男「ツインテールが1、2、3、4、5…?」 (461)

——————————

『——…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…』

『…仕方なかったんですよ…あなたが、いけないんです…』

『私の、大切なもの…』

『壊しちゃうから…!!』

『…ねえ、どうしてあんなことしたんですか…』

『答えて…答えてよぉっ!!!』

——————————

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1334762048(SS-Wikiでのこのスレの編集者を募集中!)

男「…!!」

男「…ゆ、夢…?」

男「なんだったんだろ、あれ…」

男「…いや、それより…ここは…」

男「……」

男「…真っ白な天井、真っ白な壁、真っ白なベッドに真っ白なカーテン…」

男「ナースコールもついてる…ってことはここは、病院…?」

男「なんで病院なんかに…」

男「僕、何かしたっけ…?」

男「……」

男「……」

男「…ダメだ、全然思い出せない…」

男「…考えてても仕方ないか、もう一度眠ろう…」

男「……」

——————————

男「…んっ、んぁあ…あ、もう夕暮れ時か」

男「夕陽が綺麗だなぁ…」

男「…でも…僕は、これからどうすれば…」

ガララッ

「…お兄ちゃん、具合はいかがですか?」

男「!…」

男(…黒髪ツインテール、ちっちゃい背丈…しかも、可愛い…)

男(っ、じゃなくて!…)

男「…あなたは…?」

「あれ、そっか…お兄ちゃんは記憶喪失でしたね」

「…えっと、じゃあ…改めてこういうのもちょっと恥ずかしいけど、自己紹介しますね」

「私は妹。あなたの、妹です」

男「…妹?あなたが、僕の…?」

妹「はい!」

男「……」

男「…ほ、ほんとに…?」

妹「はい、もちろんです!」

男「そ、そう…信じてもいいの…?」

妹「はい、私はお兄ちゃんの事、宇宙でいっっっちばん愛してますから!!」

男「…は、はぁ…」

妹「それより、お兄ちゃん!明日、ようやく退院できますね!」

男「あれ、そうなの?」

妹「はい!お兄ちゃんは転んで頭打って、血まみれになって入院してたんです!」

妹「一週間ずっと寝たきりだったから、心配でした…」

男「そ、そっか…心配かけてごめんね」

妹「いえ、私はお兄ちゃんの命に別状がなかっただけでなによりですから!」

妹「…あ、何か食べたいものとかあります?ずっと寝たきりだったし、きっとお腹空いてるでしょう」

男「うん、まあ…言われてみればそうだな」

男「…でも、特に食べたいものとかはないから、適当に何か食べ物をお願いできます…?」

妹「はいはい!3分で戻ってきますから待っててくださいねー♪」

ガララッ

男「……」

男「…なんか、嵐のような女の子だな…」

男「しかし、僕が…記憶喪失…」

男「…後で、あの娘からもっと詳しい話を聞いておこう…」

——————————

妹「はい、お兄ちゃん♪これ、パン!」

男「あ、ありがとう…ところでさ」

妹「はい?」

男「…僕、自分の名前も家も家族も…いろんなこと思い出せなくてさ」

男「何か知ってることとかあったら、教えてくれないかな…?」

妹「…わかりました、では食べながらお聞きください」

男「ありがとう」

妹「うちの家族はお兄ちゃんと私の二人きりです」

妹「両親は、小さいころに航空事故で同時に亡くなりました」

男「……」

妹「私はね、あの時すっごく悲しかったです…でも」

妹「でも…お兄ちゃんは、泣きじゃくる私を抱っこして、なでなでしてくれて、励ましてくれました」

妹「辛い時、苦しい時、悲しい時…いつだって、私の涙を拭ってくれました」

妹「…だけど、お兄ちゃんは…覚えてないんですよね」

男「うん…ごめん」

妹「…いいえ、仕方のないことですから…」

妹「すみません、話が逸れちゃいましたね…元に戻しましょう」

妹「——家族構成についてはさっき話した通りです、ペットなんかもいませんよ」

男「…じゃあ、僕の名前は…なんて言うのかな?」

妹「ベッドのところに書いてありますよ」

男「あ…本当だ」

男「男…っていうのか、いい名前だなあ」

妹「あら、お兄ちゃん…自画自賛ですか」

男「そ、そうなるのかな…?あはははは」

妹「ふふ、あははははは!」

—————夜—————

妹「…他に聞きたいことはありませんか?」

男「うん、特には…」

男「ごめんね、延々いろいろ聞いちゃって」

妹「いいえ、むしろお兄ちゃんのお役に立てて光栄です」

男「あはは、ありがとう」

妹「…ところで、お兄ちゃん」

男「?」

妹「今日、一緒に寝てもいいですか…?」

男「え…?」

妹「あ、いや、あの!今までも、実は…お兄ちゃんと一緒にこの部屋で眠ってはいたんですけど…」

妹「その…今日は、特別なんですよ!お兄ちゃんが、目を覚ました日ですから」

妹「…今日だけは、ちゃんと…お兄ちゃんの合意の上で、ここにいたいなぁって…」

妹「…だめ、ですか…?」

男「い、いいけど…妹こそ、いいの…?こんなところで…」

妹「大丈夫です、お兄ちゃんのそばにいたいんです!」

男「そ、そうなんだ…わ、悪い気はしない、かな…」

妹「本当ですか?やった、えへへ!ありがとうございます、お兄ちゃんっ!」

男「あはは…さぁ、そうと決まったらもう寝よう」

男「…ていうか寝てばかりだな、僕…」

妹「羊を数えましょうか?お兄ちゃん」

妹「きっと眠れないでしょう」

男「う、うーん…効き目あるかなぁ」

—————深夜—————

男「zzzzz…」

妹「……」ムクッ

妹「…さてと、日記帳をっと…」ゴソッ

妹「……」

妹「…お兄ちゃん、今度は…許してくれますか…?」

妹「お兄ちゃんの事…今度は、信じても…いいよね…?」

ぱらぱら かちっ

かきかき

4月18日 土曜日

今日、ついにお兄ちゃんが目を覚ました。

記憶がないせいか、お兄ちゃんの性格は以前とは大きく異なるものになっていた。

でも、別段接しづらくなったわけでもないので、今まで通りの関係でいられそうだ。

むしろ、以前の性格よりも、ずっと今のままがいい。

…あの日の、あんなお兄ちゃんは…

——お兄ちゃんじゃない。


…ところでお兄ちゃんは、お医者さんによると明日には退院できるらしい。

私のコレクションを見てびっくりしないかな?壊されないかな…?

今は、それだけが心配です…


ぱたん

妹「…よしっ」

妹「お兄ちゃん、お休みなさい…」

—————朝・退院後—————

妹「はぁーっ!やっと退院できたぁっ、これでようやく二人一緒に暮らせますねお兄ちゃん!」

男「うん…でも、二人きりで本当に大丈夫かな?」

妹「その点はご心配なく!家族は二人きりだけど、二人暮らしじゃありませんから!」

男「え…どういう意味?」

妹「えへへ、それは帰ってからのお楽しみですっ!!」

男「…??」

妹「ほらほら、早く帰りましょっ!」グイッ

男「わわわっ、引っ張らないでよ!?」

—————男の家—————

妹「着きました!」

男「ここが僕たちの家?うわっ、でかい…!」

妹「中も当然広いですよ!なにせ死んだ両親は大金持ちでしたからね」

男「え…っ」

妹「有り余るお金で空の旅なんかしてる最中に事故ってそのままお陀仏だなんて正直笑ってしまいますけどね」

男「いやいや、笑い事じゃないんじゃないの」

妹「いいんですよ、私は二人とも大嫌いですから」

男「……」

妹「お兄ちゃんも、二人の事を嫌っていたんですよ?元の記憶があるうちはね」

男「そ、そうなの…?」

妹「さあ、こんな無駄話はこの辺にして、さっさと中に入りましょう」

男「う、うん…」

——————————

男「うわっ、妹の言った通りだ…すっごく広い…!」

妹「でしょう?お金だけならあるんですよ、うちには」

男「イヤミくさいなぁもう…どんな両親だったっていうの?」

妹「聞かないほうがいいと思いますよ」

男「うぐっ…」

妹「さぁ、上へ参りましょう」

男「何があるの?」

妹「見てのお楽しみです」

——————————

機械犬『わんわん、わんわん!』

男「うわ、なんじゃこりゃあ!?」

妹「えへへ、聞いて驚かないでください?…この子たちはね、みーんな私の発明品なんです!」

男「は、発明品…!?ど、どういうこと…!?」

妹「ほら、あっちに見える機械鳥も、機械魚も、機械テーブルも機械オブジェも」

妹「とにかく、この家にある機械は全部私の発明品なんです!すごいでしょ?」

機械鳥『くえー、くえー!』

機械魚『ぴちぴち』

男「ほ、本当に…?ていうか、こんな混沌とした空間に住んでるの…?」

妹「はい!私にとっては、どの発明品もお兄ちゃんと同じくらい大好きです!」

男「うーん、それって喜べばいいのかどうなのか…」

男「…あれ、そういえばペットはいないって言ってなかったっけ…?」

妹「失礼な、みんな私の大切な友達なんですからペット呼ばわりはやめてください!」

男「あ、ああ…そういうアレなのね、わかったよ…」

妹「ふふん、分かればよろしいんです」

妹「…それと、最後にもうよっ…」

妹「…にん、紹介したい子たちがいるんですが…」

男「…?」

—————別の部屋—————

こんこん

「…はーい!」

妹「赤、お兄ちゃん連れてきたから紹介しますね?」

「おっ、そうかそうか!待ってたぜ妹ー」

がちゃっ

男「あっ、あのー…」

「…へえ、あんたが男か!これからよろしくな」

男「あ、えっと…え?」

妹「ごめんなさい、お互いちゃんと紹介しなきゃですね」

妹「赤、…さっきも言ったけど、こっちの人が私のお兄ちゃんで、男です」

妹「…で、お兄ちゃん!…こっちの、赤いツインテールと星形の髪飾りが特徴の娘は、」

妹「髪の毛赤いから赤って名前なんです!」

男「…あ、赤いから…?」

妹「二人とも、仲良くしてくださいね!」

赤「おう!」

男「…ど、どうも…」

—————また別の部屋—————

こんこん

「……」

がちゃっ

妹「青、ちょっといいですか?」

青「……」

妹「この人が、前に話した私のお兄ちゃん…男」

男「どうも…で、そちらは…?」

妹「この無口な青髪ツインテールの眼鏡っ娘は、髪の毛青いから青って名前なんです」

男「…やっぱり髪の色なんだ」

妹「二人ともこれから仲良くしてください!」

青「……」

—————さらに別の部屋—————

こんこん

「はぁい?」

がちゃっ

妹「…さっそくだけど紹介しちゃいますね、この娘は黄色髪ツインテールでカチューシャが特徴的の」

妹「黄です!」

黄「わぁ、あなたが男さんだよねー? よろしくお願いしますー!」

男「はい、よろしくお願いします…」

妹「…ところで黄、スカートは…?」

黄「…あ、履き忘れてたああああ!恥ずかしいよおおお!」

がちゃっ ばたん

男「……///」

妹「…あの娘、ドジっ娘なんです…」

—————またさらに別の部屋—————

こんこん

「…どうぞ」

がちゃっ

妹「緑、紹介したい人がいるんです」

緑「…マスターからお話は伺っております、あなたが男様ですね?」

男「えぁっ!?は、はい…」

緑「…すみません、申し遅れましたが私は髪の毛の色からとって緑という名を持っております」

緑「特徴と言ったらこの髪の色、それとツインテール、あとはせいぜいベレー帽…このくらいしかございませんが」

緑「よろしければ、どうぞお見知りおきを」

男「は、はい…こ、こちらこそ」

妹「…四人の中で一番優秀で、礼儀正しいのが緑です」

——————————

男「…いったん、まとめてみるか…」

男「…赤いツインテールの活発な娘が赤」

男「青いツインテールの無口な眼鏡が青」

男「黄色いツインテールのドジっ娘が黄」

男「緑ツインテールの礼儀正しい娘が緑」

男「…で、いいんだよね?」

妹「はい、ちなみに彼女らはわが家のお手伝いさんです」

男「お、お手伝いさん…?」

妹「はい、いそうr…もとい、住み込みで働いていただいてるんです」

妹「お兄ちゃんも、ぜひとも仲良くしてあげてくださいね?」

男「…はい…」

立てたばっかりだけど今日はここまで

展開が急なのはわかってる、でもどうしてもツインテールを全部出したかった
次回からちょっとずつキャラを掘り下げていきたいです

あと前回と違ってキャラは多く出てこないつもりです
多分最後までこの六人で通していくと思います

とりあえずお休みなさい

お勧めの脳内再生声優はだれですか?

ゴーバスギャグ回
フォーゼ神回
スマプリ感動回

>>26
特にないのでご自由にどうぞ

妹「…さてと、そろそろお昼ご飯の時間ですね」

男「あ、本当だ…もうそんな時間か」

妹「よし、私お手製の料理を振る舞って差し上げますね!」

男「そっか、なら僕も何か手伝うよ」

妹「いえ、そんな!お兄ちゃんのお手を煩わせるわけには!」

男「ううん、僕だって妹の世話になりっぱなしは嫌だからさ」

妹「そ…そうですか、お兄ちゃんがそこまで言うなら…」

妹「…台所はこっちです、一緒に来てください」

男「わかった」

—————台所—————

妹「よーし、腕によりをかけて作っちゃいますからね」

男「…ねえ、妹?」

妹「はい?」

男「あの…つかぬことを聞くけど、実の兄妹…なんだよね?僕たちって」

妹「はい、もちろん」

男「じゃあ敬語なのはどうしてなのかなぁ」

妹「あ、嫌でしたか?」

男「ううん、嫌っていうか…ただ気になっただけで」

妹「お気になさらず、癖みたいなものですから」

妹「お兄ちゃんだけに敬語を使っているわけじゃありません」

男「そっか、他の四人にも同じように話しかけてたね」

妹「はい、治そうとしても今更治るものでもありませんし」

男「わかった、じゃあ気にしないことにするね」

妹「はい、そうしていただけるとありがたいです」

男「ごめんね、変なこと聞いて…それで、何を作るの?」

妹「えっと…カレーでも作ろうかと」

男「カレーかぁ…どんなのだっけ」

妹「あら、カレーの記憶もなくなっちゃってますか」

男「うん…食べたことあるような気はするし、名前も聞き覚えがあるんだけど」

妹「半端な記憶喪失ですね…いいでしょう、私がちゃんと思い出させてあげますよ」

妹「…さて、じゃあ最初は野菜を水洗いしてくださいな」

妹「冷蔵庫に入ってるやつです」

男「ああ、はいはい…」

——————————

——————————

妹「出来ました」

男「大分カットしたね」

妹「大人の事情です」

男「…聞かなかったことにしておくね」

妹「はい…それじゃあお兄ちゃん、他の四人も呼んできてくださいな」

男「うん、わかった」

男「呼んできたよ」

妹「ありがとうございます」

赤「おっ、今日はカレーか!うまそうな匂いがすると思ったぜ」

青「……」

黄「ねえ緑、黄色はカレー好きだと思ってるでしょ?そんなことないんだからね!」

緑「はいはい、そのくらい知ってますから…」

男「…騒がしいね」

妹「最近ここに来たばかりなんですけどね、四人とも…」

妹「すごく馴染んでらっしゃいます」

男「でも、いいことなんじゃないかな」

妹「……」

妹「…そうですね、それじゃあさっそくいただきましょう」

赤「いただきます」

青「…いただきます」

黄「いっただっきまーす!」

緑「この世の全ての生命、この世の全ての自然に感謝し…」ブツブツ

黄「…食べないの?」

緑「…!…いただきます」

男「いただきます」

妹「…さてみなさん、せっかく食べ始めたところなのに悪いんですが…」モグモグ

緑「マスター、口に物を含んだまま喋ってはなりません」

妹「んぁっ、はい、ごめんなさい…」ゴクッ

妹「…ぷはっ、記憶喪失のお兄ちゃんはわからないことも多いでしょう」

妹「だから、私達五人で支えていかなければいけません」

妹「…ので、より親睦を深めるために、きちんと自己紹介をしましょう!」

赤「おっ、いいじゃん!」

青「……」

黄「男さんの事、もっと知りたいなぁー」

緑「私も、賛成です」

妹「よし、それじゃあ自己紹介していきましょう!」

妹「まず私から!」

男「…なんか、勝手に盛り上がってるな…」

妹「ツインテールで敬語で天才発明家!お兄ちゃん大好き!」

妹「妹です!」キラッ

赤「テンション高いなぁー…」

黄「妹ちゃん、ロリっ娘と貧乳も追加で!」

妹「うっ…うるさいです!黄にはいわれたくありません」プイッ

黄「私は妹ちゃんよりおっぱいおっきいもーん」

妹「ぐ…ぐぬぬぬ…!」

男「……」

緑「マスター、男様が置いてけぼり喰らってますよ」

青「……」

赤「さあ、次はあたしの番だな?」

黄「いよぉっ、待ってましたぁ!」

妹「ひゅーひゅー!」

赤「運動神経抜群で、世界中の誰よりも優秀な赤様っつったらあたしのことよ!」

赤「男ぉ、しっかり覚えときな!」

男「は、はぁ…」

緑「男様、真に受けないでください…見ればわかるでしょうけど、あの娘は」

緑「バカ」

緑「…ですから」

青「……」コクン

赤「あっ、てっ…てめえらああああああ!!」

緑「…ね?」

男「あ、あははは…」

妹「さて、今度は青の番だけど…」

青「……」

黄「青ちゃん、自己紹介して!」

青「……」

赤「てめえ、人の事おちょくっておいてなんだその態度は!ぶっ飛ばすぞ!」

青「……」

緑「…無反応ですね」

妹「…えーっと、成績優秀容姿端麗、それでもって無口な眼鏡のキャラ、で覚えてあげてください…」

青「……」

男「……」

黄「次は私の番かなぁ!?」

妹「はい、それではどうぞ!」

黄「はーい!黄色くてかわいい皆のアイドル、黄ちゃんでーす!」

黄「あっ、でもでも、黄色いからってカレーが好きだとか大食いキャラだとか、そんなことはないんだよっ!」

緑「…じゃあ黄の分のカレーは私がいただいておきますね」

黄「だめー!それはだめえええ!」

男「…結局カレー好きなんじゃん…」

妹「あ、あはは…」

緑「…おほん、今度は私の番ですか」

緑「名前は緑、趣味は音楽、好きなものは人間、嫌いなものは馬鹿」チラッ

赤「おい、なんで今こっち見た!?」

緑「座右の銘は『いつだって自分らしく』…それから、『完全無欠』です」

男「二つもあるんだ…」

緑「目標は常に高くあるべきですから」

赤「ちっ、いい子ぶりやがって…」

黄「まあまあ」

緑「どうぞよろしくお願いいたします」

妹「ぱちぱちぱちーっ、さあそれじゃあお兄ちゃんにも自己紹介していただきましょっか!」

男「あれ、ぼ…僕もやるの?」

赤「当たり前だろ?あんたがトリだぜ!」

黄「男さん、がんばってぇ!」

男「え、えーっと…」

赤「……」ジーッ

青「……」パクパク

黄「……」ジーッ

緑「……」

妹「……」ジーッ

男「…お、男です、よろしくお願いします…」

赤「おい、それだけかよぉ!?」

黄「ちぇっ、もっと面白いの期待してたのにぃ」

緑「きっと記憶がなくて不安なのでしょう、無茶を言っては失礼ですよ」

男「ご、ごめんなさい…」

妹「いえ、こちらこそプレッシャーかけすぎましたね、すみませんでした」

妹「…でも、それだけみんなお兄ちゃんのことを気にかけてくれてるってことだと思いますよ」

男「え…?」

赤「…そうそう、悪いやつじゃなさそうだからさ」

青「……」チラッ

黄「うん!優しくていい人だよ!」

緑「これからよろしくお願いします」ペコッ

男「…みんな…」

妹「…さて!親睦は深まったことだし、みんなで楽しくカレー食べましょっ」

男「…うん…!」

——————————

男「ごちそうさま」

妹「ごちそうさまでした」

赤「ごっそさん!」

青「…ごちそうさま」

黄「ごちそうさまでしたー!」

緑「全ての生命、全ての…」

黄「緑ちゃん、長いよそれ」

緑「…ごちそうさまでした」

妹「さてと…お兄ちゃん、一緒に来てほしいところがあるんですけど…いいですか?」

男「え?…い、いいけど…後片付けは?」

緑「あ、私達がやっておきます」

赤「えー、あたしやだー」

黄「私もー」

緑「…じゃあ二人は晩ごはん抜きということで」

赤「黄、張り切ってやろーぜ」

黄「うん、全部ぴかぴかにしちゃうからね」

妹「…じゃあ、お願いします」

緑「はい」

—————廊下—————

男「…やっぱ広いね、この家は…」

妹「でしょう?だから一応、廊下に一定間隔で案内図が設置されてるんですよ」

男「…あ、本当だ」

妹「えーっと、物置は…あっちですね」

男「物置?」

妹「はい、行けばわかりますよ」

男「はぁ…」

—————物置—————

男「…うわ、物置の中も広い…」

妹「おかげで掃除が大変なんですよ…」

男「…ん、何これ?…トロフィー…?」

妹「ああ、それですか…」

妹「それはね、うちの祖父のものなんです…なんでも高校時代に吹奏楽コンクールで獲った金賞だとか」

妹「どうやら祖父にとってはかなり思い出深い一品らしくて、それがうちの家宝なんですよ」

男「へえ、そうなんだ…その人はどんな人なの?」

妹「義妹と結婚して、私の両親を産んだんだとかなんとか」

妹「周囲からは物好きと冷やかされたらしいですがね」

男「そ、そう…」

妹「…しっかしなんでこんなどこにでもありそうなトロフィーを家宝として崇めないとならないのか…」

妹「はっきり言って私にはあまり価値がわかりません」

男「…でも、僕たちも大事にしてあげないと…おじいさんたちがかわいそうだよ」

妹「…女たらしの噂もあるような祖父なのに?」

男「…え゛…」

妹「まあいいですよ、なにも捨てる気があるわけじゃないですから」

男「……」

妹「さて、本題に移りましょう…」スッ

男「…なにこれ、ハンマー?」

妹「記憶があったころの手がかりになるかと思って、置いておいたんです」

妹「何か思い出しませんか?」

男「…うーん…」

妹「…やはりダメですか」

男「ごめん、何も…」

妹「…仕方ないですね、戻りましょう」

男「…ん?」

妹「?…どうかしましたか?」

男「あ、いや…別に…」

男「……」

男(…気のせいかな?…あのハンマー、)

男(何か赤いものがついていたような…?)

今日はここまでです
小ネタ挟みました
お休みなさい

シリアスシーンあるなら教えてくれ

>>51
SSの終わりごろになれば思いっきりシリアスな感じになると思います
多分、前作より重たいです

書きます

—————夜—————

妹「みなさん、晩ごはんできましたよー」

男「…ねえ、どうしてお手伝いさんなのに何もしないの、あの子たち…?」

妹「気まぐれな子たちですから仕方ありませんよ、さあ食べましょう」

男「……」

赤「いただきます」

青「…いただきます」

黄「いただきまーす」

緑「全ての…」

黄「……」ジーッ

緑「…いただきます」

男「いただきます」

妹「いただきますっ」

——————————

男「…ごちそうさまでした」

緑「貸してください、私達で洗います」

赤「達ってなんだよ、巻き込むんじゃねーよー」

黄「そーだそーだ、ぶーぶー」

緑「…男さん、明日からあの二人の分の食事は抜いていただいて結構ですよ」

赤「ごめんなさい」

黄「やります」

男「…あはは、じゃあお願いするね…」

緑「はい」

>>54
訂正
× 緑「…男さん、明日からあの二人の分の食事は抜いていただいて結構ですよ」
○ 緑「…男様、明日からあの二人の分の食事は抜いていただいて結構ですよ」

男「…うーむ、僕と妹で料理して、後片付けをあの子たちがやってくれるんだったら…一応」

男「お手伝いさんっていう体は成しているのかなぁ…?」

男「…まあいいか」

妹「あっ、お兄ちゃん!ちょうどいいところに」

男「ん、妹?どうしたの?」

妹「今まさにお風呂が湧いたところなんです、使ってくださいな」

男「…もしかして、僕が一番風呂?」

妹「はいっ」

男「いいよそんな…妹が先に入ればいいじゃない」

妹「ダメですよ、お兄ちゃんがお先です」

男「…どうしても?」

妹「はい、どうしても」

男「…わかった、じゃあ先に入らせてもらうね」

妹「はい♪」

—————浴室—————

男「…うっわぁ…お風呂の中までだだっ広い…!」

男「まるで銭湯だよ…こんなにあっても持て余すだけじゃないのかな…?」

男「…まあいいや、ひとまず頭を洗っちゃおう」ジャーッ

男「……」ゴシゴシ

男(…記憶がなくなって、一時はどうなることかと思ったけど…)

男(住むところもあるし、優しい人たちもいるし…生活していく分にも支障はないし)

男(これならなんとかなるかな…)

男「……」ジャーッ

男「…ふぅ」

男「さて、次は体を…」

ガララッ

男「…!」

妹「お兄ちゃん、お背中を流しに参りましたー」

男「!?…い、妹…!その格好…!」

妹「えへへ、広いでしょー?このお風呂」

妹「一人で使うには勿体ないかと思いまして」

男「だっ…だからって…//」

妹「実の兄妹なのに、どうして照れてるんですか?」

男「いや、そんなこと言っても僕、君の事妹って…」

妹「ああ、記憶がないから妹に思えないんですね」

妹「でも心配いりませんよ、ええ心配いりませんとも」

男「心配だらけだよ、早く出て行ってよ!」

妹「まあまあ、そう邪険になさらないでください」

男「あーもう!早く出てけってば」

妹「お兄ちゃん、冷たいですよ?心も体も」

妹「…ちゃんと洗わないと、風邪ひいちゃいます」ゴシゴシ

男「…もういい、勝手にしろ…」

妹「うふふ、お兄ちゃんは諦めが早いんですね」ゴシゴシ

男「妹の馬鹿」

妹「バカで結構ですよ」ゴシゴシ

妹「お兄ちゃんと一緒なら、それだけでね…」

男「……」

妹「…えいっ」ムニッ

男「…!…///」

妹「…どうですか、私のおっぱい」

男「…アホ」

妹「貧乳だといって馬鹿にするんでしょう」

男「……///」

妹「気にしてるんですよ、これでも…」

男「僕にそれを言ってどうしたいんだよ…//」

妹「…私の事、もっと知ってほしいだけです」

妹「私ばっかりお兄ちゃんの事知ってるから…そんなの、ずるいかなって」

妹「…くだらないことでも、恥ずかしいことでもいいから…」

妹「お兄ちゃんにいろいろ…知ってほしいし、思い出してほしい」

妹「…私は、そう考えただけです…」

男「……」

妹「…ごめんなさい、変な話して…」

男「……」

妹「つ、続けますね…」ゴシゴシ

男「…ねえ」

妹「は、はい…なんでしょうか」

男「僕って、記憶がなくなる前も…こんな性格だったの?」

妹「いえ…もう少し、荒っぽい言葉づかいでした」ゴシゴシ

男「そっか」

妹「はい」

男「…じゃあさ、今の僕の人格は…おかしいのかな」

妹「…え?」

男「だって…記憶を失ったことに伴って、人格や言葉遣いに変化が現れたんだよね」

男「…ということは、今の僕はもう…以前の僕とは違う」

男「だったら…今いる僕は、存在している意味があるのかな…?」

妹「…!」

男「昔の自分と違う自分は、本当の自分じゃないんだよね…?」

妹「……」

男「僕…どうすればいいかな…?」

妹「…お兄ちゃん」

妹「ごめんなさい、私のせいで悩ませるようなことになっちゃって」

妹「…でもお兄ちゃんは、何も気にしなくていいですよ」

妹「言葉遣いや性格は…確かに変わってるけど」

妹「でも、私は…性格だけ見れば、今のお兄ちゃんのほうが好きです」

男「…!」

妹「だから、今のままのお兄ちゃんに、色々なことを思い出していってほしいんです」

妹「それに、本当のお兄ちゃんとか…偽物のお兄ちゃんとか、そんなものないんです」

妹「今ここにいるお兄ちゃんは、ここにいるお兄ちゃんでしかない」

妹「…それは、変わりないでしょう?」

男「妹…」

妹「私の大好きなお兄ちゃんは、どんな人に変わっても…私の大好きなお兄ちゃんなんですよ」

男「いもう、と…」

妹「…えへへ…」

妹「さあ!背中は洗い終わりましたから、今度は前ですね」

男「まっ…前!?」

妹「はい、前です」

男「いやいやいや、前はいいよ」

妹「うふふ、遠慮せずに」

男「いやいや遠慮とかじゃなくて」

妹「うふふふふ」

男「妹、目が怖いよ」

妹「洗ってさしあげますよ」

男「いや、いいっていいって——」

妹「わかりました、洗ってさしあげます」ガバッ

妹「いざ…覚悟ぉぉぉ!!」

男「ぎゃああああ!!」

——————————

男「……」ブクブク

妹「……」ツヤツヤ

男「……」

妹「…お兄ちゃん、精気…もとい生気のない顔になってますけど、大丈夫ですか?」

男「大丈夫じゃないです」

妹「ごめんなさい、ちょっとハメ外し過ぎちゃいましたね」

男「勘弁してください」

妹「すみませんでした」

男「……」ブクブク

妹「…あの、ところでお兄ちゃん」

男「はい」

妹「明日から学校なんですけど、準備できてますか?」

男「…え、学校?」

妹「はい、明日月曜日ですし」

男「私聞いてない」

妹「…まぁ、言ってませんでしたからね」

男「言ってよ」

妹「ごめんなさい」

男「何持っていけばいいか全然わかんないよ」

妹「教科書全部鞄に詰めて持って行ってはいかがでしょうか」

男「重いでしょ、絶対」

妹「仕方ありませんよ」

男「…ううむ」

男「…っていうかさ」

妹「はい」

男「どうして一緒に湯船に入ってるの」

妹「あら、今更ですか?」

男「もうのぼせそうだし」

妹「それはいけませんね、あがりましょうか」

男「ちゃんと前隠してね」

妹「わかってますよ、お兄ちゃんってばシャイなんだから」

男「そもそも妹くらいの年ごろの女の子は普通こんなことしないんじゃない」

妹「…まあ、それはそうなんですけどね」

—————男の部屋—————

男「…はぁ、今日はいろいろあって大変だったよ…」

男「しかし僕の部屋もずいぶん派手で、しかも広いな…」

男「なんだかホテルに泊まりに来たみたいな感じがする」

男「…本とか、ゲーム機とか、家具とか…ちゃんといろいろ備わってるし——」

男「——…って、そういえば明日の用意しなくちゃいけないんだった、忘れてた」

男「えーっと、教科書教科書…あった、これだ」

男「これを全部鞄に入れて…うわっ、重そう…」

男「こんなの持っていかなきゃいけないのか…きついなぁ」

男「…まあ、仕方ないか…」

—————妹の部屋—————

妹「…ふぅ、今日は楽しかったぁ」

妹「明日から学校…お兄ちゃんもだけど、赤達も心配です…」

妹「何かの拍子に、欠陥が発動しなければいいけど…」

機械鳥『くえーくえー』

妹「…あれ、もうお腹が空いたんですか?さっき充電したばかりなのに…」

機械鳥『くえっ』

妹「ふふ、もう…食いしん坊なんだから」

機械鳥『くえええ!!』

妹「わかったわかった、こっちにおいで」

機械鳥『くええ』

——————————

妹「…よし、これで明日の準備はでーきた、っと…」

妹「さて、日記書いて今日はもう寝よう…」ゴソゴソ

妹「…えーっと、今日の日付は…」

4月19日 日曜日

今日はいろいろなことがあった。

みんなの絆が深まったし、お兄ちゃんと一緒に料理もしたし、お兄ちゃんに色仕掛けもしました。

お風呂で私の事を意識しまくっていたお兄ちゃんは、昔のお兄ちゃんとは似ても似つかない純情ぶり。

ちょっぴり、かわいいなぁと思ってしまいました。

…このまま、ずっと平和だったらいいのにな。

そう、このまま…ずっと、ずっと。



妹「……」


ぱたんっ

—————翌朝—————

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

赤「あむっ、んぐ…そういや今日はさ、あたしら4人も、転校生としてあんたら2人と一緒に学校行くんだよな?」

妹「はい!」

緑「……」

黄「男さんも、実質転校生みたいなものだね」

男「うーん、まぁね」

青「……」パクパク

赤「あ、男!あんたはあたしと同じ学年だから、一緒に行こうぜ」

男「わ、わかった」

緑「…男様?…もし赤の子守りに疲れたら、いつでも2年生の教室まで来てくださいね」ヒソヒソ

緑「お手伝いいたしますから」ヒソヒソ

赤「おい緑、ばっちし聞こえてんぞ!?」

男「あ、あはは…」

はい今日はここまで
このSSを書こうと思ったきっかけは、うちの学校の女の子がツインテール率高かったことからです
お休みなさい

緑は年下?としうえ?

