大学生「もうすぐ卒論提出なのに文字数が全然足りてないんだけどどうしよう」 (19)

友人「もうすぐ卒論提出期限だけど、終わったか?」

大学生「いや、まだ終わってない」

友人「マジで? そろそろ終わらせないとヤバイんじゃねえか?」

大学生「分かってるんだけど、どうしても文字数が足りないんだよな……」

大学生「もう書きたいことは書いたのに、全然2万字に届かないんだよ……」

友人「あらら……」

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友人「ちなみにテーマは?」

大学生「タイトルは『“負かす”という行為について』だ」

友人「妙なテーマだな……どういう内容よ?」

大学生「人生っていってみれば勝ったり負けたりを繰り返していくもんなわけじゃん?」

大学生「勉強にせよ仕事にせよ恋愛にせよ遊びにせよ、さ」

友人「まあ、そうだな」

大学生「当然いい人生を送るには、競争相手に勝たなきゃいけないんだけど」

大学生「他人を負かすと、恨みを買ったり妬まれたりなんてリスクもある」

大学生「そういうのを掘り下げたいなー、と思ったんだよ」

友人「へぇー、聞いてる限り、なかなか面白そうなテーマじゃん」

友人「で、今どのぐらいの文字数書いたんだ?」

大学生「……1000字」

友人「は!?」

友人「全然2万に届いてねーじゃん! たったの5%じゃん!」

大学生「そうなんだよぉ~」

大学生「どうすりゃいいのか……このままじゃ卒業できねえ」

友人「とにかく見せてみろ。俺も協力するから」

大学生「よろしく頼む!」

大学生「これが出だしの文章だ」



『社会生活を営むということは勝負の連続である。勝ち負けが常につきまとう。そこで私は~』



友人「ふむふむ」

友人「書きたいこと書いちゃった以上、この文章に文字を水増ししていくしかねえな」

大学生「どうやって?」

友人「まず……語尾をちょっと変えちゃおう」



『社会生活を営むということは勝負の連続なのであります。勝ち負けが常につきまとうのであります。
 そこで私は~』



大学生「おお、ちょっと増えた!」

友人「これでざっと一割ぐらいは水増しできるはずだ」

大学生「それでも、1000字が1100字になるぐらいだぜ?」

友人「なら次は文章も変えよう」



『社会の生活を営むということは勝ちと負けの連続なのであります。
 勝ちと負けが常につきまとうということなのであります。そういったことで私は~』



大学生「なるほど、回りくどくして文字数を増やしたんだな!」

友人「だけど、これでも2万字には程遠いな……」

友人「よし、全部平仮名にしちゃおう!」



『しゃかいのせいかつをいとなむということはかちとまけのれんぞくなのであります。
 かちとまけがつねにつきまとうということなのであります。そういったことでわたしは~』



友人「これで2000字くらいにゃなっただろ!」

大学生「それでも、まだ18000字もあるぞ……」

友人「こうなったら――」

友人「読点を使いまくろう」



『しゃかいの、せいかつを、いとなむ、ということは、かちとまけのれんぞく、なのであります。
 かちとまけが、つねにつきまとう、ということ、なのであります。そういった、ことで、わたし、は~』



大学生「だいぶ増えたけど、まだ足りない!」

友人「ええい、三点リーダも混ぜてやれ!」

『しゃかい……の、せいかつ……を、いとなむ、ということは、かちとまけ……のれんぞく、なので……あります……。
 かちとまけが、つねに……つきまとう、ということ、なので……あります……。
 そう……いった、こと……で、わたし、は~』



友人「今の文字数は?」

大学生「えぇと……まだ3000字をちょっと超えたぐらいだ!」

友人「なら、今度は接続詞を入れまくって――」

大学生「ああ~、もうダメだ! もう無理!」

大学生「あんだけ文章に色んなものを加えたのに、2万には届かない!」

大学生「ていうか、こんなメチャクチャな卒論じゃ絶対合格点なんてもらえねえ!」

大学生「論文というか怪文書だ、これ!」

友人「だよなぁ……文章として成り立ってないもん。読みにくいったらありゃしない」

大学生「まさか、卒論との勝負で“負かされる”なんてオチになるとは……」

大学生「やっぱり文字数が足りないからって、イカサマなんてするもんじゃないな……」

友人「――!」ハッ

友人「ちょっと待てよ」

大学生「なんだよ、まだなんか手があるのか?」

友人「ああ、ある。お前、テーマ変えたらどうだ?」

大学生「なにいってんだよ!? 今さら変えられるわけないだろ!」

大学生「卒論提出期限まで、もう時間がないんだぞ!」

友人「いや、多分今のお前なら……新しいテーマでスラスラと論文が書けると思う」

大学生「そんなバカな……」

大学生「どんな新テーマか知らないけど、これだけあれこれ足してもダメだったんだぜ?」

友人「いや、今度は……“一文字足すだけ”でいいんだ」

大学生「……?」



――――

――

――

――――



教授「君の論文、とてもよかったよ!」

大学生「ありがとうございます!」

教授「なんていうか、文章から鬼気迫るものを感じたよ」

教授「よほどこのテーマについて思い入れがあるんだろう、なんて思ってしまったよ」

大学生「そ、そうですか……アハハ」

教授「いやぁ、本当によく書けているよ。この論文……『“ごまかす”という行為について』」







<終わり>

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