ハルヒの不思議パワーでキョンが発情する話 SS (24)

暇つぶしに

朝起きると下半身に違和感があった
一言でいうなら"たって"いた
中学以来ではないかというくらい久々の寝起きの大暴走に困惑しつつも、急いでトイレへと駆け込んだ
男だしこういうこともあるだろうと思いつつ、ゆっくりしていては俺の出席簿に遅刻の二文字が刻み込まれてしまう
なんとかスッキリした俺は朝食も食べず急いで家を出た

高校までの道のりは半分チャリ、もう半分が徒歩である
半分徒歩などと中途半端なことはせずいっそのことすべて自転車で行ってしまえばいいのだが、我が県立北高校へはハイキングコース顔負けの坂を登らねばならない
春のまだ風がほどよく涼しい時期にその坂を登れば学校へ着く頃には汗まみれになってしまうような急こう配を自転車で登るようなアホがどの世界に居よう
いやしかし、運動部に所属している者の中にはそういう輩もいるし、朝登ってしまえば帰りは自転車を漕がなくても帰れるという利点もある
そんな気力や体力があったらの話だが…
俺には気力も体力もないわけで仕方なくいつも坂道を下った先にある駅の駐輪場に自転車を停めるのである

いつもより支度に手間取ってしまった分を取り返すべく、自転車の速度をいつもより速めていた
すっかり葉が枯れ、紅葉シーズンも終わり、そろそろ初雪がどこかで観測されてもよい頃
ぼんやりと通り過ぎる街並みを眺めていると体がぽかぽかとし始めた
いつもよりスピードを速めているからかと気にせずチャリをかっとばしていると

「ん?」

またもやムスコの大暴走が始まっていた

気づいた俺は慌ててチャリを停め、近くにあったコンビニへ駆け込んだ
店員の顔を見る間もなくすぐさまトイレへ駆け込んだ

「ふ…っ…ふぅ…ぅ…」
走ったこともあってかいつもより荒い吐息が洩れる
深呼吸をするも大暴走は収まる気配もない
心なしか吐息も甘くなっている気がする
いかん。このままではこのトイレから出られない
心の中で謝罪しつつコンビニのトイレで俺はシてしまった

チャリを駐輪場に停め、坂を歩く

いくらなんでもおかしい

朝の大暴走は分からんでもない。恐らく年上のお姉さんに誘惑される夢でも見ていたのだろう
しかし二度目のアレは説明のしようがない
いや、チャリや枯れ葉の風景に興奮するような趣味ならば説明はできるがあいにく俺にそんな趣味はない
またなにかに巻き込まれる前兆なのかと思ったが仮にそうだとしてこれは誰の仕業なのだろうか
悶々と思考を巡らせてもなにかにたどり着くでもなく、気がつけばもう校門前まで歩いており、朝のアレからコンビニまでの距離とそこから校門までの距離を考えてみれば朝の処理が不十分だったで済ませてもいいような気がした。というか、そういうことにしておきたい
モヤモヤは解決するでもなく、自分の中で納得して教室へ向かう
ま、なんとかなるさと

教室に着いた俺は窓際後方二番目にある俺の席に着いた
中々のいい席であると俺は思う。後ろに座っているのが涼宮ハルヒとかいう超をいくらつけても足りない問題児でなければ…

涼宮ハルヒには特別な力があるという。なんでも望みを実現させることができるという夢のような力だ
しかし本人は全く自覚していない。自覚してもらっては困るらしいが…

ハルヒは望んだ。宇宙人とお友達になりたいと
廃部寸前の文芸部に入部した唯一の一年生宇宙製のヒューマノイドインターフェースである長門有希の元にハルヒは「部室を貸してほしい」とお願いしたそうだ

ハルヒは願った。未来人と一緒に遊びたいと
文芸部を乗っ取って作る謎の部活にハルヒは「可愛くておっぱいが大きいから」という理由で未来人である朝比奈みくるを連れて来てしまった

そしてハルヒは叶えた。超能力者は私のところに来なさいと言ったことを
入学式早々に転校してきた謎の転校生古泉一樹はなんと化け物と戦う超能力者だった

なぜか巻き込まれた俺を入れた五人で半ば強引に結成されたSOS団
その五人でいつも宇宙的未来的、その他いろいろな事件やイベントに全身をどっぷり浸かっていた
主にハルヒが事件の発端であることが多く、俺はいつもそれらに手を焼いていた
そしてハルヒの力なのか何かは知らないが、俺の席の真後ろにはいつもハルヒが陣取っていた
これまで何度か席替えをしてきたが、ハルヒが必ず後ろの席になるため一度も一番後ろの席になったことがない
最初の席替えからもう半年は経つので諦めはついていた
今はその最初の席替えのときと同じ窓際の席で二人仲良く並んでいる
全く、悲しむべきなのかね

