ディアボロ「このわたしがアイドルのプロデューサーだと?」 (969)

ディアボロ「」

高木「~~~~~、というわけだ。そこは、まぁ同僚にサポートしてもらいながら学べば良い。」

ディアボロ「……ハッ!?ここは!?」

高木「?」

高木「突然どうしたのかね?ここは765プロの事務所だが……?」

ディアボロ「……」

ディアボロ「……」

ディアボロ「……そうか、なるほど。」

高木「?」

高木「特に問題がないようなら話をすすめるよ?」

ディアボロ「あぁ、理解した。」


((『次の死に場所』はここという事をな……。あぁ、これは何回目だ))

ちょっと前に途中まで書いたやつ投下しました
今日はその続き

テキストで10000行程です

高木「ふむ。とはいえ、事務上の手続きは終えているからね」

高木「私から伝える事はもうないんだがー」

ディアボロ「とにかくわたしはどうすればいい?やりたいようにしてくれ」


((わたしは『死ぬ』という真実にさえ達する事はない。ただ死までの経過を永遠に繰り返すだけだ))

((抵抗などしたところで無駄なのは知っている))


高木「それでは、さっそく同僚のプロデューサーにあいさつしにいこうか」

高木「デスクまで案内しよう」


((何百回と繰り返してきたのだ。喋る事や……考える事すらも、億劫になってきた))




ディアボロ「フフ……丁寧だな。さっさと始めればいいものを」

高木「おぉぉぉぅ!!やる気に満ち溢れているねぇ!!よし、あいさつとデスク整理がすんだら早速アイドル達と会ってくれ!」

ディアボロ「」

---765プロダクション事務所---

高木「ここが君のデスクだ。うぉぉん!しかし君いい目をしているね!!」

高木「いやぁ私も君くらいの時には情熱に燃えていたものだよ!」

高木「あぁいや、もちろん今だってバリバリだけどね!そういえば――」ペチャクチャ

ディアボロ「……」


((なんだこいつは))


高木「~~だそうなんだ!ハッハッハ、笑ってしまうだろう!?」

ディアボロ「あぁ、その、なんだ」

ディアボロ「……」

???「もう社長!新入社員さんが困らせちゃだめですよ!まだやる事はたくさんあるんですから!」

ディアボロ「ハッ!?」バッ

???「あらごめんなさい、驚かせちゃいました?」


((なんだこの女は……ッ!?))

高木「彼女はここの事務員をしてくれている音無君だよ。」

小鳥「よろしく。小鳥ちゃんって呼んでくださいね!」

ディアボロ「あ、あぁ……」


((素人に後ろをとられた、か。注意力も落ちている))


律子「はぁ、小鳥さんも十分困らせてますよ!」

律子「ごめんなさいねプロデューサー。みんな元気はあるんですけどね……あはは」

ディアボロ「気にしないでくれ。」


((気にしないで……))

((気にしないではやくやれ))


・・・

律子「デスクの整理は大体おわったようですし、みんなにあいさつしにいきましょうか」

ディアボロ「ああ。アイドルたちのところへ案内してくれ。あぁええと、アキヅキ……?だったか」

律子「あはは。同僚なんだし律子でいいですよ。」

---レッスンスタジオ---

春香「ふーみんなお疲れさまー」

千早「お疲れ様。今日は充実していたわね」

やよい「うっうー!なんだかうまくいった気がしますー!」


ワイワイ
 ガヤガヤ


<ガチャ


律子「はーいみんなおつかれさまー!」

ディアボロ「……」

春香「お疲れ様です律子さん!」

春香「律子さん……と?」

春香「……あれっ?」

真美「おつかれちゃ→ん!……むむむ??」

真「ねぇ雪歩、あの人誰かな?」

雪歩「見た事ないよね……あっ」

千早「もしかして、この前言っていた」

ディアボロ「……」

律子「そうよ!新しくプロデューサーとして入社された」

律子「ディアボロプロデューサーです!」



「わあぁぁぁ!」
「かっこいー!」ワイワイ
「えぇでもちょっと怖そう?」
「すごいピンク」
「何歳なのかな?」ガヤガヤ
「えっ、あれ服なの……?」

律子「こーらーみんな!あいさつできないでしょう?」

春香「えへへ、ごめんなさい」

律子「プロデューサー、どうぞ」

ディアボロ「あっ?あぁ、わたしか。え、えぇと」

ディアボロ「……」

ディアボロ「……ん?」

ディアボロ「な何を言えばいいのだ……くっ……」

ディアボロ「ええと、わたしの名前は――」

律子「プロデューサー。」

ディアボロ「えっ?」

律子(第一印象、大事ですよ)ボソッ

ディアボロ「」


((この女ッ!何を言っているんだ……!))

((アイドル、プロデューサーに自己紹介……?どれもわたしは経験など))


((ああっ、やめろ……!こっちを見てるんじゃあないぞ、そこの銀髪……!))


((なんということだ。よく見れば銀髪の女だけじゃない、全員がオレを見ている……ッ!))


((な、なんとかして自己紹介しなければ……だが何を言えば……!))


律子「プロデューサー?」

千早「緊張なさっているのでは」

伊織「ていうか、スタジオまで連れて来られて突然そんなのフられたら当然こうなるわ……」

亜美「しかたないね」

真美「ね→」

春香(かっこいい人だなー)ポケー

ディアボロ「あ……あ……ッ!」





((仕方ないッ!何かわからんがくらえッ!))





ディアボロ「『P』はこのディアボロだッ!依然変わりなくッ!」
ズギャァァァァァァァーーーーーン







一同「えっ」

ディアボロ「えっ」

一同「」

シーン


ディアボロ「あっ」

シーン






((殺せッ!!何をしているゴールド・エクスペリエンス!!))

((俺に無意味な辱めを与えて楽しんでいるのかックソ~~~~~ッ!!))

((悪質だ……今まで経験したどんな『死』よりもむごたらしい……ッ!))

((はやく殺せ……殺してくれ……!!!))






ディアボロ「……ディ、ディアボロだ。以降よろしく頼む」


春香「あ……あはは、おも、しろい?人だね……?」

真「う、ん……。あはは。よろしくー!」

伊織「また強烈な……」

律子「初っ端からやってくれますねープロデューサー。」

ディアボロ「すまない」


((キング・クリムゾンで時間を飛ばせばよかった))


・・・
・・

美希「ねぇっプロデューサー!プロデューサーは何歳なの?」

ディアボロ「わたしか……わたしは33だ」

春香「えぇっ!全然そんな歳に見えませんよー!?」

美希「とにかくミキ的にはカッコイイから全然問題ナシなのー!」

真「スタイルもすごくいいけど、なにかスポーツをやってるんですか!?」

貴音「ですが、この方から感じる空気はすぽーつまんや武道者のそれではなく……いや、気のせい?」

真美「ピンク色の髪なんてなかなか攻めるファッションだNE!これは見どころがありますな!」

亜美「765プロのファッションリーダーですかい?楽しみですなー!」

伊織「ファッションリーダーってあんたねぇ……」

響「この業界だし色んな人がいるとはいえ、自分プロデューサーみたいな人は初めてさー」

あずさ「765の名物プロデューサーって感じかしらねえ?うふふ」

ディアボロ「そうか?歳など考えた事もなかったが」

ディアボロ「あ、あぁ……スポーツ?やってないが鍛えてはいた」

ディアボロ「次はなんだ?髪?髪は別にいいだろう髪は……」

ディアボロ「ええい露骨に引くんじゃあないッ!!!」


((まさか今までのレクイエムが終わったわけではないだろう。やるならはやくやれ))

((こんな……こんな訳の分からない事をさせるのが目的なのかジョルノ・ジョバァーナ))







律子「さて、あいさつも一通り済みましたし、事務所に戻りましょうか」

ディアボロ「あ?あ、あぁ」

律子「あーっ、プロデューサー。まさか今日はこれで終わりなんて思ってませんよね?」

律子「プロデューサーにはやってもらう仕事のアレコレについて説明しないといけないんですから、休む暇なんてありませんよー!」

ディアボロ「そうだな」

((フフ……死に続けるわたしに休む暇などあるわけないと言いたいのか?))



---765プロダクション事務所---

<ガチャ

一同「ただいまー!」

ディアボロ「今戻った」

小鳥「おかえりなさい、みんな!」

・・・

ワイワイ
ガヤガヤ

ディアボロ「しかし、皆元気なもんだな……活気にあふれている」

律子「えぇ、それがいいところなんですけどね。」

ディアボロ「ああ。本当に……な。わたしとは無縁の……」

律子「え?何か言いましたか?」

ディアボロ「いやなんでもない。さぁ、仕事について説明してくれ」



律子「~~~なので、基本的には週を一つのタームとして行動してください。」

ディアボロ「あぁ分かった」

律子「ふむ、プロデューサーはなかなか呑み込みがはやいですね。」

ディアボロ「そうか?」

ディアボロ「……そうでないと、生きてこれなかった」

ディアボロ「無理やりでも、理解はするさ」

律子「あなた、いったいどんな戦場で生きてきたんですか……」

ディアボロ「……あぁ」

ディアボロ「……オレは一体何を言っているんだ。すまない、気にするな」

律子「うーん……良く分からないけど、とにかく今はウチのプロデューサーってことですよね」

律子「一緒にがんばりましょう」

ディアボロ「一緒に、か」

コトッ

雪歩「あ、あのぅ……。お茶を入れたので……どうぞ!」

雪歩「そして失礼しますぅ~!!」シュタタッ

ディアボロ「?」


((今のはなんだ))


春香「あはは~……。ごめんなさい、雪歩もまだ緊張してるみたいで」

ディアボロ「緊張?……フフ、気にするなと伝えてくれ」


((いつでも死ぬ準備はできている))


春香「分かりました。しっかり伝えておきますよ」

春香「雪歩は人見知りなところがありますけど、すごく優しい子なんですよ!」コソコソ

ディアボロ「そうか」

春香「はい」

ディアボロ「……」

春香「」ジー

ディアボロ「……」

春香「」ジー

ディアボロ「……」







ディアボロ「……なんだ?」



ドドドドドドドドドドドドド
         ドドドドドドドドドドドドドドド

春香「そ、それはそーとォ~~~~~……」



春香「……プロデューサーさんに『これ』を」

ディアボロ「」



((ッ!))

((こいつッ!後ろ手に何か隠している……ッ!))

((銃かッ))
  ((ナイフかッ))

((いやなんだっていいッ))

((今それをこちらに向けようとしている!))

((『オレは死に続ける』))

((やはりレクイエムは終わってなどいなかったッ!))

((やられるッ……オレは……オレはッ!))

((ここで終わるのかッ!?))



ディアボロ「オレはッ……!」

ディアボロ「……くっ!」




ディアボロ「さあ、はやく……やれ……!」

((無駄なんだ,無駄無駄))

((もはやオレには何をする術も残されていない))

((ここで終わる?……いや違うな。オレは既に終わっている))

((吐き気を催す馴合にはちょうど嫌気がさしていたのだ))



ディアボロ「……ッ!」





春香「じゃっじゃーん!お砂糖たっぷりのドーナツですっ♪」

ディアボロ「……」ポカーン



ディアボロ「……は?」

春香「あれ、どうしたんですかプロデューサー?」

春香「あっ……。もしかして苦手、でしたか?こういうの」

ディアボロ「……?」

シーン

響(なんだかやばい雰囲気だぞ)

真(どっどっどうしようボクはなんかフォローとか、したほうがいいのかなどうしよう!?)

雪歩(やっぱりプロデューサーは怖い感じの人ですぅ!)


春香「ごめん、なさい」

ディアボロ「ドー、ナツ?」

春香「えぇ、ドーナツ。ごっ、ごめんなさいぃ!甘いのが苦手なんて知らなくてっ―――」

ディアボロ「いや」

春香「えっ」

ディアボロ「嫌いではない……。ひとつもらおう」

春香「」

春香「ほんとですかっ?よかったぁ~。てっきりプロデューサーさんは嫌いなのかなって思っちゃって!」

ディアボロ「こういうのは慣れないもんでな」ヒョイッ



((レクイエムは、わたしに何を見せようとしているんだ))

((何かは分からんが、見せようとしている))

((俺をここまで生かす理由))

((この生温いアイドル達と、765プロダクションの行く先を))

((何らかの究極的な真実を、見せようとしているのだ……!))

貴音「……」


((あぁ、いいだろう。辿り着いてやる。))

((その真実に……全ての答えは隠されているはずだ……))

((もしかしたら……辿り着けば……))

((生きて……帰れる……?))

((このディアボロが……再び……頂点へ……ッ!?))

((プロデューサー……だと?え?やってやろうじゃあないか))



ディアボロ「帝王はこのディアボロだ、依然変わりなく……ッ!」

パクッ




ディアボロ「あ゙まっ!!!」

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---765プロダクション事務所---

ディアボロ「しかし甘いなこれは」

ディアボロ「まぁ、疲れた脳には効くというからな」

春香「んふふ~、私のお手製なんですよ!」

春香「なんだかプロデューサーさん、ずっと疲れた感じだったから丁度いいやと思って!」

春香「あっ、みんなの分もあるよー!どうぞどうぞ!」

真美「さっすがはるる~ん!やっぱり持つべきははるるんですな!」ピョーイ

亜美「一家に一人、はるるんの時代だNE!」ピョーイ

美希「ミキもドーナツほしいの~!」ピョーイ

「あらあら~、じゃあ私ももらおうかしら~」
「あぁっ!春香、ボクの分も残ってるよね!?」ワイワイ
「もちろん!全員分あるよ!」
「うっうー!じゃあ私もらおうかなーって!」ガヤガヤ
「ん~!あま~~~い!」

ディアボロ「おぉう……随分盛り上がるな」

小鳥「ふふっ、プロデューサーさん、覚えておくといいですよ♪」

小鳥「女子はあま~いお菓子には目が無いんです!」

ディアボロ「そうか」

小鳥「えぇ、そうですとも!私も一女子として断言しておきましょう!」

ディアボロ「」


「あ、あぁ」
「あっ!プロデューサーさん今『女子じゃないだろ』って思いましたね!」ワイワイ
「何っ!なぜ分かった!ハッまさかスタンド攻撃ッ!」
「なにいってるんですか~も~!」ガヤガヤ


貴音「……」

貴音(先程の、春香にどーなつを渡された時の『気』……)

貴音(やはりあの方は……)


春香「はい、四条さんもどうぞ!」

貴音「え、えぇ。いただきます。ありがとう春香」

・・・

春香「じゃあ、私たちはそろそろ帰りますねー」

千早「お疲れ様でした」

やよい「おつかれさまでしたー!」

律子「はーいお疲れさま」


<ガチャ


ディアボロ「はぁ」

小鳥「ふふふ、プロデューサーさん、ひと段落という感じですか?」

ディアボロ「ひと段落だ」

律子「今日はみんな勢ぞろいでしたからねー」

小鳥「やっぱりみんな揃うと違いますね!」

ディアボロ「普段は揃わないのか?」

律子「そうですねー。それぞれに仕事がありますから」

小鳥「竜宮小町もいますしね」

ディアボロ「竜宮小町か。高木社長から聞いた」

律子「えぇ、そういうことなんです。ちなみに竜宮は私が主に担当しています」

ディアボロ「ふむ」

ディアボロ「なるほど、ならば律子は同僚であると同時に敵というわけだ」

律子「敵……ですか。なるほど、たしかにそうとれなくもないですが」

律子「一緒に互いを高めていけるようなライバルって感じでいれたらいいと思います」

小鳥「うんうん。みんな仲間ですからね。」

ディアボロ「……」

((仲間であり、敵でもある。か……))

((そういう世界でやってきたんだ))

((わたしもな……))

((しかし、それは律子がいうような都合のいいものではなかったぞ))

((勝負において最後に残るのは『結果』だ。どれだけ切磋琢磨しようと、その『過程』は加味されないのだ))


律子「プロデューサー、どうかしました?」

ディアボロ「いや、なんでもない」


・・・

---帰り道---

「ねー、今日も疲れたねー」
「もうこんな時間じゃない……参ったわ」ワイワイ
「うふふ、久しぶりに皆揃ったからかしら~、時間が、すごく短く感じたわね~」
「うっうー!ほんとに久しぶりだったから、すごい楽しかったですー!」ガヤガヤ


春香「それに、新しいプロデューサーが来たからねー」

真美「うんうん!みんなキョーミシンシンだもんNE!」

亜美「しかたないね→」

真「……」

真「さて、じゃあ早速……みんな」

真「新しいプロデューサー……どう思う?」





『…………』




真「……そうなるよねー」

雪歩「怖い……かな、わたしは」

真「雪歩……」

やよい「うっうー↓」

やよい「まだ分かんないけど、でも、今日はちょっと怖かったですー……」

響「確かに、冗談が通じなさそうな感じはするよね」

伊織「なのにあのルックスよ……ピンクってあんた」

あずさ「独特なファッションよね~」

美希「明日からはスーツ着てくるみたいだし、それは楽しみなの!」

千早「服……はいいけど、仕事、ちゃんと取ってきてくれるのかしら」

伊織「そう、それよ!……律子が業務を教えていくらしいけど、どうなるやら」

亜美「ううっ……いつぞやの鬼が頭によぎりますな→」

あずさ「あらあら~」

響「まぁ、とにもかくにも、明日からしばらく付き合っていかないと分からないさー」

響「今のところ、究極に悪い所なんて見当たらないしね!」


『…………』


響「な、なんだよみんなー急に黙って」

真「いやー?急にフォローしたから、もしかしてなんかあるのかなーと思って」

真美「あれあれあれ→???」

亜美「おやおや……」

響「わーもう!初日からそんなんあってたまるかー!」


春香「私は、普通にいい感じだと思うけどな。プロデューサーさん」


響「えっ?」

真「えっ?」


『えっ?』

春香「あっ!え、いやそういうのじゃなくてさ、……ほら」

春香「うーん、なんていうんだろ」

春香「さっきのさ、ドーナツ渡した時に」

雪歩「あの時は心臓止まるかと思った……」

響「自分も肝冷やしたぞー……」

春香「そう、その時なんだけどね。プロデューサーさん、なんだかすごく怯えてて……」

春香「まるで、何かに追い詰められたような顔をしてたんだ……」

貴音「……春香、それは」

春香「うん、そう私の勘違いかもしれないけど」

春香「でも、ドーナツを食べてくれた時は、すごく優しい顔をしてたから」

貴音「……」

春香「このお仕事に慣れてないだろうから苦労はあるかもしれないけど、きっと本当は優しい人だよ!」

春香「だから、……そう、私たちから信じてみなくちゃ始まらないよね!」

春香「きっと応えてくれる……ってね!」

貴音「……春香」

伊織「はぁ……春香らしいわ。まったくお人好しなんだから」

あずさ「あらあら」

美希「あぁーっ!ミキも、プロデューサーがイイ感じって思ってるのに先に言われちゃったの!」

あずさ「あらあら」

真「まぁ、春香がそう言うんだから、ボク達も信じてみようか」

やよい「うっうー!明日が楽しみになってきました!」

貴音「……」


貴音(春香のいう『優しい顔』……。わたくしには、ただ春香への敵意を無くしただけに見えました)

貴音(何に怯えていたのかは分かりませんが……あの方の目はただ虚ろに事象のみを捉えていただけ……)

貴音(この不安が、徒労に終わればよいのですが……)

・・・


社長「ふむ、夜も遅くなってきたな。」

社長「律子君も帰ってしまったし、今日のところはディアボロ君を家まで送ってやろう」

ディアボロ「助かる」
((この世界における自宅も用意されているのか……))

小鳥「わかりました。戸締りはしておきますので」

小鳥「お疲れ様でしたー」

社長「お疲れ様音無君」

<ガチャ



高木「よし、それじゃあ行こうか」



ブロロンブロロン
ブォーーー

---ディアボロ宅---

ディアボロ「普通の現代日本家屋って感じだな。マンションってやつか」

ディアボロ「冷蔵庫にはシャンパンと最低限の食料」

ディアボロ「冷凍庫にはネアポリスのピッツァか」

ディアボロ「テーブルの上には銀行口座の通帳等々生活に不可欠な物がおいてあるぞ」

ディアボロ「本来の住処と比べるとみみっちいもんだが……仕方ないな」

ディアボロ「日本の様式になれていかなければ」

ディアボロ「プロデューサーか……」

ディアボロ「いいだろう。つきあってやる」

ディアボロ「……」ジー




ディアボロ「しかし、そんなに変な髪か?」

・・・

翌日

---765プロダクション事務所---

春香「おはようございますー!」

千早「おはようございます」

小鳥「おはよう二人とも」

ディアボロ「……」ジー

ディアボロ「ふむ」カキカキ

春香「プロデューサーさん、ホワイトボード見つめてなにしてるんですか?」

ディアボロ「春香か。今日一日の仕事の流れをメモしているのだ」

ディアボロ「どうやら最初の仕事は春香。お前との営業だそうだ」

春香「あっ、そうなんですか!」

春香「それでは、今日はよろしくおねがいしますね!」ニコォッ

小鳥(天使や……誰とでも分け隔てなくあんなエンジェルスマイル放てるなんて)

小鳥(間違いなく天使やないか……!さすがのプロデューサーもこの攻撃には)




ディアボロ「ああ。聞いてるかもしれないが9時40分に出発だ」




小鳥(あの笑顔をモロに受けてなぜノーダメなんや?)

ディアボロ「車を用意してあるので乗っておいてくれ」

春香「了解ですっ」

小鳥「初仕事がんばってくださいねプロデューサー!」

千早「いってらっしゃい春香」

ディアボロ「よし、それでは行ってくる」

---車内---


ディアボロ「出発するぞ。おおよそ1時間で着く予定だ」

春香「はーい」

ブロロン……ブォォォォォン

ディアボロ「……」

春香「……」


・・・


ディアボロ「……」


春香「……」
春香(なにか喋った方がいいかな)


ディアボロ「……」


春香(気まずいなあ)

春香「あのっ」


ディアボロ「なんだ」


春香「プロデューサーさんって、765プロに来る前はなにをしてたんですか?」


ディアボロ「……以前か」

春香「はい」


ディアボロ「以前はな、イタリアの……」

春香「えぇっイタリアにいたんですか!」

ディアボロ「そうだ」




ディアボロ「イタリアの……ギャングをやっていた」



春香「!?」

春香「あはは~、プロデューサーさん。私は騙されませんよ」

ディアボロ「……」


ディアボロ「冗談だ」
((言う必要などなかったな))


春香「なんていうか……けっこうおもしろい人ですねプロデューサーさん」

春香「シュールっていうか、あっ、でも喋ってて楽しいんですけど」


ディアボロ「そうか」


春香「あはは……はぁ。」
春香(失礼な事言っちゃったかな)

ディアボロ「……」

春香「……」

ブロロン……ブォォォォォン



ディアボロ「ちなみにギャングのボスをやっていた」



春香「えぇっ!?」


ディアボロ「冗談だ」
ディアボロ(ベネ。)


・・・

ブロロンブロロン

ディアボロ「着いたぞ」

春香「はーい」


---営業先---


ディアボロ「CDショップでの宣伝販売……か」


「みなさんこんにちはー!天海春香でーす!」ワイワイ
「毎日暑いですけど、私たちのCDを聴いて元気になりましょ~!!」
「こんにちは~、あっありがとうございます!!」ガヤガヤ
「次はこっちですね!ありがとうございますー!!」
「えぇと……あっ、はい!ありがとうございますー!!」
「うわわ、わぁ!」ドテッ
「あいたた……ごめんなさい~」
「あ、はい……ありがとうございますーどうもー」



((俺の想像していたアイドルと違うな。下積みというやつか))

((必要なのはトップアイドルになったという結果だからな))

((こんな小さな過程にまで出張る必要はないだろう))



ディアボロ「……それに、なんだアレは」

ディアボロ「見ていられないほどのドジだな……マジに」

ディアボロ「何かトラブルを犯してしまいかねないな」

ディアボロ「スゥー……」



ディアボロ「……久しぶりだが腕が鳴るなああ~~~」

ディアボロ「【エピタフ】」


((ほんの少し先の未来を覗き見るッ!))

■■■■エピタフ(ほんの少し未来)■■■■


春香「―――、―――っ!」

店員「―――……。――。」

春香「……。―――、――。」


((この光景は……))

((積み上げたCDを、躓いた事で崩してしまったのか))

((そしてショップの店長が激怒、春香がしょんぼり))

((頭が痛くなるぞ……え?おい))


■■■■現在■■■■


((久々だが……今の一件が終わるまで飛ばしてやるか))

((こんな事に使うべきではないが、ここで失敗すると今後に響きかねない))

春香「はい、どうぞ!ありがとうござ―――」



ディアボロ「我以外の時間は消し飛ぶ……ッ!【キング・クリムゾン】これならばッ!!」


ディアボロ「……結果だけだ。結果だけが残る」


・・・


春香「……」

春香「あれっ!?」

春香「おかしいな、今あの人たちとお話してたはずなのに……」

春香(疲れてるのかな)

ディアボロ「春香」

春香「っはいぃぃ!全然!全然気を抜いてなんかいませんよっ!」


((驚いているのか、無理はない))

ディアボロ「そろそろ時間だ。上がるぞ」

春香「あっ、分かりました……」




春香「って何イィィーーーッ!?」

春香「な、なんとッ……積み上げてあったCDがかくも無残な……ッ!」

春香「誰がこんな事を……ッ!」


((お前だ))


ディアボロ「何かを運んでいたときにぶつかったんだろう。後処理は店側がやるそうなのでわたし達は先に帰ろう」


オツカレサマデシタ-
マタヨロシクオネガイシマス-

---車内---

ディアボロ「……」

((ここへきて初めて時間を飛ばしたが……))

((特におかしな点はなく、かつてと同じような感覚で使えるな))

((それでも、無茶な使い方はまずいだろうが))


ディアボロ「春香」

春香「……」

春香「……」スヤァ

ディアボロ「寝ているのか……。ならいいか」

・・・

((疲れてしまうという結果はキングクリムゾンでも覆せない))

((しかしせめて、神経の使う場面では俺がスタンドでサポートしていった方がよさそうだ))

((トップアイドルにさせるために、な))

((フフ……人生の頂点へ返り咲く、その日は近い……!))



・・・
・・

---その夜、春香宅---


春香(あーーー、私のバカバカ……)

春香(帰りの車でもっとお話しておけばよかった……)

春香(『みんなの知りたいディアボロPの事情20選』……聞けなかったなー)

春香(みんなに何て言えば……はぁ)

春香(私、疲れてるのかなあ)

---765プロダクション事務所---

<ガチャ

ディアボロ「おはよう」

小鳥「おはようございますプロデューサーさん!」

律子「おはようございます」

律子「プロデューサーがウチに来てからもう1週間経ちましたけど、調子はどうですか?」

ディアボロ「そうか、そんなに経ったんだな」

小鳥「お仕事の方はけっこう順調そうですよねー」

ディアボロ「ん?あぁ……周りがどうか知らないので具合は分からないがな」

律子「いやいや、正直すごい腕前ですよ。処理がはやくて驚いちゃいます」

ディアボロ「ギャングのボスとして……当然のことだ」


((気付いた事:ギャングネタはベネ))

律子「ほんっと、何者なんでしょうかねえ……」

律子「すっかりウチでもギャングキャラが定着しちゃいましたけど……。まあ、それでも」

律子「実際かなりの腕ですから……私もうかうかしてられませんよ」

ディアボロ「わたしの第一目標は律子に追いつくことだ」

律子「ううっ!……怖い存在ですね。いい意味ですけど」

ディアボロ「フフ……まぁ待っていてくれ」


((それもただの通過点だがね))


・・・

ディアボロ「今日は確か営業だったな。連れて行くのは、たしか」

律子「千早ですね」

ディアボロ「千早だったな」

律子「みんなはプロデューサーと打ち解けてきてるみたいですけど、千早はどうですか?」

ディアボロ「どうだろうな……分からん」


((打ち解けているかどうかなどあまり考えた事がなかったな))


律子「あはは、そうですか……」

小鳥「今日の営業でそこを感じれるといいですね!」

ディアボロ「あぁ」

・・・

---営業先---

ディアボロ「ラジオの営業だな。聞き手からすると姿が見えないので、できるだけつよく印象をもたせるといい」

千早「はい……」


((こいつ、気乗りしていないのか……))

((トップアイドルになりたいと思っているのか、この小娘))

ディアボロ「緊張しているのか?」

千早「いえ、そういうわけではないのですが」

千早「……ごめんなさい。なんでもありません」

ディアボロ「おい、待てッ……!」


((このまま仕事をさせるのはまずい……!))

