華子「オリヴィア、ちょっと腋出して」(24)

オリヴィア「……は?」

華子「あれ? 聞こえなかった?」

香純「あの……華子さん」

華子「ん? どしたの香純さん」


香純「命を粗末にするのは……良くないと思います」


オリヴィア「それはさすがにひどくない!?」

華子「ま、まあまあ! 落ち着いてよ、オリヴィア!」

オリヴィア「そもそも! 何でそんな事言うの!?」

華子「へっ? 何が?」

香純「オリヴィアさんに、腋を出せって……」

華子「……んー、ちょっと確かめたい事があってさ」

オリヴィア・香純「……確かめたいこと?」


華子「なんか……最近、臭いが気にならなくなってるんだよ」


オリヴィア・香純「!?」

オリヴィア「えっ、嘘……ホントに!? 臭わない!?」

香純「騙されちゃ駄目です、オリヴィアさん!」

オリヴィア「えっ!?」

香純「オリヴィアさん、依然としてスパイシーですから!」

華子「まあ、スパイシーはスパイシーなんだけどさ」

オリヴィア「ねえ! そのスパイシーってのやめてくれない!?」


華子「なんか……臭いって思わなくなってきたんだよね」


オリヴィア・香純「!?」

オリヴィア「えっ!? どっ、どういうこと!?」

香純「恐らくですが……脳が、錯覚を起こしてるんだと思います」

オリヴィア「ごめん、もうちょっとわかりやすく言って」

華子「ほら、私達って結構ずっと一緒に居るじゃん?」

オリヴィア「うん」


華子「だから……体はずっと臭いって叫んでたんだよね」

華子「でも、ずっと叫び続けてたら喉がぶっ壊れたー、みたいな?」


オリヴィア「……」

オリヴィア「あ、うん……なんとなくわかった」

華子「だからさ、オリヴィア! 腋出してよ、腋!」

オリヴィア「……イヤ」

華子「え~っ!? なんで!?」

香純「まあ、あれだけ臭いって言ってた訳ですし」

オリヴィア「そうよ! どうせ、直で嗅いだら臭いって言うんでしょ!?」

華子「言わないって! ぜ~ったい言わない!」


オリヴィア「……じゃあ、ちょっとだけなら」


華子「うっしゃあ! 思いっきり嗅いでやるぜぃ!」

香純「華子さん、あの、あまり大声で言わないでください……!」

香純「外に聞こえたら、私も仲間だと思われちゃいますから……!」

オリヴィア「……はい」

…スッ

華子「いや、オリヴィア……それじゃ嗅ぎにくいってば」

オリヴィア「……だ、だって……///」

華子「恥ずかしがらずに、ほら! ほらほら~!」

オリヴィア「っ……!///」

…ススッ

華子「良いよ~、その調子! オリヴィア~ン、トレビア~ン!」


オリヴィア「かっ、嗅ぐなら早くしてくれない!?///」


華子「あ、ごっめん……なんか楽しくなってきちゃって!」テヘペロ!

香純「私からもお願いします……早く終わらせて、封印を……!」

華子「では……参る!」

オリヴィア「ぜ、絶対臭いとか言わないでね!?///」

華子「……わ~かってるってぇ」

オリヴィア「顔芸も無し!/// 本気で怒るからね!///」

華子「……」クンクンッ

オリヴィア「っ……!///」


華子「スパァイスィー……!」ニヤァッ!


オリヴィア「っ!? かっ、香純!? 香純!?」

香純「えっ!? な、何ですか!?」

オリヴィア「この反応、何!? 私、どうすれば良いの!?」

香純「えっ!? どうしてそれを私に聞くんですか!?」

オリヴィア「だって香純、メガネかけてるし!」

香純「メガネが理由!?」

華子「……」クンクンッ

オリヴィア「は、華子……///」

華子「……んっんー!」


華子「スパァィスィー……!」ニヤァッ!


オリヴィア「助けて香純!」

香純「あ、メガネ外したんで無理です。すみません」

オリヴィア「それはちょっとひどいんじゃない!?」

華子「……オリヴィア」

オリヴィア「っ!?」ビクッ!

オリヴィア「な……何……?」ビクビク!

香純「オリヴィアさん、ちょっと怖がりすぎでは……」

オリヴィア「しょうがないでしょ!? なんか怖いんだもん!」

香純「……まあ、わからなくもないですけど」


華子「オリヴィア――ッ!!」


オリヴィア・香純「はっ、はい!」

華子「? なんで香純さんも返事したの?」

香純「あ、あまりの勢いに押されて……つ、つい///」

華子「いやまあ、ノリで大声で呼んだんだけどさ」

オリヴィア「もう! ビックリするからやめてよ!」

華子「ごめんごめん! あ、でもさ、やっぱり臭いって思わなかったよ!」

オリヴィア「えっ? ほ……本当に?」

華子「うん! 本当に!」グッ!


華子「むしろ……なんか、良い匂いに感じたかも知れない」


オリヴィア「いっ、良い匂いって……もっ、もー!///」

華子「あはは! もしかしたら、本当に良い匂いになってるのかもよ!?」

オリヴィア「ええっ!?/// やだもー、華子ったらー!///」


香純「……」

香純(……いや、そんな事はまっっっ……たく無いんですけどね)

それからどしたの


オリヴィア「でも、なんか結構嬉しいかも」

華子「へっ? 何が?」


香純「――っ!」ピキーンッ!

香純「あ、私ちょっとトイレ行ってきますね」

…ガタッ!


華子「いてら~」

オリヴィア「だって、臭いって言われるより……さ?」

華子「うん」


香純「……!」

香純(まずい……この流れは……まずい!)

香純「……!」

スタスタスタスタ!

香純「……!」

香純(この会話の流れは、絶対……!)

ガラッ!


オリヴィア「友達には、良い匂いって言われたいじゃないの///」

華子「も~、オリヴィアったら~! そんなの、友達なら当たり前じゃん!」


華子「――ねっ! 香純さんも、そう思うよね?」


香純「っ! え、ええ……そうですね」……ギギギッ


華子「ね~?」ニヤアァ~ッ!


香純「……!?」

香純(華子さんの、あの顔……間違いない)

香純(自分が平気になったからって、こっちを玩具にするつもりだ!)

オリヴィア「そ……そうかな?」チラッ

華子「そうだよ、オリヴィア!」

華子「オリヴィアの腋の臭いも、友情を壊す程の破壊力は無いって!」

オリヴィア「あの……威力で表現するのやめてくれない?」

華子「あっ、ごめんね! 罰として~、はい! 腋出して!」

オリヴィア「えっ!?……は、はい///」

華子「……」クンクンッ!


華子「スパァィスィー……!」ニヤァッ!


香純「っ……!」

オリヴィア「……っ」チラチラッ


香純「……!」

香純(オリヴィアさん……さっきからこっちを伺ってる)

香純(言わんとしてる事はわかるけど……)

香純(わかるけど……あ、無理。無理無理の無理)

香純(この距離でもわかる位だし……あ、ホント無理)


華子「香純すわぁ~ん」


香純「っ!? は、はい……!?」


華子「トイレ、行くんじゃなかったの?」ニヤニヤ!


香純「そ、そうでした! 行ってきま――」


華子「戻ったら、ちょっと嗅いでみようね☆」ニチャァッ…!


香純「――……す」

それからどしたの


オリヴィア「か……香純、無理しなくて良いからね」

香純「えっ! じゃあ!」

華子「無理なんかじゃないよ! ねっ、香純さん!」

香純「っ!?」


華子「私達の友情は、アポクリン汗腺には負けないの!」

華子「死線を乗り越えた先にこそ、輝く明日が待ってるの!」


オリヴィア「華子ぉ……!」…ジーンッ!

香純「いやあの、良いこと言ってる様に聞こえますけど……」

香純「さりげなく、殺人的な臭いだって言ってますからね?」

華子「さあ、オリヴィア! 香純さん!」

華子「二人の美しい友情を私に見せてちょうだいな!」


オリヴィア「う……うん///」

…スッ

香純「っ……!?」

香純(もう、逃げられないの!? 時、既に遅し!?)

オリヴィア「っ……!///」

…ススッ

香純「……ふぅっ!」

香純(視界がボヤけてきた! 腋、既にスパイシー!)


華子「……へへへ」ニヤニヤ!

華子「ほらほら! ガッと! ガッといこう!」

華子「ほら、脳が刺激されて英語得意になるかも知れないよ!」

華子「オリヴィア、見た目だけは英語得意そうだし」


オリヴィア「そんな筈無いでしょ!?」

香純「――ままよ!」クンクンッ!

オリヴィア「かっ、香純!?」

香純「あっ、あっ、あっ、あっ!」クンクンッ!

オリヴィア「怖い怖い怖い怖い!」


華子「あははははは! あははははは!」

華子「香純さん、ままよ、って! ままよ、って!」

華子「あははははっ! あっははははっ!」

前多「華子様が楽しそうで、この前多も嬉しく思います」

華子「いや、ホント! 用意してくれた鼻栓のおかげだよー!」

華子「目立たないし、全然臭いがしなくなるんだもん!」

前多「はい。時代は、高性能小型化ですから」

華子「うんうん! おかげで臭わなーい!」

華子「香純さんだけ至近距離で嗅いでないから、ずるいと思ってたんだよねー!」

華子「こういうのって、後々尾を引くしね!」


華子「――って前多――っ!?」


前多「はい」


オリヴィア・香純「……」


華子「あ……いや、違くて」

オリヴィア「華子?」

華子「……お茶目! ちょっとしたお茶目だよ!」

香純「じゃあ、鼻栓を取ってもう一回嗅ぎましょうか」

華子「えっ!?」

香純「お茶目ですよ。ちょっとした、ね」

オリヴィア「華子、私達……友達だよねっ!」ニコッ!

オリヴィア「って事で、前多ちゃん」


前多「はい」

ポチッ!


華子「っ!?」

スポンッ!

華子「は、鼻栓が……勝手に飛び出た!?」


前多「緊急脱出装置です、華子様」

華子「そんな高性能さは求めてないんだよ!」

オリヴィア「ほ~ら、おいで華子~」チョイチョイッ!

華子「指で手招きとは、セクシーじゃんオリヴィア……!」

華子「本当にセクシー……セクシー&スパイシーだよ……!」

香純「さあ、華子さん。遠慮せずに、ガッと。グワァッと!」

華子「……ふふふ、逃がす気はないみたいだね、二人共」


オリヴィア・香純「……」


華子「……」

華子「……ねえ、ちょっと待って」


オリヴィア・香純「待たない」


華子「あ、いや……誤魔化そうとか、そう言うんじゃなくて」


オリヴィア・香純「……?」

華子「何か……本当に、臭いを感じないんだけど」

オリヴィア・香純「はぁ?」

華子「オリヴィア! 腋! ちょっと腋!」

オリヴィア「ちょっ、ちょっと華子!?」

華子「……!」クンクン!


華子「……何も、感じない」


香純「まだ、鼻栓が詰まってるんじゃないですか?」

華子「そんな事無いって! ほら、見てよ!」

オリヴィア「は、華子……鼻の穴を見せつけるのはどうかと思う」

華子「何も無いでしょ!? ねっ!? ねっ!?」

香純「確かに……何も、入ってないですね」

華子「何なの……これ、どういう事!?」

前多「華子様。それも、鼻栓の効果でございます」

オリヴィア「でも……もう、鼻栓は取れたわよね」

香純「それなのに臭いを感じないって……」


前多「華子様はおっしゃいました」

前多「腋のスパイシーさを感じなくなるような鼻栓が欲しい、と」

前多「しかし! 開発は困難を極めたのです!」

前多「……そこで! 私共は、ある結論に至ったのです!」


華子・オリヴィア・香純「ど……どんな?」


前多「臭いを防ぐのでは無く!」

前多「臭いを感じる――嗅覚をぶっ壊してしまえば良いのだ、と!」


華子「何してくれてんの――っ!?」

オリヴィア・香純「……うわぁ」

前多「己の嗅覚よりも……友情を取る」

前多「華子様……御立派でございます……!」


華子「アンタが勝手に取らせたんでしょうが!」

オリヴィア「華子……まだ、臭わない?」

華子「……!」クンクン!

華子「全っ然臭わない! オリヴィア、やる気あるの!?」

香純「そこでオリヴィアさんを責めるんですか……」

華子「私の嗅覚、早く戻ってきて! カムバ――ック!」クンクン!

華子「ほら! オリヴィアも頑張って!」クンクン!

オリヴィア「はあっ!? が、頑張るって……」

香純「何をですか……」



華子「オリヴィアの腋の臭いを感じさせて!」



おわり

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