夏目「レイコさん」 (114)





ほんの一瞬の幻を



見せる妖がいるという。








SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362640641



小さな頃から時々、変なものを見た。


他の人には見えないらしいそれはおそらく、妖怪と呼ばれるものの類。

それが見えることでおれは人から疎まれ、避けられ、自分でもこれが一生続くのだろうと思っていた。


そこへ現れ、親戚の間をタライ回しだったおれを引き取ってくれたのは、心優しい藤原夫妻。

塔子さんと滋さん、そしてその他の優しい人たちに迷惑を掛けないためにも、妖が見えることは絶対に秘密なのだ。


おれの祖母である夏目レイコさんは、強い妖力を持ち
その力と度胸をもって多くの妖を打ち負かすパワフルな人だったらしい。

彼女が作った『友人帳』なる帳面を受け継いだおれは、それから妖に関わることが多くなった。


名前と顔を知っている妖を従わせる効力を持つ『友人帳』を狙ってくるもの。

そして、名前を返してほしいと訪ねてくるもの。


友人帳に記された名前は、血縁の者の唾液と息によって妖に還されるのだ。

ニャンコ先生に出会って以来、レイコさんの血縁であるおれは、
時々訪ねてくる彼らに『名前』を還してやっている。



面の妖「ありがとうございました、夏目様」


夏目「———ふう……、疲れた」



ただ、名前を返すとひどく疲れる。


時刻は深夜一時。妖には夜行性のものもいるらしく、寝ている間にやってくる妖もたまにいる。

いや、そもそも妖たちに昼夜の感覚があるのかすら不明瞭だ。



ニャンコ先生「うぃーっ、ひっく。オイ夏目ー、酒持ってこーい」



夜中に一人でどんちゃん騒ぎをする、こんなブサネコ妖怪がいるのだから。


夏目「おい先生、呑み過ぎだぞ。そろそろ寝たらどうなんだ?」

ニャンコ「やかましいぞ夏目。人の子ごときが私のような高貴な妖に指図をするとは何事だ」ヒック

夏目「何が高貴だ、この酔いどれインチキ招き猫」


この頭のデカい招き猫は、自称用心棒妖怪のニャンコ先生。

本人曰く、本来の姿は"偉大にして高貴で美しい"。

どうやらかなり上級の妖らしいのだが、招き猫を模った通常時の姿は思いっきり下級だ。


夏目「……ほどほどにしろよ先生。おれはまた寝るから」


ニャンコ「にゃんと!?待て夏目、もう一本燗をつけてからにしろ!もう酒が無いではないか」



夏目「おやすみー…」ゴソゴソ

ニャンコ「夏目ぇー!!」





その夜、おかしな夢を見た。








「レイコさん———…?」


木の下に佇む学生服の少女は、きっとレイコさんだ。


誰かと一緒に居るわけではないらしい。

人間嫌いなレイコさん。
彼女は人の友を作らず、孤独で、けれどそんな陰は見せることのない強い人。


レイコさんは誰かと話しているようだ。


よく見れば、頭上の太い枝には一人の妖怪。



珍しい、と思った。


今までおれが『友人帳』に名のある妖の記憶から垣間見た昔の光景は、
レイコさんが妖怪と勝負して名を奪う場面ばかりだった。

そしておれの知っている限り、彼女は名を奪った相手とは会わなくなる。


だが今おれが見ているレイコさんには、枝に跨っている少年の妖と一戦交える様な気色はない。

彼女は何をしているのだろう。


すると、レイコさんが一瞬驚いたような顔を見せた。


その表情は段々と好奇心の表情へと変わっていき、少年の妖に何かを矢継ぎ早に尋ねている。

樹の上の少年妖は少し困った様子でレイコさんに何かを言って……

…そして———…









———そして、夢が醒めた。





夏目「……おはようニャンコ先生」


くしゃ、と先生の頭を鷲掴みにして撫でる。


結局昨夜は冷酒で妥協したようだ。ほんの1、2時間前に寝たらしいニャンコ先生の顔はまだほんのり赤かった。

ほどほどにしておけと言ったのに———…




夏目「それにしても、さっきの夢は一体…?」



カーテンを開けると朝日が差し込む。



今日は平日、登校日だ。





河童「み、みず…」カラカラ






夏目「……」





夏目「おーい、大丈夫か?」ジョボジョボ



通学路での登校途中、久しぶりに見る妖が倒れていた。


いつだったか、同じく登校途中に行き倒れていたこの河童の妖。

皿が乾いてしまい、身動きが取れずに干からびていたこの河童に水をかけてやるのも前回と同じだ。


夏目(今日は遅刻だな…)



