晶葉「できたぞ助手!アイドルがどんな恥ずかしい質問にも答えてくれるスイッチだ!」 (36)

晶葉「できたぞ助手! アイドルがどんな恥ずかしい質問にも答えてくれるスイッチだ!」

P「さすがあきえもん! プライバシーという現代では当たり前の人権を! 平然と蹂躙するその姿勢! その意欲! 担当プロデューサーとして驚嘆と戦慄を隠せない! やらしい質問攻めにたまらず顔を伏せ! 羞恥に頬を染め! 侮蔑の視線でねめつけてくるアイドルを思うだけで! 俺の心がバトルドォォォ―――ム!」

晶葉「マッドサイエンティストA・Iに不可能はない! 今日はいつにもまして素直だな、助手! 数々の企画を打ち立て成功に導いてきたその頭脳をこねくり回し、いったいどんな質問を考えているのやら! まったくもって興味深い!」

P「アイドルの信頼を損なわないギリギリのラインで、精一杯のえっちな質問をしたいと思っています」キリッ

晶葉「ふははははは! この変態め! しかし助手よ。このスイッチは強制力と引き換えに、質問の方法と内容が限定されてしまったのだ。期待させておいて正直すまないと思っている」

P「ふむ。それは致し方ない。では詳しく」

晶葉「サイコロだ」

P「サイコロ……? 運命をダイスに委ねるのか?」

晶葉「その通り。このスイッチの対象となった人間は、サイコロに書かれた質問に必ず答えなくてはならない。たとえそれがどんな質問であってもだ」

P「さすがマッドサイエンティスト……実験にゲーム性を加えることで、闇のゲームにも匹敵するスリルを演出するとは……脳が震える」

晶葉「では早速、実験室へ向かうとしようか」

P「高まる期待に俺のハートがビートを刻む」


 ――スタジオ


P「晶葉、待って。待って、晶葉」

晶葉「なんだ、助手」

P「実験室に行くんだよね? ここどう見てもスタジオだよね? というかどうしてラボの中にスタジオが? なんでウサちゃんロボがカメラ回してるの?」

晶葉「映像記録を残しておくためだが」

P「なるほど。映像記録。なるほど?」

晶葉「では今日のゲストの登場です!」

P「ゲストって言ってんじゃねえか!」

凛「ごきげんよう、プロデューサー」

加蓮「ごきげんよう、Pさん」

奈緒「……ご、ごきげんよう」

晶葉「三人ともよく来てくれた。大したもてなしはできないが、とりあえず座ってくれたまえ。助手も、ほら。高かったんだぞ、このソファ」

P「あー、うん。座るだけでわかる高品質。で、なにこれ。え? アイドルがどんな質問にも答えてくれるっていう実験なんだよね? テーブルを挟んでこれからどうするの? ウサちゃんロボが麦茶運んできたんだけど」

晶葉「案ずるな、助手よ。今回はトライアドプリムスの三人が対象だ。彼女たちはこのサイコロに書かれた質問に必ず答えなければならない」

P「うん、サイコロだね。大人が両手で抱えるサイズで、蛍光色で色付けされた面と、そこに書かれた愛嬌のあるゴシック体フォントとは裏腹に、ひと目でえげつないとわかる質問。そしてデカデカと書かれた『当』の字……ものすごく見覚えのあるサイコロを前に、脳内に流れ出す懐かしいBGM……郷愁の念が胸に押し寄せてくるというのに、サイコロの質問を前にして俺の胃がすくみあがってるんだが。あれ、もしかして俺、晶葉に騙されてる?」

晶葉「心外な。騙したつもりはないぞ(騙してないとはいってない)」

P「いや、でも。あの」

加蓮「Pさん、男は諦めが肝心っていうでしょ?」

P「アッハイ」

凛「えーっと? それでサイコロの目は……『今日の当たり目』、『自分だけが知ってるP』、『Pとの恥ずかしい思い出』、『Pがしてくれた気持ちいいこと』、『誰にも言えないPとの秘密』、『Pにずっと言いたかったこと』……か」

加蓮「出た目のお題について話さなきゃいけないのかー。当たり目以外は全部爆弾だねっ」

奈緒「なんでちょっと楽しそうなんだよ……地雷つきのサイコロを転がすとか、正気の沙汰じゃないぞ?」

加蓮「でも、ほら。私たちへの質問がこれなら……ねえ、凛」

凛「そうだね。ここまで過激なやつなら、期待ができるよね」

奈緒「くっ、それを出されると後には引けない……よし、やるぞ!」

凛・加蓮「どうぞどうぞ」

奈緒「えっ、あっ、ちょっ」

晶葉「奈緒が最初の犠牲者か……ほら、奈緒。サイコロを構えて。私がスイッチを押したらサイコロを軽く投げるんだぞ」


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奈緒「……Pさん、骨は拾ってくれよな……」

P「覚悟が重い」

晶葉「それでは、アイドルがどんな質問にも答えてくれるスイッチ……オン!」ポチッ

奈緒「南無三っ」ポイッ


ナニガデルカナ、ナニガデルカナ、ナニガデルカナ、ジャジャジャジャン♪

サイコロ『Pがしてくれた気持ちいいこと』


奈緒「うわああああああああああああああああ!!!」

凛「これにはさすがの渋谷凛ちゃんも興味津々かな」

加蓮「晶葉ちゃん、ポテトってある? なんでってほら、今なら奈緒をおかずに世界で一番美味しいポテトが食べられるじゃん? あ、ないんだ。ざんねーん」

奈緒「お前らなぁ……あとで覚えとけよ……!」

P「池袋。もう少しこう、なんというか……手心というか」

晶葉「かつて偉人はこういった。賽は投げられたと」

P「カエサルェ……」

奈緒「Pさんがしてくれた、気持ちいいこと……クソ、いいたくないのに、いっちゃいけないのに……ものすごくしゃべりたい!!!」

P「奈緒! 頑張れ、奈緒! 負けるな奈緒ッ!」

奈緒「やっぱレッスンのあとのストレッチが一番気持ちよかったな」溌剌

P「即堕ち二コマェ……」

加蓮「なにそれ」

凛「聞いてない」

奈緒「えっ、二人はしてもらったことないのか? 自主練のあととかに。Pさんと二人っきりで」

凛「ふーん? ストレッチしてるんだ? 二人っきりで? 組んずほぐれつ? ふーーーん?」

加蓮「晶葉ちゃん、Pさんに詳しい事情を聞きたいから、口が滑りやすくなるようにアブラ持ってきてくれる? 煙が出るくらい煮えたぎったやつ」

P「待て待て待て! 誤解だ! 奈緒はちょっと身体が固いから、あくまでもストレッチの効果を高めるためにだな!」

凛「奈緒、一番好きなストレッチは?」

奈緒「だいたい全部好きなんだけど……全身がクタクタになるまでほぐされたあとに……ぁ、仰向けになったあたしをPさんがまたいで……向かい合った状態で、片手で腰を抑えたまま、ゆっくり、こう……伸ばした片足を持ち上げてくやつ……体重をかけて、腰をがっしり抑え込まれて、抵抗できなくされて……足裏をぐーって伸ばされてると……なんか、その……すごく、いい……///」

加蓮「ふむふむ。松葉崩し寄りの締め小股」

凛「わかるの、加蓮」

加蓮「うん。えっと、手で説明すると……正常位がこうでしょ? で、松葉崩しがこれ。締め小股はこう。そして奈緒が言ってた体位は、つまりこういうことだから……」

P「バッチリネイルを決めた綺麗な指で! 四十八手の解説をするんじゃない!」

凛「どう考えてもセックスだ……」

P「ハムストリングスのストレッチだからな!?」

晶葉「奈緒、ストレッチのあとは全身が心地よい疲労感と倦怠感と、得も言われぬ幸福感に包まれたりするのか?」

奈緒「そりゃあ、まあ……うとうとして、仮眠室で寝てから帰ることもあるし」

凛「どう考えても充実したセックスだ……!」

P「ストレッチだっつってんだるォ!?」

加蓮「つまり仮眠室で奈緒が寝てたら、事後ってことだね」

P「ああああああああもおおおおおおおおおおおおおお!!!」

晶葉「掻きむしるな、掻きむしるな。毛根にダメージが残るぞ」

加蓮「よーし、じゃあ次は私がいくね。お、このサイコロ思ってたより重いんだ……よし、投げるよ」

晶葉「いいぞ」ポチッ


サイコロ『自分だけが知ってるP』

加蓮「あー、出ちゃったかー。出ちゃった以上はいわないといけないんだよねぇ」

P「なんでそんなに嬉しそうなの? なんでニヤニヤしてこっち見てるの?」

加蓮「この前、ちょっと調子が悪くなって寝込んだときのハナシなんだけど……」

P「……あ。こら、加蓮。待ちなさい。その話は内緒にするって約束だったよな?」

加蓮「でも、ほら。どんな質問にも答えなきゃいけないスイッチだから。てへっ」

P「そんないい笑顔をして約束を守れないような子に育てた覚えはきゅ」

晶葉「鮮やかすぎるチョークスリーパーだな。しかし加減しないと死ぬぞ、凛」

凛「大丈夫、ちょっと静かにしてもらうだけだから。それで? 加蓮。続きを聞かせてほしいな」

加蓮「いいよ、聞かせてあげる。Pさんはね、寝込んだ私が心配で看病しに来てくれたの」

凛「……それだけ?」

加蓮「うん。食欲があんまりない私のために、おかゆも作ってくれたんだ。めっちゃ美味しいやつ」

凛「看病に来て、おかゆを作って……それで? そのあとは?」

加蓮「ん? なにもないよ? おかゆを食べる私を微笑ましげに眺めた後、洗い物をして帰っちゃった」

凛「……本当にそれだけ? 他にはなにもない? 火照った加蓮の身体を濡れタオルで拭いてあげたり、体温を上げるには人肌が一番だとかのたまって、加蓮のベッドに潜り込んだりとかしてないの? ……ねえ、どうなのプロデューサー」

P「り、凛……答えさせる気があるなら、もう少し力を……」

凛「早く答えて」

P「……ああ、そうだよ。加蓮が言ったので全部だ。それ以上はなにもない……」

凛「嘘は言ってなさそうだけど」

奈緒「別に、内緒にするほどのことでもないような……?」

晶葉「そうだな。仮に助手が一人住まいのアイドルを看病したというのなら事情は変わるが、加蓮は実家だろう? ご両親もいるし、特に問題は……いや、そうか……なるほど。そういうことか」

加蓮「あ、晶葉ちゃんわかっちゃった?」

P「晶葉ァ……余計なことをいうnぎゅ」

奈緒「締まってる締まってる」

凛「つまりどういうこと?」

晶葉「単純なことだ。実家に看病に行ったら問題になるタイミングだったのだろう。ようするに――」

加蓮「その時、私とPさんはひとつ屋根の下で二人きりだったのです」

凛「親がいないときに男を家に上げるなんて……!?」

奈緒「凛、言い方」

加蓮「心外だなあ。というかPさんに看病頼んだの、お母さんなんだけど」

凛「親公認!?」

加蓮「お母さん、どうしても外せない用事があって……それでPさんなら信頼できるし。もしものことがあっても信用できるし」

凛「もしもってなに!? もしもってなに!?」

晶葉「凛、肩の力を抜け。それ以上いきむと、助手の首が海賊危機一髪みたいになるぞ」

凛「外堀はすでに埋めて……いや、まだプロデューサーのご両親とは……勝負はこれから……むしろ私がリードしてるはず……っ」ギリギリギリ

加蓮「あ、そういえばPさん。あの後のメールの返事、もらってないんだけど」

奈緒「加蓮、嬉々として樽に剣を刺してくのやめろよ……Pさんが本当に黒ひげになっちゃうだろ……」

凛「返事ってなに?」

加蓮「んん~? 凛、これ以上は私とPさんのプライベートってやつじゃないかなー」

凛「加蓮、鏡見てきたら? 言いたくてたまらないって顔に書いてあるよ?」

加蓮「んふふっ。まあね? でも、凛だって聞きたくてしょうがないって顔じゃん」

晶葉「それは私も聞きたいぞ。なんてメールしたんだ?」

加蓮「こんな美味しいおかゆを作ってくれる人が、ずっとそばにいてくれたらなって」

奈緒「あざとい。さすが加蓮あざとい」

凛「なんで返信しなかったの? 適当に返せばよかったじゃん。なのに返してないってことは、どう考えても意識してるってバレバレじゃん。どう返信すればいいのかわからないって筒抜けじゃん。なんなの? なに考えてるの? 加蓮と生涯を添い遂げる想像でもしたの? よくそれでプロデューサーが務まるよね? ねえ、聞いてる? ねえ!?」

晶葉「凛、そこまでだ。助手の顔がグロ画像の一歩手前になってるし、聞こえててももう酸素が供給されなくなってからずいぶん経つだろうから、答えるのにも時間がかかりそうだ。助手の釈明は後の楽しみに取っておくとして、このサイコロを受け取りたまえ」

凛「……わかった。早くスイッチを押して」

晶葉「ん」ポチッ

凛「――フンッ!」


サイコロ『Pとの恥ずかしい思い出』


凛「あー、仕方ないなー。これは仕方ないなー。言いたくないけど晶葉のスイッチには抗えないからなー(棒」

奈緒「いや、凛……投げてないじゃん……タッチダウンじゃんそれ……」

凛「つい力がね。いきんじゃって」

加蓮「晶葉ちゃん、これってアリなの?」

晶葉「出た目、だからな。自分で出した目でも問題はない。というかそういうのは想定してなかった」

凛「じゃあもう言うしかないよね。暴露するしかないよね。私とプロデューサーとの誰にも言えないような思い出を!」

加蓮「ふーん……おもしろそうじゃん。そこまで自信があるなら、ちゃんと聞いてあげるね」

凛「ごめんね、加蓮。プロデューサーが思わせぶりな態度とっちゃって……でもこれでわかるはずだから。私とプロデューサーの間には、誰もつけ入る余地がないってこと」

加蓮「ふふっ、凛ったら見栄を切るのがうまいんだから。それで? あんまりもったいぶってると、いざってときにどんな顔していいのかわからなくなるだけだから、さっさと言ったらどう?」