前作と今作の時系列が同じであるとは限らないということよ
書きます

>>74
男と赤が3年生なので二人に比べると年下です

—————通学路—————

妹「これからはずーっと、この六人で一緒に登校するんですねえ」

黄「そっかあ、じゃあ毎朝楽しくなりそうだねっ!」

緑「…あなたがた3人がいると、こちらに負担がかかることが多くて朝から大変そうな気もしますけど」

赤「3人?3人って誰だ?あいつか?」

青「……」

男「本読みながら歩いてる…」

緑「違いますよ、赤と黄とマスターに決まってるじゃありませんか」

妹「…え、私も含まれてるんですか?」

男(…お手伝いさんに厄介扱いされる家主って…)

緑「なんだかんだ言っていつもはしゃいでいるのはその3人なわけですからね、当然でしょう」

黄「うええ、緑ちゃんひどーい!」

—————学校—————

妹「…じゃあ、私たちはこっちなので、またあとで」

黄「じゃあねー、みんなー」

緑「私と青はこっちですので、ここで失礼いたします」

青「……」

赤「よし、男!あたしたちはあっちの教室だから、一緒に行こうぜ!」

男「うん…そうだね」

赤「…ところで男、大丈夫か?それ…」

男「ま、まぁ…なんとかね」

男「…っていうか、赤だって鞄重そうじゃないか」

赤「あ、あはは…あたしら転校生として今日からここに来るもんだからさ、何持っていけばいいかよくわかんなくって」

赤「…どういうわけか、あいつらは鞄が軽そうだったけどな」

男「…それって、みんなはちゃんと時間割把握してるってことじゃないか…聞いとけばよかった」

キーンコーンカーンコーン

赤「うわ、やべっ!男、急いで行くぞ!」

男「う、うん!」

——————————

—————3年教室—————

先生「…はい、というわけで今日は転校生…と、皆の知っているお友達が復活して登校してくれましたよー」

ざわざわざわ

生徒A「…どんな人かな?転校生って」

生徒B「男の子かな、女の子かな?」

生徒C「なんか1年と2年にも転校生いるらしいよー」

生徒D「なにそれすごーい、偶然かなぁ?」

生徒L「嫌いじゃないわ!」

先生「はいはーい、静かに!」

先生「…それじゃあ二人とも、入っておいで—」

先生「…じゃ、二人とも…自己紹介お願いします」

赤「はい!容姿端麗成績優秀!運動神経抜群で、学業運動なんでもござれ!」

男(も、盛り過ぎだよ!)

赤「完全無欠の赤様ってのはあたしのことさ!」

男(聞いてるこっちが恥ずかしい…)

赤「これから、どうぞよろしくっ!」ペコッ

生徒A「あはは、何だあれ?変な娘だなぁ」

生徒B「でも面白くね?」

生徒C「うん、仲良くなれるかも!」

生徒L「嫌いじゃないわ!嫌いじゃないわ!」

赤「え…えへへへへ」

先生「あはは、元気いっぱいの自己紹介ありがとう!」

先生「赤さんの席はあそこにあるから、座っちゃっていいわよ」

赤「はい!」

先生「…さて、それじゃあ今度は男君の番だね!」

男「あ、は、はい」

先生「それじゃあ自己紹介どうぞ!」

男「えーっと…事故のせいで今までの記憶がないんだけど」

男「でも…精一杯頑張りますので、これからよろしくお願い、します…」ペコッ

ざわざわざわ

男「…?」

生徒E「…なんかあいつ、前とキャラ違くね?」ヒソヒソ

生徒F「え…演技かなんかじゃねーの…?あいつ信用できねーもん」ヒソヒソ

生徒G「記憶喪失ってのも、嘘っぱちかもしんねえし」ヒソヒソ

先生「…こら、みんな!静かにしなさい!」

先生「…ごめんなさいね?男君は、赤さんの近くの席だから」

男「は…はい」

——————————

赤「…おい、男」

男「何?」

赤「あんたさ、さっきヒソヒソ話されてたけど気が付いてたか?」

男「う、ううん…混乱して気付かなかったよ」

男「…なぜかざわついてたのはわかったけど…」

赤「あたしもよく聞こえなかったけど、なんだかあんたは信用されてないらしいぜ」

男「…え…?」

赤「記憶喪失の件も、嘘っぱちじゃねえかと疑われているらしい」

男「そんな…」

赤「…まあ、心配すんなよ!あんたに何か言うような奴がいたら、あたしがぶん殴ってやるからさっ」

男「…赤」

赤「ひひっ」ニコッ

—————休み時間—————

生徒C「赤さんって髪の毛さらさらしてて綺麗だねえー」

生徒D「前はどんな学校通ってたのー?」

生徒H「ねえねえ、部活は何部に入る予定?」

生徒I「趣味は?好きな食べ物は?あっ、好きな異性のタイプとかは!?」

生徒L「私のほうが、おっぱいおっきいわ!」

赤「ちょっ、待っ…い、一度にそんなに質問するな!」



男「…あはは、赤大変そうだなぁ…——」



じーっ



男「——…!」ゾクッ

男(…なんだ今の!?…何か、視線を…)ソローッ

生徒E「……」

生徒F「……」

生徒G「……」

男「…!?」

男(…な、なんか…睨まれてる…?)

男「…なんだろ、あれ…嫌な感じだなぁ…」

キーンコーンカーンコーン

男「……」

男(…もしかして、記憶がなくなるより前に…)

男(僕は何か、あの3人に睨まれるようなことをしたのかも…?)

男(…後で、ダメもとであの3人と話してみようかな…)

男「…うん、そうしよう」

—————休み時間—————

男「……」スタスタ

生徒E「…!」

生徒F「…なんだよ」

生徒G「何の用だよ…?」

男「…!」

男(…3人とも、怯えてるのかな…?)

男「…あのさ、話があるんだけど…」

生徒E「…っ!!」ダッ

生徒F「おい、E!」

生徒G「ひ…ひいっ!」ガタッ

男「あっ、ちょっ…ちょっと!!」

生徒F「…い、Eも…Gも…逃げやがった…」

男「い、いや…あの、えーっと…」

生徒F「…男、話ってのはなんだ…?」

男「…ここじゃ話しづらいから、移動しよう…?」

生徒F「…あ…ああ…」

男「……」

生徒A「お…おと、こ…やっぱ…り…」

生徒B「……」ガクガク

生徒C「……」ブルブル

男(…なんでみんな怯えてるんだろ…僕は普通にしてるだけなのに…?)

—————屋上—————

生徒F「…で、話ってのは…?」

男「うん、えーっと…いろいろ聞きたいことはあるんだけど…今はとりあえず」

男「…なんで3人とも…僕を見て怯えてたの…?」

男「…ううん、僕だけじゃない…うちのクラスの、赤以外の皆が…」

生徒F「…それを話すためには…こっちからも確認しなくちゃいけないことがある…」

生徒F「お、お前…記憶がないっていうのは、ほ…本当、なのか…?」

男「…?…う、うん…」

生徒F「ほ…本当の、本当に…か!?」

男「ほ、本当だよ!」

生徒F「!……」

男「…僕だって不安なんだよ…今までの自分が、いったいどんな人間だったのか」

男「どんなことをして、どういう風に生きてきたのか…それが、全然思い出せない」

生徒F「…っ…」ギリッ

男「…だ、だから!知ってるなら、教えてほしいんだ」

男「僕が記憶を失う前、いったいどんな人間だったのか…」

男「…きっと、みんなが怯えてる理由は、そこにあるんだろうから…」

生徒F「…ちっ…仕方ねえ、一度だけ…お前を信じて話すぜ」

男「うん…ありがとう」

生徒F「…お前の話が本当だという前提で、こっちも説明する」

生徒F「……お前が記憶を失う前、お前は所謂不良だった」

男「…!」

生徒F「はっきり言って、この学校の中でお前の名前を知らない人間はいないはずだ」

生徒F「うちの担任も、お前の記憶がなくなり、性格が変わったことで…今は受け入れているように見えたかもしれないが」

生徒F「元々はお前を毛嫌いし、問題児扱いして怯えきってた」

男「…っ…」

生徒F「クラスメイトや同級生はもちろん、先公や下級生にもカツアゲや暴力を容赦なくする最凶最悪の不良として恐れられていたのが」

生徒F「…今までの、お前だ」

生徒F「そんなお前が唯一心を許す相手といったら…お前の妹だけだった」

男「…妹…」

生徒F「どんな暴力沙汰が起きても、いつもお前は退学処分にはならず、停学で済んだ」

生徒F「…何故かわかるか?」

男「…妹が、止めに来てくれた…?」

生徒F「…そうだ…お前の妹が喧嘩に割って入れば、お前は必ず手を止める」

生徒F「そして、お前の代わりに…お前が喧嘩吹っかけた相手に向かって、あの娘が謝る」

生徒F「お前の毎日は、そんなことの繰り返しだったんだよ」

生徒F「だからお前は…事故の起こったあの日まで、停学こそあれ退学にはならなかったんだ」

男「…それ、本当の話…だよね?」

生徒F「…ああ…嘘言ったら、何されるか分かんねえし…」

生徒F「…それに、お前だって…平気で嘘を吐くような人間だ」

生徒F「だから…俺も、お前を信用しているわけじゃ…ないからな」ダッ

男「あっ!…行っちゃった…」

男「せっかくお礼言おうと思ったのに…しょうがない、後で言いに行こう」

男「……」

男「…彼の言うことがもし本当なら…記憶を取り戻す前の僕は、なんて嫌な奴だったんだ…」

男「…僕は、なんてことを…取り返しの、つかないことを…——!!」


男「うあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

がしゃああああああん

男「くそ…くそ…!!」

がんっ がんっ がんっ がんっ

男「…はぁ、はぁ…」

男「うう…他人を…、他人を傷つけるくらいだったら…」

男「元の記憶なんて、僕には必要ない——っ!」

がしゃああああっ

赤「…男、ちょっと落ち着けよ」

男「…!…あ、赤…?」

赤「ったく、フェンスに八つ当たりしてどうすんだ」

男「…だって、僕は…」

赤「何か事情があるなら、あたしが聞いてやるからさ」

男「…う…うん、実は…」

——————————

赤「——…なるほど、そういうわけか」

男「…うん…僕、いろんな人に…取り返しのつかない真似を…!」

赤「うーん…あたしも、他人に向かって説教とかできるような…人間、じゃあ…ないんだけどさ」

男「……」

赤「別に、気にしなくたっていいんじゃないか?」

男「え…?」

赤「ああ、いや…なんていうか、なかったことにしちゃいけないけど、悩み過ぎるのもなんか違うっていうかさ」

赤「…えっと、あたしは妹から、悪いことしたらごめんなさいしろって教わった」

赤「許してもらえるまで、必死でごめんなさいし続けろって、教わったことがある」

赤「…つまりは、単純なことなんだよ」

赤「一度やっちゃった『悪いこと』はもう…取り返しがつかないんだから」

赤「あんたにできることは…迷惑かけたこの学校の全員に、ちゃーんと謝ること!」

赤「それができるかできないかで、人間の価値って結構変わるぜ?」

男「…赤…」

赤「…もちろん、謝ってからもう一度悪いことしちゃったら意味ないけどな」

赤「だから、これからはずーっと、今の優しい男で居続ければ…」

赤「…きっといつかは、みんなが許してくれる!」

赤「だろ?男!」

男「…わ…わかった…ありがとう、赤」

赤「えへへっ、じゃあそろそろ戻るか!」

男「…うん」

今日はここまでです

赤さんっていうとどうしてもまさに外道のほうのあれが思い浮かぶし
赤ちゃんっていうとどうしても赤ん坊のほうが思い浮かぶし
色を名前にしたのは失敗だったかもしれん…

お休みなさい

赤じゃなく朱にしようぜ

てすと
>>99
でも赤色と朱色って別物だしなぁ…
もう開き直っちゃったほうがいいか

—————放課後 帰り道—————

男「…はぁ、今日は大変だったなぁー…」

赤「あはは、全学年全クラスに謝って回ったもんなぁ」

青「……」

緑「私も青も、正直驚きましたけど…ちゃんと事情があったんですね」

妹「けどお兄ちゃん、悪いのは今のお兄ちゃんじゃなくて以前のお兄ちゃんなのに、どうしてそんな…」

男「ううん…関係ないよ」

男「今ここにいる僕は、ここにいる僕でしかない」

男「たとえどんな人に変わったとしても…って、妹が教えてくれたんじゃないか」

妹「そう、ですけど…」

男「僕が不良やってて、いろんな人に迷惑かけてきたことに変わりはないんでしょ?」

男「だったら、僕自身が受け止めなくちゃだよ」

妹「…お兄ちゃん…」

妹「…ふふ、前に比べてずいぶん変わりましたね…お兄ちゃん」

妹「よーし、今日はお疲れなお兄ちゃんを労って、いつもよりちょっと豪勢な夕食にしちゃいますよ!」

黄「えーっ、本当に!?やったぁ!」

赤「そ、そっか!じゃああたしも手伝っちゃおっかなぁ?」

緑「…あれ、赤がそんなこと言い出すなんて珍しいですね…普段はめんどくさがりなのに」

赤「うるさいなぁ、ちょっとした心境の変化ってやつだよ!」

青「……」

男「あはは、みんな仲いいなぁ…」

—————自宅—————

男「ふぅ、ただいまー」

機械犬『わうわう、わん!』

機械猿『うきぃ、うっきぃ!』

赤「ははは、相変わらず賑やかだなぁ」

青「……」モゾモゾ

黄「あれ、青ちゃんどうかしたの?」

緑「…スカートの中に何かいますね」

妹「あっ、これまだ実験途中の試作品…暴走して動き回ってたんですね」

赤「でもまたなんでこんなところに…」

青「…きもちわるい、これ…」

赤「じゃあ早く取れよ」

黄「えいっ」バシッ

試作品『グエッ』ドサッ

青「…妹の発明品、時々ちょっと危険…」

妹「ご、ごめんなさい…これからは気を付けます」

黄「しかも、高確率でなにかしら欠陥があるからねー妹ちゃんの発明品って」

妹「むぅ…あなたの欠陥は、そのドジっ娘ぶりですよ!」

黄「なっ、ひどーい!」

緑「…お、男様…ここでの生活は慣れませんか…?」

男「うーん…嫌ではないけど、まだちょっとね…あはは」

緑「問題児が多いものですからね…申し訳ございません」

男「いや…あ、謝られても…」

——————————

妹「みなさーん!」

赤「夕飯できたぞー!」

男「…今回は珍しく、呼ぶ前からみんなそろってるよ」

黄「だって今日の夕食っていつもより豪華なんでしょー!?」

緑「そうそう…期待せずにはいられません」

青「……」コクコク

妹「だ、だからといって期待され過ぎるのもなんだか…」

赤「まっ、まあいいだろ!さっさと食べようぜ」

妹「そうですね、用意もできましたし…ではっ」

「「「「「「いただきます!」」」」」」

—————夜 男の部屋—————

男「げふっ…もうお腹いっぱいで食べられない…」

男「それと、すっごい疲れたし…今日はもう寝ちゃおっかなあ」バフッ

男「……」

男「…明日も学校…次こそは、普通に過ごせるといいけど…」

男「いや、考えたって仕方ないな…お休みなさい」パチッ

—————赤の部屋—————

赤「…はぁ、何か知んないけど今日は疲れたなぁー…」バフッ

赤「…いや、一番疲れたのは男のやつか…あいつ、見かけによらず立派なとこあんじゃんか」

赤「実際、見方によっちゃ知りもしない他人の悪行について謝ってるようなもんだし…」

赤「…あ、でもそういう風にアドバイスしたのはあたしだったな…ははは」

赤「…しかしあいつは…優しいし、そこそこかっこいいし、器量が広いし…」

赤「あいつだったら…すぐ、友達になれそうだなぁ…いや、もう友達かな?…」

赤「……って」

赤「な、なんであたしはあいつのことをこんなに意識してるんだよ!?お…おかしいだろ!」

赤「つつつつい最近知り合ったばかりのあいつに、なんであたしがこんなことを…っ!//」ジタバタ

赤「……」

赤「……」ストンッ

赤「…すぅ…すぅ…むにゃむにゃ…」

—————妹の部屋—————

妹「…ふう!今日はお疲れなお兄ちゃんに関する事以外は特に何もなかったですかね…」

妹「さて、今日も日記つけとかないと…」スッ

妹「えーっと、今日は…」

4月20日 月曜日

お兄ちゃんや、赤達の学校登校日の初日。

いろいろ心配なことはあったけど、特に大きな事件なんかもなく、普通の一日でした。

まあ流石に、お兄ちゃんが突然教室に入ってきてかたっぱしから生徒に謝り始めたときは、びっくりしちゃったけど…

………

…でも…この平和な一日が、あと何日続くかな…?

妹「……」

…これから一か月間だけ、「平和な一日」の数を…

数えてみることにして、今日は寝る。

4月23日 木曜日

今日も、特に何もない平和な一日でした。

強いて言うなら、私に友達ができたことくらい…かな?

違うクラスの、すごく優しくって、すごく強い娘。

名前は…会ったばかりで覚えてない、というか聞きそびれちゃったけど、今度からもっと交流できればいいな♪

…ただ、私にとっての一番は、いつだってお兄ちゃんと発明品だけですけどね。

………

今日は、「平和な一日」4日目。

このまま一ヶ月、何ごともなく過ぎていくことを祈るばかりである。

5月2日 土曜日

今日はゴールデンウィークの中間あたり。五月病がマッハです。止まりません。

今日は、以前に暴走してしまったえっちな発明品を修正して完成させ、さらにはお兄ちゃんともだいぶイチャイチャしました。

そして、当然学校がないため、だらだらして過ごすことができました。

GW、万歳!

………

今日は、「平和な一日」13日目。

目下のところは心配いらないが、学校が始まったら、赤や黄のことをしっかり見張っておかないと。

5月10日 日曜日

本日は母の日らしいですが、母親のいない私には関係ありませんでした。

でも、心優しいお兄ちゃんは私の代わりに、母へカーネーションを贈っていました。

こういうところを見ると、記憶の有無って人格形成にこんなにも関わってくるのかなぁ、とか、考えさせられます。

………

今日は「平和な一日」21日目。

さすがにここまで来ると、なんでこんなことしているのかと馬鹿馬鹿しくなってくる。

21日前の私は一体何を考えていたのかしら?

—————学校—————

赤「よっ、男!最近調子はどうだ?」

男「うん、ばっちり!どうにか友達もできたしね」

赤「はは、そっかそっか」

男「うん、赤のおかげだよ…ありがとう!」

赤「なっ!?ば、ばか!あたしは別に何も…!」

赤「…っ、じゃなくて!次って調理実習の授業だろ?移動しなくちゃ」

男「あー、そういえばそうだったね…じゃあ一緒に行こうか」

赤「えっ?…あ…お、おう…」

—————家庭科室—————

先生「はーい、それじゃあ今度はこの卵をこういう風にして——」

赤「な、なあ男…いつの間にかどうやればいいかわかんなくなったんだけどぉー」

男「赤、なんでわざわざ僕のところに来るんだよ!?授業中出歩いたらダメだろ!」

赤「先生にはバレてないからいいの!ほらほら、早く教えてくれよ」

男「…近くの人じゃだめなの?」

赤「おう、友達に聞いたけど、全員ついてこれなくなってるって」

男「…授業くらいちゃんと聞いとけよ…えっと、これはこうしてこうやって…」

赤「ああ、なるほど…わかった、ありがとな!」コソコソ

男「…まったく」

先生「どうやら全員ついてこれてるみたいなので、容赦なく次に行っちゃいますよー」

先生「各班の内、誰かひとり、鍋を持って行ってください」

生徒A「どうしよ、誰が行く?」

男「あ、じゃあ僕が行くよ」

生徒A「本当?ありがとー」

生徒C「じゃあその間に別の作業進めてよっかあ」

男「わかった、お願いね」スタスタ

——————————

先生「鍋を持っていない班、もしくはコンロの調子が悪い班などありませんかー?」

先生「…うん、大丈夫みたいですね…それじゃあみなさん、コンロの上に鍋を乗せて火をつけてください」

男「えっと…これをこうして…よっし」カチッ シュボボボ

赤「…男、男!」ポンポン

男「わっ、赤か…今度は何の用?」

赤「火ぃつけて、火!」

男「…それもできない?」

赤「うん、できない…」

男「僕たち、班が別じゃんか」

赤「いいだろ別に、頼むよー」

男「はぁ…仕方ない、見本は見せるから、それを真似してやってみて」

赤「…え、でも…」

男「…?」

赤「…あ、いや…えっと…」

赤「お、男がやってくれるほうがありがたいっていうか…なんていうか…」

男「ダメだよ、人に頼り切ってばかりじゃ…自分でもできるようにしないと」

赤「いや、あの…そうじゃなくて…うーん…」

男「…こんなこと言いたくないけど…僕だって自分の班に仕事があるんだから、早くしてくれよ」

赤「…わ、わかった…ごめんな」

男「ううん、わかってくれたならいいんだけど…で、見本見せるから」

赤「……」

カチッ シュボボ カチッ

男「…こうやってやるんだよ、わかった?」

赤「あ、ああ…」

男「じゃあ、やってみせて」

赤「……」

男「…?…赤?」

赤「……」ソローリ カチッ シュボッ

男「…なんだ、火が怖かっただけじゃないか…それならそうやって言ってくれたらよかったのに」

赤「…違う、あたしは…」ボソッ

男「…え?」

赤「…あ、いや…なんでもない、ごめん…ありがとう」

男「…う、うん…」

生徒Y「あ、赤さん火つけてくれたの?ありがとう」

生徒X「じゃあ早速鍋を乗せて、っと」

赤「……」

生徒Z「ねえ、私達3人別の作業やるから、赤さんは鍋お願いしていい?」

赤「…え…いや、それは…」

生徒X「Z、早くしろよー」

生徒Z「あ、はぁい!…じゃ、よろしくねっ」

赤「あっ!…ど、どうしよ…」

赤「…鍋つかみとか…ないのかよ…」

赤「……」

——————————

グツグツ ゴポゴポゴポ

赤「うあ…やば、そろそろどうにかしないと…」

赤「で、でも…なんか、熱そうだな…不用意に触ると、大変なことに…」

赤「…あ、そうだ…男!」

男「———…は、———で、————…」

赤「…は、忙しそうだな…」

赤「先生も、YやZも忙しそうだし…自分でなんとかするしかないか…」

赤「きっと、熱いと思うけど…」ソローリ

ジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ

赤「いぎっっっ!??あっ、っっっつぅっ…!!!!」

赤「あ、あ、あ、ああ…あああっ…!!!」プシュウウウウウウウウッ

生徒Z「わわっ、赤さん何してんの!?濡れ雑巾とか使わないと熱いよ!?」

男「ど、どうしたんだよ赤!?」

生徒Z「男君!赤さん、鍋の熱い部分を直に掴んじゃったみたいで…!」

男「うわっ、本当だ…手にものすごい火傷が…!」

生徒Z「それに、何か顔も赤いし…だ、大丈夫?」

赤「……」

赤「……」プシュウウウウウウウウウウウ

生徒Z「…?…赤さん?」

赤「……」プシュウウウウウウウウウウウウ

男「あ…赤?赤、赤!?」

赤「…が」プシュウウウウウウウウウウウ

男「…え?」

赤「うがあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

がしゃあああああああああああっ

生徒Z「きゃあああああああっ!!?」

男「な…っ、や、やめろ赤!しっかりしてよ!?」

赤「ふぅ、ふぅぅう…っ!!」

赤「ああああああああああああああっ!!!」プシュウウウウウウウウ

ばしゃああああああん

生徒Z「あつっ、熱いいい!!」

男「あ…赤っ!いい加減にしろっ…!!」

赤「うああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!」プシュウウウウウウウウウウウ

ぱりん ぱりん ぱりん ぱりん

がしゃがしゃがしゃ がらがらがらがらがら

先生「きゃあああああああああああああああっ!?あ、赤さんもうやめてっ!」

生徒N「赤っ、お前なんでいきなり物を壊し始めたりしやがった!?」

赤「らああああああああああああああああああああああああっ!!」プシュウウウウウウウウウ

バキッ ベリベリベリッ がしゃあああああああああああああああんっ

男「赤、やめろ!聞こえないのか!?」

赤「はあああああああああああああああああああああああ!!!!」プシュウウウウウウ

男「赤あああああああああああ!!!」

今日はここまでです
お休みなさい

てすと

二か月近く放置しちゃってごめんなさい
正直忙しくもなんともなかったんですけど、どうしても書く気が起きませんでした
でもついさっきやっと書く気が湧いたので、図々しいながらも再開させていただきます
すみませんでした

—————保健室—————

男「……」

赤「…すぅ…すぅ…」

男「…ずいぶん気持ちよさそうに眠ってる…あれだけ大暴れしたくせに」

赤「んぅ…むにゃむにゃ…おとこぉ…」

男「赤…」

赤「…すぅ…むにゅっ」

男「…いきなり、なんであんなこと…」

ガラッ

先生「…どう?調子は…」

男「…先生」

先生「…まさか40度の熱なんて…大丈夫かしら」

男「先生こそ!…怪我…」

先生「ああ、これ?平気平気、大したことないわ」

先生「…一番心配すべきは…私の事でも、彼女の熱の事でもなくて」

男「……」

——————————

赤『うああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!!』プシュウウウウウウウウウウウ

ぱりん ぱりん ぱりん ぱりん

がしゃがしゃがしゃ がらがらがらがらがら

——————————

男「…赤の、突然の奇行…」

先生「…しっかし、うちの保健室がこれだけ繁盛したのって…もしかしたら初めての事かもねぇ…」

生徒A「うぅ、いたたた…足が…」

生徒B「こっちは、頭が痛い…」

生徒C「火傷が痛むよぉ…」

男「…ごめん、なさい…」

先生「どうして君が謝るの?男君の責任じゃないでしょう」

男「でっ…でも!」

先生「はいはい、いいからいいから!君は赤さんのそばにいてあげなさい」

先生「今の彼女にとっては…それが一番効くんだから」

男「…はい」

—————放課後 帰り道—————

男「…っていうことがあって…」

赤「……」

緑「…そうですか、そんなことが…」

黄「ねえねえ、もしかしてそれって——むぐっ!?」ガバッ

青「……」ギュゥゥゥッ

黄「むぐぐっ…、ぷはぁ!い、いきなり口塞がないでよ青ちゃん!」

青「…それ以上は、禁句…」

黄「…!…わ、わかってるよぉ…」

男「禁句?禁句って…——」

妹「…お兄ちゃん」

男「…!」

妹「…少し、話があります…」

男「え、で、でも…」チラッ

緑「…あ、私達の事はお気になさらず」

黄「先帰ってていいよー!」

青「…それに、男は…赤を背負ってるし…」

男「わ、わかった…じゃあ先に帰るね」

妹「三人とも、気を付けて帰ってきてくださいね」

黄「はいはーいっ」フリフリ

黄「…ふぅ、行っちゃったね」

青「……」コクン

緑「…私達も、気を付けなくてはいけませんね…下手な真似をすると、マスターのおっしゃっていた悪夢が…」

緑「現実のものに、なりかねない…」

青「……」

黄「…そうだね…確かに、気を付けないと…」

—————自宅—————

妹「…ごめんなさいお兄ちゃん、急にこんなこと…」

男「ああ、いや別に…それよりさ、話って何かな?」

妹「…はい、実は…あの娘は、特殊な事情で熱に弱い体をしているんです」

男「…熱に、弱い…?」

妹「…はい…あの娘が触れて平気な温度は、せいぜい人肌の温度程度…」

妹「それを大きく超えるような温度のものに触れると、あのように暴れ始めてしまうんです」

男「そうだったのか…だったら、先に言ってくれたらよかったのに」

妹「ごめんなさい、それについても…少し、言えない事情があったものですから…」

男「…わかった…とりあえず、赤を部屋に運ぼう」

妹「…そうですね、そうしましょう…」

男「…でもさ、一つだけ言わせて…」

妹「…はい、なんでしょうか…」

男「家族なのに…隠し事は、しないでくれ…」スタスタ

妹「…っ!…」ズキッ

妹「……」

妹「……」

妹「っ…」

妹「…はい…」

—————赤の部屋—————

赤「すぅ、すぅ…」ドサッ

男「…ふぅ…普段はあれだけはしゃいでるのに、こう大人しいとなんだか変な感じするなぁ…」ピトッ

男「熱は全然引かないけど…」

男「…よし、濡らしたタオルでも持ってこようか」スタスタ

妹「……」

妹「…ごめんなさい…せっかくのお気遣いですけど、この子たちには意味がないの…」スタスタ

妹「……」スッ プシュッ

赤「…いっ!!?」ビクッ

妹「あ…赤!動いちゃダメ…注射してる最中なの!」

赤「いぎぎ…は、早くすませろぉ…!」

妹「…よし、これで大丈夫」

赤「…って、妹…お前、熱治してくれたのか…?」

妹「もちろんです、私を誰だと思っているんですか」

赤「妹ーっ!」ガシッ

妹「あわわ、危ない危ない!」ヨロッ

妹「……」ヒョコッ

妹「ふふ…せっかくのお気遣いですが、この娘にはそれじゃあ意味がないんです…」

妹「…えいっ」プスッ

赤「いっ…!?」ビクッ

妹「わわっ、赤!動かないで、今注射してるんですから!」

赤「ちゅ、注射…!?何だよ突然…っ!」

妹「いいから!こうすれば、きっと熱が引きます…」

赤「いてて、早くしろ…って、あれ…?なんか、体が軽い…」

男「……」スタスタ

妹「わっ、お兄ちゃん!」

男「…あれ?妹と…赤!…もしかして、熱が引いたのか?」

赤「お?男!おうよ、妹のおかげでな!」

男「妹が…?」

妹「は、はい!えっと…一応はね…えへへ」

男「それ本当か!すごいなぁ妹…どうやってやったの?」

妹「え?えーっとですね、ものすごくよく効くお注射を偶然見つけましたもので!」

男「なるほど…よかったなー赤!」

赤「おう!ありがとな、妹!」

妹「あっ、はっ、はい!…えへへ」

赤「…あたしさ、夢見てたんだ…怖い夢…悪夢」

男「…あんなに気持ちよさそうに寝てたのに…?」

赤「あれ、そ、そうなのか!?…ま、まあいいや…」

赤「…あっ、でも…正確には、夢じゃないみたいな夢だった…」

妹「……」

赤「理性を失い、体中が燃えるように熱くなって…」

赤「周りの人、物、何もかも…思いっきり壊しちまうような…」

赤「…そんな、悪夢…」

男「…!」

男「……」

男「赤、それは…」

妹「……」

赤「おかしな夢だろ?あんなことあるはずねーのに——」

男「…それは、夢じゃないよ…赤」

赤「……」

男「…それは…現実なんだよ…」

妹「…お兄ちゃん…」

赤「……」

赤「…ちぇっ、騙されねえのかよ」

男「…え?」

赤「知ってたよ…あたしが全部、ぐちゃぐちゃに壊しちまったことなんて…」

赤「もちろん自分の意思じゃねえし、意識がはっきりしてもなかった」

赤「だから…夢だって思い込んでやりたかった」

赤「なのにさ…こういうときだけきっぱり言うんじゃねえよ…バカ!」

男「あ、赤…!」

妹「…赤…」

赤「ほらほら、出てった出てった!悪いがここはあたしの部屋だ、いつまでもいてくれるなっ!」

男「……」

妹「…わかりました…戻りましょう、お兄ちゃん」スッ

男「あっ…」

赤「……」プイッ

男「…赤」

赤「……」

男「…ごめん」スッ

赤「…!」

赤「……」

赤「……」

赤「…はぁ…」ドサッ

赤「…何やってんだよ、あたしは…」

—————夜 妹の部屋—————

妹「…平和な一日の記録が…とうとう、途絶えちゃいましたね…」

妹「明日から…もっとしっかり、彼女たちを監視しておかないと…」

ぱらっ

かきかきかき

5月11日 月曜日

ついに、赤の欠陥部分が発現してしまった。

気を付けてはいたつもりだったけれど、やはり甘かったみたいです…。

他の三人は、おそらく平気だとは思うけど…

でも、私が気を付けておかなくちゃ…。

あの日の出来事は、繰り返させません。

絶対に…!

—————学校—————

赤「…なぁ、男…本当に行かなきゃダメか…?」

男「何言ってるんだよ、もう学校まで着いちゃったのに」

赤「嫌なんだ、あたし…みんなのこと、あれだけ傷つけちゃった…」

男「大丈夫だって、心配いらないから!」

男「弱気なんて、赤らしくないぞ?」

赤「うぅ…わ、わかったよ…腹くくればいいんだろ!」スタスタ

男「そう、その調子!」

赤「……っ、お…おはようみんなっ!!」ガララッ

生徒達「…っ!!」ゾクッ

赤「……」

赤「…なんだ、これ…」

赤「…これ、全部あたしがやったのか…?」

男「あ…赤!」

赤「みんな…包帯巻いてる」

赤「いつも空いてなかった席が…空席になってる」

赤「絆創膏だらけのやつも…傷だらけのやつもいる…」

赤「これ…全部あたしが…?」

男「違うっ、そんなこと——」

「…そうだよ、お前のせいだ!」

赤「…!!」

「せっかく友達になったと思ったのに、何よこの仕打ち!」

「突然大暴れしやがって散々物壊したくせに、どのツラ提げて来やがった!」

赤「…あ…うぁ、あっ…あああ…っ」

「俺たちが…俺たちが一体何したっていうんだよ!」

「そうよ!赤さん、説明して!」

男「くっ…!」ギリッ

赤「ぅっ…ううっ…うううっ…!」

赤「うあああああああああああああああああ!!」ガラッ ダダッ

男「おい、赤っ!」

「…なんであいつが泣いてんだよ?泣きたいのはこっちなのに」

「頭おかしいんじゃねえのあいつ?」

ギャハハハハハハハハハハハハハッ

男「……」

男「…っ!!」ギロッ

男「…黙れ…」

男「黙ってろ!!!!」


シーン…

男「…確かに赤は悪いことしたよ」

男「みんなだって…間違ったことは言ってない」

男「でもな…あいつがあんなことしたのには、ちゃんと理由があるんだ」

男「根はいい娘なんだよ、赤は…知ってるはずだろ、みんなも!」

「……」

男「寄ってたかって攻撃して…それに意味があると思うのか!?」

「…!」

男「…まあいいや、俺は赤を探してくる…言いたいことがある奴は、その後にしろ」

男「…いいな?」ダダッ

今日はここまでです
次回の更新は、俺のやる気次第です
本当ごめんなさい
お休みなさい

ウルトラマンのSSじゃなくて悪かったな!!
つーかウルトラ怪獣のツインテールが五体も出てくるSSとか需要あんの…?

「…なんだ、あいつ…ちょっと昔のキャラに戻ってやがったな…」

「本当はあいつだって、反省なんかしてないんじゃ…?」

「でっ…でも!男君の言うことも、間違ってないと思う…」

「…だとしても、今のままじゃ…許せやしねーよ」

「きっちり落とし前付けてもらわなくちゃあな…」

ざわざわざわ…

—————廊下—————

男「赤ーっ、赤ーっ!」

男「赤っ、どこにいるんだぁ…!?」

男「赤、いるなら返事をしてくれーっ!おーい!」

先生「あれ、男君…?どうしたの、もうすぐ授業が始まるでしょう」

男「せっ、先生…!」

男「赤を、赤のやつを見かけませんでしたか!?」

先生「えっ?…うーん、見てないわねえ…」

男「…そうですか…ありがとうございました!」

先生「ごめんなさいね、お役に立てなくて…」

男「いえ、それじゃあ失礼します!」ダッ

先生「…でも、もうすぐ授業が…!…あっ、行っちゃった…」

妹「…先生、次の家庭科の授業はお休みさせていただきますね…」テクテク

先生「うわわっ!?…妹さん、一体どうしたんですか」

妹「いえ、私もお兄ちゃんのお手伝いを…」

先生「…心配なのはわかるけど、授業をサボろうとするのは感心しないわね」

妹「サボろうとなんかしてません、私はお兄ちゃんのために…!」

先生「はいはいいいからいいから、教室に戻りますよ」ガシッ ズルズル

妹「おええええっ、ちょっ、先生、首根っこ持って引きずらないで、首がっ、首が締まりますううううう」ズルズルズル

男「…っ、はぁ、はぁ、はぁ…」

キーンコーンカーンコーン…

男「…あーあ、授業始まっちゃった…転校してきて早々、成績に泥が付きそうだ…」

男「でもまあ、赤も道連れにしてやるんだし、どうってことないか!」

男「…はぁ、まあそれはいいとして…赤、本当にどこへ…」

男「…ん?」

機械犬『わんわんっ、わん!』

機械鳥『くえっ、くえええ!』

機械猿『うきい、うきいっ!』

男「…なんでこいつらが…?」

機械猿『お兄ちゃん、赤を探すのはこの子たちにもお手伝いさせますから心配いりませんよ☆』

機械猿『ちゃーんと、事情も分かってます!』

男「うおおっ!?い、妹の声…?」

男「…この猿、録音機能がついてるのか…びっくりしたなぁもう…」

男「…でもまあ、そういうことなら…妹のお言葉に甘えて、みんなにも探してもらおうかな」

機械鳥『くえっ、くええ!』

男「ん?…もしかしてそっちに?」

機械犬『わん、わんわん!』

男「よし、行ってみよう」

機械猿『うきい!』

男「…なんだかこれ、桃太郎になったような気分だな…ははは」

—————屋上—————

男「屋上…?本当にこっちなのか…?」

機械犬『わんわん、わん!』

男「ん…?…あっ、あれって…」



赤「…ひっく、ぐすっ…ひっく…」


男「…!…赤っ!!」


赤「…?…」

赤「…!!」

赤「……」ゴシゴシ

男「はぁ、はぁ…赤、探したよ」

赤「…あっそ」

男「あっそ…って…」

赤「うるせえな、あんたには…ずずっ、関係ないだろ…」

男「……何泣いてるんだよ」

赤「なっ!ばっ、ばか、泣いてなんか…!」ゴシゴシ

男「嘘ばっかり…目真っ赤だし」

赤「いっ…いいだろ、赤って名前なんだから!」

男「それは髪の色だろ?」

赤「〜〜〜っ、もういい、バカヤロー!あたしのことなんか放っとけよ!しっしっ」ブンブン

男「……」

男「…赤がどうして熱に弱いのかなんて知らない」

赤「…!」

男「…赤がどうして熱が原因で暴れだすのかなんて、興味もない」

赤「…男…?」

男「…だけど…赤が僕に教えてくれたことは、ちゃんと知ってるよ」

赤「…え?」

男「もしかして、もう赤自身…忘れちゃったのか?」

赤「…お、おい…何の話だよ?」

男「赤、君はどうして泣いているんだ?」

赤「だっ、だから泣いてなんか——」

男「いいから!…その理由を、考えてごらんよ」

赤「りっ、理由って…」

男「…自分は取り返しのつかないことをした、もう許してもらえない、…」

男「…って、思ってるからでしょ?」

赤「……」

男「…ちょっと前までのさ、僕とおんなじだよ」

赤「…!!」

男「僕が記憶を失う前…たくさんの人に、たくさん迷惑をかけた」

男「そのことで悩んでた僕に、赤が言ってくれたんじゃないか——」

『別に、気にしなくたっていいんじゃないか?』

男「—…ってさ」

赤「お、男…」

男「おんなじなんだよ、僕も…赤も」

男「今はもう…謝ることしかできないんだから」

男「赤は精一杯謝ればいい」

男「…できるだろ?…だって、僕に向かってそう言ったのは赤なんだから」

赤「…でも…あたしは…あの時は…その…」

男「…?」

赤「その…結構、軽い気持ちで言っちゃってたから…実は…えっと…」

男「……」

赤「単なる、妹の受け売りで…だから、その…」

男「……」

赤「…ごめん、なさい…」

男「…あはは、言えたじゃん」

赤「…はっ…!」

男「妹の受け売りだろうと関係ないよ、赤の口から発した言葉は…赤だけのものだろ?」

赤「……」

男「さぁ、教室に戻ろう…みんな待ってるよ、赤の言葉を」

男「そして、赤自身をね」

赤「…ぷっ…あははははは!」

男「…えっ?」

赤「…っばーか!男のくせにかっこつけてんじゃねーよ!」

男「赤…!」

赤「あっははは、バカのくせしてかっこつけやがってっ!」

男「なっ…赤にだけは言われたくないなぁ!」

赤「あっははははは…はぁ?どういう意味だよコノヤロー!」

男「いたたたっ、ギブギブ!」

赤「ははははは!」

男「いてて…はぁ、よかった…元に戻ったみたいで」

—————廊下—————

赤「はーぁ…笑い過ぎて疲れちまったよ」

男「そいつはなによりだ」

赤「……」テクテク

男「……」スタスタ

赤「…なぁ、男」

男「ん?」

赤「…えっと、その…」

男「…?」

赤「あっ…ありがと、な…//」

男「…どういたしまして」ニコッ

赤「…!」

赤「……///」

—————教室—————

ガラガラッ

「!!」

ざわざわ…

男「……」

赤「……」

先生「…授業終了10分前だぞ、今まで何をしていた」

男「すみませんでした、実は…」

赤「…あ、あたしが!…みんなに、迷惑をかけちゃったから…」

赤「…あたしには…ここにいる資格がないんじゃないかって…」

「……」

男「……」

先生「……」

赤「…それで、考えているうちに…授業が始まっちゃって」

赤「遅れたのは、それが理由です…」

男「…あっ…ぼ、僕は…」

先生「いや、もういい…理由は十分にわかった」

先生「…だったら赤、お前にはもうひとつするべきことがあるだろう」

赤「…はい」

先生「…授業が終わるまでの残りの10分はそのために使え、そうすれば…お前たちの授業の遅刻は見逃してやる」

先生「ただし、今回だけだがな」スタスタ ガラッ ピシャッ

赤「…先生」

男「……」

男(…なんだか余計にやりづらくなったような…)

男(でもまあ、どっちにしろ…ここからは赤次第だしな…)

赤「…あっ…えっと…その」

赤「ごめんなさいっっっ!!」ペコッ

「……」

赤「…今この教室にいない人もいるし、謝っても許してくれない人もいるかもしれない…」

赤「でも、あたし…精一杯反省したつもりなんだ…」

赤「あたしには…謝ることしかできないけど…みんなを傷つけるようなことは二度としない…」

赤「だから…こんなあたしでも——」

「許す!」

赤「…へ?」

生徒A「…そんなに深々と謝らなくても、十分気持ちは伝わるよ…」

生徒B「むしろ謝るべきはこっちだよ、酷いこと言ってごめんなさい」

生徒C「私も…本当に、ごめんなさい…!」

「私も!」「俺も!」「僕も!」

赤「みんな…」

男「…な?言っただろ…?」

赤「ふ、ふん!あんたの台詞はあたしの受け売りだろうが!」

男「なっ、なんだそりゃ!じゃあ赤が泣いてたことみんなにバラしちゃうぞー!?」

赤「わっ、馬鹿!やめろおお!!」

——————————

———————

————

——

—————夜 自宅—————

妹「お兄ちゃん♪いかがでしたか、学校での我が発明品の活躍ぶりは?」

男「ああ、すごかったと思うよ…とっても役に立った、ありがとう」

妹「ふふん、まあ天才発明家の私にかかればあのくらいは大したことないですけども!」

男「…ふぅん、じゃあ大したことないって言えばよかったかなぁ」

妹「ああっ、ひどい!そんな殺生な!!」

緑「…男様も、マスターの扱いを理解してきたようで…」

黄「あはは、そうだねー…」

緑「…ん、あれ?そういえば、赤がいないような…」

黄「あれ、本当だ…どこに行っちゃったのかな」

青「……」

妹「…ああ、赤ですか?赤なら…——」ニヤニヤ

—————赤の部屋—————

赤「…あ、あんの女ぁ…あたしをからかってやがんのかぁ…?」プルプル

赤「…部屋に入ってくるなり突然…」

——————————

妹『…赤、何も言わずに受け取ってください♪』

妹『遊園地チケットふ・た・り・ぶ・ん!』

妹『…え?なんでこんなのを渡すかって?』

妹『それはもちろん、赤だってお兄ちゃんと仲良くなりたいだろうなぁと考えての事で』

妹『…ん?あれあれ、いらないんですか?残念だなぁ、普段ケチンボな私のせっかくの気まぐれだっていうのに』

妹『まあもちろん構いませんよ、赤がいらないっていうのなら…私がお兄ちゃんと』

妹『デート、しちゃいますから♪』

——————————

赤「…なんて言いやがって」

赤「ったく…お節介にもほどがあるぜ、妹め…」

赤「っていうかそもそも、あいつは一体何の思惑があってこんな…」

赤「…まあ、大したこと考えてるわけでもなさそうだし…今日はそろそろ寝よう…」ドサッ

今日はここまでです
お休みなさい

てす

てす
明日辺り書くかもしれません、どうせ誰も見てないと思うけど

——————————

男「…妹…なんでそんなこと」

妹「…あら、やっぱり気付いてないんですか?」

男「気付いて…って、何が?」

青「…赤はああ見えて、男の事…むぐぐ」

緑「い、いえ!お気になさらず」

黄「ゆ、遊園地楽しんできてね!今週末の休みにでも!!」

男「…?」

妹「うふふ♪それじゃあ私達はそろそろ寝ます、おやすみなさいお兄ちゃんっ」スタスタ

男「あ、ああ…」

5月12日 火曜日

赤の引き起こした事件は、お兄ちゃんのおかげでどうにか丸く収まった。

もう二度と起こらないよう注意しないと…あの日の二の舞だ。

最悪の事態だけは、絶対に避けなくては…。

チケットを渡して週末に時間を作る作戦は成功した。

あとは当日を待つのみだ。

—————数日後 朝—————

妹「…んっ、んんーっ…朝かぁ…」

妹「…よし、今日は土曜日…朝食を食べたら、お兄ちゃんたちをさっさと追い出して…」ゴソゴソ

妹「早急に会議をはじめないと」ガチャッ

——————————

妹「…おはようございます」

青「……」コクン

黄「おはよー」

緑「んっ…おはようございます、マスター」

妹「…あら?お兄ちゃんと赤がいませんね…まだ寝てるんでしょうか」

黄「二人とも結構ウブだから、今日のデートの事考えて緊張してるんじゃない?」

青「…ありうる話」

妹「仕方ありませんね…起こしに行ってきます」

黄「いってらっしゃーい」

緑「ぺろっ…むっ、まだ味が薄いか…」

黄「緑ちゃん、今日は何作ってるのー?」

緑「シチューです…初挑戦です」

黄「ほぇー、すごいなぁ」

青「…シチューって?」

黄「あ、シチューっていうのはね、うーんと…白いカレー?」

緑「…それはおかしいと思います」

黄「えー?じゃあどうやって例えればいいのぉ?」

緑「もう少し待っててください…食べればわかるでしょ」

青「……」ワクワク

—————赤の部屋—————

妹「赤ー?朝ですよ、起きてますかー」コンコン

赤「!!」ビクッ

妹「…赤?」

赤「…び、びっくりさせんじゃねえ、お、起きてるよ…」

妹「…部屋の中で何してるんですか」

赤「う、うるせえな!妹には関係ないだろ!」

妹「…入りますね」ガチャッ

赤「わっ、バカ!」

妹「……」

赤「……///」

妹「…へぇ、赤も意外と女の子らしいところが…」ニヤニヤ

赤「うっ、うるさいなぁ…恥ずかしいから出てけよ」

妹「うふふ、初恋の人とデートだからってそんなに気合入れておめかししなくても♪」

赤「だあああああああうるさい!うるさいうるさいうるさい!!////」

妹「こんなフリフリのたくさんついた服、いったいいつの間に買ってきたんですか?」ペローン

赤「す、スカートをめくるな!と、友達にもらって来たんだよ…もう着ないからって」

妹「そうなんですか…なかなか似合ってますよ?」

赤「うっ…ほ、本当に?」

妹「ええ、もちろん♪」

赤「うう…ば、馬鹿にされたりしないよな?」

妹「誰にですか」

赤「おっ…男とか、緑とか」

妹「緑はわかりませんけど、お兄ちゃんが馬鹿にするはずありません」

赤「そ、そっか…ならいいけど…」

妹「…あら、噂をすればなんとやら…おはようございますお兄ちゃん」

赤「!!」ダッ

男「ふぁ…おはよう、妹」

妹「今起きたんですか?」

男「うん…ごめん、昨日はあんまり眠れなくてさ」

妹「無理もないですね、大事なデートの日ですもの♪」

男「でっ、デートってそんな…」

妹「ほら、赤なんかこんなに張り切っちゃって…って、あら?」

男「…あの布団の膨らみは?」

妹「…多分、赤が恥ずかしがってあの中に隠れちゃったんだと」

男「……」

——————————

緑「…マスター、赤がいないのですが」

妹「…恥ずかしがって部屋から出てこないので、あとで私が赤の分のご飯を持っていきます」

緑「そうですか…すみません、お手数をかけて」

黄「意外と恥ずかしがり屋さんなんだねー」

青「…お腹空いた」

男「そうだね、とりあえず食べちゃおっか」

妹「では…」

「いただきます」

—————赤の部屋—————

赤「…ごちそうさまでした」

赤「……」

赤「…や、やっぱ…恥ずかしいなぁ、これ…」

赤「…かわいいって…言ってくれるかな、男…」

赤「あたし…なんかでも…」

コンコンッ

赤「…!」

妹「…赤、入っていい?」

赤「…あ、ああ」

ガチャッ

妹「…お兄ちゃんももう支度し始めてますよ、赤もそろそろ歯磨きとかしてこないと」

赤「あ、ああ…そうだな…」

妹「…まあ、普通は着替えるより先に食事や歯磨きを済ませるんですけど…」ボソッ

赤「う、うるせえな!服を汚さないように気を付けるからいいんだよ!」

妹「まあいいわ、わかったから早くいってらっしゃい」

赤「い、言われなくても!」ダッ

妹「汚しちゃダメですよー…」

妹「……」

妹「…こんなときまでいつもと同じ髪型ってのも、味気ないなぁ…」

——————————

赤「…荷物よし、財布よし、身だしなみよし!」

妹「よくないです」

赤「え?ね、寝癖かなんかついてるか?」アタフタ

妹「そうじゃないですけど…ちょっとここに座って」

赤「?」ストン

妹「…女の子にとっては、髪型も重要なんですよ」シュルシュル

赤「髪型…」

妹「私達四人とも普段はおんなじ髪型ですけど、たまには変えてみるべきなんです」

赤「…この髪型は?」

妹「ポニーテール…これでよし!」

妹「…引き止めてごめんなさい、楽しんできてね、赤」

赤「おおう…いいな、これ!ありがとな、妹!いってきます!」

妹「うふふ、いってらっしゃい♪」フリフリ

妹「……」フリフリ

妹「…ふぅ」

妹「さてと…もうちょっとしたら始めようかしら」

妹「赤にはこれ以上暴走してほしくないしね…」スッ

——————————

男「……」

男「…思えば、どうしてこうなったんだろう」

男「妹が一方的に、僕と赤の遊園地行きの約束を取り付けて…」

男「…でも、別に悪い気はしなかったから、断りもしなかったけど…」

男「…これじゃほんとに、デートみたいじゃないか…」

男「おかしなことになったもんだ…」

赤「…お…おーい、男…」

男「…ん、赤」

男「遅かったじゃ…————」

赤「…?」

男「…ない、か……」

赤「……」

男「……」

赤「……///」

男「…か」

赤「…か?//」

男「かわいい…!」

赤「…なっ!?////」ボンッ

男(普段見慣れたツインテールを解いて、あまり見慣れないポニーテールというギャップ…)

男(それに、普段見慣れたラフな格好と違って、あまり見慣れない女の子らしい服装…!!)

男(…かわいいとしか、言いようがないじゃないか…)

赤「…///」

男(…髪色と同じ、赤面した頬も…すごくかわいい、かわいすぎる…!)

赤「…っ〜〜〜!い、いいから行くぞ!」スタスタ

男「…あ、う、うん」スタスタ




緑「…なかなかお似合いですな」

黄「そうですな、んふんふ」ニヤニヤ

青「……」

妹「…三人とも、そろそろ始めますよ」

黄「ちぇっ、尾行してやりたかったなぁ」

緑「これ以上野暮な真似はしませんよ、さあ行きましょう」

青「……」

——————————

男「…えーっと、この遊園地って確か…駅前から徒歩20分くらいだったかな」

赤「に、20分!?結構歩くんだな…」

男「そうかな?そんなにじゃないと思うけど…」

赤(…こんだけ普段と違う状況だと…ドキドキして、いつもより長く感じるんだよ…)

赤「…さ、察しろよ…ばか」ボソッ

男「…え?」

赤「なっ、なんでもねえよ!ほら行くぞ!」スタスタ

男「わっ、ちょっと待って!」

—————数十分後—————

男「着いた…ここだね、遊園地」

赤「お、おう…もう着いたのか…」

赤(頭がクラクラしてきた…)

男「…赤?どうかしたの、具合でも悪い?」ピトッ

赤「!!?////」プシューッ

男「わわっ、あっちち!?ちょっ、このままじゃまたこの間みたいに——!」

赤「なっ…だ、誰のせいだと…!」

男「えっ!?…い、いや…とにかく早く中に入って、冷たい飲み物でも買おう!」グイッ

赤(手、手を握られた…っ!?)プシューッ

男「うわっ、あっちち!」



???「…あら?あれは……」

—————遊園地内—————

赤「…はぁ、はぁ…悪いな男、助かったよ…」

男「ううん…暴走し始めたら、一番困るのは赤でしょ」

赤「…はは、まあな…」

赤(…ある意味、あんたのせいなんだけどな…)

男「それにしても、熱いものに触らなくても…赤本人の感情次第であんな風になることもあるのか…」

赤「…感情?」

男「え、だってさっきからずーっと顔赤かったじゃん」

赤「なっ!?///あ、あんた気付いてたのかよ!くっそー恥ずかしいじゃねえか、言えよ!」

男「いや…か、可愛いから黙ってよっかなって…」

赤「っ〜〜〜!!///」

男「わっ、また体温上がっちゃうから!」

赤「誰のせいだ誰のー!!」プシューッ



???「……」

???「…——ねえ、どう思われます?彼らの事」

??「…私が言えたことではないかもしれませんが…異常、であるかと」

???「ですわよね…おかしいわ、あの子に感情があるなんて」

???「だってあの子…見たところ普通の人間ではないわ」

???「もしかしたら、あなたと同じ存在かも…」

??「その可能性は十分にありますね…ここからでは、よくわかりませんが」

???「…決めましたわ、あの二人を尾行してみましょう」

??「…ですがお嬢様、彼らが『そうである』と決まったわけでは…」

???→お嬢様「…いいえ執事、十中八九『そうである』と見て間違いないわ…」

??→執事「…と申しますと…」

お嬢様「ええ…なんだか、鉄の匂いがしますの…参りましょう」

執事「…はっ」

—————妹の家—————

妹「…さて、それじゃあみんな集まったところで…」

妹「赤の欠陥対策会議を開きます」

黄「いえーい!ぱちぱちぱちー」

緑「そんなテンションの上がるようなものではないのだけれど…」

青「…なぜ、彼女の欠陥なの?」

妹「…みんなも知っての通り、彼女の欠陥は熱暴走…言い換えればオーバーヒート」

妹「熱に弱い彼女の体は、微弱な熱でも蓄積し続けると…もしくは、瞬間的に膨大な熱を浴びると」

妹「体が耐え切れず暴走し、見境なく暴れまわる」

妹「…そんな彼女の欠陥がこの中で一番…危険だからです」

青「……」

妹「…あの娘の暴走を見ていると…私が小学校3年生だった時に起こした」

妹「ある事件の事を…思い出すんです」

ちょっと中途半端だけど今日はこの辺で
わずかでも見てくれてる人がいると嬉しいです

赤編は今回の投下で終わらせる予定だったんだけどなぁ…あと一回分かかるな…

緑「…ある事件…ですか?」

妹「…はい」

妹「小学校3年生の…秋ごろだったでしょうか」

妹「私はその時からすでに、小学生らしくもなく今と同じように機械の開発に喜びや楽しみを見出していたんです」

妹「しかし当然、今と比べれば技術も知識も乏しかったものですから…」

妹「些細なミスで、とんでもない事件を引き起こしてしまいました」

黄「…そ、そのミスって…?」

妹「…今思い出しても忌まわしいし、恥ずかしいのですが…」

妹「私は回線をうまくつなげば人工知能を動かせるロボを発明したんです」

妹「当時は今より物騒な時代で、事件が多発していましたから、自衛用としてね」

妹「…ところが、繋ぐべき回線の位置を間違えてしまいまして…」

緑「その結果、いったいどんなことに…」

妹「…そもそもはじめから設計ミスをしていたということも重々承知しているのですが…」

妹「…本来繋ぐべき回線のすぐ真横に、緊急用の『人工知能暴走』プログラムを発動させる回路を用意してしまって」

妹「その結果、私の手を離れて街中を大暴れ…当時の私の技術はもちろん、周りの大人たちの技術を持ってしても」

妹「…あの『兵器』は止まりませんでした」

妹「もちろん精一杯の謝罪はしたのですが、当然私達家族はその街を追い出されてしまいまして」

妹「…だから、もうあの時のような悲惨な事態は起こしたくない…」

青「赤の欠陥は、その『兵器』と同じ仕組みなの?」

妹「いいえ、違います…あなたたちと同じ仕組みです」

黄「その『兵器』と同じ仕組みだったら、常に大暴れしてるだろうからねー」

緑「しかし…だとしたら、手の打ちようが…」

妹「……」

—————遊園地内—————

男「…赤、落ち着いた?」

赤「……」

男(拗ねちゃったよ…)

男「よ、よくわかんないけど…ごめん」

赤「…い、いいよ…別に…怒ってるわけじゃないし…」

男「…本当に?」

赤「……」

男「……」

男「…もしかして、照れてる?」

赤「っ!!」ギクッ

男「図星か…」

赤「……」

赤「…ほら、あたしってこんなじゃん」

赤「だから…か、可愛いなんて言われたこと…めったになくて」

赤「それで…あ、あがっちまって…さ」

赤「例えお世辞でも…嬉しいよ、男」

男「お、お世辞なんかじゃ——」

赤「うっ、うるさい!あたしの中じゃそういうことになってんの!///」

赤「不用意に口を開くんじゃねえこの女たらし、また暴走しちまうだろうがっ!///」

男「おっ、女たらしって…」

赤「ほらもうこの話はやめだ!乗り物乗ろうぜ乗り物!」

男「…しょうがないなぁ…じゃあジェットコースターで」

赤「えっ…」

男「なに」

赤「い、いや…あれはちょっと…あたしは…」

男「よし、決まりだ 行こう」

赤「嫌だ!他の乗り物が良いぃぃぃぃぃぃ!」

—————ジェットコースター—————

男「…おーい、赤?」

赤「……」ガクガク

男「おーい、おいってば」

赤「…ぜ、全然怖くなんか、な、なななないからな」ビクビク

男「…震えまくってるじゃん」

赤「か、かかか勘違いすんじゃねえ!こ、こりゃあれだ…落ち武者震いってやつだ」

男「武者震いね」

赤「そ、そうそれ!だから全然…——」

男「ん、もうそろそろ発進するみたいだね」

赤「……」ビクビク

男(また震え始めた…大丈夫かな)

——————————

赤「うえっ、おええぇぇぇっ…」

男(大丈夫じゃなかった)

男「ご、ごめん…まさかここまで苦手だとは」

赤「……」ジローッ

男「そんなに恨めしそうに見ないで」

赤「はぁ、はぁ…ったく」

赤「…男、あんたこの遊園地の乗り物の中で、何が一番苦手だ」

男「え?うーん…」

赤「……」

男「……」

男「…お化け屋敷かな」

赤「」

男「…あれ、どうかしたの?」

赤「…い、いや…別に…」

男「もしかして赤も苦手だったり?」

赤「や、ちがっ…そんなわけ…」

男「…図星みたいだね」

赤「う、うるせえな!そんなわけねえだろ!」

赤「ほ、ほら行くぞ!お化け屋敷!」

男「…はいはい」

男(自分が苦手な物乗せられたから、僕にも同じ思いさせようって魂胆なんだろうけど)

男(…生憎、特に苦手なものはないんだよね…)

—————お化け屋敷—————

男「…結構暗いんだね…」

赤「……」

男「…赤?」

赤「コワクナイコワクナイコワクナイコワクナイコワクナイ」プルプル

男「あちゃあ…」

赤「お、男…お前絶対あたしから離れんなよな…」

赤「は、離れたらぶっ飛ばすからな…」ピクピク

男「…言われなくても、離れないから大丈夫」

赤「お、おう…」

お化け「キェェェェェェアァァァァァァ!!!」ガバッ

赤「!!!」ビクゥッ

男「うわぉ、結構迫力あるな…」ビクッ

赤「」

男「あれ、赤?」

赤「」

男「おーい、赤?」

赤「」

男「…だめだ、気絶してる」


お化け「シャァベッタァァァァァァァ!!!」ガバッ

男「うわっ」ビクッ

赤「」

——————————

赤「……」

男「…あ、目が覚めた?」

赤「…あんたさ、絶対嘘吐いたろ…絶対お化け苦手じゃないだろ」

男「うん、まあ…」

赤「…ちぇっ、んだよ…文字通り一泡吹かせてやろうと思ったのに」

男「赤が一泡吹いてたね」

赤「うるせえ、余計なお世話だ!///」

赤「…ったく…しかしなんでそんなに怖いものなしなんだ?」

男「え?うーん…なんでだろ」

男「記憶がないから…とか?」

赤「関係あんのか?」

男「…さあ?」

赤「…まあいいや、さすがに次はあたしの乗りたいものに乗らせてもらうぞ」

男「う、うん…ごめん」

赤「まったくだ…ほら、あれだあれ」

男「…メリーゴーラウンド?」

赤「おうよ、面白そうだろ」

男「そうだね、乗ってみよう」

赤「おう!」

——————————

男「はー楽しかった」

男「…とも言えなさそうだね、赤は」

赤「うえっ、おええぇぇぇっ…」

赤「よ、酔った…」

男(メリーゴーラウンドでなぜ酔う…)

男「…赤、君は何なら平気なの?」

赤「う、うるせえな…あたしが聞きてえよ…おえっ」

男「……」

男「…じゃあ、あと赤が乗れそうなものって言ったら…」

赤「…?」

——————————

執事「…お嬢様、データの収集は完了いたしました」

お嬢様「そう…ご苦労さまですわ」

執事「この後はいかがなさいますか?」

お嬢様「…そうですわね、一度帰ってデータの分析をしてみますわ」

お嬢様「製作者が誰なのか…気になりますからね」

執事「…了解いたしました、すぐに車を用意します」スタスタ

お嬢様「お願いね」

お嬢様「……」

お嬢様(…この懐かしい鉄の匂い…)

お嬢様(製作者が…もし仮に私の知っているあの娘だとしたら…)

お嬢様「…もう7年近く経つのに…まだ懲りてないのかしら…?」

—————遊園地内 観覧車—————

赤「お…おい、これ乗るのかよ!?」

男「だって、他にまだ乗ってないのってコーヒーカップとフリーフォールと空中ブランコがあるけど」

男「赤が乗ったらどれも酔いそうじゃん」

赤「うぐっ…まあ、確かに…」

男「消去法で言ったら、乗れそうなのはこれしかないんだよ」

赤「うぅ…ごめん…」

男「な、なんで謝るの?」

赤「だ、だって…あたしがいなかったら、男はもっといっぱいいろんなものに乗れただろ」

男「…そりゃそうかもしれないけど、そんなんじゃ楽しくないよ」

赤「…え?」

男「せっかく二人で来てるんだ、二人で一緒に乗らなきゃ意味がない」

男「一人だけじゃ…楽しくないよ」

男「だろ?」

赤「お、男…」

男「…なんちゃって、カッコつけすぎたかな?」

赤「…ばか」

—————観覧車内—————

赤「お…おい、これ上がりきっても落ちたりしねえよな?大丈夫だよな!?」

男「あはは、平気平気」

赤「そ、そっか…それならいいけど…」

男「心配しすぎだよ——…あっ、赤!外の景色見てみてよ」

赤「え?…」スッ

赤「…うわっ…すっげぇ…!」

男「でしょ?」

赤「あたしたちのいる街って、こんな風になってたんだ…」

男「うん、そうだね…上から見ると、全然違う」

赤「…すっげぇなぁ…」

赤「…男、ごめんな…この間から今日までずっと、迷惑ばっかりかけてさ」

男「迷惑だなんて、そんなこと」

赤「あたしの持ってる欠陥…どうにかコントロールできれば…」

赤「誰にも、迷惑なんかかけずに済むのに」

男「……」

赤「すぐ頭に血が上る性格だから、ちょっとしたことで暴走しちまう」

赤「そんでそのたび…大事な物全部ぶっ壊しちまうなんて、あたしもう嫌だ」

赤「…どうにかならないかな…」

男「……」

男「…だったらさ、試して…いや、賭けてみない?」

赤「…へ?」

男「赤、僕の手を握ってみて」

赤「なっ、そ、そんなことできるわけねえだろ!///」

男「仕方ない、じゃあこっちから」ギュッ

赤「あ、あわわ、あわ…////」カァァァッ

男「…両手で」ギューッ

赤「〜〜〜〜〜っ!!////」プシューッ

男「あちっ…!」

赤「ば、ばかやろう!手…手ェ離せ!このままじゃ、あたし…また…!!/////」

男「…離さない、離すもんか…!」

赤「どうして…!」

男「信じてるからっ!!」

赤「…!?」

プシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウ

赤「うぐっ…ぐぅ…うあああああああああああああああああ!!!!!」

男「…よし」パッ

赤「うあっ、ああああああああああああああああああああああ!!!!」

男「…来ていいよ、赤…パンチでもキックでも、全力で」

赤「うあああああああああああああああああああああああああああああっ」ブオッ

男「それでいい…全力で僕を殴るんだ」

男「君と一緒に生活してる」

男「君とお互い励まし合う」

男「君と一緒に遊園地で遊んだ」

男「…そんな僕を、殴れ」

男「…君には、きっとできないから」

赤「うああああああああああああああああああああああああああああああ」

男「……」

ピタッ

赤「…う、うううっ、ううう…!!」シュウウウッ

男「…気が付いた?赤」

赤「はぁ、はぁ…」

男「おめでとう…克服できたじゃん、『欠陥』」

赤「…バカ!無茶しやがって…あそこであたしが拳を止めてなかったらいったい…!」

男「言ったでしょ?信じてるから…ってさ」

男「赤は優しいし、大切なものを壊しちゃうのが怖かった」

男「その感情を利用すれば、暴走なんてしなくて済むだろう…って思ったんだ」

赤「…ったく、何て奴だ…」

赤「…でも…ありがと、な…」

男「…どういたしまして」ニコッ

赤「…!」

赤「……///」

赤(…ちっ…こんなことされたら…)

赤「…余計に…好きになっちまうだろうが」ボソッ

男「え?何か言った?」

赤「ふん、なんでもねえよっ!」

—————妹の家—————

男「ただいま」

赤「ただいまー…って、お?なんかいい匂いがするな」

妹「おかえりなさい二人とも、もう夕食できてますよ」

赤「本当か!お腹空いてたんだよ、早く食いてえー!」

妹「手洗いうがいをまずしてから…って、聞いてないし」

男「あはは…あっ、ねえ妹」

妹「はい」

男「今日さ、赤が欠陥を克服したの」

妹「…はい?…えっ、はい!?」

男「それだけ、じゃあ僕も手洗ってくるからー」

妹「いや…ちょっ!お兄ちゃん!?詳しくお話してください!!ちょっとぉ!?」


青「……」

青「赤が、欠陥を…?」

青「……」

今日はこの辺で
女キャラメイン5人の髪形がデフォで全員ツインテなのは失敗だったなと今更思ってます
一応理由付けがないわけではないんだけど…

次からは青メインです
お休みなさい

——————————

妹「…あれから数日、何度も調べたけれど…」

妹「表面上は、何も変わってない…」

妹「どこを見ても…」

赤「…確かに」

赤「でも、あたしが無闇に暴走することはもうないぜ、絶対にな」

黄「…やっぱり、試してみたほうが早いんじゃないかなぁ?」

緑「…そうですね、実際には克服できていない可能性も考えて、今までは試してみることはありませんでしたが…」

緑「このままでは埒が明かないですから」

赤「…全然信じてねえのな…いいよ、じゃあなんか熱いものくれよ」

赤「証明してみせるぜ」

青「…じゃあ、これ」スッ

赤「…マッチ?…ひどいなぁあんた…火傷したらどうすんの」

青「大丈夫…あなたも分かっているはず」

赤「…確かにそうだけどさ…はぁ、まあいっか」スッ

赤「これをこうして…」シュボッ

赤「……」ゴクリ

黄「が、がんばって!」

赤「お、おう…おりゃぁ」ボッ

赤「……っ!!あっっっっっっっつっ!!!」ブンブン

妹「ああ、マッチ棒振り回さないでっ!水ならここにありますから!」

赤「っ〜〜!」ポイッ

黄「あ、危なかったぁ…って、それより!」

緑「ええ…暴走は…」

赤「あああああああああああ…あああ…ああ…」シュウウウウッ

赤「っ…はぁ、はぁ…はぁ…」プシュウウ

妹「す…すごい…本当に、制御できるように…!」

赤「ああ…だから言ったろ?もう大丈夫だって…」

緑「本当にすごい…これなら、もしかすると…」

黄「うん…私たちの欠陥も、なんとかなるかも…!?」

青「……」

5月25日 月曜日

今までは実際の検証は踏みとどまってきたが、今日は実際に赤に熱いものを触れさせて

欠陥が発動するか検証を行った。すると、本当に暴走が起こらなかった。

お兄ちゃんと赤の言っていたことは本当だったのだ。

私の研究の大きな副作用がこの『欠陥』であったが、うまくすれば

私はこれまでの研究の完成形に行きつくことができるかもしれない。

もしそれが本当に可能なら…お兄ちゃんだって、きっと、きっとあの娘たちを認めてくれる。

そうだ、そうに違いない。

—————翌日 朝 学校—————

男「…みんな、またあとでね」

妹「はい!…黄、行きましょう」

黄「うん!またねーみんなー」

赤「おう、じゃあなー」

緑「はい、またあとで…」

緑「——…さて、私達も教室に参りましょう」

青「……」

緑「…?…青?」

青「……」

青「…なんでもない、行こう」スタスタ

緑「え?…え、ええ…」

緑「…青…どうかしたのかしら?」

—————2年 教室—————

先生「はーい、席ついてー」

先生「出席とりまーす」

青「……」

緑「……」

緑(…やっぱり、暗い顔…)

緑(どうしたんだろう…)

緑「…ん?」

緑(あれは…)

——————————

緑「…青、少しよろしいですか?」

青「…?」

緑「…その、それは…」

青「…!」ガバッ

緑「あっ…か、隠さなくても…」

青「…だめ…見ないで」プルプル

緑「……」

クスクス クスクスクス

緑「!」クルッ

生徒達「……」スタスタ

緑(…今、あの人たち…こっちを見て笑ってた…?)

緑(…彼女らはいったい…)

—————1年 教室—————

先生「…えー、先生も非常に驚いているんだが…」

先生「今日は、一人転校生が来ている」

ざわざわざわ…

先生「あー…入って」

ガラッ

お嬢様「……」スタスタ

お嬢様「……」ピタッ

どよどよどよっ

「なにあの娘?すげーかわいい…」

「こないだ黄さんが来たばっかりなのにまた転校生とは…」

「しかもどっちもかわいいし」

「俺たち恵まれてるわぁ」

お嬢様「……」

先生「えー、それじゃあ自己紹介をお願いしていいかな」

お嬢様「…はい」

お嬢様「この度転校して参りました、お嬢様と申します」

お嬢様「どうぞよろしくお願いいたしますわ」ペコッ

先生「はい、どうもありがとう…それじゃあ、あの席に座って」

お嬢様「わかりましたわ」スタスタ

お嬢様(…予定通り、彼女と同じ高校に編入できましたわ)

お嬢様(しかし…まさか同じクラスになれるとまでは思っていませんでした)

お嬢様(私は運がいいわ…)チラッ

妹「…?」

お嬢様(妹…あなたの忌まわしい研究など、私が必ず破壊してみせますわ…!)

—————昼休み 屋上—————

青「……」モグモグ

緑「…青、ここにいたんですか」スタスタ

青「!…」

青「……」

緑「いつもなら私が誘うまでじっと座ってるくせに」

緑「一人でこんなところまで来て、一人で昼食だなんて」

緑「寂しい真似はよしてください」

青「……」モグモグ

緑「…はぁ、相変わらず無愛想だこと」

青「……」ピクッ

青「…別の場所で食べる」スッ

緑「え?…ちょっ、ちょっと!!」

青「今日は一人の気分」

青「だから…ついてこなくていい」スタスタ

緑「や…っ、まっ、待ってくださいよ!」

青「……っ!」ダッ

緑「青っ!!」ダッ

緑(…おかしい、いつもはこんなこと言わない)

緑(普段から自己主張なんてほとんどしない娘だけど)

緑(だからといって別に、自分の意見をはっきり言わないとか、そんなことはない)

緑(彼女は不器用だけど、こんな風にお茶を濁すような言い方はあまりしない)

緑(…明らかに、何か起きてる…)

緑「…だとしたら、どうして…」

緑「気付いてあげられなかったの…!」

——————————

青「っ、…はぁ、はぁ、はぁ…」

生徒a「…あれ、青さん?」

青「…っ!」

生徒b「あー本当だぁ、どうしたのぉ?お昼も食べずにこんなところで」

生徒c「もしかしてぇ…便所飯とか?」

生徒a「あははははは!マジでぇ?きったなぁい」

青「…何の用?」

生徒b「…何の用って…」

生徒c「ただ見かけたから声かけただけだけど…」

青「用がないなら、話しかけないで」スタスタ

生徒a「あはは、ちょっと待ちなよ」

青「……」

生徒a「青さん…こないだのアレやってよ、アレ」

青「…!」

生徒b「ああ、アレ?あの芸超面白かったよねぇ」

生徒c「また見たいなぁ…見せてくれないかなぁ」

青「…ふざけないで…あれは…見世物なんかじゃ…」

生徒a「あっそ?じゃあいいわ、力ずくで見せてもらうからさ!」

青「やっ、やめ…!」

生徒c「今度はこの間よりも〜っと酷い目にあわせちゃおっかなぁ」

生徒b「ほらほら、こっちおいで…っと!」グイッ

青「やっ…、離して…!」グッ

—————女子トイレ—————

生徒a「b、バケツに水汲んで持ってきて」

生徒b「あいよ」

生徒c「ほら、あんたはこっちでしょ」グイッ

青「う…っ」

バタン

生徒c「個室の中でじっとしてな」

青「…っ…」

生徒b「水汲み終わったよ」

生徒a「よーし…せーのっ!」

ガチャッ

緑「……」

緑「…あの、なにしてらっしゃるんですか?」

生徒a「……」

生徒b「…あ…えーっと…」

生徒c「…いや…ちょっと、ね?」

緑「…もしかして、トイレのお掃除ですか?」

生徒c「そ、そうそう!そんなとこ」

生徒b「ご…ごめんね、驚かせちゃって」

生徒b「もう終わったから、あたしたち、行くわ…」

生徒a「……」

スタスタ

緑「…ふぅ、危ないところでしたね…青」

ガチャッ

青「……」

緑「わざわざ自分から個室に閉じ込めて水をぶっかけようだなんて…」

緑「よくもまあこんな面倒くさいことをしようと思ったものです…」

緑「…いや、それより…無事ですか、青」

青「……」コクッ

青「…あなたは…どうしてここに?」

緑「青を追っていたら、彼女らと青とのいざこざが目に入ったものですから」

青「それで、先回りを?」

緑「はい、個室に隠れて、チャンスを伺っていました」

青「…ありがとう」

緑「いえ、お礼になど及びません」

緑「…それどころか、こちらから謝罪をさせていただきたいくらいです」

青「…どうして?」

緑「…だって、私に知らせたくなかったんでしょう?このこと」

青「……」

緑「だから——」

青「——…ついてきて」

緑「え?」

青「…こっち」

緑「あ…は、はい」

—————2年 教室—————

青「…これ」

緑「あ、これ…今朝、あなたが隠そうとしていたノート…」

青「…中を見てみて」

緑「……」ペラッ

緑「…これは…」

青「…数日前…雨が降った次の日」

青「既に私はあの生徒たちにつけ狙われていた」

青「でも、あの日までは殆どちょっかいを出されていなかったから」

青「私も無警戒だった」

青「…その日、体育の時間があったでしょう」

青「あの時、あの生徒たちは周りの目を盗んで、私を水道のあたりまで強引に連れて行った」

青「そして、困惑していた私に向けて、ホースからの水流で攻撃してきた」

緑「ひどいことを…」

青「…そしてそのまま欠陥が発動して、動けなくなった私を辱めるような真似を…」

緑「…これが、その時の写真…」

青「私のノートに張り付けられていた」

青「はがそうとしたけど、はがれなかった」

緑「彼女たちは、あなたの欠陥の性質については…」

青「知らなかったはず…知っている理由がない」

緑「…青、確か…あなたあの後、保健室に行きましたよね」

青「あれは、不審に思われたくなかったから…それと、着替えたかったから」

緑「…どうして言ってくれなかったんですか?」

緑「そういう仕打ちを受けていたこと」

青「…あなたは普段から、いろいろと忙しい」

青「私の事で迷惑をかけたくなかった」

青「それに、こんなことをされたところで、私は応えたりしない」

青「だから、何も言わないことにしていた」

緑「……」

緑(…こんなことをされたところで、私は応えたりしない…ですって…?)

緑(だったら…今朝の暗い表情は何だっていうの?)

緑(3人に絡まれた時の…あの怯えたような声は?)

緑(彼女は気付いてないんじゃないだろうか…?)

緑(自分にも…感情があるってことに…)

今日はこの辺で
約一ヶ月放置申し訳ございませんでした

こういう展開はいろいろと受けにくいだろうなと思いつつもこれでいくしかなかった…
後に予定している黄メイン編や緑メイン編と違って青は話を広げにくい広げにくい

せめて極力うまくまとめられるよう頑張ります
お休みなさい

—————1年 教室—————

「ねえねえ、お嬢様さんってどこの学校から来たの?」

「部活とかやってた?運動系?文化系?」

「なんでですわ口調なの?」

ワイワイ ガヤガヤ

黄「…転校生の娘、すごい人気だねえ…朝からずーっと質問攻めされまくってるよ」

妹「……」

黄「…?…妹?どうかしたの?」

妹「…いえ、なんだかあの娘の事、知ってる気がするんです…私」

黄「そういえば、朝から転校生の娘も、妹の事なんだか気にかけてるみたいだったねー」

妹「はい…でも、『気がする』だけで、どうもはっきり思い出せないんです…」

黄「ふーん……それって、人違いとかじゃないの?」

妹「…かもしれないですね…」

お嬢様「…ちょ、ちょっと!その質問には先程答えたでしょう!?」

お嬢様「そろそろ、解放していただけないかしら!」

「あっ、そうだよね…ごめんね」

「じゃあ、またあとで!」

お嬢様「……ふぅ、やっと解放されましたわ…」

お嬢様「極力多くの人と仲良くしておいたほうがいいというのはわかっていますが、休み時間の度にああでは身が持ちませんわ…」

お嬢様「…おっと、それよりも…」チラッ

妹「!」

黄「こっち見た!」ボソッ

お嬢様「……」スタスタ

妹「……」ビクッ

お嬢様「……」スタスタスタ

妹「……」ビクビク

黄「こ、こっち来た!」ボソッ

お嬢様「……」ピタッ

お嬢様「…妹さん、ごきげんよう…お久しぶりですわね」

妹「…へ?」

お嬢様「あら、もしかして覚えてらっしゃらないかしら」

妹「…え、えっと…すみません…」

お嬢様「いいえ、無理もないことですわ…あの時の私は、ただあなたを遠巻きに眺めていただけですもの」

妹「…あの時、ですか?」

お嬢様「ええ、私の事は覚えておらずとも、あの事件については今でも記憶に残っておられることでしょう」

妹「じっ、事件?……まさか」

お嬢様「そうですわ、約7年ほど前でしたかしら」

お嬢様「あなたのご自慢のロボが、プログラムミスで暴走し、街中に多大な被害を及ぼした事件」

お嬢様「それをきっかけに、あなたは街を追い出され、今の街へとやってきた…」

妹「な、なんでっ、そのことを——っ!?」

お嬢様「当然じゃありませんか、妹さん」

お嬢様「だってあの事件はね、あなたにとっても、私にとっても…重大な事件で」

お嬢様「特に私にとっては、人生の転機と言ってもいいくらいですから」

妹「あっ、あなた、いったい…何者なんですか!?」

お嬢様「あらやだ、そんなに警戒なさらないで?…7年前、クラスメイトだったじゃないの」

妹「くらす、めいと…?小学、3年生のときの…」

妹「……あっ!!思い、出した…!」

お嬢様「よかったわ、思い出していただけたのね」

妹「お嬢様ちゃん…!」

妹「…ごめんね、今までずっと忘れてて…」

お嬢様「…思い出していただけたところで、話を元に戻しますわ」

お嬢様「7年前のあの事件までは、私はあなたに強い憧れを抱いておりました」

お嬢様「何を隠そう私も、あなたと同じく機械の発明に凝っておりましたものですから」

妹「…そうだったんですか?それなら、言ってくれたらよかったのに…」

お嬢様「…それができたらよかったんですけどね、先程も申し上げました通り、あの時の私はあなたを遠巻きに眺めていただけ」

お嬢様「今と比べて引っ込み思案で臆病者だったものですから、なかなか勇気がわかなくて」

妹「なるほど…」

お嬢様「まあ、過ぎたことには構いません」

お嬢様「そういうわけで私は、あなたの技術を遠くから見て、盗み取るので精一杯でした」

お嬢様「…ところがある日、先述の事件が起こったわけです」

お嬢様「私はにわかには信じられませんでした、学校でも得意げになって高機能の機械をたくさん発明していた妹さんが、まさか…と」

妹「…返す言葉もありません…」

お嬢様「…故意ではないことはわかっていました」

お嬢様「ですが、あの瞬間…確かに私は、あなたへの失望の念を抱きました」

妹「……」

黄「…妹…」

お嬢様「…将来は彼女のように、偉大な発明家になりたい」

お嬢様「…将来はたくさんの機械を発明し、彼女よりすごいものを作りたい」

お嬢様「そんな風に漠然と抱いていた夢ごと、裏切られた気分でした」

妹「……」

お嬢様「そこへ、私の気持ちを見透かしたかのように、ある日突然私のところに、とある組織から連絡が来たんですわ」

お嬢様「それこそが、私に訪れた本当の転機」

妹「…とある、組織…?」

お嬢様「ええ、そうですわ」

お嬢様「機械繁栄対策委員会、人間保護協会、擬態生命破壊活動連盟…」

お嬢様「表の名も裏の名も、数えきれないほど存在します」

お嬢様「そして、その全てが本物であり…その全てが偽物である」

お嬢様「ゆえに、名前に意味などないのですが…」

お嬢様「一応、そういう『組織』があるということ、それと———」

お嬢様「———…もうひとつ、私がその組織の一員であるということは、記憶しておいていただきたいわ」

妹「……」

ドクン ドクン

妹「……っ」

ドクン ドクン…ッ

黄「い、妹?す、すごい汗…だ、大丈夫!?」

妹「わ、わからない…なぜ、こんなに…」

妹(…こんなに、焦燥した気分に陥るの…!?)

妹(何なの、この…胸を貫くような、嫌な予感は…!)

妹「…その組織は、いったい何をする組織なんですか…?」

お嬢様「…あら、あなたならば、組織の通り名を一通り挙げた時点で察しがつくだろうと思ったのですが…」

お嬢様「まあよろしいですわ、私達のことをいくら喋ったとて、私のするべきことは変わりないのですから」

お嬢様「———組織のするべきことはただひとつ」

お嬢様「人間に仇なす可能性のある機械、その全てを徹底的に殲滅すること、ですわ」

妹「……!」ゾクッ

妹「…機械の」

黄「…殲滅…」

お嬢様「…その焦りよう…あなた、やはり心当たりがあるんじゃなくって?」

妹「……」

妹「…お嬢様ちゃん、どうして…私がそうだとわかったのですか」

お嬢様「…鉄の匂いが、同じだったからですわ」

妹「…鉄の匂い?」

お嬢様「そう…7年前と同じ、懐かしくて忌まわしい鉄の匂い…」

お嬢様「今もぷんぷんするわ…あなたからも、あなたのすぐそばからも」

黄「……」

妹「……」

お嬢様「はじめて嗅ぎつけたのは…いつだったかの日曜日」

お嬢様「誰か男の人と一緒に歩いていた、赤い髪をした女の子…」

お嬢様「その娘をもとに、あなたへとたどり着きましたの」

妹「…!」

妹(…あの日が原因か…うかつだった…)

お嬢様「妹さん、あなた…やっぱりまだ懲りていないんじゃありませんの?」

お嬢様「7年前、あれだけ多くの被害を出しておきながら」

お嬢様「あなたは、もう一度あの悲劇を繰り返そうとしている」

妹「違う…違います!」

妹「あなたが思ってるような…そんな、そんなんじゃありませんっ!!」

お嬢様「人間と機械の馬力の違いを、履き違えるべきではありませんわよ」

妹「……!」

お嬢様「機械というのは、人間が作る以上…人間の下に位置するものだと思われがちです」

お嬢様「ですが、一概にそうであるとも限りません」

お嬢様「いつ、どんな時に、いったい何が原因で暴走を起こして、人間に害をなすかわかりません」

お嬢様「あなたの作ったロボットは…そういった考慮が欠けていますわ」

妹「……!」

妹「違う、違う!そんなこと、ないっ!!」

妹「…そんな…そんな、こと……——」

——————————

赤『理性を失い、体中が燃えるように熱くなって…』

赤『周りの人、物、何もかも…思いっきり壊しちまうような…』

赤『…そんな、悪夢…』

——————————

妹「…っ、ぅう…!」

お嬢様「…ほら…自覚はあるんでしょう」

お嬢様「自分の生み出したものが、意図せず周りのものを傷つける」

お嬢様「今まではこの街でなんとかなっていたみたいですが———」

お嬢様「……いずれ必ず、綻びが出るに決まっていますわ…」

妹「……」

お嬢様「そうなる前に…どうするべきか」

お嬢様「ぜひ、ご一考くださいな…妹さん♪」

妹「……!」

—————放課後 妹の家—————

男「…なあ、緑?今日の夕飯何がいい?」

緑「…申し訳ありませんが男様、今はそういう気分ではないので放っておいてもらえませんか…」

男「あっ、ご、ごめん…」

男「…じ、じゃあ、青…」

青「……」

男「青?おーい、聞いてる…?」

青「……」

青「……」

男(…いつも通りのはずなのに、なんかいつもより怖いな…)

男「…ねえ、二人ともどうかしたの?」

緑「…男様、まことに申し訳ございませんが…本当に放っておいてもらえませんか…!」

男「ご、ごめんなさい…!」

——————————

赤「妹ー、ちょっといいかー?」コンコン

妹「……」

赤「い、妹…?どうかしたのか…?いもう——」

妹「うるさいっ!!放っておいてくださいっ!!!!」

赤「!!?」ビクッ

妹「あ…ご、ごめんなさいごめんなさい!こんなこと言うつもりじゃ…!」

赤「あ、ああ、いや…!あ、あたしも悪かったよ!じ、じゃあ後でな…」ビクビク

妹「あ…っ」

妹「……、はぁ……」

赤「…ど、どうしたんだろ…妹のやつがあんな風に怒鳴るなんて…」

赤「ま、まだ心臓がビクビクして収まらないぜ…」ビクビク

黄「…今の妹には、触れちゃダメだよ…赤」

赤「黄…どうしたんだよ、元気ねえじゃねえか?」

黄「うん、ちょっと学校で…いろいろあってね…」

赤「…ひょっとして、妹が荒れ気味なのも…」

黄「……」コクン

赤「気になるじゃねえか、話してくれよ」

黄「…わかった、実は——」

——————————

赤「…なるほどな…そいつらはつまり、あたしたちの敵ってわけかい」

黄「そういうこと…になるのかな」

赤「そりゃそうだろ?だってあたしたちのこと、人間に仇なす敵だと思ってるんだろうからさ」

黄「でも…仮にそうだとしたら、争わなくっちゃいけないじゃん」

赤「…そうだな」

黄「相手は組織って言ってた…勝ち目なんて、あるのかな」

赤「わかんねえよ…でも、黙ってやられるわけにもいかねえだろ」

黄「…何か別の解決方法は…ないのかな」

赤「……」

黄「それができたら…きっと、痛い思いしなくて済むのに」

黄「心も、体も」

——————————

妹「……」

妹「…人間に仇なす機械を、破壊…」

妹「そんな組織があったなんて、聞いたことないよ…」

妹「どうすればいいのかな…」

妹「私が…彼女たちを生み出さなければよかったのかな」

妹「そしたら…こんな風に、悩んだりせずにすんだのかな…」

——————————

お嬢様『機械というのは、人間が作る以上…人間の下に位置するものだと思われがちです』

お嬢様『ですが、一概にそうであるとも限りません』

お嬢様『いつ、どんな時に、いったい何が原因で暴走を起こして、人間に害をなすかわかりません』

お嬢様『あなたの作ったロボットは…そういった考慮が欠けていますわ』


お嬢様『自分の生み出したものが、意図せず周りのものを傷つける』

——————————

妹「…そうだよね…私、今まであの娘たちに…自分の発明品に…」

妹「いろんなものを傷つけさせてきたんだよね…」

妹「…壊すしか…ないのかなぁ…」

妹「せっかく、どうにかできるって思ったのに…」

妹「赤の欠陥、治ったのに…」

妹「…でも、赤の欠陥が治ったからといって…あの娘がかつて暴走した事実は変わらないしなぁ…」

妹「それに、私のプログラミングは…赤以外の娘も暴走する確率を少なからず孕んでる」

妹「どうしたらいいの…?どうするのが、最善の選択なの…!?」

妹「誰か…教えて…っ!!」

—————緑の部屋—————

緑「……」

緑(あの娘を…青を救うには、どうしたらいいんだろう…)

緑(もっと…もっと、頼ってほしい…!)

緑(きっと…あの娘ひとりじゃ片付けられない…)

緑(気付かせてあげなくちゃいけない…彼女が、本当はどう思っているのか…)

緑(彼女を、自分の心と…向き合わせてあげなくちゃいけない…!!)

緑「…一人で悩んでいても始まりませんよね…」

緑「とりあえず、私が先に…もっとちゃんと、青と向き合わなくちゃ!」スッ

—————青の部屋—————

青「……」

コンコン

青「…どうぞ」

ガチャッ

緑「青、入りますよ」

男「…なんで僕も一緒なの?」ヒソヒソ

緑「事情はさっき話したでしょ、協力してくださいよ」ヒソヒソ

男「い、いや…それはいいんだけどさ、お役に立てるかなって…」ヒソヒソ

緑「そんなのは二の次です、とにかく協力してくだされば問題ありません」ヒソヒソ

男「わ、わかった」ヒソヒソ

青「…?」

緑「隣、失礼します」スッ

男「僕も」スッ

青「……」

緑「…青、単刀直入に聞きますが…」

緑「あの3人の事…どう思っているんですか」

青「……」

緑「答えてください、お願いします」

青「…あなたたちには、関係ない」

男「…青」

緑「関係ないことありません!自分の友達があんなことされてるのを見て、見過ごせるはずないじゃないですか!」

青「…特に、彼は…本当に関係ない」

男「うぐっ…そ、そうかもしれないけど」

青「とにかく…放っておいてほしい」

青「あなたたちに、迷惑をかけたくないから」

緑「…もう十分迷惑です」

青「!」

緑「…迷惑なら、散々かけてるじゃないですか…今更何を言ってるんですか」

緑「頼れるものがそばにいるのに、頼られないほうが…よっぽど迷惑ですよ!」

緑「確かに鬱陶しいかもしれない…必要じゃないと思ってるかもしれない」

緑「でも!だからって何もしないでいられるもんですか!」

緑「どうせ一人じゃ何もできないんでしょ!?私だって逆の立場なら、一人じゃ何もできませんもの!」

緑「無理しないでください!」

青「…でも、私は…」

男「…僕は…緑から聞きかじった程度だから、詳しい事情はよくわかんないけどさ」

男「緑の、言うとおりだと思う」

男「誰だって、一人じゃ限界があるよ」

男「全部一人で抱え込んで、パンクした後じゃ遅いだろ」

男「誰かに頼ることができるうちに、頼っておいたほうがいいんじゃない」

青「……」

緑「…そういうことですから、協力させてください」

緑「私に、迷惑かけたくないんでしょ…?」

青「…ごめんなさい」

緑「!」

青「つらかった」

青「くるしかった」

青「…一人で抱え込もうとして、ごめんなさい」

緑「…青」

男「…よかったじゃん、案外簡単に折れてくれてさ」ヒソヒソ

緑「…ええ、そうですね…」

緑(…でも、彼女はまだ自分の気持ちに向き合いきれていないような気がする…)

緑(まだ、なんだかぎこちない)

緑(…青の悩みを完全に取り去るには…まだ少し、何かが足りないのかも…?)

今日はここまでです あけましておめでとうございます
ていうかまた年またいじゃったよ どうしようもねぇなもう…

前作と違って終わりがいつになるか想定していないんですけど、それでも読んでくれてる人がいたら
どうか今年もおつきあい願います……

お休みなさい

姉「……」 妹「……」 兄「……」
姉「……」 妹「……」 兄「……」 2

リンク貼っていただいてありがとうございます
前作とは言っても、とりあえずストーリー上の繋がりは一切ない…つもりです

書きます

—————とある屋敷—————

執事「お嬢様、御命令通りあの発明家の身辺調査を済ませて参りました」

執事「…こちらが調査結果をまとめた資料にございます」スッ

お嬢様「ありがとう、ご苦労様」スッ ペラッ

お嬢様「…赤、青、黄、緑…へえ、4体も作っていたとはね」

お嬢様「流石は稀代の天才…その名が世界に知れ渡っていたのが不思議で仕方ありませんわ」

執事「それに関しましては、彼女自身他人にあまり発明品を見せたがらないからでしょう」

執事「そしてその原因は、7年前のあの事件…」

お嬢様「…執事、その話はやめて頂戴」

執事「はっ、申し訳ございませんでした」

お嬢様「……」

お嬢様「…私はもう少し資料に目を通しておきたいから、もう下がってよろしいですわ」

執事「了解いたしました…失礼いたします」スッ

お嬢様「……」ペラッ

お嬢様(…赤、青、黄、緑…4体のアンドロイド)

お嬢様(一応、お手伝いさん、という体で屋敷にいるわけね)

お嬢様(全員が全員、まるで人間のようにバラバラの性格をしている…)

お嬢様(…そして、さも人間であるかのごとく振る舞っている)

お嬢様(身体的特徴としても、少なくとも腕や脚、顔などといった部分には機械らしさはなく)

お嬢様(彼女らのそれは人間のほぼそれと同一である…)

お嬢様「…私の作った失敗作とは大違いですわね」

お嬢様(…そして、一番の特徴…それは、かつて人類の誰しもが成し得なかった)

お嬢様(『心』の発明に成功していること…)

お嬢様「……」

お嬢様(…見た目の上でも中身の上でも、基本的には機械であるとは到底思えない性能を持つ)

お嬢様(恐らくこの『心』はプログラムで作った擬似的なもので、人間の持つそれと同一であるとは考えがたい)

お嬢様(…が、性質としては人間の持つものと完全に同一)

お嬢様(素体も技術も、ごく一般的な機械の性質と一線を画している)

お嬢様(彼女の天才メカニックたるゆえんはここにあるといえるだろう)

お嬢様(しかし、この世に完全は存在しない、とでも言うように)

お嬢様(彼女らは優れた技術の代わりに非常に面倒な短所を抱えている)

お嬢様(…発明家はそれを、『欠陥』と呼ぶ)

お嬢様「…欠陥、ですか」

お嬢様(欠陥の種類は個体によりけりで、赤は体温が一定温度を超えると『オーバーヒート』し、暴走を始める)

お嬢様(青はその逆で、体温が一定温度を下回ると体中の全プログラムが停止し、防御モードへと切り替わり)

お嬢様(一切の身動きが取れなくなる代わりに圧倒的硬度を獲得する『フリーズ』)

お嬢様(黄は一定以上の圧力の電撃を身体の一部に受けると、彼女自身を構成するプログラムの一部が拒否反応を起こし)

お嬢様(擬似的な『ショート』を引き起こす)

お嬢様(そうなると、彼女の体から数秒間火花が発生し、周りを巻き込む可能性があるため危険である)

お嬢様(緑は外部からの刺激によって欠陥が発動することはないものの、決められたエネルギー量を越えて動くと)

お嬢様(『エネルギー切れ』を起こして動けなくなってしまう)

お嬢様(…『オーバーヒート』『フリーズ』『ショート』『エネルギー切れ』)

お嬢様(以上が彼女のロボットの、致命的弱点となりうる『欠陥』のデータだ)

お嬢様「…なるほど…彼女の技術を持ってしても、やはり完全なものは産み出せないのですか…」

お嬢様「しかし、それほどまで決定的な弱点があると知っておきながら放置しておくとは…」

お嬢様「相当厄介な弱点ですわね、彼女たちを破壊する際には役に立つことでしょう」

お嬢様「しっかりと記憶しておかなければいけないわ…」

—————翌日 学校—————

青「……」

緑(…あの3人…明らかに私を警戒しているようですね)

緑(こちらも常に警戒しておかなくてはなりませんか…)

青「…緑」

緑「はっ、はい!」ギラギラ

青「…目がギラついている」

緑「ええ、そりゃあもう」ギラギラ

青「そこまでしなくても、平気…」

緑「何を言いますか、常に万全の態勢でないと」ギラギラ

青「……」

——————————

生徒c「ねーねー青さぁん、ちょっといい?」

青「……」

緑「ふざけないでください、よくもまあいけしゃあしゃあと…!」

生徒c「緑さん、わるいけど私青さんに用事があるんだけどなー」

緑「…話なら私が代わりに聞きます」

生徒c「そう?じゃあちょっとこっち来てよ、aとbの二人も用があるってさぁ」

緑「そちらから来ればいい話でしょう、なぜ私が?」

生徒c「いいからいいから、早くぅ〜」グイグイ

緑「ちょっ、やめ…!引っ張らないでください!」


生徒a「……」

生徒b「…行っていい?」

生徒a「…うん」

生徒b「……」ササッ

青「……」ガタッ スッ

生徒b「ちょっと待ってよ青さぁん、どこに逃げようっていうわけ?」ガシッ

青「…あなたたちには関係ない」

生徒b「あっはは!相変わらず愛想悪いなぁ、そんなんだからろくに友達もできないんじゃないの?」

生徒b「あ、なんだったらさぁ、あたしたちが友達になったげよっか?なんちって!」

青「こっちから願い下げ」

生徒b「…あ?」

青「妹が言っていた…友達は、選ぶべきと」

青「いい加減にその手を離して…体中が悪寒に包まれて、急激に体温が下がっていくのを感じる」

生徒b「…てめえなめてんじゃねえぞ?こっちこいよ…!」グイッ

青「…離して…っ」


ワーワー ザワザワ ガヤガヤ…

生徒b「いいからこっちに———っ」


青「離してっ!!!」

生徒b「……っ!」

シーン…

青「……」

青「……」パシッ

青「……」スタスタ

青「……」


生徒b「……」

生徒a「……」

ザワザワ ドヨドヨ

「…い、いきなりなんだったんだ?」

「青さんどうしたんだろう…?」

「生徒bのやつも、なんか変じゃないか…?」

—————放課後—————

緑「…ということがありまして」

男「あ、あの青がそんな風に…?意外だなぁ…」

青「……」

緑「きっと、青なりの勇気だったんじゃないかって思いました」

青「…あなたが何もしてくれなかったから、やむを得ず」

緑「」ギクッ

男「あ、あはは…」

緑「つ、次こそ!次こそは必ずっ!!」




生徒a「……」

男「…ねえ、ところでさ…妹は大丈夫なの?今朝は具合悪そうだったし、学校には結局来てないし」

緑「マスターですか…確か、何やら昨日転校生が来たらしく、その方に関わることで悩んでらっしゃると、赤と黄が」

男「…そうなんだ…平気かなぁ、いろいろと」

青「…本当はもっと詳しく知っているくせに」ボソボソ

緑「守秘義務みたいなものですよ、これ以上は男様には話せません」ボソボソ

男「…?」


生徒a「…なあ、あんたら!」


青「!」

緑「……」

男「…!」

—————妹の家—————

妹「二人とも、今日はごめんなさい…看病という建前で、私につき合わせちゃって」

黄「ううん、全然気にしない気にしない!だって一人じゃ決心つかないんでしょ?『組織』っての相手に、どうするか」

赤「…で、結局どうするんだ?あたしたちは…あんたの選択に付き合うよ」

妹「…あなたたちを、人間に仇なす可能性の一切ない、善良な機械に変える方法として」

妹「まずひとつは、リプログラミングしてあなたたちの『心』を消す…」

妹「もしくは、直接あなたたちを破壊して、存在ごと消す」

妹「他にも方法はありますが…私の力で確実にできそうなのは、この2つ」

妹「このどちらかを執り行えばあなたたちは『組織』に狙われない、凡庸な機械に変わります」

妹「…一日中いろいろ考えて、結論は出ました」

妹「結論としては、あなたたちを破壊することも、リプログラムすることもありませんし有り得ません」

妹「発明者は自分の作った機械を愛さねばなりません」

妹「たとえそれが、どのような失敗作であったとしても」

妹「たとえそれが、どれほど危険な兵器であっても」

妹「…万が一、相手が武力でかかってくるならば…」

妹「私は、武力で応戦する考えです」

妹「…もちろん、できることなら話し合いたいものですが…」

妹「とにかく私は、大切なものを守るためならいつだって手段を択ばないし、命も惜しまないつもりです」

妹「…身勝手な主でごめんなさい…それでも、ついてきていただけますか…?」

赤「もちろん!」

黄「当然!」

妹「…ふふっ、二人とも…ありがとうございます!」

赤「…あとは…お嬢様に、その考えを叩きつけてやるだけだな」

黄「そうだね…頑張ってね、妹ちゃん!」

妹「…はいっ!」

——————————

生徒a「……」

緑「…いったい何の用ですか?放課後になってまでネチネチと」

生徒a「…その…」

生徒a「…青さん…あのさ」

青「……」

生徒a「えっと…ごめんっ!!」スッ

青「…!」

緑「……」

生徒a「今までいろいろ、嫌なことばっかりしてごめんなさいっ!」

生徒a「本当に反省してるんです…どうかこの通り!」ペコッ

青「……」

男「…青、どうするの…?」ヒソヒソ

青「……」

緑「…信用なりませんね、本当に誠意があるのなら土下座くらいはしたらどうですか」

生徒a「……」

緑「あなたはそれだけのことを彼女にしたはずでしょう、まさかこの程度で許してもらえるなどと————」

青「待って」

緑「!」

男「青…」

青「…いいの…もういい」

青「あなたを信用する」

青「だから、頭を上げて…?」

生徒a「…本当に、許してくれるの?」

青「……」

生徒a「…ふふっ、やったぁ…」スッ

青「っ!」


生徒a「ありがとぉぉおおぉ…♪」ニコッ



ドゴッ

青「…っ…!」

男「青っ!!」

緑「青!!」

生徒a「くっ…、はっはっはっはっはっはっ!!」

生徒a「うぜえんだよ!何が土下座だアホンダラァ!」

生徒a「こんなチンケなカスのためにこの私が頭を下げてやっただけありがたいと思いやがれ!!」

緑「…あなたには見下げ果てました…いい加減にしてください!」ダッ

生徒a「ぐぅッ!?このォ…っ!!」

緑「男様、青をお願いします!」

男「えっ、でも…!」

緑「早くっ!!」

男「…っ!」

男「…わ、わかった!」

生徒a「てめえ…他人の事気にかけてる場合かぁ!?」ボゴッ

緑「ぐぅ…っ!?」

生徒a「ふん…っ!」グイッ

緑「うげぇ…!かみ、のけっ…ひっぱるな…ぁ…っ!!」

生徒a「オラァッ!!」

ドスッ バキッ ボゴッ

緑「うぐっ、ぐぇ…っ!!」

生徒a「はぁっ!」

ズドッ

緑「う…ッ!…」ドサッ

男「緑…!くそ…っ!」

男「青、しっかり掴まれ…!」

青「……」

生徒a「はぁ?おいおい、逃げられるとでも思ってんのかよ…!」ダッ

男「…っ!」

ドカッ

男「ぐ…ぅっ…!!」

生徒a「あはは、やっぱ一発じゃ倒れないか」

生徒a「さっすがぁ、男の子だねえ」

生徒a「でも…これならどうかなぁ?」スチャッ

男(何…メリケンサック!?)

男(まずい…逃げないと…!)


生徒a「だからさぁ…」


生徒a「逃がさないっつーの!」

ドスッ…

男「…っ…!」ドサッ

次の投下で青編完結予定
青編は正直いろいろ迷走してしまったから
黄編は方向性きちんと決めて息抜き的な感じにしたいです

眠い お休みなさい

てすと

鳥割れ?
それとも、忘れたのでテスト?

投下する前にちょっと訂正 他にも誤字あるかもしれないけど…
>>277
お嬢様「流石は稀代の天才…その名が世界に知れ渡っていたのが不思議で仕方ありませんわ」は
お嬢様「流石は稀代の天才…その名が世界に知れ渡っていないのが不思議で仕方ありませんわ」の間違いです
ごめんなさい

>>299
割れてもないし忘れてもないですよ ていうか割れててもこんなスレ誰も乗っ取りませんよ
最初にテストかなんかで書き込みしておかないと個人的にいろいろと面倒なので…

また日付またいじゃったけど書きます
ほぼ2か月放置ですみませんでした…

—————妹の家—————

妹「…さて、次にやるべきことは決まりました…日が暮れる前に済ませましょう」カタカタ

赤「何してるんだ?」

妹「お嬢様ちゃんの住所の特定です、こちらから宣戦布告をしに行く以上は、相手の本拠地くらい把握しなくては」カタカタ

黄「おおー、なんだかかっこいい〜!」

妹「この街の地理のデータは全てPCに入っています」カタカタ

妹「そしてそれらは常に新しく更新されている」カタカタ

黄「…どういう仕組みなの?」

妹「ややこしいので割愛します」カタカタ

妹「っと…ありました、ここですね」

黄「あれ、私達の普段使っている通学路から行けるじゃん」

赤「意外と近いんだな…」

妹「そうですね、そうと分かればさっそく…」

ピコーン

赤「…?今度は何だ?」

妹「…ウイルスバスターが勝手に開いて…」

妹「なになに…?危険度大のスパイウェア…?どうしてこんなもの…」

妹「…でも、今までに見たことのないウイルスですね…PCからの知らせが遅かったのも、そのせいか…」

赤「やばいのか、それ?」

妹「…どんな情報がどこに漏れ出したか次第ですが…場合によってはまずいかもしれませんね」

妹「けどまあ、後でどうにかしておきます それより早く用事を済ませてしまいましょう」

黄「そうだね、それじゃあレッツゴー!」

——————————

執事「…ちっ、もうウイルスが破壊されたか…優秀な自衛プログラムだなぁ、かの発明家の自作だろうか」

執事「まあいい、十分な情報は得られたし、これ以上ウイルスを送り続ける意味はない」

執事「あとは別の接触方法を考えるとするかな…」

—————廃墟—————

緑「んっ、うぅ…」

生徒a「よぉ、お目覚めかい?ずいぶん早かったな」

緑「…おはようございます、史上最悪の寝覚めの悪さですがね」

生徒a「なんだ?殴られ足りねえってのか」

緑「私は率直な感想を述べたまでです、他意はありません」

生徒a「あっはは!面白ぇやつだな、あんた」

生徒a「…どこかの誰かさんと違って、な!」

青「……」

男「……」

緑「…っ!青っ!!男様…!!」

生徒a「あはは、無駄無駄ァ…全員、両手首と両足首をきっちり後ろ手に縛ってあるから」

生徒a「そのまま芋虫みてえにあがいてろ、あっはははははぁ!」

緑(…確かに、きっちり縛られてますね…これじゃあ抵抗は無理です)ギチッ

緑「…あなた、私達にここまで執着するのには…いったいどんなわけがあるんですか?」

緑「ただ単に、青が気に食わないからですか?それだけで、ここまでのことを…?」

緑「…それと、取り巻きのお二人はどこへ?」

生徒a「…ずいぶん質問が多いなぁ…そこまでペラペラ発言する権利を認めた覚えはないんだが…まあいい」

生徒a「せっかくだから、冥土の土産に答えてやるよ…ロボットさん♪」

緑「…!?」

生徒a「あはは!『何で知ってるんだ!?』ってな顔つきだなぁ…」

生徒a「その辺もせっかくだから教えてやるさ、私は優しいからね」

生徒a「じゃあまずはどこから行こうか…」

——————————

妹「地図によれば、交差点付近の道に差し掛かった辺りで曲がって、ええと…」ブツブツ

赤「なあ黄、機械鳥どこ行ったか知らないか?」

黄「え?ううん、私は知らないけど…最後に見たのは、散歩しに窓から出かけるところだったから」

赤「そっかあ…万一の時、何かの役に立ちそうだから連れて行こうと思ったんだが…」

黄「何かってなに…!?物騒なのは好きじゃないなぁ…」

赤「そんなこと言ったってなぁ…って、あれ?」

黄「ん、あれは…機械鳥?おお、噂をすればなんとやらー!どうかしたのー?」

機械鳥『くええー!くえっ、くえくえくえっ、くえええええええっ!!!』クワッ

黄「な、何!?落ち着いて!どうしたのそんなに慌てて!?」

赤「い、妹!こいつらの言葉翻訳できるスイッチあったよな!?どこだっけ!」

妹「ふえっ?はぁ、はい!確か、背中に…」

赤「背中だな!?よーし」ポチッ

機械鳥『大変大変!男たちがピンチだよぉー!』

妹「えっ、お兄ちゃんたちが!?ど、どういう…!」

機械鳥『つっ、ついてきてっ!!』

妹「…よくわからないけど、行ってみましょう!」

赤「お、おう!」

黄「うん!」

—————廃墟—————

生徒a「…あんた、『組織』って知ってるかな?最近お嬢様があんたのマスターに話したはずだけど」

緑「…!……ええ、今朝…赤と黄から少し話を…」

生徒a「じゃあその組織ってのが、いったい何をしようとしているか…その辺も一応理解してるはずだよな?」

緑「そうですが…あなた、まさか」

生徒a「そう、そのまさか!私は組織の回し者だ…人間様に楯突く機械を、今まで幾度もぶっ壊してきた」

生徒a「だからあんたらもさ、これから私にぶっ壊されちゃうんだよねぇ〜可哀想!」

緑「…貴様…!」

生徒a「ちなみに青いのから先に狙った理由はな、欠陥の危険度を考えてだ」

生徒a「こっちがあんたらの中で一番最初に発見したのは赤いのだけど」

生徒a「あいつの熱暴走は危なっかしすぎるからな、後回しにしようと思ったわけ」

緑「おのれ…何故だ、何故欠陥についての知識まで!」

生徒a「ああ、それについてはうちの上司がね、あんたらのパソコンからデータを吸い取ってたわけ」

生徒a「で、私はお嬢様の目に通されるより先にそのデータについて教えられて、」

生徒a「そいで上司の指示であんたらにちょっかいかけてたってことさ」

生徒a「上司ってのはアレな、お嬢様といっつも一緒にいる執事のやつな」

緑「…なるほど…さしずめお嬢様にいいところ見せたくて、執事って方が独断で私たちに接触を…」

緑「そしてそのための駒が生徒a、あなたであると…そういうわけですか…忌々しい」

生徒a「まあ、そんな感じだな…あいつお嬢様にべた惚れだかんな」

生徒a「あ、ちなみに私の取り巻き二人は組織の人間じゃないよ?」

生徒a「ただ単に私が、青のやつ虐めてやろうぜって言ったら賛同してくれたから協力してもらっただけ」

生徒a「当然、私が組織の人間だってのは隠したうえでな」

緑「…それが協力?利用の間違いじゃありませんか…」

生徒a「ふん、何とでも言えばいいさ」

生徒a「さてと、そろそろお喋りの時間は終わりでいいよなぁ?うぜえ奴からさっさと始末して、さっさとおうちに帰りてえからな」

緑「…バケツなんて持ち出して、いったい何を…」

生徒a「意外と物分かりが悪いんだな?いっぱいの水入れたバケツの用途なんて、この場じゃひとつしかねえだろう」

緑「…まさか、フリーズ…!?」

生徒a「その通り」バシャァッ

青「」

生徒a「…ま、もともと気絶してたわけだからここまでしなくてもいいのかもしれねえが…念には念を、ってな」

生徒a「さぁて…このままぶっ壊してやる」スチャッ

緑「ぐっ…やめなさい!そんなことをしたら…————!!」ズキッ

緑「……!!」ズキズキッ

生徒a「ははは、肝心なところでエネルギー切れかぁ…4人の機械の中じゃリーダー格のはずなのに、締まらねえなあオイ!」

緑「余計な…お世話だ…!」フラフラ

生徒a「…まあいいさ、そこで姉妹が砕ける様を…指をくわえて見ておけや!」ブンッ

緑「……!」



ガンッッ!!!


生徒a「…なっ…!?」

男「…ふぅーっ、ふぅ〜〜っ…!!…」ズキズキ

緑「男…様…」

緑(両手両足縛られたままで、青を庇った…!?)

生徒a「…はは、ただのもやしかと思ったけど…案外やるじゃねえか、あんた…」

男「…こう見えても、昔は不良でね…今ので背中が痛むが、こんなのは大したことねえや…」ズキズキ

生徒a「…ほう?言うねえ…って、そういやあんた…校内でも有名な不良だったんだっけか」

生徒a「最近ずいぶん丸くなったみたいだから、そんな噂忘れちまってたぜ」

男「そうかい、俺はお前みたいな小物の顔は知りゃしないけどな」

男「こないだ全校生徒に謝って回ったときも、お前には…どうしたっけな、ちゃんと謝ったっけ、つーか話しかけたっけ?」

生徒a「てめえ…いい度胸してんじゃねえか、喰らいやがれ!」ドゴッ

男「ぐはっ…!」

緑「男様!」

男「…げほっ、意外と大したことないな…メリケンサックって、こんなに弱かったっけ」

生徒a「…っ!」ギリッ

男(…って、かっこつけたはいいけど、両手両足まともに動かないんじゃここからどうしようもないよな…)

生徒a「…もういいや…てめえもあいつら機械と一緒に、まとめてぶっ壊してやる!」ブォンッ

男(…あいつら?あいつらって…まさか、緑と青?二人が、機械ってことは…)

「待ちなさい!」

生徒a「…あ?」

機械鳥『くええー!くえっ、くえー!!』

生徒a「うわ、なんだこいつ!あっち行け、気持ち悪い!」

機械犬『わんわん、がうっ』ガブリ

緑「あ、縄が切れた…ありがとう、助かりました」

機械猿『うきーっ』ズバッ

男「あはは、また助けられちまったな…ありがとさん」

機械猿『うきっ!』

生徒a「だーっ、鬱陶しい!」ガンッ

機械鳥『くえっ』ドサッ

生徒a「こいつらいったい何なんだよ…!」

妹「ふふふ…話は全て聞かせてもらいました、やはり彼女たちの破壊が目的だったんですね」

生徒a「話?…てめえ、いつからいやがった!」

妹「え?ええと…『そう、そのまさか!私は組織の回し者だ』ってあなたが言ってた辺りからですかね」

男「結構早くからいたんだな…だったらぼけっと見てないで助けろよ!」

妹「す、すみません!少し彼女の話に興味があったと言いますか…そういうわけでして」

黄「赤!今のうちに青の身柄を確保だよ!」

赤「身柄を確保って何だ、変な言い方すんな!ほらとっとと運ぶぞ!」

生徒a「ふざけんな、させるかよ!」ダッ

妹「お兄ちゃん!」ダッ

男「ああ!」ダッ

緑「私も!」ダッ

生徒a「ぐっ…!」

男「『させるかよ』だと?そいつぁこっちの台詞だね」

妹「その通りです…ここまでしてくれた以上、あなたをただで返すわけにも、目的を遂行させるわけにもいきません」

緑「三方向を完全に塞ぎました、もう逃げ場はありませんよ」

生徒a「ぐ…こ、この…!」ブンッ

スカッ

生徒a「…あ、あれっ?」

男「動揺してパンチがヘナチョコになってるぜ、やけくそなのはいけないなぁ?」スッ

生徒a「あっ…!」

男「…女を殴っちゃいけない…世間のやつらはだいたいそう言う」

男「でもな、俺からすればそんなのおかしい」

男「俺にとって、殴っちゃいけないのは————」

ドゴッ

生徒a「げぼっ…!!」メキメキ

生徒a「ぐっ、うぅ…!」ドサッ

男「『美』女だけだ、見た目に関しても…中身に関してもな」

男「性格の醜いお前を殴るのを、躊躇う理由はどこにもない」

男「次に生まれてくるときは、見た目も中身も美しいといいな」スッ

妹「ひゅーひゅー!お兄ちゃんしびれるぅ!」

男「よせやい、恥ずかしい…だ、ろ…」ドサッ

妹「わわっ、お兄ちゃん!」

赤「おい、大丈夫なのか?男は」

緑「きっと疲れて眠ってしまったのではないかと思います、実は…私も…」ドサッ

黄「ああっ!緑ちゃんまで!?」

青「…彼女はエネルギーがもう切れているから、ああなっても仕方ない」

妹「青!意識が戻ったんですね?」

青「……」コクッ

赤「…一人で歩けるか?」

青「…歩ける」スタッ

妹「でも、今度はお兄ちゃんと緑をどうにかしないといけませんね…」

赤「ったく、どうしてこんなことになったんだか…」

—————妹の家—————

男「…今日はありがとう、助かったよ」

妹「?…私達、何かしましたっけ」

赤「さあ…黄、何かした?」

黄「ううん、全然何にも」

男「あっはは…そうかい」

赤「ところで男さ、なんであの時キャラ変わったの?」

男「へ?」

妹「…!」

黄「あー、すごいよねえあれ…まるで別人みたいで」

妹「……」

男「…え、何それ?全然記憶にないんだけど…」

黄「えー!?そうなの?もったいなぁい…」

赤「結構イケメンだったのになぁー、あっちのほうがいろいろと」

男「どういう意味!?」

黄「あとさ、結局組織に宣戦布告もしてないよね?」

赤「いや、組織の末端をぶっ飛ばしたんだ、実質宣戦布告だろ…これからはだいぶ面倒くさいことになりそうだ」


妹「……」

——————————

『——…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…』

『…仕方なかったんですよ…あなたが、いけないんです…』

『私の、大切なもの…』

『壊しちゃうから…!!』

『…ねえ、どうしてあんなことしたんですか…』

『答えて…答えてよぉっ!!!』

——————————

妹(…廃墟で、あのままお兄ちゃんが気を失ってくれて…ある意味、よかったのかもしれない)

妹(あの人格がまだ残っていたら…いつかの二の舞になる)

妹(早めに、なんとかしないと…)

—————夜—————

青「……」

男「…青」

青「……」

男「…眠れないのか?」

青「…あなたは?」

男「まあ、僕もそんなとこ」

青「…彼女の始末は、いったいどうしたの?」

男「ん?彼女って…生徒aか?あいつなら警察に突き出してやったよ、明日からは学校が騒がしいかも」

青「…そう」

男「よかったな…もう、学校行ってもいちいちびくつかなくっていいんだ」

青「……」コクン

男「……」

青「……」

青「…ねえ、男?」

男「…?」

青「…『無愛想』って…感情がないって、人間らしく振る舞えないって…」

青「…おかしなこと?」

男「…どうしてそんなこと」

青「時々…学校で言われることがある…愛想がないとか、暗いとか」

男「…青は、どう思うの?」

青「…よくわからない」

男「そっか…そうだろうね」

青「……」

男「…はっきり言って、僕にもよくわかんないや…ろくに記憶がないから、人生経験もないようなもんだし」

男「でも…緑なら、こう言うかな…『全然おかしくなんかないです』って」

青「……」

青「…どうして緑なの?」

男「…さあ…ふとそう思っただけだから」

青「ふふっ…変なの」クスクス

男「あっ…笑った!初めてじゃないか?青が笑ったところって!」

青「えっ…あっ」

男「…君はちゃんと笑顔が作れる、だったら無愛想なんかじゃないし、人間らしいんじゃないかな」

青「……」

男「明日、緑にも笑いかけてあげてくれ…今回一番頑張ったのは、きっと緑だ」

男「君の笑顔を一番見たいと思ってるのも、きっと…」

青「…わかった」

男「あっ、それと…笑ってるほうがかわいいよ、青」

青「…!」

青「……///」

男「…それじゃあ、ほどよく眠くなってきたし、僕はそろそろ寝るね…」スタスタ

青「…待って」

男「…?」

青「…私、感情って何なのか分かり始めてきたかもしれない」

青「私にもあるはずの『心』が、動き始めたのかも…」

青(…きっと、この気持ち…『感謝』って呼ぶのかな)

青(まだ、よくわからないけど…でも、今は!)

青「…緑、赤、黄、妹、男…」



青「みんな、ありがとうっ!」ニコッ



今日はここまで 当初の予定よりは綺麗にまとまって終わったと思う それでもぐだぐだですけど…
それとちょっと申し上げにくいんですが、贅沢なお願いをひとつだけさせていただきたい

もしまだ読んでくれている人がいるなら、できればでいいから乙だけじゃなくて内容への言及もしてほしいです
無論乙してくれる人がいるだけでも喜ばしいことなのは重々承知しております
遅筆の分際で図々しいこと言ってんじゃねえバカヤローと思われるかもしれない

でもぶっちゃけた話、もし感想もつけていただけたなら
もっとモチベーション上がってクオリティも増して投下速度も速くできるんじゃないかなぁなんて
思ったりもするんです

どこかの誰かさんみたいに指定された時間内に一定数以上の感想レスを毎回必ずつけろ、みたいな
わけのわからないことは言いません、気が向いたときだけでもいいのでこの薄っぺらいSSに何か言ってやってください
どうかお願いします

レスありがとうございます
次からは黄メイン編です
書きます

最近ラブライブにはまりすぎてやばい
海未ちゃんかわいい

—————とある屋敷—————

お嬢様「…執事、今回のこれはいったいどういうことですの?」

執事「申し訳ございませんお嬢様、私の失態です」

お嬢様「そんなことはわかっています、私は何故あなたが独断で行動したのかを聞いているのですが」

執事「申し訳ございません…すべては、お嬢様のためでございます」

執事「我ら組織にとっては機械とは天敵、人類を守るものとしては破壊して当然である」

執事「そのお嬢様のお教えに従って…出過ぎた真似をして、このような失態を招いてしまいました」

執事「どうか、生徒aだけでも許してやってはいただけないでしょうか」

お嬢様「当たり前でしょう、生徒aには最初から罪はありません」

お嬢様「彼女をそそのかし自身の計画に巻き込んだあなたにのみ全責任を負わせますわ」

お嬢様「今回は…そうね、一ヶ月の謹慎処分ということで」

執事「…はい、了解いたしました」

お嬢様「出来損ないの我が執事よ、あなたは優秀ですから今回は比較的軽い処罰ですが…」

お嬢様「次に同じような失態をすれば、どうなるかはわかっていますわね?」

執事「はい」

お嬢様「…きっちり反省なさい」

お嬢様「…まったく、彼には本当に困ったものですわ」

お嬢様「妹のように優秀な発明品を作る腕があったなら、私ももっと…————」

お嬢様「———…いえ、おかしなことを言うものではありませんわね…この私が、妹に劣っているなんて」

お嬢様「そんなことは…有り得ませんわ、認めませんわ…」

お嬢様「もう…昔の私とは違うのですから」

お嬢様「彼女の機械のように、勝手な破壊をする欠陥品なんかではなく」

お嬢様「破壊するべき機械を見極め、的確に人類の敵を排除していく」

お嬢様「そういったことのできる…強力で優秀な機械を作る…」

お嬢様「私の目的はそれだけ…私が組織に入ったのも、そのためなのですから…!」

お嬢様「…そうと決まれば早速、新たな機械を作っておかねばなりませんわね…」スタスタ

—————夜 妹の部屋—————

6月14日 日曜日

梅雨の季節です。今日も雨が降りました。

じめじめしたのはあんまり好きではないんですが…。

それと最近、組織が目立った行動を見せていません。

このまま何もないといいのですが、きっとそうもいかないのでしょうね。

対策はいつでも万全にしておかなくては。

妹「…よし」

妹「さてと、早く寝ましょ…」

—————翌朝 学校—————

生徒α「妹ちゃん、黄ちゃん、おはよー!」

妹「ああ、おはようございます」

黄「…おはよー」

生徒α「…ねえねえ二人とも…最近何か変だよ?」

妹「なにがですか」

生徒α「えっと…なんていうか、お嬢様ちゃんに対してすごい睨みをきかせてるよね」

生徒α「喧嘩でもした?」

黄「ううん、ぜーんぜん」

妹「…まあ、してるといえばしてますし、おまけに向こうから吹っかけてきた形ですがね…」

生徒α「へ、へえ…大変なんだねえ」

生徒α「…仲直りしようとは、思わないの?」

黄「……」

妹「いいえ、まったく!彼女はね、発明家の大敵ですからねー…!」イライラ

黄「…私は…」

お嬢様「……」ガタッ

生徒α「ちょ、ちょっ!二人が睨むからお嬢様ちゃん気付いてこっち来ちゃったよ?」

妹「…いいでしょう、望むところです」

妹「先日の事件以来私たちは冷戦状態でしたからね、きっちり意志を伝えないと」

お嬢様「……妹さん」

妹「…なんでしょうか?」

お嬢様「先日は…失礼いたしましたわ」ペコッ

妹「…えっ?」

お嬢様「生徒aが緑色の娘に話したはずだけど、あの事件は私がさせたわけではないわ」

お嬢様「だけど…私の部下が勝手な判断をして、勝手な行動に出たことは事実」

お嬢様「私の配慮不行き届きを…許してくださいまし」

妹「そ、そんな…」

お嬢様「…それでは」スッ

妹「…待ってください」

お嬢様「!」

妹「…あれらの行動は、別に組織の大意に背いているわけではないでしょう」

妹「私達は敵同士…それで、そちらから先制攻撃を仕掛けてきた」

妹「ただそれだけの話ではないのですか?…なぜそれについてあなたが謝るのですか」

お嬢様「…気に食わないからですわ」

妹「……」

お嬢様「この私の部下が勝手な判断で行動し、勝手に宣戦布告をしたのが気に食わないからです」

妹「…単純に、あなたのプライドがあれを許さなかった…と?」

お嬢様「ええ」

妹「…そうですか、じゃあこれ以上ややこしくなる前にはっきりさせましょう」

妹「…私は自らの手で、彼女たちを破壊することも、リプログラムすることもありませんし有り得ません」

妹「発明者は自分の作った機械を愛さねばなりません」

妹「たとえそれが、どのような失敗作であったとしても」

妹「たとえそれが、どれほど危険な兵器であっても」

妹「…万が一、あなた方が武力でかかってくるならば…」

妹「私は、武力で応戦する考えです」

妹「…もちろん、できることなら話し合いたいものですが…」

妹「とにかく私は、大切なものを守るためならいつだって手段を択ばないし、命も惜しまないつもりです」

妹「…私はいつだって身勝手な主です、自覚はあります…でも」

妹「戦うべき時には…戦います」

妹「…以上が私の考えです…あなたは?」

お嬢様「ええ…そうね」

お嬢様「私達『組織』にとって、失敗作や欠陥品、危険な兵器や武装用機械」

お嬢様「そういったものは利用することこそあれど、愛したり大切にしたりすることはありえないですわ」

お嬢様「人間の文明を築いたのは人間で、機械文明を築いたのも当然人間です」

お嬢様「かの有名なロボット三原則にもあるように、機械は人間に歯向かってはならないのです」

お嬢様「…私がこの学校に転入してきた日…私はあなたに『機械は人間の下に位置するものではない』と」

お嬢様「…そう、言いました」

お嬢様「だからこそ私は…人間という存在を名実ともにロボットの上に立たせたい」

お嬢様「間違っても人間がロボットに支配されたり、傷つけられたりすることがあってはならないのですわ」

お嬢様「私の意志は…組織の意志に同じです」

お嬢様「その考えを邪魔するものは…人間であれど、消し飛ばします」

お嬢様「それが…私の答えですわ」

妹「……」

お嬢様「……」

生徒α「…ふたりとも何の話してるの?」

黄「…生徒αちゃんは知らなくていい話かなー…」

黄(…二人とも、やっぱり敵同士って結論で、ゆずらないみたいだ…)

黄(私には、よくわかんないや…ここまで意固地になって、戦って…その後のことを考えたら)

黄(…やっぱり…争いなんてできないと思うけどなぁ…)

黄「…私は…仲良くしたいんだけど…」ボソッ

生徒α「……」

生徒α「黄ちゃん、ちょっと耳貸して」

黄「え?」

お嬢様「…お話は終わりでしょうか」

妹「そうですね…次に会う時は、学校外のどこかで…戦火の中でしょうね」

お嬢様「ふふっ、面白い冗談ですわ…では、また」

妹「……」


黄「…そ、そんな手段を…?」

生徒α「今すぐにとは言わないからさ、試すだけ試してみなって!」

生徒α「…お嬢様ちゃんと、仲良くしたいんでしょ?」

黄「…わ、わかった…できるかどうか自信ないけど、放課後にでも…やってみよう、かな」

黄「生徒αちゃん、ありがと!」

生徒α「ううん、詳しい事情は知らないけど、二人とお嬢様ちゃんが仲良くなるお手伝いくらいはしたいからさ」

生徒α「頑張ってね!」ニコッ

黄「うん!」

—————放課後—————

妹「…黄、帰りましょう」

黄「妹ちゃんごめん、ちょっと私用事があるから」トコトコ

妹「…?」

黄「さ、先帰ってて!」

妹「…はあ…」

——————————

お嬢様「……」

お嬢様「…こんなはずじゃなかったのに…」

お嬢様「なんなのですか、この気持ちは…!」

黄「…お嬢様ちゃん!」

お嬢様「ひゃいっ!??」ビクッ

黄「えへへ、見〜つけた!どうしたの?こんなところで」

お嬢様「あなたは、妹の…」

お嬢様「…あなたのほうこそ、どうして私のところへ?」

黄「んーとね、私…今朝、妹ちゃんがあなたに宣戦布告したときに思ったの」

黄「…私、戦いたくない」

黄「できることなら、あなたと仲良くしたい…って」

お嬢様「…はぁ?笑わせないでくださいな、あなたたち機械のカーストは事実上私達人間より下」

お嬢様「私達はそういう暗黙的なカースト分けを絶対的なものにするために活動しているのです」

お嬢様「…今朝そう言ったはずでしょう?なのに人間様にすり寄ってこようとは…作り主が愚かなら機械も———」

黄「…?何の話?」

お嬢様「…え?」

黄「だって、私は人間と仲良くなりたいんじゃなくてお嬢様ちゃんと仲良くなりたいんだよ」

黄「なのにそんなこと言い出すのって変じゃない?」

お嬢様「へ、変…ですって?」

黄「それに、カーストってどういう意味だか分かんないや…妹に教わった言葉じゃないと理解できないよ」

お嬢様「…なんなんですの、この娘は…」

黄「それよりさ、私はお嬢様ちゃんと仲良くなりたいの!だから、どっか遊びに行こう?ね?」

お嬢様「…何故ですの?私は別にあなたとなんか…」

黄「ちぇー、そっかあ…なら仕方ないなあ…」

お嬢様「あら?思いの外諦めが早いんですのね…てっきりもっと粘るのかと思いまし…」ガシッ

お嬢様「…た?」

黄「それじゃあ強引にでも連れていっちゃうからね!」グイグイ

お嬢様「い、痛い痛い!痛いですわ!いやです、やめてくださいまし!」ズルズル

お嬢様「…ぐぅっ、何と言う馬鹿力ですの…!やっぱり機械ですわ、忌々しい!」ズルズル

お嬢様「だっ、誰か…助けてええええええええええええええ!!!!」

——————————

お嬢様「…っ、はあ、はあ…」

黄「えへへ、作戦成功♪ でもごめんね〜、無理矢理連れ出しちゃって…」

お嬢様「はぁ、はぁ、全くですわ…人に仇なす機械のくせに、生意気な真似を…」

黄「…ねえお嬢様ちゃん、本当にそう思ってるの?私達の事…」

お嬢様「はぁ?…当然ですわ、赤がいい例じゃない」

お嬢様「わずかな熱で暴走を起こし、自分を見失って暴れ続ける…」

お嬢様「聞けば学校でも問題を起こしたそうじゃありませんか、無関係の人たちを傷つけて…」

黄「…確かにあの時はそうだったけど、赤はもう暴走しないよ?」

お嬢様「…はい?」

黄「お嬢様ちゃんが初めて赤を見つけたっていうあの日…」

黄「あの日にね、赤は男さんのおかげで自分を制御できるようになったの」

お嬢様「…そんな…有り得ませんわ、妹が解決できなかった問題を、他人が解決するだなんて…」

黄「あ、男さんっていうのは妹のお兄ちゃんなんだけどね?この人がまた凄い人でさ—!」

お嬢様「男…ですか、噂には聞いたことがありますが…」

お嬢様「いいでしょう、後できっちり調べておきますわ」

お嬢様「…だけど、私の調べた情報によれば…あなたの欠陥も相当に危険ではないですか」

黄「んー?ああ、ショートのこと?大丈夫だよー、電気に触れなければ発動しないし」

お嬢様「そういう問題では…」

黄「それに、赤は自分のダメなとこ、一応は自分の力で治したんだ」

黄「私にも、きっといつかできるに違いないよ!」

お嬢様「…自分の、ダメなとこ…?」

黄「うん!」

お嬢様「……」

黄「あー!お嬢様ちゃん、暗い顔しちゃダメだよ!笑顔じゃないと」

お嬢様「…勝手に連れてきて何を言っているんですの」

黄「…むう、それもそうだねえ、んー…」

黄「じゃあ、私が笑顔にしてあげちゃう!」グイッ

お嬢様「えっ!?ちょっと!」

黄「ついてきてー!」

—————遊園地—————

お嬢様「…何で遊園地…」

黄「赤がね、男と一緒にいろんな乗り物乗って、すっごい楽しかったって言ってたから!」

お嬢様「ひとりで遊んでいればいいではありませんか…私は帰ります、これ以上付き合いきれません」

黄「だーめ!」ガシッ

お嬢様「うぐっ…また馬鹿力が…」

黄「さーてどれ乗ろうかあ」

お嬢様「…わ、私は遠慮しt…」

黄「だーめ♪」ギリギリギリ

お嬢様「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!分かりました、ジェットコースターでいいですから!」

黄「やったー、乗るの初めてなんだよねえ、私!」

お嬢様「…はあ、どうしてこんなことに…」

——————————

黄「きゃああああああああああああ!たーーーーーのしーーーーーーーいーーーーーーーーーーっ!!!!!」

お嬢様「……」ガタガタガタ

黄「おじょうさまちゃああああああああああああん、たのしくないのおおおおおおおおおおおおおお!!!!?」

お嬢様「たっ、楽しいはずないでしょお!大体無理矢理連れてこられてこうしているだけだっていうのに…」ブツブツ

お嬢様「そっ、それに!私、ジェットコースター苦手なんですうううううううううううううううううううう!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオ

お嬢様「うっ…おえっ」


ゴオオオオオオオオオオオオオオ

——————————

黄「あー楽しかったー!すっごい速かったー!」

黄「…お嬢様ちゃんは…」

お嬢様「おえええええっ、うげええええ!がはっ、げろろろろろろ…」

黄「……楽しくなさそうだね」

お嬢様「おえっ、おえええ…げほっ、はぁ、はぁ…」

黄「はい、お水…」スッ

お嬢様「…お礼は言いませんわよ…」スッ ゴクゴク

黄「あはは…ごめんね」

黄「…でもどうして苦手なら苦手って言ってくれなかったの?」

黄「それにそもそも、お嬢様ちゃんがジェットコースターでいいって言うから…」

お嬢様「…う、うるさいですわね!あの時は視界にジェットコースターがあったからつい言ってしまったの!」

お嬢様「だから違うのにしようと思ったんだけれど、あなたがあんまり興奮しているもんだから引くに引けなくて…」

黄「…ごめんなさい…」

お嬢様「…ふんっ」

黄「…でもお嬢様ちゃんって優しいんだね、苦手なのに結局私のために一緒に乗ってくれるんだから」

お嬢様「なっ…優しいですって?この私が…?」

お嬢様「…戯けたことを言わないでくださいまし、そんなんじゃありませんわ」

黄「じゃあどんなんなの?」

お嬢様「……っ!」

お嬢様「う…うるさいですわ!あーもう、次行きますわよ次!何に乗るんですの!?」

黄「…あれ、最初帰りたがってなかったっけ?」

お嬢様「…!」ギクッ

黄「お嬢様ちゃんも意外と楽しんでるみたいだねー…じゃあ次何乗るー?」ニヤニヤ

お嬢様「……///」プルプル


お嬢様「もう帰りますわあああああああああああああああああ!!!!!」

今日はここまでです
黄編は極力シリアス入れないで、重苦しくないようにしていきたいです
お休みなさい

海未ちゃんかわいい!!
http://bit.ly/YFwqvj

訂正
>>337
× 黄「それに、カーストってどういう意味だか分かんないや…妹に教わった言葉じゃないと理解できないよ」
○ 黄「それに、カーストってどういう意味だか分かんないや…妹ちゃんに教わった言葉じゃないと理解できないよ」

>>338
× 黄「あ、男さんっていうのは妹のお兄ちゃんなんだけどね?この人がまた凄い人でさ—!」
○ 黄「あ、男さんっていうのは妹ちゃんのお兄ちゃんなんだけどね?この人がまた凄い人でさ—!」

呼称を間違えてはいけない(戒め)
書きます

お嬢様「……」

黄「結局帰らなかったね」

お嬢様「…うるさいですわ」

黄「あの後も普通に楽しんでたよね」

お嬢様「お黙りなさい」

黄「もー、ちょっとからかっただけじゃーん」

黄「機嫌直してよぉ」

お嬢様「…ふん」

黄「うー、困ったなぁ…」

お嬢様「……」

黄「…ん?あれは…」

黄「ねえねえお嬢様ちゃん、これ見て!」

お嬢様「…ケーキ屋ですか」

黄「今なら一部のケーキのお値段20%割引だって!」

黄「どう?ねえどう?」

お嬢様「ど、どうって…」

お嬢様「…まさかあなた、これで私の機嫌を直そうとでも…?」

黄「い、いや、別にそういうわけじゃ…」

お嬢様「バレバレですわ」

黄「…うぐっ」

お嬢様「まったく、この私を物で釣ろうとはどこまでも忌々しい…」

黄「…だめ、かなぁ…」

黄「お嬢様ちゃんが喜んでくれるかなぁと思ったんだけどなぁ…」

黄「やっぱり、だめかぁ…」ポロポロ

お嬢様「!?」

黄「うぅ、ぐすっ…ひっく、ごめんね、ごめんね…お嬢様ちゃん…ひっく」ポロポロ

お嬢様「こ…こんなところで泣かないでくださいまし!私が悪いみたいじゃありませんか…」

黄「うっ…ごめん、ごめんん…」ポロポロ

お嬢様「わ、わかりましたわよ!早く入りましょう!?」

黄「わぁいやったぁ!嬉しいなぁ、早く行こう?」ヒョコッ

お嬢様「…えっ?え、ええ…」

お嬢様「……」

お嬢様「…ん?あれ…?」

——————————

お嬢様「…嘘泣き?」

黄「うん、妹ちゃんがつけてくれた機能なんだけどね?」

黄「好きな時に自由に涙が流せるっていうか…」

黄「平たく言うと、涙腺コントロール機能だね!」モグモグ

お嬢様「…騙したんですか」イライラ

黄「…ご、ごめん…」

お嬢様「…まったく…あなたという方は…」

黄「だって、妹ちゃんに教わったよー?女の武器は涙だー、って」

お嬢様「自分の発明した機械になんてことを教えているんですか彼女は!」

黄「お嬢様ちゃんも、泣き落としとかしそうな感じするけどなぁ」

お嬢様「うっ…」

お嬢様「…ま、まあたまには…」ボソッ

——————————

黄「ごちそうさまでしたー!」

お嬢様「…なんで私が奢る形になっているんでしょうか?」

黄「お嬢様ちゃんお金持ちなんだからちょっとくらいいいじゃない?」

お嬢様「…まあ、確かにそうですけれど」

黄「今度ちゃんとお返しするからさ、許して?」

お嬢様「…許してほしかったらお返ししようなんて考えないでくださいまし」

お嬢様「あなたともう一度こういうことをする機会なんてないほうがいいですから」

黄「あーそっか、そうだよねえ…ごめんね」

お嬢様「……」

黄「でも、機嫌直してくれたみたいでよかったよー」

お嬢様「…あなたにはこの態度がそういう風に見えるのかしら」

黄「うん、見えるよー」

お嬢様「…どうして?」

黄「どうしてかなぁ…よくわかんないけど…なんとなく?」

お嬢様「……そうですか」

黄「…本当は私といて楽しいと思ってる?」

お嬢様「…そんなわけないでしょ」

黄「ふーん、そっかあ…」ニヤニヤ

お嬢様「…なっ、何よ?」

黄「…ううん、なんでもない!」

黄「次、どこ行く?」

お嬢様「…そろそろ帰らせてほしいのですが」

黄「えー?もうちょっとだけ付き合ってよぉ」

お嬢様「…じゃあ聞きますが、あなたは私といても楽しいのですか」

黄「うん!とっても」

お嬢様「…機械なのに?」

黄「それって関係あるの?」

お嬢様「…え?」

黄「私達の中にはちゃんと、妹ちゃんの作ってくれた心があるもの」

黄「その『心』で、楽しいとか悲しいとか感じるんでしょ?」

黄「だったら、機械か人間かなんて大した差じゃないんじゃない?」

お嬢様「…いいえ、そんなことはありませんわ!」

お嬢様「あなたたちには人間にない馬鹿力だって、危険な欠陥だってあるじゃないですか!」

お嬢様「それに加えて、人間でも時に制御しきれない怒り、憎しみ、悲しみ、妬み…」

お嬢様「そういう危険な感情を持つ可能性のある、『心』のデータが入ってる!」

お嬢様「……『心』を入れるための器として…機械は危険すぎるのです」

黄「…それならひとつ、聞かせてもらいたいんだけど…」

黄「『心』を誰よりよく知ってるはずの人間は…危険じゃないって言えるの?」

お嬢様「……!」

黄「人間だって、武器を作ったり体を鍛えたりして、すごい力を手にできるでしょ?」

黄「それこそ機械を利用して、もっととんでもないことだってできちゃうのに」

黄「…その力を、心に支配されて…危険なことだってできちゃうのに」

黄「全部機械が悪いことにするの?」

お嬢様「…その辺りの始末は…私たちの仕事ではありませんわ」

お嬢様「それに本当に立派な人間なら…そういった醜い感情に支配されたりしません」

黄「…誰もがみんな、立派だと思ってる?」

お嬢様「……」

黄「…私がよく知ってる人間はそんなに多くないけど」

黄「妹ちゃんも男さんも、他の私のお友達も…」

黄「時には悩んだり、悲しんだりすることぐらいあるよ…?」

お嬢様「…ぐっ…」

黄「どうして私が今日、お嬢様ちゃんを無理矢理連れてきたかわかる?」

お嬢様「…さあ」

黄「人間も機械も…きっとわかりあえるだろうって」

黄「私は思ってるから…その意思を、伝えたかったから」

お嬢様「…理想論ですわ」

黄「だからこそ…叶えたいとは思わない?」

お嬢様「…あなた…」

黄「甘い考えだろうけど…やっぱり、痛い思いはしたくないじゃない」

黄「できることなら…手を取り合いたいじゃない」

黄「…そうでしょ?」

お嬢様「……」

黄「少なくとも…やる前から諦めるより、何千倍もマシだと思うな」

お嬢様「…ふふっ、あははははは!」

黄「…?」

お嬢様「あなた、ずいぶんと面白いことを言うのですわね…気に入ったわ」

黄「……」

お嬢様「また明日も、一緒に遊びましょ?」

黄「いいの?」

お嬢様「ええ、もちろん」

お嬢様「だけど…あまり浮かない顔ですわね」

黄「…お嬢様ちゃんの気持ちが変わってくれたことはもちろん嬉しいけど…」

黄「今のお嬢様ちゃん、本心から笑ってなかったじゃない」

お嬢様「……」

黄「…やっぱり、お嬢様ちゃんも本当は————」

お嬢様「ごきげんよう、黄…また明日」スッ

黄「……」

—————夜 妹の家—————

妹「…お嬢様ちゃんと」

赤「一緒に」

青「…遊んで」

緑「来た…ですって?」

黄「う…うん、まあ…」

妹「大丈夫でしたか?怪我はありませんか!?」

赤「酷いこととかされてないよな!?なっ!?」

黄「ちょっ…心配しすぎだよぉ、みんなぁ」

緑「しかし、青があんなことになった以上、警戒するのは必然です」

青「……」コクコク

黄「そ、それはそうかもしれないけど…」

黄「でもお嬢様ちゃん、別に怖いこととかしてこなかったよ?」

黄「それどころか、すーっごく楽しかった!」

妹「ほ、本当に…?」

黄「うん!」

赤「…でもどうしてそんなことしたんだ?別にお嬢様と仲いいわけでもないんだろ、あんた」

黄「…あー、えーっとそれは…」チラッ

妹「…?」

——————————

妹「…万が一、相手が武力でかかってくるならば…」

妹「私は、武力で応戦する考えです」

妹「…もちろん、できることなら話し合いたいものですが…」

妹「とにかく私は、大切なものを守るためならいつだって手段を択ばないし、命も惜しまないつもりです」

妹「…身勝手な主でごめんなさい…それでも、ついてきていただけますか…?」

赤「もちろん!」

黄「当然!」

妹「…ふふっ、二人とも…ありがとうございます!」

赤「…あとは…お嬢様に、その考えを叩きつけてやるだけだな」

黄「そうだね…頑張ってね、妹ちゃん!」

妹「…はいっ!」

——————————

黄(…なーんて言っちゃった手前、妹ちゃんの前で下手に意見を変えるのもはばかられるんだよねえ…)

黄(…でもまあ、妹ちゃんに内緒にする必要もないか…)

黄「…実は私、やっぱり…お嬢様ちゃんたちと戦うのは、嫌だな、って…」

黄「それで、その気持ちを伝えたくて…」

妹「どうしてです?彼女は私達の敵ですよ」

黄「…それはわかってる、つもり…」

黄「でも…それでもやっぱり…争いなんかしても、意味ないんじゃないかな、って…」

妹「黄、それは甘い考えです…私もできればそうしたかったですが」

妹「…既に青や緑、お兄ちゃんを…お嬢様ちゃんによるものではないとはいえ、組織の人間の手で危険にさらされているんです」

妹「それなのに、そんな甘い考えで反撃し、全てを失ったらどうするんです!?」

黄「そんなの嫌だよ!みんながいなくなるのなんて嫌!」

妹「だったら…!」

黄「だからこそ…これ以上争わないようにしたいって思ったんだよ!」

黄「戦わなければ…全てを失うなんてことはないはずでしょ!?」

黄「こう思うことって、普通じゃないの?たとえ甘い考えでも、理想論だとしてもっ!」

妹「…理想は叶わないから理想なんです」

妹「相手が普通の人間一人ならいざ知らず、『組織』というくらいですから当然…組織力があるでしょう」

妹「私達全員の力を合わせてもせいぜい六人…こんな少数の意見を聞き入れてもらえるとお思いですか」

黄「組織力はそのまま武力につながるはずだよ…そんな理屈が通るなら、戦ったって勝てっこないじゃない」

妹「だからといって諦めるのですか!?」

黄「諦めてるのはそっちでしょ!?」

妹「私は諦めてなど…!」

黄「『心』が何のためにあるのか考えてよ!」

妹「…っ!?」

黄「…妹ちゃんが私達に心をくれたのは何のため?」

妹「……」

赤「……」

青「……」

緑「……」

妹「…それは…」

黄「…怒り、憎しみ、悲しみ、妬み…そういう感情で、戦うため?」

黄「…喜び、楽しみ、嬉しさ、快さ…そういう感情で、分かり合うため?」

妹「……」

黄「戦うだけが、全てじゃないと思う…」

妹「…だけど…それでどうにかなるとは、到底…」

黄「それはどっちでも同じだよ」

黄「だからといって、諦めるわけじゃない」

黄「私は…より平和的に解決したいだけ」

黄「…可能性は低ければ低いほど」

黄「理想は、高ければ高いほど…やり遂げたくなってくるものじゃない?」

緑「…私は黄の意見に賛成です、マスター」

赤「あたしもだ…なかなかいいこと言うじゃねえか、黄」

青「……」コクン

妹「みんな…」

黄「…結局戦うことになっちゃったら…その時は私も、説得は諦めて…自分にできることをするよ」

妹「……」

妹「…わかりました、その案で行きましょう」

妹「黄…お嬢様ちゃんの説得、頼んでもよろしいでしょうか」

黄「もちろん!」

黄(…まあ、説得って言っても…ほとんど遊んでただけだけど)

——————————

6月15日 月曜日

戦うだけが全てではない…心は、他人と分かり合うためにある————。

そんな当たり前のことを、私はいつの間にか、すっかり忘れてしまっていたようだ。

あまり過保護にならなくても、彼女たちはちゃんと自立している。

下手すると、人間よりも人間らしい。

機械の成長を通して、私も成長していける。機械の発明は、こういうところが面白い。

だからこそ、絶対に…組織の、お嬢様ちゃんの好きにはさせない。

相手は人間。今の私なら、分かり合えない道理はない。

—————とある屋敷—————

お嬢様「……」

お嬢様「…何よ、知った風な口ばかり聞いて…!」

お嬢様(昼間、妹と睨み合った後にも…こんな気持ちに…)

お嬢様(この気持ちはいったい何なの?苛立ち?それとも…もっと別の何かなの!?)