((なんとしてでも視聴者に好印象をもたせなければ……しかしどうするッ))


千早「……なんでしょうか?まだ用が?」

ディアボロ「緊張ではないなら一体なんなんだ?えぇ?嫌な仕事なのか?」

ディアボロ「わたしはプロデューサーだ。なにかお前につっかえているものがあるなら、それを取り除くのが仕事だ」

ディアボロ「目指すのはトップアイドルだ。お前が気持ちよく仕事をこなせるように調整したい」

千早「プロデューサー……」

千早「……」

ディアボロ「言ってみろ」

千早「……ごめんなさい。正直に言います」

ディアボロ「あぁ」

千早「実は……」





ディアボロ「疲れているだとォ~~~~?えぇ?」

千早「はい……」

千早「あのっ!決して、やる気が無いとか……そういう訳では」


((冗談じゃあないぞ……こんな理由で営業を失敗にされては困る))

((オレの人生がかかっているのだからな……!))

((クソッ……オレの説得でなんとかなるのか……!))

ディアボロ「アイドルは人前にでる仕事だ。これは大変な重圧がかかる」

千早「……」

ディアボロ「人に見られる、注目されるなんて事はストレスがかかって当然だ」

ディアボロ「だがな、千早。そこは何とか自分で管理していかなければならないんだ」

千早「あの……違うんです。」

ディアボロ「なに~~?」


((いい加減面倒臭いぞッ貴様……!))

((やはりオレにはこんな仕事できないのか……ッ!?))


千早「体調管理は、人一倍気をつけているんです。オフの日はしっかり体を休めていますし」

千早「なのに……『ここ一週間くらい』でしょうか」

千早「『ふと気が付くと、時間が過ぎている事があるんです』」

ディアボロ「……!」

千早「10秒とか、それより短いようなわずかな時間ではあるんです。だけど……」

千早「急に我に返ったようになって……。少し前の記憶がない、というか……」

千早「多少の疲れなら我慢します。だけど、もし営業中やレッスン中にこうなってしまうかもと考えると……」

ディアボロ「千早」


((まずい……ッ!))

((まずい、まずい状況だ……ッ!))


ディアボロ「そうだったのか……千早、お前はそれを心配していたのか」


((おッ落ちつけ、このディアボロに不可能は無い。無敵だ……!))

((落ちつけ、このディアボロに不可能は無い。無敵だ……!))

((今まで何度か時間を消し飛ばしたが、どれも必要なタイミングだった……ッ!))

((あぁ確かに、765にくるまでは1秒の使用でさえためらっていた))

((だがここでは違う、戦闘などはない!レクイエムの世界……!))

((ゴールド・エクスペリエンスがスタンドの使用を許しているんだ))

((そうだ……オレは間違っていない……!))


千早「はい」

ディアボロ「心配なのは分かる。数秒前の自分を覚えていないわけだからな」

ディアボロ「『気にするな』すべてうまくいっているのだ。わたしが保証しよう」

ディアボロ「恐れることはない。本気で仕事に打ち込めるなら、消えてしまうその時間もきっとお前はアイドルなんだ」

ディアボロ「それに、大事なことは結果的にお前がアイドルでいることだろう?消えた時間など気にするな」

千早「プロデューサー……」

ディアボロ「俺は千早、お前をずっと見ているぞ。そして断言しよう。お前は765の如月千早だ」



千早「……!」

千早「ありがとうございますプロデューサー。少し、安心できた気がします」



ディアボロ「あぁ。そろそろ時間だ。行け」

千早「はい!」

タッタッタ……

ディアボロ「行ったか」

ディアボロ「…………フフ」

ディアボロ「心配する必要はない。お前が感じているのは俺のサポートなのだからな」


((フウゥ~~~~~~))

((さて))

((収録で危なくなったら、サポートしてやるか~~~))

・・・

千早「~~ですので、歌には力を入れています」

MC「なるほど!でもさ、このPVはダンスも可愛らしいよね!」

千早「ダンス……ですか?え、えぇ。ありがとうございます」

MC「ちょっとさ、ここでやってみてくれない?ダンスwww」

千早「ここでですか……?えっと、それは」

MC「いや、サビの部分だけでいいからさwwww」

千早「えーと、リスナーの皆さんには分からないのに、ですか?」

MC「ちがうちがう、俺が見たいのww個人的にwww」

千早「え?え、えぇと……」


ディアボロ「ッッ」

ディアボロ「千早……千早、分かるな……?」グッ

((まずいッ!千早頼むッここはMCに従ってくれえぇーーーーーッ!!))

千早「そんな事、する必要が分かr―――」





ディアボロ「【キング・クリムゾン】」


ディアボロ「……結果だ。結果だけが残る」

・・・

千早「……」

千早「……!」
千早(まただ、またこの感覚……!)



スタッフ(うわァーーッ!もう時間じゃないか~~~~!気付かなかったッ!!)キュッキュッキュ

カンペ『EDトークへお願いします』

MC「んー?あらら、残念ですがそろそろお時間ということで!」

千早「あ、はい。あの、ありがとうございました」



ディアボロ「今日もうまくいったな……」

ディアボロ「無駄な一悶着を起こさずに済んだ。順調だ」

千早「プロデューサー……?」

ディアボロ「全く……荒波のたたない……穏やかな収録だった」

千早「……?」



---その夜、春香宅---

春香(あっ、千早ちゃんからメールが……)

春香(なになに?え~っと……)

春香「【今日の営業、もしかしたら失敗かもしれない?】」

春香(えぇっ!?どういうこと!?)


春香「【最近疲れてて……?】」

春香「【最近疲れてて……気が付いたら……】」



春香(……)

春香「【気が付いたら……時間が……】」





春香「……!!」


春香「これって……!!」

数日後

---765プロダクション事務所---

やよい「おはようございます!」

春香「プロデューサーさん、おはようございます」


ディアボロ「あぁ、やよいに春香か。おはよう」


小鳥「おはようございます!」

美希「ミキもいるの!おはようなのハニーそして小鳥!」


ディアボロ「ハッ!?」

ディアボロ「……美希、か……」

美希「ミキなの!」

ディアボロ「はぁ……」

ディアボロ「勘弁してくれ……マジにな……まだ続けてたのか……」

美希「どうしたのハニー?……ミキにだけおはよう言ってくれないの?」



小鳥「」

小鳥「あ゙?」

春香「は、は……」

やよい「は、ハニー?」

小鳥「美希ちゃん?ハニーって、え?」

美希「ハニーはハニーだよ?どうかしたの?」


ディアボロ「なあ……頼む……やめてくれ……どうすればいいんだオレは?」

ディアボロ「ファンには絶対に『ハニー』を聞かせるわけにはいかない……!!」


美希「えと、その……なんか、ごめんねハニー」

春香「え?えぇ?」ポカーン

小鳥「プロデューサーさん、あ、いやえっと……ハニー?」

ディアボロ「」

ディアボロ「あ゙?」



ディアボロ「……小鳥ィ~~~~、お前までハニーと呼ぶのかぁーーーッ!!貴様ッ!」

小鳥「あぁんごめんなさいっ!」

やよい「で、でもびっくりしましたー……あの、ハニーってどうしてまた突然?」

春香「え、えぇー……ハニー……って」ポカーン

ディアボロ「何か分からんが、そう呼びたいらしい」

小鳥「問題になる事じゃ……ありませんよね?」

ディアボロ「まさか」

美希「えぇっ!?」

美希「ハニー!ミキとは遊びだったのっ!?」

春香「!?」

ディアボロ「仕事だ」

美希「しょんぼりなの……」

ディアボロ「はぁ……困ったもんだな」

やよい「美希さん、おちこまないでください……うぅー、プロデューサー」

小鳥「あ、あわわ……ハニー、ハニー……」

ディアボロ「分かった。わけを話すから落ちついてくれ」

・・・

春香「なんだそういうことだったんですね私びっくりしちゃいましたよー!」

・・・

・・・

((千早とのラジオ営業が終わってからも、俺は営業を中心にアイドル達をプロデュースした))

((あれからキング・クリムゾンを使ったのは数回ほどだ))

((アイドル達はやはりそれを奇妙に感じているようで、千早と同じように『疲れているのかも』と悩んでいた))

((俺は彼女たちに、これまた同じように『心配するな』と諭したつもりだ))

((美希がこうなってしまったのは、この時に俺がヘタなフォローをしてしまったからだ。どういう経緯かは省こう。結果だけが残ればいい))

((以前律子に言われたように、アイドル達と打ち解ける事ができているかどうかは依然分からない))

((トップアイドルになるためにはある程度悩みを吐露してくれないと困るからな。できるだけ積極的に接して行くつもりだ))

((現状、1対1で時間をとった会話をできていないのは貴音だけだ。そして今日は……))

・・・

---車内---

ディアボロ「では出発しよう」

貴音「……はい」

ディアボロ「目的地は遠い。1時間強かかるので何かあれば言ってくれ」

貴音「分かりました」


ブロロンブロロン
ブォーーー


ディアボロ「……」

貴音「……」


ディアボロ「貴音」

貴音「はい」


ディアボロ「お前には、前から聞きたい事があった」

貴音「……」

ブロロンブロロン
ブォーーー


ディアボロ「俺の聞きたい事についてだが」

貴音「はい」


ディアボロ「近頃、いや……俺がプロデューサーになってからずっと気がかりな事がある」

貴音「はい」


ディアボロ「貴音。お前事務所にいる時はいつも俺を警戒しているだろう?」

貴音「……!」

貴音「……はい」


ディアボロ「んっんー、なるほど否定はしないんだな。まぁいい」

ディアボロ「何の警戒なのか。当ててやろう」

ディアボロ「敵意だな」

貴音「……!」

貴音(やはり只者ではない)

貴音「はい」

ディアボロ「……こうしている今も、俺から目をはなしていない」

貴音「はい」



ディアボロ「さて、今一つ分からないな。俺はお前のプロデューサーに過ぎないのに……」

ディアボロ「どうして警戒などする」



貴音「それは……」

貴音「……」

ディアボロ「それは?」

貴音「わたくしにも……詳しくは分かりません」

ディアボロ「ほう?」

貴音「今日まで見てきましたが、プロデューサーは確かに皆を引っ張っています」

ディアボロ「当然だ」

貴音「まだ1週間やそこらではありますが、確実に皆の士気が高まっているのが分かります」

ディアボロ「当然だな」

貴音「仕事も……すこしずつではあるのかもしれませんが、今後増えて行くのでしょう」

ディアボロ「フンッ!当然だよなあ~~~~」

貴音「……ですが」

ディアボロ「当然!『P』はこのディアボロだ!依然変わりなくッ!!」

貴音「聞いて下さい」

貴音「わたくしは、プロデューサーに危うさを感じます」



ディアボロ「ム……危うさ、だと?」


貴音「恐ろしい」


ディアボロ「何が恐ろしいというのだ」

貴音「プロデューサーから流れてくる空気、雰囲気……あまりにも危険だと魂が感じるのです」


ディアボロ「おい貴様!意味が分からんぞッ説明しろォーーーーッ!」

・・・

貴音「プロデューサーが目指している物は、確かにわたくし達と一致している」

貴音「【トップアイドル】」


ディアボロ「そうだ!」


貴音「ですが、わたくしには、ただそれだけであるような気がしてなりません」


ディアボロ「……」

ディアボロ「それだけ……?どういうことだ……」

ディアボロ「意味が……わからんぞ、きさま 貴音ッ……!」

貴音「皆はプロデューサー、あなたを信頼し始めている」

貴音「ですが、わたくしは、あなたに見つめられる時感じるのです」

貴音「わたくしを見てはいても、あなたが見ているのはその向こうの何か別のもの……と」


ディアボロ「……」


貴音「トップアイドルになるには……それではいけない」

貴音「信頼は時間をかけてゆっくり築いていけばよい。そう思いますか?」

貴音「わたくしには……そうは……」

貴音「わたくし達は、あなたの目的を達するための道具に過ぎない。そう思っているのではないでしょうか」


ディアボロ「……」

ディアボロ「……」
ディアボロ(クソックソッ!なんだこの女は……!)

ディアボロ「なんだ貴音キサマは……」

貴音「わたくしは本気です。トップアイドルへの道を妥協するつもりはありません」

貴音「どんな壁があろうとも、仲間と乗り越えます」

貴音「ですがプロデューサー、あなたは」


ディアボロ「もういい……」


貴音「プロデューサー」


ディアボロ「もういいと言っているッ!もう会場に着く。だから……ッ!」


貴音「……」

貴音「あなたが、真実の意味でわたくし達の仲間となるのを待つしかありません」

貴音「それまでは……わたくしは」



ディアボロ「くっ……!」

((このオレが……押されている))

((今までなら、こんなちっぽけなガキは殺してしまえば話は済んだ))

((だが今は違う……ッ!目的はトップアイドルへ導くこと))

((それを失敗すれば……オレの未来も閉ざされるッ))

((全員揃って……!その為には、皆の信頼を得る事が必要……?))




((なんだ…………))

((オレは何を真剣に考えているんだ……こんな、みじめに……オレは……))



ディアボロ「降りろ、エンペラーレコードのパーティ会場だ……。着いたぞ」


・・・

---エンペラーレコード・パーティ会場---


ディアボロ「大物レコード企業の創立記念パーティか」

ディアボロ「芸能界の猛者も集まるそうだ」

ディアボロ「高木社長によると、ここに出て顔を売っておくという戦略だそうだが――」


貴音「はい」


ディアボロ「……」


((一件のせいで、俺も貴音も動揺している……。落ちつかなければ))


ディアボロ「かえって不自然だ……。あまり力むとな、貴音……。」

ディアボロ「これはパーティだ、楽しんでいる体を忘れるんじゃあないぞ」


貴音「……はい」

ディアボロ「では行こう。挨拶しておくべき人物は既にリストアップしてある」

貴音「はい」

・・・

貴音「765プロダクションの四条貴音と申します」

作曲家「765っていうと……あぁ、高木くんの所の!ふぅーん、なるほどー」


貴音「高木社長を御存じなのですか?」

作曲家「彼とは長い付き合いなんだ。なるほど、四条さんね。覚えておくよ」


貴音「ありがとうございます!」

作曲家「そして……えーと、あなたがこの子のプロデューサーですか?」


ディアボロ「ああ、そうだ」

作曲家「なるほど、なかなか個性的な……あはは、本当に765のひとは強烈なキャラだなー」
作曲家(タメ口て!あとピンク!……なんだこの男ッ)


ディアボロ「目指すのはトップアイドルだ。並の人間では成せない」

作曲「うん……そ、そうなのかもしれないね。君も、覚えておこう」

作曲(一見無礼なだけだし、すごい事を言っているわけではないけど……)
作曲(このプロデューサーには、何か大きなものを感じる。カリスマ……)


ディアボロ「それではわたしはこれで。貴音、行こうか」

・・・

ディアボロ「ふむ」

貴音「今の方で、終わりですか?」


ディアボロ「そうだな」

ディアボロ「主催者である大富氏にも挨拶は済ませたからな。後はパーティを楽しむといい」

貴音「はい……しかし」


ディアボロ「どうした」

貴音「プロデューサーはどうするのです?」


((何を言っているんだこいつは))


ディアボロ「俺は外へ出る。時間になれば戻って来るからお前は好きにしろ」

・・・
---パーティ会場・テラス---

ディアボロ「もう夜か。……寒いな」

ディアボロ「……」



((人と接する仕事をしているとはいえ))

((やはり大勢の人が集まる場所は恐ろしいと感じる))

((存在を知られるという恐怖……))

((もうそんな恐怖は無いはずなのにだ))



ディアボロ「……」

ディアボロ「ドッピオ、か……」




『皆はプロデューサー、あなたを信頼し始めている』

『ですが、あなたは何を見ているのです?』

((ドッピオも、俺をただ信じていただけだった))

((【過去を抹殺する】それだけの目的を、共有しているだけだった))

((フフ、まるで今の春香たちと同じだな……))

((懐かしい))





ディアボロ「ハッ!」




ディアボロ「ちがうんだ……くっ……!」

ディアボロ「オレは何を考えて……ッ!」

ディアボロ「クソッ……!」

ディアボロ「はぁ……はぁっ……」

ディアボロ「戻るか……」

・・・


ざわざわざわ……


ざわざわざわ……


ディアボロ「様子がおかしい。なんだこのざわめきは」

ざわざわざわ

ざわざわざわ


ディアボロ「!」

ディアボロ「あの集団ッ!何か起こっているのか!?」ダッ

ディアボロ「嫌な予感がする!急がなくてはッ!」

ドンッ

男A「いてえッ!何だお前はァッー!」

ディアボロ「うるさい!どけいッ!!」

ドンッドンッ

男B「ヘイあんたッ!ぶつかっておいて詫びも無しとは失礼ってやつじゃあないのか」

男C「なっ!何をするだァーッ!ゆるさんッ!」

ディアボロ「黙れッ!道を開けろおおおーーーッ!!」


・・・

貴音「……おやめ下さい!私は、そのようなことのために来たのではありません!」


大富「なに、その柔肌をじっくりと見せるだけでよい」


貴音「ッ!!」ゾクッ


大富「ほれ、こうするんだ」
サワッ


貴音「っ!……このっ!無礼m」










ディアボロ「なにをやってんだああああああ貴音ぇーーーーーっ!」





ディアボロ「危なかった……【キング・クリムゾン】……!」

ディアボロ「ビンタをかまそうとは随分強気じゃあないか貴音貴様……」

ディアボロ「大富氏は超重鎮だ。ここで何か事を起こせば間違いなく終わる……ッ!」







貴音「」

貴音「はっ!?」


ディアボロ「……」


貴音「……ここは」


ディアボロ「……」

貴音「……なぜ車内に!」





貴音(この感覚!これはッ!)

貴音「そんな……まさか……っ」



ディアボロ「どうした?貴音……」ゴゴゴゴゴ



貴音「い、今まで……!このような感覚に陥る事は何度もありました……!」

貴音「そんな時、周りの者も大抵何かおかしな表情を浮かべている!」

貴音「わたくしは理解したのです!そういう者はわたくしと同じ感覚を経験していたのだと……っ!」

貴音「お、恐ろしい……!」

貴音「い、今までの【それ】は、それほど強い違和感を感じなかった」

貴音「せいぜい気を抜いていたんだろうとか、そういった程度……!」

貴音「ですが、今のっ!……今の感覚は最も強い違和感っ!!!」


ディアボロ「……」


貴音「そして何より!」

貴音「初めて見た……その……肩の後ろにある……【それ】は……」

貴音「【それ】は、一体何なのですか!?」



ディアボロ「!!!」

ディアボロ「……な、に」


((こいつまさかッ!そんなバカなッ!))

((考えられない……こんな事がッ!絶対にあり得ない!))


ディアボロ「貴様、貴音……!何が見えているというんだ……!?」

ディアボロ「……何を、いいたいのか」


貴音「……!」


ディアボロ「おい、答えるんだ……。いいかこれは重要なことだ」

ディアボロ「わたしの未来に関わる。つまりそれはお前たちの未来にも関わるって事だからな……」


貴音「あぁッ……!面妖な……!」

貴音「【顔が二つ】……【恐ろしい目】……!」

貴音「め、面妖な……ッ!一体いかなる術を……!?」


ディアボロ「答えろ……はやくするんだ。【お前には何が見える】」


貴音「見えません!なにも……。ですが、感じるのです。【何かがいる】ッ」

貴音「これは、これはあなたのものなのですか!?」


ディアボロ「グ、グ……」


((こいつにはオレのキング・クリムゾンが感じ取れるというのか))

((スタンド使い……?いや違う、貴音からスタンドパワーは感じない))

((スタンド使いにしか、スタンドは見えないはず……こんな事ありえんッ))

((凄み))

((精神力か……ッ?この、年端もいかぬ小娘の、異常に強靭な精神力がキング・クリムゾンを感じているとでもいうのか!?))


((……))



((年端もいかぬ……?何を考えているんだオレは……その年端もいかぬような新入りに俺は負けたのにか……ッ!?))

((クソックソッ!オレはなぜこうも小娘に負ける……!?))

((帝王が……こんな様では、クソッ……カス共が……ッ!!))


貴音「この邪悪なヒトガタが、今までの時間を……ッ!?」

貴音「面妖な、あり得ない……。そのような事……これが……」


ディアボロ「貴音、お前は……」


((なぜだ……なぜこうなった……))

((ゴールド・エクスペリエンス……))

((もう、訳が分からないぞ……ジョルノ・ジョバァーナ……))

((貴様がオレを生かすから、こうして、しばらくみじめに生きてやったんだ))

((なんだ、それなのになんだこれは))

((なら、どうすればよかった))

((邪魔な奴は殺せば良かったのか))

((ずっと……死んで来た))

((オレの精神は摩耗し、もはや何も残っていない……))

((そのオレを、なぜこうやって試そうとするのだ……どうすればいい))



ディアボロ「お前は」


貴音「わたくし達は、大変な事に遭遇していた……!」

貴音「知らせなくては……皆に……!」

((じゃあこうすればいいのか?))

((帝王だった時と同じよう振る舞えばいいのか))


ディアボロ「お前は」

ディアボロ「知ってはいけない事を知ったぞッ!貴音ッ!!!」


((わたしのキングクリムゾンが貴音の目の前で拳を止めている))

((その気になれば冬のナマズのように黙らせてやれるんだぞッ……!))

((えぇおい、これでいいのか、これで貴音は言う事を聞くのか))



貴音「うぅっ!」
貴音(この重圧、やはり只人のそれでは無いッ!)


貴音「……!」

貴音「!?」グッ

貴音「動かない……!?体が……」
貴音(そんな……重圧で……!?)

この前の続き?

貴音(どうする……)

貴音「……!」

貴音「それでも……(負けられません)」




ディアボロ「……」



((ほら、見ろ……))

((冗談じゃあないぞ……なんだこの小娘は))

((違う、分かっている。貴音だけではない。他の奴らもこうするんだろう))

((なぜ、ここまで自分の道を信じられる))

((クソッ……))

((殺してしまえば、楽でいれるのに))

((クソが……ッ!ジョルノ・ジョバァーナ……!))

((じゃあどうだ、貴音のこの鼻っ柱をこのまま思い切り貫いてやろうか?ええ?))

((おい……教えろ))

((聞いているんじゃあないのか?貴様……))


ディアボロ「ジョルノ・ジョバァーナ」

ディアボロ「ゴールド・E・レクイレム……!」


貴音「……?」


ディアボロ「教えろおおおおおおおーーーーーッ!!」



・・・




貴音「……プロデューサー、その」

貴音「わたくしも……興奮しておりました。本当に失礼な事を――」

ディアボロ「なあ……貴音……」

ディアボロ「聞いてくれ……オレはどうすればいい」


貴音「……」


ディアボロ「もう、訳が分からないんだ」

ディアボロ「疑っているんだろうオレを……わかるぞ、それくらい」

ディアボロ「フフ……ギャングのボスなら分かるんだ、それくらいな……」


貴音「……」


ディアボロ「消し飛ばしている間……オレは傍観者となり……どんなものにも干渉はできない」

ディアボロ「その代わりどんなものにも干渉はされないが……」

ディアボロ「時間を消し飛ばしたのは……貴様らを助けるためだ」

ディアボロ「偽りはない……」

ディアボロ「フフ……。あぁ分かっている。目的が、信じられないんだろう」

ディアボロ「だが事実だ」

貴音「……」


ディアボロ「それに……」

ディアボロ「えぇ?皮肉なもんだな。キング・クリムゾンを【邪悪】と言ったか」

ディアボロ「全く正しい感想だ。満点だよ……」


貴音「なにを」


ディアボロ「オレが……わたしがかつて、部下に言われた言葉だよ」

ディアボロ「吐気を催す邪悪とは……何も知らぬ者を利用することだとな」

ディアボロ「わたしだけのために」

ディアボロ「どう思う」


貴音「それは……」





ディアボロ「おかしいよなあああーーーッ!?」

ジョジョを知らなかったころの厨二病まっさかりに自作能力の1つが過程を飛ばすで割と自信作だったんだが既にあると知って結構落ち込んだ

ディアボロ「ブチャラティはッ!!」

ディアボロ「【自分だけのために】とッ!!……言ったのだ」

ディアボロ「なら、おかしいと思うよなあ?え?」


ディアボロ「今がそうだッ!貴音、お前が大富にビンタをしようとしていたッ!」

ディアボロ「オレが時間を消し飛ばさなかったらどうなっていた……?」

ディアボロ「今頃お前はアイドルでもなんでもない!ただの未来も希望もない小娘に成り下がっていただろうッ!」


貴音「!」


ディアボロ「これはお前たちの事を考えての行動だ……」

ディアボロ「分かったか……分かったな」

ディアボロ「俺の能力について詮索は一切するな。この事も忘れろ」

ディアボロ「いいな……二度はない……」

ブロロンブロロン
ブォーーー


貴音「今日の事は……すみませんでした……しかし……」

貴音「わたくし達は……失敗をしなくてはならない……。そう思います」

貴音「……」









・・・


←To Be Continue

---765プロダクション事務所---

<ガチャ


小鳥「あ、プロデューサーさんおかえりなさー……?」

ディアボロ「……あぁ」


小鳥「どうしたんですか!?顔が真っ青ですよ!?」

小鳥「ソファで横になりますか!?いや、それよりなにか飲み物を……?」


ディアボロ「うるさいぞ、黙っていろ」フラフラ


小鳥「えっ」

ディアボロ「……」ドサッ


((クソックソッ!))

((なんだこれは……なんだこの感覚は……!?))

小鳥 「ピヨッ!?」

((このオレが混乱している、何をさせようというのだゴールド・エクスペリエンス……ッ!))

((ちっぽけな小娘が……貴音……!))


ディアボロ「ハァッ……ハァッ……」

小鳥「プロデューサーさん……」

ディアボロ「クッ……。……すまない、気にするな」

ディアボロ「……」

ディアボロ「もう遅い、戸締りはわたしがしておくから帰れ……」

小鳥「プロデューサーさん……」

ディアボロ「くどいぞッ」

小鳥「うぅっ」ビクッ

小鳥「あの……」

小鳥「あの……今日じゃなくてもいいから、その……なにかあったらいつでも、話して下さいね」

小鳥「きっと皆も、プロデューサーさんが辛そうだと、悲しくなっちゃいますから……」

ディアボロ「……」

<バタム

ディアボロ「帰ったか」

ディアボロ「……ハァッ、ハァッ!」


((邪悪……邪悪だとッ!このオレが……))

((ここへきてから、オレは何も考えないようにしていた))

((すべてはゴールド・E・レクイエムが見せようとしている【何か】を掴むため……))

((我が絶頂を取り戻すため……ッ!))

((帝王として君臨してきた過去をあえて忘れたッ!))

((クソッ、それなのに……邪悪、だと))

((忘れてやった過去が……襲ってきたというのか……ッ!))

春香「あのー……」


((なにを失敗した……))

((トップアイドルへ導く。それは奴らも望んでいるはずじゃあないのか……!))

((躓きそうな時は、キング・クリムゾンで助けてやっている))

((なにが【失敗をしなくてはならない】だ……え?おい……!))

春香「おーい、プロデューサーさーん?」


((貴様らは知らないのだ……消えた時間、何をしでかそうとしていたのか……!))

((それを水に流してやる……それがキング・クリムゾンでありオレ自身だ……!))

((貴音はオレのスタンドについてどこまで看破していたのか……いやそんなことはどうでもいいはずだ))


春香「……」

春香「すわろっと」

春香「おとなり失礼しますねー。……んしょっと」


((今オレが……わたしがやるべき事……))

((落ちつけ、プロデューサーはこのディアボロだ……))

((皆のわたしに対する不信をどうにかする必要がある))

((しかも再来月には765ALLSTARLIVEが控えているんだ))

((IA大賞の選考に大きく影響を与える事は必至……失敗は許されないッ!))

