ

葉隠「っ……ぅぅぅうう……!!!」

霧切「葉隠君、少し商売の話をしましょうか。私、あなたの占いに興味があるのだけど」

葉隠「マジで!? よしよし、そういう事なら占ってやんべ! 一回十万円、初回サービス九万円だべ!!」

桑田「なんつー立ち直りの早さだ……」

『商売文句を書いた紙』カシャ


霧切「えぇ、料金の事は知っているわ。これ、あなたが書いたものよね?」スッ

葉隠「なっ、どこでそれを!?」

霧切「ごめんなさい……どうしてもあなたの占いの事が知りたくて、あなたのコテージから持ってきてしまったわ……」

葉隠「……なんだなんだ、そういう事なら構わねえべ! わっはっはっ!!」

不二咲「そ、それでいいんだぁ……」

大神「つくづく商売命な男だ」

セレス「ふふ、相手を知りたい気持ちは止められないものですわ」

苗木「いや、キミは少し自重しようよ。ホントに後でボクの下着戻しておいてよ?」

舞園「ふふ、それにしてもどうしたんですか、霧切さん? もしかして葉隠君に乗りかえるとか? それなら私は一向に構いませんけど」ニコニコ

霧切「そこの恋愛脳のスイーツは置いといて、話を続けましょう。この紙の商売文句、とても綺麗な字だけど、あなたが書いたの?」

葉隠「おう、もちろん! へっ、綺麗な字ってのも占いには重要なんだべ!」ドヤァァァ

舞園「ちょっと、今なんて言いました!?」

霧切「…………そう。それが聞ければ十分よ、ありがとう」

葉隠「えっ、う、占いは?」

そーいや毒?入りコーヒー回収したの苗木さんでしたね
支援

霧切「そんなもの、私が興味あるわけないじゃない。そこのスイーツ相手にお金巻き上げていれば?」キリッ

舞園「さっきから何なんですかあなたは!!!」ムカッ

葉隠「騙された……べ……」ガクッ

腐川「いつもあんたがやってる事じゃない……」

江ノ島「てか今だってあたし達を騙して自分だけ助かろうとしてるしね!」ニヤ

葉隠「ち、ちげえって! 俺はクロじゃねえ、占いにもそう出てるべ!!」

戦刃「でもそれって七割外れるんだよね……?」

葉隠「三割当たるって言え!」

十神「どうでもいい。それで霧切、今の問答にどんな意味があったんだ?」

山田「意味……? 舞園さやか殿が恋愛脳のスイーツ()だという事を証明したのですか?」

舞園「なっ……どんだけ性格悪いんですか!!!」

霧切「落ち着いて、舞園さん。私がわざわざあなたの為に余計な時間と酸素を消費するわけないじゃない」

舞園「そ、そうですか……それならいいですけど…………あれ、今私凄くバカにされませんでした?」

朝日奈「もう、ケンカなら後でやってよ! それで、霧切ちゃんはどうして葉隠のくだらない商売話を聞いたの?」

霧切「それを説明する上で、まずみんなにはこれを見てもらいたいの」スッ

『脅迫状』カシャ


霧切さんが取り出したその紙を見た瞬間、みんなは凍りついた。

当たり前だ、そこにはハッキリと殺人予告が書いてあるんだから。


大和田「おいおい、なんだそれは!!!」

不二咲「脅迫状……だよね……」ブルブル

十神「文面を見る限り石丸に出されたもののようだな」

苗木「その通りだよ、これは石丸クンの部屋から見つかったんだ」

葉隠「な、苗木っち!?」

桑田「……まさかアイツ、これを読んで俺らを一箇所に集めようとしたのか!」

霧切「えぇ、そうでしょうね。そして、その場所にホテル旧館を提案したのは苗木君……あなただったわね?」

苗木「……うん、そうだね」

朝日奈「そ、それじゃあこれも苗木が!?」

大神「なるほどな、そうやって我らを旧館に集め、トリックを仕掛けたのか」


霧切「いえ、違うわ。これは苗木君が書いたものではない」

セレス「……苗木君ではない? となると共犯関係にあると思われる」チラ

葉隠「そんなもん俺は知らねえ!!! 苗木っちとも共犯なんかじゃねえよ!!!」

十神「……ふん、先程の霧切と葉隠の問答の意味はそういう事か」

戦刃「えっ、この脅迫状と関係あるの!?」

腐川「ふふふ、流石は白夜様……!」

江ノ島「あのさー、ドヤ顔はいいから早く教えてよ」ハァ


苗木「筆跡……だね?」


その瞬間、葉隠クンが怒りの表情で睨んできた。


葉隠「オメーは何なんだよ!!!!! なんで……なんでだべ……!!!!!」

苗木「どうしたの?」ニコ

葉隠「~~~~!!!」

山田「筆跡……ほう、なるほど! この綺麗な字は葉隠康比呂殿のものですな!」

葉隠「待てって!! こんなもん、【ワープロ使えば】いくらでも似せられんだろ!!!」

『モノクマの証言』カシャ


霧切「それは違うわ」キリッ


ガシャーン!!!


葉隠「な……にが……?」

霧切「この島にはワープロ関係のものは置いていないのよ。そうよね、モノクマ?」

モノクマ「はい! ボクは手書き推進派ですので!」

モノミ「た、確かに手書きも大事でちゅけど、いくらなんでもやりすぎでちゅ……」

十神「つまり、あの字を書けるのは葉隠しかいない、という事だな」

朝日奈「……あれ、でも確かパーティーの横断幕にも、ワープロで打ったような綺麗な字が書かれてたような…………」

桑田「いや……あれを用意したのも葉隠だったはずだぜ」

葉隠「あ……いや……ま、待つべ……これは…………!」

舞園「これで決まりです!! やっぱり犯人は葉隠君だったんですよ!!」ビシッ

不二咲「そ、そういえば、舞園さんはもっと前から葉隠君が犯人だって言ってたね……」

大神「むっ、それではお主は気付いていたのか?」

舞園「ふふ、エスパーですから」ニコ


エスパー万能すぎるな……。


山田「真実はいつも一つ。キミの負けです!」キリッ

江ノ島「意外といい声してんのよね山田って」

葉隠「あ……がぁ……!!」

セレス「これ以上醜態を晒してどうするんですか。もう楽になったらどうですか?」

戦刃「うん……もう言い逃れはできないよ!!」

苗木「――いや、まだだよ」

大和田「分かった分かった、オメーは黙ってろ。オラどうした葉隠ぇぇ!!!」

苗木「ちょ、ちょっと聞いてって! 葉隠クン、諦めちゃダメだよ!」

喋ろうとしないクロ候補をageて口を割らせる
苗枝さんの作戦だから(震え声)

腐川「や、やっぱり苗木ってソッチ系なんじゃないの…………汚らわしい!!」

山田「おや、僕は『ホモが嫌いな女子なんていません』という名言を見た事がありますが……」

舞園「うぅ……私、負けませんよ! 例え相手が男の人でも!!」

戦刃「え、えっと、私もそういうので差別とかしないから大丈夫だよ苗木君……?」

セレス「というより、葉隠君はこのまま処刑されるので問題ありませんわ」

苗木「だからそれは誤解なんだって!」


葉隠「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


突然、葉隠クンが雄叫びをあげた。

もしかして何かに覚醒した?

葉隠「俺はやってねえ!!! 犯人は苗木っちだべ!!!」

十神「ふざけるな。根拠を言え」

葉隠「俺がやってねえって言ってんだからやってねえんだべ!!」

山田「ですが、キミは大広間で妙な事も口にしていたではないですか! 停電後、舞園さやか殿の名前だけを挙げた事です!」

葉隠「知らねえ知らねえ!! 俺はそんな事言ってねえ!!!」

大神「ミステリーサークル騒動に、アイロンのコンセント。これも偶然とは思えんぞ」

葉隠「偶然なもんは偶然なんだべ!!!!!」

桑田「じゃあ石丸がオメーから受け取ったジュースを飲んでから体調を崩したのも偶然だってのかよ!!」

葉隠「そうだべ!!! それ以外に考えられねえ!!!」

江ノ島「あはははは、ダメだこりゃ」

葉隠「オメーらは何も分かってねえべ!!! 俺は悪くねえ!!!」

朝日奈「苗木がやれって言ったんだーって? それでも人殺しには変わりないよ!」

大和田「そうだ、毒を飲ませたのはテメーじゃねえか!!!」


葉隠「うるせええええええ!!! 俺は【薬一つ持ってねえべ!!!】」

『白い粉』カシャ


霧切「それは違うわ」キリッ


ガシャーン!!!


