玄「バイバイ ドラゴンワールド」(106)

準決勝 大将戦オーラス

淡(ふんっ、この私に勝とうなんて100年はやいよ!)

淡「ツモ、6000・――」

穏乃「大星さん……カン裏、見た方がいいですよ」

淡「ん?ああ、ルールだしね……」

淡(まだ負けが認められないのか。哀れなやつだな)

トンッ

淡「えっ……」

穏乃「……残念だけど大星さん。そこはもう――」




穏乃「あなたの領域(テリトリー)じゃない!」キリッ

恒子『試合終了~ッ!準決勝第一試合、ここに決着~!!』

恒子『トップ通過はダークホース阿知賀女子学院、高鴨しずのおおおおおおおおおおおおっ!!』



憧「いよっしゃあああああああああ!!しずがやってくれたわ!見て見て、私のしずが!!」

灼(だからなんで穏乃が憧の所有物になってるのさ)

玄「うわー、流石だね。主人公のオーラ出まくりだよー」

宥「穏乃ちゃんすご~い。でも阿知賀が決勝進出できたのも私がここまでぜーんぶ収支プラスで点棒稼いできたおかげだよね?」ニコッ

ドアバァンッ!

穏乃「うおおおおおおお!やったよみんな!あの白糸台を倒したよ!天下無敵の白糸台だよ!?」

憧「よくやったわ、しず!決勝進出祝いにキスしてあげる!んー」

穏乃「それはいいや」

憧「ちっ」

灼「やったね。穏乃は奇跡を起こしてくれると信じてたよ」

穏乃「はい、ありがとうございます!」

宥「今の穏乃ちゃんならあの宮永さんといい勝負出来るんじゃないかな~?」

穏乃「ウェヒヒ、それは流石に無理ですよ!」

晴絵「よくやったぞ、しず!ご褒美に好きなの奢ってやるから何でも言ってみんさい!」

穏乃「そうだなぁ……いつもの私ならラーメンで決まりなんですけど、今日は無駄に頭を使ったんで甘いものが食べたいです」

穏乃「例えば――ドラ焼きとか!」

晴絵「ドラ焼きだな。よしまかせろ!」

晴絵「……ん、ドラ?」

宥「そうだ……玄ちゃんのドラ支配はまだ……」

玄「うぅ……ゴメンなさい。決勝戦までにはなんとか復活させてみせます……」

穏乃「玄さんなら大丈夫ですよ!絶対決勝までにドラ支配は復活しますよ!」

玄「うん。ありがとう、穏乃ちゃん」

憧「えーゴホン、そのことについてなんだけど」

玄「?」

憧「仮にドラが復活したとしてもさ、決勝戦でまた同じ目に遭うんじゃない?」

憧「だってあの宮永照は玄のドラ支配関係なく収支+90000点を叩き出したんだよ!」

玄「はうぅ……」

憧「準決勝みたいに他校が玄をサポートしてくれるとは限らないし……」

憧「正直言ってこのままドラ爆体質を復活させるだけじゃ先鋒戦でトビ終了もありえるわ」

穏乃「えっと……」

灼「まあ……その」

宥「……」


シーン……


玄「ゴ、ゴメンね……私が、私が頼りないからみんなを不安にさせてるんだよね……」

玄「うぅ…ひっく…ぐすっ、うわあああああああああん」

穏乃「玄さん……」

宥「あわわわわわ、これ以上玄ちゃんの戦犯顔が全世界に晒されるのお姉ちゃん見たくないよぉ」

憧「話はまだ終わってないわよ」

宥「えっ」

憧「先鋒戦終了後の和との約束覚えてる?」

憧「まだ清澄は決勝進出確定してないけど、もし和が勝ち上がってきた時に先鋒戦でトビ終了なんかされたら」

憧「せっかくの夢の舞台で一緒に遊べるっていうのに、和もガッカリするんじゃないかしら?」

憧「あの時の和、私達と遊べることに喜びを感じてたっぽいし……」

宥「あ、憧ちゃん、これ以上はもう――」



玄「うっ……うぅ……うううううう……」



穏乃「玄さん……?」

玄「あうあうあー……」


バタンキュー ブクブクブクブク


穏乃「うわっ、玄さんが泡吹きながら倒れた!」

憧「やっば。やり過ぎたわ」

灼「玄は豆腐メンタルだから……」

宥「玄ちゃん、しっかりしてぇ!玄ちゃあああああああん!」

……………………



…………



……

――うーん……


ザワザワザワザワ


――なんだか騒がしいのです……


恒子『それではインターハイ団体戦決勝先鋒戦スタートですっ!』


――決勝戦……?


照『……』


――あ、あれは宮永さん……えっ?


玄『うぅ……今日もまた宮永さんに大事な点棒いっぱい取られちゃうのかなぁ……』

玄『お姉ちゃん、どうしよぉ……』


――これは私……だよね。じゃあここにいる私は……どういうこと?

照『……!!』カッ


――この感じ……準決勝の時とおんなじだ……そうだ、あの時も見透かされたんだっけ……


照『ツモ、300・500』


――知ってる……これから何が起こるのか……私は知ってる


照『ロン、2600』


――いや


照『ロン、3900』


――やめて


照『ロン、12000』

――お願い


照『ロン、18000』


――見たくない 聴きたくない


照『ロン、24000』


――もうこれ以上みんなの大事な点棒を奪わないで……







照『ロン、48000』












『あっ…ああ…いやあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!』






……………………



…………



……

玄「うぁ……たす…けて……おかあ…さん……」

晴絵「おい玄、しっかりしろ!」

玄「……うっ……んあっ」パチクリ

晴絵「ほっ、やっと目覚めたか……」

玄「あ、あれ…赤土……さん?」

晴絵「大丈夫か?お前めちゃくちゃ魘されてたぞ……」

玄「そ、そうだ……私は宮永さんに……連続和了を……」

晴絵「宮永?宮永なんてここにいないぞ」

晴絵「怖い夢でも見てたんだろ。高校生にもなってそんなんじゃ先が思いやられるな、はっはっは!」

玄「うぅ…あかどさん……あ"がどざあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ん」

晴絵「おーよしよし、何だかよくわからんが私の胸で思う存分泣くがいいよ」

玄「うわあああああああああああああああん」

10分後

晴絵「どう、落ち着いた?」

玄「……はい」

晴絵「さて、どこから話せばいいのやら……」

晴絵「……玄は自分がぶっ倒れたのは憶えてる?」

玄「は、はい、えっと……ごめんなさい。憶えてないです」

晴絵「ああ、気にするな。準決勝が終わってからいろいろあって玄が気絶したんだよ」

晴絵「頭ぶつけてたから記憶が飛んでも仕方ないさ」







玄(………………)ボーッ


――仮にドラが復活したとしてもさ、決勝戦でまた同じ目に遭うんじゃない?