しかし今日は珍しくハルヒが席に居なかった

珍しいこともあるもんだなと窓の外をぼうっと見ていると始業のベルと共にハルヒが教室へ入ってきた
ハルヒの鞄はあったので学校に来ていないという心配はなかったが、それにしてもどこへ行っていたのだろう
また変なものでも見つけて来たのではないだろうか…と見ていると
「なに見てんのよ」
と訝しげな顔をされてしまった

「いや、なんでもない」
言うが早いかハルヒが入ってきた扉とは反対のもう一つの扉から担任の岡部が入ってきた
いつものように教室を見渡し遅刻者や欠席者の有無を確認すると、教壇の前へと足を進めていた

朝から昼にかけての授業というものはある意味二度目の睡眠時間であるのが一介の男子高校生の生活ってもんだ
うつらうつらと睡眠電波を発している岡部をなんとか見ながらも机と顔の距離が少しずつ縮まっているのが分かる
あぁこのまま寝てしまおう。そう思った矢先、後ろからの禍々しいオーラで目が覚めた
驚いて振り返るとそこにはいつも通りのハルヒが居た
何よと顔が言っている。急に振り返るクラスメイトがいれば俺も同じような顔をしていただろう
あまりにも後ろを見ているのも不自然なので俺はそのまま何事もなかったかのように前を向きなおした
ハルヒもそれ以上なにか追及しては来なかったしこの場はなかったことにされたのだろう
しかしながらいつものハルヒだったのならばそのようなことはありえないとこの時点で気づくべきだったのかもしれない
担任の話など聞きもせず退屈そうに窓の外を見ているようなやつが今日はこちらを見ていたことにもっと早く気がついていれば…

昼休み前の授業という一日の中で最も眠いのではないかという授業の中、うとうとしながらも必死に瞼と戦っているとまた全身が疼きだした
それだけではない、またアレがお起立してしまった
しかも眠気と相まって、どんどんお硬くなりやがる
幸い、出席番号で当てるような教師の授業ではないので問題を解くために立たなくてはならないということはないが…
なんとか収めないと…焦りが焦りを呼びどうにも収拾がつかなくなってきた

必死に手をつねってみても収まる気配はない。痛覚でどうにもならんとはこれはもう諦めるしかない
いかにバレないようにこの教室を出るかを必死に考えてみるものの、授業の時間はあと五分もない
この短時間では人目を避けるようにして教室を出るか何かで隠すというバレバレな手段をとるしかないことは明確だったので考えは別の方向へ働かせていた


授業を終える鐘がなり、各々が昼食を摂るための行動へ移している中、俺は人目を忍んでとある場所へと向かっていた
教室の名前を示すプレートに書かれたSOS団の表示
それは元文芸部室をハルヒが乗っ取り、立ち上げたSOS団の教室だった

部室にはいつも長門有希がいる。前に一度部室で休み時間を共にしたことがあったが、休み時間が終わるギリギリで教室へ戻り授業を受けまた部室に戻ってきているらしい
それだけ部室に愛着があるらしいが長門だったが、やっていることといえばいつも分厚い辞書のような本を読むことだけだ
読むだけなら教室でもできるだろうに何のこだわりがあるのか決まって部室で読んでいた
一見なんでもないただの文学少女だが、その実、宇宙からやってきた正真正銘の宇宙人だ
その宇宙パワーはハルヒの願望実現能力(適当)を凌駕する力で、天候を操ることもできなくはないらしい
しかしながらその力を自分の思うように使うことはなく、あくまで役目は涼宮ハルヒの観測であり、ハルヒの願望により世界が変わってしまうことを防ぐために使われていた
そんな長門になら、この異常事態を止められるかもしれない…というかお願いします長門大明神様というような思いで、部室へと駆け込んだ

考えてみれば他のメンバーに言ったところで解決するとは思えない
ハルヒは論外だとして、朝比奈さんは未来人と言っても時間を跳躍できる以外はなにもできない
古泉に相談するのも気が引けるため、消去法でこの下半身を見ても驚かなさそうな長門に選択は絞られる
焦っていたとはいえ、我ながらよい案だと思う
驚かないという点では古泉でもよかったが、なんせ後が怖い
思い出したように掘り返されるのがオチだ

「長門…」
部室に勢いよく入り、名前を呼んだところで言葉に詰まってしまった
どう説明したらいいんだこれ
確かに宇宙製のロボットだとは言うが、見た目は普通の女子高生なのだ
部室までなんとかたどり着き少し冷静になった俺はこの異常な状況に気がついてしまった
要するに俺はこの肥大化した局部をなんとか沈めてくれと女子高生にお願いをしているわけだ
これじゃあまるで成人向けのゲームの展開じゃないか
いや、決してやったことはないぞ。決して
などと考えていると何を察したのか長門がこちらに近づいてきた

俺は閉じた扉に背をつけ、こちらをまっすぐ見つめる長門の視線に耐えられず、目を瞑った
男が情けないと一瞬考えはしたがそれよりも動揺しない長門の視線から思わず逃げてしまったのだ
足音が少しずつ近づいてくる
扉へと完全に体を預け、目を瞑り全身をこわばらせていると、長門の気配を感じた
恐らくすぐそこにいる。しかし目を開けることができなかった
数秒間の沈黙の末、長門は俺のブツにそっと手をあてた

「んっ!?」

思わず声をあげ、目を開くとしゃがみ込んでズボンのチャックをおろす長門

「お、おいっ…ちょっと、まっ」
チャックを半分ほどおろした長門の手が止まった

なぜ?と言いたげな瞳でこちらを見つめている

「いや、その、なにをするんだ?」
質問の意図が読めなかったらしく、長門の顔には?が浮かんでいた

「確かに俺はこの…"コレ"をなんとかするためにここに来た。しかしそうじゃないというか、そうだな…」

ズボンに手をあてたまま下から見上げる長門はそれはそれはエロかった
思わずドキリとしてしまった自分を誰が責められよう。心なしか下半身が大きくなった気もした

「そう、"コレ"は一体何なんだ?また何かハルヒの不思議パワーでこんなことになっているのか?それが聞きたかった」

ようやく俺がここへ来た意味を理解したらしく、長門は口を開いた

「…そう
 あなたの考えは間違いではない」
「つまりは、ハルヒのせいってことでいいのか」
「この事象が涼宮ハルヒによって引き起こされたことであるかという意味ならそう」
またあいつか、おかしいと思ったんだ
「で、なんでこんなことになっているんだ」
「彼女の精神的不安定さがもたらした一種のバグのようなもの」
いつも思うがこいつの説明は、俺にはさっぱりだ
「つまりは、どういうことだ?」

「彼女の言葉を借りるとするならば"一種の精神病"。それも感情的なものではない
 涼宮ハルヒは特定の人物に対しての好意を向けない。しかしそれは感情的なもの
 精神的に彼女は特定の人物を求めたがっている。または求めようとしていると思われる
 彼女の中で矛盾した考えが生まれてしまったことで引き起こされた限定的なバグ。それがあなたへの異変」
「要するにハルヒの中にバグができたってことでいいのか」
「涼宮ハルヒの中に存在するものではなく、彼女の考えによって引き起こされたもの」

どちらにせよハルヒによって"コレ"は引き起こされたものであるようだ
「どうすればいい?」

問いに答えるでもなくチャックを下げ始めた長門
動揺していたが今度は言葉が詰まってしまい上手く抵抗できなかった
仕方なくされるがままにしているといつの間にかズボンも、あろうことか下着まで脱がされていた
頭が完全に考えるのを諦めていた俺は窓からこの光景を見られることを心配していた
すると今度はブツに生暖かい感触が触れた

「んぬ…っ!」
不意打ちだったためにあられもない声を出してしまった
見れば長門が直に局部を触っていた。また、少しずつ顔を近づけていた
これは…襲われる!
なんとか逃げ道を考えてはみたものの長門から逃げられる人がいるとすればそれは瞬間移動ができるタイプの超能力者か時間を越えられる未来人くらいのものではないだろうか
無駄なことを考えている間にも長門はブツを咥えようとしている
すべてを諦めて長門にだったら襲われてもいいやと腹をくくったとき、長門に思いっきり噛まれた

痛くは無かった
しかしガッツリと噛むところを見てしまったこともあってか俺のムスコはすっかりしぼんでいた
それを確認すると長門は素早く衣服を元に戻してみせた
もしかしてこれは、長門がやってくれたことなのか?

「一時的に抑えた。しかしこのバグはこの時間軸特有のものであり他の時間軸のわたしにも対処はできない
 これを解決するには涼宮ハルヒとの直接的な行為が望まれる。またそれを涼宮ハルヒが認識することはない」
すると一枚のチケットのようなものを差し出してきた
「なんだこれ?」
受け取るとそこには無料券の三文字が書いてあるだけの紙だった
「これを使うといい」
それだけ言うと長門は部室から出て行ってしまった
時計を見ると昼休みがもう終わるというところだった

午後の授業は至って平穏だった
俺はいつも通りの日常を過ごしていた
部室での一連の行動は俺の中ではなかったことになっている
きっと朝昼共になにも口にすることなかったがための幻想だと思っていいと考えている

そんな平穏の中、唯一変わった点をあげるとするならばハルヒだ
昼休みはともかく、朝からほとんど
このようなことが今までにあっただろうか
いいや、俺の覚えている限りではないね
入学式から一週間はほとんど喋ったこともなかったのだが、一度話してからというものなんだかんだ空き時間にハルヒと話すことが多い
今日は機嫌が悪いのだろうか
そんなこんなで放課後、脱兎のごとく教室を駆けだしたハルヒはまた面白い物でも探しに行ったのだろう
ハルヒを尻目に荷物を抱え、習性のごとくSOS団の部室へと向かった
今日くらい帰ってもよさそうだったが、いつもしていることをやらないと気が済まないように、いつも向かう場所へは行かないと気が済まないらしい
のろのろと歩きつつ肉体的には数時間ぶりの部室へと入ろうとした


「本日の活動なし!速やかに帰宅されたし」

走り書きで、それもでかでかと書かれた文字はいかにもハルヒが書いた文字だった
にしてもハルヒはこの紙を貼るために走ってここまで来て、素早く帰ったのだろうか
部室には鍵がかかっていて、侵入者の入室を拒んでいた
仕方なく引き返し、俺は下駄箱まで来た

「あれぇキョン。今日は早いんだねぇ」
話しかけてきたのはクラスメイトの国木田だ
よく谷口と俺の三人でつるんでいる、中学からの友人だ
クラスに俺のキョンというあだ名を広めた人物の一人でもある
「今日は涼宮さんと一緒じゃないの?」
「言っとくが二人一緒に行動するほうが珍しい。それに俺はハルヒにとっては団員その1くらいの存在なんだぞ」
「へえ、そうは思えないけど。どうせなら一緒に途中までどうだい?」
「そうだな。たまには…」
一緒にと言いかけたところで国木田は
「あっごめん、今日は急ぎの用事があったんだ。また今度」
と走って言ってしまった
急になんだったんだと困惑しつつも一人寂しく坂を下る
自転車で坂を登って登校すればこの下りの坂道を一気に抜けられたのだが…とまでは考えたが朝の貴重な睡眠時間を削るわけにもいかない
また今日も徒歩でくだるのであった

SOS団の活動と言っても大体は古泉や朝比奈さんとボードゲームをしたり、お茶をすすりながらぼーっとするだけで、これといって何か活動するわけではなかったが、いつもやっていたことだけに無くなってしまえば暇になる
暇つぶしに自転車を漕いで街まで出た
よくSOS団の待ち合わせで使われる駅前の近くにある駐輪場に自転車を停め、歩いていた
まっすぐ帰宅しろという旨の紙が貼られていたが今日はそれを守る気にもなれず、一人出歩いていた
近くにはいつぞやの長門と行った図書館や朝比奈さんと歩いた河原がある
すっかり秋の色に染まった街を眺めながら、なにをするでもなく歩き回るのは、不定期に休日開催される不思議探し探索(といいながら歩くだけ)そのものだった
しかし一人で歩くには…と思っていると前方から見覚えのある顔が歩いてきた
こちらに気がつくと驚いた顔を見せ、少し考えたと思ったらこちらを睨みながら怒鳴っていた
「あんたねぇ、速やかに帰宅しなさいって書いたわよね?」

涼宮ハルヒがそこに居た

ハルヒは私服だった。それも秋を感じさせる落ち着いた印象の服だった
そんなハルヒに目を奪われていると、ハルヒは何か言いたそうにしながらも、言葉を飲みこんだようだった
そして、目を合わせることなく俺の腹のあたりを見ながら小声でなにか呟いたような気がした

「何か言ったか?」
「べ、別に…それより、なにしてんのあんた」
俺に一切目線を合わせることなく、声だけは威勢のいいハルヒ

「暇つぶしに来てただけだよ、そういうお前はなんなんだよ。活動なしなんてきいてないぞ」
「あ、あたしは一人でSOS団校外活動を実施していたところよ
 活動なしって言ってないから当然よ、今日は仕方なかったんだもん」
何が仕方なかったのかは分からないがついにSOS団を解散でもさせる気になったのだろうか
それはそれでありだが俺としてはまだ…
「あ…」
ハルヒの一声で考えが中断してしまった
いつの間にか空には黒い雲がかかっていたし、ぽつぽつと雨も降り始めていた
傘を持っていなかった俺は周りを見渡し、雨宿りできるところを探した
しかしなぜか周辺には雨宿りできそうな場所はなかった

「あんた、傘持ってないの?」
「そういうお前こそ。持ってないのか?」
「持ってないわよ、雨降るってきいてなかったし…おかしいわね、今日はずっと晴れるって言ってたけど」
「天気予報もアテにならんってことだろ」
なんて呑気に話していたせいで雨はどんどんひどくなっていた
なんとか歩き回り雨宿りできるところを見つけたころには二人とも手遅れだった
かろうじて持っていたハンカチをハルヒに渡し、服を絞っていると少しだけ雨がやんできた
通り雨のようだし雨が弱まっている隙に駅まで戻ろう。そう話し合い、駅まで向かおうとした瞬間気づいてしまった
ハルヒの真っ赤な顔に

「どうしたハルヒ、おい」
赤く染まった顔はまるで風邪をひいた子供か日焼けした後のようだった
全身が火照っている。心なしか息も荒い
「くそっ、どうすれば…」
「だ、大丈夫…だから…まだ…んっ…あるけ…」
「無理するな」
強がるハルヒも、体はこちらに預け、今にも倒れそうなところを必死にこらえているようだった
また、預けられた体は今にも消えそうに弱弱しく、まるで一人の少女であるかのようであった
そんな弱ったハルヒを見た俺は無意識のうちにハルヒを抱えていた
いわゆるお姫様抱っこだ

ハルヒを抱えて俺は走った
とにかく休めるところ、できれば着替えもできるところが望ましいだろう
できればコインランドリーやネットカフェでもよかったのだが、わざわざ街に出てそういった場所に行かないために場所が分からなかった
数分歩いていると看板が見えた。そこに書かれた文字に引き寄せられるかのようにその建物へ入っていった俺は
「ば、ばかっキョン…っ!ここ、ねぇちょっと」

やけに動揺したハルヒの声を聞くまで気がつかなかった
気がつけばそこは建物の前、あと数歩踏み出せば入ることができる
妙に赤らめた顔で抱かれているハルヒに気がつき我に返った

おいおい、確かに休憩できるとはいったがここは

「ねぇ、ほんとに入るの?キョン。ここ、だって…」

いわゆるラブホテルというやつだった

同級生と雨宿りにラブホテルだなんてベタなエロ漫画のような展開を誰が予想できよう
抱えたままのハルヒを一旦おろし、建物を見上げる
懐かしいかな、昔はよく「あれはなあに」と大人にたずね、困らせていた
無知というのは恐ろしいものである

とまあ、現実から逃げていてもエロ漫画のような展開になってしまった事実に変わりはないので、ハルヒの顔をちらりと覗くと

「み、見んな!」
と跳ね除けられてしまった
照れているのだろうか
仕方なく目線を合わせないように
「どうする?やめとくか?」
ときいてみた
俺としてはここで「入るわけないじゃない」とか「死んでもごめんよ」という言葉が飛んでくることを期待していたのだが
聞き方が悪かったらしい。数秒後に後悔した

涼宮ハルヒは強がって
「や、やめとくわけないでしょ。あんたと入ったところでなにかあると思えないし、風邪ひくのもごめんだわ」
ずかずかと入っていってしまった

受付のおばちゃんにすごい顔で見られながらもなんとか誤魔化し、入室しようとした
しかしここで大きな問題が発生した
お金が足りないのだ

ハルヒが持っていたお金も俺が持っていたお金も高校生が街で遊ぶには十分なお金であったが、このような場所はそれ以上にお高かった
どうしようもなく、なんとか無くなったお札がひょっこり出てきたりしないものかと持ち物を漁っていると一枚の紙が床に舞ってしまった
こんなもの入れた覚えはないと思いつつその紙を拾い上げ、見てみるとそこにはこのホテルの名前と、無料券(1回に限る)と書かれた紙であった

入室するとそこは結構広い、ホテルの一室のような空間だった
大きなテレビとの下に収納されていた冷蔵庫には缶ジュースが二本入っていた
ハルヒはいつの間にか元気になったようで、ほんの少し目をそらした隙に置いてあった浴衣のようなものに着替え、服を乾かしていた
ホテルに圧倒されていた俺も同じように着替え、服を乾かす
仕方のないことだがお互いの下着が見えるのがなんとも言えない雰囲気を作り出していた

乾くまでの間、ハルヒはシャワーを浴びると言ってお風呂場へ向かって行ってしまった
どうせなら入ろうかと思っていたところだったのだが、仕方なく一人部屋でぼーっとしていた

ねむくなってきたので続きは後日

セリフよりも語りを書くのが好きっていう

ID変わってたらどうしようかと思った
続き書く

風呂場から聞こえる水の音を聞きながら遠い目をして数分が経過した
喉が渇いて仕方なかったので、冷蔵庫から取り出したばかりの缶ジュースをあけた
本当は体が冷え切っていたので温かい物でも飲みたかったのだが、あいにく雨の中を走ったこともありお湯を沸かすのも面倒だった
甘い小さな缶ジュースをちびちびと飲んでいるとハルヒがシャワーを終え、先ほど着ていたものと同じ、バスローブのような白い浴衣姿で現れた
お風呂上りの女子ってどうしてあんなにも色っぽいんだろうな、思わず俺は目をそらした

「あんたも入ったら?」
お言葉に甘えて俺もシャワーを浴びることにした
ジュースを一気に飲み干し、浴衣を脱ぎ捨て風呂場へ入った
大人二人入るには充分すぎるほど大きな浴槽と何に使うのか分からない(本当だぞ)マットがあった
それらを横目にシャワーのつまみをひねり、お湯を出した
ふぅ、と一息。冷えた体に温かいシャワーが染みる
体を軽く洗い、そろそろ出るかとシャワーヘッドを元に戻そうとすると、異変に気がついた

落ち着いていたかに思えた局部がカチンコチンになっていた

「おおぉあっ!?」
思わず声をあげる俺にハルヒが何かあったのとドア越しに問いただす
なんとかおさめようと手をつねってみるも全く萎える気配がない
むしろ元気になってないか?
とりあえず、風呂場を出よう。しかしドア越しにはハルヒがいる
隠せるために使えそうなものはタオルか洗面器くらいのものだ
タオルを腰に巻きいてみたもののタオル越しにビンビンなのが一目で分かる
試行錯誤の末ハルヒを一旦風呂場のドアから遠ざけるという名案を思い付き、実行しようとしたその時だった

「ちょっとキョ…んあぁっ…!」
ハルヒが扉越しに倒れたのだ

どうでもいいけど今日はポッキーの日
脳内で勃起ーの日(ちんちん)とか考えて一人笑ってたよ

急いで浴槽を出るとハルヒが真っ赤な顔をしてぶっ倒れていた
大丈夫かと声をかけると大丈夫だと答えた
はだけた衣服から伸びる手はなぜか濡れていた
俺はまたハルヒを抱えた。そのままベッドに寝かせた
大丈夫かともう一度声をかけると顔を腕で隠し大丈夫と呟いた
ハルヒのおでこに手をあて、熱が無さそうなことを確認すると俺は浴衣を着ていないことに気づいた
浴衣を着るため脱衣所へ向かうため一度ベッドを離れようとしたがハルヒが腕を伸ばし俺の腕を掴んできた
浴衣をとりに…とベッドから離れようと立ち上がる俺をさらにハルヒは両の腕で押さえつけた
「どうした?ハル…」
俺が振り返り、なだめようとするとハルヒは

——俺に口づけをしてきた

「あたし…ひとりで…さみしくて…あんたのこと考えてたら偶然会って…
 こんなとこ連れて来て…こわかったけど…ジュース飲んだらふわってして…何も考えられなくなって…」
「おいおい待てハルヒ」
「はぁぁん…っ!」
数センチの距離にあるハルヒの顔は目がとろんとしていた
俺が名前を呼ぶと甘い声をあげ、力が抜けたようにこちらに倒れこみ
俺のことを強く抱きしめたハルヒは小さく俺の名前を呼んだ気がした

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