【ハッピーシュガーライフ】メリーバッドエンド回避考(26)

アニメの終わり方があんまり気に食わなかったのでどうにか回避できないのか考えてみます
画家のおにいさんがオリキャラ化しているのでご注意ください

――どうしたの?

「え? なんでもないよ」

――どうして中にはいらないの? 濡れちゃうよ。

「どうしてって……だって帰りたくないんだもの」

――ふうん。

「……」

――うちに来る?

「……いいの? ありがとう」

………………

「おじゃましまーす」

「へえ~、ここがおにいさんの部屋……きれいにしてるんだね」

――シャワー浴びる? 服も乾かさないと。

「え? いいの? じゃあお言葉に甘えるね」

………………

「おにいさん、シャワーありがとう。おかげでさっぱりしたよ。やっぱりシャツ大きいね」

「おにいさんこの部屋に一人で住んでるの? ……ふ~ん。いいね、そういうの」

「ねえ。お邪魔させてもらってるんだしお礼するよ」

「なにしてほしい?」

――そうだな……それじゃひとつ、お願いを聞いてもらおうかな。

――ついて来て。

………………

「ここ? 中にはいっていいの?」

――うん。君には絵のモデルになってほしいんだ。

「え? 絵のモデル?」

――僕は画家なんだ。いいかな?

「それはいいけど……じゃあ、ここがアトリエなんだ。さっぱりしてるね」

「私、全部脱がなくていいの?」

――うん。そのままで。

「そう……ん? これ?」

――それに座って。楽にしてくれていいから。

「ポーズとかわかんないや」

――ふつうにしていていいよ。

「ふつうでって言われてもな……とりあえずじっとしてるね」

………………

「ねえ? ほんとうにエッチなことしなくていいの?」

――うん。

「ふうん……おにいさんやっぱり変わってるね」

「私に興味ない? それとも女の人に興味ない?」

――僕はあんまりひとに興味がないだけなの。だからそういうこともしたくない。

「そっか。でもそれがふつうなのかな? よくわかんないや」

――どうかな。もしかしたらふつうじゃないのかも。

「別にいいと思うよ。人それぞれなんだから」

――いくつか質問してもいいかな。少し、君のことが知りたくなった。

「え? いいよ、なんでも聞いて」

――ありがとう。ちょっとタバコ、失礼するね。

………………

「趣味? 何かなぁ……映画とか買い物とか……あ、お茶するのも好き。カフェでずっとしゃべってたり」

――いいね。楽しそうだ。男の子と行くの?

「う~ん……男の子はすぐホテルに行きたがるから、女の子の方が気楽かな」

「甘いもの食べておはなししてれば、あっという間に時間経つし」

――夢とかはある?

「夢? そうだなぁ……夢……あるようなないような……」

――タレントとかどう? 君、とってもかわいいし。

「ふふ、タレントなんて無理だよ。すごいよね、だれかのために笑ったりしゃべったり」

――そうかなあ。いけると思うんだけどな。

「うふふ、無理無理」

………………

「ねえ、おにいさんは毎日絵ばっかり描いてるの?」

――そうだね。といっても、レプリカばかりだけど。

「へえ~、レプリカ? そういうのが仕事になるんだ。すごいね」

――そうでもないよ。さっきは画家っていったけど、贋作ばかり作ってるならそんなこと、いうべきじゃないんだろうね。

「そんなことないよ。贋作でも、見る人が本物だと思えるくらいならやっぱりすごいんだよ」

――そうなのかな……

………………

「今日は終わり? じゃあ帰るね」

「もしかして怒ってる?」

――怒ってないよ。

「そう、だったらいいんだけど。また来るね」

………………

「んん~~っ……はぁ~……座ってるだけでいいと思ったんだけど、モデルって結構大変なんだね」

――疲れた? 少し休む?

「ううん大丈夫だよ。おにいさん初めてなんだっけ? 人描くの」

――うん。

「ふうん……ねえ、どうして私を描く気になったの?」

――どうしてか……どうしてだろうね……うーん……

「わからないんだ。ふうん……まあ、私もわからないことたくさんあるけど」

………………

――モデルを引き受けてくれたお礼をしてなかったね。これでいい?

「こういうのはいらない」

――うん?

「おにいさんは私を部屋に入れてくれた。私はお礼にモデルをする。そうじゃないんだったら」

「もうここには来ない」

――……

………………

「ねえ、愛がどういうものか知ってる?」

――愛? 愛、愛……愛ね……

「ん? そう……わからないか。おにいさん、一人ぼっちだもんね」

――ひどいなあ……君は愛が知りたいの?

「え? 知りたいよ。愛がどういうものか知りたい」

――どうして知りたいの?

「だってわからないんだもん。愛してるってささやかれても、肌を合わせても、なぁんにも感じないの。いつも何か欠けていて満たされない」

「未完成なの。だから知りたい。愛を知って満たされたいの」

――そう。いつか、君にとっての愛が見つけられるといいね。

「応援してくれるんだ。ありがと」

――…………

………………

「ね、おにいさんの絵はいつ完成するの? もうすぐ? 見せて。わ、すごいね」

「でも私こんなきれいじゃないと思うなぁ」

「ふふふっ。おにいさんの目には私はこう見えるんだね」

――そういうことになるのかな。我ながらよく描けてると思うよ。

「そう? ……もうちょっとで終わるね」

――そうだね……

「ん? どうかした?」

――いや、なんでもないよ。

………………

「はぁはぁ……ごめんなさい、ここしかないと思って……」

――その子は?

「え? この子? この子は私の……よくわからないの」

「でもこの子といると、あったかくてやわらかくて、ずっと触れていたくなるの」

――とにかく、入って。タオル持って来る。

「あとお風呂も入らせてあげたい。いい?」

――もちろんいいけど、僕がその子を介抱するわけにはいかないな。悪いけど全部、君に任せることになる。ごめんね。

「ううん。ありがとう、おにいさん!」

………………

――あの子は?

「寝ちゃった。それで、話ってなに? 私、しおちゃんのそばにいたいんだけど」

――これからどうするの?

「決まってるよ。しおちゃんとずっといっしょにいる。予感がするの。キラキラしてて、砂糖みたいに甘くて、嘘みたいに幸せな……」

――そう……

「おにいさん?」

――ほんの少しだけ僕の話を聞いてほしい。きっと君にはつまらない話だろうけど。

「……なに?」

――前に君に、愛について聞かれたことがあったね。あれ以来、すっと考えていたんだ。僕の答えは、相手に幸せになってほしい気持ちのことだった。

「相手に幸せになってほしい気持ち……」

――君はあの子に幸せになってほしい?

「当然だよ! 当たり前じゃない。しおちゃんが笑ってくれたとき、私、甘くて甘くてたまらない気持ちになったもん。しおちゃんのいない毎日なんてもう考えられない」

――きみはあの子の幸せのためなら何でもできる?

「もちろん!」

――じゃあ、もし君があのこの前からいなくなることであの子が幸せになるのだとしたら?

「……なにそれ、意味わかんない。嫌だよ。嫌、嫌、嫌! しおちゃんがいなくなるなんて、しおちゃんといっしょにいられないなんて、考えたただけで苦くて吐きそう」

「どうしてそんな意地悪言うの? いくらおにいさんでも許さないよ」

――ごめんね。嫌なことを言った。本当にごめん。

「……いいよ。特別に許してあげる。でも、次はないからね?」

――うん。でも、おかげでなんとなくわかってきたかな。

「え?」

――あの子と一緒にいたい。満たされたい。そのためなら何でもできる。それが君の愛なんだね。

「……そっか。この気持ちが愛なんだ。……愛ってこんなに幸せな気持ちにしてくれるものなんだ」

「ありがとう、おにいさん。気付かせてくれて」

――……聞こうか聞くまいか悩んだ。でも、聞かなくちゃいけないんだろうな。

「……?」

――愛は君を満たしてくれるものだって、どうして思ったの?

「え?」

――違和感はあったんだ。愛がどういうものか知らないと言う割に、それがあれば欠けていたものが満たされると信じ込んでいるようだから。

――君ははじめから、君にとっての愛がどういう形をしているのか知っていた。それがどういう気持ちか感じたことがなかっただけで。

――きっかけがあるはずだ。君が愛っていうものに触れた瞬間が。

「きっかけ……愛……」

「叔母さん……?」

――叔母さん? 君の親戚かな。聞かせてもらえるかな?

「叔母さんは……人の欲をすべて受け入れるの。暴力でも性行為でもなんでも。それを受け入れるのを愛だって呼んでた。誰でもいいの、叔母さんにはみんな同じで、一番がない」

「でもそんなの間違ってる。唯一無二で特別で、砂糖よりも特別甘い、私としおちゃんだけのハッピーシュガーライフ。それが私の愛だもの」

――本当にそうかな。僕には同じものに聞こえるよ。

「え? ぜんぜん違うじゃない。私はしおちゃんだけだもの」

――君を満たしてくれるもの。君を幸せな気持ちにさせてくれるもの。それが愛なんだとしたら、相手が一人か複数かの違いだけ。相手を第一に考えてないっていう点では全く同じだね。

「そんな……そんなこと、おにいさんに言われたくない。誰かを愛したことも、誰かに愛されたこともないくせに!」

――そうだね。そのとおりだよ。僕の愛の定義なんて好み程度の問題で、人に押し付けられるようなものじゃない。

――君の愛と君の叔母さんの言う愛は僕好みじゃない。そういうことだね。

「……二度目はないって言ったよ」

――言ったね。それにこれ以上、僕にできることはないみたいだ。

「どういうこと」

――もともとぼくにできることは限られているんだ。一時的にあの子を預かることがせいぜい、あとは君たちがどうするかを一緒に考えることくらいかな。

――あの子をずっとここにおいておくことはできない。誘拐になっちゃうからね。ぼくも犯罪者になるのは嫌だなぁ。

――それに君と僕では考え方が違うから、僕の考えは君にとって必要ないと思う。

――だから僕にできることはない。……と、思ったんだけど、一つだけあるね。ねえ、君、あの子と一緒にいるためなら何でもできるって言ったよね。

「そう言ったよ」

――そのためには一緒に暮らすための場所が必要だね。誰の邪魔も入らない、君とあの子だけの居場所。

「そうだね」

――僕を殺せば手に入るね。

「そうだね。ひとつ、教えてほしいことがあるんだけど」

――なにかな。

「どうして私のこと助けてくれないの? 嫌いになった?」

――そういうわけじゃない。……そうだな。見たいものがあったんだけど、今のままじゃ無理そうだから、ついムキになった、ってところかな。

「なにそれ。私に関係あるもの?」

――内緒。他人に話すのは恥ずかしい。特に君には死んでも話したくない。

「えー、気になる。聞けないのは悔しいなぁ」

「ごめんね、おにいさん」

――どういたしまして。

「……ほんとのところ、私のこと、どう思ってる? 興味ない?」

――幸せになってほしいと思ってるよ。

「それって愛してるってこと?」

――そうなのかもしれないね。

「なんか嘘っぽい。でも、ごめんね、私、おにいさんよりしおちゃんが大事なの。しおちゃんと一緒にいたいの」

「だからごめんね、おにいさん」

どっちにしろ死んでんじゃねーかどうすんだこれ
おにいさんはどうあっても死ぬ運命なのか? ちょっと考え直さないといけない

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