菊池真「女の子として見てほしい……」(44)

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     ────事務所────


 『運動の後にはやっぱりこれ!』チャーララー

P「おっ、真のCMだ」

真「……」

 『ワンプッシュで嫌なニオイをカット! これで男を磨けッ!』チャーララー

小鳥「このCMすっごい人気らしいですよ、これも真ちゃん効果ねっ」

真「……」

P「実際アイドルと接する俺だって、そういうことには気をつけないといけないですからね。
  俺ももってますよ、ほら」

小鳥「この真ちゃんの煽り文句もいいですよねー。〝これで男を磨けッ!〟
   だなんて──うっ、鼻血がっ……」ダラダラ

真「……」プルプル

春香・千早「ただい──」



 真「だーーーーーー!!!!」



P・小鳥「!?」ビクッ

真「ハァ……ハァ……」

春香「……真、どうしたの…?」

 ──────
  ───

真「もう! なんでみんなは、ボクを男の子にしたがるんだー!!」

P「お、落ち着け真っ、どうしたんだ突然?」

真「落ち着いてなんていられませんよっ! ボクだってもっと765プロのみんなみたいに、
  女の子っぽくキャピキャピーってなりたいんですよぉー……うぅ」ショボーン

P「言いたいことだけ言ったら大人しくなったな……」

千早「……そろそろ高槻さんの番組が始まるわ」タタタ─

小鳥「確かに、真ちゃん本人にとってはつらいことかもねぇ……。
   でもね、真ちゃんを求めている女性ならいくらでもいるのよ?
   かっこいい貴方をみんなが求めているのよッ!? 勿論 わ た し も!」ガシッ

真「ひ、ひぃ〜〜……!」

P「小鳥さんっ、真が怖がってますっ」

小鳥「あ……つい…」

真「うぅ……だってさっきのCM見ました? 見ましたよね!?」

P「あの、デオドラントスプレーのやつか?」

真「ボク、タンクトップでしかも、サイズが結構大きめだったんです!」

真「なかなか際どかったんですよ!? カメラマンさんは気にせず撮影続けるし……。
  プロデューサーはどう思います!? そもそも〝男を磨けッ!〟って、なんでボクが……」 

P「……うーん、やはり気にするよな、女の子なんだし」

真「気にしますよ……! ボクだって女の子なんですから……」

春香「あ、アハハっ…真は、やっぱり女の子みたく可愛くなりたいの?」

真「……春香は違うの?」

春香「……うーん、でも真みたいにかっこよくなりたいなーとか、
   思ったりもするよ?」

真「っ、ボクはみんなみたいになりた──」

社長「聞き給え諸君ッ! 新ドラマ『進●の巨人』の件なんだがね?
   なんとうちの菊池くんに、直々にオファーが入ったよ!」

P「ほ、本当ですかっ? すごいじゃないか真! やったなっ」

真「……配役は、誰ですか?」

社長「〝鎧の巨人〟君だ!」

真「」チーン

P「あ、とどめを……」

 ──────
  ───

真「」ズーン

小鳥「すっかり落ち込んじゃいましたね……」

P「確かに言われてみれば、最近はそういう仕事が増えてました……。
  出来ればあいつのためにも、もっと女の子らしい仕事を取ってきてやりたいんですけど…」

小鳥「無理じゃないですかね」

P「バッサリいきましたね……」

小鳥「真ちゃん、あのキャラで通ってますし……」

P「ですよね……やよいを『SAS●KE』に出すようなものですよ」

小鳥「あーそれはないですねー」

P「……ちょっと励ましてきます」タタタ─

P「春香、千早。お前らも来てくれ」

春香「あ、はいっ」 千早「今高槻さんの番組が…」

P「……」

P「やよいの番組はしっかり録画してあるだろ、ほらっ」

真「……」ズーン

P「真……真、聞こえるかー?」

真「……プロデューサー?」チラッ

P「みんなで考えよう、真が可愛くなれる方法を」

真「……えっ?」

春香「4人で考えればあっという間だよっ!」ニコッ

千早「……」ズーン

P「次はなんで千早が落ち込んでるんだよっ」

千早「高槻さん……」

真「……ふふっ、はっはは。そうですね……落ち込んでちゃ、何も始まらないですよね」

P「まぁ仕事の方はまだ、少し難しいかもしれないけどな」

春香「でも、普段のしぐさとか行動とかを変えていけば、
   この先の仕事も変わっていくと思うんだ。
   だから頑張ろ、真っ」

真「……うんっ!」ニコッ

──────
  ───

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   「よーし、今日の仕事は終わったな…」
   
    「プロデューサー、お疲れ様ですっ」
   
   「おお真、まだいたのか。もう時間も遅いぞ」
   
    「はい、だから……──」

    「──送って、くれませんか……?」

   と、ここでプロデューサーさんの服の袖をギュッと────!!

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    ──────

小鳥「ハァ……こんな感じのはどうでしょうか……?」ハァハァ

P「確かに、これはグッとくるものがありますね…」

真「えぇっ、恥ずかしいですよ。別にボク、一人で帰れますし…」

小鳥「真ちゃんっ。女の子は出来ることでも出来ないって、言うものよ? 
   それに、男性は女の子に頼られたいものなのよ。ねっ、プロデューサーさん」

P「全くもって、小鳥さんの言うとおりだ」

真「そんなものでしょうか……」

P「春香と千早も、なにかいい案はないか?」

千早「高槻さん、みたいなキャラはどうかしらっ」(ドン!

春香「や、やよい?」

P「やよいに似せるのは流石にちょっと……真、やってみて」

真「な、なんですその無茶ぶり!? ……う、うっうー。みんなでー?
  はい、ターッチっ。イェイ……」

春香「イェイ!」パンッ 千早「イェイ」パンッ 小鳥「イェイ!!」パンッ!

真「は、恥ずかしい……というかそれ依然に、ボクには似合いませんよっ…」

春香・千早「……」///

P「恥じらいがあるだけ、女の子らしいのかもな……と、言うよりは思春期か…」チラッ

小鳥「?」ピヨピヨ

春香「美希みたいに、プロデューサーさんにベタベタするとか?」

千早「それは春香もでしょ」

春香「ち、千早ちゃんっ……」カァッ…

真「ベタベタ……?」チラッ

P「……っ」

P(う、上目遣い……なかなか…)

P「で、でもさっ。美希みたいなのはやっぱりなんと言うか……、
  いくらなんでも真が恥ずかしいだろ?」

春香「そっかぁ……それな──」

真「…すよ……」ボソッ

春香「えっ?」

真「いい、ですよ? プロデューサーが、いいのなら……」

P「えっ、えぇ〜〜〜!?」

真「……ッ」モジモジ

小鳥「●REC……これから、真ちゃん女の子化計画が、幕を開けるのであったッ!」

P「なんですかそのモノローグ……」

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  ────翌日・事務所────


P「えっと今日は、美希のグラビアについていってそれから……」カタカタ

 カチャッ

真「おはよう、ございます……」

P「おはよう真、今日は早いな」カタカタ

真「……ッ」タタタ─

 ギュッ…

P「うぇっ!? ま、真……?」

真「早く──会いたかったです、プロデューサー」ギュゥ…

P「ちょ……仕事が、出来ないだろっ……」アセアセ

P(待て待てなんだこれ、こういう時はアイドル達の3サイズを数えて……)ドキドキ

真「もう、少しだけこのままが、いいです……」ギュゥ

P「うっ……ま、こと…」

P(7272727272727272────)

