小鳥「小鳥のヒヨコ」 (19)

夢を見た……。

とても、とても幸せな夢……。


 小鳥「逆に考えるんだ」
 小鳥「逆に考えるんだ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370784864/)

 小鳥「音無小鳥、第二形態です!」
 小鳥「音無小鳥、第二形態です!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1371221188/)


具体的に言うと、こんな夢。


私がプロデューサーさんとドラマみたいなロマンス?

私がプロデューサーさんと結婚する?

第二形態? 第三形態?


ふふ……我ながら呆れた妄想だわ。

夢みたいな夢を見るなんて、悪い冗談よね。


AM5:00。いつもと同じ朝。

体を起こした私は、誰の温もりも感じない左手から、そっと目をそらした。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1372341252

※単独でも読めないことはないですが、上の二つを読んでもらったほうが話はわかりやすいです

なーんちゃって!


騙された? ねえ騙された?

残念! 彼はちゃんと隣にいますぅ。

右側に!


いやぁ、いつもは二人の位置が逆なんですけどね。

昨夜は激しかったから、なんとなくそのまま寝ちゃって……。

彼ってば、あんなに……。


きゃっ///

やだもう、恥ずかしい!

小鳥、そんなこと言えません!

たまにはこういうのも新鮮だけど。

いつもいるはずの左側にあなたがいないから……。

起きたとき、ほんとはすごく慌てちゃった。


今までのことが夢だったのかなんて、ほんの一瞬だけど思っちゃって……。

こんなこと、あなたには内緒です。


結婚して3ヶ月。

慌ただしくてあっという間だったけど、とても幸せな日々。

あなたがいて、私がいる、二人の日々。


いつもと逆の右側で眠るあなたは、夢みたいにいなくなったりしませんよね?


P「小鳥、さん……」

小鳥「……?」


寝言……みたい。ふふ。

あなたの夢の中の私は、今なにをしていますか?


小鳥「はい、私はここにいます」


ずっと一緒です。

 チュッ

まだ夢の中の彼に、一日の始まりのキス。

私は5時起き、彼は5時半起きだから、30分だけ彼は無防備。


私からキスすることなんて……ほら、夜の盛り上がってるときぐらい?

2X年も清純派で生きてきたから仕方ないし〜?

だって、恥ずかしいものは恥ずかしいんです!


そんなわけで、もうずっと彼にリードされっぱなし。

自分が年上なんて実感できるのは……あ、やっぱり言いたくない。

絶対言わない。


一緒にいてこんなに幸せなのに……なんて罪な人。

だから、彼の知らないうちに私からキスして、ちょっとだけ仕返しのつもり。


私だけの秘密です♪

それじゃ早速、朝ごはんとお弁当を作りましょ。


朝食は、だいたいご飯・ご飯・パンのローテーション。

今日はパンの日だから、彼の好きなとろけるチーズのトーストとベーコンエッグ。

栄養のバランスを考えて、山盛りのサラダも毎朝欠かせません。

お野菜を美味しく食べてもらうのって、妻としての腕の見せどころよね。


さて、エプロンをつけて……。

ん? そうそう、忘れるところだったわ。


彼ってば、お料理中はダメって何度も言ってるのに……。

毎朝、私の不意をついて……キスしてくるんです。

あ、ノロケじゃないですよ。そんなつもり全然ないですから、ノロケなんて。

もちろん、私が怪我しないように気を使ってくれてますよ。

刃物を使ってたり、揚げ物をしてたり、そういうときは我慢してくれますから。


だったら、いつも我慢してくれればいいのに……。

私のエプロン姿が可愛いからって言って、聞かないんです。


それはまあ、私も悪いとは思いますよ? 可愛いくて。

あ、いえいえ。自分では全然少しも可愛いなんて思ってませんけどね。可愛いなんて。

でも、彼が可愛いって言うから仕方ないんです。

可愛いなんて、ほんとは嫌なのに……。可愛いなんて。


エプロンが似合うって言われて、もちろん悪い気はしません。

でも、私も彼も朝は忙しいんです。

だから、今日はちょっとだけ意地悪してあげます。

エプロンをつけなかったら、彼はどんな反応をするのかな? うふふ。

P「おはよう、小鳥さん」

小鳥「あ、おはようございます」

P「ん……?」


ふふ、きょとんとしちゃって。

なにもしてこないのは、それはそれでちょっと寂しいけど……。

彼のこんな顔を見れただけで……ん?


 グイッ

小鳥「え? あの、今日はエプロンつけてないんですよ?」

P「そうですね」

 ギュッ

小鳥「あ……もう、また」

P「エプロンをつけてなくても可愛い小鳥さんが悪いんです」

 チュッ

小鳥「んん……!?」

 チュプ…レロ…チュル…

小鳥「ん……ちゅ、んむ……」


あれ? いつもは唇だけなのに。


小鳥「ふあぁ……」


な、なにやら作戦を間違えてしまったようです……。

危うく、朝ごはんどころじゃなくなるところでした。

あなたとの生活は、朝から刺激的すぎます。

……嫌じゃないですけど。


朝食とお弁当は私が作って、彼がお片づけ。

そのあいだに私が準備を済ませて、彼の身支度もお手伝い。


小鳥「ネクタイ曲がってますよ……はい!」

P「ん……ありがとう、小鳥さん」

小鳥「うん! 今日も私の旦那様はかっこいいです」

P「奥さんが可愛いですからね」


だって、私の第三形態は可愛い奥さんですから。

こんな子供みたいな夢を叶えてくれる、とても素敵な旦那様。


P「じゃあ、そろそろ行きますか」

小鳥「はい!」


大好きです♪

出勤は、もちろん手をつないで。

彼が左で、私が右。


残念ながら、結婚までに新築は間に合わなくて、今は彼のマンションで二人暮らし。

事務所からふた駅の、私たちのマイホームが完成するのは、まだ1ヶ月先。

都心の一等地だから、それはもう色々と大変だったけど……。

きっと、あなたと本当の家族になれる場所。


小鳥「子供は何人ぐらいほしいですか?」

P「まずは一人目が産まれないと。どれぐらい大変かわからないですし」

小鳥「そうですね」


私の年齢のこともあるから、たぶん何人もというわけには……。

なんで、もっと早くこの人と出会えなかったのかなって、少しだけ思う……けど。


バカみたい。

もっと早く出会っていたとして、同じように結ばれたなんて言い切れる?

わかるわけない。考えても仕方のないこと。


私にわかるのは、今が幸せということだけ。

お! あそこのビシッと凛々しいスーツ姿で、でもちょっぴり小柄で、

ぴょこぴょこ揺れてる触覚みたいな前髪が可愛らしくて、メガネが似合う知的な美人で、

でも、やっぱり可愛くて……抱きしめたいぐらいに。


うん! 律子さんですよ、律子さん!

って、どんだけ律子さん好きなんだよ、私!


小鳥「律子さん!おはようございます!」

律子「?」

P「おはよう、律子」

律子「あ、おはようございます」


そういえば、夫婦でラブラブ出勤時に遭遇するのは初めてかも。

ほんとごめんなさいねぇ。朝から見せつけちゃってぇ。


律子「朝から胸が焼ける……」


もう、律子さんったら。

相変わらず、聞こえるように心の声を言うのがお上手なんだから。

そんなことじゃ、いきおくれちゃうゾ!


律子「あ?」


あらやだ、この口ったら!

勝手に声に出しちゃって、とんだイタズラっ子ね! テヘペロ

P「律子も、今朝はずいぶん早いな」

律子「今日はみんな早出ですからね。私だけ遅くなるわけにもいきませんよ」

小鳥「休める時には休んでくださいね」

律子「わかってます」

P「俺も朝から一日戻れないからな。事務所の方は頼む」

律子「ええ、みんなのほうはお願いします」


彼は今日一日、うちの冠番組の特別企画でアイドルのみんなに同伴。

総勢12名によるシークレットゲリラライブを敢行するというもの。


一日で廻れる範囲ということで、首都圏近郊の10ヶ所。

みんなはロケバスで移動。

現地に先行させておくトラックのコンテナを簡易ステージに、突発路上ライブ!

というサプライズ企画。


もちろん、関係各所の認可は取得済み。

さらなるファン層の獲得が建前だけど、現状での力試しのほうが目的としては重要みたい。

みんなには内緒だけどね。


事務仕事が滞らないように、律子さんは居残り組。

一日事務所にいるなんて、ほんと久しぶりじゃないかしら。

律子「それより……暑苦しいから、もっと離れて歩いてください」

小鳥「そんなこと言わずに、律子さんも手をつないで歩きましょうよぉ」

律子「……」

小鳥「ほらほら」

律子「はいはい、わかりましたよ」

律子「では、失礼します」


そうそう、そうやって素直に……って、あれ?