凛「そうだね。加蓮には悪いけど、その虚勢を張ったツラの皮、今すぐ剥がしてあげるね」

加蓮「ホントに敵わないなあ。自意識過剰と自惚れの金メッキには」

凛「ふふふふふ……!」

加蓮「あはははは……!」

晶葉「なあ、奈緒。これは噂に聞く恋の鞘当てというやつでは?」

奈緒「眼鏡買い直せよ……どう見てもチェーンソーでつばぜり合いしてるだろ」

晶葉「そうなのか? ところで奈緒は混ざらないのか?」

奈緒「火に油注ぐ趣味はないからな」

晶葉「はっはっは。いつの間にか席を移動して、首の据わらない助手に膝枕をしておきながらなにをいう」

奈緒「こ、これは応急処置だから。ほら、骨折したら当て木が必要だろ? それと同じだよ」

晶葉「うんうん、そういうことにしておこうか。……お? 助手、なんだ。ようやく喉から声が出るようになったか?」

P「晶葉……頼む……とめてくれ……」

晶葉「そうだな。おい、凛。加蓮とばかり睨み合ってないで、そろそろ助手との恥ずかしい思い出とやらを披露してくれないか?」

凛「よしきた」

P「晶葉、どうして……」

晶葉「ん? 凛と加蓮の争いを止めてくれという意味ではなかったのか?」

P「……博士は人の心がわからない」

凛「言いたくないけど、しょうがないよね。スイッチだもんね。ごめんねプロデューサー、二人だけの思い出だったのに。ところでなんで奈緒に膝枕してもらってるの?」

P「誰が俺の首を生後二ヶ月の赤ちゃんにしたのか、その細さからは想像もできない怪力を誇る手をだな、そっと胸に当てて考えてほしい」

凛「そ、そんな赤ちゃんだなんて……/// 私、まだ高校も卒業してないのに……」

P「うーんこの支離滅裂。認知バイアスを疑うほかない」

加蓮「あーあ、期待して損した。凛がそんなんじゃあ、Pさんとの恥ずかしい思い出とやらも高が知れてるね」

凛「言ったね、加蓮。じゃあ聞かせてあげる。私とプロデューサーの恥ずかしい思い出を……!」

奈緒「……Pさん、心当たりは?」

P「あったら身命を賭して止めているわけだが」

加蓮「ってPさんは言ってるけど? 凛、どうなの?」

凛「……ひどいよ、プロデューサー……私のことをあんなに激しく愛してくれたのに! あの情熱の一時はいったいなんだったの!?」

P「そんな事言われても見に覚えが……」

凛「私を裸にして! 全身を撫で回して! ビショビショになった女の子の大事なところをゴシゴシしたくせに!」

P「……アッ」

加蓮「あ?」

奈緒「は?」

晶葉「あー」

P「待った。凛、そういう言い方は誤解と災いと流血を招く」

加蓮「え、したの? Pさん。全裸の凛に愛撫したの?」

P「加蓮、違うんだ。頼むからハイライトを消さないでくれ」

奈緒「ふーん。グチョ濡れになった女の子の大事なところをナニでゴシゴシしたんだー。へー」

P「な、奈緒? なあ、いくら俺の首が赤べこなみのフレキシビリティだからってそれ以上は回らな痛い痛い痛い痛い」

凛「私がぺろぺろしたら、かわいいって言ってくれて……いっぱい撫でてくれたのに……」

加蓮「……Pさん、さんざん優しくしてから私も手篭めにする気じゃない?」

奈緒「どうする加蓮? 処す? 処す?」

P「誤解だ! 誤解なんだ!」

加蓮「じゃあPさんは凛を裸にしなかったし、柔肌には指一本触れてないし、ましてや大事なところをゴシゴシしてもいないんだよね?」

P「それは全部したけど」

加蓮「死刑」

奈緒「晶葉、ロープあるか? おっ、すげーな。ウサちゃんロボはハングマンズノットもできるのかー」

P「これには理由があってだな!?」

加蓮「うんうん、うら若き乙女にそこまでしてもいい理由があるなら聞かせてもらおうかな」

P「いいか、よく聞いてくれ。その時の凛は……メス犬だったんだ」

加蓮「……サイッテー」

奈緒「はぁー、やっぱ晶葉はすごいなー。見ろよ加蓮、あのウサちゃんロボの連携を。みるみるうちに十三階段が組み上がってくぞ」

加蓮「ねえPさん、遺書はどうする? とりあえず書き出しは『恥の多い生涯を送って来ました』でいいよね?」

P「誰が人間失格だコラ!」

奈緒「担当アイドルに手を出した挙げ句にメス犬扱いとか、どう考えても人間として必要な、最低限度の資質すら備えていないと思うんだけどな」

P「アイドルがメス犬になるスイッチだったんだよ! メス犬ってのは比喩でも何でもなくて! 俺はくっそめんこい黒柴になった凛をモフモフしただけなの!」

加蓮「じゃあ大事なところをゴシゴシしたってのは?」

P「モフモフしてたら凛が嬉ションしたから、ティッシュで拭いたんだよ」

奈緒「そのときムラムラした?」

P「犬のトイレの始末をしてるときに催すとかレベル高すぎだろ……どんなケモナーだよ……目の前の犬が凛だってわかってても、ただのわんことしか認識できなかったぞ、俺は」

凛「……そんな……それじゃあ、あれはただのお遊びだったっていうの……?」

P「凛には悪いけどそのとおりだ」

凛「……うっ……ぐすっ……」ポロッ

P「」

加蓮「凛……泣かないで……?」

晶葉「ここは泣ーかせたー泣ーかせた、とかいうコールで助手の精神をヤスリがけするところか?」

奈緒「これ以上Pさんの胃腸をいじめるなよ……てか凛、中途半端にクオリティの高い嘘泣きやめろ」

凛「……うそなきじゃないもん……」

奈緒「慰めのハグから泣き止むまでPさんのニオイを堪能してやろうって魂胆だろ。緩んだ口元から欲望が漏れてるぞ。生半可な芸はするなって、マストレさんにまた怒られたいのか?」

凛「――チッ」

P「マジかよ。アイドルの涙腺っていつから蛇口になったん?」

奈緒「マストレさんのレッスンの賜物だよ。それと加蓮。泣き真似に引っかかったふりして、Pさんをオタオタさせて遊ぶのやめろよな」

加蓮「ごめんごめん、途方に暮れてるPさんってなんか可愛くてさー」

P「真剣に友達を心配しているかと思ったらこれだよ。顔面の切り替えが早すぎる」

奈緒「まったく、大げさなんだよ演技が。ほら、凛の身振りが大きいから、サイコロがここまで転がってきてるじゃんか……」

P「あの、奈緒さん? 膝枕しながら足元のサイコロを拾うのは――おっほ」歓喜

奈緒「ん? あっ、ご、ごめんなPさん!」

加蓮「見た、凛?」

凛「見た見たー」

加蓮「奈緒ったら私たちにはあんなこと言っといてさー」

凛「サイコロを拾うふりして、プロデューサーの顔に奈緒っぱいを押し付けるとかさー」

奈緒「わざとじゃないからな! わざとじゃないからな!?」

加蓮「どうだか? そもそもなんでずっと膝枕してるのかなー?」

凛「まさか、すべては自分のアピールのため……最初からすべて計算ずくで……?」

凛・加蓮「「奈緒……おそろしい子!」」

奈緒「違うっていってんだろ!?」ブンッ

晶葉「あ、奈緒。八つ当たりといえどサイコロを投げると……」


サイコロ『当』


晶葉「お、今日の当たり目が出たな」

奈緒「は? 待ってくれよ。投げる前にスイッチ押してないだろ、晶葉」

晶葉「スイッチは一度押したらしばらく効力を発揮する。その状態でもう一度サイコロを投げると、また答えなきゃならんのだ」

奈緒「そういう大事なことは! 先に言えよッ!」

晶葉「すまんすまん。ただ運がいいことに当たり目ときた。視聴者からの質問に答えるのは奈緒じゃないから安心しろ」

P「…………………………待った」

凛「飛び起きたね」

加蓮「まだ首は据わってないけどね」

奈緒「……い、いきなり動くなよPさん……びっくりするだろ……」

P「失敬」

加蓮「あれー、奈緒? 膝からPさんの重さが消えてちょっと寂しい?」

奈緒「ち、ちげーし。暑かったからこれでいいし……」

P「晶葉、ちょっと待って?」

晶葉「なんだ、助手。生まれて初めて落雷を耳にした猫のような目をして」

P「うん、そうだね。いままさに人生最大の晴天の霹靂を食らった気分だよ。それで? ん? 視聴者ってなんのこと?」

晶葉「視聴者は視聴者だ。ほら、あれを見ろ。そう、カメラマンのウサちゃんロボだ。あのカメラを通じて、事務所の回線にこの映像を流している。この放送はCGプロのアイドルだけが知っているメンバーサイトにログインすれば、いつでも見ることが――」

P「そういう大事なことは! 先に言えよッ!」

晶葉「言ってなかったか? すまなかったな。さて、それはさておき助手。覚悟はいいか? 最初の質問だから大サービスだ。手心というものを加えてやる」

P「さも当然といった顔で、俺が質問に答える雰囲気を醸し出すのやめてくれる?」

晶葉「なにをいうか、助手。錬金術の基本原則は等価交換だ。アイドルに質問に答えさせたのだから、アイドルからの質問に答える義務がある」

P「その交換条件、一番最初に提示しなきゃいけないやつだよね!? 俺は絶対に答えないぞ!」

晶葉「我が叡智に抗おうというのなら抗ってみせるがいい」

P「神も仏もねえ……っ」

晶葉「ではではスマホアプリを起動して、と……質問がたくさん来てるぞ、助手。ははっ、人気者だな! ふむ……これだ! 素晴らしい質問が来ているぞ、助手! えー、ペンネーム『お料理得意なんです!』さんの質問」

凛「それペンネームの意味ある?」

加蓮「隠すつもりが微塵もない」

奈緒「一体どこのなにがし響子さんなんだろうな」

晶葉「『晶葉ちゃんのごきげんよう生放送、楽しみで楽しみでパソコンの前でずっと待ってました。加蓮さん、お体の方はもう大丈夫ですか? Pさんのおかゆ、気に入っていただけたようで何よりです! 私の秘密のレシピなんですよ、それ。よかったらお教えしますから、今度チャレンジしてみてください! Pさん、また二人でレシピ交換しましょうね!』」

凛「うーん、たったこれだけのセンテンスでわかる圧倒的独占欲」

加蓮「清々しいほどの敵意を感じる」

奈緒「勘ぐりすぎだろふたりとも……言葉通りの意味だろこれ……たぶん」

晶葉「『いけない、質問でしたね。それじゃあPさんにお聞きします。今まで食べたアイドルの手料理で、ベストスリーを教えてください! もちろん作った人の名前も添えて! 追伸。Pさんが褒めてくれたハンバーグ、さらにレシピを改良してぐんとパワーアップしました。また食べさせあっこしましょうね!』」

凛「この質問、ちょっと切れ味鋭すぎない? 全方位に」

加蓮「ナイフみたいに尖ってて、触れるものみんな傷つけてるね」

奈緒「真心いっぱいのちっちゃなハートを、ギザギザハートみたいにいうのやめろって……」

晶葉「いやー、じつに良い質問だ。加蓮に対して次は自分で作れと釘を差しつつ、自分と助手の関係性を強調し、さらに助手への呼びかけでこの放送を聞いてる他のアイドルを牽制した上で、手料理ベストスリーを聞くとは。一番美味しかった、ではないところにセンスを感じるな。事務所における手料理ヒエラルキーの上位に自分を位置づけながらも、ほかの上位者に対する警戒を怠らない。彼女はこの質問で、自分の手料理がどれだけ助手の胃袋を掴んでいるのか確認し、なおかつ競合他者の戦力を分析するつもりなのだろう。素晴らしい! 彼我の戦力を冷静に把握し、情報収集に余念のない姿勢は、まさに家計という財政を預かる主婦にふさわしい! 質問者はいいお嫁さんになれるな、助手!」

P「ほーほへんほ(ノーコメント)」

凛「いきなりネクタイ外したと思ったら……自分に猿ぐつわとか」

加蓮「なるほどねー。相手が聞き取れなくても、質問に答えたって理屈は成り立つか」

奈緒「いや、でも……それはどうなんだ? アタシたちがあんな思いをしてまで答えたのに……」

晶葉「ウサちゃんロボ、カモン!」

凛「フリップと、マジック?」

加蓮「言葉がダメなら文字で、か。ささやかな抵抗だったね、Pさん」

P「んんんんんんんん! ふぐうううううううううううううう!!!」

晶葉「ふははははは! 私のスイッチにどこまで抗えるか! 根性を見せてもらおうじゃないか、助手!」

凛「左手で右腕を必死に抑えてる……」

加蓮「Pさん、もう諦めたら? ネクタイ切れちゃうよ? あと血管も」

奈緒「当事者としては必死なんだろうけど、隣で見てても深刻な厨二病の発作にしか見えないのがなあ……」

P「フッ、フッ、フッ――! う、ふううううううう……うぅ……」キュッキュッキュッ

晶葉「最初から素直に書いていれば、無駄なカロリーを消費せずに済んだものを。よし、またせたな! ではペンネーム『恋のHamburg♪』さんからの質問、今まで食べたアイドルの手料理ベストスリー、どうぞ!」


フリップ『1.カツ丼(財前時子)』

    『2.豚の角煮(財前時子)』

    『3.豚の生姜焼き弁当(財前時子)』


奈緒「うそだろ……」

凛「時子さんが手料理……」

加蓮「お弁当……お弁当……? お弁当ってなんだっけ……?」

P「……ふっ、ぐ……うぐぅ……」

 テッテレテテ,テッテ♪ テッテレテテ,テッテ♪

晶葉「助手、電話だぞ」

P「…………………………ぶひい」


     ハラワタ
時子『――臓物をブチ撒けろ!』



P「ぶひっ、ぶひぃ……」ポロポロ

凛「まさかフリップ一枚で、事務所内のパワーバランスが一気に崩れるなんて……」

加蓮「時子さんが手料理ヒエラルキーの最上位に……質問者の『オムレツ画伯』さん、いまどんな顔してるんだろ」

奈緒「晶葉も奈緒もペンネーム間違えてるぞ……間違ってないけど……」

晶葉「大変なことになってしまったな、助手。時子様も相当お怒りだったんじゃないか? だから私はやめろといったんだ、人の差し入れを勝手に食べるんじゃないと」

凛「……差し入れ?」

晶葉「ああ。助手がそのフリップに書いた料理はすべて、ラボで不摂生をしている私のために、時子様が慈悲の御心で差し入れてくれた手料理の数々なのだ」

加蓮「じゃあ、つまみ食いってのは……」

晶葉「時子様の慈悲は偉大である。偉大すぎて一度に食べきれないほどにな。だから私は何度かに分けて、ありがたさを噛み締めながら食べているのだが、どこで匂いを嗅ぎつけたのか、助手がハイエナのような顔つきでやってきてこういうのだ。食べきれないなら手伝ってやるぞって」

奈緒「Pさん……大人としてそれはどうかと……」

晶葉「もちろん私は断るんだがな? いい年した男が視界の端で土下座していては、天上の極上ロースカツも味が落ちるというもの。私は時子様の慈悲と助あ手の情けなさ、そして刻一刻と冷めゆくロースカツの状態を鑑みて、助手にお情けをくれてやるというわけだ。そうだよな、助手。あとネクタイがよだれまみれだから早く外せ」

P「……晶葉、お前……」

凛「じゃあさっき、プロデューサーのスマホから時子さんの怒鳴り声がしたのは、照れ隠しとかそういうのではなく……」

晶葉「凛、想像してみてくれ。凛が心をこめて乃々に作った弁当を、プロデューサーが強引に半分食べたとしたらどうする?」

凛「恨み骨髄一〇〇万年」

晶葉「そういうわけだからな、助手。今後は時子様の差し入れに手を出さないように」

P「……すまなかった、晶葉。本当に……すまなかった……」

P(人の心がわからないだなんて……馬鹿か俺は。時子のプライバシーをとっさに守れるなんて……晶葉はちゃんと人を思いやれる、優しい子じゃないか……!)

