戸愚呂弟「冥獄界が全然大したことなくて困るねェ……」 (42)

昔書いた幽遊白書のSSです
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戸愚呂弟「世話ばかりかけちまったな……」

幻海(本当に……バカなんだから、全く)


…………

……


戸愚呂弟「ここから先が冥獄界か……」

戸愚呂弟(一万年かけてあらゆる苦痛を受け、それを一万回繰り返し、待つのは完全なる“無”……)

戸愚呂弟(オレに相応しい地獄だ)

戸愚呂弟「失礼する」



鬼A「王手!」パチッ

鬼B「わーっ、待った待った!」

鬼A「さっきも待ったしただろうが!」

鬼B「もう一回! もう一回!」



戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟「あの……」

鬼A「うおっ!?」

鬼B「なんだよあんた!?」

戸愚呂弟「冥獄界行きとなった死人なんだがねェ」

鬼A「え!?」

鬼B「マジで!?」

鬼A「こんな地獄にはるばるご苦労さん」

鬼B「ささ、どうぞ。こちらへ座って」

戸愚呂弟「どうも」スッ

鬼A「なにか飲むかい?」

戸愚呂弟「酒はダメなんで、オレンジジュースください」

鬼A「オレンジジュース? あったっけ」

鬼B「冷蔵庫にバヤリースのがあったはず。出してくるわ」

鬼B「さ、どうぞ」

戸愚呂弟(きっとこの中には猛毒が入ってるんだろうねェ)

戸愚呂弟「いただこう」グビッ

戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟(何も起きない)

鬼A「じゃ、将棋の続きしようぜ!」

鬼B「おう!」

戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟「ちょっと待った」

鬼A「ん? なによ?」

鬼B「まさか、氷も入れてくれ、透明なコップのがいい、ストローつけろ、なんていうんじゃないだろうな」

戸愚呂弟「いや、そうじゃなくて……」

戸愚呂弟「ここは地獄の中で最も過酷な地獄と聞いてる」

戸愚呂弟「オレになにか苦痛を与えてくれないと困るんだがねェ」

鬼A「苦痛? あ~、はいはい」

鬼B「やるかぁ!」

鬼A「でやっ! でやっ!」ベチッ ベチッ

鬼B「えいっ! えいっ!」バキッ バキッ

戸愚呂弟「……」

鬼A「おらっ! おらっ!」ベチッ ベチッ

鬼B「だあっ! だあっ!」バキッ バキッ

戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟(これが……苦痛……?)

戸愚呂弟(たしかにこれはこれで苦痛だが、思ってたのと違う……)

鬼A「ハァ、ハァ……ちょっと休むか」

鬼B「ゼェ、ゼェ……だな」

戸愚呂弟「……なぁ」

鬼A「はい?」

戸愚呂弟「冥獄界ってのはこんなものかね?」

鬼B「なんだと!?」

鬼A「よぉし、ちょっと本気になってやるか!」

鬼A「だりゃあああああ!」ベキッ

鬼A「あだだああっ! 手首がっ、手首が折れたぁっ! はひょーっ、はひょーっ!」ブラーン…

鬼B「大丈夫か!? 今オロナインを塗ってやる!」

鬼A「骨折にオロナイン塗ってどうすんだよォッ!」

戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟「もしかして、この地獄……ちゃんと機能してないんじゃないのかね?」

鬼AB「!」ギクッ

戸愚呂弟「図星のようだねェ……」

鬼A「だ、だって……しょうがないだろ!」

鬼A「ぶっちゃけ、冥獄界ってのは一種の脅しのために設置された地獄なんだ」

鬼A「冥獄界行きになるほどの罪人なんてまずいないし……」

鬼B「だから、オレたちもやることなくて、ここに配属されてからは気楽に暮らしてたんだ」

鬼B「このことを知っている人は、霊界でもほとんどいないんじゃなかろうか」

鬼A「最も過酷な地獄が“ぬるい”なんて知れたら、大スキャンダルだもんなァ」

戸愚呂弟「やはりな……」

戸愚呂弟「じゃあオレは引き返し、他の地獄に移らせてもらうことにしよう」クルッ

鬼A「あー、そりゃ無理だ」

鬼B「一度行く地獄が決まったら、もう変更はできない。霊界の掟だ」

戸愚呂弟「なんだと……!?」

戸愚呂弟「じゃあ、オレの罪は!? 浦飯に討たれた意味は!? どうなるんだ!?」

鬼A「し、知るかよ……誰だよウラメシって」

鬼B「オレンジジュース……もう一杯飲む?」

戸愚呂弟「いらん」

鬼B「じゃあグレープジュース――」

戸愚呂弟「いらん!」

戸愚呂弟「オレに苦痛を与えるんだ! それがお前たちの責務だ!」

鬼A「わ、分かった、分かった!」

鬼B「苦痛を与えるよ! 与えればいいんだろ!」

鬼A「かといってオレらじゃ肉体的な苦痛を与えるのは無理だから……精神的な苦痛を与えるぞ!」

鬼A「バーカ、アーホ、マヌケ!」

鬼B「グラサン全然似合ってねーぞ!」

戸愚呂弟「……」

鬼A「くっ……なんてタフなヤロウだ!」

鬼B「だったら、これはどうだ!」

鬼B「お前のガールフレンド、ブッサイク!」

戸愚呂弟「……」ピクッ

鬼B「お、効いた!」

鬼A「ガールフレンド……それがお前の弱点か!」

鬼A「名前はなんていうんだ?」

戸愚呂弟「……幻海」ボソッ

鬼A「あぁん!? 聞こえねェよ、もう一回!」

戸愚呂弟「幻海!」

鬼AB「もう一回!」

戸愚呂弟「幻海!!!」

鬼A「なるほどなるほど……」ニヤニヤ

鬼B「やはりな……」ニヤニヤ

戸愚呂弟(今までで最大級のダメージだ……)

鬼A「ようし、だったら今すぐ現世に出向いて、その幻海をボコボコにしてきてやるよ!」

鬼B「自分がボコボコにされるよりキツイだろ?」

戸愚呂弟「よせ!」

鬼A「バーカ、今さらやめるかよ!」タタタッ

鬼B「苦痛を与えて欲しいっていったのはそっちなんだからな!」タタタッ

戸愚呂弟「あっ……」

幻海「なんだい、あんたら? あたしをボコボコにするためにやってきた?」

幻海「今テレビゲームでゲームオーバーになったばかりで機嫌が悪いんだ。容赦しないよ」

ドドドドドドドドドドッ!!!

鬼A「ぐげえええええっ!」

鬼B「ぐぼおおおおおっ!」


――――

――


鬼A「ダ、ダメでした……」ボロッ…

鬼B「やっぱり強すぎる……」ボロッ…

戸愚呂弟「今日は鬼の厄日だね」

鬼A「しばらく安静にしてたら、ようやく回復したぜ!」

鬼B「冥獄界再開だァ!」

戸愚呂弟「次はどうするつもりだ?」

鬼A「実はな、お前に砕かれた兄は生きていたんだ」

戸愚呂弟「兄者が? しぶとさだけは一流だな……」

鬼A「だが、再び敗れ、今は永遠に続く幻覚地獄に陥ってるらしい」

鬼B「その様をこの水晶玉を使って生中継で見せてやるぜ!」



戸愚呂兄「うおおお~……なぜ……なぜ死なねえぇ~……! 蔵馬ァァァ……!」

戸愚呂兄「くそぉぉぉぉぉ~……ちくしょぉぉぉぉぉ……!」



鬼A「ハッハッハ、どうだ!?」

鬼B「実の兄が死ぬことすら許されずもがき苦しむ姿……苦痛だろう!?」

戸愚呂弟「そうでもない」

鬼AB「ですよねー」



戸愚呂兄「らめええっ! 蔵馬、そこはらめええええええっ!」

戸愚呂兄「蔵馬はそんなこといわない!」



鬼A「しかも、こいつ幻覚楽しんでんじゃん! 適応してるじゃん!」

鬼B「どんな幻覚見てるのか、気になるな……」ゴクッ

戸愚呂弟「兄者……」

鬼A「肉親の苦しむシーンでもさして効果なしか……」

戸愚呂弟「兄者は品性が足りなかったからねェ」

戸愚呂弟「似合いの末路という感想しか出てこないんですよ」

鬼A「じゃあやっぱりお前自身に苦痛を与えるしかないな」

鬼B「だけど、どうやってだよ?」

鬼A「さっきいい情報を仕入れたんだ」

鬼A「お前は昔、『俺もこっちで強くなりすぎた』って発言してたな?」

鬼A「だから魔界に行きたいと思ってたよな?」

戸愚呂弟「ああ」

鬼A「だがな……お前は霊界のランク分けによると“B級”に過ぎないんだ!」

鬼A「B級の上にはさらに“A級”……その上には霊界でも手を出せない“S級”がいるんだとよ!」

鬼A「妖怪になってまで強さを追い求めたお前にとって、これはショックだろう!?」

戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟「いや、別に」

鬼A「え”!?」

戸愚呂弟「もし、浦飯がオレを倒せなかったら魔界に行こうと思っていたのは」

戸愚呂弟「魔界ならばオレをたやすく殺せる奴がいると思っていたからだし」

戸愚呂弟「むしろ当然だと思ってるぐらいだ」

鬼B「全然ダメじゃねーか!」

鬼A「くそっ、こんなはずじゃ……!」

鬼B「他になにか情報はないのかよ!?」

鬼A「えぇと……そうだ! お前を倒した浦飯って奴もS級になったぞ!」

戸愚呂弟「やるねェ」ニヤッ

鬼B「喜んでるし!」

鬼A「それと暗黒武術会に出場した、酎、鈴駒、凍矢、陣、死々若丸もS級になったそうだ!」

戸愚呂弟「あいつらか……」

戸愚呂弟「あいつらのセンスならば、それぐらいになってもおかしくないだろう」

鬼A「うぐぐ……。追い抜かれたのにショックじゃないのか」

鬼B「あれ? 一人忘れてないか?」

鬼A「あ、ホントだ。鈴木ってのもS級妖怪になったらしい」

戸愚呂弟「鈴木? 知らないねェ……」

鬼A「ほら、裏御伽チームの大将だった……」

戸愚呂弟(誰……? キビ団子を使う奴だっけ?)

鬼A「鈴木の前は強い妖戦士田中って名乗ってたとか……」

戸愚呂弟「え!? あいつ!?」

戸愚呂弟「ヤツが……S級……」

鬼A「お、今までで一番ダメージを受けてないか!?」

鬼B「他の奴はともかく、この鈴木ってのに抜かれたのはよほどショックだったんだな……」

戸愚呂弟「こうしちゃいられないねェ」

戸愚呂弟「オレにも格闘家としてのプライドがある」

戸愚呂弟「アンタたちにも手伝ってもらって、ここで修行するとしよう」

鬼AB「マジですか!?」

……

…………

戸愚呂弟「はああああああ……!」ボンッ

戸愚呂弟「アンタたちとの修行のおかげで、オレもS級になれたようだねェ」

鬼A「はえーなオイ!」

戸愚呂弟「生きてる時は闇ブローカーの仕事があったり、罪の意識に苦しんだりで」

戸愚呂弟「あまりいい修行ができなかったからねェ」

鬼A「まあたしかに、ここは訓練するのにうってつけだな……」

鬼B「おかげでオレたちはボロボロだけどな……」

戸愚呂弟「さて、苦痛を与える作業を進めてもらおうかねェ」

鬼A「いや……もうネタがないよ、マジで」

鬼B「だいたいS級妖怪にオレらがどうやって苦痛を与えるってのよ」

鬼B「オレらもアンタの修行に付き合って強くなったとはいえ、せいぜいB級下位ぐらいだぜ」

鬼A「もういいんじゃないか?」

鬼B「うんうん、冥獄界終了!」

鬼A「そうだ、なんだったら生き返ったらどうだ!?」

鬼A「パワーアップしたオレらなら、二人力合わせれば、お前を生き返らすこともできるぞ!」

鬼B「まあ……大して生きられないだろうけどな」

戸愚呂弟「あいにくだが、生き返りなどという邪道をするつもりはない」



幽助「ハーックション!」

桑原「お? ケケケ、バカでも風邪は引くのかよ!」

幽助「んだとコラァ!」

桑原「やめろ! 今のお前に殴られたら死んじまう!」

鬼A「実はさ、これもさっき仕入れた情報なんだけど」

鬼B「お前情報仕入れすぎ」

鬼A「幻海の寿命が近いらしい」

戸愚呂弟「なに?」

鬼A「だからさ、オレらの力で生き返って、看取ってやんなよ」

鬼B「お、それいいな! で、また二人で霊界に戻ってくればいいさ!」

戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟「ダメだ!」

戸愚呂弟「それではなんのために冥獄界に落ちたのか分からない!」

戸愚呂弟「闇ブローカー時代に苦しめた者のためにも……」

戸愚呂弟「オレの力不足で死なせてしまった弟子たちのためにも……」

戸愚呂弟「オレは極限の苦しみを味わわなければならないのだ!」

鬼A「んなこと、もういいじゃねーか」

戸愚呂弟「よくない!」

鬼A「もういいんですよ……先生」

戸愚呂弟「先生……!?」

戸愚呂弟「お前……お前たちはまさか……!」

鬼A「そうです……潰煉によって殺された……」

鬼B「今までずっと名乗らず、すみませんでした、先生」

戸愚呂弟「なぜ!? なぜお前たちがここに!? なぜ鬼に!?」

鬼A「殺された仲間のほとんどは天国に行き、幸せにやってることでしょう」

鬼A「ですが、オレたちだけ……霊界に頼んで“鬼”にしてもらったんです」

鬼B「先生はきっと自分を責め、いつか必ず一番苦しい地獄である冥獄界に来ると分かっていたから……」

鬼B「奴らも働き手が増えてちょうどいい、だなんてあっさり承諾してくれましたよ」

鬼A「ちなみに冥獄界が機能してないってのもウソです」

鬼A「管理者であるオレたちが作動させてないだけです」

鬼A「バレたら牢獄行きじゃ済みませんね。ま、霊界の上層部は地獄になんか目を向けちゃいないし」

鬼A「コエンマは気づいたっぽいですけど、見て見ぬふりしてくれてるみたいです」

戸愚呂弟「どうして、そんなことを……!」

鬼A「そりゃもちろん、先生を救いたかったからですよ」

鬼B「オレらの手で!」

鬼A「現世に戻って下さい、先生」

鬼A「多分半年も生きられないけど、幻海さんを看取るくらいはできるはず」

鬼B「先生が救われなきゃ、わざわざ鬼になったオレたちの魂も救われません」

鬼B「真にオレたちに償いたいと思うなら……戻って下さい!」

鬼AB「お願いします!!!」

戸愚呂弟「……」

戸愚呂弟「やれやれ……おせっかいな弟子を持つとおちおち死ぬこともできないねェ」

鬼A「すみません……」

鬼B「先生の償いに冷や水をぶっかけてしまって……」

戸愚呂弟「いや……かまわない」

戸愚呂弟「お前たちに久しぶりに会えて嬉しかった……」

戸愚呂弟「オレは……お前たちの好意に甘えて、ほんの少し現世に戻ろうと思う」

戸愚呂弟「幻海にもいったことだが……」

戸愚呂弟「世話ばかりかけちまったな……」

弟子A「こちらこそ! 50年ぶりに一緒に修行ができて楽しかったです!」

弟子B「幻海さんにもボコボコにされましたしね! やっぱあの人強すぎ!」

戸愚呂弟「……ありがとう」

…………

……

幽助(今日はもう客来ねーかな)

幽助(そろそろ店じまいにすっか!)

幽助(……ん)

バサッ…

幽助「へい、らっしゃい!」

戸愚呂弟「久しぶりだな、浦飯」

幽助「オメー、まさか戸愚呂か!? 生き返ったのか!」

戸愚呂弟「ほんの少しの間だがね」

幽助「オレと再戦しにきた……ってツラじゃねーな。ばーさんに会いにきたのか?」

戸愚呂弟「まあ、そんなところだ」

幽助「へへ……いっとくけどな。オレ、すげー強くなったんだぜ」

幽助「だけど、オメーもかなり強くなってんな。今なら楽勝……ってわけにゃいきそうもねーな」

戸愚呂弟「伊達にあの世は見てないんでねェ」





おわり

ありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  MilitaryGirl   2022年04月19日 (火) 22:07:21   ID: S:gcwFSM

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2 :  MilitaryGirl   2022年04月21日 (木) 07:40:05   ID: S:Px6ZVQ

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