玄「あっ……思い…出しました……」

玄「憧ちゃんにドラが復活しても決勝戦は厳しいっていわれて……」

玄「そう、それから目の前が真っ暗になって……うっ、うううう」グスッ

晴絵「お、おいおい。本当に大丈夫か?」

晴絵「憧ならさっき十分に叱っといたから気にするなよ」

玄「いえ……ドラが復活しても決勝戦が厳しいのはホントなんで……」

玄「それに私、夢を見たんです……」

玄「宮永さんから永遠に和了られ続ける悪夢を……」

晴絵「玄……」

玄「もういやなんです……」

玄「みんなが…みんなが必死に築き上げてきたものを私一人で何もかも台無しにしてしまいそうで……」

玄「麻雀を打つのが怖いんです……」

晴絵(玄、もしかしてあの時の私みたいに――)

玄「たすけて…ください……」

玄「このままじゃ私プレッシャーで押し潰されそうなんです、麻雀が嫌いになりそうなんです……」

晴絵(そこまで追い詰められてたのか……)

玄「うぅ……ひっく……うわあああああああああああああん」

晴絵「……顔を上げな、玄」

玄「……ぐすっ」

晴絵「私もさ、あんたみたいな強敵とあたって麻雀が嫌いになった時期もあったよ」

晴絵「それも牌を見る、触るのが嫌なくらいに……」

晴絵「それでもね。あんた達と一緒にまた麻雀をやるようになって少しずつ、少しずつだけどまた麻雀を好きになった」

晴絵「……だから私はこれ以上昔の自分のような経験を他の人にさせたくないし、見たくもない。それが教え子ならなおさらね」

玄「……」

晴絵「もし…もしお前が本当にどうしようもなく辛くなって全てのことから逃げ出したくなった時」

晴絵「これを使ってくれ」

玄「これは……?」

晴絵「……秘密だ」

玄「へ?」

晴絵「ただ一ついえることはそれを使えば絶対にお前は負けない。あの宮永照にさえだ」

玄「は、はぁ……」

玄(すごく気になる……)

晴絵「……少し話は変わるけど、玄は小鍛治健夜って知ってる?」

玄「は、はい!プロ麻雀リーグのタイトルを総ナメにした生きる伝説、小鍛治プロですよね」

晴絵「うん。その秘密兵器はね、私が小鍛治プロを倒すために編み出したものなんだよ」

玄「えっ!?」

玄「そ、そんなすごいのを私がもらっても……?」

晴絵「うん。今それを必要としているのは私じゃなくて、玄。お前だからね」

玄「赤土さん……ありがとうございます!」

晴絵「ははっ、気にしないでいいよ。……ただ、それを一度使ったら――」

玄「一度使ったら……?」

晴絵「……いや、何でもない」


晴絵(もし何かあっても私が絶対助けるから……)


玄「?」

コンコン

クロー? ダイジョウブー?

玄「この声は……憧ちゃん?」

晴絵「きっとさっきのことを謝りに来たんだろ。憧ー、鍵空いてるから入っていいぞー」

ガチャッ

憧「……晴絵もいたんだ」

晴絵「ああ、これでも一応引率責任者だからな!」

憧「ふーん……。あの、玄」

玄「……」

憧「さっきはゴメン……。準決勝で一番悔しい思いをしたのは玄なのに、私玄のことなにも考えないで発言してた」

玄「……ううん、私は大丈夫だよ」

玄「今思えば私のことを想ってたから憧ちゃんは本音をぶつけてくれたんだよね、私嬉しいよ。ありがとう!」

憧「うぅ、ゴメンね。あたし偏差値70あるのになんであんなこと言っちゃったんだろ。ホントにゴメンね……」グスッ

晴絵「おいおい、玄の次は憧が泣くのか?青春してんな、お前ら!はっはっは!」

憧「こ、これは嬉し泣きよ!勘違いしないでよね!」

晴絵「はいはい」

憧「そ、そうだ!私一応宮永照対策を考えてきたんだけど……」

憧「もし体調が戻ったならちょっと私の話聞いてみない?できることなら今のうちに何でも試してみたいし……」

玄「憧ちゃん!」ギュッ

憧「ふぇっ!?」

玄「ありがとう、憧ちゃん。私、これでまた宮永さんと戦えるよ!」ニコッ

憧「えっと……///」

穏乃「玄さん、私も手伝いますよ!」

灼「苦しんでる仲間をただ見過ごすなんてできない…」

宥「玄ちゃんファイトー!えいえいおーっ!」

憧「ちょ、あんた達いつの間に……!」

穏乃「細かいことは気にしない!ノリだよノリ!」

憧「ま、まあいいわ。それで宮永照対策なんだけど……やっぱりドラ縛りをやめて速攻を狙うしかないと思うんだ」

玄「ふぅ~む……」

穏乃「ダメだよ、憧!それじゃ宮永さんが簡単にドラを抱えちゃうし、打点上昇を防げないよ!」

憧「だから私が鳴き麻雀を玄に徹底的に叩きこんで速攻で流してなんとかするって作戦よ!」

玄「私はドラ麻雀で決勝に臨みたいなぁ。お母さんもそのほうが喜ぶだろうし」

ワイワイ ガヤガヤ




晴絵(あいつらは大丈夫そうだな……。でもやっぱり問題は玄だ)

晴絵(アレを使ったら……うん、万が一の事態に備えて今のうちに準備をしておこう)

晴絵「頑張れよ、みんな……」ボソッ



ガチャッ

穏乃「ロンロンローン!リーチ一発平和断ヤオ裏ドラ、8000!」

玄「うぅ、またやられちゃった……ドラもまだ戻ってこないし……」

憧「はい、次!」

宥「玄ちゃん、頑張れ~」

灼(……あれ、ハルちゃんがいない。お手洗いかな?)




だが赤土晴絵はそのまま姿を見せず、次の日も玄達の前には現れなかった


そして決勝の日を迎えて……

穏乃「あわわわわ。赤土さん、あの日以来姿を消しちゃったよ……」

宥「もしかして私達見放されちゃったのかな……」

灼「違う!ハルちゃんはそんなことしない!!」

宥「そ、それじゃ誘拐されたの……?」

灼「うっ……」

穏乃「やっぱり警察に通報した方がいいんじゃ……」

憧「みんな!これ見て!」

穏乃「憧?」

憧「晴絵からの手紙よ!ベッドの下に隠れてたわ!」

灼「貸して!」バッ

憧「ひっ!」

穏乃「な、何て書いてあるんですか……?」

灼「……」






みんなへ

ゴメンね。私は今外せない用事があってここを離れている

でも心配しないでほしい。決勝戦には絶対戻ってくる

決してお前達を見捨てたわけじゃないんだ ただ

穏乃「ただ……?」

灼「……ここで終わり」

穏乃「えっ、えっ?どういうことですか?」

灼「わからない……でもひとまず安心してよさそうだね。ハルちゃんの筆跡だし、匂いもする」

穏乃「そ、そうですか……」

穏乃(匂いって……)

玄「……大丈夫だよ」

宥「?」

玄「赤土さんはきっと戻ってくるよ。私達は赤土さんを信じて会場に向かおう!」

憧「そうね。いつまでも晴絵のことを気にしてたら私達の本当の目的を見失いそうだわ」

穏乃「それって和と遊ぶこと?」

憧「それもある。でもここまできたら狙うのはもちろん――インターハイ優勝しかないでしょ!」

玄「うん!せっかく決勝まで勝ち上がったもんね。和ちゃんと遊ぶだけじゃなく優勝して最高の思い出を作ろう!」

灼「そうだね。ここまできたら優勝したい」

穏乃「な、何だかよくわからないけど燃えてキターッ!うおおおおおお!!」

宥「私もみんなとあったか~くなりたいな」

憧「ほら、遅刻して不戦敗なんか一番不完全燃焼なんだから急ぐわよ!」

穏乃「おーっ!」

灼(それにしても……ハルちゃんはどこに行ったんだろう)

そして決勝戦

玄「では行ってきます!」

憧「玄、頑張ってね!」

穏乃「ゴーゴー玄さーん!」

宥「いっぱい点棒とられてもお姉ちゃんが奪い返してあげるからね?」

灼「応援してる……」

玄「ん"ん"んーっ!阿知賀のドラゴンロード、松実玄にお任せあれ!」

恒子『お前ら飯はすませてきたか~っ!?腹が減っては戦は出来ぬ!しっかりお昼ごはんとっておけよー!』

健夜『……』

恒子『ちなみに私は小鍛治プロのおごりでB定食を食べてきました!小鍛治プロは焼肉定食でしたっけ?』

健夜『な、何言ってんの!そんなの今言わなくていいから!』

恒子『どうせならデザートも付いてるC定食を頼めばよかったと少し後悔してます!』

健夜『もー!麻雀と関係ない話してるとまたスポンサーからクレームがくるよ!?』

恒子『その時はすこやんが私を養ってね?』

健夜『そのやり取り2回目だよ……』

恒子『はい、そんなわけで選手紹介をしていきたいと思うんでお前ら、耳の穴かっぽじってよ~く聞いとけ!』

恒子『まずは今大会大本命の白糸台高校、宮永照選手だー!』

恒子『準決勝では2位通過でしたが、個人で稼いだ点数は何と90000点!』

恒子『再びロンツモ地獄で対戦相手を戦意喪失させてしまうのか!私、気になります!』

照「……」ペラペラ

健夜『宮永選手は相変わらずマイペースですね。……何の本読んでるんだろ?』

恒子『そして次はここ!臨海女子高校です!』

恒子『5人中4人が留学生という異質のチームですが、先鋒を任されたのは昨年度インターハイ個人戦3位の辻垣内選手です!』

智葉「……」

恒子『何と今日は日本刀を持参しての出場です!銃刀法に違反しているのではないか少し心配ですっ!』

恒子『そしてそしてー、お次はインターハイ初出場ながらも怒涛の快進撃、清澄高校!』

恒子『今日の相手はみんな上級生!一年生ながらもタコスパワーと若さで善戦してきた片岡選手!今日も得意の東場で大暴れするのでしょうか!?』

健夜『若さかぁ……』ボソッ

優希「今日はタコスとマント、両方用意してきたじょ。もうかませ役はゴメンだじぇ!」

恒子『そしてそしてそして!最後に登場するのは阿知賀のドラゴンロードこと松実玄ちゃんだああああああああああ!!』

健夜『松実選手だけちゃんづけなんだね……』

玄(今日こそは……今日こそは絶対にみんなの大事な点棒を守ってみせるよ!)

玄(ドラゴン復活の儀式に付き合ってくれたみんなのために……そして私自身のためにも)

玄(勝負です、宮永さん!)ゴッ


恒子『それでは泣いても笑ってもこれが最後!インターハイ団体戦決勝先鋒戦、スタートですっ!』

東一局 親:優希

カチャッ スチャッ

玄(うん、手配は良形の一向聴!これならダマでも跳ね満だよ!)

優希「リーチだじぇ!」バッ

玄(えっ!?)

