【モバマス】心デレラ (36)

むかしむかし、あるところに1人の美しい少女(?)がいました。

その少女(?)の名は心デレラといいました。



心デレラ「おはよーございまーす……って誰も起きてないか」

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ちひろ「おはようございます、心デレラさん。朝食の準備はどうですか?」

心デレラ「おはようございます、お母様。朝食はこちらに☆」コトッ

ちひろ「あら、もう出来てるなんて感心ですね! それでは菜々さんと麻理菜さんを起こしてきて下さい」

心デレラ「それくらい自分でやれよ」ボソッ

ちひろ「何か言いました?」

心デレラ「なんでもありません☆」

心デレラ「ナナお姉様〜、マリナルお姉様〜、朝で〜す」


麻理菜「……ん。……おはよう心デレラ」

心デレラ「おはようございます☆」

麻理菜「姉さんも起きて。朝よ」ユサユサ

菜々「……ああ、はいはい……。おはようございます二人とも……」

心デレラ「おはようございます☆」

麻理菜「おはよう」

菜々「はぁとちゃん、朝ごはんは出来てますか?」

心デレラ「はい☆」

麻理菜「じゃあ顔洗ったら行くから」

菜々「ナナもそうします」

心デレラ「承知しました☆」



心デレラはなんやかんやあって血の繋がりのない母と二人の姉と暮らしています。

ちひろ。心デレラの継母です。
ちひろは心デレラが家に来たその日、大層喜びました。
きっと労働力が手に入ったからでしょう。



ちひろ「心デレラさん! ここに汚れが残ってますよ! しっかり働いて下さい!」

心デレラ「す、すんません! 今やります!」



毎日毎日、馬車馬のように働かされる心デレラは内心穏やかではありませんでした。
ですが、家に住まわせてもらっている身なので強くは出られませんでした



心デレラ「このヘンテコ緑が……」ボソッ

ちひろ「何か言いました?」

心デレラ「なんでもありません☆」

そんなちひろですが、鬼ではありません。
一週間に一度、ご褒美に愛撫、抱擁、スタドリを心デレラにくれるのです。
決してアメとムチではありません。



ちひろ「…………」ナデナデ

心デレラ「…………」

ちひろ「…………」ナデナデ

心デレラ「……あの〜」

ちひろ「はい?」ナデナデ

心デレラ「もう結構……」

ちひろ「母の愛は無限です」ナデナデ

心デレラ「あ、はい」

ちひろ「…………」ナデナデ

心デレラ「…………」ギュッ

菜々。長女です。
彼女もまた心デレラをこき使っていました。



「はぁとちゃん! ナナのために可愛いお洋服作って下さい!」


「はぁとちゃん! ナナにお裁縫教えて下さい!」


「はぁとちゃん! ちょっと採寸測らせて下さい!」


「はぁとちゃん、腰を揉んでください……」



心デレラにとって仕事を増やしまくる菜々はとても迷惑でしたが、なんだかピョンピョンしてて可愛かったので許してしまいます。

菜々は少し前から心デレラのことを「はぁとちゃん」と呼んでいます。
それはある日の事でした。



菜々「心デレラちゃん、お茶をお願いします」

心デレラ (自分で淹れとけ)

菜々「ん?」

心デレラ「ただいま☆」

菜々「シンデレラチャンシンデレラチャンシンデレラチャン……」

心デレラ (何呟いてんだ)

菜々「心デレラちゃんってちょっと呼びにくいですねえ……」

心デレラ「そっですねー」

菜々「心デレラ……心……」

心デレラ「お茶置いときま〜す」コトッ

菜々「はぁとちゃん」

心デレラ「……はい?」

菜々「これからはナナ、はぁとちゃんって呼びます」

心デレラ「はぁと……?」

菜々「はい」

心デレラ「心デレラが?」

菜々「呼びやすいですし」

心デレラ「可愛いな……☆」

菜々「まあそうですね」

心デレラ「……はぁと嬉しいです☆ ありがとうございますナナお姉様☆」

菜々「おっ、早速。気に入ったみたいですね」

心デレラ「はぁと♪ はぁと♪」

菜々「だいたいナナみたいにシンデレラガールでもないのに心デレラなんて生意気だと思ってたんです」フフン

心デレラ (……うっせー犯すぞチビ」

菜々「ハイッ!?」

心デレラ「あ、いけね。なんでもありません☆」

菜々「そ、そうですか……スミマセンデシタ」

麻理菜。次女です。
彼女はあまり心デレラをいじめませんでしたが……



心デレラ「」バサッ

麻理菜「心デレラ、物干し手伝う?」

心デレラ「あ、マリナルお姉様」

麻理菜 (ルって何……?)

心デレラ「手伝い、お願いします☆」

麻理菜「はいはい」バサッ

麻理菜「ねえ、心デレラ」バサッ

心デレラ「はい」バサッ

麻理菜「手伝い料金はいくら貰えるの?」

心デレラ「え?」

麻理菜「当然でしょ?」

心デレラ「あの、はぁとお金は持ってなくて……」

麻理菜「別にお金じゃなくてもいいけど」サワッ

心デレラ「」ビクッ



麻理菜はあまり心デレラをいじめませんでした……
事あるごとに体を要求してきましたが……

心デレラ「はぁと、そういうのはちょっと……」

麻理菜「あーそう。私にタダ働きさせたの」サワサワ

心デレラ「や、やめて!」

麻理菜「お金ないんでしょ?」サワサワ

心デレラ (ク、クズかっ!)


ちひろ「麻理菜さん、行儀が良くないですよ」


麻理菜「…………」

心デレラ (た、助かったぁ……)

ちひろ「心デレラさん! まだ物干しなんてしてるんですか! 早く掃除に行って下さい!」

心デレラ「はいはいただいまー」スタスタ



心デレラは初めて忙しい仕事に感謝しました。
そして無給に悲しみ、怒り、哭き、叫びました。

そんなある日、お城で舞踏会が開催されるという手紙が家に届きました。
心デレラは当然行きたいと思いましたが……



ちひろ「心デレラさんはお留守番頼みます」

菜々「頼みます」

麻理菜「頼みます」



謎の留守番推しに抗えず結局お留守番する事になりました。

舞踏会当日に3人を見送った後、心デレラは庭にいました。



心デレラ「ふっふっふっ……☆」

心デレラ「いやー、悲しいなー(棒)」

心デレラ「こんな可哀想なはぁとを誰か助けてくれないかなー(棒)」

心デレラ「魔女が助けてくれないかなー(棒)」

心デレラ「…………」

心デレラ「…………」

心デレラ「…………」

心デレラ「…………」

心デレラ「…………」

心デレラ「…………」



心デレラ「来ねぇぞ……」



心デレラは訳の分からない事を言っていました。

???「ちっーひっひっ! 心デレラさん、舞踏会に行きたいんですか?」



心デレラ「そ、その声は!」

ちひろ「…………」

心デレラ「お母様!」

ちひろ「どうですか?」

心デレラ「はい! 超行きたい!」

ちひろ「よろしい」

心デレラ「お母様ってば魔女だったなんて♪ しかも美魔女♪」

ちひろ「ふふっ、褒めても何も出ませんよ」

心デレラ「魔法は出ます♪」

ちひろ「はい。お金を出してもらえれば」

心デレラ「……は?」

ちひろ「まさか、お金ないんですか?」

心デレラ「は?」

ちひろ「お金ないんですか?」

心デレラ「当たりめーだコラ! テメータダ働きさせといてなんだそれ!」

ちひろ「な、なんですかその言葉遣いは! 母に向かって!」

心デレラ「なんだこの扱い! 娘に対して!」

ちひろ「ヤるんですか!」

心デレラ「やってやるよお!」

ちひろ「じゃあ服脱いで下さい」

心デレラ「は?」

ちひろ「あ、カボチャのハイエース出しますね」


ポンッ☆

カボチャのハイエース「…………」


心デレラ「なにこれ……」

ちひろ「カボチャのハイエースです。入ってください」

心デレラ「いやなんで?」

ちひろ「お金じゃなくてもいいんですよ」サワサワ

心デレラ「な、何すんだコラ」

ちひろ「ナニです」グイッ

心デレラ「は、離せ!」

ちひろ「往生際が悪いですよ」ポイッ

心デレラ「うおっ!」ドサッ

ちひろ「はい閉店」バタンッ

それから暫くするとカボチャのハイエースから心デレラとちひろが出てきました。
心デレラはなにやら顔色が良くなっていて、美しいドレスとガラスの靴を身につけていました。


ちひろ「魔法は12時になると解けてしまうので、それまでに帰って来て下さいね」

心デレラ「…………ありがと」

ちひろ「あっ、追加料金で魔法の効果時間を延ばす事も可能で」

心「……行ってくるぜ☆」ビューン


ダダダダダッ


ちひろ「あー、行っちゃった。シンデレラシューズ、速いですね」

ちひろ「…………ハイエースは……置いときますか」


カボチャのハイエース「…………」

心デレラが快足を飛ばしてお城に着いた時には、既に盛大な舞踏会が開催されていました。



心デレラ「お〜。華やかではぁとにピッタリ☆」


ザワザワ……ザワザワ……


心デレラ「いやん♪ はぁとったら注目の的☆」



心デレラの言うとおり、彼女の美しさは注目の的となっていました。



俺1「おい、彼女を見ろ」

俺2「ああ、なんと美しい女性だろう」

俺3「一体何者なのだろうか」


菜々「あの方、はぁとちゃんに似てませんか?」

麻理菜「似すぎでしょアレ」

俺王子「お嬢さん」

心デレラ「ん? はぁとの事?」

俺王子「はぁとさんというのですか。ぜひ、私と踊っていただけませんか」

心デレラ「喜んで☆」



心デレラは俺王子と踊る事になりました。



菜々「あ、さっきの方が俺王子と踊ってますよ」

麻理菜「へー」

心デレラは楽しい時間を過ごしました。
そして時刻はついに12時を迎えようとしていました。



心デレラ「いやー、楽しかった。そんじゃそろそろ帰るか」

俺王子「グヘヘ、楽しいのはこっからだぜ嬢ちゃんよ……」グイッ



心デレラは何が起こったのか一瞬理解出来ませんでした。
俺王子が顔を歪ませて腕を掴んできたのです。



心デレラ「なっ……」

俺王子「さあ嬢ちゃん、良いところに連れてってやるぜ。グヘヘ……」

心デレラ「なんだテメー!」バキッ

俺王子「がはっ!」ゴロゴロ



魔法で強化された心デレラの前蹴りを食らった俺王子は壁に叩きつけられてしまいました。

心デレラ (つ、強っ! 魔法強っ!)

