佐天「100点を取れる能力かぁ」 (29)

100点、それは甘美な響きを込めている。
無能力者であった佐天涙子ならば泣いて喜んだかもしれない。
しかし、必ず100点を取れるようになった彼女はそんなそぶりは見せない。
今も複雑に顔を歪めていた。

佐天「せっかく能力者になれたのに、無能力者と同じことしかできないなんてなぁ……」

すなわち、こういうことである。
佐天涙子にとって100点とはとても偉大なものであったが、100点を取れるのが『普通』な無能力者などそこらじゅうにいる。
それこそ真面目に勉強すれば自分にも手が届くかもしれないとたまに考えたりもしていた。

佐天「結局、私の『自分だけの現実』なんてこんなもんか」

そう自分に言い聞かせるように呟くと、彼女は携帯を拾い上げる。

佐天「さぁ! 今日も楽しく一日過ごしましょう!!」

今日も友人たちのもとへと向かう。
まだだれにも能力のことは言っていない。

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満点、じゃなくて『100点』なのが味噌な気がす

初春「佐天さん国語のテストどうでした?」

佐天「あぁほら」

初春「!?」

初春「100じゃないですか!」

佐天「えっへん!すごいでしょ」

佐天「初春は何点だったの?」

初春「私は24点でした」

良くも悪くもないですよね、と初春は言った。

佐天「うん、そうだ……ね?」

おかしい、佐天涙子はそう思った。
私が100点を取ったテストで初春は24点。
ここまではまだありえるかもしれない。
初春がテストで失敗してしまうこともあるだろうから。
しかし初春はなんていっただろうか、24点が良くも悪くもない。
そしてそれを認めてしまった自分。

佐天「ねぇ初春。 私たちの学校のテストって何点満点だっけ?」

初春がきょとんとした後にクスクス笑う。

初春「佐天さん、そんなことも忘れてしまったんですか」

その顔はあくまでも笑っていた。
屈託のない笑みだった。

初春「50点満点ですよ」

\(^o^)/

つー事はこの能力『結果』の強制操作っぽいな

よく考えればすごい事か。騎士団長の『0にする』の逆なわけだし『100にする』………あれ?なにげに応用性多くね?

佐天「やっぱりそうか〜50点満点だよね」

初春「そうですよ何いってるんですか」

佐天「そうだよねごめんごめん」

初春「それにしても佐天さん100点取るなんてすごいですよ〜」

この時、佐天涙子は腑に落ちない何かを感じたがお腹がすいていたので気にしなかった

佐天「ところで初春お腹すいてない?」

初春「そうですね、帰りになにか食べていきましょうか」

おい、何か嫌な予感が

自分の能力について考えたいこともあったが、とりあえずは友人との時間を楽しみたかった。
最近行きつけのクレープ屋に新作が出たとの情報をゲットしていたので、初春に伝えるとすごく喜んだ後にどこか別の世界に飛んで行ってしまった。
そんなところもかわいい。

佐天「御坂さんと白井さんも呼ぶ?」

初春「それなんですけどね。 白井さん、今日は御坂さんと二人でお出かけだって張り切ってましたから……」

佐天「あはは。 それなら白井さんに悪いね」

そう言うと佐天涙子は苦笑を浮かべた。
その脳裏には苦労する御坂の姿がバッチリ想像できていたからだ。
内心ですみませんと呟いてから、

佐天「それじゃ二人でいこっか」

と言った。
自分たちが誘っても白井が迷惑に感じることはないだろうと思いながらも、誘う気にはなれなかった。
今は、二人の高位能力者の姿を見たくなかったからだ。
佐天が軽い自己嫌悪に襲われていると、