葉隠「………は?」

霧切「あなたのコテージのゴミ箱からこんなものが出てきたわ。薬一つ持っていないなら、これは何かしら?」スッ

不二咲「そ、それってもしかして……!!」ブルブル

腐川「どう見ても毒じゃない……」

葉隠「ち……ちげえええよ! それはあれだ……そう、砂糖か塩だべ!! 俺、実は料理すんだ!!」

十神「……どうやらまだ少量だが残っているようだな」


十神「それじゃあ葉隠、それがただの砂糖か塩なら残っている粉を全て飲んでみせろ」ギロ


葉隠「!!!!!」

充電切れるべ

水晶球を砕いて飲ませんたんだべ!
苗木っちは本当にクロいやつだべ

>>571

十神クンの言葉に、葉隠クンは完全に動きを止めた。

ただ呆然と、何も見えていない様子で立ち尽くしている。


葉隠「…………」

十神「どうした? できないのか?」

朝日奈「黙ってないで何か言いなよ葉隠!!」

大和田「おいコラ葉隠ぇぇ!!!」

葉隠「…………」

江ノ島「あはは、もしかしてそうやって黙ってれば何とかなるとでも思ってんの? それでも勝手に投票始めちゃうってば」

戦刃「うん……だからせめて何か話してよ……」

大神「葉隠よ、お主は負けたのだ。それを認める事だ」

不二咲「弱さを認める事も強さの内……だと思うよ?」

腐川「ふ、ふん、どうせあんたはいつかやるとは思ってたわよ……」

桑田「苗木にそそのかされたとか何でも言い訳は聞いてやるから、とりあえず話せっつの」

山田「ほれほれ、全部吐いちまえば楽になりますぞ……?」

舞園「正直に話した所で私は許しませんけどね。苗木君に罪を被せて自分だけ助かろうとしたんですから」

セレス「まぁ、わたくし達が許そうが許すまいが、彼は処刑されるので関係ありませんわ」

霧切「…………」

苗木「……ねぇ、葉隠クン」

葉隠「っ!!」ビクッ

苗木「本当の裁判とかでもさ、早い内に自白して反省した方が罪が軽くなるんだよ。
    大丈夫、キミだけが悪いわけじゃないんだ。だからもう、全部話してみよう?」

葉隠「…………」


ボクの言葉に、葉隠クンは俯いた。

そして次第にポツリポツリと話し始める。


葉隠「……そうだよ、俺がやったんだ」


その言葉に、みんなはただ押し黙った。

葉隠「だけどよぉ、元々は苗木っちから誘ってきたんだべ!! 『キミだけがほぼ確実に脱出できる方法がある』ってよぉ!!
    なんだよこれ、全然ダメじゃねえかよ!! あのまま苗木っちがクロにされるんじゃなかったんかよ!!!」

十神「……やはりか」ジロ

苗木「あはは、バレちゃった」テヘ

舞園「なぜ……葉隠君なんですか……?」

セレス「えぇ。苗木君と葉隠君は特別仲が良いようにも思えませんでしたが……」

霧切「……それって苗木君がコロシアイが起きるかどうか知る為に試した事っていうのと関係しているんじゃないかしら」

苗木「流石霧切さんだね。うん、その通りだよ。ボクは葉隠クンに殺人計画を話して試したんだよ。
   ボクの見た感じだと彼が一番小さな希望しかないようだっからね。逆に言えば、彼がその計画に乗らなければ、他の人も乗らないだろうって思えた」

桑田「……で、葉隠はまんまと飛び付いたわけだ」

苗木「考える素振りも見せなかったね。即答だよ即答」

葉隠「し、仕方ねえだろ、他の奴らだって同じように受けたに決まってるべ!! そうだろ!?」


そう言って葉隠クンはみんなを見渡すけど、返ってくるのは敵意のこもった視線だけだ。


葉隠「な……なんだよ……良い子ぶってんじゃねーよ!! 人間、誰だって自分が一番可愛いんだっつの!!!」

苗木「……はぁ。とにかく残念だったよ。ボクとしては受けてほしくなかったんだけどね。
   お陰で石丸クンを殺すことになってしまった。コロシアイが起きないって確信できたらもっと別の方法もあったんだけどね」

大和田「もうオメーの言い分は分からねえ事がよく分かったから黙っとけ」

朝日奈「葉隠あんた……ろくな奴じゃないとは思ってたけど、ここまでとは思わなかったよ!」

江ノ島「えっ、そう? コイツってこんなもんじゃん!」

腐川「ま、まさかこんな汚ギャルと意見が合うなんてね……」

大神「葉隠よ。本当の強さというものは」

葉隠「うるせええええ!!! 説教か!? そんなもん聞きたくねえべ!!!」

セレス「……そうですわね、これから死ぬあなたにいくら言っても仕方ありませんわ。投票を始めましょうか」

葉隠「待てよ!! 待てってば!!!」

不二咲「え、えっと……結局、この事件はどういう流れだったのかな……?」

山田「ううむ、確かに僕も頭がこんがらがっていますぞ。犯人は葉隠康比呂殿という事は分かりますが……」

舞園「苗木君が犯人じゃないと分かっていれば十分ですよ」

戦刃「そ、それでいいのかなぁ?」

苗木「あはは……でもこの際だし、事件を最初から振り返ってみようか」

苗木「まず昨日の夜、ボク達はモノクマによって、仮想現実の世界で自分の死の直前まで体験する事になった。
   そして明後日までにコロシアイが起きなければ、最後まで見せると脅しをかけた」

苗木「当然、そんなものを見せられて平然としていられる人なんてそうそう居ない。ボクもかなりキツかったしね。
   ただ、それでもコロシアイなんて起きないと思いたかったんだけど、桑田クンがあそこまで取り乱しているのを見て不安になった」

苗木「だからボクは試してみる事にしたんだ。実際に殺人計画を持ちかけて、乗っかってくる人が居るかどうかをね。
   その時は、その計画を持ちかける相手は桑田クンにしようかとも思っていたんだけど、その前にボクに接触してきた人が居た」

苗木「そう、葉隠クンだ。実は彼はみんなの中で一番あの死の光景に怯えていた。何とかあれを回避できないかと考えたんだ。
   回避するにはコロシアイを起こすしかない。でも、彼は自分自身の力をよく分かっていた。いくらトリックを仕掛けても、霧切さんや十神クンを欺けるとは思えなかったんだ」

苗木「そんな彼が思い付いたもう一つの選択肢。それは自分は誰も殺さない代わりに、誰かに死んでもらおうというものだった。
   つまり、葉隠クンはボクに自殺を頼んだんだよ。ボクを選んだ理由は、一番引き受けてくれそうだから、だそうだ」

苗木「まぁ、条件がコロシアイで自殺でもいいのかっていう疑問はあるけど…………そこら辺はモノクマにでも聞いたのかな?」

モノクマ「はい、聞かれました。まぁ、殺人に見せかけて自殺っていうのも面白いからアリにしたよ!」

苗木「で、ボクはそんな彼の様子を見て確信したんだ。ボク達の中で一番小さな希望しか持っていないのは葉隠クンだって。
   だからボクはすぐに彼に殺人計画の話を持ちかけた。すると驚くほどすんなり乗っかってきたんだ。流石にボクも絶望したね」

苗木「まぁでも、そのくらいの絶望で凹んでいるわけにもいかない。ボクはその夜の内に彼に計画の詳しい内容と毒を渡した。
   石丸クンへの脅迫状を書いたのもその時で、葉隠クンが彼のコテージのポストに入れておいた」

苗木「そして次の日の朝、脅迫状を受け取った石丸クンは期待通り今夜はみんなで集まろうと提案してくれた。
   すかさずボクは場所にホテル旧館を提案して、掃除当番にもなった。同じように葉隠クンにも掃除当番になってもらう必要があったけどね」

苗木「そして旧館の掃除中。葉隠クンはボクが渡した毒をジュースに入れて石丸クンに渡した。
   他のみんなの前で飲ませたのもわざとだよ、他の人のジュースも渡すことでそう仕組んだんだ」

苗木「そして毒を飲んだ石丸クンは体調を崩す。でもあの毒は青酸カリみたいにすぐ死ぬようなものではないから、マズイジュースを飲んだギャグのように装う事ができた。
   当の本人もソファーに横たわりながら『マズイ』なんて言ってくれたからね。あれはファインプレー……いや、彼にとってはそうでもないか」

苗木「その後、葉隠クンは手はず通りにボクと石丸クン以外の掃除当番を外に連れ出した。ミステリーサークルなんてものを使うのは予想外だったけどね。
   とにかく、衰弱した石丸クンと旧館に二人残されたボクは、台車を使って彼をトイレに運んで、体を縛って放置した。そのまま毒が回って死んでくれるようにね」

苗木「その後、外からテープを使って鍵をかけて、また外から開けられるように、テープの端はトイレの扉に目立たないように貼っておいた。
   そして、外に出て旧館の裏手に回ってみんなと合流したんだ。よく分からないミステリーサークルに困惑してる掃除当番のみんなとね」