照「……」

智葉「へえ……」

恒子『おーっと、片岡選手いきなりの先制ダブル立直だああああああああ!』

照「……」トン

智葉「……」トン

玄(ど、どうしよう……現物ないよぉ。と、とりあえず西を……)トンッ

優希「お姉さん、甘いじぇ!」

玄(まさか……)

優希「ローン!ダブリー、一発、混一!18000!」

玄「はうぅ……」

照「……照魔境」ゴッ

優希「一本場だじぇ!」

穏乃「うわっ、玄さんいきなり振り込んじゃった!!」

憧「あれはもはや事故よ。私でも振り込んでたと思うし……」

灼「これが決勝……」

宥「く、玄ちゃん頑張って~……」





その後も玄は他家に和了られ、一人焼き鳥で局は進んでいった……

恒子『な、な、何ということだ~っ!ここまで白糸台、臨海女子、清澄の三校の大接戦で試合は進んでいます!』

健夜『序盤は片岡選手の跳ね満でいっきに点数が動きました!』

健夜『それからは宮永選手が連続和了をしても辻垣内選手、片岡選手の速攻で流れて行きましたね』

恒子『珍しいですよね。今までなら安手の速攻とか関係なく宮永選手の独壇場!って感じで進んでくことが多いんですが』

健夜『決勝戦だから相手も手強いんだと思います』

健夜『それにまだ前半戦だからね。でもこのままの調子でいくと後半戦はきっと……』

恒子『あーっと、そうこうしてる内に松実選手が宮永選手に振り込んで前半戦終了!』

恒子『阿知賀女子はややスタート躓いちゃいましたね!後半戦に期待しましょう!ではここでCMです』

玄「うっ、うう…うわあああああああああああああああん」

玄「やっぱりドラを復活させるだけじゃダメだったんだ……」

玄「ゴメン……ゴメンねみんな……せっかく昨日は私のために付き合ってもらったのに……」

玄「こんなことなら憧ちゃんの教えの通りドラ麻雀を捨てて、鳴き麻雀に徹すればよかったよ……」グスッ

玄「あうあうぁー……ぶくぶくぶく」

バタンキュー




穏乃「あっ、また玄さんが倒れた!」

憧「きっとトラウマが甦って気を失ったんだわ……じゃなくて!」

憧「みんな急いで!玄を助けに行くわよ!」

灼「うん」

宥「あわわわわわ。玄ちゃん、しっかりしてよぉ」

……………………



…………



……

――うーん……


ザワザワザワザワ


――あ、あれ?何だろこの感じ……以前も同じのを体験したような……


恒子『宮永選手、テンパイです!だんだんと勢いづいてきました!』


――宮永さん……?


照『リーチ』

恒子『またまた連続和了が始まるのか~っ!?』


――そうだ。私はあの会場で麻雀をして……

照『ロン、3900』


――また宮永さんに大事な点棒奪われちゃったんだ


智葉『ロン、1300』

優希『ローン!2600だじぇ』

玄『はうぅ……』


――宮永さんだけじゃない。今度はみんなに取られたんだった

ザザッ ザザツ


――あ、あれ?視界が乱れて……


憧『ちっ、また玄が振り込んじゃった』


――憧ちゃん……?


穏乃『やっぱり玄さんに宮永照の相手をさせるのは無理だったんだよ』


――えっ


灼『憧が先鋒だったらまだ何とかなったかもしれない』

宥『玄ちゃんは所詮ドラ置き場でしかないから……』


――やめて 聴きたくない


憧『ホントよもう。これじゃ和と遊べないまま玄のトビ終了ね』


――違う こんなのみんなじゃない







穏乃『和もこんな結果じゃ悲しんでるだろうなー』















――もうやめてよぉ……

ドアバァンッ!

穏乃「玄さあああああああああああああああん!大丈夫ですかあああああああああああああ!」

玄「……」

憧「ヤバイ、白目むいてるわ!」

灼「宥さん!救急車を呼んでください!」

玄「うっ……」ピクッ

宥「ま、待って!」

玄「うぅ……うううう」ムクリ

宥「玄ちゃん大丈夫?私が誰だかわかる?」

玄「あ、あれ……お姉ちゃん?」

憧「ほっ、意識はあるみたいね……」

玄(そうだ……私、みんなの大事な点棒いっぱい奪われちゃって……あっ……ああああああああ)ズキッ

玄「……ごめん…なさい……ごめ……ん…なさ……い……」

宥「?」

玄「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

憧「えっ」

玄「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

灼「玄……?」

玄「私がみんなの夢を……なにもかもぶち壊しちゃった……私が悪いんだ……私が…私が……このわたしがっ!!」

穏乃「しっかりしてください玄さん!」

玄「あぅ……ああ……うわああああああああああああああ!!」


ピンポンパンポーン

『休憩時間はまもなく終了します。出場選手はすみやかに集まって下さい』

玄「もういやだ……麻雀なんて…大嫌い……助けてよ……私を助けてよ……」

憧「玄……」

宥「……憧ちゃん、ここはお姉ちゃんにまかせて!」

憧「宥姉?」

宥「ねえ、玄ちゃん」

玄「……みんなの夢……私が……」

宥「話をきいてね」ニコッ

パーン!

玄「あぅっ」

憧「うわ」

穏乃(宥さんのビンタ……初めて見たよ……)

玄「………………」

宥「少しは落ち着いた?」

宥「私お姉ちゃんだから玄ちゃんが今何考えてるか全部わかるよ」

宥「きっと"またみんなの大事な点棒とられちゃった" "これ以上みんなに迷惑をかけちゃいけない"」

宥「だよね?」

玄「………………」

宥「すごく辛いよね。苦しいよね。私達を応援してくれる人達の期待に応えれない、」

宥「阿知賀のみんなを失望させてるんじゃないかって考えると……すごく怖いよね」

宥「やっぱり今の点数状況じゃ玄ちゃんに"何やってんだ、もっとしっかりしろ!"」

宥「"ドラゴンロードたいしたことねえな"って玄ちゃんを傷つける人、責める人もいると思う」

宥「それでも……それでも私は玄ちゃんを絶対に責めないよ」

宥「だってここまでこれたのもそれはまた玄ちゃんのおかげだから……」

宥「玄ちゃんが穏乃ちゃん達と一緒にインターハイを目指し、私を誘ってくれなかったらこんなあったか~い場所に辿り着けなかったんだもん」

宥「私はね。玄ちゃん、そしてここにいるみんなに感謝してるんだよ?」

宥「いつもこたつでおみかんを食べるぐーたらで退屈な世界を劇的に変えてくれたから」

玄「…………」

宥「だからもう少しだけ頑張ってみよ?」

宥「途中で物事を投げだすなんて格好悪いし、応援してくれる人もそれだけは一番やっちゃいけないって思ってるよ」

宥「きっとお母さんも結果はどうであれ最後まで戦ってる姿を見たいと思ってるし……ね」

玄「おかあ……さん……」

宥「うん。それに私が決勝戦前に言った言葉を憶えてる?」


玄「……いっぱい点棒とられてもお姉ちゃんが奪い返してあげる……」


宥「そう。次鋒戦までつないでくれたら私が絶対に玄ちゃんの分まで点棒取り返してあげるから……」

宥「だからファイト!玄ちゃん!」

玄「お姉ちゃん……」

穏乃「そうですよ!ここまでこれただけでもすごいことなんですから胸を張って下さい、玄さん!」

憧「うん。それにこれは団体戦だからね。トビさえしなければいくらでも巻き返すチャンスはある!」

灼「安心して、玄。他家が安手の速攻で和了ってるからこのペースでいけばトビ終了はなさげだよ」

玄「みんな……」

穏乃「だからもう一度戦いましょう!玄さん!」

「あの、休憩時間終わってるんではやく準備してもらえませんかね……」

憧「ほら、係員も困ってんじゃない!」

玄「うわわ、ゴメンなさい!今すぐ行きます!」ダッ

灼「大丈夫そうだね……」

宥「私達も控室に戻ろっか」

穏乃「はい!」

憧「それにしても晴絵はいつ現れるのよ。もう決勝始まってんのに……」

恒子『さあ、後半戦の開始だぞお前らァ!トイレはすましてきたか~っ!?』

健夜『だからもうちょっと言葉選ぼうよ……』

恒子『前半戦は阿知賀女子の一人沈みでしたが後半戦は巻き返しなるか、本内成香!』

健夜『聞いてないし……』

恒子『では後半戦スタートですっ!』

東一局 親:玄

玄(私がいきなり親かぁ……点を稼ぐならやっぱりここだよね)

玄(……そういえば赤土さんの秘密兵器まだ使ってなかったよ)

玄(どうしよう。このままじゃまた点差は広げられる一方だし、試してみようかな……)

玄(うん、ここは何としてでも点数を稼いでおきたい。使おう!)

玄「少し失礼しますのだ」

照「……?」

玄「えっと、確かポケットの中に……あったあった。これだね」

玄「これよく見ると飲み薬なんだね。今気づいたよ」

玄「ではいただきます……ごっくん」

優希「お姉さんもお腹が空いたのか?私も今のうちにタコスを食べるじぇ」タコスモグモグ


恒子『おーっと対局中の飲食はマナー違反だぞ!開始時間までにすましておいてくれ!』

玄「……」




玄「…………」




玄「……………………」





ゴッ!

玄(うわ、うわわ!これすごっ……か、体が熱いよっ……!)

ジャラララ カチャカチャ

玄(……!!)

玄「リーチ!」


恒子『おーっと、松実選手いきなりものすごい配牌がきたあああああああああああああ!』

健夜『これはなかなかのなかなかですね』


玄「ぐふふ」

智葉「……」トン

優希(ドラゴンお姉さんなんかヤバげだじぇ……)トン

照「……」トン

玄「くっくっくっ……」チャッ

照「?」

玄「ツモ!ダブリーメンチン一発平和一盃口ドラドラ、数え役満です!」ドヤッ

恒子『キ、キターッ!!ここで阿知賀のドヤゴンロード松実玄がキターッ!!』

恒子『そして数え役満だーっ!!これでまた試合は振り出しに戻ったーっ!!』



穏乃「やった!」

憧「すごいじゃない、玄!」

灼「さっきとは別人……」

宥「玄ちゃん今ものすごくあったかそう……うらやましいなぁ」

玄(これが赤土さんの言ってた効果なのかな?なんかものすごく調子がいいよ!)

玄「では一本場行きますっ!」


クラッ


玄「あ、あれ……」


照「……阿知賀?」

智葉「ん?」


バタンッ!


玄「あ……あぅ……ううう……」ズキッ

玄(あ、頭が……頭が痛い……)ズキズキズキズキッ

恒子『あーっと!玄ちゃんいきなり倒れたぞっ!!数え役満を和了った興奮がさめやらないのかー??』

健夜『……違う!あれは――』

恒子『へ?』


照「阿知賀の人、大丈夫?」

玄「うっ、うぅ……うううううう……」ズキッ

優希「ものすごい勢いでぶっ倒れたじぇ……」

智葉「仕方ない、おいダヴァン!こいつを医務室まで連れてけ!」

ダヴァン「モチのロンデース!しっかりして下サイ、ドラゴンガール!」










玄「……なっちゃえ」


ダヴァン「ハイ?」







玄「アメ玉になっちゃえっ!!」





ビビビビビビッ

ダヴァン「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


ポンッ


智葉「……は!?」

照「!?」

優希「なっ!?」


何とダヴァンは飴玉に変えられたのだ……!


玄「えへへ、いただきますのだ!」パクッ

玄「もごもご……」

玄「うん、アメリカンテイスト(?)だね。あははははは!」

恒子『な、なんということだー!?臨海女子のダヴァン選手、アメ玉になってそして食べられたーッ!!』

恒子『い、一体これはどういうことですか!?さっきまで麻雀やってたよね!?』

恒子『なんでミスターマリックの超魔術みたいになってんの!!』

健夜『ミスターマリックでもあれは無理だよ……じゃなくて、』

健夜『あれはもう松実玄じゃない……魔人クロだよ!!』

恒子『ま、魔人……?何言ってんのすこやん……』

健夜『それよりこの会場は危険だから恒子ちゃんも避難指示出したら逃げて!!』

恒子(すこやんまでぶっ壊れたよ……)

玄「あはははははははは!」

智葉(ダヴァンが……食べられたのか!?)

照「なにこれ……」

優希「ありえないじょ……」

玄「ありえない?じゃあその体でわからせてあげるよ!お前はタコスになっちゃえー!」ビビビッ

優希「ぎゃあああああああああああああああああ!!」

ポンッ

タコス「」

玄「えへへへ。もっとだよ……もっともっともっと!!」

玄「……ん?」ジトーッ

照「ひっ」

玄「そうだ。宮永さんには準決勝でさんざんコテンパンにされたよね!」

玄「じゃあ宮永さんも何かに変形してもらおっか?ぐふふ」

照「……」フルフル

玄「決めたっ!宮永さんには赤五筒になってもーらおっ!」

照「やめて……」

玄「絶対にやめまーーーーーーせん!」

玄「えいっ、赤五筒になっちゃえ!!」ビビビッ

智葉「くっ!」シャキン

キラーン

玄「あん?」

照「……あ、あれ?」

智葉「しっかりしろ宮永。あいつから発せられる謎の光線は私の日本刀で反射させといたぞ」

照「すごい……」

玄「むむむむ!辻垣内さん、なかなかやりますのだ」

智葉「おい、お前の目的は何だ?それにダヴァンとタコ娘をどうした!」

玄「ぐふふ。外人さんなら私の胃の中だし、タコスちゃんならそこにいるじゃん!」

タコス「助けてほしいじょ……」

照(姿形が変わるだけで一応喋れるんだ……)

玄「あと目的だっけ?そんなの復讐に決まってるよ!私から何度も何度も和了りやがって……!」

玄「私は怒ってます!ぷんぷんなのです!だから鬱憤を晴らすためにもお前ら二人ともチョコにしてやりますのだ!」

智葉「くそっ……頭がイカれてる……」


―――
――

一方阿知賀控室

穏乃「玄さん……?」

憧「なによこれ……あれがさっきまで泣きべそかいてた玄なの!?」

灼「人をチョコや飴に変えるあの能力……まるで魔人ブウだよ……」

宥「うん、体型はいつもどおりだけどあれは玄ちゃんの姿をした魔人ブウ……!」

憧「いきなりドラゴンボールの世界ね……和ならそんなオカルトありえません!って叫ぶんだろな……」

ドアバァンッ!


晴絵「はぁ…はぁ…くそっ、玄のやつやっぱり自分を制御できなかったか……」

灼「ハ、ハルちゃん!?」

憧「ちょっと!今までどこに行ってたのよ!」

晴絵「そんな説明は後だ!それよりここから離れるぞ!」

穏乃「は、離れるって……?」

晴絵「時間がない!急げ!!」


―――
――

玄「チョコになっちゃえ!チョコになっちゃえ!チョコになっちゃええええええ!!」ビビビビビッ

智葉「ちぃっ!」ヒョイ

照「うわわ」サササ

玄「ぐぬぬ、チョコだけにちょこまかしやがって……もういいや。お前らをチョコにするのは諦めますのだ」

玄「……この会場ごと破壊してお前らもぶっ殺してやる!」


玄「か~め~は~め……」






玄「破っ!!!!!!!!!!!」






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……………………



…………



……

玄「……ぐふっ。ぐふふふふふふふ!」


玄「あはははははははは!!」


玄「やってやったのです!あの憎らしいバカ者を成敗してやったのです!」


玄「麻雀では負けちゃったけど圧倒的パワーで制圧してやったのです!!」


玄「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!」





シッカリシテクダサイ!


玄「ん?あれは――」

憧「いたたたたっ……って何よこれ!会場が吹っ飛んでるじゃない!」

憧「そ、そうだみんなは!?しずー!灼!宥姉!晴絵ー!」

穏乃「うぅ、私はここだよ……」

灼「同じく……」

晴絵「私も大丈夫だ……」

宥「……」

穏乃「宥さん?」

宥「…………」

穏乃「あ、あれ?返事して下さい!宥さん!宥さああああああああああん!」


宥「…し、しずの……ちゃん……?」

穏乃「よ、よかった!意識はあるみたい!」

宥「うっ……」

穏乃「大丈夫ですか?しゃべれますか?」

宥「ゴメンね……私…ダメみたい……」

穏乃「ダメって……そんな弱気じゃいけませんよ!しっかりしてください!」

宥「お願い……玄ちゃんを…玄ちゃんを……」

宥「いつもの優しくて明るい…玄ちゃんに…戻してあげ……て……」ガクリッ

穏乃「宥さん……?」

宥「……」

穏乃「ねえ、嘘だよね……こんなのってないよ……」

宥「……」

穏乃「うわあああああああああああああああああああああああ」

憧「……なんなのよこれ」

憧「私達はただ麻雀を楽しんでただけなのに」

憧「いきなり和も宥姉もいなくなっちゃった」

憧「……夢ならはやく醒めてよ。こんな悪夢は懲り懲りだよ……」

晴絵「大丈夫だ」

憧「何が大丈夫なのよ!全てがめちゃくちゃになったのよ!大丈夫なわけないじゃん!」

晴絵「ここにドラゴンボールがある!これでみんなを復活させる!」

憧「は、はァ!?」

穏乃「ド、ドラゴンボール……?」

灼「ハルちゃんまでとうとうおかしくなった……」

憧「あんたこの状況で何ふざけてんのよ!」

晴絵「うるさい!とにかくこれでみんなは元に戻るんだ!黙って私のいうことをきけ!!」ドンッ

憧「うっ……」

憧(無駄に迫力あるわね……)

晴絵「さてと」

晴絵「これはお前達に預けるよ」

灼「あ、預けるって……ハルちゃんはどうするつもりなの!?」

晴絵「私は……私はあいつを止めてくる。私のかわいい教え子をな」

灼「まさか玄を止める気!?そんなの無理だよ!あいつ人間を自由自在にお菓子にするし、」

灼「かめはめ破だって放つんだよ!?」

晴絵「……それでも私はあいつを止めないといけないんだ」

穏乃「赤土さん……」

憧「あ、それじゃドラゴンボールで玄を元に戻してもらえばいいんじゃ」

晴絵「無理だよ」

憧「……何でよ」

晴絵「あいつは今神以上の存在だからな。ドラゴンボールでもそんな願いはきっと叶わないだろ」

穏乃「玄さんが神を超えた……!」ゴクリ






ゴオオオオオオオオオオオオオオオオッ


灼「何この音……?」








シュタッ











玄「やあ」





憧「げっ、玄……じゃなくて魔人ブウそれとも魔人クロ!?」

晴絵「くそっ!お前らはドラゴンボールを持って逃げるんだ、はやく!!」

玄「ぐふふ。お前らもチョコにしてやる~!」

玄「……えっ」

宥「」

玄「お、お姉ちゃん……?」

憧「そ、そうよ!あんたが宥姉を殺したのよ!どうしてくれんのよ!」

玄「私が……お姉ちゃんを……殺し…た……?」

玄「お姉ちゃん…おねえちゃん…私をいつも…優しく見守ってくれた…オネエチャン……?」

玄「オネエチャンガシンダ……?シンダ……オネ……チャン……」

穏乃(ドラゴンボールで復活できるらしいけど、黙っていよう……)

玄「ウソダ……オネエチャンハ……オネエチャンハ……」

灼「玄?」

玄「ア"ァ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!」

玄「オネエヂャンオネエヂャンオネエヂャンオネエヂャア"ア"ア"ア"ン!!」




憧「ど、どうしたのよいきなり!?」

晴絵「……あいつにもまだ人の心があったんだよ」

穏乃「どういうことですか!?」

晴絵「あいつは自分が宥を殺してしまったことに罪を感じてるんだ」

晴絵「深い悲しみに包まれてるんだよ……」

灼「そ、それより今が玄を倒すチャンスなんじゃ……」

晴絵「そうだ!今なら元気玉であいつをやれる!」

晴絵「よしお前ら、おらに元気を分けてくれ!」バッ

憧(おら?)

穏乃「どうやってやるんですか?」

晴絵「両手を空に向けて上げるんだ!」

穏乃「こうかな?」ババッ

シュウッ!

穏乃「うわっ!」

穏乃「こ、これものすごく体力使うんだね……」ハァハァ

灼「ほら、ハルちゃんの言うとおりにして!」バッ

憧「あ、はい……」バッ

穏乃「そうだ!それなら会場のみんなを復活させたほうがパワーもらえるんじゃないですか!?」

灼「うん。ナイスアイディアだよ、穏乃!」

穏乃「えへへ」

憧「ちょっと待って!」

晴絵「どうした!?」

憧「私達の中にナメック語を話せる人がいないわ!これじゃドラゴンボールで願いを叶えれない!」

もこ「……」バッ

穏乃「ってあなたは準決勝前に練習に付き合ってくれた対木もこさん!」

憧(生きてたのね……)

もこ「……」ボソボソ

穏乃「え?ナメック語を話せる!?いよっし!じゃあ早速だけどお願いします」

もこ「……」ペラペラペラリンチョ

ドンッ

『さあ、願いをいうがいい。どんな願いでもみっつだけ叶えてやろう』

灼「あれが神龍……とんでもない大きさだね」

憧「……今更だけどよくこんな状況受け入れてるわね。私達」

穏乃「じゃあまずは玄さんに殺された人を全員生き返らせてください!」

もこ「……」ペラペラペラリンチョ

『オッケー』




パッ

会場内


優希「う、うーん……」

智葉「……どういうことだ」

照「さっきのは夢……?」



咲「あれ?」

久「私達、松実玄に殺されたんじゃ……」

和「こ、こんなオカルトありえません!」

まこ「夢か?」

美穂子「一体これは……」

池田「わけがわからないし!」

怜「竜華……」

竜華「怜……」


姫子「ぶちょー……」

哩「姫子……」

煌「よくわかりませんがすばらです!ええ、すばらです!」


成香「あぅ、ちかちゃーん」

誓子「成香……」


恒子『あれ、すこやーん。どこいったの?』


ゾロゾロゾロゾロ




神龍のおかげで玄に殺された人達はみんな生き返ったのだ……!

宥「う、う~ん……あれ、ここは……天国かな?」

憧「やった!宥姉が生き返った!!」

宥「あれ、憧ちゃん?憧ちゃんも天国にやって来たのー?」

憧「違うわよ!!」

穏乃「ねえ憧!見てよ!」

憧「あっ……会場が元に戻ってる……」

穏乃「きっと会場のみんなも生き返ってるよ!」

玄「……オネエチャン?」

晴絵「ヤ、ヤバイ!宥が生き返ったから玄のやつ落ち着きを取り戻すぞ!」

玄「ぐ、ぐぬぬぬぬ!人間どもめ。お姉ちゃんが死んだと嘘をつきやがって……!!」

玄「お姉ちゃん以外ぶち殺してやる!!まずはあなたからなのです……赤土さん!」

晴絵「くそっ、これまでなのか……これが人類の限界なのか?」


「まだだよ!」


晴絵「へ?」

健夜「まだ終わってないよ、赤土さん!」

晴絵「小鍛治プロ……」

玄「あん?」

健夜「私が……1分間あのこをくいとどめる……!だから赤土さんは気を溜めて!」

晴絵「は、はい!」

ザッ

健夜「……」

玄「何の用なのです?」

健夜「ふふっ、グランドマスターのこの私があなたの相手をするよ」

玄「ふん、5秒で片付けてやりますのだ」

健夜「……」ニヤッ

玄「!?」

バババババババッ

穏乃「す、すごい……肉眼じゃあの二人の動きをとらえきれないよ」

憧「そんなこと言ってる場合じゃないわ!はやく会場のみんなからも元気を分けてもらうのよ!」

穏乃「そ、そうだった」

穏乃「ってことでもこさん、お願いします」

もこ「……」コクリ

もこ「……」ペラペラペラリンチョ

『オッケー』

もこ「……」ボソボソ

穏乃「これで会場内のみんなと話せる?やった!」

穏乃「えーえー、会場にいる皆さん聞こえますかー?」


和「この声は……穏乃?」


穏乃「今私はあるところからみんなに話しかけています」

穏乃「あなたたちは一度玄さんに殺され、不思議な力で生き返らせてもらいました」

穏乃「会場ももとにもどってるはずです。えーこれはけっして夢なんかじゃないです」


和「そ、そんなオカルトありえません!」

咲「どういうことなの……」

穏乃「今私達はあなたたちを殺した玄さんと戦っています」

穏乃「だけど正直言って情勢はかなり悪いです!」

穏乃「そこでみなさんの力を借りたいと思います」

穏乃「まず手を空に向けて上げてください」

穏乃「かなり疲れると思いますけど大丈夫です。安心してください」


優希「こうか?」バッ

シュウッ

優希「はぁはぁ……も、ものすごく疲れるじぇ、これ……」

智葉(ふっ、そういうことか)

