千早「私、ロリコンかもしれないわ」 (28)

【事務所】

春香「……はい?」

千早「だから、ロリコンよ」

春香「いや、それは聞こえてるけど……いきなりどうしたの?」

千早「少し考えたのだけど、高槻さんって可愛いでしょう?」

春香「可愛いと思うけど……それで?」

千早「だから、私ってロリコンなんじゃないかと思うのよ」

春香「ちょっと待って。それだと私もロリコンになっちゃうんだけど」

千早「春香もだったの?」

春香「違うよ!」

千早「あら、そうなの……残念ね……」

春香(プロデューサーさん、ごめんなさい。私の友達がアホになりました)

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千早「でも、高槻さんの事は可愛いと思っているのよね?」

春香「それはそうだけど、私はロリコンじゃないからね?」

千早「ふむ……じゃあ、我那覇さんはどうかしら?」

春香「響ちゃん?確かに可愛いけど……それがどうしたの?」

千早「我那覇さんも可愛いと思っているのね?」

春香「うん。可愛いよね、響ちゃんって」

千早「じゃあやっぱり春香もロリコンなんじゃないかしら」

春香「だから違うよ!」

千早「でも、高槻さんと我那覇さんを可愛いと思うのなら、それはもうロリコンと言っていいのではないかと思うのよ」

春香「よくないと思うよ?」

春香「というか、それだと千早ちゃんもロリになっちゃうけど」

千早「誰の胸がロリみたいだって?」

春香「胸については一言も触れてないよ」

千早「それは小さすぎて触れる事すらできないと捉えていいのかしら」

春香「被害妄想だよそれ!」

千早「さっきから黙って聞いていれば、胸が小さいだの触れないだの……」

春香「黙って聞いてもない上に、私はそんな風に言ってないからね?」

千早「自分の胸が大きいからって調子に乗っていると、切り落とすわよ」

春香「まさか、胸を……?」

千早「リボンを」

春香「リボンは私の急所じゃないよ!?」

千早「冗談はさておき、あの二人を見ていると何とも言えない感覚になるのよ」

春香「私も友達のおかしさに何とも言えないよ……」

千早「例えるなら……そう。魂が勃起すると言うべきかしら」

春香「千早ちゃん!?小鳥さんでもそこまで酷くはないよ!?」

千早「私が二人を名字で呼んでいるのも、魂がエレクトするのを防ぐためなのよ」

春香「え?じゃあ雪歩にもエレクトしてるの……?それはちょっと……」

千早「萩原さんは違うわ。あの子は自分を貧相だ何だと……割といい体つきの癖に……」

春香「思考がおじさんみたいだよ千早ちゃん」

千早「そういえば、律子も自分の事を寸胴だとか言っていたわね……」

千早「律子で寸胴だったら私は何?つまようじだとでも言いたいの?」

春香「心の狭さはつまようじの先と同じぐらいなんじゃないかなぁ……」

春香「あ、美希はどうなの?千早ちゃんを尊敬してるって言ってるし、なんだか可愛いよね」

千早「あぁ……あの子は駄目ね……」

春香「えっ?どうして?」

千早「だって、あの子は……あの子はっ――!」

春香「ち、千早ちゃん?一体何があったの!?」

千早「山も谷もない人生を送っておきながら山も谷もあるなんて――」

千早「私は山あり谷ありの人生を送ったのに山も谷もないのよ!?許せないわ!」

春香「あー分かった!千早ちゃん馬鹿でしょ!?馬鹿なんでしょ!?」

千早「はぁ……はぁ……少し取り乱してしまったわ……」

春香「あれで少しなんだ……」

千早「ともあれ、美希は駄目だわ。あの子は年齢の割に大きすぎるもの」

春香「だから、それなら響ちゃんも十分――」

千早「我那覇さんはいいのよ」

春香「いやでも――」

千早「いいのよ」

春香「はい……」

春香「じゃあ、響ちゃんはいいとして……亜美と真美は?」

千早「亜美と真美は……最近、成長しすぎたのよね……」

春香(あ、これヤバい人の考え方だ)

