春香「ボーダーですよっ! ボーダーっっ!」 (262)



迅「……来たか」


 人気のないビルの屋上。

 迅悠一はひとり空を見上げた。

https://imgur.com/OmDaCfF


『門発生』

『門発生』

『近隣の皆様はご注意ください』



今日も三門市には警報が鳴り響く――


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1542721460


アイドルマスター(アイマス2,アニマス)×ワールドトリガー
地の文少々
片方しか知らない人も楽しんでもらえたらと思っているけど人物・設定ごった煮なのでまったく知らないとキツイかも
特にワールドトリガー 
時系列的には12巻終了後(那須・鈴鳴戦後)くらい。登場人物もおおむねそのへんまでにする予定。


WTの世界観だけ使った前日譚↓をも大分前書いたので良かったら
P「トリガー、オン!」
http://fateofthering.blog.fc2.com/blog-entry-26.html
地の分なし版はまとめサイトとかでも
エレファント速報:http://elephant.2chblog.jp/archives/52115576.html
森きのこ:http://morikinoko.com/archives/52010142.html


今日はスレ立てだけ

とりあえず明日の20時からキリのいいとこまで投稿します
多分書ききれない…まぁ二週間以内には完結させます

ほぼ話はできていて書き溜めも3/4くらい出来てますがSSは反応見つつ微調整しながら書いてくのが好きなので適当に冷やかしたりしてもらえるとうれしい

ではまったり書いてく



――三門市立第三中学校


水沼「えーとじゃあこの問題を…」

遊真(さっきから警報鳴ってるな)ボソ

修(ああ、けど警戒区域内のはずだ)

 非番の修たち。ボーダーの任務を離れた貴重な学校生活の時間。

水沼「――空閑くん、どうかしら?」

遊真「うっ!?」


遊真「えーと……そのー…」

遊真(そもそもこれ何の授業だっけ?)

修(オイ……);


 しかし――



ゴゴゴゴ…


ズンッ!!


修「何だ?!」

遊真「…外だ」

三好「何だありゃ!?」


平和は時に、たやすく崩れる。



修「あれは……近界民のトリオン船!?」


 いつのまにか警報は常時のそれとは変わっていた。


『緊急警報』

『緊急警報』

https://imgur.com/GNsYabu


遊真「どうするオサム」



ピピピ

忍田『こちら本部。三雲くん、聞こえるか』

修「忍田本部長!?」

忍田『門から侵入したトリオン船らしき未確認飛行体が迎撃を逃れ君の学校付近に向かった。そちらで――』

修「確認できます! 校庭に墜落したようです」


忍田『近くの隊をすぐに向かわせる。緊急事態だ、君の指揮で差し当たりの対応と民間人の避難を頼む』

修「了解!」


修(なんてこった……もしあの中に近界民がいて戦闘になったら、被害は前の時とは比べ物にならないぞ…!)

 校庭の艦を見つめる修の額から汗が落ちる。
 その時、教室のドアが乱暴に開け放たれた。


千佳「修くん!」

出穂「メガネ先輩! やべーっすよ」

https://imgur.com/oeRiOlh

修「夏目さんは先生たちと避難誘導を。合図したら裏から一斉に出られるようにしておいてくれ」

出穂「り、了解ッス!」

修「千佳、念のため狙撃態勢に入れるか」

千佳「うん、分かった…!」コク



修「空閑、どこの船か分かるか?」

遊真「いやー、見たことない型だよ」



修「話し合いが通じる相手なら話をしないとならない。通じない相手なら、時間稼ぎをしないと」

遊真「相手の正面に出るのか?」

修「ああ……ぼくが行く」

遊真「オサム」

修「空閑は伏兵だ。なにかあった時は頼むぞ」

遊真「了解、隊長。ムチャするなよ」

修「そっちこそ」


――校庭


千佳『修くん、準備できたよ』

遊真『おれもオッケーだ。そっからは死角になってるだろ』

修「よし……。いきます」

忍田『頼む』



 校庭に不時着した船の前に、修が歩み出る。

修(……トリオン艇にそんなに大人数はいないハズだ。でも、ブラックトリガーがいればぼくらだけではとても…)

修(外部に武器はなさそうだけど…)

プシュッ

修「!!」

修(開くぞ、どうする避難を……いやまだだ、最初になんて言おう…)

ット

ワワワ…

修「え?」


どんがらがっしゃーん!!



?「あいたたた…」

修「………」ポカーン

遊真『……こけた?』

修『みたいだ』;


千佳『あの…………撃たなくていい、よね?』

修『えっ……ああ、まだやめとこう』

修(たしかに隙だらけだけど……);

春香「あたた……はっ、ごめんなさい! 私の名前は天海春香、17才です! みんなでライブをするために来ましたっ!」

修「…………へ?」

https://i.imgur.com/hbiG7BB.jpg


遊真「………おお。あいつ、おもしろいウソつくね」ボソ




修「ぼくはこの国の防衛隊、ボーダー玉狛支部に所属している三雲修だ。きみたちはどこの国から来たんだ?」


春香「わぁぁ!」

春香「隊長っ! ボーダーですよっ! ボーダーっっ!」

修(! 何人か出てきたぞ…)

隊長「ほう、ではここが彼の……」

?「春香、落ち着いて。それじゃなにも伝わらないわ」

春香「千早ちゃん」

千早「そこの方……ミクモオサムさんでしたか」

千早「私たちはバンナムという国から来ました。ここは、ニホンという国で間違いないでしょうか」

https://i.imgur.com/9DYVZyY.jpg


修「そうだけど、なぜ……?」

修『空閑、バンナムという国に聞き覚えは?』

遊真『いや、知らないな。おれたちも近界のぜんぶの国を知ってるわけじゃない』


千早「私たちがニホンという国を知っているのは、元ボーダーの方に戦いを教わったからです」

修「なんだって…!」

千佳(……!)

修(やっぱり、他国で生きている人もいるんだ…!)


千早「Pという人をご存じですか。二年ほど前にこの国から行方不明になっているハズです」


修『忍田本部長』

忍田『――今調べさせている。彼らの目的を聞き出せるか?』


修「え、と、きみたちの目的は?」

千早「この国と相互――いえ。平和条約を結ぶこと」

修「平和条約……?」;



――ボーダー本部


鬼怒田「普段接することができんのに平和条約だと?」

根付「なんとも、うさんくさい話ですねぇ」

忍田「P……沢村くん」

沢村「確かにいました。目立った戦果はありません。訓練成績は可もあり不可もあり。ムラっ気が大きいみたいで、たまにA級上位の人にも勝ってますけど最終ランクはB級下位です。その後開発室に移ってますけど、鬼怒田さん覚えてます?」

鬼怒田「P……P……? 今一覚えのない名だが……開発室からの行方不明者となると…」

城戸「……そのPが誰であろうと。近界民は排除する。変わりはあるまい」

忍田「城戸さん……!」

城戸「条約など、口ではどうとでも言える」

根付「ふむ。まあ本当に平和を望んでいるなら、無抵抗で無力化されてくれるでしょう。抵抗されるならそうではないということだ」

https://imgur.com/k1GJXd6



――校庭


千早「信じてはいただけないでしょうね」

修「いや……それは……」

修(空閑が反応していない……ということは、本当なんだろうけど)

修(本部は信じてくれないだろうな……とくに城戸司令は)


修(いずれにせよ、避難はさせたほうがいいか……)

?「ね、どんなカンジ?」

春香「美希」

https://i.imgur.com/S92RUru.jpg


修『夏目さん、避難準備は?』

出穂『オッケーっす! でも裏からだといっせいには出れないからちょっと時間かかりますよ』

修『それでかまわ…』


美希「あの建物、人いっぱいいるね」

修「な?」

遊真「……」ピク

美希「何組か分かれて、逃げる準備? あと三階にいるスナイパーさん、ムダだから撃たないでね」

修「なんだって…!」

千佳『修くん』

遊真『オサム』

千佳『多分、ホントに』

遊真『ウソじゃない』


千佳・遊真『『ばれてる』』

修(サイドエフェクト……!?)



美希「トリガー、オーン」

春香「美希!?」

千早「美希、なにを」

美希「人質! 逃げたら、撃っちゃうかも!」


修「なっ!」


千早「美希!!」

美希「だって、普段と違う状況のときはリンキオーヘンに対処しろって、ハニー言ってたよ。船まだ直んないし」

千早「うかつに動くなとも言っていたでしょう!」

隊長「うぅむ。威嚇してしまった以上、穏便にとはいかないだろうね。仕方ない、ミクモくんとやら」

修「……!」;

隊長「要求に応えてもらえるかな」

 

――ボーダー本部


修『本部長……相手は、学校にいる全員を体育館に集めるよう要求してきています』


鬼怒田「おのれ! 人質をとっておいて何が平和条約か!!」ダン!

根付「しかし、マズイですよ。このタイミングでまた市民に被害が出ては、ボーダーの信用にかかわる…」

城戸「他の部隊はどうなっている」

沢村「一番近い部隊でも、到着まで五分以上かかります」

忍田(相手の戦力は集中している……今戦闘となれば、最悪着順に各個撃破されかねんな)

忍田「遊真くん。きみは相手をどう思う」

遊真『こっちから手出ししなきゃダイジョブだと思うよ』

忍田「……よし、三雲くん。しかたがない。ここは従うんだ」

修『…三雲、了解』


根付「……しかしまずいですね、こんな時に唐沢さんは……」

 



――校庭


修「……避難誘導していた仲間に、指示は出した」

隊長「うむ。では、我々は拠点をあの集会所に移す。小鳥君、船はどうだい?」

小鳥「ステルス機能はだましだまし使えそうです、でも、エンジンがまだダメですね。開門はもちろん、通常飛行も長距離はムリです」

隊長「分かった。まずはあの建物の側へ。折を見てステルス・光学迷彩で機体は隠してくれたまえ」

https://i.imgur.com/2KQy7w9.jpg

 そうして学校にいた全員が、体育館に集められた。


 
――本部


忍田(……彼らはあのままでいれば、捕縛されるか、交戦するしかなくなった。結果的に現状は、もっとも互いにダメージのない状態だと言える)

忍田(…しかし、敵の性質が不明な以上、人質を見過ごすわけにはいかんな)

忍田「まずは学校周辺の住民の避難を。早急に無人にするように」

忍田「状況に即応できるよう、数部隊合同で学校を包囲。それと、B級合同狙撃班を編成。隊長は東、補佐に荒船だ」


城戸「侵入したもう一隻のトリオン船はどうなっている」


沢村「ステルス機能が健在らしく、詳細は不明です。玉狛支部方面で異音の報告が上がっています」

忍田「林藤」

林藤『おお、こっちも今必死で捜索してるトコ。分かり次第報告する』

城戸「…………さて。どうでる…?」


城戸『迅』
 



――ボーダー・玉狛支部



林藤「……つー感じだから、外に出ないほうがいいな」

律子「いいんですか? バレたらあなたの立場が危うくなるのでは…」

https://imgur.com/kokfUPL

林藤「バラすひとー。……いないっ!」

真「い、いやいやそんな簡単に…」

https://i.imgur.com/vJp3BsM.jpg

宇佐美「大丈夫大丈夫、黒縁メガネに悪い人はいない!」

律子「なんですそれ」

宇佐美「いやーメガネ人口増えてうれしーな」


林藤「しかしおたくらもムチャするねぇ」

真「すいません……」

林藤「いやまぁ、正解だったと思うよ。彼から城戸さんのことも聞いてたんだろ?」

https://imgur.com/51m6ppw
https://imgur.com/0wU4Nu8

レイジ「Pは……信頼できるヤツだった。Pが信じた仲間なら、大丈夫だろう」

真美「いや~うちの兄ちゃんをゴゾンジとは、マッチョ兄ちゃん、お目が高いですな!」

烏丸「ま……レイジさんが言うなら、間違いないだろ」

貴音「人の縁というものは……まこと、よきものですね」

https://i.imgur.com/nAg2kjq.jpg
https://i.imgur.com/Hbf4HSq.jpg


小南「なんでこんなやつらを…」


伊織「あら、私たちが怖いの?」

小南「なんですって?」ピク

https://i.imgur.com/PW66EYf.jpg


亜美「ねーちゃん、うちのいおりん怒らせないほうがいいですぜ。デコからビィィム出るよ」

小南「ええっ!? ホント!?」

伊織「ふざけてんの!?」

小南「う、うつなっ」

伊織「うつかっ!」


烏丸(独り言のようだ)

 
響「お、キミは、お腹撫でられるのが好きなんだな? よーしよしよし」

https://i.imgur.com/80PhLho.jpg

陽太郎「むむ、なぜそれを……雷神丸があっさりとなつくとは…」

響「じつは自分、動物と会話できるんだ! って、キミもなの!?」

陽太郎「こら雷神丸、コジンジョーホーをはなすとはナニゴトか!」


林藤「……このまま平和に終わってくれればいいんだけどなあ」



ちなみに画像は主にうろ覚えの人が把握しやすいようにあげてるだけで深い意味はないです

アニマスの人物紹介が一番わかりやすかったから使ってますがアイマスメンバーの設定は画像とは異なります

この響は沖縄出身ではないです




―――体育館



ザワザワ…

ドヨ…

三好「おいおいおい、オレたち、ピンチなんじゃないか」

四ツ谷「何が起きてるんだ……避難するはずが、これって」

二ツ木「で、でもホラ! 三雲がああしているんだから」

一之瀬「そうね、あたしたちには、信じるしか…」

https://i.imgur.com/AGI0QtK.jpg


隊長「これで全員かね?」

美希「うん。たぶんあっちの建物に人はいないよ」


千佳「修くん」

出穂「メガネ先輩」

修「千佳、夏目さん」

出穂「ど、どうなってるんすかコレ……」

千佳「わたしたち、トリガーを渡さなくていいのかな」

修「それが、交渉役として、ここにいるぼくらは武装解除しなくてもいいそうだ」

遊真「でなきゃおれ、ここにいられないぞ」


?「締め付けすぎれば、反抗の芽が生まれる。にしても少々ゆるいようだね」


修「は……!? あなたは……唐沢さん…!」

唐沢「や、三雲くん。大変なことになったね」

修「な、なぜここに」

唐沢「いや急な腹痛に襲われてね、学校でトイレを借りたところ巻き込まれてしまった」

修「い、いやそんな…」

唐沢「はは、本当は、たまたま仕事で近くへ来ていたときトリオン船の落下を目撃してね。野次馬根性を出したらこのザマだ」

唐沢「通信機も取られてしまったが……なにか力になれることがあったら、遠慮なく言ってくれ」ポン

修「は、はい………」

修(これ以上、混乱させないでほしい…);



森林「……あんたが責任者かね」ツカツカ

隊長「む?」

修「ちょ、先生」

https://imgur.com/7qSavrA

森林「何が目的かしらんが、人質ならこんなに大勢はいらんだろう! 子供たちだけでも、解放してもらえないか」

隊長「申し訳ないが、我々にも事情があるのでね。そうだな……では見せしめが必要な時には、あんたからやるとしよう」

森林「な……」;

修「見せしめ……!?」



春香「ちょっと、隊長!」

遊真「おまえ、つまんないウソつくねー」


森林「う、うそ……?」

あずさ「隊長、あんまりいたずらしちゃ、め、ですよ~」

https://i.imgur.com/xFmMz4U.jpg

隊長「ハハハすまんすまん、昔のクセがついね。失礼した先生、なに、我々に協力してくださるかぎりあなた方の安全は保障しますよ」


修「……すいません先生、必ず助けは来ます。いまは、従ってください」

森林「あ、あぁ……」






美希「あーあーあー、テステステス」

 マイクらしきもので拡大された声が体育館に響く。
 視線がおのずと一点に集まる。

ナンダアノコ…

カワイイ…


美希「突然だけど、みなさんは、ミキたちの人質なの!」


ハ?

