ほむら「此岸の計略」 (26)

不条理、バットです

前提として
全員生存+まどか未契約でワルプル撃破後を想定しています

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「ねぇまどか。どうして、どうして動かないの。なんで息をしていないの。どうして、どうして鼓動が止まっ
てるの。嘘だよって、言ってよ。嫌だよ、なんで、どうして、お願いよ、お願い————、」

 ほむらは泣きながら亡骸に向かい叫ぶ。それは悲観であり、慟哭。
 思い人は還らない。ゆっくりと冷たくなっていく体がそれを如実に示していた。


 始まりは六時間前に遡る。
 異変に気付いたのは巴マミだった。

 巴マミ

 結界の魔力パターンは感知出来ているのに肝心の結界の入り口が一向につかめない。どうした、ものかしらね。

 私は思案する。
 巧妙にダミー結界を複製する魔女とは幾度か戦ったことがあった。
 けれど、今回は少し様子が違うように感じられる。私の戦士としての勘がそう告げていた。

 もう一度、魔力のパターンから洗いなおしてみましょうか。私は誰にともなくそう結論付けると、再解析の格好に入った。

 数分の後、弾き出された結果は芳しくなかった。
 というのも、最初に導き出した魔力のパターンとはまるで別のパターンが浮かび上がってきたためだった。

 これは一体どういう事だろう。私はそう考える。

 一旦、思考を整理しよう。
 始めに私は魔女Aの魔力を検知して、結界の捜索へと向かった。
 強力な魔力を発する地点1に辿り着いた私は、結界の入り口があるだろうと確信して辺りを捜索するも、成果なし。どころか、魔力のパターンが急速に萎むのを検知した。

 そしてその魔力が完全に萎んだところ、地点2付近より同様と思われる魔力パターンを検知、地点1と同様に捜索に赴く。

 それを繰り返すこと、八回。そこで私はようやく違和感を覚えた。
 我ながら、間抜け極まりない。

「一応魔力のパターンはソウルジェムに記憶させてあるから、まずは全部の痕跡を洗いざらい調べなくちゃね」

美樹さやか

 もうそろそろ恭介の付き添いもお終いかな、なんてあたしは考えながら空を見上げた。
 夕暮れで傾いた日差しがあたしの目を焼く。

 全部が全部上手くいく、そんなことってきっとありえないんだろうな、なんて柄にもなく感傷的になってみる。

 恭介が元気になるのは嬉しい、なのに少し寂しい。
 一緒にいる時間が短くなるのが妙に嫌だった。

 恭介の回復を快方を素直に喜べていない私に気づいて、少し自己嫌悪。
 それでもやっぱり、今の私にやついているんだろうな。
 っとと、そんなことよりも、明日は恭介と初デートなんだった。柄にもなく気合いをいれちゃいますかね!

 そんなことに現を抜かしていた私は目の端にとらえた影に微塵も気づかず、立ち上がって帰路へと歩き出した。

佐倉杏子


「ふぅー。一丁上がりッてね」

 アタシは気味の悪い結界の中から脱出し、見慣れた見滝原の路地へと降り立った。

 グリーフシードの稼ぎは上々、この町の魔法少女たちともうまくやれてる。当面の生活に困るようなこともない。本当に、暁美ほむらには感謝してもしきれないね。

 アタシは鼻歌を歌いながら裏路地を離れ、表通りを歩く。
 幸福な顔をした若いカップルたちがわんさかと歩いている。少し悪戯してやろうか、などと益体もないことを考える。
 実際、そんなカップルの財布を抜くことはもう卒業したのだ。というか、そんなことをしなくても生きて行けるようになった。本当に暁美ほむら、様様だ。

 まぁでもそれはそれとして、小さな悪戯位は許されるだろう。そう思ってアタシはチョイとばかし魔法を使って、辺りへ働きかけた。
 ちょっとした悪戯だ。人の顔を勘違いするだけのちょっとした悪戯。

 幸せになれなかったアタシの世間様へのちょっとした仕返しって、奴?