P「……美希を、真似たのか?」

真「……はい、改めて美希はすごいんだなーって思いました……。
  恥ずかしくて、爆発しちゃいそうですよ」

P「確かに、な。真はちゃんと女の子になれてるよ。実際、すごいドキドキする」

真「ぷ、プロデューサーのエッチ……!」パッ

P「ハハハッ、その調子で頑張れよ。誰だって元から乙女だったわけじゃないさ。
  誰かを真似て、人格ってものは出来ていくからな」

真「今の調子……ボクが前やったような女の子は、ダメなんですか?」

 ───きゃっぴぴぴーん☆キューティープリンセス、みんなのアイドル真ちゃんなりよー♪

P「ダメだ」

真「えぇ……まぁ、このまま行けってこと、ですよね…うん。
  っひひー、ボク、頑張りますよっ!」

P「……〝ボク〟ってのも、あれなんじゃないか?」

真「あっ……じゃあ──私、頑張りますっ」

P「」ドキッ

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  ────数日後・事務所────


P「」カタカタ

雪歩「プロデューサー……どうぞ、お茶ですぅトン

P「おっ、いつもサンキューな」ズズズー

雪歩「……ぷ、プロデューサーっ、真ちゃん…どうしちゃったんでしょうか……」

P「ん、なんのことだ雪歩」

雪歩「あ、いえ……最近、真ちゃん元気ないって言うか、その……」

P「……雪歩にとって、真はどういう存在なんだ? どうあってほしい?」

雪歩「え…やっぱり……かっこいい真ちゃんでいてほしいかなぁ……と」

P「じゃあ、もし真がそれを望んでなかったら──アイドルとしての面子を守るべきだと思うか、
  それとも自分のしたいことをするべきなのか……雪歩はどう思う?」

雪歩「それは……それはっ、もちろん真ちゃんの自由じゃないかなと思います。
   アイドルは楽しむ姿を見てもらうのが仕事、ですから」ニコッ

P「……おぉ、いいこと言うじゃないか雪歩」

雪歩「ぅ……スコップ取ってきますぅ~……!」タタタ─

P「え、雪歩ーーっ……」

P(楽しむ、か……真は、今の仕事を楽しんでいないのか? 
  理想と仕事を両立させられれば、ベストなんだけど……)

P(……社長に、掛け合ってみるか)

 ──────
  ───

社長「うむ……菊池くんのキャラ変更か」

P「はい、真自身〝かっこいい〟路線をあまり好んでいないらしくて……、
  あいつがやりたいことを、やらせてやりたいんです」

社長「……我が事務所のアイドル達は、他のアイドルよりも元気で、
   仕事を楽しんでいることが取り柄だと思っている」

社長「キミ、よく言ってくれた。菊池くんには、
   『これからは自分の思うように、楽しんでアイドル活動をするように』
   と伝えてくれ、ワッハッハッハッハ!」

P「……はいっ、ありがとうございます!」

それから季節が一つ過ぎて、
 真はいつしか──〝真王子〟と、呼ばれることはなくなっていた。

真美「まこちん髪伸びたね→」

亜美「わ→ホントだ! 髪サラサラ→」

真「ふっ、二人ともくすぐったいよー」

 チョット コラッ アハハ……

律子「でも本当に変わりましたねー、真。女の子らしくなったっていうか」

P「そう見えるなら、文句なしだ」

P「始めはキツかったけど、最近また立て直してきたからな。
  仕事も前と比べれば全然だけど、十分すぎるぐらいだ」

律子「〝真王子〟が、うまくいき過ぎてたんですねきっと……」

律子「──なんだか、事務所の雰囲気も変わりましたよね」

P「えっ、そうか?」

律子「プロデューサー、気付きませんでした? みんな少しだけ大人になりましたよ。
   子供っぽさが抜けたと言うか、みんな女に近づいたっていうか。これも真の影響なのかしら…」

P「女、ね……ハハハ」

伊織「ちょっと律子! そろそろ時間よ、亜美もあずさもほらッ!」

あずさ「あらあら〜もうそんな時間?」

亜美「はいはい→」

律子「ってもうこんな時間!? じゃあプロデューサー殿、行ってきます!」

P「おお、行ってこい」

亜美「じゃあね→真美、まこちん」

真美・真「「いってらっしゃーい」」

真「……あ、プロデューサー。そう言えば今日、私の仕事ありませんでしたっけ?」

P「え、ああ。今日は真と雪歩のファッション雑誌のグラビア、だな。
  ちなみに雪歩はその後、もう一つグラビア撮影がある」

雪歩「は、はいっ」

真「そうですか。雪歩、どんなお洋服かな?」

雪歩「そうだね。フリフリのとか、着てみたいかも」

真「それいいねー、あっはは」

P(平和だ、平和すぎて怖いくらいに)

   ────数ヶ月前────

P「真、本当にいいんだな?」

真「はい、もちろんですっ」

P「この書類が通ったら、お前は変わるんじゃない……、
  変わらなくなくちゃならないんだぞ」

真「もー、もったいぶらないで下さいよっ。
  どちらかは絶対に──捨てなくちゃいけないと思うんです」

P「……分かった」

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 ──────
  ───

P「……」ブーン

雪歩「真ちゃん、このお花可愛くない?」

真「ほんとだー、なんて名前なの?」

雪歩「ジンチョウゲって言って、すごいいい香りがするんだよー」

真「さすが雪歩だね。花の種類なんて私分からないよー……」ポリポリ

雪歩「この花のアクセ、二つ持ってるけど…、
   お揃いにしようよ真ちゃん、今度持ってくるね」

真「えっ、いいの!?」

雪歩「うんっ、もちろんだよ」ニコッ

真「ありがとう雪歩ーっ。ねぇプロデューサー、このお花可愛くないですかっ?」ズイッ

P「ぅわっと、落ち着け真っ。いま運転中…」ブーン

真「あ、すいません……」ショボーン

雪歩「ふ、ふふっ」クスクス

真「…雪歩ぉ、笑ったなぁ〜……?」

雪歩「ふふ、えっ──ふぇ!? ち、ちちょ真ちゃっ!?」ビクッ

真「こちょこちょこちょこ──」

雪歩「まこ、あはははははっ! く、くすぐたひひはふふッ!」ジタバタ

真「ほらほら謝らないと止まらないよー?」

 ヤッ チョッヤメッ…アハハ! シ、シンジャウー!!

P(すごい……楽しそうです…)ブーン

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  ─────撮影所──────

カメラマン「はーい、もう一枚」パシャッ

P「うん、順調だな」

響「プロデューサー!」

P「えっ、響? それに美希と貴音、どうしてここにっ?」

美希「ミキたちも違う所でグラビア撮影やってるのーっ」

響「今は自分達、休憩中なんだぞっ」

P「あっ、そういえばそうだったな」

美希「だから遊びにきたのハニー!」ダキッ

P「だぁっ! い、いきなり抱きつくな美希ッ!」

貴音「こら美希……プロデューサーも困っていますよ」

美希「ぶーっ」

P「ぶー、じゃない。まったく……」

響「雪歩と真のグラビアかー。二人とも可愛い格好してるなー」

貴音「ええ、とても麗しいです」

美希「可愛いけど。美希は、真くんはやっぱり前の方が良かったって思うな」

P「……そう、かもな」

貴音「それはそうとプロデューサー。少し、お耳に入れてほしいことが……」

P「ん、どうした貴音?」

貴音「はい、何やら嫌な気配がします。先程も、わたくし達を狙う輩が現れました」

P「な、なに!? こっちにそんな話は」

貴音「スタジオに入る前、車から降りたところに、所謂〝ちんぴら〟と呼ばれる者達が──」

響「──『君達アイドルでしょ?』とか言って、手を出してきたんだぞ」

P「そ、それで……」

美希「二人ともすっごい強かったの! 響も貴音もすごかったのー!」

響「沖縄の武術に敵うやつはいないさー」シュッ シュバッ─

P「倒しちゃった、のか…?」

貴音「正当防衛でした」ファサ…

P「おいおい、あんまり危ないことをしちゃだめだぞ。
  万が一何かあったら、どうするつもりだったんだ」

響「う、ごめんなさいだぞ……」ショボーン

貴音「しかし、あなた様も気をつけて下さいまし。まだ近くにいるやもしれません」

P「ああ、分かった。それよりお前ら、撮影はいいのか?」

響「げげっ!? もうこんな時間だぞ。美希、貴音、ダァッシューッ!」

美希「うわわぁ、ハニーじゃーねーなのー!」

貴音「それでは、失礼いたしますー」

 ダダダー

P「まったくあいつらも」ハァ…

P(でも、少し心配だな……俺も気をつけないと)

 ──────
  ───

カメラマン「は〜い、オーケーです。お疲れ様ー」

雪歩・真「「ありがとうございましたー!」」

真「っんー! いっぱい撮ったねー」

雪歩「うん、カメラマンさんも褒めてくれたし、真ちゃん可愛かったよ」

真「ほんとっ!? ありがとー雪歩ーっ!」ダキッ

雪歩「ちょ!? 真ちゃッ、苦しいー!」

P「お疲れ二人とも。雪歩はまたこれから撮影だけど、真も見に来るか?」

真「もちろんです、私もついて行きますっ」

P「よし、じゃあ行くぞ二人とも」

雪歩・真「「はいっ」」

 ──────
  ───

 パシャッ パシャシャッ

真「雪歩、綺麗ですね……」

P「そうだな。雑誌の巻頭カラーだから、セットもすごいし」

P「でも、真もその…──可愛くなったぞ?」

真「ぶっ!? なな、なんですかいきなりっ!?」ワタワタッ

P「しぃー、しぃー……!」

真「す、すいません……でも、
  プロデューサーがいきなり、変なこと言うから……」

P「可愛くなった、全然変なことじゃない」

真「……」///

真「プロデューサーがそういうなら、良かったの、かな…」ボソボソ

P「え、なんだって?」

真「──なんでもないですよーっだ!」

P「む、なんだよその言い方」

真「ほ〜ら、雪歩を見守りましょうっ」

P「……まったく」

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  ─────駐車場──────


雪歩「うぅ、緊張した…」トボトボ

真「お疲れ雪歩。ほら、奥の方座りなよ」

雪歩「ありがとう真ちゃん……ふぅ」

P「二人とも、飲み物何にする? 俺、買ってくるよ」

雪歩「ありがとうございますプロデューサー。じゃあ、午後ティーを」

真「私はマテ茶でお願いしますっ」ニコッ

P「了解、すぐ戻るよ」タタタ─

 この時、貴音の忠告を忘れていた俺は──何も考えずただ、
 いつものように、2人を置いて自販機に向かった。

 ──────
  ───

P「えっと、これと──」ピッ ガコンッ

P「──…これか、よしっ」ピッ ガコンッ


雪歩「きゃああああぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」


P「ッ!? ゆき──ッ!!」

 ────あなた様も気をつけて下さいまし。まだ近くにいるやもしれません

P「雪歩っ!!」ダッ─

 ──────
  ───

P「雪ッ──」

男1「ほらぁ、怖がらなくてもいいんだぜぇ?」

男2「おい、なんか来たぞ」

雪歩「ぷ、プロデューサー……真、ちゃんっ…」ガタガタ

男1「なんだてめぇは?」

P「萩原雪歩のプロデューサーだ。その子を放してくれ」

男3「あぁ? てめぇ今の状況分かってんのかおい」

男1「へへっ、雪歩ちゃ〜ん?」

雪歩「ひっ……!!」ビクッ

男2・3「「はっはははははッ!!」」

P「ぐっ……──ッ!」

P(そう言えば真、真はどこにッ…!?)

男2「よし、そろそろ──」

P「その子を、どうするつもりだ?」

男2「ぁ? 決まってんだろうが。アイドルの写真がいくらで売れると思ってんだよ」

男3「みなまで言うな男2、雪歩ちゃんが怖がっちゃうだろ?」

男3「なーに、ちょっとおたくのアイドルをお借りするだけだ。
   悪いようにはしねぇよ」

P「雪歩を、放せ……ッ」

男1「ひゃっははぁ!! 嫌って言ったらどうするんだよぉ?」

男2「おい、こんなところで時間くってる暇はねぇ。さっさとズラかるぞ」

P(どうしたら! こうなったら……頼む、真ッ──!!)

