セイバー「最優から最弱に落ちぶれてしまった……」 (45)

月の聖杯聖杯一回戦五日目
マイルーム

セイバー「……」

白野「セイバー、アリーナへ行こう。ここで落ち込んでいてもしょうがないし……」

セイバー「……私が序盤にペナルティを受けるような行為をしたせいで……申し訳ありません……」

白野(アリーナから戻ってきてからずっとこんな調子か……。ライダー戦の時にセラフから全て遠き理想郷は剥奪、ステは激減され結局トリガーは入手出来なかった……エネミーに手も足も出なかったからだ)

白野(聖杯戦争も五日目、このままではトリガーが足りず一回戦敗退となる。セイバーは塞ぎ込んでるし……いっそ令呪を……)チラ

綺礼『令呪は3つ、つまり三回まではサーヴァントに命令できる。ただし3回令呪を使う……つまり令呪が無くなった瞬間、聖杯戦争への参加権を失いマスターは消滅する』

白野(流石にこの場で使うのはリスクが高すぎるか……。せめて敵サーヴァントについてもう少し調べてみるか……)

白野「セイバー、図書室に行ってくる……」

セイバー「……はい…………」

白野「……」

図書室

白野(無敵艦隊……イギリス艦隊……豪快な女性……クラスはライダー……でも今一つ決定打に欠ける……何か他に手がかりは……)

白野(そういえば何故強力なステータスを有していたセイバーでライダーを倒すことが出来なかったのだろうか……。1回目セイバーは実力を測るために慎重になっていたかもしれない……それによりセラフの介入で戦闘を中止させられた)

白野(でも2回目は前回よりかなり早いタイミングでセラフが介入してきた……。しかも今度はコチラへのデメリットまで与えて……コチラにとっては運が悪かったと言える)

白野(だがライダー達からしてみたらどうだ、それは即ち運が良いと言えるのではないか?ライダー自身も運に助けられたと言っていた。もしかしたらライダーは、何か運に影響を受けた史実や伝承を持って……)

レオ「おや、情報収集とは熱心ですね」

白野「!?」

レオ「おっと、そんなに身構えないでください。貴方に危害を加える気はありませんよ」

白野「レ、レオ……」

レオ「しかし珍しいですね、先日まで余裕に満ち溢れていた貴方がここまで追い詰められた表情をしているなんて」

白野「べ、別に何でもない!」タッタッ

ピシャッ

レオ「……ガウェイン、どう思います?」

ガウェイン「ハッ……恐らくは自身の勝敗に関わるトラブルに遭遇した可能性があるかと……」

レオ「やはり貴方もそう思いますか……。しかし、少し興味が沸いてきましたね。岸波白野ですか……」

戦争戦争六日目
マイルーム

白野(結局調べきれなかった……まだトリガー回収も終わってないし……セイバーはまだ塞ぎこんでるし……)チラッ

セイバー「……」

白野(取り合えず空気が重苦しすぎる……一旦外に出るか……)ガラッ

廊下

慎二「やあ、元気にしてたかい引き立て役君」

白野「し、慎二……」

慎二「何だ、ペナルティ与えられて動揺してるのかい。惨めだねぇ」

白野「……」

慎二「そんなお前にいい提案がある」

白野「提案……?」

慎二「そう、このまま不戦勝なんてのもスッキリしないからね。実はアリーナにいくつかアイテムデータを仕込んでおいた。お前とボクでそれの数を競う。つまりは簡単なゲームをしようってことさ」

白野「……」

慎二「勿論報酬もある。お前が勝てばボクのサーヴァントの情報を一つやるよ。でも受けないんじゃお前の分のトリガーも間違って取っちゃうかもね~」

白野「……分かった。その勝負受けよう」

慎二(かかった!)ニヤリ

慎二「じゃあボクは先にアリーナで待ってるよ。せいぜい楽しませてくれよアッハッハッハッ!」

白野(……今は出来ることをやるしかないか)

アリーナ

白野「……」

慎二「待ってたよククッ……ん?お前、サーヴァントはどうしたんだよ?」

白野「サーヴァントはいない」

慎二「いない……だと……クッ……ククッ……アーッハッハッハッハッ!!コイツは笑えるね!コイツとうとうサーヴァントにまで見限られやがった!ヒャーハハハ!ヒィ……ヒィ……」

白野「……」

慎二「なんだ、今ならコイツ倒すのも楽勝じゃん!ア、別にサーヴァントがいても雑魚だったなお前!」

白野「セイバーは雑魚なんかじゃない……俺の命を救ってくれた大切なサーヴァントだ!」

慎二「ヘッ……言ってろよ。そのサーヴァントに見捨てられたお前なんか倒すのなんて造作も……」

ライダー「いいのかい?このまんま殺っちまって」

慎二「どういうことだよ、ライダー」

ライダー「コイツを殺っちまったらシンジの見せ場が無くなっちまうよ」

慎二「別にいいさ、コイツどうせトリガー手に入れてないんだしサーヴァントがいないんじゃエネミーに倒されるか決戦前に敗退かどちらかだ。せめてコッチで引導を渡してやろうじゃないか」

ライダー「ったく、しょうがないね」チャッ

白野「……!」

ライダー「宵越しの弾は持たない主義だったんだがねぇ……見ての通りアタシの主人の意向だからね。とは言っても悪いとは思わないよ、ココは戦場なんだからね!」バンッ

ガキィンッ!!

ライダー「!?」

セイバー「ご無事ですか?白野」

白野「セイバー……」

慎二「チッ……あと少しだったのに……」

セイバー「申し訳ありませんでした……私が不甲斐ないばかりにペナルティを受けるのみならず、マスターである貴方を見殺しにしてしまうところでした……。ですがもう落ち込んではいられません。勝ちましょうこの闘いに」

慎二「行くぞ、ライダー!こうなったら先にアイテムを回収するぞ!ついでに奴らのトリガーも奪ってやる!」タッタッ

ライダー「お、いいねぇその悪役っぷり。……セイバーと言ったかな?楽しみにしてるよ」タッタッ

セイバー「行きましょう白野!奴らからアイテムを先に回収するのです!」ダッ

白野「ああ!」ダッ

慎二「遅いなあ!遅い遅い!」タッタッ

ライダー「お宝が一つ二つと増えてくねぇ!最高だよ!」タッタッ

セイバー「クッ……!奴ら俊敏強化の礼装を使っていますね……こちらのスピードでは追い付けません!」

慎二「コッチだライダー!」ダッ

ライダー「あいさ!」ダッ

セイバー「私達も後に!」

白野「待て、セイバー!俺達は別ルートを進もう!慎二達のルートは確か資料を隠していた部屋だ!行き止まりだ!」

セイバー「分かりました!」タッタッ

セイバー「あれは……」

白野「トリガーだ!」

セイバー「やりましたね、白野!これで……」

白野「決戦参加の資格を得た!」

慎二「そいつはどうかな」

白野「慎二……もう追い付いたのか……」

ライダー「まったく……もう少し道ぐらい覚えたらどうだい……」

慎二「うるさいっ!なんとかも筆の誤りってヤツだ!とにかくコイツらをヤれば二回戦進出は確実なんだ!行くぞライダー!」

ライダー「これでも食らいな!」バンッ

セイバー「……」ガキィンッ!

ライダー「しつこいね……」バンバンバンバン

セイバー「……」ダッ

ライダー「何!一瞬で後ろを……」

セイバー「そこだ!」ズバッ

ライダー「なっ……!」

セイバー「……さて、何度も同じ行動ばかりと言ったのはどちらだったのやら」

慎二「ライダー!」

ライダー「ちょいと……やられちまったかねぇ……」

慎二「すぐに戻るぞ!……チッ、覚えてろよ!」

ピカーン

セイバー「ハァ……ハァ……まさか、ペナルティを与えられただけでここまで余裕が無くなるとは……」

白野「セイバー、俺達も学校へ……」

セイバー「ちょっと待ってください……あそこにあるアイテムデータは何でしょうか……」

白野「これは……金銀財宝をイメージしたアイテムデータだ。慎二の言っていたヤツか……」

セイバー「一応持っておきましょう。金銀財宝ということはお金になるかもしれません」

白野「言っとくけど金になっても焼きそばパンは5個までな」

セイバー「そ、そんな……あんまりです!せめて7個……」グーキュルル

白野「ダーメ」

一回戦六日目終了

マスター:岸波白野
クラス:セイバー
真名:???
宝具:???、???
筋力:D耐久:E→D俊敏:D魔力:E幸運:C
スキル:直感A、騎乗B、カリスマB

一回戦決戦日
マイルーム

白野「しかし結局慎二から情報は貰えなかったな……」

セイバー「取り合えず今現在で可能な限り情報を整理していくしかありませんね……」

白野「銃を使う、豪快な気質、乗り物に縁がある、イギリスの艦隊……」

セイバー「イギリス……?それはブリテンの事ですか?」

白野「ブリ……何それ?」

セイバー「し、失礼しました。他に情報は無いのですか?」

白野「後は……そうだ、異常なまでに運がいいって事かな」

セイバー「運……ですか。それなら思い当たる節が……」

セラフ『間もなく第一回戦開始時間です。出場者の方は準備をしてください』

白野「時間か……行こう」

セイバー「ハ、ハイ!」

廊下

綺礼「うむ……2種類のトリガーを確認した。それではトリガーを嵌め込み扉の奥へ進むがいい」

白野(いよいよ……決戦……)

セイバー「行きましょう」スタスタ

白野「……ああ」スタスタ

ガタン!

白野「!?」

ウイィィィィン

セイバー「安心してください、ただのエレベーターです」

慎二「なんだ、そのぐらいでビビってるのか情けないなぁ」

白野「慎二……」

慎二「まあ、ビビって当然だよね。このボクが相手なんだからさぁ!」

白野「……」

慎二「まあ取り合えずトレジャーハンティングご苦労様。おかげでこっちは絶好調だよ!」

ライダー「しかし用意したお宝が一つ足りなかったけどねぇ……」

慎二「いいじゃないか、調子は上がったんだろエル・……っと。まあいいやそれはそれとして……岸波、お前に上手い話があるんだけど」

白野「……何だ」

慎二「このボクにさ勝ちを譲らない?ボクが勝つのは明白だけど、こっちもまだ切り札は切りたくないんだよ。君が乗ればボクは無傷で君も無傷……な、上手い取引だろ」

白野「……」

慎二「なんだ、聞く耳持たずか……。オイ、サーヴァントからも何か言ってやれよ!」

セイバー「……実に哀れだ。このような男が白野の親友だなんて……。それでも友人として接している辺り何かあるのですかね……。私から見れば歩く海産物にしか見えないのですが……」

慎二「なっ……!なっ……!!」

ライダー「アッハッハッハッ!ついに言われちまったねぇ慎二!まさか歩く海産物とはねぇ」

慎二「う、うるさい!お前どっちの味方だよ!」

ライダー「勿論アタシはアンタの味方さ。なんたってアンタの副官なんだからね」

慎二「ならコイツらをギッタンギッタンにしてやってよ!」

ライダー「あいさっ!報酬は弾んでくれよマスター!」

ガコンッ!

セイバー「着いたみたいですね、マスター。……行きましょう」

白野「……」コクッ

闘技場

白野「……」

慎二「ヤッちまえ!エル・ドラゴ!」

セイバー「エル・ドラゴ……やはり貴女でしたか……伝説の大海賊……フランシス・ドレイク」

ライダー「アチャー……シンジの奴自分からバラしちゃったよ……。でもね、アタシ達だってアンタの真名を知らない訳じゃないんだよ、騎士王さん」

セイバー「なるほど、お互いに対等な勝負と言ったところか」

ライダー「止してくれ、本来ならアンタの方がアタシより格上だよ。出来れば弱体化なんかせずに本来のアンタと戦いたかったけどねぇ!」

ジャキジャキジャキ

セイバー「なっ!空間から砲台が……!」

ライダー「主砲……放てぇ!」

ドンドンドン!

セイバー「クッ……!」

セイバー「ハァッ!」

ガキィンッ!

セイバー「なっ……船が盾になって……」

ライダー「もういっちょ!」

ドガァ!

セイバー「クッ……クソ……」ヨロ

白野「セイバー!」

慎二「なんだ、最優の英霊って聞くから何かと思えば……もういいや、ライダー!トドメを刺しちまえ!」

ライダー「なら見せてやろうかね!アタシの宝具しかとその目に焼き付けな!」

ゴゴゴゴゴ……

白野「戦艦がこんなに……」

セイバー「これこそがフランシス・ドレイクの持つ日常にして略奪、そして逆転の象徴……火船と嵐の夜の伝承が合わさった宝具……!」

ライダー「弾丸の雨をその身に浴びな!黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)!」

ドンドンドンドゴォォォン……

慎二「やった!やったぞ!流石ボクのサーヴァントだ!後で褒美をくれてやる!」

ライダー「ソイツはありがたいんだけどねぇ……どうやら喜ぶのはまだ早いみたいだよ……」

セイバー「ハァ……ハァ……流石だな……エル・ドラゴ」

慎二「なっ!なんでまだ立ってんだよアイツ……!」

ライダー「なるほど、アタシの弾丸の嵐に対してソッチは風で対抗したわけかい」

白野「風……?セイバーの剣が見えて……」

セイバー「ご名答だ、エル・ドラゴ。私の剣を覆っていた風王結界(インビジブル・エア)を解放することで弾丸の軌道を逸らした」

ライダー「まさか獲物を隠すだけじゃないとはねぇ……。だが、だからと言って第二撃が無いわけじゃないよ!」

ジャキジャキジャキ

セイバー(マズい……。もう風王結界は使えない……。第二撃を食らったら確実に負ける……!勝つには戦艦を一気に破壊するしか無いが……あの量の戦艦を相手にするにはマスターの魔力が……)

白野「……!」

パシィッ

セイバー「……!?体が動かない……!」ビリビリ

慎二「頭のいい戦い方ってのはこういうことさ」カタカタカタ

セイバー「これは……コード・キャストか!」

慎二「これでお前は動けない。ライダーの宝具のいい的さ!」

セイバー「クッ……」

白野「……令呪を持って命ずる!セイバー!」

カァァァ!!

セイバー「白野……」

ライダー「これで終わりさ!」

白野「俺を信じろ!」

セイバー「!!」

ドンドンドンドンドンドン!!

ヒュン!

ライダー「……!」

ドゴォォォ……

慎二「な、何が起きたんだよ……船が……全部焼けて……」

ライダー「なるほどね……アンタの目玉宝具でアタシの船を弾丸ごとブッタ斬ったってわけか……」ザシュウッ

慎二「ライダー……!」

セイバー「……貴女の敗けだ……フランシス・ドレイク……」

慎二「うるさい!黙ってろ!!ライダー、おい!立てよ!それでもボクのサーヴァントか!こんなところで倒れるようなヤツじゃないだろ!」

ビィィィィィィン……ガシャン!!

白野「な、これは……一体……」

慎二「何だよこれ……こんなの聞いてないぞ!?ただのゲームじゃないのかよ!」

ライダー「何を今更……これは戦争だよ。敗者はただ死ぬだけさ……」

慎二「う、うわぁぁあ!!データが凄い勢いで分解されていく……!ラ、ライダー、何とかしろよ!」

ライダー「無茶言うねぇ……こればかりはいくらアタシでも無理さね……。それにさシンジ、悪党なんざ最後は笑えるくらい惨めなもんさ……そりゃもう酷いくらいにね。こんな死に方でも贅沢なもんだよ」

慎二「お前何悟ったようなこと言ってんだよ!悔しくないのかよ!アレだけやっといて最後に負けてわけも分からず死ぬだなんてそんな……そんな……」

ライダー「悔しいかって?そりゃヘドが出るほど悔しいさ。だけど戦争なんて所詮はそんなもんさ……むしろ悔しいと思える時間があるだけありがたい……」

白野「……」

ライダー「まさか初っぱなからアンタ達みたいなのと戦えるとは思わなかったさね。中々歯応えのある戦いだった。アタシは強いヤツ専門の海賊なんでね……楽しませてもらったよ。アタシ達をこんな目に遭わせたんだからそれ相応の戦果を期待しとくとするかねぇ」

セイバー「……言われずともこの戦い、最初から勝つつもりだ」

ライダー「そうこなくっちゃねぇ……。それじゃあシンジ、先に行っとくよ……」スウ……

慎二「なっ……!おい、ライダー待てよ、助けてくれよ!」

白野「……」

慎二「……そうだ、お前達が助けろよ!元々はお前達が負けないから……うわぁぁあ!死ぬ!死ぬ!なんでリアルのボクが死ぬって分かるんだ……。ちくしょう……まだ八歳なんだぞ……こんなところで死にた……」スウ……

白野(まさか本当に……慎二が……死んだ……?)

セイバー「……行きましょう、もうこの場には何もありません……」

マイルーム

白野「……」

セイバー「まだ、忘れられないと言うのですね……」

白野「本当に……慎二は死んだのか……?」

セイバー「はい、もうこのムーンセルに彼の魂は存在せず……そして彼自身も死んでいるでしょう」

白野「……」

セイバー「それにまずは貴方は自身の心配をすべきです。私に宝具の開帳をさせるためだけに令呪を使うだなんて……」

白野「……今日はもう寝よう、セイバー」

セイバー「……分かりました」

セイバー(しかし何故、白野は私にもう一つの宝具があることを知って……。そして何より何故一般的な魔術師であるはずの白野があの一撃を撃った後も五体満足で……)

一回戦終了

マスター:岸波白野
クラス:セイバー
真名:???
宝具:???、風王結界
筋力:D→C耐久:D俊敏:D魔力:E→D幸運:C
スキル:直感A、騎乗B、カリスマB

今回はここまで

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