回想

彼女「このクラゲかわいいねー」

友「ああ、でもキミの方がかわいいよ」

彼女「･･････友ってさぁ、なんかありきたりなセリフしか言わないよね」

友「え？ありきたり？」

彼女「うん、別に悪くはないんだけど。でもなんかなぁー」

男「確かにそれはありきたりだな」

友「でも俺に口説き文句なんて考えるセンスはない」

男「だから俺に頼むってわけか」

友「今度また水族館デートがあるんだ」

男「いや水族館好きだな」

友「彼女がクラゲ大好きでな。頼むよ！」

男「かー！しゃーねーなぁ。ここは一つ口説きマスターが人肌脱いでやるかぁ？」

友「ありがたーい！たいたいたい！」

男「やれやれ（笑）サワムラーかよ（笑）」

友「でも口説き文句なんてどうやって考えるんだ？」

男「こういうのはシチュエーションから考えるのさ」

友「なるほど」

男「例えばデートの待ち合わせだ」

友「『ごめん待ったー？』って奴だな」

男「ここでお前ならどう返す？」

友「うーん、『いや、今来たところ』かな」

男「おいおい、ありきたりの擬人化かよお前は」

友「えー、でもこれ以外思いつかないぞ」

男「やれやれ･･････」

男「今来たところ、なんてセリフ今どき少女漫画でも言わないぜ。読まんから知らんけど」

友「じゃあ男ならなんて言うんだ？」

男「そりゃお前、決まってるだろ」

男「『いやもう今日楽しみで昨日の夜からここでキャンプファイヤーしてたわ！』だよ」

友「おい･･･何を言い出すかと思ったら･･･お前天才か？？」

男「実際に焚き火を用意しとくとなお良いぞ」

友「もう肉焼いて待つ！わぁ！」

男「彼女はきっと『こマ？めっちゃ楽しみにしとるやん笑これもう結婚一択だわ』ってなるぜ」

友「くぅ～！やっぱ男は違うなぁおい？！」

男「照れる～」

男「そして待ち合わせと言えば？」

友「うーん、服装チェック？」

男「そうだ。デートは服を褒めるところから始まると言っても過言ではない」

友「『その服似合ってるね』とかか？」

男「あのさキミさぁ、Google翻訳さんですか？いやGoogle翻訳ですらもっとパンチ効いたこと言えるぜ」

友「うーん、でも褒めるったってなぁ」

男「ここで気の利いた褒め言葉が言えないとデートの士気もさがるぞ」

友「それは困るな」

男「ここの一言で彼女の機嫌も変わってしまうのだ」

友「なるほどな。じゃあ男ならどう褒めるんだ？」

男「もちろんこうだ」

男「『おや？このかっこいい足元はモデルさんかな？いやこのセクシーな腰周りは女優か、いやいやこの可愛い服が似合うのはアイドル？･･････ってキミだったのか～！？』」

