とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』 (326)

この話はとある魔術の禁書目録のSSです
系統で言えば「伝奇系」だと思います
物語はフイクションであり、実在の個人・団体・宗教等とは一切関係御座いません
また内容には残酷な現実、グロテスクな描写が含まれておりますので、どうかご理解の上でお読み下さい

それでは最後までお付き合い頂ければ幸いです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1373334420



――とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”前編 ~S村伝説~』

――学園都市『外』の某駅のホーム チュートリアル

アナウンス『4番線に列車が入りまぁす。お客様は白線の内側にまでお下がりくだぁさい』

上条「……」

五和「うっわー人多いですねー。あ、見て下さい上条さん、ゴスロリ着てる人が」

上条「学園都市のメイド中学を見慣れてると有り難みが……いやいやっ、そう言う事じゃなくってだ」

上条「つーか俺はどうして巻き込まれているの?ナチュラルに関係無いよね?」

五和「それがですねぇ。学園都市の生徒さんが“外”で失踪したらしくって、我々はその調査に行くんですから!」

上条「気合い入りすぎ……ってか、学園都市の話なのにどうして五和、つーか天草式の出番になるんだ?」

五和「あるぇ?説明しませんでしたっけ?」

上条「朝一で襲撃された上、事情も聞かされずに荷物ごと連行されたからなっ!」

五和「はい、インデックスさんもこちらでお預かりしてますし」

上条「いやまぁ学園都市側の都合に付き合わせないのは理解出来るけど、何で俺!?俺も学生だよなぁっ!?」

五和「今回の失踪事件、どうやらオカルトが関わっている可能性がありまして」

五和「学園側が学外で動くのは……憶測だけでは問題があるそうで。ですからオカルトにはオカルトのプロである私達の出番です!」

上条「下請けの下請けなんだろ?つーか駅のホームでオカルト連呼するのはどうかと思う」

五和「仕方が無いじゃないですか!イギリス清教の方々が日本で隠密行動なんて出来ないでしょうっ!?」

上条「シスター服の集団がウロウロと。そう言う映画あったよね」

五和「とにかくっ!そんな訳で付き合って下さいお願いしますっ!」

上条「やめろって!ホームで付き合うとか言うなっ!」

五和「え、ダメなんですか?」

上条「待てよっ!?周りの皆さんが『あのウニ頭、あんな可愛い子をフりやがって何様?』的な目で見てるからねっ!?」

上条「違うから!そーゆー話じゃないでしょおっ!」

五和「一生面倒見ます!」

上条「そーゆー話になってた!?あれ、おかしいのは俺の方なのかな?」

五和「話が失踪ですからねぇ。意外とどこかで遊び回っている可能性もありますし、勘違いでしたー、で済む話ならそれに越した事はありませんけど」

上条「まぁ、分かったよ。俺も付き合う――けど、オカルトってどんな話?三沢塾みたいなカルトじゃないんだよな?」

五和「あ、それは電車の中でお話しします」

上条「あぁ――っと?」 ピピッ

五和「メールですか?あぁインデックスさんから」

上条「いや、インデックスは使えない。一応携帯も持たせてんだけどなぁ」 ピッ

上条「……スパムみたい。何か変な質問か書かれている」

五和「質問ですか?こういうのって『貴方は100人に一人の幸運を手にしました!』って感じじゃ?」

上条「えっとなー……『母狼、兄狼、弟狼がいます。ある時、兄弟狼は川に流されてしまいました』」

五和「のっけからヘビーな展開ですね」

上条「『母狼はどちらを助けるでしょうか?』だって」

五和「スパムというよりは心理学テストっぽいですかね。私だったらどっちも、って答えますけど、それは多分ハズレかもです」

上条「心情的に考えれば弟の方なんだろうけど、だったら俺は兄狼の方かな?」

ジジッ

円周「うん、うんっ。科学的な見地からすれば正しい結論だよね、当麻お兄ちゃん」

円周「例えば兄狼は泳げたとしたって、助かる確率が高い方を選ぶのは当然なんだよ」

上条「……はい?」

円周「どうしたの当麻お兄ちゃん?……あ、エッチなのは後で、ね?」

上条「思ってもねぇよっ!?つーか小学生相手にどうこうする趣味はねぇしな!そうじゃなくって、今五和と話を――」

円周「逸話?だぁれ?」

上条「え、いやだって俺と話してたのは」

円周「失踪した学園生を探しに行く、って説明したよね?」

上条「した、けど。それは」

円周「うん、なーに?」

上条「……いや、なんでもない」

円周「これは独り言だけど、世界には色々な選択肢があるんだよっ」

円周「当麻お兄ちゃんがシスターさんを拾わなかったセカイ、第一位に負けたセカイとかね?」

円周「そういった『様々なセカイがごちゃ混ぜになって世界を構成している』んだ」

上条「明らかに俺に話しかけてると思うけど……それが?」

円周「能力開発でも教わったよね――自分だけの現実(パーソナルリアリティ)」

上条「俺には出来なかったけどな」

円周「超能力者が力を発現するためには、『重なり合っている現実を認識し、そこから自分だけの現実を構築する』」

円周「つまり、学生都市の能力者は様々なセカイから、『自分に都合の良いセカイ』を引き寄せてるんだね、ふっしぎーっ!」

上条「……良く分からないんだが」

円周「そうだねぇ――あ、お兄ちゃん。やっぱり正義ヒーロー側としては、弟狼を選ぶのがベターだと思うよ。好感度的にも」

上条「そんなもんは考慮してねぇ!……いや、まぁ確かに弟の方を助けたくなるけどさ」

ジジジッ

五和「やっぱり若い方が好みなんですかっ!?」

上条「やっぱりって言うなよ!俺は別に年下好きをこじらせて、る訳じゃ……」

五和「で、ですよねっ。年上系姉さん女房が至高だと思います!」

上条(俺は今、誰と喋ってたんだっけ……?)

上条「……あのさぁ五和さん?」

五和「どうしました、改まって」

上条「えっと、なんで学園都市を離れているのか、って話はしたよね?」

五和「はい、させて頂きました」

上条「狼の家族の話は……どっちを選んだんだ?」

五和「私が『どっちも助けられたいいのに』って言ったら、上条さんが『兄の方を……いや弟の方を助けたくなるよな』って」

上条(『自分だけの現実』の話が無くなってる……?)

上条「……あっれー……?」

五和「無理矢理連れ出しといて言うのも何なんですけど、体調良くないんでしたら、戻りましょうか?」

上条「いや、大丈夫。何も問題はないよ」

アナウンス『3番線に列車が入りまぁす。お客様は白線の内側にまでお下がりくだぁさい』

五和「って来ましたねー。じゃあ行きましょうかっ」

上条「……テンション上げられてもなー」

――列車内

上条(さて、状況を確認――する、前にだ)

上条(俺が一緒に旅しているのは、『だれ』だっけ?)

1.五和
2.木原円周

(※このレス投下後、続く3レスで多数決)

――科学ルート

上条(そうだっけ?このちっこい娘さんと二人旅?)

円周「どうしたの当麻お兄ちゃん?」

上条「ん、いやいや学園側はなんで円周と俺を選んだのかな、って」

円周「夏休みに暇そうだったのが他にいなかったんじゃないかな?」

上条「暇って。まぁ暇だけどもな、言い方とかあるよね?」

円周「学園生の失踪ったって、本当かどうか分からないじゃない。だから取り敢えず調べとけば諦めますよー、って病理おばちゃんが」

上条「……まぁ取り越し苦労で済むんだったら、それに越した事はねぇけど」

円周「あ、今日はお弁当を作ってきたんだっ。お兄ちゃんの分もーっ!」

上条「おー、そりゃありがたい。ってか円周作れんの?」

円周「お兄ちゃんはわたしを甘く見てるぜ!」 ガソゴソ

上条「おー……キャラ弁?」

円周「うん、オリゼ○だよ」

上条「良かった……内蔵系のキワモノが来るのとばかり。もやしも○好きなんだ?」

円周「蛍君も沢木君が好きなんだよねっ」

上条「うん、答えにすっげー困る質問なんだけど、裏の意味なんて無いよな?純粋な意味なんだよな?」

円周「女装しない方が萌えるよねっ」

上条「よーしっ!お弁当美味しそうだなっ!」

円周「ボケはスルーするの?」

上条「下手に突っ込んでも大事故になる未来しか見えないもの!……あ、ごめん箸は?」

円周「えっとぉ……あー、ごめんなさい。一膳しか持ってきてないや。当麻お兄ちゃんが先食べて?」

上条「っていう訳にも行かないだろ。先食べなよ」

円周「あ、んじゃ、あーんっ!わたしが当麻お兄ちゃんに、あーんってしてあげるよっ」

円周「そうやって交互に食べれば解決だよねっ」

上条「ん、まぁいいけど」

円周「どれから食べる?どれも数多おじさんに作り方教えて貰ったんだよっ」

上条「その人は知らないけれど、つーか君とは初対面だけどな。オリ○ーの髪?いなり寿司が食べたい」

円周「はい、あーん」

上条「ん」 モグモグ

上条「――美味い」

上条(ちゃんとみりんの寿司飯を使ってる……なんだこれ、家庭レベルの味じゃないぞ)

上条(しかも夏だからご飯が傷まないように、梅肉を刻んで混ぜてあるし)

円周「そっかーっ良かったぁ!わたしちゃんとしたお料理作るの初めてで、不安だったんだぁ」

上条「マジでか?だとしたら君、すっげー才能あるかも」

円周「やたっ、それじゃわたしもおいなり食べよっと」

円周「……ん」 チュッ

上条「あれ?どうしてそんな雰囲気たっぷりに食べ――」

円周「んっ、ちゅぶ……くぷ」 ペロペロ

上条「必要ないよね?箸を雰囲気たっぷりにペロペロする必然性は皆無だよね?」

円周「ね?間接キスしちゃったね、お兄ちゃんとっ」

上条「間違ってる!その台詞はもっとウブな場面でしか使わねぇさっ!」

円周「……わたしの初めて、また当麻お兄ちゃんにあげちゃった、ね?」

上条「電車の中で言う台詞じゃねぇっ!?つーか周囲の皆さんドン引きだろうがよおおおおぉぉっ!」

――XX県XX郡 無人駅 14時

上条「ここの駅?周りに森しか見えないんだけど」

円周「ここから半日ぐらい歩くみたいだねー、あっ」

男 イソイソ(電車から降ろした荷物を軽トラックに積み上げている)

円周「すいませーんっ、XX村に行きたいんですが、どうすれば行けますかー?」

男「XX村?あそこは廃村になっちまってて、誰も住んでないよ?」

円周「うんっ、肝試しに来たんだよね。ね?」

上条「待て待てっ!そう言う主旨じゃないだろっ!」

円周「えー、キャンプに行こうって円周がお願いしたら、『ここなら良いよ』って言ってくれたじゃーん」

上条(微妙に口調が変わってる?合わせとけって意味か?)

男「んー……村の鎮守様は余所へ移しちまってるし、まぁ大したもんはないと思うけど」

円周「えー、刀夜お兄ちゃんとキャンプ楽しみにしてたのにー」

男「まぁいいけど。んじゃ軽トラの荷台に乗りな。送ってくから」

円周「ありがとうございまーすっ」

上条「ありがとうございます……すいません、ご面倒をおかけして」

男「いいって。徒歩だと大人でも山道半日ぐらいかかるから。街から来た人にゃ辛いだろうし」

円周「おじさん、親切なんだねー?」

男「ただ、荷台はちっと狭いかも知れねぇけどな」

――軽トラックの荷台

ガタガタッ、ガタガタッ

上条 (乗り心地は良くない、けどまぁ文句も言ってられないか)

上条(林道の中を俺達が乗ったトラックは走っていく)

上条(少し前までは一応舗装された道路だったのに、一本脇道に入った瞬間鬱蒼とした木々の間を抜ける羽目になった)

上条(両脇の森からは、まるで木が手を伸ばすように荷台を枝葉が掠めていく――)

上条(――ってのは考えすぎなんだろうけど)

上条「……」

上条(学園生が失踪した。だから学園側は俺達へ探索を要請する、と)

上条(なんでXX県の山奥まで来てるかと言えば、学園生のPCに残ってた記録にはここの住所と、ある都市伝説が書いてあったらしい)

上条(ちなみに俺達を運んでくれてるおじさんは、俺らみたいな子供は見てないそうだ)

上条(っても近くの村に電車で届いた荷物を運ぶのは一日一回だけ。おじさんが来なかった時に入った可能性は否定出来ない)

上条「……」

上条(……あぁ失踪した子が調べていた都市伝説の話だな。えっと)

上条(――『S村伝説』)

上条(昔々、つっても比較的最近の昭和ぐらいの話。XX県にあったS村では事件が起きた)

上条(気の触れた人間か、それとも嫉妬に狂った愛憎のもつれか、兎に角S村の住人全員が殺害された。本人も後を追って自殺)

上条(誰も居なくなった村は朽ち、僅かな新聞記事のデータベースにしか残らない――筈、だった)

上条(しかし、山の中へ迷い込んだ旅人はある廃村を発見する)

上条(『この先、日本国憲法通じず』と書かれた立て看板、そして足下にあるドクロに似た岩)

上条(水を一杯貰おうと村へ旅人が入り込むと、そこには無くなった筈のS村があった)

上条(朽ちてボロボロになってる家屋には、未だ渇かぬ血痕の跡が残り――)

上条(『おや人影が?』と思っていると――)

上条(そして旅人も姿を消す。彼の残した手記かメモ帳が、後日川の下流で見つかる)

上条(家族や警察が上流を調べてみても、廃村はおろか村があった記録すら残っていない)

上条(しかし山の中で迷い、廃村を見つけたとしても絶対に入ってはいけない)

上条(何故ならそこには殺されたS村の住人達が、今も尚彷徨っているからだ――)

上条(――ってのが『S村伝説』だ)

上条「……」

上条(この『都市伝説』を俺はどう考えるべきだろうか?)

上条(確かに魔術の存在は知っているし、そういう世界があるのも理解している)

上条(かといって、全てが全て魔術が絡んでいるとも思えない)

上条(だから俺は一緒に荷台で座っている彼女へ向かって、こう聞いたんだ)

1.「なぁ五和、専門家が見ればどんな感じなんだ?」
2.「なぁ円周、科学的に見ればどんな感じなんだ?」

(※このレス投下後、続く3レスで多数決)

――魔術ルート

上条(そうだな。学園都市から依頼を受けた、天草十字凄教の五和だよな)

五和「どうしました?あ、お弁当でも食べます?」

上条「旅の醍醐味は駅弁だよなー」

五和「……すいません、私手作りしてきちゃったんですが」

上条「だろうと思ってた!実は俺っ五和さんのお弁当食べたかったんだけど、催促するのは悪いと思ったからっ!」

五和「で、ですかねっ!」

上条「だってもう五和のご飯が食べられると思ったから、朝から何も食べてなかったし!」

上条「いやーもう俺って幸せ者だよねっ!帰ったらインデックスにも自慢しないと!」

五和「そ、そんなにハードル上げられると出しづらい……」

上条「高くねぇよっ!?褒め殺しに近いけど、決してベタ褒めじゃねぇからなっ!」

五和「すいません、もうちょっと期待値を下げて頂けると助かります……」

上条「あー……まぁまぁ良いんじゃないか?たまに差し入れとか貰ってるけど、五和からのはそれはそれで」

上条「新鮮味があるって言うか、うん。意外な所から来るのはポイント高いと思うよ」

五和「……死のう」

上条「面倒臭っ!?誉めてもちょい貶しても何でイッパイイッパイになるんだっ!?」

五和「教皇代理を殺して私も死にますっ!」

上条「建宮は許してあげよう?何で無理心中みたいになってんの?」

五和「色々と禍根を残すとアレですので」

上条「庇いきれない所ではあるけど――まぁ、ちょっと落ち着こう?お互いに慣れないシチュで混乱してるだけがら」

上条「そうだっ、おしぼり!おしぼりあったら欲しいなっ!」

五和「はいっ、じゃあおしぼりをどうぞ」

上条「あぁうんありがとう」

五和「後、おしぼりもどうぞっ」

上条「うん、どうも?」

五和「後は――おしぼりですっ!」

上条「メインディッシュは?人間の胃じゃ布は消化出来ないから」

五和「自然に分解されるタイプのですっ」

上条「テンパってるのはわかるけど、ちょっとは落ち着けって、な?」

五和「た、食べてくださいっ!」

上条「うん、どこの鬼嫁だってお姑さんにおしぼりを食べさせようとは思わないよね?」

五和「いっそ私をどうぞ!」 ヌギヌギ

上条「落ち着け落ち着け!嫌いじゃねぇしむしろウェルカムであるけども周囲の人がドン引いてるからなっ!?」

五和「す、すいません。取り乱しましたっ」

上条「……うん、ブラの色は分かんなかったし。俺も何も見なかったから、お弁当食べようか?」

五和「どうぞ……つまらないものですが」

上条「おー……和風メシだなぁ」 カパッ

五和「お袋の味、って言うかお母さんがよく作ってくれたお弁当を再現してみました」

上条「厚焼き卵に唐揚げ、ポテトサラダとタワラおむすび……あ、焼き鮭も入ってる」

五和「西京漬けですねー。あ、もしかしたら西の方の味付けは苦手ですか?」

上条「いやぁ、このお弁当持って五和が学校通ってたんだなー、って思ったらちょっと嬉しくなった」

上条「つーか五和ってどんな子供だったの?天草式の修行ばっかりとか?」

五和「ふつーだと思いますけど――あ、お話ししますんで、食べちゃいましょう」

上条「だな。頂きます――って美味っ!」 モグモグ

間違った。すいません>>17-18は無視してください

――魔術

五和「せ、専門家って私ですかっ!?」

上条「他に居ないじゃない。つーかここで第三者が出て来たらそっちの方が怖いわっ」

五和「はいっ喜んで!……『聖ワルプルガ』ですね」

上条「……誰?」

五和「ワルプルギスの夜と言った方が良いでしょうか?元々は十字教より古い信仰、古代ケルトの節分みたいなもんですね」

上条「節分て。分かり易くはあるけど」

五和「季節と季節の境の日であり、悪魔や魔女が自由に出歩き、我が世の春を謳歌する――と言う伝説です」

上条「つまり、その日には――」

五和「はい。人が森の奥へと誘われ、姿を消します。その人間は魔女に食べられたとか、魅入られたとか言われて」

五和「『人里離れた場所に人知を越えた何物かが住んでいる』と言う伝承ですね」

上条「魔女達が悪さをしていく、ってのも『S村伝説』と共通するものがあるよな」

五和「まぁ世界各国で似たようなお話はありますし、たまたま現代は『S村伝説』だっただけかと」

五和「本当に居るのか在るのかは別にして、ですけどね」

上条「つまりこの事件はそっちが関わっているって?」

五和「可能性としてはあります。ただ断言するような段階ではありません。まだ憶測にしか過ぎませんから」

上条「……五和と来て良かったよ」

五和「えぇっ!?そんな求婚なんてっ!?」

上条「してないよね?どんな脈絡もなかったよね?」

五和「じゃ、じゃあ新婚旅行はS村でチャチャッっと!」

上条「不吉すぎるっ!存在するしないに関わらず、縁起も悪い上に悪い意味で記憶に残るわっ!?」

――『帰らず村』 16時

上条(長い長い緑のトンネルを抜け、俺達は『村』に着いた)

上条(村の入り口にトラックを寄せ俺達を下ろすと、おじさんはさっさと帰ってしまう)

上条(村の名前は……どこにでもあるようなありふれた名前で、聞いたら忘れちまうような平凡な名前だ)

上条(消えた学園生のPCにあった呼び名、『帰らず村』って言った方がしっくり来る)

上条(村――ざっと見た所、20前後の昔の日本家屋が立ち並んではいるが、その半分ぐらいは崩れてる)

上条(残った半分も辛うじて原形を留めている、か?)

上条「……」

上条(8月の、それも盆も近い時だって言うのに、なんか、何かおかしい気がする)

上条(斜になった太陽が俺達を照りつけるが、どこか弱々しい印象を受ける)

上条(それは何だったろうと少し考えて――俺は同行者へ同意を求めた)

――五和

上条「何か、おかしくないかな?」

五和「えぇ私もそんな気がします。なんでしょうね、これ」

上条「……」

シーン

上条「虫、か?」

五和「虫、ですか?」

上条「蝉の鳴き声どころか、ヤブ蚊の一匹もいない。山ん中でだぞ?」

五和「確かに。蚊取り線香持ってきたんですがねー」

上条「余裕だよなっ?もうちょっと大事じゃないの?」

五和「いえいえ冗談ですって。除虫菊でも生えているのかも」

上条「女中さん?」

五和「除虫剤の方です。殺虫剤の成分にもなってまして、畑の隅で育てると他の作物に虫がつきにくいんですよ」

上条「へー。でも、無いよね?花なんて」

五和「……」

上条「……」

五和「――はいっ!と言う訳で、もう少し日が落ちればヒグラシが鳴き出すでしょうが――その前に、村を見て歩きましょうかっ!」

上条「強引すぎやしないかな?言ってる内容は分かるが」

五和「一応キャンプセットは持って来ていますけど、出来れば野宿は避けたいなー、なんて?」

上条「分かったけどさ。んじゃ俺はこっちから探してみるよ」

五和「了解ですっ」

五和「……」

五和(……あれ?確か教皇代理が何か作戦を立てていたような?)

建宮(回想)『二人で見回るのが大チャンスなのよな!その隠れ巨乳最大限に活用する時のな!』

建宮(回想)『何かの弾みでビックリ抱きつきキャー大作戦!これなら女教皇に勝てるのよ!』

五和「……」

五和(スルーしちゃったあああぁぁぁっ!?)

五和(い、いやいやいやっ!まだチャンスはある筈ですっ!今日はっ)

五和(何と言っても『お泊まり』なんですからねっ!)

――『帰らず村』 探索中16時15分

上条(っとまぁ二手に分かれてはみたけれど、パッと見て危険ぽい所はない)

上条(精々崩れそうな家があるぐらいだけど、流石にそのぐらいは分かるだろうし)

上条(失踪した学園生が生き――いやいや、居るんだったら騒いでいる俺達に気づいている筈)

上条(なのに出て来ないってのは居ないか隠れている……でも隠れる必然性は無いよな?)

上条(兎に角、今大切なのは今晩の宿だ。テントと寝袋は持ってきたけど、気分的に屋内で寝たいしなぁ)

上条(……んじゃ、寝床になりそうな所を探そっか)

――廃屋

上条(村の入り口に近い所にある家だ)

上条(中は……まぁ、荒れてる。外壁が落ちてるし、何とかアート?って落書きもチラホラと)

上条(でも別に家財道具が残ってる訳じゃ無くって、ガランってしてるけどなー)

上条(埃や土の具合から察するに、特に最近誰かが入った形跡はない。ハズレっと)

上条「……」

上条(……でも、クモの一匹もいない。どういう事だろう?)

――村の中央の屋敷

上条(寝床を探すのが先って事で、一番外観がしっかりしている建物を選んでみた)

上条(昔ながらの、と言うか昔そのままの日本家屋だ。土間があって、畳があって)

上条(屋敷の東側には井戸が、西側には10mぐらいの……杉?何かすらっとした木が生えている)

上条(家の中を覗くと奇跡的にも障子の貼った襖が残っている……所も、ある)

上条(流石に手を出す気にはなれなかったのか、落書きの類は全然見えない)

上条(……実は『もしかしてまだ誰か住んでないか?』って、ビビってたんだけど)

上条(床に積もった埃を見る分には、年単位で人は入ってないみたいだ)

上条(嵩張る荷物はここへ置き、探索を続けよう)

上条「……」

上条「……でも、ここにも」

上条(虫どころか、鼠の一匹も居ない……)

――社

上条(村の一番高い所、ちょっとした高台の上に神社がある)

上条(境内の土は踏み固められ、嘗て大勢の人達がここへ集まったんだなと、言う名残を見せている)

上条(……いつの話だろう?あのおじさんに聞けば良かったか)

上条(社の正面にあった筈の社名の名札?は取り外されてて、読めなかった)

上条(社の周りぐるっと一周しても、何かヒントになるようなものはない)

上条(ただし裏側、丁度社の真後ろに当たる部分に軽自動車ぐらいの黒っぽい岩がある)

上条(縄文土器によく似た縄の跡、縄目が縦横無尽に広がっている)

上条(これが人為的に作られたものか、俺には判断出来ない――が、自然にあったとするのは不自然だろう)

上条(ふと思いついて鳥居まで戻ると、刻まれてあった社名から俺は『帰らず村』の神社の名前を知った)

上条(――『石神井(しゃくじい)神社』か)

――別の廃屋

上条(……幾つか見て回ってきたけど。人の居る気配は全然しない)

上条(立ち入った形跡もない、と。うーん?)

上条(この家は……まぁ、代わり映えはしないしよなぁ。落書きはないけど)

上条(落書きがされている家、しない家には規則性でもあるのかな?)

上条(……いやいや、アンチスキルみたいな連中が一々拘るとも思えないし、その時の気分なんだろうけど)

上条「んじゃ次……あれ?」

上条(この家の裏手に……『祠(ほこら)』?)

――祠

上条(大きさは俺の腰ぐらい。木で作られた祠だ、正面が観音開きになっている)

上条「……」

上条(……どうしよっか?)

上条(勝手に調べる、のも何か気が引けるよなぁ)

上条 パンパンッ(両手を合わせて祈る)

上条(右手で触らないよう、そーっと) ググッ

上条「……?」

上条(御札、かな?)

――魔術

五和「流石です上条さんっ!」

上条「ってビックリしたっ!急に近寄ってくるなよぉっ!?」

五和「すいませんっ、いつものクセが出ちゃって」

上条「ニンジャ的なあれなの?魔術師のイメージがどんどん変わっていくんだけど」

五和「あ、いえいえ、流石ってのは私がお邪魔したお宅の祠には何にもなくてですね」 ヒョイッ

上条「あ、こらっ危なくないのかよ」

五和「えっと……あぁこれは――」

上条「分かるのかっ!?」

五和「私にはちょっと……」

上条「役に立たねぇなっ!?」

五和「待って下さい!そうじゃないんですってば!大体分かりますって、大体はっ!」

上条「……そうなの?」

五和「見て下さいよっ、『虫』って言葉が一杯書いてあるじゃないですか!」

上条「あーうん、それぐらいは俺にも分かるけど」

五和「昔、ネズミ除けのお札を見た事があるんです。そのお札にはネズミが嫌いな『猫』って言葉が沢山書いてありました」

上条「へー」

五和「ですからこのお札も『虫を使って何かを払おう』ってものに決まっています、えぇ!」

上条「何か、って何?」

五和「うっ」

上条「つーか虫を使って払えるのって何だ?」

五和「ううっ」

上条「そもそもそのお札の真ん中に書かれてある『閇美』って何?なんて読むの?」

上条「閉じる、って字の片仮名の『オ』を反対にしたような字だけど」

五和「……死のう」

上条「待て待て待て待てっ!?俺が悪かったからっ!言い過ぎちゃったから、ねっ!?」

上条「うっわー、やっぱ凄いって五和さん!俺じゃ絶対に分からなかったお札を、何となく分かっちゃったもの!」

上条「もうアレだよねっ!ご飯は美味いし頭もいいしっ、おっぱ――ゲフンゲフン、スタイルも良いしっ!引く手数多だよね!」

五和「……はいっ!ありがとうございますっ」

上条(つーか何でこの子普段よりも情緒不安定なの?初めて会った頃はテンション高めじゃなかった気もするし)

五和「まぁ、その御札は」 バシャッ

上条「写メ?」

五和「はい。衛星電話で天草式に送って解析して貰います」

上条「グローバル化の波がこんな所にまで……んじゃこれ、どうしようか?」

五和「持ってても害はないと思いますけど」

上条「いやぁ、他人のだしなぁ」

五和「他の祠に入ってなかったって事は、多分村を放棄した時点で用済みになったんでしょうし」

五和「とはいえ、以前の住んでらした方が、意図的に残したのかも知れませんから、念のために戻しておいた方が良いとは思います」

上条「分かった」 ギギィッ

五和「じゃそろそろテントを張りましょうか。もうすぐ――」

五和「――日が、堕ちますから」

――夕方

……カナカナ……カナ……

上条(俺達は村の中心にある屋敷に一泊する事にした。遠くの方でヒグラシが鳴いている)

上条(軽く掃除して、縁側へ障子を貼った襖を並べればどうにか泊れる……と、思う事にした)

上条(……厳密には不法侵入とか、私有地への無断での立ち入りとか、色々とヤバいんだけど、大目に見てくれると助かる)

上条(帰る時には来た時よりも綺麗にするし、うん)

上条「……」

上条(しかし、俺達が探している学園生の姿は影も形も見えなかった)

上条(事故や事件に遭った形跡がないのは良かったけど、わざわざここまで来る必要があったのかどうか)

上条(ちょっとしたキャンプと思えば、まぁまぁ?)

上条(……とはいえ、だ。何かがおかしい。それが何かは分からないけど)

上条(虫の声がしない村、ネズミや野生動物もいない)

上条(御札の意味も分かってはいないし……んー?)

上条(っていうか、人の心配している場合じゃない気がヒシヒシと)

上条(……まぁ、明日朝一で駅へ向かえば問題ないだろ)

上条(歩いて半日、最悪終電を逃したって駅で寝泊まりすりゃいいし)

上条(――と、俺は屋敷の外で作業している『彼女』へ伝える事にする)

1.「何やってんだ、五和?」
2.「何やってるんだ、円周?」

――科学

円周「うん……お守り、みたいなものかな?」

上条(黒いペットボトルの液体を地面に撒いている)

上条「って言うか、凄い臭いだな?ニコチン?酢酸?」

円周「へ、似せた化合物だね。自然に分解されるから環境にも優しいんだよね」

上条「凄いな学園都市」

上条(学園都市と連絡がつかなくなって大分混乱してたみたいだし、まだ本調子じゃないみたいだな)

上条(放置するのは良くない、つったってどうしようも無い、か)

上条(……あー、アレがあるにはあったけど。でもなぁ)

円周「……おわり、っと。ん、どうしたの当麻お兄ちゃん?」

上条(黙って見てるのも気分良くないよなぁ……酷い誤解を受けるだろうけど)

上条「……あー、円周さ。さっきの勝負ってどっちの勝ちなんだ?」

円周「え、勝負って?」

上条「婿入りがどうこう、ってヤツ」

円周「……なんだぁ、当麻お兄ちゃんってば――えっち」

上条「何でエッチ!?つーかどういう発想だっ!?」

円周「わたしのニーソックス、そんなに欲しいだなんて。ねっ、変態さんだよねっ?」

上条「うん、まぁ個人的にニーソは嫌いじゃないけど、どういう文脈からそう読み取ったのか、まずはそこから意見合わせて行こうか?」

円周「またまたーっ」 ギュッ

上条「お、おいっ!」

円周「……ありがとう、ね?当麻お兄ちゃん」

上条「……ん、どうしたしまして」

上条(気を遣われているのは俺の方か……つーか賢い子なんだな)

上条(でもまだ小学生だし、俺が守らないといけない。それは、絶対に)

――深夜

上条「……なんだ?」

上条(虫の声すら一つしない深夜、俺は何かの物音で目を覚ました)

上条「……」

上条(暫く耳を澄ませていたけど、特に聞こえるものはなく、再び横になった)

上条(だがしかし慣れない緊張感からか、睡魔が来るまでには暫くかかりそう……)

上条(突然、と言うか成り行きで来た『帰らず村』も、明日の朝一で出る事に決まった)

上条(失踪した学園生は出て来ないし、行方も掴めない。少なくともここへ来たという証拠は見つからなかった)

上条(それはまぁ、良かったとは思うけど……ならどこへ行ったのか、ってのは気になる)

上条(意外と何かの手違いでしたー、的なオチなら良いんだけど)

――科学ルート

上条(結局、俺と円周は同じ部屋で眠る事にした)

上条(持ってきた寝袋は使わず、一つの毛布に二人でくるまっている)

上条(高原特有の寒さが這い寄ってきているけど、お子様の高い体温が有り難かった)

上条「……」

上条(――って言ったら怒ると思うけど。まぁ女の子ってよりは小動物を相手にしている感じが強い)

上条「……」

上条(べ、別にロリコ×じゃないんだからねっ!)

上条「……」

上条(……あっれー?否定したのに、むしろ疑惑が高まってるような……?)

円周「……」 スースー

上条(……まぁでも、落ち着いてくれて良かったか)

……ズズッ

上条(……ん?)

……ズズッ、ズズズッ

上条(外から音がする、よな)

円周「……」

……ズズ、ズズズッ

上条(近づいて……は、多分無いような?でも、遠ざかってもない)

上条(水で濡れた土嚢袋を引き摺っているような、そんな音だ)

上条「……」

上条(室内は真っ暗、外は月明かりが出ている。破れた障子から覗けば、もしかしたら確かめられるかもれしない)

上条(どうするべきか……まぁ、決まってるんだけど)

円周「……」 スースー

上条(勝手に守るって決めたんだからな) ソッ

上条「……」

上条(……グロいのは勘弁して下さい。あと心霊ホラー的なのもノーサンキューでっ!)

上条 ジーーーーーーッ

上条(真っ暗、だけど……いや、何か動いている)

上条(波打つように、たくさん。いやいやっ、下は土だぞ?)

上条(白い波のように顫動している、あれは――)

上条「蛇、だ――」

シィンッ、クィッ、クィッ、クイッ

上条(俺の呟きに反応したように……いや、実際に反応したのだろう)

上条(白い蛇たちは屋敷の周囲を這いずっていたのを止め、次々と鎌首をもたげる)

上条(一匹、また一匹と蛇達の視線はこちらを凝視する)

上条(一面の白い花畑から、大小様々な花が咲くような――いや、そんな良いものじゃない!)

上条(蛇達は大きいもので数メートル、小さいものでも1メートル程)

上条「……有り得ないっ。そんな――」

円周「……お兄ちゃん……?」

上条(俺が振り向く直前、蛇達が微かに震えた気がした。だがそれも錯覚なんだろう)

上条「……大丈夫だ」 ギュッ

円周「……えへー、お兄ちゃんったら心配性なんだよねっ」

上条(円周は震えを隠しながら俺を抱きしめてくれる……いや、震えているのは俺の方かも知れない)

上条「……な、円周。表の『アレ』、なんだか分かるかな?」

円周「……見ちゃったんだ、『アレ』。出来れば今夜ぐらいは知らない方が良かったのに」

上条「それじゃお前は知ってたんだ?」

円周「神社と御札、あと異常に少ない虫さんから推測はしてたんだけど」

円周「ね?あんまり驚かないで、聞いてね?」

上条「……その前振りもどうかと思うけど」

円周「この村にはね。昔から神様が居たみたい」

上条「神様……?それってまさか!」

円周「うん、そうだよ。そうなんだよっ、この村は――」

円周「――蛇を神様として崇めていたんだ」


とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”前編 ~S村伝説~』 -終-



とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”後編 ~■■■■■■~』 -予告編-

――失踪した学園生の部屋に残されていた“と、される”メモ

 都市伝説の一つ、『■■■■■■』。

 始まりは村に人を食う蛇がいた。

 退治して貰おうと巫女に依頼し拮抗するも、ついには巫女が下半身を呑まれる。

 村人は蛇と取引。巫女の腕を切り落とし、呑ませやくする事で取引が成立する。

 が、村では片腕のない死体が見つかるようになる。

 一定の周期で、持ち回りで管理していた。

 その封じていたモノ、管理していたアレとの境を不用意に踏み越え、死ぬ思いをした人間が事の顛末を聞く事になる。

……しかし、■■■■■■を崇めていた家々は廃れ、また村そのものも維持出来なくなる。

そして当然のようにアレは外へ出て来る事になるだろう。

そうすれば、きっと。おそらくは。

肝試しか、あるいは迷い込んだ登山者か、暇潰しの研究者か、誰

『帰らず村』の由来を知

場所;XX県XX郡にある、

からす村、行き方。無人駅 石神井

――魔術ルート

上条「五和っ!?どうしてだよっ!一緒に帰ろうって約束しただろっ!?」

五和「……ごめんなさい、上条さん。その約束、守れそうにありません」

上条「そんな訳ねぇだろうが!だったらっ俺がその幻想を――」

五和「……覚えていますか?駅のホームでのスパムメール、狼の家族の誰を助けるか、って話」

五和「私は、全員、助けます。助けを求めているのであれば、救いの手を」

五和「自ら救いを求めているのであれば、余計に!」

五和「それが私の――信念です!」

――科学ルート

円周「……ねぇ、お兄ちゃん。ちょっと走るの疲れちゃったよ」

上条「大丈夫だ、俺が、俺がっおんぶするからなっ」

円周「そうじゃなくって……昨日のね、狼さんの家族の話覚えているかな?」

上条「何を急に――」

円周「お母さんはね、『生きる力の強い兄を助けるべき』なんだよ。科学的見地からすれば、少しでも助かる可能性がある方を、ね?」

円周「だから、お兄ちゃんもね――わたしを置いて、逃げ、よ?」

円周「わたしは大丈夫だからっ!だから、だからっ――」

円周「――当麻お兄ちゃんだけでも、生き、て?」

――『帰らず村』に落ちている“かもしれない”手帳

上条(――昨日から散々な出来事が俺、いや俺達に降りかかってきた)

上条(勿論二人で帰るつもりではあるが、万が一のためにこの学生手帳にあった事を記しておく)

上条(願わくば第三者に手に渡る事を――って、それだと俺達はマズイのか。まぁいいや)

上条(冗談は兎も角、そろそろ俺は覚悟を決めようと思う)

上条(俺は――)

1.五和と一緒にカンカンダラを祓う(魔術ルート確定)
2.円周と一緒にこの村から脱出する(科学ルート確定)

(※このレス投下後、次回投下するまで多数決。多分来週ぐらい)


とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”後編 ~■■■■■■~』 -予告編 終-



とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”後編 ~カンカンダラ~(魔術ルート)』

――二日目 早朝

上条「……」

上条(……どうにか、朝になった。なってくれた、って言うか)

上条(時間の経つのがこれほど遅く感じた事はない……まぁ覚えている限りでは、だけども)

上条(あれから一睡も出来ずに、只々辛い時間だけが流れた)

上条(『アレ』は俺達の泊っている屋敷の周りをずっと這いずり回っていた)

上条(ヤスリで金属を磨くような不快感。少しずつ精神が摩耗していく)

上条(生きた心地がしない……それなりに危ない橋を渡っているけれど、これは『異質』だ)

上条(死ぬか生きるか、ってのはまぁまぁあったけど――いや、あって欲しくはないけど)

上条(自分が死んだ後、つまり……喰われるってのは、流石になぁ)

上条「……」

上条(……でも、まぁ?俺は一人じゃない。それを考えると)

上条(出来るか出来ないかじゃなく、生きなきゃいけない)

上条(取り敢えずは……情報、かな。昨夜の『アレ』が何だったのか)

上条(事情を知っていそうな彼女へ話を振った)

――五和

上条「……昨日の『アレ』ってさ、何だったんだ?」

上条「つーか話している暇があったら下山した方がいいんじゃねぇかな、って気もするんだけど」

五和「ええとまず、落ち着いて――って言うのは無理だと思いますが、可能な限り冷静に聞いて下さいね?」

上条「……分かった」

五和「なんでしたらぎゅってしましょうか?」

上条「おいっ!」

五和「まぁ流石に冗談ですけど、冗談でなくともウェルカムですっ!バッチこーいっ!」

上条「いやだから時間が惜しいってのに、別の案件で体力消耗しても意味ないよね?」

上条「つーかADVでその選択肢取ったら、DeadEndまっしぐらだよな?」

五和「ある意味私的にはグッドエンドなんですが!」

上条「ウルセェよ!そのポジティブシンキングがウルセェ!」

上条(気ぃ遣わせちまってんなぁ、うん……気を遣ってんだよね?素で言ってるんじゃないよな?)

五和「えっとですね。失踪した学園生の残したメモに、実は都市伝説が二つ書かれていたんです」

上条「え?聞いてないんだけど、二つ?えぇ!?」

五和「メモにはここ、『帰らず村』のアドレスが書いてあったので、私――と言うか天草式は、『学園生が「帰らず村」に行った』と判断したんです」

五和「でも、実際はそうじゃなくって『学園生はその都市伝説を探しに、帰らず村へ入ろうとしていた』ようです」

上条「……何?目的自体がもう一つの都市伝説、『帰らず村』だけじゃなくって」

五和「そもそも学園生は『帰らず村』が本命ではなく、もう一つの結果がそうだと考えていたようです」

上条「……つまりその都市伝説の結果、村人全員が居なくなる惨事を招いた、と?」

五和「はい。その都市伝説は――『カンカンダラ』」

五和「人に仇をなす、半人半蛇の神です」

――カンカンダラ

上条(都市伝説――『カンカンダラ』)

上条(それが失踪した学園生が調べていたモノらしい)

上条(残されたメモの殆どが『帰らず村』の行き方や推測を書き連ねてあり、大して重要視はされなかった――が、だ)

上条(実際に俺達が『帰らず村』へ足を踏み入れれば、牙を剥いて来たのは『蛇』だった)

上条(二つの都市伝説は独立した点ではなく線、最初からイコールで括られていた、って話だ)

上条(……そもそも『カンカンダラ』とは何か?彼女が俺に教えてくれたのをまとめれば)

上条(まず田舎の村だか町に、悪さをするガキが居たらしい。高校~中学生ぐらいの?)

上条(そいつらの父親が悪さに怒って、ある場所へ行けるもんなら言ってみろ!と挑発すると)

上条「……」

上条(多少導入が強引な気がしないでもないが、まぁ悪ガキどもはある場所とやらに行くんだ)

上条(村外れの誰も来ないような場所、鬱蒼として気味の悪い所だったが、ガキどもは構わず突き進む)

上条(何やら良く分からない紐や棒、それで念入りに隔離されていた小さな塚のような所まで来るが――)

上条(何も異常は無い。静かすぎる程に、静かだ)

上条(何だつまらない、とガキどもは苦笑しながら帰ろうとするが)

上条(じぃっと、誰か――いや何かがこちらを見ているのに気づく)

上条(闇の奥から女の顔が覗いている)

上条(そいつは手をこちらへ向ける。一本、二本、三本、四本、五本、六本!)

上条(左腕が三本、右手も三本!抱きしめるためか、捕食するためか、そいつは両手――いや、全ての手を伸ばしてくる!)

上条(悪ガキどもは悲鳴を上げながら逃げ出し、暗闇の中を散々駆け回る)

上条(……その甲斐あった、のかは分からないが、命からがら自宅までたどり着けた、と)

上条(だが悪ガキの仲間の一人、そいつに一番近かった奴が『何か』を見てしまい。半狂乱状態となる)

上条(まさか本当に行くとは思っていなかった両親達は驚き、どこかへと連絡を取った)

上条「……」

上条(いや、色々とおかしいような気もするけど、そこもスルーすべきなんだろうな)

上条(悪ガキどもはどこかから現われた巫女さんや黒服から、『カンカンダラ』の伝説を聞く事となる)

上条(昔々、その村には『人を喰らう蛇』が居た)

上条(流石に困った村人達は、とある霊力の強い巫女へ退治を依頼した)

上条(巫女は快諾し、大蛇へと挑んだ――が、蛇と巫女の力は拮抗していた)

上条(巫女は次第に疲労が蓄積し……ついに下半身が蛇に呑まれてしまう)

上条(もうダメだ、と判断した村人達は蛇へ契約を持ちかける)

上条(『巫女の両手を切り落として、呑ませやすくする事で自分達は許してくれ』と)

上条「……」

上条(……随分な話だよな。つーかそんな取引が通用するんだったら、そもそも退治する話になっていないような気がする)

上条(……まぁ、村人達は蛇の提案を受け入れ、村には日常が戻ってきた)

上条(人喰らいの蛇から恒常的に命を脅かされるっていう、異様なものなんだけど)

上条(でも話はそこで終わらない)

上条(村では蛇の被害ではなくなり、片手を引き抜かれた屍体が見つかるようになった)

上条(巫女が――蛇に呑まれた彼女が蛇と同化して、失われた腕を求めて人を殺めるようになったからだ)

上条(以来、村では巫女を数家で交代して手厚く供養し、新しい犠牲者を出さないように努めてきた)

上条(それが『カンカンダラ』の大まかな話だ)

――魔術

五和「……悲しいお話ですよね」

上条「だよなぁ――って、そんな話じゃねぇって。同情するのは良いんだけど、ピンポイントで名前呼ばれている俺は?」

上条「流暢に話してる暇あったら、とっとと逃げた方が良いんじゃ?」

五和「まぁそれはあまり心配しなくて良いかと思います。結論から言えば『魅入られている』状態ですので」

上条「……うっわー。ヤな響きー」

五和「『牡丹灯籠』もしくは上田秋成の『雨月物語』と言うお話をご存じでしょうか?」

上条「『雨月物語』は教科書に載ってたかも?いや、土御門から聞いたんだっけかな」

上条「一目惚れしたけど死んじゃった女の子が、幽霊になって、会いに、来る、って……」

五和「つまりですね。上条さんも――」

上条「聞きたくないっ知りたくないっ理解したくねぇっ!」

五和「戦わなきゃ、現実と!」

上条「ウルセェよっ!?俺の知ってる現実じゃ、蛇のバケモノに因縁はつけられねえからな!」

五和「正しい意味の因縁で合ってます。むしろフラグを立てた?しきりに会いたがっていたようですしねー」

上条「え?そんな単純な話なの?」

上条「イヤでも待ってくれよ。前にインデックスから聞いたんだけど、俺は右手が幸運とか赤い糸とか打ち消してるらしいんだって」

上条「だからその、『カンカンダラ』からの因縁もヘシ折れるんじゃねぇのかっ!?」

五和「かも知れません。意外と村の外へ出れば追って来ないかも?」

上条「だよなっ!」

五和「でも学園都市へ帰ってインデックスさんと『もう、とうまは相変わらずとうまなんだよ!』とか、お帰りなさいガブーしている間に」

上条「違うよね?お約束になってるけど、それは挨拶じゃないよ?」

五和「ベランダから『ズズ、ズズッ』っていう何かを引き摺る音が聞こえるとしたら?」

上条「怖っ!?戦闘能力皆無の二人にどうこう出来る相手じゃねぇし!」

五和「と、言う訳で私達プロの出番ですっ!」

上条「流石っ!頼りになるぜ僕達の天草式っ!」

五和「明日の朝には教皇代理達が到着しますからっ」

上条「ここまで来て他人任せかよっ!?」

五和「……じゃ、じゃあ二人で特攻かけます?多分、見た瞬間にがっつり正気度が減ると思いますが」

上条「うん、待ってようかな。無理をするのは良くないと思うしっ」

五和「分かって頂けたようで何よりです。でも、取り敢えずは心配ないみたいですし」

上条「そ、そうなの?」

五和「昨日の時点で結界を破れるようでしたら、中へ入って来ていますしねー……あぁそうそう」

五和「絶対にやってはいけない事が二つあります。ネタではなく冗談じゃない事態になりかねないので、必ず守って下さいね?」

上条「お、おう」

五和「現時点ではワンアウト。スリーアウトで上条さんの人生ゲームがゲームセットとなります」

上条「嫌な例えだけど分かり易いよチクショウっ!」

五和「一つ目。『呼ばれても返事をしない』事です」

上条「え、でも昨日の時点でしちゃったけど」

五和「これ以上は、と言う事です。あ、私からの呼びかけに応えるのもNGですからね?」

五和「私の真似をしてとか、割とある話ですから」

上条「分かった。でも緊急事態で呼ばれるかもだから……五和の姿が確認出来ない状態では返事をしない」

五和「はい、それでお願いします。では二つ目、『招き入れない』事」

上条「家の中に、って事か?」

五和「とか、ですね。こっちへ来い、おいで、かもん等々。呼んだらいけません」

上条「分かった、けど。どうしてその二つがダメなんだ?」

五和「詳しくは省きますが、『縁(えにし)』みたいものでしょうか」

上条「袖すり合うも多生の縁、とかの?」

五和「他にも宿命とかパスって呼び方をするようですけどね」

五和「バンパイアが家へ招かれないと入れなかったり、名前を知られていると呪いをかけられたりする、みたいな感じで」

上条「ふーん?」

五和「彼らには彼らなりの『ルール』があって、私達はそれを遵守する事で接触を避けています」

五和「例えば洋の東西を問わず『黄泉還り』の話は伝えられています」

五和「その中の『ルール』として『朝になるまで後ろを振り返ってはいけない』と」

上条「……ソレを守っていれば安全、って事?」

五和「取り敢えずは、ですけどね。少なくとも一つだけ言える事があります」

五和「『カンカンダラ』の都市伝説は兎も角として、また昨日の『アレ』が何であったのかも置いておきましょう」

五和「少なくともこの村は、過去数百年だか、もしかするとずっとずっと昔から――」

五和「『アレ』と共存していた、って事になりますよね?」

――二日目 午前中 石神井神社

上条(……とまぁ昨日に引き続き二回目だ)

上条(まぁ『カンカンダラ』が分かった後だとなんて言うか、不気味だ)


――魔術

五和「はい、ちょっと失礼しますねー」 ギギィッ

上条「待って五和さんっ!?何いきなり中へ入ろうとしてんのっ!?」

五和「ですから手がかりを調べようとしているだけで――って、何にもないですね」

上条(お堂?本殿?だかの中は空っぽだ)

上条(床にへこみがあって、きっとそこには祭壇やらご神体が置かれてたんだろうけど、今はもう無い)

五和「あ、見て下さい。天井の所に何か挟まってます」

上条「どれ、届くかな、っと!……って無理か」

五和「あ、これ使って下さい」 パシッ

上条「あ、すいません――って槍っ!?」

五和「念のためにっ!」

上条「心強いけど、うん……」 ガシガシ

上条(流石に抜き身じゃなく、穂先には布が巻いてある。御札らしいものをツンツンすると、ハラリと床に落ちる)

五和「って失礼しますね」

上条(五和の横から覗き込む。御札は昨日見た物とよく似ている)

上条(しかし昨日見た物は中央に『閇美(なんて読むのか未だに分からない)』と書かれていたが、今度は別の言葉があった)

『神柄足』

五和「……かむからたり」

上条(五和の口から零れた言葉は、『カンカンダラ』と言う言葉に似ていた)

――二日目 午後 寝泊まりしている屋敷にて

上条(あれから幾つか廃屋を探してみた)

上条(めぼしい物は見つからなかったが、新しい発見が一つだけあった)

上条(廃屋の埃。床に上に積もっていたが、天井近くの梁や柱には筋状の跡――つまり蛇が這ったであろう跡が残されていた)

上条(同じ目線じゃないから気づかなかった。まぁ気づいたとしても、大して気にはしてなかったんだろうけど)

上条(彼女に引っ張られるまま『帰らず村』を見て回り、保存食でお昼を済ませた後)

上条(この村で何が起こっていたのかを話し合う事になった)

――魔術

五和「結論から言えば、この村では蛇神信仰、つまり蛇の神様が奉られていました」

上条「……マジで?」

五和「でも逆に考えればチャンスだと思います。もしかしたら対話出来るかも知れませんし」

上条「どうやってだよっ!?相手は蛇なんだぜ?」

五和「ええっと、ですね。多分勘違いされていると思うので、出来る限り丁寧に話しますが――『別に人間以外の神様って珍しくない』んですよ?」

上条「そう、なのか?」

五和「はい。例えばアッカド、シュメールのティアマット神は全てを生み出した大地母神にして蛇ですし」

五和「他にもエジプトのアペプ神、インドのガンガー女神、日本でも諏訪神やミシャグジ神もわりかし有名ですかね」

五和「他にもヘルメスの杖、ほら一本の杖に蛇が巻き付いたシンボルって見た事ありませんか?」

上条「あー、どっかの大学のシンボルで見た気が?」

五和「蛇自体は弱い動物です。捕食するよりもされる方が多い」

五和「けど脱皮や長期間を食べなくても死なない生態から、信仰の対象となっていました」

上条「意外、つっちゃ失礼か」

五和「でもって恐らく、この村では『水神』並びに『農耕神』だったんでしょうね」

上条「水、は何となく分かるけど、農耕ってのはどうしてだ?」

五和「元々蛇は水と関係無かったんですけど、水田ってホラ、他の生物からすれば水はあるは食べ物はあるわ、って入れ食い状態じゃないですか?」

上条「たまーに五和のボキャブラリーがおっさんに変わるよね?建宮の悪い影響なの?」

五和「ですから、稲を狙いに来る動物を補食するため、待っている蛇の姿が『水の守部』に見えたのではないかと」

五和「同様にネズミなどの害獣――特に、農耕文化を営む人類にとっては有り難い存在だった、と言えます」

五和「サイズも違いますので、向こうから人間を襲ったりはしなかったでしょうし」

五和「この『帰らず村』でもまた、ごくごく普通に信仰しているようです」

上条「さらっと言うよなぁ」

五和「例えば昨日の御札には」 カキカキ

『閇美』

五和「これは『へみ』って読みます」

上条「へみ、へみへみへみ……へび?」

五和「昔の仏足跡に残された文なので、当て字かもですが。あの御札は『蛇の力を借りてネズミなどの害獣を退ける』って意味だそうで」

上条「へー、すっごいなー。分かったんだ?」

五和「……って今朝教皇代理が仰ってました……」

上条「流石だよねっ天草式さん達はっ!一人がみんな、みんなが一人の精神で助け合おうってことだものっ!」

五和「……そしてこっちがお社の天井に貼られていた御札です」

『神柄足』

上条「かみ、つか、あし?」

五和「『かむから、たり』ですね。『偉大なる足』という意味でしょう」

上条「『カンカンダラ』に似てる?」

五和「と、いうよりもそちらが訛った言い方であって、本来はこちらの方が正しい呼び名なのでしょう」

上条「いやでもっ!無いだろ、足はっ!」

五和「お社の裏手に岩ありましたよね?縄目の跡がついた感じの?」

五和「あれは仏足跡(ぶっそくせき)って言いまして、元々は古代に仏の足跡や座部を掘る事で、信仰の対象としたようです」

上条「それじゃ、この、村が」

五和「はい、都市伝説『カンカンダラ』の発祥の地に間違いないかと」

上条「……参ったな……」

五和「あー、でも良かったと思いますよ」

上条「どうしてだよ?」

五和「あ、上条さん、もしかしてなんですけど――『カンカンダラ』が正しく伝わっているって思ってるんですか?」

上条「……へ?」

五和「都市伝説の方は恐ろしい祟り神、的な側面を不必要に煽っていますけど、私達は見てきましたよね?」

五和「少なくともこの村、この農村ではしっかりと神様として信仰されて来ている、って事を」

五和「そして『カンカンダラ』もまた農民を全滅させたりする事無く、集落を十数年ぐらい前までは存続させています」

五和「その証拠に村人達の家の荷物は、きちんと余所へ移していましたし、夜逃げしたとか、噂にあるような悲劇は起きていません」

上条「確かに」

五和「しかもお社が空っぽになっている、って事はご神体やそれに類する物が、きちんと持っていったんですよね」

五和「これって『人と神が共存している証拠』になりませんか?」

上条「五和の言っている事は正しいと思う、素人考えだけどな」

上条「でも、だったらどうして『カンカンダラ』――じゃない、『神柄足』は今もこの村に居るんだ?」

上条「村人が移住したんだったら、当然ついていくべきじゃないのか?」

五和「いわゆる土地神だと思います、はい」

五和「日本の神様には幾つか種類がありまして。特定の氏族を守る氏神、祟りを成す存在を奉った祟り神」

五和「そして『自然や自然の一部が神格を得た土地神』もあります」

五和「『神柄足』はこの村の自然、ここへ住む蛇の神格化したモノなので、村から離れられない、と」

上条「……だったら『神柄足』は村人が離れた後も、ずっと一人で……?」

五和「はい。帰って来ない村人を待ち続けている間に、恐らく色々と狂ってしまったんだと」

上条「独りは嫌だもんなぁ……」

五和「ですね。だからこそ私達は」

五和「一緒に、帰りましょう。ね?」

上条「……あぁ!」

――二日目 夜

上条(生活をしていれば当然、“音”は出る)

上条(自分の体から出る音だけじゃなく、俺が住んでいるような安普請のアパートなら、土御門兄妹がドタバタするのも聞こえてくる)

上条(表を走る車の音、通りで騒ぐ酔っぱらいや浮かれた学生の音)

上条(夜遅く帰ってくるサラリーマンが立てる革靴の音)

上条(冷蔵庫のうなり声や扇風機のモーター音)

上条(苦手かどうかはさておき、暮らしていく上では付き合って行かなきゃならない)

上条「……」

上条(俺もまぁ正直言えば田舎の生活に憧れた事もある。学園都市と違って静かな夜なんだろうなー、とか)

上条(そんな事を土御門に言ったら、『田舎は田舎で虫や獣の声がうるさい』んだと)

上条(上手くは行かないもんだな、って思っていたけど)

上条「……」

上条(――が、だ。聞き慣れた生活音や、珍しい虫の声の方がどれだけ気が楽だった事か)

上条(昨夜に引き続いて『アレ』が表を這い回る音は、ちょっと勘弁だよな?)

――魔術

神柄足『……おぉぉ……かみ、じょう……』

上条(……ってこれだもの。幾ら五和に安心って言われても、安眠なんて出来る訳が無い)

上条(家の周囲をグルグル這いずっているらしく、10分ごとに近づいてくる)

上条(って事は明日の朝まで、一時間に六回、かける十……60回ぐらい接近されるのか)

上条(……まぁ家の中にいる分には大丈夫なんだそうだが)

上条「……」

上条(軽めの夕食を採った後、五和と俺は話し合った)

五和(回想)『では呼ばれても返事をしないため、糸で繋いでおきませんか?』

上条(回想)『糸?いや別に同じ部屋にいれば良いんじゃ?』

五和(回想)『年若い男女が同じ屋根の下っ、同じ部屋ではマズイですっ!』

上条(回想)『お前ら、同じマンションで暮らしてなかったっけ?』

五和(回想)『家族はノーカンかと』

上条(回想)『家族、つーか同僚?』

五和(回想)『で、取り出しました赤い糸っ!これで結べばオッケーですっ!』

上条(回想)『……そこまで俺と一緒の部屋だと身の危険を感じるのか』

五和(回想)『い、いえいえいえっ!とんでもないですっ!むしろウェルカムですが!』

五和(回想)『魅入られたってバステは基本一人で解決する必要があるんです』

上条(回想)『バステ言うな』

五和(回想)『耳なし芳一でもそうだったように、この手の縁は一人で解決しなければいけないんです、ね?』

上条(回想)『まぁ確かに聞くけどさ。あの話って「最初からお坊さんが出張れば良くね?」って子供心に思ってたけども』

五和(回想)『とは言え心配でしょうから、このお裁縫セットから取り出した赤い糸を、こうって』 グルグル

上条(回想)『俺の左手の小指に?』

五和(回想)『お互いの薬指に繋げればほらっ、隣の部屋にいても引っ張るだけで分かりますっ!』

上条(回想)『あぁ声を出したりしなきゃ問題ないのか』

五和(回想)『ですね』

上条(回想)『でもこれ、手首に巻いた方がいいんじゃ?何で小指?』

五和(回想)『……』

上条(回想)『……』

五和(回想)『――はいっ、と言う訳でお疲れ様でしたっ!おやすみなさいっ』

上条(回想)『逃げんなよっ!?』

五和(回想)『あ、こっちの部屋は絶対に開けないでくださいね?』

上条(回想)『なんだその鶴の恩返し』

上条「……」

上条(と言う流れになったんだが。隣の部屋では試したい事があるんだとか)

上条(んー……昨日からきちんと寝てないしなぁ)

クイ、クイッ

上条(小指の紐が引っ張られて……あぁ、大丈夫だよっと) クイッ

上条(よく運命の相手とかの表現で小指と小指が赤い糸で繋がれている、って)

上条(意外と愛は痛い、ってのが分かった。つーか鬱血しねぇだろうな、これ)

上条 カチッ(LEDライトを点け、手帳を取り出す)

上条(これじゃ外に光が漏れる……リュックの陰で書けば、まぁ大丈夫か)

上条(――昨日から散々な出来事が俺、いや俺達に降りかかってきた)

上条(勿論二人で帰るつもりではあるが、万が一のためにこの学生手帳にあった事を記しておく)

上条(願わくば第三者に手に渡る事を――って、それだと俺達はマズイのか。まぁいいや)

上条(冗談は兎も角、そろそろ俺は覚悟を決めようと思う)

上条(俺は――五和と一緒にカンカンダラを祓う)

上条(そもそもの始まり――『帰らず村』では『神柄足(かむからたり)』という蛇神が信仰されていた)

上条(それ次第は珍しくもない……んだ、そうだ。少なくともこの村に於いては村人と共存関係にあった)

上条(もしも『神柄足』が『カンカンダラ』の都市伝説にあるような、所謂祟り神としての側面があった場合、とっくの昔に村は滅びていたと)

上条(その証拠にこの村の中には不自然な血痕やら、荒らされた形跡はない)

上条(朽ちた家々は歳を経た大木がそのまま土へ還るかのような、自然の姿を晒している)

上条(嘗て自然を切り開いて作られた村が、今度は自然へと融ける、か)

上条(住んでいた村人はどこへ行ったのか。昨日会ったおじさんに聞かないと分からないけど、移り住んだのだろう)

上条(……でも、だ。人は移住出来ても、崇めていた神様までは無理だった)

上条(この自然が、そしてここに住まう『蛇』が神格化した存在だから)

上条(社の中が綺麗にされている以上、住人からの信仰も相当深かったんだろう)

上条「……」

上条(……けど、『神柄足』は独り、残った)

上条(誰も居ない村に。嘗て暮らしていた村人の温もりを求めて)

神柄足『じょぉおおおぉぉ……っ』

上条「……」

上条(……俺達の基準で判断してはいけない。理解したつもりではあるけど)

上条(もしくは五和の言っている事が間違いで)

上条(表に居るのが、実は人を好んで喰う蛇のバケモノだったとしても、だ)

神柄足『……る、ぉぉぉぉぉぉぉうううぅぅ……』

上条(聞こえる声は、響く音は、そう酷く――物悲しい)

上条(子を亡くした母親の慟哭。長年ずっと寄り添っていれば、『帰らず村』の村人は彼女にとって子や孫みたいなもんだろう)

上条(それを失い。またその子孫達が生きていく様を見れず、ずっと独りで誰かが来るのを待っていた、か)

上条(……果たして、俺に出来る事は無いのだろうか?)

上条(明日の朝まで建宮達が来るのを待つ?本当にそれだけか?)

上条「……」

上条(俺が助かる、って選択肢ならばそれが最善。けど)

上条(『神柄足』はどうなる?天草式に殺されるのか?封じられるのか?)

上条(それともこのまま、誰も居ない夜を彷徨い続けるのか……?)

上条「……」

上条(……考えるな。それはきっと俺がどうにか出来る問題じゃねぇ)

上条(幾ら『右手』があったって、殺せる幻想なんて)

クイクイッ

上条(……良いタイミングで引っ張ってくるなぁ)

上条(うん。明日、だな。建宮達と合流したら、どうにか出来る案を探ってみよう)

上条(独りでうじうじ考えるより、五和達と一緒なら――)

……

上条「……ん?」

上条(朽ちかけた柱を背に暫く……10分ぐらいウトウトしていたらしい)

上条(この状況下で眠れる根性の図太さに感謝すべきか呆れるべきか)

上条(……まだまだ夜は明けない。『神柄足』との付き合いは続く)

上条「……?」

上条(おかしい、よな?そろそろ回ってくる時間だし、大体反対側に回ったって微かな音は聞こえる)

上条「……」

上条(……やっぱり、音が途絶えている。いつの間に?)

上条(暫く様子を見るべきか、それともこれ自体がトラップで、そっと外を覗いたらガーって来そうな……?)

上条(どうしたもんか……やっぱ専門家かな?)

上条「(なぁ五和、ちょっといいかな?)」 クイッ

上条「……」

上条「(五和?)」 クイッ

上条(引っ張った手応えはある。けど返事はない)

上条(寝ちまってる?……人の事は言えないけど、昼間に少し仮眠取っただけだからな)

上条(女の子には辛かったのかも……)

上条「……」

上条(とか、考えてる間も特に音はしない)

上条(俺の呼吸音ぐらい。別に荒い息って訳じゃないけど、他が静かだから対照的に大きく聞こえるだけだ)

上条「……?」

上条(おかしい、よな?)

上条(『どうして俺の呼吸音だけがする』んだ?『隣に居る筈の五和の音が全然しない』のは何故だ?)

上条(これじゃ、まるで――)

上条「……五和?俺だ、上条当麻だ。学園都市の」 クイッ

上条(小指に結ばれ赤い糸の感触はある。あるが――堅い)

上条(もしも糸が五和に結ばれているんだったら、多少は弾力性もある筈なのに)

上条(糸から伝わってくる重みは、只々無機物めいている)

上条「五和っ、開けるからなっ!いいよなっ!」 ギシィッ

上条(急ごしらえの襖を開いた先、五和がいる――筈の、隣の部屋には)

上条(誰の物音も、何の物音もしない。それは当然だ)

上条(俺の左手から伸びている赤い糸は――)

上条(本来繋がれるべき女の子とは似ても似つかない、ささくれ立った柱に繋がれ――)

上条(そこに居るであろう五和の姿はどこにも、なかった)

――『帰らず村』 石神井神社 月下

五和「――では、あなたが何を求めているのか、教えて下さいませんか?」

神柄足『……』

五和(私がそう『彼女』――嘗て神であったモノへ問うと、彼女は手を伸ばしてきた)

五和(左右六本ある内の一つ――恐らく、ガンガー女神やナーガの系譜なのだろう)

五和(『彼女』は上半身が人、下半身が大蛇という出で立ちであった)

五和(人、と呼ぶには少々人から外れすぎてはいるものの、その顔は酷く疲れている事だけが理解出来る)

五和(……無理もない。どれだけ独りだったのどれだけ苦しい思いをして来たのだろう。想像もつかない)

五和(何かの術式でも発動させるのか、『彼女』の手が私に触れる――)

五和(それが致命的なものなのか、只の意思疎通であるのか。どちらにせよ、私に選択肢は無い)

五和(何故なら私は――)

上条「止めろっ五和っ!!!」

五和(……やっぱりだ。この人は、私の決心なんかお構いなしに踏み込んでくる)

五和(……そんなあなたの事が、だいすき、です)

――『帰らず村』 石神井神社 月下二人

上条「五和っ!?どうしてだよっ!一緒に帰ろうって約束しただろっ!?」

五和「……ごめんなさい、上条さん。その約束、守れそうにありません」

上条「そんな訳ねぇだろうが!だったらっ俺がその幻想を――」

五和「……覚えていますか?駅のホームでのスパムメール、狼の家族の誰を助けるか、って話」

五和「私は、全員、助けます。助けを求めているのであれば、救いの手を」

五和「自ら救いを求めているのであれば、余計に!」

五和「それが私の――信念です!」 チャキッ

上条(そう言って五和は手にした武器を『俺へ』向けた)

上条「違うだろっ!?お前が何をしてるのかっ、しようとしてるのか分かってんのかよっ!?」

五和「……上条さん、もう気づいてますよね?私が何をしようとしているのか」

上条「分からねぇよ!分かりたくもねぇっ!」

五和「ははー、いやぁ謙遜は良くないですってば。そうじゃなかったら、そんなに必死になって駆けつけてくれる訳がないですから」

五和「私が『成り代わろう』としてるって、もう気づいちゃいましたよね?」

上条「……お前、お前はそれでいいのかよっ!?つーかそんな事が出来る訳が――」

五和「多分、イケると思います。『カンカンダラ』の方で伝承にもあったように、『巫女が蛇と合身した』ってのは、元々そういう意味だったのではないかと」

五和「幾つかの家々が持ち回りで管理をしていた――それは『代々、人が神に転じて村を守っていた』んじゃないでしょうか」

上条「そんなのお前がする必要ねぇじゃねぇか!だって!どうして五和が助ける必要が、犠牲にならなくちゃいけないんだっ!?」

五和「今も言いましたが、『彼女』は解放されたがっています。つまり」

五和「目の前で苦しんでいる人が居る。救いを求める人が居る」

五和「だから、助ける。それだけの話です」

五和「……上条さん、今までありがとうございました」

上条「五和!」

五和「あなたと過ごせた時間は短いですが……でも、とても楽しかったです」

上条「――ふざけんな」

五和「ふざけてなんかいません。大真面目です」

上条「俺は、お前のそのふざけた幻想を――ぶっ殺す!!!」

五和「……懐かしいですね。上条さんと敵対するのは、オルソラさんの時以来ですか」

上条「ぶん殴ってでも止め――」

神柄足『……かみ、じょう』

上条「……えっ?」

神柄足『ジュララララララララララァァァァァァッ!!!』

五和「離れてっ!?」

ズゥンッ!!!

上条「な、なんだっ!?どうして『神柄足』が今更暴れるんだよ!」

五和「分かりませんよ!とにかく、逃げて下さ――」

神柄足『シュギィィィィィィィィアァッ!!!』

上条(マズイっ!?押し潰されるっ!)

五和「ダメええぇぇぇぇぇぇっ!!!」

ブスッ、ズズゥンッ……

五和「……え?」

上条「……な、なんだ……?」

上条(土煙を上げて『神柄足』の巨体が横たわる)

上条(俺が目を開けるとまず目に入ってくるのは五和の背中。庇ってくれたんだろう)

上条(そして、次に見えたのは――五和の槍で深々と胸を貫かれている『神柄足』の姿だった)

五和「あ、あぁっ!?」

上条「落ち着けっ!まずは止血しないと――」

上条(彼女から流れる血は青錆の色と臭いによく似ていて。それが神社の境内一杯に広がっていく)

上条(呆然とする五和へ一喝しようと、俺は)

神柄足『……ゥ』

上条「えっ?」

上条(人の上半身――瞼は無く、鼻もそげ落ち、耳は無く、頭髪もまばらになっている『彼女』)

上条(守るべき民を失い、気が狂わんばかりの時を孤独に過ごし、来訪者に一縷の望みを見た『彼女』)

上条(俺は最後の言葉をきちんと聞き取るために、右手で抱き寄せた)

上条(助からない傷を負った『彼女』へ触れると、触れた部分から徐々に消失していく)

上条(それでも俺は構わずに、『彼女』の口元へ耳を寄せる)

神柄足『……ごぼっ……』

上条(血を吐きながら、それでも必死に『彼女』が紡いだ最後の言葉は――)

神柄足『……ありがと、ウ……』

上条(……とても、シンプルなものだった)

――夜が明ける

上条(結局、俺達が埋葬するまでもなく、『彼女』の遺体は消えた)

上条(泣きじゃくる五和を宥めていたら、いつの間にか朝になってしまっている)

上条「……なぁ、五和。怒ってる?」

五和「……いえいえっとんでもないです!上条さんの方こそ、怒っていませんかっ?」

上条「俺は別に、つーか五和に気を遣わせちゃったなー、ぐらい」

五和「私なんて全然ですっ!むしろ独断専行した方が悪いんですし!」

上条「まぁ……気持ちも分かるけどな。でも結局、『彼女』は何がしたかったんだろ」

五和「多分、ですけど。『楽になりたかった』んじゃないでしょうか」

上条「……死んで、って?」

五和「どうでしょうかね?それだったら自殺するとか、色々方法はあるような気がしますけど」

五和「もしかしたら『死ねなかった』のかも」

上条「不死身的な話か?」

五和「蛇は死と再生のシンボルですから、少しの事ぐらいでは中々、じゃないかと」

上条「……そっか」

五和「……ごめんなさい、色々と」

上条「いやまぁ俺も一人で突っ込む方だし、偉そうな事は言えねえけどな」

五和「ですよねっ!」

上条「立ち直り早っ!?……反省しろよ?」

五和「しませんよ?」

上条「なんでだよっ!?」

五和「救いを求める方がいれば、助けるだけです」

上条「いや、それはスゲーって思うけどな?でも、個人的な意見を言わして貰うとさ」

五和「はい?」

上条「あのままお前が『彼女』になっちまったら、俺はどうしたら良いんだよ?つーか多分一生後悔しながら生きると思う」

五和「それは……ごめんなさい」

上条「他人を救済するって生き方は……まぁ、なんつーか圧倒される時もある」

上条「でもそれって本当に正しいのか?他人を助けるために、身近な知り合いを悲しませてまでする必要はあるのか、って」

五和「どうでしょうねー?それはやはり魔術師としての生き方ですから、そう簡単には変えられません」

上条「……面倒臭いなー」

五和「はいっ、私面倒な女ですからっ!」

上条「そう言う意味じゃねぇよっ!あ、コラ笑ったまま崖の方へ向かうんじゃないっ!」

プップー

五和「車のクラクション音、ですね」

上条「ってか、見覚えのある軽トラ。あ、一昨日のおじさんか」

男「おー、まだ居たんだ。どうだい?研究の方は」

上条(おじさんは神社の下へトラックを横付けすると、荷台に積んであった花束と一升瓶を手にし、境内へと上がってくる)

上条「えぇまぁぼちぼち、かな?」

五和「こちらに神様は、もう居ないんですよね」

男「あー、ウチの村に引っ越したからなぁ。社ん中、空っぽだったろ?」

五和「はい――っておじさんこちらのご出身なんですかっ?」

男「子供ん頃、つっても何十年前も昔の話だわな」

男「あ、にーちゃん達ちょっと退いてくれ」

上条(そう言っておじさんは花束と一升瓶を社の前に置き、懐からライターと線香の束を取り出した)

男「……今日がな。石神井さまの祭りの日だったんだよ」

五和「でしたら、その、移した先の神社でお祭りがあるんじゃ?」

男「んー、そうなんだけどな。俺はまだこっちに居るような気がしてなぁ。あぁ良かったらにーちゃん達も拝んでやってくれ」

上条(線香へ火を付け先端に赤い玉が点ると、おじさんは三分の一ずつ俺にと五和に渡し、残りを本殿の前に置いた)

上条(線香の煙が目に入ったのか、俺はなんだか泣きそうになった)

男「こんな事ぁ言ったら笑われるかもしんねぇが、俺はここの神様と会った事があんだよ」

五和「本当ですかっ!?」

男「おうさっ。ガキの時分、山ん中で迷子になっちまってよ」

男「そん時、泣きながら歩いていたら、正面のガサ藪の中に巫女さんが立ってんだ」

男「それがすっげぇ美人でな?……あぁそれは関係無ぇか。まぁ俺をおいでおいでするから行くわな?」

男「そうして近寄るとガサって藪の中に入る。アレどこ行ったんだ?ってまた遠くの方でおいでおいでしてるんだわ」

男「何回かおっかけるウチに麓まで降りてきたんだが、あの巫女さんはどこにもいねぇ。親父には蛇に担がれた、って言われたけどな」

上条「……変わった、話ですね」

男「だよなぁ?――って、あんたら、研究は終わったのか?なんだったら駅まで載せてくけど」

五和「はい、終わりました。もう多分、来る事はないでしょうけど」

男「……そうかぁ。田舎だしなぁ、ここも」

上条「……」

五和「上条、さん?」

上条「あぁいえ、その――来ます。やっぱり」

五和「……はい?」

上条「来年の今頃、石神井さんのお祭りに合わせて――」

上条(昔から蛇は再生と豊穣の象徴だと言われてきた。だったら)

上条「――また、『彼女』に逢いに」

男「彼女……?待ち合わせでもしてんのかい?」

上条「約束はしていませんが、きっとここで逢えるような気がするんです」

男「そうかい。だったら石神井さまにもついでに挨拶してってくれや。元々は子供の大好きな神様だっつー話だから」

五和「わ、私も来ます!」

男「おっ修羅場じゃねえかにーちゃん?」

上条「違いますよっ」

男「いやいやっ若いウチには浮気の一つや二つはすべきだと俺は思うぜ?」

五和「奥様にチクりますよ?」

男「一途なのが一番だよなぁっ!」

上条「あ、あれ?何かリアクションが俺と似ているような?」

男「(いいか?お前の『彼女』は思い詰めるタイプと見た。だから適当に話合わせときゃ問題ねぇ)」

上条「(そんなアドバイス要らねぇよっ!?)」

男「(あ、でもケンカしたらブッすり刺されるな)」

上条「(うん、昨日そうなりそうだった)」

五和「もしもーしっ。荷物まとめますから手伝って下さいよー」

男「そしてにーちゃんの方は尻に敷かれるタイプ、と」

上条「ウルセェっ!何一つ間違ってない所がウルセェっ!」

上条(俺達は手早く荷物をまとめ、軽トラの荷台に載せて貰った)

上条(行きとは違って、ガランとしていて快適そうだが、それはそれで何故か寂しい)

上条(幾つかの廃屋や祠を通り過ぎ、蝉が泣き喚く緑のアーチ……まぁ、村の入り口までさしかかった頃)

五和「……ぁっ」

上条(五和が指さす先、石神井神社がある丘の上に白い人影を見た)

上条(この距離では分かる訳なんて無い。だからそれは幻想の筈なのに、俺にもくっきりと見えているらしい)

上条(おじさんの見た姿そのままに、『ずっげぇ美人』な巫女さんが『二本しかない両手』をぶんぶん振っていた)

上条(だから、俺はこう叫んだ。負けじと右手を振りながら)

上条「また、来年なあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”後編 ~カンカンダラ~(魔術ルート)』 -終-

とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『帰らず村』 -完-



とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”後編 ~カンカンダラ~(科学ルート)』

>>155続き

――円周

上条「……昨日の『アレ』ってさ、何だったんだ?」

上条「つーか話している暇があったら下山した方がいいんじゃねぇかな、って気もするんだけど」

円周「……うん、出来ればそうした方が良いと思うんだけど。あの暗い山道、振り切れる程速く歩くのは難しいんじゃないかな?」

上条「だからってこのままって訳にも行かないだろうが!」

円周「お、お兄ちゃん?」

上条「あ、ごめんっ!強く掴んじまってて」

円周「……初めては、優しく、ね?」 ポテッ

上条「しないしないしないっ!緊急事態に無駄な体力使ったらDeadEnd確定だからね?」

円周「お兄ちゃんの――幻想殺しっ」

上条「ごめんな?俺のアイデンティティーに『意気地無し』的な意味はないからね?」

上条「つーか君や知り合いの中学生にも言いたんだけど、『幻想殺し』にバステちょい載せするのやめて貰えるかな?」

上条(気ぃ遣わせちまってんなぁ、うん……気を遣ってんだよね?素で言ってるんじゃないよな?)

