P「律子のおさげがエビフライになってた……死にたい」 (31)

律子「…………」カタカタ

P「…………」

春香「プロデューサーさん、衣装のことなんですけど……」

P「あ、ああ……うん」

春香「サイズ、少し大きいみたいなんです。
  交換してもらいたくて……プロデューサー?」ヒラヒラ

P「はっ……あ、悪い。ぼーっとしてた」

春香「疲れてるんじゃないですか?甘いもの食べます?」

P「いや…………あのさ、律子のおさげだけど」

春香「はい?」


律子「……ふんふんふふーん♪」カタカタ


P「あれはエビフライだよな」

春香「……そうですね」

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P「何で誰もつっこまないんだよ!
  朝、来て、誰もがちょっと見て終わりだったぞ!」バン

春香「そういうプロデューサーさんはつっこまないんですか?」

P「…………みんな何も言わないからドッキリかと思って」

春香「ドッキリと思うなら、なおさらノらないと駄目ですよ」

P「芸人じゃないんだから」

春香「あのですね、大事な大事なライブを目前に控えて、練習も大詰めなんです。
  律子さんのエビフライがエビフライになったのをつっこむ余裕なんかないですよ」

P「そうだな……ごめん。って、俺は悪くない!」バン

春香「もー、細かいこと気にしすぎると禿げますよ。
  じゃ、練習行ってきまーす」

バタン

P「…………」

律子「プロデューサー、パンフレットのサンプル作ったので添削お願いします」ピョコ

P「ああ、はいはい……」

律子「曲目、これであってますよね?」ピョコ

P「あ、ああ……」

律子「もっと凝ったデザインもいいかなと思ったんだけど、
  まぁ、シンプルイズベストということで……」ピョコピョコ

P「……ちょっと、今忙しいから後でゆっくり見るよ」

律子「あ、はい。分かりました」

P「……ふぅー」

律子「……さて、今のうちに確認をもう一回。
  メールとチケットとあれとこれと……」ブツブツ


P「…………」ソー

律子「うーん、これからどれくらい注文が……」ブツブツ

P「…………」ツン

律子「…………」ポロ

P(衣のかけらが……)ヒョイ

P「サクサクだ」ペシャ

律子「……プロデューサー殿、何をしていらっしゃるんで?」

P「コンビニ行ってくるけど、何か買ってこようか」

律子「コンビニ……ウィダーお願いしてもいいですか」

P「おっけー」

律子「ありがとうございます。はい、お金」チャラ

P「行ってきまーす」

律子「行ってらっしゃーい」ピョコピョコ


ウィーン

「いらっしゃっせー」

P「ふぅ、やはりコンビニは涼しい」

小鳥「涼しーいなぁー」

P「あれは事務所のお局様、小鳥さん」

小鳥「やや、プロデューサーさん。ご機嫌麗しゅう」

P「その様子、まさか」

小鳥「ええ……見ました?エビフライさんの律子」

P「逆ですよ、逆。律子のエビフライ」

小鳥「よかった、暑さのあまりに垣間見た意識と無意識の境じゃなかったんだ……」

P「……どうしたらいいんでしょう」

小鳥「本当に。どういう反応をするべきなんでしょうか」

P「いつも真面目な奴が急にふざけると反応に困りますよね」

小鳥「そもそもあれウケ狙いなんですかね」

P「…………」

小鳥「もしかしたら、本当に……」

P「それ以上言うのは止めてください」

小鳥「でも……」

P「律子は人間です。エビフライじゃない」

小鳥「……はい」

P「行きましょう。じゃんけんで負けたほうがつっこむ。良いですね」

小鳥「わ、分かりました」


事務所

小鳥「…………」チラッチラッ

律子「…………」カタカタ

P「…………」←負けた

P「……はー、ん"ん」ガタ

小鳥「……」ビクッ

P「あー、律子。ウィダーとお釣り」

律子「あ、忘れてた。はい、ありがとうございます」

P「……うん」

小鳥「…………」ソワソワ

律子「よっ、と…………うまー」プキッジュルジュル

P「なぁ、律子、その……さ」

律子「何です?奥歯にものの挟まったみたいな言い方……らしくないですよ」

P「悪い……うん。ずばり言わせてもらうとな……うぇっ!?」

律子「…………?」ジュワジュワ

小鳥(あ、あれは!?)

P(エ、エビフライが……きつね色に揚がってきている!?)

小鳥「あ……良い匂い」グゥー

律子「……小鳥さん、ちゃんと朝ご飯食べたんですか?」ジュワジュワ

小鳥「た、食べましたよ!」

P(す、すごい香りだ。食欲を揺さぶられる!よ、よだれが……)ダラダラ

律子「プロデューサー、何の要件なんですか?」ジュワリジュワリ

P「ああ、いや、今解決した……」ゴシゴシ

律子「はぁ……?」

小鳥「この根性なし!」

P「だあっとれ!」

律子「?」ジュワリジュワリ


屋上

P「はぁー……」

小鳥「敗けましたね」

P「完全敗北でした」

小鳥「……まさか揚げてくるとは」

P「予想外でした……アイツ人間なんですかね」

小鳥「……必ず何かトリックがあります」

P「手が込んでますね」

小鳥「それくらい、ウケを取りたいんでしょうか」

P「……正直、それどころじゃないくらいうろたえちゃいましたね」

小鳥「何が正解なんですかねあれ」

P「…………午後、事務所は俺と律子の二人だけになります」

小鳥「ぷ、プロデューサーさん……まさか」

P「俺が……アイツを何とかします」

小鳥「何とかって……」

P「爆笑してやります。そして、ツッコみます」

小鳥「…………健闘を祈ります」

P「…………」グッ

午後の事務所

P「…………なぁ、律子」

律子「すー……すー……」

P「……机に突っ伏して寝てる」

P「人の気も知らないで……」ガタ

P「ま、最近忙しいしな。少しくらい寝かしてやるか」

律子「うーん、むにゃ……」ホカホカ

P「…………」ゴクリ

P「いや、ゴクリじゃないって……」ブンブン

P「この場合のゴクリは律子にちょっとむらっと来たのか、
  あるいはエビフライに食欲がそそられたのか分かりづらいな」

律子「すー……すー……」ホカホカ

P「しっかし、作り物にしては凝ってるな」ツンツン

P「あっちぃ!」バッ

律子「…………うーん」ホカホカ

P「お前の髪どうなってんだよ」ヒリヒリ

P「……見れば見るほど本物そっくりだな」

P「…………」ツンツン

P「……衣の中に元の髪があるのかな?」グイ







       ブチッ

P「あ」

律子「…………むにゃむにゃ」

P「…………」ホカホカ

P「再就職だな」ホカホカ

P「ブラックなIT土方から、やっとやりがいのある仕事に就けたのに……」

律子「んー……ぐぅ……」ニョキニョキ

P「うぅ……ぐすっ……ごめんよぉ、律子」ホカホカ

律子「……んん……すー」ニョキニョキ

P「ぐす、ぐす……あれ……?」

律子「……ぷろでゅーさー、虹の根元は触れますか……?むにゃ」シャキーン


P「お、おさげが……復活したッ!?」ドドドドド

P「よ、よかった……」

P「…………」ホカホカ

P「いや、良くないな。復活しない方がまだよかった気がする」

P「そうなると、この衣の下はいったい……?」ホカホカ

P「…………」グゥー

P「いやいや、ぐぅーじゃないって」ブンブン

P「…………」ホカホカ

P「この衣の下は一体何が!」

P「みんな知りたい、律子の謎」

P「……あくまで、調べるだけだからな!」パクッ


エビフライを唇に当てた。
それだけで、このエビフライが尋常のものでないことが俺には分かった。

サクサクに揚がり、尖った衣が唇をチクチクと刺す。

恐る恐る口を開いて、噛みついた。表面の衣は硬く、しかし脆い。
まるで極限まで薄くされたガラスを何枚も重ね、それを砕くような、食感。

そして、衣の下は――

P「あ、甘い……?」

咀嚼する。歯、顎、骨を伝わって、頭の中を衣の砕ける音が満たす。
衣の下から露出したモノを舌で味わい、唾液に溶かし、飲み込む。

また一口。もう一口。


P「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」

俺はその幻惑のエビフライの味に、虜になっていた。

P「…………っはぁ」

気が付くと、手に持っていたほかほかのエビフライはなくなっていた。
手にわずかについた衣のかけらを舌で拾う。

P「…………」

俺の眼は一点に見入っていた。


――もう片方のエビフライ


自然と身体が動いた。

律子のエビフライもといおさげに手を伸ばし、そして――


そして――

春香「そ、そして、それからどうなったんですか?」

P「そこから先は記憶が無い。きっと、我を失っていたんだと思う」

響「ツッコみたいところがありすぎるぞ……」

P「気が付いた時にはもう遅かった。俺は律子エビフライの依存状態に陥った。
  アイツの生成するエビフライにはモルヒネと同じ成分が含まれていて……」

美希「ひぇ~なの」

P「それから俺は収容施設に送られ、半年間禁断症状と戦っていたのさ」

春香「そ、それは大変でしたね」

P「本当にな」シミジミ

律子「こらっ!」パン

P「いてっ」

春香「あ、律子さん」

律子「あどけない少女に嘘八百を吹き込むな!馬鹿プロデューサー!」グイ

P「ご、ごめんって……」

律子「仕事に戻れ!」

響「本当のところ、半年間何してたんだ?」

律子「ああ、海外研修よ」

P「イエス、マァム」

春香「えぇー!すごいですね!」

美希「すごいの、ハニー!ハリウッドでどんなこと勉強したの?」

P「美希、ハリウッドノンノン……レピートアフタミー、ヘァリウォッドゥ」

響「うざっ」

律子「馬鹿言ってないで、ほら、まず事務仕事手伝って……」

P「はぁい」


スタスタ

春香「はー、海外研修かー……」

響「エビフライの真実は嘘……と」

美希「春香、途中から本気にしてたの」

響「いくらなんでもエビフライを信じるのは無いよね」

春香「だ、だってプロデューサーさんの話し方、真に迫ってたって言うか!」

響「……まぁ、それはそーだけど」

美希「途中まではほんとみたいな話だったの」

響「帰って来て早々ほら話……プロデューサーらしいけど」

春香「よし!プロデューサーも帰ってきたことだし、
  ますます張り切って練習しよ!」

美希「おー。一先ずミキは体力温存のために寝るの」

春香「一緒じゃなきゃいやぁん」

美希「ミキとレッスンがしたくば、おにぎりを二個献上すべし」


ヤイノヤイノ


響「はー、まぁ、しかし帰ってきて良かったぞ……ん?」

響「……揚げ物の衣?」ヒョイ

響「サクサク……」ペシャ



響「まさか、ね」



おわりつこ

ハリウッドのくだり、ミキミキが超能力者みたいになってれぅ
直前の
>律子「ああ、海外研修よ」


>律子「ああ、海外研修よ。ハリウッドに半年間」

と脳内変換しておいてください


エビフライとりっちゃん食べたい

おつー

嘘話に春香出ちゃってるじゃん
それでも引っかかるはるるんまじ純粋

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