初春「そうですね。 じゃあ早く行きましょう」

そうして佐天の手を引っ張ってくれた。
いつでも触れる友人の手だけれど、今はすごいありがたみを感じた。
安心する、いつまでも触れていたかった。

佐天「そうだね。 ほら初春っ! 早くしないと置いてっちゃうぞ」

初春「あ。 もう、佐天さーん! 待ってくださいよぉ」

そうして二人の少女は甘い香り漂う、憩いの場所へと駆けていった。

佐天「やっぱりチョコバナナが一番かな」

初春「ん〜私はどちらかというといちご系がすきですね」

男1「よぉ〜お嬢ちゃん達いいもん食ってるね〜」

初春「………」

男2「俺らと一緒に遊ばない?もっといいもの食べさせてあげるよ」

男3「ほらほらボーっとしてないで俺らといこうよ」

ガシッ

初春「ちょっと…やめてください、私は風紀委員ですよ」

男1「ふひゃひゃひゃひゃ風紀委員だってよ」

佐天「ちょっと、初春から手を放してください」

そう言うと佐天は男の手を初春から振りほどいた。

男2「お姉ちゃんなかなか元気だねぇ」

男3「その方が後で興奮するよな」

男たちはその場で笑い始めた。
下品な会話が飛び交っている。
その隙に初春と逃げ出す。
その、はずだった。

佐天「あなた達、中学生によってたかって恥ずかしくないんですか?」

男「あぁ?」

私は今何を言っているんだろう。

佐天「もしあなた達が私の友達だとしたら即縁を切りますね」

馬鹿だ。 私は馬鹿だ。
私は別にヒーローになんかなりたい訳じゃない。
こういう人たちに説教をかましたい訳じゃない。
……自分がそんな器ではないことは分かっている。
私が発現した能力なんて100点を取る、そんな自分のことしか考えていないような能力なんだから。
おそらくこれは能力のせいなんだろう。
ぼやぼやとした頭の中で、佐天はこんなことを考えていた。
次にこれは何に対する100点なんだろうと思考を凝らす。
悪に説教をかまして改心させる100点ならまだましだ。
改心させられれば被害を被ることはないだろう。
しかし、これは……

佐天「あなた達、すごくダサくてカッコ悪くて醜いです」

人を怒らせる100点なのではないだろうか。

男1「おい…てめぇっざけんじゃねえぞ」

佐天「ほんとの事いって何が悪いんですか?何回でもいってあげますよ」

佐天「この[ピザ]で馬鹿でカスみたいな三下野郎どもが、なに話しかけてきてんだよ」

佐天「後馴れ馴れしく触んな」

パシッ

男2「元気なのはいいけどよぉ…」

男3「口の利き方に気をつけた方がいいんじゃねえのお?」

佐天「いいから黙ってきえろハゲ」

男1「このクソ餓鬼がぁいい加減にしやがれえぇぇぇ」

初春「佐天さん!」

ボコッ

???「やめろよ、自分より弱い女の子に手をだすなんて最低だぞ」

男1「なんだぁ……テメェ」

???「ただの無能力者だよ」

無能力者、その言葉に佐天は内心ドキリとしていた。
駄目だ。 無能力者が男三人なんか相手に出来るわけがない。
この無能力者が武術を心得ている可能性もあったが、佐天の中で無能力者=弱者という方程式がここ最近成り立っていた。
だって無能力者は、この使えない能力を持っている私以下の存在なんだから。

???「君、大丈夫か」

その少年が佐天の肩に触れたとき、何かが砕けるような感覚がした。

佐天「あ、あれ? はい、大丈夫です」

佐天はいきなり身体の制御権が戻ってきて困惑していた。
しかし、それよりもこの無能力者に言いたいことがあった。

その感情は、膨れ上がって今にも爆発しそうだ。


佐天「あなたは、無能力者なんですよね」

それがどうかしたのか?と少年は言う。
どうかしたのか、じゃない。

佐天「無能力者のあなたがっ! あんな人たち三人を相手に出来るわけがないっ!!」

佐天「なんで……なんで見なかったことにしないんですかっ!」

佐天は自分の能力がいかに使えないか分かっていながらも、自分は無能力者以上の存在になったんだとばかり思っていた。
それは自分が無能力者でいる期間が長すぎたからなんだろう。
無能力者がどれだけみじめで愚かな存在なのか知ってしまっていたから。
その言葉自体にコンプレックスを抱いていた。
しかし、能力者になった私でもこんな場面で出て行ったりしない。
全然強くなってなんかいない。
私は今、無能力者以下なんだ。
そう、思ってしまった。

