美月「おかしいわ」かえで「おかしいかなぁ?」 (23)

美月「ダンスレッスンはこれくらいにしましょう」

かえで「賛成!もうそろそろ眠いしね」

ユリカ「吸血鬼は夜こそが本領発揮の時間……といいたいところだけど、明日があるものね」

美月「そういう事。明日に備えて、もう休まないと」

かえで「それじゃ美月、また明日ね!」

ユリカ「……」

美月「ユリカ?」

ユリカ「……また明日」

美月「えぇ、また明日」

美月(どうしたんだろう、ユリカが一瞬、何かを言いかけたような)

美月「おはよう、2人共。昨日はよく眠れた?」

かえで「Good morning!もちろんぐっすり!ね、ユリカ?」

ユリカ「月の光を浴びながら眠ったもの。万全よ」

美月「それじゃあ、早速朝食にしましょ」

ユリカ「トマトジュース、トマトジュース……」

美月「ねぇ、かえで」コソコソ

かえで「どうしたの?」コソコソ

美月「昨日はユリカと相部屋だったのよね? 変なところなかった?」コソコソ

かえで「ううん。いつも通りだったよ。
    月光が当たるからって窓際に棺桶置いて、これで闇の力を蓄えられるって」コソコソ

美月「本当に普段通りね……私の考えすぎかしら?」

美月「今のうちに、ミニライブの打ち合わせをしましょうか」

かえで「会場はそんなに大きくないけど、その分手品でファンを驚かせたりしたいなぁ」

美月「そうね。こういう規模のライブはあまりないし。
   かえでのソロ曲を歌う前に、手品を披露するくらいのサプライズはあった方がファンも喜ぶわ」

かえで「スターアニスの時は、おとめに手伝ってもらったけど。
    今度はユリカが手伝ってくれる?」

ユリカ「人間の奇術に手を貸すだなんて。吸血鬼の末裔としての誇りが許さなくってよ」

かえで「冗談だってば。で、ユリカはソロ曲何歌うの?」

ユリカ「それは勿論」

かえで「硝子ドール?」

ユリカ「私の言葉を勝手に言わないでくれる? いい加減にしないと血を吸うわよ!」

かえで「それは困るなぁ。これで許してよ」ポン

ユリカ「トマトジュース……ふん。それなら許してあげないこともなくってよ」

美月(本当に、こうして見るとユリカは普段通りね。疲れている風でもないし。
   私の考えすぎだったのかしら)

美月「それで、衣装はロリゴシックなのよね?」

ユリカ「ふぇ!?」

美月「?」

ユリカ「え、えぇそうよ。吸血鬼の末裔に相応しい衣装だもの。
    トライスターの衣装も、月の眷属に相応しい衣装だから嫌いではないこともないけれど」

美月(月の眷属?)

美月「ユリカのトライスターの衣装、ファンの間では結構好評らしいじゃない」

ユリカ「……そうね。月の眷属ということがどういうことか、ファンも分かってくれているから」

美月(やっぱり、おかしい)

かえで「美月、やっぱりおかしいって思ってる?」

美月「急に部屋に来るから何かと思えば……その事ね」

かえで「仕事の時も、移動中に打ち合わせしてる時も、ユリカはユリカだったじゃん。
    むしろ、ユリカを気にしてる美月の方が気になったから、こうやって来たんだよ」

美月「気にするわよ。ユリカなら大丈夫だと思うけれど」

かえで「蘭みたいに、脱退しちゃったらどうしようって? そんな心配いらないと思うよ。
    美月は疑い深いなぁ。そんなに気になるなら、直接本人に訊けばいいのに」

美月「そ、それは」

かえで「今日の部屋割りだってさ。シングルルーム3つじゃなくて、ツイン1つ、シングル1つにして。
    ツインに美月とユリカが泊まれば良かったんだよ。内緒話しやすいでしょ?」

美月「そんなの……気まずいわよ」

かえで「おぉー」

美月「その反応は、何?」

かえで「いやぁ、こんな困ってる顔の美月なんて滅多に見ないからさ。レアだなぁって」

美月「貴女、スターアニスツアー中に、霧矢に影響受けたんじゃないでしょうね?」

かえで「What's?」

美月「いえ、何でもないわ」

かえで「美月が訊けないなら、私がちょっと行ってくるよ」

美月「かえでが!? でも、これは」

かえで「美月とユリカの問題は、トライスターの問題だよ。じゃあね、美月!」

美月「……行っちゃった」

かえで「という訳で、ユリカは何か隠し事してるの?」

ユリカ「べ、別に隠し事なんてないわよ。
    吸血鬼の末裔たる私に、秘めなければいけない後ろめたい事などないわ」

かえで「にんにくラーメン好きなのは?」

ユリカ「吸血鬼と人間とのハーフだから、時にはそういう味が食べたくもなるの」

かえで「お、上手く設定付けたんだね」

ユリカ「設定だなんて言わないで。とにかく、私は裏も表もないわ」

かえで「でも、美月は心配してたよ?」

ユリカ「美月さんが、私を?」

かえで「そうそう。で、私はそんな美月が気になるんだよねー。
    あぁどうしよう。このままじゃトライスターの活動に支障が出ちゃうかもー(棒)」

ユリカ「くっ……そんな見え透いた芝居に騙されるユリカ様ではないわ!」

かえで「美月がユリカを気にしてるのは事実だよ?」

ユリカ「う」

かえで「隠し事なんてよくないと思うな。せっかく同じユニットのメンバーになれたんだから。
    変に気を遣ったりしないで、アイカツを楽しもうよ」

ユリカ「別に、気を遣ったりなんてしてないわよ。トライスターの活動も楽しいし。
     けれど、そうね。美月さんを心配させてしまうのはよくないわよね」

かえで「そうそう!じゃあ早速今から美月の部屋に」

ユリカ「それは無理」

かえで「えー」

ユリカ「仕方ないわね。それじゃ、ちょっと協力しなさい」

月影「今日は美月とかえでが相部屋、ユリカが1人部屋よ」

美月「ソロ仕事で私だけ遅くなっちゃったから。もうかえでは寝てるかもしれないわね」

月影「時間はあまりないけれど、なるべく身体を休ませてね」

美月「勿論、明日の仕事に響かせるような事はしないわ。それじゃ、おやすみなさい」

美月(かえでを起こさないように、静かにしないと……)

