アスカ「あれから3年か」 シンジ「そうだね・・・」 (69)

SSよりFFっぽい感じになっていますが、よろしければお付き合い下さい

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1362170979


シンジ「・・・ん」ムクリ


シンジ「なんだ、まだ7時半か・・・」



今日は日曜日だから遅くまで寝ようと思っていたが、染みついてしまった体内時計が反応したらしい



シンジ(さ、もう一度寝よっと。・・・・二度寝って最高だよね)



そんな至福のひと時は一瞬にして壊された





バンッ



シンジの部屋のドアが勢いよく開かれる




アスカ「シンジ!お腹空いた!!ごはん!」




シンジ「・・・」



僕は目を瞑り狸寝入りをした


シンジ「・・・」


アスカ「シンジー!!起きろー!」



沈黙を貫く



アスカ「ほぉー、このあたしを無視するとはいい度胸ねぇ〜」



一瞬にして恐怖に襲われる




シンジ(絶対に起きてやるもんか)


アスカ「どぉりゃぁああああああ」




アスカの手刀が腹部に直撃するが、身に纏う毛布によりダメージは限りなくセロになった



シンジ(よし、これなら大丈夫だな。こうなったら意地だ)


アスカ「むむぅ」





防御態勢を取っていると、予想外の攻撃を受けた



シンジ(い・・・・息が・・・)




アスカ「さぁ、無敵のシンジ様は何秒耐えられるでしょうか?」


アスカ「アインス、ツヴァイ、ドライ・・」



口と鼻と摘ままれて呼吸が全くできない





アスカ「ツェーン、エルフ・・・」



ふとあの日を思い出し、若干虚ろだった意識が一瞬にして覚醒した

僕は布団から飛び上がった


アスカ「きゃっ、いきなり飛び起きるんじゃないわよ!」


後頭部に攻撃を受ける



アスカ「ふんっ、たったの11秒だなんてなっさけないわね〜」


シンジ「はぁっ、はぁっ」



空気ってやっぱり素晴らしいと改めて感じた



シンジ「はぁ・・・・死ぬかと思った」


アスカ「たかが11秒で死ぬもんですか!ごはん!!」


シンジ「はいはい、わかったよまったく・・・」



こうなっては長引かせるだけ無駄である。大人しくアスカの分だけ作ってもう一度寝ることにした



シンジ「アスカ〜、何食べたい?」


アスカ「いつもの〜」



食パンにハチミツを塗ってトースターに入れセットをし、その間にハムエッグを作る

焼き加減に細心の注意を払う。なぜならパンを焼き過ぎたり、黄身が半熟でないと苦情が来るからである


最後にデザートのヨーグルトにイチゴジャムのトッピングをして、テーブルに並べた



シンジ「ほら、できたよ」


アスカ「ん。いただきます」



いただきますを言うのが習慣になっているのを見て、少しうれしく思う



アスカ「はへ、はんはほふんは?」



口にパンを頬張っている

おそらく僕の分は?と聞いているのだろう



シンジ「もう少し寝たいから後で食べるよ」


アスカ「はっほ」



アスカが食べ終わった食器をシンクに持っていくことなど期待しない

部屋に戻り再び目を閉じた



シンジ「・・・」


眠れない

やはりあの日のことを思い出してしまう

良い意味でも、悪い意味でも思い出であった



シンジ「せっかくの日曜日なのに・・・・」


1時間経っても眠れないので諦めた



リビングに行くと、アスカはソファに横になりテレビを見ていた

予想通り皿は放置されている


シンジ「ふぅー」


こうだろうと思っていたが、ため息が漏れた


たまには凝った朝食でも作ろうと思い

タマゴサンド、チキンサンド、野菜サンドなどのサンドイッチを作った



僕もテレビを見ながら食べていると、アスカが隣に座った

するとどうだろう、サンドイッチが次々に消滅したのである


シンジ「ちょっと僕の・・・・」


アスカ「うん、まあまあね。明日もこれ作って」


そういい残しソファに戻った




追加で作る気力もなく、仕方なく洗い物をした



せっかくの日曜日なので外出することにした


シンジ「アスカー、ちょっと出かけてくるから留守番よろしく」


ソファに横になるアスカに一言声をかけて、出ようとすると


アスカ「待ちなさいよ。どこ行くの?」


シンジ「駅前のデパートの本屋だけど・・・」


アスカ「あたしも行く」


足を振り上げ一気に立ち上がり、部屋へ駆けていった


アスカ「そこで待っていなさいよ!!」


アスカの部屋から声が聞こえた




今日は20分位かな?などと予想してみる

なんで女の人ってあんなに時間が掛かるんだろう・・?

最長は先月の45分だ



ガチャ


アスカの部屋のドアが開く

結果は15分だった


今日は早かったねと言いそうになり、慌てて口を塞いだ


アスカ「ほら!さっさと行くわよ」


シンジ「うん」




僕たちはデパートに向かった



本屋に着くとアスカはファッション雑誌コーナーへ向い

僕は料理コーナーに行って適当に取って立ち読みをしていた



1時間位経った頃だろう、アスカが雑誌を持ってこちらに向かって来た


アスカ「シンジ、会計よろしく♪」


シンジ「へっ?」


アスカ「はいどうぞ」


シンジ「どうぞじゃなくて・・・自分で買いなよ」


アスカ「お財布忘れちゃった♪後で返すからさ〜」


シンジ「嘘だ」


アスカ「返すわよ!」


シンジ「いいや、返ってこないね」


アスカ「うるっさいわね〜あんた男でしょ!どーんと大きい懐で受け止めなさいよ!!」


シンジ「言ってることがめちゃくちゃだよ」


アスカ「つべこべ言わない!!」


シンジ「・・・・後で返してよね・・・」


アスカ「もちろん」




シンジ(はぁ、なんで言い返せないんだろう)


情けなく思いつつ雑誌代分、僕は料理のレシピ本をよく見た



アスカ「ただいま〜」


シンジ「ただいま」


おかしい、ミサトさんが帰っていない

電話に留守電が入っていた


『今ね〜加持君と飲んでるのぉ〜晩御飯いらないからよろしくぅ〜』


こんな時間からですかと思い時計を見ると、もう夕方の5時半だった





早速今日読んだ『本格ミートソーススパゲッティ』を作った



シンジ「いただきます」


アスカ「いただきます」


シンジ「今日のミートソースどう?」


アスカ「いつもよりお・・・・ましね」


シンジ「そっか、よかった」


アスカ「あんたバカぁ?普通おいしいって言われて、初めてうれしいって言うもんでしょ?」


シンジ「そうかな?」


アスカ「まっ、あたしにおいしいって言わせるように、精進することね」


シンジ「がんばるよ」


アスカ(十分おいしいわよ、バカ)







アスカ「ごちそうさまでした」


シンジ「お粗末さまでした」



洗い物を済ませて、テレビを見てくつろぐ


あっ思い出した



シンジ「アスカ〜、さっきの雑誌代返してよ」


アスカ「今月厳しいから来月ね」


アスカ(ちっ、覚えていたか)


シンジ「僕もそんなに余裕ないんだから・・・」


アスカ「だいたい、ミサトが小遣い制にするのが悪いのよ!!」


シンジ「それは、ミサトさんが僕たちのためを思ってしてくれている訳で・・・」


アスカ「にしても少なすぎなのよ!エヴァパイロット時代どんだけ稼いだと思ってんの?」


シンジ「まぁとりあえずそれは置いといて、お金持ってるんだろ?返してよ」


アスカ(くっ・・・そうだ)ニヤッ


悪巧みをした笑みに背筋が凍る


アスカ「だれだっけー?あたしをおかずにしてた人ってー?」


顔から血の気が失せていくのがわかる


アスカ「眠るあたしの横で、『アスカぁ、アスカぁ』って・・・・」


シンジ「・・・・・・・・・・!!!」


口がパクパクして声が出ない


アスカ「最低だ俺って・・・・・」


シンジ「わ・・・わかったよ。もういいよ」


なんとか声が出た。少し半泣きになってしまう


アスカ「フフッ、それでよし」


シンジ「その・・・・ごめん」


アスカ「まっ、これからも忘れずに励むことね〜」


シンジ「怒ってる?」


アスカ「そりゃもう、毎日怒りでメラメラしてるわよー。赦してほしけりゃあたしに一生かけて尽くしなさい!!」


シンジ「ごめん・・・・」


アスカ「はい、この話はおしまい!赦してほしいならシャキっとする!!」


シンジ「は、はい!」


アスカ「ただちにお風呂の準備をせよ!!」


シンジ「仰せのままに!!」


風呂場に向かってダッシュする


アスカ(冗談にしては重すぎたかしら・・・?まっ事実だし、いい材料になりそうね♪)



風呂掃除をしながら、今日という日を振り返った


シンジ(朝はアスカに睡眠妨害されて・・・窒息させかけられて・・・朝食は奪われて・・・本を奢らされて・・・・)


など考えている時に、3年前の光景が鮮明に蘇り、膨張してしまう


シンジ(静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ静まれ)


と念じているときだった



アスカ「シンジ、お風呂まだ?」


心臓が暴れる


アスカ「早くし・・・・」


アスカの目線が僕の下半身に行くのが分かった



アスカ「きゃーーーーーー!!!!このエッチ!!!バカ変態信じらんない!!!!」



高速ビンタがさく裂する





シンジ(ははっ、最悪の一日だ・・・)



意識を失っていきながら思った




第1話完ってことで、こんな感じで特にギャグもなく書いていきます

まだまだ続いていくのでよろしくお願いします

このスレ思いっきりLASなんでよろしくお願いします

第2話 過去






ドサドサ


アスカ「はぁ・・・またこんなに。ほんと懲りない連中ね・・・」


いつものようにごみ箱へ放り込む


シンジ「一生懸命書いた人がかわいそうだよ・・・・」


アスカ「あんたバカぁ?こんな量をいちいち返事書いてたらきりがないわよ!!」


あたしと同居人は第3新東京市立第一高校へ通っている

毎日毎日下駄箱に大量の手紙が入っていてうんざりしている


シンジ「あれ?何か入ってる」


上履きの上に白い物が見える


アスカ「むっ」


シンジ「まいったな・・・どうしよう?」


バカシンジの手には『碇先輩へ』と書かれた手紙がある


アスカ「ふんっ、ご丁寧にお返事でも書いたらどうですか無敵のシンジ様?」


同居人を置いて先に2-Aの教室へ向かう



シンジ「ま、まってよ、アスカ!」


何やら引き留めているが無視してやった


アスカ(前はこんなことなかったのに・・・)


中学の時からシンジはもててはいたが、その性格の暗さもあってそこまでではなかった

しかしその性格が改善された今では、それなりに女子に人気があるようだ


何で自分がこんなにもイライラするのか、あえて自己分析しなかった




アスカ「おはよ、ヒカリ!」


ヒカリ「おはよう、アスカ」


何かの縁なのだろうか?ヒカリや3バカの2人とはあれからずっと同じクラスになっている


シンジ「はぁっ、はぁっ、置いてくなんてひどいよアスカ・・」


アスカ「置いていかれたくなかったら、もう少し足腰を鍛えることね」


トウジ「センセ、おはようさん」


ケンスケ「おはよう、碇」


シンジ「おはよう」


トウジ「なんやセンセ?また朝から夫婦喧嘩かいな?」


シンジ「わからないんだよ・・・下駄箱の所で急に先に行っちゃってさ」


あたしもバカシンジも、夫婦喧嘩と言われてもいちいち反論しなくなっていた


ケンスケ「ふぅ〜ん・・・・・そうだ、碇これやるよ」


シンジ「なに?これ?」


ケンスケ「『箱根の湯』っていうスーパー銭湯の入浴券なんだけど、スーパーの福引でもらったんだ。」


ケンスケ「俺、温泉とかそういうの興味ないからさ。喜ぶ人に使ってもらった方がこの券も幸せだろ?」


シンジ「へぇ〜ありがとう、ケンスケ!」





キーンコーンカーンコーン

チャイムがなったので席についた





先生「では出席を取る。え〜綾波・・・綾波!!・・・・・なんだ今日も休みか」


サードインパクトのトリガーになったものの帰ってきたファースト

復興したNERVで働いている


どんな仕事をしているのか知らないが、忙しいのだろう

ちょくちょく学校を休んでいる




キーンコーンカーンコーン


トウジ「さぁ〜メシやメシ!」


このジャージバカは食べること位しか考えられないらしい


アスカ「バカシンジ!」


シンジ「はいはい」


いつものように、ピンクのチェック模様の布で包まれた弁当箱を受け取る


アスカ「ん。ヒカリー、一緒に食べよう!」


ヒカリ「いいよ!」


トウジ「よっしゃ、ワシらも食べよか」


シンジ「あっ・・・ごめん。ちょっと2人先に食べてて!」


ケンスケ「どうかしたのか?」


シンジ「う・・・うん。すぐ戻るから!!」




怪しい。何かある。まさか今朝の!!気が気でなかった


ヒカリ「・・・・どうしたのアスカ?手が止まってるけど?」


アスカ「ごめんヒカリ!先食べてて!」


ヒカリ「えっ?アスカ!?」


バカシンジを追いかけた








気づかれないように追跡する


体育館倉庫の裏まできた・・・・・・・・・・・・・居た


物陰からこっそりと見てみた


アスカ(へぇ〜なかなかかわいいじゃない)


素直にそう思った。そこには小柄で可愛らしい女の子がいた。


あの手紙からして後輩であろう


『あの・・・その・・・』


おどおどと顔を真っ赤にしている


『ひっ・・一目見たときから好きでした。付き合って下さい!』


胸のなかにモヤモヤやグサグサとも何とも形容しづらい物が広がった



『・・・その。ごめん。それはできない』


その言葉を聞いて安堵した。それと同時に安堵してしまった自分がわからなくなった


『どうしてでもですか?』


『・・・・・・・・・・』


アスカ(なかなかしつこいわね。はっきり言ってやりなさいよ!!)


今度はイライラして、思わず叫びそうになってしまう


『・・・・・・惣流先輩ですか?』


『・・・・・・・・・・』


アスカ(なんで黙るのよ!!)


嬉しいのやら恥ずかしいのやら、何ともいえない気持ちになった


『・・・・・・いつも、叩かれたり、蹴られたり、罵られたりしているのにどうしてですか!?』


その言葉は涙ぐんでいた


『・・・・・あれがアスカの全てじゃないんだ。本当は優しい人なんだよ』


『・・・・・・・・・・』


こいつはいつもこれだ。人の心に土足でズカズカ入ってくる


『・・・・失礼します!!』


走って去って行った


『・・・・・・・・・はぁぁ』


シンジは大きなため息を付くと校舎に戻っていった


お人好しのシンジにとって、誰かを傷つけてしまうことが辛いのだろう


アスカ「・・・・・・・・・」


頭の中は真っ白になってしまい、ただボーっと青い空を見つめていた







シンジ「ねえ、どうしちゃったのさ?ボーっとしちゃって」


うろうろする目線。顔の筋肉がゆるんでいるのが自分でも分かる


アスカ「なんでもないわよ・・・・」


自分の気持ちに整理がつかない。でも嫌な気分ではない


シンジ「そうだ!!今夜さ、スーパー銭湯に行かない?さっきケンスケにもらったんだ!」


アスカ「なに?スーパー銭湯って?」


シンジ「んーとね、温泉とかジェットバスとか色んな種類のお風呂がある大浴場で、食事とかできるスペースがある所なんだよ」


アスカ「へぇ〜おもしろそうね。いいわ、行きましょ。今日の夕食はそこで食べるわよ」


今日のことはもう忘れることにした





アスカ「何を持って行けばいいの?」


シンジ「え〜と、持っていくものは、お金に着替え、タオルくらいかな?」


シンジ「あ、あとシャンプーとかボディーソープは一応備え付けがあるけど、そんなにいいもんじゃないから、持って行った方がいいと思うよ」


アスカ「そうなの?なら持って行くわ」


シンジ「じゃあ行こうか」



『箱根の湯』に向かった




シンジ「温泉って最高だよね。リリンの生み出した文化の極みだよ」


道中こんなことをシンジは口にした


アスカ「なに、その変な言い方」


シンジ「うん・・・昔大切な友達が言ってたんだ」


目を細めながら、遠くを見つめていた


シンジ「・・・・それよりさ、温泉っていったら思い出さない?」


アスカ「浅間山か・・・・・」


あの時助けがなかったらあたしは死んでいた


こいつを見直したのもあの時だっけ


あたしも遠くを見つめた






店員「大人二名様ですね」


シンジ「はい。この券で」


店員「かしこまりました。ではこちらのカギをお持ち下さい」


店員「どうぞごゆっくり」




アスカ「なんのカギよ?」


シンジ「着替えとか貴重品を入れて置くロッカーのカギだよ。お風呂に入る時は手首に着けておいてね」


アスカ「ふーん。わかった」


シンジ「それじゃ、後でね。僕の方が先に上がってるだろうから、さっきの大広間で待ってるよ」


アスカ「りょーかい」


女湯と書かれた暖簾をくくろうとした時に、あるものが目に入った


アスカ(日替わり湯?)


『本日の日替わり湯 男湯ラズベリーの湯 女湯ハーブの湯』


まさかこれが後々大変なことになるとは思わなかった






シンジ(温泉なんて久しぶりだなぁ。ケンスケに感謝しなきゃ)


シンジは素早く衣服を脱ぎ風呂場へ向かった


第九を自然と鼻歌していた



シンジ(かけ湯を浴びて、まずは・・・・)


頭と体とすみずみまで洗う


シンジ(よし!温泉おんせ・・・・・)


シンジの目にあるものが飛び込んだ








ラズベリーの湯と書かれた、真っ赤な湯








普通の人から見ればただのラズベリーの湯だろう


しかしこのシンジには全く別物に見えた













赤い海
















自分の罪の象徴



シンジ「あっ・・・・あ・・あっ・・あああぁぁぁ・・・ああ・・あ」


言葉が出ない


体全身が震える。力が入らない


その場に倒れてしまった



「おい!!大丈夫か!?おい!」


誰が叫んでいる



記憶は途切れた






アスカ「はぁ〜〜いい湯だった」


やはり温泉は最高である


アスカ「さて、バカシンジはどこかなっと」


探してみる。どこにもいない


アスカ(何よ、自分の方が長いじゃない)


もうお腹はペコペコである。しかし、先に食べるのもなんなので、待つことにした




30分が経った


シンジはまだ戻ってこない



空腹でイライラがピークに達した


アスカ(このデラックスパフェを奢らせてやる!!)


メニューを見ながら戻るのを待っていた



店員がこちらに小走りできた


店員「あの?碇シンジ様のお連れ様でしょうか?」


興奮気味に店員が尋ねてきた


アスカ「ええ、そうですが・・・それがなにか?」


店員「それが、先ほど浴場で倒れてしまったようで」


アスカ「ええっ」


叫んでしまった。周囲の目線が集まる


しかしそんなことを気にしていられない


アスカ「それで今どうなっているんですか!?」


店員「救急車で第三新東京市第一病院に搬送されました」


アスカ「第一病院ですね?」


お辞儀をし『箱根の湯』を飛び出した


すいません。寝落ちしました

続き投下します



病院の受付に向かう


アスカ「はぁっ、はぁっ、あの!こちらに碇シンジが運ばれたと聞いたんですが!?」


受付嬢「碇シンジ様ですね・・・・」


端末を操作して検索しているらしい


アスカ(早く!早く!早く!)


足踏みしてしまう


受付嬢「A棟303号室です」


A棟に向かって走った


アスカ「303!303!303!」


看護婦さんが何かこちらに何か言っている


そんなのに耳を貸している暇などない


アスカ「シンジ!!」


303号室に入った


シンジが眠っているベッドの横に医者がいた


医師「碇シンジさんのご家族の方ですか?」


ご家族・・・いろいろと考えたがそんなのは後回しだ


アスカ「そうです!!あの!無事なんですか!?」


医師「落ち着いて下さい。ただの疲労のようです。ただ、倒れた時に頭を打ったようなので、検査しましたが異常はありませんでした。しかし場所が

場所なので、念のため今日一日入院してもらいます」


アスカ「そうですか・・・・・」


ひとまず安心した


アスカ「そ・・・その、今日一日付き添ってもいいですか?」


はい、そうですかと言って帰れなかった


医師「ええ、構いませんよ。それでは失礼します。何かあったらナースコールを押して下さい」


アスカ「わかりました」


深くお辞儀をした






しばらくしてミサトも駆け付けた


ミサト「シンちゃん!!」


息を切らして来た


アスカ「ちょっと」


ミサトがシンジが寝ているのを確認する


ミサト「ごめん。ごめん。で、容態は?」


アスカ「ただ頭を倒れた時に打っただけで、異常なし」


ミサト「そう。よかった」


ミサトは大きく息を吐いた


ミサト「アスカはシンちゃんの付き添いするの?」


アスカ「ええ。悪い?」


ミサト「そっ、ならお邪魔虫は退散するとしますかねぇ〜。シンちゃんのことよろしくね」


いつものあどけない口調に戻った


アスカ「わかってるわよ」


からかわれて腹が立つ


ミサト「寝てるからって変ないたずらしちゃ〜ダメよん♪」


アスカ「うっさい!とっとと帰りなさよ!」


ミサト「しー。シンちゃん起きちゃうわよ。明日迎えに来るわ〜」


ミサトは背を向けたまま手を挙げて、病室から出ていった




規則正しく胸が上下している

生きている証

安心する


いつまでもじっと見つめていた


時計の針が今日の終了を示そうとする頃、シンジは目覚めた


シンジ「・・・・・アスカ?」


アスカ「ようやくお目覚めのようね?」


大丈夫?と声をかけることはできなかった


シンジ「ここは?」


アスカ「病院。あんた風呂場で倒れたそうよ」


シンジ「そっか・・・・」


アスカ「何があったのよ?のぼせたってわけじゃないんでしょ?」


シンジ「・・・・・・・」


シンジは黙ってしまったが、無理に聞くのは逆効果なので待ち続けた


シンジ「お湯が・・・・・」


アスカ「お湯が?」


シンジ「・・・・赤かったんだ」


全てを理解した

忘れるはずがない。一時期といえど、二人っきりだった世界の海を






アスカ「そっか・・・・」


シンジの手が震えていた

そっと握ってやる


シンジ「・・・・・・・聞いてくれる?」


アスカ「何を?」


シンジ「僕の大切な友達の話。今なら話せる気がする」


アスカ「いいわよ。あんたとあたしの仲だもの。隠し事はなしよ」


シンジ「・・・・ありがとう」


シンジは体を起こした



アスカ「それって、今日歩いてる時に言ってたリリンが何とかって言った人のこと?」


シンジ「うん。僕たちとは0.11%だけ違ったけどね。大切な友達」



全身が震えているのがわかる

シンジは全てを話した

絶望の中に現れたフィフスチルドレン渚カヲルという少年について









自分に好きだと言ってくれたこと

全てを受け入れてくれたこと

友達だと言ってくれたこと


そしてその0.11%の違いのために殺さなくてはならなかったこと




もちろん自分も復興したNERVのデータで少年の正体は知っていたが、ここまでは知らなかった

どこかでシンジの心に大きく入ったその少年にあたしは嫉妬してしまった


それと同時に、当時心を壊してしまっていたことを悔やんだ




アスカ「そうだったんだ・・・」


シンジ「このこと話したのって、直後のミサトさん位だったかな?」


シンジ「でも、その時のミサトさんは冷たかった。・・・でも仕方ないよね、あの時はみんな余裕なんてなかったから」


アスカ「でもその渚ってやつは言ったんでしょ。あたしたちは死すべき存在ではないって」


アスカ「ならこの人生大切にしなきゃ。シンジが大切だからこそ、自分の命を顧みずに差し出してくれたんだから」


アスカ「そうしないと、そいつも報われないわよ」


シンジ「優しいねアスカは・・・・」


アスカ「と、当然よ!!あたしの心はディラックの海のように広いんだから!!」


シンジ「ふふふ、あはははははは」


突然シンジは笑い出した



アスカ「何よ急に!?」


シンジ「なら、アスカの心の中は真っ黒だね」


アスカ「な・・・なんですってぇ〜」


シンジ「あははははははは・・・・・・・・うっ・・・・うぐっ」


笑いが嗚咽に変わった


そっと頭を抱えこんでやった


シンジ「・・・ぐぅ・・・うっ・・・ううっ・・・」


どれほど泣き続けていただろう


こいつは3年間も胸にため込んでいたのだ


涙で服が濡れても別にいやではなかった




ようやく泣き止んだ

そっと覗き込んでみる


真っ赤な顔をしたシンジ

状況を分析する


把握した


アスカ「ふん!!!」


さすがに頭は叩かなかったが、みぞおちに正拳をお見舞いしてやった


シンジ「げふっ!!」


シンジは夢の世界に強制送還された




翌朝看護婦が303号室に入ると、そこにはシンジの上に突っ伏しているアスカと、もがき苦しみ唸っているシンジがいた







平和な日常を手にしたように見えたシンジだが、その心は完全に修復されていないことを後々知ることになる





第2話 完


第3話 日本の伝統

2年前のある日


アスカの手元をジッと見つめるシンジ


ミサト「あら〜どうしちゃったの?シンちゃん。アスカの手をジーと見ちゃって」


アスカ「な、なによ」


シンジ「ねぇ・・・・アスカはどうして日本に居るの?」


アスカの体が一瞬凍りつく、直後に怒りがこみ上げる

あちゃーと頭を押さえるミサト


バーン  

机をおもいっきり叩く


アスカ「はぁ!?なによそれ!!あたしにドイツに帰って欲しいわけ!!?」


シンジ「ち、違うよ!!・・・・・その、もしこれからも日本に居るなら僕と・・・・」


アスカ「僕と?」


ミサト「僕と?」


ニヤニヤしながら観察するミサト



鼓動が早くなり、その先の言葉に期待するアスカ
















シンジ「お箸の練習しない?」







アスカ「・・・・・・はっ?」


ミサト「・・・・・・へっ?」






アスカ(はぁ・・・・・・一瞬でも期待した自分がバッカみたい)


キッとシンジを睨み付けるアスカ


アスカ「あたしもあんたも普通に箸使えるじゃない」


シンジ「ダメなんだよ。使えるだけじゃ」


幼くして父親に見放されたシンジと海外で暮らしていたアスカ

誰にも教えてもらってない二人の箸使いは見よう見まねである


アスカ「箸なんか使って食べられればいいのよ!!」


ミサト「ダメよ〜そんな考えじゃ。社会に出て上司や余所の人と食事をするときに恥をかくわよ」


シンジ「ミサトさんの言う通りだよ・・・・・・・・はい、これ」


シンジの手には輪っかの付いたピンク色の箸があり、シンジの手元には青色のものがあった


アスカ「何よ?このへんな形したお箸」


シンジ「大人用の矯正箸だよ。この輪っかの部分に指を通して使うんだ」


ミサト「ね〜私の分は?」


シンジ「ミサトさんの分はありませんよ。ミサトさん箸使い綺麗じゃないですか」


ミサト「うふ、そう?」


シンジ「そうだ、さっそく僕たちに教えてもらえませんか?」


ミサト「いいわよん♪じゃ、二人ともお箸を持ってぇ〜」


右手を挙げてカチカチと箸を動かしてみせるミサト


アスカ「ここに指を通してっと・・・・なんかカッコ悪いわね」


シンジ「我慢しなきゃ。まぁ・・・確かに恥ずかしいね。使うのは家の中だけにしよっか」


ミサト「とりあえず、いつも通りに動かしてみてちょうだい」


いつも通りに動かす二人


ミサト「ぜんっぜんダメーーー!!」


ミサト「二人とも上と下のお箸が同時に動いてるわ!動かすのは上のお箸だけ!!いい?こうするのよ!」


実践してみせるミサト


シンジ「なるほど・・・・・・こうですか?」


ミサト「おっ、いい感じいい感じ♪」


アスカ「こ、こう?」


ミサト「番う違う!!こうするのよ!こう!!」


日本人と外国人の違いだろうか、シンジのようにうまくいかない



アスカ「あーイライラする!!やってらんないわ!!」


今にも箸をへし折りそうな勢いだ


ミサト「みっともない奥さんだって笑われちゃうわよ」


アスカ「・・・・・・・・!!!」


アスカの耳もとで囁くミサト 

次第に耳が赤くなっていく


アスカ「仕方ないわね!!こうなったら絶対にマスターしてやるわ!!」







隣でそんな会話がされていることなど露知らず、一人黙々と豆と格闘しているシンジであった

シンジ「て・・・・・手がつりそう・・・」



第3話 完

第4話  ドアのムコウからコンニチハ


「あんた、今度の期末テスト大丈夫なの?」


少女が少年に問いかける


「う〜ん、数学と化学がちょっと・・・・」


少年は頬をポリポリ掻いてバツが悪そうにする


「ったく、しょうがないわね。この後あたしの家に来なさい。教えてあげるから」


「ほんとう!?助かるよ」


「ふん、感謝しなさいよね」


少年と少女は各自の家に到着した


「着替えたらすぐ行くよ」


「わかった」


隣り合った玄関のドアが同時に開き、閉じられた




「ただいま・・・・・あれ?ママはまだ帰ってないのか」




少女は家の中を見渡した後自室へ向かう

ドアを開けた

カメラのフラッシュのような強い光が目に入る

咄嗟に目を瞑る


ゴチン


鈍い音が鳴り響いた






シンジ「アスカ、ミサトさん、晩御飯できましたよ」


ミサト「りょうか〜い」



アスカからの返事がない


シンジ「アスカー?出来たよ」


やはり返事がない


シンジ「もう・・・」


『勝手に入ったら殺すわよ』と書かれたプレートが付けられたドアの前に向かう


シンジ「晩御飯出来たよ」


アスカ「ん、今いく」


シンジはアスカに伝わったことを確認するとキッチンに戻った


アスカ「さてと」


アスカは体を起こしベットから降りる

ドアを開いた

カメラのフラッシュのような光が目に入る

咄嗟に目を瞑る



ゴチン


鈍い音が鳴り響いた












「「いった〜い!!」」














アスカの苦痛の叫びが聞こえる

足の小指でもどこかにぶつけたのだろうと思い、シンジは特に気に留めない

しかし次の言葉を聞いて無視できなくなった






「「あ、あ、あ・・・あんた誰よ!!??」」






あんた誰よ?

この家には僕とアスカとミサトさんしかいないはずだ

アスカは自分の部屋に居て、僕はここに居る。そしてミサトさんは僕の目の前にいる



ど、泥棒か!?


アスカの部屋へ駆ける


プレートの文字など気にしている場合ではない



シンジはアスカの部屋に飛び込んだ







「おじゃましまーす」


少年は躊躇なく少女の家の玄関に上がる






「「いった〜い!!」」






少女がどこかに小指でもぶつけたのだろうと、少年は特に気に留めなかった

しかし、次の言葉を聞いて無視できなくなった




「「あ、あ、あ・・・あんた誰よ!!??」」




知らない人間が家に居る!?


まさか・・・泥棒!?


武器は・・・この分厚い参考書くらいか・・・

そんなことはどうでもいい



少年は少女の部屋に飛び込んだ










「「どうしたのアスカ!!??」」








シンジの目の前には信じられない光景が飛び込んだ


自分の知るアスカの隣に一回り小さなアスカがいたのだ





「「ど・・・どうなってんの??」」




シンジは違和感を覚えた

自分の声が重なって聞こえた気がしたからだ

四つの青い目がこちらを見ている


まさか!と壊れかけのロボットのように首を横に捻る





「「う、うわぁぁああああ!!」」





自分よりも二回りほど小さな自分がそこにいたのだ





ミサト「なんの騒ぎ!?」


遅れてミサトがアスカの部屋に駆け込んできた



部屋の光景を目の当たりにし

口をあんぐりと開けて目を見張っている

自分の目がおかしくなってしまったのだろうかと、必死に目を擦ってみる


再び見入るがそこには四人の人間が存在した




ミサト「・・・・・えーっと、弟さんと、妹さん?」







アスカ「んなわけあるかぁああああああああ!!」





第5話に続く

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