河童「いやあ助かりました夏目親分。お待ちしていたらまたしても干からびてしまいまして……面目ない」


夏目「いや。かまわないよ…」


口下手なのは毎度のこと。
相手が河童だとしても、やはりこんな自分が嫌になる。


夏目「それよりお前、僕に用事があったのか?」

河童「はい。夏目親分にお伝えしておきたい森の異変がありまして…」

夏目「そうか…。でもごめん、夕方にしてくれないか?今から学校なんだ」


夏目「…あ、このペットボトルの水を持っててくれ。また倒れられたら敵わないからな」


河童「承知しました。では此処でお待ちしています————」

遅すぎる復活

修正入れつつまったり再投下していきます
今日はここまで

期待

タイトル見覚えあると思ったら
もうほとんど覚えてなかったしまた楽しみに待ってるぜ


初見ですがリメイクですか?
夏目SSってあまりないので期待しております

速攻で落ちたあのスレか
落ちる前にいた絵師がかなりうまかったのだけは覚えてる

>>18
去年ネットの接続不良のため途中で落としてしまったので復活させました
少し変更も入れてもう一度投下していきます

>>19
あの絵師さんの絵は永久保存モノです

その画を誰か見せてくれ

>>21
その場面になったらな




ニャンコ「くそう夏目のやつめ、私から酒を取り上げるとは—————」トコトコ






-朝-




夏目『———なあ、最近ちょっと飲み過ぎじゃないのか?ニャンコ先生』


ニャンコ『何?私がいくら飲もうとお前にゃ関係なかろうが』

夏目『大アリだ馬鹿ニャンコ!最近先生が遅くまで一人酒してるせいで、おれ殆ど眠れてないんだぞ!』

ニャンコ『む……小さなことでぎゃーぎゃーとうるさいやつだ』




塔子『貴志くーん、そろそろ行かないと遅刻するわよー』



夏目『あ、はーい!今行きます』

ニャンコ『ふん。ほれほれ、早く行ってしまえ』

夏目『…そうだな……』




夏目『————これ、持って行ってくるよ』ニヤリ

ニャンコ『にゃ!?』


夏目『よっこらせ……うわ。結構重いな』

ニャンコ『わ、私の酒樽に何をする!?返さんか夏目!』

夏目『嫌だ』

夏目『放っとくとまた飲むからな、これはおれが預かっておく。今日一日先生は禁酒だ』

ニャンコ『にゃんとぉぉお——————ッ!!??』


ニャンコ『返せ!返せ!くそっ、この小僧めが———!!』ピョンピョン

夏目『うるさいぞブタニャンコ。諦めろ』

ニャンコ『くっ……』


ニャンコ『…いいのか?』


夏目『は?』

ニャンコ『本当に酒樽など担いで行けるのかと訊いているのだ。教師とやらに捕まるのではないか?
    …ふん、この脳なしの小童めが。分かったらさっさと返さんか』

夏目『ああ。それなら問題ないさ』


夏目『これは先生が八ツ原の連中からかっぱらってきた物だからな。妖のものなら普通の人には見えないさ』

ニャンコ『くっ、気付いていたか……』

夏目『まあそういうことだから、諦めるんだな先生』


夏目『今日は一日酒抜きだ。少しは懲りろ』イッテキマーストウコサン


ニャンコ『くっそおおおおおおおおお酒泥棒———————ッッ!!!!!!』ギニャー



-八ッ原-



ニャンコ「———酒……酒…」フラフラ


ニャンコ「酒はどこだ…」




ニャンコ「こらぁ低級共———!!この私がわざわざ来てやったんだぞ、酒の一杯も出せんのか——!?」



ニャンコ「……」




ピー、チチチ…





ニャンコ「…くそう、今日は居ないのか…?」



つるつる(しーっ。声を殺して隠れるのだ。真っ昼間からあの音痴で加齢臭のブタネコに騒がれるのは御免だ)

牛(御免、御免)



-学校-



夏目「おはよう田沼」

田沼「ああ、おはよう夏目……、ん?」

夏目「どうかしたか?」

田沼「その担いでる樽、何なんだ?なにか普通じゃないものを感じるけど」

夏目「ああ、田沼には見えるのか。実はこれ先生の酒樽なんだ」

田沼「ニャン———…ポン太の?」



田沼「———はは。そうか、ポン太が禁酒か」


夏目「そうなんだ。昨日遅くまでうるさくて…」


田沼「まあいいんじゃないか?これでポン太も少しは懲りるだろ」

夏目「だと良いんだけど……」


夏目「そういえば田沼の親父さん、明日帰ってくるんだっけ」

田沼「ああ。本山の行事の手伝いが今日で終わるから…」

夏目「大変だったな。今まで家にずっとひとりでいたんだろう?」

田沼「ま、たまには広い家をひとり占めってのも良いもんだ。一人分だけ飯を作るのが少し面倒だったけど……」


夏目「そうか。でももし何かあったら言ってくれよ。おれに出来ることならいつでも手伝うから」

田沼「ああ。ありがとうな夏目」


田沼「じゃあ早速で悪いんだが、一つ頼みを聞いてくれるか?」

夏目「え…、ああ勿論。何だ?」


田沼「以前父さんの留守中、家に妖怪が入り込んだことがあっただろう?」

夏目(カナワのときか……)


夏目「確か中級たちの話だと守りが弱くなるとか」

田沼「今回ももしかしたら何かが入り込んでいるかもしれない。今のところおれは何も感じないんだが……」

田沼「一応、おれより妖が見える夏目の目でも見てもらいたいんだ」



夏目「なるほどな……あ、そういえば」


夏目「登校中に会った河童の妖も、"森に異変があった"って言ってたな」

田沼「異変?」

夏目「詳しくは聞いてないんだ。夕方にもう一度会う約束をしただけで」


夏目「よし、放課後田沼の家に行くよ。その妖に会ってからになるけど良いか?」

田沼「決まりだな。頼むよ」

今日はここまで

おつ
毎日投下になるのかな?

>>36
一応不定期になる予定です

既視感があったんだけどやっぱ復活か
楽しみにしてる乙



ニャンコ「なんということだ……酒を手に入れる手段が絶たれてしまった」ズーン

ニャンコ「これというのも夏目が私の酒を強奪するからだ。あの人の皮を被った悪魔め」




夏目(悪)『ヒーッヒッヒッヒ』ケラケラ




ニャンコ「くそう、人の子ごときが……」


ニャンコ「くぅぅ仕方がない、こうなったら最終手段だ……」ホテホテ


ニャンコ「————、はっ!」ドロンッ








レイコ(ニャンコ)「…ふむ、いい出来だ」



-七辻屋-




レイコ「おい、饅頭と羊羹を十個ずつだ。代金は夏目にツケておけ」


レイコ「ふん、酒が無いのならヤケ食いする他あるまい。恨むなよ夏目」モグモグ


レイコ「……さて」

レイコ「これといって行く宛も無い。どうするか」






レイコ「———おっと」ドンッ

??「わぷっ」ドテッ


レイコ「ちっ、しまった。おい小娘、大丈夫か」

民子「あいたたた……」


レイコ(———む。こやつ、よく見たらこの間の娘ではないか…)

民子「ごめんねおねえちゃん。よそ見してたらぶつかっちゃった…、って」




民子「……わぁ、キレイなひと…」キラキラ

レイコ(ニャンコ)「にゃに?」


ニャンコ「ほほう。あのタキとかいう女以外にも私の高貴さを理解できる者がいたか」フフン

ニャンコ「…ああいや、そういえば今はレイコの姿だったな」


ニャンコ「ふん。まあこの間のチョコに免じて許してやる。気を付けろよ小娘」

民子「う、うん……」

ニャンコ「……」




ニャンコ「いや、丁度いい。小娘、少し付き合え」

民子「へ?」


-公園-


民子「おいしーい!このおまんじゅうおいしいよおねえちゃん!」

ニャンコ「わたしが贔屓にしている店の菓子だ。不味い筈がない」

ニャンコ「感謝するがいいぞ。この私が人の子に施しをするなど、滅多に無いことなのだからな」


ニャンコ(代金を払うのは夏目だが…)


民子「うん、ありがとうおねえちゃん!」

ニャンコ「……」


民子「…ねえ、お姉ちゃんってヒマなの?学校は?」

ニャンコ「何?この私がそんなつまらん所に行くわけがないだろう」

民子「ふーん…」



民子「そっか。お姉ちゃんヒマなんだ」ニコー

ニャンコ「……な、何だ」


民子「今日民子はおでかけだったんだけどね。パパのお仕事が入ってダメになっちゃったの」

ニャンコ「ほう」


民子「だからねお姉ちゃん」

ニャンコ「却下だ」


民子「ま、まだ何も言ってないのにー」



ニャンコ「……ちっ、言うだけ言ってみろ」

民子「!」パァッ



民子「お姉ちゃん、今から民子と遊ぼう!」



-放課後-


夏目「ほら、あの手を振ってる妖だ。ちゃんと待っててくれたみたいだな」


河童「夏目親分ー」フリフリ


田沼「うーん、確かに……人型の靄みたいなものは見えるけど」

夏目「実は人じゃなくて河童なんだ」

田沼「か…かっぱ!?」


夏目「じゃあ少し話を聞いてくるから、少し待っててくれるか?」

田沼「ああ、分かった」


俺の秘密を知る数少ない"同類"の一人、同級生の田沼は妖の声を聴くことができない。


彼が持っているのは、妖の存在をぼんやりと"何かがいる"程度に認識できる力。

だが人ならざるものが見えることで、おれと同じ悩みを抱えていた友人だ。


ついでに言うと、田沼が初めて会話をした妖はおれの用心棒であるニャンコ先生。


先生は封印の依代だった招き猫に変化することで、人の目にも触れることができるのだ。

更に先生クラスの最上級妖ともなると、人や動物に化けて姿を見せることも容易らしい。

おれも昔、とある古木に棲む妖が猫に化けた姿を見たことがある。


ただその姿から田沼に『ポン太』と命名され、もう犬なのか猫なのか妖なのか、よく分からないことになっている。


河童「すいません夏目親分。わざわざ来ていただいて」

夏目「そんなに遜らなくていいよ。おれの方こそ待たせて悪かった」


河童「それで朝お伝えしたいと言った異変なのですが…」


河童「どうやら、森に強い妖力を持った見知らぬ妖が突然現れたようなのです」

夏目「強い妖?」

河童「はい。仲間の妖が森から追い出しに行ったのですが、あっさりと返り討ちにされたらしく」

夏目「おいおい、そんなに危ない妖怪なのか……」

河童「いえ、それが———」


田沼「おい夏目、どうした?」


夏目「いや……今河童から、森に強い妖怪が現れたって」

田沼「え、八ッ原の妖怪たちは大丈夫なのか?」


河童「夏目親分。この者は親分の子分で?随分鈍臭そうな人の子ですね」


夏目「違う違う!田沼はおれの友人だ、子分じゃない!影踏み鬼の時に見ただろう!?」

河童「おや、これは失礼」

田沼「こ、子分?」

とりあえずここまで


先生はレイコと夏目にしか化けられないんだっけ?

>>55
基本ナンチャッテレイコかチョイ悪夏目にしか化けない
けどガン見すれば他の人間にも化けられる


河童「それで話の続きなのですが、その妖は自分からは攻撃をしてこないそうなのです」

河童「返り討ちと言っても、戦いを仕掛けた者を軽くあしらう程度で…」

夏目「なんだ、それなら大分穏やかな妖じゃないか」

田沼「夏目、大丈夫なのか?」

夏目「ああ、とりあえずそいつは好戦的な妖じゃないらしい。でも一応田沼の家には行ってみよう」

田沼「そうか。頼むよ」


河童「夏目親分にはその妖の報告に参りました。ひょっとすると友人帳目当ての妖かもしれませんし、用心をと」

夏目「そうだな。わざわざありがとう、友人帳には気を付けておくよ」

河童「はい、それでは……」



夏目「よし。待たせて悪い田沼、行こう」


———————————————
————————————

——————————




-田沼家-




夏目「—————…、と。これで敷地内は一通り回ったな」


夏目「よし、とりあえず変な妖怪もいないみたいだ」

田沼「ありがとう夏目。これで安心して父さんを迎えられるよ」


田沼「でも、これから父さんが家を空けるたびに夏目を呼ぶわけにもいかないよな……」

夏目「おれは別に構わないよ。いつでも頼ってくれればいい」

田沼「うーん……」

??「自分で妖を祓えるようになりたいのかい?」

田沼「そうだな。そのくらい出来れば夏目にも迷惑がかからな————く…」



田沼「…え?」




ヒノエ「ふむ。それなら私が妖除けのまじないでも教えてやろうか」


田沼「だ———誰だアンタ!?」

夏目「あっ、ヒノエ!」

田沼「な、なんだ?知り合いなのか夏目?」


夏目「いや、知り合いの……妖なんだ」

田沼「え、妖!?」


夏目「…ヒノエ、どうして田沼の家にいるんだ?」

ヒノエ「ふふ、森に強いあやかしものが現れたと中級共が騒いでいたものでね」


ヒノエ「見物でもするかと森に向かっていたら、偶然お前たちを見つけ……そのままついてきたのさ」

夏目「は!?てことはずっと一緒に居たのか!?全然気配を感じなかったぞ!」

ヒノエ「ふん。私はまだまだ未熟なおまえに気配を気取られるほど迂闊な妖じゃないよ」


夏目「……な、なんだか自信が無くなってきた…もしかして他にも隠れてるんじゃないのか?」

ヒノエ「それなら大丈夫さ、この家には私以外にあやかしものは入っていない」

夏目「そ、そうか。良かった」



田沼「……あ、あのさ夏目。その前に気になる事があるんだが」

夏目「あ……」


夏目「田沼、ヒノエが見えるのか?」

田沼「……はっきりと」


ヒノエ「ああ、それなら私の術さ」

夏目「ヒノエの……って、妖術か?」

ヒノエ「ふふ、呪詛使いをナメちゃいけないよ。人に姿を見せることの出来る妖は、何も斑だけってわけじゃない」


ヒノエ「ぼうや。夏目に負担をかけたくないと思っているのなら、私が助けてやってもいい」

田沼「ええと…ヒノエさん、だったか。どういうことだ?」



ヒノエ「———さっきからお前たちの様子を見ていたよ。お前は夏目と仲がいいんだね」


ヒノエ「男は嫌いだが……お前は夏目の友で、ちゃんと夏目のことを考えてやっている。ならば私が手助けをしてやろうというんだ」

田沼「おれに妖怪を祓う術を教えてくれるのか?」

ヒノエ「祓い屋のような術は専門外だが、下等な者を寄せ付けない簡単な結界の作り方くらいは教えてやれるよ」

ヒノエ「幸い、お前には僅かだが妖力もあるようだからね」


夏目「おい、待ってくれヒノエ。田沼に変なことを……」

ヒノエ「まあ良いだろう夏目。こいつの身を守る術を教えてやろうというんだから」

夏目「う……、それは、そうだけど」


ヒノエ「何よりこいつがやる気になっているみたいだ。お前が口出しすることじゃないよ」

田沼「た、頼みます。おれにその術を教えてください」

夏目「おい、田沼……」

田沼「すまん、見逃してくれ夏目。おれにも出来ることがあるなら、それを知りたい。いつも夏目に頼りきりだからな」


ヒノエ「決まりだね。じゃあ近いうちに教えてやるから、覚悟だけはしておきな」

田沼「え、今日じゃ駄目なのか?」

ヒノエ「あんまり慌てるんじゃないよ。こっちにだって準備ってもんがあるんだ」

ヒノエ「それに今日は違う用事で来たんだからね!」


夏目「森に現れた妖を見に行くのか?気をつけろよ」

ヒノエ「何を言っているんだい。夏目も行くんだよ」

夏目「ええーっ!どうして!」

ヒノエ「元々そのつもりでついてきたんだ。突然現れた妖なんて面白そうじゃないか」

夏目「いや、おれはいいよ……今日はニャンコ先生もついて来てないし」

ヒノエ「ええいつべこべ言うんじゃないよ。あんなへちゃむくれ、いなくても大して変わりゃしない」

田沼「ポン太が聞いたら怒るな……」

今日の分終了

ニャンコ先生の名前の安定のなさ

夏目くんとこのブサイクちゃん....


-森-


ヒノエ「確か中級どもが言っていた場所はこの辺りだね」

夏目「結局ついて来てしまった……」


田沼「でもまだ何も感じないな。そいつ、かなり強い妖怪なんだろう?」

夏目「しかもどうして田沼まで……」


ヒノエ「ふむ。まあ地道に探すとするか————…



「——……!———、……」



ヒノエ「…おや?向こうから声がするね。どうやら近くに何かいるようだ」

田沼「……やっぱり妖怪の気配は感じないけど」ボソ


夏目「おいヒノエ、やっぱりやめておかないか」

ヒノエ「何をびびってるんだい夏目。もし本当に危ない奴でも、その時は私が守ってやるから安心しな」


ヒノエ「ほらさっさと行くよ、気配はなるべく消して、こっそりね」



田沼「———この茂みの向こうだな、声が聞こえるのは」


ヒノエと田沼とおれ、三人で茂みの影に隠れる。


ヒノエ「ふむ、どれどれ」


最初に様子を窺ったのはヒノエだった。

音もなく近くの樹に飛び移り、上から茂みの向こうを覗く。


ヒノエ「ほう、大分小さい奴だね。強い力を持っているというからどんなデカブツかと思えば」


ヒノエ「だがどこか———見憶えがある」

ヒノエ「この位置からでは顔が見えないが、もしかすると私の知っている妖かもしれ、ん———…?


夏目「どうしたんだヒノエ?」

ヒノエ「……少しお待ち」




ヒノエ「あれはもしや……いや、そんな筈は」




———ガサッ



??「!」


ヒノエ「……しまった。気付かれたか」



??「そこに誰かいるの?……妖?」

ヒノエ「ちっ」

今日の分終わり

来ないのかな

レスないから寂しいんじゃないか

そんな理由ならわざわざ速報で書かないだろ

続きまってますぜ


??「———あれ、なんだ。ヒノエじゃない」

??「そんなところで何やってるの?降りてきたら?」


ヒノエ「……」ストッ


??「どうしてあんなところでコソコソしてたのよ?いるなら声をかけてくれればよかったのに。今ちょうど手を貸してほしくて……」

ヒノエ「———まさか。おまえは…」


ヒノエ「……どういうことだい。何故おまえがここに」

??「話せば長い話ね。ちょっと面倒なことになってて」


夏目「おいヒノエ、どうした。大丈夫なのか?」ガサガサ

ヒノエ「!」

??「あら、そこにも誰かいるの?珍しいわね、ヒノエに連れがいるなんて」


ヒノエ「来るな!その藪から出るんじゃないよ夏———…、貴志!」

夏目「え…?」

ヒノエ「田沼の小僧、貴志を連れて家に戻りな。私なら大丈夫だ」

田沼「ヒノエ?」

ヒノエ「……古い友人なんだ。長いこと旅に出ていてね」


ヒノエ(すまない、話を合わせてくれ)

??(……いいけど)


ヒノエ「久しぶりに友と語らいたい。連れてきておいて悪いが、
     水を差すなんて無粋なマネはしないでおくれ」

??「———御免なさいお仲間さん。少しヒノエを借りるわよ」


夏目(あれ…?———この声、聴き覚えがある)


夏目(どこか……どこか遠いところで……)



夏目(———駄目だ、思い出せない)


夏目「わ、分かった。そういうことなら邪魔はしないよ。行こう田沼」ガサガサ

田沼「あ、ああ。そうだな」


ヒノエ「……すまないね、貴志」


??「……行ったわね」

ヒノエ「ああ」


??「ねえ、あの子たちは誰なの?なんだか私とあの子たちを会わせたくないみたいだったけれど」

ヒノエ「その前にまず、さっきの話の続きをしよう。一体全体どうしてこんな所にいるんだい」

ヒノエ「お前は……ここに在り得るはずのない者だ」



ヒノエ「レイコ。お前はとうの昔に他界したはずだろう」



レイコ「た、他界……!?」


レイコ「ちょっと待って。ヒノエ、それ本当?」

ヒノエ「本当も何も———」

レイコ「そっか、私大分早死にするのね……。流石にちょっとショックだわ」


ヒノエ「……?話が見えないんだが」

レイコ「ええと、つまりね」




ヒノエ「—————時を五十年すっ飛ばして来たぁ!?」


レイコ「色々あってね……」





ヒノエ「じゃあつまり、あんたは五十年前にあたしが会ったレイコそのままってことかい?」

レイコ「そういうこと。でもまさか五十年後の私が死んでるとは思わなかったわ……」


ヒノエ「ふむ……俄かには信じがたい話だが、有り得なくはない」


レイコ「あら、意外と簡単に信じてくれるのね。もう少し疑うかと思った」

ヒノエ「時を越えるあやかしものの噂を聞いたことがある。
     妖の世には時の流れすら曖昧な場所があり、その世を渡り歩く変わり者の妖がいると」


ヒノエ「大方、そのあやかしものが友人帳の噂にでも釣られてお前の所にやってきたんだろう」

レイコ「流石ヒノエね、殆ど正解」


レイコ「その子に頼んで、その"妖の世"に入り込んだの。でもこっちに来る時に逸れちゃって……今探しているところなのよ」

ヒノエ「まったく……呆れた奴だ」


ヒノエ「まあお前はそこが面白いんだけどねえ」ヒヒヒ




レイコ「で?さっき行かせた子たちは誰なのよ。妖気は感じなかったけど、もしかして人間?」

ヒノエ「ああ……、まあね」

ヒノエ「お前の事情を訊くまでは、安易に夏目と会わせるべきじゃないと思ったんだ」


レイコ「———夏目?」

ヒノエ「あいつらのうち、片方はお前とも縁のある子なのさ」



ヒノエ「名は夏目貴志。お前の孫だよ」

レイコ「っ、ま———!?」

今日はここまで
ちょっと忙しいので投下速度遅めになります


夏目は名前を返すときにレイコの記憶見てるからまだいいけど、レイコの方は全く知らないから衝撃だろうな

勝手ながら前スレの絵貼っとく
また絵師さん来ないかな


ヒノエ「両親のいないあの子にとって、お前は唯一の肉親なんだ。
    会わせたところで、もしお前が偽者や幻だったりした場合……夏目が傷つくのは目に見えているからねえ」