円周「実はね、失踪した学園生が残したメモってのがあるんだよ。ほらっ」 ピッ

上条「あーうん。この『カンカンダラ』って単語か?」

円周「前にも言ったけど『結果には必ず経過と要因がある』って言ったよね?」

円周「その学園生も『帰らず村』が“結果”だって思ってたみたい」

上条「と、すると『カンカンダラ』?が経過兼要因って事で」

円周「ぶっちゃけ『帰らず村』の村人達を殺したのは、『カンカンダラ』なんじゃないか、って学園生は思ってたみたいだね」

上条「……つー事は何?何かもう嫌な予感がひしひしとするんだけども」

円周「その“要因”が今もまだ村に残ってて――」

円周「――それが『アレ』だって話だよ、お兄ちゃん」

>>157続き

――科学

上条「なんつーかなぁ。外に見える所には居ないけど、今の内に下山した方がいいんじゃないかって思うんだが」

円周「お兄ちゃんの気持ちは分かるんだけど、国道へ抜けるまでは凄く狭い山道を通るよね?」

円周「あそこで、わあっ、って来られたらどうしようもないかも」

上条「いやでもGPS付きの携帯すら通じないんだろ?」

上条(只、助けを待つにしたって、厳しい気がする。流石に口には出せないけど)

円周「それは大丈夫だよっ。リンクが切れて36時間経てば、『お迎え』が来る事になってるから」

上条「『お迎え』?」

円周「『猟犬部隊』って言えば分かるかなぁ?学園都市謹製の武装ヘリで、もしかしたら数多おじさんも来てくれるかも知れないし」

上条「へー、料理教えてくれた人かー。レスキュー部隊みたいなもんか」

円周「レスキューって言うよりもリサイクルかなぁ?だから、明日の朝まで持ちこたえれば確実に助かるんだって」

上条「昨日、家の周りに撒いていた薬品はどれだけ持つんだ?残りは?」

円周「大体2、3日かな。後、100mlぐらいはあるけど」

上条「……そっか。なら、待っていた方が良いのか」

円周「って思うけど――あ、そうだ。この獣除けはお兄ちゃんが持ってて?」

上条「円周が持ってた方が良いと思うけど。つーか、体にかければ安心なんじゃ?」

円周「お兄ちゃんはお腹ペコペコでも、目の前にウミガメのスープが出て来ても食べない人?」

上条「本当にウミガメだったら食べるけどなっ!……抑止力も絶対じゃないのか」

円周「危なくなったら頭から被ってねっ」

上条「気持ちは有り難いけど、そんな羽目になるぐらいだったら、俺が円周にかけさせて貰うからな?」

円周「やだ……お兄ちゃん、円周にかけちゃうの?汚したいの?」

上条「そう言う意味じゃねぇっ!?ってかお前邪気の塊だよね?どっからその知識仕入れやがったの?」

円周「数多おじさんが『木原に相応しいクソッたれを堕とす時に必要だ』って」

上条「えっと、そのスマートフォン動いてない設定なんだよね?色々と無茶し過ぎてないかな?」

円周「まぁそんな訳だから、村から出るのは良くないと思う――けど、おかしいよね?」

上条「どれが?色々とありすぎて感覚が麻痺してる感じだ」

円周「えっとね。誤解されがちなんだけど、蛇って言うのは本来弱い動物なんだよ」

上条「……はぁ?だって毒持ってんだぞ?」

円周「うん。『そもそも強い動物だったら毒を持つ必要はない』よね?ライオンさんやトラさんは持ってないでしょ?」

上条「言われてみれば確かに」

円周「毒自体精製したり、維持するにのは多大なカロリーを消費するし、一部の昆虫は毒を使うと死んじゃったりするから」

上条「言いたい事は分かったけど、何で今更生物の話?」

円周「そんな毒を持っている蛇であっても、食物連鎖では下位に居るって事だよ」

円周「鳥は天敵だし、野犬や狼や猪、時にはネズミ辺りに食べられる事も珍しくない」

円周「だったらさ、何であんなに増えてるかな、って」

上条「あー……数百匹、しかも大きいのだと人よりでっかかったよな」

円周「『大量の蛇が大きくなるだけの要因』って何かな?」

上条「……成程。不自然か」

上条「実際に、『帰らず村』周辺から小動物やら虫達が居なくなってる、つっても限度はある」

円周「カンカン何とか――神様やオバケはこの世には居ないんだよ、お兄ちゃん?」

円周「だからこの異常な現象も、きっと何かの『要因』がある筈なんだよ」

上条「要因なぁ」

円周「だっよねー?うん、うんっ、『木原』だったらアクティブに出かけないとね!」

上条「自殺行為じゃねぇか!?理性さん帰ってきて!」

円周「大丈夫だって。蛇さん達はアルビノだから日光には弱いだろうし!……タダの白変種かもしれないけど」

上条「だったらさっさと山降りた方がいいんじゃねぇか!」

円周「森の中は適度に日差しが遮られて危険だってば。ね?」

上条「いやいやっ不用意に出歩くのも良く――って待て待て一人で行くな話を聞きなさいよおぉっ!?」

円周「あははーっ、つかまえてごらーん?」

上条「だから今使う台詞じゃねぇつってんだろ!」

>>160続き

――科学

円周「おっじゃましまーすっ!」 ギギィッ

上条「待って円周さんっ!?何いきなり中へ入ろうとしてんのっ!?」

円周「んー?手がかりがないかなーって――って、なんにもないかぁ。ちぇーっ」

上条(お堂?本殿?だかの中は空っぽだ)

上条(床にへこみがあって、きっとそこには祭壇やらご神体が置かれてたんだろうけど、今はもう無い)

円周「あ、見て見て。天井の所に何か挟まってるね」

上条「どれ、届くかな、っと!……って無理か」

円周「あ、お兄ちゃん。受け止めてね?」 タタンッ

上条(言うが早いか円周は、俺の腰、肩を蹴り上がって天井まで跳躍した……運動神経良いな)

円周「よっと」

上条「無茶すんなよっ」 トスッ

円周「わーいっ!お姫様抱っこだ――もう、当麻お兄ちゃんってばわたしの初めてをどんどん奪っちゃうね?」

上条「さーて何が書かれているかなっ!気ーにーなーるーなっ!」

円周「あ、あれ?スルースキルが発動してる……って、昨日のヤツと似てるかな」

上条(円周の横から覗き込む。御札は昨日見た物とよく似ている)

上条(しかし昨日見た物は中央に『閇美(なんて読むのか未だに分からない)』と書かれていたが、今度は別の言葉があった)

『神柄足』

円周「……かむから、たり」

上条(円周の口から零れた言葉は、『カンカンダラ』と言う言葉に似ていた)

>>161続き

――科学

円周「んー、この村で蛇さんを神様として崇めていた、ってのは確定したよ」

上条「……マジで?」

円周「えっとね。でも勘違いしちゃいけないんだけど、人間は大昔から蛇さんを崇めていたんだよね」

上条「そうなのか?」

円周「古代バビロニアの大地母神ティアマト、オリンポスのガイア、北欧のヨルムンガンド」

円周「日本でも八岐大蛇が有名だよねっ」

上条「神様として、か?むしろ退治される方だと思うんだけど」

円周「あー、逆逆。それはあべこべなんだよ」

円周「例えばティアマトは子孫の一人であるマルドゥークに殺されるよね。ガイアや八岐大蛇も同じ」

円周「これは『神授政治の正当性』を表しているんだ」

上条「しんじゅ?」

円周「昔は王様が政治をしていたよね?その政治の正当性を神話に求めてたんだ」

上条「つまり?」

円周「『俺様は神からの権利を貰ってんだから従うんだぜ』」

上条「うん、なんかラノベのタイトルにありそうだよね?すっごくわかりやすいけど」

円周「当時は弱肉強食、負けた方が勝った方に支配されるのは当たり前……まぁ当時って言うか、70年代までは世界各国でもやらかしていたんだけど」

円周「まぁ、ここら辺は戦後ナチスが糾弾されるけど、戦前から欧米じゃ反シオニズム運動はあったわけだし?」

上条「面倒臭くなるから止めよう?スイスもオランダもフランスも、人権国家で通っているんだからねっ!」

円周「あっるぇ?ユダヤ人の難民をドイツへ送り返したり、一緒にゲシュタポ作ってたのはどこの国だっけ?」

上条「そんな事よりも神授説の方が聞きたいなっ!世界史は大切だけども!」

円周「んー、『支配』は割に合わなかったんだよね。虐殺も起きてはいるけど、それよりも労働力を確保した方が有意義でしょ?」

上条「奴隷とかにした方が良いんじゃないのか?……あぁいや人道的には良くないけど」

円周「やっだなぁお兄ちゃん、『もしも奴隷が経済的に有意義であったとしたら、欧米で廃れる訳が無い』じゃない?」

上条「さっきから問題発言が続くけど、そろそろ毒吐くの止めような?」

円周「治安維持とのコストを天秤にかけて、ダメだったから諦めただけの話」

円周「だから『同化』って方向へ進んだんだよ」

円周「でもって蛇の神様ってのは征服された方の神様であった、とされているね」

上条「お前らの神様は俺達がやっつけてやったから、俺達の王様は偉いんだぞ、って?」

円周「大体そんな感じかなー。んでね、王権神授を素でやってるクレージーどもだから、アラブの春も――」

上条「この村の話が聞きたいよねっ!脱線しまくるんじゃなくって!」

円周「昨日と今日の御札に書かれていた単語、覚えてるかな」 カキカキ

『閇美』

円周「これは『へみ』って読むの」

上条「へみ、へみへみへみ……へび?」

円周「昨日、村を探している時にも言ったけど、あの御札は『蛇の力を借りてネズミなどの害獣を退ける』って意味なんだよね」

円周「こっちがお社の天井に貼られていたのだね」

『神柄足』

上条「かみ、つか、あし?」

円周「『かむから、たり』ね。『偉大なる足』という意味だと思う」

上条「『カンカンダラ』に似てる?」

円周「ってかそっち訛った言い方で、本来は『神柄足』なんじゃないかなぁ」

上条「いやでもっ!無いだろ、足はっ!」

円周「お社の裏手に岩あったよね?縄目の跡がついた感じで」

円周「あれは仏足跡だよ。元々は古代に仏の足跡や座部を掘る事で、信仰の対象としたんだけど」

円周「蛇の足跡ってそのままみたいだし」

上条「それじゃ、この、村が」

円周「うん、都市伝説『カンカンダラ』の発祥の地に間違いないかもっ」

上条「……参ったな……」

円周「ただし、ね?幾つか『カンカンダラ』には矛盾があるんだよ」

上条「矛盾?どんな?」

円周「だってこの世にオバケなんて居ないじゃん」

円周「だから巫女さんや、巫女さんと同一体になった神様なんて実在しないんだよ」

上条「――え?」

円周「そもそも『蛇が人間を襲う事は有り得ない』んだよね。何と言ってもサイズが違いすぎるんだから」

上条「待て待て待てっ!そうすると表の白蛇達は何なんだよっ!?」

円周「大きさもそうなんだけど、『あの数が存在出来る説明がつかない』んだよ、当麻お兄ちゃん」

円周「この村にはエサとなる小動物や虫の姿が極端に少ないけど、それだけで足りる量じゃない」

上条「でも、そこにいるって事は現実じゃないのかよっ!?」

円周「……うーんとねぇ。お兄ちゃんは勘違いしているかも知れないけど、この世界には科学で解明出来ない事もあるよ。そりゃね?」

円周「でもそれは『まだ解明出来ていない』だけの話」

円周「『現時点で解明出来ない存在をオカルトだ魔術だ、とかいって蓋をしちゃだめ』だって、わたしは思うよ」

上条「それはまぁ……正しいかも、しれないが」

円周「蛇の巨大化自体は科学的に説明出来るけどね……聞きたい?」

上条「あぁ」

円周「上から69、47、65――」

上条「所々トラップしかけるの止めて貰えないかな?あと、出来れば帰ってからお前の保護者さんに会わせろ」

円周「『姪っ子さんを僕に下さい』?」

上条「何ひとっっっつしてないよね?むしろセクハラで訴えたら俺が勝つよね?」

円周「歳を取った獣が死ぬのは食べ物なんだよね。捕食しにくくなったり、されるようになったり」

円周「でも定期的にエサを与えられていれば、そんな心配はなくなるし?」

上条「エサ?誰が飼育するんだよ、ンなモン」

円周「生け贄、とかだよっ」

円周「蛇神の、しかも大地母神系は多くの場合生け贄やら、人身御供を要求するんだ」

円周「日本でも八岐大蛇がそうだったようにね?」

上条「……オカシイだろ。だって円周の――いや、科学サイドの考え方なら、そういう神や悪魔はいないって事になるだろうが」

円周「え、いるんだサンタさんっ!?」

上条「……ごめんよ。その発言には答えづらい……」

円周「うん、だから人類が勝手に捧げてたみたいだけどねっ。御利益なんてないのにねー?」

上条「軽いなっ!」

円周「前に言ったかもだけど、蛇は河川や水源の神格化でもあるから、水難で亡くなった人を『生け贄』ってカウントする場合もあったみたいだけど」

上条「あー……『捧げるために殺すんじゃなく、事故で死んだ人を捧げられたとする』のか。それならまぁ、分からなくはないけど」

円周「でもまぁこの村では『定期的に人身御供を捧げていた』みたいだけどね」

上条「だからかっ!?だから『帰らず村』になったって話――」

円周「ぶっぶーーーーっ!はっずれーっ!違う違う、そうじゃないよ」

円周「お兄ちゃんは『手に負えなくなった蛇が村人をごっくんしちゃった』って考えてるんだよね?でもそれはハズレ」

円周「もしそうだったら家の中が片付けされていたり、生活雑貨やお社が空っぽなのは説明出来ないよねっ」

上条「……訳が分からねぇ」

円周「そういう時にはね、『事実を時系列順に並べてみる』と良いよ」

上条「あー、うん。手帳にでも書くわ」

円周「まず『帰らず村では蛇神信仰があった』と」

円周「村人は『定期的に人を蛇に捧げていた』って」

上条「その根拠は?」

円周「白蛇の大きさかな。確かに長く大事に飼っていれば、大きくなる傾向がある種だけど、一代二代であぁなるのはオカシイし」

円周「最低でも何十世代って環境がないと無理だよねー」

上条「いやでもなぁ」

円周「そこは多分『病気の人を蛇穴か何かに捨てていた』んだと思うよ」

上条「病気?」

円周「『巫女さんが蛇に喰われ、蛇になった』って、あったよね?」

円周「けど、現実にはそんな事は起こらないし――その後、『村人達も腕を無くして死んだ者が続いた』っけ」

円周「それは『特定の遺伝病、または伝染病』を意味していたとすれば、どうかな?」

上条「……死んだ人を捧げていた、か?」

円周「まだ足りない。まだ『木原』が足りないよっ、当麻お兄ちゃん」

円周「梅毒って病気――あぁ今は完治するんだけど――の症状の一つには、『軟骨が溶けたり、関節が曲がらなくなる』んだ」

円周「――顔面の鼻や耳、瞼が無くなくなり、四肢がピンってなった人間――」

円周「――『蛇』に見えないかな?」

上条「――っ!」

円周「つまり、つまりねお兄ちゃん」

円周「『この村では特定の病気に罹患し、末期症状になった人間を“蛇”と呼び』」

円周「『遺体か生きたまま蛇穴へ捨てて、口減らしをしていた』って推論か成り立つんだよ」

上条「待ってくれ。でも都市伝説の方で、悪ガキどもが聞いた話と違うぞ」

上条「もしその説が正しいとすれば、そういう風に伝える筈だろ?」

円周「『人は必ずしも本当の事を言わないし、伝えない』よね?」

円周「『ましてや自分達の禁忌を破ったおバカな連中へ、懇切丁寧に教える訳が無い』し」

円周「『実際に禁忌とされるカンカンダラの話を、ネットで面白可笑しく吹聴している』んだから」

円周「都市伝説じゃ何人かの家で持ち回って管理して、つまり神官を交代でやっていた訳だし?」

円周「それって『個人が負うには重すぎる罪悪感を、複数人が関わる事で軽減していた』んじゃないかな?」

上条「……酷い、話だ」

円周「あ、ごめんね当麻お兄ちゃん?でもそれは、絶対に言っちゃいけないんだよ」

上条「酷いだろうがっ!」

円周「それは『現在の価値観からすれば』だよね?現代の価値観で、当時の善悪を推し量っちゃいけない」

円周「間引きなんて現代の日本じゃ非道徳とされているけど、当時は違うよね?」

円周「保険や生活保護もない時代で、貧しい農村で働けなくなった人間の面倒を見続けるのは限界がある」

円周「それが、現実」

上条「だからっつってなぁ!」

円周「でも、価値観は変わらなくても、家族へ対する親愛の情はそんなには変化しないよね」

円周「当時の人達は『蛇』になった身内を、喜んで捨てていたかな?」

上条「……悪い。少し混乱してるみたいだ」

上条「納得は出来そうにはないけど、理解はした」

円周「……うん。それで良いと思うよ。当麻お兄ちゃんは、みんなを助けたいんだよね」

円周「それはとてもいい事だよ。わたしもそんなお兄ちゃんが大好きなんだけど」

上条「……円周?」

円周「……でも、何も捨てずに、誰も犠牲にならずに生きよう、ってのは無理だと思うよ?」

>>164続き

――科学

ズズッ、ズズズッ

上条(昨日に引き続いて蛇達の輪は俺達を取り囲んでいる)

上条(心なしか若干距離が近い気がするが……気のせいではないんだろう)

上条(俺達は中央にある屋敷にまで戻り、簡単に食事を取った)

上条(日が暮れる頃、夏の長い太陽が落ち、夜の時間になる)

上条(どこかに隠れていた蛇達がざわり、と姿を現し始めた)

上条(最初は聞き間違えかもしれない、風が地面を擦る音のように)

上条(暫くすると金属を削り合わせるような、酷く耳障りな音が)

上条(……まぁ予想はついたんだけど。つーか昼間はどこにいたんだよ)

円周「……お兄ちゃん?」

上条「ん、あぁちょっと考え事だ」

上条(表情を読み取ったのか、腕の中にすっぽり嵌っている円周が声を上げた)

上条(昼間とは打って変わって、円周は弱気になってしまっている。無理もないけど)

上条(そう言えば昨日も夕方ぐらいからおどおどしたよなぁ。暗い所が怖いんだろうか)

上条 カチッ(LEDライトを点け、手帳を取り出す)

上条(これじゃ外に光が漏れる……リュックの陰で書けば、まぁ大丈夫か)

上条(――昨日から散々な出来事が俺、いや俺達に降りかかってきた)

上条(勿論二人で帰るつもりではあるが、万が一のためにこの学生手帳にあった事を記しておく)

上条(願わくば第三者に手に渡る事を――って、それだと俺達はマズイのか。まぁいいや)

上条(冗談は兎も角、そろそろ俺は覚悟を決めようと思う)

上条(俺は――円周と一緒にこの村から脱出する)

上条(そもそもの始まり――『帰らず村』では『神柄足(かむからたり)』という蛇神が信仰されていた)

上条(それ次第は珍しくもない……んだ、そうだ。少なくともこの村に於いては村人とある種の共存関係にあった)

上条(それは『口減らしを生け贄として差し出していた』んだ)

上条(また『特定の病気を持つ家の人間は蛇になる』として)

上条(それは現代であれば絶対に許されない事だ。少なくともこの日本であっていい事じゃない)

上条(でも、当時は。山奥の寂れた農村では、病に伏した人間を長く養う事が出来ず――)

上条(仕方が、無かったんだ)

上条「……」

上条(そうして、不必要な人間を捨てるか殺すかとしている内に、それを糧としてきた蛇達は巨大化する)

上条(一代では到底無理だが、それを何年も続けてきた結果)

上条(人よりもでっかい蛇さんの出来上がり――)

上条「……?」

上条(……あれ?ちょっと待ておかしくないか、これ)

上条(長い長い間をかけて蛇が変異したって、ってのは良いだろう。そういう事もあるかも知れない)

上条(遺伝病やら伝染病があって、感染し末期になった人間を……ってのも、まぁ理解は出来る)

上条(その人達や家族の事を考えると、やるせない気持ちで一杯だけど)

上条(でも、なら『どうして今、大量の蛇が居る』んだ?)

上条(村人が村を放棄したのは短く見積もっても精々十数年ってトコだ。もしかしたらもっと昔かも知れない)

上条(円周の話だと、『帰らず村』周辺の獣や昆虫を食べていたとしても、到底賄える数じゃない。だから、なんだそうだが)

上条(だってのに、表にいる蛇の大群は一体何を食べていたんだよ!?)

円周「……ねぇ、ねえってば」 グイグイ

上条「どした?」

ザァァァァァッ……

円周「雨、降ってきちゃった、よ……」

上条「……あぁ、そうだな」

上条(夏特有の夜の雷か。昼間暑かったから、少し遅れて夕立が来た感じかも)

ピシャアァンッ…………ゴロゴロゴロ……

円周「……!?」 ギュッ

上条(雷の音に怯える円周は年相応の姿で、それなりに微笑ましい。不謹慎かも知れないけど)

上条(……今、俺達が使える武器は……拾った木の棒、LEDライトにライターとキャンプ用の固形燃料と油)

上条(後は学園都市製の獣除けの液体だけ……笑うぐらいに少ない)

上条(だからといってライフル銃があったとしても、難しいだろう)

上条(数で殺到してくる相手、しかも一噛みが文字通り致命傷になりかねない毒持ちへ対して、戦車や装甲車ぐらいはないと安心は出来ない)

上条(爆弾があったとしても、一箇所に蛇を集めない限りは無理だろうし)

上条(知り合いの能力者なら……あぁきっと、御坂やステイルならば楽勝だろう)

上条(飛び道具を駆使すれば、立て籠もるだけじゃなく昨日の内に殲滅していた筈だ)

上条(神裂だったら十分ぐらいで……そう考えると無力な自分が嫌になる――が)

上条(俺一人なら自棄になったっていいかもしれない。けどこの子がいる限りは無茶出来ない)

上条(……まぁ無茶をするにしたって、そもそも選択肢自体が無い訳なんだが)

上条(クローズド・サークル?である以上、どうにかして生き続けな――)

円周「お兄ちゃんっ!」

上条「ん?」

円周「音、音が!」

上条「……?」

……ズスゥ……ズズズッ……

上条(激しい雷雨に混じって蛇達の這いずる音がする)

上条(でもそれだけでは動揺はしない。慣れてしまったのか、恐怖で感覚が麻痺しているのか、分からない所ではあるけど)

上条「……あれ?」

上条(『どうして豪雨の中にも関わらず、そんな小さな音が聞こえる』んだ?)

上条(確かに耳障りな音だけど、雷雨の中で聞こえるような音量じゃない!)

……ズズ、ズズズッ……

円周「……上から、聞こえるよね」

上条「どうしてだよっ!?あれが効いてるんじゃなかったのかっ!」

円周「雨で流れちゃったか、家の近くにある高野槙(こうやまき)から飛び移ったのかも」

上条「クッソ!どうしろってんだよ!?」

円周「……大丈夫。お兄ちゃん」

上条「……円周?」

円周「お兄ちゃんは……お兄ちゃんだけは、わたしが絶対守るから、ね?」

上条(暗闇の中でも、無理に微笑んでいる円周の姿は痛々しい)

上条(肩を振わせ、今にも爆笑しそうな……いや、そんな事は有り得ないが)

上条「……ごめん。ちょっとパニクってた」

円周「いいって。それよりも――」

ズズ……パキパキパキ

上条「何の音だよ?」

円周「屋根は茅葺きだから、潜り込みながら隙間を探しているんだよ」

上条「参ったな……」

円周「そう、でもないよ?意外とラッキーなのかも」

上条「いやいや、無理に盛り上げなくてもいいから」

円周「違う違う。蛇には口の中に嗅覚を感じるヤコブソン器官、あと多分この村の蛇達はクサリヘビ科だから、ピット器官もあると思うけど」

上条「後のは聞いた事がある。赤外線を感じ取れるんだっけ?」

円周「たがら雨ってのは逃げるチャンス、かも」

上条「臭いは雨で流れるし、濡れて体温も低くなるか」

円周「虫の生息状況からすると、蛇達の縄張りは向こうの山までは無いみたいだし」

円周「逃げ切れない距離じゃないと思うよ?」

上条「そう――」

ピキッ、ミシミシミシッ

上条「考えてる暇も無いか」

上条(そこら辺に落ちていた戸板をひっくり返し、固形燃料と油を塗りたくる)

上条(棒切れをタイマツ代わりに使った方がいいのか?)

円周「そっちは必要ないよ。逆に『ここにいるよ』って教えるようなもんだから」

上条「……お前は何でも知ってるんだなぁ」 カチッ

ボボボゥッ

上条(戸板の片面が激しく燃え上がる!俺はそれを)

上条「だあぁらっしゃあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

バキバキバキバキッ!!!

上条(表へ向かってぶん投げた!)

上条「行くぞっ!」

円周「うんっ!」

上条(白蛇達も燃え上がった戸板が飛んでくるのは思わなかったらしく、戸板の周辺と軌道からは退いていた)

上条(急遽出来た『道』を、俺は円周の手を引いて渡る!)

上条「抜け、られるかっ!?」

円周「ちょっとムリかも……あ、お兄ちゃん、それ貰うね?」

バシャアァッ

上条(予め渡してあった学園都市製獣除けをぶちまける!見る見るうちに蛇の群れが退いていく)

上条「臭っ!?――ってお前、それとっとくんじゃっ!」

円周「雨降ってるし、体にかけちゃっても落ちちゃうと思うよ?」

上条「つってもなぁっ!」

円周「あ、ごめんねっ?ネタは今ちょっと余裕無いからっ」

上条「それは永遠にノーサンキューでっ!」

上条(全力疾走しながらもバカ会話――俺もおかしくなってるっぽい)

上条(後ろを振り返る暇も無く、廃屋の脇を過ぎ、雑草の茂る田畑を抜ける)

上条(豪雨と雷鳴で周囲の感覚すら掴めない中、よく走ったと思う)

上条(……だが、俺は大切な事を見落としていた)

円周「んきゅっ!?」

上条「円周っ?大丈夫……な、訳はないよな」

上条(後、数メートルで山に入れるというのに円周が倒れた。正直、高校生の走りについて来ただけでも、凄いんだが)

円周「あ、うんっごめん、ね?――つっ!?」

上条(ストッキングが破れる程に派手に転んだ――足を挫いた円周を抱え上げ、俺はまた走る)

上条「……なんだよ、あれ」

円周「……お兄ちゃん……?」

上条「んっ?あぁいやいや何でもないっ!」

上条(円周を持ち上げる時、俺は後を振り返った。が、その時にタイミング悪く雷が光る)

上条(稲光に照らし出されたのは、何百という白蛇の群れ)

上条(下手をすれば人など絞め殺せそうな程の大きさのものも居れば、バール程のものもいる)

上条(まるで白い絨毯のように、俺達を追い掛けてくる!)

上条「お、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

円周「あ、お兄ちゃん!そこを右に入って!」

円周「わたしが誘導するから――信じて、ね?」

上条「ああっ!任せろっ!」

――山中

上条(どこをどう走っているのか、覚えてはいない)

上条(只、木々の間を最短距離で抜けジグザクに走る)

上条(昼間でも迷い込んだら遭難するであろう山の中を、俺は円周の言葉通りに走っていた)

上条(冷たい雨が体を打ち体温を奪い、木々の皮や丈の高い草に手足は幾度となく切りつけられている)

上条(視界は零に等しい。時折鳴る雷だけを頼りに)

上条(……しかしどれだけ走っただろうか)

上条(同じ所を堂々巡りしていたかのように――いや、そもそも野生相手に出来る事など無かったのか?)

上条「……クソ……」

円周「囲まれて、いるね?」

上条(いつの間にか周囲を蛇に取り囲まれていた)

上条(木々の間、草葉の隙間に隠しようもなく――隠す必要がないのだろうが――白蛇が鎌首をもたげている)

上条「なんでだよっ!?どうして先回り出来たんだっ?」

円周「……ねぇ、お兄ちゃん。ちょっと走るの疲れちゃったよ」

上条「大丈夫だ、俺が、俺がっおんぶするからなっ」

円周「そうじゃなくって……昨日のね、狼さんの家族の話覚えているかな?」

上条「何を急に――」

円周「お母さんはね、『生きる力の強い兄を助けるべき』なんだよ。科学的見地からすれば、少しでも助かる可能性がある方を、ね?」

円周「だから、お兄ちゃんもね――わたしを置いて、逃げ、よ?」

円周「わたしは大丈夫だからっ!だから、だからっ――」

円周「――当麻お兄ちゃんだけでも、生き、て?」

上条(そう言って円周はとても無邪気に笑う。そんな事をすれば命など無くなるのが分かっているのに)

リヴァイ「これで全部か?」

エレン「な!?みんな!どうしたんだ!?コニー...はフサフサだな。その他みんな!ズラが!」

リヴァイ「...」チッ

リヴァイ「エレンよ、悪いがそのカツラ、削がせてもらう...」

エレン「甘いぜ兵長、俺のはモノホンだぜ!」

リヴァイ「!!」

リヴァイ「ならば、その毛を削がせてもらう」カシュンカシュン

エレン「やべえなおい」

上条(確かにそれはそうかも知れない。俺が抱えて走らなければ、そして目の前に美味しそうな『エサ』があれば、蛇はそちらを優先するだろう)

上条(それが『科学的』には正しいのかもしれない。けどっ!)

円周「……とうま、お兄ちゃん?」

上条「……大丈夫だよ、円周」

上条(俺は抱えてたいた円周を降ろす。熱い体が離れたにも関わらず、心臓はドクドクと高鳴っていた)

上条「多分、それが正しいんだと思う。もしかしたら誰も俺を責めないかも知れない。けどなっ!」

上条「ここでお前を見捨てちまったら、誰よりも何よりもっ、俺が俺を許せそうにないんだよっ!」

円周「ダメだよっ!そんな事したらっ!」

上条「マニア向けボディのお前より、俺の方が食い出はあるからな。いいか?俺が突っ込んでる間に、走れ!」

円周「お兄ちゃん……!」

上条「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」

上条(俺の背丈程まで伸び上がった蛇へ、俺は右手を――)

バスッ!

上条(――ぶん殴ろうとした瞬間、蛇の首が跡形もなく弾け散った!)

円周「あーぁ、折角用意したのに台無しだよぉ」

上条「――えっ?」

円周「うん、うんっ!そうだよねっ、『木原』なら、こんな時こうするんだよねっ!」

ズガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

上条(地響きっ!?俺達の周りにいる蛇達が次々とミンチになっていく)

上条(いや、そうじゃない!木の幹にも細かい針のような穴が一瞬で刻まれる!)

上条(これは何かの能力かっ!?)

