漆原「ラーメン食べたい」 鈴乃「はあ?」 (45)

魔王城、正午……

漆原「ベル、ご飯~」ガチャ

鈴乃「……ノックもせずにいきなり入って来て開口一番がそれか」

漆原「芦屋がお昼もお金も用意せずに出掛けてるんだ。お腹空いたから何か作ってよ」オナカグゥ-

鈴乃「そこは自分で何か作るという選択肢は無いのか?」

漆原「冷蔵庫空っぽなんだよ。もっとも何か材料があっても僕に料理なんて高尚な事は出来ないけどね」フンス

鈴乃「なぜ自慢げに語る?」

漆原「良いじゃん、隣同士なんだし。こういう時は持ちつ持たれつの関係でいこうよ」

鈴乃「私はお前に持たれた記憶が無いのだが?」

漆原「それに真奥からも一人で部屋にいて何か困った時は隣のベルを頼れって言われてるし」

鈴乃「魔王の奴め、ここは託児所じゃないのだぞ……」

漆原「失敬な、人を子供みたいに言わないでよね。見ての通り僕は立派な大人だよ?」

鈴乃「どの口がほざくか」

鈴乃「仕方ない。私も昼食はまだだからな……冷やしうどんを作ってやるからちょっと待っていろ」カッポウギソウチャク

漆原「あ~、予想はしていたけどやっぱりうどんなんだね……」

鈴乃「何だ、不満なのか?」

漆原「不満って訳じゃないけどさ……いい加減そろそろ飽きて来たというか……」

鈴乃「飽きただと? こんな素晴らしい食べ物に対して失礼過ぎるぞ、ルシフェル」

漆原「そりゃベルみたいに一日三食うどんでOK、うどんをおかずにうどんを食べれますって人種なら良いけどさ。僕的にたまには別の物が食べたいよ」

鈴乃「むぅ、そんな事言われても今日はまだ買い物に行ってないからな……冷蔵庫に葱と生姜があるがこれでも齧るか?」レイゾウコガサゴソ

漆原「やだよ、それ完璧にうどんの薬味じゃないか。それよりもそうだな……どうせ麺類を食べるならうどんよりラーメン食べたい」

鈴乃「はあ? よりにもよってラーメンだと!?」

漆原「あれ、何で眉間に皺寄せてるのさ? ベルってラーメン嫌いだっけ?」

鈴乃「いや、食べた事が無いから味に関して好きだとか嫌いだとかは言えないが……あれは明らかに健康に良くない食べ物だろう?」

漆原「そうかな?」

鈴乃「そうだ。何せスープは油でギトギト、塩分も多くて高カロリー。麺だってあれは炭水化物の塊だし、これを食べて身体が悪くならないと思う方がおかしい」リキセツー

漆原「……いや、それうどんも同じじゃない? 炭水化物の塊とか」

鈴乃「違う、うどんには爽やかさがある! 華がある! 上品さがある! ラーメンなんか野蛮な食べ物と一緒にするな!!」プンスカ

漆原「分かったからムキにならないでよ。後、顔近づけ過ぎだからちょっっ離れて」

鈴乃「とにかく長生きしたければ身体に悪い物なんて食べるんじゃない。いいな?」ビシッ

漆原「僕ら悪魔に聖法気入りのうどんを食べさせていた人の言葉とは思えないね……でも確かにお世辞にも身体に良いとは言えないけどたまに食べる分には問題無いと思うよ?」

漆原「それにベル、ラーメン食べた事無いんでしょ? もしかしたら気に入るかもしれないし、せっかくだから食べてみるのも悪くないんじゃないかな?」

鈴乃「しかし私は脂っこい物はそこまで好きではないし……胃ももたれそうだし……」モジモジ

漆原「ラーメンだって爽やかであっさりしたものもあるよ。種類も豊富なんだし、とにかく一度食べてみなよ。ね?」

鈴乃「むぅ、お前がそこまで言うなら……」

鈴乃「しかし仮に食べるとしても我が家にラーメンの材料なんて無いぞ」

漆原「大丈夫。この近所に最近新しいラーメン屋が出来たんだよ。ネットで調べたら結構評判みたいだしそこに食べに行こう」

鈴乃「……お前、最初から私をそこに誘うつもりだっただろう?」ジー

漆原「あれ、ばれた?」ケロッ

鈴乃「しかしこんな昼間から外に出ても大丈夫なのか?」

漆原「大丈夫、帽子を深く被っておけば誰にもばれないよ」

鈴乃「まったく、こういう時だけ……まあ良い。行くならさっさと行くぞ」ヤレヤレ

漆原「やった!」ガッポーズ

ミーンミンミーン

漆原「うわぁ、久々に昼間に外出たけどやっぱり暑いね」アチー

鈴乃「夏だからな。滅多に外に出ないんだから今の内にしっかりと太陽の光を浴びろ。そして少しでも成長しろ」

漆原「僕はアサガオか何かなの?」

鈴乃「それより件のラーメン屋というのは何処にあるのだ?」

漆原「えっと、この辺りのはずだけど……ああ、あそこじゃないかな?」

ガヤガヤ

鈴乃「おい、行列が出来ているぞ?」

漆原「人気あるし、今はちょうど昼時だからね」

鈴乃「この炎天下の中、良く並んでいられるな」

漆原「それだけラーメンは美味しいって事だよ。さあ、僕達も並ぼう!」

鈴乃「結構長そうだぞ……やっぱり今からでも私の部屋に戻って昼飯はうどんにしないか?」

漆原「ここまで来て何言ってるんだよ。ほら、早く行くよ」グイッ

鈴乃「お、おい、急に手を引っ張るな。ちゃんと着いていくから///」スコシテレッ

鈴乃(しかし今日はやけに行動力があるな。普段もこれくらい動ければ魔王達も苦労しないんだろうが……)

漆原(ラーメン! 久々の美味しいラーメン!)フーフー

…………

鈴乃「ふぅ、やっと入れたな」

漆原「クーラー涼しい~。お冷美味しい~」ゴクゴク

鈴乃「食べる前からそんなにガブガブと水を飲んでいるとラーメンが入らなくなるぞ?」

漆原「しょうがないじゃん、暑かったんだし。それより何食べようかな~?」wktk

鈴乃「醤油ラーメンに、味噌ラーメン。塩ラーメンにつけ麺というものもあるのか……ふむ、確かに一口にラーメンと言っても色々と種類があるのだな」

漆原「僕はオーソドックスに醤油ラーメンにしようかな。あ、からあげも頼んで良い?」

鈴乃「別に構わんぞ。というかなぜ私に許可を求める?」クビカシゲ

漆原「え、だって奢って貰うんだから一応聞いておかないと悪いじゃない」

鈴乃「私は自分の分しかお金は払わないぞ」

漆原「え?」

鈴乃「え?」

漆原「……いや、いや! 僕最初にお金持ってないって言ったよね!?」

鈴乃「記憶している。だからなぜ外食をしようと言い出すのか少し疑問だった」トボケガオ

漆原「お、奢ってくれないの?」

鈴乃「そもそも奢るなんて一言も言ってないだろ?」アサッテノシセン

漆原「えっと、僕このままだと無銭飲食になっちゃうんだけど?」

鈴乃「まだ食べるどころか注文すらしてないから大丈夫だ。私が食べているのをただ見ているのが嫌なら今からでもヴィラ・ローザ笹塚に戻ったらどうだ?
ラーメンの感想なら後で教えてやるから」チョイニヤニヤ

漆原「…………」

鈴乃「…………」

漆原「(´;ω;`)ブワッ」

鈴乃「……冗談だ。奢ってやるから男がそう簡単に涙を見せるな」タメイキー

漆原「酷いよ、ベル! 僕の純情を弄んだんだね!?」

鈴乃「誤解を招く様な事を大声で言うな。無理やり誘われた上に炎天下の中を並ばされたんだ。
これくらいの仕返しは許せ」

漆原「許せないよ! こうなったらから揚げに加えて餃子も頼ませて貰うからね!」

鈴乃「ああ、もう好きにしろ……さて、私は味噌ラーメンというのを頼んでみるか。味噌汁は好きだし、これならそこまでこってりしていないだろう」

漆原「あ、呼び出しのボタンは僕が押す!」ポチットナ

数分後……

店員「ごゆっくりどうぞ~」

鈴乃「……あれ、何か思ったよりこってりしてそうなのが来たぞ?」

漆原「あっさりした味噌ラーメンもあるんだけどね。ここはこってり系だったね」←さっきからかわれたから少し嬉しそう

鈴乃「一応野菜もあるがやはり油も浮いているし、肉も脂身の塊だし……むぅ、やはり身体に悪そうだ」ムスー

漆原「そんな嫌そうな顔していると美味しい物も美味しく食べられないよ? とにかく騙されたと思って一口食べてみなよ」

鈴乃「騙すのはお前達悪魔の専売特許だからそう言われると逆に不安なんだが?」

鈴乃「まあ、せっかく頼んだんだから食べる事は食べるが……」

漆原「から揚げと餃子、1つずつなら食べて良いよ」

鈴乃「から揚げも餃子も代金を払うのは私なんだがな……とりあえずいただきます」

漆原「いただきま~す♪」

…………

数日後……

漆原「ベル、ご飯~」ガチャ

鈴乃「私はお前のご飯じゃない。それと入って来るならノックくらいしろ。もし着替え中とかだったらどうするつもりだ?」

漆原「その時は殺されるかもしれないし走って逃げるよ。それより今日も芦屋のアンポンタンがお昼もお金も用意せずに出掛けているんだ。何か作ってよ」オナカグゥ-

鈴乃「お前は私をおさんどんか何かと勘違いしてないか?」

漆原「何ならまたあのラーメン屋に連れて行ってくれても良いけど?」キタイノマナザシ

鈴乃「この前食べたばかりだろう? 改めて思ったがやはりラーメンは身体に悪い食べ物だ。頻繁に食べるものではない」ウンウン

漆原「そんな事言ってこの前は普通に完食してたじゃない。何だかんだ言って美味しかったんでしょ? 気に入ったんでしょ?」

鈴乃「うるさい。せっかくお金を払って頼んだものを残すのは勿体ないと思っただけだ」

漆原「またまた~」

鈴乃「くっ、とにかくラーメン屋には行く気はないし、今日作ってやれるのもうどんだけだ。嫌なら昼食は抜きにしろ」

漆原「ちぇ、分かったよ」フマンゲー

鈴乃「じゃあすぐ作ってやるからそこの棚から鍋を出しておいてくれ」カッポウギソウチャク

漆原「はい、はい」

鈴乃「あ! 鍋はそっちじゃなくて隣の……!?」

漆原「ん、何これ?」

『サッポ○一番』

漆原「ベル、これって……」

鈴乃「か、勘違いするな! 私の中でうどんが至高なのは変わらない! ただ昨日買い物した時に何となく目について……この前食べたのも決して不味くはなかったし……その……///」アセアセ

漆原「ふ~ん」ニヤニヤ

鈴乃「うぅ、その笑顔ムカつくな!」

漆原「別に~。それより、ベル」

鈴乃「……何だ?」

漆原「ラーメン食べたい♪」ニコニコ

鈴乃「はあ……」タメイキー

おわり

ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。

また何か思いついたら書くかもしれませんし書かないかもしれません。

あとはたらく魔王さまの最新九巻は大好評発売中です。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom