ポケモン戦記 【下巻】 (172)


上巻のあらすじ

人間がいなくなった世界で、ポケモン達はタイプごとに国家を形成した。
はじめは平和を謳った彼等だったが、次第に綻びができ始める。
そして、炎帝国、水の国、電気王国の三大国から成る北部大連合の結成により、戦争の火ぶたは切って落とされたのだった。

ポケモン戦記 上巻 ポケモン戦記 - SSまとめ速報
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お久しぶりです。少し遅れましたが下巻投下していきます。

今日はとりあえず各国のデータとオープニングだけです。


主要各国データ(下巻開始の時点)

国名          政治  君主         一言

炎帝国         ×   ×          北部大連合 ウインディ皇帝の死亡と共に内乱が勃発 帝政、貴族院ともに崩壊

水の国         共和制 カメックス大統領   北部大連合

電気王国        王政  エレキブル国王    北部大連合 社会主義+王政の矛盾は後程言及

ノーマル・飛行連合帝国 帝政  エテボース皇帝    炎帝国から独立した帝国 高度な経済成長を続ける 

格闘国         共和制 ポケモン共和国元老院 ポケモン共和国は衰退し、影響力はほとんど持っていない

氷の国         王政  ユキメノコ女帝    以前ノーマル・飛行国を裏切って炎帝国に占領させた


その他の国は消滅、併合されたか、後に言及されますのであしからず。



―――…
水の国と電気王国対立の原因はその経済体制にあった。

電気王国は国王を主君とする独裁国家。そこまでは炎帝国と何ら変わりがない。
だが、電気王国では計画経済や企業の国営化といったシステムが発達していた。

一方、水の国は自由経済が主となっており、炎帝国はその中間にある体制であった。

当然、その二つの経済思想は対立を招いたのである。
その対立は建国直後から長く長く続いていた。


―――電気王国首都 王城―――

エレキブル「結局はウインディの負けか?はは、野望に身を堕としすぎたようだな」

エレキブル「エテボースもやるではないか。素直に賞賛させてもらおう」

ルクシオ「水の国はノーマル・飛行連合帝国の警戒と、炎帝国との同盟破棄を要求しています」

エレキブル「ふん。言われなくてもするつもりだあの馬鹿め」

エレキブル「ウインディ亡き今、奴と結んでいる意味は無くなった」

エレキブル「大連合も終わりだな」


ルクシオ「では、水の国との同盟も破棄を?」

エレキブル「ふん。ほっておいてもあっちから勝手に破棄してくれるだろうしな」

エレキブル「電気王国はこれより炎帝国の紛争に介入する」

エレキブル「そして、最終的には併合するのだ」

エレキブル「まあウインディのように下手な差別政策を敷いたりはせんよ」

ルクシオ「何か策案があるのですか?」

エレキブル「炎帝国も衰えはしたが…あまり刺激して攻撃されれば損害は計りしれんからな」

ルクシオ「はぁ……」


―――数週間後 大連合首脳会談―――

カメックス「貴様!そんなことを許すとでも思っているのか!?」

エレキブル「思っているわけないだろうが」

エレキブル「我が国は、貴様らの要求通り炎帝国との同盟を破棄する」

エレキブル「そして、水の国との同盟も同じく破棄する」

エレキブル「大連合もここまでだ」

カメックス「ぐ……平和が遠のくだけだぞ」


エレキブル「炎帝国の今までの侵略行為」

エレキブル「あれは平和のためなどではない」

エレキブル「この連合も我が国と水の国を抑える建前にすぎなかったのだ」

エレキブル「吾輩もウインディの口車に乗って連合に参加したが……」

エレキブル「やはり平和など実現はできやしないのだ」

カメックス「次会うときは……また敵だな」

エレキブル「一向に構わんよ」

電気王国は水の国及び炎帝国との同盟を破棄。

水の国も炎帝国との同盟を破棄し、大連合は消滅した。

電気王国は炎帝国の内乱に介入、各地を占領した。
同時に鋼の国、岩・地面の国、虫の国も併合し、さらなる大国へと成長していった……



―――…

?「ケケケケ……大連合が消滅しましたカ……うまくいきましたネェ……」

?「ユキメノコさんもシャンデラさんもいい働きですヨ……」

?「あとは邪魔な『あの国』を消すだけでス……」

?「世界のシハイシャは我らにありでス……」

?「さテ……時を見てあえて『あの国』と同盟を結びましょうかネ……」

?「もうすぐでス……もうすグ……」



―――大連合消滅から5年後 悪国 アジト―――


悪国は国とはいえど、その実態はマニューラをリーダーとした組織体であった。


マニューラ「はぁ……同盟ね」

ゴース「キキ……そうです……悪国リーダー殿……」

マニューラ「アタシらにゃデメリットはないし、いいんじゃない?」

マニューラ「あんまり面倒ごとに巻き込まれるのもヤダしねぇ……」

マニューラ「それより……アンタ不気味すぎ。もうちょっとシュっとしなさいよシュっと」

ゴース「キキ……そういうもんなんです……」

マニューラ「ケッ。裏切ったりしたら承知しないよ」

マニューラ「アンタんとこのなんとか長ってのに伝えときな」



ゴース「もちろんです……悪国は眠れるマニューラと呼ばれる大国ですから……『局長』にお伝えします……」

マニューラ「聞いたことないよそんなの!」

ゴース「キキ……では……」ドロン

マニューラ「相変わらず気味悪いねぇ」

マニューラ「コソコソと大連合の肩を持ったりして……あのなんとか長ってのは何を考えてんだかね」


Chapter5 「影」END


だいぶ短いチャプターですがここで切っておきます。

悪国の設定も含めて整理してから次行きます


主要各国データ(改)

国名 政治 君主 一言

炎帝国 × ×  ウインディ皇帝の死亡と共に内乱が勃発 帝政、貴族院ともに崩壊

水の国 共和制 カメックス大統領 

電気王国 王政 エレキブル国王  社会主義+王政の矛盾は後程言及

ノーマル・飛行連合帝国 帝政 エテボース皇帝 炎帝国から最近独立した帝国 高度な経済成長を続ける 

格闘国 ポケモン共和国本部 ペルシアン主席 ポケモン共和国は衰退し、影響力はほとんど持っていない

氷の国 王政 ユキメノコ女帝 以前ノーマル・飛行国を裏切って炎帝国に占領させた

悪国 組織体 マニューラリーダー マフィア的なイメージ 


―――1か月後 ノーマル・飛行連合帝国首都 元大統領邸―――

エテボース「それで、何の御用です?」

カメール「はっ。皇帝陛下直々の御面談、ありがたき幸せに存じます」

カメール「ここ5年間での、電気王国の炎帝国、岩・地面、虫、鋼の国併合。ゴースト国の悪、氷両国との同盟」

カメール「水の国カメックス大統領はそれらを侵略行為とみなし、批判しています」

エテボース「それには同意するよ」

カメール「はっ。つきましては、わが国は連合帝国との同盟を要求いたします」

エテボース(電気王国と対立したと思ったらこっちに転がり込んできたか)

エテボース「よし、同盟を承諾します」

エテボース「近く友好条約を結びましょう」

カメール「はっ。では、私はこれにて……」



―――…


ブースター「5年連続の高度経済成長に軍事力の増大……」

ブースター「随分と調子がいいな」

エテボース「うん。復興は着実に進んでいるね」

ブースター「信じられない……ノーマル・飛行国民は計り知れないのか……もう戦争の準備も万端じゃないか」

エテボース「戦争はなるべく避けたいところだけど……」

エテボース「各国の対立はもう限界にきてる。そううかうかしてはいられないだろうね」

ブースター「ああ。まさにビリリダマ状態だな」

エテボース「……」

ブースター「……まあ要注意はゴースト国だ」

ブースター「あの国はなにを考えているのかわからない」

ブースター「さらに、氷の国も格闘国との国境が騒がしいらしい」

エテボース「うーむ。十分様子を見ないと……」


―――竜の国 居城―――

フライゴン「戦争は確実だな」

フライゴン「我らは誇り高きドラゴンタイプ!そのような争いに耳を貸す必要はない」

ボーマンダ「竜の国領土もこの神聖なるシロガネ山のみ!」

ボーマンダ「侵略をはねのけるなど容易いわ!」

「「双王は永世中立国を宣言する」」



―――ノーマル・飛行連合帝国―――

エテボース「竜の国は中立を宣言か」

ブースター「まあ当然だろう。あいつらは誇り高いからな」

ブースター「開戦を予期してのことだろう」

エテボース「うーむ……」

エテボース「ブースター。勝算は」

ブースター「十分だ」



ブースター「おそらく戦争の中心となるのは格闘国」

ブースター「ポケモン共和国元老院も衰退した」

ブースター「『奴ら』が狙うなら今だ」

ブースター「悪国は後詰の水の国がなんとかしてくれるだろう」

エテボース「電気王国は参戦してくるかな……?」

ブースター「それはないだろう。今は炎帝国の内乱鎮静に手いっぱいだ」

エテボース「ふぅ。この国の産業は岩・地面の国の資源が必要不可欠だからね……敵に回すわけにはいかないな」

ブースター「ああ。だが戦争はもう時間の問題だ」

エテボース「格闘国国境に軍を向かわせよう」



エテボース「氷の国には貸しがあるからね……」

ブースター「あれだけ戦争嫌いだった君がよく言うよ」

エテボース「今だって嫌いさ。でも、教えたのはブースターだろう?」

エテボース「もし他国を占領したって、平等に治めるつもりさ。元草・毒の国のようにね」

ブースター「平等統治は電気王国に先を越されたようだな」

エテボース「あれは私たちの先例をもっての教訓だろう」

エテボース「独立の風潮は年々強まっているし……下手に押さえつければ暴動が起きかねない」

エテボース「実際地面タイプとは相当慎重に接しているらしいしね……」

ブースター「そうだな。まあその独立の風潮とやらが、次の戦争の火ぶたを切ってくれそうだよ」


―――格闘国 元老院本部―――

ペルシアン「ええい!何をしてるザマス!」

ペルシアン「どいつもこいつも平和条項を無視しすぎザマスよ!」

ペルシアン「エビワラー議員!なんとかなさいザマス!」

エビワラー「そう仰られましても主席……」

エビワラー「我が格闘国も財政は逼迫……限界なのです」

ペルシアン「ぐぬぬ……」



ペルシアン「エルレイド共和国軍総司令官!今すぐにでも共和国軍を動かして戦争を止めさせるザマス!」

エルレイド「……」

ペルシアン「エルレイド!?」

エルレイド「……」ニヤ

エルレイド「その必要はありませんよ主席」

ペルシアン「なんザマスって!?」

エルレイド「だって次の戦場は……ここですから」ガタッ



テレポート!

パシュッ


ペルシアン「な、なんザマスかアナタ達は!?」

ヤドキング「ポケモン共和国元老院はこれより我らが占拠する!抵抗は無意味だ」

ヤドキング「格闘国各地でも我が同胞が、独立のためののろしを上げている」

ヤドキング「祖国を再建するため……この国には消えてもらう!」

ヤドキング「祖国の恨み!今こそ晴らす時よ!」

ペルシアン「く……エルレイド!裏切ったザマスね!?」

エルレイド「貴方を殺しはしません。直ちに元老院をこの国から追放します」

エルレイド「ポケモン共和国は今日をもって長い歴史にピリオドを打つのです」

ペルシアン「そんな……」


元老院は突如現れた無数のエスパータイプポケモンにより占拠された。

同時に、格闘国各地でも紛争は繰り広げられ、エスパータイプポケモンによって次々と占領された。
元老院は格闘国から追放され、ここにポケモン共和国は国際法のみを遺し、名実ともに消え失せたのであった。