苗木「エアコンのタイマーとかアイロンとか暗視スコープとかを仕掛けたのは掃除中だ、みんなごたごたしてたから怪しまれずにできたよ。
   あと掃除中に葉隠クンにやってもらう事があった。それは石丸クンの様子を確認してもらう事だよ」

苗木「だからボクは倉庫から床下へ行ける扉を教える為に、葉隠クン以外のみんなを倉庫に集めた。葉隠クンにはもう教えたからって言ってね。
   その時葉隠クンはトイレの中に入って石丸クンの状態を確認したんだ。血を吐いて死んでいる石丸クンをね」

苗木「ただ、その後はちょっと焦ったよ。石丸クンの死を確認した葉隠クンが想像以上に動揺していてね。まぁ、バレはしなかったから良かったけどさ」

苗木「パーティーが始まってからモノミに外だけではなくて、大広間の前でも見張りをしてもらった。モノミの証言は必要だったからね。
    その後パーティー中に葉隠クンは桑田クンを連れて倉庫に向かった。アイロンをコンセントから抜く為にね。桑田クンはその証人だ」

苗木「エアコンのタイマーの設定時刻近くなったら、ボクは舞園さんと事務室へ向かった。相手はとりあえず女子なら良かったかな。霧切さんとか大神さんとか戦刃さん以外ならね。
    そしてタイマーの設定時刻になっても停電は起きなかった。当たり前だよね、そう仕向けていたんだ。だから、ボクは予定通りに舞園さんをスタンガンで気絶させた」

苗木「それからテーブルを踏み台にした上で、物まで使って何とかブレーカーを手動で落としたんだ。ほらボクってそんなに大きくないからそれなりに苦労したよ。
    ブレーカーを落としたボクは用意していた暗視スコープを使って事務室を出ると、トイレに入って既に死んでいる石丸クンの首にナイフを刺した」

苗木「後はボクはそのままナイフを握ったまま気絶したフリをして、トイレの中でみんなを待っていたってわけさ。死んだ石丸クンと一緒にね」


……はぁ、疲れた。

こうして話してみると中々面倒な事をしたものだなぁ。

でも、その割にあった成果は上げられた。みんなは確実に成長する事ができた。

だからきっと、みんなはボクの期待通りの結末へ導いてくれる。

全員が協力してモノクマを打ち倒す結末へとね!


十神「ふん、まぁ中々……といった所か。最初の事件にしては悪くないんじゃないか」

朝日奈「な……何言ってんの! これが最初で最後だよ!!」

セレス「ここまで策を講じても見抜かれてしまうのです。誰かを殺して脱出するという考えは止めた方がいいですわね」

不二咲「そ、その前に人を殺すなんてダメだってばぁ……」

大和田「ちっ、毒を飲ませただとか、縛っただとか、ナイフで刺したとかよぉ……オメーら人の命を何だと思ってんだ」

江ノ島「お、暴走族のくせにまともな事言うじゃん。まー、そのくらいはギャルにも分かるけどさー」

戦刃「うっ……わ、私はそんなに言えないかも……」

大神「クラスメイトにここまでする事ができるとはな……我もまだまだ見えていないものばかりであったようだ」

山田「このような非日常的な空間では非日常的な事態が発生する。まぁ、考えてみれば当然ですな、ラノベではお馴染みですし」

桑田「にしたって、キツすぎんだろ。現実なんだぜここは」

腐川「事実は小説より奇なり……ってやつかしら……」

舞園「苗木君……やっぱり殺人なんてダメですよ。考えなおしてはくれないですか?」

苗木「いや、今更言われても……もう石丸クン殺しちゃったし、葉隠クンが。それにボクは後悔なんかしてないよ、むしろ満足してるよ!」ハハハ


葉隠「おいモノクマ!!! 俺は……俺は処刑されるんか!?」


葉隠クンは必死の形相で尋ねる。

ここまで本気の人間の顔というのも初めて見たかもしれないな。


モノクマ「うん、キミに投票されれば、例えキミがクロであろうとなかろうとどっちにしろキミは死ぬね」

葉隠「やめてくれ!!! 助けてくれよおおおおおおおお!!!!!」

モノクマ「いや、ボクに言われても。投票権を持っているのはみんなだし、そっちに言ってよ。キミが殺ったわけじゃないなら、そう訴えなよ」

葉隠「殺ったよ……殺ったけどよ!!!!! オメーも分かってんだろ、俺は苗木っちにそそのかされたんだよ!!!!!
    苗木っちがあんな事言ってこなければ、石丸っちを殺す事なんてなかったんだよおおおおおおお!!!!!!」

モノミ「ぅぅ……葉隠君……」グスッ

モノクマ「いやいや、殺しちゃったんなら罪は償わないと。例えそれが誰かに仕向けられたものだとしても、殺人は殺人だよ。こんなの小学生でも分かると思うけどなぁ」ハァ

葉隠「い、いやだべ……ほら、情状酌量の余地ありとか……」

モノクマ「そんなのありません! これだから最近のゆとりは!!」

苗木「大丈夫だよ葉隠クン」ニコ

葉隠「はああ!? 元はと言えば全部オメーのせいだべ!!! オメーさえ居なければ俺はこんな事にならなかったんだ!!!!!」

苗木「いや、キミは素晴らしいよ。よく働いてくれた。キミの今の状態をそこまで悲観してはいけないよ! だってこの事件のお陰でみんなは成長してくれた。
    キミみたいなゴミみたいな小さな希望しか持てない人でも、みんなの役に立つ事ができたんだ! だから、心残りなんてないはずなんだよ!!」

葉隠「心残りなんてありまくりに決まってんだよ!!!!! 俺は死にたくねえ……死にたくねえよおおおおお!!!!!!」

大和田「…………ちっ、ここまで哀れな格好晒されると言いてえ事もなくなるぜ」

セレス「これは葉隠君の為にも、もう終わらせて差し上げるべきでしょうか」

桑田「くそっ、こんな奴でも後味わりーなちくしょう」


霧切「……一つ、いいかしら」

 
霧切さんの声で場が静まり返る。

特に大きな声でもないのに、彼女の声にはそんな力があるみたいだ。

先程から喚いていた葉隠クンも、ただ彼女の方を向いて黙っている。


霧切「苗木君、ハッキリさせておきましょう」

苗木「何を?」


霧切「私はあなたの事が好きよ」


…………ん?


苗木「え、なんだって?」

霧切「私はあなたの事が好きよ」

苗木「……いや、でもキミは殺人を企てる人なんて許せないって言ってたじゃないか」

霧切「えぇ、許せないわ。でも、好きなの。悪い?」

苗木「いや、悪いとは言ってない……けど……」

 
いきなりの事過ぎて、いつもは突っかかってくる舞園さんやセレスさんまで呆然としている。

それは当然だ、ボクだって何が何だか分からない。


霧切「ずっと自分に言い聞かせていたわ。あなたは憎むべき相手。一切の情も持ってはいけないって。
    でも、無理だったの。これだけあなたが残酷な事を……許されないような事をしても、どうしてもダメだったの」

苗木「…………」

霧切「私は探偵失格ね。真実よりもあなたを取りたいと思ってしまう。そんな事間違っているって分かっているのに。
    こんな理屈の通らない行動を選びそうになってしまう辺り、私は本当に変わったものね。これもあなたのせいよ」

苗木「…………」

霧切「私はどうしても譲れない希望を持っている。それはいつかあなたと分かり合って、お互いが納得する答えを出す事。
    どれだけ時間がかかったとしても、私はあなたと一緒にその答えを探していきたい。ずっと……ずっと一緒に居たい」

苗木「それが……キミの答えなの? それならガッカリだ。本当にガッカリだよ」


口に出しながら、ボクは思った。

そんな事はない。きっと彼女なら大丈夫。

根拠のない安心感が、今はとても信頼出来る。


霧切「あなたの望みを聞かせて、苗木君」

苗木「ボクの……望み?」

霧切「えぇ。私って意外と尽くす女よ。好きな人の望みなら……叶えてあげるわ」


……ああ、そういう事か。

何だか、こう周りくどい所も霧切さんらしいなぁ。

でも、そういう所も…………大好きだよ。


苗木「ボクの望みはみんながどんな絶望にも負けない大きな希望を持って、モノクマに立ち向かい、打ち勝つ事だ」

霧切「…………分かったわ」


霧切さんは口元に小さな笑みを浮かべて頷いた。

そして、視線をみんなに移す。


霧切「この事件はまだ終わっていないわ。犯人は葉隠君じゃない」

 

また、沈黙。

だけど今度はそう長くは続かなかった。


大和田「おい……まだあんのかよ?」

朝日奈「ウソでしょ……今度こそ終わったって思ったのに……」

桑田「葉隠が犯人じゃないだと? なんだよそれ霧切!!!」

山田「これ以上こんがらがるのは流石にギブアップですぞ……」

十神「おい霧切、本気で言っているのか?」ギリッ

腐川「びゃ、白夜様も終わりって言ってたんだから終わりでいいんじゃないの……!」

不二咲「ぅぅ……まだ、やらなくちゃいけないのぉ?」

大神「……確かにようやくこの学級裁判とやらから解放されるかと思っていた所にこれは堪えるものがあるな」

江ノ島「あはは、やっと解決しそうだったのに真犯人浮上って絶望的ね!」

戦刃「盾子ちゃんは元気そうだね……すごいよ」

セレス「いくらなんでも、ここまで来てしまったのであれば、霧切さんの思いすごしという可能性はないのですか?」

舞園「私も……もう止めたいです。こんな学級裁判なんて……もう……」

葉隠「おいマジか霧切っち…………マジで俺はクロじゃないんか!?」

霧切「えぇ。葉隠君、あなたはクロではないわ」

葉隠「頼むべ!!! 何とかみんなを納得させてくれ!!!」

苗木「いいよ霧切さん、ボクはどこまでも付き合うよ」

朝日奈「ちょ、ちょっと待ってよ! 苗木の自白はともかく、葉隠の自白まで演技だったっていうの!?」

霧切「そうじゃないわ。葉隠君は自分が殺してしまったと勘違いしただけなのよ」

桑田「ちょっと待てよ……それで別のクロを決めてよ……それでも本当は葉隠であってたなんて事になったら……」

腐川「は、葉隠がまんまと生き残っちゃうじゃない!! もう続ける必要なんてないわよ、葉隠がクロよ!!」

葉隠「ち、ちげえ!!! 俺はクロじゃない……らしいぞ!?」

大和田「テメーそうやって助かろうとしてんじゃねえだろうなぁ……!!!」ビキビキ

戦刃「わ、私もこれ以上考えたら……なんだか間違った答えだしちゃいそうな……気がするな……」

江ノ島「うーん、もう面倒くさいし葉隠がクロでよくね? ほら、テスト終了直前まで二択で悩んでる時って、答え変えると大体変える前があってたっていうオチじゃん!」


みんなはもうかなりキツイらしく、疲れきった表情をしている。

そしてこれ以上考える事に対する不安。間違えた時取り返しがつかない事からくる恐怖。

そんな中で、霧切さんは真っ直ぐ強い瞳でみんなを見渡す。

霧切「私は強制しないわ。みんなの不安も分かる。でも、どんなに暗い道だとしても私は前に進みたい。ただ、それだけよ」

十神「面白い」


真っ先に反応したのは十神クンだ。


十神「まだ続きがあるだと? くくっ、いいだろう、俺は逃げはしない。そんなものがあるなら見せてみろ」


すると、それを皮切りに賛同する人達も出てくる。


大神「そうだな……石丸の為にも我らは最後まで戦うべきだ」

戦刃「……うん、分かったよ。これも苗木君の言う、希望を持って立ち向かうっていう事なんだよね」

江ノ島「うぷぷ、ここまできて苗木の言うこととか信じてんの? いや、まぁお姉ちゃんがそう言うなら付き合ったげてもいいけどさー」

セレス「はぁ……仕方ありませんわね。苗木君がとことん付き合うというのであれば、わたくしもご一緒いたしましょう」

舞園「あっ、先に言わないでくださいよセレスさん!! 私だって苗木君に地の果てまでついていきますよ!!」


なんか舞園さんとかセレスさんの言い分は怖い……だけど、まだまだ余裕がありそうで頼もしい事は頼もしいな。

特に舞園さん。キミは本当に強くなったよ。

大和田「ちっ、兄弟の為……か。そう言われるとやるしかねえじゃねえかよ」

不二咲「僕も……ここで逃げちゃ強くなれないよね……!」

山田「まぁ確かに不完全燃焼というのも、ストーリー的には陳腐なものですしな」

朝日奈「分かったよ……やっぱり不安だけど、何とか頑張ってみる!!」

腐川「あ、あたしは白夜様に付いて行くだけよ……」

桑田「はぁ……オメーらがやるってんなら俺だけやらねえわけにはいかねえじゃねえか」

葉隠「オメーら……俺の為に……」

苗木「い、いや、そういうわけじゃないと思うけど……」


とにかく、いよいよこれで最終局面だ。

今度こそ……全てが終わる。そして、始まるんだ。


霧切「まず、私が疑問に思った事……それは、毒はどうやって手に入れたか、よ」

葉隠「それは苗木っちに聞いてくれ! 俺はアイツから受け取ったんだべ!」

苗木「そんなの大した問題じゃないでしょ、あのスーパーには薬も沢山あった。【毒くらいいくらでも手に入るよ】」

『モノクマの証言』カシャ


霧切「それは違うわ!」


ガシャーン!!!!!


苗木「……へぇ?」

霧切「あなたもモノクマの言葉を聞いたはずよ、『今行ける範囲で毒は手に入らない』と言っていたわよ。そうよね、モノクマ?」

モノクマ「はいはーい、その通りです。だって毒殺ばかりじゃつまんないしねー」

十神「しかしモノクマファイルには薬物反応ありと書いてあるぞ」

霧切「えぇ、そうね。でも、どこにも毒薬とは書いていないわ」

大和田「……確かにそうだな。じゃあ兄弟は毒なんか飲まされてねえのか!?」

葉隠「そ、そうだったんだべ!! 俺は苗木っちに毒だって騙されていただけだべ!!」

朝日奈「じゃあ、あんたの部屋にあった白い粉飲んでみれば?」

葉隠「うっ……そ、それは、なんつーか…………霧切っち飲んでくれねえか!?」

霧切「ごめんなさい、それは無理よ。これは少量でも意識が混濁するそうだから、今は飲めない」

桑田「やっぱ毒なんじゃねえのそれ……?」

苗木「ねぇ、でもさ、葉隠クンのジュースで確かに石丸クンは衰弱していたよね?
    もし毒が入っていなかったっていうなら、あれはなんだっていうのさ。まさか本当に毒とか関係なしに気分が悪くなっていたっていうの?」