???「見なかったことになんて、出来るわけがないだろ……ッ」

佐天「でも……でも、あなたは無能力者。 なんの力もない非力な存在」

佐天「なのに、どうしてっ!」

???「無能力者とか超能力者とか、力が有るとか無いとか、そんなことは関係ないだろ」

???「俺はお前を助けたいと思ったからこうしてる。 ただそれだけなんだよ」

助けたい、その言葉の意味が分からない。
あの人にとって私とはなんだ、あったこともない赤の他人じゃないのか。
そして、同時に確信してしまった。

強い。 
この人は強い。
私なんかよりもずっと。

男1「お前ら、いつまでも無視してんじゃねぇぞォォ!!」

防戦一方だった。
当然だ。 歳だって対して変わらないだろうに三人を相手に勝てるわけがない。

初春「佐天さん。 あの人には悪いですが一旦離れましょう。 白井さんに連絡いれときましたから」

初春がひっそり囁く。
だが、

佐天「初春、私はあの人に追いつきたい」

初春「佐天、さん?」

佐天「今の私じゃあの人には色々と届かない……だけどね」

佐天には確かな『目標』が出来ていた。

佐天「だって、今の私は、夢にまで見た能力者なんだもんっ!」

男1「そんなもんかよ兄ちゃん」

男2「あんま大したことねえなぁ」

???「くっそ(腹がへってちゃ力がでねえ)」

男3「これで終わりだああああああ」

???「(まじかよ…このままじゃ)」

バコォン

佐天「オラッ」

男3「………」

男1「なに!大丈夫か3!」

佐天「私が相手になります」

男1「3を倒したからって調子にのんじゃねえぞおおおおお」

スッ

佐天「大外刈りいいいいぃぃぃ」

初春「あ、あれは100点の大外刈り!」

この時、初春飾利は腑に落ちない何かを感じたがこの場の緊張感と熱気により気に留めなかった

男2「お、おい1」

佐天「(私の能力は…)」

男2「くっそおおおおおおおおおおお」

佐天「100点を取る能力だあああああああ」




その後は佐天の独壇場だった。
今の佐天にはなんの100点を出すかを任意で決めることができた。
恐らくレベルが上がったのだろう。
しかし、佐天はそんなことなど気にしていなかった。
戦う、なんてことをしたかった訳ではないが、この無能力者の少年と背中を合わせて同じ舞台に立てている。
そのことが、ただただ嬉しかったのだ。

白井「ジャッジメントですの……って」

白井「どういう状況ですの、初春」

初春「あはは、説明しますね」

男たちが白井に捕えられ、自分たちも事情聴取のためにジャッジメントの支部へ向かっているとき佐天は無能力者の少年と話をしていた。

佐天「私はあなたの横に並べていたんでしょうか」

???「もちろんだ。 むしろ俺よりも活躍してたじゃないか」

少年はあくまでも素直に答える。

佐天「それは、あなたが私を変えてくれたからです」

???「それは違うさ」

少年はキッパリと言った。
そこに自重などは含まれているようには思えなかった。

???「俺が変えたんじゃない。 君が変わりたいと思ったから変われたんだろ?」

???「別に俺はなにもしてないさ」

佐天「でも、私はあなたを見たから変わりたいと思ったんですよ?」

皮肉でもなんでもない。
佐天は素直にこの少年のことがすごいと思ったし、この短い時間の中で憧れていた。
昔から、忘れてしまっていたけれど、私はこんな人になりたかったのかもしれない。
児童向けアニメの主人公のような、ただ真っ直ぐでひたむきな本当にヒーローになりたかったのかもしれない。

???「別に君なら、俺がいなくたっていつでも変われたさ」

本当に、面白い人だ。

佐天「あの、名前、なんていうんですか?」

???「ん? あぁまだ言ってなかったか」

上条「上条当麻だ。 よろしくな」

胸の高鳴りを感じた。
憧れ、理想像、恩人。
そんなものじゃない、私はこの人に……

佐天「私は佐天涙子です。 これからよろしくお願いしますね、上条さんっ!」

さっきまでよりも前向きになれた私は、その感情に戸惑う事なんてなかった。
ただ、この幸せを受け入れる。
それだけのことが簡単にできた。
しかし、本当の意味でこの幸せに向き合うためにはこの思いを伝えなきゃいけないんだろうけど。
顔が熱い。

上条「あぁ、そうだ。 涙子が俺に憧れてくれるのは別に構わないんだけどさ」

俺はそれほどの人間じゃないけどな、と言ってから続ける。

上条「女の子があんまり拳握って戦うのは、上条さんとしてはどうかとおもいますよ?」

一瞬何の事だか分らなかったが、すぐに理解した。
さっきよりも顔が熱くなった佐天は言った。

佐天「……上条さんのせいですもん」

ごめんごめん、と上条はいいながら。
(まぁ、平気で女の顔殴る俺が言えたことでもないかもな)
などと一人で考えたりしていた。

その後私はレベル3になった

100点を取る能力を大体はコントロールできるようになった

初春「漢字検定3級どうでした?」

佐天「あぁほれ」

初春「100点じゃないですか!さっすが佐天さん!」

この時、初春飾利は腑に落ちない何かを感じた、ピカリン!

初春「って漢字検定で100点取ってどうするんですか!」

佐天「あははは…」

はい、これで完結です。
友人と遊んでたら暇になったんで交代ばんこでss書いてみました。
色々おかしいところもあったかもしれませんが、みてくれた方ありがとうございました。

ps.13に当初のオチ取られたことは内緒

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