智葉「ほら、私のパワーを持っていきな」バッ

照「……」バッ

優希「よ、よくわからないけど頑張ってみるじぇ!」バッ

晴絵「!!」

晴絵(これは宮永照と辻垣内智葉のパワーだ!)

晴絵「うん、来てる来てる!もっと集まれ!」



会場内

池田「なんかうさんくさいし!こんなの絶対やらないし!」

美穂子「でも今のは阿知賀女子の高鴨さんの声じゃないかしら……」

池田「騙されちゃいけませんよキャプテン!私達が本当に殺されたのかも定かではないのに、あんなの信じちゃいけないし!」

美穂子「そうかしら……」

池田「そうだし!」


ザワザワ

ナンカコワイヨナー ヤメトケヤメトケ アブナスギル


晴絵「お、おい!まだまだ気が集まらないぞ!一体どうなってんだ!?」

穏乃「だ、だめです!!私の言葉を信じてくれる人はごくわずかで、圧倒的に怪しむ人の方が多いです!」

晴絵「そんな……どうしてわかってくれないんだよ!」

晴絵「会場のみんな!頼む!!頼むから元気を分けてくれ!!」

晴絵「みんなの助けが必要なんだ!空に手を上げてくれ!!はやく!!」



会場内

トシ「今の声は……ふふっ、そういうことかい」

トシ「ほらみんなも手を上げて!」バッ

豊音「熊倉先生がそういうなら上げてみるよー!」バッ

エイスリン「ジョウシメイレイ!」バッ

胡桃「エイちゃん、どこでそんな言葉覚えてくるの……」バッ

白望「ダルい……」

塞「シロも上げるの!」ババッ

晴絵「うん、これは熊倉さんのパワーだ!でも……でもまだ足りない!!」

健夜「ま、まだなの?赤土さん!!」

晴絵「あと少し……あと少しなんだ!」

健夜「このっ……!」

玄「なかなかしぶといのです!」

健夜「き、きさまらいい加減にしろー!さっさと協力しないかー!!」

健夜「この小鍛治健夜様の頼みも聞けんというのかーっ!?」

会場内

池田「えっ、小鍛治プロ!?」

美穂子「確かに小鍛治プロの声だわ!」

久「ど、どういうことなの!?」

まこ「も、もしかしてワシらを殺したやつと戦ってるのは小鍛治プロじゃったんか?」


小鍛治「うん、今ホントに戦ってる!結構キツイよ!しゃべりながら戦うのしんどいよ!」


恒子「すこやんの頼みじゃしょうがないよね!私のパワー、持ってけーッ!」


ババッ ババッ


 
アーラフォー! アーラフォー! アーラフォー! アーラフォー!

アーラフォー! アーラフォー! アーラフォー! アーラフォー!



ブーン!!

憧「ス、スゴイ……!あんなにパワーが集まってく……」

穏乃「いっけー!赤土さんのとこまで飛んで行けー!」


晴絵「まだか……あと、あと少しなんだ……!!」


ブオン!!


晴絵「き、来た!来た来た来たーッ!!!!」


晴絵「小鍛治プロ、離れてくださーーーーい!」

健夜「わ、私のことはいいから……!はやく……!!」

玄「死ね死ね死ね死ね、死ねーーっ!!!」ポコポコポコポコ

健夜「ぐっ、あう……!」

晴絵「ダメだ、このままじゃ小鍛治プロがまきぞえをくらってしまう……!!」







晴絵「ん?」









宥「すぅー……」










宥「玄ちゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!」






玄「お、お姉ちゃん?」クルッ

























宥「何でもないよー!」


玄「へ?」ズルッ

晴絵「な、何だ今のは……」

晴絵「!!」

憧「晴絵ー!小鍛治プロなら玄が宥姉に気を取られてる内に救出したからおもいっきしやっちゃっていいわよ!」

晴絵(そうか、宥はこれのために……!)

玄「キッ!!」

晴絵「うおおおおおおおおおおおお!!」

晴絵「これが私の全身全霊の元気玉だあああああああ!!どやああああああああああ!!」

玄「キシャー!!」

穏乃「いっけーーーーーー!!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ

玄「ぐっ……ぐはっ……」

晴絵「悪かったね、玄」

玄「!?」

晴絵「元は私がお前にあの秘密兵器を渡したからこんな風になってしまったんだよね……」

晴絵「玄はあんな秘密兵器に頼らなくてもその壁を乗り越えられる強い子だったのに」

晴絵「私が助け舟を出したからあんな過ちを犯したんだね……」

玄「あ、あがど……ざん……」







晴絵「今度生まれ変わったらまた麻雀やろうな」


晴絵「玄のドラ麻雀に負けないよう、私ももっと…もっとウデを上げてるから」




晴絵「またな」




玄「……はいっ!」









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……………………



…………



……

玄・宥部屋

宥「すぅ……すぅ……」

玄「お姉ちゃん、もう昼だよ!そろそろ起きようよ!」

宥「うーん……生まれ変わっても玄ちゃんならきっと大丈夫だよ……むにゃむにゃ」

玄「……寝言かな?」

玄「もう、明日は決勝戦が控えてるのに……」

コンコン

晴絵「玄ー、そろそろドラゴン復活の儀式をやるぞー」

玄「あ、はい!今行きます!」

玄「ほらお姉ちゃんも起きて!」ユサユサ

宥「うーん……あと1時間……ぐぅぐぅ」zzz

おわり

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