桑田「……確かに何か入ってなきゃあの反応はおかしいな」

十神「それに、長い時間トイレの中に閉じ込めていられる程弱らせる事ができるものとなると、やはり毒なんじゃないか」

葉隠「だ、だから毒じゃなくてだな……」

江ノ島「だからそう言うなら自分であの白い粉飲んでみろってのー!」

葉隠「それは嫌だべ!!!」

セレス「……しかし、毒ではないと言っている霧切さんも、その粉を飲むことは拒否しましたわね」

腐川「や、やっぱり毒だっていう事じゃない……」

霧切「いえ、毒以外に意識を失わせる事ができる薬はあるはずよ」

十神「…………睡眠薬か」

山田「むむっ!? 薄い本にもよく出てくる人気物ですな!!」

不二咲「そ、そっかぁ、だから霧切さんも飲めないんだねぇ、ここで眠るわけにはいかないから……」

苗木「つまり霧切さんは、ボクが葉隠クンに渡したのは毒薬ではなくて、睡眠薬って言いたいんだね?」

霧切「えぇ、その通りよ」

苗木「でもさ、結局はそんなものキミの憶測だよね? 誰かにその粉を飲ませれば証明できるかもしれないけど……まだ毒の可能性も残っているものを飲ませられる?」

『何かの紙袋の切れ端』カシャ


霧切「苗木君の部屋で見つけたこの紙袋の切れ端、覚えているわよね?」

苗木「……うん」

霧切「あの後スーパーに行ってこれと同じ種類のものを探したわ。薬関係を中心にね」

大神「なっ……あそこから探したのか……!?」

桑田「とんでもねえな……俺だったらぜってー見つけられる自信ねえぜ」

朝日奈「そ、それで!? その切れ端ってもしかして!!」

霧切「えぇ、睡眠薬が入っている袋だったわ」

苗木「…………」

大和田「つまり苗木は睡眠薬を持ってやがったのか……!!!」

舞園「…………え? あ、あの、すみません、この流れって……クロは……」


舞園さんの顔色が変わってきた。

でも、ボクは気にしている余裕はない。


苗木「……うん、まぁ確かに睡眠薬は持っていたよ」

腐川「なっ……そ、それじゃあ、葉隠に渡した薬も……!!」

苗木「さぁ、それはどうかな? 石丸クンの症状には睡眠薬だけでは説明がつかないものがあったはずだよ」

十神「吐血、だな」

戦刃「あっ……そ、そうだよ、石丸君は血を吐いていたんだよ!」

苗木「睡眠薬を飲んで血を吐くなんておかしいよね?」

大和田「まさかオメー……兄弟を殴って血を出させたんじゃねえだろうな!!!」

苗木「いやいや、ボクにそんな力ないって。それにモノクマファイルにも喉の刺し傷以外の外傷なしって書いてあるじゃないか」

大神「それでは自分の血……という事も考えられるのではないか?」

山田「苗木誠殿はMだったのですな!!」

苗木「でも、あの乾いた血ってそれなりの量があったよ? 血を出すのも大変だと思うけどなー。ボクの体調べてみる?」

舞園「はいっ!!!」

セレス「それではわたくしが」

江ノ島「ホント絶望的にブレないわねこの二人」

霧切「いえ、あなたは血を用意できたはずよ」

苗木「へぇ、どうやって?」

『肉のドリップ』カシャ


霧切「朝日奈さん、あなたは苗木君と厨房で料理を作っていたわね? そしてその時に苗木君は肉のドリップを沢山出してしまった」

朝日奈「あ、うん…………え」

苗木「…………」

霧切「そしてそのドリップは苗木君が処分した、そうだったわね?」

朝日奈「そう、だけど……もしかして!!」

十神「おい何の話をしている!!」

霧切「十神クンの知識には入っていないのね。お肉って冷凍状態から解凍に失敗するとドリップというものが出てくるのよ」

山田「あれですな、2ちゃんねるで名前欄に#を入れて……」

苗木「それトリップ」

葉隠「分かったべ!! あのまるっとスリットお見通しの」

霧切「それはTRICK。お肉のドリップは旨味成分……ようは肉汁よ」

桑田「肉汁? 肉汁がどうかしたのかよ?」

霧切「その肉汁ってこういうものなのよhttp://i.imgur.com/aVIfXV1.jpg

十神「なっ……!!」

不二咲「それじゃあ……苗木君はこれを使って石丸君の血に見せかけたの!?」

苗木「…………」

戦刃「そんな……苗木君!?」

大和田「結局……結局オメーなのかよ!!!」

霧切「葉隠君、薬を飲ませた石丸君の様子を見に行く時に、苗木君に何か言われなかった?」

葉隠「そんな大した事は言われてねえべ……いつまでみんなを倉庫に引きつけられるか分からないから、確認はすぐ済ませてくれって……」

大神「……今となってはじっくり見られるのが不都合だったかのように思えるな」

十神「それに石丸を縛ったのは僅かな動きも封じようとしたから……とも考えられる」

苗木「…………」

霧切「葉隠君、石丸君の死体を確認した時だけど、口にガムテープはあった?」

葉隠「…………なかったべ」

舞園「そ、それがどうしたっていうんですか!!」

霧切「あのガムテープは苗木君が石丸君を刺す直前に貼ったものじゃないかしら。喉を刺したんだから声は出ないでしょうけど、万が一の為にね」

江ノ島「あれ、それって死人を刺すにしてはおかしくない?」ニヤニヤ

十神「そういえば霧切、お前は乾いた血液を見た時に何か違和感を覚えていたな。それは」

霧切「えぇ、ハッキリとは分からなかったけど、人間の血と比べての違和感……でしょうね」

腐川「あんな血の違いを見分けるとか、あんたやっぱりヴァンパイアなんじゃないの……」

舞園「待ってください、どうしてまた苗木君が犯人だっていう話になっているんですか!!!」

セレス「……まだ弱いですわよ。彼が生きている状態の石丸君を刺したという根拠を出してください」

不二咲「でもぉ……生きている時に刺したのか死んでいる時に刺したのかって分かるのぉ?」

山田「中々に無理難題な感じですな……」

葉隠「いや、なんかあるはずだべ!! そうだよな霧切っち!?」

朝日奈「あんたはもう少し自分でも考えなさいよ……」

桑田「つっても、俺達はそんな死体とかに詳しくねえから分かんねえよ。戦刃はどうなんだ?」

戦刃「う、うん……何とか思い出そうとしてるんだけど……死んだ後に刺された時の特徴……」

江ノ島「あーあー、お姉ちゃんはどこまでも苗木ラブだねえ」

大神「血なら我も見てきたが……思いつかんな…………」


苗木「はは、それはそうだよ。【生きている内に刺された痕跡なんてないんだからさ!】」

『死体の様子』カシャ


霧切「それは違うわ!」


ガシャーン!!!!!


苗木「……あるの?」

霧切「えぇ……それもハッキリと大きくね。みんなもあの大量の出血を見たわよね?」

桑田「あ、当たり前だろうが……あんなもん、もうそうそう忘れらんねえよ……」

腐川「ふふ、あたしは見てないけど……」

大和田「あの血まみれの便所に何かあるのか?」

霧切「戦刃さんや十神君なら分かるんじゃないかしら。死後に刺されたのであれば、あの部屋の惨状はおかしいわ」


戦刃「…………あ」

十神「くそっ、俺とした事が……!!!」ギリッ


葉隠「おい何だべ、勝手に納得してんじゃねえよ!」

霧切「死後……つまり心臓が止まっている状態であそこまでの大量出血なんてありえないのよ」

不二咲「えっ……本当なの!?」

十神「心臓はポンプの役割を持っている。人体に傷を付けてもすぐに心臓が止まるわけではない、だから場所によっては血が噴き出る。
    だが、元々心臓が……ポンプが停止した状態では、血が多く詰まっている部分を傷つければ血は出るが、あの大量出血などはどう考えてもありえん」

戦刃「う、うん……え、でも……それって…………」

苗木「…………」

霧切「石丸君の死体は死後硬直もほとんど進んでいなかったし、体温もまだ下がっていなかった。死亡してからほとんど時間が経っていない証拠よ。
    死斑が出ていないのはあの大量出血のせいだと思うけど、もし毒で死んでいたのであれば、やはり出ているはずよ。あれだけ縛られて動けなかったんだし」

セレス「……それでは、本当に…………」

舞園「ウソですよ……ねぇ、苗木君……?」

霧切「それと苗木君、あなたが毒薬を手に入れたというなら、その方法を教えてもらえるかしら?」

苗木「…………」

桑田「どんだけ何重に仕掛けてやがったんだよコイツ……!!!」

大和田「じゃあオメーは葉隠がクロだってバレる所まで予想してたってのかよ!?」

不二咲「そこまでは解いてくれるって思って……それで……!!!」


苗木「それは違うよ」

 

 
苗木「ボクはみんなを信じていたよ。きっと最後まで解いてくれるってさ」ニコ

江ノ島「はい自白したー」

大神「何とも歪んだ信頼だな……」

腐川「え、ちょっと待ってよ、それじゃあ後ちょっとで苗木だけが生き残る所だったんじゃない!!」

葉隠「はっ、結局はオメーも自分だけここから出たかっただけだべ!!」ビシッ

霧切「それは……どうかしらね。少なくとも最初にクロにされかけた時の自白はかなり危険だったと思うけど」

苗木「いいよ、そう思われても仕方ない……ていうか、場合によってはそれでも良かったって思ってるし」

朝日奈「全員犠牲にして自分だけ生き残ってもいいって事……!?」

苗木「うん。少なくともこの事件を霧切さんが解けないわけがないんだ。
    それなのにボクが勝ってしまうっていう事は、それはつまり能力とかそういう問題ではなくて、ただみんなの戦う意思がなかっただけだよ」

十神「そんな奴らなどは皆殺しにしていい、代わりに自分が生き残ったほうがマシ……か。ふん、理解できなくもない」

山田「ひぃぃぃぃ……なんだか通じ合っていますぞ……!!」

腐川「なっ、ふざけんじゃないわよ……それはあたしの役割よ……!!」

苗木「いや、ボクはそんな事望んでいなかったよ。もしボクだけが生き残ってしまったら、それは限りなくバッドエンドに近いトゥルーエンドみたいな感じかな。
    もちろん犠牲になったキミ達の為に、どんな事をしてでもモノクマを追い詰めたんだろうけど、それでもやっぱりみんなが居ないと嫌だしね」

 
ボクは両手を広げる。

なんだかとても清々しい。

みんなの強い希望が見れたんだ、それだけでボクに心残りはない。

みんななら、きっとモノクマなんかには負けない。

全員がそれぞれ大きな希望を持って立ち向かって、打ち勝つことができるはずだ。


……まぁ、葉隠クンとか不安な人も居るけど。


苗木「じゃあね、みんな。投票は満場一致で頼むよ」ニコ


モノクマ「はいはい、それでは議論の結論が出たみたいですし、そろそろ投票タイムいっちゃうよー!
      オマエラはお手元のスイッチで投票してください! あ、言っとくけどちゃんと誰かには投票しろよー?」

モノクマ「ではでは、運命の投票ターイム!! 誰がクロに選ばれるのか、そしてそれは正しいのか!? さぁ、どっちだー!!」


そんなモノクマの声と共に、何とも場違いなスロットが回る。

そこには何やらみんなの顔が書かれていて。

スロットが停止した時、ボクの顔が横に並んでいた。

 

モノクマ「満場一致で大正解ー!! 今回石丸清多夏クンを殺したのは苗木誠クンでした!!」


モノクマの声が響き渡っていく。

みんな、口数は少ない。


大和田「オメーらも苗木に投票したんだな」

舞園「…………ふふ」

山田「ひっ」ゾクッ

朝日奈「ま、舞園……ちゃん……?」

桑田「おいふざけんなよ苗木、オメーのせいで舞園ちゃんが壊れちまったぞ!!!」

舞園「……いえ、大丈夫ですよ。私はここで潰れるわけにはいきませんから。苗木君の為にも」

セレス「その通りです。モノクマに打ち勝つんですから、こんな所で落ち込んでいる暇はありませんわ」


そう言う二人の表情は見えない。いや、見せないようにしているのかな。

見せたくないならボクも無理には見ないよ。

それに、その言葉だけでボクは十分嬉しい。

モノクマ「うぷぷ、それではみんなお待ちかねのオシオキが始まるよー!!」

モノミ「やめなちゃーい!!!」ガッ

モノクマ「うるさい離せコイツ!!!」ボコボコ

モノミ「うぎゃあああああ!!!」ベキィィ!!


大神「苗木よ、お主には別の道があったと、我は思うぞ」

朝日奈「…………バカ」

不二咲「ぅぅ……僕、泣いてないよ……!」

山田「結局一度も僕の本の売り子をしていただけなかったのが悔やまれますぞ」

腐川「ふ、ふん……あんたはそこそこマシな方だと思ってたのに……」

葉隠「だ、大丈夫だべ、苗木っちは天国行きだ! 俺の占いは三割当たる!」

大和田「オメーの言ってる事は訳分かんねえし、兄弟を殺した事を許すつもりもねえ。けどまぁ、あのふざけたぬいぐるみぶっ飛ばすのは約束してやってもいいぜ」

桑田「ったくよ……こんなのがモテるってのが信じらんねえよ。けど俺は自分のやり方でモテまくってみせっからな! オメーは指くわえて羨ましそうに見とけ!!」

 
うん、みんなちゃんと前を向いてる。

心配なんて必要ないね。


戦刃「…………私の夢を手伝えない理由って、これだったんだね」


戦刃さんの声を受けて、ボクは頭を下げた。

ごめん。それに、ボクのワガママを聞いてくれてありがとう。


戦刃「……それじゃ、子供は養子を貰おうかな。幸せなら血の繋がりなんて関係ないよね!」ニコ


そこは素直に他の人と結婚しようよ。


十神「…………」


十神クンからは一言もないようだ。うん、十神クンらしいや。

というか、なんだか凄まじく怒っているような気がするんだけど……。


モノクマ「それでは、超高校級の幸運、苗木誠クンの為に、スペシャルなオシオキを用意しました!!」

流石に眠いべ

これ参考にするべ
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

 

モノクマの言葉の直後、いきなり引っ張られて。

気付けば、目の前に霧切さんの顔があった。

それと、唇には柔らかい感触。

えっと、つまり、これは。


霧切「ありがとう」


とてつもなくベタなお別れって事だ。

でも、彼女の笑顔はとても可愛らしかったから何でもいいかな。


【追加補習】


机、椅子、ベルトコンベアー。

そして後ろから震動。

またか。芸がないなぁ。


江ノ島「あ、今『結局これかよ』とか思った? しょーがないじゃん考えるの面倒だし。大丈夫、大丈夫。ちょっとは変えてあるから」ニコ

目の前の黒板の前には江ノ島さんが立っていた。

その間にも、ボクはベルトコンベアーで後ろに運ばれていく。


苗木「……江ノ島さんか」 

江ノ島「あれ、反応そんなもん? あたしとしてはもっと絶望的にビックリするかと思ったけど」

苗木「ボク達の中に黒幕が居るとすれば、江ノ島さんが一番怪しいって言ったじゃないか。だからそこまで驚かないよ」

江ノ島「うぷぷ、それならみんなに言えばいいのに」

苗木「こんなのボクの勘なんだから言えるわけないよ。余計みんなを混乱させるだけだ。
   ていうか、このオシオキってみんなにも見せてるんじゃないの? これじゃあ黒幕バレバレじゃないか」

江ノ島「あ、そこら辺は大丈夫だよ、みんなから見ればあたしはモノクマに見えてるし声も聞こえてないから」

苗木「随分と都合が良いね……キミって本当に超高校級のギャル?」

江ノ島「あはは、実はそこら辺もこの島の秘密を知るためのヒントだったりするんだよね! と言ってる間に一つ目のプレス機が見えてきたよ!!」 


ズドン!!!


苗木「……一つ目?」

江ノ島「やっぱ補習らしくさ、これからあたしが出す問題に答えられたらプレス機を通過できるってのはどう? 全部で三問!」ニコ

苗木「はは、どうせ五問解いても助からない仕様なんでしょ?」

江ノ島「うぷぷぷぷ、どうでしょう? さて、それじゃあ第一問、ズバリ黒幕は誰でしょう?」

苗木「いきなりそこなんだ……ていうかキミなんじゃないの?」

江ノ島「えー、それはどうかなぁ。もしかしたらただの内通者かもしれないじゃん」

苗木「うーん……そうだなぁ」 


ボクは少し考え込む。

次第に震動も大きくなってきていて、プレス機が近づいているのが分かる。


苗木「そういえば、『黒幕はそいつであってそいつじゃないかも』とかって言ってたよね江ノ島さん」

江ノ島「おっ、覚えていてくれた?」

苗木「黒幕はキミであってキミではない……つまり多重人格……それか分身のようなものかな?」

江ノ島「♪」

苗木「いや、みんなの前でモノクマをあれだけ動かせるんだから、分身の方がありそうだね」

江ノ島「それでそれで? その分身ってなんなの? あたしって別に忍者じゃないから好き勝手に分身なんてできないよ」

苗木「…………」

江ノ島「おーい、どした? 早くしないとミンチだよ?」


ズドン!!!!!


もうかなり近くから聞こえる。

おそらくあと数秒でボクの体はグチャグチャな肉塊に変わる。

……そういえば、不二咲クンに聞いた事があったな。確か――――。


苗木「AI…………とか」


ゴォ!!!


プレス機がボクの頭上数センチの所で停止した。

そして、そのままボクは更に後ろへと運ばれていく。

本当にいい趣味してるなぁ。


江ノ島「大正解ー!! 黒幕はあたしのAIでした!!」

苗木「まさかそこまでのAIが存在するなんてね」

江ノ島「うぷぷ、世の中には知らない事がたくさんあるもんだよ」ニヤニヤ

苗木「……あれ、でもそれだとキミも安全圏に居たわけじゃないよね? 誰かに殺されそうになったらAIが助けてくれる仕組みだったのかな?」

江ノ島「そんなわけないじゃん。クラスのみんなでコロシアイなんていう絶望的なイベント、あたしだって同じように参加したいに決まってんじゃん!」


そう言う江ノ島さんの笑顔を見て、彼女は根本的な所からみんなとは違うっていうのが分かった。

それなら、もしかして。


苗木「……これはクラスの絆を強くする為の修学旅行だって聞いたけど、もしかして本当はキミを少しでも変えるためのものだったのかな」

江ノ島「へぇ、やるじゃん苗木! まったくバカだよねー、そんなんで上手くいくわけないのに。ヤバイと思ったならさっさと隔離するなり処分するなりすればいいのに」


たぶん学園長はそれでも江ノ島さんの事を見捨てられなかった。あの人らしいな。

そして、二つ目のプレス機が近付いてくる。

ズドン!!!


江ノ島「そんじゃ、第二問! ズバリこの島の秘密とはなんでしょう!!」

苗木「また核心を突くような問題だね……」

江ノ島「そりゃこの状況で足し算引き算しても面白くないじゃん! あ、それじゃあたしのスリーサイズとか当ててみる?」

苗木「いや、遠慮するよ。そっちの方が分からないし」


この島の秘密…………それは何度か目撃してきた魔法じみた現象と関係しているはずだ。

普通に考えたらありえない、それでも目の前で起こってしまっている数々の現象はなんだろう。


江ノ島「実はもうあたしもヒントは出してんだよねー。霧切ちゃん辺りならもう何となくは気付いてんじゃないかな!」

苗木「ヒントは出した? うーん……」


重苦しい震動音が近付いてくる。

そういえば、話を聞いているとこれは江ノ島さん一人の暴走のように思える。

でも、彼女と彼女のAIだけでここまで大がかりな事ができるのかな?

このモノクマロックだって、明らかに後から作られたものだ。

それほど万能なAI…………もしくはAIの力が最大限に引き出される環境なのか。


苗木「…………」

江ノ島「おっ、なんか思い付きそうな顔してる! でも急げー!!」


ズドン!!!!!


もうすぐ後ろまで来ている。

いや、気にしてはダメだ。考えろ。

AIが力を発揮できて魔法のような現象が起きる。


そう、それこそゲームに出てくるような…………ゲーム?