俺王子「き、貴様ぁ……許さねぇぇぇ!」ダダダッ

心デレラ (これなら勝てる!)



心デレラがそう思った時、12時の鐘が鳴りました。



ポンッ☆


心デレラ「え……」



魔法は解け、心デレラは元の姿に戻ってしまったのです。

その頃、家では心デレラの帰りが遅い事をちひろが心配していました。



ちひろ「心デレラさん、遅いですね……」


菜々「ただいまぁ〜。疲れました……」

麻理菜「ただいま」


ちひろ「あ、お帰りなさい2人とも。お城で心デレラさんに似た人を見ませんでしたか?」

菜々「あー、居ましたね」

ちひろ「どんな様子でしたか?」

麻理菜「俺王子と踊ってたっけ?」

菜々「そうですね」

ちひろ「俺王子と……? 何かあったのかもしれません! 行かないと!」

麻理菜「どういう事?」

ちひろ「その人は心デレラさん本人なんです!」

菜々「どういう事ですか……?」

ちひろ「問答は後です! 2人も着いてきて下さい!」

3人はカボチャのハイエースに乗り込みお城まで全速力で突っ走りました。



菜々「うわー。速いですねぇこの車」

麻理菜「お母様、なんでハイエースなの?」

ちひろ「てへぺろ」

心デレラ「ま、魔法が……」

俺王子「グヘヘ……何だか知らねぇがみすぼらしい格好になっちまったなぁ? それもそれで良いってもんだぜ。グヘヘ!」

心デレラ「い、嫌……」

俺王子「さあ来い! さっきのお礼をタップリしてやるぜ!」グイッ

心デレラ「お母様! お姉様!」



その時、空から不思議なハイエースが降りてきたのです……



俺王子「な、なんだ!?」

麻理菜「マリナルハイキック!」バキッ

俺王子「ごふっ!」ドガッ



突如現れた麻理菜のハイキックを食らった俺王子は壁にめり込んでしまいました。

ちひろ「心デレラさん! 無事ですか!」

心デレラ「お母様……助けに来てくれたの?」

ちひろ「当然です! 我が子なんですから!」

心デレラ「ありがと……。お姉様達は?」

ちひろ「あそこです」


麻理菜「マリナルボディーブロー!」バキッ

俺王子「ぐへぇ!」ドゴッ

菜々「ウサミン目潰し!」グサッ

俺王子「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」ブシュー

麻理菜「マリナルエルボー!」バキッ

俺王子「ぐあぁっ!」ドゴッ

菜々「ウサミン金的!」バキッ

俺王子「ああああああああ!」メキョッ


心デレラ「うっわ……」

ちひろ「それじゃあ私も行ってきます」

心デレラ「いやアレもう終わりだろ」


俺王子「ハァ……ハァ……まだだ、まだ負けてねぇんだよ俺はァ!」

ちひろ「…………」スッ

俺王子 (後ろっ……!?)


ちひろ「センカワヘッドロック!」ガシッ


俺王子「な、何!? ぐっ……! 頭が、頭がァー!」

ちひろ「…………」ミシミシ

俺王子「あ、ああ……浄化されるううぅぅぅぅぅ!!!」



俺王子「」

俺王子「

俺王子

俺王





シュボッ



麻理菜「あ、消えた」

心デレラ (なんでヘッドロックで消えんだよ)



こうして、悪は滅びました。

ちひろ「一件落着ですね」

菜々「それじゃあ早く帰りましょう。もう眠いです……」

麻理菜「そうそう。心デレラ、早く車に乗って」


カボチャのハイエース「…………」


心デレラ「え……その車で来たの?」

菜々「いいから早く乗って下さいよ……」ドンッ

心デレラ「うおっ!」ドサッ

麻理菜「大丈夫?」サワサワ

心デレラ「は、はぁと歩いて帰る!」

ちひろ「はい閉店」バタンッ



カボチャのハイエースに乗った心デレラ達は無事に家まで帰りました。
でも、心デレラと麻理菜がカボチャのハイエースから出てきたのは翌朝の事でした。

その後、心デレラ達はいつもの日常に戻りました。



「今日も心デレラさんのご飯は美味しいですね!」


「はぁとちゃん! お洋服出来ましたよ!」


「心デレラ。後で部屋に来なさい」



今では家族みんなが心デレラに優しいのです。
心デレラと家族はとても幸せに暮らしています。



心デレラ「めでたしめでたし☆」

「心デレラ」という言葉が思い浮かんでからこれを書き終えるのに2日かかった。
俺の2日間はなんだったんだ?

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