お嬢様「わかりません…全然わかりませんわ!」

お嬢様「……」

お嬢様「そりゃあ私だって…できることなら争いなんてしたくはない…」

お嬢様「でも…でも今更、引けるわけないじゃありませんの…!」

お嬢様「もう私は…今まで幾度も…数々の発明を破壊し、数々の発明者を絶望させてきたのですわ…」

お嬢様「それを今更…無かったことになんてできない…」

お嬢様「使命を、私の罪を…捨てるわけにはいかない…!」

お嬢様「…ふふ、でも…構わないですわ」

お嬢様「明日も彼女と遊ぶ約束を取り付けたのは…彼女を確実に破壊するためですもの…」

お嬢様「…あんな世迷言を吐くような機械…これ以上存在させていいはずがない」

お嬢様「何より…私の使命にとって邪魔ですもの…」

お嬢様「機械と人間の友情なんて…ありえていいはずがないんですわ…!」

お嬢様「私の覚悟をブレさせる…この気持ちごと、必ず…」

お嬢様「覚悟なさい、黄…!明日こそは…」

お嬢様「ふふ、ふふふっ…おーっほっほっほっほっ!!」

今日はこの辺で
シリアス入れないつもりで書いてても気付いたらシリアスになってる不思議
これはもう癖だよな…諦めよう…

それと海未ちゃん誕生日おめでとう
俺16日になってから気付いたんだよね…
これじゃあファン失格やで…

お休みなさい

突然ですが黄メイン編は今回で終了です
今までと比べてちょっと短かったけどご了承ください
別に黄が嫌いなわけじゃないよ

書きます

——————————

男「……」

「…おい」

男「……」

「…おい、起きやがれ」

男「…ん…あれ、ここは…?」

「分かりやすく言うなら、夢の中ってとこか」

男「…君は?」

「俺か?俺は…そうさな、これも分かりやすく言うなら…」

「お前自身だ」

男「……え?」

「お前、妹から話は聞いているだろう?記憶喪失を境に、性格がまるで変わった…って」

男「うん…この家に来たばかりのころに、そう聞かされたよ」

「…その、記憶がなくなる前の…今のお前とは、別の人格…」

「それが俺だ」

男「……」

男「そうか、君が…」

「だから、本来その体を使えるのは俺のほうなはずなんだが…」

「どういうわけか、記憶がなくなったときに俺の人格にも何かが起きて」

「その結果別人格が生まれたみたいだ」

「それが…」

男「…僕」

「ああ」

「…俺からすると見知らぬ他人のお前に我が物顔して体を使われているのは気に食わない」

「だから『返せ』と言いたいところだが…」

男「…たとえそう言われても、返す気はないよ」

男「僕は知っているんだ…学校の人たちにも、妹にも…君が散々迷惑かけたってこと」

「…ふん、ずっとお前の体ん中に、一緒に宿っていたからわかるよ」

「俺と違って無駄に正義感が強くて、無駄に誰にでも優しい腑抜け野郎」

「お前はそういうやつだってことくらいはな」

男「何とでも言え」

「…くくっ、まあいい…いずれにしろ、今のところ体を返せというつもりはない」

「好きに使ってくれて構わないさ、いまの『男』という存在はお前なんだからな」

男「…なら、どうして僕の前に…」

「お前、最近おかしいと思わないか?妹や、その周りのやつらの様子…」

男「…?…いや、別に…」

「…ふん、おめでたい野郎だ」

男「…悪かったな」

「いや、いいさ…どうせ気付いちゃいないだろうと思っていたしな」

「それに俺だって、気付いたのはつい最近だ」

「お前が気絶し、お前の意志に代わって俺の意志が発現した…あの時だ」

男「…生徒aとのいざこざ…?」

「その通り」

「…まあそれ以前にも、俺がお前の意志を飛び越えて、体を乗っ取ったことはあった」

「だが奇妙なことに、そういった場合は俺の意志に少しだけ、お前の残留思念がくっつくらしい…」

「だから俺はろくに面識もない赤とかいうやつのことをかばったり、生徒aってのに対して」

——————————

男『こないだ全校生徒に謝って回ったときも、お前には…どうしたっけな、ちゃんと謝ったっけ、つーか話しかけたっけ?』

——————————

「…なんて台詞が口をついて出たみたいだが…まあ、お前にこんなこと話してもわかんないわな」

男「…それで、さっきの話の続きは?」

「おっと…そうだったな、生徒aってやつとのいざこざがあって…その時だ、俺は聞いたんだよ」

「緑ってのと、青ってのを指して…」

——————————

生徒a『…もういいや…てめえもあいつら機械と一緒に、まとめてぶっ壊してやる!』ブォンッ

——————————

「…って、あいつが言ってたのをな」

男「…機械?どういうことだ…?」

「おそらく赤、青、黄、緑…この辺の仲良し四人組」

「こいつらはきっと機械仕掛けの人形なんだろうな」

「生徒aってのの発言を考慮すると、青と緑は特に可能性が高い…当然、証拠にはならんが」

男「…そんな…」

「それと…お前の記憶によれば、赤ってのは欠陥とかいうアブネーもんを持ってたはずだ」

「そのあたりについても、『機械ゆえの欠陥』って考えれば合点がいく」

「…それとも、あんな化け物が人間だとでも思っていたのか?」

男「…当然だろ!赤は…いや、赤だけじゃない…みんなには、心がちゃんと———!」

「そう、それだ…そいつが一番の問題なんだが…」

男「…え?」

「…おっと、もう時間がねえや…説明が長くなったから、こっからは巻きで話すぜ」

「しばらく俺の肉体はお前に預ける…その代わり、俺のやりたいことをお前にやってもらいたい」

男「…やりたいこと?」

「妹を含めた五人組は、きっとお前に何か隠してる」

「向こうからすれば、知られたら困ることなんだろうが…考えてもみろ」

「お前に対して何か後ろめたいことのあるような奴らを、お前は信用できるか?」

男「…いや…できたら、隠しごとはやめてもらいたい…」

「だろ?…だから、やつらが何を隠してるのか、きっちりお前が調べてくれ」

「…頼めるか?」

男「……」

男「…わかった」

—————翌日 放課後—————

お嬢様「…黄、今日も参りましょう」

黄「お嬢様ちゃん…うん、わかった!どこ行く?」

お嬢様「今日は私に任せていただけませんか?プランを考えてまいりましたの」

黄「本当!?ありがとー、じゃあお任せしちゃおっかなあー」

お嬢様「うふふ…ええ、お任せくださいな」

お嬢様「さあ、参りましょうか」

黄「うん!」

——————————

黄「〜♪」

お嬢様(…やはりというべきでしょうか、愚かしいですわね…)

お嬢様(疑いもせずまんまと私に全てを任せるとは)

お嬢様(この先の空き地には、私の仕掛けた罠があるといいますのに…)

お嬢様「さあ、着きましたわ」

黄「…ここ?ただの空き地じゃない…どうしてこんなところに?」

お嬢様「ふふ、理由はすぐにわかりますわ…私についてきてください」テクテク

黄「…?」テクテク

お嬢様(…そう…もう少し…あと少し…今ですわ!)ポチッ

黄「うわぁっ!?」コケッ

お嬢様「きゃあっ!?」ドテッ

お嬢様「いったたた…ああ、あの位置に仕込んでいた槍が…!」

黄「あいたた…ごめんお嬢様ちゃん、大丈夫?」

お嬢様「…え、ええ…」

お嬢様(彼女が絶妙なタイミングでこけたせいで不発とは…何という偶然…)

お嬢様(…これは作戦失敗ですわね、仕方ありませんわ、次の作戦で…!)

——————————

黄「お嬢様ちゃん、次はどこ?」

お嬢様「あの橋を渡りましょう」

黄「誰もいないし、何もないよ〜?」

お嬢様「そうとも限りませんわよ…?ふふふ…」ゴゴゴ

黄「…お嬢様ちゃん、なんだか今日様子が変じゃない?」

お嬢様「さあ、先に渡ってくださいな」

黄「え、私が先?いいけど…」テクテク

お嬢様(ふふ、そう…そうよ…!)

お嬢様(あなたがその橋の真ん中に差し掛かった瞬間、私の合図で機械が作動し…)

お嬢様(橋はたちまち崩壊、あなたも溺れてしまうでしょう)

お嬢様(そこに私が止めを刺す、そうすれば…!)

黄「お嬢様ちゃーん?もう渡り終わっちゃったけどー?」

お嬢様「…なっ!?じ、じゃあもう一回こっちに渡ってきてくださいまし!」

黄「ええー?面白くなーい…」

お嬢様「いいから!」

黄「やだー…」

お嬢様「…むう…」

お嬢様(…仕方ありませんわ、最後の作戦にすべてを懸けましょう…)

——————————

お嬢様(…しかし、最後の作戦には若干の不安要素が…)

お嬢様(その辺りの確認をまずしないといけませんわね)

お嬢様「…黄、少しよろしいかしら?」

黄「…んー?」

お嬢様「あなた、電気は苦手よね?欠陥が発動するきっかけになりうるわけだから…」

黄「そうだねー、バチバチして痛いから好きじゃないなあ…」

黄「まあ、ボディは頑丈だから…そう簡単に傷ついたりするわけじゃないけど」

お嬢様「…ふふ、そうですか…ご協力感謝いたしますわ」

黄「…へ?」

お嬢様「ふんっ!」バチバチバチバチ

黄「あ…っが…っ!?っあ、あぁあ…!!?」ビリビリビリッ

お嬢様「…どお?強力でしょう、私の改造スタンガン…」

黄「…どうして、こんな、こと…っ」

お嬢様「…どうしてって、決まっているでしょう?」

お嬢様「人に仇なす機械の始末…それこそが私たちに与えられた唯一無二の使命!」

お嬢様「それをただ、私は遂行しようとしているだけのこと」

お嬢様「…あなたの苦手な電撃を、このままずっと浴びせ続ければ…」

お嬢様「いくら頑丈なあなたのボディといえども、いずれは破壊できるはず…!」

黄「だめ、だよ…っ!けっ、かんがぁ…!」

お嬢様「…わかっていますわ、それも計算のうちです」

黄「…!?」

お嬢様「周囲に火花を噴いて危険ではありますが、機械がショートすれば通常通りの活動は行えないはず…」

お嬢様「満足に動けないあなたに…とどめを刺すのが目的です」

黄「…っ…だめ、そんな…!」

お嬢様「…命乞いですか?無駄ですわよ、見苦しい…!」

黄「…ああ、もうだめ…にげ、て…お嬢様、ちゃん…」

黄「わたし、あなたを、きずつけたく、な…!」

お嬢様「…!?」

黄「…あっ、ああ…ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!???」

お嬢様「…くっ!」バッ

お嬢様(…情報通りですわね、大量の火花を体中から噴き出している…)

お嬢様(だけど、千載一遇のチャンスですわ…!)ピポパ

お嬢様(この瞬間のために発明した、私の機械で…!)

ガシャン ガシャンガシャン

お嬢様「…転送完了」

お嬢様「行きなさい」

お嬢様「紫、藍、橙…!」

紫「……」

藍「……」

橙「……」

黄「ぐっ、うぅう…!うあああああああああああああああああああああ!!!!!」

お嬢様「さあ、私の試作品の…最初の獲物があなたですわ…!」

お嬢様「さあさあさあ…!聞かせて、あなたの…悲鳴を…っ!!」

妹「…そこまでです」

お嬢様「…!?…妹…!」

妹「すみませんが、尾けさせてもらいました」

妹「放課後、二人が学校を出てからずっと…四人でね」

緑「…あなたが槍の罠を使ったときは肝を冷やしました…」

赤「それより黄!今がチャンスだ、欠陥を抑え込め!」

黄「…で、でも…どうすれば…!」

赤「信じるんだ、お前の気持ちを!」

赤「誰かを傷つけたくないって気持ち、優しいお前にならあるだろ!?」

赤「その気持ちを…信じろ!」

黄「そんなこと、いったって…!ぐぅ…っ!」

黄(…わたしは…)

——————————

黄『戦うだけが、全てじゃないと思う…』

——————————

黄『わたし、あなたを、きずつけたく、な…!』

——————————

黄『そんなの嫌だよ!みんながいなくなるのなんて嫌!』

妹『だったら…!』

黄『だからこそ…これ以上争わないようにしたいって思ったんだよ!』

黄『戦わなければ…全てを失うなんてことはないはずでしょ!?』

黄『こう思うことって、普通じゃないの?たとえ甘い考えでも、理想論だとしてもっ!』

——————————

黄(…そうだ、信じなきゃ…貫き通さなきゃ)

黄(一度ああ言ったからには…甘くても、弱くても、ドジでも…)

黄(最後まで、誰も傷つかないように、頑張らなきゃ…!!)

黄「うあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

お嬢様「…何…?」

緑「…火花の勢いが、衰えていく…?」

青「ということは…」

黄「…っ、はぁ、はぁ…!!」

赤「やった!やったじゃねえか、黄!欠陥、克服したんだな!?」

黄「…はぁ、はぁ…うん!」

お嬢様「…そんな、馬鹿な!」

妹「…お嬢様ちゃん、本当は戦いたくなどなかったのですが…」

妹「黄の想いを踏みにじった罪は、償ってもらいますよ…?」

お嬢様「…ふざけないでくださいな、私はするべきことをしようとしただけよ…」

お嬢様「邪魔するのなら、あなた方も…!」

妹「敵うとでも思っているんですか?私の機械を真似たような、そんな粗悪品ごときで…」

お嬢様「…粗悪品、ですって…?」

黄「…二人ともやめて!」

妹「…!」

お嬢様「……」

黄「…私にはわかるよ…本当は、戦う気なんてないんでしょう?」

お嬢様「……」

黄「本当は、機械を壊すのなんて嫌なんでしょう?」

お嬢様「…めて」

黄「本当は…私達、分かり合えるはずでしょう!?」

お嬢様「やめてよっ!」

お嬢様「あなたに…あなたにいったい何がわかるというんですの!?」

お嬢様「昨日からずっと私の気持ちをかき乱して…いったいどうしたいんですの…!」

お嬢様「私には!組織の使命を全うするしか道がないの!!それなのに、どうして邪魔ばかり…!」

お嬢様「…いえ、ただ邪魔するだけならいいわ…だけど、どうして?私に…手を伸ばしてくるのは」

お嬢様「いったい…どうしてなの…!」

お嬢様「おかげで、私は…!」

黄「…だって、心からやりたいことをやってるとき」

黄「そのことに、何も疑問を持ってないとき」

黄「…そういうとき、あんな乾いた笑いは出てこないよ?」

——————————

お嬢様『…ふふっ、あははははは!』

——————————

黄「…あの時言ったよね、本心から笑ってないって」

黄「私、ときどき考えることあるもん…どうして、戦わなくちゃいけないのか」

黄「そのことについて本気で考えてる時は…本心から笑えるほどの元気なんて、とてもじゃないけど出てこない」

黄「お嬢様ちゃんに…その私の姿、重ねちゃって…」

黄「だから、私…」

お嬢様「…それでも…私はあなたを傷つけた」

お嬢様「それなのに…そんな呑気なことを言っていてよろしいのですか」

黄「…うん、私は…お嬢様ちゃんを傷つけたくなかっただけだから」

お嬢様「……」

黄「それに、人間よりロボットのほうが強いなら…守ってあげたいし」

お嬢様「…そうやって簡単に人を信じると…いつか必ず裏切られますわよ」

妹「…!」

黄「それは…その時は、その時だよ」

黄「それに、裏切られるのを怖がってたら、信じることもできないしね」

お嬢様「……」

お嬢様「…もういいですわ、今回は私の負けよ」

お嬢様「…でも…次こそは、この失態を拭ってみせますわ…」ピポパ

黄「あれっ、消えちゃった!?」

緑「…ずいぶん高等な技術力ですね…」

妹「…黄、怪我はないですか?」

黄「うん、でも…」

黄「…結局、説得は成功しなかったし、みんなにも迷惑かけちゃったね…ごめん」

妹「いいえ、そんなことはありません」

赤「そうだよ、欠陥だって克服したじゃねえか」

青「…正直羨ましい」

緑「お嬢様さんも何か思うところがあったようですし、決して無意味ではなかったかと」

黄「みんな…」

黄「…そうだね…ありがとう」

妹「しかし、よかったのですか?あそこでお嬢様を許してしまって…」

黄「うん!別に私、全然怒ってないもの!」

緑「…心底お人好しですね、あなたは…」

黄「えー、そっかなあ?普通だと思うけどなぁー」

赤「普通じゃねえよ、どう考えても…」

青「でも、そこが黄のいいところ…」

妹「…ですね!さあ、今日のところは帰りましょう!」

—————とある屋敷—————

お嬢様「……」

お嬢様「もう…嫌ですわ、何もかも…」

お嬢様「戦おうとすれば妹たちに諭されて…」

お嬢様「かといって彼女らと仲良くしようとすれば…考えるまでもないわ、組織からの重圧がかけられるでしょう…」

お嬢様「…それなら私は…どうすればいいの…」

お嬢様「…ねえ!教えてよっ!紫、藍、橙!」ガンッ

紫「……」

藍「……」

橙「……」

お嬢様「…執事っ!私は…どうすればいいの!!」

お嬢様「うぅ…うぅうううううううううううううう…!!!」

—————夜 妹の家—————

赤「いっただっきまーす!」

青「…いただきます」

黄「いただきま〜す♪」

妹「…いただきます…って、あれ?」

妹「お兄ちゃんと緑はどうしたんですか?」

赤「んー?ちゃんとさっき黄と呼びに行ったんだけどな」

黄「まだ降りてこないみたいだねえ」

青「…そのうち来る」

妹「ならいいんですけど…」

黄「んっ!?青ちゃん、これおいしい!ちょっともらってもいい?」

青「…だめ」

妹「……」

—————緑の部屋—————

緑「…ふむ、これはチューバというのか…こっちはユーフォニアム…」

緑「……」

緑「…どれも値段が高すぎる…どうしたものか…」

コンコン

緑「…?…はい」

ガチャッ

男「…緑」

緑「男様…どうかしましたか」

男「ちょっと…聞きたいことがあるんだけどさ」

緑「…?」

緑「…隠しごと?私たちが…ですか?」

男「うん…僕にだけ、何か秘密にしていることでもあるんじゃないかって」

緑「……」

男「…あるんだね」

緑「…いえ、ございません」

男「…!」

緑「私達は使用人のようなものですのに、男様にだけ隠しごとをするなんて恐ろしくてとてもとても」

男(…なんかわざとらしいなあ…)

男「…じゃあ、……」

緑「…?」

男「…いや、なんでもない…さあ、ご飯食べよう」

緑「…はい」

男(…君は機械でできてるの?なんて聞いても変な反応されるだけに決まってるよ…)

緑(……)

——————————

妹「ふぅ、ごちそうさまでしたー」

緑「ごちそうさまでした…あの、マスター」

妹「はい、なんでしょう」

緑「…このあと少々お時間よろしいですか?二つほど、お話が…」

妹「…?」

——————————

妹「…それで、お話って?」

緑「ええ、実は…男様がかくかくしかじかで」

妹「私達が、隠しごとを…」

緑「…はい」

妹「どうして感づかれたのでしょう…」

妹「…とにかくこのままではまずいです、あなたたちの身にかかわります」

妹「何か対策を練らなくては…」

緑「…お言葉ですがマスター、素直に話してみるというのは…?」

妹「…!」

——————————

『——…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…』

『…仕方なかったんですよ…あなたが、いけないんです…』

『私の、大切なもの…』

『壊しちゃうから…!!』

『…ねえ、どうしてあんなことしたんですか…』

『答えて…答えてよぉっ!!!』

——————————

妹「…だめです、それだけは…絶対に、いけません…」

緑「…そう、ですか…わかりました」

妹「……」

妹「…それより、もうひとつのお話って?」

緑「…あー、えーっと…こっちは大変くだらない私事なのですが…」

妹「いいから、遠慮せずに言ってください」

緑「…その、お願いがあるんです」

緑「私に…機械で、楽器を作っていただけないでしょうか?」

妹「…機械で?」

緑「…はい」

妹「……」

緑「……」

妹「…機械で、ですか」

緑「…機械で、です」

——————————

6月16日 火曜日

黄が欠陥を克服することができて良かった。

お嬢様ちゃんへの説得は成功しなかったけど、それでも少しは心に響いたみたい。

私より、黄のほうがよっぽど人間の事を…お嬢様ちゃんの事を、良く分かっているんじゃないかって気がした。

私も負けてはいられないなぁ。人間代表として!

…ところで、緑から変な依頼をされた。機械でトランペットを作ってほしいそうだ。

普通に楽器を買うお金はあるよ、と言ったら、

マスターに迷惑はかけられないし、そもそもどれが一番良い楽器なのか見立てる自信がないとのこと。

いつの間に音楽になんてハマったのかなあ?…なんだか、私のおじいちゃんみたい。

今日はこの辺で
すっげえ半端な引きだけど黄メイン編は終了
次からは緑メイン編です お嬢様は次からしばらく話の本筋には関わらない予定です
…あくまで予定ですけど

お休みなさい

—————とある屋敷—————

執事「…はい、すみませんが…もう少し、お待ちいただけないでしょうか…?」

執事「…っ!…そっ、それだけは…どうか、それだけは!」

執事「お嬢様にとっては…ここだけが、自分を受け入れてくれる場所なのです…」

執事「私だけが、組織だけが…!彼女の、最後の…!」

執事「……」

執事「…はい、はい…お任せください、私が誠心誠意彼女をサポートし」

執事「必ずや、成果を挙げさせられるよう努めていきます故、どうかご心配なく…」

執事「はい、はい…失礼いたします」ピッ

執事「……」チラッ

お嬢様「……」

執事(…ひと月ほど前のあの日以来、彼女は…————)

執事(———…我が主ことお嬢様は…ずっとあんな調子だ)

執事(殆ど一日中座り込んでは、虚ろな目と虚ろな態度で何か考え事をしている)

執事(事情を聞こうにも、まともに取り合ってはくださらない…)

執事(一ヶ月の謹慎処分と聞かされていた私だが、実際は一週間も経たずに彼女からお呼び出しを食らった)

執事(それで私がいざ来てみればこの有様…正直、目を疑ったが…)

執事(———…私がついていなかった間、いったい何があったというのだ…!)

お嬢様「……」

執事「…お嬢様、先程の電話は組織上層部からのものです」

執事「早く成果を挙げねば、役立たず扱いされ、処罰を受けることになってしまいますよ…?」

執事「…それでも、いいのですか…?」

お嬢様「……」

執事「……」

執事(…私は、どうすればいい…お嬢様の居場所は、ここしかないというのに…)

執事(その唯一の居場所を失いでもしたら、お嬢様は…!)

執事「…くっ…!」

執事(私がついていなかったばかりに、こんな…!)

—————夜 妹の家—————

赤「いただきまーす」

緑「ごちそうさまでした」

黄「早っ!?」

妹「まだみんな食べ始めてもいないのに…」

青「…そんなに急いでどうするの?」

緑「決まっているでしょう、楽器の練習です!」

赤「こんな時間にか?近所迷惑だろ」

緑「大丈夫です、マスター作のトランペットには音量調節機能が付いていますから」

妹「つけなきゃよかったかな…」ボソッ

緑「それでは、お先に失礼します!」ビシッ

黄「あーあ、行っちゃった」

妹「せめてちゃんと歯磨きしてから吹いてくださいねー?」

赤「…聞こえたかなあ?」

黄「どうだろ…」

妹「もう、緑ったら…」

妹「お兄ちゃんも、何とか言ってやってください」

男「……」

妹「…お兄ちゃん?」

男「…えっ?あ、ああ…ごめん、何?」

妹「…どうかしたんですか?ぼーっとして…」

男「え、う、ううん…いや、なんでもない…」

青「……」

黄「…?」

——————————

男「……」

男(…僕のもうひとつの人格とかいうのが夢に出てきてから、既に一ヶ月)

男(みんながしてる『隠し事』とやらの正体は…未だに掴めていない)

男(…というより、そのことについて探ろうかどうか…僕がずっと迷い続けているだけなんだけれど…)

男「……」

男(みんなが本当に『隠し事』をしているんだとしたら…今の関係が崩れてしまうような気がして)

男(もう…戻れないような気がして、踏み出せずにいる…)

男「…僕は…」


〜♪

男「……?」

——————————

緑「……」プープープーッ

男「…緑」

緑「わっ、男様…どうかなさいましたか?」

男「いや、特に用は無いんだけど…」

男「…緑、最近ずいぶん熱心だなあ、って…」

緑「あはは、すみません…聞き苦しい音で」

男「ううん、そんなことない…とっても上手だったよ」

緑「…そう、でしょうか?」

男「うん…とっても」

男「…ねえ、どうして緑は、急にトランペットなんて吹き始めたの?」

緑「ああ…実は、一ヶ月ほど前に所用で、学校を歩いていた際に…」

——————————

〜♪

緑『…?…この音…前から少し気になってはいましたが、一体どこから…?』

<ワン、ツー、スリー、フォー!

緑『…もしや、音楽室から?』

緑『……』

緑『…これは…!』

——————————

緑「…と、こういう経緯でして」

男「それって、音楽室前で吹奏楽部の音を聞いて、その影響で…ってこと?」

緑「はい、すごく…感動した、といいますか…」

男「それなら、部活入っちゃえば?」

緑「…一度はそうすることも考えましたが…やはり、素人の私が途中から入っても」

緑「部の足を引っ張るだけかと思いまして」

緑「それにこの時期は、相当忙しいはずでしょうから」

男「…うーん、そっかあ…まあ、ああ見えて内情ドロドロしてるらしいしね…」

緑「ドロドロ、とは?」

男「あー…なんていうか、人間関係が結構複雑で、割と陰鬱な感じだったり…」

緑「…そうなんですか?あんなに素晴らしい音を奏でられるのに…」

男「…だからこそ、なのかもね」

緑「え?」

男「ああいうのは、人が多ければ多いほど、質が高ければ高いほど、そうなっていくもんなんだってさ…前に友達が言ってたよ」

緑「…むう、そうでしょうか…」

男「…ところで、吹奏楽といえば、うちのおじいちゃんがコンクールでどうの…って、妹に聞いたことあるな」

緑「ああ、私もです!というか、自力でいろいろ調べたりもしましたし」

男「へえ、そこまでして…」

緑「もちろん!なにしろ、彼は吹奏楽界だと結構有名な部類に入るようなすごい奏者ですから!」

男「…そうなの?妹はそんなこと一言も言ってなかった…というか、」

男「…そもそも大して関心なさげだったかな…物置のトロフィーだって、家宝でなかったら捨ててそうな勢いだったし」

緑「…まあ、マスターにとっては…付き合いの長い家族は男様しかいらっしゃらないですからね」

男「…確かに、両親は小さいころ、航空事故で亡くなった、って…」

男「それで、その時は泣きじゃくったって言ってたな」

男「…いや、待てよ?でも妹はさ、両親の事大っ嫌いだとも言ってなかったっけ…?」

緑「それは確か、小さいころは両親が亡くなった理由がわからなかったせいで泣きじゃくって男様に甘えていたんだとか」

緑「…それに、その時はまだ両親にも懐いていたらしいですし」

緑「…で、大きくなってから記憶喪失前の男様に理由を聞いたら…」

男「…死因がしょうもなくて両親の存在ごとくだらないと笑い飛ばすようになった、ってわけか…」

緑「…はい、マスターにそう聞いたことがあります」

男「なんだ、言ってくれたらよかったのに…」

緑「気恥ずかしい部分があったんじゃないですかね?詳しいことはわかりませんが…」

男「…でも、それって…妹にとっては、結構かわいそうなことなのかも」

緑「…?」

男「僕は記憶がないからともかく、妹は案外…もっと両親に甘えたかったのかもしれないなって」

緑「…そうですね」

男「もしかしたら、妹はその寂しさを…機械を作ったり、緑たちを迎え入れたりすることで」

男「紛らわせてるんじゃないかな…」

緑「……」

男「…っていうのは、考えすぎか」

緑「…どうでしょうか…すみませんが、私には生憎わかりかねます」

男「…そうだよね…」

緑「……」

緑「…よければひとつ、お話をしてさしあげましょうか」

男「?」

緑「少し話を戻しますが、マスターと男様、お二人のお爺様についてです」

緑「先程申し上げました通り、彼はその手の人々からすれば相当に有名な人物」

緑「…そしてこれも先程申し上げましたが、私は彼についていくつか調べ上げました」

緑「その中で印象に残ったエピソードがあるんです」

緑「それは…」

男「……」

緑「…ある夏の…高校の吹奏楽コンクール」

緑「彼は家族の事について悩みに悩んでいて、ひどく荒れていた時期があったようです」

緑「…が、それを何とか乗り越えて…数々の因縁にも決着をつけ」

緑「すっきりとした気持ちで楽器を構え、全力で舞台へ臨みました」

男「…それで、結果は?」

緑「……」フルフル

男「…どうして?」

緑「練習を怠っていたわけでも、演奏に酷いミスがあったわけでもなかった」

緑「その証拠に、目指していた賞までは…あと、ほんのわずか一点足りないだけだった」

緑「…それはなぜか?…彼はこう語りました」

緑「音楽に対する意識が、求められていたものと違っていたのではないか…と」

男「……」

緑「彼があの場で賞を獲ることは、彼の夢でした」

緑「…だけど、その夢への意識が強すぎた」

緑「音楽は本来、誰かと競いあうためのものじゃない…」

緑「あの時は…夢に必死になり過ぎて、誰かを『楽しませる』ってことを忘れていた」

緑「…彼は、そう語ったんです」

緑「もっとも、一年後のコンクールではその意識を持ち続けていたから…求めていた夢を叶えられた」

緑「そして、その時のトロフィーが…物置に置いてあるあのトロフィーなんです」

男「へえ…じゃああれ、結構なレアものなのかも…」

男「…でもさ、さっきの話と今の話、どういう関係が?」

緑「ああ、えっとですね…つまり…」

男「……」

緑「……」

男「…それっぽいこと言いたかっただけ?」

緑「そうなりますね、ごめんなさい…」

男「いや…でも、おじいちゃんも家族の事でいろいろ悩んでた、ってのは…なんか、親近感覚えなくもないかな」

緑「…ん?ということはもしかして、男様も何か本格的にお悩みごとを…?」

男「うっ…べっ、別に…」

緑「……」

男「…………」

緑「…マスターがあなたに…『隠し事』をしている、という件についてですか」

男「……」

男「…うん」

男「まあ、妹だけじゃないけど…」

緑「……」

緑「お話していただけませんか?どうしてそういう考えを持つにいたったのか…」

男「……」

——————————

男「…というわけで」

緑「なるほど…もう一人の自分、ですか…」

男「うん…」

緑「それで、そんな得体の知れないものに騙されて…私達を疑うのですか?あなたは」

男「!」

緑「…なんて、冗談ですよ」

緑「お気持ちはわかります、そりゃあそんなことを言われたら不安にもなるでしょうから」

男「からかうなよー…」

緑「ふふ、ごめんなさい」

男(…でも…緑の言う通りかもしれない)

男(あんな誰とも知れないようなやつ…妹や緑よりよっぽど信じがたいはずだろ…!)