ユリカ「月が輝く夜は、身体が疼く。血が欲しいと、身体が疼く」

美月「ユリカ?どうして?」

美月(久々に見るわね、ユリカのマント姿)

ユリカ「私は由緒正しき吸血鬼の末裔。けれど月の眷属が側にいる今、私の波長が乱れているわ」

美月「ユリカ、その月の眷属というのは、ひょっとして私の事?」

ユリカ「自覚がないままにこの私を狂わせるなんて、さすがは月の眷属ね。
    だからこそ、こんな事が起きてしまう」ファサ

美月(ユリカがマントを落として……眼鏡をつけた?)

ユリカ「そ、その……ずっと、お礼を言いたかったんです」

美月「お礼?」

ユリカ「スターアニスのツアー初日、私にいつもの感じでって言ってくれたのが、とても嬉しくて。
    それだけ美月さんが私を見てくれていて、そして信じてくれているのが伝わったというか。
    でも、面と向かってお礼を言うなんて、そんなの私には……」

美月(吸血鬼の末裔が、人間に素直に礼を言うわけにはいかない、か。
   やっぱりユリカはアイドルとしての意識が高いのね。
   それでも、こうやって素直になってくれた……私の為に)

ユリカ「今夜の私は、300年に1度しか表れない筈の超レア状態。だからこそ、言わせて下さい。
    あの時は、本当にありがとうございました、美月さん。
    とっても、とっても嬉しかったです」

美月「そんな……お礼を言われるような事をしたつもりはないわ。
   こっちこそありがとう、ユリカ。それに……かえでもね」ガラッ

かえで「うわっ! 急に開けないでよ、びっくりした!」

美月「クローゼットの中で立ち聞きなんて、褒められたものじゃないわ。
   でも、この状況はかえでとユリカ、2人で仕組んだものなんでしょう?」

かえで「だって、超レア状態じゃないとユリカが隠し事話せないって言うからさ。
    眼鏡つけて髪下ろした姿なんて、寝る前にはいつも見てるのにね」

ユリカ「そ、そんな言い方しないで、下さい」///

かえで「Oh……」

美月「かえで?」

かえで「おとめが言ってた「ギャップらーぶ」っていうの、分かる気がする」

美月(かえでがどんどん新しい扉を開いていってる気がする)

美月「でも良かった。ユリカの気持ちが聞けて、安心したわ」

ユリカ「美月さん、すみません、私のせいで」

美月「いいのよ。これからもよろしくね、ユリカ」

ユリカ「こちらこそよろしくお願いします、美月さん」

かえで「ちょっと、私は?」

美月「もちろん、かえでもよ。これからもよろしくね」

ユリカ「そこまで言うなら、これからも一緒にアイカツしてあげないこともなくってよ」

かえで「あれ?もう戻っちゃったのー?」

ユリカ「どうしてそこまで残念そうなのよ。超レアユリカ様状態は、すぐに終わると決まっているの」

かえで「まぁいいか。ばっちり録音したし」

ユリカ「そのアイカツフォン、寄越しなさい!」

美月「ちょうどいいわ。かえで、私にその音声データ、コピーさせて」

ユリカ「美月さんまで!?」

美月「超レアユリカを加えた新たなトライスターの誕生記念だもの、大切にとっておかなくちゃ」

ユリカ「その言い方は、卑怯だわ……」

かえで「ユリカは美月には弱いんだもんねー。美月知ってた?ユリカのアイカツフォンの中身」

美月「知らないけど?」

かえで「美月の曲とか、画像がいっぱ……むぐ」

ユリカ「そういう事を言っていると血を吸うわよ!
    大体かえでだって、美月さんのCDとか色々持ち歩いているじゃない!」

かえで「トップアイドルの曲やグッズを持ち歩くのは変な事じゃないと思うけどなー」

ユリカ「普通の人間と一緒にしないでくれるかしら!」

美月「私も持ってるわよ、2人の曲や画像のデータ」

かえで・ユリカ「え?」

美月「同じユニットのメンバーだもの。知っていることは多いに越したことはないかと思って」

ユリカ「美月さんこそ、あおいの影響受けてるんじゃないかしら……」

かえで「曲や画像よりもさ、パジャマパーティっていうのをしようよ!
    日本の女の子はそういうのするんでしょ?」

ユリカ「まさか、今日、これから?」

かえで「大丈夫。ユリカの棺桶なら持ってきてるから」

美月「さすが、準備がいいわね、かえで。でも、明日の仕事には響かないようにしなきゃ」

かえで「心配いらないって。きっと明日はもっといいトライスターになってると思うよ!」

ユリカ「吸血鬼の末裔たるこのユリカ様の、夜の本気をなめないことね!」

美月(それから私達は、所謂パジャマパーティをすることになった。
    睡眠時間はかなり短くなったのに、翌日の仕事はこれまでにないくらい好調で……)

美月「かえでとユリカと、ユニットを組んで良かった」

月影「何か言った、美月?」

美月「いいえ、何も」


END

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