その後、ノーマル・飛行連合帝国がエスパータイプを、氷の国がかくとうタイプを擁護し侵攻。ここに第一次戦争が勃発した。


ここまでで

おやすみなさい



―――ノーマル・飛行連合帝国―――

プリン「ついに始まったわね…ゴクリ」

ハヤシガメ「まあ余裕っしょwww」

キマワリ「ここ数年でこの国も変わりましたものね」

トゲピー「チョゲプリィィィィィ」

ケンタロス「さすがエテボース帝だな!」

ブルー「占領国以前からこの国を支えてくれた真のリーダーだぜ」



―――…

エテボース「戦況はどう?」

ブースター「今のところは飛行隊の活躍で圧倒だ」

ブースター「対氷タイプ用にヤチェの実を草・毒州から大量に取り寄せた」

ブースター「奇襲攻撃で敵軍の司令系統を破壊する戦術はかなり効果を上げているよ」

ブースター「ひこうタイプの『速さ』には氷軍も対応できないだろう」

ブースター「先日の悪国の参戦も今は抑え込んでいる」

ブースター「後詰が来れば余裕だ」


エテボース「よーし。このまま押し切るんだ。氷の国さえ追っぱらってしまえばこっちのもの……」

ブースター「さらにエスパータイプ達を味方につけるとはいい考えだったな」

エテボース「独立と引き換えにね。草・毒州のように保護すればいいのさ」

ブースター「そうだな」

エテボース「ゴースト国の動きはまだないの?」

ブースター「無い。ありえないくらいない」

エテボース「……警戒は怠らないようにしなきゃね」

エテボース「この戦争さえ終われば平和な世界が待っているといいな……」

ブースター「さすがにまだ大国が黙っているとは思えんが」

エテボース「はぁ」



送還されたひこうタイプポケモンによる『航空隊』を駆使し、ノーマル軍は氷軍を破り、格闘国を占領。その後、新エスパー国を建国させた。

それは各国の反対を招いたが、連合帝国はそれを一切無視。

悪国戦線も押し返し、戦争はこのまま終戦を迎える…はずだった。



―――電気王国 王城―――

エレキブル「そろそろだな」

?「ええそうでス」

エレキブル「氷の国を占領し……」

エレキブル「お前の国を通って悪国を潰せばいいんだろう?」

?「まずはそこですネ……」

?「疲弊した氷の国はあっさりいくでしょうガ、悪国はちと厄介でス」

エレキブル「連合帝国はほっといていいのか?どうも最近力をつけているようだぞ」


?「まあまア、格闘国なんてどーでもいいんですヨ」

?「新しく建てたエスパー国、あれをネタにしていちゃもんをつけてやればいいんでス」

?「さらにあの国は電気王国の資源がないとシマイですかラ……」

エレキブル「なるほど。水の国も相性的には余裕だな」

?「手筈は整ったのでス」

?「もう少しで世界は我らのものですヨ……」

エレキブル「ふん。よく言うわ」


エレキブル「世を治めてまた『新生ポケモン共和国』を建てる。それがお前の提案だろう」

?「ああそうでしたネ……つい表現を誤ったようでス……」

エレキブル「余計なことを考えるなよ?」

エレキブル「ムウマージ局長」

ムウマージ「ヒヒ……もちろんでス……」


―――ノーマル・飛行連合帝国―――

TV『我らが連合帝国は格闘国での戦争に勝利しました!!!』

TV『これにより、エスパー国が独立!また一つ平和への道が開かれたのです!!』

TV『エテボース帝は…ガサゴソ』

TV『ここで臨時ニュースが入りました』

TV『電気王国が氷の国と悪国に宣戦』

TV『現在、氷の国は大部分を占領され、降伏間際まで迫っています』

ざわざわ…

ナンダッテ…

アノコオリノクニガアットイウマニ…

デンキオウコクヤバイゾ…


ここまでです
もうちょっとペース上げたいですね


―――…

ブースター「動いたな」

エテボース「電気王国と悪国は国境を接していない……」

エテボース「ゴースト国を通る気なのかな?」

ブースター「ああ。もう王国軍がゴースト国に入ったらしい」

ブースター「ゴースト国はタイプ的にも悪国に不利だ」

エテボース「都合がよすぎるね」

エテボース「裏で結んでいたか……」

ブースター「だろうな。そうとなったらまずいぞ」

ブースター「電気王国とゴースト国が結んだとなれば」

ブースター「こちらの水、ノーマル陣営は限りなく不利になる」

エテボース「悪国と講和条約を結ぼう! 今すぐにだ!」


―――後日 悪国 アジト―――

マニューラ「てめぇ! 裏切ったね!?」

ムウマージ「さあなんのことやラ……」

カモネギ「あの……講和……」

マニューラ「黙ってな!」

マニューラ「くっそ!! こうなったら意地でも追い返してやる!」

ムウマージ「頑張ってくださイ……」

マニューラ「アンタの国もでてきなさいよ!」


ムウマージ「それはちょっト……」

マニューラ「ムキー!」

マニューラ「ふざけんじゃないよ! 同盟なんて破棄だ! 言葉通りぶっ潰してやる!」

ムウマージ「そうですカ……ならば私は去りますヨ……」ポヨン

マニューラ「ムキー!!!! 帰るなぁ!!!」

カモネギ「あの……」

マニューラ「うっさい! 鍋にして食っちまうよ!!」

カモネギ「トホホ……」


悪国は直ちにゴースト国との同盟を破棄。連合帝国の講和案も無視した。

結果ゴースト国への宣戦を待たずして電気王国が侵攻を開始。

じわじわと要所が占領され、数か月後には悪国はすっぽり電気王国となった。

こうして3年に及ぶ第一次戦争は終結した。

結果、氷、悪国は電気王国領となった。

Chapter6「第一次大戦」



―――4年後 ノーマル・飛行連合帝国―――

ブースター「くそっ! ついに資源の輸出を禁止しやがった」

エテボース「本格的につぶしに来たか……」

ブースター「水の国からも宣戦要求が来ている」

ブースター「限界だ」

エテボース「く……」

エテボース「ゴースト国に行く」

ブースター「! 何を!?」

エテボース「戦争をしない要求さ」

エテボース「死にはしないよ」

ブースター「知らんぞ僕は」


エテボース「もし僕がいなくなっても君がこの国を引っ張ればいいんだよ」

ブースター「そう簡単に言うな」

ブースター「この国は想像以上に成長した……それも君のおかげだ」

ブースター「僕がこんな国を作り上げられるはずがなかったんだよ」

ブースター「十分夢は見たさ」

エテボース「じゃあいってくるよ……」




―――ゴースト国 某所―――

ムウマージ「できませんねェ……」

エテボース「どうしてです!? もう戦争は避けるべきなんです!」

エテボース「これ以上同胞が死んでいくのを見てどうするんですか!」

エテボース「人間がいたころは……タイプも種族も関係なく平和な時代が続いていたそうじゃないですか」

エテボース「どうしてそれを理想としないんですか!」

ムウマージ「知っていますヨ……それゆえニ……でス」

エテボース「?」

ムウマージ「まあこれ以上の会話は無駄でス」

ムウマージ「お帰りなさイ」

エテボース「……」トボトボ 

ドロン



ゴースト「よかったんですか? いま殺しておいた方が……」

ムウマージ「ああいうのは最後まで絶望を与えるべきなんですヨ……」

ゴースト「おお、おそろし おそろし」

ムウマージ「元老院時代の皆さんにそっくりですネ……」

ムウマージ「もうほとんど残っていませんけド……」

2か月後、ノーマル・飛行連合帝国及び水の国はゴースト、電気王国両国に宣戦。

第二次戦争となった。



本編もう少しで終わりますね

では



戦争は連合帝国側の好調。
悪国、氷の国での戦争に勝利し、解放した。


―――水の国群島 水中首都―――

カメックス「国境線が突破されただと!?」

カメール「はい!このままではまずいです……」

ゼニガメ「電気王国軍は火の勢いで水の国群島を占領しています!」

カメール「既に7割がやられたと……」

カメックス「もはやここまでか……」

水の国 無条件降伏。戦争が始まってから2年後のことだった。
元首は逃亡。上層部は逮捕。電気王国領管理下の自治区に成り果ててしまった。


―――ノーマル・飛行連合帝国―――

エテボース「孤立したか……」

ブースター「ちぃ。だがまだ勝機はある」

エテボース「氷の国も奪還されたし、草の国もエスパー国も陥落……」

ブースター「また奪い返せばいいさ」

エテボース「そうだね……最後まであきらめはしない!!」


ノーマル・飛行連合帝国は、水の国の敗北を境に勢いを失くしていった。

国内の資源は底を尽いた。だが、それでも諦めることはなかった。国内の士気だけは高くあり続けたのだ。
連合帝国は再三の降伏勧告を無視し、がむしゃらに悪国にとどまり続けた。

だが…


―――1年後 ゴースト国 政治・軍事局―――

ムウマージ「ええイ……思った以上にしつこいですネ……」

ムウマージ「もうこれ以上の被害は出すわけにはいきませン……」

ムウマージ「エテボース……貴方の言う通りニ」

ムウマージ「戦争を永遠に終わらせましょウ」

ムウマージ「ゴースト科学局長!」


ドロン


ゴースト「はっ」

ムウマージ「『アレ』を使いなさイ……」

ゴースト「なっ!? 『人間の遺産』のことですか!?」

ムウマージ「今使うしかありませン」

ゴースト「いいんですか……? まだ実用化できるとも……」

ムウマージ「構いませン。やりなさイ」

ゴースト「……わかりました」



―――数日後 悪国戦線にて―――


ルリリ「おかしいよ? 敵が基地の中から出てくる」

ミルホッグ「帰りたいなぁ……」

ミネズミ「ここで戦死すれば名誉なんだぞ!」

ブニャット「そうだよなぁ……!?」

ピカッ

ピンプク「うわぁぁぁっ! まぶしい!!!」

ミネズミ「なんだありゃあ!?」

グランブル「目がぁっ! 目がぁっ! ……ぐわぁぁぁぁ!!!」

ゴォォォォォ……


―――電気王国―――

エレキブル「貴様……あれは一体何のつもりなのだ……」

エレキブル「あの広大な悪国領土の半分を一瞬で焼け野原にするなど、ポケモンの力では不可能だろうに」

ムウマージ「そうですネ。伝説のポケモンでも呼び出さない限りハ」

エレキブル「そんな馬鹿な! 伝説のポケモンなど神話の中の存在にすぎないはずだろう!」

ムウマージ「はイ。そうでス」

ムウマージ「確かに伝説のポケモンなどは存在しませン」

ムウマージ「ですガ……かつてそれと同等の力を手にした種族がいタ」

ムウマージ「私たちは、その力の再生に成功したのでス」


ムウマージ「ヒヒヒ……これですべての国は我がゴースト国の前にひれ伏すのでス!」

エレキブル「野望のために初めから皆を欺いていたというのか……」

エレキブル「今までの、平和のための多くの犠牲はすべて無駄だったというのか!!」ビリビリッ

ムウマージ「そんなものですヨ……まあ平和にも色々な平和のカタチがあるのでス……」

ムウマージ「かつての『ニンゲン』による支配もまた一つ平和だったのですヨ」

ムウマージ「では私は去りまス……次は是非頭を垂れて頂きますからネ……ヒヒヒ」

ドロン

エレキブル「ふん……吾輩も結局は愚公か……」

エレキブル「このまんねりした王政に嫌気がさして、世界平和を求めたのはいいが……」

エレキブル「まんまと騙されて、それを遠ざけてしまうとは……」

エレキブル「ウインディに顔向けができんな……ははは」ガックリ


―――ゴースト国 政治・軍事局―――

ムウマージ「大成功ですネ」

ムウマージ「これで長い長い戦争も終わりますヨ……」

ゴースト「そうですね……」

ムウマージ「どうしたんですカ?」

ゴースト「いえ、何でもないですよ。ただ私もポケモンですから……後ろめたいことはあります」

ムウマージ「まあまア……それは全て私が背負いまス……貴方は悪くありませんヨ……」ニコッ

ゴースト「局長……」


ピカッ

ゴォォォォォォ……


―――ノーマル・飛行連合帝国 元大統領邸ベランダ―――


ブースター「正体不明の爆発……一体何をしたんだ……?」

ブースター「だがどうして自国まで……」

ブースター「終わり、か」フッ

ブースター「いつから僕はこんな夢を見ていたのだろう」

ブースター「はは。長い長い夢だった……」

ブースター「もうレールも途切れてしまったか」

ブースター「いや、目的地にたどり着いた……と言った方が正しいのかもしれないな」

ブースター「エテボースを利用したつもりが、ただ乗せて行ってもらうだけになってしまうとはな……」

ブースター「皮肉な話だよ」


トコトコ

エテボース「どうしたんだい?」

ブースター「いや、なんでもないさ」

エテボース「もう降伏は受け入れた。戦争は終わったんだよ……」

ブースター「ああ。これで平和が戻るだろう」

ブースター「もう役目は終わった」ゴォ

ブースターは紅蓮の炎を口に含んだ。

エテボース「何をっ!?」ザッ

ブースター「ここで君を殺し、僕は新たな大国を築くんだよ……!」

ブースター「なんてな、冗談さ」シュン

ブースター「はは。大国を作るという夢。もう存分に叶えさせてもらった」

ブースター「だから僕は夢と共に散るのさ」

ブースター「楽しかったよ」ニヤッ

シュタッ


エテボース「なっ! ブースター!!」

すぐにベランダから身を乗り出したが、見えたのはブースターの無残な姿だけだった。

エテボース「そんな……」

エテボース「ようやく平和が時代が来るっていうのに……」

エテボース「どうしてだよブースター!!」

エテボース「どうして……」グスッ

エテボース「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


―――…

ノーマル・飛行連合帝国は、謎の兵器により悪国戦線の多くの兵を失った。だが、謎の兵器はゴースト国をも焼き払ってしまった。

それにより、降伏を受諾することとなった。

ノーマル・飛行連合帝国は、14年続いた帝政を破棄、共和国となる。
直ちに憲法改正及び軍の解散を行い、エテボースは戦犯として国の主権保護と引き換えに処刑された。 



だが、電気王国も戦争の疲弊により大国を支える支配力はなかった

電気王国も戦後王政と当時の経済体制を撤廃し、電気国となった。

電気国支配圏の各国は悪国、ゴースト国を除き、主権を持って独立することとなった。 


のちに元老院長にペルシアンが立ち、新生ポケモン共和国が建国される。そして、戦争の反省を生かして、安全保障議会を立ち上げた。電気国 氷の国 竜の国 炎の国 が常任理事国であった。

ノーマル国と近隣諸国は復興をつづけるも、謎の兵器の毒性が発覚し、悪国、ゴースト国は立ち入り禁止区域となる。

それをはじめとした紛争は長く長く続いた。真の平和が訪れることはなかったのである。

ノーマル国発展に尽くしたエテボースは悪人として伝えられることとなった。
 

現在ノーマル国は電気国に次ぐ経済大国として栄えている。



エテボース(ポケ歴887~945 在位930~945)
ノーマル・飛行国第一議長及びノーマル・飛行連合帝国皇帝。

ノーマル・飛行国敗戦後、反帝国組織を設立。
後にブースターと共にクーデタを起こし、皇帝となった。

連合帝国は、第一次戦争には勝利するも、第二次戦争に敗北。 
その間、恐怖政治によって無理矢理経済成長を成し遂げたと言われる。

敗北後に電気王国へ移送され、非公開に処刑される。

※なお、その後突如炎の国に現れ、一大復興と繁栄を成し遂げたエテボース大統領と同一ポケモンであるのではないかという説もあるが、かなり少数派の意見となっている。

Chapter7「平和の夜明け」 END

ポケモン戦記本編 完




ということで『本編』はおしまいです!

前スレからの長丁場に付き合っていただいてありがとうございました。
それではまたいつか会いましょう!


……と言いたいところですがまだ終わりません。
本編のおまけとして4つほどスピンオフとしてのエピソードを作ってみました。

せっかくなのでどれからいくか安価してみようと思います。

1.本編後日談 (短編)
2.帰ってきたアイツ (長編)
3.第一次大戦 前期 (かなり長編)
4.第一次大戦 後期 (かなり短編)

のどれか、>>64でお願いします。もしかしたらまだ増えるかもです。。。

1


うおwwwきてるwww

じゃあエピソード1いきますねー

本編後日談
主人公:エテボース



―――終戦後 電気王国 牢獄―――


エテボース「これで……よかったんですね……」

エテボース「プクリン大統領……ブースター……ザングース……もうすぐ会えますね……」

スタスタ

エレキブル「ははは。元気か?」

エテボース「貴方はエレキブル国王!? 国王陛下がこんなところで何をしているのです?」

エレキブル「ふん。野暮用だ野暮用」

エレキブル「……」

エテボース「……」




エレキブル「……吾輩は王位を降り、王政を撤廃するつもりだ」

エテボース「え」

エレキブル「かつては水の国に対抗して建てられた『電気社会主義人民共和国』」

エレキブル「平等を謳ったその国の政府の権力は、社会主義の独裁が続くにつれて強大になっていった」

エレキブル「いつのまにか世襲制だった政府の最高権力者は『国王』という役職に変わり」

エレキブル「政府の役人は『貴族』へと変わっていたのだ」

エレキブル「吾輩が王政を撤廃したところで原点へ、『平等』へ回帰するだけなのだよ」

エレキブル「さらに今のこの国を見てみろ。もう戦争でボロボロだ」

エレキブル「経済体制ももう破綻寸前……」

エレキブル「もう大国としての威厳などない」

エレキブル「すべてはゴースト国に騙されていただけだったようだ」


エテボース「そうだったんですか……」

エレキブル「正直に賞賛させてもらう」

エレキブル「あの短い時間での発展……占領国からの脱出……君主の見本なり」

エレキブルは膝をつき、エテボースに頭を下げた。

エテボース「な、おやめください! 罪人に礼など……」

エレキブル「吾輩は愚公だ。平和こそ成し遂げたものの……実質何もできやしなかった!」バリバリ

エレキブル「最後まで侵略ばかりだ。ウインディと何も変わりはしなかった」

エレキブル「吾輩に貴公を殺すことなど到底出来ぬ……」

エテボース「何を仰るのですか……」

エレキブルは立ち上がり、わざとらしく言った。


エレキブル「あーあー。ゴホン。明日、お前を絞首刑に処すー」

エレキブル「吾輩はその『大きな尻尾』が邪魔だと何度もいったのだがなー」

エレキブル「側近どもは許してくれなくてなー」

エレキブル「非公開にはしたがー絶対にその尻尾で縄をつかんで助かろうなどと思うなよー」

エレキブル「そうなっても、我が国の法では『死亡扱い』になってしまうからなー」

エレキブル「はははー。まさか先代も受刑者が生き残ることなんぞ考えていなかっただろー」

エテボース「エレキブル王……」

エレキブル「さらばだー」テクテク

エレキブルはテクテクと来た方向へと戻っていく。

ピタッ


エレキブル「まさか法の穴がこのようなところで役に立つとはな……」

エレキブル「貴公には炎の国の復興をお願いしたい」

エレキブル「まあ、生きるか死ぬかを強制はせん」

エレキブル「あと、吾輩はもう『王』ではないぞ……ハハハ」スタスタ

エテボース「あ……」



―――次の日 死刑台―――


エテボースは死刑台の階段を一歩一歩上っていった。

サンダース「さぁ……縄を」

キュッ

エテボース「どっちみち『私』は死ぬんですね……」

サンダース「はい……しかし、まだ死ぬべきではありません……」

エテボース「……」

エテボース「『悪者』として、私は死を受け入れるつもりですよ」

エレキブル「……やれ」

パカッ

ギィィィ……


―――…

ロトム「本国が消えてもゴーストタイプは滅びないのじゃー」

ロトム「さっさと王に入れ替わって……」

サンダース「聞かせていただきました」

ロトム「お前は国王顧問官の!?」

サンダース「貴方を逮捕します」ザザッ

ロトム「ムウマージ様ぁ~……」


後、シャンデラやユキメノコなど、ゴースト国に関わっていた者たちが次々と逮捕。その野望が暴露された。だがそれは全く知らされることはなく、戦争はただエテボース帝の悪行であるという常識が定着していった――


―――…数か月後 炎の国

サンダース「いよいよですね。この宣言によって新首都と元首が国民に知らしめられるのです」

「そうだね。最初のうちは反発もあるだろうけど……いつかは理解してくれるだろう」

「電気王国…今は電気国だね。そのお陰でシャンデラは逮捕されたし、ガーディ皇太子も戦死して内戦は落ち着いたからね」

サンダース「貴方の政治力ならばきっと大丈夫ですよ」

サンダース「それにしても、僕を首相に選ぶなんてそちらの方が驚きです」

「ん?いやあそれは……」

「君も元はノーマル・飛行国出身なんだろう?」

サンダース「はい。そうですね」

「そこから国王顧問官まで出世したなら大したものだからね」

サンダース「いえ……あの役職、実は歴代でも就任して5か月間も生きていた者がいない貧乏くじだったんですよ……」


サンダース「無能な役人の処理場みたいなものだったんです」ハハ

「でも君は生きているじゃないか。つまり君は無能じゃないってことじゃないのかい?」

サンダース「いえ、たまたま運よく任期と王政破棄がかぶっただけです……」

「そう謙遜するなよ。君は十分な器を持っているさ」

「それと、君は私の死んだ友人に似ている気がするからかな」

サンダース「僕が友人に……ですか?」

「ああ。君と同じイーブイ族のね」

「彼のお陰で今の私があるんだ」

「一度他国へ渡り、功績をため、自分の信念のために祖国へ戻り繁栄させた英雄だよ」

サンダース「そうなんですか……」

「まあ君よりももっと図々しかったけどね」ハハハ

サンダース「あ、そろそろ時間ですね」

「おっと、雑談している間にあっという間に時間が過ぎてしまったみたいだ」

サンダース「行きましょう」

「ああ。私の最後の大仕事だ」


―――…

その後、炎の国は突如現れた『英雄』により大復興を遂げた。

彼は安全保障議会なる組織を提案し、さらなる平和を約束した。

彼は善政を敷き、内戦を完全に平定した。

彼はノーマル国と強い提携を結び、産業を発展させた。

彼はノーマルタイプとして、差別を完全になくした。

彼は死後も語られる偉ポケモンとなった。

だが、とある悪者との関連は皆無と証明された。

悪者は確かに『死んだ』からである。

本当のことを知るのは一部の者に過ぎない。

ただほっそりとその本当の英雄伝は伝えられていくのであろう

Extra chapter END「英雄と悪者」


>>77

2~4で安価しまーす

2

お、来てますねー

では次はエピソード2「帰ってきたザングース」

主人公:ザングース


―――…

「はぁっ……はぁっ……」タッタッタッタッ

「ここまでくれば……」タッタッタッタッ

「ぐっ……」バタッ

「もう三日は走りっぱなしだ……限界か……」ハァハァ

ガサガサ

「!?」


「まさかこんな森の中に炎帝国軍が……?」

「ちっ……もうダメか……」ギュッ

エイパム「あ、あなたは!?」

エイパム「ザングースさんじゃないですか!」

ザングース「あ、お、お前は……?」

エイパム「大丈夫ですか?今すぐ仲間のところに……!」

ザングース「すまない……」



―――数週間後 ノーマル共和国 サウスエリア郊外―――

ムクホーク「まさかお前が転がり込んでくるなんてなぁ」

ザングース「ああ。親ノーマル派の帝国軍にも助けられたが……ノコノコと殺されに行くわけにもいかなかったんだよ」

ザングース「それよりお前が生きているのも不思議だろうに」

ザングース「先の戦争で死んだんじゃなかったのか?」

ムクホーク「エイパムが助けてくれたのさ。私が襲撃された後、必死で氷を溶かして連れ出してくれたんだ」

ムクホーク「まあ『鳥の4将』は私だけになっちまったみたいだが……」

ザングース「なるほどな……それで、こっそり残党を捕まえていたと」

ムクホーク「そうだ。いざという時のためにとな」


ザングース「……だがもうそれも必要なさそうだな」

ムクホーク「うむ。先日の革命で炎帝国の勢力は排斥された」

ムクホーク「有志によって、ほとんどの者は新帝国の軍に帰化させるつもりだよ」

ザングース「お前はどうするんだ?」

ムクホーク「私か?私は残る」

ムクホーク「こんな翼じゃもう飛べもせん……」バサッ

彼の翼はボロボロになっていた。恐らく先の襲撃でやられてしまったのだろう。


ザングース「そうか……」

ザングース「ならば、俺の話に乗らないか?」

ムクホーク「ん? なんだ?」

ザングース「俺が第一議員をしているときに妙な噂を聞いたんだ」

ザングース「とある国に『人間の遺産』が存在している。そしてそれは恐ろしいものであると……」

ムクホーク「人間の遺産?」

ザングース「ああ。だが俺もそれが何かが正確にわかっているわけじゃない」

ザングース「だから、死ぬ前にここまで逃げてきて突き止めようと思ったのさ」


ムクホーク「なるほど……タダでは死なんということだな……」

ザングース「ああ。ぜひ協力してほしい」

ムクホーク「いいだろう……こんな老体でよければ喜んで力を貸そう!」

ザングース「十分だよ。ありがとう」

ムクホーク「ならば今からは?」

ザングース「俺が噂を聞いたのは悪国の商人だ」

ザングース「落ち着いたら悪国へ向かおうと思う」

―――…


―――悪国―――

悪国は国とはいえど、その実態はマニューラをリーダーとした組織体である。
憲法や明確な法などは定められておらず、ただ暗黙のルールに従って動く怪しい場所であった。
だが、経済は活発で、各国の商人がここで市をよく行っていた。
それもあり、他タイプの者が悪国内を歩き回ることに特に問題はなかったのである。

ムクホーク「ふむ……初めて来たが、意外と賑わっているんだな」

ザングース「ああ。」

ムクホーク「あてはあるのか?」

ザングース「ない」

ムクホーク「」


ザングース「冗談だよ……まずは噂の発信源を辿る」

ザングース「うまくいけば幹部にも立ち会えるかもしれない……」

ムクホーク「なぜだ?」

ザングース「簡単なことだ」

ザングース「普通ならそんな噂誰も信用しないだろう?」

ザングース「だが、その商人は俺を引き留めてまでその噂を俺に教えたんだ」

ムクホーク「そんなのそいつが信じやすい性格だったんじゃないのか?」

ザングース「いや、そんなことはない。言ってなかったがそのとき俺は2万ポケを渡されたんだ」

ザングース「狡猾な彼らが、証明料などと言って置いていったんだぞ? おかしいと思わないか?」


ムクホーク「なんと……」

ザングース「つまり、その噂はこの悪国から意図的に流されている可能性が高い……」

ムクホーク「だから幹部とのつながりが濃厚というわけだな」

ザングース「そうだ。しばらく聞き込みをしよう」

ザングース「怪しまれない程度にな」


―――数週間後 悪国 末席幹部の館―――

アブソル「ブラッキー様。最近この辺りで『人間の遺産』について触れ回る輩がいるそうです」

アブソル「どう致しますか?」

ブラッキー「おお、ついに現れたか。商人共は一体誰に目星をつけたのかしら?」

アブソル「どうやらノーマルタイプの者らしいです」

アブソル「ザングースとムクホークという種族の者だと……」

ブラッキー「いいでしょう」

ブラッキー「そいつらを呼び寄せなさい」

ブラッキー「これでたっぷりお礼が出るわ……ムフフ」

アブソル「御意」


―――数日後 館前―――

アブソル「ここが主人の館です。どうぞ」

ザングース「ああ。ありがとう」

ムクホーク「まさか本当に幹部つながりだとは……」

ザングース「はは。『遺産相続』も捗りそうだな」


―――末席幹部の部屋―――

ブラッキー「わざわざ悪国までようこそ」

ザングース「一応隣国だからな」

ブラッキー「そうでしたわね……フフ」

ブラッキー「それで、あなた方はあの噂を聞いていらっしゃったんでしょう?」

ムクホーク「うむ。ということはあの噂は貴方が流したということですな」

ブラッキー「いかにも。と言っても、ワタクシもある方に依頼されたんですけどね」

ザングース「!?さらに後ろがいるということか」


ブラッキー「そうですわ。実際にここまで来たのはあなた方が初めてですけど……このことを教えるのも依頼の一部です」

ブラッキー「しばらくは泊まっていってください」

ブラッキー「次にまた戦争が始まるまでは泊めておけというのも依頼の一つです」

ムクホーク「そうですか……ではお言葉に甘えて」

ザングース「そうだな。当てがなくて困っていたしちょうどいい」


――…

それから俺たちは束の間の平和を楽しんだ。
館は豪華そのものだった。
使用人にはノーマルタイプの者もいたので、すぐになじむこともできた。

だが、どうしても心が晴れることはなかったのだ。『人間の遺産』とは何なのか……考えるまま夜は眠れない。

そんな時には祖国の繁栄を知って歓喜するのだ。エテボースは表の舞台で賢帝を演じ、俺は裏でぬくぬくと平和を楽しむ。
こんな生活も悪くないと思った。

そんな時だった。 



―――5年後―――

アブソル「開戦です! ノーマル・飛行連合帝国と氷の国が格闘国で衝突!」

ブラッキー「ついに始まりましたか」

ブラッキー「まあ悪国に被害はないでしょう。これは儲かりますわ…」…ムフフ」

アブソル「しかし……あの二匹はどうします?」

ブラッキー「そうですね。依頼の続きをお願いしましょう」


―――…

ザングース「で……」依頼の続きというのは?」

ブラッキー「はい。ワタクシへの依頼主のことです」

ムクホーク「ふむ。一体誰なんだ?」

ブラッキー「ほとんど身の上は隠されていたのですが……」

ブラッキー「ゴースト国のゴーストです」

ザングース「ゴースト国か……やはりあの国怪しいと思ったら……」

ムクホーク「政治体制もいまだに謎の隠密国家……下手に手出しはできませんな」

ブラッキー「ええ。しかし、戦争が始まった。ゴースト国はさらに何かしらの動きを見せると思われますわ」


ブラッキー「その隙をついて潜入を……」

ザングース「あそこの国境は厳しいんじゃなかったのか?」

ブラッキー「はい。真向に行けばまず毒殺ですわね」

ブラッキー「しかし、参戦すれば話は別……国境の警備は手薄になる」

ブラッキー「ゴーストも何かしら手を入れているでしょうし……大丈夫でしょう」

ムクホーク「また無茶苦茶ですな」

ザングース「構わないさ。どうせ俺はもう死んでるはずなんだからな」

ブラッキー「あら。どいうことなのですか?」


ザングース「俺は元ノーマル・飛行国第一議員のザングースだ」

ムクホーク「元軍司令のムクホークです。以後お見知りおきを」

ブラッキー「! あらあら。商人もえらく大きな穴を選んだようですね」

ブラッキー「ムフフ……これはお礼をはずんでもらわないと……」

ザングース「ん? 何か?」

ブラッキー「いえいえ。何でもありません」

ブラッキー「まあそういうことです。まあもうしばらくはゆっくりしていってください」

ムクホーク「ここまでしていただいて申し訳ない」

ザングース(お礼……?)


―――数か月後―――

ザングース「長い間世話になったな」

ムクホーク「また会う機会があれば!」

ブラッキー「はい。ではまた……」

二匹は西の方へと旅立っていった。


―――…

ブラッキー「さて……お礼をもらいましょうかゴースト」

ゴースト「お久しぶりですね……」」

ゴースト「本当にありがとうございます」

ブラッキー「お礼のポケはずんでもらいますからね。何せノーマル・飛行国の元上層部を送ったのですから」エッヘン

ゴースト「残念ですがポケでは渡せません」

ブラッキー「なんですって!?」

ゴースト「私が貴方にだすお礼は『情報』です」

ブラッキー「な、そんな話通用すると思っているの!?」

ゴースト「はい。しばらくすれば貴方も納得しますよ」


ブラッキー「そんな根拠のないことを……」

ゴースト「まあまあ……よく聞いておいてください」

ブラッキー「ちっ。いいでしょう。くだらなかったらあなたを斬り捨てますからね」チラッ

アブソル「……」ザッ

ゴースト「はい。もうすぐ電気王国がこの悪国に宣戦します」

ブラッキー「は!? あんなポケモン共和国の正反対側にある国がどうやって……」

ゴースト「先日始まった氷の国への侵略」

ゴースト「あれはこの国を狙ってのものだったのです」

ブラッキー「な……なんということなの……リ、リーダーに知らせなくては……」


ゴースト「無駄ですよ。もう数日で電気王国は氷の国を占領しきり、ゴースト国を貫通してこの国に侵攻します」

ゴースト「あなたが逃亡の準備をする間にはもう侵攻は始まるのです」

ゴースト「しかも、貴方はあまりマニューラに好かれてもいない末席幹部……」

ゴースト「まず信じるような方はいないでしょう」

ブラッキー「く、そんな所まで図っていたとは……」ペタン

ゴースト「今すぐにでも逃げることをおススメします」

ゴースト「ではこれにて」ドロン

ブラッキー「電気王国……」

アブソル「ブラッキー様……」

ブラッキー「……できるだけのことはするわ」

ブラッキー「まずはマニューラ様に助言して、悪国辺境にて様子をうかがうことにしましょう」

ブラッキー「万が一敗けたとしても、そこからまたやり直せるようにね……」

アブソル「御意」



ゴーストの言葉通り、数日後に悪国と電気王国との戦争は始まった。

ブラッキーは悪国消滅後、悪国幹部の中で唯一生き残った。そして終戦後には、祖国復活のため内戦を率いてゆくこととなるのだ…


―――数か月後 ゴースト国北部―――

ムクホーク「結局ノーマル・飛行国からの回り道になっちまったな」

ザングース「仕方ないだろう。ゴースト国と悪国は戦時中だ。国境なんてガチガチだろう」

ザングース「それに……もうあの国は『ノーマル・飛行連合帝国』に生まれ変わったんだぞ」

ムクホーク「おおそうだったな。つい懐かしくなってしまうようだよ」

ザングース「まあいいじゃないか。新しい国もエテボースがうまく引っ張っているようだしな……」

ドロン


ゴースト「いやはや初めまして」

ザングース「敵か!?」

ムクホーク「つばさで……」ザッ

ゴースト「お待ちください。私が貴方がたの依頼主、ゴーストです」

ゴースト「隠れ家は用意してあります。ひとまずはそこへ……」


ゴースト国のポケ口密度はかなり低く、町へ行っても何もいないことはよくあった。
経済体制は電気王国と大体同じ。だが、あまり裕福とは言えない、独裁国家であった。


―――…

ゴースト「いやはや……さすが元幹部様ですね。この国に難なく侵入するとは……」

ムクホーク「難なくではなかったがな」

ザングース「ああ。一度見つかりかけた」

ゴースト「おおお。もし見つかっていたら私の命も飛んでいましたよ……危ない危ない……」

ムクホーク「?」

ザングース「ところでお前は一体どういう身分なんだ?今の言い方からしてただの国民じゃあないだろう」

ゴースト「はい。私は……ゴースト国の科学局局長を務めています……」

ザングース「科学局?」

ムクホーク「そんなところは初めて聞いたな」

ゴースト「当然ですよ。極秘ですからね。ゴースト国には厚生局、総務局、財務局などがあってですね……」


ゴースト「独裁の中心地は政治局と呼ばれる場所なんです」

ゴースト「そして、ムウマージ政治局局長がこの国の君主なのです」

ムクホーク「そんな極秘のことを軽々と……大丈夫なのか?」

ゴースト「はい。私科学局局長はムウマージ局長第一の部下……いわば最高幹部なのです」

ゴースト「権力で多少はどうにかできます。まさか局長も最高幹部が裏切るなんて予想もできないでしょうから……」

ザングース「で、この依頼の趣旨を教えてもらおう。『人間の遺産』とはいったいなんなんだ?」

ゴースト「はい……」


ゴースト「貴方がたはどうして人間が滅んだか知っていますか?」

ムクホーク「知らないな……」

ザングース「考えたこともない」

ゴースト「……私たちはその原因を知っているのです……建国以前から……」

ザングース「そんな前から……もう何百年も前の話じゃないか」

ゴースト「はい。そしてその原因とは……」

ゴースト「戦争ですよ……何百万というポケモンたちと人間たちが互いに争い合ったのです」

ゴースト「しかし、それでも決着はつかなかった」

ゴースト「人間は、最後にその知恵を使い、ある兵器を使ったのです」


ムクホーク「ヘイキ?」

ゴースト「はい……簡単に多くの命を奪える恐ろしいものですよ」

ゴースト「マルマインの爆発原理を解明し爆発力を極限まで高め、さらにわれらゴースト族の強力な毒を混ぜた爆弾です……その爆発力は元のマルマインの約2千万倍で……うんぬんかんぬん」

ゴースト「とまあこれが『人間の遺産』の正体なのです」

ムクホーク「???」

ザングース「???」

ゴースト「とりあえず……マルマインのように爆発し、国一つを焼きつくし、さらに毒を盛った危ないものだということです」

ザングース「な、なるほど……そんなものがここに実在しているということか」

ムクホーク「使われればポケモン共和国の全てが吹き飛ぶな……」


ゴースト「いえ……さすがにそこまでは……せいぜいゴースト国がまるごと吹き飛ぶ程度ですよ」

ザングース(それでもすごいような……?)

ゴースト「私達科学局はその遺産を発掘し、また使えるように修復していたのです」

ゴースト「現在3つが修復に成功しました……」

ザングース「そんなもの国際法以前にあってはならないものだろ……」

ゴースト「はい……私もそれを修復する間に恐ろしくなったんです」

ゴースト「ムウマージ局長は次の戦争にでも使うつもりでしょう……」


ムクホーク「今はゴースト国は参戦していないんだよな」

ゴースト「はい。しかし、ゴースト電気、ノーマル水両陣営はこの戦争のあとも対立を続けるでしょう」

ゴースト「第二次戦争は避けられるものではありません……」

ゴースト「もし使われることになったら……安全な起爆方法を教えますから、この国のなかで爆発させてください」

ゴースト「もうこの国は滅ぶべきなのです」

ムクホーク「なぜそこまで……」

ザングース「祖国を粗末に考えてどうする!」

ゴースト「貴方がたが知らないのも無理はありません」


ゴースト「この第一次戦争の……いやもっと前、ノーマル・飛行国を滅ぼした元凶はこのゴースト国なのです」

ザングース「なんだと!?」

ゴースト「事の発端はあの『北部大連合』までさかのぼります……」

ゴースト「あの大連合発足を影で結びつけたのがムウマージ局長なのです」

ゴースト「さらに氷の国女帝のユキメノコ、炎帝国左大臣のシャンデラらもムウマージ局長の手下であり……」

ゴースト「彼らはこっそりと戦争が始まるよう動いていたのですよ……」

ムクホーク「なんということだ……」

ザングース「すべてはこの国に踊らされていただけだったのかっ……」ギリ

ゴースト「はい。だからもうこのようなことを繰り返さないためにも……」

ゴースト「協力をお願いしたいのです……」



―――7年後 第二次戦争終戦間近 ゴースト国 科学局―――

「シンニューシャダー」

「ニンゲンノイサンマデタドリツカセルナー」

「ソッチニイッタゾー」

ザングース「はあはあ。もうすぐだ……」

ムクホーク「私たちの戦いもついに終章だな」

ザングース「ああ。いままでありがとう」


――― 1時間後 最深部 ―――

シュン

ザングース「ここだ……」

目の前には、ザングースと同じくらいの大きさの球体が厳重に安置されていた。
遊び心なのか、無機的な金属球にマルマインの模様があしらわれている。

ムクホーク「おいまて! 2つしかないぞ!」

ザングース「しまった! もう運び出されたか……」

ザングース「仕方ない。この二つだけでも起爆させよう」

ムクホーク「思いっきり技をぶつければいいんだよな」

ザングース「ああ。ゴーストの言ってることは何一つ理解できなかったさ」


ムクホーク「そうだな。生き残ったってどうしようもない」

ザングース「俺は誰も知らない英雄にでもなるさ。エテボースだって一緒だろう」

ムクホーク「はは。オオスバメ、オニドリル、ケンホロウ……そしてムクホーク。『鳥の4将』最後の一匹にふさわしい死にざまよ!」

「アイツラッ」

「マズイッキバクサレタラウゴカセンゾ」

「タイヒ! タイヒ!」ドロンドロン

ザングース「あいつらも見物していけばいいのにな」

ムクホーク「そうだな……さーて」

ザングース「遺言もない。やるぞ。俺は右、お前は左だ」

「せーの!」

「「はかいこうせん!!!」」

ドォォッ

ガイブカラノコウゲキヲカンチ

キバクシマスキバクシマス……



カッ




―――数分前 政治・軍事局―――

ムウマージ「大成功ですネ」

ムウマージ「これで戦争も終わりますヨ……」

ゴースト「そうですね……」

ムウマージ「どうしたんですカ?」

ゴースト「いえ、何でもないですよ。ただ私もポケモンですから……後ろめたいことはあります」

ムウマージ「まあまア……それは全て私が背負いまス……貴方は悪くありませんヨ……」ニコッ

ゴースト「局長……」


ゴースト「申し訳ありません。最後に貴方を裏切ってしまうとは……」

ムウマージ「?」

ゴースト「今、科学局にある残りの爆弾を起爆させようと、ある方々が向かっています」

ゴースト「もう爆弾までたどり着いているかもしれません」

ゴースト「この国も野望も終わりですよ」

ゴースト「……しかし……私に貴方を殺すことは……できない……」

ムウマージ「そうですカ……まあこうなることは分かっていましタ……」

ゴースト「え?」

ムウマージ「私の野望とは人間が存在していたころの『平和』を再びもたらすコト」

ムウマージ「ですがどうして私がその時代のことを知っていると思いますカ?」


ゴースト「え、それは遠い昔にこの近くから古文書が発見されたのでは……」

ゴースト「それにゴーストタイプに寿命はないはずです」

ムウマージ「確かにそうかもしれませんネ」

ムウマージ「ならばゴースト科学局長。なぜあなたは知らないんですカ?」

ゴースト「それは……」

ムウマージ「あなたは物心ついた時からこの国の科学局にいたはずデス」

ムウマージ「それにはワケがあるのですヨ」

ムウマージ「このゴースト国はかつて人間がいた時代、最も強大な国家が存在していた土地なのでス」

ムウマージ「そしテ、その国は戦争の際真っ先に『爆弾』を使イ、自他もろともを破壊しつくしタ」

ムウマージ「その時に犠牲となったポケモンと人間は強力な恨みの塊となリ、『爆弾』を使用した君主を呪ったのでス」


ゴースト「呪った……とは……」

ムウマージ「その君主が私なのですヨ」

ムウマージ「その呪いは責任のある人間を片っ端からこの姿で現生に甦らせタ……」

ムウマージ「特に私は前世の記憶付きでネ…」

ムウマージ「寿命のないまま永遠にこの世を彷徨うようにでス……」

ゴースト「そんな……では私にも重い責任が?」

ムウマージ「えエ……」

ムウマージ「あなたはかつて『爆弾』を開発した人間でしタ」

ムウマージ「それがまさか人類をも滅ぼすことになろうとも知らずにネ……」

ゴースト「なんてことだ……」

ゴースト「私は同じ過ちを繰り返そうとしていたのですか……」


ムウマージ「前世の記憶が残っていたんでしょウ」

ムウマージ「げんにこうやって私の野望を止めているのもその影響でしょうネ」

ムウマージ「しかし私は決して諦めなどしませン」

ムウマージ「必ずやその『復讐』に『復讐』する日までネ」

ムウマージ「再び世界を我が手二……私の『平和』を取り返してやりまス」

ゴースト「局長っ!」

ゴースト「どうか地下に…緊急用のシェルターにお行きください!」

ムウマージ「えエ……」

ムウマージ「またどこかの時代で機会を狙うとしましょウ……」


ムウマージ「貴方は来ますカ?」

ゴースト「いえ。行けません」

ゴースト「私は何十万という命を奪いました」

ゴースト「もうこれ以上罪を重ねるのはどうも恐ろしいのです」

ムウマージ「それが賢い判断でス……」

ムウマージ「またお会いしましょウ」

ムウマージ「それこそまたゴーストになって、ネ……」

シュン

ゴースト「はあ……私は……」

ゴースト「ふふ……それもまた面白いかもしれませんね」ニヤ

ゴースト「さて、古の花を特等席で見させてもらいましょうか……」

窓から外を見れば、目と鼻の先に科学局が見えた。
職員たちが次々と逃げ出している。もうすぐこの戦争も……

カッ

ゴォォォォォォォ……


―――…

その後、ゴースト国は立ち入り禁止区域となり、事実は封印された。

ザングースのことも、ムクホークのことも、何1つ記録されることはなかった。
ただ元悪国幹部の話を除いて。

噂では、その立ち入り禁止区域のゴースト国で姿影が目撃されたとか。
時を超えて、再び世界が脅威に曝されるという話は、また別の物語である。

ここにおいて、裏の戦争も終わりを告げる。
知られていることが本当の歴史とは限らない。もしかしたら、誰も知らない英雄が存在していたのかもしれない。

Extra chapter END 「誰も知らない」


ようやく後二つですね……これは長すぎた

3大戦前期 氷の国編
4大戦後期 悪国編

>>123でいきましょう


予定変更とっとと全部投稿して落とします


―――第一次大戦直前 氷の国首都 グレイシア姉妹の邸宅―――

テクテク

中央軍事委員会が召集された。格闘国での暴動のことだろう。今こそ好機。これに付け込んで格闘国を併合してしまえば氷の国は大国へと成り上がれるだろう。最大の天敵炎の国は崩れた。発展途上のノーマル帝国など取るに足らない。

グレイシア妹「……姉上、行きましょう」

グレイシア姉「そうね。またしばらく会えそうにないわね……」

グレイシア妹「仕方ありません、それが仕事です」

グレイシア妹「必ず、勝利して参ります」

グレイシア姉「フフ……大分肝も据わったじゃないの」

グレイシア姉「いい加減その堅苦しい敬語もとったら?」

グレイシア姉「一応姉妹なんだから」

グレイシア妹「いえ、上官に無礼なことはできません」

グレイシア姉「まったく。相変わらず生真面目な奴」ハァ

グレイシア姉「表情くらいつけないとモテないわよ」ツン

グレイシア妹「必要ありません」ツーン

グレイシア姉「そう……」

グレイシア姉「じゃあね中将」

グレイシア妹「はい。姉上」

グレイシア姉「必ずまた会いましょ」ニコッ

ガチャ


―――中央軍事委員会―――

トドゼルガ「ノーマル帝国は格闘国紛争への介入を正式に議決した」

トドゼルガ「戦争は避けられんな」

ジュゴン「はい。我らもいち早く準備を進めるべきだと思われます」

ユキノオー「第一から第五師団まですべて召集が完了した」

ユキノオー「現在格闘国国境付近へ歩を進めている」

ルージュラ「女帝閣下からも宣戦の許可が下りたわよ」

グレイシア姉「格闘国の地形、気候、ノーマル帝国軍……すべての情報をあらかた集約し終えました」

グレイシア姉「最善の作戦を作戦参謀本部にて検討中」

グレイシア姉「今のところ要塞群を築いてノーマル帝国の岩・地面の国からの資源確保を妨害する戦略が有力です」

トドゼルガ「御苦労であった」

トドゼルガ「では我らは先手を打つことにしよう」

トドゼルガ「1週間後に、格闘国内の暴動、及びノーマル帝国に宣戦を布告する」

トドゼルガ「奴らは再び復活させた『ひこうタイプ空軍』を駆使してくるだろうが……」

トドゼルガ「恐れることは無い」

トドゼルガ「我らの氷をもって全て撃ち落とすのだ」

トドゼルガ「再び地獄を見せてやれ」

トドゼルガ「各自解散せよ。管轄機関にて指揮を執れ」

「「「はっ」」」」


―――1週間後 第五師団 出発式―――

正式に宣戦は布告された。ノーマル帝国は情報不足のため混乱。進軍が出遅れてしまった。

グレイシア妹「それでは作戦通り出発します」

グレイシア妹「もとは雑兵の寄せ集めだったこの第五師団ですが」

グレイシア妹「全員の努力の結果、他師団にも引けを取らない機動力と防御力を手に入れました」

グレイシア妹「必ず勝利できます」

グレイシア妹「我々はまず101ブロック、102ブロック、及び106ブロックを占領します」

グレイシア妹「その後、第三師団と合流し、この戦争の要である203高地へと進軍」

グレイシア妹「すぐさま要塞群を建設し、ノーマル帝国への資源搬入を妨害します」

グレイシア妹「第二、第四師団は105ブロックなどを占領し進軍」

グレイシア妹「第一師団は後方で総指揮調整を行います」

グレイシア妹「では出発しましょう」

グレイシア妹「機動力の尽くせる限りをつくさねばなりません」

グレイシア妹「この師団は他師団と違って師団次長なしに私のみが指揮をします」

グレイシア妹「全員従いなさい」

「オオオオオオオオオ!」

「氷の国に勝利を!」


第一次大戦勃発。
初期は陣取り合戦。氷軍は暴動が起こっている諸都市を格闘ポケモンと共に次々と抑え、格闘国の西半分を占領した。遅れてノーマル帝国は東半分をエスパータイプポケモンらと共同して占領。両者にらみ合いが続いた。

しかし、氷軍の方が一枚上手。ノーマル帝国は肝心の資源を滞らされ、世論、経済ともに悪化し始めた。


――― 開戦から1年後 ノーマル帝国 参謀本部―――

ブースター「うーむ。この配置をどう見る?リザードン参謀長」

リザードン「まずいですね」

リザードン「203高地を抑えられている限りは勝機は見えません」

リザードン「陸軍は203高地の攻略を最優先ととらえています」

リザードン「空軍はあまり積極的ではありませんが……先日譲ったそうです」

ブースター「そうだな……あそこのせいでノーマル帝国への物資輸送はかなり滞っている」

ブースター「少しづつ国内に影響が出始めているか……」

リザードン「はい」

ブースター「だがこれは氷軍の計略のうちだろう」

ブースター「奴らは203高地周辺に強固な要塞群を建設しているようだしな」

リザードン「空軍偵察隊の情報によればその通りです」

リザードン「しかし、恐らく氷軍の狙いはノーマル帝国のジリ貧です」

リザードン「最近独立したことを利用して不安定な世論を乱そうとしているのでしょう」

リザードン「激戦区になることが予想されますね……」

ブースター「そうか……」

ブースター「空軍の奇襲作戦はどうだ? 進んでいるか?」

リザードン「はい。ですがまだシュミレーションの段階です」

リザードン「まだ氷軍を突破するのは厳しいですね」

ブースター「実用化を急げ」

ブースター「ま、いいだろう」

ブースター「203高地決戦の総司令に任命する」

ブースター「必ず奪い取れ」

リザードン「はっ!」

その後陸軍司令部は203高地の攻略を決定。
帝国第三軍が派遣された。



―――氷の国 中央軍事委員会―――

ジュゴン「ノーマル帝国がついに203高地攻略を決定しました」

ジュゴン「激戦は免れませんね」

ルージュラ「ハッ!あんなぽっと出の軍隊なんぞ一ひねりでしょうよ!」

ユキノオー「その通りだ! 独立してまだ6年だぞ。たかが知れておる」

グレイシア姉「そうかしらね」

グレイシア姉「あんまり油断しない方がいいと思うけど?」

ルージュラ「キーッ!なんなのよアンタ!」

ルージュラ「妹をかばって敵に肩入れでもしようっていうの!?」

ルージュラ「そういうところが気に食わないのよ!」

グレイシア姉「フフ……そんな怒らなくていいじゃないの」

グレイシア姉「あんまり熱くなると溶けちゃうわよ」フフ

ルージュラ「ムキー!」

トドゼルガ「もうその辺にしておけ。本当に溶けてなくなるぞ」

ルージュラ「そんな主席まで……」

トドゼルガ「もう彼女は新人ではないのだぞ」

トドゼルガ「それに、今回の戦争の作戦はほとんどが彼女が自ら提唱したものばかりだ」

トドゼルガ「うかうかしていると身分まで抜かれるぞ」

ルージュラ「う……」ゾーッ

ジュゴン「ですね」

ジュゴン「もしこの戦争に勝利すれば彼女の功績は極めて大きいですよ」

ジュゴン「私ですら立場が危ういですね」

グレイシア姉「フフ……もういい加減褒めちぎるのはやめてくださいな」

グレイシア姉「居心地が悪いわ」

ユキノオー「ふん。だが勘違いするなよ!」

ユキノオー「軍の司令権はあくまで俺にあるのだ」

ユキノオー「情報参謀風情がそこまでしゃしゃり出てきてもらわれては困る」

グレイシア姉「分かってるわよ総司令官」

グレイシア姉「命令の通達は引き続き軍部にお願いするわ」

グレイシア姉「妹がどうとかは気になさらずに」チラッ

ルージュラ「……悪女め……」ボソッ

ユキノオー「もちろんだ」

トドゼルガ「よし。我々は203高地での善戦を祈るとしよう」


―――203高地要塞群 司令本部―――

203高地には第三師団及び第五師団が配属された。デリバード第三師団長は同時に格闘国戦闘前線の司令官に就任していた。

デリバード「要塞群の完成はまだか! もうすぐノーマル帝国軍が来るのだぞ」

グレイシア妹「はい。格闘タイプポケモンの協力もあり、つい昨日203高地周囲に第1防衛ライン1-1から、第6防衛ライン6-2要塞まで完成しました」

デリバード「ほう? 前の戦争の時よりもましになったようだな」

デリバード「第五師団もやるじゃないか」

グレイシア妹「ありがたきお言葉です」

デリバード「出世は近いな」

デリバード「私もそろそろ引退か。若い者に席は開けてやるべきか」

グレイシア妹「とんでもありません。デリバード閣下しかこの砦を死守するなど無理なことです」

デリバード「おだても上手くなったな。あいかわらず表情がないのが玉に傷だぞ」

グレイシア妹「失礼しました」

デリバード「全く。姉妹共々容姿はそれなりの癖に♂が寄ってこないのもよくわかるな」

グレイシア妹「……」

デリバード「まあいいだろう」

デリバード「総員戦闘配置だ。『ふぶきのカーテン』の用意もしておけ」

グレイシア妹「はっ」タタッ

デリバード「前は模擬戦争だからよかったものの……」

デリバード「あまり余裕をかますわけにはいかんぞ……」

デリバード「中央軍事委員会も変わったものだな」


―――1か月後 203高地付近 ノーマル帝国軍第三軍―――

リザードン「グランブル司令、準備は完了したかな?」

グランブル「もちろんだ。全員戦闘態勢の配置についている」

グランブル「俺は西側から攻める方がいいと思うんだがどうだ?」

リザードン「ん?東側の方が要塞の守りは弱いんじゃないかい?」

グランブル「いや、そんなことはないようだ」

グランブル「空軍の情報によると、確かに西側の方に要塞が偏っている」

グランブル「しかし、東側の要塞は守りがかなり強固になっているそうだ」

グランブル「帝国軍はまだ要塞攻略の経験がないからな」

グランブル「様子見もかねて西側から攻めた方がいいんじゃないか」

リザードン「そうだねぇ」

リザードン「早期から犠牲を出すのは痛いかな」

リザードン「分かった。そうしよう」

リザードン「とにかく、総攻撃で6つある防衛ラインのうち1つでも突破しよう」

リザードン「そうすれば士気も高まるだろうからね」

グランブル「了解した」

グランブル「総攻撃は2日後でいいな」

リザードン「任せよう」


―――2日後 氷軍 203高地要塞群 第1防衛ライン要塞1-2―――

グレイシア妹「帝国軍が布陣を固めたようですねユキワラシ中佐」

グレイシア妹「私は本部で指示を出します」

グレイシア妹「任せましたよ」

ユキワラシ「ウィーッス」

ユキワラシ「これだけ強固な守りがあれば余裕っスよ」

グレイシア妹「いいでしょう」

グレイシア妹「それでは」スタスタ

―――同 数刻後―――

バニプッチ「中佐! 帝国軍が進軍してきました!」

ユキワラシ「来たか! 氷軍の恐ろしさを思い知らせてやれ」

ユキワラシ「『ふぶきのカーテン』を始動せよ!」


―――ノーマル帝国軍 前衛―――

「なっなんだあれは!?」

「要塞の周りにふぶきだと!」

「なんてことだ……」

「ひるむな! 突撃せよ!」

ドドドドド……

数刻後、第1防衛ライン西側3つの要塞1-1 1-2 1-3に総攻撃が始まった。しかし、氷軍の『ふぶきのカーテン』により、近接攻撃はほぼ壊滅。遠距離攻撃に切り替えるもその威力はたかが知れていた。
3日に渡る総攻撃により、ノーマル帝国軍は激戦を経てなんとか要塞1-3 1つを陥落。『ふぶきのカーテン』を発生させている部隊をたまたま遠距離射撃で捕えることに成功したのだ。

とはいえ、帝国側は大損害を受け、第一次総攻撃は失敗に終わった。


―――氷の国 中央軍事委員会―――

トドゼルガ「戦況は有利のようだな」

ジュゴン「はい。先日、203高地要塞群に帝国軍による総攻撃がありましたが……」

ジュゴン「大損害を与えて退けました」

グレイシア姉「フフ……『ふぶきのカーテン』の威力は抜群ね」

ユキノオー「しかし、奴らも馬鹿ではないだろう」

ユキノオー「あれの弱点に気付くのも時間の問題ではないのか?」

ルージュラ「何言ってんのよ馬鹿。そう安々と突破されるもんですか!」

ユキノオー「なっ馬鹿って……」

グレイシア姉「そうね」

グレイシア姉「新しい策を練ることにするわ」

グレイシア姉「先に失礼します」ガチャ

トドゼルガ「熱心な奴だな」

ジュゴン「そうですね。やはり妹のこともあるんでしょう」

ルージュラ「まー妹思いなこと」

ユキノオー「悪口を言ってやるなよ」

ルージュラ「なによ。アンタ最近あいつのことひいきしてない?」

ルージュラ「あーやだやだ。ちょっとかわいいからって♂ってやつは……」

トドゼルガ「そこまでにしておけ」

トドゼルガ「さて、第一師団から連絡があったようだが……」


―――氷の国 作戦参謀本部―――

ガチャ

グレイシア姉「今戻ったわ」

トドグラー「あ、姉貴!お疲れ様です!」

グレイシア姉「トドグラー中将、いい加減やめなさいよその呼び方」

トドグラー「え、いいじゃないですか。長い付き合いなんですから」

グレイシア姉「貴方と付き合った覚えはないわね」

トドグラー「いえそういう意味では……」

グレイシア姉「フフ……冗談よ。それなら逆にその呼び方をとってくれてもいいんじゃないの?」

グレイシア姉「妹は一体どう呼ぶのかしらね」

トドグラー「え、それは……グレイシア様ですかね」

グレイシア姉「まぁ。あなたも中将なんだから、様なんてつけなくていいのに」

トドグラー「えー、だって喋りにくいんですよあの方……」

グレイシア姉「それはよくわかるわ」

トドグラー「分かっちゃうんですか」

グレイシア姉「でも、中身は意外と繊細だったりするからね」

グレイシア姉「あっちでも相談相手くらい捕まえられるといいんだけど……」

トドグラー「やっぱり心配してるんですか?」

グレイシア姉「まあね。そりゃあノーマル国にいたときから連れ添ってる妹だもの」

グレイシア姉「本当の妹かどうかなんて関係ないわ」

トドグラー「へ? どういうことですか?」

グレイシア姉「あら。余計なことを言っちゃったわね」

グレイシア姉「気にしなくてよ」

トドグラー「えー気になりますよぅ」

グレイシア姉「あら」

グレイシア姉「そんなに知りたかったら私と付き合ってみたら?」ズイッ

トドグラー「えっ、ちょ(近い近い!)」

グレイシア姉「なんてね。冗談よ」フフ

トドグラー(悪女だ……)

グレイシア姉「でも、言いたいことを言える相手がいるのは嬉しいわ」

グレイシア姉「ありがとね」ニコッ

トドグラー「え、あ、はい。どういたしまして」

トドグラー(普通にしてりゃかわいいのにな……)

グレイシア姉「さて。雑談はここまでにしましょう」

グレイシア姉「『ふぶきのカーテン』の次の策が必要ね」

トドグラー「しかし『ふぶきのカーテン』の威力は抜群だったのでは」

グレイシア姉「そうね。でも、1―3要塞が陥落したそうよ」

グレイシア姉「偶然だとは思うけど……恐らく弱点をつかれたわね」

グレイシア姉「帝国軍もそれにはっきりと気づくんじゃないかしら」

トドグラー「そうですね……」

トドグラー「我々も『こおりのカーテン』の効果にうつつを抜かしていましたから」

トドグラー「全くと言っていいほど対応策については手を付けていません」

グレイシア姉「どうにかしましょう」

グレイシア姉「早急に案を出さなければいけないわね」


―――ノーマル帝国軍 第三軍―――

リザードン「これはひどい」

グランブル「氷軍を侮っていたな」

グランブル「被害は一個師団級だ」

グランブル「しかし、今回の総攻撃で戦略の糸口を見つけたぞ」

グランブル「あのふぶきによる防衛網は恐らく特定の一部隊が発生させている」

グランブル「それらを一度遠距離から射撃するんだ」

グランブル「そうすれば近接攻撃ができる」

リザードン「しかし、どこにその部隊がいるか分からないな」

リザードン「地図も不完全だし未記載の要塞まであったしね」

グランブル「それは空軍飛行隊に任せるしかないな」

リザードン「むむ……」


―――第1防衛ライン要塞1-2―――

ユキワラシ「ははは。なんだったんだあの攻撃は」

ユキワラシ「あの様子じゃ余裕だな」

ユキワラシ「まったく。あんな軍に占領されるなんてなんて情けないんだよ」

バニプッチ「『ふぶきのカーテン』の威力ですね」

ユキワラシ「はは……そうだ!」

バニプッチ「?」

ユキワラシ「俺達だけであの占領された1-3要塞を取り返しちまおう」

バニプッチ「えっ。いいんですか?本部の許可もなしに……」

ユキワラシ「気にすんなって。勝てばいいんだよ勝てば」

ユキワラシ「明日にでも突撃しよう」

バニプッチ「分かりました……」

ユキワラシの独断で1-2要塞から1-3要塞へ攻撃が加えられた。
しかしノーマル帝国軍の猛反撃に遭い失敗。
さらに、手薄と見た帝国軍は1-3要塞さらには1-1要塞にも反撃。遠距離攻撃からじっくり攻める戦略は上手くいき、第1防衛ライン西側は突破された。


―――203高地要塞群本部―――

デリバード「第五師団中佐による独断と第1防衛ラインの陥落……か」

グレイシア妹「申し訳ありません。私の不注意です」

グレイシア妹「責任は私がとります」

デリバード「そう気負うな」

デリバード「私はかつて第五師団は雑兵ばかりの乱雑な師団だと思っていた」

デリバード「それがどうだ? 君が師団長に選ばれた途端見事に統制がとれるようになったのだ」

デリバード「君がいなければ今回のような失敗などゴマンと起こっていただろう」

グレイシア妹「いえ、そんなことは……」

デリバード「そんなことよりも、戦死した中佐や部下を弔ってやるべきだ」

グレイシア妹「必ず第2防衛ラインは死守します」

デリバード「当然だ」

デリバード「第3防衛ラインからは我が第三師団も配備されている」

デリバード「そうやすやすとは落とされん」

グレイシア妹「それでは、私は指示を出してきますので……失礼します」テクテク

ガチャ
バタン

グレイシア妹「はぁ……」

グレイシア妹「どうして失敗ばかりなの……」

グレイシア妹「まだまだ姉上には及ばないなぁ……」グスッ

グレイシア妹「……」テクテク

訂正>>137


さらに、手薄と見た帝国軍は1-2要塞さらには1-1要塞にも反撃。遠距離攻撃からじっくり攻める戦略は上手くいき、第1防衛ライン西側は突破された。


―――第2防衛ライン 要塞2-2―――

グレイシア妹「バニリッチ大佐。戦闘態勢は万全ですか?」

バニリッチ「もちろんであります師団長!」

バニリッチ「『ふぶきのカーテン』があればまず突破などされません!」

グレイシア妹「いえ、突破される前提で行きなさい」

グレイシア妹「本国作戦参謀本部から指示がきました」

グレイシア妹「近接戦闘の配置を取っておいてください」

バニリッチ「え、しかし……」

グレイシア妹「取っておいてください」ズイッ

グレイシア妹「独断で何かしようものなら貴方をかき氷にして差し上げます」ボソッ

バニリッチ「は、はいっ!申し訳ありません!(ヒィィィィィ!)」

グレイシア妹「期待しています」スッ

グレイシア妹「第五師団の力を示すのです」

バニリッチ「はい……(何か怒ってるのかな……?)」

スタスタ


―――ノーマル帝国軍 第三軍―――

リザードン「よし、第二次総攻撃もこの作戦で行けそうだね」

グランブル「うまくいったな」

グランブル「これなら次で第3防衛ラインまで突破できるだろう」

グランブル「空軍飛行隊のほうも順次投入ができそうだぞ」

リザードン「お、もう大丈夫なのかい?」

グランブル「ああ。ブースター首相が草・毒の国よりヤチェの実を大量に輸入したそうだ」

グランブル「あと3日ほどで到着する」

グランブル「ヤチェの実から作ったゴーグルやジャケットを着用すれば」

グランブル「ふぶきの中で、通常なら2秒でひんしのところを3分まで活動できるそうだ」

グランブル「さらに、ラッキーのたまご爆弾を上空から投下したり」

グランブル「奇襲攻撃で敵の司令系統を破壊する作戦も挙がっている」

グランブル「順次導入できるぞ」

リザードン「お、さすが空軍は強いなあ」

リザードン「いまならあの炎帝国にも勝てたかもしれないね」

グランブル「さあ、どうかな」

グランブル「さて、総攻撃に備えるとしよう」

グランブル「2日後でいいな」

リザードン「お任せで」

2日後、第二次総攻撃が行われた。
ノーマル帝国軍は『こおりのカーテン』をほぼ攻略。4日間の激戦の末、第2防衛ラインの2-1 2-2 2-3要塞を占領。

しかし、第3防衛ラインでは『こおりのカーテン』は破壊したものの、第三師団の強固な守りにより、近接攻撃で敗北。
そこで帝国軍は初めて空軍飛行隊を導入した。

対空防衛は十分にとっていた氷軍だったが、やはり未経験だったのが仇となり、そのスピードについていくことができなかった。

結果ノーマル帝国軍は氷軍に帝国軍以上の損害を与え、4日かけて第3防衛ライン3-1 3-2 3-3要塞も制圧。
第4防衛ライン4-3要塞も一時占領したがすぐに奪還された。

こうして第二次総攻撃は終了した。


―――203高地要塞群本部―――

デリバード「何たることだ。我が第三師団まで突破されるとは……」

グレイシア妹「対空防衛が不完全でした」

グレイシア妹「もう少し警戒しておくべきだったと思います」

デリバード「そうだな。まさか空軍があんなに恐ろしいものだったとは」

デリバード「前の戦争ですっかり舐めきっていたようだ」

グレイシア妹「申し訳ありません」

デリバード「いや。今回は私のミスだ」

デリバード「次はそうはいかん」

ババッ

突然窓の外が灰色にそまった。
『ふぶきのカーテン』が発動している!

デリバード「何事だ!?」

敵襲!
敵軍飛行隊だー!
応戦せよ!

グレイシア妹「奇襲ですか」

デリバード「く、こんな時に……!」

バリィィィン

司令室の窓ガラスが吹き飛んだ。
その外には鳥ポケモンと思しき影が浮かんでいる。

デリバード「なにぃ!? ふぶきの真っただ中だぞ!」

「敵司令官発見!」

「総員一斉に攻撃せよ!」

「「「はかいこうせん!」」」

ゴォッ

合わさって猛烈な威力となったはかいこうせんが、デリバードとグレイシア妹に向けて放たれた。

グレイシア妹「な……」

突然のことにグレイシア妹は動けない!

デリバード「危ない!」バッ

デリバードは唖然とするグレイシア妹をつき飛ばし、庇った。

ガァァァン

デリバード「ぐわあああああ!」

命中!とはいかなかったものの、デリバードは重傷を受けた。

「第二隊、次を放……へ?」

ゴォッ

奇襲飛行隊の目の前には、先ほどの二倍はあろう威力のはかいこうせんが放たれていた。

「馬鹿な……ミラーコートか……」

ズガァァァァン

それは奇襲飛行隊に命中し、奇襲飛行隊は全滅した。



―――…

パラパラ


グレイシア妹「デリバード上将、ご無事ですか」

デリバード「ああ……なんとかな」フッ

グレイシア妹「すぐに本国へお送りします」

グレイシア妹「申し訳ありません」

グレイシア妹「私が不甲斐ないばかりに」

デリバード「何を言う……」

デリバード「咄嗟のミラーコート……見事だったぞ……」

デリバード「後任は……パルシェンに任せてある……」

デリバード「すまんが先に退場のようだ……」ガクッ

グレイシア妹「上将!」

グレイシア妹「気絶してしまった……」

グレイシア妹「私のせいだ……」

グレイシア妹「あああ……」ガックリ


―――氷の国 作戦参謀本部―――

グレイシア姉「帝国空軍飛行隊の奇襲ですって!?」

トドグラー「はい! 占領された3-2要塞から飛び立った飛行隊は、残りの防衛ラインを突破して本部中枢を奇襲したそうです」

トドグラー「これによってデリバード第三師団長が重傷を負いました」

トドグラー「今さっき本国に帰還されたそうです……」

グレイシア姉「やられたわね」

グレイシア姉「全防衛ラインに対空防衛の強化を命じなさい」

グレイシア姉「東側の第2防衛ライン以下の兵は西側に移動させて」

トドグラー「はい」

トドグラー「ちなみに、グレイシア中将は無傷だそうです」

グレイシア姉「そう……ひとまず安心だわ」

チリーン

グレイシア姉「中央軍事委員会の招集ね」

グレイシア姉「少し席をはずすわ」

トドグラー「作戦の調整を行っておきます」

グレイシア姉「頼むわね」

テクテク


―――中央軍事委員会―――

トドゼルガ「まずい事態になったな」

ジュゴン「はい。デリバード上将が負傷とは……」

グレイシア姉「現在全防衛ラインに対空防衛の強化を命じています」

グレイシア姉「さらに、すでに突破された防衛ラインの残りの要塞の兵を移動させました」

ユキノオー「まさかあの精鋭ぞろいの第三師団が突破されるとは……」

ユキノオー「甘く見すぎていたようだな……」

ルージュラ「アンタの妹がへまでもこいたんじゃなくて!?」

グレイシア姉「いや、奇襲だったから何とも……」

ルージュラ「じゃあどうしてアンタの妹だけ無傷なのよ!」

グレイシア姉「それは……」

トドゼルガ「論点はそこではない」

トドゼルガ「次の司令官を早急に任命せねばな」

ユキノオー「既に調整済みだ」

ユキノオー「第三師団次長のパルシェン中将を司令官に任命せよと、デリバードから伝言があったそうだ」

ユキノオー「軍事委員会が賛成なら明日にでも任命する」

トドゼルガ「いいだろう」

ジュゴン「『こおりのカーテン』が破られたとあっては、戦況は不利ですね」

グレイシア姉「その点については作戦参謀本部で検討中です」

グレイシア姉「現在、格闘ポケモン達を要塞防衛に協力させる案が有力ですが……」

グレイシア姉「何せ元ポケモン共和国の本部でしたから、大分渋っています」

ユキノオー「ふん。恩知らずな奴らだ」

ジュゴン「相手にはエスパーポケモンもついていますし」

ジュゴン「効果は薄いかもしれませんね」

グレイシア姉「その通りです」

トドゼルガ「うーむ。このままではまずいか」

トドゼルガ「第二師団の合流も視野に入れておけ」

ユキノオー「はっ」

グレイシア姉「はい」

トドゼルガ「203高地を奪われるわけにはいかん」


―――氷の国 作戦参謀本部―――

トドグラー「姉貴、どうでしたか?」

グレイシア姉「どうしたもこうしたもないわよ」

グレイシア姉「妹の悪口を散々に言ってくれたわ」

トドグラー「あー……ルージュラ政治部長ですね……」

グレイシア姉「まったく。いつか必ず氷漬けにしてあげるわ」

トドグラー「そういえば姉貴、グレイシア中将は繊細だって言ってましたけど」

トドグラー「そっちのメンタル的な方は大丈夫なんですか?」

グレイシア姉「完全に駄目ね」ハァー

グレイシア姉「無傷ってことは恐らくデリバード上将に庇われたってことでしょうから……」

グレイシア姉「今頃、私のせいだ! なんて落ち込んでるんじゃないかしら……?」


―――203高地要塞群本部 グレイシア中将の部屋―――

コンコン

パルシェン「中将~。グレイシア中将~?」

パルシェン「大丈夫か? 皆心配しているぞ~」

呼びかけていると、中からか細い声が聞こえてきた。

グレイシア妹「……です」

パルシェン「ん?」

グレイシア妹「私のせいなんです」

パルシェン「な、何を……」

グレイシア妹「私のせいなんです!」ビッ

バギャァァァァ

パルシェン「」

グレイシアが突然放ったれいとうビームで、扉が吹き飛んでしまった。

グレイシア妹「あ、申し訳ありません!」ダダッ

パルシェン「びっくりした……」

グレイシア妹「お怪我はないですか?」

パルシェン「いや、大丈夫だよ。ありがとう」

パルシェン「久しぶりだな、氷炎戦争以来じゃないのか?」

グレイシア妹「そうですね。お久しぶりです」ペコッ

パルシェン「しかし、自分のせいなんて……」

パルシェン「見た目に似合わず繊細なんだな」ハハ

グレイシア妹「そうですか。では」スタスタ

パルシェン「あ、ちょっと! 相変わらず冷たいなぁ」

グレイシア妹「なんですか?」

パルシェン「折角なんだからちょっと話さないか?さっきのこと、詳しく聞かせてくれよ」

グレイシア妹「必要ありません」プイッ

パルシェン「そこをなんとか」

グレイシア妹「……わかりました」

パルシェン「よしきた」

パルシェン「しかしここで話すのも何だな」

グレイシア妹「そうですね」

グレイシア妹「屋上なら静かでよさそうですが……」

パルシェン「なるほど屋上か」

パルシェン「奇襲の心配があるけど……まあいいか」


―――要塞屋上―――

ヒュゥゥゥ

パルシェン「冷たくていい風だな」

グレイシア妹「はい。この季節は氷の国側から風が吹いていますからね」

パルシェン「まったく。いい加減敬語くらいとってくれていいんじゃないか?」

パルシェン「長い仲なんだからさ」

グレイシア妹「そうですね」

パルシェン「……」

パルシェン「それで、精神の方は落ち着いたのか?」

グレイシア妹「何のことですか?」

パルシェン「とぼけんなよー。まだデリバード上将のことを気にしてんだろ」

グレイシア妹「……」

パルシェン「どう考えてもお前のせいなんかじゃないだろうに」

パルシェン「むしろお前は上将を守ったんだ」

パルシェン「もっと胸を張っていいんだぜ」

グレイシア妹「そうですね……」

パルシェン「お前、昔っから表情ないけどさ、もうちょっとくらい他人に頼ってみたらどうなんだ?」

グレイシア妹「……」

パルシェン「話ならいつでも聞くぜ」

グレイシア妹「ごめんなさい……心配をかけさせてしまって」

パルシェン「おいおい。士官学校以来の仲なんだから当然だろ?」

グレイシア妹「私……弱いんですよ」

パルシェン「お?」

グレイシア妹「物心ついた時からずっとマイナス思考で……」

グレイシア妹「嫌われたらどうしよう。弱い私に価値があるのかどうか……そんなことしか考えられないんです」

グレイシア妹「がむしゃらに技を磨いて、レベルを上げた時期もありました」

グレイシア妹「でもどうしてもだめなんですよ」

グレイシア妹「はぁ……馬鹿みたいですよね」

パルシェン「お前の本音は初めて聞いたよ……」

パルシェン「そんな風に思っていたなんてな」

グレイシア妹「ごめんなさい。でも、最近失敗ばかりで……耐えられなくて……」

グレイシア妹「うっ……ううっ……」ポロポロ

パルシェン「ま、まあ今のうちに泣いておけよ」

パルシェン「日が暮れたら忙しくなる」

グレイシア妹「うぅっ……ごめんなさい……ごめんなさい……」ポロポロ

彼女の涙は長く長くあふれ続けた。
まるでずっと凍っていた心の氷が、一斉に溶けだしたように……


―――1か月後 帝国軍第三軍―――

グランブル『さて皆の衆!』

グランブル『我々は明日正午を持って第三次総攻撃を行う!』

グランブル『第三軍の総力を持って203高地要塞群を制圧するのだ!』

グランブル『先手は飛行隊に任せよ』

グランブル『敵もどんな罠を仕掛けているかわからん』

グランブル『心してかかれい!』

第三軍、第三次総攻撃を開始。
司令系統にヒビが入った氷軍は第4防衛ライン、第5防衛ラインをあっさりと突破された。

そして、第三軍は最後の砦最終第6防衛ラインをも突破。203高地陥落は目前に迫った。


―――203高地要塞群本部―――

パルシェン「ついにここまで来たか……」

グレイシア妹「陥落は目前ですね……」

パルシェン「くそっ。まだだ!今第二師団がここへ向かっているはず」

パルシェン「彼等さえ来れば押し返せる」

グレイシア妹「しかし……先ほど入った情報によれば」

グレイシア妹「第二師団は103ブロック周辺で飛行隊の襲撃を受け」

グレイシア妹「師団長バイバニラ司令官が死亡」

グレイシア妹「その他甚大な被害を受け、撤退したと……」

パルシェン「なんだって……?」

パルシェン「やられた……」

グレイシア妹「どうしますか?」

パルシェン「仕方ない」

パルシェン「撤退しかない、か……」

グレイシア妹「はい……」

グレイシア妹「ならば、私を含めた有志の兵のみ残して行ってください」

グレイシア妹「時間を稼ぎます」

パルシェン「な!お前はどうするんだよ!?」

パルシェン「死ぬつもりか?」

グレイシア妹「いえ。必ず本国へ戻ります」

グレイシア妹「姉上と……必ず再び会うと約束したので」

グレイシア妹「それに、貴方は私の恩人です」

グレイシア妹「私の凍った心を溶かしてくれたんですから」ニコッ

パルシェン「……」

パルシェン「分かった。先に行かせてもらう」

パルシェン「でも、俺とも約束しようぜ」

グレイシア妹「?」

パルシェン「また会おうってな」

グレイシア妹「はい!」

―――第五及び第三師団撤退後 同―――

グレイシア妹「有志の者は約120名ですか……」

グレイシア妹「十分です」

グレイシア妹「命を懸けて残ってくれた全員に感謝いたします」

グレイシア妹「しかし、私たちは決して命を投げ出すわけではありません!」

グレイシア妹「時間を稼ぎ、頃合いを見て撤退するのです」

グレイシア妹「総員、戦闘配置についてください」

バニリッチ「中将、『ふぶきのカーテン』はどうしますか?発動させるには隊員が足りません」

グレイシア妹「大佐、その点は問題ありません」

グレイシア妹「私だけで十分です」

バニリッチ「な、だけって……」

バニリッチ「あれは隊員10名づつが交代しながらやらなければ、1分維持……いや要塞全体を覆うことすら難しいんですよ……!」

グレイシア妹「ですから十分です」

グレイシア妹「どうしてこんなノーマル国出身の貴族でもない一般兵が、中将まで昇進できたか……考えてみてください」

バニリッチ「う、それは……確かに……」

バニリッチ「中将の実力は私もよく存じ上げてはいますが……まさかそこまでとは」

グレイシア妹「そういうことです」

グレイシア妹「さて、第三軍の遠距離攻撃は間もなく始まるでしょう」

グレイシア妹「私以外は総員対空防衛に当たりなさい」

グレイシア妹「れいとうビームで一匹残らず撃ち落とすのです」

グレイシア妹「誰も命を落としてはなりません」

グレイシア妹「必ず、本国で待つ者のもとへ帰るのです!」

オー!
ヤッテヤルゼー!

―――第五師団及び第三師団撤退後 帝国軍第三軍 最前線―――

第三軍は最終防衛ライン突破後、要塞群本部まで進軍。
小高い丘の頂上に築かれた最後の要塞は目前まで迫っていた。

リザードン「漸くここまでたどり着いたね」

グランブル「ああ。勝利は目前だ」

グランブル「飛行隊の偵察によれば、要塞内の兵は少し前に大方撤退したそうだ」

グランブル「だが、まだ中には立てこもった兵がいる」

グランブル「玉砕覚悟だろう。こちらも気を引き締めなければ甚大な被害が出るな」

リザードン「決着をつけよう」

リザードン「君たちとしては、『仇』を取らなくちゃね」

グランブル「ああ。その通りだな」

リザードン「さあこの戦いは僕らが直接指揮しよう」

リザードン「行くよ」

ザッザッザ……


―――第三軍攻撃開始時刻 要塞群本部陣営―――

グレイシア妹「……来る……!」

グレイシア妹「姉上……」

グレイシア妹「私は死にはしません……」

グレイシア妹「私を助けてくれた全ての方々に……」

グレイシア妹「報いるまで必ず……!」

グレイシア妹「『ふぶき』」

ビュオォォォォォ

『こおりのカーテン』が作動し、本部周辺が純白のカーテンに覆われた。


バニリッチ「まさか……信じられない……」

バニリッチ「中将の氷の力はここまで……」

バニリッチ「ふ……私たちも負けてはいられないね」

バニリッチ「皆!中将閣下に負けてはいられないよ!」

バニリッチ「傷一つとてこの基地にはつけさせるな!」

オー!



―――同 第三軍―――

グランブル「よーし」

グランブル「遠距離攻撃、はじめ!」

グランブルの指揮に合わせ、前線の部隊が特殊技を中心に、要塞へ向けて攻撃を開始した。
それは敵要塞に命中し、カーテンの後ろから爆音が響く。しかし……

グランブル「ん?なんだ」

リザードン「……」

カーテンの中へと消えていった光が、一つ、また一つと再び現れる。

リザードン「まずい!全員退避!」ガバッ

グランブル「うおっ!?」ダッ

ドガァァァァ
ガァァン

遠距離攻撃はそっくりそのまま、二倍返しで帰ってきた。
いつもより気合を入れて先制攻撃に当たった前線部隊は見事に全滅。
リザードン、グランブルも軽傷を負った。

リザードン「やってくれるじゃんか……」

グランブル「いててて……少し見くびっていたな」

グランブル「作戦変更!飛行隊、カーテンを突破せよ!」


―――同 要塞本部―――

ビュオオオオ
パラパラ

バニリッチ「全員無事か!?」

バニリッチ「しかし……要塞全域をミラーコートで覆うなんて……」

バニリッチ「中将の実力は一体……」

バニリッチ「ふふっ……次は私たちの番か」

バニリッチ「飛行隊が来るぞっ!全員警戒態勢をとれいっ!」

バサッ
ビュウウウ……

バニリッチ「来たっ……!」

飛行隊「突撃ィィィ!」

対空隊「れいとうビーム!」

ここからは、飛行隊及び対空部隊との乱戦となった。
飛行隊は無数に伸びるれいとうビームの柱をかいくぐり前進。本部中枢を破壊しようともくろんだ。

しかし、対空部隊の猛攻撃は飛行隊の速さを挫いた。
3分間の決戦の末、飛行隊は壊滅。撤退を余儀なくされた。

これにより、最終総攻撃は中断し、一時休戦となった。


―――要塞群本部―――

バニリッチ「やりましたね!飛行隊め、尻尾を巻いて逃げて行きましたよ!」

グレイシア妹「そうですね。全員のお陰です。ありがとうございました」

バニリッチ「いえ、ほとんどは中将のお陰ですよ!」

グレイシア妹「まさか……では、全員を率いて撤退してください大佐」

バニリッチ「な、どういうことです?」

グレイシア妹「私たちの役割はあくまで時間稼ぎです」

グレイシア妹「今回の抵抗によって十分その役割は果たしました」

グレイシア妹「全員無事のまま、本国へ撤退してください」

バニリッチ「そうですね……負け戦に変わりはありません、か……」

バニリッチ「では行きましょう中将」

グレイシア妹「私は行けません」

バニリッチ「な!?」

グレイシア妹「私は貴方がたのために時間を稼がなくてはなりません」

グレイシア妹「先に行ってください」

バニリッチ「しかし……それでは……」

グレイシア妹「大丈夫です」

グレイシア妹「必ず、後から追いつきますから」ニコッ

バニリッチ「中将……」

バニリッチ「敬意を表します」ビッ

そして、約120名の有志はグレイシア中将を除いて撤退した。


―――しばらく後 ノーマル・飛行連合帝国第三軍―――

リザードン「はぁ、さっきはひどい目に遭ったよ」

グランブル「そうだな……奴らの覚悟は本物らしい」

グランブル「だがこれで終わりだ」

グランブル「対氷装備の陸上部隊でカタをつける」

リザードン「まったく、僕達まで出陣しないといけないなんてね」

グランブル「すまんな。さっきので兵力が不足しているんだ」

リザードン「まあいいよ。覚悟はできてるしね」

グランブル「最後の攻撃だ。出るぞ」バッ

リザードン「はいはい」バサッ

第三軍はもてる総力を持って要塞群本部へ突撃をかけた。

ワーワー

リザードン「変だな。カーテンが発動しない」バサッ

グランブル「奴らも諦めたか……?」ダダッ

リザードン「罠でなければいけどね……」

第三軍は容易に要塞内へ侵入。もぬけの殻の要塞を進み、リザードン、グランブルは真っ先に中枢と思われる場所へ向かった。

ギィィ


総司令室の扉を開けると、一匹のグレイシアが座っていた。

リザードン「敵!?」

グレイシア妹「ついにここまでたどり着きましたか……」

グランブル「何者だ!」

グレイシア妹「私は氷軍第五師団長グレイシア中将」

グレイシア妹「ここの司令官です」

リザードン「ボスのおでましかな」

グランブル「仲間はどうした」

グレイシア妹「ああ、彼等なら今頃撤退している頃です」

グレイシア妹「私はただの時間稼ぎですよ」

リザードン「罠か……」

グレイシア妹「ええ。簡単に言うとそうです」

グレイシア妹「この戦争は恐らく氷軍の惨敗ですね」

グレイシア妹「たった5年でここまで力をつけるなんて……私たちも計算外だったんです」

グレイシア妹「賞賛に値します」

グランブル「チッ。お前らなんかに褒められる言われはねぇな」

グランブル「お前らのせいでノーマル・飛行国は滅亡したんだ」

グランブル「今更機嫌をとろうったって遅いんだよ!」

リザードン「まあまあ……」

グレイシア妹「そうですね……仰る通りです」

グレイシア妹「謝るだけで済みそうではありませんね……」

グレイシア妹「リザードンの方」

リザードン「なんだい?」

グレイシア妹「そちらに『ブースター』がいますよね」

リザードン「うん。帝国の首相だけど……」

グレイシア妹「『さようなら』と伝えてください。貴方は多分死なないと思うので」

リザードン「分かったけど……いったい何を……」

グレイシア妹「すぐにわかります」ヒュゥゥゥ

急激に室温が下がった。

リザードン「まずい!?グランブル!逃げろ!」

グランブル「う……!!??」

グレイシア妹「ふぶき最大出力っ!!」バッ

リザードン「まてっ……くっ、ゆきがくれかっ!」

ビュァァァァァァァァァ
ピキピキッパキッ……

リザードン「はっ!」

リザードン「こ、これは……」


―――…

リザードン「そのあとは……驚くべき光景が広がっていました」

ブースター「なるほど」

ブースター「それで、それはどういうものだったんだ?」

リザードン「はい。要塞全体が、私やほのおタイプを除いて、ポケモンもろとも全て凍っていたのです」

リザードン「まるで氷の城と氷像のようでした……」

ブースター「なんてことだ……」

ブースター「一体誰がやったんだ?」

リザードン「グレイシア中将と名乗る方がたった一匹で、です」

ブースター「!」

リザードン「心当たりが?」

ブースター「ああ……古い友人だ。彼女なら確かにそんな芸当をやってのけてもおかしくないな」ハハ

リザードン「彼女は最後に、首相に『さようなら』と伝えてほしいと言っていました」

ブースター「そうか……」

ブースター「また一人……寂しいもんだな」

リザードン「……」

かくして203高地決戦はグランブル司令官を初め、多大なる犠牲を出して終結。帝国軍の勝利に終わった。



―――格闘国―氷の国国境 氷軍第一師団戦略本部―――

フリージオ「ノーマル・飛行連合帝国軍により203高地、105、106ブロック陥落!」

フリージオ「第二、第四師団は壊滅!第三師団、第五師団も撤退しました!」

フリージオ「第二師団長バイバニラ司令官、第四師団長マンムー上将、及び第五師団長グレイシア中将が既に戦死!」

フリージオ「残るは我ら第一師団のみ!もはや勝機はありません!撤退しましょうツンベアー上将閣下!」

ツンベアー「ぐぬぬ…やむなしか…」

ツンベアー「フリージオ副長、全軍に撤退命令を出せ」

ツンベアー「殿は任せろ。先に行け」

フリージオ「分かりました!」

フリージオ「またお会いしましょう!」ザッ

ツンベアー「ああ。また」

ガァァン

バァン

ビュワッ

「敵国飛行隊の強襲!!」

「警備隊応戦せよ!応戦せよ!」

ツンベアー「な、なんだ!?」

フリージオ「まさか…この戦略本部の場所がばれたと…!?」

ツンベアー「そんなはずがない!空からでも覗かない限りは…」

バサッ

「敵陣営本部確認!」

「一斉に射撃せよ!」

「「「はかいこうせん!!!」」」

ドガァァァァァ・・・…

―――氷の国 中央軍事員会―――

グレイシア姉「……そういうわけで203高地は陥落」

グレイシア姉「第三、第五師団は撤退完了しました」

グレイシア姉「グレイシア中将は基地内に残留」

グレイシア姉「その後の消息は不明、戦死報告が出されました」ハァ

ユキノオー「先ほど第一師団の駐留陣地が飛行隊の強襲を受けた」

ユキノオー「それによって師団長ツンベアー上将、フリージオ中将が死亡」

ユキノオー「それを受けて第一師団も撤退」

ユキノオー「格闘国戦線は我らの惨敗だ」

ユキノオー「これまでで上級将校の4分の3が死亡した」

ユキノオー「軍部はかなり甚大な被害を受けている」

トドゼルガ「ぐぬぬ……」

トドゼルガ「まさか惨敗とは……」

トドゼルガ「連合帝国の力がここまでとはな」

ジュゴン「戦争の継続は不可能ですね」

ジュゴン「すぐに連合帝国と講和を結ぶべきだと思われます」

トドゼルガ「うむ。女王陛下に進言せねば……」

ツルツルツルー
そこに、遅刻して現れたのはルージュラ政治部長。なにやら顔色が最悪。

ルージュラ「大変よ!」

ルージュラ「電気王国が宣戦を布告してきたわ!」

ルージュラ「講和の余地なし、近日中に侵攻が始まるわ!!」

トドゼルガ「なんだと!」
グレイシア姉「なんですって!?」
ユキノオー「馬鹿な!」

トドゼルガ「図られたか!?」

ジュゴン「これは……!」


軍事委員会は戦慄した。結局、策は見いだせないまま会議は解散。残り少ない兵力で防衛に徹するのみしかできないという結論に終わった。


―――氷の国 王宮 玉座前―――

トドゼルガ「女王陛下」

トドゼルガ「私です。よろしいでしょうか」

シーン

トドゼルガ「陛下?」

ガチャ

トドゼルガ「誰もいない……?」

電気王国の宣戦後、ユキメノコ女帝は突然失踪した。

数日後、電気王国軍は氷の国に侵攻。あっという間に首都まで陥落し、電気王国軍は氷の国をただ通り過ぎて行った。


―――首都陥落寸前 氷の国首都付近―――

ガァン……
バリバリバリバリ……

グレイシア妹「うっ……つぅ……」ズルズル

グレイシア妹「流石に暴れすぎましたか……」

グレイシア妹「体力がもう……限界……」

グレイシア妹「でもやっとここまで来れました……」

グレイシア妹「姉上……」

グレイシア妹「今行きます……」


―――氷の国首都―――

タタタタタッ

バリバリバリ

グレイシア姉「きゃああっ!」バタッ

ジュゴン「姉貴!?」

電気国兵1「ようやく捕まえたぞ」

電気国兵2「貴様には拘束命令が出ているんだ。おとなしく捕まればいいものを」

ジュゴン「させるかぁぁっ!」バッ

電気国兵1「ほざけ」バチィッ

ジュゴン「ぐああっ!」バタッ

ジュゴン「く……そ……」ビリビリ

電気国兵2「任務完了だな。行くぞ1」

電気国兵2「軍は今日中にゴースト国に到達する予定だそうだ」

電気国兵2「急がないと……え?」

電気国兵1「」カチーン

電気国兵2「なっお前は!?標的は気絶したはずじゃあ……!」

グレイシア妹「……」ビッ

ビシィッ

電気国兵2「」カチーン

グレイシア妹「ぐっ……」フラッ

グレイシア妹「あ、姉上!」ユサユサ

グレイシア姉「……貴方は……」

グレイシア姉「きてくれたのね……」

グレイシア妹「もちろんです……早く逃げましょう……」

グレイシア姉「ええ……」ヨロヨロ

グレイシア姉「トドグラー……?」

トドグラー「さ、先に行ってくださいあ、姉貴」ビリビリ

トドグラー「ど、どどうやらうごっけそうにないで、です」

トドグラー「必ず、あ、後からいきますか、から」ビリビリ

グレイシア姉「わかったわ……」フラッ

グレイシア妹「姉上……」

トドグラー(姉貴……)

トドグラー(さようなら……)


―――首都郊外 深雪地帯―――

ビュオオオ……

グレイシア姉「……」ヨロッ

ドサッ

グレイシア妹「姉上……!」

グレイシア姉「もう……だめ……みたいね……」

グレイシア姉「体が……動かないわ……」

グレイシア妹「もう少しです……」

グレイシア妹「すぐそこに町が……」

グレイシア姉「もう……いいわ……」

グレイシア姉「私は……ここでお別れね……」

グレイシア妹「姉上……!」

グレイシア姉「駄目ね……いくら作戦が作れても……」

グレイシア姉「貴方みたいにタフじゃないと……生きていけないもの」

グレイシア妹「そんなことは……」

グレイシア姉「いままで……ありがとう……」

グレイシア姉「仮の妹として……一匹のグレイシアとして……」

グレイシア姉「貴方を愛していたわ……」

グレイシア妹「……」

グレイシア妹「お姉ちゃん」

グレイシア姉「何かしら……?」

グレイシア妹「大好き……!」ギュッ

グレイシア姉「ええ……」

グレイシア妹「ずっと一緒にいようね」

グレイシア姉「ええ……そうね……」

グレイシア妹「ずっと……ずっと……ずっと……」ヒュオオオオ

パキパキパキッ

ピキーン

…―――


『こおりでおおわれたいわ』

恐らく岩だと思われる。第二次戦争終戦後、氷共和国の深雪地帯にて、新ポケモン共和国軍によって発見された。

名前のままの岩だが、不思議ないくつかの特徴を持っている。
まず、その岩の表面が常に‐200℃の超低温であること。さらに、とても硬く、いかなる手段を使っても、あらゆる格闘タイプが攻撃しても傷一つつけることができなかったこと。
そして、その近くでイーブイがグレイシアに進化すること。

これまで数多くの調査、研究が行われたが、その成因や正体は全くつかめていない。

現在では、ちょっとしたパワースポットとして一部のポケモンに人気がある。
その中からは、「岩の中から声が聞こえた」とか、「何かが光っていた」といった声も上がっているが、詳細は不明である。

Extra chapter 「氷の中で」 END


次4


―――第一次大戦時 電気王国の宣戦直後 悪国 アジト―――

マニューラ「あんだって!? 電気王国が攻めてくるだぁ?」

ブラッキー「はい、そうですリーダー……」

マニューラ「アンタ正気かい? 電気王国ってのはこの元ポケモン共和国のド反対にある国だよ?」

マニューラ「空でも飛んでやってくるってのかい」

マニューラ「アタシはアンタを冗談の上手さで末席幹部に選んでやったつもりはないよ」

ブラッキー「いえ、ですから……」

ブラッキー「先日の電気王国の宣戦はですね……」

ブラッキー「この悪国に攻め入るためのものだったんですよ」

マニューラ「ケッ。もうちょっとましな冗談じゃないとアタシは笑わないよ」

マニューラ「ま、でもそこまで言うなら頭に入れといてやるよ」

ブラッキー「では……私はお先に悪国辺境へ行きますね」

ブラッキー「いつでもお待ちしております」ペコッ

マニューラ「ケッ。末席幹部ってのはいつからおえらいさんのお大臣様になったのかね」

マニューラ「ま、そういうとこだけは買ってやってもいいけどね」

ブラッキー「失礼します……」

マニューラ「待ちな」

マニューラ「資金と兵だけはくれてやるよ」

マニューラ「まったく最近は物騒だからねぇ」

マニューラ「幹部が盗賊なんかにやられたとあっちゃあアタシの顔も泥まみれよ」

ブラッキー「あ、ありがとうございます!」

マニューラ「勘違いすんじゃないよ」

マニューラ「ほらサッサと行っちまいな!」

タタタッ


―――数か月後 悪国辺境―――

悪国はアジトが陥落し、マニューラ他幹部は逃亡を余儀なくされた。再三の電気王国軍の包囲をかいくぐり、生き残ったのはもう2、30匹であった。

マニューラ「はぁ……はぁ……なんでこんなことになっちまったんだい……」

マニューラ「アタシともあろう者がこんなところまで逃げる羽目になるとは」

マニューラ「情けないねぇ」

グラエナ「マニューラ様! まだ我々は負けておりませぬ!」

グラエナ「この川さえ渡れば王国軍も追っては来ないでしょう!」

グラエナ「この先の土地はまだ味方がおります故、再び悪国を建て直すには充分です!」

グラエナ「どうか早く川をお渡りください」

マニューラ「はは。お天道さんがアタシを見捨てて滅ぼそうとしているのに、どうしてこの川を渡るんだい。いや、渡らないね」

マニューラ「もう仲間もこんな少しになっちまった……」

マニューラ「もしこの先の味方が同情してまたアタシをリーダーに立ててくれたとしても、アタシは一体どのツラさげて接すれば良いんだい」

マニューラ「もしこの先の味方が何も言わなくたってさ、アタシが自分を恥じないことがあると思うかい?いや、ないね」

マニューラ「アンタは十分アタシに尽くしてくれた。アンタだけでも行きな!」

グラエナ「いえ。私はマニューラ様のお付きとして使命を全うする次第であります」

マニューラ「そうかい……」

マニューラ「この場に生き残った全員に告ぐ!!」

マニューラ「アタシ達はここで王国軍と接近する! 逃亡は許さないよ!!」

マニューラ「最期の意地を見せてやろうじゃないか!」

オー!!


しばらくして、王国軍はこの地に到達。マニューラ一行はそれに最後まで抵抗した。マニューラが倒した王国軍はすでに数百。しかし、マニューラもまた多くの傷を負っていた。

マニューラ「はぁはぁ……」ポタポタ

ミカルゲ「最期の意地などにひるむなー!! 全員討て!!」ハッ

マニューラ「お前は!? 元幹部のミカルゲじゃないのか!」

咄嗟に目を逸らすミカルゲ。

ミカルゲ「くっ……おいライチュウ! あれがリーダーのマニューラだ!」

マニューラ「ははは」

マニューラ「アタシは電気王国がアタシの首に大金と広大な領土をかけて求めていると聞いた!」

マニューラ「アンタに是非ともくれてやろうじゃないか」ニヤ

首に鋭い爪を宛がい、目を閉じる。

マニューラ(ブラッキー。アンタに合わせる顔がないねぇ……)

マニューラ(悪国のことは任せたよ……)グッ

ズバッ

ブシュッ

Extra chapter END「悪王の最期」


ということで長くなりましたがすべて終わりです

またそのうちまおゆうや男女などで似たようなこと書いているかもしれません

では

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年10月04日 (金) 21:58:39   ID: M4oBVRnS

ゴーストはゲンガー悪はグラエナ、バンギラス、ペルシアンは知能の高いラプラス

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