杏子「二人に」ロッソ杏「なった」(8)

杏子「どういう事だよ」

ロッソ杏「…」手を見つめる

杏子「魔法を解いたのに分身、なんでお前だけ残ってんだ」

杏子「つか変身も解いたんだぞあたし」

ロッソ杏「……」

杏子「聞いてんのか?」

杏子「分身の癖に意志疎通できないのは初めてだよ。ったく、消えな」

ソウルジェムを掲げ、下に降り下ろす。魔力を絶ちきったつもりだった。

杏子「…魔力の感触がない」

ロッソ杏「…」

杏子「何なんだよお前」

杏子の分身は静かにソウルジェムに手を伸ばした。慌てて後ずさる。ソウルジェムを掌で覆い、変身魔法を発動させた。赤い光がほとばしる。

杏子「テメェ、何しやがんだ!」

しかし…

杏子「変身できない!?」

杏子「どういう事だオイ、何が起きて…」

狼狽え、自身の体を見下ろす杏子。その掌からソウルジェムを抜き取る。直後に気付き奪いかえそうとするも時既に遅し。分身は杏子の首に槍を突き付け、宝石を一定のリズムで宙に放ってはキャッチ、唇に弧を描いた。

ロッソ杏「…おもしれぇ。何がどうなってるかなんてのは知らないが、」

ロッソ杏子「つまり、アンタは人間に戻っちまったって事さ。本物」

目を見開く。杏子は絶句した。

ロッソ杏「アンタは変身できない」

ロッソ杏「そしてあたしも同じように…」

槍を突き付けたままソウルジェムを掲げる。ソウルジェムは一度光を発し、分身の周りを駆け巡るがしかし…何も起きない。

ロッソ杏「変身を解けない」

杏子「どういう事だ!」

ロッソ杏「知らねーよ、あたしに聞くな」

ロッソ杏「分身を作っては窃盗、空き巣、万引き。そんな事やらせてるからバチが当たったんじゃない?」

杏子「くっ…」

ロッソ杏「ま、そうするより仕方ない深ーい事情がある事はあたし自身よく分かってるからね」

ロッソ杏「何より共犯だし」

分身がスカートを持ち上げると中から大量の菓子類が降り下ちる。槍を下ろし、その山を掻き集めては頬をうずめた。

ロッソ杏「へへっ、今日の取り分はあたしのもんさ。自分の食料は自分で調達しないとね」

杏子「テメェ!」

キュウべぇ「分身と喧嘩だなんて珍しいね。意見が食い違う事もあるのか い?」

物陰から白い小動物が歩いてくる。時分は夜。真っ白な体は迷わず分身の元に駆け寄った。

キュウべぇ「姿の異なる分身を作り上げたようだね。君の『幻惑』の力にはまだまだ可能性があるよ」

杏子「おい!本物はあたしだ!」

ロッソ杏「へへ、聞いてくれよキュウべぇ。実は分身が消えなくてさ、おかげで変身が解けないんだ」

杏子「おい!嘘話すなよ」

書き貯め作ってからまた来ます。

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