一方通行「一人殺せばレベル6になれるだと?」  (173)

木山「ああ、そうさ。それよりも挨拶が遅れていたね。私は木山春生だ……以後よろしく」

一方通行「……説明しろ」

木山「順を追って説明するとだね、君のレベルを上げるために絶対能力進化実験というものが企画された」

木山「当初はツリーダイアグラムの算出によって、学園都市第三位のクローンを2万体殺せば君はレベル6へと進化出来るというプランだったのだが……」

木山「クローンを2万体作成するなど洒落にならないほどの経費が掛かるうえに、子供を大量に殺すなどとは私個人として気に喰わなかったからとりあえず頓挫させてきた」

一方通行「は?」

木山「で、頓挫させたらさせたで学園都市の上部から新しい企画を考えろと言われたもので……私なりに色々考えてみた」

一方通行「おい、頓挫させたってなンだ。何してくれてんだテメェ?」

木山「まぁ事は思いのほか簡単でね。要するにクローン2万体よりも殺すことが困難な対象を見つければいいわけだったのさ」

木山「そこで……彼に協力してもらうことになった。コチラに来てもらえるかい?」

アーカード「……ふむ」スッ

一方通行(なンだコイツ……つーか、なんつーカッコしてやがる)

アーカード「面白い相手がいると聞いて来てみれば……なんだ、貧相な餓鬼が一人とはな」

一方通行「……あァ?」

木山「とりあえず、君はこのアーカードという男を殺してみたまえ」

一方通行「オイオイ……1秒で実験終了しちまうぞ。ナメてんのか?」

木山「因みにだが、この男の命は342万4867個ある」

一方通行「はっ?」

木山「要するに、342万4867回この男を殺せば、晴れて君はレベル6になれるわけさ」

一方通行「おい、ちょっ……意味がわかんねェぞ」

木山「ものは試しだ。まずは一回殺してみたまえ」

アーカード「木山だったか。この餓鬼が私を一回殺すのに何時間待てばいい?」

アーカード「どうせなら刃物でも持たせれば良いと思うのだが」

一方通行「……チッと口閉じてろや」

 “ボチュッ!!”

アーカード「!?」

一方通行は軽く触れただけで、アーカードなる男の血液を逆流させる。
続けて乱雑に掻き乱してやれば、体中の血管という血管から血液が湧き躍り、辺りは血の海と化した。

一方通行「弱っ……」

 “グチュ……グチュッ!”

一方通行「っ!?」

アーカード「おぉ……存外な力を持っているものだな……ぁ」

一方通行が驚くのも無理はない。
夥しい量の血液が、みるみるとアーカードの肉体に吸い込まれているのだから。
そして、何事もなかったかのように平然と彼は振舞っていた。

アーカード「驚いたぞ木山。一回死んでしまった」

木山「ハッハッハ。そうかそうか。君が楽しそうでなによりだよ」

一方通行「おい!どーなってやがるンだコイツァ!!」

木山「私に聞くよりも彼に聞いたほうが早いと思うが……レベル6になれるのなら何だっていいだろう?」

一方通行「イヤ、まぁそうだけどよ……」

一方通行(コイツの戦闘力は不明だが、とりあえず脆いのは間違いねェ……が、ちょっと計算すっか)

一方通行(仮に1秒で一回殺せたとして、一日の時間は86400秒。要は86400回殺せるわけだ)

一方通行(342万4866回殺さねェとしなないコイツを殺しきるには……約40日)

一方通行(だが24時間フル稼働は現実的に無理だ。仮に12時間動いたとして約80日かかるってワケか)

木山「どうした?」

一方通行「本当にレベル6になれるンだろーな?」

木山「勿論だとも。私を信じたまえ」

一方通行「よっし、やってやンぜ!!」

アーカード「……」ニヤニヤ

―実験開始から約1時間―

一方通行「オラァ!!」

アーカード「なるほど……ベクトル操作がこうも便利だとは」グチョッ

アーカード「殺し方のバリエーションが豊富点は面白い」グチャッ

一方通行「黙ってやがれェ!!」

アーカード「喋ってる暇があるなら殺してはどうだ?」ドチュッ

アーカード「そのせいでまだ2000回しか殺せてないぞ?」ベチャァ…

一方通行「うるッせェつってンだろーがァ!!」



―開始から3時間―

一方通行「……!!」

アーカード「叫ぶのに飽きたか?まぁ、そのおかげかペースが上がってるようだぞ」グチョッ

アーカード「おっと、今ので9000回目だ。その調子で頑張ってみろ」ブチュッ

一方通行(マジでうぜェコイツ……!)

一方通行「……!」

一方通行「……!!」

一方通行「……!!!」

アーカード「よし、今ので1万回だ。あと341万4867回だ頑張れ」グチャッ

一方通行(殺す…殺す……!)

アーカード「……と、そろそろ突っ立ってるだけも飽きてきた。少し反撃するぞ」

一方通行 「!?」

 “バァ゛ンッ!!”

アーカード「ッ!!」

反撃の合図として懐から取り出した拳銃の引き金を引くものの、難なく反射されたその銃弾はアーカードの額に直撃した。

一方通行「ハッ、ギャハハッ!馬鹿かオマエ!?効くわけねェっつーンだバァカ!!」

アーカード「上手く反射させるものだな……だがいいのか?8秒ほどロスしたみたいだが」

一方通行「っ!……うるっせェンだよボケッ!!」

アーカード「よーしその調子で頑張れ」グチョッ

―約12時間経過―

一方通行「待ちやがれェエエェエエ!!!」

アーカード「ハッハッハ!どうした?早く動けるのはお前だけだとでも思ったか?」

反撃の意思表明をした直後から、アーカードは鬼ごっこを行うかのように動き回り始めた。
その素早さは人間並みであるはずがなく、まるで高速鬼ごっこと呼ぶに相応しい光景である。
だが、一方通行の速さは凄まじいものがあり、幾度となく捕まえその度に殺しまくっていた。

アーカード「おっと、また捕まってしまったか」グチョッ!!

一方通行「はァ―――……はッ……ぁ!もう、今日は終わりにしといてやらァ……疲れた」

アーカード「なんだ。暇つぶしにもならんじゃないか」

木山「そう言わないでやってくれ。12時間もぶっ続けただけ凄まじい根性だよ彼は」

一方通行「因みに……今、何回殺した……?」

アーカード「3万だ」

一方通行「はァ!?3万!?嘘だろ!!」

木山「逃げられたのが大分ロスに繋がったようだね。それでもよく頑張ったほうじゃないか?」

一方通行(3万て……仮にこのペースでやったとして……)

一方通行(終わるのにあと113日!?一気跳ね上がったぞオイ!!?)

―翌日―

アーカード「どうしたどうした!?足が遅くなったのではないか!?」ヒュヒュッ

一方通行「うるせェェエエェエ!!!大人しく死ねやァ!!」

一方通行(この野郎ォ……段々速度が増してやがるッ……!)

アーカード「おっと、また殺されてしまった」グチョッ!!

一方通行「ぜェ―――っ……かっ、は……!」

一方通行「きょっ、今日はァ……この辺にしといてやる、っ」

木山「能力を使用しているとは言え、流石に今日は疲れたようだね」

アーカード「まぁ昨日よりは楽しめたぞ」

一方通行「んっ、で……今日は何回殺せた……?」

アーカード「1万だな」

一方通行「あァ!?1万ンンゥ!?」

木山「アーカードの速度がかなり増していたからね。仕方ない……まぁ頑張ったほうじゃないか?」

一方通行「1万て……いちまん!?このペースだとあと340日かかっちまうぞオイ!?」

木山「たった1年でレベル6なら安いものだろう」

ちょっとメシ作る

―更に翌日―

一方通行「ギャハ!流石は俺だぜェ!!」

アーカード「ほォ……」グチョッ!!ベキッ!!

一方通行「テメェの動きは見切った!!幾ら逃げようが無駄無駄ァ!!」

この日、一方通行はアーカードを最大速度を引き出させ、その状態で数時間追い続けた結果、ついに動きを見切るにまで至っていた。

アーカード「ふむ。鬼ごっこは終わりと言うことか。ならば……褒美をくれてやろう」

一方通行「あァ!?黙って突っ立ってくれるってかァ!?」

アーカード「いいや…もっと面白いものだ」

捕まえたまま心臓を殴り続けるべきであった。
にも関わらず一方通行がアーカードから飛び退いてしまった理由は、本能が恐怖を認知したこと以外に他ならない。

アーカード「拘束制御術式第三号開放……状況A、クロムウェル発動による承認認識……!!」

一方通行「なっ、なンだ……!?」

 “ズッ……ズズゥッ!”

アーカード「存分に楽しめ……闘争の一片を目に焼き付けるがいい!!」

一方通行「がッ!?ぁぎゃ゛ァア゛ア!!!」

暗い闇が地を這ったかと思えば、物質であるとは到底思えない形状の犬が、一方通行の脚に噛み付いた。

アーカード「あー、くれぐれも殺すな。甘噛み程度にしておけ」

犬「ワフッ」

一方通行「なンだ!!なんだコイツァアアァア!!!」

一方通行(反射が効いてねェ……どうなってやがる!?)

アーカード(ふむ……甘噛みでも骨くらい折れるかと思ったが、牙が皮膚を貫通する程度とは)

アーカード(ヤツの能力は半分ほどの効果を発揮しているというところか)

一方通行「こっの……死ねァ゛!!」

犬「ギャン!?」グチョッ!!

一方通行「ッ!ぐ……割りと硬ェが、殺せるにゃ殺せるか」

アーカード「まぁ、バスカヴィル程度なら一撃で殺せるだろうと思っていたが……もう少し数を増やしてみるか」ズズッ

犬「わっふ!」

一方通行「なっ、ナメてんじゃねェぞゴラァアァアア!!!」

一方通行「しっ……死ッ、ね……!!」

アーカード「おっと、また殺されてしまった」グチョッ

次々に生み出される犬を避け、殴り、殺しながらもアーカードを幾度となく殺した。
それは実験開始より20時間にも及び続いたのである。

一方通行「もっ、もう……無理……だァ」バタッ

木山「よく頑張ったな一方通行……もともと無い体力をよくも使い込んだ。褒めてあげよう」

アーカード「確かに今日は頑張ったほうだな」

一方通行「っで、ェ……今日はっ、何回……殺せたァ……?」

アーカード「3000回だな」

一方通行「……は?」

木山「3000回だそうだ」

一方通行「オイっ……ちょっ…」

アーカード「因みにあと3384867回殺せば私は死ぬな」

一方通行「えっと…今のペースで……約1100日…」

木山「約三年でレベル6になれるならさして問題ではないだろう?頑張ってくれたまえ」

一方通行「さんね、三年………っ……!?」

―1週間後―

一方通行「オラ゛ァァア゛ア゛ッ!!!」

犬「ギャピィ!?」グチョッ!!

アーカード「おぉ、大分ペースが上がったな」ベチュッ!!

一方通行「よっし……今日は何回殺した!?」

アーカード「4万回だ」

一方通行「うオッ!?マジか!よっしゃァアァアアッ!!!」

アーカードが拘束制御第三号を解除して以来、一方通行はおぞましいほどの努力を見せた。
最初はたったの3000回しか殺せなかたにも関わらず、日に日にペースを上げたのだ。
その進化の速度が並大抵ではないことが、数字によって証明された。

木山「凄まじいな君は……驚いたよ」

一方通行「だろ!?俺すげェよなァ!!?」

このペースならば当初の予定よりも早く実験を終わらせることが出来るかもしれないと、一方通行は無邪気に自分の努力を喜んだ。
その喜びようは元来の彼からは想像出来ないほどにアグレッシブなものである。

アーカード「さて、今日はそろそろ休ませてもらおう。お前も明日に備えて休むがいい」

一方通行「おうよ!明日も頼むぜ!」

―次の日―

一方通行「今日は5万回目指すからよォ!その気で掛かってこいや!!」

アーカード「そうかそうか……ならば、そうさせてもらおうか」

両掌を形造り、重ね……今再び、闇が周囲を包んだ。

一方通行「……えっ?」

アーカード「拘束制御術式第二号開放……状況A、クロムウェル発動による承認認識……!!」

 “ドゴォ゛ッ!!”

一方通行「がァ゛っパ!!?」

ただ殴られただけ。それだけで全身に衝撃が走る。
アーカードの動きが段違いに上がっていることが原因なのか、腕力が膨れたことが原因なのかはわからないが……反射膜を突破されていた。

一方通行「げェ……ごっ、ォ゛……!?」

アーカード「ふむ……そこそこの力で殴ったつもりだが、やはり反射膜が多々効いているようだ」

一方通行「てっ、テメっ……上等だコラァ゛アア゛ァ!!」

一方通行「ぜェ―――っ……ぐっ、ふゥ……!」

アーカード「あぁ~、また殺られてしまったか」グチョッ!

一方通行「きょっ…ぅ、はァ……この辺っ、で…」バタッ

木山「15時間もよく頑張ったものだ……一方通行、部屋に戻ろう」

一方通行「まっ、待て……今日は何回だ?」

アーカード「300回だ」

一方通行「……はっ?」

木山「300回らしいぞ。寧ろよくそれだけ殺せたと思うが」

一方通行「へっ……問題じゃねェ。また、ペースを上げて……!」

アーカード「ペースを上げてくれるのは構わんが、今日は大分手加減したつもりだぞ」

一方通行「……」

一方通行「ぅ、ゥうっ…グスッ…うぅ゛ェ……っ!」

木山「泣くな。男の子だろう」

一方通行「うぁ゛ァ゛……ひぐっ……!」

風呂入ってくる

―翌日―

一方通行「……」ボケーッ

木山「やっぱりまだ休んだほうがいいんじゃないか?」

一方通行「……そう、だな」

木山「重症だな……最近、腕の良いカウンセラーがこの施設に来たらしいが、診てもらったほうがいいんじゃないか?」

一方通行「……おゥ」


―医務室―

一方通行「すンませェーん……失礼しまァース」

アーカード「なんだ。お前か」

一方通行「!?」

アーカード「わざわざ驚くことか?実験の合間の暇つぶしでカウンセラーをやってるだけだ」

一方通行「ぇ、えェ~……?」

アーカード「で、悩み事か?」

一方通行「主にアンタが悩みの種だがなァ……」

アーカード「だと思ったぞ」

アーカード「まぁ……吐くことを吐いたらどうだ?」

一方通行「……正直よォ、アンタみてーな化け物殺しきるなンざ……無理と思えてきた」

一方通行「レベル6になれねーような気が、して……」

アーカード「まず聞かせてもらうが、何故レベル6なんぞになりたいと思った?」

一方通行「そりゃ、誰も寄せ付けねェよーな強さなら……俺に挑もうなンざ思わねェだろォが」

アーカード「ハハッ!笑わせてくれるな……一つ聞くが、レベル6とやらと私はどちらが強いと思う?」

一方通行「レベル6に決まっ」

アーカード「因みに、私はまだ解放してない力が存外にあるぞ」

一方通行「……どっちだろォな」

アーカード「そのどちらともわからない私の力を知って尚、挑んでくる馬鹿共は大勢いる」

アーカード「人間だろうが化け物だろうが、種類を問わず私と殺しあおうとする馬鹿共がな」

一方通行「……」

アーカード「闘争に終わりは無いのだ……生きている限りは」

アーカード「詰まるところ、お前の目的はレベル6になったところで叶いやしない」

一方通行「……そうか」

アーカード「第一に、そのレベル6という枠は誰が決めた?」

アーカード「誰かが決めた枠で満足する性質か?お前は」

一方通行「……癪だな」

アーカード「さて、どうする?」

一方通行「どォもこーも……テメェとケリ着けねェのはしっくりこねェな。続きやンぞ」

アーカード「ハッ!人間如きが……よく言った」

人間ごときがはアーカードは言わんだろ

―数ヵ月後―

一方通行「オラァア゛ァッ!!!」

アーカード「……まさか、ここまでやるとはな」グチョッ!!

兎に角研鑽を重ねた。
日に日に一挙手一動をリファインし続けた一方通行は、今や鬼人の如し強さである。
研究施設内だけで戦いがまとまるはずもなく、舞台は学園都市全域にて行われていた。
拘束制御術式第一号までをも開放したアーカードを相手に、ついには残る命を100までに追い込んだのだ。

一方通行「どォっ、だよ……旦那ァ!!」

アーカード「存外に化け物染みてきたな……一方通行」

木山「さて、今日はもういい時間だ。明日で決着をつけるがいいさ」

一方通行「旦那。アンタの命が残り一つになった時……負けを認めろ」

アーカード「構わん。出来れば、だがな」

>>138
だよね。俺も思ったわw

アーカード「……ん」プルルル

アーカード「すまん、電話だ」ピッ

アーカード「ウォルターか、どうした?……ほぉ……なるほど」

アーカード「そうか……いいだろう。すぐに戻る」ピッ

一方通行「なンかあったのか?」

アーカード「少し所用が出来た……と言っても、二日ほどでコチラに戻るがな」

一方通行「そうかい。楽しみに待ってるからよォ」

アーカード「懺悔でも済ませておくといい。では」

―二日後―

一方通行「遅ェな、あの野郎……」

木山「ん……彼が帰ってきたようだ」

アーカード「待ちくたびれていたか?一方通行」

一方通行「いィやァ……ウォーミングアップ済ませたばっかだからよォ。丁度良かった」

一方通行「さァて、殺ろうぜ旦那ァ!」

アーカード「ウォーミングアップはコチラも済んだところで……そうだ。一応言っておかねばならんな」

一方通行「あ?」

アーカード「今しがた済ませた所用なんだが、私の主に向かってメス豚などと抜かした国があってな。その国の連中を皆殺しにしてきたのだ」

アーカード「まぁ北朝鮮という小国だからすぐに終わったのだが……殲滅ついでに奴らの命を喰ってきた」

一方通行「……どンくらい?」

アーカード「15620000ほどだ」

一方通行「は?」

木山「1562万だそうだ。頑張ってくれ」

アーカード「ウォーミングアップは終わったところだったか……では、やるとしよう!」

終わり

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