女「富豪で悪の団長で余命三年で神の使徒なんです」(12)

■街中

女「た、助けてください!」ドンッ

男「どうわっ――危ない危ないって、なに、助けて?」

女「恐い人達に追われてるんです! お願いします、助けてください!」

男「助けるといったって僕は一つもハイスペックじゃないんだけど……とにかく隠れよう」

~~~~~~~

男「なんとかやり過ごせたかな」

女「ありがとうございます! なんとお礼をしたらいいか……」

男「お礼は構わないけど……どうして追われてたの?」

女「実は私は富豪の娘で悪の団長で余命三年で時を駆ける神の使徒なんです。
  どうしてこんなことになってしまったのか……」

男「設定を盛りすぎたんだと思うよ」

女「設定だなんてっ! 信じてくれないんですか!?」

男「普通信じられないって。
  ここで"実は僕、悪魔に取り憑かれたヴァンパイアハンターなんだ"
  って言っても信じないでしょ?」

女「貴方があの伝説の……」

男「信じちゃうんだ。そして伝説なんだ」

女「嘘なんですか?」

男「嘘もなにも作り話だよ」

女「嘘は泥棒の始まりですよ」

男「悪の団長とは思えない説教だ」

男「そもそも君のその設定――」

女「設定じゃありません!」

男「わかったわかった。境遇? 現状? ってさ、
  かなり矛盾してるよね」

女「どこがですか?」

男「神の使徒なのに悪の団長で、神の使徒なのに余命三年ってところかな」

女「神の使徒だからこそ悪の団長となって世界を平和に導くんですよ」

男「悪が世界を平和にする? ろくな想像が湧かないんだけど」

女「人類が根絶やしになれば平和になるじゃないですか」

男「君こそ悪魔に取り憑かれてるね」

男「じゃあなんで余命三年?
  神の使徒だったら寿命ぐらいなんとかできるでしょ?」

女「神の使徒というだけで万能ではありません。
  乗り移った人間の余命が三年だったのです」

男「これからは君の設定にドジっ子の追加を提案するよ」

女「その口ぶり、まだ信じていないようですね」

男「これで信じる人は家から外に出るべきじゃないと思う」

女「どうしたら信じて貰えますか?」

男「あー……証拠があればいいかな。証明できる?」

女「それなら簡単です。まずこれを見てください」

男「十字架……の携帯ストラップ?」

女「これが神の使徒であるという証明ですよ。
  この十字架にはご利益がありまして、運気をプラスにしてくれるのです」

男「でもそれって確か東急ハンズで売ってるよね」

女「売ってません! これは我が母が与えてくださったのです!」

男「母って乗り移った人のお母さん? 余計にパチモン臭いよ」

女「いえ、あの日、母はいつもと様子が違いました。
  誕生日ケーキを私に投げつけて"ヒャッハッピーバース!"と狂乱してました。
  悪魔と戦っていたに違いありません!」

男「中々個性的なお母さんだけど、だからこそ偽物なんじゃ……
  本物だとしてもそれが神の使徒の証明にはならないし」

女「解りました……では未来予知します!」

男「おお、それは凄い」

女「間もなく曇り空になります!」

男「まあ今日の降水確率は40%だからね。
  今が晴天なのが不思議なくらいだよ」

女「明日は高確率で雨が降ります!」

男「天気予報の方がよっぽど誠実だ」

女「わ、わかりました! 今から貴方は幸運に巡り合います!」

男「へえ、幸運? それはちょっと楽しみだな」

女「あっ、あんな所に人型機械が!」

男「ボトムズ!? ガンダム!? マジンガー!?
  ――って……なにしてるの」フニフニ

女「ちょ、ちょっと貴方の手で暖をとってるだけです//」

男「わざわざ胸に置いて? ってもしかして……これが幸運?」フニフニ

女「んぁっ――動かさないでくださいっ//
  う、嬉しいですよね? 女の子の胸を触れたんですから幸運ですよね? ね?」

男(電波を貫くのも大変だなあ)

男「解った、幸運だからもう離して」

女「す、すみませんっ//」

男「でも今のを証明というにはまだ物足りないなあ。
  あ、富豪の娘ってのは? それなら持ち物とかで判断できるかも」

女「持ち物? なにを見せればいいんですか?」

男「その歳でクレジットカード持ってたら充分、かな」

女「それなら持ってます! これです!」

男「……クレジットカードってどんなのか知ってる?」

女「も、もちろんですよ。あれですよね。えと、お金をクレジットできるカード!」

男「多分君はクレジットの意味を解ってない」

女「失礼ですね、それぐらい知ってます!
  クレジットは溜めるって意味です!」

男「だけど君が持ってるのはEdyだ」

女「そんなっ。お父さんが嘘ついてたなんて……。
  でも、道理で断られる店が多いと……」

男「まあどちらにせよ、子供にクレジットカードは持たせないかもしれないな。
  他にどんな設定があったっけ?」

女「設定じゃありません!
  ええと、余命三年と悪の団長です」

男「余命三年は証明しようがないか。医者だって証明できないもんな。
  じゃあ、悪の団長は? 団長って言うぐらいなら電話一本で部下を呼べるんじゃない?」

女「それは……」モジモジ

男「なに、呼べないの? やっぱり嘘なんだね」

女「いつもは呼べます! ただ今日は……」

男「呼べない理由があるって? どんな理由?」

女「みんな社員旅行でハワイに……」

男「人類が絶滅することはなさそうで安心したよ」

男「結局、何一つとして証明できなかったね。
  認めたら? 嘘だって」

女「真実を嘘にすることはできません。
  もういいです」

男「ちょっと待った、まだ話は終わってない」

女「なんですか。私はもう帰りますっ」

男「最初の質問の答えを聞いてないよ。
  どうして君は追われていたの?
  確かに怖そうな連中がうろついていたし、なにかを探してるようだった。
  偶然そういう状況にあったから利用しただけとも考えられるけど、
  念の為に聞いておきたい。どうして追われているのかな」

女「それは……」

男「おかしな設定を作らなくても本当になにがしかの特異点があるんじゃないの?」

女「いえ、ですから、そうではなくて……」

ワーワー ドコニイルー アッチハドウダー

男「しまった、さっきのヤバそうな奴らだ! 隠れ、いやもう見られたか! どうすれば」

女「いえ、だから、その……」

ワーワー ワーワー

男「来る。隠れて!」

女「あ//」ドキッ

ワーワー ワーワー ドコニイルー アッチカナー ヒャーヒャー

男「………………素通り?」

女「はい」

男「もしかして君、騒ぎに便乗しただけでホントは追われてないとか?」

女「……そんなことより」

男「はあ、そういうのよくないよ。いくら電波でもやっていいことと悪いことがあるからね」

女「遂に出会えましたねマイスピリチュアル//」ドキドキ

男「ここにきて新設定!? どっかでフラグ立っちゃった!?」

女「円環の理に導かれたのです、さあ、儀式をしましょう//」

男「どうしよう……真剣に恐い」

女「さあ! こちらへっ!」キラキラ

男(助けて悪の軍団……)

なんとなく書いちゃってもう終わらせようかと思ったけどまだ続くかもしれなからまだ残しとく
あとクレジットに溜めるなんて意味はないです
ではまた

続けて乙

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