【咲-Saki-】これからはおんなじ道【SS】 (130)






コレ↓の2年後だよ(設定的に続きなだけで読まなくてもオケ)

以下設定抜粋
・経年設定:原作の高3が大学3年生
・白糸台大学:洋榎、久、照、初美、白望が麻雀サークルで部内サークルを結成して活動(今回は照メイン)
・世界設定:前作末文参照のこと(但し、参考にならない)

ちゅーい!
・今回のメインは照と前作チョイ役や未登場の人になります
・いろいろチョーテキトー
・草ムリな人はそっとじ推奨でー






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1376549095




7月初頭 白糸台キャンパス


洋榎「久~」

久「洋榎! こらぁ~、朝帰りどころか午後の講義からご登場とは随分じゃない」

洋榎「堪忍堪忍、昨日はしこたま呑んでもーて、清水谷んトコで世話になっとったんや」

久「それはいーけど、メール位しなさいよね」

洋榎「たはは、何分ヘロヘロやったもんで」カンニンナ

久「仕方ないわね。ま、同郷のメンツで飲めばハメが外れるのも分かるけどね」

洋榎「さすがうちの久や、話が分かる!」

久「おだてても何も出ませーん」

洋榎「たはは.....ところで照おる?」

久「午前の講義で見かけたけど、何? どうかしたの?」

洋榎「や、それがやな....」

久「何よ?」

洋榎「ちょおこっち来ぃ」グイッ

久「ちょっと!?」

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洋榎「ここなら人も来ーへんしえーか」

久「何なのよ? 袖が伸びちゃうじゃない」

洋榎「照のこと知っとった?」

久「はい?」

洋榎「まぁ知らんわな。うちも寝耳に水やったわ」

久「何? 何か深刻な話なの?」

洋榎「深刻っちゃー深刻やろーし、他人事っちゃー他人事なんやろーけど」

久「勿体振らないでよ」

洋榎「照な、江口と別れたんやって」

久「マジ!? 2年も続いてたのに?」

洋榎「マジやって! しかももう三月も前の話やっちゅーんやから耳を疑ったわ」

久「そんな素振りこれっぽちもなかったけど....」

洋榎「江口の奴がまたのほほーんとしとってまー何が何やらホメイニ師やら」

久「え? どっちがどっちを振ったって話なの?」


洋榎「江口が振ったっちゅーか、まぁ新しい相手と付き合い始める前に清算したっちゅー事らしいんやけど」

久「新しい相手?」

洋榎「そこまでは突っ込んで聞けんかったわ」ゲンカイヤ

久「でも照ってば全然普段通りだったじゃない」

洋榎「アレも何考えてるかようわからんところあるしなー。江口が別れ切り出したら、うん分かったの一言やったらしいで?」

久「馬鹿ねー。あれだけ仲良かったのに一言で済むわけないじゃない。あー、バカバカッ」

洋榎「んで、どないしよ?」

久「どーしようもないじゃない。三ヶ月前に終わってる話を外野がつつき回す真似なんて出来っこないでしょ」

洋榎「せやけどうち顔に出るしなぁ」

久「卓に着いたらポーカーフェイスでしょ。しっかりしてよね」

洋榎「対局中と仲間内の付き合いは別もんやん」









サークル棟


白望「だる~」ズリズリ

初美「梅雨が明けきらないですからねー。ほらシロちゃん、ちゃんと歩くですよー」

照「紙魚が元気で困る」ペラッ

初美「照ちゃんも読み歩きはダメですよー」

白望「照」

照「ん?」

白望「ここしばらく本の虫に戻った感じだけど、心境の変化でもあった?」

照「別に。ちょっと書棚を整理してたら読みかけの本やら懐かしい本が出て来たってだけ」

初美「今読んでるのは何ですかー?」

照「永井荷風」


白望「孤独死した作家かぁ」

初美「孤独死ですかぁ。昔の作家さんは自殺が多かったみたいですけどー」

照「どう死んだかより、生前何を書いたかでしょ。着いたよ」ガラッ

洋榎「!! お、おう、照」

照「......なに?」ジト

洋榎「いやなんも....」

久「この娘ちょーっと宿酔いだから。それにしても今日は一段とジメジメするわねー」

初美「まったくなのですよー」スワリンコッ

白望「提案。今日はもうお開きにしよう」

洋榎「早いなー、自分」アハハ-...


......エモイワレヌチンモク.......



