モバP「クールな金のオオルリと」 (62)




※少しだけデレステの設定が入っています※





--------------------

とある日
プロダクション2F・事務所


ちひろ「…………」カタカタカタカタ

音葉「…………」ペラッ

ちひろ「…………」カタカタタッ

音葉「…………」ペラリ

ちひろ(……どうも、千川ちひろです。絶賛、お仕事頑張り中です)

ちひろ(今、事務所には私と音葉ちゃんの二人だけで……とても静かな空間が生まれています)

ちひろ(音葉ちゃんは、ソファで雑誌を読んでいるようですね。……音楽雑誌でしょうか?)




ちひろ「…………」カタカタ

音葉「…………」ペラッ

ちひろ「…………」カタカタタッ

音葉「…………」ペラリ

音葉「…………あっ……」スッ

ちひろ(……あら? 雑誌を読んでいた音葉ちゃんが、席を立って事務所の入り口に……ということは)

ガチャッ

音葉P(以下P)「――ただいま戻りました」

音葉「……Pさん、お疲れ様です」

ちひろ(おお……やっぱり音葉ちゃんには、プロデューサーさんの戻って来た足音が聴こえていたみたいですね)




P「ああ、音葉さん。すみません、いつもいつもお迎えして頂いて……」

音葉「いえ、私が好きでしているので……」

ちひろ「……ふふ。お疲れ様です、プロデューサーさん」

P「ちひろさん。そちらも、お疲れ様です」

ちひろ(この方は音葉ちゃんの専属プロデューサーさんで、音葉ちゃんを他事務所からこの事務所にスカウトした人でもあります)

ちひろ(身長170cmを超える音葉ちゃんよりも更に高身長で……こうしてみると、まぁ見事な美男美女のお二人ですね……)




ちひろ「今日も、戻られる時間が大きくズレてますね……プロジェクトの進行の程はいかがですか?」

P「はい、詰めの打ち合わせに幾分時間がかかっていまして……いよいよ、大詰めといったところでしょうか」

ちひろ「プロデューサーさん真面目ですからね……ひとつ決めたらとことんやりこむタイプというか……」

P「……お恥ずかしながら。皆さんがついてきてくださっていて、感謝してもし切れないです」

ちひろ(事務所の誰にでも敬語で、とても優しい方で……数あるプロデューサーさんの中でも癒やし系とか言われているそうな……)




音葉「……Pさん、荷物を。それと、コートも……」

P「あっ、すみません。よろしくお願いします」

ちひろ(そんなプロデューサーさん、音葉ちゃんとの相性は抜群だったようで……)

ちひろ(それはもうあっという間に、音葉ちゃんを人気アイドルにしてしまいました。元の事務所の人もびっくりでしょうね本当に……)

ちひろ(音葉ちゃんの表情も、デビューの頃から日を刻む毎に柔らかくなって……今ではとても素敵な笑顔を浮かべるようにもなりました)




ちひろ(まぁ、それだけでしたら特に何も言うことは無いんですけども……)

音葉「……Pさん、今日の飲み物は……何を?」

ちひろ(そう、一緒に居る時間が長すぎたんでしょうね。その……)

P「そうですね……今日はコーヒーな気分です。……いつもすみません、よろしくお願いします」

音葉「はい。……ではいつものソファで、今日のお話を……」

P「ええ、荷物を片付けたら直ぐに。……本当に、ありがとうございます、音葉さん」

音葉「いえ、そんな…………はふ」


ちひろ(……事務所では、常に音葉ちゃんがプロデューサーさんの傍にいるようになりました)




--------------------

別の日 午前
プロダクション2F・事務所


ちひろ「……」

P「それで今日は、○△スタジオでレコーディングの後――」

音葉「――では、その際にはPさんに……」

ちひろ(……おはようございます、千川ちひろです。今回は、事務所で例の二人を見てみようと思います)




P「この収録後は車で移動をするので、こちらのパーキングエリアで休憩をとりましょう。それから――」

音葉「――という流れになる、と……分かりました」

ちひろ(今は、Pさんと音葉ちゃんが今日のスケジュールの打ち合わせをしています)

ちひろ(お二人とも真面目なので、この時間にどうするべきかを事細かに確認しているようです。私のデスクからは、ちょうどお二人が丸見えですね)

ちひろ(それだけでしたら良いんですけど……えーと……)

P「――以上が、今日のスケジュールです。次に、各場所の詳細へ移りますが、何か質問などはありますか?」

音葉「……ここの時間帯に関して……少し……」

ちひろ(どうしてテーブルを挟まず、ひとつのソファで隣り合うように打ち合わせをしてるんですかね……?)




P「この時間は……レッスンまでの待機時間ですね。何か、気になることが?」

音葉「この時間なのですが……付き合って頂きたいことが……」

P「? 構いませんが……一体何を?」

音葉「このレッスン場の近くに……素敵な森があります。その森で貴方と……一緒に、森林浴をと」

P「森、ですか。あのレッスン場の近くに、そんな場所が……」

音葉「以前、水着で撮影を行った森のような……柔らかな森です。前々から、二人きりで森林浴をしたいと考えていて……」

P「なるほど……とても素敵ですね。森林浴は私も好きですので、ぜひとも……」

音葉「……本当ですか? 良かった、ふふ……」

P「では、そのお話は後ほど…………早めに、打ち合わせを終わらせてしまいましょうか。まずは、ここの――」

ちひろ(……今、さりげなく二人きりって言いませんでした? デート? 音葉ちゃん今、さらっとデートのお誘いしましたよね?)

ちひろ(……あ、よーく見たら音葉ちゃん、プロデューサーさんの手の上にちょこんと手を添えてる。なにあれ可愛いんですけど)




ちひろ(――で)

P「――これは、こうで――」

音葉「では、この時に――」

ちひろ(……依然、寄り添いモードで二人は打ち合わせをしているんですが)

P「――で、その際には……」

音葉「はい。…………はふ……」

ちひろ(何やら、音葉ちゃんが凄く嬉しそうな顔を……通り越して、ちょっと蕩けてるような……?)




音葉「……」ススス

P「……音葉さん? どうかされましたか?」

音葉「いえ、文字が見えづらかっただけで……。少し、体を貴方の方へ傾けても……?」

P「あ、っと……すみません、文字が小さかったかもしれませんね。資料を近づけて説明をしますので、音葉さんは楽な姿勢で聞いていて下さい」

音葉「……ありがとうございます。それでは……」ポフッ

ちひろ「えっ」

P「? ……? ……あ、あの、音葉さん?」

音葉「んっ……なんでしょう?」

P「……首を傾けて、苦しくないですか?」

音葉「……ええ、大丈夫です。この方が……Pさんの音を感じられますから」

ちひろ(音葉ちゃんがプロデューサーさんに寄り添って、彼の肩に頭を置き始めたんですけど……?)

ちひろ(端から見ると、恋人に身体を預けているようにしか……あの、なんですかあれ)




P「そう、ですか……音葉さんが仰るのでしたら、大丈夫そうですね。では説明を……ええと、ここからだったかな……」

ちひろ(プロデューサーさん、いくら音葉ちゃんだからって信頼しすぎでは……?)

音葉「……♪」スリ、スリ

ちひろ(あー、音葉ちゃん、まぁ凄い幸せそうにプロデューサーさんの肩に頬をすりすりしちゃって。これじゃ打ち合わせの話なんて……)

音葉「あ……この通路からこちらの通用口へ進む……ということで?」

P「はい、そうなります。当日にもう一度ご説明しますね」

ちひろ(……きちんと、聞いてましたね。真面目に不真面目……?)

P「で、音葉さんにはこちらのステージから――」

音葉「はい…………はふ……ふふ……♪」

ちひろ「…………まぁ、二人が良いのなら、いいの……かしら?」


ちひろ(……結局、打ち合わせが終わるまで、二人はずーっと寄り添っていました。他のアイドル達が来てもなのは、ちょっと……)

ちひろ(通りすがった千枝ちゃんが、なにやら凄く関心するかのように見てましたし……うむむ……)

ちひろ(それにしても音葉ちゃん、ときおり「はふ」って言ってるけど、どういう意味なのかしら……?)




---------------------

またまた別の日 昼下がり
プロダクション2F・事務所


ちひろ「……」

音葉「……」

ちひろ「……」

音葉「……はふ…………」

ちひろ「……」

音葉「…………」




ちひろ「……音葉ちゃん? 音葉ちゃーん?」

音葉「……あ……ちひろさん。何か、ご用ですか?」

ちひろ「ええと、ご用というよりも、何と言うか……音葉ちゃん、最近なにかあったのかしら?」

音葉「なにか、とは……?」

ちひろ「ここ最近、音葉ちゃんが事務所でひとりの時は、ぼーっとしてることが多いでしょ? 悩み事とか、あるのかなぁと……」




音葉「あ……ご心配をおかけして、すみません……」

ちひろ「わわ、音葉ちゃん頭上げて! これはその、ただのおせっかいみたいなものですからっ」

音葉「……ありがとうございます。悩み事は特には無く……今はただ、音を思い返していたんです」

ちひろ「……ほぇ? 音を、思い返す……?」

音葉「……以前、『私には音の流れが見える』というお話をしたのを、覚えていますか?」

ちひろ「ええ、音葉ちゃんがこの事務所のアイドルになった頃に。共感覚……音を視覚でも感じられる、だったかしら?」

音葉「はい、少しではありますが……故に、魅力的な音に関しては、記憶に鮮明に残ります。耳だけではなく……眼も、体も、音を覚えてくれているのでしょう」




ちひろ「ほー、なるほど……。音を思い出していたから、ぼーっとしているように見えたと」

音葉「そうなるかと……。すみません、お恥ずかしい姿を見せてしまい……」

ちひろ「いえいえ、音葉ちゃんに何も無くて逆に良かったくらいですよ。魅力的な音……何の音を思い返すのかしら?」

音葉「以前ですと……アイドルのみなさんが演奏されている、楽器の音色や……」

ちひろ「ほうほう、皆さん本当にお上手ですからね」

音葉「自然の音……木々のざわめき、小鳥の声といった透明な音などを思い返していました」

ちひろ「あー、そういうのは私も癒やされちゃいますねー」

音葉「最近では……ほとんど、Pさんの音を思い返しています」

ちひろ「……へ?」




音葉「……? 不明瞭な水色……どこか、音が乱れていましたか?」

ちひろ「え、えっと、楽器の音色や自然の音はおかしくないと思ったんだけれど……音葉ちゃんのプロデューサーさんの、音?」

音葉「はい。Pさんの体から生まれる音……声などが該当します」

ちひろ「声……それなら納得はまぁ…………あれ? でも音葉ちゃん、プロデューサーさんの声ならずーっと前から聞いてますよね?」

音葉「そうなのですが……その……」

ちひろ「その……?」

音葉「以前から少しずつ……少しずつ、Pさんの声の耳当たりの良さが増していて……」

ちひろ「耳当たり」

音葉「私の耳を……細微で心地よく、グラツィオーソに響く声が、優しくくすぐっていて……」

ちひろ「グラツィオーソに響く声」




音葉「初めは……柔らかな声をされていると思うだけでした。素敵な音の声だ、と安らぐくらいで……」

ちひろ「あ、それは分かるかも……プロデューサーさん、優しい声されてますよね」

音葉「はい。ですが……あの人と共に過ごしていく内に、あの素敵な声が耳から離れなくなって……」

ちひろ(……およ)

音葉「他の方とお話ししている時も……Pさんの声が耳に触れると、つい意識がそちらへ向いてしまったり……」

ちひろ(これは……)

音葉「その……最近では、あの人の声を聞けただけで、心臓の鼓動がアレグロになることも……」

ちひろ(まさしく……)

音葉「今も……Pさんの声が聴きたくて。耳が寂しくて……音を思い返していました」

ちひろ(恋する女の子だ……!)




ちひろ「あ、もしかして、音葉ちゃんがプロデューサーさんとお話ししてるときに『はふ』って言ってるのは……」

音葉「っ……そ、それはおそらく、Pさんの音が心地よすぎて……安堵してしまっているのだと……」

ちひろ(道理で心地よさそうだなぁと思ったら……)

音葉「最近は……Pさんに淡い紅色の音が、見え隠れしています。もしかしたら……甘えている私に対して、照れてくださっているのかもしれません」

ちひろ(あー、やっぱり目一杯甘えてたんですね……音葉ちゃん、怪盗のお仕事とかを経て強かになったのね……)




ちひろ「……って、あら? 音葉ちゃんでも、プロデューサーさんの音は分からないの?」

音葉「はい、おそらくPさんが意識的に抑えているのかと……凄い才能だと思います」

ちひろ「プロデューサーさん、変なとこ器用ですね……」

音葉「音がハッキリと分からないなんて、生まれて初めてで……もっと、もっとあの人の音を聴きたくなります」

音葉「ですが、Pさんの音は魅力的過ぎて……耳だけでなく体も嬉しくて……もう、大変で、いつも思い返しては……その……」

ちひろ「って、あわわ、音葉ちゃん耳の先まで真っ赤に……! ご、ごめんなさい、これ以上は話さなくて大丈夫よ!?」

音葉「……はふっ……」




ちひろ「と、ともかく、音葉ちゃんに悩みとか無くて安心しました。色々聞いちゃって、ごめんなさいね?」

音葉「いえ、こちらこそ……お気遣いありがとうございます。ちひろさんの声からも、優しさが感じられました……」

ちひろ「あ、あらら……音葉ちゃんには筒抜けなのね?」

音葉「……ふふ。本来、音は正直ですから」

ちひろ「て、照れちゃうわね……ンンッ、何かあったら、私や事務所のみんなに気兼ねなく言ってくださいね。皆さんも絶対、力になってくれますから」

音葉「はい。……あ……では、ひとつお願いが……」

ちひろ「おお、早速ですね。なんでしょう?」

音葉「Pさんの音を思い出している件は、内密に……。私は……」

ちひろ「私は……?」

音葉「あの人の側に居られるだけで……幸せなので……」

ちひろ(愛おしすぎませんかねこの子……)




--------------------

そのまた別の日
プロダクション3F・資料室


音葉「ちひろさん、この2つのファイルはどの棚に……?」

ちひろ「あっ、それはあっちです! ファイルには番号が振ってあるから、順番にお願いしますねー」サササッ

音葉「はい。……ええと、これがここで……」ストン ストッ

ちひろ「音葉ちゃん、ごめんなさい……こんなファイル整理なんて雑務をさせてしまって……」ササッ サッ

音葉「いえ……私も、レッスンまで時間を余らせていたので……」

ちひろ「うう、ありがとうございます……。よし、次で最後……音葉ちゃん、次はこのファイルをお願いしますっ!」サササッ

音葉「分かりました。こちらは……?」

ちひろ「それが、この部屋の一番奥で割と遠くて……このファイルと色が同じだから、どの棚かは直ぐに分かると思います」ササッ シュバッ

音葉「なるほど……了解しました。では、行ってきます……」テコテコ…

ちひろ「はい、お願いします。あっ、急がなくて大丈夫ですからねーっ」

ちひろ(……というわけで現在、大量に積んでしまっていた資料を、音葉ちゃんに運んで貰っています)

ちひろ(中身は見ないようファイルの収納だけを頼んでいますが……アウトですよねこれ……)

ちひろ(音葉ちゃんが居てくれて本当に助かりました……今後はこういうことは無いようにしないとっ)グッ




ガチャッ
キィッ…

P「……おや? ちひろさん、ここで作業をされていたんですね」

ちひろ「あれっ、プロデューサーさん? 外回りから戻っていらしてたんですか?」

P「そうですね、ほんのつい先程。それで、今日の資料を早めにまとめてしまおうと思って……」

ちひろ(相変わらず出来る人ですね……見習わないと……)

ちひろ(あ、音葉ちゃんが反応していないのは、今一番遠くで作業してくれているからですかね……うう、申し訳ない……)

ちひろ「今日の資料というのは……やはり、音葉ちゃんの?」

P「はい、以前より企画していた、音葉さんのシングルCDの件です。なので、早く資料をまとめて先方へ伝えなければと」

ちひろ「あー、なるほど…………本当にプロデューサーさんは、音葉ちゃんに全力ですね」

P「それは……もちろんですよ。音葉さんは私に応えてくださっています。だから音葉さんには、もっと音楽の仕事を楽しんで貰いたくて……」

ちひろ(その結果、音葉ちゃんからの好感度がストップ高になったんだなぁと……)




ちひろ「……ふふ」

P「……どうかされましたか?」

ちひろ「いえ、プロデューサーさんと音葉ちゃん、本当に良い関係を築けていらっしゃるなぁって」

P「そう、ですか? そう見えているのでしたら、嬉しいです」

ちひろ「いやいや、あんなに事務所でぴったりくっついてるのを見て、仲悪いとは流石に思えないですよ?」

P「ぴったりと……やはり、他の方からはそう見えているんですね」

ちひろ「……そう、見えている?」

P「ああいえ、何とお伝えすれば良いか……最近の音葉さんの行動に関してなのですが……私は、信頼の表れなのだと思っていまして」

ちひろ「あ……あれ? 音葉ちゃんのアクション、気付いていないわけではなかったんですね?」

ちひろ(てっきり、すごい朴念仁さんなのかと……)

P「あ……気付いたのは、ほんの最近なんです。そういえばボディランゲージが多くなったと感じ、4名ほど他のPさんに伺って……」

ちひろ(あ、そこそこ朴念仁さんでしたね……?)




ちひろ「って、他の方にお聞きしてたんですか!? ……ええと、他のPさんはなんと?」

P「アーニャPさんは、『こっちは毎回、ドストレートに気持ちを伝えてくるので破壊力が凄まじいんです……この前はロシア語で……ゲフンゲフン』と。アーニャさんは、正直な方なんですね」

ちひろ「それもう告はk……無粋ですね。他には?」

P「奏Pさんは、『不意打ちよりはマシだよ! ときめいて心臓もたないよ!』と……速水さんは、案外いたずらっ子なのだなと」

ちひろ「あー、それイタズラというか、彼女なりの愛じょ……ああいえ、まぁ……」

P「茄子Pさんは、『茄子さんは「幸運のお裾分けでーす♪」と頻繁に正面からハグをするので、それくらいは普通かも……いや、普通ってなんだ……?』と。お二人は、とても仲が良いのだなと感じます」

ちひろ「茄子Pさん、麻痺されてる……! というか茄子ちゃん、いつも本当に攻め攻めですね……」

P「のあPさんは、『のあさんは視線と行動で沢山示してくださるんですが……実はその、今晩……ああいえなんでも……』と、照れていらっしゃいました。どうされたんでしょうか……」

ちひろ「それは……こ、こほん。というか、なぜそんなPチョイスを……一癖二癖ありすぎでは……」

P「偶然現場が同じ事が多く、よくお話をしているんです。音葉さんは各アイドルの皆さんとも仲が良く、時折連絡も取り合っているそうですよ」

ちひろ(むしろ他のPさんのアイドル事情がどうなってるか気になるんですけど……)




-----

音葉(…………)

ストン スッ  …ストッ

音葉(これでファイルは全部……早めにできました。では、ちひろさんにお伝えを……)

ちひろ『――――』

音葉(……? 遠くから、ちひろさんの声音が微かに聴こえて……どなたか――)

P『――と、照れていらっしゃいました。どうされたんでしょうか……』

音葉「…………あっ……♪」パァッ

-----




P「というわけで、皆さんから助言を頂き、音葉さんは私に心を許してくださっているのかと……」

ちひろ(あ、そういう着地を……まぁ、間違ってはない……ような?)

ちひろ「そうだとしても、とても心を開いてくれていると思いますよ? 以前とは大違いで……」

P「ええ、以前があったからこそ、なのだと思います」

ちひろ「……それは、どういう?」

P「ちひろさんもご存じだとは思いますが……音葉さんが以前居た事務所は、端的に言えば音楽を蔑ろにしていました」

P「音葉さんは、時期は短くともその世界を経験していて……音楽に携わる人を疑うようになるのも、無理はありません」

ちひろ「……」

P「そんな場所から、ここへ来られたんです。皆さん優しくて、音楽を愛していて……私も大好きな事務所です」

ちひろ「……ええ、私もですよ」

P「はい。なので音葉さんは、心を許した姿を、この事務所で初めに出会った私へ表してくださっているのかと……」

ちひろ(いやいやいや! ここへ連れてきてくれて、音楽の仕事の楽しさを伝えてくれた貴方だからこそだと思うんですけど……思うんですけどっ……!)




P「音葉さんにとって、おそらく私は止まり木のようなものなのだと思います」

P「いつかトップの道へと羽ばたいていく……そのスタート地点や、休憩場所になれれば幸いです」

ちひろ(良い人過ぎませんかねこの人……?)

ちひろ「……プロデューサーさんは、なんとも思われていないんですか?」

P「なんとも、とは?」

ちひろ「その……音葉ちゃんの行動に対して、です。あれほど近くに居るのに、プロデューサーさんとても冷静なので……」

P「あっ……! ええと、そ、それはですね……」

ちひろ(……あれ?)

P「なんともだなんて、まさか、そんな……」

ちひろ(……おろろ?)

ちひろ「あ、えっと……思われている、と?」

P「……は、はい。あれほど素敵で、綺麗な方が側にいらっしゃるんです。……緊張しないはずがありません」

P「むしろ、勘違いをしてしまいそうにもなりまして……」

ちひろ(勘違い……あ、あれ……?)




ちひろ「も、もしかしてプロデューサーさん、音葉ちゃんのことを……?」

P「あ…………お、お恥ずかしながら。ですが、現実は甘くありませんから……」

ちひろ(えっ、あっ……これって……これって……)

P「音葉さんが自身の気持ちを表現するほどに、心を開いてくださっている。以前のことを思うと、これほど嬉しいことはありません」

P「ただ、悟られぬように必至に隠しているつもりですが……好いている方と居るのは、どうも照れてしまいます……」

ちひろ(……両思いだーーーーー!)




ちひろ「ふ、普段のプロデューサーさんからは全く感じ取れなかったんですが……一体、いつから……?」

P「……それが、私にもわからなくて。気が付いたら、音葉さんの音を耳が追っていて……」

P「他の方と会話をしている時にも、彼女のハミングが聞こえると、つい意識がそちらへ向いてしまうように……」

ちひろ(ちょっと前に同じような話を聞きましたね……)

P「……あっ。つい零してしまいましたが……このことは、音葉さんにはどうかご内密に……」

P「音葉さんと共に居られる。私は……それだけで幸せですから」

ちひろ(ちょっと前に同じような話を聞きましたね……!?)




ちひろ「……そう、ですね。ええ、そうですよね……」

P「……? 何か、気になることでも?」

ちひろ「あ、いえ。なんでもないですよ? ええ……」

ちひろ(お、音葉ちゃんのことお伝えしたい……んですけど、私から言うのも違う気がっ……! ……って、音葉ちゃん?)

ちひろ「あっ、ああっ、そういえば……!」

P「? ちひろさん、何か――」


音葉「…………はふんっ…………!」


ちひろ・P「「!?」」




ちひろ「い、今の可愛らしい鳴き声は……音葉ちゃん、戻って来てたの!?」

P「音葉さん!? え、い、いらっしゃってるんですか!?」

ちひろ「す、すみません! 実は先程まで音葉ちゃんにお手伝いをっ……お、音葉ちゃん、今どこに……!?」

音葉「…………は、はいぃ……」ヨロロッ

ちひろ「!? 音葉ちゃん、そんな今にも倒れそうな……だ、大丈夫ですか!?」

音葉「だ、大丈夫です…………ただ、ただその……心が、満ちあふれすぎていて……どうしようかと……!」プルプル

ちひろ(生まれたての子鹿みたいに震えてて、見た目すっごく可愛いことになってる……)

P「と、ということは、今の私の話を…………ああ…………」プシュー…

ちひろ(あ、プロデューサーさん、茹で蛸のように真っ赤に……いや、そりゃそうなりますよねすみません……!)




ちひろ「え、ええと音葉ちゃん、私たちのお話は、どこから?」

音葉「んっ……Pさんが、以前のお話を、しているところから……はふっ……ぁ、お、思い出すと、それだけで……心も体も……」モジモジ

ちひろ「ああ……つまり、そこから最後の幸せの下りまで……」

音葉「っ!! あっ、ま、待ってください……! その場面の音は……直ぐに思い出すと、素敵な音色のシンフォニーが、っ……ぁんっ……!」カクン

ちひろ(膝から崩れ落ちたー!?)




P「――ハッ!? お、音葉さん、大丈夫ですかっ!」

ちひろ(あ、プロデューサーさん直ぐに復活を……! あっ でも、今は……)

音葉「ぁ……!? だ、ダメです、今、Pさんの生音を聴いてしまうとっ……心も、体も溶けっ……んっ……!」ビクンッ

P「お、音葉さん? 音葉さんっ!?」

ちひろ(ああ、やっぱりプロデューサーさんの音が幸せ過ぎて……これって音の供給過多、ってことなのかしら……?)

ちひろ「……って、そんなこと考えてる場合じゃなかった! ご、ごめんなさい、音葉ちゃんしっかりー!?」

音葉「も、もう……素敵すぎてしまっ……ぁ……あっ……はふゅ……」




--------------------

数日後・午前
プロダクション2F・事務所


ちひろ「…………」カタカタカタカタ

音葉「…………」

ちひろ「…………」カタカタタッ

音葉「…………♪」

ちひろ(……どうも、千川ちひろです。絶賛、今日もお仕事頑張り中です)

ちひろ(事務所には今、音葉ちゃんのプロデューサーさんと音葉ちゃん、そして私が居ます。他の方は、丁度おりません)

P「あの……ええと、音葉さん……?」

音葉「はい、なにか……?」





ちひろ(プロデューサーさんと音葉ちゃんは、今日のお仕事のために朝から事務所に来ていましたが……)

ちひろ(先方の都合で予定が後押しになり、午後過ぎからスタートになってしまったそうです)

P「いえ、何かというか……この状況は、どういうことなのかなと、疑問に思っていまして……」

音葉「……? この状況と言うのは――」

ちひろ(レッスン室も丁度別件で使われており……そんなわけでお二人は、時間を持て余してソファに座っている、ということなのですが……)

ちひろ(あの……その……)

音葉「私が、Pさんの片腕を抱きしめていること……?」

ちひろ(音葉ちゃんが、なんかもうビックリするほど積極的になってる……!)




ちひろ(音葉ちゃん、プロデューサーさんと両思いということが本当に嬉しかったようで……)

P「は、はい、そうですね。今は時間を持て余していて、特にすることも無いのですが……」

音葉「ええ、時間が出来たから……好きなことを、しているの」

ちひろ(あの出来事から、もっともっとプロデューサーさんに素直な気持ちを伝えようと決めたそうです)

P「……これが、ですか?」

音葉「ええ、これが……私の、したいこと。あ……お邪魔、でした……?」

P「ああいえ、音葉さんが、その、好きなことをされているのでしたら問題はないです」

ちひろ(それが今の結果になっているんですけど……)

音葉「では……このままでも……?」

P「はい、ええと……音葉さんが満足してくださっているのでしたら、私も嬉しいです。そうですね、これくらいの事でしたら、いくらでも」

音葉「……! ありがとうございます、それでは……こうしていますね……♪」スリスリ

ちひろ(ほんっと音葉ちゃん、攻めっ攻めですね……! あと口調もほんの少し砕けたのね……!)




音葉「……あっ、これくらいのということは…………他に、お願いをしても……?」

ちひろ(……よよ?)

P「? ええ、音葉さんが幸せになってくださるのでしたら……」

音葉「では……」モゾモゾ

音葉「……こうして、貴方と手を……指と指を絡めても……?」キュッ

P「わっ……え、ええ、音葉さんが嫌でなければ、いつでも……」

音葉「……! では……今のような、腕だけでなく……」ススス

P「っ!?」

音葉「あ、貴方の体へ……ハグをしても……?」

P「!!!? は、はい……公衆の面前でなければ、だ、大丈夫かと……っ」

音葉「……!」パァァァ

ちひろ(プロデューサーさん照れまくってて大丈夫じゃなさそうですよ!?)

音葉「では、遠慮無く……………………はふ……」モゾモゾ

ちひろ(あー……いや、音葉ちゃん頑張り過ぎてません? もどかしさ吹っ飛んだんですけど……)

ちひろ(それに、これは流石に…………そうね、それなら…………よしっ)ガタッ トテテテッ




ちひろ「……お、お二人とも、さすがにそれは事務所の子たちに見せられないですよっ! ……既に手遅れな気もしますけど!」

P「あっ、ちひろさんすみません……! 音葉さんですので、大丈夫かと思ったのですが……」

ちひろ「プロデューサーさん、音葉ちゃんが絡むと判断甘々ですね!?」

音葉「ちひろさん、ごめんなさい……。Pさんの承諾が……あまりにも嬉しくて、つい……」

ちひろ(そう言いつつも、Pさんの手を離さないのは……無意識なんでしょうね……)

ちひろ「コホン。……私からすると、お二人の事情を知ってましたし、心が通じ合ったのを見られてとても嬉しいです」

ちひろ「ですが、ここは他の方も往来する事務所です。久しぶりにお二人に時間が出来たのは良いことですが、他の子たちに影響を与えてしまう可能性もあります」

ちひろ(特に積極的な子には、凄い影響与えちゃいそうですし……千枝ちゃんとか……!)

P「……確かに、そうですね。考えが至らず、申し訳ありません……」

音葉「……ごめんなさい」

ちひろ(あっ、思った以上に凹まれてる……でもこれは言わないとですし、それに……)

ちひろ(私がしたいのは、お二人を止めることではないですからっ)




ちひろ「うんうん、分かって頂けて何よりです。元より、お二人が真面目なのはとーっても分かってますので……」トコトコ

P「?」

ちひろ「……音葉ちゃん、こちらをどうぞ♪」チャリッ

音葉「? これは……鍵、ですか?」

P「見たことのない鍵ですね……。ちひろさん、これはどちらの……?」

ちひろ「それは、この事務所の仮眠室の鍵になります。個室の鍵の管轄は私なので、こうして手元にいくつかあるわけです!」ドヤァ

P「仮眠室……。ああ、お話には聞いていましたが、私は利用したことがありませんでしたね」

音葉「私も、部屋の存在自体は知っていますが……。なんでも、大部屋の仮眠室の他に、個室もたくさんあると……」

ちひろ「プロデューサーさんも音葉ちゃんも、利用しようがないほどスケジューリングお上手ですからね……」

ちひろ「特にプロデューサーさんのは、私も見習いたいくらいで……ってそうでなくてっ!」

P「は、はいっ」




ちひろ「その、お二人とも、お仕事までまだ時間があるみたいなので……」

音葉・P「「ので……?」」


ちひろ「……仮眠室で、今みたいに好きなだけいちゃいちゃしちゃっててください!」グッ


P「…………!? ちひろさん、なにを仰ってるんですか!?」

音葉「……?」

音葉「……好きなだけ……?」

音葉「……………………っ!」チーン!

音葉「なるほど……わ、分かりました、頑張ります……!」グッ

P「音葉さん!?」

ちひろ(お、音葉ちゃん、そこまで真っ赤にならなくても……!)




ちひろ「仮眠室は3Fの西側にあります。お時間になってもこちらに来なかった場合は、部屋に電話があるのでコールしますから!」

ちひろ「あ、広さに関してはご安心を。ビジネスホテルの1室くらいのハイクオリティになってますのでっ!」ドヤァ

P「あ、あの、ちひろさん。私たちは別に、その、いちゃいちゃするために待機していたわけでは……」

音葉「Pさん、ダメ、ですか……? ちひろさんの声色は、淡く優しい橙色……本心が伝わってきます……」

P「音葉さん……ですが、本来の用途と違う目的で、いたずらに施設を利用するのは……」

ちひろ(う、言った身ですけど確かにそうなんですよね……やっぱりプロデューサーさん、芯は真面目……)

音葉「でも……ここではダメです。それなら……ちひろさんのご厚意に甘えさせて貰うのが、一番かと……私も、とても幸せになれますから……」




P「……そう、ですか?」

音葉「はい。……それでも、ダメ……?」

P「……」

音葉「……」ジー

P「…………」

音葉「……」ジー

P「………………」

音葉「……」ジー

P「………………音葉さんが幸せになってくださるのでしたら……いい、のかな……?」

音葉「……!」パァァァ

ちひろ(プロデューサーさん、音葉ちゃんが絡むと本当に判断甘々ですね!?)




ちひろ「そ、それでは……」

P「はい。僭越ながら……ご厚意に、甘えさせて頂こうかと」

ちひろ「ああ、それは良かった……では、内容は先ほどお伝えしたとおりですので」

音葉「ちひろさん、場所を提供してくださり……ありがとうございます」ペコリ

ちひろ「いえいえっ、私もお二人が幸せになってくださればと……」

P「……何から何まで、ありがとうございます。では私は、先に午後の準備をしたほうが良さそうですね」

音葉「それでは私は……先に仮眠室でお待ちしています。部屋番号は、こちらですので……」チャリ




P「……分かりました、よろしくお願いします。ではちひろさん、お先に失礼いたしますね」

ちひろ「はい、お疲れ様です♪ 折角の機会ですし、ゆっくりしていってくださいね」

P「……本当に、ありがとうございます。それでは――」ペコリ ステテテテ…

ちひろ「……あら? プロデューサーさん、珍しく早歩きで廊下を……」

音葉「言葉に少し……焦りの色が伺えました。おそらくですが、私をなるべく待たせないようにと……」

ちひろ「ああなるほど……ふふ、音葉ちゃん、愛されてますね?」




音葉「もしそうならば……とても、とても嬉しいです。Pさんのああいった走る音は、とても珍しいので……♪」

ちひろ(あー、いつものプロデューサーさんの歩く音を知っているから、そういうのも分かるのね……)

ちひろ(音葉ちゃんもそうですけど、プロデューサーさんも同じように愛されてますねぇ……うんうん)

音葉「はふ。んんっ……それではちひろさん。私も、お部屋の方へ向かおうかと……」

ちひろ「あ、そうですね、了解です。じゃあ、プロデューサーさんと仲良くね?」

音葉「はい、ありがとうございます。そう……これから、お仕事の時間まで――」




音葉「……『ご休憩』を、頑張らせていただこうかと……思います……♪」

ちひろ「……うん? ご休………………って、んん!?」




音葉「……? 曇った音色に、驚きの黄色……ちひろさん、どうかされましたか?」

ちひろ「いや、ええと……言葉選びの問題かしら? その、音葉ちゃんからすっごいワードが聞こえた気がして」

音葉「私が何か、言い間違えを……? ……思い返しても、言葉にも音にも、間違いは無いかと……」

ちひろ「あー、その、私が疑問符を出した、直前のワードのことでね? ええと、あの、ご、ご休憩って……?」

音葉「あ……は、はい。ご休憩は……ご、ご休憩、ですが……」

ちひろ「ほ、頬をさらに紅く……えっと、ただ休憩するだけじゃない、やつですよね……?」

音葉「っ……え、ええ。……ですが、なぜそこまで驚きと疑問を……?」

ちひろ「いや、驚きますよ!? だって急にその、音葉ちゃんからそんなワード飛び出るとは思わないですからね!?」

音葉「? で、ですが、きっかけをくださったのは……他でもないちひろさんでは……?」

ちひろ「私がきっかけって……も、もう音葉ちゃんっ。まるで私が、仮眠室をそういう場所のように扱ってるみたいじゃないですかっ」




音葉「……え……?」

ちひろ「……『え』?」

音葉「……あっ、もしかして……そ、そういうことでは……」

音葉「……なかったの、でしょうか……?」オロオロ

ちひろ「……へ? ちょ、あの……ぅええっ!?」

音葉「……!」オロオロ




ちひろ「……あ、え、ええと? お、音葉ちゃんは、まさか私の『いちゃいちゃ』って言葉を……」

音葉「……はい」

ちひろ「……そ、その……」

音葉「……っ」

ちひろ「……そう、捉えちゃってたの?」

音葉「……っ!」




音葉「……あの……」

ちひろ「……」

音葉「……その……」プルプル

ちひろ「…………」

音葉「……は……っ」カァァァァァァァァァ

ちひろ「……お、音葉ちゃ」


音葉「……は、はふんっ……!」トテテテテテテテテ――!


ちひろ「え、ウソっ!? お、音葉ちゃっ、音葉ちゃーーーーーーーーーん!?」

ちひろ(顔真っ赤にして、駆けてっちゃったんですけどーーーーー!?)


……カツンッ




ちひろ(聞いた上で、否定しないで、駆けていっちゃったってことは……そう、いうことよね……?)

ちひろ(え、えぇ……そんな、そんなとんでもな素振りはどこにも……)

ちひろ「あっ」


音葉『……好きなだけ……?』

音葉『……………………っ!』チーン!

音葉『なるほど……わ、分かりました、頑張ります……!』グッ


ちひろ(…………すごくしてたーーーーー!!!)

ちひろ(って完全に私のミスリードじゃないですかぁぁぁぁぁーーーーー!!!?)


コツ、コツ…




ちひろ(あ、ああ、なんてこと……私、最近のスーパー攻め攻め音葉ちゃんに、とんでもない後押しをしちゃったのね……!?)

ちひろ(ど、どどどどうしましょ、このままだとあのカップル、本当に営んじゃいますよ!? プロデューサーさん押しに弱そうですしぃ!)

ちひろ(っていうか100%そうなりますって! さっきのプロデューサーさん、音葉ちゃん優先度数やばすぎましたもん! 判断誤りまくりますって!)

ちひろ「って、そんなわたわたちひちひしてる場合じゃないっ! せめてプロデューサーさんに、抑えるように伝えな――」


奏「――ねぇ、ちひろさん。今の話って、本当かしら?」カツンッ


ちひろ「ぴゃひっ!? か、奏ちゃん!?」




奏「……驚かしてごめんなさい。歩いていたら、ちょうどちひろさんたちの会話を聞いてしまったの」

ちひろ「あ、あー、そうだったのね? すみません、こっちも変な話を聞かしちゃって…………ところで、どこから――」

奏「『……既に手遅れな気もしますけど!』からよ?」

ちひろ「一部始終!!!」

奏「というわけで……詳しい話は、向こうのソファで聞かせて貰えないかしら?」

ちひろ「えっ!? いや、その前に私、音葉ちゃんのプロデューサーさんに連絡をね? その、緊急なヤツをね!?」

奏「それは、私たちが話を聞いた後――そうね、音葉の言う『休憩』が終わった後でもいいと思うわ」

ちひろ「それ、手遅れって言うんですよ!? って、私……たち?」




アーニャ「ダー♪ アーニャも、気になります」ニュッ


ちひろ(……最近聞いた、すごい積極的な子だー!?)


