新ジャンル「ホモ×レズのカップル」 (125)

ホモ「僕には現在片思いしている人がいます。その人は年上の先輩で、男です。」

ホモ「しかし僕の実家は名高い家なため、世間体から結ばれることは難しいと推測できます。」

レズ「あら、奇遇ね。実は私も好きな人が後輩の女の子なの。」

レズ「アンタみたいに金持ち一族じゃないけれど、私の両親はとても心配性。」

レズ「『同性を好きになった』なんて言ったら倒れるかもしれないわ。」

ホモ「では、決まりですね。」

ホモ「利害も一致していることですし、僕たちが仮面カップルになれば全ては上手く進みます。」

レズ「ええ、結構よ。」

レズ「でも私、男の人が嫌いなの。カップルだからってくれぐれもベタベタ触ったりしないでね。」

ホモ「安心してください。絶対に貴方には手出ししないと約束します。」

レズ「それでいいのよ。だって、私たちには互いに心に決めた人がいるんだから。」

【朝】

ざわざわ ざわざわ

女「ねえ聞いた?レズちゃんとホモくん付き合いだしたらしいよ」

女2「レズちゃんは学校1のクール美少女で高嶺の花だし、
   ホモくんも普段無表情で何考えてるか分からないタイプだし…。」

女「どっちも付き合うタイプには見えなかっただけに驚きだよね!」

女2「ねー!あ、でも両方とも人と深く関わるタイプに見えないから気が合ったのかも!」

後輩「そっかぁ…レズちゃんにも、とうとう彼氏ができたんだぁ……。」

後輩「そうだよね、あんなに美人なんだもん。当たり前だよね……。」

レズ「おはよう、後輩。」

後輩「あ、おおっ、おおおおおはようレズちゃん!」

レズ「慌て過ぎよ。その様子だともう聞いたのね、例のこと。」

後輩「ああっああああ、あれって本当なのかな!?レズちゃんがホモさんと付き合いだしたって!」

レズ「本当よ。」

後輩「やっぱりそうなんだ……。」ショボン

レズ「そんなに落ち込んだ顔しなくたっていいでしょう?」

後輩「落ち込んでなんかないよ!」

後輩「でも…なんだかレズちゃんが遠くに行っちゃったような気分で……。」

レズ「フフ、バカね後輩は。」ナデナデ

後輩「ふぇぇ!?もっもう、頭撫でないでよ!!///」

後輩「でも私もがんばらないとね!レズちゃんに負けないようはやくいい人見つけないと!」

レズ「……。」

ホモ「おはようございます、先輩。」

先輩「なんだ、また来たのかいホモくん。毎朝俺の教室まで来るのは大変だろうに。」

ホモ「大した手間ではありません。それより、またあったんですか?」

先輩「そうなんだ、困ったな……。」

女子生徒からの大量のラブレターを机から取り出す先輩。

先輩「気持ちは嬉しいんだが、俺は誰とも付き合うことはできないんだ。」

先輩「それに、どうして俺なんかにここまで好意を持ってくれるのかが分からない。」

ホモ「先輩が魅力的だからですよ。お人好しすぎるのが短所ですが。」

先輩「はは、そんなことを言ってくれるのは君だけだよ。ホモくん。」

【放課後】

陸上部にて。

女「キャー先輩くんかっこいー!こっち向いてー!」

女2「スポーツも勉強も何でもできるなんてステキだよね!しかも優しいし!」

女「あーアタシこの間転んだ時に助けて貰っちゃったー!」

女2「何それずるーい!!」

女3「ちょっとアンタ達どきなさいよ!先輩様が見えないでしょ!」

茶道部にて。

男「おい、見ろよ今日のレズさん。いつもに増して美しくね?」

男2「うわーマジ綺麗だなー。俺も付き合いてー。」

男2「つかなんでホモとかいう根暗そうな男選んだのかマジで謎だわ。」

男「あーそれは超萎えるよな。」

キモヲタ「んふww分かってないですね君たちwwwwホモくんは有名財閥の御曹司wwww」

キモヲタ「その上ぼきゅのデータによれば学年1の秀才らしいじゃないですかぁwww」

キモヲタ「もし結婚すれば将来はウハウハですぞwwwwww」

男「ふざけんなキモヲタ!レズさんがそんな不純な動機で付き合うわけねえだろ!」ボコボコ

キモヲタ「やめてくださいしんでしまいます」

男2「いや待て!むしろそれなら救われないか?」

男2「ホモが好きと見せかけ、レズさんの好きな人は別にいる可能性だってあるんだぜ!」

男「!!!それが俺だったりするわけですね分かります」

【部活終了】

陸上部にて。

顧問「相変わらずお前の記録が一番だ先輩部長。」

顧問「走り高跳びなんかは…こう…天使が舞っているようだった。」

先輩「はは、言いすぎですよ先生。」

顧問「まぁこの分だと恐らく全国大会に出場して貰うことになるだろう。考えておいてくれ。」

先輩「……はい。」



ホモ「お疲れさまでした先輩。スポーツ飲料を買っておいたので飲んでください。」

先輩「ああ、ありがとうホモくん。だが、いつもそんなに気を遣わなくていいと言っているだろう。」

ホモ「いえ、僕の分を買うついでだったので気にしないでください。」

ホモ「それより、現在玄関の前は、貴方のファンである女子生徒で溢れかえっています。」

先輩「……。」

ホモ「今日は玄関から出ず、こちらの出口から帰りましょう。」

先輩「しかし、もしあの子たちが夜になるまで俺が出てくるのを待っていたらどうする。」

ホモ「あれは彼女たちが独断で行っていることです。あなたに責任はありません。それに……」

先輩「それに?」

ホモ「そんなこと、どうでもいいじゃないですか。」

先輩「な、どうでも良くないだろ!女性が夜遅くに帰宅する、というのは心配だ!」

先輩「それに、俺を待っていたせいで風邪をひかれても困るしな。」

先輩「君も俺より、付き合い始めた彼女を迎えに行ってやった方がいいんじゃないのかい?」

ホモ「さっきまだ茶道部にいたのを見かけたよ。それじゃあ」ダッ

ホモ「僕はただ、貴方にまた以前のようなことがあったら困るだけで」

ホモ「……行ってしまった。」

茶道部にて。

男「おい見ろよ、バッチリ映ってるだろ?」

男2「やるじゃん。うひょーマジ見れば見るほど綺麗だなレズさん…!」

男2「とりま夜のおかずに使わせて貰うわw」

キモヲタ「ぼきゅの技術で焼き増しさせてくださいwwwww」



後輩「んもぅ、男子ってば、いつもいつもレズちゃんに群がるのやめてよね。まったく。」ぷんすか

後輩「明日思い切って言ってみようかな。『レズちゃんにストーカーしないでください』って。」

後輩「……言えるわけないよね。小心者のわたしだもん……。」ショボン

レズ「あら、まだ残ってたの?後輩。」

後輩「レズちゃん!!」

後輩「うん、あのね。レズちゃんと一緒に帰ろうと思って待ってたんだ!」

レズ「あらあら、嬉しいことを言ってくれるわね。」

レズ「でも、女の子がこんな時間に帰宅するのは感心できないわ。」

後輩「レズちゃんだって女の子じゃん!」

後輩「それにわたし、レズちゃんと一緒なら怖くないもんね!」

ガラッという音がして茶道室の戸が開かれる。

ホモ「おや、お取込み中でしたか。」

後輩「かかっかかかかか、彼氏さん!!はわわわわわわry」

レズ「……あら、こんな時間に何の用?」

ホモ「僕は“彼女”を迎えにきただけですが。」

レズ「……。」

後輩「あ……そうだよね。2人は付き合ってるんだもん、一緒に帰って当然だよね。」

レズ「後輩」

後輩「じゃ、じゃあわたし帰るから!お邪魔しました!!」ダッ

【夜道】

2人並んで歩くホモとレズ。

レズ「本当に空気の読めない男ね。人がせっかく幸せな時間を過ごしてる時に。」

ホモ「貴方こそ、演技が下手にも程があります。」

ホモ「僕たちは名目上『恋人』なんですよ?」

ホモ「ああいった邪険な態度は、後輩の彼女に『仮面カップル』だと勘付かれる恐れがあるかと。」

レズ「考えすぎよ。それに大丈夫。あの子の鈍さは天下一品よ。」

レズ「せいぜい『自分がいたからレズは照れていたのだろう』くらいにしか思われないわ。」

ホモ「彼女のことをよく御存じなんですね。」

レズ「当たり前でしょ、好きな子なんだから。私はあの子のことなら何だって知ってるわ。」

レズ「ああ、あと逆に人前でベタベタする方が不自然に思われかねないでしょう?」

レズ「私たちの場合。」

ホモ「それは一理ありますね。」


おおよそ恋人らしくない会話をしながら歩く2人。


レズ「それはそうと、アンタの好きな男ってあの女子がいつもキャーキャー言ってる美丈夫でしょ?」

ホモ「はい。いつも醜い女子生徒が砂糖に集る蟻のように群がっている、あの人です。」

レズ「わざわざ嫌みったらしい言い方しなくてもいいわ。それより、どうしてあの男のことが好きなの?」

ホモ「……。」

レズ「アンタ、運動は丸っきり駄目だし、雰囲気もなんか陰気だし、」

レズ「顔もそこまでイケメンってわけじゃないし、性格も捻くれてるとしか思えないし、チビだし、」

ホモ「……。」

レズ「でも、それ以外は大体持ってるじゃない。」

レズ「勉強もできるし金はあるしで、そこそこ高スペックな男と言えるわ。」

レズ「それなのに、どうしてあんなバカな生き方してる男を好きになったの?」

ホモ「訂正してください。」

ホモ「あの人は『バカな生き方をしている』のではなく、『優しすぎるだけ』です。」

レズ(それを『バカな生き方』って言ってるんだけど……。)

ホモ「それにあの人はね、“完璧”なんですよ。」

レズ「はぁ?」

ホモ「では、僕はここで失礼します。また明日もお会いしまょう、マイハニー(棒読み)」

レズ(うわキモ)

レズ「ええ、さよならダーリン(棒読み)」

ホモ(鳥肌たつからやめようこれ)

【翌日の昼休憩】

学校前にあるベンチに座っている後輩。

後輩「ふぇぇ…昨日はレズちゃんに悪いことしちゃったな……。」

後輩「『謝りに行かないと』って思うんだけど、どうしてなのか…その気になれないんだよね。」

後輩「私の知らないレズちゃんを見るのが怖いの、かな……。」

レズ「後輩、こんなところにいたのね。探したわよ。」

後輩「レズちゃん!!」

レズ「一緒にお弁当を食べましょう。」

後輩「うん……あの、昨日はごめんね。」

後輩「レズちゃんにはもうホモさんがいるのに、迷惑だったよね……。」

レズ「迷惑だなんて思ったことはこれまでに一度もないわ。」

レズ「私は後輩と一緒にいたいんだから。」

後輩「そ、そうなのかな?なんだかレズちゃんにそう言われると嬉しいなぁ」

レズ「……この際だから聞くけれど、後輩は私とホモが付き合っていることに対してどう思ってるの?」

後輩「えぇ!?どうって……末永く幸せ暮らしてほしいなーって。」

レズ(どこのおとぎ話よ)

後輩「ん…でもね、ちょっとだけね、レズちゃんをホモさんに盗られたみたいな気分にもなるんだ。」

レズ「それって」

後輩「もちろん友達としてだよ!」

後輩「いつもレズちゃんの隣にいたのはわたしなのに、その場所をホモさんにとられるのが悲しいだけなんだと思う。」

後輩「わがままで幼稚だよね、わたし。」

レズ「そんなことないわ。」

レズ「それに、私は普段と変わらず後輩の隣に居続けるから、心配しなくていいわ。」

後輩「レズちゃん……あはは、照れるな。」

レズ(そうよね、友達としてに決まってるじゃない。私は何を期待してるのかしら。)

屋上でそわそわと落ち着かない様子の先輩。

ホモ「どうしたんですか先輩。こんな所に呼び出して。」

先輩「君に話があるんだ。」

先輩「昨日、君が帰った後、玄関の前に集まっていた女の子たちにこう言ったんだ。」

先輩「『俺は君たちと付き合う気はない、今後こういったことはやめてほしい』、と。」

ホモ「……そうですか。」

先輩「何故、俺がこんなことをしたか分かるかい?ホモくん」

ホモ「……?」

先輩「それは君に――ホモくんに付き合ってほしかったからだ。」

ホモ「!!」

ホモ「あの、それって……。」

先輩「もうすぐ陸上部では大きな大会がある。だから、君には部活の練習に“付き合って”ほしかったんだ。」

ホモ「……。」

先輩「その際に、あまり大声で騒がれると他の部員に迷惑がかかってしまうからね。」

先輩「部長としては、当然皆に実力を出し切ってほしい。」

先輩「だから、申し訳ないがあの子たちには身を引いて貰ったよ。」

ホモ「ああ…そうか…そうだったんですか……。」

先輩「それで、ホモくんには部員のタイムを計るのを手伝ってほしいんだ。」

先輩「ああ、勿論お礼はするよ。大会が終わったら二人で食事に行こう。何でも奢るからさ。」

ホモ「……。」

【放課後】

茶道部前にて。

男2「うひゃー今日のレズさん着物じゃん!」

男「何だと!おいどけよ男2、写真撮らせろ!」

後輩「またあの人たち、レズちゃんに付き纏って……」

男「なあ、これってうまいことやれば部活終了後に着替え覗けるんじゃねw」

男2「おまwチャレンジャーだなーやってみるかw」

後輩「あ、あの!いい加減にしてください!」

男2「あ?」

後輩(どうしよう、言っちゃった……。もう後には引けない……!)

後輩「おかしいですよ、あなたたち!」

後輩「ど、どうして1人の女の子に付き纏うんですか?」

後輩「挙句の果てには盗撮だなんて…レズちゃんが可哀想です!」

後輩「今すぐにやめてください!」

男2「はぁ?お前には関係ないだろうが。」


後輩に掴みかかる男と男2。


男「つーか、何様って感じ?」

男「あ、心配しなくてもお前には興味ないから安心しろよw」

後輩(どうしよう……。)

後輩(こわいよ……。)

男2「そもそもこいつ後輩のくせに生意気じゃね?」

男「お前いっつもレズさんに金魚のフンみたいにくっついててさ」

男「正直超邪魔なんだよねー!」バンッ

後輩「ふぇぇ…」ヒック

男「泣くくらいなら最初から喧嘩売ってくんなっつの」チッ

男2「つーかさー。『付き纏うな』だの『盗撮やめろ』だの」

男2「こういうのって本来なら彼氏のやるべき役割なんじゃね?」

男「ああwホモは勉強以外に能のない奴だから俺らが怖くて手出せないんでしょw」

先輩「俺の友人の悪口はやめて貰おうか。」

後輩(え…誰……?)

先輩「それに、そこの彼女を離してあげなさい。」

男「あぁ?先輩かよ。てめぇには関係ないだろJK。」

先輩「いいから離すんだ。はやくしろ。」

男2「おい、やめとけって。先輩相手じゃ1対2で喧嘩したとしても勝てねぇつの。」

男「チッ…ちょっと顔のいい男はすぐにカッコつけたがるから嫌なんだよなー。」

男2「アイツああ見えて女好きなんじゃねーの。」

ブツブツと文句を言いながらその場を去る男と男2。

先輩「大丈夫だったかい?君。」

後輩「ふぇぇ……ヒック……。」

先輩「泣いてちゃかわいい顔が台無しだよ。」


後輩にハンカチを渡す先輩。


後輩「ど、どうも…ええと、あなたは……。」

先輩「俺は先輩。君は?」

後輩「えと、後輩と申します!助けてくれてありがとうございました!」

先輩「俺もちょっとイラッときて絡んだだけだから気にしなくていいよ。」

陸上部顧問「何してんだー先輩ー!早く来い!」

先輩「今行きます!じゃあ、またね。後輩ちゃん。」

後輩「はい!」

先輩「ああ、あとそのハンカチは君にあげるからね。」

先輩「いらなかったら捨てていいよ。」ダッ

後輩(今の人…カッコよかったな……なんかキラキラしてた……。)

後輩(わたしもレズちゃんみたいに恋人を作るとしたら、先輩さんがいいな……なんて。)

後輩「やだ、ちょっと何考えてるのわたし!そんなの無理に決まってるじゃん!」

レズ「あら、こんなところでどうしたの?後輩。」ガラッ

後輩「ううん、何でもないの!」

レズ「?」

後輩(……///)

【数日後の夜】

レズ宅にて。

父「いやあ、まさかレズにもついに恋人ができるとはな!」

母「あら、レズだって年頃なんだから彼氏の2人や3人できるわよねー?」

レズ(いや彼氏の2人や3人は駄目でしょ)

父「でもお父さんはちょっと悲しいぞー!まぁレズは美人だから仕方ないんだけどな!」

母「ねえ、その彼氏ってあの有名財閥の息子さんなんでしょう?」

母「レズが結婚したら私も少しは優雅な生活が送れるかしら……ウフフ」

父「お、おい!まるで今の俺の稼ぎが悪いみたいな言い方するな!」

レズ「……まだ結婚すると決まったわけじゃないわ。」

母「あら、それなら今から狙いなさい!こんなチャンス滅多にないわ!」

母「玉の輿よタ・マ・ノ・コ・シ!」

母「はぁーレズがいい男を好きになってくれてママ嬉しいわー。」

レズ「……。」

ホモ宅にて。

父「おい、ホモ。最近帰ってくるのが遅いじゃないか。」

父「彼女と交際するのも良いが、我が財閥の名に傷をつけることだけはやめなさい。」

ホモ「どうして僕に彼女がいることを知っているんですか?」

父「簡単な話だ。お前は私に監視下から逃れることはできない、ただそれだけの話だ。」

ホモ「……。」

父「『遊び歩くのも程々にしなさい』という親心じゃないか。」

ホモ「僕は遊び歩いているせいで、帰宅時間が遅くなるわけではありません。父さん。」

ホモ「学校の先輩の部活練習の手伝いをしているだけです。」

父「ふん、くだらん。お前は大人しく学業にだけ取り組んでいればいいんだ。」

父「部活なんぞに顔を出す必要はない。何のために帰宅部に入らせたと思っているんだ。」

父「そんな先輩と付き合うのは今すぐにやめろ。」

ホモ「……嫌です。」

父「ほう……。この私に口答えとは珍しいな、ホモ。」

父「まぁいい。お前が縁を切らないというのなら、私の力でその先輩とやらを排除するまでだ。」

ホモ「やめてください!先輩には手を出さないでください。」

父「ずいぶんと必死になるんだな。嫌ならば明日にその先輩との関係を完全に断ち切りなさい。」

父「この意味が分かるな……?」

ホモ「……はい。」

父「良い子だ。お前は私の後を継ぐ男だからこれだけ厳しく言うんだ、分かってくれ。」

父「ああ、それはそうと、お前の彼女がどんな女か調べさせてもらったよ。」

ホモ「!」

父「家系は中流階級の庶民だが、容姿はこの家系にふさわしい女だな。悪くはない。」

ホモ「……。」

【翌日の朝】

先輩「おかしいな、いつも来るはずのホモくんが来ない……。」

先輩「まさか、風邪で休んでるんじゃないだろうな。」

先輩「心配だ……メールしてみよう。」



後輩「今日は先輩さんに会えるかな…?借りたハンカチも返さないと…///」

後輩「ふふふ……また先輩さんとお話ができる……楽しみだなぁ。」

レズ「あら、どうしたの朝から。ニヤニヤしちゃって。」

頬をツンツンと触るレズ。

後輩「えへへ……あのね、レズちゃん。大発表があるの!」

後輩「実はわたし……好きな男の人ができちゃったみたい!」

レズ「えっ……?」

後輩「レズちゃんと同じ学年の先輩さんなんだけど…詳しいことはまたあとで話すね!」

後輩「あっ!このことは一番の仲良しであるレズちゃんにしか言ってないんだからね!」

後輩「他の子には言っちゃだめだよ!」

レズ「あ……うん……分かってるわ……よ。」

【昼休憩】

レズ「……。」

ホモ「おや…珍しいですね、あなたが休憩時間に僕に会いに来るなんて。」

レズ「別に…ちょっと、話したいことがあっただけよ……。」

ホモ「…そうですか。では、屋上に行きましょうか。」


屋上にて。

レズ「気効かせて『何があったんだ?』とか何とか言いなさいよ。」

レズ「アンタ、私の彼氏でしょ。」

ホモ「“仮面”彼氏です。今のところ、貴方の彼氏になる予定はありません。」

レズ「本当に氷のように冷たい男ね。そんなんだからモテないのよ。」

ホモ「モテる必要はありません。」

レズ「……私ね、失恋しちゃった。後輩に好きな男ができたんだって。」

レズ「しかも、そのお相手はアンタが片思いしてる先輩よ。フフ、笑っちゃうでしょ?」

ホモ「そうですか。」

レズ「何よ、その反応。」

レズ「アンタの思い人は元からモテモテだから、
    今更ファンが1人増えたくらいで何とも思わないってわけ?」

レズ「いいご身分ね。」

ホモ「そうではありません。そうじゃないんです……。」

レズ「……。」

その時、屋上の扉が勢いよく開け放たれた。

息を切らしながらホモ達に近づく先輩。

先輩「やはりここにいたか、ホモくん……」

ホモ「先輩……。」

先輩「何故いつものように俺の元に来ない?何故俺のメールに返信しない?」

ホモ「……。」

先輩「答えてくれないか。」

ホモ「別に、もう貴方に会いに行く理由がなくなっただけの話ですが。」

先輩「どういう意味だ。」

ホモ「そのままの意味ですよ。」

ホモ「僕は有名財閥の息子なため、世間体が非常に大事なんです。」

ホモ「それは学校生活の中でも同じこと。」

ホモ「そこで、貴方のように教師受けがよく
   生徒からも人気のある先輩と交流していれば、当然僕の印象も良くなります。」

ホモ「ここまでは分かりますね?」

先輩「それはつまり…自分のために俺を利用していた、ということか……?」

ホモ「さすが先輩、物分かりが良いですね。その通りです。」

ホモ「しかし、誤算でした。」

ホモ「親しくなりすぎたために、
   部活練習の手伝いをさせられたり、遊びに付き合わされたりと
   面倒なことをさせられるハメになった。」

ホモ「メリットがあるから付き合っていたのにデメリットの方が大きくなってしまった。」

ホモ「おかげで本末転倒もいいところです。」

ホモ「そして、これ以上付き合う必要性がなくなったので関係を断った、ただそれだけです。」

先輩「本気で言っているのか……?」

ホモ「本気じゃなければ、こんなことは言えません。」

先輩「違うだろ、君はそんなことをする男ではない!」

先輩「誰かにそう言えって言われたのか!?そうだろ?」

ホモ「違います。残念ながら、僕は貴方の思っているような人間ではなく
   他人を踏み台程度にしか思ってないエゴイストなんです。」

先輩「……。」

ホモ「もういいですか?これ以上、彼女との時間を邪魔しないでほしいんですが。」

先輩「そうか……俺は、君を本当の友人だと思っていたんだが、残念だ。」

先輩「たとえ君にとって俺が道具に過ぎなかったとしても」

先輩「俺を他の生徒や教師のように特別扱いしなかったのは君だけだったから、
    それは本当に嬉しかった。ありがとう。」

ホモ「……。」

先輩「もう会いに来ることもないと思うから安心してほしい。それじゃあ……。」

そう言ってその場を離れる先輩。

【放課後】

レズに先日の夜にあったことを告げるホモ。

レズ「…なるほどね。」

レズ「正直、横から見てて何事かと思ったけれど、事情は察したわ。」

レズ「それと、いい身分だなんて言ったこと、謝るわ。アンタもなかなか大変なのね。」

ホモ「……お互い、気苦労が多いですね。」

レズ「でも、絶交するにしたって、何もあんな嘘つかなくたったいいじゃない。」

レズ「もっと言いようがあったでしょう?」

ホモ「いえ、これでいいんです。」

ホモ「先輩が僕に対して『二度と会いたくない』と思うくらいでないと、
   きっとまた、中途半端に関係を続けてしまうだけです。」

ホモ「だから、先輩を危険な目に遭わせないためには、これが一番良い方法だったんです。」

レズ「……。」

レズ「ねぇ、私たち、いっそ本当の恋人同士にならない?相手への未練を断ち切って。」

レズ「私は後輩の恋を応援するし、アンタは先輩のことを綺麗サッパリ忘れる。」

レズ「相手への思いを“なかったこと”にしてしまえば、全てが丸く収まるでしょう?」

ホモ「……周囲の人間のために、抱いた願いや望みを全て諦め
   自分の気持ちに嘘をついて生きろ、と言っているんですか?」

ホモ「確かに、そうすれば皆が幸せになれるかもしれませんね……。」

レズ「そんな悲しそうな顔で言われても、誰1人として幸せになれる気がしないわね。」

ホモ「……レズさんは、こんなことを考えてみたことはありますか?」

ホモ「『どうして好きな人が同性なんだろう』、と。」

レズ「……。」

レズ「……。」

ホモ「僕は時々思いますよ。」

ホモ「好きな相手が同性でさえなければ、全ては上手くいったんじゃないかって。」

ホモ「それにきっと」

レズ「もうやめなさい。」

レズ「ありもしない妄想を持ち出した所で、何にもならないわ。」

ホモ「……それもそうですね。」

ホモ「では、明日からは『相手のことは諦め本来のカップルになる』という方向でいきましょうか。」

レズ(切り替え早!)

レズ「まぁ、少しずつ、やっていけばいいわよね……少しずつ。」

ホモ「そうですね……少しずつ。」

【数ヶ月後】

後輩「さすがにそろそろ借りたハンカチを返したいのに……。」

後輩「先輩に会える機会が、ない……っ!」

後輩「でも今日は文化祭なんだから、きっと会えるよね!ね!」

レズ「そうね。でも当然、ハンカチを返すついでに告白もするのよね?後輩」

後輩「ふぇぇ!?ななっなななな何言ってるのレズちゃん!」

レズ「あら、なかなか会えないんだから、それくらいはしてもいいと思うわ。」

レズ「それに、先輩は後輩を助けてくれたんでしょ?」

レズ「意外と脈ありかもしれないわよ~。」

後輩「もう、からかわないでよ!」

後輩「レズちゃんとホモさんみたいに上手くいくとは限らないんだからぁ!」

レズ「フフフ…あっ、ねぇ、あれが先輩じゃないの?」

後輩「あっほんとだ!追いかけよ!」

ホモの教室の前にいる先輩。

後輩「先輩っ!待ってください!」

先輩「おや、後輩ちゃんじゃないか。久しぶりだね。」

後輩「あの、ずっと返そうと思いつつ、なかなか渡せなかったハンカチです!」

後輩「ちゃんと洗濯してきたので大丈夫です!」

レズ(何が大丈夫なのよ)

先輩「返さなくても良かったんだが…わざわざありがとう。」

後輩「えへへ///」

レズ「じゃあ、私はホモに会いに教室内にいるわね。後輩、しっかりやるのよ!」

後輩「う、うん……!」

後輩「あ、あの先輩!聞いてほしいことがあるんです!」

先輩「なんだい?」

後輩「実は私、ずっと、ずっとずっと前…一万年と二千年前から…じゃなくて…」

後輩「先輩に助けて貰ったあの日から、先輩のことが好きなんです!」

後輩「付き合ってください!!」

先輩「……気持ちはとても嬉しい。だが、すまない。君と付き合うことはできないんだ。」

後輩「そんな…どうしてですか!」

先輩「君が嫌いなわけじゃない。ただ、他に好きな人がいるんだ。」

後輩「なっ…誰ですか!?」

後輩「せめて先輩の好きな人が誰なのか教えてくれないと、先輩のこと、諦めきれません!」

通行人と教室内の人間から注目を浴びている2人。

先輩「…言うことはできない。というよりは、言っても無意味なんだ。」

先輩「俺はどうやっても、その人と結ばれることはできないからな……!」

後輩「それでもいいです!」

後輩「誰か教えてくれたら、先輩のこと完全に諦めますから!」

後輩「お願いします、教えてください!先輩の好きな人は誰なんですか!」

先輩「俺が好きなのは――俺がずっと好きなのはホモくんなんだ!」

先輩「彼は彼女もいる、ごく普通の高校生だ。」

先輩「だが、仕方ないだろう!」

先輩「好きになってしまったものはもう取り返しがつかないんだ…!」

後輩「えっ…ホモさん?」

後輩「え…だって…え……?男同士、ですよね?」

後輩「しかもレズちゃんの彼氏さんで…えっと…」

後輩「どういうことなの……」

先輩「そのままの意味だ。」

先輩「俺は『たまたま好きになった人が男だった』というだけの話で、何もやましいことはない。」

後輩「そんな…先輩がそんな人だったなんて……。」

レズ「ああ、先輩が女子からモテモテだったにも関わらず
   ずっと頑なに告白を断り続けて独り身だったのってそういう……。」

ホモ「先輩、あの、それは本当なんですか?」

先輩「ああ。」

先輩「たとえ君にとって、俺がもう利用価値のない迷惑な先輩でしかなかったとしても。」

先輩「もう会う意味がなくなったと言われても。」

先輩「それでも俺は、君のことが好きなんだ。初めて会った時からずっとだ。」

先輩「何度も諦めようとしたが、無理だった。会えない間も毎日辛かった。」

先輩「気持ち悪いだろ?受け入れなくていい。」

先輩「だが、どうしてもこの気持ちは伝えたかったんだ。」

ホモ「先輩……。」

レズ「あーもういいわ。茶番はやめにしましょう、ホモ。」

レズ「実は私たち、仮面カップルだったの。」

レズ「互いのことが好きでも何でもないけれど、
   利害が一致したから恋人ってことにしてただけのね。」

レズ「そうよね?ホモ。」

ホモ「はい……。」

後輩「ふええええ!?それってつまり…どういうことなんです?」

後輩「もう色々ありすぎて頭の中ぐちゃぐちゃだよぉ…。」

先輩「好意のない者同士でカップルのフリをしていた、ということか。」

先輩「いったいどんな利害が一致したらそうなるなんだ?」

レズ「私たちには他に好きな人がいたのよ。でも、その相手は同性だった。」

ホモ「だから、僕たちは互いの家系の事情などのあらゆる点を考慮したうえで、
   仮面カップルとして過ごそう、という話になったんです。」

後輩「えっと、ちなみにその好きな同性っていうのは……。」

レズ「ああ、もう面倒だから全部バラすわね。」

レズ「このホモ野郎がずっと好きなのはそこにいる先輩よ。」

先輩「な゛!?」

先輩「ちょっと待て!」

先輩「じゃあ、あの利用する意味がなくなったから別れるとかなんだとか言う話は」

ホモ「もちろん、すべて根も葉もない嘘です。」

ホモ「これも、家系の事情からやむを得ずしたことです。」

先輩(どんな家系の事情なんだ……)

ホモ「騙していたのと、酷いことを言ってしまったのは、本当にすみません。先輩。」

先輩「いや、嘘だったならいいんだ。そうか…なんだ、よかった……。」

ホモ「これからは家系、いえ、全世界を敵に回しててでも先輩を護るので、許してくれますか?」

先輩「あ、あぁ。(何やら話が盛大になっているが、冗談だよな?)」

レズ「まったく、実は両想いだったなんて羨ましい限りね。」

レズ「そして、私が好きなのは……他でもない後輩。あなたよ。」

後輩「へ!?わ、なんだか驚いてるのに、
   レズちゃんの好きな女の子が私以外じゃなくて安心してる自分がいる。」

後輩「えっと、確かに私はレズちゃんが好きで、大事で、誰にも渡したくなくて……。」

後輩「でも、これが恋愛感情なのかどうかは分からなくて……。」

レズ「無理しなくていいわよ、後輩。」

レズ「私は今まで通りあなたの友達としてそばにいられれば、それだけで充分なの。」

後輩「ん、でもね…時々思うことはあったんだ。」

後輩「わたしはレズちゃんがいない寂しさを『先輩さんが好きだ』って思い込むことで
   誤魔化そうとしてる部分もあったんじゃないかなって……。」

レズ「私の気持ちに応えてくれるの?後輩。」

後輩「それがね、自分でも自分の気持ちがよく分からないの……。」

後輩「でも、これからその答えを見つけていけばいいんじゃないかなって。」

レズ「……そうね。それが今の私に対するベストな返しよ。」

レズ「私を拒絶しないでくれてありがとう、後輩。」

レズ「でもいいの?ホモ。」

レズ「これだけ公衆の面前で関係暴露しちゃって、
   アンタの父親に知れたら、とんでもないことになるんじゃないの?
   私たち全員消されるんじゃないの?」

ホモ「うーん、そうですね。では、とりあえず駆け落ちでもしましょうか、先輩。」

先輩「だから、いったい何事なんだ!」

レズ「っていうか、私の顔も知られてるんでしょ?こっちにまで飛び火しないようにしてよね。」

レズ「後輩に何かあったら許さないからね、元カレさん。」

後輩「ふぇぇ……なんだかとんでもないことに……。」

ホモ「まぁ、何とかなるような気はします。」

レズ「奇遇ね、私も同じ予感がしてるわ。だって、本当に好きな人と一緒なんだもの。」

レズ「きっとどんな壁だって乗り越えられるわよね。」

―おわり―

50ページ分読んでくれた方々はありがとうございました。

ページ…?

>>106
このSSを投稿した書き込みは全部で50回だったのだよ

ホモ×レズとは限りませんが、
同性愛者が性的嗜好を隠したり世間体を気にしたりした結果
カモフラージュで異性と結婚するのは意外と珍しくないと聞きます

そういった人たちも己の愛を貫けるような偏見と差別のない社会になればいいなぁ
と思いながら書きました

なんの冗談だよこれは
なんでゲイじゃなくてホモ表記が多数派なんだ


>>25
先輩のセリフがホモになってる気が。
立ち去るのは先輩だよね?

>>120
正確に書くならゲイの方が適切なんだろうけど、
ネットではホモの方がなじみのある言い方だったからこっちを採用したねえ
これも一種のネット用語みたいなものということでいいのでは

>>121
失礼しました

×ホモ「さっきまだ茶道部にいたのを見かけたよ。それじゃあ」ダッ
  ↓
○先輩「さっきまだ茶道部にいたのを見かけたよ。それじゃあ」ダッ

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