「ったく、面倒臭ぇなー。魔女ってのは本当にどっからでも湧いてくるね」

鹿目まどか

 右手に持ったパパに渡されたお買い物リストと睨めっこしてます。
 たっくんがどうしても、買い物に行きたがるからわたしが付き添いでパパの代わりにスーパーへとやってきたのです。

「まろかぁ!おかぁし!おかぁし、かってぇ」

 たっくんがグイグイとわたしの手を引っ張って先に進もうとします。

 けれど、わたしももう中学生です。流石に三才児に力で負けるほどではありません。よって、一生懸命に進もうとするたっくんはその場で足踏みする格好になりました。

「お菓子は買い物が全部終わってからね。ほら、最初はこっちだよ」

 優しく、そう言うと、元気いっぱいの笑顔が咲きました。

「あい!」

 その時、ふと視線を感じます。
 振り向いた瞬間、見覚えのある赤目と目が合いました。

「キュゥべえ?」

 けれど、姿は見えず、どころか赤目もすぐに見失ってしまいました。
 まぁ、気にしてもしょうがないかな、などと思い直してたっくんと一緒にお買い物を楽しみに戻ります。

暁美ほむら

 暗い。ここは何処だろうか。どうして私は此処にいるのか。

 何も思い出せない。一時的な錯乱、それとも記憶の欠落?
 駄目だ、恐らく考えても分からないだろう。何せ、手掛かりがなさすぎる。

 何も見えないので、仕方がなく私は自分の体を触って、感触を確かめた。
 どうやら私は俯せに倒れていたらしい。どうも平衡感覚がおかしいみたいだ。

 腕は、ある。足も、ある。腹部に異常はない。胸部にも同じく異常はない。首元に触れると、自らの体温と鼓動が手を伝わってきた。
 そして、両手の甲をさする。左手にダイヤ型のソウルジェムの感触が伝わる。

 つまり私は魔法少女姿なわけか。今はそんなに重要じゃないとはいえ、やはり気になる。魔女の仕業だろうか。ここに来る前の記憶が曖昧だ。

 まぁ良い。そう思って立ち上がろうとした瞬間に気づいた。

 動けない。

 思わず「何がッ」と叫び気づいた。此処は音が一切伝わらない空間だということに。

巴マミ

 近くのファーストフード店に入った私は見滝原の地図に印をつける。

 順番に一つづつ、魔力を検知した場所に丸を付けていく。

 すると、何やら奇妙なことに円が浮かび上がってきた。

 もう少し、詳しく見れば、八つの地点はほぼ、等間隔になっている。

 そこで私は、なんとなく円の中央に目を向けた。

 「この場所って、もしかして?」

 私は携帯のアドレス帳を開いて、目的の住所を探す。そして、見つけた。

 ぴたり、ビンゴ。

 正直、間違いであってほしかった。

美樹さやか

 私がようやく家の近くまでやってくると、そこで見慣れた黒髪をみつけた。

「おーい。ほむらー!」

 けれど、あたしの呼び声虚しく、路地を曲がってほむらは姿を消してしまう。

「全く、このさやかちゃんを無視とは失礼しちゃうなぁ」

 ムカッと、きたあたしは大股でほむらを追いかける。
 そして、路地を曲がると——。

 あたしの右腕が『とんだ』。

 い、痛い。痛い、痛い、痛い。

 あまりに突然のそれはあたしに思考の猶予を与えてはくれなかった。
 けど、大丈夫だ。あたしには痛覚遮断と回復の魔法がある。

 あたしは、意識を魔法少女モードに切り替えながら、正面を見据えた。


 けれど、そこには何もいなかった。

「はぁっ!?」

 後ろからズブリッと何かに貫かれた。
 あたしはこの感覚を知っている。前に杏子に槍で貫かれた感覚と一緒だ。

 そんなふざけた感想を抱きながら、ゆっくりと痛覚を遮断していく。

 そのはずだったのに、——。

「ぎぃぎゃッ、ゴフッ」

 口から血が垂れた。ヤバい。どうしてそうなってるのかは分からないけど、痛覚遮断が機能してない。

 痛い、痛い、痛い。

 マズイよ、これ。こんなに痛いとジェムの濁りが、凄い。感覚がマヒしてきたのかあたしは呑気にそんなことを考えていた。

 そして、刺さっていた刃が引き抜かれ、あたしの左腕が『とんだ』。

 そこで、あたしはようやく振り返る。
 目に映ったのは見慣れた黒髪だった。
 歪な表情を湛えた『ほむら』はソウルジェムのハマった私の指を足で思い切り、

 ————、潰した。

「嘘でしッ」

佐倉杏子

 アタシがそれを見つけたのは偶然だった。

 目の前には体から切り離された腕が転がっている。そこには小さな血だまりが出来ていた。
 それ自体はまぁ別に驚くほどのことでもない。
 アタシら魔法少女に取っちゃ怪我なんて常に傍らにあるもんだ。程度の代償こそあれ、もう慣れた。

 問題なのはその少し先、掌から先が潰れた腕と、その真横に血だまりを作っている左腕の欠けた少女。
 それは、それはアタシが無茶して助けた奴だ。

「さやかっ!おい、さやかッ!!」

 アタシは駆け寄って、声をかける。
 服に血が付くことも厭わずにアタシは腰を下ろしてさやかを抱きかかえる。

「おい!誰にやられた!?魔女か?魔法少女かッ!?」

 ぐったりとしたさやかからは生気が感じられなかった。

 これはあの時と同じだ。まどかの奴がさやかのソウルジェムを投げ捨てちまったときと。

 そして、アタシは気づいた。落ちた腕の近くに粉々になった、青い粉末があることに。

 これは、これは、もしかして、そうなのか?

 嫌だ、認めたくない。嫌だ、いやだ。せっかく、友達のなれたのに。せっかく仲間になれたのに。せっかく、せっかく。これからも、もっと一緒に色んな事をやろうと言っていたのに。

「なぁ、嘘だろ」

「ところがどっこい、本当なのよ。これが現実」

鹿目まどか

 今日もお母さんはお仕事が忙しいみたいで、帰りが遅いそうです。なので、わたしとたっくんとパパとで晩御飯を食べました。

 やっぱりパパの作る晩御飯はおいしいです。何時か、あんな風においしい料理を作れるようになりたいとそう思います。

 そんなことを考えていると、ふと電話をしてみようという、気になりました。取りあえず、ほむらちゃんに電話してみます。
 呼び出し音が、繰り返されて留守電案内につながります。

 忙しいのかな、と思いなおして次はさやかちゃんに電話してみました。
 やっぱり、同じように留守電案内につながりました。

 もしかして、魔女退治なのかな、そう思った私はマミさんにも電話をしてみました。

 すると、マミさんはすんなりと電話に出てくれます。

『鹿目さん?どうしたの?何かあった?』

 マミさんは開口一番にわたしを気遣う言葉を口にしました。

『いえ、別に何もないんですけど、』

 わたしはなぜかそこで言い淀みます。

『特に何もないけど、漠然と不安?』

『まぁ、はい。そうです。ほむらちゃんとさやかちゃんにも電話してみたんですけど、二人はでなくて。もしかして、三人で魔女退治なら電話に出なくても安心できるかなって思ったんです』

『私は今一人で魔女退治よ?ちょっと厄介な相手みたいでね。成果が出次第みんなにも連絡しようと思ってたところなの』

『そう、だったんですか』

『もしよかったら、これから暁美さんの家に向かってみるつもりなんだけど、鹿目さんも来ないかしら?』

『……ッ。はい、行きます』




佐倉杏子

「なんで、あんたがこんなことするんだよッ!ほむらぁ!」

「だって、私には破滅してもらわなくっちゃいけないから」



巴マミ

 さて、取りあえずここまで来た。それはいいのだけれど、問題はここが黒だった場合よね。

 暁美さんに対する最終手段として鹿目さんを呼んでしまっている。もう後には引けない。

 覚悟を決めるのよ、巴マミ。
 まずは家の前に魔法で書置きしておきましょうか。

 そうして、私はドアを開けた。

「暁美さん、いるのよね?」

 しんと静まり返った家の中はおよそ人の気配は感じられなかった。が、人ならざる気配は充満していた。

 もし仮に、暁美さんが魔女になってしまっているのだとしても鹿目さんを傷つけるなんてことはありえない。私はそう考えて鹿目さんを呼んだ。

 予想が外れてくれればいいのだけれど、こういう勘は大抵当たる。

「ねぇ、ここにいるあなた、出てらっしゃい?」

 恐ろしく気味が悪い。
 いや、普段の暁美さんの家とまるで違わない筈なのに、なぜか妙に重苦しい空気が漂ってきている。

 これはなんだ。いや、恐らく十中八九魔女の気配だ。
 しかし、このプレッシャーと嫌悪感は尋常じゃない。

 ワルプルギスと戦ったときだって、こんなに息が詰まる感じはなかった。
 正直に言ってもう、ここから逃げ出したい。だって、膝が震えているもの。

 それでも、私は進む。それしか道はないのだから。
 そうして、短い廊下を抜けて閉められた引き戸を開くと、がらりと景観が変貌した。

 「結界ッ!?」

鹿目まどか

 これはマミさんの書置きだ、わたしはほむらちゃんの家の前につけられている印を見て確信しました。

 わたしがそれに触れると、印はゆっくりと解けて形を変えてゆきます。

“これを見てから、三十分たっても私、巴マミが出てこなければ大人しくお家に帰ること!いいわね?”

 マミさんはきっと何かを掴んでいる、私はこの文面を見てそう確信しました。

 けれど、魔法少女ではないわたしに出来ることなんて結局は待つことだけです。

 だから、ここは大人しく待つことにしました。

巴マミ

 暗い、ひたすらに暗い。此処はただ、それだけの魔女結界のようだった。

「あなたが、魔女かしら?」

 私の目の前には三角帽子に羽織マントのいかにも魔法使いな、風貌の『何か』がいる。

「そう、私は魔女だよ」

 その『何か』が流暢な日本語で私に答えた。

「その声、暁美さんかしら?」

「私はホムリリィ、此岸の魔女。暁美ほむらとは同一であり分岐である」

 何が原因だろうか。やはり、彼女は魔女になってしまったのか。

「それじゃあ、あなたは佐倉さんと美樹さんの魔力が消えたことと関係してる?」

「大正解。二人を殺したのは私。そして、あなたも死ぬよ。マミさん?」

「その声で!マミさんと呼ぶなッ!!」

 私は激昂し、発砲した。けれど、それの弾は私自身を撃ち抜いた。

「何がッ!?」

「私は此岸の魔女。生きることに執着した暁美ほむらの闇の顔。性質は執着。私は死の概念から最も遠い存在。あくまで此岸に執着しているから」

 どこからともなく、銃撃音が炸裂した。

「最後の魂を吸っておこうか」

暁美ほむら

「そろそろ、目覚めの時間だよ」

 そんな声を聞いた私は目を覚ました。

 記憶がはっきりとしない。けれど、どうやら自室で眠っていたらしい。
 窓を開けてみた、いつから眠っていたのかは分からないが、どうやら今は夜らしかった。

 不意に、硝煙の香りが漂った。

 まさか、銃の整備の途中で眠ってしまったのか。そんなことを考えながら、寝室を出ると、——。

「マミ?どうしたのッ!?何がッ!?あったの?」

 巴マミが倒れていた。魔法少女の姿で。そして、頭部についていたはずのソウルジェムは無残に砕かれていた。

 どう見繕っても、助からない。
 何故、こんなことに。

 私はおぼつかない意識で玄関の扉を開いた。

 そこには——。

「ねぇまどか。どうして、どうして動かないの。なんで息をしていないの。どうして、どうして鼓動が止まってるの。嘘だよって、言ってよ。嫌だよ、なんで、どうして、お願いよ、お願い————、」

 まどかの死体が転がっていた。

 もう無理だ、もう駄目だ。

 これはなんなのだろう。嫌だ、もういやだ。この訳の分からない状況はなんだ。

 ジワリ、ソウルジェムが濁る。
 もう私は構わなかった。

 そして、割れて反転した。

「ようこそ、九番目」

終わり

不条理ホラーが書きたかった

依頼出してきます

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