青年「ふーん、その歳で奴隷か」幼女「……」 (11)

青年「この子は何ができるんだい?」

奴隷商人「何でもできますが、基本的には性奴隷、といったところでしょうな」

奴隷商人「他のお客様も『そういった趣向』の方々でしてね。鞭で打ったり、指をちょん切ったり、人を人と思わぬ鬼の所業をなさる」

奴隷商人「それでも奴隷達は口がきけぬゆえ、黙って痛みに耐え、主人が飽きるのを待つ他ないのです。ま、飽きられたら犬の餌にされますが」

青年「ふーん、可哀想に」チラ

幼女「……」キッ

青年「彼女、どこの出身ですか? 髪が黒いですけど」

奴隷商人「知りません。奴隷をかき集めるのは、ブローカーの仕事です。私はブローカーから買い、こうして皆様のもとへ健康な奴隷を届けるだけ」

青年「彼女、買ってもいいかい」

奴隷商人「いいですとも! 一匹300リラですなー」

チャリーン

奴隷商人「まいど!」

青年「じゃ、いこうか」

幼女「……」




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知らない大人に買われた。

これからどうなるのだろう。

お父さんのように殺されるのか。

お母さんのように慰みものにされるのか。

頑丈な鉄の首輪。

いくらもがいても、はずれそうにない。

足元だけを見て歩く。

抵抗できない自分が恥ずかしかった。

家畜みたいに扱われるのが悔しかった。

なにより、氷のごとく冷え切った周りの視線が怖かった。


青年「お腹減ったな、どこかご飯食べに行こうよ」

店主「よってらっしゃいみてらっしゃい! ステーキ一枚300リラですよ!」

青年「アニデンステーキ、今キャンペーン中なんだって。300リラとか普段の半分の値段だよ」

幼女「……」ギュッ

青年「どうして下唇を噛んでいるの?」

店主「さぁさぁ、お客さん! 奥へどうぞどうぞ。家畜の方、お預かりしておきますね」

青年「え? 家畜?」

店主「あなたが連れている雌犬のことですよ! どっからどう見たって家畜の烙印押されてるでしょ!」

青年「この子は、新しく家に来たお手伝いさんでね。元奴隷だったんだが」

店主「またまた御冗談を! 奴隷の烙印のある召使いなんて初耳ですぜ! とにかく、烙印がある以上は店にいれることはできませんね」

青年「ならここでは食べない。まったく失礼な店だ。だから売り上げも振るわないんだろう」

店主「……」ムッ

店主「お客さん! ちょいと!」

300リラ。

ステーキ一切れの値段よりも安いなんて。

この人は私と一緒に食事をしたいようだけど。

私からすれば、地獄の時間だ。

ステーキを前にしても、背中に感じる奇異の視線。

人でないものが、なぜ人間と飯を食べているのか。

そんな、鋭い剣先を思わせる刺すような視線。

ステーキを噛んでも、ガムみたいで美味しくなかった。

どうしてあなたは平気で笑っていられるの?

奴隷のことなんて、何も知らないくせに。

ただの好奇心で買ったくせに。

青年「久しぶりなんだ。こうして落ち着いた場所で人と食事するの」

幼女「……」モグモグ

青年「空を見てごらんよ。真っ赤な夕焼けに群青が混ざって、とても綺麗だ」

幼女「……」モグモグ

青年「僕はね、君が好きだ」

幼女「……」ゴキュッ

青年「マドラサの女どもは、みんな玉の輿狙いと面食いばかりだった。飽き飽きしてたんだ」

幼女「……」

青年「でも、君は違う。他の女にはない、しっかりとした強い芯が心の中にある」

幼女「……」コトン

青年「貴重な人材を、奴隷達の間で腐らせるわけにはいかない。だから僕は、君を雇った」

幼女「……」

青年「安心しなよ。給料は出す。住み込みだから食べ物も寝る場所もあるし、家賃もいらない」

幼女「……」ガタ

青年「ん? おしっこ? 厠ならあっちにあるよ。首輪、外しとくね。これのせいで奴隷と思われたんだ」

幼女「……」タタッ

脇目も振らず走った。

もちろん、おしっこなんてするはずがない。

出口に向かって、角を左に曲がって、右に曲がって、人を押しのけて。

転んで、起き上がって、走り出す。

後ろは振り返らない。

あの男、雇うとか語っていたけど、言いくるめるための口実に決まってる。

私は騙されない。

絶対に逃げ出して、新たな人生を歩んでやる。

両足が宙に浮いた。

走っても走っても、前に進まない。

何かに吊り下げられている。

店主「おいガキィ~、やっぱオメー、奴隷だったじゃあねーかよォ~」

強引に口をふさがれ、厨房に突き飛ばされた。

店主が持ちだしたのは、奴隷用の鉄の首輪。

やめて、触らないで。

声にならない悲鳴が漏れる。

店主「首輪を壊して脱走とは、いい根性してんじゃん? ついでに、死んでいただこうかな!」

青年「遅いなぁ……」

青年「ちょっと様子見てこようかな」

ワイワイガヤガヤ

青年「人だかりができてる……誰かもめてるのかな」

幼女「グッ! ウッ!」ビシィ!バシィ!

店主「ほれほれほれ~、牛皮の鞭は痛いだろう! 抵抗できるか? やってみたまえよクソガキャァ!」

幼女「ぎぃ! ぐぁ!」ドゴォ

青年(こいつら!)カッ

青年「やめてください! 僕の連れになんて惨いことしてるんですか!」

幼女「ゲホッゲホッ」

店主「あらぁ^~ お客さん、とっくに手放したのかと思ってましたよ」

青年「そんなわけないでしょう! 勘定します! 邪魔はしないでいただこう!」

店主「ちょっとちょっと、家畜一匹に必死過ぎだっちゅ~の」

青年「奴隷の紋章があるからなんだ、この子は今、僕のお手伝いさんだ。それでいいじゃないですか!」

店主「ひい、ふう、みい……。はい受け取りました。まいど。家畜の分はいれてませんからね」

青年「こんな店、潰れてしまえばいい」

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