友「ｯﾁ･･････あの、ほんとお前いい加減にしとけよ。道行く女の子みんな虜になるわ！」

男「やれやれ、逆に2人きりになれなくなるかもな？」

友「こんなんもうデート界の泉ピン子やんけ･･････デート界の黒柳徹子やんけ！」

男「恋の女神様もル～ルル言うとるで」

友「もうお前の才能に嫉妬すら出来ないレベルだわ･･････」

男「彼女も多分『消費税も上がるしそろそろ友と結婚確定申告しとく頃か？』と思うに違いない」

友「て～んさい！はいて～んさい！はい天才！」

男「そんな事？全然？？ないけど～？？？」

男「次は狭い歩道でさりげなく車道側を歩くシチュエーションだ」

友「定番っちゃ定番だな」

男「ここでお前ならなんて言う？」

友「そうだな･･･『危ないからこっち側にいとけよ』とか？」

男「あーはいはい。それアイスクリームならバニラ味だわ」

友「マジかよ･･･ダメダメじゃん･･･」

男「まぁ普通にバニラ美味いけど」

男「だがお前、ここはクッキー＆レアチーズくらいの甘さ出してかないかんのとちゃうか？」

友「そうだな･･･俺が間違ってたっ！もう二度とバニラなんて頼まねぇ！！！」

男「いや別にバニラは頼んでもいいけど」

友「それで、男ならなんて言うんでやんすか？」

男「そら俺ならこう言うに決まってるだろ」

男「『危ないだろ、俺の影の方にいとけって。シャドウだけに･･････（笑）』とね」

友「あの、え？なに？ふざけてんの？これもう流行ること間違いなしじゃねぇか･･････」

男「っしょ？っっっっしょ～？」

友「いやもうこれすぅごいっていうかやぁばいっていうかもうこれヤバいって！てかすごいって！」

男「あれあれ？俺またなんかやっちゃいました？」

友「漢らしく車道側に回ってしかもユーモアまで効いてるとかヤバいって！お前ヤバヤバ村のヤバ川ヤバ男か？？」

男「彼女もきっと『ばりくそ面白いんすけど笑てか結婚する？』って言うぜ？」

友「かー！やっぱ男ちゃんだよなぁ！」

男「よせやいっ」

男「そしてなんやかんやで水族館に着く」

友「あいつはクラゲが好きなんだよな～」

男「確かにクラゲは可愛いな」

友「いっつも『クラゲ可愛い～』って言ってるよ」

男「それでお前は『君の方が可愛いよ』と返すわけだな。このタコ野郎」

友「タ、タコ野郎はないだろ･･････クラゲ見てんだからさ」

男「そういうとこやぞ」

男「君の方が可愛いよなんて言われても、今の子はそんなん心に響かないのさ」

友「そこで男先輩はなんて言うんすか？」

男「俺なら絶対にこう言う」

男「『お前、あんまりクラゲを虐めるなよ。プロレスラーが吹奏楽部男子にお前強いなって言ってるようなもんだぞそれ』ってね」

友「はぁ･･････あ～あ･･････お前･･････
恋 愛 マ ス タ ー か ？ 」

男「このセリフなら1発で骨抜きよ」

友「あ？かけた？wクラゲとかけちゃった？w」

男「彼女も恐らく『あーあもう 結婚するしか ないじゃない(字余り)』と考えるだろう」

友「男さんこれもう講座開けるんじゃないっすか～？」

男「HAHAHA」

男「そしていよいよ大詰め、ディナーだ」

友「夜景の見えるレストランを予約してるぞ」

男「既にありきたりな感じだが、まぁいい」

男「これはもう夜景のアドバンテージを最大限利用する以外にないだろう」

友「夜景と言えば、『君の瞳に乾杯』とか？」

男「いや一周まわって斬新だわ。歳が歳なら新鮮に感じるぞそれ」

友「でも他にセリフなんか思いつかんがなぁ」

男「おいおい、ディナーは絶好のチャンスなんだぞ」

男「ここが正念場だ。今までのは%稼ぎにすぎん」

友「という事はディナーの口説き文句はスマッシュか」

男「フィニッシュを飾る大技がカービィの吸い込み自殺なんかじゃ彼女の愛も冷めるってもんよ」

友「では男殿は此の立会でなんと申されるのだ？」

男「我ならば申すこと斯くの如し」

男「男曰く、『今日は星が沢山見える？でも俺にはひとつも見えてないよ。だって君しか目に入ってないからね笑』与。」

友「えぇ～･･････流石の男もここまでかぁ～。こんなところまで辿りついてしまっていたのかぁ！？」

男「食ったパンの数は覚えてねぇ～」

友「もうこの一撃だけでバーストじゃん！最大ためエクスプロージョンだろこれ･･･」

男「彼女も十中八九『Year！反対退け！結婚届け！共にゆく未来壁など意味無い！』って歌っちゃうぜ」

友「男って福士蒼汰に似てるって言われない？」

男「あ～、たまに言われるかも」

男「これであとはもう2人で夜の街に消えていくだけさ･･････」

友「くぅ～！やっぱお前に頼んでよかったわ～！」

男「困った時はお互い様だろ？」

友「この恩は一生忘れないぜ！今日はありがとな！」

男「おう、頑張れよー」

翌朝

男「あー･･････頭痛い･･････昨日何喋ったか全然覚えてねーや」

デート当日

彼女「あーごめんね、待った？っていうか、え、何そのお肉は」

友「いやもう今日楽しみで昨日の夜からここでキャンプファイヤーしてたわ！」ｼﾞｭｰ

彼女「いやおかしいでしょ！百歩譲ってキャンプファイヤーしたとしても肉は焼かないでしょ！いやキャンプファイヤーもしないわ！！」

友(今日は彼女のテンションが何故か高い･･･！いけそうだぞこれは)

友「おっとー、小銭落としちゃったな？」

彼女「すごい棒読みだけど？」

友「･･････おや？このかっこいい足元はモデルさんかな？いやこのセクシーな腰周りは女優か、いやいやこの可愛い服が似合うのはアイドル？･･････ってキミだったのか～！？」

彼女「すごい棒読みだけど！？」

友(この反応･･････喜んでいる！きたぞこれおい！)

道中

彼女(今日は車が少なくて安心だなー)

友「今日は車が多いな」

彼女「目開いてる？」

友「危ないだろ、俺の影の方にいとけって。シャドウだけに･･････（笑）」

彼女「え///ありが･･････は？」

友(おいおい･･････！顔赤くして爆笑しとるやんけ！後で思い出し笑いするやつやんけ！)

水族館

彼女「あ～！やっぱりいつ見てもクラゲは可愛いなぁ～！なぁ！？」

友「お前、あんまりクラゲを虐めるなよ。プロレスラーが吹奏楽部男子にお前強いなって言ってるようなもんだぞそれ」

彼女「うんー。うん？え、なんて？？」

友(ぷぷぷーw分かってないフリしちゃって！照れ照れじゃんw)

レストラン

彼女「わぁ夜景すごいね～！」

友「一週間前から予約してたんだ」

彼女「ありがと～！夜景って綺麗だけど星はあんまり見えないんだねー」

友「今日は星が沢山見えるって？」

彼女「話聞けよ」

友「でも俺にはひとつも見えてないよ。だって俺の目には君しか映ってないからね笑」

彼女「だから最初から1つもねーよ！というか窓の外見ながら言うな！」

友(ふふふ、今日はいつもより沢山喋るな？)

彼女「美味しかったね！」

友「あぁ、また来たいな。なぁ、この後さ･･････」

彼女「じゃあ今日は少し仕事残ってるからもう帰るね」

友「え？あ、そうなんだ。じゃあ駅まで送ってくよ･･････」

彼女「うん、ありがと」

友(うーん、完璧にはいかないもんだなぁ･･････)