アニ「昼夜逆転の関係」(21)


・エロ注意




草木も眠る丑三つ時。

静まり返った森の中でぐちゅぐちゅという水音と、乱れた息遣いだけが響いていた。

「あ……ッはぁ……、くっ…??ね、ぇ…!」

「ま、待って…ッて…あぁ!む…無理、…やめ?…んっ」

涙と唾液でぐちゃぐちゃになった顔をいやいや、と横に振って女は一時停止を懇願するが、

男は愛の言葉を囁くだけで止まりはしなかった。

片手で女の髪を掻き乱し頭を引き寄せて、唇を貪り喰らう。

がくがくと震える膝の間には男が脚を捩じ込みけして閉じられないようにしていた。

「ひッんんぅ……んむ…ちゅ…んうぅ」

秘所の中で暴れ回る三本の指のせいで愛液が下肢まで滴り

下穿はもうそれとしての機能を成してはいなかった。

遂に腰が砕けて一人では立っていられなくなった女の腰を男が支え、しゃがみ込むことをまだ許さない。



男が唇を離し、一端動きを止めてみれば、女は相手を睨み付けた。

「はぁ、……ッはぁ……やめて、って…言ったん…だけど……っ」

しかし月明かりに照らされて一層扇情的になり、男の方が余計に煽られるだけだった。

「嫌なら突き飛ばせば良い。君なら出来るだろ?僕ぐらい簡単に」

「っ…こ、の…ッ」

「反論できないってことは了承と受け取るけど?」

「……違う、そうじゃなくて、…」


普段の調子とは違う。

自分だけが知ってる彼女の弱い一面。

これだからやめられない。

男は愛しい気持ちと相反した加虐心が背筋をぞくぞくと這い上がってくるのを感じた。

「素直じゃないところも愛してるよ、アニ」

常日頃と差異のない爽やかな笑顔で、男…アルミンはアニへ再び口付けをした。




「お前らってかかあ天下、って感じだよなぁ。完全に尻に敷かれてんじゃねえかアルミン」

「そうかな?それは男としては傷つくなぁ」

食卓を挟んだ向かい側でははは、と大口開けて笑うジャンに僕は苦笑いで返す。

隣のアニを一瞥すると気遣うようにこちらを伺って来たから

ジャンからは見えないようにこっそりと、膝に置かれた手の上に自分の掌を重ね指を絡ませて握った。


あ、真っ赤になった。

そう思った瞬間に反対から拳が飛んできて僕は盛大に吹っ飛んだ。

ジャンの笑い声が一層大きくなり、アニは獣のようにふーふーと唸っている。

殴られた頭が痛い以上に、羞恥ゆえに今も熟れたトマトみたいな顔をしてるアニへのいじらしさで心が震えた。



ジャンの言う通り、僕は確かにアニの尻に敷かれているように見えるかもしれない。

実際弱い優男風の僕に物理的にも口調も強い女のアニというカップルは、そう言われても仕方がない。

……だがそれは昼間の話。

あくまでも装った、外面上の話。


「アニ、痛いよ…」

わざとらしく眉をへの字に曲げ上目遣いで見上げたら

アニが顔面蒼白にして、小さく、ひっと声をあげた。

大方何か勘違いしたのだろう。

別に大層なことは考えてなかったのに。

何かしてやりたい気になるじゃないか。

「今のは…アルミンが悪いから。…私のせいじゃないから」

「ええ?僕何かしたっけ。ねえジャン」

「知らねえよ。突然殴られてただろ。アニの気に入らないことでも言ったんじゃねえの?」

「あんたのそう言うところ…嫌」

「よくわからないけどごめんね。お詫びしてあげるから許して」

「…いらないよ」



「もー、ごめんったら。嫌とか言わないでよ」

アニに近付き肩を掴んで、顔を覗き込んで謝罪したが、

「知らない」

ぷいと身体ごと背けて配膳を持ち、片付けに行ってしまった。

「…振り回されてやがる。なっさけねぇなアルミン」

「困ったなぁ。僕アニに何しちゃったんだろう?」

「女ってのは難しくて俺にはわかんねぇ」

「僕も未だにさっぱりだよ。女の子の扱いは」

ジャンと男女の違いについて語らいつつ、

アニの去り際の朱色に染まった耳を思い起こして密かにほくそ笑んだ。



消灯時間過ぎ、皆が寝静まった後で

森の中のいつもの道を通り、待ち合わせ場所へ行く。

獣道が開けて、到着した。

アニと夜に逢い引きする時はいつもここだ。


どうやら珍しく僕より彼女のが早かったらしく、

ぼんやりと雲ひとつない空を仰いでいた。

綺麗だなと、惚れ惚れする。

あの美しい表情を崩したい。

僕だけに見せる、羞恥と悔しさと恍惚の入り交じった顔に変えてやりたい。

邪な考えはいつだって僕のこころにあった。

こんな男に捕まったのがきっとアニの運のつきだ。



声も掛けずに見守っていたら、視線を感じたのかアニがこっちを向いた。

「来てたんなら言いなよ。ぼさっと突っ立ってないでさ」

「ああ、ごめんね。見とれてたんだ」

「月?確かに綺麗だね」

「いや、君に」

やんわりと微笑んで一歩ずつ近付けば、狼狽えてるアニがよく見えるようになってきた。

もう一年も付き合って、そういう行為だって致しているのに、何で未だに初な反応をしてくれるのか。

嬉しい限りだが些か不安にもなった。

こんな調子で他の男にころっといってもらったら困る。

流れ出したどす黒いモノに歯止めが効かない。

嫉妬、独占欲、マイナス思考、いつもの悪い癖だ。

今日こそは優しく、なんて無理そうだ。

唐突に書き溜めが消える悲劇…
書き直してくる

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