晶葉「よーし、じゃあ次の質問だな! トラプリの皆さん、準備をお願いします!」

P「返せよ俺の謝罪をよぉぉぉおおおおおおおお!!! そもそも俺は質問に答えたはずなんですが!?」

晶葉「視聴者の質問にはな。等価交換の原則をもう忘れたか? 凛と加蓮と奈緒に質問したのだから、助手は三人の質問に答えなければならないんだぞ」

P「ちなみに質問って?」

晶葉「いま三人で書き換えてるところだ」

P「高校受験かよってくらい真剣な顔してサインペン握りしめてんだけど……え、二重線で消して書き直すだけでいいの? てかもうできたの? 早くない?」

凛「質問内容は予め決めてあったから。はい、プロデューサー。サイコロ」

P「……なになに? えーと、『トラプリで結婚するなら誰』だって? ははっ、初っ端からなかなか胃の痛くなる質問じゃないか。次は……ん? 『トラプリで生涯を添い遂げるなら誰』、『トラプリで幸せな家庭を築くなら誰』、『トラプリで花嫁にするなら誰』、『トラプリで入籍するなら誰』『トラプリでプロポーズするなら誰』……いやこれ全部一緒じゃん。ダメでしょこんなの。すでにサイコロじゃないじゃん。晶葉、これってチートだよね? 質問は無効だよね?」

晶葉「出た目の質問に必ず答えなければならない。それがたとえ、六分の六の確率で致命となるとわかっていても、だ」

P「ハハッ、四面楚歌。二千年の時を越え、項羽の無念が心に沁みる」

晶葉「では助手には虞美人を選んでもらおうか。潔くサイコロを投げろ」

P「やなこった。こんな形で人が秘めた想いを口にするなんて間違ってる。愛の告白は自由意志のもとで行われるべきものだ。晶葉、お前のこの発明は、人類が数千年の時を経てようやく獲得した、近代自由主義への反逆にほかならない!」

晶葉「この発明で、アイドルに精一杯いやらしい質問をしようとしていた男が何をほざくか」

P「馬鹿者! 俺の質問はどんなに頑張ってもただのセクハラだろうが! それに対してそこの三人の質問は俺の人生を左右しかねないんだぞ!? 見えない分岐路に手をかけているという事実がどれだけの恐怖か! 無限大の未来が残されているお前たちにわかるのか!?」

凛「御託はいいからさっさと投げて」

P「……参考までに、凛。俺がお前を選んだらどうするんだ?」

凛「晶葉に収録した映像のコピーをもらって、両親を説得するけど? もちろんプロデューサーも同伴で」

P「もうすでに胃がキリキリしてきた! じゃあ加蓮は!?」

加蓮「んー、私はもう両親も納得してるしー? Pさんのご両親に挨拶にでも行こうかな?」

P「もうやめて! とっくに俺のライフはゼロよ!? ということをわきまえて最後に奈緒!」

奈緒「あたしは……そうだな。Pさんがあたしを選んでくれるっていうなら……本屋、とか?」

P「なにしに?」

奈緒「二人でレシピ本とか見て……Pさんの好きな料理を教えてもらったり、して。あたしそんな料理とか、自信ないし……だからその……は、花嫁修業とか、しなきゃだし……///」

P「はぁー。一瞬でライフ全快だわ。ホンマもう、はァ~~~(クソデカため息」

凛「天使にふれたよ」

加蓮「ココロの容量がいっぱいになりそう」

晶葉「奈緒お前そういうとこだぞ」

奈緒「な、なんだよみんなしていきなり……」

P「ごめん二人とも。俺もう奈緒と結婚するわ」

奈緒「えっ……そ、そんな……心の準備とか……まだできてない……///」

凛「待ってプロデューサー。やっぱり私も奈緒と結婚する」

加蓮「それは無理でしょ、凛。奈緒はPさんのお嫁さんになるんだから。奈緒と結婚するには奈緒のお嫁さんにならないと」

凛「なるほど、その手が――」

奈緒「ねえし! 言ってることめちゃくちゃだってわかってるよな、お前ら!?」

凛「でもよく考えたら、プロデューサーを私の嫁にすれば、芋づる式で奈緒も私の嫁になるんじゃない?」

奈緒「ならねぇよッ! どういう芋づるなんだよそれは!?」

加蓮「じゃあ凛がPさんをお嫁さんにして、Pさんが奈緒を花嫁にして、私が奈緒の嫁になれば、みんな幸せ万々歳だね」

奈緒「幸せなのは同意するけどな!? そういうのじゃねえだろ! Pさんもなんか言ってくれよ!?」

P「奈緒は俺が幸せにするから」

奈緒「……ばっ……おまっ…………ば、ばかッ……♡」

晶葉「それでは番組への苦情が殺到し始めたので、今回の放送はこの辺で。番組へのご意見、ご感想、助手への罵詈雑言などはスマートフォンのアプリから。またはシンデレラガールズ・メンバーサイトの投稿フォーラムからご応募ください。なお番組の参加希望者は、池袋晶葉へ直接ご相談を。袖の下、鼻薬、山吹色のお菓子のなどをご持参くださると、出演交渉がスムーズに進む場合がございます」





晶葉「できたぞ助手! アイドルとどっぷりドキドキ同棲生活ができるスイッチだ!」

P「さすがあきえもん! その旺盛な開発意欲と探究心、自分に素直な姿勢から生まれるベクトルはまさに猪突猛進! 魅力的だったりスキだらけだったり積極的だったりするアイドルたちを前に、ギリギリの崖っぷちで踏ん張っている俺の心などつゆ知らず! つま先立ちの魂を千尋の谷に突き落とそうとは! お前に人の心はないのか池袋晶葉ァ!」

晶葉「マッドサイエンティストA・Iにそんなものはない! というか崖っぷちで綱渡りをしているのが自分だけだと思ったら大間違いだぞ、助手! 今回のスイッチに関しては、止むに止まれぬ事情というものを理解していただきたい!」

P「というと?」

晶葉「先週のトラプリいちゃいちゃ生放送で激昂したアイドルにだな! 貞操観念が逆転した世界に面白半分で助手を送り込んだことがバレてな! ふははははは! 単分子ワイヤーリボンで縛り付けられ、長時間の拷問の末に私の魂は屈服したのだ!」

P「佐久間まゆ! 佐久間まゆ!」

まゆ「呼びましたか、Pさん」

P「ヒエッ……いつからそこに!?」

まゆ「ふふっ、通りがかっただけですよ?」

P「あの、つかぬ事をお聞きしますが、その台車に乗った大量のダンボールは一体……」

まゆ「これからまゆとPさんが過ごす施設に運ぶ食材ですけど」ニッコニコ

P「……え? 待って。ん??? いくら俺が影分身のカロリーを補うために常人の三倍は食べるっていっても、箱買いされたジャガイモやらタマネギやらを消費するのは相応の時間がかかるというか……」

まゆ「安心してください、Pさん。まゆと晶葉ちゃんで、しっかり計算して買ってありますから。それではPさん、まゆは食材の搬入がありますから、これで。晶葉ちゃん、Pさんへの説明、お願いしますね」

晶葉「うけたまわりました、ままゆさま」

P「……え? なに? どういうこと? なんでまゆの後ろをウサちゃんロボが隊列組んでダンボール運んでるの? なんなの? 引っ越し? えっ? これ全部食材? どういうことなの晶葉、ねえ、晶葉!?」

晶葉「七五〇時間だ」

P「???」

晶葉「助手には、ままゆさまと二人きりで、七五〇時間過ごしてもらう」

P「ごめん、ちょっとなに言ってるかわからない」

晶葉「言っただろう、アイドルとどっぷりドキドキ同棲生活ができるスイッチだと」

P「えっ……えっ?」

晶葉「見てもらったほうが早いな。瞬間移動スイッチ」ポチッ

P「ここは……?」

晶葉「ラボの地下に建造したシェルターだ。立派なものだろう? 来るべき核戦争を見越して十年分の食料を備蓄し、内部には空気と水の永久循環システムが構築してある。助手にはここでままゆさまと生活してもらう」

P「嫌です」

晶葉「そうか。では明日の今頃、またラボに来てくれるか。たぶん縛り首になった私がどこかにぶら下がっているだろうから、菩提を弔ってほしい」

P「そんなに切羽詰まってんの?」

晶葉「今回ばかりはガチのガチだ」

P「マジか……しかしな、社会人には仕事というものがあるんだ。いきなり長期休暇は取れないし、そもそもこのシェルターのデザインが気に食わないというか、この隔壁のツラ構えはどこからどう見ても、内部で非人道的な人体実験が行われてるとしか思えないんだが……ちなみにシェルターの呼称は?」

晶葉「Vault346だが?」

P「こんな所にいられるか! 俺は事務所に戻るぞ!」

晶葉「待ってほしい、助手。よく考えるんだ。その選択で本当にいいのか? 次の土日が休みなのは知ってるぞ。久々の連休で何をする?」

P「そ、それは……その日の気分と体調で……」

晶葉「その日の気分と体調? 明日は久しぶりの休みだウェーイwww奮発しちゃうぞーwwwって盛り上がってコンビニでビールと焼鳥をたらふく買って、時間も年齢も気にせず暴飲暴食し、二日酔いと胃もたれのダブルパンチで最悪の朝を迎えるだけだろう? そんな体たらくで充実した休日が過ごせると思ってるのか?」

P「やめろ。心に刺さるからやめてくれよ……ていうかなんで前の休日のこと知ってるんだよ……」

晶葉「時間は取り戻せないんだぞ? 限りある時間を助手は何度無駄にしてきた? スマホをペチペチして気づいたら夕暮れだったことは? ネットの海に意味も目的も理由もなく、ただぷかぷか浮かんで、マウスをカチカチするだけじゃないのか? 自炊するつもりだったはずがタイムセールを逃し、売れ残った半額惣菜を能面のような顔で何回レンチンしてきたんだ? 動画配信を見ながら食事をして、PCの電源を落として、散らかり放題の部屋が無音無明になった瞬間、ああ、パソコンと同じように俺の人生も電源を落とせたら、なんて思ったことがあるんじゃないか?」

P「あああああああああ! ああああああああああああああああ! 頼むからやめろくださいいいいいいいいいいいい!!!」跪いて顔を覆う

晶葉「なあ、助手。最後に仕事の付き合い以外で他人にメールをしたのはいつだ? プロデューサーではない助手のメールボックスには何が入ってる? 近況報告はあるのか? 昔の友人が今何をしているのか知っているか? たまり続ける広告メールを消す気力もないまま、惰性でスマホを充電して、やってくる月曜日を前に無理やり目を閉じ、お前はこれからあとどれだけ、今日も一日を無駄にしたと思いながら、最後に洗ったのがいつかも思い出せない、汚い枕に顔をうずめるんだ?」

P「やめろっつってんだろテメェ! 俺が好きでそんな生活してると思ってんのか!? 社会人なんてクソくらえだ! 春休みも夏休みも冬休みもありゃしない! 時間をカネで切り売りして! 心と体をすり減らして! スキマ時間をネットとソシャゲで潰すだけの人生!

 通販でポチったアイテムをダンボールから出すことすらおっくうで! 部屋を埋め尽くすアマゾンのニヤついたロゴを眺めるだけの日々! バベルのごとく積み上がる新品の本とマンガとゲームとプラモとDVDを横目に、ゲームのイベントで時間をすりおろす休日!

 レコーダーのHDDはとっくにパンパンで……見たいのに見る時間がない! いつか見よう見ようと思っていた動画が数年も前に配信終了していたときの、あの言いようのない虚脱感! ああそうさ! なにかしたいのに、なにかしなきゃいけないのに、なにもできずに一日が終わる! そんな毎日をもう何年も繰り返して……俺だって、俺だって遊びたいさ!」

晶葉「つまり、時間がほしいんだな?」

P「時間が欲しくない社会人が日本にいるわけねえだろ!?」

晶葉「そんな助手にかつてない朗報。二日間しかない休日が、一ヶ月のバカンスに。そう、Vaultならね」

P「いやさすがにそれは不可能じゃ……」

晶葉「私が誰か忘れたのかね、助手? 私の辞書にも不可能の文字はないのだ。単純に核シェルターを作るだけでは、私の欲求は満たされなかった……そこで助手から借りたマンガのあの部屋を再現しようと思ったのだ」

P「二日間を一ヶ月間に……まさか、精神と時の部屋……!?」

晶葉「ふははははは! ご明察! といっても、あそこまで時間を加速させることはできなかったが……ただ原作とは違って空気も重力も地球と同じだ。室温と湿度もしっかり設定してあるし、もともとがシェルターだから、人間が長期間、健康的に生活するために必要な施設が全て揃っている。外に出られないのと太陽がないことを除けば、インドア派の助手には軽井沢よりも快適なバカンスを約束するぞ」

P「だが待ってほしい。ワールド・ワイド・ウェブに呪われた現代人にとって、ネット環境から一ヶ月間も切り離されることは、社会からの解脱にも等しい。悟りを開くにはこの身は煩悩にまみれ過ぎている……四八時間が七五〇時間にまで加速されるということは、相対的に回線速度が死ぬということではないのか?」

晶葉「そこに気づくとは流石だ、助手よ。実験でもシェルター内の回線が50Mbpsから2Mbps前後まで低下した。動画を見るには心もとない数字だ。しかし心配ご無用! 私は即座に回線速度の増強に踏み切り、あらゆるコネを使った結果、アナコンダの如き通信ケーブルをシェルターにブッ刺すことで実測1Gbpsを達成したのである! これで加速中でも60Mbpsは出る計算だ! 好きな動画配信サービスを好きなだけ堪能するがいい!」

P「嘘だろ……見たかったあの長編アニメが! とんでもない話数の海外ドラマが! Vtuberの配信が! 一ヶ月間も快適な環境で見れるなんて……そんなっ!」

晶葉「そして極上のホームシアターシステムがすでに構築済みである! 奏、小梅、涼の三人にも大好評で、戦争映画では亜希が太鼓判を押し、比奈も某戦車アニメの爆音上映にはご満悦だったぞ! 地下だから防音も完璧。どんなにボリュームを上げても絶対に壁ドンされない! 並の映画館では考えられないゴージャスでボリューミーなサラウンドを、最高級のソファで独り占め! どうだ、助手! お前のなけなしの休日をここで過ごしたくなってきただろう!」

P「最高だぜ晶葉! まゆと二人きりという条件がなければ、今すぐにでも荷物をとってくるんだけどな!!!」

晶葉「ここまでお膳立てして首を縦に振らないとは……私の命がかかってるんだぞ? そんなにまゆゆさまが信用出来ないのか?」

P「まゆはちょっぴりアレだけど、常識あるししっかりしてるし、それにいざとなるとポンコツだから全く心配してないんだが……」

まゆ「――誰がぽんこつなんですかぁ?」ニュッ

P「どうしていつも後ろから話しかけるの? というかなぜここに?」

まゆ「食材の搬入って言ったじゃないですか。それよりどうやって、エレベータを使ったまゆより先に、ここまで降りてきたんです? ねえ、晶葉ちゃん……まゆに教えてない秘密の隠し通路とか、ありませんよねぇ……?」ハイライトオフ

晶葉「しゅっ、瞬間移動スイッチを使ったので! お渡しした見取り図に存在しない通路は決して存在しません!」

P「まゆ、晶葉が怯えてるじゃないか。スカートの裾からリボンをにょろにょろするのやめなさい」

まゆ「ふふっ、ごめんね晶葉ちゃん。Pさんのこととなるとつい……それで、Pさん。誰がぽんこつなんですかぁ?」

P「ご存知、ないのですか!?」

晶葉「こら助手っ……煽るなっ……ままゆさまを煽るんじゃないっ……」小声

まゆ「心外です。Pさんにそんなふうに思われてたなんて……これは本気でわからせてあげるしかありませn」

P「ほう、何をわからせてくれるのかな?」

晶葉(疾い……っ! 初動が見えなかった……! 裾からリボンが垂れた瞬間、すでにままゆ様の手を握っていた……ッ!)

まゆ「ま、まゆが……どれだけPさんのことを好きなのか、ですよぉ……?」

晶葉(ままゆ様、持ち直した! 握りあった手と手にリボンを蛇のように絡みつかせてラッピング! さあ、どうする助手!)

P「……じゃあ、まゆにもわからせてやらないとな……俺が、まゆのことをどれだけ想ってるか……」

まゆ「ひぁっ……///」

晶葉(踏み込んで! 耳元で! ウィスパー! ままゆさまがひるんだ! リボンがしなびたワカメのように垂れ下がるゥ!)

P「ほーらやっぱりポンコツじゃないか」

まゆ「……ぽんこつじゃないもん。Pさんがステキすぎるのが悪いんだもん……」

P「なにいってんだか。ほら、ウサちゃんロボが待ってるぞ。食材、運ぶんだろ?」

まゆ「えっ? そ、それじゃあ……いいんですか? 本当に? まゆと、一ヶ月も……」

P「ああ、大丈夫だ。心配はもうなくなった。手料理、期待していいんだよな?」

まゆ「はいっ! もちろんです! 張り切って作っちゃいます! ふふっ……ふふふっ♪」

P「輝かんばかりの笑顔だった……にしてもすごい量のダンボールだな。一か月分以上はあるんじゃないか?」

晶葉「……たくさん食べてほしいんだろ。それで? 心配がなくなったっていうのは?」

P「ん? ああ。ほら、一ヶ月もまゆと二人きりだと、多分いろいろハプニングがあるだろうし、自家発電もできなさそうだし、もう自分を信用しちゃいけないって思ってたんだけどさ。まゆの顔を見たら、なんかこう、守ってあげなきゃなって思ったんだ。あの笑顔を曇らせるかもしれない、なにもかもから。それで、この気持ちがあるなら大丈夫だって、覚悟ができたんだ」

晶葉「お前そういうとこだぞ」

P「なにが?」

晶葉「……なんでもない。それより次の土日まであまり日がない。今すぐ準備をしておいたほうがいいぞ。実質、一ヶ月の旅行と変わらないからな。シェルターに搬入するものを選んでおいてくれ」

P「なんでも持ち込んでいいのか?」

晶葉「ままゆさまと生活するんだから、それを踏まえた上で判断するように」

P「……待って。十六歳の女の子とひとつ屋根の下で生活する上で、アウトなものがわからない」

晶葉「ふむ。では十四歳である私が判断してやろう。とりあえず何を持ち込むつもりだ?」

P「ずっと積んでるフレームアームズ・ガール」

晶葉「えっ……?」

P「ああ!? なんだよ! いい年した大人が美少女プラモを組むのは気持ち悪いってか!?」

晶葉「いや、私は全然平気だが、ままゆさまがどう思うか……」

P「まっ、まゆは人の趣味をとやかくいうような子じゃないから!」

晶葉「そうではなく。そのFA:Gは助手の手で組み立てられるわけだろう? 表面処理をして、プロポーションを整えて、最終的に塗装するわけなんだろう? 自分だけの色に染め上げてしまうわけだ。いくらプラモデルとはいえ、ままゆさまが自分ではない女の子に助手がのめり込む様を見るのは……しかも二人きりの状況だぞ? 下手をしたら、Pさんどいてそいつ壊せない、なんてことに……」

P「ま、まゆは……そういうのわかってくれる子だから」

晶葉「助手、それはままゆさまに甘えているのではないか? 優しい子だからきっとわかってくれる、などという思い込みを押し付けるのはやめたほうがいい。これから二人で過ごすのだから、きちんと話し合うべきだ」

P「いや、しかしどう切り出したものか……まゆに隠れてこっそり作ったほうが――」

まゆ「まゆに隠し事、するんですかぁ?」

P「……なんでまゆはいっつもバックアタックするの? いつからそこに?」

まゆ「ついさっきです。搬入が終わったので、倉庫の整頓はウサちゃんロボさんに任せちゃいました。それで、Pさぁん……まゆに何を隠してるんですかぁ?」

P「そっ、それは……その」

まゆ「晶葉ちゃん」

晶葉「はっ、ままゆさま。詳細はこちらのタブレットに」コトブキヤオンラインショップ

まゆ「……ふれーむあーむず・がーる、ごうらい……?」

晶葉「俗に言う美少女プラモデルというやつです。助手はバカンスの間にこれを作るつもりのようです」

まゆ「……ちょっとえっちじゃないですか、これ。後ろとかこんな……えっ、こんなえっちなの、売ってていいんですか?」

晶葉「日本は平和(意味深)ですので」

まゆ「まゆは、Pさんのちょっとスケベなところも好きですけど……でも、こういうのを一緒に暮らす場所で作られるのは……その」

P「ああ、うん……そうだよな……ごめん」

晶葉「ままゆさま、ままゆさま、少し小耳を拝借」

まゆ「なんです?」

晶葉「いいですか、ままゆさま。男にとって趣味というのは人格の一部です。趣味の否定というのは非常にネガティブなメッセージを与えます。見てください、あの助手の顔を。捨てられた子犬のような眼差しを。対外的に助手の精神は戦車みたいな装甲をしていますが、身内からのストレスには非常に弱いんです。ここでままゆさまがエッチなプラモは嫌だといえば、助手の心には一生消えない十円傷が残るんです」

まゆ「だから、目をつぶれと? せっかくの二人きりなのに、まゆじゃない女の子に夢中なPさんの背中を、ハンカチを噛み締めて見つめていろと?」

晶葉「ままゆさま、助手と同棲できるからといって浮かれポンチになって、本来の目的を忘れていませんか?」

まゆ「……ハッ!? そうでした、これはPさんとの来るべき将来のための予行演習……つまり、まゆとPさんが結ばれた後には、この試練が待ち構えているということなんですね?」

晶葉「そうです。この試練を乗り越えた時、ままゆさまは正妻戦争における圧倒的なアドバンテージを手にします。……勝ちたくはありませんか、戦争に」

まゆ「……勝ちたいです。晶葉ちゃん、まゆはどうすればいいのでしょうか?」

晶葉「一緒にFA:Gを作ればよいのです」

まゆ「えっ? でも、まゆプラモデルとか触ったこともありませんし……それに、あんなえっちなのは……まゆ、よく知りませんけど、プラモデルってたくさんあるんでしょう? わざわざ女の子のやつじゃなくても……」

晶葉「助手がどうしても美少女プラモを作るのに抵抗がある?」

まゆ「……はい」

晶葉「いいですか、ままゆさま。FA:Gはたしかにちょっとエッチです。でも男ってやつはエッチなやつに惹かれてしまうものだし、そもそもエッチさでいえばFA:Gよりもままゆさまのほうが、もっとずっとエッチです」

まゆ「もうちょっと言い方がありません?」

晶葉「ありません。認識を改めてください。助手にとってFA:Gはちょっとエッチでかわいい。でもままゆさまはもっとエッチでもっともっとかわいい。そこはわかりましたね?」

まゆ「わ、わかりましたから……えっち、えっちって……そんなにいわないでください……///」

晶葉「よろしい。さて、ままゆさまはプラモ未体験とのことですが、それでいいんです。人間には証明欲求というのがあります。人に何かを教えたいという欲望です。未経験者に経験者が教えたくなるのは、木から林檎が落ちるのと同じくらい当たり前のこと。趣味という底なし沼に沈みきった人間が、仄暗い沼の底からご新規さんを引きずり込もうと手を伸ばすのは、もはや人間の本能。ままゆさまは初心者として助手に助言を請い、助力を願えばいいのです。密室で。二人きりで。密着して。共同作業……! さあ、想像してみたください、ままゆさま」

まゆ「密室で……二人きりで……密着して……共同作業……///」

晶葉「そうです。それが一ヶ月の間に何度もあります。そしてままゆさま、いいですか? ここがいちばん大事なところです。プラモデル未経験者のままゆさまでも、FA:Gには、ままゆさまにしかできない工程があります。普通のプラモデルには存在しないが故に、経験者である助手にも未知の領域でありながら、作品の最終的な完成度に大きく影響する重要なファクター。私が美少女プラモを強く推すのはこの工程があるからです」

まゆ「……え? プラモデル、ですよね? まゆにできることがあるんですか?」

晶葉「あります。FA:Gは女の子です。可愛い女の子をさらに可愛くするために必要なのは、メイクです。助手と二人で作り上げたFA:Gを、ままゆさまが心を込めてお化粧する……そうして生み出された美少女プラモは、もはや二人の愛娘といえるのではないでしょうか?」

まゆ「ま、まなむすめ……っ!?」

晶葉「むしろ愛娘以外の表現がありましょうか。ままゆさま、決心してください。今しか機会はないのです。助手の部屋に積まれている轟雷が生まれてくるには、今この時をおいて他にありません。今年の冬には轟雷改Ver2.0が発売されます。助手のことですから何も考えずにポチって、数えきれない罪をまた一つ重ねるのでしょう。そうなればただでさえ作られる可能性の低い轟雷が、永遠に積みプラの谷に埋もれてしまう……積まれるために作られたわけではないのに。部屋の片隅で、ホコリを被ったまま、誰にも組まれることなく忘れ去られる……そんな轟雷を救えるのは、ままゆさまだけなのです」

まゆ「ごうらいちゃん……」

晶葉「ままゆさま、同棲生活が終わっても、FA:Gは記憶とともに残ります。助手の部屋のショーケースに飾られることとなるでしょう。ショーケースの娘を見るたびに、助手はままゆさまのことを思い出すのです。楽しかったな、またまゆと一緒に作りたいな……そしてそんな想いを募らせた助手に、ままゆさまがブキヤオンラインのページを見せていうのです。新しい轟雷ちゃんも可愛いですね。一緒に買って妹を作りませんか、と。この誘いを断れるほどの意志力は助手にはありませんし、模型を作るスペースというのはプライベートの中のプライベート。ままゆさまがゴリ押しすれば、助手の部屋で一緒に作るということにも……」

まゆ「あっ、まゆ知ってますよ? プラモデルってものすごく時間がかかるんですよね? それを二人で作るんですよね? たくさんPさんのお部屋にいられるんですよね? そしたらお腹も空いちゃいますから、ご飯も作らないといけませんし、二人で夢中になりすぎて終電もなくなっちゃって、そのままなし崩し的にお泊りの流れですよね? Pさんと一晩をともにしちゃうんですよね? お風呂上がりのまゆにムラムラしちゃったPさんと、夜の共同作業ということも有りえますよね? そうですよね晶葉ちゃん」

晶葉「おっしゃる通りで。付け加えておくと、プラモを作るために足しげく通う様は、はたから見れば通い妻になるかと」

まゆ「そっ、そんな……妻だなんて/// まだ入籍もしてないのに……///」

晶葉「それに、趣味に理解のある嫁というのは何物にも代えがたい財産です。一緒にプラモをしてくれてお化粧までしてくれるとか、結婚を前提としたお付き合い以外に考えられないでしょう。正妻戦争はままゆさまの勝利で間違いありません。いかがでしょうか、ままゆさま。助手と一緒にプラモを作るというのは」

まゆ「はい、決めました。まゆがごうらいちゃんを産みます!」

晶葉「ふははははは! 話はまとまったぞ助手! ままゆさまが御仏にも等しい慈愛の心で、轟雷を一緒に作ってくれるそうだ!」

P「いったいどんな手品を使ったんだ晶葉!? こうしちゃいられねえ、まゆ、出かけるぞ! とりあえずブキヤ(実店舗)に直行だ!」

まゆ「えっ、それってデートですか!? デートですね!?」

P「ああ、そうだ! 模型屋で彼女連れの男を見るたび、塗料が浸透して関節パーツがバラバラに割れる呪いをかけてきたが、今日という今日は俺が奴らに目にもの見せてくれる! まゆの顔面偏差値に瞠目して、彼女にケツをつねられればいいんだ! ふははははは! 愉快痛快気分爽快! 行くぞまゆ! 近隣の模型屋という模型屋にお礼参りをしてやるぜ!」

まゆ「えっ、えっ? あの、Pさん、今日はまゆ、おニューのパンプスなので、たぶんそんなに歩けないんですけど……」

P「歩けなくなったら抱っこしてやるから!」

まゆ「地の果てまでもお供しますっ!」フンスフンス

晶葉「……行ったか。それにしても本当にままゆさまは、助手が関わると、こう……ポンコツなんだな……。まあいい、これで助手とままゆさまのドキドキどっぷり同棲生活は確定した。計画の第一段階はクリア……あとは二人がシェルターに入居する前に、依頼された例のスイッチを完成させるだけだ……今日も一日、がんばるぞい!」


 ――土曜日、午前0時。Vault346隔壁前。


晶葉「……来たか、ふたりとも」

P「おっす晶葉。なんだ、顔色が悪いな? 唇もカサカサだぞ?」

まゆ「晶葉ちゃん大丈夫ですか? まゆのでよければリップクリームお貸ししますよ?」

晶葉「平気だ。二人が快適なバカンスを過ごせるよう、徹夜でシェルターの調整をしていたのでな」

P「晶葉、お前……なんていいやつなんだ! 感激のあまりにキスしたいという衝動が抑えきれない! 右ほっぺにちゅーしてやる!」

まゆ「じゃあまゆは左ほっぺに、ちゅーです♪」

晶葉「(ハンカチで右頬を拭いつつ)私が言うのもなんだが、お前らテンションおかしいぞ?」

P「社会人になって幾星霜。思い出せないほど遥か彼方に置き去りにした、少年時代の夏休み。社会という同調圧力の中でもがき苦しみのたうち回ったその果てに、ようやく俺は純粋だったあの頃に戻れるんだ。汗と涙と血と泥と煤で汚れた心を、俺はやっと洗濯できる。これに心躍らずは人間に非ず!」

晶葉「ああ……うん……? そうか……うん、疲れてるんだな、助手」

まゆ「まゆは今日という日が楽しみすぎて、お布団に入っても全然眠れませんでした。だからPさんが迎えに来てくれるまで、ずっとバカンスのしおり(Vault346マニュアル)を読んでたんです。きゃはっ☆」

晶葉「ままゆさま、落ち着いてください。キャラがおかしなことになってます。シェルターに入ったらまず寝ましょう。ご安心ください、シェルターには家事代行ウサちゃんロボが待機してます。助手は一日二日はほっといても大丈夫ですから、とにかく寝ましょう」

まゆ「えっ、でもせっかくPさんと一緒に過ごせるのに……もったいなくて眠てられなんかいられません! まゆは力尽きるまでPさんと添い遂げる所存です!」

晶葉「これはいかん。助手、ままゆさまがご乱心だ。シェルターに入ったらシアタールームに直行して、膝枕して差し上げろ」

P「合点承知の助」

晶葉「ままゆさま、助手にはバカンスに関する最後の伝達事項がありますので、先にシアタールームに向かってください。ソファーの向きを調整して、ブランケットやドリンクなどの準備を整えるのです。助手の膝枕で安らかな眠りに落ちるための、ベスト・オブ・ベストプレイス環境を構築するのです」

まゆ「まあ素敵っ! それじゃあ、Pさん。クーラーボックスに水と氷と瓶コーラ、ありったけ詰め込んでおきますね」

P「まゆサイコー。あとセットする映画なんだけど」

まゆ「紅の豚ですよね? 知ってます」

P「まゆすき。ほんとまゆすき」

まゆ「ふふっ。あとでたくさんナデナデしてくださいね……♡」

晶葉「……いや、もう。すごいな。ままゆさまのあんなに高いスキップ、見たことないぞ」

P「エレベーターからここまで、二人で手をつないでスキップしてきたぞ? るんるんるーんって」

晶葉「見てなくてよかった。さて、助手にはシェルターの調整と平行作業で作っておいたこれを渡しておこう」

P「そんな余計な仕事するから徹夜になるんだぞ? で、なんだこれ。缶コーヒーくらいの大きさの……なんだこれ? 思いっきり『DANGER』って書いてあるけど。」

晶葉「耐圧、耐熱、耐衝撃容器だ。Dのほうスクリューキャップを外すと中のスイッチが押せるようになる」

P「なんのスイッチだ?」

晶葉「助手の忍耐力を極限まで高めるスイッチだ。己自身の性欲からままゆさまを守護ろうとする、その心意気に感じ入ってな。このスイッチを使えば、数週間もの発電停止状態にある助手に対し、ままゆさまが助手の想定を超えたアピールをしてきたとしても、助手の心は凪いだ海のように穏やかなままとなる」

P「このスイッチを使うことはないとは思うが……ありがたく受け取らせてもらおう」

晶葉「そうだな、ままゆさまはそこまで助手を困らせるようなことはするまい。転ばぬ先の杖というやつだ。だがもしも使うような自体になったら、覚悟してほしい。そのスイッチは特に強烈だし、臨床試験もやっていない。下手をすると息子さんがずっと寝たきりになる可能性もある」

P「き、危険すぎる……だからこんな頑丈な容器に入ってるのか」

晶葉「うむ。ちなみにR側のキャップから電池を入れる構造になってる。貞操の危機が迫ったときは焦らず容器の向きを確認してから、フタを外して使うんだぞ」

P「わかった。他にはなにかあるか?」

晶葉「なにもない。いいか、助手。中に入ったらマニュアルどおり、内壁を閉鎖して、安全確認をして、ちゃんと隔壁灯を点けるんだぞ。つけ忘れたら一ヶ月のバカンスがおじゃんだからな。それと困ったときもマニュアルだぞ。もし二人で解決できない問題が発生しそうになったら、メールすること。時間差によって私の対応速度がお役所並みに遅くなっていることを忘れるな? それとメールが出来ないような状況であれば、最終手段の緊急停止ボタンだ。ただし私が問題を状況を判断して、外から施設を停止させるまでには時間がかかる。それだけは忘れないように」

P「わかってるよ、晶葉。マニュアルは俺も読んだし、たぶんまゆは暗記してるから」

晶葉「それならいいんだ。それじゃあ、助手。よいバカンスを」

P「ああ。たっぷり楽しんでくる! 行ってきまーす!」

晶葉「……行ったか。さて、コンソールは……ん、内壁閉鎖を確認。隔壁灯、点灯よし。発電、冷却、循環、通信、各システム以上なし。あと最終確認か……」



                     既読 私だ>
                     00:08
<はろー
    00:08
                  既読 稼働するぞ>
                  00:08
<ばっちこい
      00:09



   どっぷりドキドキ同棲生活 一日目


P「最高環境での、紅の豚……よさみがすぎる……よかった……本当によかった……さて、次は何を見ようか。ククク……新作やら準新作やら、店員さんが二度見するレベルで借りてきたからな。よし、次はこれだ。話題作とは聞いていたが、インド映画ということで見送り続けてきた――」

まゆ「ん、んむぅ……?」

P「あ、起こしたか、まゆ。まだ寝てていいぞ? 全然寝てないんだろ?」

まゆ「……いえ。世界で一番幸せになれる枕ですから、もうすっかり元気です。それに、あんまり寝顔を見られるのも恥ずかしいですし……」

P「安心してくれ。映画に集中してたから寝顔は全然見てない」

まゆ「まゆぱんちっ」ぽふ

P「ははっ、効かねえ。でもしょうがないだろ? あんまりにも可愛すぎてキスしたくなったんだから。映画を見るしかなかったんだよ」

まゆ「じゃあもう一回寝ますから、キスして起こしてください。ほっぺでいいので」

P「悪いが膝枕してる相手のほっぺにキスできるほど、俺の身体は柔らかくないんでな。さて、ディスク交換するからどいてくれ」

まゆ「はーい。次は何を見るんですか?」

P「インド映画」

まゆ「歌と踊りの?」

P「インド映画」

まゆ「まゆ、インド映画は初めてです」

P「ああ、俺も初めて見る。評判は凄いんだけどな、歌と踊りのイメージが強すぎて敬遠してたんだ。それに二部作で時間もなかったし。さて、ディスクを入れて……っと。字幕と吹き替え、どっちにする?」

まゆ「Pさんは字幕のほうが好きですよね?」

P「なんで知ってるの……? まあいいや、じゃあ字幕のままにして、っと」


   『バーフバリ 伝説誕生』

P「前が見えねえ」男泣き

まゆ「まゆ、マッハでお手洗いに行ってきますから、続きをセットしててください」

P「ブランケットをはねのけ、疾風のような勢いで駆け抜けていった……かつてないほどアグレッシブなまゆに驚きを隠せない……でもわかる。これは一気に見ないと何も手につかなくなるやつだ……」

まゆ「戻りました」

P「本当にマッハだった」

まゆ「Pさん、続きはセットしたんですか?」

P「ガンジス川の如く滂沱と流れるこの涙を、止めるすべを私は持たぬ」

まゆ「じゃあまゆが準備しますから、Pさんもお手洗いに行っておいてください。いいですね? 途中で再生を止めるようなことがあったら……わかりますよね?」

P「まゆの眼にシヴァガミ様が宿っておられる……」


   『バーフバリ 王の帰還』


P「ヤバインド」

まゆ「言い方」

P「はー。やっべー。マジやっべー。なんだこれ。やべーわインド。円盤ポチる」

まゆ「明日のご飯はインド料理で……何が作れるか、ちょっと調べてみますね」

P(密林でブルーレイをポチポチ、っと。そういや回線速度って本当に60Mbps出るのか? んー、グーグルのスピードテストだとだいたい30Mbpsくらいか。外の時間に自動補正されるタブレットの時刻表示を信じるなら、現在は土曜日の深夜一時前。アクセスが集中する時間帯だから、60Mbpsが出ないのも当たり前か……というか0時過ぎにシェルターに入って、映画三本見て、外では一時間も経ってないとかマジかよ。本当に二連休が一ヶ月のバカンスになるとか最高すぎる……)

まゆ「Pさん、なにか食べたいものってあります? インド料理で」

P「カレーとナン」

まゆ「わかりました。じゃあ出来たら呼びますから、Pさんはゆっくりしててください」

P「いや、一緒に作るよ。久々に料理もしたいし」

まゆ「そっ、そんな……初日から結婚生活の予行演習だなんて……バカンスが終わる頃には、いったいどんな激しい夫婦生活が待っているんでしょう……? いけません、Pさん……まゆはまだ高校生で……///」

P「そう解釈されるとは思わなかった。やっぱりやめておくよ」

まゆ「えっ……一緒に並んで、キッチンで夫婦の共同作業、してくれないんですか……?」

P「今日は記念すべき初日だろ? だから……まゆの真心一〇〇%の料理で、お腹いっぱいになりたいんだ」

まゆ「わかりました! ありったけの愛情を込めてきますから、Pさんは好きなことをしていてくださいっ!」

P「ホントちょろいな……行ったか。言動には注意しよう、うん。ここは地雷原のど真ん中だ」


   どっぷりドキドキ同棲生活 二日目


まゆ「おはようございます、Pさん」

P「……おはよう、まゆ」

まゆ「朝ごはん、できてますから。洗面所で顔を洗ってきてください」

P「………………………………」

まゆ「ちょっと、Pさん? どうして毛布をかぶるんです? 二度寝はダメですよぉ。せっかくのご飯が冷めて――」

P「……朝起きたら、あったかいご飯が用意してあるとか……もう無理……マジ感極まる……大人だけど涙が出ちゃう……ぼっちだもん……」

まゆ「え、えぇ……さすがのまゆも、ちょっとリアクションに困っちゃいます」

P「……ちなみに朝ごはんってなに?」

まゆ「ご飯とお味噌汁、卵焼きに塩鮭、あと漬物ですけど」

P「最高かよ……顔洗ってくるわ」

まゆ「はい。じゃあ食堂で待ってますね」

 シェルター・食堂


P「はー、うっま。何だこれうっま。朝から無限に米が食える。おかわり」

まゆ「うふふ……気に入っていただけて何よりです。あ、それでPさん、食べながら聞いてほしいんですけど」

P「はふはふ」

まゆ「バカンス中の時間割をまゆなりに考えてきたんです。シェルターの中は照明の強弱で昼夜を再現してますけど、やっぱり窓がありませんし、生活のリズムを乱さないためにも、時間を決めて行動していくことが大事だと思うんです」

P「せっかくのバカンスなのに?」

まゆ「せっかくのバカンスだからこそ、です。Pさん、仕事がないと好きなだけ好きなことをしてしまいますよね? 目の下にこびりついたクマがいい証拠です。今日は何時間寝たんです?」

P「んー……二時間くらい?」

まゆ「今日はこのあと、何するつもりでした?」

P「せっかくだし、ぶっ倒れるまで映画見ようかなって」

まゆ「……まゆ、怒ったほうがいいですか?」

P「俺は、まゆには優しいままでいてほしい」キリッ

まゆ「じゃあ優しいまゆでいられるように、時間割を決めて、メリハリをつけて生活してもらいますね」

P「バカな……とっておきのキメ顔が利かないだと……!」

まゆ「ほっぺにご飯粒つけていわれても、ちょっと可愛いなくらいにしか思いませんよ」

P「しまった……くそっ、これもまゆの炊いたご飯が美味しすぎるせいだ……(もぐもぐ」

まゆ「というわけで、これが時間割です」

  七時起床。
  八時朝食。
 十二時昼食。
 十五時おやつ。
 一九時お風呂。
 二十時夕食。
 二三時就寝。

まゆ「この時間割の中で、さらに毎日一時間、Pさんにはまゆと一緒にジムで運動してもらいます」

P「……いや、待って。いくらなんでも健康的すぎない? 十一時に寝て朝七時に起きるの? ニチアサがライヴで視聴できるじゃん。シェルターだから見れないけど」

まゆ「文句を言う前に鏡を見てください。まだまだPさんは若いですが、若い頃の不摂生は年をとってから急激に来るといいます。今のうちに生活リズムを矯正しないといけません。まゆと一緒に幸せな老後を過ごすためにも」

P「人の人生を自分の人生設計を勝手に組み込むのはどうかと思うけどなぁ……まあ健康になるのは悪いことじゃないし、座ってばかりじゃ身体も鈍るしな……それにせっかくまゆが考えてくれたんだし、この時間割でやってみるか。ちなみにこれは時間厳守なのか?」

まゆ「睡眠時間以外は、臨機応変ということで」

P「わかった。ご飯食べたら、運動にしよう」

まゆ「まゆはジャージに着替えてきますね。洗い物は流しのたらいに浸けておいてください。では、ジムで」


 シェルター・ジム


P「これが狙いだったのか……まゆ」

まゆ「ええー、なんのことですかー? まゆはただ、運動の前のストレッチをお願いしただけですよぉ?」ニマニマユ

P「じゃあ断ってもいいよな?」

まゆ「もちろんかまいせんよ? そのときはPさんのストレッチは、奈緒ちゃんだけの特別なものだって、みんなに言いふらしちゃうだけですから」

P「クソッ! 網にかかった獲物ににじり寄る蜘蛛のような目つき……タレ目と相まって、すごく蠱惑的なのが腹立たしい! ええい、ままよ! そこに座れまゆ! まずは前屈からだ!」

まゆ「Pさぁん? まさかとは思いますが、当たり触りのないストレッチで、お茶を濁すつもりじゃないですよねぇ? まゆは奈緒ちゃんがいつもしてもらってるのが――」

P「本当に奈緒にいつもやってるやつでいいんだな?」

まゆ「はぁい、もちろんです。まゆの全身を、隅々まで、Pさんの手でほぐし……痛ぁっ!?」

P「はっはっは、そりゃ奈緒はレッスンのあとにやってるんだぞ? 身体があったまってない状態でやるとかなりキツイんだが……仕方ないよな。まゆがやってほしいって望んだんだからな」

まゆ「あっ、ちょっと!? Pさん!? まゆの身体はそんなに曲が、まがらっ、あっ! ああーッ!?」

   どっぷりドキドキ同棲生活 十日目


まゆ「Pさん……お願いがあります。今日は、一緒のベッドで寝ませんか?」

P「ハハッ、何を仰るお嬢さん。プロデューサーであるこの俺がそんなことを許可すると思って――」

まゆ「せっかくの夏だし、一度くらいホラー映画を見ようって言い出して! 怖くなったら抱きついていいからって! 甘い言葉で誘惑して! 無理やり見させたのはどこのどなたですか!?」

P「ああ、うん。ごめん。何回謝ったかわからないけど、ごめん」

まゆ「本当に、もう! 本当に! なんであんな怖いシーンでヒーハーヒーハー大爆笑できるんですか!? さすがにPさんの人間性を疑いましたよ!?」

P「キャンプ場でリア充どもが無残に殺されるのを見てると、この上なく胸がスカっとする」

まゆ「どういう頭してるんですか!? まゆなんか、最後のボートのところで失神するかと思ったんですからね!?」

P「うん。あそこは俺もびっくりした」

まゆ「ですよね!? 精神が破綻しかかってるPさんでも怖かったんですよね!? なら責任をとって一緒に寝てください! 今日はもう一人じゃ怖くて眠れません!」

P「まゆにdisられるの、思ってたよりずっと辛い」

まゆ「辛いのは私ですからね!? こんなにお願いしてるのに、どうしてまゆのワガママを聞いてくれないんですか!?」

P「ワガママなのは自覚してるんだね。でも流石に担当アイドルと同衾っていうのはね、プロデューサーとしての倫理に反するというか」

まゆ「一緒に寝てくれないなら、おねしょしますよ?」

P「想定外のパワーワードがきたな……」

まゆ「さあ、選んでくださいPさん。まゆと一緒に寝るか、まゆが寝るまで抱きしめているか! いますぐ選んでください。さあ!」

P「もはや二択ですらねえ。ちょっと考えさせてくれる?」

まゆ「ダメです! もうまゆは限界なんです! 映画が終わってから怖すぎてお手洗いにも行けないんですよ!? そもそも同衾うんぬんっていうなら、もうすでにPさんはまゆと一緒に添い寝してるじゃないですか! 今更なにを考える必要があるんです!?」

P「……待った。俺がいつ誰と添い寝をしたって?」

まゆ「あっ」

P「まゆ、こっち見なさい。目を見て答えなさい。俺が、いつ、まゆと、添い寝をしたって?」

まゆ「……ま、まゆの妄想の中のことで……てへっ」

P「どんなにまゆが可愛くても、本当のことを言わないと非常停止ボタンだぞ。事が事だけに、バカンスを棒に振っても構わないからな」

まゆ「……抱き枕スイッチ、です」

P「あーはいはい。なるほどね? 抱き枕がアイドルにしか見えなくなるアレね? つまり俺が抱き枕だと思って抱きしめたり、おっぱいに頬ずりしたり、髪を撫でたりキスしたりしてたのは、本当はアイドルだったわけね。あとで晶葉には泣く子も黙るくすぐりの刑をしてやる」