照「だから何?」

久「べ、別に?」

洋榎「なんもないで?」

初美「どーかしたんですかー?」

白望「だるい話ならやめて」グテー

照「洋榎、昨日は飲み会だったっけ?」

洋榎「お、おう。せやで、清水谷や園城寺ら同郷の集まりでな」

照「そう。ならセーラの事?」

洋・久「..........」

初美「セーラちゃんがどーかしましたかー?」

白望「だるい話の予感」

> たはは
こんな寒い笑い方してたっけ


ピンポンパンポーン

校内放送『文学部3年、宮永照さん。至急進路指導室まで来て下さい。繰り返します~』

照「行ってくる」

初美「いってらっしゃいですー」

白望「帰りにアイス買ってきて」

照「了解」ガラッ ピシャッ

洋榎「..........っぷはー」

久「ばかっ」ペシッ

洋榎「ひどっ」

初美「で?」

洋榎「話せば長い話なんやけどな」

白望「手短に」

洋榎「ほな手短でー」

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初美「うわ~、全然気付かなかったですよー」

洋榎「せやろー?」

白望「よくある話。ほっとけば?」

久「勿論どうこうしようなんて気はないけれど、気にならないって言うのは嘘でしょ?」

白望「まぁ気にならなくはないけど」

初美「照ちゃんはちょっと読めないとこありますから、本人がどう思ってるかですねー」

洋榎「そこなんや。キッチリおわっとんのやったらそれこそ余計なお世話やし」

久「別段変化なしってのが逆に怖いわよね」

白望「.......引きずってるかもね」

初美「どの辺がですかー?」

白望「やっぱナシ。憶測だし」

初美「ぶ~」


ガラッ

照「ただいま。はい白望、アイス。みんなの分も適当に買って来た」

白望「ありがと」

初美「ありがとです~」

洋榎「ごち」

久「悪いわね。それで、何の呼び出しだったの?」

照「スカウト」

洋榎「お? どこどこどこ?」

照「エンプレス大阪」

洋榎「ちょっ!?」

初美「わ~♪ 関西リーグの雄、日本リーグ参戦後も毎年首位争いに絡む強豪じゃないですか~」

白望「さすが照。3年のこの時期にもうそんなビッグクラブから声が掛かる」

照「今までも何度か話はあったけど、大学通しての正式な申し出は今回が初めて」

洋榎「うちがノドから手が出るほど欲しいスカウトを....」

久「エンプレスなら入団テスト受けてでも入りたいって言ってたものね」

照「そうなんだ」


洋榎「まぁ照ならしゃーないわ。インハイ、インカレ総ナメのモンスターやし、ドラフト1位指名待ったなしやな」

照「モンスターって....」

初美「それで、どうするのー? スカウトのお話受けるんですかー?」

照「一度、大阪の設備や練習風景を見て貰いたいって言われてるから、もう夏休みになるし行ってみるつもり」

洋榎「したら早い内に行ってもーて、戻ってきたらみんなで今年は長野やで」

初美「楽しみですよー♪」

白望「去年の九州周遊旅行は猛暑過ぎたからね。今度は避暑で」

久「鹿児島では台風に鉢合わせしたしね。あれは凄かったわ」

初美「竜ヶ水で暴風雨とかちょっとした恐怖体験ですからねー♪」ドセキリュウコワイデスー

照「あ、久。そういう事だから長野旅行のプランニングは早目にやっちゃおう」

久「ええ、そうね」

白望「避暑メインで」カルイザワトカカンゲイ

久「はいはい」







7月下旬 例の愛の巣


久「ただいまー」

洋榎「お疲れさん。今日も暑いなー」

久「もう夜でも蝉がうるさいものね」

洋榎「冷やちゅーの具材用意しといたでー。後は麺茹でるだけや」

久「またなのw 三日連続じゃない」

洋榎「せやかてうちは久ほどあれこれ作れんし」

久「私だって料理は得意ってわけじゃないのよ? 洋榎の為に勉強したんだから、洋榎もちょっとは見習うように」

洋榎「へーへー」

久「二つ返事禁止」

洋榎「はいな」キリッ

久「じゃあシャワー使うから、食事の支度任せていい?」

洋榎「あいよっ、まかしとき」

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洋榎「やっぱマルチャンはド安定やなー」ズズッ

久「どこも大して変わらないでしょ」チュルチュル

洋榎「いやいや、機微っちゅーの? なんちゅーの? 微妙な違いがあるもんなんやで?」ズルンッ

久「そんなものかしら? あ、麦茶出しとくの忘れた」ガタッ

洋榎「それで旅行の方はプラン纏まったん?」

久「ええ。どーせ9月半ばまで休みだし、お盆の混む時期は外して8月下旬にしたわ。インハイ観終わってからね」

洋榎「ほうほう。照はいつから大阪やったっけ?」

久「週明けにはもう行くようなこと言ってたわよ?」ハイ ムギチャ

洋榎「そーなんか」アリガトサン

久「何? 大阪帰りたくなっちゃった?」ニヤニヤ

洋榎「ちゃうわ。何にやにやしとんのよ」

久「ウソよウソ。照の事が気になるのよね」


洋榎「まーな。あれからよう見てると何や知らんけど高校時代の空気をまとってる感じがすんねん」ヨージトッテ

久「それ分かる。私も思ってた」ハイドーソ

洋榎「やっぱし引きずっとるんとちゃうかなぁ」

久「旅行までに何とかしたいわよね。でも私たちが触れると却って逆効果な気がするし」

洋榎「さりとて他に誰がおるかやけど」

久「あ、菫さんとか?」

洋榎「シーズン中のプロ相手に何をせーゆーんやw」ムリムリ

久「そーよねー。彼女、今となっては人気・実力・容姿と三拍子揃った引っ張りだこのプロだもんね」

洋榎「今年辺りタイトルの一つも手が届きそーなんちゃうかな」

チャクメローン♪

洋榎「お、うちかいな。誰やろ?」スマホトリダシー


洋榎「おお!?」ツウワー「なんやどないした? ひっさし振りやないかー」

久「誰?」

洋榎(キョーコ)クチパク

久「ああ、姫松の。じゃあ後片付けしてるわね。ごゆっくり」スクッ

洋榎「せやなー、ここんとこたまーにメールでやりとりするくらいやったからなー」

恭子『ツイッターやるゆーてたのにあっという間に一言もつぶやかんよーになったのは笑いました。洋榎ちゃんらしいですね』

洋榎「うちはメールが関の山やな。ツイッターは無理やった。四六時中スマホいじっとってもしゃーないわ」

恭子『相変わらずの様子で安心しましたよ』

洋榎「まー人間早々変わりはせんわな。んで、今日は何? 何か用か?」

恭子『用事と言うほどの事もないんですけど、園芸学部の友達が産学連携で作った西瓜をくれましてね。よければ送ろうかと』

洋榎「西瓜! 今年はまだ口にしてへんわ。貰う貰う!」

恭子『そう言ってくれると送る甲斐もあります。そしたら今日の内に発送しますんで、食べたら一言感想下さいね』

洋榎「おう、400字詰めの原稿用紙で送ったるわ」

恭子『メールで十分です。余計な事せんで下さい』


洋榎「あはは、懐かしいノリやなーw」

恭子『ほんまですねw 今年のお盆は戻ってきます?』

洋榎「あー、夏の里帰りは来年やな。来年の夏はこっちの仲間とみんなで大阪行く予定や」

恭子『それは楽しみですね。是非会いに来て下さい。足に使って貰ってもえーですよ』

洋榎「その時は頼むわ」

恭子『それと、絹ちゃんにも電話してあげて下さいね。声聞きたがってましたから』

洋榎「ほーか? 遠慮せんと掛けてくればえーのにな」

恭子『そこはお互いさまやないんですか』

洋榎「せやな。うん、明日にでも掛けてみるわ」

恭子『はい。それじゃこれで失礼しますね。竹井さんにも宜しく伝えて下さい』

洋榎「おう、そしたらまたなー。西瓜楽しみにしてるわー」







白糸台学生寮 大学寮


白望「でか」

初美「こんなに大きな西瓜初めて見ましたー」

洋榎「なー。うちもビビったわ。石戸の胸も裸足で逃げ出すでw」

初美「www そんなこと言ったら圧殺されちゃいますよー」

洋榎「そらそのスジのモンにはご褒美やろなぁww」

久「馬鹿言ってないで、ほら、寮のみんなにふるまって」

洋榎「おー、みんな遠慮のーかぶりついてやー」

ゴチデース

久「ふう、暑いけど、冷えた西瓜を食べるには最高の陽気ね」

白望「だるいけど、西瓜はこうして外で食べるのが良いね」

初美「ぷぷぷぷぷーっ」

洋榎「おー、うちも飛ばすでー」

久「ちょっと、やだ、こっちに飛ばさないでよっ」

白望「そー言えば照は呼んだの?」

久「一応電話したけど出なかったから、メールだけ打っておいたわ」

初美「明日は大阪行きでしたよねー。それで忙しーんでしょーかー」

久「どうかしらねぇ」

洋榎「ほれみぃ! 初美の倍は飛んだで~♪」

初美「むっ、負けませんよー!」プププーッ







同じ頃 恵比寿ガーデンプレイス


順子「弘世プロ!」ドモッ

菫「西田さん、最近よくお会いしますね」ペコッ

順子「そりゃ注目してますからねっ」

菫「そうですか。私なんかよりも他に注目すべき選手は沢山いると思いますが」

順子「何をおっしゃいますやら! 名門恵比寿にドラフト3位指名で入団以来着実に実績を積んで来てるじゃないですか」

菫「まあ頑張らせて頂いてます」

順子「今年はオーナーの鶴の一声で年末のタイトル戦トーナメントにも参加が決まったとか?」

菫「推薦は頂きましたけど、秋口までの戦績次第ですから、まだ分かりませんよ」

順子「受け答えも隙がないですねぇ。そのクールな素振りと容姿から人気もうなぎ登りですよ?」

菫「ファンの皆さんには感謝しています。名門恵比寿の一員として恥じない闘牌を続けて行きたいと思います」

順子「ところで」カチッ ボイレコオフー

菫「?」


順子「高校時代の戦友、宮永照さんにエンプレス大阪から正式なコンタクトがあった話は知ってる?」

菫「そうなんですか?」

順子「あら、知らなかったかー。こぼれ話でもと期待してたんだけどなー」

菫「ご期待に添えませんですみません。それで、その話、確かなんですか?」

順子「関西支社の方から出た話で、大学を通してフロントが本人と直接会ったのは確かな話みたいよ」

菫「照はまだ3年ですけど」

順子「ま、後からフライングだと叩かれるのは覚悟の上なんでしょうね。それだけの逸材なわけだし」

菫「.........」

順子「今、彼女と打ったとして、勝つ自信ある?」

菫「それはあります。自信すら持てないようならプロとしてはやっていけませんよ」

順子「プロ雀士としての矜持がそう言わせるってこと?」

菫「いえ、勝ちます。確かに彼女も3年続けてインカレを制してますが、私の3年間がそれに劣るとは思いません」

順子「なるほど。模範的だけど、自信に裏打ちされた良い回答ね。どうもありがとう!」スタタッ


菫「相変わらず慌ただしい人だな」ヤレヤレ 「しかし照に大阪から声が掛かったか」

ゴソゴソ スマホイジリー

菫「出るかな」

ヨビダシチュー

菫「出ないか」スッ

照『もしもし?』

菫「おっと、照か? 中々出ないから危うく切ってしまう所だった」

照『ごめん、ちょっとバタバタしてて。あ、久からメールも入ってるし』

菫「今、少し平気か?」

照『うん、いいよ。珍しいね。菫が直接掛けて来るなんて』

菫「たまにはな」

照『それで、何か話でも?』


菫「ちょっと小耳に挟んだ話なんだが、お前、エンプレスから声が掛かったんだって?」

照『さすが、そっちの世界の情報は速いね』

菫「まだ時期は早いが、お前もプロでやって行く気はあるんだろ? どうするんだ?」

照『取りあえず大阪へ行って、施設や設備を見たり、練習も見せてくれるって言うし、詳しい話を聞いて来るつもり』

菫「そうか。いや、その気でいてくれて良かったよ。チーム自体は何処でも良いんだが、プロの世界で会いたいからな」

照『4年も待たせちゃうけど、私を待っててくれるんだ?』

菫「何だよその言い回しは」

照『ちょっとからかってみただけ』

菫「まったく.....。そう言えば江口も大阪出身だし、一緒に行くのか?」

照『あー』

菫「あーって何だよw」

照『セーラとは別れた』


菫「え?」

照『他に好きな人が出来たって、振られちゃった』

菫「おいおい、本当に.....」

照『私今フリーだよ? お買い得だよ?』

菫「よせバカ。そんな事、誰彼構わず言っているんじゃないだろうな?」

照『菫が怒ることないでしょ』

菫「自分を大事にしろって言ってるんだ。自分を大事にできないヤツは他人も大事になんてできないんだからな」

照『......だから振られたって言いたいの?』

菫「いや、私は....」

ツーツー

菫「おい、照!?」







都下 宮永家


スマホ カラカラーン

照「..............」ヒザカカエー

チャクメローン♪

照「.....また菫。もう出ないよ、ばかっ」ピッ

チャクメローン♪

照「.......」ピッ

チャクメローン♪

照「.......」ピッ

チャクメローン♪

照「しつこいって言ってるでしょっ!」


洋榎『おおう!? どないしたどないした? 天変地異か!?』

照「あ、ごめっ、洋榎?」

洋榎『ピンポーン♪ 洋榎ちゃんやでー。大事ないかー?』

照「ごめんね。ちょっとしつこい勧誘の電話が掛かってて」

洋榎『せやったんか。心臓停まるかと思ったわw まぁ一安心やな』

照「何か用? 私今大阪行きの準備でちょっと.....あ、久のメールの件?」

洋榎『それはえーんや。むしろ大阪行きの件でな』

照「?」

洋榎『せっかく行くんやし、向こうでゆっくりしてきたらえー思て、うちの高校時代の親友にガイド頼んだったわ』

照「え? 誰に、何?」

洋榎『恭子や恭子、姫松高校大将やった末原恭子。覚えてるやろ?』

照「面識はないけど」


洋榎『んなもんえーわ。うちと恭子が親友で、うちと照が親友やったら恭子と照も親友や♪』

照「世界に広がるタモリング状態.....」

洋榎『なー、タモさんは偉大やねんなー.....って、そんな話しとらんわ!』

照「ツッこむべきなの?」

洋榎『とにかく向こう着いたら恭子に迎えに行かせるよってな、何時の新幹線かおせーて』

照「明日ののぞみ215号で、新大阪には11:30頃着くけど」

洋榎『了解や。そしたら恭子のケー番言っとくな。メモしとき』

照「あ、うん。ちょっと待って」ガサゴソ 「いいよ」

洋榎『090-xxxx-xxxxや。ほい復唱』

照「えっと、090-xxxx-xxxx」

洋榎『よっしゃ! したら恭子の方にも照の番号知らせて、着いたら連絡入るようにしとくわ』

照「え? え? ちょっとちょっと」

洋榎『着いてからの事は恭子に任せとったらえーねん。のんびり楽しんで来ぃ。ほなな』ピッ

ツーツー

照「なにこの展開? ええ~......」







白糸台学生寮 大学寮 白望&初美ルーム


初美「ぶった切りましたねー」

白望「洋榎にしかできない芸当」

洋榎「ま、こんなもんやろな」

久「悪い考えじゃないと思うわよ。東京にある日常から離れてゆったりする時間が取れれば心境の変化もあるだろうし」

初美「それなら今度の長野旅行でもよくないですかー?」

白望「それだと私たちっていう日常がセットで付いて来ちゃうでしょ」

初美「あー、私たちじゃ力になれませんかー」

久「そーじゃないわよ。今度の事は、後に控える長野旅行で私たちが力になる為の一つのプロセスなのよ」

洋榎「大阪で一息、長野で一息。ま、その辺りで何とかなるんちゃうか?」

初美「世話の焼ける照ちゃんも何だか可愛いですねー」

白望「可愛いと来たw」

久「可愛いじゃない♪」

洋榎「可愛がったろーやないかい」

初美「それは何か違いますよー」ブーブー







明けて新大阪


照(さすが大阪。東京に負けず劣らず人が多い。しかも、東京より一段と暑いなぁ)テクテク

チャクメローン♪

照「あ、末原さんかな」ピッ 「はい、宮永です」

恭子「びっくりしたなぁ。目の前ですわw」

照「ほんとだww」

恭子「どーも末原です。まぁインハイで会ってると言えば会ってますけど、正味、初めましてですね」

照「はい、初めまして。よろしくお願いします」ペコッ

恭子「荷物持ちますよ」

照「あ、平気」

恭子「遠慮せんといて下さい。これから一週間の付き合いやないですか」

照「一週間も!?」

恭子「洋榎ちゃんからはそー言われてますけど?」

照「初耳」

恭子「あー、まぁそこは洋榎ちゃんですから。ま、とにかく荷物半分こで」

照「ありがとう」

恭子「駅前に車寄せてるんで、急ぎましょ」スタタタッ

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恭子「あ、あの赤い車ですわ」

照「ハザードつけっぱなし?」

恭子「乗り捨てたら即切符ですからね」

ガチャ

絹恵「わー、ほんまに宮永さんやー♪」テーフリフリ

恭子「絹ちゃんトランク開けてー」

絹恵「はいな」ガチャ 「宮永さん、荷物預かりますぅ」

照「ありがとう。絹恵ちゃんだよね? 洋榎の妹さん」

絹恵「あ、知っててくれました? 絹恵です。初めまして」ペコッ

恭子「同じ大学通ってましてね。話したら一緒に来たいゆーもんやから」

絹恵「えへへ、おねーちゃんから宮永さん良い人やって聞かされてましたんで」

照「そ、そうかな? 普通だと思うけど////」テレッ

恭子「さぁさ、乗って下さい。一先ず駅前の混雑から抜け出しましょ」

絹恵「そしたらうちが運転を」

恭子「あかん」


絹恵「何でですか」

恭子「あかんもんはあかん。宮永さんカタカタしてまうわ」

絹恵「カタカタは恭子さんの先輩特許やん」

恭子「上手くもないし誰がカタカタや!」

照「コント始まってる?」

絹・恭「いやいやいや、何でですの!」

照「おもしろい」クスクスッ

恭子「とにかくうちがドライバーや。絹ちゃんはコドラ」

絹恵「んもー、せっかくうちのドラテク披露しよ思たのにぃ」

恭子「それがあかんのやって」

照「大体解った。洋榎と同じだ」

恭子「それです」







新御堂筋


絹恵「宮永さん宮永さん」

照「なぁに?」

絹恵「照さんて呼ばせて貰ってもえーですか?」

照「いいよ」カワイイナー

絹恵「そしたら照さん。今日はエンプレスには何時の約束です?」

照「14:00かな」

絹恵「ほらっ、やっぱりランチタイムの後ですよっ、燦行きましょーよ、燦!」

恭子「ほなそーしますか。MIDタワーは城見やったな」

照「さんって?」

絹恵「高層ビルの38階にあるお店で、眺め最高なんですけど、千円そこそこでランチが食べれるんですよっ」

恭子「絹ちゃんのオススメで私も行きましたけど、大阪城が見下ろせますし中々ですよ」

照「へ~、それは行ってみたいかも」

絹恵「決まりやねっ!」

恭子「梅新東から京阪国道入って桜子橋で曲がればよかったかなぁ?」

絹恵「手前の東野田町の交差点を右折した方が早いですよ」







ツイン21 MIDタワー38F 「燦」


照「わぁ~、これは素敵な眺め」

絹恵「でしょ? もーここめっちゃお気になんですよぉ♪」

恭子「今日は天気もえーですし、ほら、あそこらに関空見えますよ。ベイエリアもよう見えてますね」

照「ほんとだ~、絶景だねー」スゴイスゴイ

絹恵「夜景もえーんですけど、夜はここそれなりのお値段やし」

恭子「まぁ学生には背伸びが過ぎるな」

絹恵「あ、照さん。メニュー何にします?」ピラッ

照「んー、二人は何頼むの?」

絹・恭「チキン南蛮!」

照「じゃあ私もそれでw」イキピッタリ

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絹恵「ふー、お腹くちくなったぁ」サスリサスリ

恭子「出る腹か?」

絹恵「ちゃいますよぉ!」ササッ

照「ふふっ、仲いーね」

恭子「高校時代からの付き合いですから」

絹恵「結構意地悪ですわ」

恭子「愛のムチやな」

絹恵「もっと真っ直ぐに愛して下さいぃぃ~」イーッ

照「あ、そうだ。洋榎にメールしておかなきゃ。ついでに化粧室行ってくるね」カタッ

絹恵「それやったら写メ送ったって下さい」

照「そーだね。じゃあ撮るよ~」

絹恵「ぴーす!」

恭子「子供やなぁ」

パシャッ


照「うん、綺麗に撮れた。それじゃちょっと外すね」

恭子「ごゆっくりどーぞ」

コーヒーオカワリイカガデスカー

絹恵「あ、お願いしますぅ」

コポコポコポ ゴユックリー

絹恵「麦とろもお代わりすればよかったかな」

恭子「お腹くちくなったゆーとったやないのw」

絹恵「だってタダやしぃ」

恭子「にしても、ここへ寄れたんは当たりやったね」

絹恵「ですね。むっちゃ喜んでくれてました。つかみは完璧や♪」

恭子「洋榎ちゃんから話持ちかけられた時は無茶なミッションや思たけど、まぁまぁ出だしは好調や」

絹恵「あんなにえー人やのに、江口さん何で振ったりしたんかなぁ」

恭子「絹ちゃんそれ本人の前では禁句やで」

絹恵「分かってますよ」

恭子「ま、恋愛は色々ややこしいもんやからなぁ」

絹恵「経験者っぽく語ってますけど、恭子さん恋人いないですよね?」

恭子「絹ちゃんとおんなじやからな」シレッ

絹恵「うぎゃ~!」ソレヲユータラアカン!







都内 Weekly麻雀Today編集部


順子「あーっ、もう!」

久美子「どーしたんですか先輩?」

順子「ボスの頭が固くって参るわって話よ~」ツップシー

久美子「何の話です?」

順子「弘世プロを宮永照と対局させたいのよ」

久美子「インカレチャンプとですか?」

順子「インハイチャンプとも呼ばれたわよ。久美子ちゃんが入社した年、彼女たちは高校3年生。チームメイトだった」

久美子「それってきっかけはエンプレス大阪が宮永照に接触したことです?」

順子「まぁね、で、弘世プロにちょっと話を聞きに行ったとき、流れで尋ねたのよ。今なら彼女に勝てるかって」

久美子「何て答えたんです?」

順子「勝てるって言ったわよ。それならそれで専門誌の記者としてはその言葉を証明して欲しいじゃない?」

久美子「まぁそれは分かりますけど」

順子「それに弘世プロは人気実力ともトップクラスの若手! 対する宮永照は学生麻雀の女王! しかも同門!」

大介「それで燃えなきゃ嘘っすよね」


順子「でしょ! って、いつからいたの!?」

大介「たった今ですよ。今日は朝から横浜のプレスで、ところが肝心の咏ちゃんが大遅刻ですよ!」

久美子「お疲れ様です。山口さん、お茶とコーヒーどっちにします?」

大介「あ、お茶がいーなぁ。ありがと久美ちゃん」

順子「相変わらずフリーダムねぇ、三尋木さんは。ロードスターズ、最後でコケなきゃいーけど」

大介「今年は行くでしょ。弘世プロの話が出てましたけど、まだまだ咏ちゃんの相手じゃないですよ」

順子「黙れロリコン」

大介「巨乳も行けますって! で、弘世菫と宮永照を打たせるんすか?」

順子「そーしたいけど、ボスが首を縦に振らないのよ。恵比寿に持ちかけるほどの話じゃないってね」

大介「宮永照は確かに学生麻雀の女王っすけど、プロの認知度に比べたらもう一つ話題性がないとねぇ」

順子「野球もそうだけど麻雀も高校と比べて大学はマイナーなイメージ強いのよねー」

大介「高校時代に脚光を浴びた選手でもよっぽど好きな人じゃないと話題にしなくなるっすからねぇ」

順子「ねぇ、大阪行かない?」

大介「聞きたくないっ!」


順子「今、宮永照は大阪行ってるのよ。まず間違いなくエンプレスのベース見学ね。それスッパ抜いて来てよ」

大介「学生はプロと違ってパンピーっすよ? 張り付きかますのはルール違反でしょーが」

久美子「山口さん大阪ですか? お土産お願いしますね」ハイオチャ

大介「行かないってば!」ヤメテッ

順子「これ知ってる?」ゴトッ

大介「は? 目覚まし時計っすか?」

順子「私、仲良くして貰ってるプロに頼んで声入れて貰ってるのよね。もちろん三尋木プロのも、ね」

大介「マ ヂ デ ス カ !」

順子「毎朝愛しの咏ちゃんの甘い囁きで起こされたくない?」

大介「久美ちゃん、新幹線のチケット手配してっ!」

久美子「はーい。フロントで受け取れるようにしときますねー」

大介「いよーっし、ちょっと大阪行ってくる!」ダダダッ

順子「これで大阪は良し、後はこっちの段取りか」

久美子「これ、どんな声入ってるんです?」ポチッ

咏『わっかんね~』







大阪 城東区 エンプレス大阪ロビー


絹恵「あ、照さん戻ってきた」

照「お待たせ」

恭子「随分早いんとちゃいますか?」

照「うん、取りあえず今日の予定を聞かされただけだから」

絹恵「そしたらこれから結構かかります?」

照「夜までかかるみたい」

恭子「それやったら電話貰えれば迎えに来ますよ」

照「ありがとう。助かる。あ、それで、今晩のホテルは用意してくれてるって言われたんだけど」

恭子「断ってもらって結構ですよ。うちの部屋泊まれるように用意してありますから」

照「わかった。そうするね」

絹恵「恭子さんのマンションは広々してますよー。うちも泊まってこかなぁ」

恭子「今日くらいならえーけど、連日は勘弁やで」

照「それじゃあ後で電話するから」

恭子「はい。今日はこの後何があるんです?」

照「ここの見学と宿舎の見学がメインかな。最後は夕食に招待されて終わり」

絹恵「豪華なディナーやろなー、えーなー」

恭子「では一旦引き揚げますけど、相手は商売ですから、話半分にして乗せられんよう気ぃつけて下さいね」

照「わかった。ありがとうね」

絹恵「明日はまた色々お出かけしましょーね」テーフリフリ

照「うん、楽しみにしてる」マタアトデー







西麻布 弘世菫のマンション


菫「完全に着信拒否されてるか、参ったな.....。そうだ」ピポパ

ヨビダシチュー

淡『はーい淡だにょー! 誰しゃ~ん?』

菫「私だ、画面くらい見ろ」

淡『はう、部、ぶちょー?』ヒック

菫「酔ってるのか?」

淡『のんれません』ヒック

菫「明らかに呑まれてるだろ! お前まだ未成年じゃないか!」

淡『のんらよーなきもしましゅ』ヒック

菫「何をやっているんだ」

淡『女子会? てゆーか女子コン?』


菫「酔いを醒ませ。聞きたい事があるんだ」

淡『なんれすか~?』

菫「お前、最近照と会ってるか?」

淡『テルー? んーん、江口先輩と別れちゃってから臨海にはパッタリですよぉ?』

菫「そうか。てゆーか大星。お前その辺の事情詳しいのか?」

淡『じじょー? 何かあったんれすかー?』

菫「いや、それが、詳しく知りもしないのに余計な事を言って照を傷つけてしまったみたいでな。実は今、着信拒否されてる」ズーン

淡『あー、いーけないんだいけないんだ♪』

菫「茶化すな!」


淡『んー、でもすごく淡々と別れたみたいですよー? あ、淡々ってあわあわって書くんですよー』ニヘヘ

菫「一々雑音を入れなくていい。しかし淡々とって、二人は2年近く付き合ってたんだろう?」

淡『女と女なんてそんなもんですよー。あれ? 弘世先輩ひょっとして江口先輩の後ポジ狙いです?』

菫「なっ//// バカッ、なんでそーなる! 私は照が心配なのと謝りたいのとでだなぁ」

淡『あははは、だったら着拒がどーのこーの言ってないで会いに行けばいーじゃなーい』ヘイヘイ!