ナンダコレ…


千早「私たちは、あなた方の言うところの、近界民です」

 その言葉に、どよめきが一際大きくなる。

佐補「近界民…」

副「あんな女の子が……」


千早「ですが、私たちの国、バンナムは、あなたたちの世界を含めたすべての国との平和的関係を望んでいます。この状況では、説得力はないと思いますが…」

美希「ミキたちの言うこと聞いてくれれば、なんにもしないよ。とりあえずー、勝手にここを出たり、ケータイデンワーとかで連絡を取るのは禁止!」



バカ2「は、はぁ?」

バカ3「んだこれ……やべぇよやべぇよ」

バカ1「……知るかよ」ス


森林「何をやっとるか!!!」

 ひそかに取り出そうとした携帯を、森林が横から取り上げる。

バカ1「はっ!?」

森林「お前たちは、死にたいのか! これは普段の授業中じゃないんだぞ!!」


森林「先生方、今は生徒たちの安全を守るために、私たちが監督せねば!」

水沼「は、はい…!」


美希「ごめんね。で、ちなみにー、今具合が悪いヒトー。それから、どうしても帰りたいヒトー」


修「え……?」

遊真「へえ」


美希「今日この後歌のケイコがー、とかって人は、今日は休んで。そのかわりミキたちがおもてなしするよ」

千早「本当に体調不良の方、親族の病気など仲間を置いてでも帰らなければならない理由のある方は手をあげてください」

春香「1……2……ちょびっとだね。いい人たちだ」


千早「三雲さん。上司の方に連絡を。体調不良などの人質との交換を、丸腰のボーダー隊員となら応じると」

修「!?」
 



――本部


忍田「……」

根付「どういうつもりですかねぇ……」

鬼怒田「生徒も隊員も、集めてからトリオン兵でまとめて拉致する気ではないか」

城戸「あるいは、反撃の契機になるやもしれん」

忍田「しかし、潜入させる人材となると…」


嵐山『避難誘導完了しました! 忍田本部長、中の状況は……』


一同「「「………」」」


鬼怒田「経験豊富な人材」

沢村「チームワークは抜群です。通信がなくても…」

根付「人質を安心させる効果も高いでしょうなぁ」

忍田『……嵐山――』



―――体育館


嵐山「三雲くん!」

https://imgur.com/EHSF4Bh

修「嵐山さん」

嵐山「状況は?」

三雲「それが……」;





雪歩「あの、お茶をどうぞ……すいません、こんなことに巻き込んじゃって……」

千佳「あ、ど、どうも………ぁ、おいしい……」ズズズ

https://i.imgur.com/i9WjupE.jpg

あずさ「ごめんなさい、すこしの間ご迷惑おかけします~」

三好「全然オッケーです!」b

四ツ谷「おまえ…」

一之瀬「意外ね、近界民って、もっとおそろしい人たちかと思っていたけれど」

二ツ木「フツーのひとって感じだね」




嵐山「……とりあえず、危険はないみたいだな」ホ

木虎「私帰ってもいいかしら…」

遊真「いよぅキトラ」ジー

木虎「……なに撮ってるのよ」サ

修(髪なおした…)

遊真「バンナムの連中に記録係とやらを頼まれた」+



忍田『三雲くん、そちらに嵐山たちは到着したか?』

修『あ、ハイ。今ちょうど』

忍田『場合によって君たちのトリガーを片方ずつ臨時接続させ、戦力にしてくれ。今の状況は』

修『当面、危険はなさそうです』
 



根付「どうやら、慰撫工作に力を入れているようですね」

鬼怒田「こすい手だわい」

城戸「今のうちに戦力を整える。展開、包囲を急げ」



―――体育館


やよい「できましたーっ! 順番に並んでくださーいっ」

https://i.imgur.com/yPEq2go.jpg

時枝「おつかれ。なにあれ?」

修「時枝先輩。非常用の食糧があったんですけど、そのまま食べるのも味気ないだろうからとのことで…」

 一体どこから持ち出したのか、鉄板や鍋で非常食をアレンジして供する即席の屋台ができあがっていた。
 生徒たちは戸惑いつつも危機感は薄いらしく、一部の生徒たちが列を作っている。

 その列を無視して、屋台に近付いていく男子生徒が一人。

遊真「……む?」

やよい「あっ、あの、ごめんなさい、順番で」

モブ「ふざけるなよ!」バシッ

 やよいが持っていた食事が床に落ちた。
 どよめきとともに、体育館中の注目が集まる。




やよい「あ、う……」

モブ「近界民のせいで、家や大事な人を亡くしたやつは大勢いる。善人のフリなんかしてんじゃねぇよ!」

水沼「モブくん!」

森林「な、なんてことを…刺激しては…」



美希「食べ物にヤツアタリするの、良くないって思うな」

 歩み出た美希は、少年に何かを投げ渡した。

モブ「?」パシ

美希「それもって、トリガーオンってやれば戦闘体になるよ」

モブ「え……」

修「な……」



美希「近界民に怒ってるんでしょ? ミキたちトリオン体だから、トリガーでないと、叩くあなたのが痛いよ」

 手渡された武器に戸惑い、彼は疑問の視線を少女の仲間へと移す。


千早「あなたの怒りは、理解できるつもりです。私たちも……戦争で多くを失いました」

やよい「あの……私たちは、いいんです。受け止めなきゃいけないことだと思うから…。でも
――」


 床に落ち無残に凹んだ食糧に沈んだ視線が向かい、思わず彼がその視線を追う。
 その視界に不意に、掌が映る。


唐沢「失礼」

ヒョイ

ジュゥゥゥゥ

パク

唐沢「加熱すれば大丈夫だよ」ムグムグ

やよい「……あ……はいっ!」パァ
 


モブ「………」

 少年はそんなやり取りに眉根を歪め、しばしの沈黙ののちに静かに口を開いた。

モブ「近界民の仕業っつっても…あんたらがやったワケじゃ……ない、んだよな」

美希「……うん、違うよ」

モブ「……………………近界民は、嫌いだ。けど………」

モブ「今のは…俺が、馬鹿だった。返すよ。これ」

美希「…ん、いいの?」

モブ「ああ」

春香「あの………代わりと言ってはなんですが……」

モブ「?」






モブ『おれは絶対ボーダーに入って、三門市を近界民から守ってみせる!!』


おお?

なんだありゃ


 何かを渡され説明を受けていた少年が、思いをぶちまける。
 その声は大きく、しかし不思議と喧しくはなくあたりに響き渡った。

修「マイク…みたいだな、学校のじゃないみたいだけど」

遊真「あれ……多分、トリガーだ」

出穂「え、武器ッスか?」

千佳「トリガー技術って、近界だと、武器以外にもいろんなことに使われてるんだって」迅さんが言ってたって烏丸先輩が言ってたってオサムくんが言ってた


モブ「おお……たしかになんか、すっきりしたよ」

春香「えへへ、ためこんじゃうのは良くないですからっ」

嵐山「……君の熱い思い! たしかに伝わったぞ!」

モブ「あ、あんたテレビとかに出てるボーダーの…」

カリテイイ?

ドウゾ-



嵐山『みんな、ボーダーの嵐山だ! 我々の力が足りないばかりに、不自由をさせてすまない』



三好「嵐山准だ! ヤベー!!」

一之瀬「……!この前の時三雲くんと話してたあの…」

木虎「な、何をやって…」;



嵐山『不安だろうけれど、パニックは起こさないでほしい。おれの目が黒いうちは、かならずみんなを守ってみせる!!』


おお…?

特に副と佐保だろー!


副「が、学校中に知れ渡ってる……」

佐補「恥ずかしい……」



出穂「ヤバイっすメガネ先輩。緊張感さん息してないです」

 嵐山からさらにマイクは移動していき、今はバスケ部の主将がこんな時だからこそと来年度インハイ出場を決意表明していた。

修「うん……なんか未成年の主張が始まってるし……」;


バカジャネー,エイダダー

モットヒトガキマスヨーニ!

ワートリサイカイバンザーイ


遊真「おれたちもなんか宣言しとく?」+



美希「あ、ねぇねぇそこのメガネくん。ちょっと手伝って?」

修「え、はぁ…」

出穂(いきなりメガネくん呼ばわりされていいんだ)

千佳(それは出穂ちゃんも…)



――校庭


隊長「よっと…おお、スマンね。こいつを中へ頼むよ」

修「はい…お、大きいな……なんですかこれ?」

隊長「音響設備だ。丁重に扱ってくれたまえよ」

雪歩「あ……すいませんっ、私も持ちますぅ」

修「どうも…」


雪歩「………」ンショ

修「……あの」


雪歩「ひゃうっ!」


修「え。ぼく、何か……」

雪歩「すっ、すいません……私、男の人が苦手で…」

修「はぁ……そういえば、ほとんど女性ばかりですね」

雪歩「は、はい……私たちの国には、男の人があんまりいないんです……」

修「え…」

雪歩「私たちの国は……プロデューサー…あ、Pさん、です。プロデューサーが来てくれるまでは、すごく弱くて…。男の人は、戦争でほとんどさらわれたり、亡くなってしまって…」

修「……」


修(……他人事じゃない。三門市だって、旧ボーダーがいなかったら…)


修「その、Pって人は、ここには来ていなんですか?」

雪歩「っ………ぅぅ、プロデューサー…」

修「まさか…」;

雪歩「生きてます! プロデューサーは、絶対、無事でいますぅっ!!」


春香「雪歩、かわるよ」

雪歩「春香ちゃん…」


春香「ごめんなさい……前にいた国で、トラブルに巻き込まれてしまって……私たち、プロデューサーさんと、離れ離れになっちゃったんです」

修「……すいません、悪いことを聞いてしまったみたいで」

春香「いっ、いえ! あなたが謝ることじゃ……それに、私たち、プロデューサーさんが生きてるって信じてますから!」

修「……わかります。ぼくも、そう信じてる人がいる」

春香「…!」


修「ちなみに、バンナムには、日本から来た、なんて人はけっこういるんですか?」

春香「あ、いえ……私たちの国は、あまり他国の人はいません。ついこの間まで負け続けだったりで……」

修「そうか…」

春香「ごめんなさい、力になれなくて」

修「あ、いえ。こちらこそ」



美希「おつかれー、それはこっち側だって」

春香「分かった、美希、そっち持ってくれる?」

美希「はいなの。会場、だんだんあったまってきてるよー」

春香「そっか、良かった」

修「?」


遊真「……あんたたち、これからどうするつもり? 多分今ごろ、外は囲まれてるよ?」

千早「そうでしょうね。ただいずれにせよ、私たちは船が回復するまで動けない」

遊真「そのためのトリオン集めでこんな人集めてんの?」

千早「それもあります。私たちの船は、人が無意識に漏らしているトリオンを集める機能が付いている」

遊真「どんくらいかかるの?」

千早「……さぁ……」

遊真「=ε=;」


やよい「あっ! 機材、運んでくれたんですね! ありがとうございますっ!」がるーん

https://i.imgur.com/qwKtWL0.jpg

あずさ「ちょうどいいタイミングね~」

修「ちょうどいいタイミング…?」

出穂「あっメガネ先輩! いやもうワケわかんないっすわ。おれの歌をきけーーって合唱部がアカペラ始めました」

千佳「すごいよ修くん。なんだかお祭りみたい」

遊真「ほほぅ、これがニホンのお祭りですか」+

修「まぁ…文化祭とかは……」



 遊びたい盛りの中学生たち。緊張が薄れるとともに非日常への高翌揚が増しているようだった。
 合唱部の声が笑い声にフェードアウトしたところで、バンナムの面々が壇上に上がった。



美希「みんなー、盛り上がってるー?」


いえー!!


あずさ「私たちは近界民です。けれど、みなさんと同じように、楽しいときは笑って、悲しいときは、泣いちゃうんですよ~」

雪歩「私たちの国は、歌や踊りが自慢だったんですぅ」

千早「みなさんがよろしければ、私たちの国の歌を、ここで披露させていただきたいのですが……」

いえー!!



木虎「バカバカしい……なんなのよ、これ」

時枝「…こういう戦いかたも、あるんだね」



春香「もっと遠く どこまでも伸びる♪」

千早「追いかけてく 飛行機雲を まっすぐ♪」

美希「今日はまだね 届かないけれど♪」

あずさ「明日はたぶん 追いつけるかな? そう思うよ♪」

 


https://www.youtube.com/watch?v=HY6bauem8lw&t=31s
https://www.youtube.com/watch?v=bmUnxuNt14k
本当はこの曲Fullverがオススメ

まだ そこに 壁は あるけど
もう 平気 飛び越える

あの空に向かって・・・


鬼怒田「なんと、呑気なもんだわい」

根付「……実際心根は、無邪気な女学生と変わらないのかもしれませんねぇ」

沢村「学生時代を思い出しますねー」


城戸「…すぐに通信を切れ」

沢村「は、はい…」

忍田「……城戸さん?」
 

 
城戸「……トリオン感知を最低レベルまで下げ、第三中学を精査せよ」

沢村「了解。……これは? 体育館ほぼ全域に弱いトリオン反応が……」


城戸「……」



城戸『三輪、聞こえるか』

三輪『司令…? こちら三輪、聞こえます』

城戸『敵のトリガーは――』

 



――その頃


―――玉狛支部

https://www.youtube.com/watch?v=NkhnMi-ID74


アイドルs「「「「全弾発射!!」」」」



林藤・小南・宇佐美「「「いえー!!!」」」

 

陽太郎「ぜんだんはっしゃ! 全武装とどっちがつよいかな?」

レイジ「いや……俺の全武装は、壊すしかできないからな。あっちのほうが……強い」

烏丸「レイジさん作るのも得意じゃないすか」トンカツ,トカ

烏丸「俺にはこういうの縁がないと思ってたけど……けっこう、悪くないっすね」

貴音「ふふ……少し、気恥ずかしいですね…」



林藤「ん……向こうは……そうか」

林藤「……さて、どうしたもんかねぇ」
 



 その頃学校から少し離れた各地点に、続々部隊が集結しつつあった。

加古『加古隊、現着したわ』

東『こちら東。B級合同狙撃部隊配置完了』

三輪『三輪隊、いつでも動けます』

冬島『こちら冬島ほか一名。設置開始しますよ、と』
 


忍田『狙撃班は体育館周辺の動きを警戒。B級近接部隊およびA級部隊は不測の事態に備えて待機』

根付「しかし、どうするんです?」

鬼怒田「うむ。人質がある以上、うかつには動かせん」

城戸「……確認した敵の数は、8だったな」


鬼怒田「武装はなかったらしいが、ステルスに使うトリオンも考えれば人数的にほぼ限界だろう」

城戸「狙撃部隊の視認できる人数は」


東『現在2名。常時、2~3名が外部を哨戒しているようです』


城戸「……哨戒の兵は狙撃が可能、か。ブラックトリガーの本数にもよるが……空閑遊真が戦力に数えられるのであれば、敵を抑えつつ人質を救出することも不可能ではない数だな」

忍田「……城戸さん」

城戸「無論、現時点でこちらから攻めるのはリスクが大きすぎる」


城戸「……何かあれば。いつでも動けるようにしておけ」
 



―――体育館


巡り会いたい 手を繋ぎたい♪

抱きしめあいたい 今すぐ♪


アイドルs「「「「Vault that borderline!」」」」


わああああああ!!





木虎「まったく……なんなのよ、これは」

出穂「なんか、フシギですね。相手近界民なのに、いっしょになってめっちゃ楽しんじゃってるじゃないすか」

木虎「…騒げればなんでもいいんでしょ。どうせ」

あずさ「あら~…お気にめしませんでしたか…」ヒョコ

木虎「!」

修「い、いつのまに……」

あずさ「時間があれば、ほかの歌や踊りもお見せできるんですけど……きっと、気に入るものもあると思うのだけど~」

修「いや、でも、すごかったです」


修(体の奥にひびく音……スポットライトのなかでおどる姿……)

修(しばらくの間、自分がボーダーだとか、彼女たちが近界民だとか、頭からふきとんでしまった……)


修「その、彼女はテレビとかにもよく出ているのできっと慣れて」

木虎「んん」ゴホン

修「?」

木虎「その……悪くは、なかったです」///

修「えっ」

木虎「何」

修「あ、いや…」

あずさ「わ~いっ、ありがとう~」ナデナデ

木虎「なっ、なでないでくださいっ」

あずさ「ふふ……これでもうあとは、つかまってしまってもいいかしら~」

修「えっ」


遊真「ふむ。そういや、ライブをしに来たんだっけ」

修「い、いや、平和条約はどうなったんですか。まだ何もしてないじゃないですか…」

あずさ「……なーんちゃって」

修「……」;



あずさ「けれど……私たちの国は、昔はほかの国と交流するのも数十年に一度。こちらの世界のことなんて、おとぎ話にしか出てこないくらいだったんです」

あずさ「それを考えれば、今この時を過ごせただけでも……すごく、すごーく、ありがたいなって……そう思うんです」


千佳「………」


千佳「あの、嵐山さん……」

嵐山「ん?」

千佳「あの人たちが帰るまで、このままっていうわけにはいかないんでしょうか」

嵐山「……それは」

木虎「ムリよ」

千佳「!」

木虎「人質がいるから無闇には攻撃できない。けれど、放置は有り得ない。最悪を想定すれば、ここにゲートを開かれたらまとめてさらわれるわ」


千佳「でも、あの人たちが、みんなに危害を加えるとはとても思えないんです」

時枝「なんでだろうね。オレも、そう思うよ」

千佳「時枝先輩」

時枝「でもそれは、接してるオレたちだから分かることだと思う」

時枝「それに、彼女たちにそのつもりがなくてもそういう作戦が進行しているっていう可能性もないとは言い切れない」


千佳「……じゃあ、戦いに……」

嵐山「今、中の状況は落ち着いている。すぐにということは、ないと思うが……」

 



―――玉狛支部


宇佐美「ホントはどうするつもりだったんです?」

律子「ステルス船で僻地から忍び込み、情報収集をしながら交渉相手を探す、というのが基本ですね」

小南「なによ、スパイ?」

伊織「密使って言ってくれるかしら」

烏丸「正面から交渉しちゃダメなんすか?」

律子「……うちの国は、ついこの前までトリガー技術は音響、映像関係特化。戦いは負け続けの奪われ続けでした」

林藤「つまり、差し出せるモノが弱い、と」

律子「はい。今は、技術レベルも上がり他国の人も増えました。けど、目を引くような新技術なんかはほとんどないんですよ」

小南「そんなんじゃ、忍び込んでも交渉できないんじゃないの」

貴音「相手の求めているものが見えれば、交渉の余地も生じます」


律子「船さえ無事なら、最悪でも逃げることができますからね。今回は、その船が侵入と同時に見つかってしまったわけですが」

木崎「ゲート誘導装置、か」

律子「ええ。一応、対策は施していたはずなんですが。一年もすれば通じなくなっているだろうと……それにしても、いきなりの砲撃は、予想外でした」

響「っていうか、前の国から出る時イッパイイッパイで、どこへ向かってるのかも分からなかったし」

小南「ふぅん……ついてないわねー」

貴音「いえ……悪いことばかりではありません」


貴音「あなたがたにお会いすることが、できましたから」


小南「………」

烏丸「………」

レイジ「………」


陽太郎「そ、そんなバカな~っさっきはじめてやったゲームで…」

真美「甘いよよーたろっ」

亜美「亜美たちの成長力はもうよーたろのパワーを圧倒的に上回っているッ!!」


宇佐美「ひゃー照れちゃうねー」

小南「ちょ、ちょっ、なによっ!? とりまるあんたまたなんか騙した!?」

烏丸「いやなんでですか…」

小南「恥ずかしいセリフ禁止いっ!」///

レイジ「落ち着け小南」

あ、レイジさんの表記がいきなり木崎になってるのはただのミスです
多分たまにこういうのある



林藤「……ま、それはそれとしてなんか手ある?」

律子「向こうの艦は動けません。艦を捨てれば、私たちはもう、帰ることもプロデューサーを探すこともできなくなる」

林藤「運良く……こっちがなんかする前に直ってくれればラッキー、か」

律子「はい。一隻動けなくなってしまった時点で、私たちには取れる手がほとんどなくなりました」

林藤「……」

林藤(……直るまで待つってことはつまり、最悪連れ去られるまで待つのと同じ意味だ。それまであの城戸さんが手をこまねいて待ってくれるか?)

林藤(しかも、敵が人質を取ってるって状況は、ほとんどのヤツが未経験のものだ。この状況……何が起きてもおかしくない)


林藤『どうするよ……迅?』



――学校周辺



米屋「しかし秀次、オレらいつまで待てばいいんかね?」

三輪「……少なくとも、冬島たち特殊工作(トラッパー)隊の設置前にこちらからは動かないだろう」

米屋「逃げられないようにしてから?」

三輪「ああ。哨戒をB級狙撃班が排除し、俺たちが突入する流れだろう」

米屋「古寺たちは?」

三輪「A級スナイパーは突入支援だ。外ならばともかく、あの人質もいる中で戦闘となれば相当腕がなければ支援射撃はできまい」

米屋「なるほどねー」


――狙撃部隊


荒船『……こっちの狙撃を警戒してる様子はない、か?』

東『全員、油断するなよ。敵はバッグワームを看破するレーダーを持っている可能性もある』

半崎『それにしちゃ、警戒してなさすぎじゃないすか?』

太一『み、見通しのいいとこにいますもんね。あの金髪の子……』

穂刈『見えないな。一人しか……』

茜『うぅ―…緊張で手が震える…わたし冷静に打てるかなー…』

モブスナ『………』

https://i.imgur.com/6f2eIi8.jpg


 狙撃手たちはいつでも撃てるよう狙いを定める。
 


荒船(見たとこ隙だらけだ。いつでも撃てる…)

穂刈(すぐに撃てるな……合図があれば……)

半崎(バレてんなら……向こうから撃ってくるかもしれないんだよな)

太一(撃たれるかも…? 一体いつまで待つんだろう……)


スコープ越し。敵は目の前に見える。

街を壊し大切な人たちを奪った近界民。

戦いが始まればいつでも撃てる。

いつでも撃てる。


いつでも撃てる――


というところで今夜はここまで。戦闘までいけなかった(

次回は多分明後日の夜

意見感想要望等あらばくれたら次回以降で反映されるかもです

雪を滑る方かと思った

>>82
それもありかもしれない


―――体育館



千佳「……修くん。なんだか、嫌な感じがする……」

修「……嫌な感じ?」

嵐山「中はみんな、元気そうだが――」

ボッ!

何の前触れもなく。体育館の端の壁が小さく破れ、床に穴が空いた。


 静まり返る体育館。

 誰もケガはない。追撃もない。

 それでもこれは――


修「今の……は……」

嵐山「バカな!」


 開戦の狼煙に相違ない――




――本部


根付「発砲!?」

忍田「バカな!!」

東『なんてことを…!なぜ撃った!!!』

モブ『ご、誤射です…! すっ、スイマセンッ…!』

 放たれた一発の弾丸。震えのためか、誰を狙うでもなく放たれたそれはただ体育館の端に吸い込まれた。

 
城戸「………不本意だが」

忍田「!」

城戸「こちらから手を出してしまった以上報復の可能性がある」

忍田「っ城戸さん………まさか……!」

城戸「ただちに突入の必要があると認められるがどうか? 本部長が必要ないというのであれば、その判断は尊重するが」

忍田「く……!」

忍田(……いや、今は詮議している時間はない)

忍田「…やむをえまい」
 



――学校周辺



東『本部から命令が下った。3カウントで一斉に撃つぞ』


2…

1…

美希「アステロイド!」

 美希の掌に浮かんだトリオンキューブが、無数に分かれ四方に放たれる。

太一「な……!」

 今まさに撃とうと美希を見ていた太一の目に、迫るアステロイドが見え――

ドンッ

太一「がっ」

 逃げ出す間もなく、光弾は容赦なく頭部へと突き刺さった。
 


 彼だけではない。

 学校の周囲のあちこちで破裂音がなり、次々とボーダー本部に隊員たちが強制脱出させられていく。
 弾速を優先したアステロイドは、今まさに撃とうとした彼らに防御する暇さえ与えなかった。



荒船『穂刈、半崎、無事か!』

 元アタッカーである荒船は、瞬時の判断で撃つのをやめ、なんとか攻撃をかわしていた。


半崎『無事……じゃないすね。利き腕もってかれました』

穂刈『やられた。足だ……』

 先だっての大規模侵攻において、荒船隊は同じような状況を経験していた。その経験がとっさに回避を選ばせ、かろうじて直撃は免れたのだ。


穂刈『あるいは、動けないが……向こうが仕留めたと思っていれば』

 直後、荒船と半崎の耳に破壊音が届く。
 必死に逃げだしていた半崎は、苛立ちのままに片腕で銃を構え直した。

半崎「クソッ、やってやる!」

 戦闘体の指が引き金を引く前に、追撃が彼を葬り去った。


沢村『なんてこと……』

 狙撃手たちの混乱は相当だが、俯瞰で見られる本部といえど落ち着いてはいられなかった。

城戸「……やってくれる」

 分裂したアステロイドの一つ一つが、狙いを定めたハンターたちを的確に捉えていた。
 初撃で約三分の一が緊急脱出し、生き残っていた者に順に追撃が放たれていく。

 
東『荒船! 太一! ……く…』

 生き残っていた者のなかに、彼もいた。
 彼の場合、撃つ寸前、経験から感じた嫌な予感に救われていた。

モブ『東さん、動いても動いても、敵は、わああああああ!!』

 スナイパーの先達である彼を頼るB級の悲鳴が響く。

東『各員、目の前で敵が撃ってきていると思って動け!』

 言いつつ、眉根に皺が寄る。

東(そんな簡単じゃないか……)

 本来スナイパーは、隠れ潜んでいてこそだ。
 トリガーも、有効射程が長い代わりに重さもあり取り回しは悪い。

 まして、現状は目の前で撃ってきているどころかこちらが向こうを捕捉した時にはもうこちらが撃たれているといった状況なのだ。

東(一か八か)



 不規則な軌道を取りながら、東は建物の外へ、見通しの良い校庭へと飛び込んだ。


美希「あは、こんにちは」

荒船「よう、東さん」

 一足先に、荒船が美希と対峙していた。

荒船「狙撃手は相手に見つかったまま戦ってはいけないんじゃなかったっけ?」

 軽口をたたく荒船は弧月を構えている。既にスナイパーとしての戦いは諦めたらしい。

東「……場合によるさ」

荒船「構えるハシから撃たれるくらい見つかりっぱなしじゃあな」

 
美希「スナイパーさん相手にちょっとずるいけど、二人とも強そうだし、ごめんね」

キィン

人見『東さん』

加賀美『荒船くん!』


人見・加賀美『『伏せて!!』』

 とっさに身を伏せた東の、荒船の頭上を越えて、やや遠距離から弾丸が無数に飛び込む。

美希「やん」トッ

 美希は下がり気味にそれをかわした。
 



https://imgur.com/37YYcYZ


美希「一時退却!」


 砲火の撃ち手は、控えていた部隊の銃手、射手たち。

忍田『全員突入! 人質の安全を最優先に行動せよ!』




三輪「近界民……排除する」

米屋「ひゅーこういうシチュ初めてだな」


来馬「鈴鳴第一、いきます」

加古「ほら双葉、出るわよ」

柿崎「柿崎隊、行くぞ!」

https://imgur.com/OsdctmS
https://imgur.com/u3uOFMV
https://imgur.com/tLNPYIm

 突入に装甲車など要らない。彼らは戦闘体。

 彼らは、ボーダーだ。






 突入していく仲間たちを遠目に見守る影。

奈良坂『B級スナイパーはほとんど全滅か……』

古寺『やっぱり、距離ですかね?』


 奈良坂と古寺は、そもそも攻撃すらされていない。
 学校全域をカバーするように合同部隊として配備されたB級のスナイパーたちとは異なり、A級の彼らは自部隊の掩護に徹するべく自由に動くことができた。
 ゆえに、狙撃への自信と巻き添え被弾を避けるためB級より離れた位置に待機している。

奈良坂『おそらくな。レーダーかサイドエフェクトか』

古寺『それにしても、かなり広範囲、しかも正確。厄介ですね』

 



―――体育館


 和やかな雰囲気は完全に消え、不安と戸惑いがうずまいている。

小鳥『来るわよ! みんな急いで』

 時間はない。もう間もなく戦いになるだろう。


修「本部! 応答してください本部!!」

春香「あっ、ごめんなさい、通信は妨害させてもらっちゃってます」

木虎「そんなことが…」

春香「ここのそばだけですけど、音や映像の技術は私たちの得意分野なので……」

千早「この期に及んでは、説得も難しいでしょう」

修「……っ、それは……」

春香「やよい、あとはお願いね」

やよい「はいっ!」
 


やよい「みなさん! できるだけ真ん中に集まってください! おっきいシールドを張りますけど、広がると弱くなっちゃうので」

千早「春香、南側を」

春香「オッケー!」

修「な、中に残るのは一人だけですか…!? ぼくらへの警戒は……」

千早「…私たちに余分な戦力は、ありませんから」



副「なあ、どういうこと…?」

佐補「ボーダーが、人質がいるのに攻撃してきたの…?」

嵐山「……副、佐補…………」


空閑「どうする、修」

空閑「フツーに考えたら、おれたちもあいつらと戦わなきゃだな」

出穂「そんな!? だってこんなん、どうしたってうちらが悪者じゃないすか」

千佳「修くん」

嵐山「………」


修「ぼくは……」


修(ここで城戸指令を敵に回すようなことをすれば……遠征部隊に選ばれる可能性が、下がるかもしれない)

修(麟児さんのことや、さらわれたC級隊員たちを取り戻す。そのためには)
 



修「彼女たちとは戦わない。人質を守る。そのためなら、戦闘をやめないボーダー隊員とでも……!」

やよい「え……」


出穂「メガネ先輩! 意外と大胆ですね」ニシ

遊真「ムチャがうちの隊長の売りだからな」+


修(ぼくがここで自分を曲げてしまえば、ぼくの行動が一因でさらわれたC級隊員たちに……)

修(それ以前に。一度でもそうしてしまったら、弱いぼくはきっとそこまでたどりつけない)


千佳「嵐山さんたちは……」

修「…嵐山さん」

 緊張の面持ちの修らに、嵐山は頬を緩めた。

嵐山「通信ができないんだろう? 俺たちは、本部長の最後の命令に従うだけさ」


嵐山「人質の安全を最優先! 中は守るぞ充、木虎」

木虎「……ま、見捨てられたのかはともかく。こんな雑なやり方、見過ごせないわね」

時枝「三雲くん、トリガー、借りられるかな?」


美希「ヤマアラシー、はいっ」

 体育館に駆け込んできた美希が、嵐山に何かを投げた。

嵐山「これは……!」パシ

やよい「美希さん」

美希「いったん下がりついでに隊長から予備のトリガー預かって来たよ」

嵐山「……いいのかい? そんな簡単に信用して」

あずさ「うふふ、おたがいさまですよ~」

美希「美希たち外で止めるから、もし入られちゃったらよろしくねー」
 


 
 その頃玉狛支部にも、交戦開始の報が届いていた。
 慌ただしく集合したバンナムのメンバーが、支部を出て行こうとしている


林藤「出られると、見つかった場合うちも追って交戦しなきゃならないんだけど」

律子「ごめんなさい……それでも」

伊織「私たちは数では勝てない。人質無視で来られたら、時間の問題よ」

響「自分たちが外から攻撃したら、まだ敵がたくさんいるかもって思うかもでしょ?」

貴音「キザキ殿……プロデューサーのお話し、ありがとうございました」

レイジ「……」


亜美「じゃーねん、よーたろっ」

真美「生きてたらまた会おうぜっ」

陽太郎「なっ、なっ、死ぬなんて、許さないからな!」

 



 学校では、先頭の部隊が無人の校庭を駆け抜けようとしていた

 しかし――

巴「うわ!」ザン

 地面に隠されたトリオンブレードが柿崎隊を足止めする。

柿崎「トラップか!」

照屋「このくらい…」

 そこへ体育館から、雪歩が姿を現した。

雪歩「さ、さがってください~~~~」ガシャン

巴「げ」

ドドドドドドドド

 強化アステロイドを射出する回転式機関砲型のトリガーが校庭を掘り起こす。

 


柿崎「下がっ――かたまれ!!」

巴・照屋「「シールド!」」

 とっさに身を寄せ合いシールドを張るも、瞬く間にひび割れていく。

柿崎「間に合え…!」

ボン!

 メテオラで背後に穴を開け、そこに隊員ともども飛び込んだ。

柿崎「く……そ、無事か?」シュゥゥ…

照屋「無傷ではないですね」シュー…

巴「そう簡単にはすすめなさそうです…」


荒船「うおおおお!」

美希「おっと!」ギィン

荒船「っ」

 柿崎隊が引きつけた隙に雪歩に向かって飛び込んだ荒船。駆けこんだ美希が弾き飛ばす。

雪歩「ごめんなさい…!」

荒船「くっ」バッ

 前は間に合わない。

 とっさに背をむけ逃げ出すが――

荒船(逃げ込む先がねえ――)


┣¨┣¨┣¨┣¨ドド

荒船「くるまっ」バキン

ドン!

 ついに荒船のシールドは壊れ、戦闘体もそれに続いた。

 

 
当真『ち』
 
 先程から彼方から隙をうかがっていたスナイパーランク一位、当真勇。
 しかし、雪歩の攻撃が起こす土煙で視界は埋まっていた。狙撃は困難だ。


 別の地点では、奈良坂と古寺も同じく歯噛みしていた。


春香「いきますっ」ポン

ドン!

米屋「あぶねっ!」

 ロケットランチャー型のトリガーから打ち出されるのは強化炸裂弾。
 三輪隊を狙って放たれたそれは余波だけでB級を一人強制脱出させた。

 更にこちらも土煙が大きく上がる。

奈良坂『さすがに……馬鹿じゃないな』

古寺『遮蔽物のない戦場も、これを計算してのことみたいですね…』

 グラウンドという遮蔽物の少ない戦場で、狙撃を警戒するのは当然と言えよう。

 



 那須隊の前には、あずさが立ち塞がった。

あずさ「いかせませんよ~」

那須「そうもいかないわ……」

 互いに数十のアステロイドを浮かべる。

あずさ・那須「「アステロイド!!」」

ビュオオ

月見『陽介くん! 流れ弾いくかも!』

米屋「うわっち、マジか!」

 とっさに跳んだ米屋の足元をが光弾が抜けていく。

 砂煙が、連携や流れ弾の確認を困難にしていた。

 

中途半端だけど…まぁこの辺まででいいか。次は明日の夜か土曜
誰も見てなくとも書ききるは書ききる

urlは拡張子つけてくれ

>>109
指摘感謝ー
今更意味ないかもだけど一応各リンク張っときます

>>1
https://i.imgur.com/OmDaCfF.jpg

>>8
https://i.imgur.com/GNsYabu.png

>>10
https://i.imgur.com/oeRiOlh.jpg

>>17
https://i.imgur.com/k1GJXd6.jpg

>>24

https://i.imgur.com/kokfUPL.jpg




那須(敵も同じようなトリガーだと……ランク戦みたい。変な気分ね)

那須「メテオラ」

あずさ「あらあら~」ヒュパ

あずさの姿が掻き消える。

那須(テレポーター…!? でも――)

那須は焦らなかった。
この開けた戦場、那須ほどの射手ならば出現先へ向けてなぞる攻撃ができる。


那須(視線の先……数十メートル!)


那須「バイパー!」

 市街地を破壊しないよう地面に向けて曲げつつ放たれたバイパーは、しかし空を切った。

那須(いない!?)

熊谷「玲!」

ドドッ

那須「っシールド!」

バキャン

あずさ「あらあら~」

 視線の先から外れた斜め上の中空から飛来したあずさの攻撃を、かろうじて防ぐ那須。
 


那須「ずれた位置に現れられるように設定してあるのかな…? ボーダーとは別経路で開発されたものかも…」

あずさ「うふふ、どうでしょう~」


熊谷「このっ!」

あずさ「ひゃっ」ヒュパ



小荒井「えっ」ポムン

あずさ「まあ」

 突然目の前に現れたあずさ。小荒井は訳も分からず戸惑ううちに――

東「小荒井!」

あずさ「あすてろいど~」

 至近距離から多数のアステロイドで蜂の巣にされた

ドン!



那須「あなたの相手はっ」

ドドドッ

那須「東さん、下がって!」


那須「バイパー!」

奥寺「わっ」

 乱戦に交じる奥寺を取り囲むように迂回しバイパーがあずさへ向かう。あずさはまたしても姿を消した。
 



熊谷「玲、あたしが目になる!」

 那須の背中に、熊谷の背が重なる。

那須「くまちゃん……! おねがい…」

 
熊谷(これで360度……どっから攻撃が来ても見逃さない)

那須(どこ……!?)

 周囲にあずさの姿はない。土煙の中から攻撃が来ることもない。
 だが――
 


ドオッ!

熊谷「なっ…!」

 足元から飛来した巨大な光弾が熊谷の体を大きく砕いた。

玲(地面のなかから……!?)


『トリオン体活動限界。強制脱出』

ドン!

 
 できあがったトンネルから、あずさがゆっくり歩み出る。

あずさ「ごめんなさい~、私もこんなところに出ちゃうなんて、思わなくて」ケホッ


美希「あずさは厄介なの。キラキラがふわふわでどこに行くか分かんないの」

小鳥『大丈夫ですよあずささん。ちゃんとマークしてますから』b


 迷子の常習犯、三浦あずさ。移り気な空間認識のずれが、彼女を極めてトリッキーなテレポーターにしていた。

 どこへ飛ぶか分からないテレポート。

 分からないと分かっているからこそあずさは出た先で対処するのみ。
 考えて戦うタイプとの初戦には、滅法強いのだった。
 


 雪歩の機銃掃射が制する戦場では、変化が起きていた。

雪歩「あっ、当たらない……!」

ドドドドド

村上「スラスター、スラスター、スラスター」

 断続的なスラスターの使用による変則軌道で、村上は雪歩のガトリングガンをたくみにかわす。

来馬「っ、とと」

村上「来馬先輩、ムリしないでください。オレが道を拓きます」

来馬「鋼、気をつけて!」
 


村上「スラスター」ボッ

雪歩「ひゃっ」

 大型火器は火力の分取り回しは近接武器に劣る。
 対処が間に合わない――

千早「危ない!」

村上「!」

ギン!

 


 村上の弧月の一撃を、千早の弧月が止める。

来馬「二対一にはさせない…!」ドン!

雪歩「ひうっ」

来馬「東さんお願いします!」


東『位置情報確認。そっちだな』

ドン!

 東の放ったアイビスを避け、来馬と雪歩、千早と村上で別れる。
 


村上「オレは……オレの仕事を……!」

ギン!

千早(強い……!)

 流れるような弧月とレイガストの連撃を、千早はかろうじて弧月でいなす。


村上「使いこなしてるな…」

千早「くぅっ」

 


 弧月の強烈な横なぎを刃で滑らせながら受ける。

 千早はそのまま村上へ向かって飛び込んだ。村上は交差気味に前に出る。


 二人の位置が入れ替わる。素早いターンで村上の背に斬りかかった千早の刀を、村上は振り返らず背に弧月を回し受けた。

千早(不安定な姿勢……押し込める!)

 村上の弧月がぶれる。下がる刃は村上が屈むと地面に突き刺さり――
 

村上「スラスター、ON!」

千早「なっ」


 己の弧月と敵を置き去りに体育館へ向かう。勝つことよりも道を拓くことを優先した判断

 外壁にぶつかる寸前盾モードのレイガストで地面を掘り強引に減速。そのまま盾の横薙ぎで壁を取り除いた。
 守り切れるかという戦いにおいて、軍配は村上に上がった。


来馬「よし、鋼が突破口を開いた!」
 


村上「……!」

 様子をうかがえなかった体育館内部。そこにあったものは――

村上(近界民が、住民を守って、いる)

ピッ

千早「ごめんなさい」

村上「…戦場で迷うとは」
 


ズル

村/上「やっぱり……まだまだ……」

 千早が追いつくのは分かっていた。ただ戦場では一瞬の迷いがすべてを分けることもある。

『トリオン漏出過多、強制脱出』


 村上の体は鈴鳴支部のベッドに沈み込んだ。
 


来馬『鋼!』

村上『……すいません来馬先輩。偉そうに言っておいて…オレ――』

 迷ってしまった。

 自分のせいで仲間を失う羽目になっていてもおかしくはない。

村上『敵は……』

 村上は言いよどんだ。なんと伝えるべきか。
 下手にありのままに伝えれば来馬を迷わせることになるかもしれない。
 


 自分が結果的に、味方より敵を優先してしまったことを伝えるのが怖くもある。
 しかし、口に出す前に来馬が続けた。

来馬『無事ならいいよ。大丈夫?』

村上『え』

 ――ああそうだ。

 きっとこの隊長は迷ってしまったことを話しても責めない。
 それどころか、迷わないほうがおかしいと、笑うだろう。

 そういう人だ。
 


村上『……オレは大丈夫です。気を付けてください。中を見たら、多分、驚きます』

鋼『? ……分かった、後は任せて』

村上『はい。隊長』

 次があればまた迷おう。
 迷いながら守れるようになろう。

 誓いを確かなものにするため、村上は眠りに落ちた。

 

 

 その頃、避難によってできた無人地帯の最外部でも硝煙が立ち上った。


出水「おっと、唯我がやられた」

太刀川「いやー油断しすぎだろー」

https://i.imgur.com/1fBgMO2.jpg


沢村『太刀川隊が近界民の別隊と遭遇! 交戦開始しました!』

忍田『哨戒中のA級部隊、および付近のB級部隊は急行。その他のB級部隊は引き続き担当地区を警戒するように』
 



真「やあっ!」

太刀川「おっと」キン

 真と太刀川、二本の弧月が激しく火花を散らす。

 太刀川の上段。弧月で受けた真がひざをつく。追撃の左袈裟懸けを手元近くへの刺突で止める。手を返し切り上げ。太刀川は一歩飛び退いた。


太刀川「へー…なかなか使いこなしてんなぁ」

真(このひと……強い……!)

太刀川「ん」

真「?」
 


太刀川「その下げ緒……トリガーの弾丸を受け止めてそっから放出! とかすんの?」

真「え……いや……ただのストラップですけど。…武器に飾りつけちゃダメですか?」

太刀川「いやー…いいんじゃない」カワイイ

真「へへっ、ですよね」

出水(また何も考えずにしゃべってんなあの人);



出水「っと、エモノ発見!」キン

出水「アステロイドっ!」

ドドド

貴音「なんと」

 貴音がかわしたアステロイドが、市街の塀を破壊する。

貴音「よろしいのですか? このあたりは避難したとはいえ、住んでいる方々がいるのでは」

出水「……」

貴音「……」


出水『やっぱまずいかなー柚宇さん』;
 


国近『んーとねえ、ある程度は、しょうがないって。でもなるべく被害を出さないように。この前の侵攻のも直りきってないしね』


出水「それじゃあまあ気をつけつつ……そらっ!」

貴音「ではわたくしも」

 無数のバイパーが道に沿うように交差する。数は、出水のほうが多い。

ドドドッ!
 


伊織「ちょ、危ないわねぇ! あんたたちのほうが街壊してんじゃないの!?」

歌川(……否定できない)

菊地原「ほんとだよね。さっさと倒しちゃってよ」

歌川「おい…」


歌川『この様子じゃ、ステルスはやめたほうが良さそうですね』

風間『構わない。木崎隊も間もなく着く。着実にやるぞ』

https://i.imgur.com/IpoNDZU.jpg


響「ほっ!」

風間「!」キン

 鼠を狙う狐のような跳躍で、風間に斬りかかる響。スコーピオン同士がぶつかり合う。

 そのまま鉤爪状にしたスコーピオンで軽快に襲い掛かる響を風間が受ける。

歌川「風間さん」

真美「おっと、兄ちゃんの相手は亜美がするよん」

 援護に向かいかけた歌川を、響そっくりの動きで真美のスコーピオンが襲う。
 


菊地原「もー…メンドいなぁ…、!」

 駆けつけかけた菊地原が足を止める。

菊地原『下がって』

歌川『!』

 菊地原、歌川、真美が飛び退く。
 そこへ火線が走った。

伊織「へぇ。さすがにやるわね」


歌川「オレたちの突撃銃型とほとんど同じだな」

菊地原「裏切り者とか……サイアクだね」
 

 
 風間と響のほうは、打ち合うこと数十合。互いに枝刃やもぐら爪などのテクニックを高速で繰り出しつつ、まだ双方無傷だ。

風間「……やるな」

風間(獣のような野生的な動き。厄介だ)

響「キミもね! ちっさいのにすごいぞ!」

風間「……」

タッ

響「わっ!?」

 猛然と襲い掛かった風間の連撃に、響の体勢が崩れる。
 

 
響「わわ…なんかまずいこと言っちゃったかな」

 倒れかけた響。風間は響に向かって跳躍すべく、地面を踏む。

響「へへ」ニ

 倒れかけた姿勢からの強烈な後ろ宙返り。足からは、スコーピオン。
 見事なカウンターだ。

 風間が飛び込んでいればだが。

響「えっ…?」

 一回転した響の目に、今度こそ飛び込んでくる風間が映る。
 風間は先程跳躍するように地面を踏み、スコーピオンで自分を一端地面に固定したのだ。

風間「悪いが、些細なことで熱くなる年じゃない」

響「やばっ」
 

 
出水「げっ、ゴメン風間さん!」

風間「!」

 タイミング悪く、光弾を打ち合いながら飛び退いてきた出水が二人の目の前に現れる。
 慌てて、響と風間は反対方向に跳んだ。

国近『ごめ~んみかみか、指示遅れた~』

三上『構いません。無人とはいえ市街地の乱戦、連携がとりづらいですね…』

 

 
真「てりゃあっ!」

太刀川「おっと」

トン

太刀川「お?」

歌川「あ…すいません」

 太刀川と歌川が背中合わせになる。
 歌川の前には伊織、太刀川の前には真と亜美がいた。

太刀川「いいよいいよ」

歌川「二対一ですか、こっちと連携して」

太刀川「いいよいいよ」

 太刀川はすぐに眼前の二人に向かって跳んだ。
 それどころじゃないとばかりに。心底楽しそうに。

太刀川「うお、くそぅ」

 二重に思えるほどの並行軌道の弧月の連撃。
 シンクロする敵二人の動きに、太刀川も二本目の弧月を抜かざるをえなかった。
 

 
出水「アステロイド!!」ドドッ


菊地原「じゃまだなぁ……端っこで戦ってくれませんかね」ぶぅぶぅ

出水「おいコラ」

響「おっと、余所見してていいのかな!?」

 菊地原に向かいかけた響を、上空から影が襲う。

響「わっ」キン

緑川「お、止められた」

https://i.imgur.com/pKhCb0I.jpg
 


出水「あれ緑川、草壁隊非番待機じゃなかったか?」

緑川「いやー待機の集合遅れちゃって。ちょうど通りすがったら、参戦してもいーよって」

響「ふ、ふふーん、いいぞ、まとめて相手してあげる!」


律子『まずいわね……だんだん敵の数が』

律子『響! そっちからまた一隊来るわ、気を付けて!』

律子『……後ろからももう一隊……これは……』
 


┣¨┣¨┣¨┣¨ドド!!


出水「あぶねっ」バキン

貴音「これは」バキン

 飛来した多数のトリオン弾を二人のシールドが止める。
 放ったのは、回転式機関砲型のトリガー。
 木崎レイジだ。


木崎『玉狛第一、現着した』
 

 
小南「ほらほら邪魔するとまとめてたたっきるわよ!!」ブォン

出水「なんでこっち!?」

 斧型のトリガー、双月を振り回され、出水はからがら逃げ出した。

太刀川「出水ジャマ」

出水「太刀川さんひでえ!」

 チームメイトにまで切られかけた出水は、次かすったらメテオラで一帯平地にしてやろう、と決心した。
 


 
 どちらかといえば個人技に長けた太刀川隊と異なり、風間隊は自隊の位置取りは常に把握していた。

風間『……敵はどうやら、こっちを隊ごとに戦わせないようにしているな』

歌川『! なるほど……こっちは、隊合同の連携機会はチームに比べれば少ないですからね』

菊地原『裏切り者ほんとサイアク』


風間『乱戦の要は、まそっくりの二人だ。あれをまとめるぞ』

菊地原『了解ー』

歌川『了解!』
 

 
 
響「いくぞ!」タン


緑川「どうぞっ」

 空中ですれ違いざま、響の背から背びれのようにスコーピオンが伸びる。

 緑川は身をひねりスコーピオンで受けた。

 二人が高速ですれ違うたびガリガリとスコーピオンの刃が削り合う音がする。

 空間を立体的に使った高速の近接戦闘。
 これに介入できる攻撃手はそういないだろう。
 

 
 攻撃手、は。

諏訪「あ゛ーっ! ぴょんこぷんこうっぜえ!」

ドウン!

緑川「ええっ!?」バチッ

響「わわっ」バチチッ

 諏訪のショットガン型のトリガーから放たれたアステロイドは見事に広がり、響と緑川はシールドで防がざるをえなかった。

堤「ちょ、諏訪さん」
 
https://i.imgur.com/Dplv9kB.jpg


笹森(諏訪さんかんだな今)


響「な、仲間ごと撃つなんてヒドイぞ!」

緑川「そーだそーだ!」

諏訪「うっせー緑川、ちったぁ周り見やがれ! ショットガンの最高の間合いだってのによぉ」

 B級中堅諏訪隊。到着したはいいが、周囲ではA級を中心とした激しい大乱戦。
 どこへ手を出すこともできず、響への包囲攻撃が可能な位置をとったまましばし手をこまねいて眺めていたのだが、ついに我慢の限界が来たらしい。

緑川「オレが勝てばいいだけじゃん!」

響「仲間なのに信頼してないの!?」
 


緑川「諏訪さんのオニ! 悪魔!」

響「ふらー! ふりむん! ぽってかすー!」

緑川「オヤジくさい! 立方体!」

ピキ

諏訪「ぶっころす!」ガゥン

響・緑川「「うわっ」」バッ

諏訪「おら堤うてっ」

堤「いやいや……」
 



太刀川「お……さすが風間さん」

真(! ……いつのまにか……一対一)

タン

 距離を取る真。しかし、太刀川は逃さず踏み込んだ。

太刀川「旋空弧月」

キンッ

真「うわっ!」

 塀、民家。そんな遮蔽物などないかのように、伸びた刃はあらゆるものを切り裂いた。


ズンッ

 切り取られた屋根が無残に落ちる。

太刀川「しまった、見失ったか。仕留めてないよなー…」


真(あ、危なかった…)

 読みの通り、真はすんでのところでかわしていた。

真(プロデューサーのを何度も見てなかったら、今ので確実にやられてたな……)

 旋空弧月は軌道はあくまで刀を振る弧の軌道。遠距離でも姿を捉えていれば予測は不可能ではない。

太刀川「どこいったー。おーい…っと」グラッ

 太刀川の踏んだ屋根の瓦が滑り落ちた。太刀川の体勢が崩れる。

真(!)ピク
 


真(いや……)

真「ここにいますよ」

 真が現れたのは、太刀川の数メートル先。トリオン体なら一歩で詰まる距離。

太刀川「なんだ、こなかったか」

真「やっぱり、わざとですか」

太刀川「隙は隙なんだけどな」


真「……あなた、タチカワさん、ですよね」
 


太刀川「あれ? どっかで会った?」

真「いえ。直接は。プロデューサーが教えてくれた……もしもボーダーと戦うことになった時気をつけなきゃいけない相手。その一人です」

太刀川「…プロデューサー………ふむ」

真「一対一では戦うな。765のメンバーで、あの人相手で十本勝ち越せるやつは、たぶんいない。そう言われました」

太刀川「へぇ」

真「可能性があるとしたら……それはボクだけ、とも」

太刀川「…それでか。ま、飾りにトリオン使う余裕あるくらいだもんな」

真「それは…」




P『不謹慎?』

真『はい……ボクらは、アイドルって言っても、軍人なわけですし。命がけでやってるのに……かわいくとか、そんなのやっぱり』

P『いいさ』

真『え』

P『どんな理由だろうとな。真がありたい真であることを、諦めることはないさ』



太刀川「たのしみだ」

真(プロデューサー、ボクは)

 二つの戦闘体が、同時に地を蹴った。

 

風間「……」ザッ

真美「よっ、はっ」キン

菊地原「ほら、こっちもだよ」

 風間の猛攻に下がる真美は、菊地原が加わる前に距離を取った。

歌川「悪いなっ」ドッ

亜美「んっ」

 歌川に蹴り飛ばされた亜美が近くでたたらを踏む。

真美「亜美!」

亜美「大丈夫だ、問題ない♪」
 



真美「お?」

亜美「囲まれちったね」


歌川「しかし、そっくりだな……」

 生身の際は髪留めや髪型で差をつける二人だが、トリオン体は一見してまったく同じだ。

風間「油断するな。まだいるかもしれん」

亜美「ヒトをゴキブリみたくいわないでYO!」
 


真美「ふふーん、ふたりいれば十分っしょ」

菊地原「うわぁ生意気……そっくりな見た目もマネっこも、同じ場所に集めちゃえばたいした意味はないでしょ」

亜美「分かってないなぁ。ねぇ亜美さん」

真美「見せてあげようか亜美さん」


亜美?真美「「亜美たちのホントの戦闘スタイル」」

 

 二人がトリガーを銃型に切り替え、背中合わせになる。

風間『乗せられるな。一人ずつ確実に仕留める。菊地原、右手側だ。歌川、正面の相手を止めろ』

歌川?菊地原『『了解』』

真美「はいっ!」ダンダンッ

 真美が放った弾丸を、風間、歌川のシールドが受ける。
 瞬間――

カッ

風間隊「!?」
 


 強烈な閃光が風間隊を襲う。
 亜美の陰に入った菊地原はかろうじて視力が残ったが、風間と歌川は完全に視界を潰された。

菊地原「なにやってんですかもう」

 風間に向けた亜美真美のアステロイド十字砲火を菊地原が両手シールドで防ぐ。

風間『視覚を一時的にやられた。菊地原、三上』

菊地原『こんなうるさい戦場でやるんですか…あーあ…』

三上『聴覚情報、菊地原くんにリンクします。視覚領域、回復までおよそ十秒』


亜美「それっ」ダッ

歌川「っ」タン

真美「あり、よけられたぁ」

亜美「達人だ! ワザマエ!」
 


菊地原「……」

亜美「おっと、いかせないぜ兄ちゃん!」パチ

 菊地原の耳は弾丸を切り替える音を油断なく捉える。

菊地原「べつに、避ければいいだけでしょ」

 閃光は殺傷力がないからこそシールドをすり抜けるのだ。目で捉えなければ関係ない。
 仕掛けの分、弾丸の弾速はアステロイドに劣る。

 避けた弾丸が背後で破裂する音を聞きながら菊地原は亜美に切りかかった。

亜美「んっふっふ?」ガキ

 菊地原のスコーピオンを止めた亜美が不敵に笑う。
 

んっふっふ~

 
 直後、菊地原は背後に風を切る音を聞き、とっさに身をかわした。

ドッ

菊地原「っ」シュゥゥ

 菊地原のわき腹からトリオンが漏れる。

菊地原「今のは……ハウンド?」

亜美「Exactly!(その通りでございます)」

三上『メテオラの発展形…? 片方は破裂後閃光、片方はハウンドの散弾を出すようです』

歌川「シールドで防げない閃光と回避が困難な追尾弾の二択か…! 厄介ですね」
 


風間「……見たところ、銃型の弾丸が二種類以上切りかえられる様子はない」

 銃型は射出する弾丸が強化される代わりに弾丸の細かな調整や切り替えは利かない。

歌川「なるほど、アステロイドと一種ずつですか」

真美「お、やるねえチビ兄ちゃん」

亜美「でもこれならどう?」

亜美・真美「「ろーりんぐ~ろーりんぐ~」」

 くるくると位置を入れ替える二人。


亜美・真美「「さぁ行くよっ!」
 


歌川「くっ」

菊地原『今右側が閃光。左がハウンド』

真美「えっ」

 真美の放った閃光弾から迷いなく視線を逃がしつつ、菊地原が斬りかかる。

菊地原『ていうか、聴覚共有してるのになんで分からないの? 全然声音と抑揚が違うじゃん』


真美「むむむ……ファンの兄ちゃんでもなかなか分かんないのに…」ガキン

亜美「喜んでる場合じゃないよ亜美ィ」

歌川『ということは、こっちがハウンドか』
 

 
亜美と真美は瞬間、手を合わせる。

亜美真美「「スイッチ!」」

歌川「?」

ダンッ

 眼前の真美が放った弾丸をシールドで受け止める歌川。だが――

カッ

歌川「なっ!?」

 閃光が歌川の視力を奪う。すかさず風間が前に出て歌川を守った。
 


風間「『トリガーを入れ替えるトリガー』か…」

菊地原「めんどくさ……うちの隊じゃなきゃ、太刀川隊でもきついでしょこれ」



亜美・真美「「スイッチ!スイッチ!スイッチ!スイッチ!」」

 銃を背に隠し、並ぶ二人は楽しそうに繰り返す。

亜美「さて、どっちがどっちでしょー」

真美「もちろん亜美たちのトリガーも声を出さなくても発動できるよ~」


風間(相討ち覚悟で臨めば攻略できないことはないが……さて、どうするか)
 

 
 逡巡し足を止めた風間隊。
 そこへ猛烈な勢いで飛び込んでくる一塊の筋肉。

レイジ「下がれ風間隊!」

 スラスターで加速したレイジに、風間隊はとっさに道を開ける。

真美「わぁぁ、亜美ぃ」

亜美「了解!」

カッ

 亜美の放った閃光弾がレイジのシールドで弾ける。
 真っ白な視界のなか、レイジはそのまま真っ直ぐ突っ込み――
 合流した二つの小さな体をはねとばした。

風間「これは…」
 


――時は少しさかのぼる。


貴音「これは…いつのまにやら、こちらが誘導されていたようですね」

 出水と撃ち合いながら移動してきた貴音は、あたりに人影がないことに気付く。
 戦場の端に出てしまったらしい。

出水「なんのことかなー」

貴音「……」キョロ

出水「おっと、余所見してるヒマはないぜ! アステロイド!」

 弾速優先で放たれたアステロイドを貴音のシールドが止める。

貴音「いかせないおつもりですか」

出水「オレら邪魔みたいだし、はしっこでやってよーぜ」
 


 大火力の二人が限られたスペースを弾幕で埋めるために連携がままならない。
 そう気付いた国近の進言により、出水は自分たちの戦場を末端に移した。

 邪魔されるのは出水とて本意ではない。

貴音「残念ですが…」

出水「おっと! そら、トリカゴだ」

 離脱しようとした貴音を大きく取り囲むようにバイパーが放たれる。
 時間差で放たれた弾丸で作られる三重の檻。

 逃げ遅れた貴音を出水のアステロイドが襲う。

貴音「く…」バチチッ

 貴音はシールドで防ぎつつ、次弾を放たれる前にと包囲の外へ向かう。
 

 
出水「そう簡単に出さねー」

貴音「! 弾が戻って…!」

 出水の攻撃を両防御で防いでいた貴音はやむなく下がる。
 その隙に出水が放ったのはアステロイドではなく、またもカゴを織り成す不規則な弾丸。

貴音「あくまで……逃がさないおつもりですか」

 豊富なトリオン量を持ち自在に弾丸を操る出水にしかとれない戦術。
 さらに厚みを増した弾丸の網が貴音を閉じ込める。

出水「トリオン比べだ!」

貴音「っ」
 

 
 狭まりつつある包囲を見やり、貴音はリズムを取るように小さく足音を鳴らした。

貴音「わたくし、こう見えてアイドルをしています」

出水「ん?」

貴音「ダンスもけっこう、得意なのですよ」

ダッ

出水「おお!?」

 貴音はバイパーの軌道に飛び込むと、周回し時間差で襲うバイパーを舞うようにかわしていく。

出水「マジか!」
 


 一層目、二層目、三層目。
 紙一重で弾丸の網をくぐり抜ける。
 両攻撃で弾丸を放った直後。出水は追撃を放てない。
 貴音の動きを見ることしかできない。

出水「――でも甘いぜ」

貴音「!」

ドッ

シュウウウ…

貴音「そんな…」

 突如不自然な動きを見せた弾丸に、貴音の肩からトリオンが漏れていく。
 


出水「それはおれの視線誘導」

 包囲網の外殻部の弾丸は、バイパーではなくバイパーをなぞるように動かしたハウンド。
 それだけのことだが、それをアステロイドと同時に貴音に向けずにいられるのが出水だ。


烏丸「うわ出水先輩エロいすね」

出水「エロ!? んだよ京介、混ぜっ返しに来たのか」

小南「え、エロ……サイテー」

出水「な、なんだよお前ら、なんでこっちに…うおっ」

 襲い来る突撃銃の弾丸。出水はとっさに身をかわす。


伊織「貴音、無事!?」

貴音「伊織……助かりました」
 

 
出水「ちゃんと抑えとけよ!」

烏丸「いやーなかなか手強いですよ」

出水(こいつら、もしかして…?)


出水「あーくそッ、乱戦上等! もらうぜ! メテオラ!」

 炸裂弾の群が伊織に向かう。

貴音「あなたの相手は、わたくしです」

 視線は戻した出水は、目を見張った。
 

 
出水「な、んだー? 波状バイパー!?」

 迫りくる蛇行する弾丸。

出水(避けながら反撃――)

出水(ムリだ、軌道が読みづれえ)

出水「シールド!」

 波高をカバーする巨大なシールドで弾丸を防ぐ。

出水「くそ、トリオンがもったいねえ」

 防いだのも束の間、出水の視界に飛び込んできたのは時間差で襲い来る多種多様な波状のバイパーだった。
 


出水「酔いそーだ……そっちも十分やらしいじゃねーか」

貴音「なんと、せくしゃるはらすめんとというものですか」

烏丸「出水先輩…」

小南「……」

出水「なんでだよ!? 虫を見るような目で見んな小南!」


 軽口を叩きつつ更に二発防ぐ。
 目の前で弾けた弾丸が消えたところで出水は異変に気付いた。
 貴音の姿がない。


出水(いない……はずは、カメレオン!?)
 


 水平方向に大きく波打つ遅めの弾丸に臨みながら辺りを見回す。

出水(けどカメレオン使ってちゃシールドも追加の弾丸もなしだ。この一発を受けたらあいつらごと更地にしてやる)

 不穏な決意を秘めつつシールドを張った、ところで――

貴音「ふふっ、ここです」

出水「んなっ!?」

 バイパーの着弾と同時に眼前に貴音が現れた。
 あたればただでは済まないゴム跳びをしてきたのだと、思い当たったときには手遅れだった。

出水「シールぶげっ」

 出水の頭を足蹴に貴音が跳ぶ。
 

 
 勢いをつけて、そのまま校庭に躍り出た。

出水「んなろ…! 後悔させたる」

 遮蔽物のない戦場はトリオン量の差が直に反映される。
 ボーダーでも上位のトリオン量を見せてやろうと校庭を見据える。

国近『あ、ごめーんいずみんストップ』

出水『なんだよ柚宇さん!?』

国近『いずみん禁止令出ちゃった』

出水『ナニソレいぢめ!?』
 


国近『今みんなあのケムの中で戦ってるんだって。民間人も近くて危ないし外しても土煙がすごいから、外からバシバシ打たれるとまずいみたい』

出水「ちぃ」

 出水はなす術なく貴音の後ろ姿を見送る。

出水「そーだ、他はどうなった?」

 振り向いた出水の目に飛び込んで来たのは、空を翔ぶ双子の姿。

出水「……!?」

 そのまま出水の頭上を越え、校庭へと着地する。

 


真美「よしっ!」

亜美「いくよっ!」


出水「おいおい」


諏訪『おい緑川バカふざけんな!』

堤『ポニーテールの近界民が緑川と斬り合いながら校庭へ侵入します! 注意してください!』


出水「まじーだろ、これ」;



伊織「よし……あとは私と真だけね。一気に…」

迅「おーっと待った」

伊織「!」

迅「よくがんばったけど、この実力派エリートが来たからにはここまでだ。大人しくつかまってくれないかな?」

伊織「……はいどうぞなんて、言うと思う?」

迅「キミはおれには勝てないよ」


迅「おれのサイドエフェクトがそう言ってる」



 また時を遡り、村上が体育館に突入し、切られた直後のこと。
 壊されたのとは別の壁面にある封鎖された出入口が、乱雑に切り払われた。

 飛び込んできたのは、三輪秀次。

遊真「む」

修「三輪先輩…!」

 相対した修と遊真にすぐには応えず、三輪は銃を構え、周囲を油断なく見渡す。

三輪「三雲、敵は何人だ」

修「三輪先輩、待ってください」

三輪「……。何か誤解しているようだな」

修「……?」
 


三輪「戦闘が開始した原因はこちらの誤射だそうだ。こちらの意向を改めて伝えたい! 責任者はどこにいる?」

 朗々とした声が体育館に響き渡る。

やよい「あっ、今みんな出はらってて……私がおはなしをききます!」

遊真「まてヤヨイ!」

三輪「そうか、一人か。…それで人質を奪還できないとはな」

修「見てのとおり、彼女たちは人質を傷つける気はありません! むしろ」

 焦りながら早口に伝える修に、三輪は舌を打った。

三輪「所詮玉狛か」
 


 三輪がホルスターから何かを取り出し、放った。
 小さな空き缶サイズのそれは、地面に転がるとともに猛烈に白煙を吐き出し始める。

修「トリガーじゃない…!?」

 通常兵器はトリオン体にほとんど効果はない。それでもトリオン体も視覚で認識することには変わりない。
 通気性の悪い体育館が、煙で埋めつくされていく。


やよい「ぅ、どうしよ、どうしよう」
 


修「……千佳! シールドで吹き飛ばせるか!?」

千佳「あっ、うん……やってみる!」

 千佳は巨大なシールドを張り、それを振るった。
 動かすと耐久の落ちるシールドだが、風を起こす程度には支障がない。
 外壁に空いた穴から煙が吹き飛んでいく。

三輪「とらえたぞ……! 近界民!」

やよい「えっ…!?」

 煙幕の効果は目くらましだけではない。煙の動きは、やよいの巨大なシールドの上部の開放部の存在を明らかにしていた。

 三輪はすでに、シールドのなか。
 


ガッ

やよい「あうっ」

 蹴り飛ばされ、吹き飛んだやよいのシールドが消える。
 手から離れたマイクが転がる。

三輪「玉狛の狙撃手、民間人を守っていろ!」

千佳「えっ、あっ、わたし…」

 三輪は千佳の返事も聞かず、やよいに向けて弾丸を放った

修「待ってください!」

 修のシールドが攻撃を阻む。

三輪「ジャマをするな! 何を考えている!」
 

 
 激昂する三輪に対する反論は、予想外の方向から入った。

モブ「あんたこそ何考えてんだ!」

三輪「な、に…?」


二ツ木「そ、そうだよ、危ないじゃない! こんなやり方…」

三好「横暴だー! 嵐山さんや三雲はうまくやってたのに!」

ソウダー

ヒッコメー

三輪「……やはり指令の危惧したとおりか」

 


城戸『敵のトリガーは、音を用い人を洗脳するものである可能性がある』

城戸『仮に交戦になった場合、敵音響兵器の奪取または破壊に留意するように』



三輪(あれか――)ダッ

 罵声を背後に、三輪はやよいの落としたマイクを拾った。

三輪「きみたちは洗脳されていただけだ! 正気に戻れ、近界民は敵だ!!」

 大音声が響き渡る。体育館中の視線が三輪に集まる。

三輪「近界民を排除するんだ! これ以上奪われないために! 流された血に報いるために…!」


 悲痛なほどの訴えが反響し……体育館は静まりかえった。
 しかし誰も三輪の声に応えて同調する者はなく、集まったまなざしはいまや、痛々しいものを見るそれだ。

三輪「くそ……! ならば!」

三輪の弧月がマイクを二分し、アステロイドがスピーカー状のトリガーを次々打ち抜いていく。

三輪「陽介!」

米屋「今いく今いく、がなるなよ」

 壊れた入り口からバックステップで米屋が入り込む。

三輪「中の敵は一人だ、早急に片付けるぞ!」
 


奥寺「援護します」

 東隊奥寺も突波に成功したらしく、中へと合流する。

三輪「玉狛と嵐山隊は操られている。まとめて排除しろ」

やよい「っ」

遊真「ヤヨイ、ここはオレたちに任せろ」

やよい「でも」

遊真「みんなを頼むぜ」

やよい「……はいっ」

米屋「んだよ、またこーいう感じ?」

 
米屋「よっし白チビ、今日こそオレと」

時枝「させないよ」

ガガガッ

三輪が前へ出た一方で、時枝のアステロイドが米屋を下がらせる。

米屋「ちぇー…まぁいいや。やるか、トッキー」

時枝「槍を収めてくれれば話は早いんだけどね」

米屋「秀次を説得できんならな」




ガキン!

修「くっ」

三輪の強烈な斬撃が修のレイガストを揺るがせる。

三輪「奥寺、1…30秒でいい、そいつを止めろ!」

 奥寺は遊真を指さす三輪に頷くと、即座に修に向かって跳んだ。

遊真「!」

修「?!」

すぐに追いすがった遊真に、振り返りざま切り掛かる奥寺。
とっさに受けざるをえない遊真は、スコーピオン二本で弧月を受け、跳ね飛ばされた。

遊真「やるね」
 

 
遊真(命令を意味でとって実力差を考えて動いた……普段考えさせてくれるタイプの隊長についてる、かな)

奥寺(彼は実質5桁級……真正面からは当たれない)

 稼ぐ時間が修を倒すためのものなら、遊真は当然それを阻止しようとする。


修(まずい…!)

 鉛弾が修の左手を沈める。弧月がレイガストにヒビを入れる。
 戦術が浮かばない訳ではない。ただ圧倒的な実力差が戦術を行使させない。
 


三輪「終わりだ!」

修「っ……!」

 レイガストを潜り抜けた弧月はとっさのシールドをやすやす砕く。

修(防げない――)


ガキッ

三輪「なに…!?」

 刃は、修の眼鏡に当たり止まった。
 

 
 横様から差し挟まれた刃が三輪の刀を止めていた。

千早「下がってください。ミクモさん」

三輪「近界民…!」

 千早は至近距離で放たれた鉛玉を素早い足さばきでかわしていく。
 三輪も下がらず、半身になりながら放たれた弾丸を最小限のシールドで止める。
 二本の弧月がぶつかる。

千早「お願い、聞いて。私たちは、戦いたくは」

三輪「近界民は敵だ! 近界民の事情など知ったことか…戦いたくないなら自分の国に引きこもっていろ!!」

 怒りのままに振るわれる刃。
 千早の刀が受け止める。
 

 

 一方村上の空けた穴からは、雪歩の弾幕を潜り抜けた加古隊が入りこんでいた。

嵐山「加古さん……退いてくれ」

加古「嵐山くん……これは、どういうこと?」

嵐山「彼女たちに人質を傷つけるつもりはない。俺たちが手を出さなければ、彼女たちが危害を加えることはない。だから」

加古「命令で来ているのよ……無視するわけにはいかないでしょう?」

嵐山「しかし」

加古「いい加減になさい嵐山くん」
 

 
 構わず歩を進めようとした加古の前に、嵐山は大きく手を広げて立ちはだかる。

加古「やるなら自分ごとやれ、とても言いたそうな顔ね……」

嵐山「加古さん。ここで戦闘を開始するのを、俺は見過ごせない」

加古「仕方ないわね……」

 ため息をついた加古に表情をゆるめる嵐山。だが――

加古「じゃ、お望みどおりに」

 加古の掌にトリオンキューブが浮かぶ。

加古「アステロイド!」

嵐山「!!」
 

 
 今の二人の距離はどちらかといえば射手ではなく攻撃手の間合い。
 オールラウンダーの嵐山がやや有利か。

 だが加古は射手だから接近戦は苦手などというレベルの射手ではない。

 己の周囲にカーテンのように攻撃を降らせる。

 同時に、嵐山にもアステロイドが向かう。
 嵐山が避ければ、やよいと千佳のシールドがあるとはいえ、弾丸は生徒たちのほうへと向かう。

 副と佐補のいるほうへ。

 加古はもっと深く考えるべきだった。
 弟妹を側に置いた嵐山准に攻撃を加えることの意味を――
 

 
 嵐山のシールドがすべての弾丸を止める。

加古(攻撃手用トリガーに切り替える隙は与え――!?)ガゴン!

 衝撃。


 右腕がひび割れている。何が起きたのか。

 シールドをそのまま激しく叩きつけたのだと気づいたときには、目の前に嵐山がいた。

加古「っ」

 本当に嵐山なのか? 癖毛が角に見える。形相は間違いなく――
 

 
ドゴッ

 凄まじい勢いで蹴り上げられた加古を追いかける突撃銃の弾丸。
 何をする暇もなく。
 最高地点に達する前に追いついた弾丸が加古を蜂の巣にした。

『トリオン漏出過多。伝達脳損傷。トリオン器官破壊。強制脱出』


ドン!
 


――


加古(………)

加古(生きてる……?)

 体がまだ震えている。嫌な汗が頬を這い落ちた。

 加古は体を横たえたまま、弟妹を背にした嵐山とは二度と戦うまいと誓った。

――

 



 加古と嵐山が向き合ったのと同時刻、木虎は双葉と対峙していた。

木虎「退いてくれないかしら、双葉ちゃん」

双葉「……正気ですか?」

 間合いは嵐山vs加古と同距離。つまりはこちらは攻撃手の双葉が有利だ。

木虎「ここで攻撃してしまっては、ボーダーの恥になるわ」

ピク

 双葉の表情は、どうみても好意的ではない。

双葉「よく言えますね。そっちこそそれ、裏切りじゃないんですか」

ドッ

加古のアステロイドの砲声を合図に双葉が跳ぶ。
 

 
木虎「…仕方ないわね」

 剣戟の音が鳴り響く。

 どちらかといえば攻撃手寄りの万能手である木虎だが、今は自身のトリガーではない。

 幸いにしてスコーピオン、銃型のアステロイドという部分は同じだが、残念ながら得意のスパイダーもセットされていない。

 いつもとまったく同じというわけにはいかない。
 双葉の鋭い連撃に?に小さな傷を作った。

双葉「テレビばっかり出てて……なまったんじゃないですか」

木虎「早いわね、嵐山先輩…」

双葉「?」
 

ドン!

双葉「うそ……!? そんな、なんで…!?」

 信頼する隊長の強制脱出。理解しがたい現実が双葉に降りかかる。

木虎「あらためて言うけど、退いてくれないかしら?」

双葉「っ、そんな、ことっ」

 双葉は素早く回り込み、嵐山を木虎の背後に置いた。その上で木虎に打ちかかる。

木虎「仕方ないわね。教えてあげるわ」

双葉「また上から目線」

木虎「嵐山隊はボーダーの顔」

双葉「だからなんです。八百長してくださいですか?」
 

 
 双葉はあえて煽るような態度をとった。
 木虎は自分に好意的だ。冷たくあしらうと、いつも残念そうにする。
 わずかでも隙が生まれれば。

 だが――

双葉(あれ?)

 木虎はうすく笑みを浮かべた。

木虎「大勢が見ているなかでふがいない真似はできない」

双葉「!」

 木虎がアステロイドをホルスターに収め、大上段に構える。
 露骨に隙の大きな構え。
 


双葉(罠……? それでも!!)

ダン!

 双葉が踏み込む。待てば嵐山との合流を許すことになる。

 低い構えから繰り出されるスコーピオン。木虎の振り下ろしより速い。
 双葉の左手のスコーピオンが木虎の脇腹に刺さる。

双葉(急所をねらうと隙ができる、このままヒット&アウェイで…!?)

 飛び退こうとした双葉の体勢が崩れる。

双葉(抜けない!? そんな、こんなの――)
 

 
双葉(筋肉で刃を止めたとでも…そんなマンガみたいなことできるはずがっ)

 仮にそれができるにしても中学生の女性の筋力では無理があるだろう。
 だがそんなことは関係ない。
 トリオン体を動かすのはイメージだ。
 確固たるビジョンとそれを成すトリオン量があれば、イメージは実現する。

木虎「双葉ちゃんのためにもね」

双葉「何がっ」

 束ねた二本の木虎の刃が、双葉をスコーピオンごと切り裂いた
 

 
『強制脱出』

ドン!

木虎「……ふぅ」シュゥゥ…


嵐山「木虎」

木虎「嵐山先輩」

嵐山「トリオン体を歪めて挟み込んだのか。ムチャしたな、大丈夫か?」
 


木虎「はい。あのコがはねまわれば危険ですから」

嵐山「ああ、よくやってくれた!」

木虎「…いえ、当然です」

 ボーダーの顔。
 それは、嵐山隊への評価はそのままボーダーへの評価になるということ。
 ボーダーが負け、市民を守れないなどあってはならない。

 例え相手が、なんであろうと

木虎「そのために私たちはいるんですから」

 

 

 嵐山隊の三人目、時枝は、三輪隊米屋と対峙していた。

米屋「この距離援護なしでオレを止められるつもりかー? トッキー」

嵐山と木虎は遠い。遊真と修は三輪、奥寺にかかりきりだ。
砂煙立ち込める校庭とは違い全体も見渡せる。
少なくとも背にした体育館の壁が破られるまでは、米屋は目の前にだけ集中できる。

時枝「さぁ、どうだろう」ガガガッ

米屋「おっと」

 素早い跳躍で初撃をかわすと、米屋はそのまま時枝に迫る。

米屋「そぉら! よっ!」

 米屋の槍の性質をよく知る時枝は大きく槍をかわす。
 かわしながら引き金を引くことも忘れていないが、散発的な攻撃はかわされ、防がれていく。
 

 
米屋「決め手に欠くぜトッキー!」

 シールドを張り、低く身構える米屋。

米屋「このままイッキに…」

時枝「それはどうかな」

 時枝の銃から放たれる弾丸が、シールドを迂回するように軌道を変える。

米屋「…と、思うじゃん?」

 シールドを押すように一歩。
 弾丸は、前に出て足を止めた米屋を囲うように迂回してしまう。

時枝「さすがに簡単にはいかないね」

米屋「さすがはトッキー、けどこれで、正面ガラ空き!」
 

 
時枝「……と、思うでしょ?」

ビビッ

米屋「んなっ」

 背後から飛来した攻撃が米屋を貫き、床に弾痕を残す。

シュウウウ…


米屋(今のはまさか)

 弾痕は至近に二つ。米屋は知っている、そんな特徴的な攻撃を。
 シールドを張り退きながら、米屋の脳裏に浮かぶのは一人の狙撃手。しかし――

米屋(狙撃? んなバカな、通信もできない、射線なんてもちろん通ってねーぞ?)
 


 背後を窺うも、体育館の外壁は小さな覗き穴を増やした他はすべての景色を遮っている。第一、視えているなら今の隙に急所を射抜けるハズだ。

米屋(あんな小さな穴じゃ多少数があって、も――)

米屋「……そか、弾丸は外に出てったんだよな…」

時枝「広報の仕事ってけっこう待ち時間が多くてね。このパターンのバイパーが出たら、その中心を撃って、なんて、合図や連携を考えたりするんだ」

米屋「やってくれんなー…」シュゥゥ…

 被弾した脇腹からトリオンが漏れていく。致命傷ではない。しかし――

 


奥寺「すいません、落ちます」ドン!

 双葉、奥寺が相次いで倒され、三輪も千早に止められている。

米屋「まじーなー……」


佐鳥(撃ってよかったんだよね…? 通信できないってこえー)ドキドキ
 


 更に三輪の空けた穴から、一人の少女が駆け込んできた。

春香「えーいっ!」

米屋「おわっ!」

 鉛弾を受けたロケットランチャーを鈍器として振り回す春香。
 米屋は時枝の動きに気を配りつつギリギリでかわしていく。

米屋(おいおい、後続に任せたつもりが……まさかみんなやられたのか?)

米屋「秀次ぃ!」

三輪「っ!」

 千早を跳ね飛ばし三輪が大きく退く。
 三輪隊の二人が背中合わせに合流した。
 


米屋「この孤立ぶりはおかしくねーか? 敵さんにブラックトリガーでもいたかね」

 笑顔を浮かべつつ聞くが、目は笑っていない。
 三輪は答えるかわりに左手を口元にあてた。

三輪「聞こえますか。こちら三輪」

 電波による通信妨害はトリオン通信には意味がない。
 逆の可能性もあるとみて渡された一部隊員にだけ渡された無線は、果たして機能していた。
 しかし本部の指示を聞いた三輪は、怒りと困惑に目を見開いた。

三輪「撤退…!? そんな――」

 


千早「退くのであれば、私たちは追いません。ここで戦うのは、危険すぎる」

 落ち着いた、気遣わしげでさえある千早の声。
 それが罵倒の言葉であったかのように、三輪は口元を歪めた。

三輪「本気でそう思うのなら今すぐ消えろ。ここはオレたちの世界だ。他人の世界を我が物顔で踏み歩いておいて今更――」

千早「今から、では、やり直せないでしょうか?」

三輪「……今からやり直す?」

千早「ええ。私たちはお互い――」
 


三輪「はっ、ハハハ……ははははは」

 ひどく乾いた哄笑。絞り出すように。

三輪「やり直すか。それはいい。だったら近界民が殺した人を――姉さんを――」

 そこまで口にして、三輪の表情が消えた。

三輪「退くぞ陽介」


陽介「……おー」

 言うが早いか、踵を返し、周囲へ警戒しつつ飛び退く。
 冷静沈着に、一見平静に。
 しかし最後の一瞥にこめられていたものは、疑いようなく、憎しみだった。


千早「………」
 



 にわかに静寂を取り戻した体育館。
 だがすぐに戸惑いのざわめきが広がっていく。

オワッタ…ノカ?

ナニガドウナッテルンダ?

嵐山「……油断するな、木虎」

木虎「はい。……! 誰か来ます」
 


春香「わわっ、待ってください、私たちの仲間です!」


亜美「はるるん!」

真美「どーなってんの!?」


 続々と、壁に空いた入口からバンナムの面々が入り込む。
 急激に混乱が収束を迎えたため、近場に退く以外の選択肢はなくなっていた。


 


響「ふむふむ、そうだったんだ……助けてくれてありがとね!」

木虎「勘違いしないでください。一時的な利害の一致です」

雪歩「四条さん、真ちゃんと伊織ちゃんは…」

貴音「申し訳ありません、合流を優先に動いたので……今現在どこにいるかまでは…」

千早「美希、外はどう?」

美希「んとね狙撃手さんはまだ何人かいるかな。他の人たちは行っちゃったよ?」

千早「まだ、警戒しておいて頂戴」

美希「はーい」


あずさ「すこし、ふしぎね~。まだまだ、あちらのほうが有利だったと思うのだけど~」

春香「……そう、ですよね」

小鳥「ちょっと待ってね。妨害トリガーは停止させたから、もう間もなく通信が回復するわ」



―――本部


城戸「罠の設置は」

冬島『なんだか派手にやらかしてたようですが、こっちは予定の通りで準備完了』

冬島『燻り出してさえくれりゃ、そうそう脱出はできんと思いますよ』


城戸「……いつでも発動できるようにしておくように」


冬島『りょーかい』


忍田「学校の様子は?」

奈良坂『戦闘収束に伴い、敵はほぼ屋内へ撤退。金髪の近界民は補足しています』

当真『隊長、オイ隊長や』

冬島『なんだぁ当真ぁ』

当真『ダメだわ。当たる気しねー』

冬島『……おまえが言うならそうなんだろうな』


――

奈良坂「またあの人は何を……」ジッ


美希「……」ニコッ

ヒラヒラ

奈良坂「馬鹿な!!」バッ


――

奈良坂『気付かれてる! 手を振られた!!』


鬼怒田「なにぃ!?」

忍田「1km近く離れても効果がないか……」


当真『奈良坂、奈良坂』

奈良坂(クソ、一体どんな…!? 移動してもムダか…?)タッ

当真『奈良坂オイきのこ!』

奈良坂『っ、なんなんだ当真さん!』


当真『手ぇ振られたって言ったが、目は合わせてもらったか?』

奈良坂『目……?』

奈良坂(目線は……。……!)
 


奈良坂『合わせられなかった…!』

当真『そーか』

奈良坂『ということは』


当真『ああ……脈ナシだな。残念、ただのお愛想だ』

奈良坂『』ガク


忍田『つまり、金髪の近界民は』


奈良坂『ええ。こちらの向ける意識を感知するようですが、この距離の相手の位置を正確に補足できるものではないようです』


忍田『当真、奈良坂、よくやった』


鬼怒田『意識を捉えるサイドエフェクト……影浦と同系統のもんか』

忍田「となれば伏兵や狙撃よりむしろ誘導弾……バイパー、ハウンドでの集中砲火が効果的だろう」

城戸「目であるその近界民を叩けば、狙撃も可能、か」


城戸「頃合いだな」
 

 

――体育館



小鳥「っ、通信来たわよ! 律子さんから!」

律子「……すいません、私のミスです」

小鳥「え?」

 




太刀川「いやー……楽しかった」

真「……く……」

太刀川「わるいね。弧月同士で近界民に負けたなんてことになったらお師匠に殺されちまう」




律子「真と伊織が……ボーダーに捕まりました」

小鳥「っ」

律子「ともかく、私は船を動かして――」

?「動くな!」

?「人型近界民だな…!」

律子「なっ」

ガッ

ザザッ

小鳥「律子さん!? 律子さん!?」

嵐山「今の声は、茶野と藤沢かな……」

 

美希「みんな、誰か来たよ、一人みたい」

春香「ひ、一人?」

嵐山「あれは…」

三雲「迅さん!?」


春香「迅さん……? 迅さんって――」

迅「あー、自己紹介はいらないかな。まぁ、細かい話は後回しにして、要件を言わせてもらおう」
 


迅「おでこのコ……伊織ちゃんだっけ。は、おれが捕まえた。そんで、城戸司令に交渉役を任せてもらってね」

三雲「迅さん、聞いてください、彼女たちは交戦がしたいわけじゃなくて…」

迅「さきに言っとくよ。ごめんな、メガネくん」

三雲「っ」

迅「なんとかしてやりたいのは山々なんだけどね」

迅「おれがそっち側についちゃったら、城戸さんは天羽まで使うだろ。こうするほうが、安全だ」

迅「結果的に、こっちは人質作戦に屈しないと示しちゃった。そんでそっちは――悪いね」

迅「キミたちは人質を絶対に傷つけない。分かるんだ。だからもう、学校に立てこもる意味はない」


迅「一応言っておくけど。キミたちがボーダーの守りを撃破して仲間のところにたどり着くのも無理だよ。おれのサイドエフェクトがそう言ってる」

春香「…っ」

遊真「……ふむ。ほんとうみたいだな」

修「そんな――」


迅「こっちの要求は、こっちの人間全員の解放と投降」

迅「あきらめて投降してくれれば少なくとも全員命は助けられる」

迅「相談する時間はくれるそうだ。期限までに投降しろってさ」

 告げるだけのことを告げ、迅は学校に背を向ける。


修「ま、待ってください!」

迅「メガネくん……おれだって、助けてやれないこともある」

修「でも迅さんなら」

迅「おれの答えは言ったよ。あとは」


迅「キミたちが答えを出す番だ」




三好「そんなのって――ないだろ! この人たちが実際なにかしたわけじゃないのに――」

二ツ木「みよっしー、帰りたくないの?」

三好「そりゃ……帰りたいのは確かだけど、それより」

四ツ谷「後味悪いよな……このまま解放されてもさ……」

一之瀬「あの……話し合いはできないのでしょうか…」


唐沢「……何を話し合うのかな。人質を人質にしていないとわかったいま、差し出せるものがないと話し合いにはならない」


春香「あの……、私たちのことはなんでも話します。なにか……できれば、皆さんの知ってることも教えていただけたらその」

嵐山「そうだな、手があるか考えてみよう」


亜美「あっそだ、亜美たちが知ってる国とかのこと話すからーってのはどう?」

嵐山「…それは――」

遊真「あー……それだとおれ、こっちにつかないほうが良かったなー」

修「? ……あ、そうか。空閑のサイドエフェクトも頼れないし、すり合わせられる情報も限られるし、信憑性が――」

真美「てかてか、ダイジなハナシ話せないっしょ? 今まで会った人たちの」

亜美「まーね」

貴音「信頼は積み重ねるもの……その前から崩すことになりかねません」

唐沢「どちらにせよ、喫緊で使えるものでないと価値は薄いよ……情報は足がはやいからね」


千早「向こうは降伏か全滅させれば、トリオン艇二隻に、多数のトリガー、トリオン・情報源である私たちが15人手に入る……それに見合うとなると――」

美希「それか、美希たちを全滅させられないって思う方法……なんかあれば?」

出穂「アタシらが傷つけられた風に見せかけるとかは」

春香「すっごく、ありがたいんですけどそれは……ごめんなさい」

出穂「あー。そっちの人たちつかまっちゃったんでしたね…」

響「それもだけど……やっぱ、フリでも傷つけるのは、それで乗り切っても後がね」

やよい「あのっ、ほんとはもっともっとつよいんだぞーって思ってもらえたらなんとかなりますか?」

嵐山「……ボーダー側の切り札は、この校舎を一瞬でぺしゃんこにできる。それを上回るくらいでないと、難しいかな…」

隊長「さすがに、厳しいね…」


あずさ「交渉ではなく、城戸さんという方にお願いしてみる、というのはどうでしょう~」

修「……それは、難しいと思います」

遊真「おれのときもだいぶモンドームヨーだったぞ。修や迅さんがいなきゃどうなってたやら」

雪歩「うう……」


修(ぼくと空閑のときは……迅さんや林藤支部長、嵐山さんたちが橋渡しをしてくれた)

修(なにかできることはないのか、なにか――)

 
木虎「――ま。全面降伏すれば命まではとられないでしょう」

隊長「命を取られなければいいというものではっ!」

小鳥「隊長!」

隊長「あ、ああ……すまない」

木虎「…いえ」

 


 バンナムの面々はそれぞれうつむき考えていたようだが、やがてひとり、またひとりと顔を上げる。

春香「私たちの負け……かな」

 春香は弱弱しく笑みを浮かべた。

千早「……………そうね」

 千早は自分の肩を片手で抱き、静かにうなずく。

やよい「あぅぅ……ごめんなさい、みなさんすっごく、なやませてしまって」

 やよいは申し訳なさそうにボーダーや生徒たちに頭を下げる。

美希「……ん。思いつかない……ね」

亜美「んぁー! せっかくヨータロたちとも仲良くなれたのにぃ!」

真美「まー……兄ちゃんを探しに行けなくなりそうなのは――ちょっち、きついけど…。いつかできるかもしれない、よね」
 


雪歩「うぅ……プロデューサーに、私たち……。でも、真ちゃんと伊織ちゃんを……」

響「……比べられるものじゃ、ない、もんね。プロデューサーや、いぬ美たちに一生会えないって決まったわけじゃないし」

貴音「今であれば、大切なものは三雲殿たちに預けることもできましょう」

あずさ「いつか、プロデューサーさんの故郷へ行って。日本の皆さんと、ボーダーの皆さんと――まぁ、お会いできましたし。夢は半分、叶ったわ~」


修「それで、いいんですか……!」

隊長「いい訳がなかろう!!」

修「っ」

隊長「すまない。だが……、無念だよ。前隊長に…従兄(あに)に、顔向けができん」

修「…………すい、ません」


美希「――みんな、笑顔、笑顔~」

やよい「美希さん……」

美希「うん、ボーダーやニホンの他のみんなと仲良くなれなかったのは残念だし」

美希「……どうなるのかなって。ちょっとこわいよ」

美希「でも、ハニー言ってたの。傍目に華やかでも、どんなに理想がきれいでも。うまくいかないことはいっぱいある。でも、だからこそ」


美希「そんなときこそ、笑顔を忘れるなって」

 
美希「いっぱいーっぱい、大変だったけど。そうやって、ここまできた。だから」

 すう、はあ、深く呼吸し。美希は顔いっぱいの笑みを浮かべる。

美希「だからミキ、ハニーがいなくても、もう泣かないよ」


貴音「……ええ、美希の言うとおりです」

真美「ん、そ、だった」

亜美「うつむいてちゃアイドルはできませんな!」

嵐山「……すまない」

響「嵐山さんたちのせいじゃないぞ! もっというとボーダーはなーんも悪くない!」

美希「どっちかってーと美希のせい?」

あずさ「まぁまぁ、あのときすぐ捕まるのと今捕まるのなら、今のほうがずっといいわ~」

嵐山「……きみたちにならべく配慮してくれるようかけ合ってみるよ。迅だってほんとうはきっと…」
 

 

 何事もなかった日常に戻るだけのはずの生徒達まで、皆がうつむいていた。
 瞬く間に皆の心をつかんだアイドルたちの笑顔も、今は周囲の顔を明るくはしない。
 誰もが考え込み、そして、答えが出せずにいた。


三雲(これで、いいのか?)

三雲(なにか方法はないのか? こんな、一方的に服従させるようなやり方じゃなくて、この先に繋がるようなやり方が………)

 



 修はもう一度周囲を見た。
 修を見ながらやはり考え込む遊真を、千佳を。
 これ以上皆の表情を曇らせまいとするバンナムの面々を。
 やるせない表情で目を伏せる嵐山を、木虎を、時枝を。
 皆を。


 そして

三雲(――!)

https://www.youtube.com/watch?v=kmGMvmXhu7E&t=796s

 


三雲(……このメンバーなら、協力が得られるなら、もしかして? でも――)



遊真「――なにか浮かんだみたいだな。どうするんだ、オサム?」

千佳「オサムくん」

嵐山「三雲くん?」


三雲「…………みんなに聞いてほしい、です。普通じゃないやり方だし……それでも、もしかしたら」




千早「……たしかに、それなら、けれど……」

春香「だ、ダメですよ! 私たちはともかく、そんな、オサムさんたちまで」

嵐山「……………………ほかに思い浮かぶ手も、ない、か」

やよい「あ、あの、いいんですか? えらいひとに怒られちゃうんじゃ…」

修「そうかもしれない。でもぼくは――あ、ぼくたちは」

 ドンと修の腕を叩いた遊真と、そっと腕をとった千佳に、修が言い直す。

修「できることなら、そうしたい」

春香「な、なんでそこまで……私たち、何がお返しできるかも……」

遊真「べつに気をつかうことないぞ。オレたちがそうすべきだと思ってるからだ」

千佳「だよね、修くん」

修「え、あ、ああ」


春香「ミクモさん……」

修「でも――」

 目を向けられ、嵐山が首肯を返す。

嵐山「借りは返さないと落ち着かないんだ」

木虎「同じく」

時枝「やろうか」

唐沢「若いなぁ……。嫌いじゃないけどね」

 見渡す三雲に、皆が頷く。
 修は、静かにこぶしを握った。



……


出穂「うー…緊張するー…アタシの役目なにげに超重要じゃないスか!? ホントに万が一なんですよね!?」

千佳「出穂ちゃん」

出穂「チカ子」

千佳「……がんばって」グ

出穂「なーんでこの期に及んでプレッシャーかけてくるかなーアンタは~~~~~~」

グリグリ

イタイイタイ

出穂「ま……アンタと交代なんてできないし。やれることやるしかないか」


嵐山「うん、おれたちも……みんなの役割が重要だ」

木虎「佐鳥先輩はどうしましょうね……まぁ、べつになんでもいいか」

時枝「申し訳ないけど向こうは向こうに託すしかないね」


隊長「すべての準備完了だ。皆、あとは頼むよ…!」


美希「オサム! 作戦前の一言よろしくなの!」

修「ええっ、ぼくが!? 嵐山さんやそちらの誰かのほうが…」
 

 
木虎「早くしてよね」

春香「修さん」

嵐山「みんな、君の言葉を待ってる」

 視線を受け、修はゆっくりと、ツバを飲み込む。

 


修「ぼくは……弱いです。一人じゃ、こんな状況どうにもできない。でも」

修「みんなが自分の役割を果たせば多分……いや」

修「みんなの力を合わせれば、きっとうまくいく!」

修「だから……た」


修「やりましょう!!」




「「「おおー!!!」」」



 

というところで今回はここまで
今週中には終わらせたい…!
突っ込み質問感想はいつでも歓迎

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