レイコ「私に孫———……」

ヒノエ「今のお前にはそんなこと想像すらできないだろうけどね。でも、この時代にはお前の孫が確かに存在してるんだ」

レイコ「……」


レイコ「え。でも、孫ってことは私は結婚するのよね?なのにどうして孫の代まで夏目の姓?しかも両親いないって」

ヒノエ「さあね。そんなことまでは知らないよ」


レイコ「……あー、もう。軽々しく未来になんか来るんじゃなかったわ。先の事なんか知ってもロクなこと無いじゃない」ガシガシ



レイコ「でも折角来たんだし、一応その子には会っておきたいわね」

ヒノエ「ああ。お前がこの時代にいると知ったら、きっと夏目も会いたがるだろうさ」

ヒノエ「あとで会いに行こう。本物のレイコなら夏目に隠す道理も無いしねえ」

レイコ「ええ、ありがとう」


レイコ「でも————…、そっか」


レイコ「私の孫も、妖怪を見るのね……」

ヒノエ「レイコ……?」



ヒノエ「———レイコ。妙な心配をする必要はない」

レイコ「え?」


ヒノエ「肉親はいないが、あいつには良い家族がいる。理解してくれる友がいる」

ヒノエ「だから夏目は———…そうだね、少なくとも"不幸せ"ではないと思う」

ヒノエ「確かに昔は、妖怪には苦労したんだろう」

ヒノエ「だがあたしが見た限り、夏目は大丈夫だ。
    まだ心に少しばかり弱さがあるが、折れない強さもちゃんと持っている」


ヒノエ「お前が変に気にすることはないんだよ。夏目は血を恨んだりするような子じゃないからさ」

レイコ「そう……」


ヒノエ「それに———」

ヒノエ「あの子はまっすぐで優しい子だよ。レイコ、お前にそっくりだ」

レイコ「……」



-山道-



民子「ずんたか、ずんたか♪おねえちゃんとおさんぽー♪」

ニャンコ(結局付き合う破目になってしまった……。美しい私としたことが)モシャモシャ


民子「え、なにか言った?お姉ちゃん」

ニャンコ「にゃんでもにゃい」モグモグゴクン


ニャンコ「ところでどこに行くつもりだ。言っておくが金なら持っていないぞ。宛てにするなよ」


民子「大丈夫だよ?ピクニックだもん。ちゃーんとお弁当も持ってきてるし」

ニャンコ「ほう……。む、その鞄だな。どれどれ、見せてみろ」ゴソゴソ


ニャンコ「ふむ、にぎり飯か」

民子「あっ、ダメだよー!丘のてっぺんに着いてからだもん!」

ニャンコ「かたいことを言うな小娘。一つくらい良いだろう———」


ニャンコ「……なんだこれは。何やら不格好なにぎり飯だな」

民子「い、いいんだもん。もともと民子だけで食べるつもりだったんだから」

ニャンコ「ほうほう、つまりこれは小娘の手製というわけか」



ニャンコ「———ヘタクソだな」フッ

民子「うわーん!お姉ちゃんキライ!」


ニャンコ「おい小娘、私が悪かったと言っておるだろうが。おい、おーい」

民子「ふーんだ。知らないもんっ」ツーン


ニャンコ「む……」


ニャンコ(ち。人の子とは本当に面倒な)




ニャンコ「———まあ、形は歪だが喰えない事も無い。味の方、塩加減だけは誉めてやろう」モグモグ


民子「ほ、ほんと?…えへへ」

ニャンコ「ふん」



ニャンコ「む…小娘、ようやく丘の頂が見えてきたぞ」


-丘・頂上-



民子「わぁぁ、すっごい景色……」


民子「ここ気持ちいいねぇおねえちゃんっ。いっしょにおむすび食べよ!」


ニャンコ「もう食べてるが」モシャモシャ

民子「ええっ!?ずるーい!いつの間にふたつめをー!?」

ニャンコ「ふふん、早い者勝ちだノロマめ」




ニャンコ「———、む?あれは…」



つるつる「皆の者!ここならあの古狸が来る心配もない!日が暮れるまでまだまだ飲むぞ———ッ!!」ヒック


牛「飲む飲むー」ウィー

低級妖×10「おー」ワイワイ



ニャンコ「……ほう」


ニャンコ「よし娘、ここで少し待っていろ」ペキポキ


民子「?どうしたの、お姉ちゃん?」

ニャンコ「ああ、少しばかり用が出来てな…」ギロッ





<コラァテイキュウドモー

<ヒーッ、マダラサマ!?


<キサマラ…ワタシヲノケモノニシオッタナ?

<メ、メッソウモゴザイマセーン


<モンドウムヨウ、セイバイ!!

<ギャアー



-森-



夏目「日が落ちてきたな……」ガサガサ


夏目「田沼すまない、今日はこのまま帰るよ。あまり遅くなると塔子さんと滋さんに心配をかけてしまう」

田沼「そうだな。ウチまではまだ遠いし、この辺で分かれた方が良いだろ」


田沼「じゃ、今日はありがとうな夏目」

夏目「ああ。また来週、学校で」

続きはまた後日ー

続き来てた! 乙

おつ

はよ。

舞ってるから更新心待ちにしてます

今回は落とさないでしっかり書いてくれ

舞ってるぞ
そういや92ってどんな絵なんだ?誰か持ってない?

まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ???????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????

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