春香「プロデューサーさーん?」


ディアボロ「……」

ディアボロ「ハッ!?」ガタッ


春香「えっ!?」ガタッ


・・・
・・



---765プロダクション事務所---

ディアボロ「春香……いたのか」

春香「えぇー……。私、ずっと横で座ってましたけど……」

ディアボロ「なにっ!……気付かなかった」

ディアボロ「そうか、はぁ……」スック


春香「うーん……悲しいなあ」
(そんな避けるように立ち上がられたら……)

やってる仕事は俺らと一緒で笑える

ディアボロ「……ん」

春香「あっ、……な、なーんて。えへへ」

ディアボロ「もう遅いぞ……いつもならもう帰っている時間じゃあないのか?」

春香「あ、はい。そうなんですけど……。っていうか、さっき一回事務所を出たんですけどね」

ディアボロ「はぁ……忘れ物か」

春香「プロデューサーさんが事務所に入ってく所を見かけたんですけど、なんだかとても辛そうな表情だったから……」

ディアボロ「……心配をかけたのか、気にする事はない。お前たちは自分の事だけを考えていればいい」

ディアボロ「必要なもの以外にまで気をまわしていたらトップになど」

春香「……」
(そんなこと、言わないでくださいよ)

ディアボロ「……」

ディアボロ「帰るか。ついでだから家まで車で送ってやろう」

春香「……ありがとうございます」

ディアボロ「支度をするから待ってくれ」


((春香、こいつもだ……何を言いたいんだ……))

((何を抱えているのか知らんが、そんなものがあるせいで失敗を繰り返してるんじゃあないのか……))

・・・


---車内---

ブロロンブロロン
ブォーーー

ディアボロ「……」

春香「……」

ディアボロ「……」

春香「……」

ディアボロ「……」チラッ

春香「……ぁ、いや……」




ディアボロ「ええいッ!何かあるなら早く言えッ!」

春香「っ」ビクッ


ディアボロ「分かるぞ……それくらい……隠すな」

春香「あ、あの……プロデューサー」


春香「今日、やっぱり帰ってきてからおかしいですよ」

春香「その、なんだか、急に冷たくなったような」

春香「目を……見てくれないし……」

ディアボロ「そんな事を気にしていたのか……」

ディアボロ「言ったはずだ気にするな、明日する事を考えていろ。」


春香「そうだけど、でも……」


ディアボロ「明日は春香お前レッスンだろう。無駄な事を考えている余裕はあるのか」

ディアボロ「再来月には765プロ全員で開催するLIVEもあるんだ」

ディアボロ「頼むから……トップをちゃんと目指してくれ……」


春香「……」

春香「……ごめんなさい」


・・・

---その夜、春香宅---

春香(プロデューサーさん、絶対おかしいよ……)

春香(それとも……あれなのかな)

春香(私がドジだから、失望されてるのかな……)

春香(……)

春香「ふー……」

春香「そんな事考えてても仕方ないよね!とにかく今はレッスン頑張らなきゃ!」

春香「……うん、きっとそうだよね」

春香「……」

・・・

---ディアボロ宅---


ディアボロ「ハァッ……ハァッ……」

ディアボロ「このままでは、マズい……」

ディアボロ「ハァッ……ハァッ……」


((グラスも……持てないほど混乱している))

((このままでは……皆に怪しまれる……))

((貴音がどう出てくるか分らない、あの感じだとひっこむのが当然だが……))

((……頭を冷やさなければ。Pはこのディアボロだ……))

((トップアイドルになる者たちに見せられないぞ……こんな姿は))

((混乱を誘う……見せてはいけない……ッ!))

((完璧であるように……!帝王だ……ッ!))


ディアボロ「今日を境に……迷いは捨てるぞッ……!」

ディアボロ「見ているがいい、ジョルノ・ジョバァーナ……!」

翌日
---765プロダクション事務所---

<ガチャ

小鳥「あっ……プロデューサーさん」

律子「おはようございます、プロデューサー」

ディアボロ「あぁ、おはよう……」


小鳥「あの……大丈夫ですか」ヒソヒソ

ディアボロ「昨日は すまない」

ディアボロ「混乱を 誘うような真似をした」

小鳥「いや、それは大丈夫なんですけど……」


律子「あの、ごめんなさい。小鳥さんに話を聞きました」

律子「一ヶ月ではありますけど、働き詰めですよね。一度体を休めるためにもOFFの日を……」

ディアボロ「気にしないでくれ。ただ腹が痛かっただけだ」

ディアボロ「お前にも迷惑を かけたな 律子」

律子「同じ仲間同士、力を貸しますから相談はしてくださいよ?」

ディアボロ「……あぁ」



ディアボロ「それでは、今日も営業に行ってくる」

律子「はい、行ってらっしゃい」

小鳥「今日は響ちゃんとでしたっけ?」

ディアボロ「あぁそうだ。……では」


<バタン


律子・小鳥「……」

律子「大丈夫かなあ?」

小鳥「いつも通りって感じですかね?」

小鳥「あんまり感情を出す人じゃないから……平気なんでしょうかねえ?」

---駅前---

響「はいさい!プロデューサー!」

ディアボロ「おはよう響。体調はどうだ」

響「バリバリ全開さー!えへへっ」


ディアボロ「それはよかった」

ディアボロ「……よし、じゃあ出発しよう。乗り込んでくれ」

響「はーい!拾ってくれてありがとねプロデューサー!」


---営業先・ラジオ局---

ディアボロ「……」


((打ち合わせに随分長い時間をかけるじゃあないか))

((一体なにをやっているんだ……あいつは……))


ディアボロ「ん、戻って来たか……」


響「プ、プロデューサー!大変だぞ!」ダッ

ディアボロ「ななんだッ!?どうした!?」


響「今打ち合わせ終わったんだけど、なんと、この番組で自分のコーナー作ってもいいって!!」


ディアボロ「あ、あぁ……そうなのか……」

ディアボロ「……うん、よかったじゃあないか。マジに……」

ディアボロ「何か大きなミスでもあったのかと焦ったぞ……ツララをつき刺された気分になった」


響「うん……あ、あれ?それだけ?」

響「自分のがんばりが評価されて、なんか……もっと喜ぶかと思ったんだけど?」


ディアボロ「……おい、まさかそれで満足したって言うんじゃーないよなあ?」

ディアボロ「お前たちはトップになる存在だ。帝王だ!分かるよなあ?当然だよなあ?これくらい」

ディアボロ「LIVEが開催される事は知っているはずだ!再来月だ……!このステップは踏んで当然だ……ッ!」


響「うっ」

響「う……あぁ、当然さー!自分まだまだやれるもんね!」

響「まあちょちょちょいって見せつけてくるさー!」

・・・


響「―――でね、そうなんだ……」

響「うん、まあ……そう言う事も、あるよね」

響「えっと……それでは」

響「……」

響(どうしようどうしよう……頭が真っ白に)




((何が【ちょちょちょいっ】だこの阿呆がァーーーッ!!!))

((早速詰まっているじゃあないか……!))

((こういう時オレじゃなかったらどうするんだ……バカめ……!))





ディアボロ「【キング・クリムゾン】」

ディアボロ「結果だ……結果だけが残る」

・・・

響「失敗はしてないはずなのに、なんだか何にもできなかったって感じー……」

ディアボロ「おまえは立派にやったのだよ……響……わたしが誇りに思うほど立派にな……」

響「うん……ありがとうプロデューサー……」

・・・

数日後
---765プロダクション事務所---

<ガチャ

小鳥「おはようございます、プロデューサーさん」

律子「プロデューサー、おはようございます」

ディアボロ「あぁ、おはよう」

テク
テク

ディアボロ「ふむ」ジー

ディアボロ「よし」カキカキ

ディアボロ「……うむ」

ディアボロ「それでは行ってくる」

<バタン


律子・小鳥「……」

律子「心配無用だったようですね……」

小鳥「前にも増して積極的になりましたからねえ……」

律子「さて!再来月のLIVEに向けて私も頑張り時かな!」


・・・

---新曲販促会場---

ディアボロ「今日は特別なイベントだ。分かるか?」

真美「んーとねー、うん!分かるよ!……何となく」

ディアボロ「はぁ……」


((説明はしてきたはずだ……))

((今日は新曲の販促も兼ねて、全国の販売店の店員を招待している))

((ここで真美が新曲を含む数曲を歌って踊るのだ))

((開催費はすべて765プロ持ちだ……ここでしくじるわけには行かない……))

((とな))


ディアボロ「……いや、まぁいい。……とにかく失敗だけはしてくれるな。お前の腕にかかっている」

ディアボロ「お前たちは帝王となる存在だ……。僅かなミスも許されないぞ」


真美「はうぅっ……。サプレッサーが重いよ兄ちゃん……!」

ディアボロ「765のメンバーは重いものを背負っているという事だ。あとサプレッサーではなくプレッシャーだ」

真美「うーん……。でも、やるしかないもんね。そのインプレッサ、背負うYO!」


ディアボロ「そうだ、任せたぞ」


((乗用車を背負える怪力だったのだな、真美は……))

((……清々しいほどわかってなかったが、大丈夫だろうか))

・・・


((そのインプレッサに潰されてんじゃあないぞこの阿呆がァーーーーッ!!!))

((緊張してまともにマイクを持ててないじゃあねーかッ!!))

((この前の響といいこいつといいッ!!))

((それに春香も貴音もだッ……分かってるのか……ッ自分の立ち位置が……ッ!))

((再来月のLIVE……分かってんのかックソ~~~~!!))

((仕方ない、やるしかッ!))


ディアボロ「【キング・クリムゾン】」


ディアボロ「結果だ。結果だけが残る……」


・・・

真美「兄ちゃん、真美、サビのとこらへん上手く歌えてたかな?」


ディアボロ「……あぁ。失敗は無かった。」


真美「そっかぁ……ならいいけどサ……」

真美「本番に強いってやつかなあ?めっちゃ緊張したけど、なんだかよく分らないうちに歌えてたってことだよNE?」

・・・


真美「うあー!やっぱりモヤモヤするよ兄ちゃん!」

真美「なんか……なんか怖いよ……!」


ディアボロ「気にするな……失敗は無かった」

数日後
---765プロダクション事務所---

<ガチャ

ディアボロ「おはよう」

小鳥「あっ、プロデューサーさん、おはようございます」

律子「おはようございます」

テク
テク

ディアボロ「よし」

ディアボロ「では行ってくる」


<バタム

小鳥「……」

律子「……」

律子「小鳥さん、最近のプロデューサー……」

小鳥「はい、私も思いましたけど……やっぱり」

律子「前は真美が……その前は響が……」

小鳥「二人とも、クタクタに疲れて帰ってきましたよね……」

律子「プロデューサーがはりきってるのは分かるけど……」





小鳥は「今日は……雪歩ちゃんと、真ちゃんです」

---レッスンスタジオ前---

ディアボロ「おはよう二人とも。体調はどうだ」


真「おはようございますプロデューサー!」

真「体調は……ボクは特に問題ありません!」

雪歩「おはようございますう……」

雪歩「普通……でしょうか。えぇ普通です……」


ディアボロ「今日は奴らが来るぞ……分かっているだろうが……」

ディアボロ「行こう」

--スタジオ内---

真・雪歩「よろしくお願いします!」

作曲家「はい、よろしくどうぞ!」

振付師「よろしく。今日はじっくり見せてもらいますね」


ディアボロ「今日はどうしても都合が合わず二人レッスンになってしまい申し訳ない」

ディアボロ「しかし他のメンバーも同じような進捗・感覚でやっているので今回やれることは全て試して欲しい」


作曲家「はい了解ですー。」
作曲家(作曲家がその後の経過を見に来るなんて異例中の異例なんだけどなあ)
作曲家(パーティで会ったプロデューサーがあんまり印象に残ったもんだから来ちゃったよ)

振付師「それでは始めてもらいましょうか」



真「はっはいぃ……ッ!!」
(えっえっ、えっ何?こういう感じで!?)

雪歩「あうぅ……」
(プロデューサー、こんな雰囲気なんて聞いてないですぅ!!)

・・・

ズッダン♪
  ズッズッダン♪

ズッダン♪
  ズッズッダン♪


((マコト貴様ァァァーーーーーッ!!!))

((いつも完璧にやっているお前が固まっていてどうする!!))

真「あわわわ……うわっっと……」


ズッダン♪
  ズッズッダン♪


((ユキホ貴様ァァァーーーーーッ!!!))

((この阿呆がァーーーッ!そこを何度迷えば気が済むッ!?))

雪歩「えっと、っと、うん、うん……えっと……!?」

ズッダン♪
  ズッズッダン♪



ディアボロ「ゥんがァアアアーーーーアァッ!」

ディアボロ「マズい……このままだと……サビだけは見られては……!評価が……!」



ズッd


ディアボロ「【キング・キリムゾン】」

ディアボロ「結果だ。結果だけが残る……」

・・・

作曲家「えあれっ!?終わり!?」

作曲家「……」

作曲家「うん、そうだね、思ってたよりいい表現できててよかったと……うん。思います」
作曲家(見てなかったなんて言ったら殺される……ッ!確信だ、俺は殺される……ッ!)

振付師「え、えっと……そうですね。おおむね……お送りしたビデオと同じようにできているのでいいかと」

振付師「今日は初めて来させてもらったんで、ね?次は全員揃った時を……はい、楽しみにしてます」
振付師(【私はサビを見ようと思ったらいつのまにかサビが終わっていた】)
振付師(ありのまま……これが今起こった事……気を抜きすぎだわ!私)




真「はぁぁ……。雪歩、お疲れ様」

真「雪歩、立てる?」


雪歩「もっ……ダメ……ッ!私には無理だよ……やっぱり……!」

雪歩「ぐすっ……ひぐっ……」


ディアボロ「泣いてんじゃあないぞッ雪歩……!」

ディアボロ「帝王を目指すのだ、躓くには早すぎるってもんだろう?え?」


雪歩「そんな事言っても……プロデューサー……」

真「……」


ディアボロ「やれと言っているんだ……オレは……雪歩、ええ」

ディアボロ「雪歩貴様、ここまで積み上がったものを、今この瞬間ですべて無駄にしようというのか……ッ」

ディアボロ「【恐怖は過去からやって来る】……!後悔するぞ、いずれ……ッ!」

ディアボロ「この瞬間の妥協は人生を終わらせる……!常に頂点で居続けろ……雪歩ッ!!」


雪歩「うぅっ……ぐす……プロデューサー……」

真「ね?雪歩、プロデューサーがバックにいるんだから、きっと大丈夫。一緒にやろ?」

真「ちょっと口下手なとこもあるけど、なんだかんだで励ましてくれてるんだからさ」

雪歩「真ちゃん……」

雪歩「……」

雪歩「……もうすこしだけ、頑張ってみるね」

ディアボロ「それでいいんだ」





((励ましているとかなんか誤解するのはいいがとにかく責務を果たせッ……!))

数週間後

---765プロダクション事務所・夜---

春香「……」


真美「つかー……つかれたNE、はるるぅん……」

春香「そうだねぇ……」


千早「LIVE前だから必要な事とはいえ……かなりウェイトの高い仕事ばかりね……」

美希「ミキもついていくので精いっぱいなの……」

雪歩「ついていける美希ちゃんがすごいと思うよ……」

真「……ふわぁーぁ」

美希「あふぅ」


やよい「私も眠くなって来ちゃいました……帰らなきゃ……」

貴音「……」

春香「……」


響「じゃ、自分は帰るぞー」

響「今からイヌ美たちの散歩行かなきゃ……ふわぁ」

・・・

ディアボロ「マズい……マズい……!」

律子「……プロデューサー」

ディアボロ「……なんだ、律子。今わたしは忙しいのだが」


ディアボロ「お前も見て分かるだろう……。LIVEまで1ヶ月をきったというのに、奴らにはまるでメリもハリもない」

律子「……危機感を抱くのは分かりますが」


ディアボロ「なんだ……【分かりますが】なんだ……?」

律子「正直に言いますとですね……。焦りすぎです」


ディアボロ「なんだと~?」

律子「みんなを見て下さい……」


ディアボロ「」

ディアボロ「それがどうした」

ディアボロ「いつも通りじゃあないか。いつも通り緊張感の欠片もない」

律子「……はあぁ」


律子「緊張感なんてあるわけないでしょうに!」

律子「メリ?ハリ?あんな状態の子たちにそんなもの求めるのはいくらなんでも酷です……ッ!」

律子「えぇ、普通なら必要なことです。メリハリ!だけどプロデューサー、あなたが無茶に仕事やレッスンをキツキツに埋めて行くからあんなですよ」


ディアボロ「……」



「づかれだー……」
「真君、ミキ寝てるからおんぶで家まで送ってくれないかな?」
「こっちがお願いしたいくらいだよ……ふわぁーぁ」
「あふぅ」
「……」



ディアボロ「……」

律子「分かりましたか?」

ディアボロ「やり過ぎだと……?」

律子「そうです」

ディアボロ「……」

ディアボロ「しかし律子も見ただろう?先日の全員でやったレッス―――」

律子「見ましたけど!……やっぱり、みんな疲れきってて実力を出せていませんでした」

律子「プロデューサー……あなたも少し疲れているんじゃないですか?」

律子「みんな、一度休みを入れましょうよ」


ディアボロ「おい……何を言っているッ!変な空気にしようとしているなッ!」

律子「ふう……そういう反応になるとは思いましたけど」

律子「これ、明日以降のスケジュールです」ピラッ


ディアボロ「……」ペラッ

ディアボロ「……!」ペラッ

ペラッ
 ペラッ

ディアボロ「なんだこれは……OFFがこんなに……!」

高木「うぉっほん!……ディアボロくん、君がよくやってくれているのは分かるよ」

高木「正直、ここ最近の君には鬼気迫るものがあったし、我が765プロダクションの人気も着実に伸びている」

高木「だから……といってはなんだが、そう……単刀直入に言おうッ!」

高木「彼女たち、そして君には休みが必要であるとッ!!」


ディアボロ「何ッ……!そんなバカなッ!ありえないッ!」


高木「あり得なく無いよ。」

高木「適度な休息は無理な活動より強し。ンッン~名言だなこれは」

ディアボロ「社長、これでいいと思っているのか……?」


高木「言っただろう。これは必要なんだ。彼女たちもそう望んでいるし、これ以上は本当に倒れかねないよ」


ディアボロ「くっ……!」

ディアボロ「…………」

ディアボロ「バカな……クソッ」


((ここで退く事は敗北ではない))

((一つ一つの仕事の重大さが増す事になるが……トップアイドルならやって当然だ……。あいつらにはやらせるさ……))

・・・
ディアボロ「……」

ディアボロ「お前は」


春香「ぁ……」


ディアボロ「まだ事務所にいたのか……。もう遅いぞ」

ディアボロ「明日は……OFFだからな、好きにすればいいが。律子から聞いただろう」

ディアボロ「ライブまでの日は浅い。失敗は許されない……」

ディアボロ「きたる来月。ライブは大規模に行われる」

ディアボロ「分かるよなあ?これは重要だ。IA大賞の選考に関わる」

ディアボロ「あぁ……。だから、休め。……そう言う事。だ、そうだ」


春香「はい……」


ディアボロ「……それじゃあわたしは帰るからな」

春香「はい、お疲れ様でした」



春香「あのッ!」


ディアボロ「なんだ……わたしはもうドアに手を掛けているぞ」

ディアボロ「仕事の事なら後日聞く。しばらく休めって言われたからな……社長に」


春香「違います……その、お仕事じゃなくて」

春香「プロデューサーさん……」


ディアボロ「ええいッ一体なんだって言うんだ……!」クルッ


春香「……」

ディアボロ「……!」

ディアボロ「……なんだ」


春香「やっと見てくれましたね……【目】を……。今まではずっと」

春香「どこか違う所を見ながら、お話をされていたので」

ディアボロ「帰る。暇じゃあないんでな……」

ディアボロ「お前に付き合っているほど……」


春香「プロデューサーさん、あれからなんだか変わってしまったように思ってましたけど」

春香「そうでもないですよね。……今確信しました」


ディアボロ「……前にも言ったはずだぞ」

ディアボロ「【気にするな】関係ない……いい加減にしろッ」

ディアボロ「大体、そんな事を気にしているからお前たちは失敗ばかり繰り返しているんじゃあないのかッ!?」


春香「……それは、ごめんなさい……でも」

春香「プロデューサーさんの事、やっぱり気になるんですもん……仕方ないですよ」






ディアボロ「なんだ……なんだっていうんだ……ッ」

ディアボロ「わたしには……なにもないッ!オレはなにもないッ!」

ディアボロ「気になるだとッ!そんなもの気のせいだッ!杞憂だッ!」

ディアボロ「春香が気になる気になるというせいで……オレが足を引っ張っているみたいじゃあないかッ!」



春香「うっ」



ディアボロ「オレにはなにもないッ!!」

ディアボロ「いい加減にしろ……ッ!どうすればいいんだ……ッならば……ッ!」

ディアボロ「ただ必要な事をなしているだけじゃあないか……ッ!ふざけるなッ!」



春香「プロデューサーさん……」

春香「……ちがうんです、聞いてください!」


ディアボロ「……くっ」

春香「だからこそ、気になるんです……【なにもないから】……」

春香「怯えて……怖がっている……それ以外に、プロデューサーさんには【なにもない】ような……そんな気がするから」

春香「ねぇプロデューサーさん、何か怖いものでもあるんですか?」



ディアボロ「なんだ……貴様……なんだっていうんだ」

ディアボロ「なにもないって言っただろうッ!なんのつもりだ……どこまで踏み込んでくるつもりだ……ッ!」

ディアボロ「えぇ、おい……!土足で上がって来やがって、クソがッ……!」

ディアボロ「オレの中身を知ったつもりか……ッ」

ディアボロ「ちっぽけな小娘が……なにも知らない小娘が……このオレをッ……!」



春香「私は、分かってあげられますから」

春香「大丈夫!みんなならきっと受け止めてくれますよ!……ね?」

春香「なにに、怯えているのか……」

春香「きっと、空っぽになってるんですよね」

春香「もう目をそらしてるじゃないですか……」

春香「私ドジだから、きっと言ってくれないと分からないです」

春香「……本当の意味で私たちの仲間になってほしいって、私、思いますよ?」



ディアボロ「……やめろッ」

ディアボロ「そんな目でこのオレを見るんじゃあないッ!」


((何の……つもりだ……殺されたいのか……ッ!))

((悪趣味な……ジョルノ・ジョバァーナ……ッ!))


ディアボロ「オレは………オレは……ッ!!!」


((何かを恐れているって言うなら……それはお前だよ))

((小娘が……ッ!そんな話をされるたびに混乱させられるッ))

((邪魔だぞ……貴様ッ!))

・・・
律子「あれっ!?プロデューサーまだいたんですか!?」

律子「……って春香まで!こんな時間までなにを……」


ディアボロ「……!」

ディアボロ「オレは何を……」

春香「あっ律子さん。ちょっとお話してただけですよ?」


律子「お話……ってあんた……もう10時よ」


春香「えぇぇっ!?うそっ、え、どうしよう!?」

春香「そんなぁ……電車、間に合うかなあ……?」


ディアボロ「……はぁ」


ディアボロ「間に合うだろうが……この時間だ。」

ディアボロ「襲われたりしたら大変なのでわたしが送っていこう」

律子「そうですね、もうプロデューサーも帰るところだったんだし」


春香「あちゃー……ごめんなさいプロデューサーさん!」





・・・

((その後はなにもなく家まで送り届けたが))

((……わたしは))

((わたしは春香を殺そうとしていたのか?))

((わからない……なぜそんな事をしようとしたのか))

((ここまで混乱することなどなかった))

((わたしは……なにかを恐れているのか?))

((なにを恐れているんだッ……))


ディアボロ「フフ……今わたしが恐れているものなど奴らが失敗することぐらいだな」

・・・

数週間後
---765プロダクション事務所・昼---


ガタッ

ディアボロ「……」

律子「プロデューサー?どうしたんです頭を抱えちゃって」

律子「ライブまで日が無いんだから、悩んでる場合じゃないですよ?」


ディアボロ「律子……聞いてくれ」

律子「?」


ディアボロ「わたしは竜宮以外の9人を担当しているわけだが……」

律子「はい」



ディアボロ「……ようやくまともになってきた」

ディアボロ「まだ弱いが、形にはなったぞッ!」

ディアボロ「フフ……フハ」

ディアボロ「フハハハハハハアァーーーッ!!帝王はこのディアボロだ!依然変わりなくッ!」



律子「うるさいです」


・・・

---レッスンスタジオ---

トレーナー「はい1,2,3,4」


ズッダン♪
  ズッズッダン♪

ズッダン♪
  ズッズッダン♪


美希「はっ、やっ、っと……!ほい……っと!」


真「…………~っと!」


響「ちぇいさー!」

トレーナー「ハイここまで!」

トレーナー「みんなお疲れ様!……今回も問題なくできているわ」



やよい「はぁっ……はぁっ……なんとかなりました」

雪歩「やよいちゃん……がんばったもんね、私たち……」

千早「お疲れ様、ふたりとも。とてもうまく出来ていたわ」


真美「これで兄ちゃんも認めてくれるっしょー……」

響「っていうか……これでダメならもうどうしようもないさー」



春香「みんな……」

貴音「春香」


春香「四条さんも……なんだか、その……思いませんか?」

貴音「ええ。明らかに皆のレベルが上がっている……」

春香「うん……」

貴音「まるで、追い立てられているように、きびきびとした動きです」

春香「……!」

貴音「しなければならない……失敗してはならない……重圧をもった舞台になりそうですね」

春香「そうですよね……なんだか、やらされているような……」



貴音(……彼の指導によるもの、なのでしょうか)

・・・

ラ イ ブ 当 日



---765 ALL STAR LIVE会場---


「わあぁぁぁぁあ!!!」
「すごい人の数……!!」ワイワイ
「私たちのライブを見るためにこんなに……!?」
「き……緊張してきた……」ガヤガヤ
「アイドルのライブって感じですな」
「感じって……まさにそうじゃんアイドルだよボク達」ワイワイ



ディアボロ「よし……集客は成功だ……ッ」

ディアボロ「ここから先はお前たちにかかっているぞッ!」

ディアボロ「いいな」



『はい!』

・・・

ディアボロ「大丈夫だ……乗り切れる……この程度ッ!」

律子「えぇ、このライブのために積み上げてきた時間は、決して無駄にはならない!」

ディアボロ「……」



春香「絶対、成功させようね!」

千早「大丈夫、できるわ。きっと……」

真「よ~~っし!頑張るぞ!!」

雪歩「人人人人人人人……」

真美「大丈夫大丈夫……うー、ダメだーやっぱり緊張しちゃうYO~!」

亜美「真美、大丈夫だよ、皆いっしょだかんね!」

伊織「そうよ、ここまできたら精いっぱいやるしかないじゃない!行くわよ!」

あずさ「うふふ、盛り上がって来たわね~」

響「よっしゃー!頑張るぞ~~!」

貴音「響、足が震えていますよ」

美希「テンションあがってきたの~!」

やよい「うっうー!それじゃあ……」




『みんな頑張ろう!!』

『オーーッ!!』




ディアボロ「そういうのいいから手順の確認とかできんのかスカタンめ……ッ!」

『会場におこしの皆さま お待たせいたしました……』



『ただいまより、765プロダクションがお送りする、765ALL STAR LIVE を開催させていただきます!』




ワァァァァァァァァァァアアアア……!
ピューーーーーーーーーーッ!




ディアボロ「よし、行けええぇーーーーーッ!!」

・・・


ズッダン♪
  ズッズッダン♪


ズッダン♪
  ズッズッダン♪



「いいぞ竜宮ーーッ!」
「あずささアァァーーーんッ!!」
「いおりいぃーーーーーんッ!!」
「亜美」


ズッダン♪
  ズッズッダン♪


律子「よし、竜宮のみんなは調子をバッチリ決めてきてるわね……!」

律子「他の皆は……っと」


ディアボロ「……」


((いいぞ……今のところミスはない……))

((だがサビだ……問題はな……))

・・・

春香(もうすぐ、サビに入る……みんなは)


雪歩「……ぁ……」


やよい「ぁ…………っ!」


雪歩(ぷプロデューサーがこっち見てる……)

雪歩(ぜったい、失敗しちゃダメ……なのに)

雪歩(どうしよう、頭が真っ白に……うっ)

雪歩(ぁ……)

雪歩(……どうしよう)

雪歩(…………)




ディアボロ「おい……なんだ雪歩あいつ……様子がおかしいぞ」


ディアボロ「マズいッ!もうサビに入るぞーーーーーッ!!」

ディアボロ「エピタフで予知をッ!!」


■■■■エピタフ(ほんの少し未来)■■■■


雪歩「ーーー、……-ーーー!」


やよい「………ーーーー……」


「ーーーーーー?」
「ーー……!」
「……!!」
「……」

■■■■現在■■■■


((なんという事だ……本番で失敗をするのかこいつらは……!))

((本当に……どうしようもない奴め……ッ!))

((IA大賞を……取る気があるのか、こいつは……ッ!))

((仕方ないがな……問題の部分を消し飛ばす))

((失敗は失敗でなくなる……!誰にも気付かれず……ッ!本人さえ……))

((気がつけばいつの間にかサビが終わっている事になるが、今日にいたるまでレッスンを徹底させたのは体に覚え込ませるためッ!))

((無意識が働き、消し飛ばす時間も踊り続けるだろう……ッ!))





ディアボロ「【キング・クリムゾン】」

ディアボロ「結果だ。結果だけが残る……」

・・・

雪歩「……ッ!?」

雪歩(あれ……!?)

雪歩(サビが終わってる……私できたのかな!?)

雪歩(分からない……なにも覚えてない……!)


貴音「……」

貴音(プロデューサー……ッ!)

貴音(また、やったのですね)

・・・

・・・

亜美「それじゃあ二曲目、いっくよ→!」

真美「この曲は亜美と真美の二人の曲だかんね、最高に楽しんでよNE!」


ディアボロ「頼んだぞ……ッ!」


貴音「プロデューサー……」


ディアボロ「貴音か。次のお前の曲目はしばらく後だから体を休めておけ」

ディアボロ「はやく行くんだ」


貴音「また例の……あの術を使ったのですか」


ディアボロ「……」

ディアボロ「舞台にいたのだからお前にも分かっただろう貴音」

ディアボロ「必要なサポートだ、アレは……」

貴音「くっ……!そうやって全ての失敗を消していると……!」


ディアボロ「うるさいぞ貴音貴様ッ!」

ディアボロ「亜美と真美のステージだ……わたしは忙しい」


貴音「……!」

貴音「休んで、きます……」ダッ


((貴音……お前は失敗がなかったからいいものの))

((次以降の曲目で失敗したらどうする?誰がそれをぬぐってやるのだ?))

((まだ分からないかアホが……。やはりプロデューサーであるわたしにしか分からん……!))


・・・

亜美「簡単でそんなのつまんない」

真美「つまんない!」



「……真美ちゃん緊張してんのかな」
「なんか顔強張ってない?」
「てかダンスのキレも……」
「亜美」
「てか……竜宮以外の子ってあんまり楽しそうにやらないよね」
「うーん……たしかに」
「あーあ……竜宮まだかよー」
「亜美」



ディアボロ「バカな……ッ!緊張だと……ッ!」

ディアボロ「クソッ……こんなところで躓いてるんじゃあないぞッ!」



ディアボロ「もうサビだ……くそ、以前同じような事があった気がするッ!」


ディアボロ「【キング・クリムゾン】」

ディアボロ「結果だ。結果だけが残る……」

・・・

亜美「タリラン Turn it up!……!?」

亜美「…無敵!」

真美「……!」

真美「チカラ 無から 無限!」


Yeah Yeah!

・・・

真美(……できたのかな、真美,ちゃんとできたのかな……)

真美(なんでいっつも覚えてないのさー……!)


・・・

響「会場のみんなーーー!」

響「我那覇響だぞ!はいさーーい!!」


ハイサァーイ


響「今日は来てくれてありがとね!自分精いっぱい頑張るぞ!」



ディアボロ「響によるMCは5分程度……この前のラジオよりも軽いもんだろう。え?」

ディアボロ「マジに……頼むぞ、この程度はな」

・・・

響「うーん。ね。そうだねー……」

響「……」




響「ハッピー」


ディアボロ「!?」

経験値がないまま本番にきちゃったのか支援

響「……」

響「ハッピーうれピーよろピクねー!」


ザワザワ
 ザワザワ
ナンダアノコ
 ハッピー?ナンテ?

ザワザワ
 ザワザワ




ディアボロ「……!?……!?」

ディアボロ「響……おまえ……何しとるんじゃ!」


ディアボロ「律子!サポートを入れるんだ!このままでは間がもたん!」




響(あぁぁぁゎわゎぁぁぁ自分何言ってんのああわ)

響(5分……たった5分……簡単さーこんなのちょちょいっと)

響(ラジオの時どうやったっけ……?)

響(あああわわあああ覚えてないよー……どうすればいいんだ自分……!!)

響(………)







響「うぃ」



ザワッ
 ザワッ

!?
 ナンテ!?

ザワッ
 ウィ?ドーイウ……?

響「ウィンウィンウィ―――」







ディアボロ「やめろおおぉーーーーーッ!【キング・クリムゾン】ッ!」

ディアボロ「冷や汗かいたよ……マジにな……」

ディアボロ「結果だけが残る。メンバーがサポートに来るまでだがね」


・・・


響「ィン……」

響「ってあれ!?どうして貴音が!?」



貴音「響がMCであがっているのを見ていられなかったので、さぽーとに来ました」

貴音「響、喋る内容は考えていなかったのですか?」

ヒビキー
ガンバレー
ワー


響「助かったよ貴音ぇ……!」

響「いやっ、いやうん、もちろん考えてたけどね!内容!うん!」

響「えっとねー……」


・・・


ディアボロ「ハァッ……ハァッ……」

ディアボロ「くそ……わたしのスタンド・エネルギーがもたないぞ……これではッ!」 

ディアボロ「なんだ……なぜ今日に限って……こんなバカな失敗を繰り返す……ッ!」


・・・
・・

春香「それでは皆さん!これから本日最後の曲を歌います!」

伊織「名残惜しいけど、最後までフルパワーでやりますので 楽しんでくださいっ!」


『THE IDOLM@STER ッ!』




ディアボロ「ハァッ……!ハァッ……!くっ……!」

ディアボロ「キング……クリムゾン……」

ディアボロ「ダメか……スタンドEがもう……ッ!」

ディアボロ「冗談じゃあないぞ……おい……」

ディアボロ「あれから……全ての曲で2度ずつ……」

ディアボロ「こんなに連発した事がないので……まさかこうなるとは」


律子「プロデューサー……!どうしたんですかその汗……!」

律子「最後の曲だし……一度休憩室へ」


ディアボロ「気にするな……まだ、わからん……まだ、分からないんだ……」

ディアボロ「あいつらが、失敗せずにやりきれるか、どうか」


律子「プロデューサー……」


・・・


伏し目がちな昨日なんていらない♪
今日これから始まる私の伝説♪





ディアボロ「……ぁぁ」

ディアボロ「ダメ……だな、これは。……もたない。……SEが」

ディアボロ「そして……最後の曲も……ミスをする」

ディアボロ「これで尽きるか……?」

ディアボロ「……【キング・……クリムゾン】」


((わたしの意識もそこで途絶えた))

・・・・・
・・・・
・・・
・・

3日後
---病院・朝---


「……」

「……」



ディアボロ「……」

ディアボロ「……ここは」



看護婦「ひいいぃーーーーッ!起きたぞッ!」

看護婦「この人ッ!……先生を呼ばなくてはッ!同僚の人にもッ!」


・・・

ディアボロ「なんだあの看護婦は……頭が痛くなる声だ」

ディアボロ「……しかし」

ディアボロ「わたしは死んだのか?……いや、死んではいないが」

((ここは次の死に場所なのか……ということだな))

((やはり、あれもただの永遠の死の過程に過ぎなかったのか))

((バカバカしい……))

((なんだ……わたしは……みじめにアイドルなどと……))

((……))



ディアボロ「眠いな……どうせ後は死ぬだけだろう。」

ディアボロ「考えるをやめよう……楽だ。そっちのほうが……」


・・・

「……」

「……、」

「…さい、プロ…!」

「こっ…時…から、きて…さい、プロデューサー!」

「時間ないんですったら!起きて下さい!プロデューサー!」




ディアボロ「ええいッ!うるさいぞッ!」ガバッ



ディアボロ「……えっ」




律子「おはようございます。体調はどうですか?」


ディアボロ「律子……なんだ、お前か……」




ディアボロ「……いや待てッ!おかしいぞッ!オレは死んだんじゃあないのかッ!?」


律子「いや、本当死んじゃったのかと思いましたよ……ライブ中急に倒れるもんだから」

律子「3日寝てたんですよ。検査上問題は無かったそうですけど……」

ディアボロ「……!」

律子「体は健康そのものだっていうんだから、本当に怖かったんですよ……」


ディアボロ「あ、あぁ……そう……問題は無いはずだ」


((原因は精神力の枯渇か……))

((くそッ……このディアボロともあろう者が))

((結局……キングクリムゾンは発動できなかったのか……ッ))


ディアボロ「!」

ディアボロ「そうだ……ライブは!?」


律子「ライブはあのあと無事終了しましたよ、ご心配なく」

ディアボロ「そ、そうか……はぁ」

ディアボロ「なら……いい。安心したよ、マジに」


律子「ただ、……その」

ディアボロ「!? おい、なんだ」


律子「みんな、満足できなかったみたいで」


ディアボロ「なにッ!」

ディアボロ「わたしが倒れた後にミスをしたというのかッ!?」


律子「いえ、そういうわけでは……」

律子「ライブを通して失敗は、なかったんですけど」

律子「……失敗はなかったはずなんですけど」


ディアボロ「!?」


律子「正直……私も」

律子「なんだか、いまいち印象が残ってないんです……」

律子「みんな必死に頑張ったのは知っているけど、なんだか決まりどころがどれもモヤモヤしていた気がして……」


ディアボロ「……」

律子「同じような感想を……観客のみなさんが言っていて」

律子「その……記事も、あまり良い内容が書かれなかったんです」

律子「ごめんなさい、目を覚ましてすぐに、こんな話……」


ディアボロ「なん、だと……」


律子「ただ、私もプロデューサーですから、みんながしっかりやった事、全部分かってます」

律子「失敗はなかったし、良いライブだったと……みんなに言いたかったんですけど」

律子「私自信、注目していた部分がほとんどモヤモヤしていて……何も言えませんでした」

律子「【やれることはやったんだから】……。なんて、そんな事しか」


ディアボロ「……!」

ディアボロ「メンバーは」


律子「……」

律子「みんな、めっきり沈んでしまっていて……」

律子「ライブのあとだし、明日まではOFFにしてあります」

律子「明日から切り替えて、うん……行かなくちゃ」

律子「私だけじゃない、みんなそう思ってるはずなんですけど……」


ディアボロ「……ハァッ……ハァッ」

ディアボロ「バカな……」


律子「誰のせいでもありません……みんながやるべき事をやったのは分かってる」

律子「みんなに……魅力が無かったなんて、そんな事思えないし……」

律子「本当、なんでこんなふうになっちゃったんだろう……」


ディアボロ「……あ、ああ……」

ディアボロ「あ……ハァッ、ハァッ……!」


((オレの……キング・クリムゾンが原因だと言いたいのか……))

((おい……どういう事だ……話が違うぞ、え?))

眠くなってきたので2時間ほど寝る
14:00あたりから再投下始めます

とりあえず今はさるで投下できなくなるまでババっとやっちゃう

((無様にぐだぐだとミスを重ねる姿を見せれば良かったと?))

((なんだ……おい、冗談じゃあないぞ……))

((ただオレはやるべき事をやってきただけだろう?))

((オレにはこの能力があった……だから使った……!))

((無敵の能力だ……【キング・クリムゾン】……時間を消し飛ばす))

((こいつのせいですべては失敗したと……言いたいのかッ!?))

((律子貴様まで……邪悪と言うつもりか……))

((何も知らない……ザコがッ……!))


律子「プロデューサーがウチに来てから、仕事で失敗したことなんて本当にないから……」

律子「なんだか、……うん、久しぶりに自分たちを見つめ直すきっかけができて、よかったの……かな。って」

律子「ごめんなさい、本当に……こんな愚痴みたいな事ばっかり」

律子「そ、そうそうっ!私これからライブの後処理がありますので時間が無いんです……」

律子「だから、申し訳ないんですけど、私はこれで」


ディアボロ「……」

ディアボロ「気に、するな……」






---765プロダクション事務所・夕---


小鳥「!」

小鳥「プロデューサーさん!」


ディアボロ「……!」

ディアボロ「小鳥か……」


小鳥「プロデューサーさん、律子さんから退院のお話は聞きましたけど、どうですか体調は?」

小鳥「みんな心配してましたよ」

ディアボロ「そんな事どうだっていい……ッ!」

ディアボロ「ライブは……」


小鳥「……ライブは無事に終わりましたよ。みんなも……その、やりきったみたいで、しばらくOFFになってます」


ディアボロ「……やはり、本当なのか」

ディアボロ「律子から聞いた。そのOFFの件とかな……全部だ」


小鳥「あっ……」


ディアボロ「……だがやはり、まだライブの後処理が残っているはずだ」

ディアボロ「わたしの仕事だ……」


小鳥「プロデューサーさん、それは大丈夫ですよ」

小鳥「OFFのあとにしっかりやってくれればいいですし……」

小鳥「そんなことより、まずは体を整えた方がいいと思います。退院してその日になんて無茶が過ぎてますよ」


ディアボロ「……」

ディアボロ「そうか……」

ディアボロ「……ここには」

ディアボロ「ここにも、わたしのやるべき事など……ないのか」


フラフラ
 ドスッ


小鳥「ぷ、プロデューサーさん……?」


ディアボロ「フフ……気にするな。わたしはこのソファを気に入っているだけだ……」





((わたしはどうすればいい……))

((わたしはどうすればよかった……))

((失敗を見過ごせば良かったのか……))

((だというなら、元からわたしには無理な事だったのだろう))

((やはりわたしは、この生温い世界には適合しない))

((失敗をカバーすれば責め立てられる……バカか?お前らはッ))

((この日向の世界にはオレは不適合だと……ッ!?))

((えぇおい、そんなことが言いたかっただけなのかゴールド・E・レクイエム……!))

((たったそれだけで……オレをここまで晒し上げ……ッ))

((挙句……スタンドの限界を見せつけ……ッ!))


ディアボロ「たったそれだけをオレに示すために……ッ!!」

ディアボロ「オレの全てを踏みにじったというのか……ッ!!」

ディアボロ「ジョルノ・ジョバァーナ……!もういいだろうッ、やめろ……殺せ……!」




小鳥(やっぱり、まだ体調が悪いのかしら……ひどく顔色が……)

・・・

---春香宅周辺・夕---


春香「……」


春香(OFFも明日までか~……)

春香(なんだろう、結局何ができて何が出来なかったのか……分からなかったな)

春香(プロデューサーさんも過労で倒れたっていうし)

春香(はぁ……なんだか楽しくないなあ)


春香「考えても仕方ない、か」

春香「きっとなんとかなる、よね」


コツン


春香「……コツン?」

春香「あれっ、ボール?」

「おいっボール飛んでっちゃったじゃあねーかよっ!」
「悪い悪い!とって来るよ~」
「はやく行きなー!」
「はいはい」


春香「……」

少年「ったくよ~、あんな怒らなくたって……」

春香「あっ、このボール」


少年「あっ!ごめんなさい、拾ってくれて。どうもありがとう」

少年「今そっちに行きますから~!」


春香「あっ、うん」

春香「はい、どうぞ!気をつけてね」


少年「いや~……本当ありがとう……」

少年「……あれ、お姉さん……」

ちょっと遅れたけど再開します
現時点で半分ちょっと前くらい

支援してくれている人ありがとう

春香「??」


少年「あれ……っ?」

少年「やっぱりそうだよね!?」

少年「もしかしてお姉さん、天美春香さん!?」


春香「えっ!?」

春香「……あっ、そ、そ、そうだった~~!!」
春香(いつも被ってるキャップ忘れちゃってるんだった~……)

春香「あ~……うん。そうだよ」


少年「すっげぇ!こんな所で会えるなんて!」

少年「応援してるから!がんばってね!」


春香「……うん、どうもありがとう!」


少年「じゃあ、僕はこれで……」

少年「……あ、ちょっと待って」

少年「……お姉さん、なんだか浮かない顔してるけど大丈夫?」


春香「えっ、いや、そんな事……」

春香「……そう、かな?」


少年「……何があったのかは分からないけどさ」

少年「前へ進む事、諦めないで」


春香「あはは」
春香(こんな子に気遣われちゃった)

春香「そうだよね、諦めてちゃいけないよね」

春香「ありがとう、頑張るね!」


少年「うん!」

少年「……お姉さんが気になってる人が、お姉さんを見てくれるまで。……ね」


春香「え?」

少年「きっと……その人も混乱してるんだと思うから。半分無くなっちゃったし」


春香「へ……?ど、どうしたの?」

春香「急に……私の事?」


少年「ずっと二つだったけど、一つになっちゃったんだよ」

少年「誰かが……半分になってあげないと」

少年「僕がやれたら一番いいけど、もう無理だから」

少年「お姉さんが……そうなってくれたら嬉しいけどね」

少年「……」


春香「え?……えっ?」


少年「それじゃあね!天海春香さん!頑張って!」





少年「……ボスをッ!お任せします!」



春香「……行っちゃった」

春香「なんなんだろう、あの子……それに、ボスって?」


【前に進む事、諦めないで】

【お姉さんが気になってる人が、お姉さんを見てくれるまで】


春香「……」

春香「行ってみようかな」







春香「あれっ……?そういえばあの辺に、公園みたいな場所、あったっけ?」

・・・


ディアボロ「……」


小鳥「プロデューサーさん……もう夜も遅いですよ……?」

ディアボロ「他に、行く場所がない……だけだな」


小鳥「……プロデューサーさん」

ディアボロ「……気にするな。もう去る」


小鳥「その、プロデューサーさん。もしよかったら」

ディアボロ「……なんだ」


小鳥「快復祝いに、でよかったら……ご飯でも、一緒に」

ディアボロ「フフ……ありがとう。だが遠慮しておこう」

ディアボロ「小鳥にはふさわしくない相手だ」


小鳥「そんなこと……」
小鳥(そんなこと……)

ディアボロ「……すまないな」

ディアボロ「わたしはそろそろ帰るとするよ……明日はOFFか」

ディアボロ「フフ……何をするとしようか」


<バタム


小鳥「……」


・・・

---765プロダクション事務所・外---


ディアボロ「もう秋に入っているのか……寒いな」


((あからさまな気遣い……気付かないわたしと思ったか……小鳥))

((全て……わたしがやったことだ))

((フフ……ライブではどうすれば良かったのか、見当もつかないよ……未だにな))

((わたしには元から無理な話だった……日向に生きる者達と共に歩むなど))

ディアボロ「……!」


春香「こんばんは、プロデューサーさん」


ディアボロ「春香……」


春香「プロデューサーさんが事務所に帰って来たっていうから……とんできました」


ディアボロ「こんな時間にか……」


春香「いやあ、えへへ……ちょっといろいろありまして」

春香「うん、それでもまだいるかなー?って思ったんですけど」

春香「よかった、間に合って……」


ディアボロ「間に合っているように見えるのか?……お前には」


春香「あはは、ですよねえ……」

                         _,,.. - 、 
       依      然         ,.-' ノ    `' 、.      帝         王
                      ,r' //     ,rfn、 \
                       ,' /,rffn.   '"     ヽ
                     / .||| /"     ,riiニヽ   . 
                     /  / /,riiニヽ      _.    ',
                    /|||.../ |  ,..  _,,.. -‐' _,..r'  i|
                    |   / |  '、., __ ,.. -‐''"゙  }  i.|
                    |  |||/、|  ヽ        !   }.|
                       ノ     /、   ヽ       !  ! |
                      /  |||  /|||\  ヽ     ./  ,'.|
                  / |||  /     ' 、  ヽ==='゙ /   ト、
                 /   /|||       `''‐   . r' \||| ヽ

.                (    //┼' ̄/   /-     -┼`┼ヽ   ヽ
                    /. /  _/‐--/-┼`┼' ̄/   /-  \ 
                               /  _/‐--/-┼`  )

ディアボロ「……それで、何の用だ」

ディアボロ「せっかくのOFFの時間をつぶしてまで……春香」


春香「あっ、そうです。そうなんです」

春香「その、プロデューサーさんが倒れたって聞いてから考えたんですけど」

春香「きっと……ライブまで働き詰めだったから、辛かったんだろうなって」


ディアボロ「……過労でもなんでもない、暑さにやられただけだ」


春香「そうだったんですか……?」

春香「でも、うん……やっぱり、ライブの直前のプロデューサーさんは見ていて辛そうでしたよ」


ディアボロ「なんだ、春香……またそういう話か?」

ディアボロ「正直に言うぞッ!……勘弁してくれ。マジに……」

ディアボロ「お前とこういう話をするたびに頭がおかしくなるんだ……」


春香「えっ……?」

ディアボロ「空っぽだとか、怯えているとか……何を言いたいのかさっぱり分からないんだッ!」

ディアボロ「わたしに何を求めているのか知らないがな……ッ!わたしはわたしだ……ッ!」

ディアボロ「これ以上を求めるんじゃあないッ!……これが100%のオレなんだ……!」


春香「そんな、これ以上を求めてるだなんて……」


ディアボロ「ならばなんなんだッ……!?これはッ!ええっ!?」

ディアボロ「ライブは……くそ……失敗して……!」

ディアボロ「失敗をなくすために……失敗したんだ……ッ!」

ディアボロ「ならどうしろというんだッ!ふざけてんじゃあないぞッ!」


春香「違うんです……プロデューサーさん……聞いて」


ディアボロ「オレには無理だ……無理な仕事だ……」

ディアボロ「考えてもみろ……ええ?無駄だとは思わなかったのか……」

ディアボロ「人を……殺して生きていたオレが……人の未来を育む事など……」


春香「……」

春香「……」

春香(この目が……この目が、一体何を見ているのか……)

春香「ごめんなさい……今日と明日、しっかり休んで下さい……」

春香「それを、うん……伝えたくて」


ディアボロ「……」

ディアボロ「……ああ」

ディアボロ「春香も……しっかりとな……休め」


・・・

---ディアボロ宅---

ディアボロ「ここまで味のしないワインが今までにあっただろうか……」

ディアボロ「……なにもかも、美味くない。味がわからない」

ディアボロ「みじめだ……ックソ……!」

ディアボロ「わたしには……何も残っていない……」


((パッショーネも……金も、親衛隊も……))

((……何も……ドッピオすら……))

((あとは、G・E・Rがわたしを殺すのを待つだけじゃあないか))

((そうだ、そもそもわたしは死ぬだけの身))


ディアボロ「帝王は……常に孤独だ……そういうものだ」

ディアボロ「だがこれは何だ……」

ディアボロ「道端に転がっているヒキガエルのように……みじめで汚らしい孤独だ……」

ディアボロ「もう、オレには」

数日後
---765プロダクション事務所---


ディアボロ「……」


小鳥「あっ!プロデューサーさんおはようございます!」

小鳥「その後、お体は大丈夫ですか!?」


ディアボロ「あぁ、大丈夫だ……フフ、気にするな」


高木「やあディアボロ君、復帰祝いに行けなくてすまないね。こちらも忙しかったもんで」

ディアボロ「あぁ、いや……大した事はなかったので大丈夫だ……」


高木「ふむ、よし……では、今後どこか時間が出来たらライブの打ち上げも兼ねて皆で行こうか」

ディアボロ「……」

ディアボロ「いいのではないか やれば」


((どうせ、その時が来るまでにわたしはここを去る))

((闇の感覚を思い出せば、すぐに))

・・・
ディアボロ「今日は……そうか、美希と地方TVへの営業か」

ディアボロ「昼ごろの出発……」


高木「あぁっ……その、ディアボロ君。うぉっほん」

高木「昨日と一昨日をかけ律子くんと相談したんだが……」


ディアボロ「……」

ディアボロ「なんだ……?クビか……?」

((ありがたいな……わたしにできる事などないと……そう思っていたところだ))


高木「えぇっ!なんだって!?」

高木「いやいや、まさか!……キミィ、冗談でも良くないよ」

高木「キミ自信気付いてないのかもしれないが……重要な戦力なのだよ。ディアボロというプロデューサーはね」


ディアボロ「……」

ディアボロ「フフッ」

高木(えっ、鼻で笑われた……?)



ディアボロ「それで?」


高木「あぁ、……そう、キミの担当と律子くんの担当をしばらく交代させようかと思ってね」

ディアボロ「担当の交代……?」

ディアボロ「竜宮とか?」


高木「そういうことだ。今回のライブを終え、これからは各自の課題点を追求していくわけだが……」

高木「一度プロデューサーを変更することで、新しい部分を伸ばして行こうと思ってね」

高木「IA大賞のノミネート候補も限られてきているこの状況、私たちもここで何とかして一歩踏み出さなければならないからね」

ディアボロ「……」


ディアボロ「竜宮の、プロデュースか……」

ディアボロ「わたしでは、彼女たちを潰してしまうかもしれないのではないか」

高木「そこはディアボロ君自身が先の件で学んだだろう?」

高木「それに、キミの実力自体は悪くない」

高木「どうだ?律子くんは承諾してくれている」



((無理な仕事だ……どちらにしても))

((10秒後には失敗に終わるのが目に見えている……エピタフで見たっていいぞ……フフ))

((しかし、特に興味が……なくなっていたところだ。奴らには))


ディアボロ「……フフ」


((最低のゲス野郎だな。ただの……))


ディアボロ「了解した」

ディアボロ「そうしよう。それがいい」

・・・
---レッスンスタジオ---

君がふーれたから♪
 七彩ボタン♪


((なんのために……G・E・Rはわたしをここへ送り込んだのだろう))

((ただ死に続ける……死ぬという結果には決して辿り着かず、ただ死に続ける))

((その最中、なぜか……こんなに。気がつけば4ヶ月は過ぎている……))

((時々、忘れそうになる……わたしが何者であったか))


全てを恋でそーめーたよー♪


((パッショーネ……))

((金……隠匿……麻薬))

((組織……親衛隊……過去の抹殺))

((あの状況に戻れば、恐らくわたしはかつてと同じように生きるだろう))

((記憶では忘れても……肌は、魂は……あの頃を忘れない))

どんなデキゴトも♪
こえてーゆけるーつー……♪

ブツッ



伊織「ちょっとプローデューサー!?ちゃんと見てるんでしょうね!?」

亜美「兄ちゃん完全に夜の空だYO!」

あずさ「うわのそら……かしら~?」


ディアボロ「えっ」

ディアボロ「……はぁ、すまない。少し考え事を」


((……))

((こんなちっぽけな小娘たちを……眺めているだけが、わたしの生き方か))


・・・

数週間後
---765プロダクション事務所---


伊織「ぜんっっっっっっっっ

亜美「~♪(ゲーム中)」

あずさ「あらあら~」


っっっっっっっぜんダメっ!!」


律子「う~~ん……」

小鳥「う~~~ん……」

高木「ぽるぽるくぅ~~~ん……」

小鳥「……」
小鳥(ぽるぽる……?)


伊織「プロデューサー、気がぬけちゃって、まともにレッスン見ないんだから!」

律子「うん……でもねー……仕事はちゃんと取ってきてるし、レッスンはトレーナーがいるでしょう?」

伊織「そうだけど……!全然興味ないみたいな、そんな感じなんだけど!?」

律子「う~~~ん」

小鳥「もしかして、ライブ……前のライブを引きずっているのかしら」


高木「まさか、妙なタイミングでプロデュース交代したのはミスだったのかな……」

律子「いや、竜宮もここ最近違った側面も伸びてきてますし……」

律子「春香たちも、今までとは違ったプロデュースですけどのびのびやれてそうです」

律子「それにしても……そんな事が」

小鳥「あのプロデューサーさんが……ねえ?」


高木「順調に進んでいるなら、やはり戻さない方が……」

高木「しかし……う~~~む」


『う~~~ん……』



高木「……ああっ、そうだ!」

高木「諸君、こんなのはどうだね!?」

・・・

翌日
---765プロダクション事務所---


ディアボロ「ライブチケットだとォ~~~?」


律子「ええ。そうなんです。春香たちのミニライブ」

律子「まぁ、といっても……地方のデパートと共催でやる営業の一環なんですけどね!」


ディアボロ「それがどうした?いつもの仕事と変わらないじゃあないか……」


律子「そうなんですけど、これ、プロデューサーさんへなんですよ」

律子「チケット。私たちからプレゼントって事です」


ディアボロ「プレゼント……なんだ?わたしにライブへ行けというわけか?」


律子「そうです!行ってみてください。仕事は空いてる日のはずですから」

律子「まあ、プロデュース交代してからみんながどんな感じになっているかを見て下さいよ!」

ディアボロ「そうか……そういう意味か……」

ディアボロ「……ああ分かった。行けというならな」


((只の観客として……か))

((スタンドを使わなくてもいいんだな……楽でいい))

((それに……従わなくては、レクイエムは進まないんだろう))


・・・


小鳥「さて……プロデューサーさんはお帰りになられましたが」

律子「どうだろう……少しはふっ切ってくれるかな……」

高木「そこは、天海くんたちを信じるしかないね」

高木「大丈夫、きっと彼女たちならやってくれるさ」


・・・

ミニライブ当日

---イベント会場・舞台袖---


律子「それじゃあ、プロデューサーはここで」


ディアボロ「あぁ……わたしは観客席へ回るぞ」

ディアボロ「何もサポートはできないが……」


律子「ふふっ、当然ですよプロデューサー!」

律子「今回はわたしたちのライブですからね。ぜひ楽しんでください!」


ディアボロ「ああ」

ディアボロ「それでは」クルッ

真美「あーーーーっ!兄ちゃんがいるじゃーーーん!」

真「わあっ、プロデューサー!どうしたんですか!?」

雪歩「お久しぶりですう……プロデューサー」


ディアボロ「あ、ああ……」


響「今日はどうしたんだ?サポートかなにか?」

千早「プロデューサーを呼ぶほどの大きな何かを?」


ディアボロ「いや、違うんだ」

ディアボロ「今日は……わたしはただの観客だ……見せてもらいに来ただけだ」


やよい「ええっ!そんな事もあるんですか!?」

やよい「うっうー!じゃあ、きっと楽しんでもらえるようがんばりますね!」

美希「ハニ……じゃない、プロデューサーがいるとおもうとなんだかドキドキするの!」


ディアボロ「そうか……頑張ってくれ」

貴音「プロデューサー……」

貴音「今日は来て下さって、ありがとうございます」

貴音「全身全霊を込めます……見て下さい」


ディアボロ「……ああ」


春香「プロデューサーさん」


ディアボロ「……春香か」


春香「前のライブから、私達もきっと成長しましたから」

春香「うん……頑張ります!」




ディアボロ「わかった」

ディアボロ「ではな……」

・・・


---イベント会場・客席---


ワイワイ
 ガヤガヤ

ワイワイ
 ガヤガヤ


ディアボロ「客席に入った事は無かったが……なんだここは」

ディアボロ「異様な空気だ……抗争でもおっ始めようとでも言うのか?」


((それに、なんだこの緊張感は……))

((たった数週間奴らのしていた事を何も知らないだけで、これだけ緊張するものか?))


ワイワイ
 ガヤガヤ


ディアボロ「いや、違う……落ちつけ」

ディアボロ「今日わたしはただの観客だ」

ディアボロ「サポートなどする必要もなく……何も気にする事など」


ワイワイ
 ガヤガ……


「おいっ、今何かきこえたぞ」

「舞台袖の方からだ!」

「おいっ静かにしろ!」

「なんだ……何て言っているんだッ!?」





『それじゃあみんな楽しんで!!』



((これは律子の声だ……))

『きっとできる!最高のステージを作れるわ!』

『行きましょう!』

『えい、えい、おーーーーーーっ!!』



ワアァーーーッ
 キタアァーーーッ

オォーーーッ
 ワアァーーーッ


・・・

春香「みなさーーーーーん!!」

春香「今日は、私達のミニライブへ来てくれて」


『ありがとうございます!!』


千早「曲目は少ないですけど、一つ一つを楽しんでもらえるよう、必死に歌います!」

真「踊ります!」

春香「……!」
春香(プロデューサーさん……!)









ディアボロ「……!」

ディアボロ「……目を、そらしたのか。わたしは……」


((見て、いられない……))

((何だ、この感覚は……))

・・・

START始まる、今日のSTAGE♪
CHECK!!マイク、メイク、衣装♪
  IT's SHOW TIME TRY CHALLENGE♪


((そんなに……楽しいのか……えぇ?おい))

((歌って……踊るのが))

((そんなに、楽しそうに笑って……どうした))

((今まで……この瞬間に至るまで))

((見た事が無かった……ステージの上の、あいつらを))

((何だ、わたしは……じゃあ今まで何を見てたって言うんだ……ッ))

((クソッ……白いな……))


ディアボロ「わたしには……見ていられない……」

STARDOM光り光るSPOT LIGHT♪
  眩しい輝きまっすぐDEBUT♪


((ところどころ……ミスしているじゃあないか……))

((おい真美ッ……!笑ってごまかしてんじゃあないぞッ……!))

((雪歩きさま、真美のサポートをするほど余裕はあるのかッ……!?))


ディアボロ「なんだ……なんだっていうんだ……」

夢は叶うもの♪
 私、信じてる♪
  さあ位置についてLET'S GO♪


((おい春香アアァァーーーーッ!!馬鹿野郎ッ!!))

((そこの音程毎回ミスってるじゃあねーかッ!))

((千早!フォローするのは良いがお前自分のダンスは大丈夫なのかッ!?ええっ!?))


ディアボロ「こいつらは……」

ARE YOU READY♪
 I'm LADY♪


((……しかしまあ、なぜこいつらはこうも楽しそうにやれるんだ))

((ええ?何か良い事でもあったっていうのか?))

((……なあ))


ディアボロ「……なんなんだよ……クソッ……!」

ディアボロ「以前程じゃあないが、それなりにミスもしてるじゃあねーかッ……!」

ディアボロ「なのにッ……なぜオレはッ……!」







ディアボロ「なぜオレはこうも震えているんだ……ッ!!」

・・・


((なぜ笑っていられる))

((なぜ楽しそうにやれる))

((なぜ……そこまで、白く在れるんだ……ッ))

((何も知らない……夢を語るだけで……世界の暗闇など……まるで))

((【夢は叶う】だと……?フフ、おい……))

((オレのような悪と……混じり合うはずが、無いじゃあないか……))


・・・

・・・

春香「皆さん、本当……はぁっ、はぁっ、……ありがとうございました!」

真「今日のステージ……すっっっごく!楽しかったです!」

響「観てくれてるみんながいたおかげで、自分も最高に楽しめたさー!」

千早「皆さんに……素敵な時間、届けられたでしょうか」


ウオオォーーー
サイコーーー


ディアボロ「……」

ディアボロ「くそ」


・・・

                   _    ト、
                   /:┌\ト-:ゞ:\_ ト.、 
                  /: : |:.|ミヾ、: : : 、: : : `Y:Vl      
                    ∨: : :! i》 ,ミ _〉: : :ヽ.:.: : :. :.└、 
                〉: :/ ハ 「   V:从: : : : : : : : :ヘ:
              ーァ'′ //斗-、 ',レ十、: : : : : ! : : ゝ
              /:,: /1 ! i{   l:!jノ V.: :.|:.:|ヾ: : ',
                /: :/:/ハ: :!リ  ,r'ハ  リ  ,心V: |.:.|_: : :,リ
            {: : :ヾ\! |.ヘ 弋tツ    弋;ツ〉 リ j }从
               \: : :\ヽ ',} '''  ′  ''' ノ/:八レ/       
          __  `' <: .:).ヽ   f_)    //7.xく
        / ) )_)_)'7   //{( ノ> . _ .  <jノO  ',O
        ヽ二゙! /!   〉〉 ___レ'/ロ/´rュ ̄\   V
            ,くj__|ノ  {( /三三. ̄〉ー─ 一' ̄ ̄ !j.
.           |ニニ三|  /ニ/三三/三三三 __ ニレ′
        !ニニニL/三./ニニニο三三三f }- 〉 !

            ',ニ三三三三|三三/ニニニニ`に .jニ |
         ∨ニニニニニ,. ィニニ.′三三三ニ∧‐.ハニ!

             ∨ニニ/  |ニ三0二ニニニニi_.У二V.
           `ー'´   _}ニ三{三三三三 ∧ 。ニニ}_
               /ニニニ0ニニニニ〈ニⅤ。ニ.| 
                

・・・

ライブ後
---765プロダクション事務所・夜---


ディアボロ「……」

ディアボロ「……」


<ガチャ


春香「プロデューサーさーん……?」

春香「……」

貴音「寝ているのですか?」


ディアボロ「いや、起きてるよ……」

ディアボロ「ライブご苦労だった……。こんな遅いのにどうした?」

ディアボロ「驚いたよ……いや、全く……。ライブ後なのにどこにいるのかメールしてくるんだからな」

ディアボロ「今日は……はやく帰った方がいいんじゃあないのか?」


春香「いえ、今日はライブに来て下さったから、感想をどうしても聞きたくて」

貴音「わたくしも……ついて参りました」


ディアボロ「……」

ディアボロ「感想か」

ディアボロ「失敗が、やはり残っていたが……」


春香「あちゃー……やっぱり、プロデューサーさんにはバレちゃいますよね」


ディアボロ「だがな……」

ディアボロ「ビビったよ、マジに……プロデューサーであるこのわたしですら……お前たちの馬鹿さ加減には……」

貴音「馬鹿、ですと……?」


ディアボロ「何が楽しいんだ……歌って、踊って……笑って……」

ディアボロ「あれだけ、楽しそうに……アイドルってやつは皆あーなのか……」

ディアボロ「……どうして……あれだけ白くいれるんだ……」


貴音「…………」


ディアボロ「オレには無理だったんだよ……お前らのプロデューサーなど」

ディアボロ「お前らのような、汚れも影も知らないような……小娘たちに」

ディアボロ「オレのような悪は……混じってはいけなかった」


春香「ぷ、プロデューサーさん、何を」


ディアボロ「貴様らのライブにはッ!一分一秒と……無駄な場面はなかった……ッ!」

ディアボロ「失敗であってもだ!」

ディアボロ「お前たちは……それさえも捨てようとしなかった」

ディアボロ「絆?友情?バカバカしい……オレはそう考えていたが……」

ディアボロ「どうやらそれはお前たちにとって大事なものらしい……」


貴音「……プロデューサー」

貴音「やっと……わたくし達を見てくれたのですね」


ディアボロ「フフ……愉快な話だろう」

ディアボロ「オレはお前たちのプロデューサーだが、まるで興味など無かった」

ディアボロ「ついさっきライブを見るまではな」

ディアボロ「オレには……不釣り合いな世界だ」


春香「そんな事ないです!」

春香「今までだって……一緒にトップを目指してたじゃないですか!」


ディアボロ「それはお前が何も知らないだけだッ……春香!」

ディアボロ「貴音が……全てを知っている」


春香「え……?」

春香「四条さん、何の事……」

貴音「……」


ディアボロ「今更気付いたって遅かった……」

ディアボロ「既にお前たちの過去を虫食いのように穴だらけにした……」

ディアボロ「オレの力でな……」


春香「ちょ、ちょっと待って下さいプロデューサー……!」

春香「そんな事……!」

春香「まさか……そんなッ!」

春香「ねえ四条さん、なんで何も言ってくれないの?」


ディアボロ「おいッ貴様春香……!貴音を責めてんじゃあないぞッ……!」

ディアボロ「全ての元凶はこのディアボロだ……」

ディアボロ「お前たちのようなちっぽけな小娘が何をしたとしても……それは」

ディアボロ「動かない……オレは時間を消し飛ばした」

春香「消し飛ばす……時間を……っ!」

春香「ちょっと待って……そんな……」

春香「どうして……こんな、おかしな話なのに」

春香「思い当たる事が……」

春香「……はぁっ……はぁっ」

春香「……本当、なんですか」

貴音「プロデューサー」


ディアボロ「フフ……隠し通すにもいずれ限界は来ただろう。それに、オレのスタンドを使っていてはトップになど」

ディアボロ「この能力は……我が悪の為にある」

貴音「プロデューサー。気付いたのなら、やれるのではありませんか?」

貴音「今この瞬間から流れる時間を大事にすればよい」

貴音「今この瞬間から、どこか向こうではなく【わたくし達】を見ればよい」


ディアボロ「何をいう貴音……?」

ディアボロ「オレを邪悪と言ったのはお前だぞ……」

ディアボロ「オレはそれに気付いただけ……今更な」

ディアボロ「陽の当らぬ場所で生き続けるしか……無かった。やはり」


貴音「…………」


春香「話して……下さいよ」

春香「どうして……こんな事に」

ディアボロ「我が力……我だけの時間……お前たちはそれを感じることなく、結果だけを知る」

ディアボロ「消し飛ばす時間……オレは万物から隔離され、干渉することもされることもない」

ディアボロ「目の前に来た弾丸はすり抜ける……」

ディアボロ「ただ、過ぎるだけ。結果だけが残る」

ディアボロ「お前たちには、全く関係の無い……無いはずのものだ」


春香「……!」

春香「はぁっ……はぁっ……」


ディアボロ「これまで、経験しただろう……記憶の無い十数秒間」

ディアボロ「全てオレだ」


春香「……」

な……名前……
あなた……名前はあるの?
あんたのことなんて呼べばいいの?


【2ちゃんねるビューア】!!


そう……一味……違うのね



お待たせして申し訳ない
続きいきます

ディアボロ「目の前の失敗を避けるため、オレはその時間を消し飛ばした」

ディアボロ「結果だ。結果だけが残る」


春香「……そん、な事……が」

春香「……はぁっ……はぁっ」


貴音「春香、落ちついて下さい……ひどい汗……」


春香「ごめんね……四条さん、ごめんね」

貴音「気にしないで」

貴音「このような事に、本来は接する事などあり得ないのです」


春香「……はぁっ、はぁっ」

貴音「だから、今は呑み込めないのは分かります……ゆっくりと、ゆっくりと理解すれば―――」


春香「……」

春香「うん……」

春香「しん、じます……」


貴音「!?」

ディアボロ「……!」


春香「だって、プロデューサーさんが言うんだから……そうなんでしょう」

春香「急だけど……」

春香「身に覚えがない……なんてこともないし」

春香「今まで……うん、きっとそうやって来たんですよね」

春香(それに……任されてるから、プロデューサーさんのこと)

春香(あの子に……よく、分かってないけど)

春香(私が……そう感じる事に意味がある……って)

春香(全然的外れな事、考えてるのかもしれないけど……)

ディアボロ「……」


貴音「春香」
貴音(無理をしている……こんな事急に言われても認められるはずが)


春香「失敗……私達が失敗しそうになるたびに、そうやって……?」


ディアボロ「……そうだ」


春香「えへへ……。ごめんなさい、頼りがいがなくって」

春香「そして、……ありがとうございます」



ディアボロ「!?」


春香「話してくれて……私嬉しいですよ」

春香「今まで、何も話してくれなかった。いつも表面だけで……」

春香「目も、見てくれなかった」

ディアボロ「…………」

ディアボロ「そうだったな」


春香「そんな中じゃ、話せなかったですもんね……この事は」

春香「きっと、これだけじゃプロデューサーさんの全部は分からないと思うけど」

春香「うん、やっと少し知れた……そんな感じがします」


ディアボロ「お前は……なぜ」

ディアボロ「そんなにも、オレを受け入れようとするんだ」

ディアボロ「なんでなんだ……」

ディアボロ「……これ以上、オレを、引っ張らないでくれ……!」

ディアボロ「ただでさえ、不安定なんだ……こんなオレは」


春香「えっ?」

春香「……それはですね。えへへ、私自身もどうして信じてるのかギモンなんですけど」

春香「私たちは、プロデューサーさんの【半分】になってあげられるから。……かなって」







貴音「?」

ディアボロ「?」

ディアボロ「【半分】……?分からない。何言ってんだこいつは?」

貴音「さあ……」


春香「えええっ!?そんな感じですか!?」



春香「ひ、酷いですよー!プロデューサーさんなら分かってくれると思って言ったのに!」


ディアボロ「……いや、わからないな」

ディアボロ「なんだ?オレの【半分】って……?」

ディアボロ「オレを真っ二つにして上半身と下半身の交換でもするつもりなのか?」


春香「ひいいっ!そ、そんなグロテスクな事をアイドルの前で言わないでくださいよっ!」

春香「ふーんだ!……もうこれについては良いですっ!私が分かってればいいですから!」
春香(あの子の言ってた事、私は、私だけは信じるから)


春香「こほん、……というわけで」

春香「ね?プロデューサーさん!もう一回やりましょう?」


ディアボロ「……オレには無理だと言っているだろう」

ディアボロ「何度だって言うぞッ!オレは……悪だ。魂のレベルからしてお前たちとは合わないんだッ!」


春香「プロデューサー……!」

貴音「悪だろうと何だろうと構わないと思いませんか?」

貴音「というか、悪であることは見たときから感じております」

貴音「それに、あなた自身がそれを理解しているのであればっ!」

貴音「わたくし達はあなたを信じる!そしてあなたがわたくし達を信じる!」

貴音「……これだけでしょう?重要なのは」

貴音「これから時間を流してゆけばいいのですから」

ディアボロ「しかし……オレはお前たちを巻き込み、また失敗へ導く事になる……」


貴音「……はあ」



ディアボロ「スタンドを使おうが、使わまいが……失敗する」


貴音「プロデューサー」



ディアボロ「それが、お前たちの未来を潰すことになるだろう……ッ!」


貴音「……」

ディアボロ「正直に言おう……もうお前たちの邪魔はしたくな―――」




貴音「プロデューサー!!」




春香「―――っ!?」


ディアボロ「―――っ!?」

貴音「ぐだぐだぐだぐだと……」

貴音「それがあなたの言う帝王とやらの生き様なのですか!?」

貴音「失敗は既にした!だからなんです!立ち上がればよろしい!」


春香「ちょっと、四条さん……」
春香(なんだかすっごいスッキリする)


貴音「気付いたのでしょう!自分が何者であるか!?」

貴音「なら新しく生き始めればいい!!」

貴音「それだけの話なのに……いつまでも女々しいことをつらつらと」


ディアボロ「分かっちゃあいない……貴音」

ディアボロ「身を滅ぼすと……言ってるんだ」

ディアボロ「お前たちのなッ!……聞き分けろ!」


貴音「わたくし達は失敗をしました!失敗を恐れてッ!」

貴音「ならば、もう繰り返しはしない!」

ディアボロ「繰り返すさ!何をしたって失敗をする!」

ディアボロ「オレがいる内はッ!何をしても―――」


貴音「【真の失敗】とはッ!!」


デャイボロ「……!」


貴音「挑戦の心を忘れッ!」

貴音「困難へ挑む事に、無縁のところにいる者たちのことをいうのですッ!!!」


ディアボロ「……ッ!!」

春香「……!」

ディアボロ「……」


貴音「……」

貴音「ここにいるのは……誰ですか?」

貴音「プロデューサーはあなたでしょう……依然変わりなく……」

貴音「春香」


春香「うぇっ!えっここで!私!?」

春香「えっと、そうですね、はい!……うん」

春香「プロデューサーさん!ここからですよ!ここから!」

春香「行きましょう!」



ディアボロ「……」

ディアボロ「お前ら……」

ディアボロ「……」

ディアボロ「……」


ディアボロ「いいん、だな……」


春香「?」

貴音「?」


ディアボロ「オレで……いいんだな」


貴音「わたくしは、そう望みます」

ディアボロ「後悔……するんじゃあないぞ……ええ?」

ディアボロ「お前たちは……オレを選んだわけだ」

ディアボロ「この……オレをな」

ディアボロ「この悪を……あえて選んだ……そうだな」

ディアボロ「ディアボロという男を……」

ディアボロ「今……たった今」

ディアボロ「約束されたぞ……お前らは」


春香「??」


ディアボロ「……【頂点】だ」

ディアボロ「理解しろ……そして誇れ 帝王の力を得る事をな」

ディアボロ「このオレが……導いてやる……」

ディアボロ「……」

((……))

((これは【試練】だ……))

((過去に打ち勝てという【試練】とオレは受け取った……))

((人の成長は…………未熟な過去に打ち勝つ事だとな))

((え?お前もそう思うだろう ジョルノ・ジョバァーナ))




((しばらく、お前の舞台で踊ってやろう……))

((せいぜい……そこから見ているがいい……ッ!))

((目的を……捨てるッ!それが……求められている……ッ!))





貴音「……」


春香「……」ゴクリ

貴音「……」ゴクリ

春香「……」


ゴゴゴゴゴゴ
  ゴゴゴゴゴゴ





ディアボロ「帝王は!このッ!ディアボ―――」


春香「あっ、それはもういいです」


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・・・

翌日
---765プロダクション事務所---

高木「えぇっ!?やはりプロデュース交代を戻したいって!?」


ディアボロ「そうだ。あいつらはわたしが引き受ける……」

ディアボロ「それに……ほんの少しではあったが、竜宮小町のメンバーとも接した」

ディアボロ「彼女達に必要なのは秋月律子だ」

ディアボロ「……勝手だろうか」


高木「えっ……いや、それはだね……う~~~む」
高木(妙案と思ったんだが……やはり上手く行かなかったか)


律子「プロデューサー」

ディアボロ「ム」

律子「顔つきが変わりましたね。何か、ミニライブで手に入れましたか?」


ディアボロ「……そんなところだ」

帝王の凄味に打ち勝つ
さすが閣下やでぇ

律子「ふふっ、これは本当に強力なライバルが出てきましたね」

ディアボロ「フフ……あがいても無駄だ……律子」

ディアボロ「帝王に弱点はない……ッ!」

律子「帝王帝王いってられるのも今の内かもしれませんよ?ふふっ」


ディアボロ「……ほう」

ディアボロ「ならば見せてもらおうじゃあないか……え?」



高木(え……なんかすごいイイ感じの流れになってるんですが)
高木(何?これはプロデュース交代は失策だったとかそういう感じではないの?)


高木「り、律子くんはプロデュースを元に戻すことについて賛成なのかい?」

律子「えぇ。春香たちと仕事をするのもすごくいい経験になったけど……」

律子「やっぱり、竜宮には私がいないとダメですから」


高木「あ……そうなの」

ディアボロ「それでは律子、これを」

ディアボロ「竜宮の今後のスケジュールを纏めておいた」


高木「え、えっ!今日から!?」


律子「は~い……。どれどれ」ピラッ

律子「ふむふむ……」

律子「……さすがプロデューサー、私がプロデュースしていた時とほとんど同じペースでやっていますね」


ディアボロ「勘違いしてるんじゃあないぞ……お前にできる程度のペースにしているんだ……」

ディアボロ「オレなら更に高みへ行けるがね……」


律子「あらそう?」




高木「え、何!?そう言うのってちゃんと手続きを踏んで」

高木「……」



律子「ふふっ」

ディアボロ「……クク」



高木「【Pは社長より強し】……ンッン~名言だな……これは」

高木「自分で言って悲しくなるよ」

高木「社長はPと組んではじめて実力を発揮するタイプだからな……「一番よりNo2!」これが高木順一郎の人生哲学。モンクあるかね?」

・・・

<ガチャ

春香「おはようございま―――」



「えっ!兄ちゃん戻って来るの!?」
「何っ!?それは本当なのかプロデューサー!」ワイワイ
「これはまた大変な日がやってきそうね……」
「スケジュールはこのままやるんですか?」ガヤガヤ
「兄ちゃん行っちゃうのー……?」
「どうせ毎度顔を合わすんだから変わらないでしょ……」ワイワイ


貴音「おはようございます。春香」

春香「あっ、おはようございます四条さん」

春香「あはは……すごく盛り上がってますね」

貴音「わたくしも驚きました……昨日の今日で」

春香「行動がはやいんですねえ……いいことですけど」

パンパン



ディアボロ「貴様ら!聞け……ッ!」




「…………?」




ディアボロ「今日から、プロデュース交代していたわたしと律子は元のグループに戻る」

ディアボロ「……と、言うわけだが……。わたしにとってこれは【再開】ではなく【始動】だ」

ディアボロ「今日から始まる……今まではほんの前置きだと思え」



千早「前置きって、プロデューサー……」

響「……ぁはは。まあらしいといえばらしいぞ」

高木「……」
高木(え……?らしいの?)

アイドルに論破される帝王()

ディアボロ「よって!まずは自己紹介から行きたいと思うッ!」

ディアボロ「わたしのグループのメンバー全員だッ!」



ザワッ
ザワッ



ディアボロ「分かっている。あぁ分かっている」

ディアボロ「フフ……まずはわたしからと……そう言うのだな?」

ディアボロ「良いだろう……」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ
  ゴゴゴゴゴゴゴゴ






ディアボロ「『P』はこのディアボロだッ!依然変わりなくッ!」
ズギャァァァァァァァーーーーーン

……
 ……


真「でた」

雪歩「ふふっ……」

千早「はぁ……まったくもう」

真美「そう言うわりにはニヤけてるよ千早お姉ちゃん?」

千早「……ふふっ」

響「わかったよ、プロデューサー!自分たちもそーいう感じでやれって事でしょー?」

美希「なんだかハプロデューサー元気になったね!」

やよい「うっうー!なんだか楽しくなってきました!」




貴音「……」

春香「……」

>>569
相手は閣下と姫だから……

貴音「……」

春香「……」



春香・貴音(依然変わりなく……?)



・・・

真美「はいはーい!じゃあ真美からいくYO!」


真美「双海真美だよ→!765イチ……いや、宇宙イチのセクシーなアイドル目指して頑張るYO!」

真美「んっふっふー……今に兄ちゃんもコウサツしちゃうんだから!」


ディアボロ「なんというか……うむ、将来に期待しようじゃあないか」

ディアボロ「あと絞め殺すのはやめてもらおう……お前は暗殺向きとは思えないしな」

美希「はいっ!次はミキ!ミキがいくよー!」


美希「星井美希なの!好きな食べ物はおにぎりで、好きなプロデューサーは……」

ディアボロ「やめておけッ!」

美希「何をあせったのかな~?……ふふっ!ミキもトップ目指してがんばるよ!」


ディアボロ「お前は油断も隙もないやつだな……相当の腕を持っているよ……」

ディアボロ「……誇っていいぞ……そこだけはな……全く」



真「よしっ!じゃあ次はボクで!」


真「菊地真ッ!17歳ですッ!」

真「キュートでプリティなカワイイアイドルを目指して!トップをつかみ取りましょう!」


ディアボロ「キュートでプリティ……?」

ディアボロ「あ、あぁ……頑張ってくれ。実現目指してな……いや、マジに」

響「じゃあ、次は自分の番だな!」


響「我那覇響16歳!相棒のハム蔵を始め、家ではイヌ美とへび香とシマ男とオウ助とうさ江と――」

ディアボロ「よし響ッ!もういいぞッ!」

響「え~っ、いいのか……?」

響「そうだな、えっと……みんなで完璧なアイドルを目指してるさー!そこにプロデューサーも加わったら、きっともっと完璧だよね!」


ディアボロ「無論ッ!帝王に負けは無いッ!」



やよい「あっ!じゃあ私行きますねー!」


やよい「うっうー!高槻やよいです!年は……14歳です!」

やよい「えーっと……みなさんと一緒に、楽しくアイドルやれたらいいかなーって、思います!」


ディアボロ「生き抜く力……最も重要な事の一つだ……」

ディアボロ「お前はそれを持っている……誇れ」

千早「やはり皆やるノリなのですね……次は私が」


千早「如月千早、16歳です……。趣味は歌う事、特技は歌う事です」

千早「その……。このグループでやれて、幸せに……思ってます」


ディアボロ「一級品の歌はお前の武器だな」

ディアボロ「それと……まあなんだ……いや、やはり なに もない」



雪歩「えと、じゃあ私行きますね」


雪歩「萩原雪歩17歳ですううう……。」

雪歩「えっと……その……こんな改まって自己紹介なんてすると余計恥かしい……穴ほってうま」

ディアボロ「……お前それは何とかしないといけないんじゃあないか?」

貴音「それでは、わたくしが」

貴音「四条貴音18歳の水がめ座です」

貴音「プロデューサーがやってきてから色々な事がありましたが……ここに立っている今この瞬間があることを、幸せに感じます」

貴音「……必ず、やり遂げてみせましょう」


ディアボロ「……」

ディアボロ「お前とパーティー会場での一件が無ければ、この日はやってこなかった」

ディアボロ「……幸か不幸かな」

貴音「これから、幸にすれば、よいと思います」

ディアボロ「G・E・Rに……立ち向かえれば……な」

春香「あ、最後になっちゃいました?」

春香「私は天海春香、17歳です!趣味はお菓子作りやカラオケですっ!」

春香「なんだかみんなが自己紹介してるのを見てると、少しずつでもみんな前に進めてるんだなあって思いますよね!」

春香「そして……プロデューサーさんも!私たちと一緒にきてくれて本当にありがとうございます!」

春香「IA大賞のノミネート発表まで時間は少ししかないけど、できる事を、全力で!」

春香「プロデューサーさん?よろしくお願いしますね!」


ディアボロ「よろしく」

ディアボロ「お前の言っていた【半分】の意味……まだ分からないが」

ディアボロ「……おもしろい。これもG・E・Rの出題ということだな」

ディアボロ「その真実……必ず解き明かしてみせよう」

・・・



ノミネート発表
---765プロダクション事務所・夜---

高木「うぉっほん!それでは……」


ディアボロ「……」

律子「……」


高木「ディアボロくん、おめでとう!ノミネート書類が届いているよ!」





ディアボロ「……!」


ディアボロ「そ……そうか……わたしたちは、やったのだな」

ディアボロ「フ、フフ……」


律子「プロデューサーさん、おめでとう!」

律子「竜宮はだめだったけど……うん、きっと来年そこに行きますから!」

律子「待っていてください!……そして、きっとIA大賞、とってくださいね!」


ディアボロ「当然だッ!そのためにオレはここにいるんだからなッ……!」

ディアボロ「見ているんだな……高木社長そして律子……ッ」

ディアボロ「街道を……あいつらの栄光のな」














・・・

数週間後

---765プロダクション事務所---

律子「【765の誇る敏腕プロデューサー・ディアボロ氏】……!?」


ドドドドドド
 ドドドドドド


ディアボロ「当然だよなあ~~~~?」



律子「いやいや……」

律子「っていうか、いつの間にこんな取材受けてたんですか……」

律子「ノミネートされたからでしょうけど……」

ディアボロ「記者の方からやって来たぞ……よほどIA大賞ノミネートしたわたしの腕が目立っているらしい」

律子「はぁ、そうなんですか……」
律子(確かに目立ちそうですけどね……ルックス的にも)

ディアボロ「なに、わたしのやり方を教えてやっただけだ」

ディアボロ「【どんな手を使ってでも勝つ】……これだけだ」


律子「えぇー……また妙な事を」

律子「なんだか黒井社長とかが言いだしそうな事だけど……大丈夫なんですか?」


ディアボロ「ちがうな律子……お前何か勘違いをしているんじゃあないのか?」

ディアボロ「このIA大賞への勝負ではこれ以上スタンドを含め汚い手は使わない」

ディアボロ「……それは奴らには似合わないからな。それに」

ディアボロ「この勝負、そのような事をしなくても勝てる……」

ディアボロ「このッ!本気になったディアボロとッ!……奴らがいればな……!」


律子「そ、そうなんですか」
律子(スタンドとかなんとか訳が分からないんですけど……)


ディアボロ「必要なのは臨機応変に行動する能力だ」

ディアボロ「状況を見極め、何をするべきか判断するということ」

ディアボロ「決められた事だけをする兵士のようなアイドルでは不可能だからな。……違うかい?」


律子「うーん……まあ、確かに……」

・・・

数日後

---765プロダクション事務所---


春香「プロデューサーさん!雪まつりですよっ!雪まつり!」


ディアボロ「おおっ!?」

ディアボロ「なんだ、春香……突然」


春香「来週行く、東北エリア一のお祭り【こんこんライブ】ですよ!」

春香「プロデューサーさんっ!もちろん遊べる時間はあるんですよね!?」

真美「んっふっふー……はるるん、それは聞くまでもないんじゃないかい?」

真美「当然!あるに決まってるっしょー!」


ディアボロ「え」

ディアボロ「……なに?」


春香・真美「……えっ?」

真「プロデューサーさん……まさか」

真「まさか、何もないなんて事……」

美希「信じられないの……」

やよい「残酷すぎますっ!」


ディアボロ「な、……なんだなんだお前たちッ!」

ディアボロ「わたしは聞かされてないぞッ……そんな事ッ!」


春香「は~……ですよねえ」

響「まあ正直そうなると思ったさー……」


ディアボロ「雪まつり……【こんこんライブ】は雪まつりの一環だったのかッ!」

ディアボロ「おい……しかし待て」


真「どうかしました……?」


ディアボロ「どれほど遊ぶのかは知らないが、ライブ出演が終わってすぐ帰らないのであれば」

ディアボロ「かなり遅い時間になるぞ……帰って来るのが」

ディアボロ「飛行機のチケットも変えるなら……時間も見直してキャンセルも考えねば」


春香「……え?」

美希「!?」


ディアボロ「おい、なんだ……なぜ驚いている」

ディアボロ「東北エリアからここまで帰って来ると考えたら当然じゃあないのか……?」


春香「いやあ……ダメだって一蹴されるかと思って」

真「えっえっ!?プロデューサー、本当にいいんですか!?」


ディアボロ「いや待て、まだ分からん……十分に熟考してその上で決めないと」

ディアボロ「キャンセル料……お前たちの翌日の仕事……席の空き状況も見なくてはな」

ディアボロ「フム……さて、どうしたものか。まずは仕事の日程から調べよう」


美希「ねえハ、プロデューサー……もしかして」

響(ちょっと乗り気になってる……?)

雪歩(やる気になってる……?)


ディアボロ「……ベネ(良し)」

ディアボロ「全員OFFじゃあないか……翌日」


やよい「大丈夫なんでしょうか」

千早「さあ……でも、乗り気なのは確かなようね」

貴音「時にプロデューサー」


ディアボロ「貴音か、なんだ」

ディアボロ「すまないが調べ物をしているのでな……片手間でよければ続けてくれ」


貴音「はい、それは構いません……。ひとつだけ、どうしても気になる事が」

貴音「この雪まつり……かき氷はあるのでしょうかっ!?」


ディアボロ「かき氷……だと~~~?」

ディアボロ「この真冬に……感心するよ。マジにな」

ディアボロ「いやしかし、どうなんだろうな。実際のところ」

ディアボロ「雪まつりと名を打つほどだからな」

ディアボロ「……今調べたが、氷像なんかも作っているそうじゃあないか」

ディアボロ「だとしたらかき氷くらいはあるのか……?」


貴音「!」

貴音「なんとしてでも行きましょう!!」

ディアボロ「いや、もともと行くのは行くんだが……」

ディアボロ「……っと。ベネ(良し)。ディ・モールトベネ(非常に良しッ)!」

ディアボロ「空き状況も良好だ」


ザワッ
 ザワッ


春香「ぷ、プロデューサーさん……もしかして」

真美「真美たち、ほんとに遊んじゃってもいいの?」


ディアボロ「えっ?……あっ、ああそうだな」

ディアボロ「そうだな……ウム」

ディアボロ「そこはなんとかしてやろう」

ディアボロ「雪まつり……だからな。ああ」


千早「……」

雪歩「……」

響「もしかしてプロデューサー……?」

ディアボロ「なッ!……やめろっ!そんな目でオレを見てるんじゃあないぞッ!」

ディアボロ「違うッ断じて!」


真「プロデューサー……自分も興味あるならそう言えばいいのに」

やよい「うっうー!楽しくなりそうですー!」


ディアボロ「く……くそ」

ディアボロ「まるでオレが行きたくて仕方ないみたいじゃあないか」

ディアボロ「……ネアポリスには滅多に雪が降らないので興味を持っただけだッ……くそ」


春香「なんだあやっぱり行きたいんじゃあないですかー?」

真美「上手い事いってよかったねーはるるん!」


・・・

一週間後
---東北エリア・雪まつりライブ会場---


真美「こ……凍え死ぬよぅ……」

響「じ、自分こんな寒さ初めてさー……」

真「だっ!だだ大丈夫だよきっと……スステージに、た立てば……ああっ寒すぎっ!」

千早「真も耐えきれてないじゃない……っくしゅん!」

千早「ティッシュ……プロデューサー、ティッシュを」

雪歩「控室は暖房あったのに、どうして舞台袖にはないんだろう……うぅ」


ディアボロ「お前たち……耐えるんだ……真の言うようにな」

ディアボロ「ほらティッシュだ」

ディアボロ「舞台に出てしまえば……ライトもあるしダンスもある。体は温まるだろうしな」

ディアボロ「そして……このディアボロも……同じ痛みを味わおうじゃあないか」


美希「え?プロデューサーなにをするの?」

やよい「痛み……ですか?」


ディアボロ「ああそうだ……お前たちが舞台に出たら始めてやる」


春香「プロデューサーさん、何をするつもりなんだろう」

貴音「皆目見当がつきませんが……」

真「ああっ!大変です!もう出番次ですよ!」


ディアボロ「よしッ!……行ってくるがいい!」


『はい!!』



ワァァァァァァァァァァアアアア……!
ピューーーーーーーーーーッ!



ディアボロ「そして……オレも」

ディアボロ「え?共有しようじゃあないか」

ディアボロ「……これは【試練】だ」

ディアボロ「寒さに打ち勝てという【試練】とオレは受け取った」





ヌギヌギ……


春香(!?)

真(!!??)

美希(なんで……)

美希(なんで服を脱いでるの?)


ディアボロ「うぉぉぉぉぉおおおおッ!!!」


響(突然ですがこれは何の雄たけびですか!?)

響(意味が分からないぞ……っ自分!)


真「っ!?」
真(っていうか下に来てる服ッ!)


真美「一番最初に会った時に来てたやつ……!」

雪歩「……ッ!」
雪歩(ダメ、見ちゃ……)
雪歩(見れば見るほどおかしい服に見えてくる)


千早「……っ」
千早(笑ってはいけない)
千早(笑ってはいけないわ。落ちつこう……)


やよい(同じ痛みに留まるどころか、それを遥かに超えて凍えてますっ!)


ディアボロ「……フフ」


真美「」
真美(笑ってる……?)


春香(やっぱりテンションが上がってるんじゃないですか~~~~!)

春香(そんなにナポリって雪降らないんだ……)


貴音(というか本当に寒そうにしていますが大丈夫なのでしょうか)

・・・
---雪まつり・ライブ会場---


『―――続きまして、961プロダクションの……』



ディアボロ「……よし、御苦労だったな」


『はいっ!』


ディアボロ「ステージの方はよく出来ていた」

ディアボロ「さて、ではこれからだが―――」


春香(あの服の事には触れないんだ……)

真(ホントにちょっとテンションが上がっちゃっただけなんだね……)

雪歩(すごく聞きたい)

やよい(あの服を売っているお店があるという事にも驚きですー)

千早(もはや服と言っていいのかも疑問に感じるレベルだったわ)

ディアボロ「ん?おい、聞いているのか?」


春香「あっ、はい!もちろんですとも!」


ディアボロ「……ならいいが」

ディアボロ「さて、着替え終わったらライブ会場裏で再集合だ」

ディアボロ「その後解散して自由時間としよう」


『はいっ!』

・・・・・・

---雪まつり会場---


ディアボロ「な、なんだこれは……あり得ない……ッ!」

ディアボロ「雪像・氷像エリア……?これが」

ディアボロ「雪や氷の塊からこれを削りだしているというのか……信じられない」


真美「あっ!兄ちゃんじゃーん!」

真美「こんなとこで何してんの?」


ディアボロ「ム……真美か」

ディアボロ「それと 千早と春香もいるんだな」


千早「プロデューサー、雪像を見ていたのですか?」

春香「わあー……すごくきれいですねえ」

ディアボロ「ああ……こいつなんか特にすごいぞ」

ディアボロ「見てみろ、これだ」


春香「どれ?どれですかー?」


春香「??……こ、これですか」

千早「……え、ええ。そうですね。とてもリアルな造形で」

千早(カエル……)

春香(カエル……?)

真美「うぇっ!?何これっ!?ヘンテコだねえ」


ディアボロ「!?」


真美「カエル……?こんなのが好きなの?」


ディアボロ「……」

ディアボロ「……そうか」



千早「すごい、雪で作られたステージとかもあるのね」

春香「いろんな雪像と記念撮影……!?」


ディアボロ「フム……悪くない発想だ」


真美「ねえねえ兄ちゃん!せっかくだし写真撮ろうよ!」

春香「あっ!それいいね!」


ディアボロ「貴様ら……このディアボロに写真を撮らせるつもりか……く」

ディアボロ「ググ……て、帝王に……ふさわしい一枚を撮ってやろう」


真美「ねー兄ちゃん?何言ってるのか分からないよ?」

春香「プロデューサーさんも写るんですよ!ほらこっち!」

千早「あ……これ、すべらないよう工夫されてるのね」


ディアボロ「わたしはそういうのは苦手なんだ」

ディアボロ「いいから黙って並ぶんだな……もうすこし右がいい」

真美「ちぇー!つまんないの!」

春香「うーん、仕方ないですねえ」

千早「春香、もう少しこっちへ来た方がいいんじゃないかしら」

春香「あれっ、そうかな」

春香「じゃあ……っと」


春香「わわっ……!」

真美「はるるん!」

千早「春香っ!?」


ドンガラガッシャーン



ディアボロ「……」

ディアボロ「ベネ(良し)」


ディアボロ「悪くない一枚だ……」

・・・

ディアボロ「しかし、あいつらといては体力がいくらあっても足りんな……マジに」

ディアボロ「……ん?」


響「ええっ!?貴音まだ食べるのか!?」

貴音「まだ【世界の味覚】を制覇していませんので」

響「コンプリートするつもりだったの!?」


ディアボロ「貴音と響か……」

ディアボロ「こいつらも毎度頭の痛くなりそうな会話をしている……」


響「あ!プロデューサー!いいところに」


ディアボロ「ム」


響「プロデューサーも何か言ってやってよ~!」


ディアボロ「はぁ?……急にそんなことをいわれても」

響「貴音が屋台の制覇をするつもりなんだってー」

響「なんというか……ねえ?」


ディアボロ「……おい貴音、何を食べるつもりなんだ?え?」

ディアボロ「貴様アイドルだろう……多少は節度を――」


貴音「次は、このナポリのピッツァというものを」


ディアボロ「ベネ(良し)」

ディアボロ「誇れ貴音……いい目をしている……」

ディアボロ「そこの屋台か……この祭りに屋台がある事も驚きだがね」

ディアボロ「オレはマルガリータがいい」


響「なんか自然に混ざってる!?」

貴音「響、日本だけでなく世界へ視野を広げる事は大事です」

貴音「食を通じて世界を知るのです」


響「それっぽい事言ってるけど、別に雪まつりで知らなくてもいいと思うぞ……」

響「っていうか、自分雪まつりでこんな屋台が並ぶとは思わなかったぞ」


貴音「祭り……ですから」

貴音「祭り、……⇒屋台?」


響「うん、そうだね貴音……祭りは屋台が出るものだね」

響「……あれっ、そういえばプロデューサーどこ行ったんだ?」





ディアボロ「さすがだな……ネアポリスのマルガリータそのままだ」

ディアボロ「ほら……見ろ。モッツァレラチーズもふんだんに使ってあるぞ」


響「もう買ってきてる!?」

ディアボロ「お前らにも食わせてやろう……これがネアポリスのピッツァだッ!」

ディアボロ「熱いので気をつけるんだな……」


貴音「なんと……わざわざわたくし達の分まで!?」

貴音「感謝いたします……感謝いたします……いただきます、はふはふ」


響「あ、ありがとう。いただきます」
響(自分頼んでないんだけど……でも美味しそうだな)

響「はふはふ……」

響「……」



響「これはッ……!そんな……まさかっ!あり得ないッ!」


ディアボロ「ウム……美味いがこれはトマトソースが少し強すg―――」


響「ゥンまああ~~~~~いっ!!!」


ディアボロ「!?」ビクッ

貴音「プロデューサー、御馳走様でした」

貴音「真……美味でした」


ディアボロ「お、おう……」

ディアボロ「いや、しかし待て……何か言っているぞ、響のやつ」


響「これはッ!この味はっ!」

響「サッパリとしたチーズにトマトのジューシー部分が絡みつくうまさだぞ!!」

響「チーズがトマトを!トマトがチーズを引き立てるッ!」


ディアボロ「……あ、ああそうだな」


((こいつ、グルメリポーターもできるんじゃあないのか?))

((……延々としゃべり続けているぞ、響))

響「例えるならサイモンとガーファンクルのデュエット!」

響「ウッチャンに対する―――」


ディアボロ「分かった!もういいぞ響ッ!」

ディアボロ「美味さは十分に分かる!というかオレたちも食ったんだから分かるに決まっている!」



響「いや~参ったぞ……まさかこんな所であんな味に出会うとは」

貴音「いつも食べているピザとは違い、シンプルでありながら飽きないものでしたね」


ディアボロ「そうか……気に入ったならいいが」

ディアボロ「このマルガリータは本場と比べると少し味が強すぎるな……」


響「え?そうなのか?」

響「美味しかったのには変わりないけど、普段のピザと比べたらだいぶ味の濃さは控えめだったぞ」


貴音「ええ……上品に感じましたが」

ディアボロ「フフ……まだ甘いな」

ディアボロ「本場ネアポリスのマルガリータは更に美味いぞ」

ディアボロ「トマトソースが強すぎる主張をしないので、モッツァレラと生地の素材そのものの味がより際立つ」

ディアボロ「【生地】【トマト】【チーズ】この三要素がバランスよく引き立て合うので、ここで食べた物とはまるで違う風味を醸し出すのだ」

ディアボロ「さらに、そこに新鮮なイタリア産バジリコの爽やかな風味が絡み合い、最高のハーモニーを奏でるというわけだな」


響「お、おお……さすが本場って感じだな……!」

貴音「聞いているだけで食べたくなります……」


ディアボロ「フフ……そうだろうそうだろう」

ディアボロ「ネアポリスにはまだインサラータ・カプレーセとか色々な料理があるからな」

ディアボロ「フム、興味があるならネアポリスに足を運んでみれば……」


ディアボロ「……ッ」

ディアボロ「……いいと、思う……ぞ」

響「あ~~~、なんだか本当に興味が湧いてきちゃったぞ……」

貴音「素晴らしいプレゼンでした……またお腹が減ってまいりました……」


ディアボロ「……」



((オレは何を言っているんだ……))

((こいつ達にネアポリスへ行ってみろと……?))

((どの口が言う……荒廃した街へ……オレがそうさせた))

・・・

・・・

---雪まつり会場・夜---

ディアボロ「……」

ディアボロ「もうこんなに暗くなっているのか」


((貴音はもう少しだけ屋台を回ると言っていた))

((恐らく響もそれに着いていくのだろうが))


ディアボロ「……さて、あと少ししたら皆を集めだすか」


トォルルルルルン
 トォルルルルルン


ディアボロ「っと」

ディアボロ「電話か……美希?」


『ハニー!いまどこにいるの!?』


ディアボロ「今か……今はライブエリアの近くだが」

『今すぐ雪像エリアに来てなの!すっごいよ!』


ディアボロ「いや……昼間行ったからもう知ってるぞ」


『えー……でも皆集まってるよ?ライトアップも綺麗なの』


ディアボロ「全員集まっているのか……」

ディアボロ「……ふむ、丁度いいな」

ディアボロ「よし、分かった。今から行こう。待っていろ」


『早く来てなのー!じゃあねー!』


ディアボロ「はあ、振り回されてばかりだよ……マジにな」

ディアボロ「……」

ディアボロ「というか今、ナチュラルにハニーって言わなかったか……あいつ」


・・・

---雪像・氷像エリア---


美希「おーい!ハニー!こっちだよー!」


ディアボロ「おい……!こんな公衆の面前で……貴様……ッ!」

ディアボロ「ええいッ!手を振るなッ!……走っていくか……仕方ない」



美希「思ってたより早かったの!」

美希「ハ、プロデューサー大丈夫?すごい走ってたけど」


ディアボロ「ああ……美希のおかげでな」

ディアボロ「……それで?他のメンバーは?」


美希「……ごめんなさいなの。でも」

美希「丁度ロマンチックなところなんだから、もうちょっとミキにキョーミ持って欲しいな」


ディアボロ「……は?」

ディアボロ「!」

ディアボロ「おいバカ、やめろ……ッ!腕を組もうなんて」

ディアボロ「ファンがいたらどうする……というか、ファンじゃなくともマズいだろうが……ッ!見られるのは」

ディアボロ「離せ……」


美希「ちぇー!今日くらいいいムードになればなーって思ったのに……」

美希「皆はあっちだよ!ほら!あのライトアップされてる氷像がすごいの!」


ディアボロ「そうか……」

ディアボロ「ん」


『プロデューサーさーん!こっちこっち!』


ディアボロ「あっちか」

((……))

((……ん))

((これは……!))





ディアボロ「……なんだ、これは」


真「綺麗、ですねえ……これ」

雪歩「私も、最初に見た時は何も言えませんでした」

やよい「ほんとに……すごいです」

やよい「うまく言えませんけど、とってもキレイですー……!」


ディアボロ「氷でできた……船、か」

ディアボロ「驚いた……マジに。この船……!」

春香「すごいですよねえ……これ。てっぺんの旗?かな。あの旗も」

春香「風にはためいてるのがすごく丁寧に……」

千早「黄色のライトに照らされているのだけど、氷の濡れている表面がそれを輝かせているわ」

千早「まるで……黄金みたいに」


ディアボロ「風を……感じるようだ」

ディアボロ「言ってしまえば氷から感じている冷気なのだろうが……」

ディアボロ「まるで、この船の周りに吹いている風を受けているような」

ディアボロ「船が、その風を感じているような」

響「もう夜で、周りが暗くなってるから余計に引き立って見えるよね!」

響「それに、なんだか不思議に魅入っちゃうな……」

貴音「はい……何か勇気のようなものを感じます」

貴音「ただ単に、わたくしがこの船をそう受け取ったというだけなのでしょうが」


ディアボロ「いや……この船からはそれを感じる」

ディアボロ「これを掘りだした者は何を思いこの形にしたのだろうか」

ディアボロ「時折考えるのだが……彫刻家という者は、自分の魂を目に見える形にしているのではないかとな」


貴音「魂を……」


ディアボロ「そうだ……まるでスタンドだと思わないか……これを」

ディアボロ「いや……まさにそうだろう……時を超えたスタンドだ……」

春香「……あれっ?」

春香「ところで千早ちゃん、これってどう読むのかな?題名」


千早「どれ?……これ?」

千早「えっと……んん……」

千早「見た事の無い単語だわ。英語じゃないのかしら」


真美「はいはいっ!真美参上!」

真美「英語習いたての真美ならヤキ飯前っしょ!」


ディアボロ「ヤキ飯前……全く意味が分からん……」


真美「さて、どれどれ……?」

真美「……んん?」

真美「……ヴぇ、ヴぇんとぉ……あう?」

真美「あーうん、分かんない!」


春香「だよねー」

千早(それよりヤキ飯前について知りたいわ)


ディアボロ「しかし、フム、題名か?……見てみよう」


春香「英語じゃないんだ……何語だろう?」


ディアボロ「これは……」

ディアボロ「……!」


ディアボロ「……なるほど」

ディアボロ「そうか、そういう題名か……納得というやつだな」


春香「えっ!?プロデューサーさん、分かったんですか!?」

千早「これはどういう意味なのでしょうか」

ディアボロ「これはな……」




ディアボロ「【黄金の風】……だそうだ」


響「うん、なるほど……【黄金の風】かあ」

春香「へえ~、そういう意味なのかあ」

真「さすがプロデューサー!何でも知ってるんですね!」


ディアボロ「フン……当然だな?」


ディアボロ「あ、そうだ、お前たち」


美希「なになに?」

貴音「何でしょう?」


ディアボロ「昼間、この先でこれと同じような氷像を見たのだが……中々良い造形をしていた」

ディアボロ「もう帰る時間だが、最後にそれを見て行こうじゃあないか」


春香「わああっあ!ダメですよ!最後にあんなの!」

千早「この船でキレイに終われるところが……!」

真美「真美パスで」




ディアボロ「……」

ディアボロ「……そうか、残念だ」

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・・・
数週間後
---ライブ会場---


ザワザワ
 ザワザワ


ディアボロ「わたしが再びお前たちのプロデューサーになってから一ヶ月が過ぎたわけだが……」

ディアボロ「どうだ……?わたしは、それなりの決意をもってプロデュースを再開した」

ディアボロ「お前たちの思うトップアイドルへ近づいているか……?」


「プロデューサー、それは聞くまでもないかと」
「真美たち、色んな事やってきたもんね!」
「その……ここ最近でも、失敗、たくさんしましたけど」
「……自分たち、その度にプロデューサーから叱られたけど」
「正直、初めてプロデューサーに会った春頃はただ失敗しないためにステージに立ってました」


ディアボロ「ああ……」

「……でも、この一ヶ月は、ただ前に進むのが私たちでした」
「ボク、考えたんです……きっとその失敗が、ボクたちを強くしてくれたんだって」
「今日、ここに来るまで……無駄だった事なんて何もなかったの!」
「プロデューサーさん!私たち、今ならきっとやれる!」
「どんなことも!」


ディアボロ「……そうか」

ディアボロ「今日は本番だ……わたしが今から言える事など何も無いが」

ディアボロ「ただ……これだけは言わせろ」

ディアボロ「この先、絶対にやめるなよ……決めた生き方を……」



『はい!』



ウォーーーー
 ワァーーー


キャアーーーー
 ピューーー

・・・
・・



ディアボロ「なあ、見ているか……ゴールド・E・レクイエム」

ディアボロ「お前がわたしに何を見せるつもりなのか」

ディアボロ「何が目的なのか……それは分からないが」


ディアボロ「十分、分かったよ……これ以上ないほどにな」

ディアボロ「圧倒的な白だ……正しく生きるという白の中に、あいつらはいる」

ディアボロ「絆だとか……信じるだとか……わたしの生きてきた世界ではクソの役にも立たないようなものが」

ディアボロ「あいつらの真実であり全てだとな」

ディアボロ「そして、……パッショーネでわたしは壊して来たのだとな……これを」

ディアボロ「表面的に……こいつらの輪には……入っているのかもしれない」

ディアボロ「だが、ここにいるべき人間ではない」

ディアボロ「邪悪……フフ、今さらになってか?ええ?」

ディアボロ「……大丈夫だ」


ディアボロ「やる事をやったら去るさ……GERの真意を掴もうと、掴めなくとも」


ディアボロ「IA大賞を必ず勝ち取る……ッ!それが最後だ……ッ!」

・・・・・

---765プロダクション事務所外・夜---

((こいつ達の輪になじめばなじむほど……痛感する))

((罪悪感だとか……そんなちっぽけでアホらしい感情ではなく))

((ただ単純に……生きる場所が違う))


ディアボロ「っ!」


((気付けば……そんな事ばかりを考えている))


ディアボロ「なんだ……同じ事を何度も何度も……馬鹿か、わたしは……」

ディアボロ「結論はでているはずだ……」


春香「プロデューサーさんっ!」


ディアボロ「……春香か」

ディアボロ「こういう時によく会うな……お前とは」

ディアボロ「……何の用だ?」


春香「いやっ……はぁっ……はぁっ……つ、疲れたあ~~~」

春香「プロデューサーさん追いかけてきたんですけど……はぁっ……」


ディアボロ「……はあ」

ディアボロ「何やってんだお前は……」


春香「あれっ!?……はぁっ……ふぅ……」

春香「そ、そんな感じですか!?」


ディアボロ「そんな感じもなにも……意味が分からんぞ」

ディアボロ「IA大賞の発表も近い……」

ディアボロ「なかなか落ちつかないのは分かるが……これは」


春香「あぁっちょっとプロデューサーさん!ちょっと待って!引かないでください!」

春香「ち、違うんです……どうしても話しておかないといけない事があって……!」


ディアボロ「……?」



---公園---


ディアボロ「それで?」


春香「あっ、はい!それはですね……」
春香(公園で……ベ、ベンチで二人っきり)

春香「もう、IA大賞が目前だから……」

春香「いま、今日、聞かなきゃって」


ディアボロ「……」

ディアボロ「【半分】……のことか?」


春香「そ、そうです!それ……!」

ディアボロ「そうか……春香 あいにくだが」

ディアボロ「分かってないんだ……何の事か。【半分】……いまだに」


春香「……そっか……」


ディアボロ「……春香 よければ」

ディアボロ「教えてくれないか……その……【半分】」

ディアボロ「もう、IA大賞だ それが終われば、……」


春香「え?」


ディアボロ「……」

ディアボロ「節目 だからな……知っておきたい」

春香「そうですねえ……うん」

春香「私たちが……プロデューサーさんの【半分】になれてるかどうかを聞きたかったんですけど……」

春香「そもそも、【半分】がなんのことなのか……」

春香「その、実は、私も分かってないのかも」


ディアボロ「お、おい……なんだそれは」

ディアボロ「マジに……訳が分からないぞ……自分から振っておいて」


春香「あはは……ごめんなさい」

春香「そう、だから……聞きに来たんです。分かってるかもと思って」

春香「私、人づてに聞いただけで、理解したつもりでしたけど……」

春香「勝手にそう思ってるだけかもしれませんし……ね」


ディアボロ「……はあ、参ったよ……マジにな」

ディアボロ「そんなモヤモヤとした物に頭を悩ませていたわけだ……わたしは」

ディアボロ「春香も」


春香「みたいですね……ごめんなさい」


ディアボロ「……ふぅ。ならばお互い気にする事はないだろう……」

ディアボロ「もう、IA大賞発表は目の前だ……それまで」

ディアボロ「それまで、なりふり構ってはいられない。そうだろう?」


春香「そう、ですよね。……はい!」


ディアボロ「あぁ、それがいい……」

ディアボロ「もう帰ろう……風邪をひくなよ」


春香「そうですね。……ごめんなさい、時間使っちゃって」


ディアボロ「いや、いい」

ディアボロ「悩み事が、お互い一つ消えたわけだからな……違うかい?」

春香「うん、そうですよね」

春香「それじゃ、私帰りますね!また明日!」


ディアボロ「ああ……じゃあな」




((前みたいに、失敗だけはしないようとにかく走れとは考えないが……))

((しかし、こればかりは考える必要がないだろう……))

((全く……ゴールド・E・レクイエムは何を考えて……………))

((……))

((……?))


ディアボロ「お、おい待て……ッ!春香ッ……!」


春香「はい?」


ディアボロ「待て……何かひっかかっているぞ……オレは……おかしい」

ディアボロ「何か大事な事を……」



((ゴールド・E・レクイエム……))

((そうだ……!ここはレクイエムの世界だ……ッ!))

((忘れていた訳ではないが……ッ!そうかッ!))



ディアボロ「撤回だ……!」

ディアボロ「忘れる必要はないぞ……ッ!春香、これはッ!」

ディアボロ「そうだ、むしろ……!」

ディアボロ「むしろオレは忘れてはいけないッ!……IA大賞……頂点でッ」

支援絵どうぞ~
http://i.imgur.com/ES1R21O.jpg

春香「ど、どうしたんですかプロデューサーさん……!」

春香「もしかして、【半分】に思い当たりでも?」


ディアボロ「いや……思い当たることは無い 依然……」

ディアボロ「しかし、IA大賞……頂点に登りつめたその時、見える……見えるのかもしれない」

ディアボロ「春香ッ!お前の疑問……【半分】になれているかどうか……」

ディアボロ「もうすぐ、分かるかもしれないぞッ!」


春香「ほ、本当ですかっ!?」

春香「IA大賞を獲ったら……か。……よく分りませんけど、プロデューサーさんの言う事ですから何かあるんですよね」

春香「よし、信じましょう……!」


ディアボロ「ああ……」


((レクイエムの世界……意味の無い事など、ない))

((今日ここに来るまで……何か意味無き事などあっただろうか))

((この春香の疑問にも、意味はあるはず……それをオレは))

((必ず……知ることになるッ!))

((……もしかして、それが……ゴールド・E・レクイエムの見せようとしている何かなのか……?))

((分からない))


ディアボロ「しかし、もはやここで止まる事は許されない……」

ディアボロ「オレだけではない、……このIA大賞に全てをかけているのは」

ディアボロ「春香……お前からも、見えるのかもしれない」


春香「へっ?私にも……って?」

ディアボロ「必ず勝ち取ろう……その時見えた答えを照らし合わせば……」

ディアボロ「……」


((何を言っているんだオレは……答え合わせをしようだと?))

((妄想と思われても仕方ない……バカな))

((……))



春香「……はい、分かりました!」

春香「答え合わせ……しましょうね!」


ディアボロ「!」


春香「約束、です!」


ディアボロ「ああ……ッ!」

>>691
ディ・モールト
ディ・モールト(非常に 非常に)

良いぞッ!

すごい……鳥肌立っちゃった

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■





((そして時は動き出す IA大賞発表))





---アイドルアカデミー大賞発表会場---

『会場へお越しの皆様へご連絡申し上げます』


『授賞発表は15分後より執り行います……』


『マスコミ各社の取材をされる方は、授賞発表後に―――』



ディアボロ「ついに……きたか」


千早「私たちのやって来た事が……ついに、結果になって出る」

真美「真美たち……ちゃんとやってきたよね?こわいけど……でも、全部、信じてるよ」

真「あぁ……今までで一番大きな舞台だね……雪歩」

雪歩「真ちゃん……そうだね……私、もう涙が」

やよい「ああっ雪歩さん!泣かないで下さい……なんだか、私も」

美希「二人とも、泣くのは早いの!ミキは、どういう結果でもきっと大丈夫って思うな!」

響「自分、みんながやって来た事分かってるから……この一年は……この一年だけは嘘じゃないから」

貴音「皆……胸を張りましょう。この大舞台に、わたくし達は立っているのです」

貴音「それは決して嘘ではない……画面を通して見ているのではない……わたくし達自身の、舞台なのです」

貴音「そして……プロデューサー」


ディアボロ「どうした?」


貴音「本当に……ありがとうございました」

貴音「ここまで、連れてきていただき」


ディアボロ「……当然だ」

ディアボロ「今日くらいは言ってやるさ……わたしの組んだスケジュールによく耐えてきた」

ディアボロ「……お前たちは間違いなくやり抜いた」

春香「……はい!」

春香「プロデューサーさん……私いま、緊張……すごくしてますけど」

春香「きっと……分かりますよね。その時に」

春香「答え合わせ……忘れないでくださいね?」





ディアボロ「……ああ」

ディアボロ「行って来い……お前たちの、お前たちのための最高の舞台だ」





『はいッ!!!』






『それでは、ノミネートされた各グループの皆さんから、それぞれ意気込みを聞いていきましょう!』
『まずは、961プロダクションの―――』

ディアボロ「……」


((外の空気を、吸おう))





---アイドルアカデミー大賞発表会場・外---


((ここは、静かだな……))

((会場内の緊張感も、騒がしさも……何も無い……))


ディアボロ「…………」





少年「こんにちは」


ディアボロ「……?」

少年「良い風が、吹きますね」


ディアボロ「……!」

ディアボロ「……フフ……そうだな」


少年「いいんですか?会場にいなくて……」

少年「プロデューサーさん……でしょう?」


ディアボロ「フフ……やめてくれ。わたしには似合わないさ」

ディアボロ「それに、これは彼女たちの舞台だ……しかし、マジに」

ディアボロ「なあ……随分久しぶりじゃあないか」

ディアボロ「だが……しかし。……まずはこう言うべきかな」







ディアボロ「【はじめまして】」

少年「ずっと……見てきました」

少年「はやく、こうして会いたかったけど……」

少年「今日この時になるまでは、会ってしまえば全てを壊してしまっただろうから」

少年「どうですか……?今なら、きっと」

少年「……ようやく、……本当に長かった」




ドッピオ「ボス……!」


ディアボロ「……ドッピオ、わたしの、ドッピオ……」

ディアボロ「お前……大丈夫なのか」

ドッピオ「大丈夫、ボス……分かってます」

ドッピオ「ぼくは、会えただけで……それだけでいいんです」

ドッピオ「それだけが……目的なんですよ」

ドッピオ「電話も……なにもなく。顔を合わせて……それだけで十分」

ドッピオ「っていうか、これが限界……これ以上はもう無理みたいだから」


ディアボロ「!」

ディアボロ「お前……!体が……!」


ドッピオ「元々もういないはずですから。……くそ、もう時間なのか」

ドッピオ「ほんのちょっぴり……もらえた時間なんです」

ドッピオ「できる事なら、またボスの下で働きたいけど……」

ドッピオ「それは許されない事だ」

ドッピオ「ふふ……でも、そうだ」

ドッピオ「あの時までは……一番近い所に、ボスはいたんですよね……」



ディアボロ「そうだ……お前は……最も近い場所に」

ディアボロ「ああっ……!ドッピオ……!」

ディアボロ「消えるのかッ!?……待て……!」

ディアボロ「ドッピオ……!話はッ……それだけなのか!?」

ディアボロ「もう、終わるのかッ……!?」



ドッピオ「……最後に、……ボス」

ドッピオ「ボス……ぼくはもうボスの【半分】にはなれませんけど……」

ドッピオ「空っぽのままじゃ……スースーするでしょう?」

ドッピオ「はやく見つけてください……」


ドッピオ「いや、もしかするともう……」

ディアボロ「ドッピオ……!ドッピオ……!」


ドッピオ「……」



ディアボロ「お前は……最高の……ッ!」

ディアボロ「この上無い……ッ!ディアボロの……ッ!部下であったッ!」

ディアボロ「一生忘れんぞッ……!この先、何があろうとも……ヴィネガー・ドッピオという魂をッ!」


ドッピオ「……満足です……ボス」

ドッピオ「さて……僕は、どこへ……行くん……だろうな……」

ドッピオ「ありがとう……ありがとうボス……」


・・・


ディアボロ「……」

ディアボロ「……」

ディアボロ「行った……か……」


ディアボロ「【理解した】……ようやく……マジにな……呆れるよ」

ディアボロ「【半分】の意味……今になって。ドッピオ、そう言う事か……ええ?」


ディアボロ「なあ、ドッピオ……お前はどう思っていたんだ……」

ディアボロ「彼女たちが……オレの【半分】になるか?」

ディアボロ「こんな……こんなに、生きる場所も、魂の色も……なにもかもが違うのに」


ディアボロ「フフ……そうか、【何も無い】そういう意味か」

ディアボロ「そうだろうさ……ドッピオのいた場所には……何も無い」

ディアボロ「そこに……何かが入る事を……何かを入れる事を……」

ディアボロ「恐れていた……」


ディアボロ「そうか……ええ?」

ディアボロ「やっと、オレは真実に辿り着いた……そういうのか?」

ディアボロ「なんだ……ゴールド・E・レクイエム」

ディアボロ「随分あっけない……真実じゃあないか……これは」




ディアボロ「……ん?」

ディアボロ「何か聞こえる。会場からか……これは?」



ディアボロ「……!!」

■■■■■■
START始まる、今日のSTAGE……♪
CHECK マイク、メイク、衣装……♪
■■■■■■




ディアボロ「!?」

ディアボロ「こ……ッ!これはッ!」

ディアボロ「この曲は……!」

ディアボロ「この曲は、あいつらの……」

ディアボロ「あ……あ……」

ディアボロ「【この曲が流れるという事はッ!!!】」

■■■■■■
IT's SHOW TIME TRY CHALLENGE……♪
 STARDOM光り光るSPOT LIGHT……♪
■■■■■■




ディアボロ「……やったのか、あいつらッ!!??」

ディアボロ「やった……やったぞ……ッ!」

ディアボロ「……IA大賞を……ッ!獲得した者たちは舞台での記念ライブ……ッ!!」

ディアボロ「……やった……やった!!!」

■■■■■■
眩しい輝きまっすぐDEBUT……♪
■■■■■■




ディアボロ「……ははははははッ!!」

ディアボロ「見たか……!?おい、今までにあいつらをバカにした奴らは……これを見たか!?」

ディアボロ「これがッ!一年前、何もかもてんでダメだったアイドルだ……ッ!勝ったッ!」

ディアボロ「ええおい!……ははははははッ!!!……やったぞ!」

ディアボロ「報われた……!」


((G・E・R……!お前は……知っているか!?))

((壁にぶつかったあいつらをッ!))

((その度に乗り越えたあいつらをッ!))

((これが白の……力))

■■■■■■
夢は叶うもの……♪
 私、信じてる……♪
■■■■■■




ディアボロ「……はっ!?」

ディアボロ「……そうだ……ッ!」

ディアボロ「そして、まだあるぞ……運命は、このディアボロを選んだ……ッ!」

ディアボロ「まだ、真実には奥がある……ッ!」

ディアボロ「オレだけしか辿り着いていない……まだ真実は掴んでいない」



ディアボロ「春香の、春香と……約束をした!」

ディアボロ「忘れていたわけではないが、まさかここでやってくるとは……!」

ディアボロ「【答え合わせ】だッ!【答え合わせ】をする、その瞬間にッ!」

ディアボロ「辿り着く……ッ!それまではまだ道中なんだッ!!」

■■■■■■
さあ位置についてLET'S GO……♪
■■■■■■





ディアボロ「フフ……フフフ……遂に!」

ディアボロ「ええおい、泣いているんじゃあないのか……あいつら。嬉しすぎて……」

ディアボロ「……はははッ!……だが、この舞台だ。それは許されるだろうが……」

ディアボロ「顔を……見てやろうじゃあないか…………どれ」

ディアボロ「会場に、戻ろう……!」

■■■■■■
ARE YOU READY……♪
 I'm LADY……♪
■■■■■■




ブーーー………--ン

ブーーーーーー…ーーン

ブロロンブロロン
 ブォーーー



ディアボロ「ん?」



ブロロンブロロン
 ブォーーー



ディアボロ「なんだ?……この音は?」

ブロロンブロロン
 ブォーーー



「お、おいっ……!?なんだあの車……!?」

「暴走だああぁぁぁーーーーーーッ!!!」

「逃げろおおおぉぉぉーーーッ!!ひかれるぞッ!!!」



ブォーーーーー
 ブォーーー



ディアボロ「……!?」

ディアボロ「!?……!?」


((なんだあの車……!?))

((おい、まずいぞ……こっちへ向かって……ッ!))


ディアボロ「……ッ!!!」

■■■■■■
歌を歌おう……♪
 ひとつひとつ……♪
■■■■■■




ディアボロ「うおおおおおおぉぉぉぉッ!!!」バッ



ブォーーー
 ブォーーーー



ディアボロ「……はぁっ……はぁっ……避けた……が」

ディアボロ「なんだあの車は……」

ディアボロ「!……いや」

ディアボロ「あれは……!Uターンして、戻って来る……!」

ディアボロ「まさか……そんなバカなッ……!」



ディアボロ「オレが……狙われている……ッ!?」

すいません 2日前から初めてそろそろ限界です
昨日もあまり寝てなかったので一回寝る事を許してください
すいません
とりあえず今起きてる内にある程度きりのいい所までは行きます

■■■■■■
笑顔と涙は……♪
 夢になるENTERTAINMENT……♪
■■■■■■




ディアボロ「なぜ……ッ!なぜオレなんだ……ッ!?」

ディアボロ「なぜ……!何をした……!オレが……ッ!」

ディアボロ「クソがッ……!どうしてこのタイミングなんだ!!」



暴走男「……スカッ……とおおお~~~~~ッ!」


ディアボロ「……!?」



暴走男「……してたのによおおお~~~~~~ッ!!この野郎避けやがったぜ~~~~~ッ!?」


ディアボロ「……こいつは!」

■■■■■■
ARE YOU READY……♪
 I'm LADY……♪
■■■■■■




ディアボロ「見覚えがある……この目……ッ!」

ディアボロ「オレの……オレが……金の為に作らせてばら撒いた……!」

ディアボロ「アッパー系の麻薬……ジャンキーか……!」

ディアボロ「クソックソッ……なぜ今……なぜオレが……!!」



暴走男「オラァッ!!!行くぜブンブンッ!」


ディアボロ「ハァッ……ハァッ……おちつけ……」

ディアボロ「落ちつけば……可能だ……避け続ける事は」

ディアボロ「逃げる素振りで……ぶつかる直前に、横へ跳べばいい……ッ!」

ディアボロ「落ちつけ……この程度の修羅場……幾度となく超えてきたッ!!」

暴走男「ブゥゥゥゥーーーーーーン」

ブゥーーーン
 ブゥーーーン


ディアボロ「はぁっ……!はぁっ……!」

ディアボロ「まだだ……まだ、引きつけなくては……」

ディアボロ「はぁっ……!……っ!」

ディアボロ「うおおおおおおおおおおおっ!!今だ!跳べッ!!!」

■■■■■■
始めよう……♪
 やればできる……♪
■■■■■■




ディアボロ「……はぁっ……はぁっ……」

ディアボロ「冗談じゃあ……ないぞ……まさか」



暴走男「フゥ~~~~~」


ディアボロ「オレが跳ぶ直前に【止まっていた】……こいつ……やる……!」

((そして……まずい……今、アクセルを……ッ!))

ディアボロ「よ、避けられない……ッ!くそ!」



暴走男「死ねや」


ブゥゥーーーン

■■■■■■
きっと……♪
  絶対……♪
■■■■■■




ディアボロ「……ゴフっ……ク、クァ……」

ディアボロ「辛うじて……急所は……しかし」

ディアボロ「……う、動けない……ッ」

ディアボロ「……!」

ディアボロ「勘弁……してくれ……マジに」


ブゥーーーン
ブロロンブロロンブォーーー


暴走男「せ~~んろ~~はつ~~づく~~よ~~」

暴走男「ど~~こま~~で~~も~~」

ディアボロ「あ……あ……」

((まだ……死に、たくない))

((死ねない……オレは死ねない……まだ))

((……ッ!!!!))


ブロロンブロロン
 ブォーーー









■■■■■■
私 No.1……♪
■■■■■■

ここで止めときます
すいません本当すいませんもう無理です
起きたら再開します

・・・


『ありがとうございました!!』





「765エンジェル最高~~~~ッ!!」
「IA大賞おめでと~~~~~~ッ!!」
「うおおおお~~~~~~~~~ッ!!」



ピューーーー
 キャアアアアア
  ワァァーーーー





MC『……これにてIA大賞発表会を終了します』

MC『本日はお越しいただいただき、誠にありがとうございました』

MC『気をつけてお帰りになられますよう……』

MC『取材をされるマスコミ各社は、専用のブロックを用意しておりますのでそちらで……』

律子「みんなお疲れ様……!最高のステージだったわ!」

律子「これから受賞インタビューと取材があるんだけど……」

律子「プロデューサーは一体どこに……?」

律子「まったく!こんな時にどこへ行っているのかしら?」


春香「……」

春香「……答え合わせを」


律子「?」

春香「どこへ……」


真美「はるるん?なんだか様子が変だよ?」

響「まだ実感が湧いてないんじゃないの?……えへへ、何をかくそう実は自分も―――」


春香「みんな、ごめんっ!プロデューサーさん探してくる!すぐ戻って来るから!」

春香「本当すぐ戻って来るから!」ダッ

千早「えっ!?春香!?ちょっと……!」

貴音「春香……」
貴音(きっと、プロデューサーと何か約束をしているのですね)


・・・
・・


MC『えっ!?……何だそれは!?』

MC『……申し訳ありませんッ会場にお越しの全ての皆さま!ご連絡いたします!』

MC『ただいま、会場前広場にて一台の乗用車が暴走しており、多数の負傷者を出しているという連絡が入りました!』

MC『警察および病院には既に出動しているという事ですが、事態が収まるまでは決して会場を出ないようお願いします……!』

MC『繰り返します!ただいま……』





千早「……ッ!!」

貴音「なん、と……!?」

「……!」



千早「春香がッ!」

貴音「参りましょう!」ダッ



律子「ま、待ちなさい二人とも!」

律子「決して出てはいけないわ……二人にもしもの事があったら」

律子「春香は私が追うから!絶対ここにいて!!」ダッ




春香「はぁっ……はぁっ……」

春香「プロデューサーさん……どこだろう……」

春香「すぐに……会わなきゃ……っ!」

春香「……会場にはいないのかな」

春香「外?」

春香「よし、こっちか」

春香「……わあ、すごい、人がたくさん」

春香「……」
春香(なんだか雰囲気が……?)

春香(何かあったのかな?)



春香「あれ?……あれって」

春香「…………」

春香「……!!!」


・・・
・・

((まさか……そうか))

((これが……オチだと……いうのか))

((こんな……事、が……))


((ゴールド……エクスペリエンス、レクイエム……))

((【真実には…………到達、できない】))

((こんな……時に……こんな、こんな……))


ディアボロ「ゴフッ」

ディアボロ「……ぁ、ハッ」


春香「プロデューサーさん……!……ゔっ……ひぐっ……ねぇ……!」

春香「血がっ……!ゔっ……んっ……!はぁっ……はぁっ……!」

春香「死な゙ないで!ねぇ……プロデューサーさん……!!!」

春香「どうじで……こんな……ぐっ……うっ……!!!」



((春香……お前、いつの間にここへ))

((春香……お前、いつの間にここへ))


((受賞後の取材は……?お前……すっぽかしたんじゃあないだろうな))


((それにしても……))


((そんな顔……おい、待て……アイドルには……ふさわしく無いんじゃあないか))


ディアボロ「……ぁ……ガフッ!……ゴホッ……ぅ」



春香「ねぇ……プロデュ、サーさん!……く……う」

春香「死なな……い、で……ふっ……うぅっ」

春香「死な゙ないで……よぉ……っ!」



((ああ……春香……お前の今の顔、すごいことになってるぞ))

((そしてあんまりえずくな……オレの顔に吐かれたらたまったもんじゃあない))

((……悪かったよ。オレも必死にやったんだ))

((これがオレの運命だっただけだ))

((ほら、人が増えだしたぞ……こんな所撮られたら……))



暴走男「へ、へへぁ……!ヘハアァーーーーッ!やったぜ。」

暴走男「スッキリしたぜええええ…………ん?」


ドンッ


暴走男「痛えッ……なんだ……?」

暴走男「あン?現行犯?逮捕?……んなこたどーーーーーだっていいだろがよォーーーーッ!」

暴走男「……?」

暴走男「……」

暴走男「……!おい、あれって……」

暴走男「手錠……!?」

暴走男「ふざけてんじゃあねええええぞおおおおてめえええっ!!」

暴走男「どけっ!どけっ!……うおおおおっ!」

ドンッ

暴走男「……ゥッ!!」

暴走男「なんだよなんだよ……いてえ……!」

暴走男「クソがぁ……」

暴走男「オレっちが……悪いのかよ……?」

暴走男「クソが……うっ」

暴走男「………………あぁ」

・・・

((泣くな春香……))

((お前の涙は……ここで流すようなもんじゃあないはずだ))

((え?くそ……なぜ……こっちへ来ちまったんだ))

((どうだろうかな……あと、あとどれくらい、喋れるか……?))

((何を言うべきだ……))

((何を、オレは残す……?))


ディアボロ「……は、るか」



春香「!!」

春香「プロデュ、サ、さん……!はぁっ……はぁっ……!」

春香「ひっ……ぐ、う……プロデューサー、さん……!」

春香「聞゙いてます……私っ!……ゔっ、す……聞いてる、から……!」



((【真実には辿り着けない】))

((今、春香に【半分】について聞いても……真実に近づくだけ))

((近づけばG・E・Rが許さない……オレは……辿り着けない))

((だから、それは聞いても無駄だ……違うものに、しなければ))

((……何を))

((……))



ディアボロ「……は、はん……ぶん。……とは?」

ディアボロ「聞かせて……くれ……答えを」



春香「……!!」

春香「……っ……ん゙……っ!!」



((オレは……何をやってるんだ))

((今更……分かりきってる事を……辿り着けない、のに))

((目に見えている……のに))

((春香))

春香「喋っちゃ……ダメ……プロデューサー……さ、ん……」


ディアボロ「!……」




((そうか……やはり))

((【真実には辿り着けない】……))

((ああ、確かに。辿り着いてはいない))

((G・E・Rが……そうさせているのか?))

((ダメだったじゃあないか))

((ああ……終わる……終わってしまう))





((駄目だ))


ディアボロ「ッ……ダメ、だ」

ディアボロ「【今】、じゃないと……ダメだ」

支援

ディアボロ「答えを……」


春香「!?……そんなに……」

春香「治ったら……言いますから……!その時にしましょうよ……!ねえ!」


ディアボロ「諦めないぞ……オレは……」

ディアボロ「グッ!……うっ……」

ディアボロ「【今】じゃないと……終わってしまう」

ディアボロ「その、前に……ッ!」


春香「ダメ――す……!!」

春香(そんなの、今言っちゃったら……プロデューサーさんが納得してしまう……)

春香(納得したら……きっと本当に……!)

春香(認めちゃダメだ……!)


ディアボロ「……」

ディアボロ「……」

ディアボロ「頼むよ……もう、終わってしまうんだ……」

ディアボロ「どうしても、だ……どうしても知りたい」

ディアボロ「【真実】……辿り着けなくても……」

ディアボロ「ああっ!……」


春香「プロデュー―――ん……っ!」

春香(どうしたらいいの……私はどうしたら)


ディアボロ「諦め……られない……やめては」

ディアボロ「いけない……そう、思うのだ」


((ここが終わった後……【次】からは、こんなに手を伸ばしたいと思える真実はなくなるかもしれない))

((やめてはならない……辿り着けるかどうかなど……ッ!))

((二の次だ……ここで、やめてしまう事が何より恐ろしい……))

((オレは……依然 向かい続けるぞ……ええ?G・E・Rよ))

ディアボロ「感じろ……春香……」

ディアボロ「この先はない……分かるだろう」

ディアボロ「【今】……これが最初で最後の……」

ディアボロ「答え合わせのできる……チャンスなのだ」


春香「ひっ……――」

春香「―――デュ、サっー……そんな……」

春香「そん―――……」


((魂を……感じろ……))

((オレは……お前を知りたい))

((お前はどうだ……春香))


春香「…――」

春香(言う……私……言わないと……)

春香「【半分】…―――は」

ディアボロ「ああ……」


春香「―――、……――」


ディアボロ「……」

ディアボロ「……よく、聴こえない……」

ディアボロ「春香……すまないが、もう一……度」


((次は……体の限界か))

((世界すべてが……オレを……遠ざける))

((真実へ……辿り着かせまいと……))

((……何も聴こえない……もはや視界さえも))

((…………くそ))

((………))

((……))

((…))

(())

春香「!!!」


春香「ぁ……っ!!!」

春香「あ、ぁぁっ……!」

春香「あ、あああぁあああぁ……」



ザワザワ
 ザワザワ


律子「ちょっと……!どいて!どいてください!」

律子「そこをどいて………………、っ!?」

律子「……」

律子「春香……?」



律子「春香ッ!」ダッ

タッタッタッタ……

律子「春香……あなたそこで何、を……」


タッタッタ……

律子「…………」


タッ……タッ……

律子「え」


……

律子「……プ……プロ、デューサー……?」






春香「ぅ……っ……」

春香「……」


律子「……!」

律子「は、春香……?ねえ……」

律子「プロ……デューサー……?ねえ」



救急隊員「次はこっちだ!二人倒れているぞッ!」

救急隊員「あと一人こちらへ回してくれ!」

救急隊員「何やってる!まだか!?」

救急隊員「よし、運ぶぞッ!」

救急隊員「……!ーーー……!……」

救急隊員「………!……」

救急隊員「ー……!」

「……!」

「…」



                              .  -―‐- .
                           //\\//ヽヽ
                             / 、ヽ//\\/∧
                              ///\\//\ヽ}     >―‐-
                          i{\\//\\//ハミメ二.´      \
                          |ハノ/\\//ヽ:し':|:::::ヽ\\         :.
                       __|ミ`¨//⌒丶ヽ¨::イト、/八:::::} }ヽ  、       |
                         //:::八:} {.:/⌒ヽ|.:}   }:レ':/ハ::::/ :/  . \........:__人
                          | {::::{..i :{ 八o  o}j:ノ  //V 乂:  /   \_彡'⌒> \
                          l  \_j : ミ(OX__ノx(Oフ{:Ⅵ  :|:./  _  : : ::/― ' ∠:>ヘ
                        乂  \\∧ミ`゙  ´ ̄  }〈/:  乂彡く厶ミ. : .:| ̄//⌒>:/\
                    .  ⌒\ヽ.  \\:.. 、__,.、  /.: :...xく/┘| __丿 :{: : {{_/: :{'⌒\__
                    /   '⌒ミ::ヽ}  :} }:::\:ニ´ イ: :/: /:/:厂ヽ〈____|//⌒Y } : : //::.>-  .
                  ′     } ∨彡'_丿:::::::`爪ミメ/rく:xく/ /  } } \//ミ\{   .ノ \///\\ \
               {        /  /´  乂二二エエ彡/:/ \ \_.厶イ彡'  .::::\く/⌒>/二二   二ミ}
                 八 : : : . ..彡: ./  />‐へ__.丿ノ\/ \_/彡ニ==ァ=ニ}≧z::彡:'⌒¨¨¨´ ⌒ミ¨ ̄ ̄ ̄
                   \: :  _/  {:..{  \  く__//\/⌒>\/ /:/=x:ー<⌒Y´   . : .  :|
                   / / _  ..乂乂ノ´} ノ\. く=彡く_//\/  / `⌒)ノ   . : : : : ...::|
                   {/__/:\_>x__/ミ二二>く/\ く_〃⌒ {:/⌒>.:::    : : : : ..::::|.
                /..:/彡/\\ /三ニ彡、\/ /__/ _ノ..://:}:...ノ /:. //⌒ヽ      /::::::::.......
                 八人/. :  \从乂/ /.::\ r―- _彡'}:} {__彡へ:/ /乂__丿..:      /:::::::彡'⌒
               /\)¨¨二二7:/∨ (  / /ミ:.../.:/ ..:/ノノ /:{: :xく /  //⌒ヽ  :/
                 ///\\. :/   \:\/ /__/ミ乂.ノ〈__/: : :.У xミヽ./...::乂__丿、/
              { / . : ノ  ∨      \ : _彡个--ミ:... : : : ://   /:>.、/.:(___丿
              l>\//ヽ/          `¨¨_:Τ{ 〃⌒ミ:...//   .イ./ /Y^} i |
                ,.∠/.:\\//          /::::人{ {{::....... 〈_〃彡<__...ji/ ..: | / ∧/
          xく/¨¨¨ミメ:.).:/        /  ///\乂_彡' ̄      ̄ノ .......::/`<../
.          /ハ. \__ ...:∨          /   ///  `¨¨¨¨  、:......  /..:   ミ〈_彡く┬┬―┬‐- .
.           {{ノ ――--ミ∨          / >=ニ=‐- 、           .....::::/¨ ̄ノ ̄厂iΤ¨⌒Y⌒> \
.           イ{/\\...::::/ミ|           〈/-――┘(__\\      . : : :/..::/...:/人乂__.ノ / /

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数週間後
---765プロダクション事務所・朝---


春香「…………」

「…………」

「…………」


律子「みんな………」

律子「………その」

律子「もうすぐTV番組の収録が、あるから」

律子「……行こう?」


春香「……はい、そうしましょう」

春香「みんな……行こうよ」



真「うん……そうだね」

雪歩「……はい」

響「ふふっ……自分、最近何のためにアイドルやってるか分からないよ」

春香「響……そんなこと言っちゃダメだよ……」


響「あっ……ごめん……」


美希「ミキ……もうアイドルやめたいの」

美希「意味ないよ……やっててもつまらないんだもん……って、そう思うな、ミキ……」

春香「美希、……もう、そういうのよそうよ……」


美希「……」


真美「うっ……うぅ兄ちゃん……兄ちゃん……っ!」

春香「真美……泣いちゃだめだよ……取材で、困るよ?」


真美「ぐすっ……でも……!」

やよい「……プロデューサー、ずっと眠ったままだから……」

やよい「もう……起きないのかな……」

春香「やよい!……頼むから……やめてよ」



貴音「皆……とにかく準備を」

貴音「局の方を待たせてはいけません」


律子「そうよ……」

律子「……ほら、急ぎましょう」

・・・

---車内---

運転手「はい、じゃあ行きますよ」

ブロロンブロロン
ブォーーー


「……」


運転手(重いなァ……。アイドルってのは皆こーなのかね)

運転手「いやー、今日も良い天気ですなあ!」


「……」


運転手(マジかよ)


律子「ええ、そうですね……雲ひとつない」

律子(誰も何も言わないから……私が言わないと、いけないじゃない)


運転手「ええ、まったく。はっはっは……」

運転手(はあ)



---TV局・控室---

スタッフ「765の皆さんそろそろスタンバイおねがいしまーす!」


「……はい」


スタッフ(ええぇ……?)

---TV局・スタジオ---

MC「~~~という訳で、今週も終わりに近づいて参りましたが!」

MC「最後に……うーん、そうだな。よし、じゃあ天海春香さんにしめていただきましょう!」

MC「何か一言!」


春香「えぇっ!私ですか!?……えっと、えっと」

春香「ら、来週もぜひご覧ください!」


……


春香「……あはは、こんな感じで」


ワハハ
 アハハハ


MC「はい、ではまた来週!」

MC「見てね~……」

・・・

スタッフ「以上ですお疲れ様でした!」



MC「いや~やっぱり765の皆はそれぞれ味があって面白いねえ!」


春香「そうですか?ありがとうございます」


MC「うん!是非またいらして下さい。今日はありがとうね!」




春香「……ふう」

貴音「春香、お疲れ様です」

春香「四条さん……お疲れ様です」

貴音「皆は、もう控室の方に」

春香「あっ、そうなんだ……急がなきゃ」

・・・
・・

---765プロダクション事務所・昼---


律子「ただいま帰りました」


小鳥「お帰りなさい!みんな」

高木「諸君!今日の仕事はどうだったかね?」


春香「ええ、いつも通りですよ……」

美希「いつも通り……普通に、やってきたの」


響「……はーあ。よっ」ドスッ

真「ふう」


「……」


高木「うむ……そうか」

高木「きっと、ディアボロ君も心配しているだろうから……」

春香(……やめてよ)

春香(プロデューサーさんを、過去の人みたいに言わないでよ……)

春香(……)


・・・

---765プロダクション事務所・夕---


春香「……」

貴音「春香」

春香「あ、ああ四条さん……どうしたんですか?もうこんな時間なのに」


貴音「春香こそ、どうしたのです?」

貴音「他の皆はだいぶ前に帰っているのに」

春香「私?私は……」


春香「あはは……どうしちゃったんでしょうね」

春香「……あれから」

貴音「あれから……?」


貴音「……IA大賞授賞の日、ですか」

春香「はい……」


春香「約束、したんですけど」

春香「結局……果たせなくて」

春香「プロデューサーさんの……【半分】になれてたかどうか」

春香「答え合わせ……できなくて」

春香「分からなくて……それで」

春香「お仕事は……プロデューサーさんがいないから、私たちは失敗しちゃダメだって思うから頑張らないといけないし……それに」

春香「えへへ……気が付いたら、ずっとこのソファに座ってて」

貴音「そうだったのですか……」

貴音「わたくしには、その半分が何の事なのか未だに分かってはいませんが……」

貴音「……プロデューサーはきっと、わたくし達のためにこの選択をしたのだと思っています」


春香「え……?」

春香「四条さん、どういう意味?」


貴音「プロデューサーは、自身ではなくわたくし達を選んだという事です」

貴音「ですから……わたくしは、そのためにも、生き方を貫かなくてはならない」

貴音「彼の選択を胸に……そして誇りに」

春香「意味が……分からないです」

春香「やめてくださいよ……四条さん」

春香「彼の選択とか……誇りとか」

春香「まるで……過去の人みたいな言い方はやめてください」


貴音「過去の人……ですか」

貴音「わたくしはそういうつもりで言ったわけではなく」

貴音「ただ、プロデューサーがその身を削ってまでわたくし達を選んだ事を、誇りに思っているだけです」

貴音「プロデューサーが賭けたもの恥じぬに生き方を、するのです」

貴音「それが、わたくし達の役目だと思うから」

貴音「半分……とは」

貴音「いえ……きっと言葉にすると安く見えてしまう」

貴音「春香、……わたくしは、信じています」

貴音「プロデューサーはわたくし達の事を、それほどまでに考えていたと」


春香「四条さん……?」

春香「こんな事、言いたくないけど……」

春香「何のことを言っているのか……分からないですよ」

春香「私たちのために……って」


貴音「約束は果たされなかった……」

貴音「春香」


春香「え……はい」

貴音「春香は、恐れているのではないですか?」


春香「!」


貴音「今の春香は……当初のディアボロプロデューサーと同じ……怯えている目をしている」

貴音「気付いていましたか?」


春香「そんなこと……ないですよ」

春香「何の、……はぁっ……ことですか」


貴音「春香……」

貴音「わたくしは、春香とプロデューサーが交わした約束を知りません」

貴音「他の皆は、心に重りはあれど、時が流れればそれぞれの道を見出し、立ち上がるでしょう」

貴音「ですが……」


春香「はぁっ……はぁっ……」

春香「四条さん……もうだめ」

春香「ごめんなさい……」


貴音「!」
貴音(わたくしは、何という事を)

貴音「春香……!」

貴音「申し訳ありませんでした……何も考えず勝手な事を」

貴音「汗が……これで拭きますか?」


春香「ごめんなさい……大丈夫ですから、ごめんなさい」

春香「ごめんなさい……怖いんです……」

春香「知るのが、怖いんです……プロデューサーさんを」

春香「その後、どうなってしまうか」

春香「その時が、来てしまうのが……」

春香「はぁ……はぁっ……んっ」

貴音「落ちついて……春香」

貴音「春香の事を考えず、……酷い事を言いました」


春香「間違ってません……私は、怖がって」

春香「きっと……プロデューサーさんは待ってる」

春香「……今だって……ずっと……」

春香「諦めないって……言ってたから」

春香「……」

春香「四条さん」


貴音「春香?大丈夫ですか……?」

春香「ねぇ、四条さん……少しだけ、いいですか」

貴音「はい」


春香「泣かせて、くれませんか」

春香「今だけ……」

春香「その後は……ちゃんと、行きますから」

春香「今だけ……」


貴音「……」

貴音「わたくしで、よければ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


オレは死んだ。

次は、どこへ行くのか。

はたまた、どこへも行かず、このまま無を泳ぐのか。

どうなるのか分からない……なぜ、このような世界へ来たのかも分からない。

『ボス』


……なんだ

ドッピオか


『ボス……まだ……引っかかってますよ』


何が……どこに?

それよりお前……ドッピオ……行ったんじゃなかったのか?


『ボスが、まだ気付く事を恐れてるから……』

『ボスの精神や記憶の中の僕ですよ。完全に別個の魂である僕は消えてますから』

『ボスが、気付く事を恐れているから、来ました』


そうか……それならいい。

そして……引っかかってるってなんだ……?気付く事を恐れるとは……。


『彼女たちは【半分】になれていたかどうか』

『ボスはまだ、これに気付く事を恐れている』

『でも、ボス自身、気付きたいと思っていて』

『それが引っかかっているんでしょう』


……何を言ってるんだ?お前……。

そんな事……最初から気付いている。

彼女たちはオレの【半分】ではない。

魂のステージが違う。

プロデューサーとして、あいつらを導いてきたのは……ケジメだ。

レクイエムに……選ばれたから……この世界が。

春香たちにも……深く関わってしまったから……だからケジメだ。……ここまでは。

真実を……掴みたかった

掴めなかった……オレからの回答のままになってしまった

答え合わせをできなかった……!

そしてあの時、未完のまま終えてしまった……それだけだ。ちがうのか?


『恐れないでください……』

『自分で、自分の心を救えなくしているだけです』

『僕、分かってるんですよ……?』


……。

『本当は、彼女たちをどう思っていたか』


オレが担当していたアイドルだ。

それ以外にはなにもない……。

何かあってはいけない……。

オレのような人間が、いてはいけない。


『ボス』

『ほんの少しです』

『あとほんの少しで、ボスの気持ちに答えが出る』


……。

バカにしているのか?オレを……。

オレの答えはさっき言ったはずだ。

それが答えではないというなら、オレがあの時向かおうとした真実はどうなる。

しえん

『向かう意志は消えません』

『たとえ、あの時辿り着けなくとも』

『あの時、正しき真実を見つけていなくても』

『全ては無駄ではなかった』


全く……混乱させる事ばかりだ。

どういう意味だ


『本当なら、こんな結末になる必要はなかったはずです』

『あの車……。ボスなら、いくらでも避ける事は可能だったはずだ』

『たとえ、肉体が動かなくとも……あなたには力がある』


……。

お前、ドッピオ……。


『でも、そうすると彼女達の舞台が―――』


分かった……もういいドッピオ。

分かった……もういいドッピオ。

分かる……。お前の言いたい事は。

その通りだ。降参だよ……マジに。


……別に、今の自分をみじめな姿とは思わない。

これでいい。こうしたかったからこうしたんだ。

オレは、あいつらを選んだ……。

オレだけが分かっていればいい。

それに、あいつらにはには伝わらない。

無駄なんだ、無駄無駄……。



『伝わる……としたら?ボス?』

『ボスの言葉が……』

『伝わるとしたら?』

……どういう

意味だ。


『ほら、ボス』

『気がつけば、もう真実は目の前だ』

『あとは、すべてを終わらせるだけでしょう』

『色んな壁があったけど……』

『【真実に向かおうとする意志】は、決して無くならなかった』

『たとえあの時、何度も真実から遠ざけられていたとしても……間違いなく、ボスは真実へ向かっていた』

『すこしずつでも……向かって歩いていたわけですからね』

『そうしたから、いつしか、目の前までやってきた』

『……時間が来ますよ』


!!!

『ボス、さあ、目を開けましょう』

『肉体のもつ時間はそう長くは無い』

『あなたのアイドルです……待たせてはいけないでしょう?』




『ボスの【半分】ですよ』

『きっと……』





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

……?


オレは?


死んだと思っていた……


いや、オレは……ッ!!






ディアボロ「……!……っ!」

ディアボロ「はぁっ……はぁっ……」

ディアボロ「ここは……」




---病院・夜---

ディアボロ「はぁっ……はぁっ……」

ディアボロ「クァ……」


((今のは……夢か?))

((わからない……しかし……あまりにリアルすぎる……))

((車に……はねられた後))

((そうだ……あれからどれくらい経っている?))

((春香たちはッ!?))





春香「おはようございます、プロデューサーさん」

春香「……といっても、夜ですけど」



ディアボロ「……」

ディアボロ「春香……!」

ディアボロ「春香ッ、お前―――」

ディアボロ「……ッグァ……!」



春香「プロデューサーさん!いきなり起きちゃだめですよ!」

春香「もう……何週間も、ずっと眠ったままだったんですから」

春香「……」



ディアボロ「ハァッ……ハァッ……」

ディアボロ「春香……よかった……お前は無事だったか」



春香「……私は、大丈夫ですよ。何も……なかったし」

春香「プロデューサーさん」



ディアボロ「……ああ、ああ」


((時間が……無いんだろう 分かってる))

((オレに……ほんの少しだけ、許された時間))

((……歩いてきたから、向かってきたから……ようやくここまで))

((ああ、既に時間は減り始めている……))

((徐々に終わっていくのが分かる……))



春香「……答え合わせ、しましょう?」



ディアボロ「全ては……この時のために……」


ディアボロ「いや、そんな事は無い」

ディアボロ「全ては無駄ではなかった……というだけのこと」

ディアボロ「小さな事も……大きな事も、一つ一つが集まって……この瞬間を作っている」

ディアボロ「これが【結果】であるというだけ」

ディアボロがいるではないか、引け

((ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム……!))

((貴様が、何を求めていたのか……ッ!))

((これがオレの回答だッ!……ここがッ!))



ディアボロ「ここへ向かって歩いてきた……その意志こそが……」




ディアボロ「【決して滅びぬ真実】」

ディアボロ「ジョルノ・ジョバァーナさえも気付いていないレクイエムの終焉……ッ」



春香「……プロデューサーさん?」



ディアボロ「春香……」

ディアボロ「トップアイドルになった……その瞬間」

ディアボロ「お前には、……何が見えた?」

ディアボロ「オレは……知りたい」

ディアボロ「約束したから。じゃない」

ディアボロ「純粋に、春香が何を感じたのか」



春香「私には……」


春香「私には……何も、見えませんでした」



ディアボロ「何も……か」



春香「眩しいライトと、たくさんの見てくれている人達。それだけでした」

春香「空気が震えて、ああ、ここまで来たんだなあっていう実感が後からやっと湧いてきて」

春香「同じライトが照らす輪の中には皆がいて……」

春香「この一年間、もっと言えば事務所に入ったその時からずっと一緒にやってきた仲間たち」

春香「……でも、そのライトの輪の中に、プロデューサーさんがいなくて」

春香「それがなんだか空しくて」



ディアボロ「そう、か」



春香「そうなんです」

春香「それが、【半分】の答えなのかなって」

春香「それまではただ単に、【半分】っていうのは、プロデューサーさんの中における存在の大きさだって思ってたんですけど」

春香「違いました」



ディアボロ「ああ……」

支援

春香「あの輪の中に、一緒にいて……喜びとか、感動を」

春香「分かち合いたい……共有したい」

春香「そんな風に思えるものが……答えかなって」

春香「自分自身と、同じ感覚を共有できる。半々の、1:1で」

春香「本当の仲間が……【半分】なのかな」

春香「だから……」



ディアボロ「……ああ」



春香「プロデューサーさんだけじゃなかった……」

春香「私にも、メンバーの皆にも、律子さんやもっと言えば高木社長にだって【半分】はあるんです」

春香「誰にだってあるもの……その【半分】」

ディアボロ「……」



春香「プロデューサーさん、私たちは……半分になれてましたか」

春香「不安で……聞けなかった」

春香「プロデューサーさん、ずっと待っていたのに」

春香「ごめん、なさい……っ!」

春香「……うっ……んんっ」

春香(泣かないよ……泣かないって決めたんだから)



ディアボロ「満足……だ」

ディアボロ「春香……オレはいま、満足したよ」

ディアボロ「ここまで、辿り着きたいと思えたものは無かった」

ディアボロ「レクイエムが……許さないからな」

ディアボロ「しかし、ここまでこれた」

ディアボロ「フフ……え?春香」



春香「はい……っ!」



ディアボロ「嬉しいんだ、手放しに……」

ディアボロ「オレは……やっと真実に辿り着いた」

ディアボロ「しかも……な」

ディアボロ「……」

ディアボロ「…………く」



春香「……」

春香「プロデューサーさん?」

春香「え……?」



ディアボロ「………ぁ」

((……!?))

((お、おい……G・E・R まだ話は終わっていないぞ……))

((もう終わりだっていうのか……え?))

((オレが真実に辿り着いたから、もう終わりだっていうのか?))

((ふざけてんじゃあないぞ……くそ))

((まだ……辿り着いていないだろうが……春香が……!!))

((このまま、春香は辿り着けないまま生きて行くのか……!?))

((……))

((大概にするんだな……おい))

((動けよ……動け……ッ!))



春香「プロデューサーさん、まだ……まだ私、分かってないですよ」

春香「ずるいですよ……プロデューサーさんだけしか、答え合わせできないなんて」

春香「もう、行っちゃうんですか……?」

((このまま行ってたまるか……くそ))

((引っ張られていく……G・E・Rによる永遠の死から解放され))

((今にも……くそ、終わってしまいそうだ))

((伝え……なくては))









ディアボロ「【キング……クリム ゾン】」

ディアボロ「……」


((キング・クリムゾンで……スーツの……そこにかけてある))

((ポケット……中身を))

((取り出した……これしか))

((能力を使わずとも……スタンドを出す事自体を躊躇っていたのに))

((最後の最後に、使わせるなんて、な……とことん、……抉られる))

                              .  -―‐- .
                           //\\//ヽヽ
                             / 、ヽ//\\/∧
                              ///\\//\ヽ}     >―‐-
                          i{\\//\\//ハミメ二.´      \
                          |ハノ/\\//ヽ:し':|:::::ヽ\\         :.
                       __|ミ`¨//⌒丶ヽ¨::イト、/八:::::} }ヽ  、       |
                         //:::八:} {.:/⌒ヽ|.:}   }:レ':/ハ::::/ :/  . \........:__人
                          | {::::{..i :{ 八o  o}j:ノ  //V 乂:  /   \_彡'⌒> \
                          l  \_j : ミ(OX__ノx(Oフ{:Ⅵ  :|:./  _  : : ::/― ' ∠:>ヘ
                        乂  \\∧ミ`゙  ´ ̄  }〈/:  乂彡く厶ミ. : .:| ̄//⌒>:/\
                    .  ⌒\ヽ.  \\:.. 、__,.、  /.: :...xく/┘| __丿 :{: : {{_/: :{'⌒\__
                    /   '⌒ミ::ヽ}  :} }:::\:ニ´ イ: :/: /:/:厂ヽ〈____|//⌒Y } : : //::.>-  .
                  ′     } ∨彡'_丿:::::::`爪ミメ/rく:xく/ /  } } \//ミ\{   .ノ \///\\ \
               {        /  /´  乂二二エエ彡/:/ \ \_.厶イ彡'  .::::\く/⌒>/二二   二ミ}
                 八 : : : . ..彡: ./  />‐へ__.丿ノ\/ \_/彡ニ==ァ=ニ}≧z::彡:'⌒¨¨¨´ ⌒ミ¨ ̄ ̄ ̄
                   \: :  _/  {:..{  \  く__//\/⌒>\/ /:/=x:ー<⌒Y´   . : .  :|
                   / / _  ..乂乂ノ´} ノ\. く=彡く_//\/  / `⌒)ノ   . : : : : ...::|
                   {/__/:\_>x__/ミ二二>く/\ く_〃⌒ {:/⌒>.:::    : : : : ..::::|.
                /..:/彡/\\ /三ニ彡、\/ /__/ _ノ..://:}:...ノ /:. //⌒ヽ      /::::::::.......
                 八人/. :  \从乂/ /.::\ r―- _彡'}:} {__彡へ:/ /乂__丿..:      /:::::::彡'⌒
               /\)¨¨二二7:/∨ (  / /ミ:.../.:/ ..:/ノノ /:{: :xく /  //⌒ヽ  :/
                 ///\\. :/   \:\/ /__/ミ乂.ノ〈__/: : :.У xミヽ./...::乂__丿、/
              { / . : ノ  ∨      \ : _彡个--ミ:... : : : ://   /:>.、/.:(___丿
              l>\//ヽ/          `¨¨_:Τ{ 〃⌒ミ:...//   .イ./ /Y^} i |
                ,.∠/.:\\//          /::::人{ {{::....... 〈_〃彡<__...ji/ ..: | / ∧/
          xく/¨¨¨ミメ:.).:/        /  ///\乂_彡' ̄      ̄ノ .......::/`<../
.          /ハ. \__ ...:∨          /   ///  `¨¨¨¨  、:......  /..:   ミ〈_彡く┬┬―┬‐- .
.           {{ノ ――--ミ∨          / >=ニ=‐- 、           .....::::/¨ ̄ノ ̄厂iΤ¨⌒Y⌒> \
.           イ{/\\...::::/ミ|           〈/-――┘(__\\      . : : :/..::/...:/人乂__.ノ / /

ヒラッ……
 ヒラッ……


春香「……!」

春香「プロデューサーさん、これは……?」

春香「どういう事ですか……?」


春香「765エンジェルの集合写真……」



ディアボロ「……」


((伝えた……確かに伝えたぞ))

((……分かるか))

((分かってくれ……どうか))

((裏面……写真の……頼む))
((……))
((…))
(())

春香「あ……」

春香「……!」

春香「……また……あ、あぁ……ッ!」

春香「プロ……プロ、デューサー……?」

春香「……っ!」

春香「まだ……っ!お礼も何も言ってないのに……っ!」

春香「プロデューサーさんっ!……プロデューサーさん!!」





春香「まだ……行かないで……っください……!!」

春香「う……ゔっ……行かないで……っ……」

春香「ディアボロさん…………!!!」

・・・
・・





((オレのレクイエムは、遂に終わった))

((だが……))

((彼女たちは))


((春香たちは、まだ道の途中だ))

((時は止まらない))

((海の流れが、決して無くならないように))

((春香たちそれぞれの終着点へ辿り着くまで、道は続くものだ))







二ヶ月後

---TV局・スタジオ---

MC「よし、今週のお別れは春香ちゃんで行こう!」


春香「わ、私ですかっ!?」

春香「わかりました……!こほん」


春香「来週も是非ご覧くださいっ!」

春香「今週よりももっと楽しく……できたら、いいなー」


……


春香「……あはは、天海春香でしたー」


ワハハ
 アハハハ


MC「はい、ではまた来週!」

MC「見てね~……」

支援

・・・

スタッフ「収録以上です。お疲れ様でしたァー!」



MC「ブラボー!おお……ブラボー!」

MC「765のみんな、ここ最近なんだか沈んでたように思ってたんだけど、そうでもないみたいだね!」

MC「ブラボー!おお……ブラボー!」


春香「あはは、そうですかね?」

春香「でも、そう思って頂けたなら嬉しいです!」

春香「これからも、私たち、一丸となってアイドル頑張っていきますから!」


MC「ブラボー!おお……ブラボー!」

MC「……あっ。ところでさあ」


春香「はい、なんでしょう?」


MC「君たち【元・765エンジェル】は、どうしてグループ名を変えたんだい?」

MC「しかも……ええと、なんだっけ。未だに読みづらいよね、あれ。」

MC「……ベントー……なんちゃらだっけ?……ああ、分かんないや」

MC「どうして難しくて……正直覚えづらい名前にしたんだい?」


春香「あぁ、その事ですか」

春香「うん……それはですね」

春香「すべては……【写真の裏】に……書いてあったんです」


MC「??」


春香「この名前は……いや、この船は、私たちにとって大事なものだから」

春香「【私たち】っていうのは、もういないけど……あの人も含めてのこと……」

春香「それに……メンバーのみんなも、これに込められた意味、分かってると思うから」

春香「あはは……私の気持ちが当たってるかどうかは分からないんですけどね……」


MC「???」


春香「……あっ、と!」

春香「えへへ、すみません。こんな話、分からないですよね……」

春香「まあですね、つまりは765プロダクションの総意という事ですね!」



MC「ふうん、そうなんだ……」

MC「でも、なんだかんだで成功してるからね!きっとこれからも売れると思うし」


春香「そうですか!?嬉しいなあ……ありがとうございます!」


MC「ブラボー!おお……ブラボー!」

MC「春香ちゃんのその笑顔で、日本中いや世界中のファンを癒してあげてね!」

MC「それじゃあまたね!」

・・・


((どんな暗闇が心に影を落とそうとも))

((闇にまとわりつかれ、周りの海が見えなくなろうとも))

((進むべき道を失わない))




---初夏のアイドルフェス・ライブ会場---

春香「よしっ!皆!気を抜かず行こう!」

千早「全力で歌って!」

真「全力で踊って!」

美希「全力で笑うの!」

響「自分たち負けないぞ!」

貴音「決して諦めない!」

やよい「うっうー!みんな揃って!」

雪歩「絶対、泣かない!」

真美「当然っしょ!真美たちならできるよNE!」


『ファイト』


『オー!』

((どんな邪悪に負けそうでも、心の船は航路を行く))

((目指すべき真実、到達点へ向かい続ける))

((【真実に向かおうとする意志】))

((たとえ、その時は失敗しても、向かい続ければいつかは辿り着く))

((心の船に、風は吹く))

『961プロダクションのジュピター ありがとうございました』

『続いての出演アイドルグループ―――』





((運命や……過去から目をそむけ、真実から逃げようとしていたわたしにとって))

((お前たちこそが……その風だった))


((……グラッツェ))

『765プロダクションより参加―――』




ワァァァァァァァァァ……
 ウオォーーーーー!
  ピューーーーッ!!!










((ああ……そして))


((【トップアイドル】は、お前たちだ……))


((依然、変わりなくッ!!!))

『IA大賞受賞グループ……ッ!!』















    (黄金の風)
『【V E N T O  A U R E O】ですッ!!』






Fine

この二日間、支援・猿回避レスしてくれた方々
どうもありがとうございました

あとディアボロと貴音の支援絵描いてくれた人
本当に感謝してます。速攻保存しちゃいました

ディモールト乙

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