……あれ、そういえば今回の殺人の元々の発端って。

 

苗木「――ここも仮想現実の世界なの?」


ゴォ!!!


またプレス機が頭上数センチで止まった。

ボクの体はまだ原型をたもったまま、更に後ろへと流されていく。


江ノ島「またまた大正解ー!! さっすが苗木、あたしが生理的に受け付けないだけあるよ!!」

苗木「それは褒められているのかな………? でも、仮想現実の世界なら別に死んでも…………いや」


自分で言ってて甘い考えだとは思った。

そもそも、ここが仮想現実の世界ならこんな状況になったなら外から無理矢理終了させればいいんだ。

江ノ島さんはこの世界で好き放題しているんだから、外から電源を落としてしまえばそれで終わりなんじゃないか。

でも、それができない理由。それはきっと、そんな乱暴な方法を使うとボク達に影響が出るからだ。

この仮想現実世界のボク達だけではなく、現実のボク達にも。

仮想現実世界での影響が現実にも出る。

それはあの死の光景を見せたモノクマも言っていた。実際ボク達も体験した。ここは現実ではないみたいだけども。

逆に現実にも影響が出るからこそ、江ノ島さんを変える為の手段として使われたんじゃないか。


苗木「たとえ仮想現実だとしても、ここで死んでしまったら現実でもただでは済まない」

江ノ島「うぷぷ、こういう話があるんだよ。死刑囚を目隠しさせて、足の指先に傷を付けます。そんで水音を聞かせて『お前の血を抜いている』っていうの。
    そしたら本当は血なんてほとんど出てないのに、その死刑囚はやがてショック死してしまいました。他にも焼きごてを当てる前に火傷の跡が出てくる話もあるよね」

苗木「つまり、例え自分の思い込みでも、それが現実だと信じ込んでいれば実際に現実でも影響が出てくる?」

江ノ島「うん、まさにどっかの学園都市に出てくるパーソナルリアリティ!! …………ちょっと違うかな」

苗木「でもボクはここが現実じゃないって分かっちゃったけど?」

江ノ島「そーいう問題じゃないんだよねー。分かっていても分かっていない。あんたの頭の深い部分では、ここが現実だってバッチリ認識しちゃってんのよ」

苗木「はは、やっぱりここで死んじゃったら現実でも死んじゃうんだね」

江ノ島「いや、そんな事もないよ。まぁ、ただ心臓を動かすだけの物体になるだけだよ。頭が死ぬっていうのかな」

苗木「それって生きてるっていうのかな?」

江ノ島「ちょっとー、そういうのってデリケートな問題なんだからもっと気を使いなさいよねー」

苗木「絶対そんな事思ってないでしょ。ていうか今まさにボクもキミによってそんな状態になりそうなんだけど」


ズドン!!!


三つ目のプレス機が近付いてきた。

これが……最後。

江ノ島さんの事だ、おそらくボクはあれをくぐり抜ける事はできないんだろう。


江ノ島「じゃあ…………第三問いってみようか?」

苗木「お手柔らかにね」

江ノ島「うぷぷ、大丈夫だよこれが一番簡単だから。ほら、ラスボスよりその前に出てくる敵の方が強いってあるじゃん?」


それから、江ノ島さんは満面の笑みを浮かべて…………。

 

江ノ島「世界に必要なものは希望が絶望か!」


なんだ、本当に簡単だった。

江ノ島さんの事だから最後に無理難題を出してくるものだと思っていたのに。


苗木「希望だよ」

江ノ島「ファイナルアンサー?」

苗木「ファイナルアンサー」

江ノ島「えー、もうちょっと考えなよ、まだプレス機に行くまで少しあるよ?」


少し背後の音に集中してみると、確かにまだあの全てを押し潰す音も離れた所から聞こえる。

でも、だからって他に考える事なんてない。


苗木「厳密に言えば希望の為には絶望も必要だと思うけど……そんな答えは認めないよね?」

江ノ島「もち!!」

苗木「それじゃあボクの答えは変わらないよ。所詮絶望なんて希望の為の踏み台でしかないんだし」

江ノ島「本当にいいの? 正解かどうか決めるのはあたしだよ?」

苗木「あはは、そこまでボクに絶望だって答えさせたいの? 言うわけないじゃないか、ここでそれを言ったら今までボクがしてきた事はなんだったんだ」

江ノ島「死ぬよ? 絶対的で永遠の“死”っていう絶望が待ってるよ?」

苗木「言ったよね、ボクは絶望なんかに負けたりはしない。本当に負けるっていうのは、絶望してそのまま立ち上がれない事なんだ。
   誰だって絶望はするよ。そこから立ち上がるからこそ希望なんだよ。これから死ぬとしても、ボクは希望を失わないよ」ニコ

江ノ島「っ……!!」

苗木「ここでボクが死ぬ事は無駄なんかじゃない。石丸クンもね。この件でみんなはキミに立ち向かう希望を得た」 

江ノ島「そんなもん、あたしがすぐ塗りつぶすし!」

苗木「やってみればいいさ」

江ノ島「……なによ、あんた頭おかしいんじゃない!? なにこれから自分が死ぬのにヘラヘラしてるわけ!?」

苗木「キミは本当に心の底から希望を嫌っているんだね」

江ノ島「つまんないつまんないつまんない!!! なにあんた、最悪なんだけど!!!」

 

ズドン!!!!!


プレス機がすぐ近くまでやってきた。

ボクの命もあと少し……か。

意外と悪いものじゃなかったよ。


江ノ島「死ね!! 死んじゃえ!!! グッチャグチャの汚い肉塊になっちゃえ!!!」


舞園さんはトップアイドルとして、みんなに笑顔を与えていくのだろう。

桑田クンは野球はそこそこに、とにかく女の子ばかりを追い続けるのだろう。

大和田クンはお兄さんのように……いや、お兄さん以上に強くなって、族のみんなを引っ張っていくのだろう。

不二咲クンもきっと強さを手に入れて、堂々と男の子として歩いていくのだろう。

朝日奈さんはこれからもずっと明るく元気に色々な事に挑戦していくのだろう……もちろん悩んでいた恋愛関係も。

大神さんはこれからもずっと地上最強の座を守り続けていくのだろう。あの人の為にも。

セレスさんはこれからもお城で暮らすという夢の為に、たくさんの人をギャンブルで破滅させていくのだろう。

腐川さんはこれからも素晴らしい恋愛小説でみんなに夢を…………いつかは自分自身の恋愛も報われるといいんだけど。

山田クンはこれからもノリノリで好きなキャラを陵辱していくのだろう…………そういえば、考えているっていうオリジナルを読めなかったのは残念だな。

戦刃さんは自分で決めた夢に向かって、幸せな家庭を築いていくのだろう。できればボクの事とか気にしないで結婚してほしいけどな。

十神クンはこれからも大きな重圧を背負って勝ち続けていくのだろう。あ、もしかしてあんなに怒っているみたいだったのは、ボクが彼を出し抜いたからなのかな。

石丸クンが生きていれば、きっと自分の信念を貫き通して、努力によってお爺さんのような過ちを無くそうとしていったのだろう。

葉隠クンは……うん、まぁその内本気出してくれるだろう。占いの確率が上がったりすれば凄いし。


それに霧切さん。

彼女はきっとこれからも常に冷静に物事を見極め、真実だけを追い求めていくのだろう。

最後のキスは少し驚いたけど、あれも霧切さんなんだよね。普通の女の子らしくなったと思うけど、ボクはいいと思う。

あ、そうだ。できれば、学園長とももう少し仲良くしてほしいな。


ズドン!!!!!!!


いよいよ次だ。

次にボクはプレス機の真下にいる。

視界が暗くなる。見上げなくても分かる、ボクは普通の真下にいる。

江ノ島「ねぇ、どんな気持ち!? これからペシャンコにされるけど、どんな気持ち!?」

苗木「…………」

江ノ島「あはは、やっぱり怖い!? ほら、まだ間に合うって!! 言っちゃいなよ!! この世に必要なのは絶望なんだって!!」


ここでボクが絶望だって答えたら彼女は喜びのあまり、どうかしてしまうかもしれない。そのくらい彼女は興奮している。

だから――――。


苗木「それは違うよ」ニコ


ボクが最期に見た光景は。

江ノ島さんが恍惚の表情で、体をビクビクさせているものだった。

なるほど、ボクが絶望って答えれば他人の絶望を楽しめて、希望って答えれば自分の絶望を楽しめるのか。

でも、死に際に見たものがこれかぁ…………あはは、なんて絶望的…………いや、これはこれで、もはや希望なんじゃないかな。


そんな事を考えて。


グシャァァァァァァァァァ!!!!!

視界が暗くなる。見上げなくても分かる、ボクはプレス機の真下にいる。

江ノ島「ねぇ、どんな気持ち!? これからペシャンコにされるけど、どんな気持ち!?」

苗木「…………」

江ノ島「あはは、やっぱり怖い!? ほら、まだ間に合うって!! 言っちゃいなよ!! この世に必要なのは絶望なんだって!!」


ここでボクが絶望だって答えたら彼女は喜びのあまり、どうかしてしまうかもしれない。そのくらい彼女は興奮している。

だから――――。


苗木「それは違うよ」ニコ


ボクが最期に見た光景は。

江ノ島さんが恍惚の表情で、体をビクビクさせているものだった。

なるほど、ボクが絶望って答えれば他人の絶望を楽しめて、希望って答えれば自分の絶望を楽しめるのか。

でも、死に際に見たものがこれかぁ…………あはは、なんて絶望的…………いや、これはこれで、もはや希望なんじゃないかな。


そんな事を考えて。


グシャァァァァァァァァァ!!!!!

 

『刑務所から脱走した江ノ島盾子は未だ発見されず……』


ピッ


テレビを消すと部屋には静寂だけが広がる。

ベッドに寝転がったまま、制服にシワがつくのも気にせずにぼーっとする。

もう夕方、外からはオレンジ色の柔らかい光が差し込んできている。


時計を見た。そろそろ行かないと。


霧切「…………」


鏡と向き合って、自分の顔を直視する。

最近化粧を覚えた。あまり得意ではないけれど。

もっとも私は化粧なんかしなくても、低く見積もっても上の上クラスの容姿のはず。苗木君には十分すぎるわ。

病院へ向かう途中、ケータイが振動した。

相手は……舞園さん。


霧切「おかけになった電話番号は現在使われていないか」

舞園『思いっ切りあなたの声じゃないですか!!!』

霧切「あら、最近のケータイは高性能で持ち主の声紋を」

舞園『今普通に受け答えしてますよね?』

霧切「……それで、何の用かしら? というか、あなたこれからステージ公演じゃないの?」

舞園『ちょっと時間見つけて電話したんですよ。いいですか、この前みたいに苗木君のベッドの中に入らないでくださいよ!?』

霧切「だから言っているじゃない
、あれは事故よ。足がもつれてベッドの中に入ってしまったの」

舞園『どうもつれたらそうなるんですか!!!』

霧切「はいはい、気を付けるわ。それでもセレスさんのディープキスよりはマシでしょう」

舞園『あれは論外です……もう二度とあの人を苗木君の病室には入れません……』

霧切「それは私も同感よ。それじゃ、ステージ頑張ってね」

舞園『あっ、はい、ありがとうございます…………もう一度言いますけど、決して苗木君に』

 

プツッ


……言葉の途中だったかしら。

まぁいいわ、いつもの事だし。


【病院】


通いなれた病院。

一階ロビーに足を踏み入れると、偶然クラスメイトに出会う。

その特徴的過ぎる髪型に周りから視線が集まっているのを感じる。


大和田「よう、オメーも来たのか」

霧切「えぇ……あなたは石丸君?」

大和田「あぁ、一応苗木もな。ホントはあんな奴どうでもいいんだけどよ、後で兄弟にガミガミ言われそうでよ」

霧切「ふふ、確かにそうね」

大和田「オメーはやっぱ苗木か?」 

霧切「えぇ。もちろん石丸君の所にも行くわよ」

大和田「けっ、どうせ兄弟はついでだろ」

霧切「そんな事ないわよ。石丸君にだって早く目覚めてほしいわ」

大和田「……あぁ、いつまで寝てんだって話だ」


みんなは立ち止まっていない。

苗木君の願い通り、確かに歩き続けている。


【病室】


いつもの病室。ノックはいらない。

ただ、このノックをしない事で、扉を開けると舞園さんやセレスさんの暴走っぷりを目の当たりにする事もある。

そして今日は、扉を開けた瞬間、目の前に人が立っていた。


「……やぁ」


不思議な人だった。

希望ヶ峰学園の制服を着た、白髪の男子。

何かしら、この感覚は。


霧切「あなたは? 苗木君のお友達?」

「ははは、ボクなんかが彼の友達になれれば光栄なんだけど……」

霧切「……?」

「大丈夫だよ」

霧切「大丈夫?」

「うん。彼はきっと目覚める。だから、希望を失っちゃダメだよ」

霧切「……えぇ、言われなくても分かっているわ」

「そっか……そうだよね。ごめん、ボクなんかに言われなくても、キミ達はよく分かっているよね」


そう言って、彼は部屋から出て行く。


「それじゃ、邪魔者はここで。ごゆっくり」ニコ


バタン

何だったのかしら、あの人。

今のところ情報は希望ヶ峰の生徒で、苗木君に憧れ……いや、それとも少し違う気がする。

それにどことなく声が苗木君に似ていたわね。


すると、外から先程の彼の声が聞こえてくる。


「あれ、日向クン! 予備学科の日向クンじゃないか! どうしたの、授業はもう終わったの予備学科の!」

「うるさいなぁ……俺はただお見舞いに……」

「なるほど、何の才能もないボク以下のキミが超高校級の希望に会いたいと思うのは当然だね!
 でも、今は遠慮した方がいいよ、彼女さんが来ているから。予備学科ではなく本科のね!」

「おい、お前いつもいつも何なんだよ!!!」

「びょ、病院では静かにしてくださいぃぃ~~!!」


……彼女、ね。

中々良い人じゃない、あの白髪の人。

ベッドの近くの椅子に腰掛ける。

そのままいつもの様に、苗木君の頬に触れる。

手の火傷は治してしまった。もう私には、戒めは必要ない。


苗木君は暖かい。ちゃんと、生きている

だから、私はいつものように学校の事、みんなの事を話す。


霧切「舞園さんがあなたが起きない事を良い事に、またあなたと付き合っているってテレビで言っていたわよ。早く起きてくれないと大変な事になるわよ」

霧切「あとセレスさんはついに城を建てたわ。でも、あなたは行かない方がいいわよ、たぶん一度入ったら出てこれないから」

霧切「大和田君の暴走族はその内海外進出も狙っているみたい。警察との睨み合いが続いているわ」

霧切「そうそう、山田君の漫画がアニメ化されたわ。内容は言いたくないけど」

霧切「朝日奈さんはまた胸が大きくなったわ。告白される回数も凄い事になっているけど、いつも好きな人がいるって答えているらしいわ。誰の事かしらね」ジロ

霧切「腐川さんの新刊がダブルミリオンを記録したわ。私も読んだけど、凄く良かった。本人が十神君にフラれた回数はそろそろ三桁らしいわよ」

霧切「大神さんは未だ無敗よ。昨日も一つ上の学年のマネージャーをふっ飛ばして校舎壊して父が頭を抱えていたわ」

霧切「桑田君は野球は凄いけど、女の子からの人気はまだまだね。この前舞園さんの周りにいた黒服の人達に、どこかに連れて行かれるのを見たわ」

霧切「不二咲君のAI技術はまだまだ伸びているわ。山田君なんかは変な方向に期待しているみたい。
   あなたのAIを作ろうかって言われたけど、断ったわ。だって、あなたはここに居るのだから」ナデナデ

霧切「戦刃さんは居なくなった江ノ島さんを探し回ってたけど、本人にいらないって言われたみたいよ。
   それと、役所に行って昏睡状態の人と結婚できるかって尋ねていたらしいから、私達で警戒しているわ」

霧切「十神君は相変わらずその財産を使い込んで、全力であなたが目覚める方法を探しているわ。勝ち逃げされたと思っているのでしょうね」

霧切「葉隠君は最近学校に来ていないわ。噂では海外に飛ばされたとか東京湾に沈められたとかあるけど、定かではないわね」

霧切「石丸君はまだあなたと同じ状態よ。彼が居ないから学校は前よりかなり緩くなって先生が困っているわ」

霧切「江ノ島さんは……どこで何をしているんでしょうね。彼女はたぶんまた、私達の前に立ちはだかるような気がするわ」


霧切「……私は、いつも通りよ。学校でみんなと過ごして、個人的に受けている依頼をこなして。あ、父とは一日に三回程話すようになったわ」

霧切「男子に告白される事もあるわ。その度にあなたと付き合っているって言っているけど、構わないわよね?」


霧切「……苗木君。待っているから。私は、ずっと待っているから。あなたがまた、みんなと一緒に笑っている、あの光景を」


苗木君の表情は変わらない。

ただ穏やかに、彼は眠り続ける。


窓の外では、明るく眩しい夕焼けの空がどこまでも広がっていて、彼を照らしていた。

終わり。くぅ疲

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年12月03日 (火) 19:44:14   ID: HoYhE5fe

これは名作だわ
2転3転する学級裁判とかラストを飾る鮮やかな1行とか
ホントにお疲れ様でした!そしてありがとう!

2 :  SS好きの774さん   2014年04月04日 (金) 22:47:31   ID: xVHZhwKi

いつ読んでも素晴らしい作品だ。

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