上条(振り返った先で俺が見たモノは、断線している筈の首から下げたスマートフォンを手にしている円周の姿だった)

上条(彼女の手が液晶の上を滑る度に破裂音が一つ、また一つと轟く)

円周「うんっ、うんっ!『木原』なら『自分自身をエサにして、標的を一網打尽にするなんて朝飯前』なんだよねっ!」

上条「お、おい円周……?」

円周「あははははっ!どうしたの当麻お兄ちゃん、そんなオバケでも見るような顔して?」

上条「これ、一体どういう事なんだ……?」

円周「対人地雷っていう、ベアリング弾を飛ばす機械なんだよ?昨日、いーーっぱい仕掛けておいたんだっ」

上条「昨日っ、て……まさかっ村の中を探索した時にかっ!?」

円周「うんっそーだよ?最初から蛇の変位種がいそうだから、仕込んでおいたんだよー。ね、ね?偉い偉い?」

上条「あぁ、いや、そうじゃなくって」

円周「あ、これ?スマートフォンの事?ごめんねーお兄ちゃん。実は最初っから学園都市と断線なんかしてなかったんだよっ」

上条「えぇっ!?だったらどうしてっ!」

円周「だって『蛇って弱い存在だから、格下の相手にしか襲って来ない』じゃない?」

円周「だからあぁやって演技しないと、蛇さんは襲ってくれないし?」

上条「ちょっと待って!お前だったら全部演技だったのかよっ!?」

円周「うんっ」

上条「また良い笑顔で返事しやがったな!?」

円周「でも手持ちの武器だと一網打尽に出来なかったんだよねー。だから、『一芝居打ってベストポジションまで蛇の群れを引きつけた』んだよ」

上条「俺の心配を返せっ!つーか別に演技しなくても、襲ってくるじゃねぇか!」

円周「あ、なんだお兄ちゃんに言ってなかったっけ?そっかー、それじゃしょうがないよねー」

円周「『木原』っていうのは、『食物連鎖の最上位にいる』んだよっ」

――翌日 無人駅の待合室

上条「だからさ、幾ら何でも酷いと思うんだよ」

円周「え?でもお兄ちゃんが心配しないように『わたしは大丈夫』とかって、何度も言ったよねぇ?」

上条「普通は真に受けねぇよ!つーか『あ、この子健気に笑ってるな!』って思う所だろ!」

円周「あぁあれ。あれはねー、『どうしてお兄ちゃん必死なの?死ぬの?』って爆笑を堪えてんだよ」

円周「狼さんの家族の話もしたのになー」

上条「したけど。アレ俺に一人で逃げろって意味なんだろ?」

円周「『わたしはお兄ちゃんよりも強いんだから、一人で逃げればいいんじゃない?』って言う意味だし」

上条「……怒るよ?子供にだってそげぶする派だからね、俺は」

円周「だってエサはエサ、じゃなくちゃいけないんでしょ?」

円周「『木原』が『木原』だったら、エサにならないんだもん」

上条「その理屈もどうかと思うんだよ」

円周「だってわたしが『木原』していた昼間の間は、蛇達も怯えてたよね?」

上条「……偶然じゃね?」

円周「うんまぁ、お兄ちゃんがそう思うんだったらいいんじゃないかな?昨日のアレで殆どの蛇は殺しちゃったし」

円周「お兄ちゃんが前に出ちゃったから、少し撃ち漏らしたけど」

円周「……もしかして学園都市まで着いて来ちゃうかも?」

上条「怖い事言うなよっ!……あぁでも、一つ疑問があんだけどさ」

円周「謎は謎のままにしておいた方が、良い事だってあるんだよねぇ」

上条「……そうか?これ以上心理的なダメージ受けたくないけど、キツい話なの?」

円周「わたしにはお兄ちゃんの心は読めな――うん、うんっ、なんだ言ってくれれば良かったのに」

上条「あ、伝わった?」

円周「伝染したストッキングよりもニーソの方が好きなんだね?」

上条「何一つ伝わってねぇ!?最初から最後まで何一つお前が理解出来ないよっ!」

円周「まぁまぁ、びっくり箱みたいで楽しいじゃん?新しい発見があるって素敵な事だと思うよ?」

上条「限度があるよね?少なくとも俺はこの二日、心身共に疲労しまくったからな?」

円周「――あ、軽トラのおじさんだぁ。わたし挨拶してくるっ」

上条「おー」

円周「おっじさーんっ!」

男「あー、一昨日の」

円周「えっとねー、円周キーホルダー落としちゃったみたいなの。車の中に落ちてないかなぁ?」

男「落とす、って荷台だろ?俺が見た時には何もなかったけど」

円周「えー、うっそだぁ。探してみてよー」

男「はいはい、分かったよ。よいしょっと」

円周「あ、そうだ。ねぇねぇおじさんっ!」

男「なんだ?」 ゴソゴソ

円周「蛇さんに『エサ』やってたの、おじさんなんでしょ?」

プスッ

男「……ぐっ!?」

円周「あー、大丈夫だよっ。即効性だけど、数時間で動けるようになるから」

男「……っ!」

円周「ってかおじさん、右手に握ってるのっての鉈だよねぇ?円周の落としたキーホルダーじゃないよねぇ?」

円周「って言うか『帰らず村』と『カンカンダラ』の噂を流したのもおじさんなんでしょ?違うかなーっ?」

円周「『エサ』を呼ぶために、ねっ」

男「……」

円周「そんなに心配しなくたって良いよぉ。わたしはなんにもする気はないし?」

円周「どうせ物的証拠なんて蛇のお腹の中なんだしー、噂を流したぐらいじゃ罪に問われないもんねっ」

円周「『たまたま蛇が居る所へ誘導した』だけだからねー?」

男「……」

円周「おじさんがわざわざタイミング良く、この時間に現われたのも偶然なんかじゃないんでしょ?」

円周「まるで待ち伏せしてたみたいだもん、ねー?」

円周「けど心配しなくっていいんだよ。わたし達はもう帰るし、別にどうこうするつもりは全然無い、っていうか興味ないから」

円周「だからまぁ、後は勝手に続ければいい――ん、だけどぉ」

ガサガサガサッ

円周「あ、でもでも『ついて来ちゃった蛇』が何をするのかまでは、責任持てないよね?」

男「!?」

円周「おじさんがやったように『不可抗力』だもんね。うんうん仕方がないないっ」

円周「クサリヘビは消化毒だから、噛まれた所がズタズタになっていくんだろうなー。怖いなー」

円周「動けないまま、助けを呼べないままで自分の育てた蛇に食べられる、ってのもある意味飼い主冥利に尽きるんじゃないかなぁ?」

男「……っ」

上条「おーーいっ!電車が来るぞーーーっ」

円周「あ、ごめんね?もう行くよ、ばいばーいっ」

男「――!――っ!」

ジジジッ

円周「うん、うんっ!こんな時、『失踪した学園生』なら、きっとこう言うんだよねっ!」

男「……っ!?」

円周「――『苦しんで、死ね』」


とある魔術の禁書目録SS 幻想魔笛 『“帰らず村”後編 ~カンカンダラ~(科学ルート)』 -完-

※すいません。内容がインテリビレッジ三巻と被りまくってました。書いた週の週末に読んで愕然としました
蛇+杉沢村ってコンセプトが丸被り……いやもう本当にごめんなさい
意図した訳じゃないんですが、まぁ超々劣化コピーぐらいに思って読んで頂ければ

話分けて書くの面倒だし、アンカーで選択させるのも大して意味がないしで散々でした
ちなみに前後編両ルート合計・文字数大体4万ぐらい。『学園探訪』でゴールドが調子に乗って主人公になった話トータルとほぼ同じ分量です
あんまり怖くないですし……反省ですね、えぇ。最初から一人称一ヒロインで書いた方が良かったかも知れません

このSSは何ら事実には即していませんし、日本国内にS村など存在した事も無いですから。100%フィクションであり、嘘八百をそれっぽく書いているだけです

後……驚いたのは『五和vs円周』が59-43(大体)になった事。五和さん人気あるんですね
上司(添削頼む人)は「みんなペ×だから円周勝つお!」とファミレスの食事一回分賭けましたが、お陰様で勝つ事が出来ました
ちなみに敗者の言い訳は「次回予告で円周をペロペ×させなかったから負けたんだ!」そうです
エロSSじゃねぇんですがね。いや必要があれば書きますけど、あの流れで触手プレイする必然性は無い……無いですよね?

ともあれ最後までお付き合い頂き有り難う御座いました
では、またいつか


ぶっちゃけワケ分からん方も多いと思うので、SS(両ルート全文)をPDF形式で配布します。宜しければご覧下さい
再配布禁止、リンク切れたらそれ以上はご縁がなかったと言う事で
http://kie.nu/1aA1



――幻想魔笛 『“八十枉銀行”前編 ~八十柱銀行~』

――学園都市モノレール内 7時22分

上条「……」

上条(今日は夏休み明けの始業式。久しぶりに乗った電車の中は相変わらずの混みようだ)

上条(周りでは夏休みで会えなかった友達同士が明るい声を上げて――は、いない)

上条(そりゃまぁメールやテレビ電話だのコミュニケーションツールが発達してる上)

上条(そもそも仲の良い知り合いなら休みでも遊びに行くしなぁ)

上条「……」

上条(……なんで俺友達と遊ばなかったんだろ?土御門達から誘いのメールは来てた筈だけど……)

上条(あぁそうか、忙しかったもんな。アックアに喧嘩売ったりアウトレットで喧嘩したりロシアで喧嘩買ったり)

上条(どローカルな深夜番組のカメラマンやったり、学園生探しに学外まで行ったり)

上条「……」

上条(……イギリスは?イギリスは何も無かった事になってるの?)

上条(『あたしはっ!?人じゃなくって地名が出るってどういう訳っ!?』って脳内で再生される……)

上条(――なんて事を、俺は吊革に掴まりながら考えていた)

女子生徒「こ、この人っ痴漢ですっ!」

上条(賑わしい車内にその声が上がると、同乗した人間達は一斉にそちらを向く)

上条(奇異……と言うよりも忌諱か。犯罪者を見るような視線が集中している)

上条(痴漢を告発した女の子は、彼女に触れていたであろう腕を掴み、高々と突き上げていた)

上条(そう、その手は――俺の右手だった)

上条「……はい?」

――アンチスキル詰め所

上条「……」

黄泉川「まぁ……何だ、上条?あたしもあんたは良く分かってるじゃんよ」

黄泉川「小萌センセから話は聞いてるし、ライオン女ん時突っ込んでいったのも評価してるじゃん」

黄泉川「だから成績とかは別の分野で、あたしはあんたを評価すべきだとは考えていたじゃん?」

黄泉川「でもなぁ?」

上条「待って!?どうして100%俺がやったみたいに話が進められているのっ!」

上条「っていうかそこまで言うんだったら、最初は庇ってくれる所から話を進めるんじゃっ!?」

黄泉川「分かってるじゃん。私はアンタを信じてるじゃんよ!」 ポンッ

上条「先生!」

黄泉川「どーせ『俺の右手が幻想見て動きました』とか、そーゆー話じゃんね?」

上条「分かってない!先生これっぽっちも分かってないよ!」

黄泉川「え、夢見がちな能力だったんじゃ?」

上条「むしろ逆だよ!壊す方だよ!」

黄泉川「確かにあたしの高評価は幻想みたいだったじゃんし」

上条「現実ですからっ!裏切ってませんし!」

上条(あれから問題無用で電車を引きずり出された後、アンチスキルに連行された)

上条(……取り調べが黄泉川先生だったのは幸運……いや多分、つーかまず間違えなく小萌先生が何かしたんだろう)

上条(始業式の日にアンチスキルの仕事がある訳が無いし)

黄泉川「まー兎に角、これにサインするんじゃん」

上条「嫌だっ!俺は容疑を認めた訳じゃないからなっ!」

黄泉川「カツ丼奢ってやるじゃんよ?」

上条「高々数百円で人生を棒に……振れるかっ!?」

黄泉川「今一瞬迷った感じがしたじゃんが。違う違う。そーじゃなくって、書類の内容きちんと読むじゃん」

上条「……『任意同行同意書』?」

黄泉川「『甲は乙の対処が適切であった事を証明します』――って、任意同行が適切だったって書類じゃんよ」

上条「サインした筆跡をコピーしてハメるつもりだろ!そーゆーの映画で見たモノっ!」

黄泉川「いや別に本気でしようと思ったら、テストとか色々あるじゃん」

黄泉川「(ってか本気でどうこうするんだったら、レベル5、しかも何人かが敵に回るじゃんよ)」 ボソッ

上条「え?どういう事?」

黄泉川「あんたの無実が証明されたからカツ丼食わせて帰しとけ、って話じゃん」

上条「……本当に?いいの?留置所で屈強なホ×と相部屋になったりしないの?」

黄泉川「日本の刑務所はそーゆーの禁止。後、留置所は裁判中に入るトコじゃんね」

上条「え、いやでも痴漢って告発されれば100%有罪になるんじゃなかったの?」

黄泉川「そりゃ間違いじゃん。つか冤罪事件が増えてきたから、証拠を重要視するようになったじゃん」

黄泉川「指紋とか掌紋って聞いた事あるじゃん?」

上条「同じ指紋は無いって」

黄黄泉川「それじゃんよ」

上条「服とかの布って指紋つかないんじゃ?」

黄泉川「あー、それ勘違いじゃん。人間の手は常に汗をかいているじゃん」

黄泉川「だから触った布には微量の汗の跡がきっちり残るじゃんよ」

上条「へー。凄ぇな学園都市」

黄泉川「学園以外でも採用されているじゃんが……まぁあの子の服から、上条の指紋や掌紋は発見されなかったんじゃん」

上条「って事は別に犯人がいる、か。あれ、でも他に誰か居たっけかな……?」

黄泉川「居なかったじゃんよ、それが」

上条「居ないって。なんで分かるんだよ」

黄泉川「結論から言えば『本人を除く誰の掌紋も指紋も検出されなかった』じゃん」

上条「だったら能力か。念動力か何か使って悪さしてんのかよ!」

黄泉川「監視カメラにはその様子は映ってなかったじゃんね、それも」

上条「……はい?すっごく悪質な相手だって事か?」

黄泉川「その可能性もあるけど。私らは女子生徒が嘘を吐いたって線で調べてるじゃん」

上条「マジでっ!?そんな訳ないだろ!」

黄泉川「やったじゃん?」

上条「俺は違うけども……でも、仮に嘘だったとしても動機は?」

黄泉川「そうじゃんねー。強請り集りだったらもっとカネ持ってそうなオッサンを狙うじゃんし」

上条「悪かったですね!カネ持ってなさそうで!」

黄泉川「んー……何か、ムシャクシャしてやった?反省はしていない?」

上条「何の罰ゲームだそれっ!……罰ゲーム?」

黄泉川「あー……ありそうじゃんね」

上条「あんま考えたくないけど、なぁ?」

黄泉川「んー……あぁ、いい手があるじゃんよ」 ポンッ

上条「……黄泉川センセ、どうして俺の肩へ手を置いているの?」

黄泉川「生徒同士の悩みは学生が解決するのが一番じゃん?」

上条「丸投げじゃねぇかよっ!」

黄泉川「出来れば突っ込みたいんだけど、立場上そうもいかないじゃん?危なくなったらウチの居候貸すじゃんし」

上条「いや、なぁ?」

黄泉川「んじゃ、おっぱい揉み放題で」

上条「お、俺はそんな事じゃ心引かれないよっ!それ以上は言うなよっ!引き受ける訳じ
ゃないけどね!」

黄泉川「ウチのちっこいのの」

上条「あれは色々とダメだよね?外見的には一桁だし、物理的にも保護者さんに魂引き抜かれるよな?」

上条「そもそも一万人弱の姉妹さんに命を狙われる可能性も高いっ」

黄泉川「じゃ小萌せんせで」

上条「同僚ですよね?むしろ親友ポジションを差し出すんかっ」

黄泉川「思ったんだけど、小萌先生を好きになる男って陸ロ×じゃんか?」

上条「意味は分からないけど小萌先生は立派な大人ですからねっ!頑張れステイル!色んな疑惑はあるけどもだっ」

黄泉川「だったらウチの居候その二で手を打つじゃん――つーかなぁ、上条?」

上条「はい?」

黄泉川「あたしがなんて言おうと、もう首突っ込む気満々じゃんか?」

上条「いやー……別に?」

――アンチスキル詰め所前 街路 9時

上条(とは言ったものの、だ)

上条(一瞬だけチラッと見た程度、幾ら腕を掴まれたとはいえ、それだけでさっきの子の身元が分かる訳じゃない)

上条(当然黄泉川先生に聞いても『無理』と一蹴された)

上条(……ってかこの状況で俺にどうしろと?調べようがない以上、解決するしない以前の問題じゃねぇか)

上条(つーか痴漢扱いされたあの車両、どう考えても同じ時間帯には乗れねぇよなぁ……)

上条「……あぁ、不幸だ……」

女生徒 ビクッ

上条「あぁ悪い――ってお前さっきの!?」

女生徒「い、いえ他人です?」

上条「忘れるかっ!?あんな衝撃的な出会い方普通は――あんまり――滅多にしかないっ!」

女生徒「普通とあんまりは無いけど、滅多にはあると?」

上条「家庭の事情でな!」

上条(とまぁ目の前にタイミング良く現われたんだが、偶然な訳無いだろうな)

上条(どっかの中学生みたいだけど制服に見覚えはない)

上条「あー、黄泉川先生から何か言われたの?」

女生徒「え、何にも聞いてないんですかー?うっわー、バックレれば良かったー」

上条「良くねぇよ。つーか俺も言いたい事はあるし」

女生徒「ってかウザいんですけど。脅迫的な感じ?」

上条「いや――そっちは別にどうだっていい。そうじゃなくって、お前平気なのかよ?」

女生徒「はい?」

上条「アンチスキルの人の話だと、服にも監視カメラにも証拠は無かったって」

上条「けどお前が本当に被害に遭ったんだったら、それっぽい能力者だったって訳だろうし」

上条「学園都市には『機械で検出出来ない方法』で悪さしそうな連中も居そうじゃねぇか」

女生徒「……怒ってない、んですか?」

上条「俺?……あぁ痴漢は許せないよな」

女生徒「だって、今不幸だって!」

上条「まぁ確かにあの電車には乗り難くなるよなぁ、やっぱり」

上条「でもそれだけだろ。冤罪だった証拠に俺はお咎め無しだし、別に陰口が言いたい奴は何をしようが言うと思うしな」

女生徒「『不幸』になってないの?」

上条「別に?それより君の話を聞かせてほしい」

上条「信用出来ないかもだけど、少なくともアンチスキルからは無実だって言われてるし」

女生徒「……」

上条「つーかここまで手の込んだ事をしている以上、犯人はヤバい奴だって可能性もある」

上条「俺が信用出来ないんだったら、知り合いの中学生の女の子で、詳しそうな子達が居るから、話を聞くだけでも、な?」

女生徒「……こっち、来て下さい」

上条「うん?」

女生徒「制服姿が二人じゃ目立ちますから、こっちです。こっち」

――駅前のファミレス 9時41分

女生徒「好きなもの頼んでもいーですよ。奢りますから」

上条「それは有り難いんだけど。んじゃまぁコーヒーで」

女生徒「それじゃあたしはアップルティで。すいません」

上条(店員さんにてきぱきと注文を告げる彼女の姿――あ、名前まだ聞いてなかった――は、さっきよりも打ち解けたみたいだ)

上条(朝は痴漢の現行犯の容疑を貰ってたし、まぁ妥当っちゃ妥当かもだけど)

女生徒「じゃ、これで貸し借り無しですね。それでいいですよね?」

上条「朝の事だったら気にして――は、居るけど。間違ったことに関してはもういいよ?」

上条「それよりも悪質な痴漢がいるって方が問題だろうし」

女生徒「あぁ居ませんし。ハナっから」

上条「決めつけるのは良くないし、泣き寝入りするのはもっと良くないぞ?」

女生徒「だって嘘だし」

上条「だからってなぁ――待って?ねぇちょっと待って?」

店員「ご注文お待ちしましたー」

女生徒「どうも」

上条「おいコラスルーするんじゃねぇっ!追加でケーキ頼む前に俺の話を聞け!」

女生徒「え、幻想がどうしたって?」

上条「言ってねぇよ!?つーか俺の個人情報ダダ漏れじゃねぇかよ!」

女生徒「今時の中学生に幻想持ってると、後はホ×かヲ××の二択かなぁ」

上条「その人達は自らそっち行った人だからね?別に幻想砕かれた訳じゃない、と思うし」

上条「え、ごめん。嘘なの!?」

女生徒「さーせん」

上条「……いやまぁ、納得出来ないけど、何で?何でそんな事する必要があったんだよっ」

上条(ここまでは黄泉川先生の読み通りと。当たって欲しくはなかったけど、ストーカーに狙われてるってよりかはマシか)

女生徒「あー……知りたい?」

上条「イジメとか?ほら、万引き強要させられたりみたいなの?」

女生徒「関係無いし。つーか友達は一杯居るし」

上条「だったら『学校行くのだりぃなぁ。ヨシ!痴漢被害出して休もう!』的なの?」

女生徒「バカにしてんの?」

上条「だって嘘だって言うんだったら、嘘吐いた理由があるんだろ?」

女生徒「えっと」 ピッピッピッ

上条「携帯弄る前に話聞こうぜ?――まさかまた警察沙汰かっ!」

女生徒「しないっつの。ほら、見てよ」

上条「携帯用サイト……『八十枉銀行』?」

上条(画面には毛筆っぽい書き文字でトップページが表示されていた)

上条(似たような八十ナントカ銀行ってあったよな?)

上条(立派な感じなんだが、『八十“柱”』と書くべき部分が『八十“枉”』となってる)

上条(頭の点を付け忘れ?)