小鳥「な、なに人の旦那と手をつないでるんですか!?」

律子「あら、ごめんなさい。こちらのほうが近かったものだから」

P「おいおい、二人とも……」

小鳥「あなたも! まんざらでもないみたいな顔して!」

P「そ、そんなことは」

律子「嫌ですか? 私なんかじゃ」

P「嫌なんてことは……」

小鳥「むうぅ!」

P「頼むから、あんまりうちの奥さんをからかわないでくれよ」

律子「ふふ、仕方ありませんね」

律子「じゃあ、小鳥さんと手をつなぎます」

小鳥「最初からそうすればいいんです!」

律子「はいはい、世話の焼ける奥さんですね」

P「ははは……」

左手に彼、右手に律子さん。

そんな全私が羨むようなシチュエーションで、いつまでもツンツンしてるなんて無理。

5分も持たずにデレデレです。


小鳥「律子さん、律子さん!」

律子「はい?」

小鳥「今日はずっと手をつないで仕事しませんか?」

律子「はあ?」

小鳥「もう離したくないです」

律子「ちょっと。なんとかしてくださいよ、これ」

小鳥「『これ』なんて、ひどいですよぉ」

P「ははは。悪いけど、今日は小鳥さんのことは任せた」

律子「えぇー……」

もうすぐ事務所。停まってるロケバスが見える。

番組スタッフも、何人か待機してるみたい。


P「俺ちょっと挨拶してくるから、二人は先に事務所に」

律子「はい」

小鳥「わかりました」


左手が寂しくなっちゃった……。

でも、右手は離しませんから!


律子「離してくださいよ」

小鳥「イヤです!」

律子「はあ……」


嫌そうにしてても、結構しっかり握り返してきてますよね?

お姉さん、ちゃんとお見通しですよ? うふふ。

 ── 早朝 765プロ事務所 ──


今日は、アイドルのみんなも全員早朝集合。

あずささんは、家を出る前に伊織ちゃんが確保してきました。

さすが、竜宮小町の頼れるリーダー!


それにしても……ふふ、こんな時間だとみんな眠そう。


律子「寝惚けてるようなら、プロデューサー殿の代わりに私が同行するわよ?」


あ、みんな目が覚めた。

さすが、みんなの鬼軍曹・律子さん!


P「今日のスケジュールだが……」


ミーティングは簡単に済ませて、早速出発です。

みんな、頑張ってね!


P「いってきます、小鳥さん」

小鳥「はい、いってらっしゃい!」

みんなを送り出したら、私と律子さんもお仕事の準備です。

早朝の事務所。

あと何回この光景を見るんだろ。


小鳥「律子さん」

律子「はい?」

小鳥「私がいなくなったら……寂しい?」

律子「……」

律子「寂しいに決まってるじゃないですか……」ボソッ

小鳥「ふふ、ありがと」

律子「なんですか?」

小鳥「心配しなくても、ちゃんと顔を見せに来ますよ」

律子「ノロケ話と邪魔しに来る以外なら歓迎します」


当面は無理だけど、私は寿退社の予定。

今まで事務員を私一人でまかなえてたのが不思議だったということで、後任は二人採用するとのこと。


愛着のある事務所だから、寂しくないと言ったら嘘になるけど……。

やっぱり、彼の子供が欲しいから。


もう授かってるかもしれないけどね。

なんていうか、ほら……いつもコウノトリさんにお願いしてますから!

ナマで!


今度、検査にでも行ってみようかな。

今日は彼の帰りが遅くなるから、律子さんを誘って二人でディナー。

せっかく誕生日を過ぎて20歳になったんだもの。そろそろお酒も、ね?

あわよくば、ほろ酔いの律子さんをお持ち帰り……なんて。うふふ。


律子「ほら、玄関ですよ玄関。靴脱いで!」

律子「同じこと何度も言わせない!寝転がるのはベッドに行ってから!」

小鳥「ふゎ〜い……」


あれ? なにこのデジャブ?

 ── 夜 P自宅 ──


私のほうが酔い潰れて、自分の家にお持ち帰りされてたら世話ないわ……。

テイクアウトじゃなくて、テイクバックだけどね!

返品かよ!


ふう……独りぼっちの部屋で、ひとりボケツッコミは心が痛いわ。

おとなしく彼の帰りを待ちましょう……。


彼ったら、今日は仕事の報告の電話でも、いつもよりはしゃいでた。

ゲリラライブは行く先々でかなりの盛り上がりをみせて、確かな手応えを掴んだって。


当然ですよ。あなたと律子さん、そしてみんながどれほど頑張ってるか……。

一番近くではないけど、みんなに手が届くところで見守ってきた私だから。

みんなが絶対にトップアイドルになることを、他の誰よりも信じています。


その頃には、私は事務所にいないと思うけど。

どこにいても、大好きなみんなをいつも応援してるわ。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom