モバP「クライシスイーツ」 (17)

法子「あたしにとって……ううん。あたし達にとっては、忘れられない日がある」



法子「……それは、プロデューサーからスイーツ禁止令が出された日」

法子「事務所で、スイーツ狩りが始まった日」

法子「でも、一番忘れられないのは……あたしのドーナツが、取り上げられた日」



法子「そう、あれは確か……6月の終わり頃——」

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〜女子寮〜

法子「………」キョロキョロ

法子「……よし、誰もいない」


コンコン


『……めでたいものは、なんですぞ?』

法子「………」

『めでたいものは、なんですぞ?』

法子「『それはおめぇの頭の中だ』」


ガチャッ

かな子「ようこそ、“ミス・ドーナツ”」

杏「ふわぁ〜……これで最後?」

法子「遅くなっちゃってごめんなさい。“KNK”、“ドロップス”」

かな子「“パルフェ”さん、『スイーツクラブ』のメンバーは全員集まったみたいです」

志保「……そうみたいね」

法子「あれ?……ちょ、ちょっと待って!」

志保「どうしました?」

法子「“女子力”さんが見当たらないんですけど……どこに?」

かな子「………」

志保「残念だけど……“女子力”さんは今朝、プロデューサーさんに“摘発”されました」

法子「!」

杏「助手席にいたきらりに、ルームミラーでばっちし☆うきゃー☆」

杏「迂闊だよね〜。後部座席でこっそり頬張るとか、そらバレるっての……あむっ」パクッ

かな子「で、でも“女子力”さんは、スイーツの隠し場所を話すような真似、しないと思うんです。きっと」

法子「確かに軽いところはあったけど……このクラブを一番気に入ってた人だしね」

杏「ポロッと口を滑らせないことを祈るばかりだよ、まったく」モゴモゴ

志保「それで、予定を変更して一時的に私の部屋に集まってもらったんだけど……」

法子「……会合場所の変更、ですね?」

志保「えぇ」

かな子「今回は、どこに?」

志保「“女子力”さんと懇意にしていた紅茶会の会長が、特別に場所を提供してくれたの。そこで……」

法子「紅茶会……」

杏「うわぁ……これは絶対めんどくさい事になるね。絶対にだ」

志保「“女子力”さんの件について色々聞かれると思うけど、そこは我慢してね」

かな子「わ、分かりました!」

〜会合場所〜


ブロロン ブロロン


杏「……流石にリムジンで送迎されるとは思わなかった。その発想はなかった」

かな子「わ、私も、あんな車初めて乗りました……」

志保「紅茶会の会長なら、造作も無いことみたいね」

法子「それにしても大きな倉庫ですね……」



周子「あ、スイーツクラブだ」

かな子「周子さん!?何故ここに……」

「あまいもの、な〜んだ?」は直球過ぎたのか

周子「どーもどーも。実はさ、シューコ達も紅茶会に呼ばれてるんだよねー」

杏「ふーん……和菓子連合が、ねぇ」

周子「結構需要あるんだよ、ウチも……あ、聞いたよー?美紗希さんの件」

法子「ぐっ……」

周子「あんまりプロデューサーとちひろさん、怒らせないでよね?」

周子「とばっちりで監視強化されたらたまんないし……」

菜帆「周子ちゃ〜ん?」

志保「……!」

法子「な、菜帆さん……!?」

菜帆「わざわざ文句を言いに、ここまで来たわけじゃないでしょ〜?」

周子「それは、そうだけど……」

菜帆「皆〜、元気してる?そうそう、この間良いお店見つけたんだけどね〜」

志保「……ちょっと、海老原さん。勧誘はやめてくれません?」

菜帆「あら、ご挨拶ね〜。ちょっと誘っただけじゃない」

志保「………」ギリッ



「両者、そこまでですわ!」

雪乃「まさか、この場で縄張り争いを始めるおつもり?何て身勝手な……」

桃華「これでは何のための連絡会なのか、分かりませんわね」ヤレヤレ

琴歌「ええと……皆様、仲良くいたしましょう?」ニコッ



杏「(ようやくお出ましか〜)」

かな子「(そうそうたる面々ですね……)」

志保「(スイーツの知識を提供する代わりに、こちらには物資を……)」

周子「(相互利益を保障する、あたし達最大のスイーツ供給元……紅茶会)」

菜帆「(いつもながら、お嬢様ばかりね〜)」

雪乃「それでは、本日の議題を。スイーツクラブさん、お願いしますわ」

志保「“ミス・ドーナツ”、例のアレを」

法子「はい」ゴソゴソ

志保「……最近事務所内で、秘密裏にこのようなものが配られているようです」



周子「?何この……お菓子?」

菜帆「一口サイズで、黄色い……見たことないお菓子ね〜。何かしら?」

桃華「お答えしますわ。それはポン・デ・ケイジョ……ブラジル語で」

杏「ポルトガル語ね」



桃華「………」

雪乃「………」

琴歌「?」ニコニコ

かな子「……え、えっと、あの」

桃華「ポルトガル語で!チーズパンと言う意味の!パンですわっ!!」

周子「パン?」

志保「外はパリッと堅く、中はふんわり柔らかい……と、藍子ちゃんも絶賛していました」

菜帆「……もしかしてこれ、みちるちゃんが?」

法子「ナターリアからレシピを聞き出して、自分で作ったみたいです」

周子「あぁ、あの子リオ出身だから……そっかぁ、ふーん」

志保「これは紛れも無く、お菓子です。パンと言う名のスイーツに他なりません」

志保「私達を差し置き、彼女は無許可で、スイーツを配っているのです……!」

菜帆「……それは由々しき問題ね〜」

かな子「このパンは確かに美味しくて、やみつきになりそうなんですけど……」

かな子「みちるちゃんはつい最近入ってきたばかりで、ウチのルールを知らないんです」

志保「排除か、懐柔か。プロデューサーさん達に気付かれる前に、早急に対処すべきかと」

雪乃「……そういう事でしたら、ご心配なく。既に対処は為されていますわ」

杏「へぇ〜……一体、どんな対処を?」





琴歌「“私達”にとって、最善の手を打たせて頂きました」ニコッ

ちひろ『……えー、マイクテス、マイクテス』キィーン

法子「!」

ちひろ『ゴホン……スイーツの不正摂取で輪郭が丸くなった、スイーツ系アイドルさん達に告ぎまーす』

かな子「えっ!?」

周子「なっ……!」

ちひろ『この倉庫は包囲されています。大人しく出てきなさーい』



菜帆「……これは、どういう事かしら〜?」

雪乃「紅茶にはスコーン、スコーンには紅茶。そういう事ですわ」

桃華「ふふっ……みちるさんからいただいたスコーン、絶品ですのよ?」

法子「まさかあの子、既に紅茶会に手を回して……!?」

志保「っ……琴歌さん!一体どうしてこんな、血迷った真似……」


スカッ


志保「!?」

杏「……あー、ホログラムね。流石セレブ」

琴歌「渡りに船、と申しましょうか」ザザッ

琴歌「私も糖分の取り過ぎは、身体に良くないと思っていたところですので……」

琴歌「それでは皆様、ごきげんよう」ニコッ


ブツン

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