男3「そうだったな。じゃあなプロデューサー様、あば──」


 P「まことおおおおおおおおおーーーーッ!!!!」

男1・2・3「ッ!!」ビクッ

P「何してる! 雪歩がピンチの時に、お前は指を咥えて見てるのかッ!?」

P「こういう時に、王子様ってのは助けてくれるんじゃないのか!!」

男2「おい、黙ってろ!」バキッ

P「うっ!」

雪歩「プロッ…デュ──」

P「雪歩にとって王子様は──お前しか、いないんだぞッ!!」

男2「てめぇ!!」バキッ

雪歩「っ! プロデューサー…ッ」ジワッ


P「っ、それと俺は──お前はどんな時でも、ずっといつでも可愛いと、そう思ってるぞ!! 真ッ!!」


男1「なんだぁ? 気でもくるったか!」

男2「デカい声をあげても無駄だぞ、他に変な真似してみろ。この子はタダじゃおかねぇ」

男3「サツにチクッたらどうな──ホゲッ!?」ガンッ─ ドサッ

P「!!」

男2「な、なんだ!?」 男1「なんだお!?」


 「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!」ダッ─


男1「ぎゃっ!!」バキッ─ バタッ

 「──…はっ、はっ、はっ」

P「真ッ!」

雪歩「ま、真ちゃん…!」パァッ

真「ごめん雪歩、怖い想いをさせたね」

雪歩「ッ真ちゃん、怖かった、怖かったよぉ〜……」グズッ…

真「ボクがいるから、もう大丈夫だ」

男2「クソッ! もう一人いやがったのか! 
   男3の野郎、しっかり調べたんじゃねぇのか…!」

真「……」キッ

男2「女だからって、容赦はしねぇぜ!」コキ…コキ…

真「はぁ……! と、言いたいところだけど、真王子はこれでおしまい。
  あとは──」

 ファンファンファンファン──

男2「ゲッ……」

真「──おまわりさんに、任せよう」

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  ────夕方・事務所─────


小鳥「動かないで下さいよー?」

P「ホント、一時はどうなるかと思ったよイテテッ…」

律子「それは貴方の不注意が原因でしょ!? 
   なのに真に助けてもらってそれで警察沙汰になって、
   ちょっと聞いてるんですか本当にプロデューサー殿は──……」ガミガミ

P「」ショボーン

美希「アッハハ、ハニー怒られてるのー」

千早「下手したら大変なことになってたからよ」

亜美「りっちゃんもよくあんなに舌が回るよね→」

P「お前ら言いたいことだけ言いやがって。うぅー滲みる…」

伊織「竜宮のスケジュール伝えるときも、いつもこんな感じじゃないの」

春香「でも良かったよー、雪歩も無事だったし」

雪歩「真ちゃんの、おかげだよ」

やよい「本当に良かったですーっ」

響「そんなに自分は心配しなかったぞ、
  なんせ真には自分直伝の武術があるからなー」

貴音「まこと──良い判断でしたね、真」

真「警察に通報してて、少し遅くなっちゃったけど、雪歩が無事で本当によかった」

P「そう言えば、なんであの時雪歩と一緒じゃなかったんだ?」

真「お花を、摘みに……」

P「そうだったのか。いやはや、久々にドキドキしたよ…」

伊織「まったく、プロデューサー失格ね」

P「ハハハ、言われちゃったよ…」

真「……」


 真「わた──いや、ボクやっぱり、こっちの方が自分らしいのかも」


一同「えっ?」

亜美・真美「「ぼ、ぼくぅ〜!?」」

春香「真?」

P「……」

真「ボクのことを、可愛いって言ってくれる人もいる。
  それなら、みんなを守れる……王子様でも──」

雪歩・小鳥「「まこと様ぁー!!」」

真「う、ううわぁーーっ!?」

雪歩「真ちゃんっ、やっと戻ってくれたんだねー!」ダキッ

小鳥「ロン毛も男らしくていいッ、いいわよ真ちゃん…!」ズイッ

真「ちちょッ! 小鳥さんまでっ」

社長「よほぉー! 話は聞かせてもらったよー、これで凍結されていた、  
   ドラマ『進撃の●人』の件も再始動というわけだ!」

真「ってあの話まだあったんですか!?」

社長「頼むよ『鎧の巨人』くん! ハッハッハッハ!!」

真「ッ〜〜、やっぱり男の子扱いはいやだぁぁぁーーーー!!」

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  ────夜・屋上─────


P「なんだか、あっという間だったな」

真「はい、ボクの我がままにみんなをつき合わせて……本当に申し訳ないです」

P「ちょっと思春期の悩み話が、大きくなっただけだ。
  この数ヶ月で、何か分かったんだろ?」

真「何か……そうですね。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないです」

P「? なんだ、言葉を濁すじゃないか」

真「結局は……最初から分かってたことだったんです。
  それを再認識できた、そんな数ヶ月でした」

真「ボクのことを可愛いと思ってくれる人もいる……。
  ボクにだって、王子様はいたんですよ」

P「……そうか、よかったな真」

真「はいっ」ニコッ

P「……」

真「……──ッ」

真「ねぇ、王子様」

P「ん、なんだまk──って王子様ッ?」


 真「……いっひひー、なんでもありませんッ♪」 ニコッ





                             ─おわり─

<<41
小萌先生をずっと子萌先生と思ってた時並みの不覚。
まぁ、読んでくれてありがとう!

>>42 そして不覚にも安価まで間違えるという。

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