ミカサ「タイムループ」 (47)


——はじめに——


もしも本当に進撃の巨人のタイムループ説があったとしたら……



異次元的な内容の短編です

アニメ未放送分のネタバレはありません



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———

——



エレン(ここは……どこだ?)


エレン(周り一面に真っ白なモヤがかかって……何も見えねぇ……)


エレン(……霧なのか…………?)



ミカサ「……ここは時の狭間」


エレン「ミカサ!?」

エレン「……どこから現れたんだ?」



ミカサ「ここは世界の理の外だから」

エレン「せかいの……ことわり……?」



ミカサ「時の歯車が廻っている……私たちは今……時をさかのぼっている」

エレン「何を言っているんだ……?」



ミカサ「エレン……どうか落ち着いて聞いてほしい」

エレン「……?」



ミカサ「私たちは皆……死んだ」



エレン「な……に……?」



ミカサ「壁はウォール・シーナまで陥落」

ミカサ「あなたも死んで……人類は負けた」

!?



エレン「何言ってんだよ! 現にいまオレはここに……」



エレン「…………?」

エレン「……体の感覚が……おかしい」

ミカサ「…………」



エレン「じゃあ……ここにいるオレたちは幽霊か魂か?」


ミカサ「どちらも当てはまる。私たちは意識体」

エレン「意識体……」



エレン「!」


エレン「そうだ! アルミンは!? 調査兵団……みんなはどこだ!?」

ミカサ「…………それぞれが個別に時をもどっている」



ミカサ「心配しなくていい。みんなちゃんといる」

ミカサ「……二人で一緒にいて特別なのは私たちだけ」


エレン「そう……か」


エレン「なぁ、ミカサ」

ミカサ「うん」


エレン「なんでオレたちは特別なんだ?」

エレン「どうしてお前はこんなことを知っている?」

ミカサ「…………」



エレン「ミカサ……お前は何だ」

ミカサ「…………」



ミカサ「……わからない」

エレン「なに?」


ミカサ「私もわからない」

ミカサ「ただ……私の右腕に刻まれた紋章が教えてくれた」

エレン「……それか」


エレン「ミカサの……母さんに刻まれたんだっけ?」

ミカサ「…………」コク



エレン「青く光っているな」

ミカサ「これが私の心に直接語りかけてくる」

エレン「そうか……」



ミカサ「私の祖先から代々受け継いできたこの紋章……」

ミカサ「これがここの場をつくっている」


ミカサ「そしてこの紋章には時間を戻す力がある」

ミカサ「私もそんなことは……こうなるまでちっとも知らなかった」


エレン「……」



ミカサ「私たちが特別なのは……」

ミカサ「エレン……あなたが紋章の発動に関わったから」


エレン「オレが?」

ミカサ「そう」

エレン「何かしたのか」

ミカサ「…………」



ミカサ「あなたの魂の断末魔が……私をとおして紋章を動かした」

エレン「魂の断末魔……? なんでそんなものが」



ミカサ「エレンが……私の失われた半身だから……」

エレン「半身……?」



ミカサ「私の両親が死んだとき、私の心の半分も死んだ」

ミカサ「そんな私の心を埋めたのがエレン」

ミカサ「私の心の中にはずっとエレンがいる」



ミカサ「だからあなたの魂の叫びが……私を揺さぶった」

エレン「…………」

期待

ほう


エレン「なぁ。そしたら教えてくれないか」

エレン「オレたちはこれからどうなるんだ?」



ミカサ「……過去の世界に戻る」



ミカサ「いま私たちの意識は、ゆっくりと時をさかのぼっているところ」

ミカサ「この感じだと、たぶん私たちが出会う前になる」


ミカサ「次に気づいたときはお互い子供になって、その頃に暮らしていた自分になっていると思う」


エレン「つまり人生を途中からやりなおすのか」


ミカサ「……同じにはならない」

エレン「?」



ミカサ「意識の中に少しだけ……今までの記憶が残る」

エレン「……ッ! じゃあ!」



ミカサ「同じ失敗を繰り返すことが減るはず」

エレン「そうか!」



エレン「……ん?」

エレン「…………」

ミカサ「?」


エレン「…………」

ミカサ「どうしたの?」


エレン(同じにはならない……なら)



エレン「……なぁ」

ミカサ「なに?」



エレン「オレたちは…………」

エレン「…………また……出会えるのか?」



ミカサ「…………ッ!」


ミカサ「それは……心配ない」

ミカサ「……私たちは必ずまた……出会う……それは決まっている」


エレン「そうか……ならいいんだ」



ミカサ「……」

ミカサ「…………」グス



エレン「……なに泣いてんだよ」

ミカサ「今のエレンの言葉が……嬉しかった……から」

エレン「…………」


エレン「……お前のいない人生なんて……ねぇよ…………」

ミカサ「え……?」

エレン「ねぇんだよ……それは……」

ミカサ「…………ぁ」ホロリ



ミカサ「……ぅん…………うん……私もそぅ……」



ミカサ「エレン」

エレン「ん」



ミカサ「時の狭間にいるここでの記憶は絶対に残らないけど」

ミカサ「現実に戻されるまでの間」

ミカサ「…………二人で少し世界を見てみたい」


エレン「世界を見る?」



ミカサ「今この場でだけ、紋章の力で私たちのいた世界を飛び回ることができる」


エレン「なんだって!? じゃあ……」

ミカサ「壁の外も自由にいける」



エレン「まてよ……ということは」

エレン「アルミンから聞いた海……塩の水がたくさん溜まっている海も見れるのか?」

ミカサ「たぶん……見れる」



エレン「……見てみたいな、それは……記憶に残らなくても」

ミカサ「うん」



ミカサ「エレン……少し待って」



——サァァァァ



エレン(白いもやが晴れていく……)

エレン(…………青い)

エレン(ここは……空?)



ミカサ「落ちる心配はないから足元を見て」

エレン「……!」



エレン「下に小さく見えるのは……町と壁か?」

ミカサ「うん」



ミカサ「私たちは今……ウォール・マリアの上空にいる」


エレン「ウォール・マリアだって!?」

エレン「最外郭じゃないか……」



エレン「ならあの廃墟はもしかして」

ミカサ「私たちの故郷」

エレン「やっぱりそうか……」



ミカサ「大丈夫……全部戻るから」

エレン「そうだったな」


エレン「しかしこうして見ると……」

エレン「壁の外って……こんなに広かったのか」


ミカサ「果てが見えない」

エレン「……すげぇ」



ミカサ「そろそろ行こう……私の手をとって」

エレン「ああ」


——



エレン「飛んでいる……んだよな? ……オレたち」

ミカサ「うん」



エレン(ミカサに引かれてどんどん進む……)

エレン(……壁がもうあんな後ろに)



エレン「立体機動とはずいぶん違う」

エレン「空を飛ぶって……こんなに気持ちがいいのか」


ミカサ「私も今すごく自由を感じる」



エレン(眼下に巨人の姿がちらほら見える)

エレン(なのに……)