緑「…とりあえず、もう一度対話を試みるというのはいかがでしょうか?」

男「え?でも…あの時以来一度もあいつが出てきたことないんだよ?」

男「こっちから対話しようにも、どうしたらいいか…」

緑「むう、そうですか…それなら、マスターに協力を仰ぎましょうか」

男「…もしかして機械でどうにかしようってこと?別にいいよ、そこまでしなくても」

緑「…自分が頼りにされてないって知ったら、マスターが泣いてしまいますよ?」

男「いちいち嫌な言い方しないでよ、緑!」

緑「あら、もうこんな時間です」チラッ

男「…しかも無視…」

緑「ひとまず今日のところは、もう眠りに就いたほうがよろしいかと」

男「…はいはい」

緑「お休みなさい、男様」

男「お休み、緑」

緑「……」

—————妹の部屋—————

妹「…そうですか、そんなことが…」

緑「夢の中でもう一人の自分と…」

緑「…この、『もう一人の自分』、というのが…」

妹「…記憶をなくす前のお兄ちゃん」

妹「私の…敵です」

緑「…どうなさるおつもりなんですか、マスターは」

妹「…黄の言い分に従って、組織と同じ対処をするつもりです」

緑「ということは…まずは説得し、考えを改めさせることから始めよう、と…」

妹「はい」

緑「…今までは一時的な発現に留まっていたから見逃していた、とのことでしたが」

緑「もしかすると、これからはそうでなくなる可能性が出てくる…」

緑「表に出ている男様と、いつ意識が成り代わり、肉体の主導権を握ることになってもおかしくはない…」

妹「…ええ」

緑「…明日、赤達にも呼びかけておきます」

緑「用心するように、と…」

妹「いいでしょう、よろしくお願いしますね」

—————深夜 男の部屋—————

男「……」

男「ここは…」

男(前と、同じ…)

「…おい」

男「…!…君は…」

「俺が以前ここにお前を連れてきてから…もう何日経ってるかわかるか?」

男「いや、それより僕、君に用が…」

「うるせえ、知ったことか!俺はひと月待ったんだぞ!?」

「わざわざひと月も、お前に肉体を貸してやったんだ!そのほうがお互い都合がいいと思ったからな!」

「それなのになんだあの体たらくは!」

男「ま、待ってよ!話を聞いて!」

男「悪いけど、僕やっぱり————」

「…夢にしか出てこないような胡散臭い君なんかの事、これ以上信頼できないよ…ってか?」

男「…!」

「間接的にだが伝えたはずだ、俺とお前の記憶は共有可能…お互い何を言いたいかくらい、分かろうとすればすぐ分かる」

「…お前だって分かってるんだろ?俺が何を言いたいか、何をやりたいか!!」

男「…僕の体を、乗っ取る…!?」

「その通り…お前はもう用済みだ、想像以上に使えなかったからな!」

「お前の体を乗っ取ったら…どうしようかな、何しようかな?」

「機械がどうとかっていちいち調べるのも面倒だし、手っ取り早くぶっ壊しちゃおうかな?」

男「…!!!」

「———あの時みたいに…」ボソッ

男「やめろ…っ、やめろおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

「ふん、何言ってんだ?…もともと俺の体だっつーの!!」

「…まあいい…今なら条件がそろってる、悪いが…」


男「———俺の体、返してもらうぜ…?」


「…!」

「…やめ、ろ…!」

「……」


「」

——————————

7月16日 木曜日

今まで眠っていたはずの、「あの」お兄ちゃんが目を覚まし始めたようだ。

いつどこで覚醒しきってもおかしくないが、きっと今すぐ、ということはないはず…。

…私はもう、あの悲劇を繰り返したくはない。

機械を作り、心を生むことが、悪いことだとは思えない…。

だから…———。



…お兄ちゃん。

私は、信じてるからね。

今日はここまで
こんな感じで、今回から緑メイン編です
正直緑は妹と微妙にキャラ被りしてるから、差別化を図れるよう頑張りたいと思います
…でもあんまり落としどころ決めてなかったりするんだよね、大丈夫かしら…

お休みなさい

—————深夜—————

男「…久しぶりだなあ…表に出て、こうして自由に動けるなんてよ…!」

男「くっははは…快適な気分だぜ…!」

男「…本来ならもっと大はしゃぎしときたい気分なんだが…まあ、やつらを起こしちゃ意味ないしな」

男「静かに、慎重に…」


—————物置—————

男「…ありゃ?意外だな…こんな目につくところに置いてあるなんて」

男「妹にとっちゃ忌まわしい道具のはずだ…もっと奥にしまってあるのかと思ったが…」

男「まあ、どうでもいいか…機械を叩き潰すには、このくらいでかく出ねえとな」ガシッ

男「あの時と同じように、このハンマーで…今度こそ、ぶっ壊してやる」ブンブン

男「さあてと…どの部屋から攻めようか…」

男「……」

男「俺が肉体を奪われてからしばらく経つが…その間にずいぶん好き勝手に使われてたらしいな」

男「もう一人の俺や、あの機械どもに…」

男「…ったく、おかげでどれがどいつの部屋だかさっぱりだ…」

男「まあいい、とりあえず…今目の前に見えるあの部屋から…!」ダッ

男「……」

男「…?」

男「…おかしい、どういうことだ?足が動かん…」

男「いや、それどころか…両手も、それ以外も、体中ほとんど全部…」

男「……まさか」

男「…てめえ、往生際がわりいぞ…!!」

「…君にだけは、言われたくない…!」

男「小癪な…体内から意識だけを働きかけさせ、俺の体の動きを封じようとは…!」

「説明お疲れ様…悪いけど、君の目的は果たさせないよ…」

「心だけになっても…みんなを、守らなくちゃ…!」

男「…この野郎…!本来なら、偽物になるのはてめえなんだぞ!?わかるか!」

男「てめえは本来、存在しちゃいけねえんだよ!」

男「大人しく…消えてなくなれ…!!」

「…存在しちゃいけない、か…」

男「…そうさ、その通りだ…目障りだから、消えろ…!」

「…でも、僕は…!」

男「消えろと…言っている…!」

「…っ…」

「……」

「」

男「…ふん、この期に及んでまだ邪魔してくるとは思わなかったが…さすがにこれ以上はねえはずだ」

男「さっさと目的を果たしに行くか…」

—————青の部屋—————

男「こいつの部屋か…」

男「…お休みのところ悪いが…消えてもらうぞ」

男「全ては妹の、幸せのために…」ブォンッ

青「……」

男「……」

青「……」

男「…死ね」ブンッ

青「……」

「」

「……」

「…青、目を覚ませ…」

青「……」

「…青…っ!」

青「……」ガシッ

男「…っ!…何…!?」

青「…あなた、誰?」

青「男じゃ、ない…」

男「…てめえ…」

青「男の姿を真似ているだけ…私たちは、あなたのことなど知らない」

青「あなたは何者?」

青「男の…偽物?」

男「…!!」

男「言わせておけば好き放題言いやがって…」

男「悪いが俺が本物の男だよ、お前らのよく知る男はもう…」

男「…死んだんだ」

青「面白くない冗談」

男「冗談じゃないさ、本当の事だよ」

青「…嘘」

青「私にはついさっき…彼の声が聞こえた」

青「彼はまだ…死んでなどいない」

男「ふん、ただの幻聴さ」

男「…さあ、大人しく…この俺に壊されな!」

青「……」

バタンッ

男「…!?」

妹「…!…」

妹「おにい、ちゃん…?」

男「妹…お前、どうしてここに…!」

青「…私が呼んだ…こっそりと信号を発する機能で、妹に緊急事態を知らせた」

男「ちっ、余計な真似を…」

妹「それより、どういうことですか?どうして青を…」

男「……」

妹「それに、そのハンマー…」

妹「…まさか」

赤「おい妹、緊急事態ってどういうことだ!?」

黄「青ちゃんがピンチって本当!?」

緑「青!怪我はないですか!?」

青「…!…みんな…」

男「くそ、こいつらまで呼びやがって…」

男「…全員集合ってわけかい」

妹「…あなた…まさか…」

妹「…いや、確認するまでもありませんね…その態度、口調…」

男「くくっ、そうだよ、この俺が…『記憶をなくす前の』『もうひとりの』男ってわけだ」

妹「……」

緑「…そうですか、彼が…」

赤「話には聞いていたが…まさか本当に、意識として残っていたとはな」

黄「それで、どうしてあなた…青ちゃんを狙うの?」

男「いや…ぶっちゃけお前ら4人のうちなら誰からでもいいんだがな」

男「どうせ全員…俺がぶっ壊すんだからさあ?くっ、あははははははは!!!」

青「…元の男からでは考えられない狂気を感じる…」

赤「そうだな…まるで別人だ…」

男「…さてと!せっかくみんな集まってくれたことだし…」

男「このまま大暴れして、全部ぶっ壊しちゃおうかな!!」

ブォン ブォン

緑「ちょっ、こんなところで…!」

青「表に連れ出そう…赤、黄!」ポイッ

赤「おっと!…これ、ライターか?」

黄「わっ、これスタンガン…」

妹「なるほど、欠陥を利用して…ということですか」

赤「さすが青!行くぜ、黄!」

黄「えー…これほんとは嫌なんだけどなあ…でも仕方ないかあ」

シュボッ バチバチバチッ

赤「ぬう…おりゃああああああ!!」ガッ

黄「やあああああああああ!!!!」バチバチ

男「うおっ!?やめろ、離しやがれっ!」

—————外—————

男「ぐあああっ!!」ドサッ

赤「いって…!」ドサッ

黄「ちょっと無茶しすぎたかも…!」ドサッ


緑「窓を破って外に出るとは…」

妹「私達も急ぎましょう」

青「……」コクン

——————————

黄「…ねえ、どうしてあなたは機械を憎むの?壊そうとするの?」

黄「お願い、教えてほしいな…!」

男「……」

ブォンッ

赤「う゛っ!?」ドカッ

黄「赤っ!」

男「…いちいちうるせえんだよ…!」

男「てめえら化け物なんかに、人と同じように振る舞う権利はねえ…!」

黄「なっ…!?」

赤「…何だと…?誰が化け物だ!!」

男「心のままに動いていいのは生物だけだ…」

男「所詮機械の分際で、心に従って動くな!」ブンッ

赤「ぐっ!」

緑「…はぁ、はぁ…あっ、赤!黄!」

妹「…お兄ちゃん…お願いですから、もうやめてください!」

妹「お兄ちゃんがこれ以上機械を壊すのも…」

妹「お兄ちゃんとこれ以上対立しあうのも…私はどっちも嫌なんです!」

妹「お願いです…話せば、きっと分かりますから!」

男「うるせえ!それにいくら妹の頼みでもな、そいつは聞けねえよ!」

男「説得なんざ聞く耳持たねえぞ、俺は!」

男「もう決めたんだよ…お前のためになら、俺はどんなことでもする!」

男「…しかしそこに、お前の意志は関係ない…!」

妹「…私のために、っていうなら…お願いだからもう、こんなことしないでよ…」

妹「昔の優しいお兄ちゃんに、戻ってよっ!!」

赤「…っ、うおおおおおおおおお!!」ブンッ

男「…何度も何度も、鬱陶しい奴め!」ドカッ

赤「ぐはっ!」ドサッ

青「…私も行く」

緑「しかし、あなたの欠陥は…!」

青「…動けないからって、見てるだけなんていうのは…もう嫌だから」

緑「…!」

青「何か冷たいもの、持ってきて」

緑「…わかりました」ダッ

青「……」

黄「…やっぱり、戦うしかないの?」

黄「あなたのその意志は、変えられない…?」

男「ああ、悪いがな!」

赤「ざけんな…勝ったつもりでいるんじゃねえぞ!」ブンッ

男「しつこいな…これでどうだ!」スッ

赤「…っ!?これは…この感覚は…!」

赤「お…っ、お前…!!」

黄「あ、赤…!?」

男「…死に晒せ…!」ブンッ

黄「…っ!」

ガンッ!

男「…っ、何…!?」

青「…お待たせ」グググッ

黄「青ちゃん…!」

黄「で、でも…フリーズで動けないのに…!」

青「…わかってる、だから…」

黄「?」

青「私を盾代わりにして戦って」

黄「え、それって…」

青「…見かけはこの際関係ない」

黄「…うーん…わ、わかった…」ガシッ

青「突撃—」

黄「セイヤー!」ズズズズ

黄(…フリーズしてるせいか、結構重い…)

男「…何だてめえ?ふざけてんじゃねえぞ…!」ブンッ

ガンッ

青「…痛くもかゆくもない」

男「何…っ!?」

黄「赤!今のうちに!」

赤「おりゃああああああ!!!」グルンッ

男「なっ…しまった…!」

男「…なんてな」

黄「!?」

赤「…!」スッ

赤「…お前…卑怯だぞ、それ…!」

男「ふん…お前の心が甘いのが悪い」

黄「な、何…?」

赤「…こいつ、あたしが攻撃しようとする瞬間だけ…」

赤「あたしらがよく知ってるほうの男の意識を、一部だけ出してきやがる…!」

青「…!」

黄「じゃあ、赤がさっきからときどき攻撃中断してたのは…!」

赤「ああ…そういうことだ…」

赤「下手に攻撃すれば、あたしらの知ってる男も傷つけかねない…!」

男「ふん、気にせず殴っちまえばいいだけの話なのに、何をそんなに遠慮することがあるんだよ」

男「機械のくせに人間より甘ったるい心を持ってやがるとは…おかしなこともあったもんだ」

妹「…みんな…ごめんなさい、私のせいで…」

緑「……」

緑「…マスター、私も戦います」

妹「…緑」

緑「私、少し考えがありまして…」

緑「…それに、マスターは何も悪くありません…責任を感じる必要などないはずです」

妹「……」

緑「マスターは隠れていてください!」ダッ

妹「あっ、緑…!」

妹「……」

妹(緑はああ言っていたけど…)


赤「…くそ、これじゃ手出しが…!」

バキッ!

青「…痛くないけど、動けない…」

ドカッ!

黄「お願い、もうやめて…!」

ベコッ!

緑「はあああああああああ!!」

グシャッ!


妹(…みんな、私のために戦ってる)

妹(…みんな、私のせいで傷ついてる)

妹(みんな、私のせい…)

妹(そうだ、あの時から、ずっと…)

妹(本当は、私のせいで…!)

——————————

妹『お兄ちゃんお兄ちゃん!見て見てー、今日は私こんなの作ったの!』

男『あはは、すごいなあー…俺には到底出来そうもないよ』

男『…俺はさ、お前みたいな妹を持って…幸せだ』

男『馬鹿親二人なんかより、お前のほうが…よっぽど大切さ』

妹『えへへ、ありがとー』

男『…だからさ、ひとつだけ約束してくれ』

男『どんな機械を作ってもいいけど…俺が危ないと思うものだけは』

男『絶対に作らないでくれよ』

妹『…?危ないものって、なあに?』

男『ん?そうだなあ…たとえば———』

——————————

妹『…なんですか、これ…?』

男『言ったはずだろ…俺が危ないと思うものだけは、作るんじゃないぞって』

妹『だからって何も…機械ごと壊すことないじゃないですか…』

男『こうでもしないと、お前にはわからないだろう』

妹『…ふざけないでくださいよ…心を作ることって、人類の歴史に残るようなすごい発明のはずでしょ…?』

男『そうだな…だが同時に、人類の歴史に残るような、危険な発明だ』

妹『扱いを間違えなければ、心が危険だなんてことはないはずです』

男『扱いを間違えたらどうするつもりだ?何か起こってからでは遅いんだぞ』

妹『仮定の話ひとつだけを考え続けていたら…キリがないでしょう!』

男『うるさいな…もういいだろう!すでに終わったことだ!』

妹『…!』

男『…諦めろ…これがお前のためであり、人類のためだ』

男『身の丈に合わない発明品がいったい何をもたらすか…誰にも予想はできない』

妹『……』

妹『…認めない』

妹『心を作ることの何が悪いのか…私にはわかりません』

妹『私は絶対に…認めない…!!』ガシッ

男『うわっ!い、妹…何するつもりだ!?』

妹『…私の発明品の命と心を奪った…あなたのハンマーで…』

妹『あの娘と…同じ気持ちを味わわせてあげます…!』

男『や、やめろ…妹…!』

妹『ごめんなさい…でも、大好きだったよ…』

妹『ずっと、信じてたよ…お兄ちゃん…』

男『…!』

妹『うっ…ぐすっ、ひっく…』

妹『うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!』

ガン…ッ!!

男『』

妹『はー…はー…』

妹『……』


妹『——…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…』

妹『…仕方なかったんですよ…あなたが、いけないんです…』

妹『私の、大切なもの…』

妹『壊しちゃうから…!!』

妹『…ねえ、どうしてあんなことしたんですか…』

妹『答えて…答えてよぉっ!!!』

——————————

妹「…全部…私がいけないのに」

妹「私が…他人のせいにしたからいけないのに」

妹「彼女たちに…罪なんてないのに」

妹「…私…私、は…」

妹「…うっ…ぐすっ、ひっく…えぐっ…」

妹「ごめんなさい…ごめん、なさい…ごめんなさいごめんなさい、ごめん…なさい…」

「…違う」

妹「…えっ?」

「妹のせいなんかじゃ…ない…!」

妹「えっ…おにい、ちゃん…?」

妹「うそ…ど、どこにいるんですか…!?」

赤「はああああああ!」

男「……」スッ

赤「…ぐっ!やっぱり手が出せねえ…!」バッ

男「馬鹿め!」ドカッ

赤「ぐあああっ!」ドサッ

黄「てやあああああ!!」

男「…いいのか?」スッ

黄「…!」

男「はあっ!!」バキッ

黄「きゃああっ!!」ドサッ

青「…動けない…緑、押して」

緑「……」

青「…緑?」

赤「…ちくしょう…あたしたちの知ってる男を…返しやがれえええええええ!!」

男「冗談じゃねえ!利用価値のない偽物ごときに、これ以上肉体を使わせる気はさらさら無い!」

男「それに…何度も言わせるな!あいつは死んだんだよ!」

黄「やめてよ…もう私、戦いたくない…!」

男「なら戦わなければいい!そしてお前らの愛する『男』とやらに殉じろ!」

男「そうすればもう…苦しい思いなどする必要はない…」

黄「…!!」

黄「うう…うううううう…!!」

赤「くそ…こんなところで、終わってたまるか…!」

男「さあ…死を受け入れろ…!」ブォンッ


緑「…勝手に殺すな!彼はまだ生きている!」

緑「貴様の中で…必死にもがいているはずだろう!」


男「…!?」

赤「緑!」

黄「緑ちゃん!」

男「なんだてめえは…?悪いが、お前らの知る男は事実上死んだも同然だ」

緑「…わざわざ事実上、などと前置きをするということは…」

緑「事実上死んでいないも同然、という捉え方をしてもよろしいんですよね?」

男「…何言ってやがんだ、てめえ…」

緑「わからなくても結構です…要は、彼が生きていることを証明できさえすればよいのですから」

緑「赤!攻撃を!」

赤「えっ?よ、よくわかんねえけどわかった!」ダッ

男「…おっと!」スッ

赤「くっ、やっぱりそれか…!」

緑「…よし、狙い通り…!」

男「何!?」

緑「彼はまだ生きている…あなたが男様の意識を一部利用していることが、その何よりの証拠!」

緑「男様!聞こえますか!?これから私が話すこと、よく聞いてください!」

男「…あ?」

黄「…緑、ちゃん…?」

緑「私達はあなたに『隠し事』をしていました!あなたの、いや…あなたたちの考え通りです!」

青「……」

赤「いったい、なんのつもりだ…?っていうか…ばらしていいのか、これ…!?」

緑「すべてはマスターの意志によるものでした!」

緑「私達は四人全員、マスターから口止めされていたがゆえ、今まで話せずにいたのですが…」

妹「…緑、あなた…!」

緑「事ここに及んでは、すべて話すしかないはずです、ですから…!」

緑「…マスター、お許しいただけますね?」

妹「!…」

妹「……はい」

緑「それでは、遠慮なく…」

緑「まずひとつに、赤、青、黄、緑…私達四人は全身余すところなくすべてが機械仕掛けの人形です」

緑「…人間ではありません」

男「…とうとう認めたな、狙い通りだったが…」

男「…まあ、わけのわからん茶番はそこまでにしな!俺が叩きのめして…」

緑「…あなたになど話しかけていません、黙っていただけませんか?」

男「…は?」

ガシッ

赤「…あいつが何したいのか、あたしにもよくわからんけど…とりあえず、邪魔立てはさせねえ」

黄「これ以上暴れたら…至近距離で火花バチバチだよ!」

男「…っ!このっ…!」

緑「そしてふたつめ…それをあなたにお話しなかった理由…というか、マスターが私たちに口止めされた理由ですが」

緑「もうひとりの男様…つまり、今私たちの目の前にいる彼を刺激したくなかったからです」

緑「マスターにとって機械と男様はどちらもかけがえのない大切な物…」

緑「そのどちらをも守ろうとしたかったから、彼女は…」

妹「……」

男「……」

緑「そして最後に、私達は数か月ほど前から…機械の破壊を使命とする『組織』と戦ってきました」

緑「直接対決はまだしたことがないですが…いずれ、あなたをも巻き込むことでしょう」

緑「その時にはぜひ…私たちに協力していただきたいと思っています」

緑「…さあ、私達の『隠し事』はこれで全部です」

緑「もう何も遠慮することはありません…あなたが、私達と一緒に…これからも過ごしていきたいと望むなら!」

緑「どうか…私の呼びかけに、お答えくださいっ!!」

「」

男「……」

「…」

男「…ふん、何も起きねえじゃねえか」

「……」

男「もうひとりの俺に呼びかけたつもりなんだろうが…」

男「さっきも言った通り、あいつはもうすでに死んで—————」

「…えたぞ」

「…と…えたぞ…」

「…ちゃんと、聞こえたぞ…緑…!!」

男「…なっ…!?口が勝手に…!!」

緑「…男様!」

男「いや、だが…お前には肉体の主導権がない…」

男「それを渡す方法も…俺は知らないぜ…」

男「意識だけが目覚めても、肉体がほぼ動かせないんじゃ意味ないなあ…!」

緑(…確かに、それがネックだ…ここからどうすればいいのかがわからない…)

緑(とはいえ、恐らく彼らは記憶の共有が可能なはず)

緑(そのことを考慮すると、男様自身が答えを導き出す可能性もある)

緑(その後私が手助けをすれば、あるいは…!)

「…君が肉体を動かせるようになる…つまり、主導権を握る状態を得るためには」

「どうやら、強い『怒り』が必要らしいな」

男「…貴様!」

「君自身短気で非常に荒っぽかった」

「だからこそ、妹に殴られたあの時…反動で僕が生まれたんだろうけど…」

男「くそ、そこまで勝手に共有しやがったか…!」

「『怒り』の感情に刺激され、闘争本能が強く反応した時」

「…その時に限り、君は肉体を取り戻せる…」

「君は僕の怒りに刺激され、表に出てしまった…」

男「ああ…そうだな」

男「助かったよ、安い挑発に乗ってくれてさ…っははは!」

「……」

男「また怒ったか?」

「…いや、そんなことはもうどうでもいいんだ」

「それより…隠し事なんてこれ以上何もない、全部わかった」

「僕…みんなの場所に、帰りたいから」

男「……」

妹「お兄ちゃん…」

「だから、さ…君には悪いけど…」

「…消えてくれ」

男「…お前がな」

緑「どうかな?」スッ

男「…あ?なんだそりゃ…ラッパか?」

緑「ラッパじゃなくて、トランペットです」

妹(一緒だよ)

緑「男様…下手くそですけど、最後まで…聞き届けて、くださいね」スゥ…

〜♪

参考音源
ttp://www.youtube.com/watch?v=TIVbAUBdooQ

妹(…なぜこの選曲?)

緑「…ふぅ、参考音源のようにうまくはいきませんでしたね…」

男「馬鹿だな、そんなことして何になる?」

緑「…音楽は人を楽しませるもの」

緑「喜ばせ、嬉しくさせ、笑顔にさせるもの」

緑「…わかりますか?あなたの『怒り』という負の感情に対抗するには」

緑「男様の『優しさ』という正の感情をぶつければいい」

緑「男様…今こそ、想いの強さを、心の強さを…示すときです」

「…うん」

「今…そっちに行くよ…みんな…!」

男「なっ…!?待て、馬鹿野郎…出てくるんじゃねええええええ…っ!!!」

男「あっ…ぐっ…!!」

男「……」


男「」

妹「…お兄ちゃんっ!」

男「……」

男「…ん、んん…っ!!」

赤「…お前…どっちだ?どっちの男だ…?」

男「……」

男「……みんな…ただいま」

妹「!」

男「ごめんね、いろいろ迷惑かけちゃって…」

妹「おっ…お兄ちゃんだ…お兄ちゃんだー!!」ガバッ

男「うわっ!?ちょっ、くっつかないで…っ!」

黄「はぁ…よかった…」ヘタッ

青「…一時はどうなることかと」

緑「……」

青「…?…緑?」

緑「…安心するのは…まだ早いと思います」

黄「へ?」

緑「…ですよね?男様」

男「うん…あいつ、まだ消えてない…僕の中にいる」

緑「やっぱり…顔を見ればわかりますよ」

男「へへ…そっか、隠しきれてなかったか」

赤「ってことは、またあいつが出てくる可能性もあるってことか」

男「その通り」

男「だから、もう一度…戦わなくちゃ」

男「…でも、ここから先は…僕ひとりで決着をつけるよ」

男「みんなには、これ以上迷惑かけたくない…」

男「…というか、そもそも…僕の心の中でなんとかするほかないしね」

男「二つの意識が共存できるとしたら、そこだけだろうから」

妹「…わかりました、頑張ってくださいね」

男「うん」

妹「…あっ、あと…それと」

男「?」

妹「今のお兄ちゃんにも、もうひとりのお兄ちゃんにも…二人に伝えたいんですけど」

妹「その…ごめんなさいっ!」

男「!」

妹「家族なのにたくさん隠し事してたこと」

妹「お兄ちゃんが私のためにやっててくれたことを、蔑ろにしてしまったこと」

妹「ハンマーで思いっきりぶん殴っちゃったこと」

妹「今までたくさん迷惑かけたこと」

妹「これからもたくさん迷惑かけるであろうこと」

妹「それから、それからそれから…」

男「もういいよ、気持ちは伝わったから」

男「こっちこそごめんね…みんなのこと、少しだけでも疑っちゃった」

男「…だから、これで言いっこなし!それでいい?」

妹「…はい!」

赤「さてと、これでいったんはめでたしめでたしかな?」

青「…あとは、男の戦いだから」

黄「がんばってね、男さん!」

緑「みんなで応援していますよ」

緑「…たとえ本来の体の持ち主が彼であっても…」

緑「私達の知っている男様は」

緑「私達の認めた男様は」

緑「…この世で唯一、あなただけなんですから」

男「…うん」

緑「絶対に…負けないでくださいね」

男「…わかった」

—————夢の中—————

男「…いるんだろ?出てきてよ」

「……」

男「……」

「…俺の体だ…返せよ」

男「嫌だね…みんなを壊したりしないって言うなら別だけどさ」

「…そうか…だったらしょうがねえな」

「お互いに今ここじゃあ意識だけの存在だ…体がどうとかの優劣もねえ」

「夢が終わる前に…ここで決着をつけようぜ」

男「そうだな…悪夢はもう、終わりにしよう」

「…お前みたいなもやし野郎に、そんなことできるのか?」

男「喧嘩は弱くても…心の強さじゃ負けない自信はあるさ」

「ふん…戯言を」

男「僕に存在しちゃいけないって言ったこと…撤回させてやる」

男「さあ…」


男「…始めようか」

今日はここまで

ちょっと今回は長かったですね
多分次の投下で緑編も終わるなあ…これ
もはや緑編って言っていいのか怪しいかもしれないけど

緑編終わったらもう一気にラストスパートかける予定です
見てくれてる人がいるなら、もう少しだけお付き合いください
お休みなさい

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