女生徒「あたし達は『やそはしら』って読んでる、けど」

上条「ふーん。んでこれがどうしたって?」

女生徒「このサイトでは『幸運』を預金出来るんだ」

上条「……」

女生徒「な、何よ」

上条「……お前、頭大丈夫か?」

女生徒「ヒドっ!?」

上条「俺の知り合いの女子中学生も頭イタいのかなって思ってたんだけど、何だアレは普通だったのかよ」

上条「つーかむしろお前の方がより頭イタイわっ!」

女生徒「普通だってば!どーゆー基準なのよっ」

女生徒「それにこのサイトは凄いのっ!ほら、会員数3万人って!」

上条「……いや、いいんだけどさぁ。マルチ商法にハマろうが関係無いけどもだ」

上条「幸せを貯金出来る……いや、この言い方もおかしいけど、預けられるんだったら、嘘吐く必要性がどこに?」

女生徒「えっとね、まず『世界の幸運・不幸の総量は決まってる』し?」

上条「……はい?」

女生徒「だから『他人を不幸にすれば、自分の幸運が舞い込む』ってシステムね」

上条「……すまん。理解出来ない、というか理解したくない」

女生徒「えっとね。今回のもそうだったし。あんたが不幸にならなかった分、でもってタダでお茶を奢って貰ってる分、幸運だった」

女生徒「その代わりにあたしは奢った分だけ不幸になった」

女生徒「本来動く筈がなかった『幸せ・不幸せ』が変動した結果、辻褄が合っちゃったと」

女生徒「わかる?」

上条「……つまり、アレか?お前らはその『八十柱銀行』ってのに、『自分が起こした不幸を報告』して」

上条「――『起きるべきでなかった不幸の分だけ、自分達へ幸運を呼ぶ』って話だと?」

女生徒「ね、すご、い――」

上条「訂正するわ。お前は頭イタイとかそう言うレベルじゃねぇ」

上条「俺の知ってる限り最低の人間だよ」

女生徒「な、なによっ!」

上条「確かに運の善し悪しはあるって思うさ。俺もまぁ、良くない方だからな」

上条「でもお前そんな方法で『幸運』が舞い込む訳ねぇだろうがよ!」

女生徒「んっ。そ、そんなの分からないでしょうが!」

上条「分かるだろうが!もしもお前が少しでも幸運だってんなら、こんなトラブルは起きてねぇよ!」

女生徒「つっ!?」

上条「……てかな。これは、タダの、犯罪だよ」

上条「悪い事は言わない。直ぐに止めろ」

女生徒「け、けどっ!友達もやってるからっ!」

上条「だったら友達も抜けさせろよ。こんな事やったって誰一人、何一つ得をする訳がねぇって」

女生徒「……」

上条「……つーかなぁ、まぁ痴漢冤罪は兎も角として、えっと……あー、ほれ。ここに書いてあるボイントの目安」

上条「『他人の自転車をパンクさせる』とか、『大事にしている物を捨てる』とか、明らかにタチの悪いイジメだろ」

上条「自分がされる身にもなってみろって、なぁ?」

女生徒「で、でもでもっ!」

上条「あー……んじゃな?証明してみようか、『幸運銀行』のシステム自体が間違いだって」

女生徒「どうやって?」

上条「お前の話をまとめりゃ、『俺が不幸にならなかった分、お前が不幸になった』んだよな?」

女生徒「ファミレス一回分だけとね」

上条「ここは俺が奢るよ。そーすりゃお前は失敗したのに、不幸にならなくて済んだ。だろ?」

女生徒「……え、それって結局あんたが不幸になったって話じゃないの?」

上条「そうでもない。始業式をぶっちぎって中学生とお茶飲んでる、なんてのは割と幸運だと思うけど」

女生徒「いいんだ、それで」

上条「欲を言えば美人のおねーさんだったら良かったんだけどなー」

女生徒「関係無いし!ってかリア充だったらやってないからっ」

上条「あー、多分それ本質だと思うんだよ」

上条「幸運だ不幸だって悩んでるのは、結局自分が恵まれてない証拠のような気がする」

女生徒「……この『世界』にはどうしようも無い不幸だって、ある、けど」

女生徒「そんな『世界』に対抗するためにはっ、どうしたら――」

上条「あるよなぁ。事故だったり災害だったり、どうしようも無い話はある」

上条「けどそれを怖がってたって、生きようがねぇだろ」

上条「不幸だと思うんだったら、運とか関係無いように頑張るだけ、じゃねぇのか?」

上条「事故一つ、災害一つにしたって、それをしないように事故原因を追及して改善してくもんだし」

上条「……まぁ俺も不幸だ、って愚痴るけど。拗ねた所で何も変わらないしなぁ」

女生徒「……そーゆー、もん?」

上条「って俺は思ってる」

上条「知り合いから聞いた話なんだけど、昔はある病気の治療にわざと高熱になるウィルスを感染させていたらしい」

女生徒「死ぬんじゃっ?」

上条「勿論、耐えられない人間は死ぬ。でも当時の人間はそこで立ち止まらなかったんだわ」

上条「生き残るのを運不運のせいにしなくて、もっと効果的で効率的な治療法を探し――」

上条「今じゃその病気は末期にならない限り、投薬治療で完治するようになった」

女生徒「運、とはちょっと違うような……?」

上条「まぁ脱線したかも?つーか止めとけ、こんなバカな事は」 ピッ

女生徒「人のケータイ勝手に見ないでよ!」

上条「……ポイント0じゃねぇか。てかどうして最初に俺を遠選んだの?」

女生徒「何か不幸そうだったし?」

上条「外見だろっ!?見た目で人を判断するのイクナイっ!」

女生徒「んー……」

上条「信じられない、か?」

女生徒「まだちょっとね、無理」

上条「……そか」

女生徒「……モンブラン追加注文していいんだったら、多分?」

上条「しっかりしてやがんなっ最近の中学生は!」

――駅前 11時

女生徒「ごちそうさまでしたーセンパイっ」

上条「……マジでタカりやがった、こいつ」

上条「もうちょっと、こう、あの場面では自制する所だよね?ってか俺にお礼言うべき所だよな?」

上条「なのにこっちのサイフの限界まで食うってどんだけなんだ、お前は」

女生徒「だって他人を不幸にすれば、自分へ幸運が舞い込むって?」

上条「反省してなかったのかっ!?あんだけ言った俺の台詞は無駄だった!」

女生徒「いやまぁそれは冗談ですけど。流石によくよく考えれば犯罪だしなー」

上条「よく考えなくても犯罪だからな?」

上条「あと友達もどうかした方が良いと思うぜ。大切だったら特に」

女生徒「うん、まぁ……分かってるし」

上条「ダメだったら手伝う……ってのも意味無いよなぁ」

上条「話聞くと遊び半分でやってる子もいるみたいだし。何か切っ掛けでもあればいいんだけど。うーん」

女生徒「――あ、じゃあ朝の事件を何回も起こせば――」

上条「俺が社会的に死ぬから止めてっ!?てかお前本当に反省してんのかよっ!」

女生徒「むしゃくしゃしてやった(キリッ)」

上条「やっぱしてないじゃん!」

女生徒「あー、でさ。ほら、携帯出して」

上条「何で?」

女生徒「本当に痴漢されたら、呼ぶ、かも?」

上条「本当に突き出しゃいいだろ……まぁいいか」 ピッ

上条「……あぁそういや忘れてたんだけど、お前の名前――」

女生徒「あっ、そうだ!忘れてた!」

上条「うん、本当に忘れてる人はそんなにリアクション激しくないよな?」

女生徒「ごっめーんっ!今日はちょっと用事があるから!」

上条「コアクマ○なの?ワルキュー○でいつも忙しいあの子なの?」

女生徒「じゃねっ」

上条「おー、またなー。今度は捕まるからホントにすんなー」

女生徒「うっさい不幸面っ!」

上条「やかましい幼児体系っ!あんまナメてっと海原に紹介すんぞっ!」

女生徒「……どんな人……?」

上条「一言で言えば『愛の戦士』」

女生徒「ストーカー?」

上条「折角遠回しに言ってんのにな!」

――自宅 夕方

上条「……インデックスさんや、食べて直ぐ寝ると牛になりますよ?」

インデックス「え、ホントにっ?だったらスフィンクスも牛さんになるんだよ!?」

上条「待て!お前猫を牛にしてどうするつもりだっ!」

上条「てか思ったんだけどシスターさんが肉食っていいの?」

インデックス「主はこう仰いました。私の体はパンで血は葡萄酒、これを食せよと」

上条「ふんふん」

インデックス「……人は豚の味がするらしいねっ!」

上条「いやああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?助けてっ、それだけはっ!」

インデックス「じょーくなのにとうまが酷いんだよ、ほんと」

インデックス「でもでもイギリス清教ではローマ正教と違って、あまり食べ物には制限がないんだよね」

上条「あ、そうなんだ」

インデックス「神様の言葉は絶対だけど、絶対じゃないんだよ」

上条「どっち?」

インデックス「右の頬をぶたれても、時には殴り返す時があってもいいと思うんだよ」

上条「それただの人だよね?アガペー的な人はどこ行ったの?立川のアパートでバカンス中?」

インデックス「あ、そういえば聖遺物って言う聖人の遺体やその装飾品が残ってるんだけど。とーまは知ってるかな?」

上条「せいがいふ、とかだっけ?」

インデックス「その殆どが無くなっているのは宗教的な熱狂から、修道士達が食べてたって言う話があってだね」

上条「……あのさ。俺いつも思うんだけど、ヨーロッパって文化が進んでいたイメージがあるけど、所詮は変態紳士なだけだよね?」

上条「時々出る変態やら猟奇殺人者を見るに、どう考えてもおかしいよな?」

インデックス「それは偏見というものなんだよ、とーま」

インデックス「現代でもアフリカ某国では『アルビノの子は縁起がいい』とか言って食べ――」

上条「あーもう俺が悪かったからっ!その話は無しでっ!」

PiPiPi、PiPiPi……

上条「って、もしもし?」 ピッ

黄泉川『上条?上条の携帯じゃん?』

上条「あれ、黄泉川センセ?俺の携帯知ってましたっけ?」

黄泉川『いや、そうじゃないじゃん……まぁいいじゃん上条。あんた今はどこにいるじゃん?』

上条「自宅です。XX学区の」

黄泉川『――それを証明出来る相手は?』

上条「証明って。取り調べじゃないんですから」

黄泉川『答えるじゃん』

上条「……どうしたんですか?」

黄泉川『いいから』

上条「イン――じゃなくって。土御門とその妹さんが隣に住んでて、十分前ぐらいまで一緒にメシ食ってました」

黄泉川『……そっか。それならいいじゃん』

上条「何か、あったんですか?」

黄泉川『……』

上条「先生?さっきから変ですよ?」

黄泉川『……これは、あたしの独断で言うよ。きっと明日になれば、あたし以外の人間があんたに聞きに来る筈だから』

上条(口調が、変わった?)

黄泉川『いいか?落ち着いて聞け』

黄泉川『今日の中学生、名前は――って知らないか、あの子が』

黄泉川『今さっき、駅のホームから突き落とされた』

――10分前 駅のホーム

女生徒「……」

女生徒(……変な人だった)

女生徒(騙されて怒ったのかと思ったら、身も知らない、顔も分からない、『不幸を押しつけられる側』を思って)

女生徒(結果的には凄く怒られたけど……まぁでもおかしな話だよ、うん)

女生徒(エントロピーだっけ?良く分からないけど、人類の人口は増え続けていて、文化水準も上がってる)

女生徒(もしも『幸福』が一定量しかなかったら、100年前と今を比べたらどんだけ少ないんだって話)

女生徒(ちょっと考えれば分かる、かな?)

女生徒 ピッ

女生徒(退会のメールを出して、っと。これで終りかぁ)

女生徒(のめり込んでる友達に昼間の話をしたら、『だっよねー、あたしもヤバいと思ってたんだー』だし)

女生徒(明日っからまた面白そうなサイト探すのもタルいかなー)

女生徒「……」

女生徒(あの人をみんなに紹介して、からかうのも面白そうだし?)

アナウンス『XX番線へ電車が入りまぁす。お客様は白線の後までお下がりくださぁい』

女生徒(そういえばまだ名前知らない。なんて登録しよっ――)

女生徒「……あ、『やそはしら』でいっか」

?「違う。それは『やそまが』だ」

女生徒「え」

?「『八十枉津日神(やそまがつひのかみ)』を意味している」

トンッ!!!

女生徒「んんっ!?」

キッキィィィィィギィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!


――幻想魔笛 『“八十枉銀行”前編 ~八十柱銀行~』 -終-

――幻想魔笛 『“八十枉銀行”後編 ~■■■■■■~』 -予告編-

インデックス「『八十枉津日神(やそまがつひのかみ)』はこの国の旧い旧い神話に出て来る神様なんだよ」

インデックス「イザナギがイザナミを求め冥府へ下ったのはいいけど、そこで見たのは黄泉の穢れを一身に受け」

インデックス「とても醜く腐り落ちた姿だったんだね」

インデックス「……命からがらイザナギが現世へ戻ってきたけど、その身には多くの穢れがついていたんだよ」

インデックス「イザナギは慌てて禊ぎ、身削きをして穢れを憑き落とした」

インデックス「その、落ちた汚れから八十枉津日神が生まれたんだよ」

インデックス「別名『大禍津日神』が」

インデックス「……」

インデックス「そしてマガツヒ神が後年、本居宣長によって悪神だと定義されるんだよ」

インデックス「人生における不合理をもたらし。世界には人の禍福は合理的、平等に訪れず」

インデックス「誠実に生きている人間が必ずしも幸福を享受し得ないのは――」

インデックス「――八十枉津日神の仕業だって」

――?

上条(……俺は今、選択を迫られている)

上条(どうしようもない、どうしたものでもない)

上条(決まった結果が覆される訳でもない。だから、これは自己満足に過ぎない)

上条(けど、だからといってこのまま野放しには出来ない。それは、絶対だ)

上条(そしてそれは学園都市の中、俺一人では決して出来ないであろう確信もある)

上条「……」

上条(俺は『誰』へ助力を求めるべきだろうか?)

上条(そもそもこの話は魔術サイド、科学サイドのどちらの話なのか?)

上条(それをよく考えた上で、俺は助けを請う――)


――幻想魔笛 『“八十枉銀行”後編 ~■■■■■■~』 -予告編 終-


※そんな感じに後編用の上条さんの相方役を募集します
選んだ相方の立ち位置により、魔術と科学どちらかのお話となります

例)-土御門(シスコン)

上の例だと魔術サイド側。最終的に最多得票者“一名”が次回投下の相方となります
次点サイド(※次点者ではなく)は……まぁ今サモン5書いているのですが、余力があればいけるかも?つーか夏は超苦手です

相方さんに制限はありませんが、締め切り時間は本日17時です
では宜しくお願いします

業務連絡、業務連絡ー
>>1ですが思いっきり割れたので、このまま票差が開かない場合は決選投票にしたいかと思います
方法は17時”ぐらい”に私が書き込み、

私のレス+1(直後に書き込んだ方)のアンカー踏んだ方が『既出の人物から魔術サイトの人間を選び』
私のレス+2の方が『既出の人物から科学サイドの人間を選び』
レス+3になった方には『魔術サイドと科学サイドのどちらかを選ぶ』

方針で行きたいかと思います。尚、>>1の都合上18時までに決定してください
(それが来週以降、選ばれなかった方は私の胃の調子次第です)

ちなみに連投可、一人で三つ踏むのもありとします。では宜しく

五時……昔は魔神英雄伝ワタルを楽しみにしてたんですけどねー

ん? なんか投票やってるなー
食蜂さんで

>>254-256
有難う御座いました。なんか思いっきりグダグダになってしまいましたが、
来週の相方は食蜂さん、科学ルートで行くことになりました
バードウェイさんは……余力があれば、という事で

ともあれ投票下さった全ての方に感謝を。ではまた来週



――幻想魔笛 『“八十枉銀行”後編 ~ゴーストフィッシング~』


※今週から上司(コミケの原稿落とした)の推敲再開しました

――10分前 駅のホーム

女生徒(あの人をみんなに紹介して、からかうのも面白そうだし?)

アナウンス『XX番線へ電車が入りまぁす。お客様は白線の後までお下がりくださぁい』

女生徒(そういえばまだ名前知らない。なんて登録しよっ――)

女生徒「……あ、『やそはしら』でいっか」

?「違う。それは『やそまが』だ」

女生徒「え」

?「『八十枉津日神(やそまがつひのかみ)』を意味している」

トンッ!!!

女生徒「んんっ!?」

キッキィィィィィギィィィィィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!

一方通行「『だァかァらァ――違うつってンだろォが!』」

ピタッ

女生徒「――っ!?……?」

一方通行「『醤油をぶっかけンのが肉ジャガだァ!ビーフシチューたァ別もンだって――』」

一方通行「『違ェよ!肉ジャガが!肉ジャガが!』」

一方通行「『ビーフシチューはもうお母さァンの味じゃァねェつってンだろォ!』」

女生徒「……えっと、助かった、の?」

一方通行「『ありゃァお母さンがたまァに奮発して作ってくれンだよォ!』」

一方通行「『肉ジャガが!肉ジャガが!あァもォ面倒臭ェな!』」

女生徒(この白い人、片腕一本で電車止めた、の?)

一方通行「オイ、お前ェ」

女生徒「は、はいっ!?」

一方通行「肉ジャガとビーフシチューつったらァ、どっちがお母さンのメシだと思う?」

女生徒「ビーシチュー」

一方通行「なンだお前ェ欧米かっ!お母さンに肉ジャガが作って貰わなかったのかよっ!?」

女生徒「えっと、お母さんよく作ってたのはシチューかな、って」

一方通行「……もういい。行っていいぞ」

女生徒「あ、あのっ!」

一方通行「あァ?」

女生徒「あたしは好きです、肉ジャガ」

一方通行 グッ

女生徒(何でサムズアップ?どうしてちょっと嬉しそうなの?)

――アンチスキル詰め所 22時

黄泉川「――って事があったじゃんよ」

上条「良かった……大したケガはなかったのか」

黄泉川「ちょい足首捻ったけど、まぁ3日もありゃ治るじゃん」

上条「いやでも黄泉川先生から電話来た時にはどうしたもんかと」

黄泉川「いやー、悪かったじゃん?あん時は情報が錯綜してて、あたしも混乱してたじゃんよ」

上条「……うん、まぁ仕方がないって。で、結局どうだったんだ?」

黄泉川「間をとってハヤシライスにしたじゃん?」

上条「『肉ジャガが』の話をしてねぇよっ!?つーか一方通行なんで肉ジャガに拘ってたんだっ!?」

黄泉川「『間を取って』の小ボケは拾ってくれないじゃん?」

上条「ウルセェなっ!?俺の周りの女の子こんなんばっかかよっ!」

黄泉川「――上条」 キリッ

上条「な、なんだよ?」

黄泉川「女の子って言うなよっ。て、照れるし」

上条「キャラ崩壊してるからっ!?戻ってきてセンセイっ!」

黄泉川「ご褒美の方は、ちょっと奮発するじゃん」

上条「嫌いじゃない」 キリッ

黄泉川「それより、だ。女の子はウチの方で保護してるじゃんが、あんたと会わす訳には行かないじゃん」

上条「なんでだよっ?まだ俺を疑ってんのか!」

黄泉川「『証人保護プログラム』みたいな感じじゃんよ。一回命襲われてんだから、もっかい狙われる可能性は高いじゃんし」

上条「そりゃそうだけどさぁ」

黄泉川「つー訳でさっさと帰るじゃん」

上条「……ここは俺に捜査情報教えてくれる流れじゃないの?」

黄泉川「学生は勉強するのが本分じゃんよ。帰ってビーフシチューでも作ってやるじゃん」

上条「俺は肉ジャガが派なんですけど」

黄泉川「あたしはむしろカレー粉ぶち込む派じゃんね」

上条「それ、面倒臭いってだけじゃねえか」

黄泉川「早くて美味いメシなら文句はないじゃんね――あぁそうそう、これは世間話じゃんが」

黄泉川「『ヤソマガツ』」

上条「え」

黄泉川「あの子が突き落とされる瞬間、そう聞いたらしいじゃん」

――自宅 20時20分

インデックス「『八十枉津日神(やそまがつひのかみ)』はこの国の旧い旧い神話に出て来る神様なんだよ」

インデックス「イザナギがイザナミを求め冥府へ下ったのはいいけど、そこで見たのは黄泉の穢れを一身に受け」

インデックス「とても醜く腐り果てた姿だったんだね」

インデックス「……命からがらイザナギが現世へ戻ってきたけど、その身には多くの穢れがついていたんだよ」

インデックス「イザナギは慌てて禊ぎ、身削きをして穢れを憑き落とした」

インデックス「その、落ちた汚れから八十枉津日神が生まれたんだよ」

インデックス「別名『大禍津日神(おおまがつひのかみ)』が」

インデックス「……」

インデックス「そしてマガツヒ神が後年、本居宣長によって悪神だと定義されるんだよ」

インデックス「人生における不合理をもたらし。世界には人の禍福は合理的、平等に訪れず」

インデックス「誠実に生きている人間が必ずしも幸福を享受し得ないのは――」

インデックス「――八十枉津日神の仕業だって」

上条「……難しいな、なんか」

インデックス「分かり易く言えば、『不運の神様』なのかも。だってこの神は『殺されなかった』んだから」

上条「どういう意味だ?」

インデックス「日本の神話でも神が神を殺す事は珍しくないんだよ。イザナミはヒノカグツチ――自分の子に殺され、その子はイザナギに殺された」

インデックス「でもね、『ヤソマガツ』は殺されなかった。どうしてだと思う?」

上条「いや聞かれてもな」

インデックス「『殺さなかった』じゃなくって、『殺せなかった』んじゃないかな?」

上条「死なない神様だったとか?」

インデックス「と言うよりも『概念』に近い存在だったのかも?人の持つ負の感情、嫉妬・怠惰・好色・強欲・暴食・憤怒、そして高慢」

インデックス「私達の間で『七つの大罪』と呼ばれている悪魔達が居るけど、どうして神様は野放しにしたんだろうか、って」

上条「その答えが、殺せない、か」

インデックス「まぁ悪魔の存在意義の問題だから、教会の主流派じゃ認められていないんだけどね」

上条「そっか……でも名前だけ使って、実体は全然別って可能性もあるよな?」

インデックス「科学の人達だったらそうかも。でも魔術師だったら無理なんだよ」

インデックス「名前は本質、それ自体が大きな意味を持つから。偽ったりする事自体が自分の存在意義の否定になっちゃうし」

上条「うーん……難しいな」

インデックス「そこはそれ、安心なんだよっ!とうまの近くには10万3000冊の魔導書を記憶した女の子が居てくれるかも!」

上条「え、アル=アジ○さん居るのか?」

インデックス「入ってるけど!確かにあの子の魔導書も網羅しているんだけど!」

上条「マジ!?バルザイの円月刀とかすっげー見たい!」

インデックス「だから、うん。無茶振りが過ぎるからヘイトとかアンチとか言われるんだよ?反省はしないの?」

上条「あれはホラ、実は『竜王の殺息』で記憶障害が出ている、って鬱設定があったんだけど」

上条「『バカじゃねーの?誰得?死ねば?』って言われたのがロシア編最中だったんだな、これが」

インデックス「……出来ればやり直しを要求したいかも」

上条「じ、人生の主役は自分以外の何者でもないって事だよね!」

インデックス「逃げた……」

上条「ふと思ったんだけど、どうして魔術結社って悪い人しかいないの?そしてどうして正義はオールウェイズ在庫切れなの?」

インデックス「魔術師は趣味に走った人が多いからかも」

上条「まぁ欲望――願望に忠実つったら、そりゃ法律とか守ってられないよなぁ」

上条「ともかく分かったよ、ありがとうな?」

インデックス「えへへーっ、どういたしまして、なんだよ」

上条「ただ、インデックスの力を借りられれば、とは思うんだけど。今回ははまだどっちなのか分からないだろ?」

インデックス「うん、そうかもっ」

上条「だからお前はもうちょっと待機しててくれないかな?俺の方である程度調べがついたら、適切に処置した上で報告するから」

インデックス「わかったんだよ!……だよ?え、何か言いくるめられたかも?」

上条「よーし今日はビーフシチューと肉ジャガの二択だぞー。どっちがいい?」

インデックス「両方食べればホームランだねっ!」

上条「おっと何か昭和っぽいフレーズですね!今用意するから手ぇ洗って、スフィンクスにカリカリやっといてくれ」

インデックス「はーいっ!……あ、あれ?なんか、騙されている感がするんだよ?」

――翌日 学校 屋上

上条「――って話なんだが」

土御門「流石は禁書目録、マガツヒ神に関しちゃ大体そんなもんだぜぃ」

土御門(まぁ密教系結社で『クラオミカミ』と並んで崇められているのは知らなかった……いや、言わなかったのか?)

上条「あー、お前そっちの専門家だっけか」

土御門「何を今更――ん?じゃなんで俺を呼び出したんだ?」

上条「『八十枉銀行』に関しての情報が欲しかったんだけど、無理、か?」

土御門「正直めんどくさいにゃー」

上条「そこをなんとか!後生だからっ!」

土御門「知ってるのはカミやんと同じ噂レベル、つーか下手したらそっちの方が詳しいにゃー」

土御門「まぁ学園都市の中での不穏分子、って事だから排除するのは同意出来るぜよ」

上条「だったら他に詳しそうな奴は知らないかな?科学でも魔術でもいいから」

土御門「科学は……あぁ、『学舎の園』って知ってるか?常盤台のお嬢様が暮らす『街』」

上条「敷地内に女の子しかいない、でっかい街みたいなのだっけか?」

土御門「そこで小火騒ぎがあったらしい。ん、だが」

土御門「補導された生徒達は『幸せになりたい』と言ってるみたいだ」

上条「そんな所まで広がってんのかよ……」

土御門「一昨日の話だ。事件は聞いてたが、大した事は無いだろうと調べてなかったぜい」

上条「『八十枉銀行』を知らなきゃ、タダの頭イタイニュースだと思うわな」

土御門「他には……『明け色の日射し』の首領が学園都市内で確認されたんだと」

上条「バードウェイがかっ?よく分かったなー」

土御門「ショッピングセンターの下着売り場で三時間品定めした挙げ句、何も買わずに居なくなった姿が確認されている」

上条「気まずいっ!?つか隠密行動は?俺とは仲直りしたけど、学園都市とはケンカしたままじゃなかったっけ?」

土御門「プロレスじゃねーのって俺は思うが――なぁカミやん、これが『偶然』だと思うか?」

上条「バードウェイがこの事件の首謀者だってか?」

土御門「え、カミやん最初は『上条「今日から明け色の日射しになった上条です!」』だったんでしょ?」

上条「違うよ?ペ×をこじらせてる人へ相談していたら、ヤツが徹夜で企画作って持ってきただけだからね?」

上条「しかもその内容は『俺とバードウェイが下着を買いに行って、更衣室の中で3ラウンド』って言う、魔術と科学は無くてエロしかなかったからなっ!」

土御門「科学と魔術が交差しないのに物語が生まれるんだにゃー」

土御門「あ、でもある意味科学側のカミやんと魔術側のバードウェイは交差するよね?性的な意味で」

上条「ちょっとお前もアレな所あるよな?つーか今真面目な話なんだけど」

土御門「知ってるかい、カミやん?」

上条「……何?」

土御門「『深淵を覗く者はまた、深淵からも覗かれている』」

上条「ギャグじゃなかった!?っていうか心に痛い言葉だよなっ!身に覚えはないけども!」

土御門「――ってまぁそんな感じかにゃー。過去の事件を追うなら常盤台、魔術関連を疑うならバードウェイを頼るのがいいと思うぜい」

上条「常盤台は分からないでもないけど、バードウェイはどうして?忙しいって可能性は?」

土御門「学園内にいる魔術結社は一つだけ。ねーちん達呼びたいんだったら、多分仕事ほっぽり出して来てくれると思うぜい」

上条「流石に頼りっぱも悪い気がするしな。分かった!やってみるよ」

土御門「ねーちんには『年上の痴女系より年下幼女に踏まれたい願望があるっぽい』って言っておくにゃー」

上条「神裂さんメンタル弱いんだから許してあげて!?」

――科学ルート

上条(さて常盤台……常盤台か)

上条(『学舎の園』って土御門の奴に梱包されて行った所……あれ、そういや今あいつ失踪してなかったっけか?)

上条「……」

上条(ま、いいか。それよりも今は事件の方が大切だよな)

上条(常盤台で調べ物、つったらあいつしか居ないよな)

――常盤台中学 授業中

教師「――では『愛国心はならず者の最後の避難場所である』と言ったのは誰でしょうか……御坂さん、分かりますか?」

御坂「はい、サミュエル・ジョンソンです」

教師「正解です。ではその意味は?」

御坂「えっと……愛国心は良くない、みたいな話ですか?」

教師「不正解です。誰か他にご存じの方は……居ないようですね」

教師「よく知られるサミュエルの言葉ですが、知名度ほど意味は浸透していないのが現状です」

教師「そもそも彼は大変なスコットランド人嫌いで知られており、例えばですね」

教師「『カラスムギはイングランドでは馬の飼料だが、スコットランドでは人間が食べる』」

教師「そう発言してスコットランド人を激怒させたりもしました。愛国心の話もその延長線にある話です」

教師「そもそもイギリスはイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの四つの国で構成されています」

教師「つまり『イングランド人のサミュエルが、スコットランド人のジョン・ステュアート首相へ対し』」

教師「『無能なスコットランド人――ならず者がイングランド人へ愛国心どうこうでごまかしてんじゃねーぞ』」

教師「そう言っただけの台詞ですね」

教師「まぁ典型的な皮肉家、ともすればニヒリストとも取れるイングランド人らしい――」

ブルルルッ、ブルルルルッ

御坂(メール?) パチッ

From――上条当麻

御坂「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっいぃっ!?」

教師「……御坂さん?」

御坂「はい?――はいっ、質問ですっ!」

教師「質問でしたら、そんなに元気でなくとも受け付けますよ?」

御坂「すいまっせん!気になっちゃって、もう!」

御坂「そうじゃなくって、えっと――当時のイギリスって東インド会社がありましたよね?アヘン戦争の切っ掛けとなった」

御坂「その整合性はどうなっているのかなー、なんて」

教師「良い質問ですね。御坂さんが不思議に思った通り、イギリスは東インド会社の活動を始められていました」

教師「あ、イギリスの他にもフランス、オランダ、スウェーデン、デンマークも同名の会社を興していますから、混同しないで下さいね?」

教師「特にイギリスはアヘン戦争を引き起こした会社でもありますし、まぁ貿易しながら植民地を広げていた、と思って下さい」

教師「で、そのサミュエルはイギリスの政治方針、本国と植民地での重商主義に関し、『何一つとして非難するような言葉を残していない』と」

教師「つまり『愛国心云々以前に、サミュエル自身が植民地政策について、何ら抵抗を覚えていなかった』証拠となります」

教師「以上の歴史的背景を踏まえず、サミュエル氏の言葉を引用して国家を批判する人間は」

教師「『オレは愚かで言葉の字面しか読めず、歴史も理解していないバカだ』と言っているに等しいので、もし見たら笑ってやって下さいねー」

御坂(……尖りすぎてないかな、この先生)

――休み時間

御坂(え、何?メールなんて珍しい、つーか初めてじゃなかったっけ?)

御坂 ピッ

『すまん、話がある。割と緊急に』

御坂(……電話、した方がいいのかな?着拒されない、よね?)

御坂 ピッ

トゥル、ガチャッ

御坂(コール一回で取った。余程急いでんのか)

上条『すまん御坂頼みがある!』

御坂「『良いんだけどさ。こういう時だけ頼られるってのも、なんかねぇ?』」

上条『お前にしか頼めないんだよっ!自販機なら何台壊しても見てみないフリするから!』

御坂「『どんな条件よっ!?自販機の所有権はあんたじゃないし!』」

上条『お前だけなんだよ!』

御坂(あ、ヤバ)

上条『俺の知り合いの中でも、お前にしか出来そうにないんだ!だから、だからっ!』

御坂「『……あたしでいいの?他の誰かじゃなくって?』」

上条『当たり前だ!お前以外に頼れるもんかよ!』

御坂(そー言われると、まぁ悪い気はしないわね。うん)

御坂「『ど、どのぐらい必要?』」

上条『えっ?』

御坂「『別にあたしじゃなくたって代役立てればいいんじゃないの?』」

上条『……無理だ、御坂』

上条『お前の替わりなんて居る訳ねぇだろうが!お前じゃないと頼めないんだよ!』

御坂「『……そ、そっか!じゃあしょうがないわよねっ!あたししか居ないんだったらば!』」

御坂(あたしのフラグ来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!)

御坂(長かった!共闘らしい共闘は『妹達』以来、いつもカプセル怪獣状態だったあたしが!)

御坂(神様が『こいつがヒーローになるなんて、誰も思わなかったでしょ?(ドヤァ)』つってから格段に出番の減ったあたしがっ!)」

御坂(あの金髪と微妙にキャラ被ってる気がしないでもないあたしが!ってか一人称と微妙なツン具合だけだけど!)

御坂(これでようやく人生の主役に――)

上条『――って聞いてるか?おーい』

御坂「『ハッ!?き、聞いてないわよ!悪いっ!?』」

上条『……話聞いてなくて逆ギレされるのは初めてだけど』

御坂「『さぁあたしに言ってみなさいよ!出来ることだったら何だってしてあげるから!』」

上条『――食蜂さんの連絡先教えてくれ!』

御坂「『……あぁ?』」

上条『いやだから常盤台の食蜂さんの連絡先か、紹介して欲しいって頼みなんだけど』

御坂「『……か』」

上条『すまん。ちょっと遠くて聞こえな――』

御坂「『結局は乳かあああぁぁぁぁぁっ!?そんなに大事かおっぱいがっ!!!』」

御坂「『何だかんだ言ってお前も敵だったワケかコラあぁっ!』」

上条『大事か大事じゃないかの二択なら超大事だけどもっ!今はそんな話してねぇぞ!』

御坂「『じゃあ何よっ!何であの性悪女のアドレス欲しいって話になったのよ!』」

上条『待て待てそうじゃねぇ!人助けなんだって――』

――昼 常盤台近くの路上

上条(事情話したら連絡してくれる、って言ったけど。あそこまでキレなくたっていいと思う)

上条(……まぁ俺みたいな怪しいヤツの胡散臭い話をほいほい聞けない、って気分も分かるが)

上条(そう言った意味で御坂は友達思いの良い奴なんだよ、うん)

食蜂「かっみじょうさーーーんっ☆」 キラッ

上条「おっ、久しぶり」

食蜂「待った?ね、待ったぁ?」

上条「10分ぐらいかな?」

食蜂「もうっ!そこは『い・ま・き・た・さ・ん・ぎょ・う』って言う所なんだゾっ」

上条「食蜂さんちょっと見ない間にネタキャラ入ってないかな?もしかして残念な子と連絡取ってない?」

食蜂「だってえレベル5が集まってから、連絡力くれなかったじゃない?」

食蜂「だからちょっと拗ねてるんだゾっ☆」 キラッ

上条「あーごめんごめん。あの後は色々大変でさ」

食蜂「統括理事が一枚噛んでたしぃ、大変なのは分かるけどぉ」

上条「相変わらす事情通――ってか、その力を借りたいんだけど」

食蜂「んー、じゃあお店に入りましょっかぁ」

――駅前の喫茶店

上条「――成程なぁ。常盤台でもやらかす子が出て来ちまってんのか」

食蜂「――それはいいとしてぇ、今度お欲しい夏物のお洋服があるんだけどぉ」

上条「――それはともかくだ。さて、どうしたもんかなぁ」

食蜂「――上条さんは巨乳派?それとも犯罪者予備軍?」

上条「聞いて?俺の話をさせてくれないかな?それと巨乳の対義語はもっと穏やかだからね?」

上条「あと隙あらば手を絡めようとするのやめなさい!ちぇー、じゃありません!」

食蜂「もうっ上条さんの、い・け・すっ!」

上条「生け簀じゃなくてイケズな?おかしいな、『学探』とは別の世界の筈だけど」

食蜂「あ、でも私のお友達がぁ、『釣った魚に餌をやらないク×ヤロー』って」

上条「おっとそれ以上はやめて貰おうか!この場で俺に号泣されたくなかったらな!」

食蜂 ゾクゾクゾクッ

上条「しまった!?逆効果かっ!」

食蜂「てか、いいのぉ?冗談ばっかり言うのも、私は楽しいけどぉ」

上条「脱線させたのは君の方だと思うけど……」

食蜂「――まぁ、私も御坂さんもぉ放置力するつもりはないわよぉ」

食蜂「私達の『庭』に踏み込んだ以上、然るべき報いは受けて貰うゾっ☆」

上条(目が冷たくなった……本気になった?)

食蜂「だから上条さん、正直に教えて欲しいんだけどぉ」

上条「おうっ」

食蜂「バストが大きめの娘と断崖絶壁な娘、どっちがお好みかしらぁ?」

上条「錯覚でしたね、はい」

食蜂「冗談はおいといて、このムービーを見て欲しいんだけどぉ」 ピッ

上条「どれどれ――って話進まないから、こっそり手を絡めようとすんなっ」

食蜂「けちー」

上条(駅構内の、学生達が電車待ちをしている動画だ)

上条「――あ、この子は」

食蜂「そおよぉ。昨日狙われた娘でしょお?」

上条「どっから引っ張ってきたのは聞かないけど……まぁそれもそうだよな。監視カメラなんてどこにだってあるんだし」

上条「俺達の出る幕は無いって話か」

食蜂「だったらいいんだけどぉ、ここ集中力っ☆」

上条「何も無いじゃんか……あ、ホームの端っこに一方通行。携帯で何か話してる」

食蜂「そっちじゃなくてぇ。夕方の人混みでぇ、人一人分だけ空いてるなん不自然じゃなぁい?」

上条「姿を消す能力者?」

食蜂「ハズレぇ。姿が見えなくても質量を消せない以上、“そこ”に存在はあるんだしぃ?」

上条「駅のホームに透明な障害物あったら騒ぐわな、そりゃ」

食蜂「だったらもっと単純な考えがあるわよねぇ?」

上条「リアルタイムで防犯カメラをハッキングしている?」

食蜂「ってアンチスキルの人達は考えてるみたいよぉ」

上条「元の画像へ戻せるんだったらしてるだろうし……あ、だったらモンタージュ!似顔絵作ればいいんじゃないかっ」

食蜂「見れば分かると思うけど、他の子達も殆どがケータイ弄ってたり音楽聞いたり、お友達とお喋りしてるわよねぇ?」

食蜂「だから一応全員から事情聴取を取ったんだけどぉ、誰も突き落とした人間を見た者は居ないんだってぇ」

上条「クソッ!手がかりなしかよ!?」

食蜂「んー、そうでもないわよぉ?」

食蜂「まず『その場に居た他の学生達が気づいていない』のは、『その場に居てもおかしくない』って事だからぁ」

上条「……あの時間帯、あの場所に居てもおかしくない――学生か!」

食蜂「次にハッキング自体誰でも出来る訳じゃないしぃ、どうやっても足が着くもんねぇ?」

食蜂「推測力だと電気系能力者だと思うわぁ」

上条「……食蜂さん」

食蜂「な、何よぉ?」

上条「『意外と使えるって何!?前に助けたの忘却力っ!?』」

食蜂「あ、あれ?そのセリフ私のだしぃ!?」

上条「いやなんかノリで――でもちょっと安心した。捕まるのも時間の問題だっつー話か」

食蜂「でもぉ実行犯はそうなんでしょうけどぉ、根本力からの解決が必要よねぇ」

上条「だなぁ。誰だよこんな悪趣味なサイト始めやがったの。目的さえ分かりゃあな」

食蜂「そっちは御坂さん次第かしらねぇ。んー……あっ」

食蜂「ごめんなさぁい。手を出して貰えないかしら?」

上条「こう?」

食蜂 ギュッ

上条「ちょ、握る必要性が――」

食蜂「しっ、合わせて」 ピッ

上条「……?」

上条(スマフォに何か書いてる?)

食蜂「――で、なんだけどぉ。次のデートはどこへ行こうかしらぁ?」

上条「はぁ?デートって」

食蜂「もぅっ!上条さんったらいつも忙しいばっかりで、浮気しちゃうんだぞっ☆」 キラッ

スマフォの画面『監視されてる。話を合わせて☆』

上条「明らかに“☆”は要らねぇじゃねぇか!」

食蜂「ゴメンナサイねえ。いつもキラキラしているから☆」(横ピース)

上条「そうなぁ……今から出た方が良いのか?」

食蜂「え、いいの?本当にぃ?」

上条「あぁ、俺で良かったらいつでも付き合うよ」

食蜂「……」 ピッ

上条「食蜂さん?」

スマフォの画面『愛してるって、言って☆』

上条「必然性も脈絡も不明だろーがっ!?逆に不自然すぎるだろっ!」

食蜂「どうしたのぉ上条さん?」

上条「うんごめんな?色々と無茶振りが過ぎると思うし、せめて理由ぐらいは教えて欲しいんだけど」

食蜂「じゃ、ショッピングに行きましょうかぁ」

上条「最初から信頼関係がズタズタなんだけど、レベル5ってみんなそうなの?人の話聞かないの?」

――XX学区 アウトレット

上条「――って来たのは良いけどさ」

食蜂「ねぇねぇ上条さん、これなんてどうかしらぁ?似合う?ね?」

上条「あーしょくほーさんはなにきてもさいこうだなー」(超棒読み)

食蜂「今は二人っきりなんだから、み・さ・きって呼んでくれないと、拗ねちゃうんだゾっ☆」 キラッ

上条「君絶対俺の事からかってるよね?多分飽きたとか困らせたいとか、そーゆー主旨なんだよな?」

食蜂「わあっ、見て見てぇ!綺麗なウェディングドレスよぉ!」

食蜂「え、『みさきちに着て欲しいんだ』……?」

食蜂「……やだ、もしかして、プロポーズなのぉ?」

上条「お前佐天さんとグルなんだろ、なぁ?小芝居上手くなってるけど、残念な子と連絡とりやがってるよな?」

スマフォ(のカンペ)『ここでボケて』

上条「無理だよっ!?既に舞台の上にはボケがぎっしり載せられている状態だもの!」

スマフォ(カンペ)『16歳になるまで、お・あ・ず・け☆』

上条「口で言えよ!?カンペ使う意味が皆無じゃねぇかっ!?」

食蜂「……当麻さんってばぁ、いつも操折に言わせたがるんだ・が・ら☆」

上条「殴りてー。幻想どうでもいいから顔面に一撃入れてー」

男生徒「……」 ピッ

――少し離れた場所

男生徒「……」

男生徒(……よし、奴らの居場所を送信、っと)

男生徒(これでポイントげっとー、と。楽っちゃ楽だけど)

男生徒(しっかし幸せポイント?こんなのが本当に換金出来んのかよ)

男生徒(まぁ送られてくるメールの指示に従えば良いだけだから、まぁまぁ――)

ドンッ

男生徒「っと」

男「……あぁ?テメどこ見て歩いてんだよコラ?」

男生徒(うっわー見るからに面倒臭っ)

男生徒「すいませんでした。んじゃ」

男「オイオイ待てやにーちゃんよぉ。このまま黙って行っちまうってのかよ」

男「それじゃ『女王』に申し訳が立たねえだろうがよ!」

男生徒「『女王』?」

男「ちぃぃぃっと顔貸して――あ、テメっ!逃げてんじゃねぇぞガキがっ!」

男生徒(えっと……確か、警備員は高級家具売り場に多い……あぁ居た居た)

男生徒「すいませんっ!」

警備員「……どうかしたかね?」

男生徒「な。なんかヤクザっぽい人に因縁つけられちゃって!」

男生徒(これで良しっと。まさか警備員相手にどうこうはしないだろうし――)

男生徒(実際についてきてもない、な)

警備員「……そっかぁ。それは大変だったねぇ」

男生徒「……警備員、さん?」

男生徒(薄ら笑いを浮かべてヘラヘラしている……?何か様子がおかしい)

警備員「じゃ、ちょっと君も来て貰おうかな――『女王』が呼んでいるみたいだしぃ?」

男生徒「また『女王』?女王って誰だよぉっ!?」 ダッ

警備員「あ、待ちなさい!」

男生徒(なんだ!?なんなんだよっ!?警備員とヤクザがグルになって追い掛けてくる?)

男生徒(そんなバカな話があってたまるかっ!あり得る訳がねぇっ!)

店員「きゃっ!?」 ドンッ

男生徒「すいませ――助けて!助けて下さいっ!?」

店員「どうしたの、君。そんな震えて?」

男生徒「知らねぇんだけど!誰かに追われてんですっ!」

男生徒「俺はっ、俺は何もしてないのにっ!」

店員「……そう、分かったわ。私が助けてあげる」

男生徒「ほ、ホントかっ!?」

店員「そこの――クローゼットの中に隠れて頂戴?追ってきた人達はやり過ごせると思う」

店員「その間にアンチスキルへ通報するから、ね?」

男生徒「あ、りがと」

店員「いいからっ、早く隠れてっ!」

男生徒「うんっ」

店員「じゃ閉めるけど――鍵をかけても慌てないで?」

男生徒「早くっ締めてくれよぉ!」

店員「ごめんね?あ、そうそう一つだけ言い忘れてたんだけどぉ――」

パタンッ、ガチャッ

男生徒「――ぅえ?」

店員「――『女王』の言う事は、絶対なのよねぇ」

――同時刻 アウトレット内

男(なんだぁ……?『連中』の足跡を追ってきたと思ったら、あちこちに妙な電波が飛び交ってやがる)

男(大規模な能力……最低でもレベル4じゃねぇか)

男(だったら逃げちまった方が――)

上条「これは――あの子の分だっ!」

バキィィッ!!!

男「ぐぅっ!?」

上条「よぉ、突き落とし犯」

男「お前はっ!」

食蜂「あれぇ?『どうして分かったんだ』とか言うんじゃないのぉ?」

上条「言わないって……言わないよな?」

男「……」

食蜂「うん、もうバレちゃってるのよねぇ」

食蜂「確かにアナタは防犯カメラには映らないけどぉ――逆にぃ、『人の目には見えるけど、防犯カメラに移らない人』ってだけで特定力っ」

男「……無理だ、それは!お前らが仕掛けたのはペテンじゃないのか!?」

食蜂「どうしてぇ?」

男「『カメラと人の目を同時に確かめるなんて不可能』だろ!?」

男「警備室からの映像をケータイに転送したとしても、それだって電波が探知出来る能力者ならサーチに気づいて能力を切る!」

男「妙な電波がケータイに流れてりゃ、警戒する筈だからな!」

男「お前らはどうやったんだ!?どうせ一人一人殴りつけるとか、汚い手を使ったんだろうが!」

上条「お前が汚い言うなよ」

食蜂「んー、簡単よぉ。『アウトレット全てに居る人間を目視した上で、監視カメラに映るかどうか確かめただけ』だからぁ」

男「フザケンなっ!そんなバカな事が出来る訳が無いっ!」

男「何人か人を雇ったとしても、全ての人間を一々チェック出来るかっ!」

上条「あー……出来るんだ、それが」

男「……え」

上条「この駄目――じゃなかった子は、百人単位に周囲の人を『観察』させた」

上条「その情報を警備室の人間へ送って監視カメラと照合させる」

上条「すると映ってなかったお前さんが浮かび上がる、と」

男「『観察』させる、だと?バカなっ!?そんな大規模な能力聞いた事が――」

食蜂「改めて自己紹介するわねぇ」

食蜂「常盤台の女王、食蜂操折。能力は『心理掌握』――レベル5でぇすっ☆」

男「う、うわああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」 バチバチバチィッ

食蜂「あらぁ電撃使いは短気な人ばっかりねぇ。それじゃ――」

上条「――っと、悪い」

食蜂「上条さぁん?」

男「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 ダッ

上条「あの子の利子分忘れてた――その幻想以下略っ!」

パキィィイィィィンッ!

――駅前の喫茶店 一日後、夕方

御坂「――で、さ。結局何だったの?」

御坂「サイトにハッキングさせてあんた達の位置情報流してりしたけど。きちんとした説明が欲しい所よねっ」

食蜂「はい、上条さん。あーん?」

上条「人前で出来るかぁっ!?おい御坂も駄目な同級生に何か言ってヤレって!」

御坂「それはつまり人前じゃなきゃやるってか!」

上条「論点ハズレすぎじゃねぇかっ!?つーか話の焦点そこかよっ!」

上条「いやいや、説明する前に聞きたいんだけど。あのサイトって結局どういう機能があったんだ?」

御坂「まず情報収集?メールを送った時の位置情報やIP、プロバイダ等々、個人情報が嫌んなる程詰まってたわ」

御坂「『幸福ポイント』?みたいなのも自己申告だしねー」

上条「杜撰だなぁ、おい」

御坂「次に『リンク』するのよ」

御坂「脱会するメールを送れば、脱会希望者の個人情報が近くにいる人達へ送られると」

食蜂「実質的に『狙え』って言ってるのと同じよねぇ」

上条「って事はあの男が狙った場所って」

御坂「突き飛ばされた子が『八十枉銀行』へアクセスした場所だって事ね」

食蜂「訳が分からないわねぇ」

御坂「でもぉあのサイトね――最後に管理者がアクセスしてたのって、数年前なのよ」

上条「……はい?どういう事だよ!?」

食蜂「死んでるからよぉ。『幸福銀行』の主催者さんが」

御坂「ちょっ!?やめてよねっ、オカルトとか苦手なんだから!」

食蜂「そうじゃなくって本当によ。自動車事故で、ねぇ」

上条「要は、だ」

上条「サイトを作った人間はとっくの昔に死んでいるけど」

上条「サイト自体は残って今も『八十枉銀行』への預金者を募集しづけている、か?」

食蜂「当の本人が不幸にも亡くなったのに動き続けている、かぁ」

上条「それじゃ何か?俺達はもうとっくに死んじまった奴に振り回されてたって話かよっ」

御坂「そういう事になるわ。と言うかそれ以外の結論は出せないでしょうし」

食蜂「『ゴーストフィッシング』って知ってるかしらぁ?」

御坂「あぁ!……そうか、アレかぁ」

上条「どういう話?幽霊が釣りすんのか?」

食蜂「そうじゃなくってぇ。ほら、海の中に檻で作った仕掛けを沈めるじゃなぁい?エサを入れて」

食蜂「エサに釣られて魚が入る。それを引き上げれば漁師さんのお金になるわよねぇ」

食蜂「けど、それを忘れてしまったら?」

上条「仕掛けに入った魚は死ぬんじゃないのか?」

食蜂「その死んだ魚を狙って、新しい魚が檻に入るわよねぇ?」

食蜂「そうして仕掛けを引き上げる人が居ないのに、延々とループするのを『ゴーストフィッシング』って言うのよぉ」

上条「誰も得をせず、延々と不幸になり続けていく、か」

御坂「仕掛けられた方が悪いのか、それとも仕掛けた方が悪いのか。少なくとも実践していた連中に効果はなかったみたいだけどね」

食蜂「あの男の人……一部の人達はなんてカルト?ってぐらいにハマっちゃってるみたいだしねぇ」

上条「……ま、何にせよ犯罪は犯罪だよ。つーかあんな頭痛いサイトに騙される方が悪いっての」

食蜂「サイト自体は政府へ要請して閉鎖させる、って話だからぁ。これ以上騙される人は広がらないと思うわねぇ」

御坂「……あんたは、さ。使いたくならないの?」

食蜂「『不幸だぁ』が口癖になっているぐらいだしぃ、ちょっとは考えたとかぁ?」

上条「そうでもない。困った時には頼れるお前らみたいな知り合いもいるし、自分で言う程不幸とは思ってないし」

上条「……そもそもアクセスするだけのカネがないんだな、これが」

御坂「バーカ」

食蜂「……そうよねぇ。中学生を騙しているって評判の人が、不幸な訳が無いわよねぇ?」

御坂「ちょっと!?それ初耳なんだけど!」

上条「人聞き最悪だなそれっ!?」

食蜂「あらぁ?展示されているウェディングドレスの前で、仲睦まじく談笑する二人の写真がここにぃ」 チラッ

上条「昨日のどうやって撮った!?仕込みかっ!仕組んでたんだなっ!?」

食蜂「あ、ほらぁこっちの女の子、とっても幸せそうに笑ってるわぁ」

上条「どう見ても『次、どんな無茶振りしてやろうか?』ってワクワクしているドSの顔だよね?虐めてやる感たっぷりだからな?」

食蜂「でもぉ、写真があるって事は事実だったってぇ――あ、御坂さんの携帯に送っておくわねぇ?」

御坂「……よーしお前ら。人が!人が必死でサイトにハッキングしかけてた時によ」

上条「落ち着け御坂!前振りじゃないぞ!違うんだからな!」

御坂「何をイチャコラしとんのじゃゴラあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」

上条「待てビリビリっ!店内でビリビリがビリビリするとビリビリするから危険だよっ!?」

御坂「ビリビリビリビリうっさいのよっ!!!」

食蜂「『肉ジャガが』、みたいよねぇ」

上条「見てないで助けてっ!?上条さんが電子レンジでチンされた小動物みたいになっちゃうからねっ!」

食蜂「――と、言う訳でこの事件もぉ――」

上条「オイ待て明後日の方向いてシメようとするんじゃないっ!まだ事件は会議室じゃなくって現場で起きようとしてるんだからっ!」

食蜂「――解決力だゾっ☆」 キラッ(横ピース)

――翌日 駅のホーム

女生徒「……」 キョロキョロ

上条「おっす」

女生徒「お、おっす」

上条「どったの?待ち合わせ?」

女生徒「ち、違うし!そのっ」

上条「足大丈夫か?」

女生徒「少し痛いけど、平気」

女生徒「その、先輩?」

上条「んー……?」

女生徒「メアド、教えて欲しいんだけど!つーか教えろ!」

上条「いいけど何でケンカ腰?……ほいっと」 ピッ

女生徒「……上条センパイ、げっとー」

上条「あー、すまん。そういやずっと忘れてたんだけど、お前の名前なんつーの?」

女生徒「あれ、言ってませんでしたっけ?」

上条「すまん。聞いたかも知れないけど覚えてない」

女生徒「あたしの名前はですね――」


――幻想魔笛 『“八十枉銀行”後編 ~ゴーストフィッシング~』 -終-

――幻想魔笛 『“八十枉銀行”』 -完-

乙ー!!!
よかった、犠牲になった女生徒なんて居なかったんだなー。

んでもってコレが魔術サイドだったらまた怪物的相手にそげぶする展開だったのかなー?

――黄泉川先生の『ご褒美』

上条 ピンポーン

黄泉川『おー、よく来たじゃんよー』

上条「ど、どうも」

黄泉川『ちょい待ち。今下行くじゃんから』

上条「は、はいぃっ!」 プツッ

上条「……」

上条(俺は今、黄泉川先生のマンションに来ている。良い所に住んでんなー)

上条(なんか『ご褒美』を貰える事になったんだけど――あぁ勿論断りに来たんだよ?)

上条(で、でもあれじゃないか?直接会って断った方がいいしぃ。べ、別に期待なんかしてないんだからねっ!)

上条「……」

上条(昨今のツンデレ量産どう思う?幾ら好物でも食べ過ぎりゃお腹いっぱいだよなぁ?)

ガチャ

黄泉川「おー、ちーす」

上条「ど、どうも」

黄泉川「あたしらは出かけてるから、まぁゆっくりしていくじゃんよ」

上条「え、出かけるって?」

黄泉川「邪魔するのも良くないだろうし――二人っきりで仲良くするじゃん?」

上条「ちょ、黄泉川先生っ!?」

上条(出かける?二人っきり?――まさか!)

上条(た、確か一方通行はダウナー系のお姉さんがもう一人暮らしてるつってたよなぁ)

上条(って事はだ。つまりそのお姉さんと――)

上条「……」

上条「……ぁ、会うだけだよ?決して乗り気じゃないからね?」

上条(で、でも向こうが乗り気だったら……うん、恥をかかせるのも悪いー的な?)

上条(……上条さんの下条さんも、頑張れっ!もしかしたら打倒1になれるかも!)

上条「お、お邪魔しまーす……!」

一方通行「……」

上条「……あれ、一方通行?」

一方通行「……よォ」

上条「お前も出かけてる筈じゃ?」

一方通行「……なァヒーローさんよォ。テメェは何のために戦ったンだァ?」

上条「……はい?」

一方通行「俺ァよォ。散々やらかした挙げ句、ワケ分からねェ戦いにガキどもが巻き込まれンの嫌でよォ」

一方通行「……まァ?つっても『暴力と闘争の楽な道に逃げた』って言われりゃァ、その通りなンだが」

一方通行「それでも見返りなンか欲しくは無かったンだよ」

上条「は、はぁ」

一方通行「だがよォ――テメェはなンだ?」

一方通行「人様の幻想壊すとか言っておきながら、俺はお前の幻想もぶっ壊したぜェ」

上条「なぁそろそろ中二語の通訳呼んでいいかな?黒○さんとか、バシー○さんが辺り」

一方通行「まァいいぜ……好きにすりゃいいじゃねぇか!」 ヌギッ

上条「……」

一方通行「お前のその狂った欲望――俺が受け止めてやンよ」

一方通行「だから、だから――あのガキだけには手ェ出すンじゃねェぞ!!!」

上条「違ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁうぅっっ!!!」

上条「お前じゃねぇよ!つーかどんだけ曲解されて伝わってんだっ!?つーか俺超ワルモンだよっ!?」

上条「お前も天才なのにバカじゃねぇのかっ!?100歩譲って俺が断崖絶壁を好きだとしても、どっからお前の胸板が代用品になると思ったっ!?」

上条「男の乳揉んで喜ぶような変態じゃねぇぞ俺はっ!」

一方通行「カップは同じだ」

上条「そりゃあね?取り敢えず落ち着こう?お前も前隠して貰えるかな?」

上条「あと今気づいたんだけどお前も結構乗り気――言うな言うなっ!聞きたくないっ!?」

上条「……いやまぁ?確かに黄泉川先生に言われてちょっとスケベ根性出したけども!幾ら何でも変化球過ぎるわっ!」

一方通行「ンだァ?黄泉川は出来て俺は無理だっつーンかよ!?」

上条「キレる所がおかしいっ!?……いやホンっっっトごめん。いいから隠し――」

ミサワ「いっえーーーーーーーぃっ!元気だったか野郎ども!なぁに男二人で盛り上がってんだよぉっ!」

ミサワ「このミサカも混ぜやがれ、って、あれ?」

ミサワ「……えっと……?」

上条「違うんだっ!?お前の考えてる関係じゃないっ!」

ミサワ「……ご、ごめんね?お邪魔しちゃったみたい」

上条「悪意のかたまりが素直に謝ったっ!?」

ミサワ「う、うんっ!ミサカも嫌いじゃないよっ、うん!そう言う関係もあったっていいと思うし!」

上条「あ、もしかしてお前ワザとやってんだろ!ネットワーク混乱させようとしてんだろうが!なぁっ!?」

ミサワ「愛があれば、ね!性別なんて些細な事だぜっ!」

上条「ウルセェよっ!?何でちょっと良い事言った、みたいな顔しやがんだっ!」

一方通行「そこに愛はねェンだよ。コイツのどす黒い欲望を、俺がただ為す術もなく受け入れるだけの関係――」

一方通行「――そう!この愛は『一方通行』なンだ!」

上条「誰かっ!?誰か収拾させてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」


――黄泉川先生の『ご褒美』 -終-




※このスレ全般、上司(バカ)が自分の本に専念していたため、推敲依頼はおろかスレ立てすら報告していなかったんですが。ちょい前に発見したらしく、
「バカじゃないの?お前の文章でシリアス書けると思ってるの (´・ω・`)」
「もういい加減インデックスぺろぺろしてもいいと思うんだよ (`・ω・´)」
と罵られました。誰か通訳してやって下さい

まぁネタ(※事実)はさておき、インデックス嫌いのヘイト野郎と罵られる私が、上条×インデックスで書きました
ヘイトたっぷりで読んでいて吐きそうになるかも知れませんが、宜しければご覧下さい

インデックス「この向日葵を、あなたに」
インデックス「この向日葵を、あなたに」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375930011/)

ではお付き合い頂き有り難う御座いました。ではまた

>>286
バードウェイはどうしたもんでしょうか?バードウェイに踏まれたいって声が多数あれば、まぁ?
でもバードウェイで中篇書いたほうがいいのかも?



――上条「今日から『明け色の陽射し』になってしまった上条です……」(仮) 準備編

――魔術結社『明け色の日射し』 極東アジトの一つ

バードウェイ「ふんふふーん!」

マーク「……」

バードウェイ「るる、ららーっ」

マーク「……」

マーク(どうしよう。ボスがすっげー悪そうな顔で上機嫌だ)

マーク(さっきから『聞けよ?早く聞けよな?』的な視線を感じるし……)

マーク「あ、あのー、ボス?」

バードウェイ「ん?なんだ?」

マーク「先程から随分ご機嫌なんですけど、何かありましたか?」

バードウェイ「んー?そう見えるかー?そうかー、分かってしまうかー」

マーク「ぶっちゃけウザ――じゃなかった!違いますからまず魔術武器を仕舞ってください危険です!」

バードウェイ「お前はいつまで経っても学習しない奴だよなぁ」

マーク「い、いえいえいえっ!いっつもボスのご指導ご鞭撻にはっ!えぇそりゃもう夢にうなされるぐらいにっ!」

バードウェイ「その言い方も気に食わんが……まぁいい。私は今、非常に機嫌が良いんだよ」

マーク「あー、その、私はボスに『なんで機嫌が良いんですか?』って聞こうと思ってたんですよ」

バードウェイ「見れば分かるだろう、と言うか見て分からないか?」

マーク「すいませんボス。私には全然分かりません、つーか理解したくないです」

バードウェイ「これだよ、これ」 ポンポン

マーク「これ……ですか?」

バードウェイ「格安だったんだよ!なんと20セントで買えたんだ!」

バードウェイ「どうだ?中々良い買い物をしたと思っているが」

マーク「えぇまぁ、よく、働きそうな感じですよね」

マーク「ですが、その」

バードウェイ「なんだ?何か言いたそうだな?」

マーク「はいボス。先程から、つーか部屋に入った時から疑問に思っていたのですが」

マーク「ボスが腰掛けているそれ。20セントで買ったのって、何ですか?」

バードウェイ「……おいおい、マーク。マーク=ギルダ○?」

マーク「違います。スペンサーです。Gジェ○には出ていません」

バードウェイ「XラウンダーとAGEシステムってなんだったんだろうな?」

マーク「ボス、爆死したバカに追い打ちするのはやめてあげて、と思います」

バードウェイ「全ての因縁を決着したのが、ノーマルパイロットと第二世代を改修した機体ってのはどうなんだ?」

マーク「それを言ったら第四世代なのにご覧の有様だったFXばどうなるんですか、ボス」

バードウェイ「そもそも主人公がアスノ(明日野)で、企画・シナリオ・ゲーム制作の特級犯罪者が日野ってファンにケンカ売ってるな?」

バードウェイ「アセム・キオ・フリットの頭文字を取るとアキフ。バカの名前が晃博(アキヒロ)ってのもちょっと疑っているんだが」

マーク「い、いや別に良いんじゃないですかね?どこかのゲームで主人公の名前をライターと同じにして大炎上した例もありますし」

バードウェイ「自分で今言ったろうが、ボスが腰掛けてる、って?」

バードウェイ「だったらこれはイス以外の何であると言うんだ?あぁ?」

マーク「いやでも」

バードウェイ「見ろ、この座り心地を!普通のイスとは比べものにならない弾力性!」

バードウェイ「安物のスプリングでは得られない満足感だろっ!」

マーク「ですからね?そういう事ではなく」

バードウェイ「そしてこの肌触りっ!まるで最高級の革のようなしなやかさだっ!」

マーク「私が問題にしているのはそこじゃなくって――」

バードウェイ「それになぁ、このイスには会話機能もついているんだぞ?どうだ!どう考えても凄すぎるだろう!」

バードウェイ「よーしマークに自己紹介してみろ!」

マーク「ですからボス。そういう事ではなく――」

マーク「――ボスが座っているのって、イスじゃなくて上条さんですよね?」

上条「……こんにちは。バードウェイのイスになった上条です……」

バードウェイ「なぁ?」

マーク「待って下さいよボスっ!?流石にこれはシャレにならないっ!」

マーク「ウチでこんな扱いしてるのがバレたら、イギリス清教とローマ正教とロシア成教全てを敵に回しますからっ!」

バードウェイ「いやでも、イスだろ?だって本人喜んでるし?」

マーク「……上条さん、幼女に座られて喜ぶ趣味があるなんて!」

上条「喜んで――ねぇよっ!?つー何?なんなんだよっこの展開はっ!?」

上条「違うよね?イスつったら、普通のイスに俺が座って、その上へバードウェイが乗ってだ!」

上条「『何だかんだ言っても、まだ子供なんだな』ってする所じゃないのっ!?」

上条「それが何っ!?連行されたら即『四つんばいになって、喋るな』だものっ!」

上条「なんか違うしっ!つーか誰得だよっ!?」

バードウェイ「世の男には金を積んでまで座ってもらいたい層があるようだが」

上条「マーーーーーーーーーーーークゥゥゥッ!?テメェんとこのお嬢様の教育はどーなってやがるっ!?」

マーク「ご褒美ですよねっ」 キリッ

上条「真性の変態がイターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」

バードウェイ「まぁ気にするなよ上条当麻」 ポンッ

上条「冗談だよね?マジで俺30円ちょっと借りただけで、残りの人生イスになり続けるって事はしないよね?」

バードウェイ「……嫌、なのか?」

上条「……へっ?」

バードウェイ「私も鬼ではない。契約は守るし、お前が嫌というのであればそれ相応の扱いへと切り替えよう」

マーク「(契約は破らせない骨までしゃぶるって、それただの悪魔じゃねーか)」 ボソッ

バードウェイ「おいマーク、お前はアルカナ無しでイギリス清教潰して来い」

マーク「無茶ですよボスっ!?その命令のどこに意味がっ!?」

バードウェイ「ムシャクシャしてやった。反省はした事がない」

マーク「ボオォォォォォォォォォォスゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥっ!?」

バードウェイ「とまぁスッキリした所で、上条当麻」

上条「な、何?」

バードウェイ「イス扱いした事を詫びよう。そしてこれからは血が通った扱いをすると誓うぞ」

上条「あぁいや分かってくれりゃ別に。俺だってケンカしたい訳じゃなかったんだし」

バードウェイ「なぁ、鉄の首輪と革の首輪、どっちが良いと思う?」

上条「待って!?それは俺の話じゃないよね?飼い犬とかペットの話をして居るんだよね?」

バードウェイ「んー、東洋人はSloe-eyedだから、やはり黒色で合わせるのがベターかな?」

上条「あ、ごっめーんっ!やっぱ俺イスが良かったわっ!つーか多分俺はイスになるために生まれてきたんだと思うよっ!」

上条「ほ、ほらっバードウェイって軽いからっ!上条さんの腕の負担には全然ならないしっ!」

上条「むしろっあれだよっ!柔らかくて色々と意識しちゃうからっ!気を遣っただけだからねっ!?」

マーク「上条さんも……!?」

上条「お前も見てないで助けろよ、なぁ?つーかなんでちょっと危機感覚えているの?」

上条「もしかしてお前も、一方通○の獣道を引き返せない所まで走ってる人?」

バードウェイ「そ、そうか?そこまで言うんだったらイスとして使ってやらなくもない」

上条「……イヌよりはまだ、イスの方が良いです」

バードウェイ「あぁそうそう上条。一つだけ言っておく」

上条「……何?イスとしての心構え?」

バードウェイ「まぁ追々慣れるだろうが――それ以前の問題、礼儀の話だ」

バードウェイ「お前も『明け色の陽射し』の一員となったのだから、これからは」

バードウェイ「私の事は『ボス』と呼べ」


――上条「今日から『明け色の陽射し』になってしまった上条です……」(仮) 準備編 -終-


※タイトルは仮、内容はこんな感じでノリとテンションでラブコメを……もう少し涼しくなったらしようかと。来月新刊出るみたいですし、それ待ちかも



――雑談


※コミケの会場で、客待ちしながら書きました

――いつもの喫茶店

麦野「……扱い悪くない?つか女の顔に傷つけるのってどうなのよ」

絹旗「まぁ……原作超ぶっちぎるで有名なアニメ版ですし、超仕方がないんじゃないか」

麦野「前半のOPにしてもよ。目立ってたのってフレンダと超電磁砲と妹達とフレンダじゃない?明らかにおかしくない?」

絹旗「フレンダ超二回入っています。気持ちは超理解出来ますけど」

絹旗「いえでも麦野達は超良いと思いますよ。超電磁砲コミックスカバー下の四コマが、アニメ版で超採用されたんですから」

絹旗「出番の無いわたし達は超どうすればいいのかと」

麦野「ねぇ?このままの展開だと、後半のオリジナルでフレンダの出番が増えそうじゃない?」

絹旗「あー、超ありそうですね。販売戦略の関係上、いつの間にか女子中学生が金属バット振って超活躍したように」

麦野「アタシらも第三位と共闘するのかしらね……まぁ、不本意だけども」

麦野「第一さ。アニメから『禁書』へ入ったファンが、あれじゃない?」

絹旗「フレ/ンダされて超凹むでしょうね、はい」

麦野「……そしてあたしのファンが減るわー……」

絹旗「まぁでもフレンダは超アレですし、花火は燃え尽きる瞬間が一番キレイ――フレンダ?」

フレンダ「……」

麦野「燃え尽きてる、わね。何かあったの?アニメじゃ大活躍だったじゃない?」

絹旗「超電磁砲のファンに超嫌われた、とか?」

滝壺「……そんな事無い。そっとしてあげて」

麦野「意味分かんないわ。第二期の前半の中盤じゃ、ぬるぬる動いてたわよね?」

絹旗「むしろ主役を超食いまくる勢いで。超嬉しくないんですか?」

滝壺「うん……ふれんだはまぁ、何だかんだ言って喜んでた……」

滝壺「『薄い本が厚くなるって訳よ!』とか、まぁれーるがんのあの子ばりに活躍したし」

滝壺「『大人気だったら本編でも復活フラグクルー!?』とか、うん……」

絹旗「超ありそうですね。神様が『こんな展開になるとは思わなかったでしょ?(ドヤァ)』とか言って超復活させたり」

麦野「……いやでも、あたしの知り合いに『主人公格になったせいで散々な目に遭っている』のが一人」

絹旗「はまづらにとって超幸せだったんですかねー。滝壺さんと添い遂げるだけで超充分じゃね?とも思いますし」

麦野「神様の性格からして、人気無くなった途端に『こん(以下略)』つってあっさり殺すかも知れないし」

滝壺「あれはあれで一周目の世界だからいいとおもう……それよりふれんだ」

滝壺「結局、同人誌は人気のぱらめーた?だし、いっぱい出れば悪い気はしない」

滝壺「第一期終了後の主役喰いまくった子みたいに、量産されると思ってたんだって」

麦野「押し強いもんねー、あの子」

絹旗「神様はノータッチの筈なのに、妙にアクが強いですもんね」

滝壺「で、こないだ夏コミ行った人から聞いたんだけど……全然」

フレンダ ビクッ!

麦野「無かったの?え、どうしてよ」

麦野「あの展開じゃふた×った超電磁辺りに酷い事されまくるんじゃ?」

絹旗「麦野、それ超動詞じゃありませんから」

滝壺「……この業界、一番嫌われるのは『キャラ被り』。普通同じ作品で似たきゃらくたー出さないよね?」

麦野「まぁ……個性が無くなるし、誰得でしょうしね。それが?」

滝壺「夏コミ直前、超電磁砲の最新刊の展開は……?」

絹旗「大覇星祭――あぁ!分かりました超分かりました。それで」

麦野「どういう事よ?」

滝壺「禁書目録の最新刊の展開は……?」

麦野「アンドロイドやら勘違いヒーローをレベル5でボコった話だけど。フレンダには関係ないでしょうよ」

滝壺「……表紙は?」

麦野「あのアマチュアと第五位――食蜂よね。だから何?」

滝壺「……キャラが、喰われた……」

麦野「はい?」

滝壺「向こうは『金髪・巨乳・お嬢様・レベル5』。よくもわるくも『ウケ』る。でも」

滝壺「ふれんだは『金髪・ペタ・だうー』だけ……」

麦野「あー……何となく分かったわ。要は」

絹旗「『マンガ・小説・あとアニメにちょい役で出て来た第五位、超濃すぎて』」

麦野「『キャラ的にイマイチ薄い上、外見的にちょい被るフレンダの人気を喰った』って事かぁ?」

滝壺「……予感は、してた。コミケ前から第五位の同人が急に増えてきたし……」

絹旗「本編に出る前から結構人気超ありましたしねー」

麦野「それが活躍するようになったから……あぁ、そりゃフレンダなんて喰われるわね」

フレンダ「……あたしもね、頑張った訳よ」

フレンダ「だぅー、とか、てへっ、とか、キタキタキタぁー、とかっ!流行ると思った訳!」

フレンダ「割と本気で『あ、レールガンの人気が上がったら復活するかも?』とかねっ!」

麦野「その自信がどこから来るのか分からないんだけど。死んだキャラの人気が上がっても復活させる訳ねーだろ」

絹旗「いやいや禁書の神様って割と超いい加減じゃ?禁書最終刊であれだけイヤンクックさんがメインヒロイン超張っていたのに」

絹旗「新約じゃ感動の再会シーンを超なぁなぁで済ませた挙げ句、まだ一回も活躍らしい活躍をしてない、ってのが。はい」

麦野「個人的には壮大な罰ゲームじゃないか、って時々思うわよね……割とマジで」

絹旗「業界では超よくある事です。ハル○さんやアン○に人気が集まらず、準にゃ○に超人気が出てしまうなんて」

麦野「それ男の娘じゃねぇか。明らかに別口の支持層が雪崩れ込んだだけだろ」

滝壺「……つまり他のヒロインのファンが怖かったり、商業的な理由から確定出来てない」

滝壺「逆に言えば、ふれんだ人気が上がれば本編復活&ヒロイン昇格も……!」

フレンダ「……同人誌、見た?殆どが食蜂食蜂食蜂佐天御坂って訳よ?」

絹旗「全然出てないのに前から超人気でしたからねー。ある意味超当然と言えるかもです」

麦野「本編で主人公とややフラグを立てた挙げ句、『実は記憶喪失前から知ってました』的な伏線出されりゃ、ねぇ?」

フレンダ「主人公と絡むと人気が出るのがこの世界な・の・にっ!」

麦野「まぁね。露出が増えれば、好きになってくれる人は増えるけども」

滝壺「……あれ?」

絹旗「超どうしましたか?」

滝壺「……主人公の一人と付き合っているのに、わたしの人気は上がらないの……?」

滝壺「むしろフリーの時より落ちてる感が……?」

麦野「……」

絹旗「……」

フレンダ「……」

麦野「――はいっ!という訳でフレンダの話なんだけど!」

絹旗「いやー大変です。超大変ですよねー、フレンダ!」

フレンダ「えっと……うん。いいのかな?いまちょっとスルーしてはいけないような」

フレンダ「すっごく本質的な世界の謎にタッチしちゃった訳なんだけど……?」

滝壺「がんばれ、ふれんだ。わたしはそんなふれんだをヤケクソで応援している……!」

フレンダ「一番のっ!あたしが活躍出来た時期だってのに!」

フレンダ「多分もうこれからはフレ/ンダされるまで出番らしい出番は無いってのに!」

フレンダ「結局人気を喰われまくったって訳よぉぉぉっ!!!」

絹旗「ま、まぁまぁフレンダ?まだ勝負は超決まった訳じゃありませんよ、はい」

滝壺「そう。もしかしたらふれんだ本は落ちただけかも知れない……」

麦野「時期的にコミケ直前だったからね。きっとそうよ、うん」

フレンダ「……そう、かな?冬コミではあたし、活躍出来る、かな……?」

滝壺「だいじょうぶ、ふれんだはやれば出来る子……」

フレンダ「いやあの、やっても人気は上がらなかった、って話をしてるって訳で」

絹旗「輝いてますよー、超輝いてますー」(超棒読み)

フレンダ「普段よりも更にやる気がなさげなんだけと……?」

麦野「ガンバレー、マキ○ー」

フレンダ「違うわよね?それ『犬ハサ』のシャイン!の人って訳だし?」

滝壺「あ、でもま○し本は結構出そう」

麦野「小説は良かったんだけど、アニメのク×みたいなOPとED、原作改変はやめて欲しいわね」

フレンダ「え、あたしの出番取られたって話を掘り下げないの!?もう終り!?」

絹旗「そんな事より『私モテ』が普通に可愛い件について」

麦野「甘いわね。エウレ○の続編がゴミだった事に比べればまだまだ」

フレンダ「ちょっと!おかしくないっ!?ねぇそれおかしくないっ!?」

フレンダ「あれでしょ!あんたらはこれからも本編で出れるから余裕って訳!?ねえぇっ!」

滝壺「だいじょうぶ、ふれんだ」

フレンダ「滝壺っ!そうよねっ、あたしのマイフェイバリットは滝壺しか居ないわよねっ!」

滝壺「ふれめあは、『色々な意味ではまづらが大きくする』から、安心して?」

フレンダ「あたしのっ!結局あたしの味方は居ないってワケかぁぁぁぁっ!?」

フレンダ「てーかそれっ!薄い本でのエロフラグにしか聞こえないし!」

麦野「……あぁ、増えるわよね、きっと。フレメアがアニメ出るのは早くても第四期?になると思うけど」

絹旗「って言うかフレンダ、超中途半端じゃないですかね。超突き抜けてロ×って訳でもないですし」

フレンダ「絹旗に言われたくないんだけど、それ」

麦野「というか絹旗が居るからロ×枠に入らない、っていうか。年齢的には充分なんだけどね」

滝壺「くさるほどいる禁書キャラ中じゃ……そんなに珍しくもない」

フレンダ「あたしのダメ出し?慰めてくれるんじゃないの?」

麦野「……いや、やっても良いのよ。別に?」

絹旗「でもここでイジっとかないと、本当に超痛々しい展開になりますけど?」

フレンダ「……ほ、程々で」

滝壺「……でも、さっきも言ったけどたいみんぐ、の問題」

麦野「冬コミでは出るでしょうよ。それまで待ちなさいな」

フレンダ「そうよねっ!たまたま今回は時期が悪かっただけよね!まだ四ヶ月もあるもんねっ!」

麦野「(……無理だよなぁ?フレンダがバトってた8話は六月の頭ぐらいだし)」

絹旗「(本気でフレンダ超好きなら間に合わせますしねー)」

滝壺「(というかれーるがんえす後半には、『ふぇぶり』っていう金髪ロ×が)」

麦野「(あー……また人気喰われるのね。可哀想に)」

絹旗「(麦野がフレンダに超同情するなんてっ!?)」

滝壺「(あしたはきっと血の雨……)」

麦野「(今ここで降らせてやろうか、あぁ?)」

フレンダ「よーしっ!あたしの戦いは――これからよっ!」

滝壺「あ、それ死亡ふらぐ……」

――隣のテーブル

佐天「いやもうホントに面白かったですねー、映画」

上条「……そうかな?俺ツッコミ所が多すぎて集中出来なかったけど」

上条「ってか、さっきから隣のテーブルへツッコミに行きたくて仕方がないんだけど」

佐天「おんやー?すっっっごく面白かったじゃないですかっ!」

佐天「『劇場版 とある魔術の禁書目録 エンデュミオンの奇蹟』!」

上条「ステマだよね?露骨にすると逆効果だっつったよね俺?」

佐天「いやー魔理○さんが出るとは思いもしませんでしたー」

上条「怒られるからな!確かに一瞬見た時『あれ?魔○沙?』って思っちゃったけども!」

佐天「出る必然性の無いキャラがチラホラと――あたしとかねっ!」

上条「言わないであげて?あと君が出なかったら、猛クレームが来ると思うよ?」

佐天「アイドル服着た御坂さん可愛かったですよねー」

上条「話の展開が急角度過ぎてついて行けないんだけど。まぁ、確かに」

上条「佐天さん達もよく似合ってたよ?」

佐天「あざーすっ!初春に伝えときますっ!」

上条「……ちなみに何て?今度はどんなある事無い事吹き込むつもりなの?」

佐天「いっそのこと四人でバンド組んじゃいなよYOU?」

上条「許そうぜ?つーか声優さんも人生楽しんだっていいじゃねぇか!」

上条「あの騒動の後に特定のキャラ本がすっかり減ったけどねっ!」

佐天「あ、そういえば弟のメル友さんがコミケに出たらしいんですよね」

上条「あぁあの縁切った方がいい人な……出た?本出す方なの?」

佐天「当選はしたけど上司(バカ)が落としたんで、他のサークルさんの委託をやったそうで」

上条「あぁ当選しなかった人らの本を売るのな」

佐天「アトシ○とエクセ○(サモンナイ○5)のコスで。売り物はプリキュ○なのに」

上条「……意味あるの?つーか衣装完成してるのに、どうして本落とすの?」

佐天「いやいやっ!最近のゲームキャラは『日常にありそう』なのが多いんで、自宅から着てったそうです」

上条「勇者だなぁオイ!」

佐天「でもスリーピースの上着無し+手袋+鎖持ちだから、そんなには?」

佐天「なんかあったら『私服です』と言い張るつもりで」

上条「……ってかそれコスプレだと分かるの?ただの勘違いしたおっさんだと間違われるんじゃ?」

佐天「アパート出る時大家さんに見つかって、『お盆なのにお仕事お疲れ様です』って」

上条「あー……何かやるせない気持ちに」

佐天「相方の人がニーソ+プリーツ+ビキニ+フーディ+クラウンだから、まぁまぁセットでいる限りは」

上条「それ絶対私服じゃねぇよなぁ!」

佐天「本落としたんで、余所様のサークルの本を売ってたんですよね、えぇ」

佐天「でも腐る事無く、今こうやって原稿を書いているんですけど!」

上条「投げ遣りじゃねぇかな?明らかにヤケんなってるよね?」

佐天「ちなみに『こんなんじゃダメだ!』と、自腹で作ったコピー誌100部を机の隅っこに置きました」

上条「へ、へー?まぁまぁやる気はあるみたいでいいんじゃないかな」

佐天「見事に全部余ったそうです、はい」

上条「現実って厳しいよなぁ……」

佐天「ちなみにそのタイトルが……なんでしたっけ?」

上条「知らねぇよ!俺関係ねぇじゃんか!?」

佐天「あ、あーあーあー、思い出しました。バッチリです」

佐天「確か『ふれんだ本』です。他の人が主役でやってたのに、いつの間にか乗っ取ったSSの手直し版を」

上条「どっから突っ込んだらいいのか分かんないから、整理するな」

上条「売り子がサモンナイ○だよね?」

佐天「はい、しかも1~4のシステムをぶっちぎって、『キャラ“だけ”は可愛いのに』という評判の5ですねー」

上条「でも売ってるのがプリキュ○なんだよね?しかも余所様の?」

佐天「ちなみにそっちは結構売れました」

上条「そんな所に禁書のSS置いたってハケる訳ねぇだろうがよおぉぉぉっ!しかも人気喰われまくった金髪の話じゃな!」

佐天「えぇまぁ売れるわきゃ無いですよねー、あっはっはっはー」

上条「……思ったんだけどさ。上司も大概だけど、そのメル友もどっかおかしいよな?」

佐天「あー、でも人並みに悩んでいる事があるそうですよ」

上条「俺が聞いたって仕方がないけど、何?」

佐天「『禁書』でマジ付き合うなら黄泉川先生、芳川さん、オルソラさんなんですって」

上条「なにその『アイドルと付き合うんだったら誰が良い?』みたいな話」

佐天「まぁまぁ誰だって考えるじゃないですか。あ、ちなみに上条さんは誰が?」 ピッ

上条「取り敢えず今入れたスマートフォンのアプリを止めようか?話はそれからだ」

佐天「まぁ本人の歳も歳ですし、真面目な話それ以外は『年下過ぎて話が合わない』と」

上条「リアルの好みとフィクションの好みは別だよなぁ」

佐天「『主人公に感情移入して』なら御坂さん、神裂さん辺りだそうです」

上条「あー……人気ある順、か?まぁまぁ別に珍しくもなくね?」

佐天「でもSS書いたのはアイテムさん、あたし、インデックスさんですよね?」

上条「それが何?一応五和と円周も加えた方が良いと思うが」

佐天「ぶっちゃけますね?引かないで下さいよ?」

上条「……それもう明らかに前フリ……いいや、うん。引かない引かない。約束する」

佐天「上司から指摘されて、思いっきり凹んだらしいんですけど。って言うか前々から思っていたそうなんですが」

佐天「『お前の小説(含むSS)、年下(中学生以下)に振り回されてる時が一番生き生きとしてね?』と」

上条「あー……」

佐天「言われてみればローティーン狙い多いですよね?」

上条「せ、世界観じゃないか?うん、きっとそうだよっ!学園都市だから仕方が無くねっ!」

佐天「いやでも麦野さん、絹旗ちゃん、ヌレ何とかさん、滝壺さんのSS、どう考えてもちっちゃい子の方がしっかり書いてあったり?」

上条「テンションとかもあるんじゃないかな?調子悪かったりとか!」

上条「てか基本ラノベってさぁ、ティーンズ向けのお話が多いからであって?当然感情移入しやすいように、同年代じゃんか?」

上条「だからその別にそーゆー意図だか、深層心理があったって訳じゃないと思うけど」

佐天「いえ、でも成人用ゲーム・コミックス・同人誌も、むしろティーンしか出て無くないですか?」

上条「18歳以上だからね!?誰が何と言おうと若く見えようが17歳以下じゃないからセーフですっ!」

佐天「そもそもバカが一番最初に書いた同人SSは『今日の5の○』だそうです」

上条「はい、アウトー。人生ゲームオォォォォルッセェェット!」

佐天「――はい、という訳で!」

佐天「そんなペド疑惑兼インデックス嫌いのヘイト野郎である>>1がっ!何と、なぁんと『SS速報合同で本作らね?』的な企画に参加します!」

上条「宣伝っ!?今までの話って基本貶してたよなぁっ!?読みたくなる要素皆無じゃねぇかなっ!?」

佐天「詳しくは下のフリップをどぞー」

上条「関係なくね?超電磁砲Sの愚痴とコミケの愚痴と……あれ?愚痴しか言ってない?」

【フリップ】
日時:2013年10月6日(日) 11:00~15:30
場所:池袋サンシャインシティ
イベント:サンシャインクリエイション61
サークル名:SS速報同人部
ジャンル:小説/文芸
発行誌名:別冊SS速報 第1巻

佐天「尚、基本無料で配布らしいのですが、側に空ティッシュ箱か缶を置くそうなので、現金的なモノを入れて下さると嬉しいとの事です」

佐天「勿論、他の書き手さんの原稿が集まってない状態なので、最悪中止になる事も考えられますが、予めご了承下さいねー」

上条「……いいのかなぁ。こんな宣伝で。ちなみに俺らは何すんの?」

佐天「えっと……『佐天「佐天さんの学園都市七大不思議探訪っ!出張版!」 『藤娘』』だ、そうです」

上条「アレかっ!?『S村伝説』空撃ちして終電逃した後、無理言って泊めて貰った旅館の!?」

佐天「キーワードは『旅館・密室・殺人事件』ですっ!さぁてキミはボクからの挑戦状が解けるかなぁ?んー?」

上条「無かったよね?誰も死ななかったし、別に密室って訳じゃなかったよね?」

佐天「『……ね、兄貴。ここならあたし達――兄妹じゃないよ?』」

上条「そんな話じゃねぇっ!?卑猥さの欠片も無かっ――無かったよ!ごくごく普通のバカ話だっ!」

佐天「いやぁ皆無ではなかったような……?」

上条「基本ボケに走ってるのは君だからな?反省しなよ?」

佐天「あっとはー……あぁちなみに『向日葵』第二話の怪談と同じく、寄稿したお話もほぼ実話だそうです」

上条「……え。マジで?旅館泊った所だけがホントって話じゃなく?」

佐天「泊った人間と会話内容以外はほぼ正確に再現したそうです」

上条「つーか無神論者つってる割には頻繁に怪異現象に出会ってる気が……」

佐天「そんな感じでヨロシクお願いしまーす!」

上条「えっと、はい。宜しくお願いします」


――雑談 -終-


※どうか宜しく……まだ先の話ですが

>>296の続き書いたんで、宜しければどうぞ

バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~
バードウェイ「ようこそ、『明け色の陽射し』へ」 ~断章のアルカナ~ - SSまとめ速報
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このスレは以上で終了となります。読んで下さった全ての方に感謝を

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