千早「正直言って、もうダイレクトに性的なイメージが湧いてくるのよね」

千早「魂がどうとかじゃなくて、普通に興奮するわ」

春香「私も普通にドン引きだよ」

千早「その点、高槻さんは私のロリ魂に訴えかけてくるのよ」

春香「千早ちゃんいつか訴えられるよ?」

千早「忘れていたけれど、水瀬さんもなかなか理性を揺さぶるのよね」

春香「もう私が訴えようかな」

千早「ただ、やっぱり成長しすぎた感は否めないわ……彼女、スタイルいいし……」

千早「それに何より、守られるのが嫌いそうだしね」

春香「いい観察眼を持ってるね。私も持ってたら千早ちゃんとは友達にならなかったのに」

千早「春香……あなた結構キツいわね……」

千早「とはいえ、春香が心配するのも分かるわ。だから昨日、夜通し考えたの」

春香「何を?」

千早「SLP……つまり、セーフロリータパーセントよ」

春香「ごめん、意味分かんない」

千早「そうね……口頭では説明しにくいから、紙に書いて説明するわね」

千早「つまり、こういう事よ」

――――――――――――――――――――――――――――――

セーフロリータパーセント(以下SLP)とは、ロリコンであるかどうかを見極める値である。
それを判断するには、基準値であるベースロリータパーセント(以下BLP)を算出する必要性がある。
BLPは、以下の式に基準となる年齢を当てはめる事で算出される。

(自分の年齢)-(相手の年齢)
―――――――――――――――×100(%)
    (相手の年齢)

ロリコンの基準となる年齢は、20歳が15歳に性的欲求を抱く場合を想定する。
すると、BLPは

20-15
―――×100≒33.3(%)
 15

となる。

SLPはこの値よりも小さい値である。
例として、18歳と15歳の場合で計算すると

18-15
―――×100=20(%)
 15

となり、健全である事を示す。

しかし、SLPが存在するように、アウトロリータパーセント(以下OLP)もまた存在する。
基本的に、OLPはBLP以上の値と考えるのが妥当である。
例えば、19歳が14歳に性的欲求を抱くのは、法律上の問題はなくともアウトである。
算出すると

19-14
―――×100≒35.7(%)
 14

となり、BLPを上回っている事が分かる。

なお、小数第二位を四捨五入して計算している。

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「――という感じなのだけど、どうかしら?」

春香「ねぇ千早ちゃん。こんな穴だらけの式を考える為に徹夜したの?」

千早「確かに、私と我那覇さんと高槻さんは女だから穴だらけね」

春香「そういう事が言いたい訳じゃないからね!?」

千早「それで、春香の懸念を晴らすべく、高槻さんと私で計算してみたのだけど――」

――――――――――――――――――――――――――――――

16-14
―――×100≒14.3(%)……セーフ
 14

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「どうやら正常みたいね」

春香「千早ちゃんの頭は異常だけどね」

春香「というか、これって性別とか考慮しなくていいの?」

千早「愛は性別に縛られないのよ」

春香「倫理には縛られるべきだと思うな」

千早「細かい事に気を取られていたら、真実を見失うわ」

春香「千早ちゃんがアホって真実なら、ずっと見失っていたかったなぁ……」

千早「そういえば、さっきから我那覇さんをロリだと言い続けてきたけれど……」

千早「この式に当てはめてみれば――」

――――――――――――――――――――――――――――――

16-16
―――×100=0(%)……セーフ
 16

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「こうして合法になるわね」

春香「千早ちゃんが法律を決めるんじゃないからね?」

千早「春香。法律なんて役に立たないのよ」

春香「やけに自信満々だね」

千早「よく考えれば分かる事だわ。いい?芸能界では、親子ほど年の離れた人同士が結婚する事があるの」

千早「その異常性が、この式だとはっきり表れるのよ」

千早「仮に、60歳の人と25歳の人が結婚するとして、この式にその値を代入すると――」

――――――――――――――――――――――――――――――

60-25
―――×100=140(%)……アウト
 25

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「ね?分かるでしょう?」

春香「まあ、言いたい事は分かるけど……」

千早「というか、計算したら私って全然ロリコンじゃないわね」

春香「え?じゃあこの時間は何だったの?私はこの徒労感をどうすればいいの?」

千早「折角だから、プロデューサーがロリコンかどうか確かめましょう」

春香(プロデューサーさん、ごめんなさい。明日からあなたを犯罪者として見るかもしれません)

千早「プロデューサーは……あずささんよりも年上の筈だから、とりあえず24歳で算出しましょう」

春香「アバウトな……」

春香(プロデューサーさん、ごめんなさい。あなたをアバウトなロリコンにしてしまう事を許してください)

千早「成人している音無さんとあずささんは省いていいわね」

千早「では、律子から――」

――――――――――――――――――――――――――――――

24-19
―――×100=26.3(%)……セーフ
 19

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「ふむ……律子とプロデューサーは交際可能ね」

春香「なんか良心が痛む……けど見たい気もする……」

千早「春香、自分に正直になりなさい。それは悪い事ではないのよ」

春香「悪い事ではないけど、嫌な事ではあるよね?千早ちゃんを見てるとそう思うよ」

千早「褒めても何も出ないわよ?」

春香「煩悩は褒めなくても出てくるみたいだけどね」

千早「次は四条さんね――」

――――――――――――――――――――――――――――――

24-18
―――×100≒33.3(%)……セーフ?
 18

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「ギリギリ……ギリギリセーフかしらね?」

春香「まあ、プロデューサさんも手を出そうって思う訳じゃないし、大丈夫なんじゃないかな……?」

千早「一応、春香達の年齢でも計算しておきましょうか」

――――――――――――――――――――――――――――――

24-17
―――×100≒41.2(%)……アウト
 17

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「まあ、成人と女子高生って響きからしてアウトよね……」

春香「アウトかぁ……しかも割と高い数値でアウトだね」

千早「通報されても文句が言えない絵面だもの。仕方ないわ」

春香「……ねぇ千早ちゃん」

千早「どうしたの?」

春香「あのね、これはちょっとおかしいって自分でも思うんだけど」

千早「何?」

春香「『真美は合法』って、聞いた事ある?」

千早「ああ、それね……私も聞き覚えがあるわ」

春香「だからその……プロデューサーさんで検証してみたいんだけど、どうかな……?」

千早「構わないわよ。まあ、アウトなのは分かりきっているけれど」

春香「どれくらいアウトなのか、興味が湧いちゃって」

千早「それは確かに気になるわね……じゃあ、計算するわよ――」

春香(プロデューサーさん、ごめんなさい。私は悪魔に魂を売りました)

――――――――――――――――――――――――――――――

24-13
―――×100≒84.6(%)……アウト
 13

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「圧倒的アウトね……」

春香「だね……」

千早「……明日、釘を刺しておきましょうか」

春香「うん……そうしよう……」

千早「そういえば、春香の提案でふと思ったのだけど」

春香「うん?」

千早「音無さんって、どうなのかしらね……」

春香「あー……小鳥さんは、まぁ……」

千早「……やってみる?」

春香「そうだね……折角だから……」

千早「そうね……折角だもの……」

千早「音無さんの年齢って、確か……2X歳?」

春香「うん」

千早「じゃあ、代入して――」

――――――――――――――――――――――――――――――

2X-24
―――×100≒20.8(%)……セーフ
 24

※個人情報の保護のため、Xの値をお見せする事はできません

――――――――――――――――――――――――――――――

千早「あれ?これは意外と……ありなんじゃないかしら」

春香「というか、むしろプロデューサーさんは小鳥さんにアタックするべきなんじゃ……」

千早「そうね。未来の犯罪の抑止にも繋がるわ」

春香「千早ちゃんが居る限りそれはないよ」

千早「ともあれ、これで私はロリコンじゃないと証明されたし、すっきりしたわね」

春香「そうだね。大事な問題は置き去りにしてる気もするけどね」

千早「些細な事よ。ところで、結構遅くなってしまったわね」

春香「ホントだ。終電、間に合うかなぁ……」

千早「私の家に泊まる?何のおもてなしもできないけれど、寝る場所くらいは用意できるわよ?」

春香「んー……じゃあ、お願いしようかな」

千早「ふふ、お願いされました。それじゃあ、行きましょうか。天海さん――あ」

春香「天海さん?もうっ!千早ちゃんったら、何をふざけ――」

――――――――――――――――――――――――――――――

千早『私が二人を名字で呼んでいるのも、魂がエレクトするのを防ぐためなのよ』

――――――――――――――――――――――――――――――

春香「やっぱり帰る!おうち帰るううぅぅぅ!」

千早「待って春香!誤解なのよ!」

春香「何が誤解なの!?」

千早「だってほら!私と春香ならセーフだから!6.25%だから!」

春香「何で具体的な数字が出てるの!?」

千早「それはその……昨日、試しに計算を――」

春香「グッバイ千早ちゃん!今までありがとう!」

千早「見捨てないで!お願い!じゃないと高槻さんが酷い事になるわよ!」

春香「何その脅し!?タチ悪いにも程があるよ!」

千早「さぁどうするの春香!?我那覇さんもさめざめと泣く事になるわよ!?」

春香「響ちゃんに何をするつもりなの!?」

千早「私の家に来たら教えてあげるわ」

春香「それなら私は帰る――」

千早「高槻さん、我那覇さん」

春香「卑怯だよ!」

千早「だったら泊まればいいじゃない!」

春香「それは嫌!」

千早「あれも嫌、これも嫌……一体あなたは何がしたいの!?」

春香「友達やめたい……」


――END――

以上で完結となります。お楽しみ頂ければ幸いです。

作中の式はもうロリコンがどうとか関係なくなってますが、ご容赦ください。
なにぶん、適当に考えたものですので。

息抜きに書いただけなので短いですが、読んでくださった方が居るのならば感謝を。

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