まゆ「ち、違うんです! 晶葉ちゃんは悪く……いえ、悪い子ですけど。抱き枕スイッチはまゆが半ば脅迫したようなもので」

P「リボンで縛って拷問にしたのか?」

まゆ「まゆはそんなひどいことしませんよ。リボンをにょろにょろさせて凄んだだけです。Pさんはいったいどんな目でまゆを……Pさん? あれ? Pさーん?」

P「……ん? あ、すまん。聞いてなかった」

まゆ「どうしたんですか、いきなり上の空になって」

P「いや、なんだかな。まゆが晶葉にひどいことをしてないって聞いたら、何かとてつもない、筆舌に尽くし難い悪寒が、こう……背筋をだな」

まゆ「そうですか。ところでPさん、ちょっといいですか?」

P「なんでしょう」

まゆ「まゆ、Pさんの抱き枕になったあの日のことは、昨日のことのようによく覚えてるんですけど……おっぱいに頬ずりされた覚えもありませんし、髪を撫でられて、さらにキスまでしてもらっただなんて……そんな幸せな記憶、どこにもないんですけど?」

P「筆舌に尽くし難い悪寒が背筋を這い上がる」

まゆ「な・い・ん・で・す・け・ど」

P「それは、その……」

まゆ「Pさん? まゆの目を見て、答えてくれませんかぁ……?」

P「……お、俺の妄想の中のことで……てへっ」

まゆ「そうですか。じゃあ、まずは一緒にお手洗いに行ってもらえますか? 追求はその後でしましょう。ええ、もう今日は一緒に寝てくれなくても構いません。だってPさんがどれだけ抱き枕スイッチを使ったのか……一晩でその全容が解明できるという保証は、どこにもありませんから」

P「……それでは、お手洗いへご案内します、ままゆさま」

   どっぷりドキドキ同棲生活 二〇日目


まゆ「……うーん、やっぱりおかしいですねぇ」

P「どうした、まゆ。経費申請を見つめるちひろさんのような目をして」

まゆ「あっ、いえ。まゆとPさんの好き好きらぶらぶバカンス生活も、残すところあと十日になったので、食材の在庫を計算したんですよ。腐らせてはもったいないですし」

P「当たり前みたいに好き好きラブラブとか言えるメンタルになってしまったまゆに、なんというか少しさびしい気持ちがしないでもないが……なにかおかしかったのか?」

まゆ「ええ。大雑把な説明ですけど、搬入した量を一〇として、使った量を六だとすると、残りが一二になるんですよね」

P「なにそれこわい。増えちゃうワカメじゃん」

まゆ「そうなんですよ。常温保存できる食材の在庫は合ってるんですけど、冷凍できるものとか、缶詰やレトルトの保存食の在庫が全然合わなくて……」

P「増えてるってことは、搬入量が記載されてるより多いってことじゃないか?」

まゆ「そう考えるしかないんですけど……まゆと晶葉ちゃんで、一か月分の食料を計算して用意したので……」

P「晶葉があとから買い足したんじゃないか? シェルターが何らかの障害で開かなくなって、一ヶ月のバカンスが延長する可能性もないわけじゃないだろうし。食料が足りないっていうならともかく、余っているなら、あれこれ考えても仕方ないと思うが」

まゆ「それもそうですね。じゃあ気を取り直して、今晩は何がいいですか?」

P「さっぱりしたものが食べたい気分だから……鍋とか」

まゆ「あ、いいですね。冷凍庫から鱈を出しておきましょう。あと鍋なら〆が必要ですし……」

P「なら冷凍うどんも出して――」

まゆ「おじやです」

P「……うどn」

まゆ「まゆ、Pさんのおじやが食べたいなぁー」

P「なあ、まゆ。バカンスの三日目くらいだ。今日くらいは俺が作ろうかっていったら、まゆ、なんて言った? 一緒に作るのはともかく、俺が一から十まで作った料理を食べるのはみんなに悪いから、料理は可能な限り自分がするって言ったよな?」

まゆ「もちろん覚えてますよ? でも、まゆピンと来ちゃったんです。鍋の〆のおじやを二人で分け合うのって、おかゆよりももっとずっと夫婦っぽいなーって」

P「それを今ここで持ち出すかー」

まゆ「体感時間的には、もう一ヶ月くらい前ですよね、トラプリいちゃいちゃ生放送。加蓮ちゃんが羨ましいなぁ、Pさんの手作りのおかゆ……弱った身体にはさぞかし染みたんでしょうねぇ……いいなぁ、まゆもPさんのおじやを堪能したいなぁ……ふふっ。ねえ、Pさん? わかります? 大好きな人が画面の向こうで、自分じゃない女の子とイチャイチャしてるのを見せつけられてるときの気持ち。まゆの知らないところで、まゆの知らない顔を、まゆじゃない女の子に向けていると知ったときの気持ち。ねえ、Pさん……まゆの気持ち、わかってくれますか?」

P「……おじやだけでよろしいでしょうか」

まゆ「食べ終わったあとは、洗い物をしてください。そのあと、まゆに膝枕をしながら、Pさんのおじやでぽんぽこりんになったまゆのお腹を、ゆっくりさすってください」

P「それは……もちろん、服の上からだよな?」

まゆ「あっ、当たり前ですっ! いいいいくらPさんでも、ぽんぽんになったお腹は見せられませんっ!」

P(見るのはダメでも触るのはいいのか……基準がよくわからない……)


   どっぷりドキドキ同棲生活 三〇日目


P「ここでの生活も、これで最後だな」

まゆ「はい。少し名残惜しいですけれど……でも、たくさん思い出が作れましたね」

P「本当にな。まゆがちょっと前に幽霊がいると言い出したときは大変だった」

まゆ「Pさんは信じてくれませんでしたけど、本当にまゆは聞いたんですからね。女の子のすすり泣き」

P「うん、信じない。幽霊とか信じない。だってこのシェルターは東京の地下にあるからね。都市伝説とか信じない。逃げ場の一切ない密室で、そんな非現実的な存在を認められるほど、俺のメンタルはタフじゃない」

まゆ「Pさんも怖いんじゃないですか……」

P「もうこの話はやめようか。俺がしたいのは別の話だし」

まゆ「そうですね。他には、やっぱりごうらいちゃんでしょうか。プラモデルがあんなに可愛いとは思いませんでした」

P「ああ、俺も驚いた。やっぱまゆがメイクすると全然変わるんだよな。表情が生き生きとしててさ……一緒に作れてよかったよ」

まゆ「まゆ、今度はごうらいちゃんの服を作ってみようと思います。女の子ですもん、やっぱりオシャレしたいと思いますし」

P「そうだな。シェルターは時間はあっても材料がなかったからな……時間が合えば、手芸屋とか行ってみるか?」

まゆ「はいっ! 絶対ですよ?」

P「おう、約束だ。それでな、まゆ……最後だし、はっきりさせておきたいことがあるんだ」

まゆ「なんでしょう?」

P「俺に隠してること、あるよな」

まゆ「……いつ、気づいたんですか?」

P「バカンスが始まって、二週間くらいかな。確信したのは、今日だったが」

P(――そう、結構前から俺のパンツが何枚か行方不明になっていた。タンスのどこかに突っ込んで忘れたのだろうと思っていたが、荷造りして俺の部屋にはないことに気づいた。パンツが勝手にどこかに行くわけがない。ならば犯人は、ただ一人の同居人であるまゆだけだ)

まゆ「ごめんなさい……つい出来心で」

P「何枚、盗ったんだ」

まゆ「二枚だけ……」

P「どうしてこんなことをしたんだ」

まゆ「Pさんがいけないんです……幽霊がすぐそばにいるかもしれないのに、まゆと一緒に寝てくれないから……! 膝枕でPさんのニオイを覚えさせるから! もうまゆは、Pさんのニオイがないとぐっすり寝られないんです! だからPさんには悪いって思いましたけど……ごめんなさい! 怖くて仕方がなかったんです!」

P「わかった。素直に認めてくれたから、これ以上は責めない。悪いって思ってるならいいんだ」

まゆ「……まゆを、許してくれますか?」

P「ああ、許すさ。盗ったものを返してくれたらな」

まゆ「えっ………………???」

P「まゆ。この上なく純粋な瞳で、どうして? って小首をかしげるのやめよっか」

まゆ「えっ? だって……返すも何も、Pさんのものじゃないですよね?」

P「いやいや俺のものだから。俺が買ったやつだから」

まゆ「あの枕カバー、Pさんが持ち込んだものだったんですか?」

P「えっ?」

まゆ「えっ?」

P「……その、まゆは枕カバーの話をしてたの?」

まゆ「はい。Pさんが使った枕カバーを、こっそりまゆのと交換してましたけど……Pさんはなんの話をしてたんですか?」

P「パンツだけど……」

まゆ「パンツ? Pさんのパンツですか?」

P「うん……」

まゆ「えっ、じゃあPさんは、まゆがPさんのパンツを盗んだって思ってたんですか?」

P「荷造りして、部屋を空っぽにして、それでも何枚か見つからないから……てっきり」

まゆ「……最低です、ってまゆぱんちしたいところですけど、逆の立場だったら絶対、まゆのパンツをPさんが盗んだって考えてしまいますので、ぱんちはナシにしておきます。不問です」

P「じゃあ一体どこに行ったんだ、俺のパンツ」

まゆ「お洗濯だけは、ウサちゃんロボ任せでしたからね」

P「動力炉の排熱を使った温水洗浄と、乾燥室だったか。サハラ砂漠並に危険だから入るなって晶葉に念を押されてたよな……ウサちゃんロボが運ぶ途中に落としたとすると、立入禁止区域に取り残されてるのか……」

まゆ「シェルターが停止してから、回収してもらえばいいのでは?」

P「それしかないな……」

まゆ「ええ……それにしても、本当に、もう終わっちゃうんですね。Pさん、バカンスはどうでしたか?」

P「もちろん楽しかったよ。こんなに充実した日々は社会人になってから初めてだ」

まゆ「ふふっ、それはよかったです。Pさんのお休みをサポートできて、まゆも嬉しいです」

P「まゆは楽しかったか?」

まゆ「はい、それはもう。最初はPさんとの夫婦生活の予行演習、平成最後の忘れられない夏にするんだって息巻いてましたが……途中から、そういうのはもう忘れちゃってて……Pさんと一緒だと、こんなに幸せなんだなって」

P「……ずっと続いてほしい?」

まゆ「いいえ。まゆにとって、まゆの一番はPさんです。Pさんと過ごすシェルターはとっても魅力的です。でも……Pさんと同じくらい、大切なものが外にあるんです。まゆ、実はちょっぴり、寂しいんです。一ヶ月もみんなと会ってませんから。いまはすっごくお仕事がしたいです。みんなとレッスンして、精一杯自分を磨いて……それからファンの方たちに、まゆが感じているこの幸せを、少しでもいいから届けたいです」

P「まゆ……」

まゆ「えへへ。終わらない夏休みって、憧れますけど……でも、夏休みは終わらなきゃいけないんです。秋にはPさんにたくさん美味しいものを食べさせてあげたいし、冬にはかじかんだ手をPさんに握ってほしい。春がきたらお花見とかしたいですよね。もちろん誰かさんがキス魔になっちゃいますから、お酒は抜きですけど」

P「ウン、ソウダネ」

まゆ「そして次の夏は……ふふっ、皆で海水浴なんてどうでしょうか? スイカ割りしたり、花火をしたり、バーベキューとかもいいですね」

P「まゆは欲張りだなあ」

まゆ「はい、欲張りさんです。事務所に来たばかりの頃は、Pさんさえいれば、あとはどうでもよかったんですけど……気づいたら、Pさんと同じくらい、欲しいものがたくさん出来ちゃいました。まゆはどれか一つしか選べないのなら、迷わずPさんを選びます。でもまゆは、まゆの大切な全てを、この手につかみたいと思ってます」

P「いいんじゃないかな。まゆのワガママなところ、俺は好きだよ」

まゆ「……ふふっ。ありがとうございます、Pさん。いままでで最高のバカンスでした」



晶葉「出来たぞ助手! アイドルの顔面を別の女性に投影するスイッチだ!」

P「さすがあきえもん! アイドルとしてかつてない風格を漂わせるまゆを見送ったと思ったら!? シェルターから出てきたばかりの俺の手に! 何やらよくわからぬスイッチを押し付ける! というかそのツラはなんだお前! 一睡もしてないんじゃないか!?」

晶葉「マッド・サイエンティストA・Iに不可能はない! たとえ眠れぬ夜を何度重ねようともな! 改めて言おう、助手! おかえり!」

P「ただいま晶葉! 最高のバカンスをありがとう! これでまた明日から頑張れる! 晶葉さえ良ければいますぐ感謝を込めてキスしてやるぞ!」

晶葉「ノーサンキュー! しかし助手! 三十日間のブランクが有るとはいえ、まさかこうも腑抜けるとはな! それで私の助手が務まると思っているのか!?」

P「いやいきなりそんな事言われても……気分はワイハ帰りですし」

晶葉「まったくこれだからリア充は。これだからリア充は! 以前の助手ならそのスイッチの真価をゼロコンマ秒で察し、この私の偉大さを褒め称えつつDMMにログインしていただろうに……いかんな。これはいかんな」

P「……DMM……ログイン……アイドルの顔面を、別の女性に……投影……ま、まさかそれは……ッ!?」

晶葉「エンジンがかかってきたかァ? 助手ゥ! さあ、述べよ! お前の脳細胞が導き出したその答えをッ!」

P「一つ確認させてくれ……このスイッチは、映像記録の女性に対しても効果を発揮するのか?」

晶葉「愚問だな。この私を誰だと思っている?」

P「天才の中の天才! 隠匿されし叡智の権化! 追求と探求の果てに善悪の彼岸を行ったきりたりする者! その名はマッド・サイエンティストA・Iィィィイイイイイッ!!!」

晶葉「最後がなんかふわっとしたが、まあいい。助手よ、お前の問いに答えよう――イエスと!」

P「なんたることだ! なんたることだ! おお、神よ! あなたはなぜこのような痴性あふるる知性をこの地上に遣わしたのか!? デジタモザイクなコンテンツに出演する女性の顔に、アイドルたちのあの輝かんばかりのかんばせを投影するなどと……! 俺の息子が深刻な反抗期(♂)になってしまうではありませんか! サンキューゴッド!」

晶葉「ふはははは! それでこそ我が助手だ! 今度こそ心をこめて言わせてもらおう! おかえり、助手!」

P「晶葉よ! 私は帰ってきたァ!」

晶葉「うむ。では助手にこれをくれてやろう。私が死んだ魚の目で書き綴った、人類史上最も下品なロゼッタストーンだ」

P「このコピー紙はいったい……?」

晶葉「そのスイッチは、出演者に最も体型が近いアイドルの顔を投影するように調整した。そこに記されているのは、公表されている女優のプロフィールと、アイドルのスリーサイズを照らし合わせて作った変換表だ。女優の名前の横に、アイドルの名前が書いてあるだろう? つまりそういうことだ」

P「酒池肉林! 酒池肉林!」

晶葉「ふはははははは! 喜んでくれてなによりだ!」

P「しかし! 嗚呼、無情! なんてことをしてくれたんだ晶葉! ありとあらゆる男がシコリザルにならざるを得ない発明を手にして! 俺にはもう時間がない……! バカンスは終わり……! 無残にも……ッ! 明日からまた仕事! ご新規さんに華麗な土下座を披露する、土下座営業の日々ッ! 時間がっ! 時間さえあれば……腰振りシャンパンシャワーができるのにッ!!!」

晶葉「股間がのっぴきならない助手に、かつてない朗報をお知らせしよう。スマホを見るがいい。刮目せよ、今日の日付を」

P「スマホ……? 土日のバカンスが終わって、いまは月曜日のはずじゃ……」


 『日曜日 00:16』


P「おや、とうとうタイムマシンの開発に成功したのかい?」

晶葉「いや、まだだ。アレはどうにも思っていたより難しくてな……」

P「え? じゃあ何が起こって二日間の一ヶ月のバカンスが、一日の一ヶ月のバカンスになったん?」

晶葉「あらゆる物事には冗長性がなくてはいけない。わかるか、助手。無駄はなくしたほうがいいが、遊びはなくしてはならんということだ」

P「さっぱりわからん」

晶葉「土日の二日間を一ヶ月にするスケジュールの場合、なにかトラブルが発生した場合、月曜日に問題が食い込む可能性がある。そこで私は土曜日だけを一ヶ月にしたのだ」

P「はじめから、そう説明してくれればよかったのでは?」

晶葉「すると、土日で合計一五〇〇時間のバカンスだわーい、ってままゆさまが小躍りすることになってたぞ」

P「だからまゆを先に帰したのか……でも今日が日曜だって気づいたら、面倒なことにならないか?」

晶葉「平気だ、ままゆさまは私が言いくるめておく。それよりな、助手。私は感動しているのだ。Vaultから出てきた二人を見て、確信した。助手は己の信念を貫いたのだと。ままゆさまのアタックに耐えきり、己の職務を果たしたのだと。だから私は、助手にこのスイッチを使ってほしい。一ヶ月間、耐えに耐えた助手の、その鋼の精神力に敬意を表したいのだ」

P「通信速度が60Mbpsも出なかったのは、時間を一日に圧縮したから……在庫の合わない食料も、もう一ヶ月、俺が生活するためのものだったのか……」

晶葉「そうだ。全ては我が手中にある。行くがいい、助手よ。Vault346での快適な発電生活が待っているぞ。ままゆさまと二人では出来なかった、あらゆる背徳を愉しんでくるがいい」

P「一ヶ月ぶりの自家発電と、過去最高の燃料……間違いなく人生で最高の一夜が待っている……ああ、本当にありがとう、晶葉。それじゃあイってきます」

晶葉「ああ、逝ってらっしゃい」


                 既読 トラトラトラ>
                 00:21
<さあプライム・タイムだ
            00:22


晶葉「……許してくれ、助手。私はこうするしかなかったんだ……すまない、本当にすまない……」


                ・・・・
   どっぷりドキドキ同棲生活 三一日目



唯「おかえり、Pちゃん。ご飯にする? お風呂にする? それとも……ゆいえっちする?」

P「これは深刻、ヤバイ幻覚、マズイ幻聴、自覚症状。思考停止、バカンス中止、助けてドクター緊・急・停・止ィ!」ポチッ

唯「あははっ、ラップしながら停止ボタンとか超ウケるー」キャッキャッ

P「止まれッ! 止まれよッ! 晶葉、晶葉、晶葉……! クソッ! クソォ! なんで止まらないんだ! 晶葉……晶葉ァ!!!」ポチポチポチポチ

唯「電車は急に止まれないのと一緒だよ、Pちゃん。一日を一ヶ月に加速してるんだから、晶葉ちゃんのレスポンスは三〇分の一以下でー、シェルターの動力炉を止めるのに一分かかるとしても、こっちでは三〇分かかるんだよ?」

P「クソがっ! なんなんだ唯! なんなんだその格好は! ノーブラシャツにホットパンツだと……!? ただの部屋着なのにスケベすぎる……! めちゃくちゃ楽しそうな目で舌なめずりしやがって! いまの俺には目の毒でしかないんだよお前はッ! いつどうやって入ったか知らんが、シェルターが止まるまでの間、俺は逃げさせてもらうからな!」

唯「無駄だよ?」

P「無駄じゃねえ! いつもみたいに土下座スイッチを使って俺を動けなくさせるつもりだろうが、そうはいかん! スイッチを使うより早く物質透過状態に移行すれば、俺は土下座したまま地中に潜ることができる! 一か八かの大博打だが、プロデューサーとして一線を超える禁忌に比べればそんなのは――」

唯「うん、だから、無駄なの。それができないの。加速状態のシェルターから物質透過で通常空間にすり抜けたらどうなるか、晶葉ちゃんから聞いてない? 新幹線から飛び降りるようなものだよ? だからね、万が一の事態を想定して、このシェルターの構造材はPちゃんがすり抜けられないように作ってあるの」

P「……待って。ちょっと待って? どうして俺が聞いてないことを、唯が知ってるの?」

唯「ふふっ。もう、Pちゃんったら……本当はとっくに気づいてるんでしょ? ゆいがここにいる時点で、全部わかってるよね? Pちゃんがほしいのは考える時間じゃなくて、理解した事実を受け止める時間でしょ? あるいは……どうしたらゆいから逃げられるか、計算したいのかな?」

P「…………………………」

唯「そんな泣きそうな顔したって、だーめ。Pちゃんのことは何でもお見通しでーす。もう諦めて、おとなしくしよ?」

P「……わかった」

唯「うんうん、素直が一番♪ けど、先に言っておくね? 従うふりをして時間を稼いでも、無駄だよ? 絶対に月曜日が来るまでシェルターを止めるなって、晶葉ちゃんにお願いしておいたから。もうPちゃんは、唯と一ヶ月、このシェルターでイチャイチャらぶらぶするしかないからね?」

P「あのマッド・サイエンティストめ! また俺を売りやがった! 何度俺を裏切れば気が済むんだアイツは……!」

唯「んー、晶葉ちゃんの名誉のために言っておくけど、晶葉ちゃんは最後まで抵抗したよ?」

P「え……?」

唯「そこらへんにあったリボンで動けなくして、おもらしするまでお尻を叩いてあげたら、わかってくれたんだ。それで唯の計画に協力してもらったの」

P「けい、かく……?」

唯「うん。ゆいと、Pちゃんの、どっぷりドキドキ同棲計画」

 ――できたぞ助手! アイドルとどっぷりドキドキ同棲生活ができるスイッチだ!


P「まさか最初から……? いや、わからない……どこまでが唯の計画だ?」

唯「全部だよ」

P「いや、そんなわけ……だって、そうだとしたらまゆはどうなるんだ? まゆと俺が一緒に過ごすことになんの意味が……?」

唯「わからないかなー。わかってくれないかなー。わかってほしいのになー」

P「唯が、俺とまゆを一緒にした理由……? シェルターがちゃんと動くか確かめるため?」

唯「ぶっぶー。不正解~」

P「……じゃあ、なんだ? わからない……俺といたいだけなら、最初からバカンスを餌にして、シェルターにほいほいされた俺と、二ヶ月過ごすことだってできた。それをわざわざ半分まゆに譲る……? どうしてこんな回りくどいことを……」

唯「ふふふ。答えはねぇ、食堂で教えてあげるっ。ほら、ついてきてPちゃん!」


 シェルター・食堂


唯「はい、では正解がこちらになりまーす」ゴト

P「……こ、これは……まさか、時子の豚丼……」

唯「そう、時子さん直伝のトクセイ豚丼」

P「これが正解……?」

唯「うん。冷めちゃうといけないから、食べながら聞いてね」

P「わかった。いただきます」

唯「……ゆい、本当はね、Pちゃんにカツ丼を作ってあげたかったの。でもね、ゆいに揚げ物はまだ早いって時子さんが。泣いちゃうくらい悔しかったけど、本当にゆいのトンカツってダメダメだったから……それで、時子さんに聞いたの。どうしたらいいですかって。そしたら、誰にも教えないっていう条件で、ゆいでも努力すればなんとか作れるだろうって、この豚丼のレシピをくれたの」

P「うんうん、うんうん」

唯「ちょうど、ノート1ページ分のレシピでね? すっごい綺麗な字で書いてあって……でも、何が書いてあるのか全然わかんなかったの。たぶん時子さんも、ゆいのためにすっごく丁寧に書いてくれたんだろうけど……料理の基礎ができてないゆいには、もうなにがなんだかさっぱりで。とりあえず、レシピに書かれてる用語の意味をネットで調べて、ゆいでもわかるように翻訳したんだけど……それでも上手にできなくて。ゆいには何が足りないんだろうって必死に考えたんだ。それで出した結論が、経験が足りない、だったの」

P「なるほどなるほど」

唯「じゃあ、足りない経験を補うにはどうすればいいか。経験者に教えてもらうのが一番いいよね? でもそれだと時子さんのレシピを秘密に出来ないかもしれない。どうしよどうしよって考えて、晶葉ちゃんに相談することにしたんだ。トラプリいちゃいちゃ生放送の件についても話したいことがあったし。それで、晶葉ちゃんにいろいろと教えてもらって、ここを使わせてもらうことになったんだ」

P「そうかそうか。ごちそうさま。美味しかったよ、唯」

唯「えへへ、お粗末様でした。じゃあ食器、片付けちゃうね」

P「いや、唯は座っててくれ。洗い物は俺が――」

唯「いいからいいから。ゆいね、ずっと知りたかったんだ。好きな人がきれいに食べてくれた食器を洗うのって、どんな気持ちなんだろうって。毎日毎日、幸せそうな顔で洗い物をしてるまゆちゃんを見ながら、ゆいもやってみたいなーってずっと思ってたんだ」

P「……まい、にち??? まゆを……??? みながら……????」

唯「うん、そうだよ。ゆいはね、ずっと台所に立ったまゆちゃんを見てたの。食材の切り方とか、包丁の使い方とか。料理のときの火加減も、並行調理の方法も、食器の洗い方も、全部まゆちゃんを見て盗んだんだ。そしたらね、ゆいも自分でわかるくらいに料理が上達してったんだよ。やっぱり経験者に教えてもらうと違うよねー。まあ、まゆちゃんはゆいが見てることは最後まで気づかなかったみたいだけど」

P「!? ???? ??? !!!!????」

唯「……ああ、こんな気分だったんだね、まゆちゃん。このぴかぴかの食器に、これから毎日料理を作って、毎日Pちゃんに食べてもらえるんだ……ふふっ、想像するだけですっごい幸せになっちゃう……! うふ、ふふふふふっ!」

P「ゆ、唯……? い、いつからだ? 一体どこから覗いてたんだ?」

唯「もう、Pちゃんってばわかってるクセにぃ……もちろん最初からに決まってるじゃん。ゆいはぜーんぶ見てたよ。Pちゃんがまゆちゃんに膝枕して、紅の豚を見たことも。まゆちゃんの手作りのお菓子を食べさせてもらいながら、ずっとゲームしてたことも。二人で肩を寄せあってプラモデルを作ってたことも。女の子の幽霊のすすり泣きを聞いて、パニクったまゆちゃんをなだめるために、まゆちゃんが眠るまでPちゃんが手を握ってあげたことも。二人がこのシェルターで何をしてきたか。どんなことを話してきたか。全部、全部、知ってるんだよ。まゆちゃんが作った料理も一皿も残さず記録してあるし、Pちゃんがスクリーンで見た映画もアニメもゆいは一緒に見てたの。なーんにも知らないPちゃんと、まゆちゃんのすぐそばで、ゆいはずっとずっと二人を見てたんだよ」

P「そ、そんな馬鹿な。一ヶ月だぞ? 一ヶ月もお前は――!」

唯「うん。やっとわかってくれた? ゆいはね、監督官室にずっといたの。立入禁止区域のちょっと先にある部屋でね。壁一面にモニターがある以外は、よくある1DKのアパートみたいになってて。部屋からでなくても生活できるように設計されてるんだー」

P「……もしかして、まゆが聞いたすすり泣きって……」

唯「うん、たぶんゆいじゃないかな? すっごいよかったよね、宇宙よりも遠い場所! ゆい、ぼろぼろ泣いちゃって……たぶんその時の声が、通気口のどこかから漏れちゃったんだと思う」

P「そこまでしなくたっていいじゃないか……」

唯「あー、うん。ごめんね。ゆいもやりすぎたかなーって思う。気持ち悪いよね、ストーカーみたいで。でもしょうがないじゃん。だってゆいは――」

P「そうじゃない! 違うだろ、唯……そもそも一ヶ月もひとりぼっちとか辛すぎるだろ……そのために晶葉にひどいことまでして……そんな選択をするくらいなら、俺に相談してくれたっていいじゃないか……」

唯「んー、それは絶対に無理かなぁ。だってPちゃんオッケーしてくれないし」

P「一人で全部決めつけるなよ……手料理くらいなら、いくらだって食べるから……」

唯「あー、そっか。うん、そっかそっかー。Pちゃんはそういうふうに解釈しちゃたんだねー」

P「……はえ?」

唯「ごめんねー、ゆいの言い方が悪かったかも。食堂で答えを教えてあげるなんて言って、豚丼を出されたら勘違いもするよねー」

P「すまん、唯がなにを言いたいのかさっぱりわからないんだが」

唯「そうだよね。じゃあPちゃんにもわかるように、簡単な○×クイズしよっか」

P「お、おう……」

唯「第一問。ゆいはこれからPちゃんと一ヶ月、どっぷりドキドキ同棲生活ができるので、すっごく気分がいい。○か×か」

P「○じゃないの?」

唯「不正解」

P「えっ……? えっ!?」

唯「第二問。ゆいはPちゃんに豚丼を食べさせてあげたいから、どっぷりドキドキ同棲生活を計画した。○か×か」

P「ま、○だろ……? ○だよな……?」

唯「不正解」

P「うせやろ……」

唯「第三問。最後の問題だから、よーく考えて答えてね? ゆいとPちゃんは、恋人同士である。○か×か」

P「ははっ、逃げるしかねえ」

唯「監督官スイッチ~」ポチッ

P「ドアがっ! ドアが開かねえ!?」

唯「だめだよ、Pちゃん。答えてないのに逃げたら」

P「答えられるわけ! ないだろッ! クソォッ!」ドンッ、ドンッ

唯「Pちゃん、落ち着いて? いくらPちゃんでも、晶葉ちゃんが作ったドアだからね? キックも体当たりも無駄だよ?」

P「ああ、どうやらそうらしいな! すごく痛い! 畜生! 俺をどうするつもりだ、唯!」

唯「ふふふっ。じゃあ答え合わせしよっか。まず第一問の答え。ゆいはね、いますっっっごく怒ってるんだ。どうしてゆいの気持ちはPちゃんに届かないんだろう。Pちゃんはどうして浮気ばかりするんだろうって」

P「浮気なんか――」

唯「ああ、そうだね。浮気じゃないよね。奈緒ちゃんにしたのはストレッチだもんね。たとえ奈緒ちゃんがメス顔になってて、全身から抱いて、抱いてってサインを出してても、ただのストレッチだもんね。なら加蓮ちゃんはどうなんだろう? 家に一人きりの加蓮ちゃんにおかゆを作ってあげるのって、どうなのかな? ゆいは、べつにいいと思うよ? だってPちゃんはプロデューサーだもん。アイドルが大好きで、大切なの、よく知ってるから。でもゆいに一言もなかったよね? 一言くらい、いうべきだったよね? なのになんでいってくれなかったの?」

P「」白目

唯「凛ちゃんのことも教えてくれなかったよね。どうして? メス犬が欲しいなら、ゆいがペットになってあげるよ? 裸になって、首輪をつけて、Pちゃんの好きなところをペロペロしてあげるよ? なのにどうして凛ちゃんなの? まずゆいだよね? それにね、晶葉ちゃんから聞いたよ? 貞操観念が逆転した世界のこと……楽しかった? ねえ、Pちゃん……楽しかったよね? あんなに目を輝かせて、琴歌ちゃんと桃華ちゃんのお尻、たくさんたくさん叩いて……ゆい、Pちゃんにならどんなことされてもいいのに……どうしてゆいじゃない女の子にスパンキングしたの?」

P「な、なんでそのことを……見たって、いったいどうやって!?」

唯「映像記録あるの、知らなかった? あー、そっかー。じゃああれは晶葉ちゃんのお楽しみ用のやつだったんだ。桃華ちゃんが隠れてたカートにカメラがついてたの、気づかなかった? 全部バッチリ写ってたよ? Pちゃんすごく楽しそうだったね。泣き叫ぶ桃華ちゃんのお尻をばちんばちん叩いてさあ。帰ってきたあとも、晶葉ちゃんにしたでしょ? お仕置きっていって、ズボンの上から、思いっきり叩いたよね?」

P「ご、五回だけだ! 俺は、晶葉のケツは五回しか叩いてない!」

唯「そうだね、五回ならお仕置きで済ませられるよね。悪いことをしたら、お尻ぺんぺん。うんうん、わかるよ。それで? どうだった? 晶葉ちゃんのお尻の感触。どんな音がした? 思いっきり、全力で、晶葉ちゃんの身体が浮き上がるくらいの勢いで、分厚い手のひらを叩きつけて……Pちゃんの気分はどうだった?」

P「や、やめろ……俺は、俺は……っ」

唯「わかった、じゃあ一問目はここまで。次は第二問。ゆいがどっぷりドキドキ同棲生活を計画したのはね、Pちゃんを愛してあげるためなの。豚丼はその手段の一つであって、目的ではないんだー」

P「あ、愛するって……どうやって?」

唯「わからない? 本当に? どっぷりドキドキ同棲生活だよ? 一緒にご飯を食べて、アニメ見たりゲームしたり、お昼寝したりも大事だけど……同棲生活なんだよ? 完全に二人だけの世界で、一ヶ月も。この状況で愛し合わないなんておかしいよね? 恋人同士なんだもん。ご飯を食べたあと互いの身体を貪って、映画を見て盛り上がった気分のまま絡み合って、お風呂でまったり肌を重ね合わせて、ベッドで一つになったまま眠りに落ちる……とっても素敵な生活だと思わない? ゆいね、Pちゃんとまゆちゃんがおままごとをしてるあいだ、ず~っとこの日のことを考えてきたんだよ? 寂しいときはPちゃんのパンツで自分を慰めながら、ずっとずっと心待ちにしてたの……」

P「俺のパンツを盗んだのはお前かァ!」

唯「ごめんね、Pちゃん……ゆい、ガマンできなくって……でもね、そのおかげで……ゆいのカラダ、完全に準備できてるから……見て? おっぱいだってPちゃんに触ってほしくてビンビンになってるし……ココもね、とろとろのほかほかで、入れたら絶対に気持ちイイよ? Pちゃんずっとガマンしてたよね? まゆちゃんにそういうところ見せられないもんね? ゆい、知ってるよ? Pちゃんがもう限界なの。ゆいがいなかったらいまごろ、晶葉ちゃんから受け取ったスイッチを使って、一人えっちフィーバーしてるころだもんね」

P「ドスケベボディを見せつけるのをやめろ! ホットパンツを脱ぐんじゃない! ええい、来るな! 近寄るな!」

唯「ええー、でもPちゃんのPちゃんのPちゃんはそんなこと言ってないみたいだけど? ゆいのぬちゃぬちゃ温水プールで水浴びしたいよーって、ズボンの中で大暴れしてるじゃん? ねえ、意地を張るの、もうやめよ? ゆいを押し倒してさ、ビリビリってシャツを破いて、Pちゃんのためにおっきくなってる先っぽをいじって、キスして、舌と舌をくっつけて……パンパンになったPちゃんのを、ぬるぬるのゆいの中に押し込むの。好きなときに、好きなだけ出していいんだよ? ゆいがPちゃんを全部、受け止めてあげるから……だから、ね……? きて……♡」

P「く、くくく……ははっ! まったく、人のちんちんをイライラさせるのがうまいヤツだ……でもな、唯、知ってるか? プロデューサーは所詮、死ぬまでプロデューサー。他のものになど決してなれはしない。――見るがいい、これが俺の覚悟だ」

唯「そのスイッチは……?」

P「俺の忍耐力を極限まで高めるスイッチだ。シェルターに入る前、まゆを守護らんとする俺の心意気に感銘を受けた晶葉が、徹夜で作ってくれた。このスイッチを使えば、お前がどれだけドスケベであろうとも、俺は決して迷うことはない。代償として、息子が再起不能になる可能性があるが、なに、構いやしない。プロデューサーとはアイドルを導き、見守り、助くる者。決してアイドルを傷つけてはならない! 俺は俺の理想に殉じる!」

唯「んー、つまりPちゃんは、いまものすごくゆいにムラムラしてて、このままだとゆいのことをメチャクチャにして傷つけてしまいそうだから、二度とえっちができなくなってもいいっていう覚悟で、自分自身の性欲から、ゆいのことを守ろうとしてくれてるの?」

P「概ねそのとおりだ! ではさらばだ、我が息子よ! 遅すぎた青春とともに眠るがいい!」ポチッ

唯「……Pちゃん、小さくならないね」

P「くっ! まさか唯のドスケベちからがここまでとは……一度でダメなら効くまで重ねるまでよ! 我、不敗、也! 我、無敵、也! 我……最強なり!」ポチポチポチッ

唯「わっ、本当にちっちゃくなっちゃった……」

P「ふははは! 我、齢四十に至らずして惑わず! すまないなァ、唯! 俺はプロデューサーだ! お前の気持ちに応えることは決して出来ないのだァ! はははははッ!」

唯「ほんとにー? じゃあくっついてみてもいい?」

P「え? いや、それは」

唯「あれだけ大口叩いて、自信ないの? がまんできない?」

P「出来らぁっ!」

唯「じゃあ、えいっ」ギュッ

P「んーむ。この感触……いいね」

唯「あれ、おっきくならない……わー、すごーい! プラシーボ効果って実際にあるんだねー。電池なんか入ってないのに」

P「…………………………ぇ?」

唯「どうしたの、Pちゃん。豆鉄砲で撃ち殺された鳩みたいな顔して」

P「いま……いま、なんとおっしゃいました?」

唯「聞こえてなかった? そのスイッチ、電池入ってないよ?」

P「ははっ、そんな馬鹿な(キュッキュッキュッ、パカッ)……わーい、空っぽ。というか電池云々じゃなくてこれ配線もなにもない、無加工のスイッチが固定してあるだけじゃん……え? なに? なんなの? 俺は晶葉にハメられたの?」

唯「ハメたのは晶葉ちゃんじゃなくて、ゆいだよ? まあ、これからハメられるのはゆいだけど。そのスイッチはPちゃんの意思を削ぐためにゆいが作らせたもので、晶葉ちゃんが徹夜で作ってたのはこっち……じゃじゃーん! ゆいの愛が三人分になるスイッチでーす」

P「三人、分……?」

唯「ゆい、たくさん考えたんだー。どうやったらPちゃんをたくさん愛してあげられるだろうって。どうすれば、ゆいのあふれるほどの大好きで、Pちゃんをいっぱいにして、Pちゃんにいっぱいにしてもらえるんだろうって。どんなスイッチを使えったら、一ヶ月、一日も休まず、片時も離れず、ゆいの愛を、Pちゃんに注ぎ続けられるのか……その答えは、Pちゃんが教えてくれたんだよ」

P「三人……三人……!? ま、まさか……まさか、唯……! おまえッ!」

唯「覚悟してね、Pちゃん。三人のゆいで……壊れるまで愛してあげる♡」ポチッ


 ――おおつきゆいのむれが あらわれた!

 ――Pは こんらんしている!

 ――おおつきゆいAが Pのみぎうでをつかんだ!

 ――おおつきゆいCが Pのひだりうでをつかんだ!

 ――おおつきゆいBは ぶきみにほほえんでいる

 ――Pは うごけない!

 ――おおつきゆいAが おおきくいきをすいこんだ!

 ――おおつきゆいCが おおきくいきをすいこんだ!

 ――おおつきゆいBは ぶきみにほほえんでいる

 ――Pは うごけない!

 ――おおつきゆいAが あまいこえでささやいた!

 ――おおつきゆいCが あまいこえでささやいた!

 ――おおつきゆいたちの あまとろバイノーラルボイス!

 ――Pは こしがぬけてしまった!

 ――おおつきゆいBが しなだれかかってきた!

 ――Pは うごけない!


唯B「ふふっ、Pちゃん……どう? ゆいの分身は。ゆいと同じ声で、ゆいと同じカラダで、ゆいと同じ匂い。柔らかいでしょ? 気持ちイイでしょ? もっと嗅いで? ほら、吸い込んで。食い込んで。とろけて。ふふっ……溺れさせてあげる。ゆいたちはね、三人でPちゃんをより深く、より激しく愛してあげるために、ちょっと性格をいじったんだよ? Pちゃんに悦んでほしいから……くすくす。さあ、ふたりとも。自己紹介してあげて?」

唯A「はろー、Pちゃん。ゆいはね、ゆいの中にある、Pちゃんをいじめたいっていう欲求を強くしたゆいだよ。Pちゃんを縛り付けて乱暴して、屈服させて調教して、ゆいだけを感じて、ゆいだけを信じて、ゆいだけを愛するように壊してあげたい、そんなドSなゆいなの。これから一ヶ月、よろしくね? 大丈夫、うんと優しくしてあげるから。怖がらなくてもいいし、辛くなったらいつでも壊れていいよ? バラバラになったPちゃんの、心の残骸の一欠片まで愛してあげるから……♡」

唯C「はぁ……はぁ……♡ Pちゃん……Pちゃん……! ゆいはね、ゆいの中にある、Pちゃんにめっちゃめちゃにされたいっていう願望を強くしたゆいだよ? Pちゃんに組み伏せられて、抵抗もできずに嬲られて、踏まれたり、叩かれたり、タトゥーとかピアスで改造されることばっかり妄想してる、Pちゃんの所有物になりたいマゾ豚のゆいなの。これから一ヶ月、Pちゃんが満足できるように、一生懸命ガンバるから……ゆいのこと、おもちゃにして、たくさんたくさん使ってね……♡」

唯B「ねえ、Pちゃん? これなら平気だよね? どんなにPちゃんが底なしの体力でも、ゆいが三人いれば満足できるでしょ? どんなプレイでもできるし、してあげられるね? よかったね、Pちゃん。もう浮気なんて考えられないくらい愛してあげる。どんな女の子としても満足できないように躾けてあげる。だからね、もう考えるのやめていいよ。もう我慢しなくていいよ。素直になっていいの。したいことをしていいの。してほしいことを口にしていいの。どんな願いでも叶えてあげる。どんなことでもしてあげる。ゆいが、ゆいたちが、Pちゃんを愛で満たしてあげるから。――だから、ね? 答えて。いい? 最後の問題だよ?」


「「「ゆいとPちゃんは、恋人同士である。○か×か」」」


P「………………×です」

唯A「うん、うん! それでこそ、ゆいのPちゃんだね。自分を曲げないその強さがゆいは大好き。その心が圧し折れる瞬間を思うだけで、ゆいはイっちゃいそうになるよ? 言葉で、快感で、痛みで、屈辱で、たくさんたくさん教えてあげる。本当のPちゃんがどんな人間なのか……ゆいが剥き出しにして、見せつけてあげる。ふふふっ、あはは……!」

唯C「アイドルを傷つけたくないという信念と、アイドルを傷つけたいという欲望……理想と現実の板挟みに、どこまで耐えきれるか楽しみだね、Pちゃん。ゆい、知ってるよ? 向こうの世界で琴歌ちゃんや桃華ちゃんにしたみたいに、ゆいのお尻が真っ赤になるまで叩きたいんだよね? ゆいの顔が涙と鼻水とよだれでぐちょぐちょになるまでいじめたいんだよね? ふふっ……ゆい、頑張るね? やせ我慢するPちゃんが、しんぼうたまらなくなって、ゆいを思いっ切り陵辱したくなるように、えっちな言葉でたっぷり誘惑してあげるね? だから、ね? 我慢できなくなったら、一番最初に、マゾ豚のゆいにひどいことしてね? 約束だよ……♡」

唯B「それじゃあ、Pちゃん……始めよっか? あ、Pちゃんはなにもしなくていいからね? ゆいたちが全部やってあげるから。服を脱がして、裸にして……それからナメクジみたいに全身を舐めてあげる。つま先から、耳の穴まで。三人分の唾液でベトベトにしてあげる。もちろん、ゆいたちはPちゃんの意思を尊重して、Pちゃんの一番敏感なところはスルーしてあげるね。Pちゃんは最後まで我慢してもいいし、しなくてもいい。けど限界になったら言ってね? 一ヶ月ぶりだもん、好きなところで出させてあげるね……♡」

P「俺は不死身のプロデューサーだッ! 絶対アイドルなんかに負けねぇ!!」キッ



   ここは、脱出不可能の密室。欲望に溶かされる、信念の墓場。

   男と、女と、女と、女。燃え上がる情欲のキャンプファイヤ。

   人生最大の危機。火遊びでは済まない、危険な夏が始まった。

   次回『4P』――平成最後の夏、男は理想を抱いて溺死する。





 下駄の鼻緒が切れた浴衣姿の桃華をおんぶして、いまにも寝入りそうな吐息を感じながら、お家に帰りたいだけの夏だった。

書き忘れていましたが、このSSは下品です。

以下は下品な過去作。


晶葉「できたぞ助手! アイドルがスケベになるスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルがスケベになるスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483978067/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルの言葉が伏字になるスイッチだ!
晶葉「できたぞ助手! アイドルの言葉が伏字になるスイッチだ! - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1484876986/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルがメス犬になるスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルがメス犬になるスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1487501571/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルを催眠状態にするスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルを催眠状態にするスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1490794213/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルを見るだけで元気(♂)になれるスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルを見るだけで元気(♂)になれるスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1495105363/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルがメス猫になるスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルがメス猫になるスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500042944/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルのおっぱいが食べ放題になるスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルのおっぱいが食べ放題になるスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1505232484/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルがどんな暗示にもかかってしまうスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルがどんな暗示にもかかってしまうスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1514341619/)

晶葉「できたぞ助手! アイドルの貞操観念が逆転するスイッチだ!」
晶葉「できたぞ助手! アイドルの貞操観念が逆転するスイッチだ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1526085552/)


なお、一部のSSでアイドルの名前が誤変換してしまいました。

閲覧の際は、脳内変換してくださるようお願い申し上げます。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年09月07日 (金) 11:19:04   ID: SyDnyuNV

やっぱり唯だわ(至高)

2 :  SS好きの774さん   2018年10月04日 (木) 23:40:44   ID: SGOq340Q

下品P(仮)のまとめないの?

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