エレン「なぁ、ミカサ」

ミカサ「?」


エレン「飛んでいるせいかさ……心がすごく……晴れやかなんだ」

エレン「この爽やかな気分……」

エレン「なんだか……懐かしい……な」


ミカサ「……」




ミカサ「ちょっと前に……カルラおばさんが生きていた時まで戻った」



エレン「母さん!?」

ミカサ「うん」


ミカサ「だから今のエレンの心からは……憎しみが消えている」

エレン「そうだったのか……」

ミカサ「……うん」

エレン「……母さん…………」

ミカサ「…………」

エレン「……」



エレン「そう……か……母さんか……」ジワ

エレン「もう二度と……って思っていたのにな……」


エレン「……う……ぐっ…………」

ミカサ「エレン……」

エレン「また……会えるのか……」

ミカサ「…………会える」

エレン「はは……」


ミカサ「じきに私の両親も戻る……時間がない……急ごう」


——



ミカサ「エレン……あれは……ひょっとして」

エレン「ぁぁ……ああ!」



ミカサ「すごい広さの湖……」

エレン「きっと……あれが海だ!」

ミカサ「……うん」



エレン「対岸もまったく見えない」

エレン「見ろよ……地平線が真っ平らだぜ」



ミカサ「太陽が……海の向こうに沈む」

エレン「すごい夕焼けだ」



エレン「ミカサ! もっと上にあがろう!」

ミカサ「わかった」


——



エレン「すげぇ……どこまで昇れるんだ、これ」

ミカサ「きっと世界の外まで……」



エレン「海を見てみろよ……地平線が丸いぞ!?」

ミカサ「これが私たちの世界……私たちの星……」



エレン「あぁ……オレたちの世界は……」

エレン「……こんなにも美しかったんだな」




ミカサ「……ぁ」ピク



ミカサ「ええ……本当に……」パァァ

エレン「なっ……ミカサ!?」


ミカサ「はい……」

エレン「え……お前……なんだかちょっと感じが……」




ミカサ「いま……私のお父さんとお母さんが……この世界に戻ったの」



エレン「ミカサ……」

ミカサ「私の心も戻ってきた……」ジワ

ミカサ「……戻ってきたよ……あったかい……」



ミカサ「すごく嬉しいの……お父さん……お母さん……」

ミカサ「涙が……とまらないよ…………エレン」


エレン「ミカサ……」

ミカサ「うぅ……うぁぁぁ……」


エレン「ミカサ!!」



ミカサ「えへへ……」



エレン「ミカサ……お前……笑って…………」

エレン「そんなに笑えるやつだったのか……」



ミカサ「うん!!」

エレン「嘘みたいだ……」



エレン「なんだか……かわいいな……お前」

ミカサ「本当?」

エレン「ああ」



エレン「夕焼けに照られた笑顔がとても……いいと思う」

ミカサ「エレンもすごく格好いい」

エレン「そ、そうか?」




ミカサ「エレン……そろそろ時の終わりが近い」



エレン「もう……お別れか」

ミカサ「うん……」



エレン「オレ今さ……その……素直になりたい気持ちっていうか」

エレン「そんな気分……なんだけど……」

ミカサ「……私も」



エレン「別れる前に」

ミカサ「うん」



エレン「ミカサ……お前を思いっきり抱きしめて……いいかな……」

ミカサ「…………ッ!」



ミカサ「私も……エレンに思いっきり抱きつきたい……」



エレン「同じ気持ちだったか」

ミカサ「うん!」




エレン「ミカサ……」ギュ

ミカサ「……エレン」ギュ



エレン「きっと……また会おうな」

ミカサ「うん……絶対会う」



エレン「太陽が……海の向こうに沈む」


ミカサ「…………綺麗」



エレン(……お前のいるこの世界は)

ミカサ(……エレンのいるこの星は)



————なんて美しいんだろう



——



エレン「!」

ミカサ「……ぁ」



エレン「ミカサの体が……消えていく……?」

ミカサ「エレンの体も……」



エレン「そうか……時間か」

ミカサ「うん……」


エレン「じゃあ……ちょっといってくるよ」

ミカサ「…………」

エレン「……母さんのいる世界へ」



エレン「また……な…………」

ミカサ「ぁ……」




———いってらっしゃい


———————エレン



———またいつか


———————会いましょう





ミカサ「私もお父さんとお母さんに会いにいこう」





おわり

読んでくださった方、ありがとうございました

ミカサの印の仕様については勝手設定なので容赦ください

また心が戻ってからのミカサに違和感があるかもしれません
そこについては以前に書いた
ミカサ「あったかい」 のイメージを引きずりました

エレミカばかり書いていますが
エレン「なんだこの本?」 も良かったら読んでみて貰えると嬉しいです

よかった

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