菫「それはっ.........そうなんだよな。うん、ありがとうな大星」

淡『ふみゅ?』

菫「何でもない。大学生にもなれば付き合いで飲む事もあるだろうが、調子に乗ってがぶ飲みはするなよ。じゃあな」ピッ

菫「会いに行けか。こういう時、仕事ってのは重い枷になるものだな。でもまぁ時間は作るものだしな」







西区江戸堀 四つ橋筋


ガチャ

恭子「お迎えに上がりましたよ」

照「ごめんね、上手く説明できなくて。分かりづらくなかった?」

恭子「いえいえ、地元ですから直ぐ分かりましたよ」

照「絹ちゃんは?」

恭子「ナビシートで寝てますわ。出て直ぐに船漕ぎだしまして。育ってる分寝るっちゅーことですかね」

照「な、なるほど」ウラヤマシクナイモン

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恭子「どうでした? エンプレスは」

照「んー、プロの世界だなーって」

恭子「小並感やないですかw」

照「だって上手く言えない」

恭子「なら大阪はどーです?」

照「んー、関西だなーって」

恭子「同じやないですかw」

照「ごめん、ちょっと狙ったw」

恭子「ほんま面白いお人やったんですねぇ。高校時分はいかにもチャンプやなー思てましたけど」

照「そんなに変わったつもりもないけど」

恭子「すべてのものは変化する。変化するものは互いに関係しあって変化する」

照「武田泰淳」


恭子「さすがです」

照「一応文学少女だから」

恭子「大学生は少女とちゃうでしょう?」

照「いーの。心はいつまでも少女でいたいでしょ?」

恭子「さよで。でもまぁ高校、大学とそれなりに出会いもあれば、何一つ変わらない人なんていませんからね」

照「......うん」

恭子「少し夜涼みして行きませんか?」

照「え?」

恭子「昼間見た大阪城。ライトアップして綺麗ですよ」

照「うん、見たい」

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照「大阪城公園って夜でも入れるの?」テクテク

恭子「普通に公園ですからね。開園時間とかはありません」スタスタ

照「へー。あ、絹ちゃん起こさなくてよかったの?」

恭子「寝かしといてあげましょ。見えてきましたよ」

照「わぁ....」

恭子「どうです?」

照「昼間は見下ろしたけど、やっぱりお城はこうして仰ぎ見るものだよね」

恭子「お、分かってますね。お城の威容を感じ取るには見上げるのが一番です」

照「大阪城って、元は石山本願寺の跡地だったんだよね」

恭子「ですね。冬の陣で丸裸にされて、夏の陣で燃え落ちて。再建、修復、再建、修復、このお城は何代目やったかなぁ」

照「歴史だね」

恭子「ヘソです」

照「おヘソ?」


恭子「地理的にも、大阪に暮らす人の気持ちの上でも、大阪城はヘソなんです」

照「へ~、そーなん....」ムグッ

恭子「言いかけましたねw? 今おもっきし言いかけましたよねw?」オシイ

照「図ったなw?」

恭子「人聞き悪いですねぇ」

照「危なかった」ホッ

恭子「何か飲みますか?」

照「あ、私が買ってくる。何が良い?」

恭子「そしたらご好意に甘えて。冷たい無炭酸なら何でも」

照「分かった。待ってて」タタタッ

恭子「......初日にしては打ち解けたんかな。思ったより壁のない人やし。後は流れに任せましょーか」

ムニッ

恭子「ひゃああ!? ちっ、ちかっ.......んん?」


絹恵「何で置いてくんですか」プクー

恭子「なんや、絹ちゃんかいな! 口から心臓飛び出すとこやったわ! 何で人のおケツ揉むねん!」

絹恵「それは揉む胸がないからや」グモンデスワ

恭子「言うたな」グモンカ

絹恵「言うたった」グモンヤ

ジリジリ

照「あれ? 絹ちゃん」

絹恵「照さん! お帰りなさい。なんやうち寝てもーて」テヘヘ

照「おはよ♪ 良かった、絹ちゃんの分も買って帰ろうと思って、はい」

絹恵「あ、ありがとうございます.....ってw ucc阪神缶」キタコレ

恭子「あはは、洋榎ちゃんの定番やないですか。久々に見ましたわ」

照「そうなの? みんな一緒にしたけど」

絹恵「みんな一緒は仲良しさんの証ですやん」イタダキマス

恭子「そーやね」イタダキマス

照「ふふ」カポッ







住吉 末原恭子のマンション 


恭子「つきましたー。さ、どーぞどーぞ」

照「へー、本当に広々してる」

絹恵「リフォームしたての部屋見つけたゆーて、これで家賃一桁ですよ?」

照「ええ!?」

恭子「せやけどここは築年数は40年越してますし、管理が良いんで決めたんですけど駐車場代入れたら二桁ですよ」

絹恵「それでも24時間管理人常駐、地下駐車場有り、10階建ての8階で見晴らしも日当たりも良好やないですか」

恭子「その上、前の人が急な海外赴任やったらしくて、家財丸ごと置いてきましたから、家電やら何やら丸儲けやったな」

照「それは豪運だ」

絹恵「インハイ決勝で欲しかった運がこんな所にw」

恭子「うるさいっw あ、荷物は適当にほっぽって下さい。後で片します。もう遅いですし、お風呂たてますね」


照「え、シャワーでいいよ」

恭子「東京から出てきた日にシャワーで済ますて、それじゃ疲れが取れませんでしょう」

絹恵「恭子さん世話焼きやから、言うこと聞いたげて下さい」

恭子「余計なこと言わんでえーの」

照「じゃあ、お言葉に甘えて」

恭子「ほな、ちょお待ってて下さいね」スタスタ

照「いいなぁ、一人暮らしかぁ」

絹恵「照さんはずっと自宅なん?」

照「そう、母親と二人。父親と咲は長野」

絹恵「あー、咲ちゃんなぁ。先輩をカタカタさせた勇者や。元気にしてます?」

照「うん。時々メールし合ってるよ。それにカタカタさせられたのは咲も同じだと思う」

絹恵「へ? それって恭子さんが咲ちゃんをってことで?」

照「私は末原さんの打ち筋好きだけれど、咲は怖かったんだろうね」

絹恵「何でですか?」

照「末原さんが善野さんの愛弟子だったから」

絹恵「はぁ....いや、よー分かりませんけど」

照「ふふ」


恭子「ふー、あと2,3分で入れますよ。パジャマとか持ってきてますよね?」

照「一着だけ。着替えも二泊程度のつもりだったから一週間分は持ってないかな」

恭子「あはは、貸します貸します。悲しい事におんなじような体型やし」ピッタンコヤ

絹恵「あはははは♪」

恭・照「何がおかしい」ジトー

絹恵「いえ、おかしーことないです。ハイ」

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ジャラジャラ

照「お風呂頂きました。ん? 打ってたの?」

恭子「いえいえ、上海してまして。次絹ちゃん入りぃ」

絹恵「はいはい。そしたらお先に~」トトトッ

照「良い湯加減でした」スワリンコッ

恭子「それは良かったです。疲れは取れましたか?」

照「うん、お蔭様で」

恭子「そのパジャマ、ピンクでかいらしいですね」

照「そう? 子供っぽいかな」

恭子「良くお似合いですよ」クスッ

照「ちょっと何ー? もー」ドン

恭子「ド突かんといて下さいよw」

照「むー」

恭子「上海します?」

照「それもいーけど、ちょっとベランダで風に当たりたい」

恭子「ほなこちらへ」スーッ


照「二重サッシなんだ」

恭子「防音ですわ」

照「いーなぁ」

恭子「あー、良い夜風が入りますね」

照「気持ち良い♪」

恭子「........あの」

照「ん?」

恭子「さっき絹ちゃんから聞いたんですけど、どういう事なんやろかと思て」

照「ああ、咲の事?」

恭子「ええ。3年前の事と言っても強烈な印象を残してくれた相手ですからね」

照「善野さんてね。長野に住んでたんだよ」

恭子「へ? そーなんですか? そんな話聞いた事なかったですけど」

照「長野で、一人娘を亡くしてるからね」

恭子「え........」


照「それが原因かは知らないけれど、暫くして大阪へ引っ越して、それきり会ってなかった」

恭子「そうやったんか....。でも、それが何で?」

照「詳しい話はできないけど、とにかく善野さんの娘が亡くなった事は咲にとっても私にとっても衝撃で、特に咲にはトラウマだった」

恭子「トラウマて」

照「だから、善野さんの闘牌を身につけた末原さんと打った時、咲は本当に怖かったんだと思うよ」

恭子「なるほど。不思議なところで繋がってたんですね」

照「縁って凄いよね」

恭子「ほんまですね。それこそ怖いくらいや」

照「末原さん、今は打つ方は?」

恭子「あんまりですね。普段は過去の牌譜を読み漁って、勉強やら研究やらです」

照「へー。末原さんって何学部だっけ?」

恭子「教育学部ですよ。母校の監督目指してますんで」

照「そうなんだ。なんか.....いいね」

恭子「学生麻雀の女王が何を言ーてますの」

照「んー、贅沢なこと言ってるのは分かってるんだけど。でも何でも特別が良いってわけじゃないと思うし」

恭子「何でも頑張ってみるもんですよ。特別か平凡かは別にして、宮永さんはこれっちゅーもんを持ってるんですから」

照「.....うん」


恭子「熱意は力なり。必ず到着せんとするところを指せる、一種の引力なり」

照「北村透谷」

恭子「当たりです。でも最初から熱意持ってる人ばっかりやないでしょ?」

恭子「宛がなくても走って走って走り続ければ汗かくのとおんなじです。熱意は後からでも生まれるんです」

照「励ましてくれてるの?」

恭子「あー、んー、心なしか悩んでおられるようですし。私なんかの言葉は足しにもなりませんけど」タハハ

照「そんな事ない。嬉しい。ありがとう」

恭子「いえ、そんな////」テレッテレ

絹恵「そろそろお風呂出たでーって言ってもえー空気になりましたー?」

照「!?////」

恭子「ちょちょちょちょちょ、何を見計らう必要があるんや////」

絹恵「えー? せやけど恭子さんが照さん口説いてるみたいやったしぃ」

恭子「あほっ、もー、あほっあほっ//// お風呂行かしてもらうわ」スタスタッ

絹恵「あはは、あの恭子さんが真っ赤や~w」

ウルサイッ

照「あんな良い先輩からかっちゃダメ」

絹恵「ですよねっ!」デモムリッ







白糸台キャンパス サークル棟


白望「あーづーい゛ー」

久「うっとーしい」

初美「ここまで来ただけでも褒めてあげて下さいー」

洋榎「東京は今年の最高気温記録したらしーからなー。38℃とかゆーてたで?」シヌワ

久「校内は節電で弱冷房が決まりだからねー」

白望「5分だけ一番低くしよう」

初美「だーめーでーすー」

ピロリーン♪

洋榎「おっ、照からメールや。今日はどんなかなー」

初美「どれどれー」



title:二日目

末原さんも絹ちゃんも良くしてくれて居心地最高。大阪万歳

今日はこれから住吉さんをお参りして、通天閣に連れてってもらう予定

お昼にまたエンプレスに挨拶しによります。ではでは


久「上手く行ってる感じじゃない」

初美「あの照ちゃんが大阪万歳とか、楽しそうですねー」

洋榎「まー恭子と絹がついとったら大阪満喫できるんは間違いないしな」

白望「思わぬオチがつくのが大阪」

洋榎「やかましっ、己はそこでヘタッとれっちゅーねん」

初美「返信しましょー」

洋榎「おう、何て書こか?」

久「当たり障りなく楽しんで来てって感じでいーんじゃない?」

初美「バテてるシロちゃんの写メもつけちゃいましょー」

洋榎「それ頂きやw」

白望「やーめー」

パシャッ








通天閣


チーン

恭子「さぁ、最上階ですよ」

照「あー、ビリケンさんだ♪」

絹恵「大阪八福神の筆頭ですわ」

照「八福神?」

恭子「七福神にビリケンさんを足して八福神ゆー洒落ですよ」

照「へー、そーなんだ」

恭子「あ、ゆーた! 言いましたね?」

照「何が?」

恭子「へーそーなんだ」

照「! ちょっ、それ昨日の話!」

恭子「ゆーたもんはゆーたんですぅ」

照「もー、末原さん何気にしつこいw」

絹恵「何の話か知りませんけど、恭子さんは結構ジメジメしてますからね」

恭子「そんなことありませんよ?」

照「今更w」

恭子「いやいやいや、ほんまですってw」

キャーキャー ワイワイ

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照「スカイツリーと較べると低い」

恭子「そら較べたらアカンでしょー。オール阪神よりオール巨人がデカイんは古今東西当たり前の話ですからね」

絹恵「あはは、日立パノラマはこんなもんですよー」

恭子「安心と信頼の日立グループですから、無理な高さはいらんとゆー訳でして」

照「上手い」

恭子「いえいえ。あちらさんが住吉さんの方角」

絹恵「見えへんよ」

恭子「天気のせいや。あっちら辺に大阪ドーム」

絹恵「見えへんね」

恭子「天気のせいや。むこっかしに富士山が」

絹恵「見えるわけがないやろっ」ペシッ

照「wwwww」


恭子「たまにはボケもやっときませんとね」

絹恵「普段うちが突っ込めるゆーたらおねーちゃんくらいなもんやし」

照「新鮮だった」

恭子「そしたら下で早目のランチにして、エンプレスに寄りましょか」

絹恵「午後はとっておきの場所やからね!」

照「えー、どこどこ?」

絹恵「秘密ですぅ♪」

照「えー、教えてよ~」

恭子「?」

絹恵「なんですか? 急に立ち止まって」

恭子「いや、なんか知らんけど、誰かに見られてたような気がしてな」

照「どうかしたの?」

恭子「いえ、何でもありません。行きましょ」







Weekly麻雀Today編集部


順子「山口さん今どこ? 宮永さんは見つかったの?」

大介『見つけましたよー。今通天閣を出たところっす』

順子「通天閣? 何でまたそんなところに」

大介『地元の知り合いなんですかね、同年代の娘二人と一緒に普通に観光してますよ』

順子「宮永照に大阪の知り合い? 聞いた事ないわね」

大介『画像送信しときますんで、こっちは暫く尾行してみるっす』

順子「お願い。エンプレスと接触してる決定的な写真を持ち帰ってよ」

久美子「せんぱーい、3番にお電話ですよー」

順子「はいはーい」ガチャッ 「お電話代わりました西田です」

菫『どうも弘世です。お忙しい所申し訳ありません』

順子「うわわっ、弘世プロ? どーしました?」


菫『実は宮永照の行方を捜してまして』

順子「はぁ、それはまたどうして? 本人と連絡つかないんですか?」

菫『ちょっと訳ありで。それで彼女の友人に話を聞いたら今大阪にいるそうなんです』

順子「そうなんですか。それで何故私に電話を?」

菫『大阪となると例の件じゃないですか? それなら西田さんの方が詳しいかと思って』

順子「宮永さんのお友達は滞在先とか教えてくれなかったんですか?」

菫『そこまでは聞き辛いと言うか、実は個人的に彼女との間にゴタゴタがありまして』

順子「なるほど。分かりました。向こうの支局に連絡して当たらせてみますよ」

菫『お願いできますか。明日から大阪遠征なので、その間に直接会ればベストなんですけど』

順子「そっか、グランキューブでロードスターズ、エンプレス、フロティーラとの首位攻防戦でしたよね」

菫『ええ』

順子「了解了解。情報入り次第連絡させて貰いますっ」

菫『無理を言って済みません。宜しくお願いします』

久美子「山口さんからメール入ってますよー」


順子「おっけー、どれどれ? って、この娘たち姫松OBだわ。なるほど、愛宕洋榎さん繋がりの知り合いか」

久美子「せんぱーい、さっきの電話、半ば弘世プロをだましてるようなもんじゃないですかー?」

順子「何言ってんの! 実際こっちだって滞在先まで掴んでるワケじゃないし、ここで恩を売っておけば後々話が楽でしょ」

久美子「まーそーなんでしょーけどー」







エプンレス大阪前


照「お待たせー」

恭子「今日は何でした?」

照「挨拶だけ。でも、暫くこっちに居るって言ったらいつでも寄ってって言われて、これも貰った」

絹恵「うわっ! これ明日からグランキューブ大阪でやる日本リーグの観戦フリーパスやないですかっ」スゴッ

恭子「ほんまや。しかもこれ3日間全日有効のヤツですね。そして当然のようにVIPルーム」

照「観に行く? 友達居るって言ったら人数分くれたし」

絹・恭「行きましょう!」

絹恵「いやー、この3連戦はマジ山場ですよ? 首位の横浜、2位恵比寿、3位大阪、5位松山が勢揃いですからねっ」

恭子「今期の行方を占う大一番には違いないな」

照「楽しみが増えたね」

絹恵「ほんま照さん来てくれて大儲けですよー♪」ヤッター

恭子「そしたら今日は今日で、例のとこ行っとこか」

絹恵「ですねっ」







Weekly麻雀Today編集部


久美子「4番に山口さんでーす」

順子「もしもーし!」

大介『撮れたっすよっ! 今送りましたから画像開いて下さい』

順子「よしきたぁ!」クリック! 「おおっ、エンプレス本部!」

大介『1枚目と3枚目は出入りするとこっすけど、2枚目!』

順子「硝子越しだけど向こうのスタッフ映ってるねっ」

大介『後で拡大トリミングしたの送るっす。使えるでしょ?』

順子「オッケー、よくやったわ。それでね、引き続き頼みたい事があるんだけど」

大介『まだあるんすか!?』

順子「大した事じゃないわよ。彼女、今、姫松OBの家に寝泊まりしてると思うんだけど、裏取って欲しいのよ」

大介『裏?』

順子「愛宕絹恵と末原恭子、どっちかの住まいが当たりだからそれだけ調べてよ」

大介『そこまでする必要あるんすか?』

順子「これはネタに使うわけじゃないから大丈夫。お願いねっ」

久美子「こき使ってますねー」

順子「社会に出たらこき使われている内が華なのっ」







USJ スヌーピー・バックロット・カフェ


絹恵「いやいやいや、夕飯でここはおかしいですよ?」

照「スヌーピー!」

恭子「もうこれ言っても無駄やと思うわ」

絹恵「夕飯はガッツリでしょ? ここ軽食やないですか。ジュラシックパークの方にグリルの店ありますからっ」

照「スヌーピーがいい」

恭子「絹ちゃんムリやて。諦めよ」

絹恵「このオチは読めませんでしたわ....」

照「スヌーピー大好きなの」

恭子「キティちゃんよりですか?」

照「断然スヌーピー。小学生の頃の文房具全部スヌーピー」

絹恵「そらまた珍しいですねー」

照「シッシッシッって笑うのがとってもキュートでしょ?」

恭子「コメントに困るわ」


絹恵「一先ずメニューを....ってw スイーツ&ドリンクばっかやん」

恭子「パスタセットで」

絹恵「足ります?」

恭子「ポテトとナゲットにサラダ、後はスイーツやな」

絹恵「したらうちはバーガーセットで。照さんは?」

照「スヌーピーレアチーズケーキとスヌーピーメープルケーキ。あとスヌーピーまんにスヌーピークッキーも」

絹恵「スヌーピー言いたいだけですよねw? しかもどれも夕飯とちゃうし」

照「ご飯はスヌーピーキッズセットで。あ、スヌーピーの冷たい焼きマンゴーも追加ね」

恭子「絹ちゃん大人しく注文しよ。ウェイトレスさん呼んで」

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恭子「まー今日は午後からたっぷりUSJを満喫しましたね」

絹恵「半分くらいスヌーピースタジオ入りびたりでしたけどね....」

照「こんな素敵な場所があるなんて知らなかった」ホクホク

恭子「私も、自分の人生で一日に5回も空飛ぶスヌーピーに乗る事があろーとは思いませんでした」

絹恵「小さいお子ちゃまとママさん連中に混じって女子大生3人きっぱりくっきり浮いてましたよね」

照「とことんスヌーピーを楽しめたね♪」

絹・恭「そらもう骨の髄までスヌーピーを楽しまされましたわ」タハハ







住吉 末原恭子のマンション


恭子「はー、冷たいシャワーでさっぱりしましたよっと」カミフキフキ

照「はい、どーぞ」

恭子「おお? いつの間に買ーてたんです?」

照「絹ちゃん降ろした時に寄ったコンビニで」

恭子「ラガーですか、好みが合いますね。いただきます」プシュッ

照「スパードライも好きだけどやっぱり私はラガーが好きかな」コグッ

恭・照「ぷはーっ♪」

恭子「今日も一日お疲れ様でした」

照「連日のおもてなし、感謝感謝です」

恭子「いえいえ。この大阪でゆーったり羽根伸ばして行って貰えたら、そら私も絹ちゃんも地元民の誉れですから」

照「末原さんは良い監督さんになるね」

恭子「何ですの藪から棒に」


照「かたよらない、こだわらない、とらわれない心。ひろく、ひろく、もっとひろく。そんな言葉が似合う感じ、すごくする」

恭子「へぇ、高田後胤やないですか」イガイヤナ

照「うん。これが般若心経、空のこころなり。ってね」

恭子「悟りとは程遠い凡人捕まえておだてが過ぎますよ///」

照「私の中の末原さんはそうなの」

恭子「あらら、したらこの先下手な事はできませんね。釘刺されてもーた気分ですわ」

照「ふふっ、私の末原さん像を崩さないよーに♪」

恭子「はいはい」

照「.........」

恭子「.....ベランダ出ません?」

照「うん」

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恭子「通天閣登った頃は雲が低うなってましたけど、今夜は快晴ですねぇ」マンテンノホシヤ

照「市街地でこれだけ星が見えるのも珍しい」キレーダナー

恭子「ちょっと部屋の明かり落としまょうか」スタスタ

ピッ ライトオフー

恭子「少しは変わりました?」

照「うん。闇が深くなった。宮沢賢治の世界に一歩近付いた気がする」

恭子「銀河鉄道の夜ですか」

照「ね、星めぐりの歌知ってる?」

恭子「あー、えーっとですね......そう、オリオンは高く歌い、露と霜とを落とす。やなかったですか?」

照「アンドロメダの雲は魚の口の形」

恭子「赤い目玉の蠍、広げた鷲の翼」

照「ふふっ」

恭子「あれ? 違ってました?」

照「ううん。合ってるけど、二番から入って一番に戻ってった」


恭子「あらま。うろ覚えでしたからねぇ。失礼致しました」

照「でもさ、街にいてもこんな時間が得られるものなんだね」

恭子「おてんと様のご機嫌次第ゆーのもありますけど、こさえようと思えばいくらでも。そーゆーもんやないですか」

照「そうだね。思わない事にはね」

恭子「ええ。そうしよう、そうなろう、そうありたい。思い立ってこそはじめの一歩になりますからね」

照「私にはそれが足りないのかな」

恭子「........」

照「ごめん、なんか泣きそう」

恭子「ええですよ」カタダキー

照「ごめんねぇ」ヨリソイー

恭子「.......」ナデナデ



星めぐりの歌

宮澤賢治


あかいめだまの さそり

ひろげた鷲の つばさ

あをいめだまの 小いぬ

ひかりのへびの とぐろ


オリオンは高く うたひ

つゆとしもとを おとす

アンドロメダの くもは

さかなのくちの かたち


大ぐまのあしを きたに

五つのばした ところ

小熊のひたいの うへは

そらのめぐりの めあて









ひとまずここまで
後半へ続きます
ではでは




乙ー
前回の大作後しばらく間があったからまた見れて嬉しい

後半期待






後半です







Weekly麻雀Today編集部


順子「よしっ!」

久美子「ボスのOK取れたんですかー?」

順子「エンプレス大阪が学生麻雀の星、Aさんに協定違反のフライングコンタクト! これでOK取ったわ」

久美子「実名伏せるんですね」

順子「うちの読者ならすぐにピンとくるし、実名には拘らなくていいわ。目的は弘世プロとの対局だし、配慮のアピールね」

久美子「この後は?」

順子「弘世プロと宮永さんを大阪で会えるように段取りして、貸し一つ作ればOKよ」

久美子「山口さん次第ですねー」

順子「大して難しい話じゃないわよ。グランキューブで試合が行われる間にもけりは付くでしょ」







住吉 末原恭子のマンション


恭子「んむ.....8:50? いつの間に目覚まし止めてしもーたんやろ」ムクッ

照「おはよう」ヒョコッ

恭子「あ、どうも寝坊してしまいまして」メンボクナイ

照「気にしないで。勝手にキッチン使わせて貰っちゃった。サラダ作ったけど卵はどうする?」

恭子「あら、重ね重ねすみませんねぇ。そしたら薄焼きで頼めますか」

照「了解♪」

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恭子「ほー、これはまた見事な盛り付けのサラダですね。上にトッピングしてあるバラは梅ですか」

照「美味しそうな梅干しがあったから梅肉サラダにしてみた。ドレッシングはお酢とオリーブオイルと塩胡椒でサッパリ」

恭子「器用なもんですね。私なんて盛り付けはデタラメですからね。センスがあるんやな宮永さんは」

照「ただのサラダで褒めすぎww コーヒーにお砂糖は?」

恭子「お願いします。普段はブラックなんですけど、朝の一杯だけはお砂糖を入れるんです」

照「糖分入れると頭がスッキリするよね」ハイドーゾ

恭子「そうそう、それなんです」オオキニ

チン!

照「トーストも焼き上がって、出来上がり」スワリンコッ

恭子「そしたら早速いただきましょうか」

恭・照「いただきます♪」







四つ橋筋


照「あれ? 絹ちゃんちまで迎えに行くんじゃないの?」

恭子「いえ、今日は難波で待ち合わせしてますんで。このまま御堂筋との境まで四つ橋を上ります」

照「そうなんだ。今日は何処へ行くのかな?」

恭子「大阪の文人ゆーたら誰を思い浮かべます?」

照「ええ? それは沢山いるけど、そうだなぁ.....井原西鶴とか?」

恭子「まった古い所を突いて来ましたねぇ。西鶴さんより新しめで」

照「司馬遼太郎?」

恭子「今度は行き過ぎましたよ。ちょい手前っ」

照「あっ! 川端康成! これしかない」

恭子「はい正解です」

照「え? 川端康成所縁の所に連れてってくれるの?」

恭子「はい。一応、府の観光コースの一つになってましてね。まぁマイナーなんですけど、何分宮永さんは文学少女やからww」

照「ちょっと、何で笑うのww」

恭子「げふんげふん」

照「擬音ww」コラッ


恭子「康成は読まれます?」

照「勿論読まれますよ」

恭子「どの辺りがお好みで?」

照「やっぱり雪国かなぁ。もう始まりから引き込まれるあの感じが何とも言えない」

恭子「分かります。雪国は川端文学のそれこそ皮切りになる作品ですし、情景描写も心情描写も正に日本美ですわ」

照「よく艶めかしいって言われるけど、伊豆の踊子なんか女性こそ読むべきだと思う」

恭子「ほー、中々のご意見ですね」

照「当人は結構色好みで最後についても色々言われてるけどね」

恭子「まぁその人がどうだったか、どう亡くなったかより生前何を書いたかが文学ですからね」

照「......」

恭子「? どうかされました?」

照「ううん。私が普段思ってる事をさらりと言われたから」

恭子「あら、そうなんです?」

照「うん。気が合うね、私たち」

恭子「みたいですね」







難波駅前


照「絹ちゃーん!」テーフリフリ

絹恵「照さん、どーもどーも、どーもですぅ」

恭子「なんやのその恰好....」

絹恵「えー? せやかて今日は観光の後はグランキューブやん」

照「上から下までエンプレス大阪尽くしだ」

絹恵「これで照さんがエンプレスに来てくれはったら正に常勝軍団! 連続優勝待ったなしや」

恭子「再来年の話をしたら鬼が笑い死ぬがな」

絹恵「でへへ//// あ、これ車ん中で食べて貰おう思て」ヒョイ

照「何これ?」

恭子「お、今日の趣旨に合わせて来たな?」

絹恵「ちょお気ぃ利かせましたわ。それ、池波正太郎御用達のお店のシューマイですねん。駅向こうにあるんです」

照「そうなんだ。ありがとう♪」

絹恵「いえいえ。そしたら行きましょか。今日は私が運転

恭子「させへん」

絹恵「いけず~」

照「あはは♪ じゃあ私が運転するから、絹ちゃんナビしてくれる?」

絹恵「喜んでっ」







東京-大阪 移動バス内


ピロリーン♪

菫「西田さんからメールか」ピッ


title:宮永さんの件

大阪での彼女の滞在先が分かったので連絡します

姫松高校OB末原恭子さんのマンションで、住所は.....

連絡先は確認中です。手っ取り早いのは愛宕さんに

聞いてしまう事だと思いますけど、その辺はお任せします

取り急ぎご連絡まで


菫「末原恭子、か。愛宕さんに頼んでみるか」

ピッポッパッ







あきる野 サマーランド


初美「先行きますよー! ほらっシロちゃん早くっ」グイグイッ

白望「そんなに引っ張らないで」

洋榎「おーおー元気やのー」

久「このプールの匂い。何だか懐かしいわねー」

洋榎「なんでこんなくっさいんやろな」

久「人が懐かしんでるのに臭いとか言う?」

洋榎「言葉のあややや」

久「あややは関係ないし」

チャクメローン♪

洋榎「あれ? うちかいな。したら先行ってて」

久「はーい。洋榎も早く来てね」チュッ

洋榎「ほいほい」チュッ

ピッ

洋榎「はいこちら愛宕」


菫『あ、弘世です』

洋榎「お? びっくりしたな。こないだも珍しゅー久に電話して来たやろ? また照のことかいな」

菫『ああ、そうなんだ。申し訳ないんだが、何も聞かずに末原恭子さんの携帯番号を教えて貰えないだろうか』

洋榎「恭子ぉ? なるほど、色々調べたな? 何も聞くな言われてもなぁ」

菫『そこを一つ』

洋榎「無理。いっこだけ聞かせー」

菫『.....分かった』

洋榎「何でそんなに必死やねん自分」

菫『正直自分でも良く分からないが、宮永照は私の麻雀人生のコアな部分に居て、だから今までの関係を壊したくないんだ』

洋榎「.....なるほどな。まぁうちらもあんたも照とはチームメイトでやってきて大事に思う気持ちにそう差はないやろ」

菫『勿論だ』

洋榎「今、照は恭子のお蔭で結構気持ちほぐれてるみたいやねん。まぁ、情緒不安定なとこも見られるゆーてたけどな」

菫『そうなのか』

洋榎「そーや。大袈裟にゆーたら躁鬱の入れ替わりや変に子供っぽく振る舞うとかあるらしいわ。大袈裟にゆーたらやけどな」


菫『........』

洋榎「いっこだけ聞かせーゆーて聞かせてもろたから教えたるけど、こっちの頑張り水の泡にするような真似だけはせんといてや」

菫『分かっている。そこは約束する』

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洋榎「教えてもーたけど大丈夫かいな。恭子に連絡しとこか.....あー、いやいや! ここは恭子に任しとこか」

久「ちょっと洋榎、何もたもたやってるのー?」

洋榎「はいはい、今行く、今行きます!」







茨木市宮元町


絹恵「なーんもない所ですねー。フツーに住宅街やん」

照「確かに。でも水と風が流れて緑もあって、趣はあるんじゃないかな?」

絹恵「そんなもんですかねぇ?」ピントコナイワ

恭子「そら色気より食い気の娘ぉやから仕方ないな」

絹恵「ちょちょちょ、しゅーまい半分食べてたの誰ですのっ!」ムネニテーアテヤ

恭子「しゅーまい好っきやねん!」キリッ

絹恵「!!?!」

照「すごい勢いで言い切ったw」シカモマガオ

恭子「ヒシッとゆーとかんと分からんのですわ」ホンマニ

絹恵「いやいやいやw おかしい、おかしーでしょこの流れ?」

照「www」

絹恵「笑うとこちゃいますよ? フォローしてくださいよ。フォローミー!」

恭子「そら私について来いゆー意味やろ」

照「プロポーズされたw」

絹恵「いやいやいやw」ナンデヤネン


照「あー面白い。で、そろそろまた景色が変わって来たね」

恭子「パンフによると次が川端康成文学館ですね」

絹恵「500mならちゃーの間ですね」

照「茶の間?」

絹恵「へ? ちゃーの間言いません? あっちゅー間みたいな感じで」

照「ああ、そーゆー。なるほどね。ふふっ、ちゃーの間」

恭子「あ、あれやないかな。遠目に見えるオレンジっぽいの」

照「ほんとにちゃーの間だった」

絹恵「気に入ったんですか? それ」

照「うん♪」

チャクメローン♪

恭子「おや電話ですね。未登録や、どちらさんやろ?」

絹恵「先行ってますよー」

恭子「ゆっくり回っててや」

照「車通るから気を付けて」

恭子「はいはい」


ピッ

恭子「はい末原です」

菫『あ、初めまして、弘世菫と申します』

恭子「は? 弘世さん....て、弘世プロ? 白糸台OBの?」

菫『はい。この番号は愛宕洋榎さんに教えて貰いました』

恭子「はあ、で、どんなご用でしょう?」

菫『末原さんの所に友人の宮永照がお世話になっていると伺いまして』

恭子「ええ、暫くこちらに滞在するゆー事でお世話させて貰ってますけど」

菫『実は私も明日からの試合で今大阪に向かっているんです』

恭子「ああ、グランキューブでの三連戦ですね」

菫『はい。それで、どこかのタイミングで彼女に会えないものかなと思っていまして』

恭子「あの、失礼ですけど、宮永さんにはどんなご用件で会いたいと?」

菫『それは....恥ずかしい話、ちょっと関係をこじらせてしまっていて、一言謝りたいと』

恭子「なるほど。お話の向きは分かりました。けど、本人飛び越して私がどうこうする話やないですし、折り返しでええですか?」

菫『分かりました。ではご連絡お待ちしています』

恭子「はい、そしたらまた後ほど。失礼させて頂きます」ピッ

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恭子「お待たせしてしまって、どうも」

照「まだ回り始めたばっかり」

絹恵「文学とかわからへんけど照さんの解説は分かりやすいわ~」

恭子「絹ちゃん」

絹恵「はい?」

恭子「トイレ行きたいな?」

絹恵「? 別に行きたないですけど?」

恭子「行きたいな?」

絹恵「なんですのもー! 行きますよ、行ってきます!」ドスドスッ

照「どうしたの?」

恭子「さっきの電話、ちょっと宮永さんのプライベートに関する電話でしてね」

照「私の? 誰から?」

恭子「弘世さんです」

照「菫? 何で菫が末原さんに...」

恭子「会って謝りたいゆーておられましたよ」

照「そんな、謝られても...」

恭子「グランキューブで試合前か後にでも時間作ってあげたらどーです。まぁ決めるんは宮永さんやけど」

照「.......まぁ、会うくらいなら」

恭子「そんな顔せんといて下さい。何があったかは知りませんけども、何なら私も付き添いますし」

照「ほんと?」

恭子「こっちでの宮永さんの事は洋榎ちゃんからよくよく頼まれてますからね。何でも言って下さい」

照「ありがとう////」







中之島 グランキューブ大阪


絹恵「来たで来たで、グランキューブ大阪夏の陣やっ!」

恭子「夏も冬も負ける話や、縁起でもないわ」

絹恵「ええ!? したら何てゆーたら? 洞ヶ峠?」

恭子「日和見かいっ」

照「天王山とかでいいんじゃないかな?」

絹恵「そしたらそれで!」

恭子「ほんま洋榎ちゃんの妹やなぁ」シミジミ

絹恵「とにもかくにも決戦や。しかも今日はVIPルームで観戦ですからねっ!」

恭子「その恰好でVIPルームとか及びもつかん話やな」ヤレヤレ

照「末原さん、試合の後、お願いね」

恭子「ええ、もう向こうさんにも場所伝えてありますから」

絹恵「? 何してんですかー? 行きますよー」

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絹恵「おおう!?」

照「これは凄い」

恭子「まるで三ツ星レストランの個室ですね」

絹恵「何やろ、この傘でも入りそうな木目の扉。ホールサウンド? モニタの両側についてるけど」

照「それ、大ホール歓声が入るようにするやつじゃないかな」

恭子「臨場感の演出ですね」

絹恵「お、このつまみで照明レベルいじれますね」グリグリ

恭子「遊ばんとき」

照「ディナーテーブルがあるっていう事はコース料理でも出るのかな」

絹恵「焼そば食べるんやなかったぁ!」

恭子「青ノリついてるで」

トゥルルルル

照「内線?」

恭子「宮永さんが出た方がえーんやないですか。私らおまけですし」

照「もしもし?」 「あ、はい」 「はい3人で」 「えっと、ちょっと待って下さい」


絹恵「なんです?」

照「やっぱり食事出るんだって。何時頃にするか聞かれてるんだけど、どうする?」

恭子「まぁ頭と終わりはガッツリみたいですから、その間ならいつでもえーんやないですか」

絹恵「もつれへんかったら中堅戦終盤から副将戦中盤辺りが夕飯時なんやないですかね」

照「じゃあ中堅戦終わったら持ってきてもらうね」 「あ、もしもし? 中堅戦が終わるタイミングでお願いします」

絹恵「さすがVIPルームやなぁ」

恭子「いやいや、エンプレスの計らいやろ。普通は食事は別会計やと思うわ」

照「私は大ホールで売り子さんが売ってるお弁当とか食べるのも好きだな」

絹恵「うちは途中ホール出てもーて、場内のレストラン入りますね。大抵のとこは大きなモニターみっつよっつ付けてますから」

恭子「テーブルにパット型のモニターも置いてあるしな」

照「取りあえずソファに座ろうよ」

絹恵「ですね。あ、リモコン忘れたらアカン」ヒョイ

恭子「あー、このソファ間違いなく眠くなりますわ」

照「ほんとだ。体が沈み込んで包まれる感じ」

絹恵「寝たら死にますよ」

恭子「なんでやねん」


照「リモコン貸して。音出さないと」

絹恵「はいはい」スッ

照「音量音量....これか」ピピッ


ドンッ!!


照・恭・絹「!!?!??!」ビクッ!!

照「あわわわ」

恭子「でか過ぎでしょうw!」

絹恵「鼓膜ぶるぶるいーましたよw?」

照「下げなきゃ下げなきゃ」ピピピピッ

恭子「のっけからものごっついパンチでしたねーw」

絹恵「最初の設定からしておかしかったんやないですか?」

照「絶対そう。私悪くない」

恭子「www」

照「ちょっと笑いすぎw!」ンモー

絹恵「これはツボッてますわw」


恭子「せやかて......せやかて、ドンゆーた時の宮永さんの顔っ、顔がっwwww」

照「しょーがないでしょっwww!」

絹恵「いや、みんなして変な顔してましたってwww」

恭子「wwwww」クルシイ

照「はーっ、もういいでしょ」クスクス

絹恵「自分で笑ってるやないですか」アハハ

恭子「ふっ......ぶふっ」

照「ちょっともう、ほんとにw!」

恭子「はい、もう、平気......平気です....ふっ」

照「お し ま い !」

絹恵「それエンドレスフラグやないですかw」

恭子「いや、切り換えて行くで」キリッ

インターホン『お飲み物をお持ちしました』

照「あ、はーい」スタスタ

ガチャ







放送席


恒子「さー、いよいよ始まります今期の行方を占う肝心要の大勝負!」

健夜「はい。とうとう来ましたね」

恒子「実況は私福与恒子、解説はお馴染み小鍛治健夜プロでお送り致しまっす」

健夜「宜しくお願いします」

恒子「小鍛治プロ、古巣恵比寿は2位に付けて迎えたこの3連戦ですけど、どうですか?」

健夜「そうですね。4位の大宮を除いた首位争いの渦中にある4チーム。今日はその意地のぶつかり合いに期待したいですね」

恒子「展開としてはかなりもつれ込むと?」

健夜「これまでの戦績からもやはり横浜を追う展開が見込めますけれど、守りを軽視すると弾き出されてしまうでしょうね」

恒子「先行チームを追いながらも、共に追う立場の2チームからの奇襲をキッチリ防ぐ必要があるという事ですねっ」

健夜「はい、その通りです」

恒子「さぁ、たった今、先鋒戦、起家、横浜の三尋木咏が一打目の牌を晒しました。まずは北」

健夜「三尋木さんは一打目に字牌というパターンは決して多くはないですね。少し他家に考えさせる一打です」

恒子「考えさせる。その辺は一つのキーワードになりますか?」

健夜「そうですね。こうした緊迫感のある対局では深い思考、思索、当然大切ですけれども」

健夜「却って考えに囚われて裏目を引くという事は多々あると思います。慎重さと大胆さ、そのバランスが大切ですよ」

恒子「なるほど。さて、二巡目、三尋木が引いて来たのはー、あれ? 北ですね」

健夜「こういう事は良くありますね。確かに切って直ぐ同じ牌を自摸ると躓きを覚えますが、そこは三尋木さんですから」

恒子「三尋木咏、代表チームの不動のエース! 日本一日の丸が似合う彼女に動揺は有り得なーいっ!」

恒子「って、北を手に入れたよ!?」

健夜「う~ん、ちょっとかっこつけたのかなw? 多分ですけど。とても彼女らしいと思います」

恒子「さぁ、自分らしさを手放さないエース三尋木の闘牌! この先鋒戦、首位横浜はどこまで稼ぐことができるのかっ!!」







VIPルーム


恒子『シャープシュートォォォォォォォォォォォ!!!』

健夜『これは綺麗に決まりましたね。お見事』

恒子『先鋒後半戦炸裂した三尋木旋風! その差を埋めるべく始まった次鋒戦は初っ端から弘世が横浜を狙い撃ちだっ!』


恭子「結構久しぶりやないです? シャープシュート」

照「うん。デビューした年に散々裏を取られて封印しちゃってたから」

絹恵「それで逆に意表を突けた感じになったってトコですかね」

恭子「あらら、また狙って行ってますね」

照「菫....」

絹恵「確かに懐かしいわぁシャープシュート。なんや高校時代に戻った気ぃしてきました」

恭子「せやなぁ」



恒子『まーたまた鮮やかに決めてきたぁぁぁぁぁ!! 長きに渡って封印されていた匠の技が今再びっ!』

健夜『横浜の次鋒はキャプテンで精神的支柱ですから、このままやり込められるとチーム全体に影響も出そうですね』


恭子「ちょっと直ぐには対応できない感じですかね。親を取ったここは山場になりそうです」

絹恵「ここで当てればほんまに波に乗って来そうですね」

照「どうだろう。プロの世界はそこまで甘くはないと思うけど」

絹恵「あ? 止めた?」

恭子「ちゃうな。これは的を変えただけや」

照「狙撃は続けながらも一呼吸置いてきた。悪くないかも」


恒子『今度は松山に的中ーっ! これは弘世菫が止まらない! 東三局一本場っ! ジャッカルの日は正に今っ!』

健夜『リズムを作る感じで的を変えて行きましたね。ここは彼女のリズムに対応するより、自分のリズムを押し付ける勝負です』

恒子『それは言いかえれば我の張り合いですねっ、しかしまさかのシャープシューター再臨! 展開は読めません!』



絹恵「あー、なんや自分でも打ちたなってきましたわ~」

恭子「奇遇やな。私も今そんな感じや」

照「うん、私も」

絹恵「松山はもうオリかいなっ」

照「オリながら他家支援だね。菫の親を流しに来てる」

恭子「今局はちょっと苦しいかもですね」

照「でも、針孔に糸を通すのがシャープシュート」


恒子『流局間際のシャープシュート一閃っっ!!! またまた横浜を撃ち抜いたー!』

健夜『流れは完全に弘世さんに来ていますね』

恒子『元恵比寿のエースとしてどうですか?』

健夜『シャープシュートは会場を魅了する和了りですから、こんなに頼もしい味方はいないと思います』

恒子『控室ではホールの様子が見えますからね。アウェームードを取り払ってチームの士気も上がってるでしょう!』



恭子「弘世さん、凄いですね」

照「....うん」

絹恵「あはは、照さん嬉しそうや」

恭子「そら元チームメイトの活躍なら当然やないの。ですよね?」

照「うん、菫にもチームにも勝って欲しい」

絹恵「そしたら今日の所はうちも恵比寿応援しますね」

照「えー? 遠慮しなくてもいいよ」

絹恵「いえいえ、今日だけ恵比須ファンで♪」

照「ふふ、ありがとう」

恭子「ほな私もそれで」

照「もう、二人とも優しいんだから」







臨海大 学生寮


恒子『うわーっ、松山戒能良子、これは二度受けを仕損じた形になってしまったー!!』

健夜『こうなってしまうとちょっと追い上げきれないかも知れませんけれど、最後まで諦めないで欲しいですね』


穏乃「ぎゃーーー! 松山はこれでストップしちゃうのっ!?」

淡「これは恵比寿の逃げ切りフラグだねー♪」フフーン

穏乃「やっぱりそーかなー? 恵比寿は弘世さんが完璧に押し上げてくれちゃったからなー」ヤバーイ

淡「言ったでしょ? 今日の弘世先輩は一味違うって」

穏乃「くそーっ、今日は横浜がスタートダッシュして地元大阪とのせめぎあいだと思ったのにっ!」


恒子『試合終了ーーっ!! 恵比寿! 大事な3連戦の初日を鮮やかな逆転逃げ切りで決めたぁぁぁぁ!!』

健夜『三尋木さんの稼ぎを半ば以上詰め上げた弘世プロの活躍が光りましたね』

恒子『これは続く2戦も読めない試合になって来そうですっ! んー、今から楽しみですねっ!』


穏乃「だぁぁぁ! 負けちゃった」トホホ

淡「ゴディバのアイスおごり決定~♪」

穏乃「うう、今月厳しいのに」

淡「勝負は勝負だもんねー」ワーイワーイ

穏乃「ぐぬぬ、明日は負けないぞーっ!」

淡「あはははは♪ (でもまさかのシャープシュートかぁ。テルー、ちゃんと見てあげてたよね? 許してあげちゃいなよ~)」







グランキューブ大坂 バックヤード


恭子「そしたらここで待ってればえーですか?」

照「うん。ごめんね、付き合わせちゃって」

恭子「いえいえ」

照「絹ちゃんも、またトイレ行かせちゃって」

恭子「ほんまにあの娘はトイレ近いですねぇ」シレッ

照「ひどいw」

恭子「まぁまぁ、あとでご機嫌とっておきますから」

カツカツカツ

恭子「あ、来られたんやないですか」

照「うん、じゃあ行ってくる」

恭子「ごゆっくり」

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照「菫」

菫「照、来てくれたか。良かった」

照「試合、凄かったね。シャープシュート!」カマエー

菫「恥ずかしいからやめてくれ///」

照「チームも勝ったし、区間賞も取れたし、ほんと凄いね。おめでとう」

菫「ああ、ありがとう」

照「....着信拒否、ごめんね。ちょっと意固地になっちゃって.....馬鹿みたいね、私」

菫「いや、私の方こそ詳しい事情も知らないのに適当な事を言ってしまって....悪かった。この通りだ」

照「いいよもう、怒ってないから」

菫「それじゃあ、仲直りだな」スッ

照「そうだね」アクシュー

菫「.........」

照「.........」

菫「ふーっ」

照「溜息」コラッ


菫「いや、何でか知らないけど、昔からお前と気不味くなるともの凄く緊張するんだよ」

照「何それ、失礼」

菫「いや、だからさ、それだけ私の中で宮永照の存在は大きいってことで」

照「それってどういう?」

菫「んー? そうだな、やっぱり麻雀の強さに憧れて来たってのがあるし、私の人生の一つの指標だよな」

照「それ重すぎ」

菫「やっぱり?」

照「からかってる?」

菫「そんな事はない。本音さ」

照「その内、菫の心の中で祀られそうで怖い」

菫「すでにお祀りしてます。宮永様~」ナムー

照「こらっ」

菫「ははは、ごめんごめん」


照「....菫は、さ」

菫「?」

照「菫は心配してくれたんだよね。私とセーラの事」

菫「そりゃそうさ。あれだけ仲良さそうにしていたのに」

照「私だってそう思ってた」

菫「まだ......引きずっているのか?」

照「分からない」

菫「分からないって何だよ?」

照「うん、そこなんだよね」

菫「よりを戻したいとかじゃないのか?」

照「それは違う気がする。ただ」

菫「ただ?」

照「......足が止まって動けないの」

菫「..........」

照「どうしたらいい?」


菫「私と、東京へ戻るか? いつまでもこっちにいても」

照「ううん。この大阪にいる時間はね、みんなが作ってくれた時間だから、まだいる」

菫「そうか......。私にできることは何かあるか?」

照「そう言ってくれる気持ちが一番嬉しい。後はまだ分からないよ」

菫「そうか。なら、何かあったら何時でも何でも言ってくれ。な?」

照「うん」

ピロリーン♪

菫「っと、ああ、呼び出しのメールだ」

照「プロ雀士なんだからお仕事優先。行って。私は大丈夫だから」

菫「すまない。とにかく、何でもいいから連絡くれよ」

照「わかった。ありがとう。ほら、行って」

菫「ああ」スタタッ ピタッ 「照」

照「なに?」

菫「私はお前の事、好きだぞ」

照「っ.......私も菫のこと好きだよ」

スタタタ-


照「ばかっ、去り際に変な事」ニヨニヨ

恭子「行ってしまいましたねぇ」

照「え、あ、うん////」

恭子「私がいたこと忘れてましたでしょう?」

照「そ、そんなことない、よ?」

恭子「まー、その辺の事はどーでもえー事で。仲直り、できたようで良かったやないですか」

照「うん、ひとつ胸のつかえが取れた気がする」

恭子「そしたら大阪におられる内に残りのつかえも取ってしまいましょ」

照「末原さんにお任せします」

恭子「今ちょっと軽ーく言った事後悔しましたわ」

照「もう、頑張ってよw」

恭子「はいはい。絹ちゃん待ち惚けやろし、行きましょか」

照「そうだった。急いで行かなきゃ」







Weekly麻雀Today編集部


順子「そうですか。宮永さんに会えましたか。それは良かったですねー」

菫『西田さんには色々とお骨折り頂きまして、本当にありがとうございました』

順子「いえいえ、いーんですよ。それでなんですけどね」

菫『何でしょう?』

順子「以前ガーデンプレイスでお会いした時に、今なら宮永さんに勝てるって言ってたじゃないですか」

菫『ああ、確かそんなような話をしましたね』

順子「それで今、弘世さんと宮永さんの対局企画を考えているんですけれども」

菫『それは御社の企画として?』

順子「ええ勿論。宮永さんも例のエンプレスのコンタクトでまた注目され始めるでしょうし、どうです?」

菫『申し訳ありませんが、その件はお断りします』

順子「へ? あ、な、何で!?」

菫『彼女にはもう少し時間が必要です。今はそっとしておいてあげたいので』

順子「あー、いや、ちょっと話が見えないんだけど...」

菫『それに来年になればエンプレス以外のチームもこぞって動き出しますから、その方が注目度も段違いでしょう』

順子「それはまぁ確かに」

菫『その時になれば必ずお受けします。勿論、私も今後、より活躍して見せますし』

順子「そ、そうですか。じゃあ、まぁ、今回は脈なし....という事で?」

菫『申し訳ありませんが』

順子「あーいえ、はい、分かりました....」

ツーツー

久美子「ひょっとして振られちゃいましたー?」

順子「久美子ちゃん、お願いだからそっとしておいて頂戴」ガックシ







住吉 末原恭子のマンション


恭子「ちょっと出てきますね」

照「行ってらっしゃい」

絹恵「行てらー」

恭子「てゆーか、絹ちゃんはそろそろ帰りぃ」

絹恵「嫌や、まだ三麻で勝ってへんもん」

照「頑張れー」

絹恵「しこたま毟っといてそのセリフは鬼過ぎますやんw」

照「勝負の世界は厳しい」キリッ

恭子「やれやれやね。ほな行ってきますわ」

絹恵「はよ戻って下さいねー」

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マンション入り口外


恭子「あ、洋榎ちゃん?」

洋榎『おー、どないした? 上手い事やってるかー?』

恭子「ぼちぼちやと思いますけど。弘世さんの件はもう知ってます?」

洋榎『本人からお礼の電話もろたでー。照と仲直りできたーゆーてたけどちゃうの?』

恭子「その点は問題なしや。ただ、二人の会話ん中で今回の宮永さんの問題が見えたよーな気がしますのや」

洋榎『ほほー、さすが恭子やな。それで? うちに何かせーゆー話なん?』

恭子「ええ、江口さんの今のケー番教えて貰えませんか」

洋榎『江口のぉ!? そら.....ちぃとばかり踏み込み過ぎなんとちゃうか? へーきかいな?』

恭子「この件こっちに預けたんやったらきっちりケツまで協力したって下さいよ」

洋榎『せやけど...』

恭子「下手は打ちませんから」

洋榎『わかった。ほなゆーわな』

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恭子「これで良し。とはいえこの時間に掛けても迷惑な話か.......いやいや、善は急げゆー事やし」

ピッポッパッ

恭子「あ、もしもし? 江口さんですか?」

セーラ『お? 関西のイントネーションやな、どちらさん?』

恭子「姫松で愛宕姉妹とチームメイトやった末原ですけど」

セーラ『あらまぁ、ひっさし振りやなー。どないしたん急に? 番号洋榎にきーたん?』

恭子「ええ、はい。あの、単刀直入に聞かせて貰ってもえーですか?」

セーラ『えーよ? なん?』

恭子「宮永さんとは何で別れはったんですか」

セーラ『..........』

恭子「江口さん?」


セーラ『びっくりしたわ。まさかその話やとは思いもよらんかってん』

恭子「あ、いえ、こちらこそほんま不躾な話で申し訳ないです。堪忍して下さい」

セーラ『えーって、えーって。何でそんなこと聞くんかは知らんけど、うちもまぁ誰かに話したい気持ちはあったし』

恭子「お願いできますか」

セーラ『んー、照やんとはなぁ、そーなぁ.....正直なトコ、今でもちゃんと好っきやねんで?』

恭子「そうなんですか? したらどうしてまた?」

セーラ『そら色々あるけども。一番には....そやなぁ、温度差ゆーの?』

恭子「温度差ですか?」

セーラ『うん、うちの好きゆー気持ち程、照やんからうちへの好きが足らへんゆーか、なんちゅーか。言葉やと言い切れんけども』

セーラ『1年くらいしてそんなんを感じるようになって、まぁうちなりに色々考えたり試したりしてみたわけや』

恭子「でも変わらなかったと」

セーラ『今思えば、もっと直接そのもやもやをぶつければ良かったんやろな。けど、その時はそーゆー考えにも至らずじまいやってん』

恭子「で、別れたと」

セーラ『最後の賭けやったな。別れ話切り出すのは』

恭子「なるほど」


セーラ『あー、なんか泣けてきたわ。ごめ、ちと待って』ズズッ

恭子「ええ、どうぞ」

セーラ『堪忍堪忍。まーそれで別れ話を切り出したんやけども、その時はな、こうゆーたわけや』

恭子「はい」

セーラ『照やんのこと好っきやねんけど、これから先もおんなじ好きでいられる自信が持たれへん。何でやろなぁゆーてな』

恭子「はい」

セーラ『したら照やん、わかんないゆーんよ。せやから、それやったらいっそのこと別れましょーか? 言ったわけや』

恭子「ちょっとまって下さい。他に好きな人が出来たゆー話は?」

セーラ『あー、それ後付け。今でこそその娘とは付きおーてる感じやねんけど、当時はホンマただの友達よ?』

恭子「そうだったんですか。済みません話の腰折って」

セーラ『ん。でな、いっそ別れましょーゆーたんやけども』

恭子「はい」


セーラ『したらっ.........セーラがそう言うなら、うん、良いよ。......ほんならさいならやね。顔で笑って心で泣いたわっ』

恭子「....わかります」

セーラ『照やんそっちに行ってるん?』

恭子「はい」

セーラ『元気してる?』

恭子「表向きはそれなりですけど、情緒不安定なとこはありますね」

セーラ『そか。したら末原さん、うちはだめやったけども、なんとかしたげて?』

恭子「....はい」グスッ

セーラ『あほっ、そっちまで泣かんといてよ』

恭子「すみません。ほんまにすみません。話して下すってありがとうございました」

セーラ『ん....。ほな、これでえーかな?』

恭子「はい」


セーラ『照やんのこと、宜しくしたってな』

恭子「はい、分かりました。そしたらこれで失礼します。お休みなさい」

セーラ『ん、お休み。またそのうちな』



ツーツー



恭子「......今度ばっかりは反省やな。反省反省、同時に責任や」

恭子「あー、自己嫌悪や。いやあかんな。そんな資格もないわ」


照「末原さん」

恭子「!!?」フリムキー

照「電話、終わった?」

恭子「何時からいてらしたんですか」

照「ちょっと前から」

恭子「そうでしたか........ま、絹ちゃん待ってるやろし、戻りましょうか」

照「絹ちゃん寝ちゃったよ。だから様子見に降りてきた」

恭子「なるほど、寝る子は

照「末原さん」

恭子「.....はい」

照「これ使って」ハンケチー

恭子「あ、すみません」フキフキ

照「電話の相手、誰?」


恭子「.........」

照「.........」

恭子「江口さんです」

照「やっぱり。そんな感じしてた。でもどうして?」

恭子「お二人がどう別れたか、知っておく必要がありました」

照「必要が?」

恭子「胸のつかえ、残り全部取らなあかんでしょ?」

照「仕事みたいに言わないで」

恭子「仕事なわけないでしょう」

照「じゃあ、私が洋榎の友達だから?」

恭子「それは切っ掛けです」

照「なら何」


恭子「その人の為に何かしたげたいなぁ思うんは、そらその人の事好きやからでしょ」

照「........」

恭子「新大阪の駅で会うた時、へー、意外と感じのえー人なんやなぁと思いました」

照「........」

恭子「それから都度、おもろい人やなぁ、かいらしい人やなぁ、そんな風に思て今は、この人好っきやなぁゆーのが本心です」

照「........」

恭子「せやから、苦しんでるの分かりますから、何とかしたげたいですよ。迷惑ですか?」

照「っ、迷惑なんか、」

恭子「宮永さんは弱い。麻雀も徹底的にディフェンシブや、ひたすら自分を守る。守り抜く自信があって初めて攻める」

照「........」

恭子「読めない相手は怖いでしょう。そら誰だってそうですよ。でも世の中自分の物差し一つでは渡っては行かれません」

照「........」

恭子「せやから家族がおるし、友達がおるし、恋人がおるんやないですか?」


照「私の何が間違ってるの?」

恭子「間違ってませんよ。宮永さんは間違うとか間違わないとかの手前にいるんです」

照「どうしたらいいの?」

恭子「ちゃんと恋しましたか?」

照「したよ」

恭子「ならちゃんと失恋しましたか?」

照「できてない?」

恭子「江口さん電話口で泣いてましたよ。今でも好きな人の事心配して、なんとかしたってぇゆーてました」

照「だったらどーしてっ」


恭子「ちゃんと泣きましたか? 恋した相手に振られたんでしょう?」

照「.......」

恭子「弘世さんにゆーてましたね? 足が止まって動けない。そーゆーてたでしょう」

照「.....うん」

恭子「人生は石段とはちゃいます。何段も飛ばしては進まれへんのです」

恭子「人との繋がりが人生や。それを飛ばすことは許されへん」

恭子「宮永さんも胸の内の深い所ではそれを解ってる。せやから動かれへんのやないですか?」

恭子「ちゃんと恋をしたとゆーなら、ちゃんと失恋して下さい。それで初めて次に進めるんです。違いますか?」

照「う......うえぇぇ」ヒック

恭子「打ちのめされても支えてくれる人がぎょーさんおるやないですか、貴女には」ダキシメー

照「くっ、ふっ.....うぁぁあぁぁあぁぁぁん」ダキツキッ


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絹恵「恭子さん男前すぎやろ。起き抜けにちびりそうになったわ....」 ← 起きてきて見てた人












翌朝


チュンチュン

恭子「んむ、重....って、絹ちゃんかい!」ココハフツーミヤナガサンヤロッ

絹恵「んあー、おはようございますぅ」ニャムニャム

恭子「えーからどいてーな。宮永さんは?」

照「もう起きてるよ」ヒョコッ

恭子「あ、おはようございます」

絹恵「ん~~っ! 目ぇ覚めたー!!」

照「朝ごはんできてるから、二人とも早く来て」

恭子「あらら、そらまたどーも。直ぐ着替えて行きますね」

絹恵「うちは着の身着のままやし。あ、でもまずはトイレや」タタタッ

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絹恵「おー、サニーサイドアップ! なし崩し的に泊まって正解やったなぁ、照さんの手料理とかっ!」

照「手料理って程のものじゃ。あ、末原さんのは薄焼きね。あとコーヒーには砂糖をひと匙っと」

恭子「まぁまぁ何から何までうちの好み通り、至れり尽くせりで有難い事です」

絹恵「何ですのそれ.....普通に夫婦やん」

照・恭「!?」

照「やだな、別にそんな///」

恭子「これは昨日も朝食作って貰いまして、その時に色々覚えてて下さっててて」

絹恵「ててててなんですの。てゆーか昨日もて、新婚二日目かっ!」

照・恭「っ///////」







箕面市 明治の森箕面国定公園


照「今日は随分遠出だね」

恭子「今日のプランは絹ちゃん担当やったんですけど、二人で行って来い言われてしまいましたからね」ノープランデスワ

照「あれには参ったよね。でも何でここ?」

恭子「たまに来るんです。ほんと、たまーになんですけど、マイナスイオンに癒されたい時とか、ふらりと」

照「ふらりとこれる距離かな? 何にしても末原さんの秘密のリフレッシュポイントだ」

恭子「そんなところですかね。あ、あれが箕面大滝です。まぁ見頃ゆーたら紅葉の時期なんですけど」

照「へぇ~」

恭子「ほんま特にこれと言った物もない場所ですよ。つまらんかったかな」

照「ううん」

恭子「それなら良かったですけど。さて、と.....次はどちらへ」

照「末原さん」


恭子「はい、何ですか?」

照「末原さん、ありがとう」

恭子「そんな、改まって言われると照れてしまいますね///」

照「末原さんのお蔭で、私一歩前に進めたよ」

恭子「それは良かったです」

照「でもね」

恭子「?」

照「私って色々あるの」

恭子「そら人には色々ありますでしょう」

照「うん。親子関係も複雑だし、妹の....咲の事も本当に全部クリアできたかって言うとやっぱりまだ微妙なところもあるし」

恭子「そうなんですか?」

照「そうなの。色々小骨が引っ掛かってるの」

恭子「.........」


照「だからね、だから末原さん」

恭子「はい」

照「こんな小骨だらけで食べでのない私だけれど」

恭子「はい」

照「末原さんの事、好きになってもいいですか?」

恭子「.........」

照「.........」

恭子「.........」

照「.........」

恭子「この道より我を生かす道はなし、この道を行く」

照「武者小路実篤」

恭子「当たりです。それではこれからはおんなじ道。どうぞ宜しくお願い致します」ペコッ

照「こちらこそっ♪」ダキツキッ


ワワッ オチマスッ オチマステ

スエハラサーン♪


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【咲-Saki-】これからはおんなじ道【SS】 カン!









終わりです。
照がハッピーになるには何となく一山越させないとしっくり来なかったのでこんな仕上がりに....
セーラは犠牲になったのだ! 菫は....なんだろね? いや照菫嫌いじゃないですよw?

それでは、いつかまた~




乙!

すばらでした乙乙!
まさか続きというか、あの設定の照メイン読めると思わなかったです
めちゃくちゃ嬉しいし、とても面白かったです!

おつー!
すばらです!

乙?
地味に末原×照って初めてじゃなかろうか……後、みなもちゃん(仮)の母親が善野さん……なんか原作でも少し可能性ありそう…

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