茄子「はい♪ 私たちもー」ニュッ

のあ「……気になっているわ」スゥッ


ちひろ(……オールスターズだー!!!!?)




アーニャ「ンー、アーニャも、プロデューサーとゆっくり過ごしたいです。アー……タテマエ、必要ですね?」

茄子「私も、気になってしまって……茄子Pさんと一緒に、それはもう、好きなことできるんですよね? ふふっ、幸せの予感がします♪」

のあ「……自宅への移動時間を省略することで、多く時間を確保できる。密接に、より長く行えるのは……私にとって、何よりの利点となるわ」

ちひろ「いやあの、聞いた話の通りですけど、せめて隠して!? みんなもうちょっと隠して欲しいかなぁって!?」

奏「ほら、ちひろさん。まずはお話しましょう? 立ったままじゃ疲れてしまうから、ね?」グイ




ちひろ「あっ、あの、皆さん落ち着いて!? 話せばきっと分か――!」ヒョイッ

ちひろ「え、わ、ひゃんっ!? の、のあさん、私を軽々とお姫様抱っことかすごすぎません!? え、軽い? そ、そうですか? えへへ……」スルスル

ちひろ「って、茄子ちゃんにアーニャちゃん!? 靴を脱がさな……あ、これ容易に逃げられなくさせられてる!?」ゴロゴロ…

ちひろ「奏ちゃんは、ホワイトボードとパーテーション動かして何を……ハッ、敷居!? これ、周りから隔絶させようとしてるわよね!?」

ちひろ「というか何ですかこの連携!? みんなちょっと本気すぎませんか、って、ああ、どんどん出口から遠ざかってるぅ!?」


ちひろ「ま、待ってまって! このままじゃ、音葉ちゃんが本当にすごいことしちゃうのっ!」



ちひろ「あ、ああ、まって、待ってっ…………お、降ろしてくださいぃぃぃぃ――っ!!!!!!?」



-----



-----



「――音葉さん、お待たせしてすみません」

「……お気遣いありがとうございます。では、中へ失礼しますね」

「……おや、どうかされましたか? 何やら少し顔が紅く……」

「ふむ、季節柄、体調を崩しやすい季節です。……ちょうど良かった、この部屋なら周りを気にせず、ゆっくり療養できそうですね」

「私は温かい飲み物をご用意しますので、音葉さんはそのままベッドで――」

「――って、わわ、音葉さん? なぜ急にこちらまで……?」

「鍵まで閉めて……っっ!? は、んむっ…………!?」

グイッ ボフーン

「っはっ……えっ、あの!? 音葉さん急に、き、キスだなんて、一体なにを!? いえ、背がベッドだったので痛みはありませんが……」

「ご、ご休憩にいちゃいちゃ? 私とユニゾン……? ……っ!? こ、ここでですか!? というか、あのお話はそういう意味だったのですか!?」

「いえ、あの、確かに私は、音葉さんを愛しています。ですが、ですがっ……さすがに事務所で事に及ぶのは、違うかとっ……!」

ッ! ハ…ハフンッ…!

「音葉さん!? 急に崩れ落ちてどうされ……へっ? 私の音色が良すぎた? そ、それは、どういう……?」

「『もう我慢が効きません』って、お、音葉さん!? だ、ダメです、そんな急に脱がれてはっ!?」

「『慌てた声もまた、私の心をクレッシェンドに』、って、いや、私は一体どうすれば……!?」

「わ、わわっ!? う、馬乗りになられたら身動きがっ! 音葉さん、お気を確かに、確かにっ――!」

「………………え? 幸せになれる? …………それは、音葉さんがですか?」

「もう既に幸せですが、もっと幸せになれる、と…………」

「……音葉さんが、今よりも幸せに……なれる……」

「…………」

「………………」

「……………………」

「…………………………それでしたら……いいの…………かな…………?」

「……あっ!?」

「お、音葉さん、私の顔を抑えて何を、あ、顔が近っ、まさかまたキs、ん、んむっ――――!!!!!?」








ん…………はふ…………

……あ………………はふっ…………♪








お わ る





音葉さんはムッツリで音フェチだろうなぁと思ったので、つい。

音葉さんの台詞は、本家とデレステの言葉遣いから、色々鳴き声とか加えさせて頂きました。
こう、神秘的な人の独特の鳴き声みたいなのって可愛いと思います。

オオルリは、日本三鳴鳥と言われるほど鳴き声が美しく、見た目も美しいと称される鳥です。
音葉さんは声も姿も美しいイメージなので、音葉さんの見た目と作中の例えに併せて「金のオオルリ」としました。
瑠璃なのに金なのはお気になさらず……
3年ぶりにこちらへ投稿したので、不備など有りましたら申し訳なく。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
また投稿する際は、よろしくお願いします。


蛇足になりますが、過去に以下のお話とかを書いてたりしました。トリップも同じです。

モバP「クールな銀の子猫と」
モバP「クールな銀のシャム猫と」
モバP「ネガティブ少女と歩む日々」
などなど

もしも読んだことがあったりされていたら嬉しいです。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom