茄子「運勢共同体」 (122)

過去スレ

レナ「ロイヤルストレートフラッシュ」
レナ「ロイヤルストレートフラッシュ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367553285/)

の続き的なもの
一応、前作を見ていなくても話自体は理解できる……はず。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371891810

———事務所———

茄子「あ、またストレートですねっ♪」

レナ「……」←スリーカード

幸子「……」←ワンペア

早苗「……」←ブタ

P「……いい加減諦めたらどうですか?」

レナ「……元No.1ディーラーとして、負けられないのよ」

P「そもそも幸子と早苗さんはなんで付き合ってるんです?」

幸子「……ボクは、早苗さんに無理やり」

早苗「レナさんが、茄子さんに勝てたらお酒奢ってくれるって……」

P「早苗さん……」

早苗「だってだって……今月ピンチなんだもん……」

P「給料とかはちゃんと出てますよね?」

早苗「うぅ……」

早苗「(結婚資金として親の貯蓄に回されてる、なんて言えないわよ……)」

P「幸子、無理しないんでいいんだぞ?」

幸子「……やってるうちに、負けたくないって気持ちが膨らんできて……」

P「お前がいいんならいいんだが……」

レナ「そうだ!P君も参加して!」

P「えぇー……」

レナ「あの時のロイヤルストレートフラッシュをもう一度見せてよ」

幸子&早苗&茄子『……あの時?』

P「あ、いや、その」

レナ「ほら、早く座って座って」

P「俺、仕事中なんすけど……」

幸子「プロデューサーさん、ボクと早苗さんの間が空いてますよ」

P「え、ちょっとそこには行きたくないかなーって」

早苗「……詳しくお話を聞きたいってお姉さんは思うなぁ」

P「あはは……お、お手柔らかに……」

茄子「Pさん」

P「な、なんだ?茄子」

茄子「私が勝ったら、レナさんのお話聞かせてくださいね?」

P「ちょ」

レナ「じゃあ配るわねー」

———数分後———

レナ&幸子&早苗「……」←ブタ

茄子「うー……スリーカードです」

P「俺もスリーカード」

レナ「ねぇ、P君」

P「なんでしょうか」

レナ「もしかして、あなたも茄子さんみたいなの?」

P「……まぁ、幼馴染なので……たぶん」

早苗「……幸運の幼馴染がいると、幸運になるの?」

P「お、恐らく……」

幸子「どういう理屈ですか」

P「俺だってよくわかんないよ」

茄子「……いえ、Pさんはきっと……」

P「え?思い当たることがあるのか?」

茄子「……あの、ほら……沖縄での事がありますから」

P「沖縄……ああ、疫病ナスか」

茄子「もう、そのあだ名はナシですよ」

P「あはは、ごめんごめん」

レナ「え?疫病って……」

幸子「もしかして、昔は茄子さんは不幸だったとかですか?」

P「いんや、昔から茄子はこうだよ」

早苗「じゃあその疫病ナスって……」

P「不幸になるのは……周りの人が、だ」

幸子「周りの人が?それって茄子さんの運が良すぎるから、周りの人が普通なのに不運に見えるとかじゃなくてですか?」

P「うん。そうじゃなくて、普通に周りにいる人をどんどん不幸にするんだ」

レナ「……もしかして、今までのポーカーとかも」

茄子「それは違いますよ〜。それに、今は……ね?」

早苗「……何その、意味ありげな視線」

P「昔の茄子とは、まぁ、色々ありまして」

幸子「……どういうことですか?」

P「んー。この辺はなぁ。茄子、話してもいいか?」

茄子「私は大丈夫です。Pさんこそ、大丈夫なんですか?」

P「もう笑い話として話せるさ」

早苗「え、そんな重い話なの……?」

P「あはは。俺が死にかけたってだけですよ」

レナ「それって笑い話なの……?」

P「まぁまぁ。とりあえず、いつ頃の話から始めましょうかねぇ……」

言ってなかったけど、途中で急に地の文が入ります。基本地の文は茄子の心情です。

———沖縄 とある学校———

茄子「……」

生徒A「……なぁなぁ」

生徒B「ん?なんだ?」

生徒A「あの、鷹富士ってヤツさ……」

生徒B「……関わらない方が身のためだぞ?」

生徒A「そんなに酷いのか?疫病ナスって……」

生徒B「まぁ、見てろって。今日の朝、Cの馬鹿がアイツに関わったから」

茄子「……あ」

茄子「……教科書、ない」

生徒C「クスクス……」

茄子「どうしよう……次の授業で使うのに」

生徒C「(ゴミ箱に捨ててやったんだよバーカ!)」

先生「おーい。鷹富士ー」

茄子「あ、先生。あの、教科書———」

先生「ゴミ箱に捨ててあったんだよ。だけど、汚れてないみたいだぞ!安心しろ!」

茄子「そうですか。よかったです……」

先生「そして……おい、C」

生徒C「ひっ?!」

先生「お前が捨てたのを見たって生徒がいたんだよ。ちょっと職員室まで来い」

生徒C「い、嫌だぁあああ!!」ズルズル

生徒B「……な?」

生徒A「たまたま、じゃないのか?」

生徒B「違うんだよ。この前は上履きに画鋲を入れたやつが、上履きに足突っ込んで画鋲踏んで大怪我した」

生徒A「え?どういうことだよ?」

生徒B「同じ事を考えた奴が鷹富士の下駄箱の位置と、怪我したやつの下駄箱の位置を間違えた」

生徒B「しかもその騒ぎのせいで、鷹富士自体は上履きに入ってた画鋲に気づいて無傷。画鋲入れたヤツは一週間の自宅謹慎」

生徒B「つまり、被害にあったのはお互いに鷹富士をいじめようとしたヤツだ」

生徒A「……もう、たまたまってレベルじゃないな」

茄子「……はぁ」

生徒B「滅茶苦茶美人なのに、もったいないよな」

生徒A「……ん?敵意を持たないで接してもダメなのか?」

生徒B「お前しつこいな。鷹富士の事が好きなのか?結論からいえばダメだ」

生徒A「そりゃまたなんで」

生徒B「鷹富士と一緒に下校しようとした女子がいたんだが……」

生徒B「帰り道に痴漢にあった。隣に茄子がいたのにも関わらず、だ」

生徒A「……」

生徒B「ここまで来ると、話しかけるの自体も億劫だよ……まぁ、諦めろ。俺も諦めた」

生徒A「え?お前も?」

生徒B「だって美人じゃん。すっげー可愛いじゃん。そりゃお近づきになりたいって思うわ」

生徒A「お互い大変だな……」

生徒B「あぁ……」

茄子「(……私って、美人ですっごい可愛いんだ)」

———翌日———

先生「えー。静かに!」

先生「この度、東京の方から転入生が来ることになった!」

茄子「(転入生、か)」

生徒D「はーい!先生、男ですか?!女ですか?!」

先生「男だ!」

茄子「(男の人……かっこいい人かな?)」

生徒E「じゃあはいはーい!学年的にはどれくらいですか?!」

先生「ああ、そうだったな。えーっと、学年は……」

茄子「(……私より年上かな、年下かな)」

先生「このクラスで一番年上になるな」

生徒D「え?鷹富士さんよりも!?」

生徒E「年上っ!かっこいい人かなっ!?」

茄子「(クラス最年長の座を明け渡す時が来たみたいね。なーんて)」

先生「はいはい静かにしろ。じゃあ入ってこい!」

P「え、えーっと。し、失礼します?」

生徒D「いやいや、教室入るのに失礼しますはないっしょー!」

P「うぇ?!俺なんか間違えた?!」

アハハハハハハ

茄子「……(変な人)」

先生「まぁいいから入れ。ほら、自己紹介だ」

P「はぁ……えーっと、Pっていいます……あ、苗字はこういう漢字を書いて———」カキカキ

茄子「(Pさん、か……)」

P「えーっと好きなもの……特技……?」

P「ああもういいや面倒くさい!とりあえずよろしくお願いします!」

アハハハハハハ

先生「それじゃあ席は……ふむ、鷹富士」

茄子「なんですか?」

先生「お前の隣、空いてるよな?しばらくコイツの世話をしてやってくれ」

生徒D「えっ……」

ザワザワザワザワ

P「……?」

茄子「……先生。空いている席なら他にもあります。別の席にしてはいかがでしょう?」

先生「そうは言うがな。机を用意するのが面倒くさい」

生徒A「……大丈夫なんですか?」

先生「先生は迷信とかは信じないタチでな」

P「えーっと?なんですなんです?」

先生「とりあえず座れ、な。しばらくお前の世話係は隣の鷹富士がやってくれるから」

P「は、はぁ……」スタスタ

茄子「(……最悪)」

P「あのー。鷹富士さん、だよね?」

茄子「そう、ですけど」

P「その、よろしく、な?」

茄子「……あまり、私に話しかけないほうがいいですよ」

P「え?それってどういう———」キーンコーンカーンコーン

先生「それじゃあ朝のホームルームは終了だ。一時間目は自習だからなー」

生徒B「いよっし、自習かー」

茄子「……」タッ スタスタ

P「え?あれ?鷹富士さーん?」

生徒D「やめといたほうがいいですよー。Pさーん」

P「え?なんで?」

生徒E「彼女、疫病ナスですから」

P「……どういうこと?」

生徒B「その辺はすぐにわかると思う、それよりみんなでPに自己紹介しようぜ!」

P「あ、ああ……(疫病ナス……?)」

———放課後———

茄子「……」スタスタ

P「あ、鷹富士さ……行っちゃったか」

生徒A「放っておいて大丈夫だよー!それより、一緒にこれから買い物に行かない?Pー」

生徒D「うん!さんせー!」

生徒E「私も私もー!」

P「……んー。ごめん。まだ引越しの準備とかが終わってなくて」

生徒B「あ、そうなんだー。じゃあまた今度だな」

生徒D「そうだねー。じゃあ早めに帰ったほうがいいんじゃない?」

P「うん。気を使ってくれてありがと……じゃあな、みんな!」

生徒E「うんうん、じゃーねー!」

———校舎裏———

茄子「……はぁ」

茄子「今日は、大変だったな」

茄子「あのPって人……授業が終わるたびに、話しかけてこようとするんだもの」

茄子「おかげで昼間、全然世話できなかったね。ごめんね」サァァ

P「へぇー。校舎裏にこんなところがあったんだ」

茄子「っ!」

P「ん?水遣りの最中でしょ。気にしないで続けててよ」

茄子「……なんで追っかけてきたんですか?」

P「追いかけてきたわけじゃないよ。廊下から見えたから」

茄子「ここ、一部の廊下からしか見えないはずなんですけど」

P「それはほら、転校したてで学校探検しててさ」

茄子「……勝手にしてください」

P「これは……ハイビスカスかな?へぇ、実物は初めて見るけど、綺麗だなぁ」

茄子「……」サァァ

P「もしかして鷹富士さんが一人で世話してるの?」

茄子「……」サァァ

P「……うーん……あ、そうだ」タッタッタ

茄子「……?」サァァ

P「やっぱジョウロあった。一人でここ全部は大変だろうし、手伝うよ」

茄子「……別にいいですよ」

P「いいからいいかr「あのですね」……」

茄子「私、最初に言いましたよね?関わらないで欲しいって」

P「ん、まぁな」

茄子「じゃあなんで私に関わろうとするんですか?」

P「関わろうとしてるわけじゃないよ。まだ自己紹介をちゃんとしてなかったなと思って」

茄子「それなら結構ですから……はぁ」スクッ

P「え?まだ水やり終わって「帰ります」……」

茄子「それじゃあさようなら。できる限り、私にはもう話しかけないでください」

P「おいおい、その言い方はないんじゃないか?」

茄子「……明日の朝。貴方はきっと後悔することになりますよ」

P「は?」

茄子「それじゃあ」スタスタスタ

P「……」ポカーン

P「……どうしよ。これ」

———翌朝 校舎裏———

茄子「……」

P「よ」サァァ

茄子「……何をやっているんです?」

P「いや、水遣りだけど?」

茄子「なんで」

P「昨日も来てたみたいだし、今日も来るかなーって」

茄子「……はぁ。勝手にしてください」

P「おう、勝手に水遣りやらせてもらうぜ」

茄子「一つ。お聞きしたいんですが」

P「なんだ?」サァァ

茄子「昨日、私が帰ったあと何かありました?例えばそう———家族が怪我した、とか」

P「え……?そんな事ないけど、どうして?」

茄子「……そう、ですか」

P「急にどうしたんだ一体?」

茄子「別になんでもないですよ。それなら、不幸が降りかかる前に私に関わるのをやめた方がいいですよ」

P「何を言っているんだ?」

茄子「それだけは覚えててください。では」スタスタスタ

P「……変な奴だな」

生徒B「な、なぁ」

P「ん?なんだ?」

生徒B「お、お前。鷹富士さんと話してなんともないのか?」

P「なんともないって……お前まで変なこと聞くな」

生徒B「いやだって……」

P「……鷹富士に、何かあるのか?」

生徒B「……わかった。話すよ」

———放課後 教室———

P「鷹富士」

茄子「……なんですか?」

P「話があるんだ」

茄子「奇遇ですね。私もです」

P「ならお前からでいい」

茄子「……B君に、何を話したんですか?」

P「何をって……鷹富士と話してもなんともないって事だが」

茄子「そう、ですか」

茄子「さっきB君が話しかけてきたんです」

茄子「私はできる限り、無視し続けました」

茄子「……結果。先ほどB君のお母様が……仕事場で大怪我を負いました」

P「……」

茄子「貴方もきっと聞いたでしょう?疫病ナスの事」

茄子「私に近づくと不幸が起きる」

茄子「私自身は絶対的な幸運を持っている」

茄子「……もう、わかりますよね。私、人の幸運を吸い取っちゃうんです」

P「そんな馬鹿な話が」

茄子「あるから、誰も私に話しかけようとしてこなかったんでしょう?」

茄子「……あなた以外は」

茄子「もう、諦めてくれませんか」

茄子「私と仲良くしようとすることは。私に関わろうとすることは」

茄子「あなたもいつか———いえ、きっと———不幸になる」

P「……やだね」

茄子「……はい?」

P「嫌だって言ったの。俺は今までどおり、鷹富士に話しかけるし、鷹富士に関わろうとするぜ」

茄子「自分で何を言っているのかわかっているんですか?」

P「わかってるさ」

P「ただ、クラスで誰も話しかけないような、高嶺の花」

P「とても可愛くて、とても美人で、とてもスタイルもいい、性格も良さそうな女の子」

P「そんな子と、仲良くしたいって思うのは———男の子の性ってもんだ」

P「たとえそこに、どんな障害が待っていようとな」ニコッ

茄子「……っ」

茄子「(な、何コレ……A君とB君が言ってた時は全然そんなんじゃなかったのに……)」

茄子「(胸が……ドキドキ、する)」

P「なんて、カッコつけすぎか」

茄子「……」

P「おーい。鷹富士?」

茄子「な、なんでひゅか?」

P「……」

茄子「……なんですか?」

P「鷹富士って、可愛いよな」

茄子「っ!!」ボッ

茄子「し、しし、失礼しまひゅ!」タッタッタ

P「あ、おい、鷹富士……」

P「……なんだってんだ一体」

それから。

P「おーい。鷹富士……」

茄子「ひゃうっ!!」タッタッタ

私は、これが恋なんだって自覚して。

最初は、恥ずかしくて向き合えなかった。

茄子「あの……えと……」

P「鷹富士から話しかけてくるなんて……今日は雪でも降るかもな」

茄子「か、からかわないでください。もう」

だけど、私が近くに行っても、何も起きない。

私に近寄ってきても、何も起きない。

茄子「その、茄子って、名前で呼んでくれませんか?」

P「えっ?」

この人なら大丈夫かなって。

この人なら大丈夫なんだって。

茄子「Pさん!一緒に、アイス食べに行きませんか?」

P「ん、茄子か!行こう行こう!」

そう、思ってしまった。

そしたら、止まらなかった。止まれなかった。止められなかった。

例外なんて、あるはずないのに。

———某日 病院———

生徒A「……」

生徒B「……」

生徒C「……」

生徒D「……」

生徒E「……」

茄子「な……なんでっ……」

P「げほっ、ごほっ……ははっ。大丈夫だよ。こんくらい、大したことないさ」

茄子「なんで、いきなりっ……!!」

その日は雨が降っていた。

ジメジメしていて、とてもじゃないけど好きになれない雨。

茄子「私の、私のせいです!私が、私が近くにいたから———」

P「違う!!」

茄子「!」

P「げほっ、ごほっ」

突然だった。

教室でそれまで楽しそうにしていたPさんが、倒れた。

生徒A「お、おいP!無理すんな!」

P「うるせぇ……男には、無理してでも、意地を張らなきゃいけない時があんだよ……」

生徒B「お、おい」

P「茄子、お前のせいじゃない。これは、お前が近くにいたからだとか、そんなんじゃない」

茄子「でも、でも!」

P「違う……違うんだ……!」

何が起こったかわからなかった。

結論から言えば———Pさんは、癌だった。

それこそ、手術して治れば奇跡と呼べるほどの。

茄子「……っ!!」ダッ

P「お、おい!茄子!!」

私のせいだ。

私が、近くにいても大丈夫って。

近くにいたいって、思ってしまったから。

P「ぐっ、うぐっ!」フラ

生徒C「む、無理だよP!!おとなしくベッドで寝てないと!!」

P「くっそ……茄子っ……!」

生徒D「は、早くナースさんを呼んで!!」

生徒E「今呼んでるっ!!」

その日から私は。

学校に行くことさえも、彼に会うことさえも、やめた。

———数日後———

茄子「……」

あの日から、どれだけ泣き続けただろう。

あの日から、どれだけ後悔しただろう。

あの人の傍にいたことを。

あの人に恋してしまったことを。

茄子「……疫病、ナス」

全くもってその通りだ。

私は何を勘違いしていたんだろう。

何を、舞い上がっていたのだろう。

茄子「……ははは……」

いなくなった方がマシなんじゃないか。

誰かの近くにいるだけで、迷惑をかけて、傷をつけて。

……殺してしまいそうになって。

茄子「私は、幸福なんかじゃない」

私はきっと、幸福で。

私は———不幸な女だ。

茄子「……でも、最後に……」

嗚呼、どれだけ私は贅沢なんだろう。

最後に、あの人の顔を見たいと、そう思ってしまった。

———深夜 病室———

茄子「……こんな悪いことにも、私の幸運って左様するんですね」ソローリ

P「zzz……」

茄子「ふふっ、子供みたいな寝顔ですね……」

P「zzz……」

茄子「髪はもうないですけど……お坊さんみたいです」ナデリ

P「んむぅ……」

茄子「……Pさん」

茄子「私、幸せでした。貴方に出会えて」

茄子「私、不幸せでした。貴方に出会って」

茄子「私、幸せでした。恋を知れて」

茄子「私、不幸せでした。恋を知って」

茄子「私、幸せでした。貴方の傍にいられて」

茄子「私、不幸せでした。貴方の傍にいて……」

茄子「貴方は違うと言ってくれましたけど———」

茄子「Pさんのそれは、私のせいでしかないんです」

茄子「だから私、いなくなろうと思います」

茄子「……どこにいても、迷惑をかけるんだから、当然ですよね」

茄子「———さよなら、Pさん」

P「……行くな」

茄子「……え?」

P「行くな……行かないでくれ……茄子……」

茄子「P、さん?」

P「……zzz」

茄子「……寝言ですか。なんて夢を見てるんですか」

茄子「私がいなくなる夢でも、見ているんでしょうか……」

茄子「……寝言だとしても、辛くなるじゃないですか」

茄子「私、ダメですね。こんなんで決心が揺らぐ、なんて」ポロポロ

茄子「……うぐっ、P、さん」

茄子「うぐ、ぐす、うわああああああああ!!!」

———病室 朝———

茄子「……んぅ……」

茄子「……はっ」

茄子「こ、ここは……?」

P「茄子」

茄子「P、さん?」

P「お前、なんでここに……げほっ」

茄子「あ、む、無茶しないでください。ほら、安静に……」

P「え、あ、ああ……」

茄子「……」

P「茄子……ずいぶん痩せたな」

茄子「Pさんこそ」

P「綺麗な顔が涙のあとで台無しだぜ?」

茄子「そんな頭で口説いても面白いだけですよ」

P「面白くていいんだよ。笑ってくれよ」

茄子「……それはできないですね」

P「そっか……」

茄子「あの、Pさん」

P「なんだ?」

茄子「私、死のうと思います」

P「……」

茄子「両親は数年前に先に行きました。悲しがる人も、いません」

茄子「私がいたって、誰かに迷惑をかけるだけなんです。だから———」

P「ふざけんな」ガッ

茄子「っ?!」

P「他人に迷惑かけたから死ぬ、だ?」

P「ふざけんなよ。自分勝手もいいところだ」

P「人間なんて、絶対誰かに迷惑をかけながら生きてんだよ」

P「家族だったり、友達だったり、恋人だったり、上司だったり!」

P「だけど、死んで誰かに迷惑をかけるのだけは、絶対にしちゃいけない」

P「迷惑かけたやつに、文句の一つも言えなくなるから」

P「文句を言い合って、人間は迷惑を許しあうんだ。それがどんなに辛辣でも、どんなに悲観的だったとしても!」

P「———だから、俺に文句の一つくらい、笑って言わせろ!」

茄子「……」

P「……」

茄子「……私、凄く迷惑ですよ?」

P「知ってる」

茄子「アイス、十本も当てちゃうくらい迷惑ですよ?」

P「前みたいに全部食って腹壊してやるよ」

茄子「季節が過ぎても、育ててる花が咲いちゃうくらい迷惑ですよ?」

P「一緒にその花が枯れるまで育ててやるよ」

茄子「……Pさんに、癌を発症させちゃうくらい迷惑ですよ?」

P「新しいジャンル、病ませる系女子だな」

茄子「……それでも、まだ」

茄子「迷惑、かけても……いいんですか?」ポロポロ

P「その度に言ってやるよ」

P「【お前のせいで大変だったんだからな?】って、笑ってさ」ニコッ

茄子「……っ!!」

茄子「……P、さん」

P「……なん、だ?」

茄子「ずっと、言いたかったんです。私、貴方の事が———」

ピーピーピーピー!!

茄子「———え?」

P「……ははは、思ったより早かったなぁ」

茄子「早かったって、何が」

P「……俺の、限界かな」ボスッ

茄子「Pさん?!」

P「ナースコール、してくれるか……そろそろマジでヤバイ……」

茄子「わ、わかりました!!ほ、他にすることはありませんか?!」

P「じゃあ……最後まで、傍にいてくれ」

茄子「なん、で。私がいたら、ただでさえ成功の確率の低い手術が———」

P「個人的な願望、かな……最後は、茄子に看取られたい」

茄子「そんなっ、最後、なんて」

看護婦「すみません!Pさん、大丈夫ですか?!」

P「……いえ……」

医者「緊急手術の準備を!!」

看護婦「はいっ!!」

茄子「っ」

私に、出来ることはないのか。

看取る以外に、近くにいる以外に、出来ること———

———回想———

茄子「……うう、また外れちゃった……」

茄子母「ふふっ、大丈夫よ。私が当たったから」

茄子父「お、私も当たったぞ」

茄子「うー!お母さんとお父さんずるいー!」

私の父と母は、豪運の持ち主だった。

対して私は、運が悪かった。

だけど、あの日だけは。

私の両親が交通事故で死んだ、あの日だけは。

何故か、私だけ生き残った。

茄子母「……茄子」

茄子「お母さん!話さないで!!もう少しで、救急車来てくれるから!!」

茄子父「茄子、強く生きるんだぞ」

茄子「どうしてそんな事言うの?!ダメ!眠っちゃダメだよ!!」

今日のように、何もできなかった私。

今日のように、私が塞ぎ込んだあの日。

茄子母「……おまじない、効くといいわね」

茄子父「……そうだね」

茄子「嫌!お母さん!お父さん!」

……おまじない?

———病室———

茄子「……おま、じない?」

あの日、どうして、運が悪い私だけ死ななかったのか。

あの日、どうして、運が良い両親だけが死んだのか。

茄子「あの日、お母さんとお父さんは私に何をしたの……?」

医者「君!病室から出て———」

思い出せ。

二人の言っていた、「おまじない」を。

思い出せ。

あの日の両親が、私にしてくれた事を———

茄子「……」

茄子「……そう、か」

思い出した。あの日、私は

茄子「二人にキス、されたんだ……」

二人が昔、頑なになって拒んでいた私へのキス。

一回もしてくれなかった、ほっぺたへのキス。

他の子がやっているのを見てねだっても、「ごめんね」としか言ってくれなかった。

だけどあの日だけは、二人が自分から私にキスをしてくれた。

茄子「……P、さん」

P「ん……?」

もしかしたら、頬でいいのかもしれないけど。

看護婦「ちょ、あなた!」

茄子「……初めてかもしれないけど、許してくださいね?」

これは、私の勝手な我が儘。あと、貴方にかける最初の迷惑。

医者「君、何を」

そして私は。

貴方の唇に———キスをした。

———事務所———

早苗&幸子「ええええええええ?!」

P「うおっ!?急になんだよ?!」

早苗「じゃ、じゃ、じゃあ!P君のファーストキスって」

幸子「茄子さんって事ですか?!」

茄子「はい〜♪私ですね」

早苗&幸子「そんな……」orz

P「いやいやいや。あれはノーカンだろ?」

茄子「うーん……まぁ、そういう事にしといてあげますよ」

P「そういう事って」

茄子「ちなみに私は初めてでした。ふふっ」

P「ごほっ。お前、なんつーことを」

レナ「……それで結局?」

P「見ての通り、手術は成功して生きてますよ。それこそ奇跡みたいに」

レナ「つまり、茄子さんにキスされると物凄く運が良くなれるってこと?」

P「そうみたいですね」

レナ「……ねぇ、茄子さん。百合って興味ある?」

茄子「やりませんよ?」

レナ「ちぇっ。なーんだ。簡単に運が良くなるかなって思ったのに」

茄子「私がキスするのは、Pさんだけです♪」

P「ちょ、お前」

早苗「ちょーっとP君?」

幸子「もしかして……茄子さんと……?」

P「いやいや。俺プロデューサー。茄子アイドル。OK?」

幸子「……まぁ、そうでしょうね」

P「……おう」

早苗「さて、茄子さんのお話も聞き終わったところだし……」

茄子「次はレナさんのお話の番ですね〜」

P「……えぇー」

茄子「Pさん」

P「ん?」

茄子「……次は、本気で行きますから」

P「え、ちょ」

茄子「ふふっ、それじゃ始めましょうか」

レナ「配るわよ〜」

茄子「(ねぇ、Pさん。なんで私がPさん以外の人とキスしないか、わかりますか?)」

茄子「(……祖母から聞いたんです)」

茄子「(キスは、運勢を渡す為のものじゃなくて、運勢を共有する為の手段なんですって)」

茄子「(だからあの二人は、私にキスしようとしなかったらしいです)」

茄子「(そして———これは、迷信かもしれませんけど)」

茄子「(運勢を共有した二人は———永遠に離れることはない、らしいですよ?)」

茄子「(運勢共有体……ふふっ、いい響きだと思いませんか?ね、Pさん?)」


おわり

くぅ〜疲(ry
普段書かないジャンル(R-18や欝)も書いてみたいと思う最近。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
少ししたら、HTML化出してきます。

茄子さん良いよね〜〜
最初『鷹富士茄子』って名前見てイロモノ枠かと思ってたら
正統派超絶美女で驚愕したのは良い思い出……
Σ(゚◇゚;)マジデッ!?ってなって何度もイラストと名前見直したしwww

いい話だった

ところでなんで沖縄だったんだろう?

>>84 完全に出身地を勘違いしてました。首吊ってきます。

執行猶予として退院後の話を描くのだ

という無茶ぶり

>>86 遺書として書いておきます……今日はちょっと更新できないので

皆様には大変ご迷惑をかけました……

後付け設定にはなってしまいますが、島根から沖縄に幼い頃に引っ越したと脳内変換お願いします……
ちゃんとプロフィール確認しないとダメっすね……

何か理由があるのかと思って読んでたわ…
沖縄は離島ならともかく少子化で合同学級が多いみたいなイメージもなかったし

読むときは沖縄→島根と脳内変換してくださいのほうがいいかもね
島根=出雲大社だし、出身地への意味づけが結構強いキャラだから

>>89 補足や色々、ありがとうございます……

おまけというかお詫びというか。
島根と脳内変換してお読みください。

「神様の悪戯」


———退院後 学校———

P「おいーっす!」

生徒A「うぃーっす!」

生徒B「おおP!復帰おめでとう!」

生徒C「相変わらずハゲてるけどな」

P「その事は言うなよ……」ピカーン

生徒D「ははっ、でもそっちのが似合ってない?」

生徒E「そうかもねー」

P「マジ?じゃあ俺今日から坊主で過ごすわ」

茄子「やめてください」

P「おう、茄子。おはよう」

茄子「Pさんは絶対、髪あった方がカッコイイですから」

P「まぁ、茄子が言うならそうなのかなー」

生徒D「うわ、もしかして付き合ってる?」

P「いやいや。正直、一番過ごした時間長いしさ」

生徒E「これは数日したら付き合っちゃうかもね〜」

P「いやいや、それは……茄子?」

茄子「……」カァァァ

P「え」

生徒D「うわー!脈ありだよコレはー!」

茄子「も、もう!からかわないでください!!」

生徒E「流石、キスしてただけあるね〜」

P「ぶっ!」

茄子「あ、あああああ、あれは!その!せ、選別、というか?そ、そう!」


茄子「Pさんが、キスもした事ないで死ねるかって言うから、仕方なく!」


P「えぇ?!」

生徒D「うわ……」

生徒E「引くわ……」

P「なんで?!なんで俺の株下がってんの?!」

生徒A「だってなぁ」

生徒B「まぁ俺もそう思うけどさ」

生徒C「クラスメイトにキスさせるって……」

P「いやいやいや!!俺そんな事言ってねぇから!!」

茄子「ひ、酷いです!」

P「うぇ?!」

茄子「私は初めてだったんですよ?……乙女心を弄ぶなんて、酷いです!」

P「なんでだよ!?」

生徒D「うわーうわー……これは責任取らなくちゃー」

生徒E「もう結婚しちゃうなよYOU」

茄子「え、あ、う……そ、そこまでは……まだ、早いような気もしますけど……」

生徒D「聞きました?まだ早いって言いましたよこの子」

生徒E「つまり、結婚する予定があると。ええ」

茄子「もーっ!!!」

P「茄子、不用意に悪ノリするとこうなるからな?」

茄子「うう、わ、私だってたまにはPさんをからかいたかったんです」

P「俺をからかうなんて百年早いよ」

茄子「そんな事言ってられるのも、今のうち———」

P「茄子、可愛いぞ」ボソッ

茄子「———っ!!」ボッ

生徒D「耳元で息を吹きかけながらかぁー!今のは効くなぁー!」

生徒E「あたしでも赤くなっちゃうよー!」

茄子「あう、あう、あうあうあ……」カァァァ

生徒A「ちょ、鷹富士大丈夫か?」

生徒B「こうか は ばつぐんだ!」

茄子「ほ、保健室行ってきます!」タッタッタ

生徒C「……なぁP。なんでお前、そんなに女の扱いに慣れてんの?」

P「うーん。親子の性というか。まぁ、血は争えないってことかな」

生徒C「なんだよそれ」

P「さーってと。授業の準備っと」

生徒D「相変わらずの切り替えの速さね……」

茄子「うー……」

生徒E「どうだった?茄子」

茄子「……恋の病、らしいです……」

生徒E&D『あはは……(先生にまでからかわれたか)』

茄子「いつか治りますかねこれ……」

生徒D「治るよ、きっと!」

茄子「そうだといいんですけどね……」

楽しかった。

茄子「あ、アイス当たりました♪」

P「俺も当たった」

生徒A「勘弁してくれよ……何本食わせる気だ」

あなたと過ごす一日一日が、輝いてた。

茄子「うーん……髪、伸ばそうかしら」

P「茄子は髪、短いほうが似合ってるよ」

茄子「そうですか?」

いつの間にか、周りの人を不幸にすることはなくなっていた。

共同体は、お互いが、お互いの幸運を吸い取りあうから、だそうだ。

生徒D「あの、その、ずっと前から好きでした!」

P「……ごめん。俺は君とは付き合えない」

生徒D「ど、どうして……?」

P「……茄子が、いるから」

生徒D「……そっか、やっぱり?私、負けちゃってたかぁ」

P「ごめんな、ホント」

生徒D「い、いいっていいって……うん……」

だけど、別れの日は突然にやって来る。

あなたの髪も、元々の長さに戻り始めてきた夏の日。

あなたが倒れた日と同じく、天気はジメジメとした雨。

茄子「……転校、ですか?」

P「ああ……東京に、戻る」

茄子「……そうですか」

P「驚かないんだな」

茄子「なんとなく、そんな気はしてましたから」

嘘。

今だって、泣き喚きたいほどだ。

でも、もうあなたに迷惑はかけたくないから。

茄子「……また、会いましょう?」ニコッ

笑顔で別れようって、そう決めた。

P「……茄子」

P「毎日、【お前のせいで大変だったんだからな?】」

茄子「っ」

P「だけど……毎日、楽しかった」

P「ありがとう。また、会おうな!」ニコッ

茄子「……はいっ!」ニコッ

今の私は綺麗に笑えているだろうか、それとも、泣いているだろうか。

私達は運勢共同体。

きっと、また、どこかで会えると信じて。

———数年後 神社———

時は流れて———

私が、上京してから初めての初詣。

テレビでしか見た事のなかったような神社の境内で、私は歩いていた。

茄子「凄い人だかりですね……」

改めて感じる。東京ってすごい。

茄子「……今年は、いい年になりますかね」

茄子「いえ、いい年に、しましょう」

そう意気込んでいざ、賽銭箱へ。

その時———ふと、人ごみをかき分けて私の前に一人の男性が現れた。

人に揉みくちゃにされて、よれよれのスーツ。

少し冴えない、けど優しそうな顔。

肩で息をしているその人は、私を見て言った。

P「あの、ちょっとすみません」

茄子「……」

もう、神様。

サービスが、良すぎるんじゃないですか?

私の願い事、もう叶っちゃいましたよ。

P「って……あれ?」

茄子「……ふふっ」

もしかして、近くで見るまで気づかなかったのかしら?

それだけ、時間が経ったって事ですよ。

茄子「……【あなたのせいで、大変だったんですからね?】」

茄子「約束通り、です」

茄子「お久しぶりです……Pさん」

今年は。

きっと、いつかの毎日のような輝いた日々が待ってる。

そんな気が、しました。


おわり

読んでくださった方々ありがとうございました。
HTML化出してきます……なんで俺沖縄と間違えてたんだろ。

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