関裕美「菜々さんから誕生日に貰った兎のぬいぐるみが…」 (56)

『なんだよ』

「喋り出した……」

私の掌の上で、小さなシルクハットを被った兎のぬいぐるみは持っていたステッキの先端を私に向ける。

『兎のぬいぐるみが喋っちゃおかしいかよ』

「…いや、おかしいと思うよ?」

しかもなんか凄く身軽に動いてるし。

『はぁ…そうやって常識に縛られてっと人生大変だぞ』

「…それで、あなたは何なのかな…?」

そもそも人形?まさか、生き物なんてこと…

『そりゃあれだよ……』

「あれ……?」



『ウサミン星人』

「なんでやねん」

つい、変なツッコミが出てしまいました。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376582914

『はァ!?どうみてもこのキューティでモフモフな手足!このウサミミ!ウサミン星人だろ!』

「…菜々さんに返品を…」

『ちょっと待て!菜々…じゃねぇ菜々様にアタ…俺は派遣されて来たんだよ!』

掌をステッキで突かれて少し痛いです。

というか一人称俺なんだね。

「というか派遣って何?」

『そりゃアレだよ……』

「…あれ?」

『ひ、日雇いバイト…?』

私に聞かれても困るよ……。

『だぁー!めんどくせぇなァ!ウサミン星人でいいじゃねぇか!』

「う、うん…?」

『分かりゃいいんだよ、分かりゃ』

両腕を組んで兎の人形はコックリコックリと頷きます。

ウサミン星人って凄い。

『で、何かねぇのか?』

「何かって?」

『そりゃアレだろ、お前今日誕生日なんだろ?』

「う、うん…」

『誕生日らしく祝ってやるからなんか注文ねぇのか?』

「え、いきなり言われても…」

いきなり兎のぬいぐるみに祝ってやる!

って言われても困る。

「えと、いきなり何して欲しい、なんて言われてもちょっと困るかな?」

『欲しいものとかやって欲しいこととかねぇのか?』

「えっと…あなた…というかあなたには名前はあるのかな?」

派遣?のウサミン星人でもきっと名前が……。

『んなもん決まってるだろ、たく……』

「たく…?」

『…たく……たく……』

シルクハットを被ったり、持ち上げたり兎のぬいぐるみは露骨に慌て出します。



『たくみん星人……』

あっ、『中身』分かった。

『…違ったわ、名乗るまでもねぇからウサミンな!ウサミン星人のウサミンな!』

「わ、分かった…うん…」

物凄い剣幕です。兎のぬいぐるみだけど。

「た…ウサミンだったら何欲しい?」

『単車』

『…間違った……さ、さ○まドロップス…』

今、単車って言った、このぬいぐるみ。

…でも無理だなぁ。

来年の拓海さんの誕生日プレゼントは別の物考えよう。

『そうじゃねぇ、アタシのことはいいんだ……じゃねぇ、俺のことは…』

『……まぁいいか…』



『アタシのことは今はいいんだ』

早くも俺の一人称を捨ててる!?

そう言ってウサミンは私の肩に飛び乗ります。

「……掌に載せてた時にも思ったけど結構重いよね…」

『そりゃそうだろ、半分ロボットみたいなもんだし』

なんだか酷いネタばらしをされた気分です。

『そんなことより外出るぞ』

「えっ、何で?」

『アタシの都合に悪いから』

もの凄くストレートだね!




『…ったく、菜々のやつ面倒なこと思いつきやがって…』

…ナニモキコエナイ、ナニモキコエナイ。



『で、何か浮かんだか、欲しいもんとか?』

「えと…悩みごと相談とかは?」

『おっ、それっぽいじゃねーか!』

肩に乗った兎のにんぎょ…ウサミンはステッキで私の頬を突く。

『いやぁ、そういうのあるなら最初から言えよなぁ~♪』

ご機嫌です。

『それでどんな悩みなんだ?』

「…今ファミレスの店員さん凄い目でこっち見てたよ」

『そりゃそうだろ、肩に兎のぬいぐるみ載せた女だぜ?』

『しかもそのぬいぐるみ喋るしな』

冷静に言わないで欲しい。

『まっ、アイドルだろ、このぐらいの視線慣っこだろ?』

『今日限りだ、そんなに気負うことでもねぇさ』

「今日だけなの?」

あはは、流石に毎日これっていうのも大変だけど…。

『そりゃそうだろ、最初に日雇いって言わなかったか?』

「あ、うん言ってた」

『ウサミン星もワープアってヤツだな』

「メルヘンの欠片もないんだね」

ウサミン星でも雇用問題は深刻らしいです。

『つーことでアタシは今日限りだ、分かったな?』

「うん」

ウサミンはステッキを持っていない方の腕を腰に当て息を吐く仕草をする。

地味に芸が細かい。

関裕美(14)
http://i.imgur.com/QdGTNJU.jpg

安倍菜々(17?)
http://i.imgur.com/sRDcn4f.jpg

???(??)
http://i.imgur.com/oBuhRq6.jpg

書き溜めここまで。

多分カオスです。既にカオスかもしれません。

溜まったらまた来ます

裕美ちゃんの誕生日SSだから17日の誕生日が終わるまでに終わらせる予定。

明日誕生日なのか?
ちなみに俺は今日誕生日だ

>>15
おう、おめでとう

誤爆見て探したら見つけたわ
今回も期待してんぜ

『そういや菜々のヤツ…じゃねぇ、菜々様が仰ってたんだが……』

「菜々さんは何で菜々様なの?」

『あー、あれだ、ウサミン星の皇女ってヤツらしい』


『……菜々様はウサミン星の皇女であらせられます』

わざわざ言い直した。

『おー、そういや同じくなんたら星人って結構居る設定らしい』

「設定って言っちゃっていいの?」

私はドリンクバーを取りに行くために立ち上がる。

『…違うぞ、アタシはまだ見た事ないってだけで、菜々…様から聞いただけだ…っとと…』

『急に立ち上がると肩の上から落ちそうになるだろ、これ意外と操作が……』

「あ、ごめんっ!」

私の肩でよろける兎のぬいぐるみを押さえる。

私は残りを零さないように席に戻り、オレンジジュースの入ったコップにストローを突き立てる。

『あー、なんだったか、むつみん星人だったか?』

『宇宙のあらゆる場所を旅して回ってるらしい』

……むつみちゃん…。

『特定の家を持たないで宇宙船に住んでるって菜々…様が言ってたな』

「へ、へぇ…」

『意外と設定がしっかり……じゃねぇ…菜々様は博識であれせられます』

私はストローに口を付ける。


『あとヘレンな!』

宇宙人ですら無くなった。

『まぁ、世界レベル、じゃねぇ宇宙レベルだからな』

思わず吹き出した息でオレンジジュースから気泡が溢れる。


ヘレン(24)
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http://i.imgur.com/fJ1BJzO.jpg
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「そ、そっか、うん…宇宙レベルなら仕方ないのかな……?」

良く分からないけど。

『あと何だったか…さとみん星人は凄かったな』

『さとみん星人ってのが広大な宇宙からただ一人の生き別れの兄を探すって話だったんだが…』

兎のぬいぐるみは少し興奮したようにステッキを前後にぶらぶらさせる。

「凄いって何が?」

『なんつうか…深かった』

『菜々の…菜々様の説明だけで二時間は掛かったな』

「長っ!?」

映画一本分くらいの長さだよねそれ。


榊原里美(17)
http://i.imgur.com/T8lWxhy.jpg

『なんだろうな、兄と妹っつう二つの視点から語られるんだけどよ…とにかくスゲェとしか言えねぇな
 まさか最後にむつみん星人がストーリーの核になる部分に来るとはアタシも思わなかった…
 機会があったら菜々…様に直接聞いてみろ』

「菜々さん話し上手ってレベルじゃないよねそれ、あと聞いてみろって言ったのにネタバレされた気が…」

『…あっわりぃ……』

何か逆に凄く申し訳なさそうにされると気まずいよっ!

『でよ、途中から同じく兄を探してて自らを末妹と名乗るあざとみん星人が表れるんだがこいつが曲者で…』


「あー、あー!聞こえないよっ!」


これ以上のネタバレはご遠慮願いたい。

『そういや随分話が逸れたが悩みの話だったな、話してみろよ』

随分どころか私が開いて良かったのか怪しい話も結構あったような…。

「明るくなったって最近私言われるんだけどね……」

『おう、まぁ最近はウジウジすることもねーし見てる側としても安心……』

「えっ?」

『……って菜々様がおっしゃってたぜ…』

「なんか、みんながみんな、明るくなったって言うだけだからちょっと変な気分になっちゃって…」

唐突にコツコツとウサミンがステッキで肩を突く。

『降ろせ』

「えっ?」

『テーブルの上で構わねぇ』

私はウサミンを肩から机の上にそっと移す。


『ふぅ……』

『まぁ、アタシも他人に説教出来るほど偉くなったつもりもねぇけどよ…』

頭を掻く仕草をしようとしたのか、ウサミンはもふもふした手を頭の位置に手をやろうとする。

『あー、こんなもんあったな』

そして、被っていたシルクハットを床に置く。

「う…うん…」

どうやら真面目な話らしい。

『ウサミン星に中学があるんだかは知らねぇけどよ…』

『お前はまだ中学生だし周りにも歳下も多いが年上も多いだろ?』

『お前の年齢を二倍にしても届かないヤツらだって居るしな』

テーブルの上にドッシリと座り込むウサミン。

『それに菜々のヤツだって実際いくつなんだか……』

『うおっ!?おいやめろ…!?』


『……』



『ピ、ピピッ!菜々様はリアルジェイケイですよっ!』

「…ウサミン口調変わった?」

『そ、そんなことないですよ?ウ、ウーサミン!ハイ!』

あぁ、『中身』が変わったのかなぁ…。

書き溜め終了。

次回、ウサミンのターン(予定)

>>15
ハッピーバースデー!

>>16
初めて誤爆を経験しました(白目)

そのさとみん星人のお話もSSで読ませてください!なんでもしますから!!

>>31
実は一回書いて終わる気がしなくて投げたらしい。

0時投下致します。

『こ、こほんっ!』

『まぁ、実際の所、菜々…様も裕美ちゃんもやっとスタートラインに立てたところです!』

『それに本当に……何年も下積み時代を重ねてきた菜々と比べたら裕美ちゃんなんて全然………』

『………はぁ』

……聞こえてる、聞こえてるよ、菜々さん!

『それにプロデューサーが裕美ちゃんを見ててくれます』

「うん、そうだね」

…それに、プロデューサーさんだけじゃなくてもこんなに心配してくれる人も居るしね。

『プロデューサーが優秀かなんてウサミンには分かりませんけど……』

『…真正面から向き合ってくれる人だって菜々様は言ってました』

そう言ってウサミンは床に置いたシルクハットを被り直す。

『時間はまだまだ一杯あります♪』

『ま、まぁ…ウサミンとは一日でお別れですけど…』

「ウサミンは日雇いだもんね」

『誰がそんな夢の無いこと言ったんですか!?』

「えっ、ウサミンが……」

『……はい……?』


『……』


『いっ、いや~!生きてくって大変ですよねっ!』

誤魔化したっ、ウサミン誤魔化したっ!

『ま、まぁ、それに……ってちょ…まだ菜々話して……』


『……』


「えと…?」

……何事?

『……ふむ…』

『よっと!』

ウサミンがいきなり飛び跳ねたと思ったら、今度はストレッチのような動きをする。

『急ごしらえとはいえ、我ながら中々の出来だな』

『まぁ、今後の課題はバッテリーの容量と駆動時間か…』

『いや、しかしこれはまた使う機会があるのか…?』

「……あの…?」

私が見ているのに気づいたのかウサミンが慌てて姿勢を正す。

『…や、やぁ!ウサミンだぞ!』

こんにちは、晶葉ちゃん。


池袋晶葉(14)
http://i.imgur.com/mekCnVj.jpg

『…何の話をしてたんだったか…』

『あぁ…ふむ……なるほど…理解したよ、ありがとう菜々君』

「隠す気ないよね、もう!」

『向こう側』はどういう状況なんだろう。

『…まぁ、そんなことは今はいいんだ』

良くないと思うよ。

『このウサミンに君が悩みを話した時点で全て解決だっ!』

『自信が付くまで延々とレッスンを強制させるウサちゃんロボDXを派遣しよう!』

「何に使うつもりで作ったのそれっ!?」

自分に使うつもりだったのかな…。

『まぁ、冗談だが』

「あはは、なんだ……」

『あ、冗談なのは派遣するって方だな、ウサちゃんロボDXはあるぞ』

出来ればそっちも冗談だったら良かったよ…。

『私は自分の才能を世界に知らしめてやる!くらいの気概でアイドルをやっている』

「……?」

『だが、君は違う』

「違う…?」

ウサミン越しに晶葉ちゃんがニヤリと笑った気がした。

『そうやって思い悩んで乗り越えて、思い悩んで乗り越えて』

『君はそういうアイドルなのかもしれないな』

『…もっとも、私が勝手に言ってるだけだがな』

思い悩んで乗り越えて…。

『自己進化を繰り返す最高のロボが出来そうなアルゴリズムだと思わないか?』

晶葉ちゃんらしい物言いについ笑ってしまう。

『むぅ、そんなにおかしなことを言ったかな…?』

『ふぅ…菜々君がうるさいので私はそろそろ引っ込むことにするよ』

そう言ったきり、ウサミンが無言になる。


『……』


『な、なーんて!ウサミンはメルヘン人格を三つ持っているのデス!』

苦しい、苦しすぎる!

『むむむ、残念ながら準備が終わ…じゃない、時間がやってきてしまいました……』

『事務所に帰りましょう!』

そう言ってテーブルの上から私の肩に再び飛び乗るウサミン。

「時間って?」

『ウ、ウサミン星はサービス残業に厳しいですから!』

『そろそろウサミンは星に帰ることにします!』

ふと、最初に晶葉ちゃんが零した言葉を思い出します。

「……バッテリーの容量と駆動時間?」

『なっ、なんのことですかっ、さぁ事務所へ!』

当たりみたいです。

ウサミンが動かなくなる前に帰らないと……。




私は、ファミレスでのお会計を終えて、事務所へと急ぐ。

『…今日一日、ウサミンはお役に立ちましたか?』

「…面白い話は沢山聞けたかな?」

今日一日、ずっと笑いながらツッコミを入れてた気がします。

『…うっ、そ、そうですかぁ…』

殆ど菜々さんの話だったからなぁ。

『……メルヘン人格の人選を間違えた気がします…』

…メルヘンの真逆を突っ走ってた気もします。

『…残念ながらウサミンの役目はここまでです』

事務所までもう少し、という所でウサミンは私の肩から飛び降りる。

『これから先は君の目で確かめてくれ!ってやつですね!』

「………?」

何かの真似なのかな?

『…あ、いや、なんでもないです……これがジェネレーションギャップ…』

なんだか落ち込ませてしまったみたいです。

『……』

『で、晶葉ちゃん、これどうやって帰る演出するんですか?』

『………右端の赤いボタンですか…?』

なんだか物凄く嫌な予感がします。

『行きますっ!』

ウサミンの掛け声と共にウサミンを中心に激しく煙が巻き上がる。

「へっ!?」

けっ、煙っ!?

煙は辺り一帯を覆い尽くします。


『ちっともメルヘンじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!』

まぁ、どっちかというと忍者だよね。

訂正

△『ちっともメルヘンじゃないですかぁぁぁぁぁぁ!』

○『ちっともメルヘンっぽく無いですよこれぇぇぇ!』

「居ない…」

煙が晴れるとウサミンの姿は影も形もありません。


「……ばいばい、ウサミン…」

「うん、来年も逢えるといいな」

「…あれ、でも…もしかすると次のメルヘン人格は私になるかも…?」

誰かをこうやって励ましたり元気づけたりするのも案外いい経験になるかもしれないな。

そんなことを考えている間にプロダクションにたどり着きます。

最初に拓海さんと菜々さんと晶葉ちゃんにお礼をしなくちゃなんて考えながら入り口のドアノブを引きます。

ドアが開くのと同時に、耳をつんざくような轟音が鳴り響きます。

「きゃっ!?」

私の目の前には大皿で盛りつけられた料理、そして事務所中が飾り付けられていました。

『『『ハッピーバースディ!』』』


『うぅ、晶葉ちゃん、このクラッカー、音が大きすぎますよぉ…』

『そうか?これでも一応市販品だぞ、私が作ればもっと……』

『まぁ、こんなもんじゃねーの?』

『えっ?菜々だけですかぁ!?』


拓海さんの言ってたアタシの都合に悪いからってこういうことだったんだ。


『まぁ、…あれだ、誕生日おめでとうな』

「うん、ありがとう拓海さん…」

『他の連中もこれから来るからもみくちゃにされる覚悟しとけよ?』

「お、お手柔らかにお願い増します……」

『どーだろな?』



『ウサちゃんロボDXはどうする?』

「あはは、流石にいいかな…」

『そうか、残念だが保留にしておくよ』

ニヤリと意味深に笑う晶葉ちゃん。


「素敵なプレゼントをありがとう、菜々さん」

『ウサミンは役に立ちましたか?』

「……うん!」

『それは何よりです♪』

『それではっ!』


   『改めて、お誕生日おめでとうございます♪』



END

終わりです。見てくれた方に感謝。

裕美ちゃん誕生日おめでとう!

>>48
訂正
「お、お手柔らかにお願い増します……」

「お、お手柔らかにお願いします……」

最後の最後で痛恨のミス。

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